(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080846
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 29/00 20060101AFI20220523BHJP
B41J 11/04 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
B41J29/00 C
B41J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167817
(22)【出願日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020191920
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 聡
(72)【発明者】
【氏名】星 和行
【テーマコード(参考)】
2C058
2C061
【Fターム(参考)】
2C058AB10
2C058AC06
2C058AE10
2C058AF31
2C058DA10
2C058DA20
2C061AQ04
2C061BB08
2C061BB35
2C061CD07
2C061CD11
2C061CD13
2C061CG12
(57)【要約】
【課題】本体側に設けられた第1コネクタと開閉可能なプリンタカバーに設けられた第2コネクタの接続状態が良好なプリンタを提供する。
【解決手段】本発明のある態様は、本体ケースと、回転軸を支点に本体ケースに対して開閉可能に設けられたプリンタカバーと、プリンタカバーに対して回転可能に装着されたプラテンローラと、印字ヘッドと、本体ケースの第1の位置に設けられた第1のコネクタと、プリンタカバーが閉鎖状態のときに第1のコネクタに接続されるように前記プリンタカバーに設けられた第2のコネクタと、本体ケースに設けられ、プリンタカバーが閉鎖状態のときにプラテンローラの第1の部分を、本体ケースの第2の位置において回転可能に保持するプラテン保持部と、を備えるプリンタである。ここで、第1の位置は、第2の位置の近くに設けられている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
回転軸を支点に前記本体ケースに対して開閉可能に設けられたプリンタカバーと、
前記プリンタカバーに対して回転可能に装着されたプラテンローラと、
前記プリンタカバーが閉鎖状態のときに前記プラテンローラと共に印字媒体を挟持し、前記印字媒体に印字する印字ヘッドと、
前記本体ケースの第1の位置に設けられた第1のコネクタと、
前記プリンタカバーが閉鎖状態のときに前記第1のコネクタに接続されるように前記プリンタカバーに設けられた第2のコネクタと、
前記本体ケースに設けられ、前記プリンタカバーが閉鎖状態のときに前記プラテンローラの第1の部分を、前記本体ケースの第2の位置において回転可能に保持するプラテン保持部と、
を備え、
前記第1の位置は、前記第2の位置の近くに設けられる、
プリンタ。
【請求項2】
プリンタ底面と直交する方向から見て前記プリンタカバーが閉鎖状態のときの前記プラテンローラを前側とし、前記回転軸を後側として前記プリンタの前後方向を定義した場合に、前記第1の位置は、前記プリンタカバーが閉鎖状態のときに、前後方向を基準にして前記回転軸と前記第2の位置の間に位置する、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記本体ケースには、前記回転軸が挿通される長穴であって、前記プリンタの前後方向に前記回転軸をスライド可能とする長穴が形成され、
前記本体ケースは、前記プリンタの前後方向において前記プラテンローラの第2の部分を支持し、互いに対向する一対の面を有し、
前記第1のコネクタと前記第2のコネクタは、前記一対の面に沿った方向で接続される、
請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記第1のコネクタは、前記第2のコネクタと接続されるときに前記プリンタ底面に平行となる第1の当接面を有し、
前記第2のコネクタは、前記第1のコネクタと接続されるときに前記プリンタ底面に平行となる第2の当接面を有し、
前記プリンタカバーが前記閉鎖状態のときに、前記第2のコネクタの前記第2の当接面は、前記第1の当接面上を前記プリンタの前後方向にスライド可能である、
請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記第1の当接面には、溝又は突条が設けられ、
前記第2の当接面には、突条又は溝が設けられ、
前記プリンタカバーが閉鎖状態のときに、前記第1の当接面に設けられた前記溝又は前記突条と、前記第2の当接面に設けられた前記突条又は前記溝とが係合する、
請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記印字ヘッドを前記プラテンローラに向けて付勢する付勢部材を備え、当該付勢部材の付勢方向は前記プリンタの前後方向である、
請求項3から5の何れか1項に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記プリンタカバーが前記閉鎖状態のとき、前記第1の位置は、プリンタ底面に垂直な方向を高さ方向とした場合、前記プラテンローラよりも低い位置にある、
