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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080825
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】紙葉類搬送システム
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/16 20190101AFI20220523BHJP
   B65H 29/24 20060101ALI20220523BHJP
   B65H 29/58 20060101ALI20220523BHJP
   A63F 7/02 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
G07D11/16
B65H29/24 A
B65H29/58 A
A63F7/02 352F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068332
(22)【出願日】2021-04-14
(62)【分割の表示】P 2020191301の分割
【原出願日】2020-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】591085972
【氏名又は名称】日本ゲームカード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】野口 哲
【テーマコード(参考)】
2C088
3E141
3F049
3F053
【Fターム(参考)】
2C088FA01
3E141AA01
3E141BA03
3E141CA05
3E141DA08
3E141FG06
3F049AA01
3F049FA03
3F049LA08
3F049LB04
3F053EA06
3F053EC02
3F053EC06
3F053EC17
3F053LA08
3F053LB04
(57)【要約】
【課題】回収対象である紙葉類に該当しないものを分別物として回収できる紙幣搬送システムを提供する。
【解決手段】紙幣回収システム1の搬送態様変換ユニット5において、搬送管2から導入される紙幣PMを終端流路5bへ導く搬送導入部5aに開設した緊急搬送口52を、緊急ユニット7を収納可能な緊急収納庫6の分別導入口6aと連通させておき、常時は分別導入口6aを遮蔽する紙幣回収状態の搬送路切換板53を分別状態に変換することで、緊急ユニット7を緊急収納庫6に分別収納できる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流に設けた搬送流発生装置により発生させた搬送流を下流へ導く搬送路が形成された搬送管にて、紙面が搬送方向と平行に配された紙葉類を上流から下流へ搬送し、前記搬送管の最下流に設けられた紙葉類回収装置にて前記紙葉類を回収する紙葉類搬送システムであって、
前記紙葉類回収装置には、
前記搬送管からの前記搬送流が導入される搬送流導入部の下流と連通し、前記搬送流を吸引する吸引口へ至る終端流路を遮るように搬送力伝達体を配置し、前記吸引口に吸引される前記搬送流によって前記紙葉類を前記搬送力伝達体に当接させることにより、前記紙葉類の搬送態様を前記搬送流による非接触搬送態様から前記搬送力伝達体による接触搬送態様に変換する搬送態様変換手段と、
前記搬送流導入部から前記終端流路へ至る向きとは異なる向きに設けられ、回収対象の前記紙葉類とは異なる分別物を通過させ得る開口形状の分別口と、
前記分別口を介して前記搬送流導入部と連通し、受け入れた前記分別物を収納可能な分別物収納体と、
前記分別口を塞いで前記搬送流導入部から前記終端流路へ前記搬送流が通過できる紙葉類回収状態と、前記分別口を開くと共に前記搬送流導入部から前記終端流路へ至る流路を塞ぐ分別状態とに変換可能な搬送路切換部材と、
所定の状態変換条件が成立することに基づいて、前記搬送路切換部材を前記紙葉類回収状態から前記分別状態に変換させ、前記分別物を前記搬送流導入部から前記分別口を介して前記分別物収納体へ分別する制御を行う分別制御手段と、
を設けたことを特徴とする紙葉類搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流に設けた搬送流発生装置により発生させた搬送流を下流へ導く搬送路が形成された搬送管にて、紙面が搬送方向と平行に配された紙葉類を上流から下流へ搬送し、搬送管の最下流に設けられた紙葉類回収装置にて紙葉類を回収する紙葉類搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄いプラスチック製あるいは紙製のカードや紙幣といった紙葉類を搬送するとき、ベルトやローラを用いて紙葉類を挟み込んで送り出す紙葉類搬送装置が知られており、市場にも普及している。例えば、パチンコやスロットマシン等の遊技機が設置された遊技場においては、遊技機に隣接させて遊技媒体貸出装置等が設けられており、この遊技媒体貸出装置内に紙幣を収納せず、紙葉類回収装置の機能を備える紙幣金庫部等まで搬送して管理する場合に紙葉類搬送システムが用いられる。遊技場の紙葉類搬送システムでは、遊技媒体貸出装置等の紙幣識別部により判別された紙幣を取り込み、ベルトやローラから成る搬送機構によって、遊技機を設置した遊技島の島端に取り付けられた紙幣金庫部まで搬送するのである。
