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  • 特開-結線用補助具および結線方法 図1
  • 特開-結線用補助具および結線方法 図2
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  • 特開-結線用補助具および結線方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080755
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】結線用補助具および結線方法
(51)【国際特許分類】
   F42D 1/16 20060101AFI20220523BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F42D1/16
E21D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020191995
(22)【出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】打田 安宏
(72)【発明者】
【氏名】文村 賢一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 伸弘
(72)【発明者】
【氏名】福島 淳平
(72)【発明者】
【氏名】松田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】楠畑 菜津子
(57)【要約】
【課題】爆薬の装填穴から外部に延在した起爆用の線状部材を引き寄せるときの安全性を高めるとともに、作業効率を高めることができる結線用補助具を提供する。
【解決手段】発破対象物50の装填穴51から外部に延在した起爆用の線状部材70(線状部材)を引き寄せるための結線用補助具10である。結線用補助具10は、軸方向に伸縮自在な軸部11と、軸部11の先端部に設けられた係合部14と、を備え、係合部14は線状部材70に係合可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発破対象物に形成された装填穴から外部に延在した起爆用の線状部材を引き寄せるための結線用補助具であって、
軸方向に伸縮自在な軸部と、
前記軸部の先端部に設けられた係合部と、を備え、
前記係合部は、前記線状部材に係合可能であることを特徴とする結線用補助具。
【請求項2】
請求項1に記載の結線用補助具であって、
前記係合部は、フック形状であることを特徴とする結線用補助具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の結線用補助具であって、
前記軸部は、軸方向に連結された複数の筒体を備え、
隣り合う前記筒体同士が出入自在に連結されていることを特徴とする結線用補助具。
【請求項4】
軸方向に伸縮自在な軸部と、前記軸部の先端部に取り付けられた係合部と、を備えている結線用補助具を使用する結線方法であって、
前記軸部を伸長させて、発破対象物に形成された装填穴から外部に延在した起爆用の線状部材に、前記係合部を係合させる段階と、
前記軸部を収縮させて、前記線状部材を引き寄せる段階と、を備えていることを特徴とする結線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結線用補助具および結線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネル工事の切羽などにおいて、発破対象物を発破するときには、発破対象物に形成された装填穴内に爆薬を装填し、爆薬の雷管に接続された導火線を装填穴の外部に延在させ、その導火線を点火器に結線している(例えば、特許文献1参照)。
トンネルの切羽面など地山が露出している場所では、落石のリスクがあるため、迅速に作業を行う必要があるが、トンネル切羽においては、作業者が切羽面に近づいて多数の導火線を一本ずつ直接持って引き寄せているため、切羽面近傍での作業に時間を要してしまう。また、高い位置の装填穴から延在された導火線を引き寄せるときには、作業者は高所作業車を使用して導火線の場所に近づく必要があるため、作業効率が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-003145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記した問題を解決し、爆薬の装填穴から外部に延在した起爆用の線状部材を引き寄せるときの安全性を高めるとともに、作業効率を高めることができる結線用補助具および結線方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、第一の発明は、発破対象物に形成された装填穴から外部に延在した起爆用の線状部材を引き寄せるための結線用補助具である。前記結線用補助具は、軸方向に伸縮自在な軸部と、前記軸部の先端部に設けられた係合部と、を備え、前記係合部は、前記線状部材に係合可能である。
前記課題を解決するため、第二の発明は、軸方向に伸縮自在な軸部と、前記軸部の先端部に取り付けられた係合部と、を備えている結線用補助具を用いる結線方法である。本発明の結線方法では、前記軸部を伸長させて、発破対象物に形成された装填穴から外部に延在した起爆用の線状部材に、前記係合部を係合させる。そして、前記軸部を収縮させて、前記線状部材を引き寄せる。
【0006】
本発明の結線用補助具および結線方法では、発破対象物から離れた位置からでも、軸部を伸長させることで、装填穴から外部に延在した導火線や導爆線などの線状部材に係合部を係合させることができる。そして、軸部を収縮させることで、線状部材を安全に引き寄せて点火器に結線できる。
また、本発明の結線用補助具および結線方法では、作業者の手が届く範囲よりも高い位置の装填穴から外部に延在した線状部材を引き寄せることができる。また、所定の位置から結線用補助具を用いて複数の線状部材を引き寄せることができる。したがって、装填穴から外部に延在した線状部材を点火器に結線するときの作業効率を高めることができる。
【0007】
前記した結線用補助具において、前記係合部をフック形状に形成して、係合部を線状部材に引っ掛け易くすることが好ましい。