請求項1から6のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項8】
前記プリンタカバーが前記閉鎖状態のとき、前記第1の位置は、プリンタ底面に垂直な方向を高さ方向とした場合、前記プリンタカバーの下端よりも高い位置にある、
請求項1から7のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記プリンタの幅方向において、前記プリンタの中心位置から前記第1の位置までの距離が、前記プリンタの前記中心位置から前記プラテン保持部までの距離よりも長い、
請求項1から8のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記第1のコネクタは、前記プリンタの電源に接続された回路に接続され、
前記第2のコネクタは、前記第1のコネクタと接続されたときに前記回路に接続される、
請求項1から9の何れか1項に記載のプリンタ。
【請求項11】
前記第1のコネクタは、雌端子を有し、
前記第2のコネクタは、雄端子を有する、
請求項1から10の何れか1項に記載のプリンタ。
【請求項12】
前記第1のコネクタの雌端子は、前記本体ケースに設けられた凹部に配置され、
前記第2のコネクタの雄端子と接触する前記第1のコネクタの雌端子の先端は、前記凹部内に位置する、
請求項11に記載のプリンタ。
【請求項13】
前記第2のコネクタの雄端子は、前記第1のコネクタの雌端子と向かって付勢された状態で接続される、
請求項11又は12に記載のプリンタ。
【請求項14】
前記プリンタカバーに配置され、前記印字媒体を検出するセンサを備え、
前記センサと前記第2のコネクタとが接続されている、
請求項1から13の何れか1項に記載のプリンタ。
【請求項15】
前記プリンタカバーは、内側プリンタカバー及び外側プリンタカバーを備え、
前記第2のコネクタは、前記内側プリンタカバーに設けられている、
請求項1から14の何れか1項に記載のプリンタ。
【請求項16】
前記内側プリンタカバーの前記外側プリンタカバー側の面に前記第2のコネクタに接続された回路を含む基板が備わる、
請求項15に記載のプリンタ。
【請求項17】
前記第1のコネクタと前記第2のコネクタの双方の近傍に磁石が配置され、又は、一方のコネクタの近傍に磁石が配置され、他方のコネクタの近傍に強磁性体が配置される、
請求項1から16の何れか1項に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字媒体に情報を印字するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印字媒体をサーマルヘッドおよびプラテンローラで圧接挟持し、サーマルヘッド上の発熱素子を選択的に発熱させて、印字媒体に熱転写により印字を施すサーマル式プリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)が知られている。
【0003】
一部のプリンタでは、本体ケースにおけるプリンタユニットの近傍に取り付けられて記録用紙を収納する用紙ホルダに、ホルダカバーが開閉可能に取り付けられる(例えば、特許文献1)。そして、プリンタユニットに設けられているロック部材をホルダカバーに設けられている係合突起に係止させることによりホルダカバーはプリンタユニットを閉鎖した状態で固定される。また、このとき、プラテンローラの回転軸は、ガイド部によりガイドされる状態が維持され、本体ケース側の接続端子部とホルダカバー側の接点電極38により構成されるコネクタは結合状態を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のプリンタでは、ロック部材が係合突起に係止される位置のホルダカバーの回転軸からの距離が、ホルダカバーの回転軸からホルダカバーの先端までの距離の半分程度であり、他方で、コネクタの位置のホルダカバーの回転軸からの距離は、ホルダカバーの回転軸からホルダカバーの先端までの距離とほぼ等しい。従って、ロック部材が係合突起に係止される位置からコネクタまでの距離が、ホルダカバーの回転軸からホルダカバーの先端までの距離の半分程度になる。また、コネクタの位置が、ロック部材が係合突起に係止される位置に対して、ホルダカバーの回転軸から2倍程度離れていることになる。
従って、ロック部材が係合突起に係止されていても、コネクタの結合状態が不安定になる可能性がある。
【0006】
また、ロック部が係合突起に係止されている状態における係合突起のホルダカバーの回転方向の位置に誤差がある場合、接点電極のホルダカバーの回転方向の位置にその2倍程度の誤差が生じてしまうことになり、コネクタの結合状態が不十分となる可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、本体側に設けられた第1のコネクタと開閉可能なプリンタカバーに設けられた第2コネクタの接続状態が良好なプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、
本体ケースと、
回転軸を支点に前記本体ケースに対して開閉可能に設けられたプリンタカバーと、