【0003】
このような紙葉類搬送システムでは、ベルトやローラ等で紙幣を挟み込む機構を使って搬送している為に、ベルトやローラの継ぎ渡し部分にて紙幣詰まりがしばしば発生するという問題があった。紙幣詰まりを解消するためには、遊技機で遊技中の遊技者に遊技を中断してもらい、遊技島内の不具合箇所を特定し、詰まった紙幣を取り除かなければならず、来店客に迷惑をかけると共に、遊技店員にとっての負担も少なくなかった。
【0004】
近年においては、搬送管内に搬送用の空気流を発生させ、空気流に乗せて紙幣を搬送する紙葉類搬送システムが提案されている。空気流により紙幣を搬送するなら、ベルトやローラといった機構を使わないので、機構部分で紙幣が詰まるというリスクがない。空気搬送の紙葉類搬送装置として、紙幣の後端部を変形させ、変形部に搬送用の空気流の風圧を作用させることにより、紙幣の搬送をスムーズにしたものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1に記載の紙幣搬送システムでは、終端の回収装置まで空気流を送り込み、紙葉類の両側が搬出ローラによって挟みこまれるまで搬送した後、排出管によって空気流を回収装置から抜き出すものとなっている。
【0005】
更に、紙幣金庫部に設けられた紙葉類回収装置において、空気流による搬送態様から搬送ベルトによる搬送態様への引き継ぎを確実にし、搬送ベルトによって紙葉類を収納部へ導くようにした技術が提案されている(例えば、特許文献2および特許文献3を参照)。これら特許文献2や特許文献3においては、搬送ベルトの裏面側に設けた排出口(吸引口)から空気流を排出することで、紙葉類を搬送ベルトへ押しつけるようにし、空気流から搬送ベルトへの引き継ぎを確実に行える技術となっている。
【0006】
また、空気流によって紙葉類を直接搬送するのではなく、空気流によって上流から下流へ移動して行く搬送補助体で紙葉類を後方から押し動かして紙葉類を搬送し、搬送管の終端で搬送補助体と紙葉類を分離するようにした技術も提案されている(例えば、特許文献4を参照)。この特許文献4に記載の技術では、搬送管内を移動する搬送補助体の位置に応じて空気流の強さを調整する風量調整部を設け、搬送補助体が回収装置に近づいた際には、空気流を弱く制御して、搬送補助体と紙葉類との分離を安定して行えるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4130697号公報
【特許文献2】特許第4372218号公報
【特許文献3】特許第5514693号公報
【特許文献4】特許第6446113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~特許文献4に記載された技術では、以下のような問題が考えられる。
【0009】
特許文献1に記載された空気流による紙葉類の搬送技術では、紙葉類の形状により紙葉類の搬送速度が著しく異なり、必ずしも安定搬送を実現できるとは言えないし、終端の回収装置から排出管によって空気を抜き出す向きが紙葉類の搬送方向とは異なっているため、紙葉類を挟み込みローラへうまく引き継げない事態が起こる。また、特許文献2や特許文献3に記載された紙葉類の搬送態様を変換する技術では、紙葉類が空気流によって搬送ベルトに当接する際に、強い風圧で少なからずダメージを受けてしまうために、引き継ぎ後の搬送ベルトによる搬送で詰まりが生ずる要因となっていた。特に、コシのない紙葉類を搬送する場合には、紙葉類が破れるほど致命的なダメージが加わるといった問題も発生している。
【0010】
特許文献4に記載された発明では、回収装置に近づいた際に空気流を弱く制御しているために、回収装置の近傍だけでなく、搬送管内全体の速度及び圧力が変化してしまう。よって、特許文献4に記載の発明における搬送技術では、搬送管で同時に複数枚の紙葉類を搬送する制御は行えず、1枚の紙葉類が回収装置に回収されるまで次の紙葉類を搬送できないため、搬送効率が極めて悪いという問題が生ずる。更に、搬送管内全体の空気流を制御する場合、搬送管内全体の空気流が安定するまでに数秒程度の時間を要するため、紙葉類を回収した後に、次の搬送を行うための準備時間が必要となり、紙葉類の連続搬送に適さないという問題もある。
【0011】
そこで、本発明は、紙葉類回収装置において非接触搬送態様での紙葉類搬送から接触搬送態様での紙葉類搬送に引き継ぐ際、紙葉類にダメージを与えることを防ぐことができると共に、搬送効率の良好な紙葉類搬送を期待できる紙葉類搬送システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、上流に設けた搬送流発生装置により発生させた搬送流を下流へ導く搬送路が形成された搬送管にて、紙葉類を上流から下流へ搬送し、前記搬送管の最下流に設けられた紙葉類回収装置にて前記紙葉類を回収する紙葉類搬送システムであって、前記紙葉類回収装置には、前記搬送管からの前記搬送流が導入される搬送流導入部から、前記搬送流を吸引する吸引口へ至る終端流路を遮るように搬送力伝達体を配置し、前記吸引口に吸引される前記搬送流によって前記紙葉類を前記搬送力伝達体に当接させることにより、前記紙葉類の搬送態様を前記搬送流による非接触搬送態様から前記搬送力伝達体による接触搬送態様に変換する搬送態様変換手段と、前記搬送流導入部に導入された前記搬送流の一部を前記終端流路へ至る前に吸引することで、前記搬送流導入部から前記終端流路へ至る前記搬送流を減らし、前記終端流路における搬送力を低減させる搬送力低減手段と、を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、上記構成において、前記搬送力低減手段は、前記搬送流導入部に設けた減速吸引口から前記搬送流の一部を吸引するようにしてもよい。