前記した結線用補助具において、前記軸部には、軸方向に連結した複数の筒体を設け、隣り合う前記筒体同士を出入自在に連結することで、簡単な構成で軸部を伸縮させることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の結線用補助具および結線方法では、発破対象物から離れた位置からでも起爆用の線状部材を安全に引き寄せて点火器に結線できる。また、本発明の結線用補助具および結線方法では、作業者よりも高い位置の線状部材を引き寄せるとともに、所定の位置から複数の線状部材を引き寄せることができるため、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る結線方法において、結線用補助具を伸長させる前の状態を示した側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る結線方法において、結線用補助具を伸長させた状態を示した側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る結線方法において、結線用補助具を収縮させた状態を示した側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る結線方法において、他の導火線を引き寄せた状態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、山岳トンネル工事の切羽において発破対象物を発破する爆薬を起爆させるための線状部材に結線用補助具および結線方法を適用した場合を例として説明する。
【0011】
本実施形態の発破対象物50は、図1に示すように、トンネル切羽(切羽面の近傍の地盤)であり、切羽面に複数の装填穴51が開口している。
装填穴51は、発破対象物50に形成された有底筒状の横穴である。装填穴51には、複数の爆薬61および込め物62が装填されている。
装填穴51内の爆薬61には、導火線や導爆線などの起爆用の線状部材70が接続されている。線状部材70は、装填穴51の開口部から外部に延在しており、装填穴51の開口部から垂れ下がっている。線状部材70を点火器に結線し、線状部材70に着火することで、爆薬61を起爆させることができる。
なお、本発明において発破対象物や爆薬の構成は限定されるものではない。
【0012】
結線用補助具10は、装填穴51の開口部から垂れ下がっている線状部材70を、発破対象物50から離れた位置に引き寄せるための棒状部材である。
結線用補助具10は、軸方向に伸縮自在な軸部11と、軸部11の基端部に設けられた把持部13と、軸部11の先端部に設けられた係合部14と、を備えている。
軸部11は、金属製の複数の筒体12を軸方向に連結したものである。先端側の筒体12から基端側の筒体12に向かうに連れて筒体12の径が大きくなっている。そして、隣り合う筒体12,12において、先端側の筒体12の端部が、基端側の筒体12の端部に挿入されている。そして、隣り合う筒体12,12同士を出し入れすることで、軸部11が軸方向に伸縮するように構成されている。なお、軸部11の最大長さが1m以上になるように構成することが好ましい。
軸部11の基端部には、作業者が手で握るための把持部13が設けられている。把持部13は、金属製の筒体に樹脂製の滑り止め部材を被せることで、作業者が握り易くなっている。
係合部14は、金属製のフックであり、軸部11の先端部から軸方向に延びて基端側に折り返されている。
結線用補助具10は、作業者が一方の手で把持部13を把持し、他方の手で軸部11を伸縮させることで、係合部14を作用者から遠ざけたり、作業者に近づけたりすることができる。
【0013】
次に、結線用補助具10を用いた結線方法について説明する。
図1に示すように、発破対象物50から離れた位置において、作業者は一方の手で結線用補助具10の把持部13を把持する。
続いて、図2に示すように、作業者は他方の手で軸部11を伸長させて、係合部14を発破対象物50に近づける。さらに、結線用補助具10の先端部を動かして、フック形状の係合部14を線状部材70に引っ掛ける。
係合部14を線状部材70に係合させた後に、図3に示すように、作業者は軸部11を収縮させて、係合部14とともに線状部材70を引き寄せる。
なお、引き寄せた線状部材70は、係合部14から外して、作業者が持つか周辺の装置などに引っ掛けておく。
図4に示すように、前記した工程と同様に、結線用補助具10の軸部11を伸縮させて、他の線状部材70も引き寄せる。なお、一度に複数の線状部材70に係合部14を係合させて引き寄せてもよい。
そして、発破対象物50の各装填穴51から外部に延在している全ての線状部材70を引き寄せて、各線状部材70をまとめて点火器に結線する。
【0014】
以上のような結線用補助具10および結線方法では、図2に示すように、発破対象物50から離れた位置からでも、作業者が軸部11を伸長させることで、装填穴51から外部に延在した線状部材70に係合部14を係合させることができる。このとき、本実施形態の係合部14はフック形状であるため、係合部14を線状部材70に引っ掛け易い。
そして、作業者は、図3に示すように、軸部11を収縮させることで、発破対象物50から離れた位置に、線状部材70を安全に引き寄せて点火器に結線できる。
このように、本実施形態の結線用補助具10および結線方法では、切羽面における落石のリスクを避けて、線状部材70を引き寄せることができるため、線状部材70を点火器に結線するときの安全性を高めることができる。
【0015】
また、本実施形態の結線用補助具10および結線方法では、図2に示すように、作業者の手が届く範囲よりも高い位置の装填穴51から外部に延在した線状部材70を引き寄せることができる。また、所定の位置から結線用補助具10を用いて複数の線状部材70を迅速に引き寄せることができる。したがって、線状部材70を点火器に結線するときの作業効率を高めることができる。
【0016】
また、本実施形態の結線用補助具10の軸部11は、軸方向に連結した複数の筒体12同士を出入自在に連結している。この構成では、簡単な構成で軸部11を伸縮させることができる。
【0017】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態では、係合部14がフック形状であるが、係合部14の構成は限定されるものではない。
例えば、フックの開いた部位にレバーを設け、ばねによって閉じているレバーを押し込むことで開くように構成した場合には、係合部から線状部材70が外れるのを防ぐことができる。また、リング状のカラビナによって係合部を構成してもよい。
また、係合部が線状部材を挟んで掴むように構成し、作業者が手元のレバーやボタンを操作して、係合部を開閉させてもよい。
【0018】
また、軸部11を伸縮させる構成は限定されるものではなく、例えば、蛇腹方式や折り畳み方式によって軸部を伸縮させてもよい。
また、作業者が手元のレバーやボタンを操作することで、軸部が自動的に伸縮するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0019】
10 結線用補助具
11 軸部
12 筒体
13 把持部
14 係合部
50 発破対象物
51 装填穴
61 爆薬
62 込め物
70 線状部材
図1
図2
図3
図4