前記プリンタカバーに対して回転可能に装着されたプラテンローラと、
前記プリンタカバーが閉鎖状態のときに前記プラテンローラと共に印字媒体を挟持し、前記印字媒体に印字する印字ヘッドと、
前記本体ケースの第1の位置に設けられた第1のコネクタと、
前記プリンタカバーが閉鎖状態のときに前記第1のコネクタに接続されるように前記プリンタカバーに設けられた第2のコネクタと、
前記本体ケースに設けられ、前記プリンタカバーが閉鎖状態のときに前記プラテンローラの所定部分を前記本体の第2の位置において回転可能に保持するプラテン保持部と、
を備え、
前記第1の位置は、前記第2の位置の近くに設けられる、
プリンタが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によれば、本体側に設けられた第1のコネクタと開閉可能なプリンタカバーに設けられた第2コネクタの接続状態が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、一実施形態によるプリンタカバーが閉じた状態におけるプリンタの前面と左側面と上面を示す斜視図であり、
図1Bは、一実施形態によるプリンタカバーが閉じた状態におけるプリンタの前面と左側面と上面を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態によるプリンタカバーが開いた状態におけるプリンタの左側面と上面を示す斜視図である。
【
図3】一実施形態によるプリンタの側方断面図である。
【
図6】一実施形態によるプリンタの本体側コネクタの構成を示す平面図、A-A断面図およびB-B断面図である。
【
図7】一実施形態によるプリンタの内側プリンタカバーおよび外側プリンタカバーを示す斜視図である。
【
図8】一実施形態によるプリンタにおいて、プラテン軸を受ける軸受けが内側プリンタカバーおよび外側プリンタカバーにより挟まれた状態を示す断面図である。
【
図9】一実施形態によるプリンタの本体側コネクタ、プラテン軸支持部およびプラテン保持ブラケットならびにそれらの周辺部を示す斜視図である。
【
図10】一実施形態によるプリンタのプラテン保持ブラケットおよびその周辺部を示す斜視図である。
【
図11】一実施形態によるプリンタのプラテン保持ブラケットのアーム部およびその周辺を示す側面図である。
【
図12】一実施形態によるプリンタのプリンタカバー、プラテン軸、アーム部、プラテン軸支持部などを示す側面図である。
【
図13】一実施形態によるプリンタの内側プリンタカバーおよび外側プリンタカバーの内面ならびにカバー側コネクタおよびプラテン軸を示す斜視図である。
【
図14】一実施形態によるプリンタの本体の後端部、プリンタカバーおよびヒンジを示す斜視図である。
【
図15】一実施形態によるプリンタのプラテン軸支持部およびプラテン軸の円運動の軌跡を示す図である。
【
図16】一実施形態によるプリンタのカバー側コネクタの構成を示す平面図、A-A断面図およびB-B断面図である。
【
図17】
図17Aは、一実施形態によるプリンタのカバー側コネクタを示す側面図であり、
図17Bは、カバー側コネクタ雄端子の軸方向に変位に関する状態を示す側面図である。
【
図18】一実施形態によるプリンタの本体カバー間コネクタおよびこれに接続された回路を示す回路図である。
【
図19】一実施形態によるプリンタのプリンタカバーに外部から衝撃が与えられたときにプリンタカバーが変形する様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係るプリンタの一実施形態について説明する。
【0012】
(1)プリンタの全体構成
以下、実施形態に係るプリンタ1について、
図1A、
図1Bおよび
図2を参照して説明する。
【0013】
図1Aは、実施形態に係るプリンタ1のプリンタカバー3が閉じた状態の正面、平面および左側面を表す斜視図である。
図1Bは、実施形態に係るプリンタ1のプリンタカバー3が開いた状態の正面、平面および左側面を表す斜視図である。
図2は、実施形態に係るプリンタ1の上面および左側面を表す斜視図である。
【0014】
図1A、
図1Bおよび
図2に示すように、本実施形態のプリンタ1は、本体ケース2と、プリンタカバー3と、表示パネル4と、プラテンローラ10と、サーマルヘッド28(本発明の「印字ヘッド」の一例である。)を備える。
【0015】
例えば
図1Aにおいて理解されるように、プリンタ1の外部底面131(
図4参照;プリンタ底面の一例)は略長方形をなしており、その長辺に沿った方向を前後方向と定義する。すなわち、表示パネル4が設けられている側を前方(FR)と定義し、その反対側のプリンタカバー側を後方(RR)と定義する。当該前後方向を基準として、右側(RH)、左側(LH)、上側(UP)および下側(LO)を定義する。なお、以下の説明では適宜、右側(RH)の方向または左側(LH)の方向を横方向といい、上側(UP)の方向または下側(LO)の方向を上下方向という。
【0016】
図2に示すように、プリンタ1の内部は、連続紙(本発明の「印字媒体」の一例)353がロール状に巻回されたロール体355を収容するためのロール体収容室9が設けられてもよい。本体ケース2にはロール体355を載置するための内部底面2a(