【0014】
また、上記構成において、前記搬送力低減手段は、前記減速吸引口を開閉可能な遮蔽部材を備え、該遮蔽部材により前記減速吸引口の開口面積を変えることで、前記終端流路における前記搬送力の低減度合を調整できるようにしてもよい。
【0015】
また、上記構成において、前記搬送力低減手段は、前記遮蔽部材が前記減速吸引口を遮蔽する度合を調整するように、前記遮蔽部材を任意位置に移動させる遮蔽部材駆動機構を備え、前記搬送管内で搬送されている前記紙葉類の搬送速度に基づいて前記遮蔽部材駆動機構を作動させ、前記減速吸引口の遮蔽度合を調整することにより、前記搬送力を低減させる制御を行う低減制御手段、を設けてもよい。
【0016】
また、上流に設けた搬送流発生装置により発生させた搬送流を下流へ導く搬送路が形成された搬送管にて、紙面が搬送方向と平行に配された紙葉類を上流から下流へ搬送し、前記搬送管の最下流に設けられた紙葉類回収装置にて前記紙葉類を回収する紙葉類搬送システムであって、前記紙葉類回収装置には、前記搬送管からの前記搬送流が導入される搬送流導入部から、前記搬送流を吸引する吸引口へ至る終端流路を遮るように搬送力伝達体を配置し、前記吸引口に吸引される前記搬送流によって前記紙葉類を前記搬送力伝達体に当接させることにより、前記紙葉類の搬送態様を前記搬送流による非接触搬送態様から前記搬送力伝達体による接触搬送態様に変換する搬送態様変換手段と、前記搬送流導入部から前記終端流路へ至る向きとは異なる向きに設けられ、回収対象の前記紙葉類とは異なる分別物を通過させ得る開口形状の分別口と、前記分別口を介して前記搬送流導入部と連通し、受け入れた前記分別物を収納可能な分別物収納体と、前記分別口を塞いで前記搬送流導入部から前記終端流路へ前記搬送流が通過できる紙葉類回収状態と、前記分別口を開くと共に前記搬送流導入部から前記終端流路へ至る流路を塞ぐ分別状態とに変換可能な搬送路切換部材と、所定の状態変換条件が成立することに基づいて、前記搬送路切換部材を前記紙葉類回収状態から前記分別状態に変換させ、前記分別物を前記搬送流導入部から前記分別口を介して前記分別物収納体へ分別する制御を行う分別制御手段と、を設けてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、紙葉類にダメージを与えることなく、非接触搬送態様から接触搬送態様への引き継ぎをスムーズに行うことができ、紙葉類の安定した回収が可能となる。しかも、搬送路内に複数枚の紙葉類が同時に搬送されていても対応できるので、搬送効率の良好な紙葉類搬送を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は本発明の実施形態に係る紙葉類搬送システムの概略構成図である。(B)は紙幣回収装置の一例を示す概略構成図である。
図2】(A)は搬送態様変換ユニットの外観図である。(B)は搬送態様変換ユニットの正面図である。(C)は搬送態様変換ユニットの内部透視図である。
図3図2(B)におけるIII-III線の矢視断面図である。
図4】搬送態様変換ユニットによる紙幣の搬送態様変換過程を示し、(A)は搬送流による紙幣搬送の説明図、(B)は搬送流から搬送ベルトによる紙幣搬送へ引き継がれる過程の説明図、(C)は搬送ベルトによる紙幣搬送へ移行した状態の説明図である。
図5】(A)は搬送態様変換ユニットの搬送力低減手段が機能していない状態の説明図である。(B)は搬送態様変換ユニットの搬送力低減手段が中程度に機能している状態の説明図である。(C)は搬送態様変換ユニットの搬送力低減手段が最大に機能している状態の説明図である。
図6】(A)は搬送態様変換ユニットの搬送力低減手段が機能していない場合における吸引流の説明図である。(B)は搬送態様変換ユニットの搬送力低減手段が中程度に機能している場合における吸引流の説明図である。(C)は搬送態様変換ユニットの搬送力低減手段が最大に機能している場合における吸引流の説明図である。
図7】緊急収納庫を搬送態様変換ユニットに接続した状態の概略側面図である。
図8】(A1)は搬送路切換体が回収状態にある搬送態様変換ユニットの正面図である。(A2)は図8(A1)の概略側面図である。(B1)は搬送路切換体が分別状態にある搬送態様変換ユニットの正面図である。(B2)は図8(B1)の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係る紙葉類搬送システムの実施形態につき説明する。なお、搬送対象である紙葉類とは、紙幣や書面といった保形性のある紙類(ティッシュペーパーのように、搬送流に対して保形性を有しないものを除く)、樹脂製のフィルム(プラスティック紙幣を含む)や薄いカード類などが適用できる。本実施形態の紙葉類搬送システムにおいては、紙製の紙幣(一対の長辺と一対の短辺からなる矩形状の紙幣)を搬送対象とした紙幣搬送システムとして説明する。また、搬送用流体としては、気体に限らず液体を用いることも可能であるが、本実施形態の紙幣搬送システムにおいては、空気(エア)を搬送用流体として用いる。