図3参照)が形成されてもよい。連続紙353は、台紙と、台紙に仮着された複数のラベルを含む。
【0017】
プリンタカバー3は、プリンタ1の内部を開放または閉鎖するカバーである。プリンタカバー3の後端には、プリンタカバー3を本体ケースに対して後開きに回動可能に支持するためのヒンジ軸81を含むヒンジ8が設けられている。
ヒンジ8は、後述するように前後方向にスライド可能である。
表示パネル4は、ユーザに対する入出力インタフェースを提供し、例えばタッチパネル機能を備えた液晶表示パネルである。
【0018】
図2に示すように、プリンタカバー3のヒンジ8が在る側に対向する側である先端側には、プラテンローラ10が正逆方向に回転可能に支持されている。
図3に示すようにプリンタカバー3が閉鎖したときには、プラテンローラ10は、サーマルヘッド28の後側に配置されるようになる。
【0019】
プラテンローラ10は、一対のロール体ガイド6aに保持された状態でロール体収容室9に収容されたロール体355から引き出された連続紙353を搬送する搬送手段であり、ロール体355の幅方向に沿って延在した状態で形成されている。なお、プラテンローラ10は、ステッピングモータ(図示せず)等に機械的に連結されて駆動される。
【0020】
サーマルヘッド28は、例えば、文字、記号、図形またはバーコード等のような情報を、ロール体355から引き出された連続紙353に印字する印字手段である。
図3に示すように、プリンタカバー3が閉鎖状態のときには、サーマルヘッド28の印字面が連続紙353の通紙ルートに向き、かつプラテンローラ10に対向する。サーマルヘッド28の印字面には、通電により発熱する複数の発熱抵抗体(図示せず)が連続紙353の幅方向に沿って並んで設置されている。サーマルヘッド28は、サーマルヘッド28に印字信号を伝送する回路基板(図示せず)に接続されている。
サーマルヘッド28の裏側にはサーマルヘッド28に対して付勢力を与える付勢部材としてのコイルばね157が設けられている。
【0021】
プリンタカバー3が閉鎖されて印字が行われているときには、連続紙353がプラテンローラ10によって搬送されつつ、プラテンローラ10とサーマルヘッド28の間で挟持される。このとき、サーマルヘッド28は、上記付勢力によってプラテンローラ10に押し付けられ、それによって印字に適したヘッド圧が生成される。
【0022】
(2)本体ケース
本体ケース2は、プリンタ1の後半部分にあるロール体収容室9付近において、ロール体収容室9の下半分の空間を左右側方、後方および下方から覆う部分及びプリンタ1の前半部分にある機構および回路などが収まっている空間を左右側方、前方、下方および上方から覆う部分を有する。
【0023】
(3)プリンタカバー
プリンタカバー3は、ロール体収容室9付近において、ロール体収容室9の上半分の空間を左右側方、後方および上方から覆う。
【0024】
プリンタカバー3は、
図1Aに示すような閉鎖位置と
図1Bに示すような最大開放角度での開放位置の間でヒンジ8の回転軸について開閉可能である。ここで、最大開放角度とは、プリンタカバー3の後面部123に設けられたカバー側緩衝部材151(
図4、
図5参照)が本体ケース2の後面部121に設けられた本体側緩衝部材141(
図4、
図5参照)に当接することにより、プリンタカバー3がそれ以上回転できなくなる角度のことである。
一実施形態では、
図7に示すように、プリンタカバー3は、強度を確保する観点から内側プリンタカバー36および外側プリンタカバー37の二層構造を有するが、その限りではない。
【0025】
(4)プラテンローラ
図7に示すように、外側プリンタカバー37と内側プリンタカバー36が分離されているときに、プラテンローラ10は、外側プリンタカバー37に設けられた仮保持部19に仮保持されることができる。プラテン軸10aの両端部には、一対の軸受け61が設けられる。
【0026】
図8は、軸受け61において、外側プリンタカバー37と内側プリンタカバー36がねじ止めにより一体化したプリンタカバー3になっているときのプラテン軸10aに直交する断面を示している
図8に示すように、一対の軸受け61が外側プリンタカバー37の内側に設けられた軸受け保持部37aと内側プリンタカバー36の外側に設けられた軸受け保持部36bにより挟まれる。これにより、外側プリンタカバー37と内側プリンタカバー36がねじ止めにより一体化したプリンタカバー3になっているときには、プラテン軸10aは、プリンタカバー3に回転可能に固定される。
【0027】
(5)プラテン軸支持部
図2に示すように、本体ケース2には、一対のプラテン軸支持部26が設けられる。一対のプラテン軸支持部26は、プリンタカバー3が閉鎖位置にある場合に、プリンタカバー3の先端にあるプラテン軸10aを支持するために左右両端付近の位置(第2の位置の一例)に設けられる。本体ケース2の本体フレームに、プラテン軸支持部26が形成されている。
【0028】
より具体的には、一対のプラテン軸支持部26は、プリンタカバー3が閉鎖位置に在るときにプラテン軸10aの左右両端部付近にある一対の第1の被支持部10c(
図7参照;プラテンローラの第2の部分の一例)をそれぞれ回転可能に支持する。
【0029】
図15に示すように、特に、プラテン軸10aの第1の被支持部10cの前端面および後端面が各プラテン軸支持部26の前側壁部26dおよび後側壁部26eの垂直面に当接する。これにより、プラテン軸10aの前後方向の移動が規制される。なお、垂直面とは、例えば、外部底面131と直交する面を意味する。しかし、前側壁部26dおよび後側壁部26eに形成される面は垂直面に限られず、プラテン軸10aの第1の被支持部10cを支持するために互い対向した面であればよい。
図9の斜視図には、プリンタ1の本体ケース2の右端部付近に設けられたプラテン軸支持部26が描かれている。
【0030】
(6)プラテン保持ブラケット
図2に示すように、プラテン保持ブラケット27(プラテン保持部の一例)の一対のアーム部27gが左右両端付近に設けられている。プラテン保持ブラケット27は、
図10に示すように一対のアーム部27gとこれらを結合するビーム部27hを有する。また、ビーム部27hにはコイルばね29を架けるためのフック27iが設けられている。更に、一対のアーム部27gには、回転軸27aを通すための穴27jが設けられている。図示しないが、本体ケース2の本体フレームに回転軸27aが通されている。
【0031】
従って、プラテン保持ブラケット27は、回転軸27aを支点として一対のアーム部27gが前後方向に倒れるように回転することが可能であるが、特に、コイルばね29により一対のアーム部27gが前方に倒れる方向(仰角θが小さくなる方向(
図11参照))に付勢されている。
【0032】
図11に示すように、各アーム部27gには、回転軸27aから遠い順に上側把持部27dおよび下側把持部27eが設けられている。上側把持部27dと下側把持部27eの間に把持部溝27bが形成されている。
【0033】
図9に示しているように、本体ケース2の右端部付近に右側のプラテン軸支持部26が設けられる。右側のプラテン軸支持部26よりも中央寄りの隣接位置に右側のアーム部27gが設けられる。図示していないが、同様に、左端部付近に左側のプラテン軸支持部26が設けられる。左側のプラテン軸支持部26よりも中央寄りの隣接位置に左側のアーム部27gが設けられる。
【0034】
図12に示すように、プリンタカバー3が閉鎖位置に在るときに、プラテン保持ブラケット27の各アーム部27gの上側把持部27dの下面(浮き防止面)27kは、プラテン軸10aの第2の被支持部10d(
図7参照;プラテンローラの第1の部分の一例)となっている部分の上端面に接触する。また、プリンタカバー3が閉鎖位置に在るときに、プラテン保持ブラケット27の各アーム部27gの下側把持部27eの上面(沈み防止面)27pは、プラテン軸10aの第2の被支持部10d(
図7参照)となっている部分の下端面に接触する。従って、プリンタカバー3が閉鎖位置に在るときに、プラテン軸10aの第2の被支持部10dは、浮き防止面27kおよび沈み防止面27pにより上下方向の移動が規制される。
【0035】
すなわち、
図12において、プリンタカバー3の揺動に伴うプラテンローラ10の第2の被支持部10dの時計回り及び反時計回りの円運動を制限する一対の面(浮き防止面27kおよび沈み防止面27p)が設けられる。それによって、上側把持部27d、下側把持部27eおよび把持部溝27bにより、プラテンローラ10が揺動して係止位置(後述する位置Q(x1、y1、z1))から所定距離以上移動せず、確実に支持される。
【0036】
図13を参照すると、プラテン軸10aの端部付近に第1の被支持部10cがあり、それよりも端部から離れた位置(つまり、中央寄りの位置)に第2の被支持部10dがある。プラテン軸支持部26の前側壁部26dおよび後側壁部26eの垂直面が第1の被支持部10cに当接する。浮き防止面27kおよび沈み防止面27pが第2の被支持部10dに接する。プラテン軸10aの他端側についても同様である。
したがって、
図12に拡大して示したように、プリンタカバー3が閉鎖位置にあるときには、プラテン軸10aの移動は、プラテン軸支持部26の前側壁部26dの垂直面、後側壁部26eの垂直面、プラテン保持ブラケット27の浮き防止面27k、及び、沈み防止面27pの4面により四方から制限される。
【0037】
プリンタカバー3が開放位置にあるとき、アーム部27gの仰角θは、最小仰角θ1である(
図11参照)。プリンタカバー3を開放位置から閉鎖位置に移動させる過程において、プラテン軸10aは、上面27fに当接する。それから更にプリンタカバー3を閉鎖位置に近づけると、アーム部27gの半径方向に対して傾斜した上面27fがプラテン軸10aにより押されるので、アーム部27gの仰角θは徐々に大きくなる。プラテン軸10aがアーム部27gの先端部27nを通過するときにアーム部27gの仰角θは最大仰角θ2になる。更にプリンタカバー3を閉鎖位置に近づけると、プラテン軸10aは、アーム部27gの先端部27nの下方に徐々に移動し、アーム部27gは、コイルばね29による付勢力により、プラテン軸10aと先端部27nの接触を維持しながら仰角θが小さくなる方向に回転する。プラテン軸10aが浮き防止面27kの下方まで移動すると、アーム部27gの仰角θは、最小仰角θ1になる。このとき、プラテン軸10aは、上側への移動を浮き防止面27kにより制限され、下側への移動を沈み防止面27pにより制限される状態にある。この状態は、プラテン軸10aが、アーム部27gによりロックされている状態であり、プリンタカバー3の閉鎖状態(閉鎖位置)に対応する。