【0020】
図1(A)に示す紙幣搬送システム1は、例えば遊技店に設置され、遊技媒体貸出装置やカード販売装置等へ投入された紙幣PMを回収して一箇所へ集めるような使い方が可能である。種々の搬送管2(例えば、直線搬送管2aや湾曲搬送管2b等)を繋いで最上流から最下流まで連続した搬送路21を形成する。
【0021】
遊技店において多数の遊技機が列設された島設備に紙幣搬送システム1を適用する場合、島設備の一端に設けられた島金庫3に搬送流発生装置31と紙幣回収装置32を設ければ、搬送流発生装置31が搬送路21の最上流に、紙幣回収装置32が搬送路21の最下流になる。そして、搬送管2の途中に適宜接続された紙葉類送り込み装置としての紙幣送り込み装置41から搬送路21へ送り込まれた紙幣PMが搬送対象となり、下流に向けて搬送されて行くのである。すなわち、搬送流発生装置31により発生させた搬送流TFを下流へ導く搬送路21が形成された搬送管2にて、紙葉類としての紙幣PMを上流から下流へ搬送し、最下流に設けられた紙葉類回収装置としての紙幣回収装置32にて紙幣PMを回収する紙幣搬送システム1となる。
【0022】
なお、搬送流発生装置31は、搬送管2の最上流部から搬送用エアを吐出して搬送流TFを生じさせると共に、紙幣回収装置32に到達した搬送用エアの吸引を行うことにより、搬送管2と島金庫3の内部で搬送用エアを循環させている。また、紙幣送り込み装置41の手前側には紙幣識別機42が設けられ、遊技媒体貸出装置やカード販売装置等へ投入された紙幣PMの真贋判定を紙幣識別機42にて行う。紙幣識別機42にて適正と判定された紙幣PMだけが紙幣送り込み装置41へ導入され、紙幣送り込み装置41から搬送管2に送り込まれ、搬送流TFによって搬送路21の最下流まで搬送され、紙幣回収装置32にて回収される。さらに、紙幣回収装置32の適宜上流となる搬送管2の適所には、搬送路21内を搬送されている紙幣PMの搬送速度を知るためのセンサ33を設けてあり、センサ33の検出情報は紙幣回収装置32に入力される。
【0023】
上述した紙幣回収装置32は、搬送されてきた紙幣PMを回収するための機能として、搬送態様変換部32a、姿勢変換部32b、紙幣収納部32cおよび制御部32dを備えている。搬送態様変換手段としての搬送態様変換部32aは、紙幣PMの搬送態様を搬送流TFによる非接触搬送態様から搬送ベルトや搬送ローラ等の搬送力伝達体(後に詳述)による接触搬送態様に変換するものである。本実施形態においては、諸々の機能を集約的に設けた搬送態様変換ユニット5および緊急収納庫6によって構成する。搬送態様変換部32aによって搬送流TFから分離されて接触変換態様にて送り出された紙幣PMは、姿勢変換部32bによって姿勢変換され、紙幣収納部32cの紙幣ストッカSTに順次ストックされて行く。なお、島設備の端部に設置される島金庫3にはあまり十分スペースを割くことができないので、紙幣収納部32cをスリム化しつつ適切なストック量を確保するため、紙幣ストッカSTの収納方向に適した向きとなるように、紙幣PMの向きを姿勢変換部32bにより変換するものとした。無論、搬送態様変換部32aから供給された紙幣PMの向きのまま、紙幣収納部32cで紙幣PMを収納できるなら、敢えて姿勢変換部32bを設ける必要はない。
【0024】
次に、搬送態様変換部32aとしての主たる機能を備えた搬送態様変換ユニット5について説明する。搬送態様変換ユニット5の外観は、図2等に示す形状で、その内部には、搬送管2と接続されて搬送流TFが導入される搬送流導入部5aと、この搬送流導入部5aに連なる終端流路5bと、終端流路5bに至った搬送用エアを吸引して搬送流発生装置31へ導くための主吸引部5cとが形成される(図2(C)を参照)。
【0025】
搬送管2内を搬送されてくる紙幣PMは、図2(A)に示すように、搬送方向と平行な長辺である第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bと搬送方向に直交する短辺である第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bと、2つの紙面を第1,第2面PM3a,PM3bとする。搬送流導入部5aは、紙幣PMの第1面PM3aに臨む第1前壁部511と、紙幣PMの第2面PM3bに臨む第2前壁部512と、紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aに臨む第3前壁部513と、紙幣PMの第2搬送平行辺PM1bに臨む第4前壁部514とで囲まれた空間である。
【0026】
第1前壁部511の内面511aはほぼフラットである。第2前壁部512は分別口としての緊急搬送口52を開設した枠状の構造で、後述するように、通常は緊急搬送口52を搬送路切換部材としての搬送路切換板53にて閉止した状態である。また、第2前壁部512の内面側には、例えば4列の上流側リブ512aと、下流側リブ512bとを設けてあり、搬送路切換板53の内面531に設けた4列のリブ531aとあわせて、搬送方向に略一直線となる。日本の紙幣PMを搬送対象とする場合、各リブの突出量は1~3〔mm〕程度で十分である。第3前壁部513と第4前壁部514には、それぞれ窓枠状に開口する開口部513a,514aが柱部513b,514bの間に形成され、遮蔽部材としての開閉シャッタ54によって開口部513a,514aの開口面積を変えることができる。