【0038】
なお、ロック解除のためには、カバー開放ボタン51bを操作することで、コイルばね29の復元力に抗してアーム部27gの仰角θが大きくなるようにアーム部27gを揺動させる。それによって、ヒンジ8の付勢力によりプリンタカバー3が開放位置に向けて揺動し、プラテン軸10aが把持部溝27bから解放される。
【0039】
(7)ヒンジ
図4および
図5に示すように、本体ケース2の後面部121の上端辺縁部127に横方向に延在するようにしてヒンジ8が設けられる。
ヒンジ8によりプリンタカバー3が開閉可能となるように、本体ケース2の後面部121の上端辺縁部127に対して、プリンタカバー3の後面部123の下端辺縁部129がヒンジ8を介して連結されている。
【0040】
図14に示すように、ヒンジ8は、ヒンジ軸81、本体側軸受用長穴82、内側プリンタカバー側軸受用丸穴83、外側プリンタカバー側軸受用丸穴84およびトーションばね85を備える。
【0041】
本体側軸受用長穴82は、ロール体収容室9の後端付近の左右両端に一対設けられる。また、本体側軸受用長穴82は、前後方向に長軸を有する。但し、本体側軸受用長穴82の長軸の方向を前後方向から多少ずらしてもよい。
内側プリンタカバー側軸受用丸穴83は、内側プリンタカバー36の後方端部に一対設けられる。
外側プリンタカバー側軸受用丸穴84は、外側プリンタカバー37の後方端部に一対設けられる。
【0042】
ヒンジ軸81は、一対の内側プリンタカバー側軸受用丸穴83および一対の外側プリンタカバー側軸受用丸穴84に挿通され、両端が一対の本体側軸受用長穴82に挿入される。
【0043】
ヒンジ軸81(回転軸の一例)は、本体ケース2の後面部121の上端辺縁部127(
図4参照)に横方向に延在するようにして設けられており、従って、本体側軸受用長穴82、内側プリンタカバー側軸受用丸穴83、外側プリンタカバー側軸受用丸穴84も本体ケース2の後面部121の上端辺縁部127に設けられている。従って、プリンタカバー3は、内側プリンタカバー側軸受用丸穴83、外側プリンタカバー側軸受用丸穴84を、本体ケース2とプリンタカバー3の水平方向の境界線133(
図5参照)よりも下に有することになる。
【0044】
内側プリンタカバー36と外側プリンタカバー37は、使用時には、ねじ止めにより一体化されている。内側プリンタカバー36と外側プリンタカバー37がねじ止めされているときには、内側プリンタカバー36と外側プリンタカバー37は一体化された状態で、ヒンジ軸81の回りを回転することが可能である。他方で、内側プリンタカバー36と外側プリンタカバー37がねじ止めされていないときには、これらは別々に、ヒンジ軸81の回りを回転することが可能である。
図2は、ねじ止めにより一体化された内側プリンタカバー36と外側プリンタカバー37を示している。
図7は、ねじ止めされずに相互に分離している内側プリンタカバー36と外側プリンタカバー37を示している。
【0045】
従って、ヒンジ軸81が前後方向にスライドすれば、一体化された内側プリンタカバー36と外側プリンタカバー37は、一緒に前後方向にスライドする。つまり、ヒンジ軸81が前後方向にスライドすれば、プリンタカバー3は、前後方向にスライドする。
【0046】
また、一体化された内側プリンタカバー36と外側プリンタカバー37は、ヒンジ軸81を回転軸として一緒に回転することが可能である。つまり、プリンタカバー3は、ヒンジ軸81を回転軸として回転することが可能である。
トーションばね85は、閉鎖状態のプリンタカバー3が開放するようにプリンタカバー3を付勢する。
【0047】
前後方向に長軸を有する本体側軸受用長穴82を設けることにより、ヒンジ軸81を前後方向にスライドすることが可能になっている。つまり、ヒンジ軸81を水平面内においてヒンジ軸81に対して垂直な方向にスライドすることが可能になっている。
【0048】
図15は、プリンタカバー3が閉鎖するときのプラテン軸10aの運動を示している。
図15において、位置B22,B23,B24はプラテン軸10aの中心位置を示し、軌跡S20,S23,S24はプラテン軸10aの中心位置の軌跡を示している。
【0049】
図15を参照すると、ヒンジ軸81が後方端の位置A1(
図12参照)に在るときに(つまり、ヒンジ軸81が本体側軸受用長穴82の後方端に在るときに)、プリンタカバー3を開放状態から閉鎖状態に移行させる過程において、プラテン軸10aは、プリンタカバー3の揺動に応じて軌跡S20を通るような円運動をする。プラテン軸10aは、位置B22まで到達したならば、プラテン軸支持部26の後側壁部26eに接触する。その後、ヒンジ軸81が本体側軸受用長穴82内で位置A1と前方端の位置A2(
図12参照)との間で前後方向にスライド可能であるため、プラテン軸10aは、後側壁部26eに接触したまま軌跡S23を通って位置B23に達する。位置B23に達した後、プラテン軸10aは、プラテン軸支持部26の前側壁部26d及び後側壁部26eの垂直面に沿って位置B24に達する。プラテン軸10aが位置B24に位置するときには、プラテン軸10aは、底部26c付近まで到達し、プリンタカバー3が閉鎖状態となる。このとき、プラテン軸10aの第1の被支持部10cは、前側壁部26dの垂直面と後側壁部26eの垂直面の間に挟まれ、各垂直面に支持されるようになる。
【0050】
プリンタカバー3が閉鎖状態となる直前には、プラテン軸10aが軌跡B24に沿って上下方向に直進運動し、それに従って、プラテン軸10aとともにプリンタカバー3に取り付けられているカバー側コネクタ321も上下方向に直進運動することになる。そのため、カバー側コネクタ321のカバー側コネクタ雄端子323が本体側コネクタ301の本体側コネクタ雌端子303に直進運動で接し、接触不良が発生する可能性が大幅に低下させることができる。
【0051】
仮に、ヒンジ軸81が前後方向にスライドできないならば、プラテン軸10aは、軌跡S23を通ることができず、従って、プラテン軸10aは、底部26cまで到達することができない。本体側軸受用長穴82によりヒンジ軸81が前後方向にスライドできるので、底部26cまで到達することが可能になっている。
【0052】
なお、プリンタカバー3が内側プリンタカバー36と外側プリンタカバー37の二層構造ではなく、一体構造である場合には、プリンタカバー側軸受用丸穴は左右一対だけあればよい。
【0053】
(8)カバー側緩衝部材および本体側緩衝部材
図5に示すように、複数の本体側緩衝部材141が、本体ケース2の後面部121に横方向に並べられるようにして設けられる。
図5に示す例では、本体ケース2の後面部121の左右に、3個ずつの本体側緩衝部材141が横方向に並べられるようにして設けられている。
【0054】
同様に、複数のカバー側緩衝部材151が、プリンタカバー3の後面部123に横方向に並べられるようにして設けられる。
図5に示す例では、プリンタカバー3の後面部123の左右に、3個ずつのカバー側緩衝部材151が横方向に並べられるようにして設けられている。
一実施形態では、
図5に示すように、本体側緩衝部材141とカバー側緩衝部材151は横方向の同じ位置において対をなすようにして設けられてもよい。
【0055】
図5に示す例では、本体側緩衝部材141は、先端面142および4つの側面からなる合計5つの面を有する。また、カバー側緩衝部材151も、先端面152および4つの側面からなる合計5つの面を有する。これは一例に過ぎず、本体側緩衝部材141及びカバー側緩衝部材151の面の形状は適宜設計可能である。
【0056】
(9)本体側コネクタとカバー側コネクタ
図12、
図9および
図13に示すように、本体側コネクタ301は、本体側コネクタ設置部313(第1の位置の一例)に設けられており、カバー側コネクタ321は、カバー側コネクタ設置部329に設けられている。
【0057】
図12に示すように、プリンタカバー3が閉鎖位置にあるときに、本体側コネクタ301の本体側コネクタ雌端子303と、カバー側コネクタ321のカバー側コネクタ雄端子323とが接触する。6つの本体側コネクタ雌端子303とカバー側コネクタ雄端子323の接点は、プリンタ1の外部底面131に対して平行な1つの仮想平面上に在る。
【0058】
図6および
図9を参照すると、本体側コネクタ設置部313に設けられた本体側コネクタ301(第1のコネクタの一例)は次のような構成を有する。
本体側コネクタ当接面309(第1の当接面の一例)に本体側コネクタ第1凹部305が設けられ、この内部に2×3の格子状に並んだ6つの本体側コネクタ第2凹部307が設けられる。各本体側コネクタ第2凹部307の底部に本体側コネクタ雌端子303が配置される。
本体側コネクタ当接面309の両側には、一対の側方突条部311が設けられる。本体側コネクタ当接面309は、プリンタ1の外部底面131に対して平行である。
【0059】
図16および
図13を参照すると、内側プリンタカバー36に設けられたカバー側コネクタ321(第2のコネクタの一例)は次のような構成を有する。
カバー側コネクタ当接面325(第2の当接面の一例)には、2×3の格子状に並んだ6つのカバー側コネクタ雄端子323が設けられる。カバー側コネクタ当接面325は、プリンタカバー3が閉鎖位置にあるときには、プリンタ1の外部底面131に対して平行である。
カバー側コネクタ当接面325の両側には、一対の側方溝部327が設けられる。
プリンタカバー3を閉鎖状態にしたときには、6個の本体側コネクタ雌端子303と6個のカバー側コネクタ雄端子323の対応する端子同士が接触する。
また、
図12にも示したように、プリンタカバー3を閉鎖状態にしたときには、カバー側コネクタ当接面325は、本体側コネクタ当接面309に当接する。
【0060】
更に、一対の側方溝部327は、一対の側方突条部311に係合する。この係合により、これらに挟まれた領域に外から水などの液体が入り込みづらくなる。また、一対の側方溝部327および一対の側方突条部311は前後方向に延在するので、この係合により、カバー側コネクタ当接面325に対して、本体側コネクタ当接面309が横方向にスライドしてしまうことを防止することができる。従って、各本体側コネクタ雌端子303に対して、これに対応するカバー側コネクタ雄端子323が横方向に摺動してしまうことを防止することができる。
なお、別の実施形態では、本体側コネクタ301に側方溝部を設け、カバー側コネクタ321に側方突条部を設けてもよい。
【0061】
図17Aを参照すると、カバー側コネクタ雄端子323は、カバー側コネクタ当接面325から露出(突出)する部分と露出しない部分を有する。