【0027】
終端流路5bは、搬送流導入部5aの下流と連通し、吸引口551aが開設された仕切板551(例えば、図3を参照)へ至る空間である。この終端流路5bを経て吸引口551aから吸引された搬送用エアは、仕切板551と吸引ガイド板56との間に形成された主吸引部5cを経て、搬送流発生装置31へと導かれて行く気流となる(図4(A)を参照)。このとき、吸引口551aは、搬送流導入部5aにおける搬送中心よりも一方向(図2図4においては下方)にずれているため、終端流路5b内での気流は、ずれ方向(下方)に曲がって吸引口551aへ至り、更に主吸引部5cで吸引方向へ導かれて行く流れとなる。
【0028】
この終端流路5bを途中で遮るように(搬送方向に対して斜めに交差するように)、搬送力伝達体としての搬送ベルト552を複数(例えば3列)設ける。このように搬送ベルト552を設けておけば、搬送流導入部5aから終端流路5bに導入された紙幣PMは、吸引口551aに向かう気流によって搬送ベルト552に押しつけられる(図4(B)を参照)。このとき、吸引口551aが搬送流導入部5aにおける搬送中心よりも一方向(図2においては下方)にずれているために、搬送流導入部5aから終端流路5bへ至った紙幣PMは、搬送流導入部5aにおける第2前壁部512に張り付くような力を受け、壁面と擦れるブレーキ現象が生ずる要因となる。しかしながら、第2前壁部512に設けた上流側リブ512aおよび下流側リブ512bに加えて、緊急搬送口52を閉塞した状態の搬送路切換板53に設けたリブ531aにより、紙幣PMが第2前壁部512に張り付くことを効果的に防げる。
【0029】
搬送ベルト552は、例えば、駆動ローラ553と従動ローラ554に巻回され、駆動源(図示省略)の駆動力を受けて駆動ローラ553が回転すると、紙幣PMが当着する側の面を搬送流導入部5aから遠ざかる向きに移動する。また、搬送ベルト552を挟んで駆動ローラ553と対峙するように設けた対向ローラ555は、その周面が搬送ベルト552に接触しており、駆動ローラ553の回転に伴う搬送ベルト552の移動に追随して回転する。また、略平行に設けた3つの搬送ベルト552は、その間に適宜な空隙が確保できるように配置しておき、吸引口551aに向かう気流を搬送ベルト552が完全に遮断することがないようにする。また、第2前壁部512の下流側リブ512bは、搬送ベルト552の間に生じる空隙に至るまで延在させてオーバーラップ領域が形成されるようにしたので、紙幣PMの第2面PM3bが下流側リブ512bに押し当たったままでも、滑らかに搬送ベルト552へ誘導することが可能となる。
【0030】
なお、外側に配置した2つの搬送ベルト552,552の更に外側には、それぞれ第1ガイドプレート556aおよび第2ガイドプレート556bを近接配置してある。これら第1,第2ガイドプレート556a,556bを設けておくことで、搬送ベルト552に当着した紙幣PMが吸引口551aに向かう気流に引かれて脱落し、吸引口551aから主吸引部5cへ引き込まれるような事態を防止できる。
【0031】
搬送流導入部5aから終端流路5bへ到達して、搬送ベルト552に当着した紙幣PMは、第2面PM3bが搬送ベルト552に押し当たる適宜な力を受け続けるので、第1面PM3a側から搬送ベルト552に押し当てる力を作用させなくても、紙幣PMは搬送ベルト552に追随して移動して行く。そして、駆動ローラ553の回転に伴い、搬送ベルト552に当着した紙幣PMが対向ローラ555まで到達すると、そのまま紙幣PMは搬送ベルト552と対向ローラ555に挟まれて姿勢変換部32b(あるいは紙幣収納部32c)へ繰り出されて行く(図4(C)を参照)。
【0032】
このように、搬送態様変換ユニット5は、紙幣PMの搬送態様を搬送流TFによる非接触搬送態様から搬送ベルト552による接触搬送態様に変換する搬送態様変換手段としての機能を備える。なお、上述した構造の搬送態様変換手段においては、搬送流TFが比較的弱い場合は問題ないが、搬送路21の全長や構成などにより搬送流TFを強くする場合、主吸引部5cから吸引する吸引力も強くなってしまい、終端流路5bにおける気流も相当に強いものとなる。このような事情によって搬送流TFを強くしたため、終端流路5bにおける気流が強過ぎる状態になると、紙幣PMが搬送ベルト552へ当接する際の衝撃により、折れ、変形あるいは絡み等のダメージを与えてしまい、不具合を起こす可能性が生じる。紙幣PMにダメージを与えないように搬送ベルト552へ引き継ぐためには、搬送流TFを適宜な風圧まで下げることも考えられる。しかし、搬送路21内に複数枚の紙幣PMを搬送している場合には、搬送流TFの風圧を下げることで紙幣回収装置32に到達していない紙幣PMの搬送を不安定にしてしまい、紙幣詰まりを引き起こす懸念もある。
【0033】
そこで、本実施形態に係る紙幣搬送システム1では、紙幣回収装置32において、紙幣PMにダメージを与えることなく、非接触搬送態様から接触搬送態様への引き継ぎをスムーズに行うことができるようにした。しかも、本実施形態に係る紙幣搬送システム1では、搬送路21内に複数枚の紙幣PMが搬送されていても対応できるようにした。これを可能にするため、搬送態様変換ユニット5には、搬送力低減手段としての機能を設けてある。以下、図5及び図6に基づいて、搬送力低減手段について説明する。
【0034】
搬送力低減手段とは、搬送流導入部5aに導入された搬送流TFの一部を終端流路5bへ至る前に吸引することで、搬送流導入部5aから終端流路5bへ至る搬送流TFを減らし、終端流路5bにおける搬送流TFの搬送力を低減させるものである。本実施形態では、窓枠状に開口する開口部513a,514aが柱部513b,514bの間に形成され第3,第4前壁部513,514と開閉シャッタ54によって搬送力低減手段を構成した。すなわち、開閉シャッタ54が第3,第4前壁部513,514に沿ってスライド移動すると、開口部513a,514aの開口面積を変えることができ、柱部513b,514bおよび開閉シャッタ54によって遮られていない開口面積が減速吸引口として機能するのである。
【0035】
なお、柱部513b、514bを設けずに、横長開口部を減速吸引口としてもよいが、搬送方向に広すぎる開口にすると、紙幣PMの角部分が開口端に突き当たってしまう不具合が懸念される。よって、開口部513a,514aが広くなり過ぎない間隔で柱部513b,514bを設けることが望ましいが、開口部513a,514aが狭くなり過ぎると、柱部513b,514bが増えて開口面積が減り、十分な吸引力を得られない可能性がある。そこで、日本の紙幣PMを搬送対象とする場合、開口部513a,514aの搬送方向開口幅は10〔mm〕~15〔mm〕程度、柱部513b,514bの搬送方向幅は2〔mm〕程度であることが望ましい。更に、柱部513b,514bの上流側角部には、面取り処理を施しておくことで、搬送中の紙幣PMの角部分が柱部513b,514bと多少擦れても、大きな障害とならないようにしてある。
【0036】
第3,第4前壁部513,514は、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bに臨んでいるので、搬送流TFの一部を減速吸引口から吸引しても、その気流は紙幣PMの第1,第2面PM3a,PM3bに強く作用することはない。すなわち、搬送流TFの一部を第3,第4前壁部513,514の開口部513a,514aから吸引しても、紙幣PMが第3前壁部513あるいは第4前壁部514に引き寄せられることはないので、紙幣PMを終端流路5bへ誘導する障害とはならないのである。また、第3前壁部513と第4前壁部514の両方に搬送力低減手段の構造を対称に設け、両側から均等な吸引力が作用するようにしておけば、紙幣PMの変形等に起因して第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1b側に風力を受けてしまう場合でも、搬送方向の偏りを低減できるという利点がある。
【0037】
第3,第4前壁部513,514の開口部513a,514aを開閉シャッタ54が全て塞いでいるとき(図5(A)および図6(A)を参照)、搬送管2からの搬送流TFは、殆どが吸引口551aから主吸引部5cへ引き込まれ、主吸引流SF-Mとして搬送流発生装置31へ導かれる。搬送流TFの搬送力による紙幣PMの搬送速度が、搬送ベルト552への当着により紙幣PMにダメージを与えない程度であれば、減速吸引動作を行わず、全閉状態のままで構わない。
【0038】
なお、搬送流TFに対する搬送力の低減動作が必要か否かの判断は、センサ33からの情報に基づいて、低減制御手段としての制御部32dが行う。センサ33の種別は特に限定されないが、たとえば、対物検知式のセンサ33を用いる場合、紙幣PMを検知して(OFF→ON)から紙幣PMを検知しなくなる(ON→OFF)までの時間(ON時間)が制御部32dに供給される。よって、制御部32dは、「ON時間」と「紙幣PMの長さ」とから紙幣PMの搬送速度を求めることができるので、求めた搬送速度と判定基準速度とを比較して、適切な低減動作を決定すればよい。たとえば、紙幣PMが搬送ベルト552に当着したときにダメージを受ける可能性が懸念される判定基準速度を第1判定基準速度とした場合、求めた搬送速度が第1判定基準速度未満であれば、制御部32dは開閉シャッタ54を動作させず、全閉状態を保持させればよい。
【0039】
なお、制御部32dが開閉シャッタ54を動作させるとき、駆動源(図示省略)に対して正転・逆転の指示を行い、この駆動源からの駆動力を受けて正転・逆転が可能なピニオン515が動作する。開閉シャッタ54の適所(図5においては上部)にはスライド方向にラック部541を設けてあり、このラック部541をピニオン515と歯合させておくことで、ピニオン515の正転・逆転に応じて開閉シャッタ54をスライド方向に移動させることが可能となる。制御部32dに対して、駆動源の動作方向や動作時間と開閉シャッタ54の移動方向や移動量を関連づけた情報を持たせておけば、制御部32dによって開閉シャッタ54の移動制御を適切に行わせることができる。また、遮蔽部材としての開閉シャッタ54を任意位置に移動させる遮蔽部材駆動機構はラック部541とピニオン515で構成するものに限定されず、公知既存の適宜な手法を用いて構わない。
【0040】
センサ33からの情報に基づいて、紙幣PMの搬送速度が第1判定基準速度以上、第2判定基準速度未満であると制御部32dが判断した場合、制御部32dは開閉シャッタ54を動作させて、図5(B)に示すように、減速吸引口を半分程度開口させる(例えば、3つ程度の開口部513a,514aを開く)。制御部32dによって開閉シャッタ54を動作させ、減速吸引口を半分程度開口させた半開状態にすると、搬送流TFの一部は開口部513a,514aから搬送流導入部5aの外へ抜けて行く(図6(B)を参照)。これにより、搬送流導入部5aから終端流路5bを経て吸引口551aより吸引される気流が減衰し、紙幣PMに対する搬送力が低減されるので、紙幣PMが搬送ベルト552に当着する際の衝撃は軽減され、紙幣PMにダメージを与えることを防止できる。
【0041】
第3,第4前壁部513,514の開口部513a,514aから吸引された搬送用エアは、第1副吸引部5d1および第2副吸引部5d2より副吸引流SF-Sとして誘導され、主吸引部5cから誘導された主吸引流SF-Mと合流させ、搬送流発生装置31へ導く。すなわち、搬送力低減手段の機能によって搬送流TFの一部を搬送流導入部5aの開口部513a,514aから吸引することで生ずる副吸引流SF-Sも、主吸引流SF-Mと合流させる構造とすることで、搬送流TFの循環サイクルを保持させるのである。
【0042】
センサ33からの情報に基づいて、紙幣PMの搬送速度が第2判定基準速度以上であると制御部32dが判断した場合、制御部32dは開閉シャッタ54を動作させて、図5(C)に示すように、減速吸引口を全て開口させる(全ての開口部513a,514aを開く)。制御部32dによって開閉シャッタ54を動作させ、減速吸引口を全て開口させた全開状態にすると、半開状態のときよりも多くの搬送流TFが開口部513a,514aから搬送流導入部5aの外へ抜けて行く(図6(C)を参照)。これにより、搬送流導入部5aから終端流路5bを経て吸引口551aより吸引される気流が更に減衰されるので、紙幣PMが搬送ベルト552に当着する際の衝撃は十分に軽減され、紙幣PMにダメージを与えることを防止できる。
【0043】
第3,第4前壁部513,514の開口部513a,514aから第1,第2副吸引部5d1,5d2へ誘導される副吸引流SF-Sは、半開状態における副吸引流SF-Sよりも多くなるが、その分だけ主吸引流SF-Mが減少しているので、搬送流発生装置31へ導かれる吸引流はほぼ一定となり、搬送流TFの循環サイクルは保持される。
【0044】
本実施形態の紙幣搬送システム1においては、搬送態様変換ユニット5に設けた減速制御手段の機能により、紙幣PMにダメージを与えることなく、非接触搬送態様から接触搬送態様への引き継ぎをスムーズに行うことができる。しかも、減速制御手段による搬送力の低減は、搬送流導入部5aから終端流路5bにかけて行われるもので、その上流側流路における搬送流TFの搬送力に影響を与えるものではないから、搬送路21内に複数の紙幣PMが搬送されていても対応できるという利点もある。
【0045】
なお、本実施形態では、搬送管2内で搬送されている紙幣PMの搬送速度に基づいて遮蔽部材駆動機構を作動させ、減速吸引口の遮蔽度合を調整することにより、搬送力を必要十分な程度まで低減させる制御を行う減速制御手段の機能を、紙幣回収装置32の制御部32dに持たせるものとしたが、これに限定されるものではなく、搬送流発生装置31或いはその他の外部装置に減速制御手段の機能を持たせてもよい。また、本実施形態では、紙幣PMの搬送速度を2つの判定基準で切り分け、全閉・半開・全開の3状態に対応させる制御を行ったが、この制御に限定されない。たとえば、減速制御の要否の2択で全開状態と全閉状態とを切り替える単純な制御でもよいし、3つ以上の判定基準を用いることで、より細かく減速吸引口の遮蔽度合を調整し、搬送力の低減度合を細かく調整できるようにしてもよい。
【0046】
搬送管2によって形成される搬送路21は、紙幣PMを搬送することを目的としているが、たとえば、紙幣PMが搬送管2内で詰まった場合に、詰まった紙幣PM(以下、詰まり紙幣という)を管壁から引き剥がして回収するための立体物を管内へ投入するケースもある。このような投入物がそのまま紙幣回収装置32まで流れてくると、搬送態様変換ユニット5に入ってしまい、搬送ベルト552や対向ローラ555を破損してしまう不具合を招きかねない。そこで、本実施形態では、回収対象である紙幣PMに該当しないものを分別物として回収できる構造を紙幣回収装置32に設けた。
【0047】
図7に示すように、搬送態様変換ユニット5の搬送流導入部5aにおける第2前壁部512に開設した緊急搬送口52と、分別物を収納可能な分別物収納体としての緊急収納庫6の分別導入口6aとを連通させて、分別物としての緊急ユニット7を搬送流導入部5aから緊急収納庫6へ分別するものである。前述したように、第2前壁部512の緊急搬送口52は搬送路切換部材としての搬送路切換板53にて閉止しているので、緊急搬送口52を塞いで搬送流導入部5aから終端流路5bへ搬送流TFが通過できる紙葉類回収状態としての紙幣回収状態を保持する(図8(A1),(A2)を参照)。一方、緊急モード(後に詳述)に設定され、緊急ユニット7等の分別物や詰まり紙幣を回収しなければならないとき、搬送路切換板53は、緊急搬送口52を開くと共に搬送流導入部5aから終端流路5bへ至る流路を塞ぐ分別状態に変換する(図7および図8(B1),(B2)を参照)。
【0048】
なお、分別口としての緊急搬送口52は、分別物である緊急ユニット7を通過させるのに十分な大きさの開口形状(例えば、搬送管2の断面形状)に設定しておく必要がある。また、この緊急搬送口52を遮蔽可能な搬送路切換板53の形状は、緊急搬送口52の開口形状に対応させておき、搬送路切換板53が遮蔽状態であるあるときに緊急搬送口52との隙間から緊急収納庫6へ抜けて行く気流を無視できる程度に抑えておくことが望ましい。
【0049】
紙幣回収状態と分別状態とに変換する搬送路切換板53は、搬送流導入部5a内に向かう内面531には4列のリブ531aが設けられているが、緊急収納庫6に向かう外面532は滑らかな湾曲面である。したがって、搬送路切換板53が搬送流導入部5aから終端流路5bへ至る流路を塞ぐ分別状態に変換したときには、搬送路切換板53の外面532が搬送流導入部5aの第1前壁部511から緊急収納庫6へ滑らかに導く誘導面として機能する。また、第1前壁部511の内面511a側適所には先端受け凹部511bが形成されており、搬送路切換板53における反軸着側である先端部533が先端受け凹部511b内に嵌入することで、分別状態に変換された搬送路切換板53の外面532と第1前壁部511の内面511aとに段差が生じないようにした。このようにすれば、緊急ユニット7等の分別物が搬送路切換板53の先端部533に当たって詰まるような事態を効果的に防げる。また、搬送路切換板53の軸着部534は、内面531と外面532の間に設ける構造とした。仮に、搬送路切換板53の内面531側、或いは外面532側に蝶番構造を設けると、紙幣PMあるいは緊急ユニット7等が引っ掛かり易い突出部が生じてしまうからである。
【0050】
上述したように、搬送路切換板53が分別状態に変換されたとき、搬送流導入部5aから緊急ユニット7等が分別されてくる緊急収納庫6は、収納本体61の一側に蓋体62を開閉可能に設けてある。よって、緊急収納庫6に分別された緊急ユニット7や回収された詰まり紙幣等は、蓋体62を開いて(図7において、破線で示す)、取り出せばよい。また、収納本体61の適所には、緊急吸引口61aが設けられており、緊急吸引部6bより緊急吸引流SF-Eとして搬送流発生装置31へ導かれる。すなわち、搬送流導入部5aから終端流路5bへの流路が遮断された場合でも、搬送流発生装置31へ導かれる吸引流はほぼ一定となり、搬送流TFの循環サイクルは保持される。
【0051】
なお、搬送路切換板53を紙幣回収状態から分別状態へ、或いは分別状態から紙幣回収状態へ変換する制御は、図示を省略したアクチュエータを、分別制御手段としての制御部32dが制御することで行う。制御部32dが分別制御を行う状態変換条件は任意に設定して構わないが、紙幣PMではない分別物が搬送路21内を流れる状態になるタイミング、および分別物が流れてこなくなった(分別物を回収した)タイミングを使うことが望ましい。例えば、センサ情報や風圧異常などで紙幣PMが搬送路21内に詰まっていると想定される緊急時には、島金庫3の搬送流発生装置31や紙幣回収装置32に対して緊急モードを設定する。この緊急モードは人為的に設定してもよいし、搬送流発生装置31に設けられた緊急ユニット挿入口から緊急ユニット7が投入されたことを緊急ユニット投入検出センサが検出することで、搬送流発生装置31および紙幣回収装置32が自動的に緊急モードへ移行するようにしてもよい。
【0052】
緊急モードが設定されると、例えば、搬送流発生装置31は風量を増強し、紙幣回収装置32の制御部32dは、全ての紙幣送り込み装置41へ紙幣PMの送り込みを禁止させる。これと併せて、分別制御手段としての制御部32dが搬送路切換板53を紙幣回収状態から分別状態へ変換させれば、その後に搬送路21を流れてくる緊急ユニット7や詰まり紙幣を緊急収納庫6へ分別できる。
【0053】
緊急ユニット7や詰まり紙幣を分別した後には、手動で緊急モードを解除してもよいし、自動で解除されるようにしてもよい。例えば、緊急収納庫6の蓋体62の開閉動作を検出する開閉センサを設けておき、緊急モード時に蓋体62が開閉されたことを検出すると、緊急モードを解除するようにする。緊急モードが設定された後に、緊急収納庫6の蓋体62が開閉されたということは、搬送路21内を流れて紙幣回収装置32まで到達した緊急ユニット7や詰まり紙幣を無事に回収できたと想定されるので、緊急モードを解除する条件として妥当である。
【0054】
以上、本発明に係る紙葉類搬送システムを実施形態に基づき説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての紙葉類搬送システムを権利範囲として包摂するものである。
【符号の説明】
【0055】
1 紙幣搬送システム
2 搬送管
21 搬送路
31 搬送流発生装置
32 紙幣回収装置
5 搬送態様変換ユニット
5a 搬送流導入部
5b 終端流路
513 第3前壁部
513a 開口部
514 第4前壁部
514a 開口部
54 開閉シャッタ
551a 吸引口
552 搬送ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8