図16には、カバー側コネクタ雄端子323のカバー側コネクタ当接面325から露出(突出)する部分のみを示していた。
【0062】
また、カバー側コネクタ雄端子323は、これよりも径の大きな筒状のカバー側コネクタ雄端子基部324に対して、
図17Bに示すように所定の範囲で軸方向に変位できるようにその内部に組み込まれている。
カバー側コネクタ雄端子基部324は、固定部材331を介して、外側プリンタカバー37に固定されている。
【0063】
図17Bを参照すると、カバー側コネクタ当接面325に対して表側に突出する部分の長さD(上記所定の範囲)は、状態S1におけるDmim(最短の長さ)から状態S3におけるDmax(最長の長さ)までである。また、カバー側コネクタ雄端子323は、カバー側コネクタ当接面325に対して表側に突出する部分の長さDが長くなる方向に、例えばばね(図示せず)で付勢されている。
【0064】
プリンタカバー3が開放状態にあるときには、カバー側コネクタ雄端子323は状態S3にあり長さD=Dmaxである。また、プリンタカバー3が閉鎖状態にあるときには、カバー側コネクタ雄端子323は状態S2にあり、このときのカバー側コネクタ当接面325に対して表側に突出する部分の長さをDstdとする。長さDstdは、プリンタカバー3が閉鎖状態に在り、カバー側コネクタ当接面325が本体側コネクタ当接面309に当接しているときの長さである。ここで、Dmim<Dstd<Dmaxであり、好ましくは、Dstd≒(Dmim+Dmax)/2である。
【0065】
プリンタカバー3が開放状態にあるときの長さDは、Dmaxである。そして、開放状態にあるプリンタカバー3を閉鎖状態にする過程において、カバー側コネクタ雄端子323が本体側コネクタ雌端子303に到達する。この時には、カバー側コネクタ当接面325は本体側コネクタ当接面309に到達していない。
そして、カバー側コネクタ当接面325は本体側コネクタ当接面309に到達するまでの間、長さDは徐々に短くなり、カバー側コネクタ当接面325は本体側コネクタ当接面309に到達したときに長さDはDstdになる。
【0066】
図2および
図9を参照すると、一実施形態では、本体側コネクタ設置部313は、前後方向においては、プラテン軸支持部26の後方(RR)に隣接し、かつアーム部27gの後方(RR)に隣接する位置に設けられている。本体側コネクタ設置部313は、横方向においては、プラテン軸支持部26とほぼ同一の位置であって、かつアーム部27gの左側(LH)(つまり、外側)に隣接する位置に設けられている。本体側コネクタ設置部313は、上下方向においては、プラテン軸支持部26の底部26cとほぼ同じ高さに設けられている。
【0067】
本体側コネクタ設置部313は、本体フレームと一体化して設けられている。特に、本体側コネクタ当接面309および一対の側方突条部311は、本体フレームの一部として成形されている。
【0068】
本体側コネクタ301とカバー側コネクタ321の双方の近傍に磁石が配置されてもよい。あるいは、これらのコネクタ301、321の一方のコネクタの近傍に磁石が配置され、他方のコネクタの近傍に強磁性体が配置されていてもよい。このような構成を設けると、一旦近接した本体側コネクタ301とカバー側コネクタ321は磁力により引き合うようになり、コネクタ同士の接続が確実になる。
【0069】
プリンタカバー3が閉鎖位置に在るときには、プラテン軸10aは、プラテン軸支持部26とプラテン保持ブラケット27により上下前後方向の四方から位置が規定されている。そのため、プラテン軸10aに対する本体側コネクタ301の相対的な位置精度が高い。
【0070】
他方、
図17Aを参照して説明したように、カバー側コネクタ雄端子基部324を固定する固定部材331は外側プリンタカバー37に固定され、カバー側コネクタ当接面325は外側プリンタカバー37の外面の一部である。また、プラテン軸10aは、プリンタカバー3に対して回転可能に固定される。従って、プリンタカバー3において、プラテン軸10aに対するカバー側コネクタ321の相対的な位置精度が高い。
以上から、プリンタ1では、プリンタカバー3が閉鎖状態である場合の本体側コネクタ301とカバー側コネクタ321との間の相対的な位置関係の精度は高い。
【0071】
以上説明したように、プリンタカバー3が閉鎖状態である場合、プラテン軸10aが、プラテン軸支持部26とプラテン保持ブラケット27により上下前後方向の四方から位置が規定され、それによって、本体側コネクタ301とカバー側コネクタ321との間の相対的な位置関係の精度が高くなる。その結果、本体側コネクタ雌端子303とカバー側コネクタ雄端子323の接触状態を良好にすることができる。
【0072】
別の観点では、
図9及び
図12に示したように、プリンタ1では、本体側コネクタ設置部313が設けられている位置(第1の位置の一例)は、プラテン保持ブラケット27がプラテン軸10aの第2の被支持部10dを保持する位置(第2の位置の一例)の近くに配置され、好ましくは隣接して配置される。それによって、本体側コネクタ301とカバー側コネクタ321の接点位置が、プラテン軸10aの第2の被支持部10dを保持する位置に近くなるため、接点位置のずれが生じ難くなり、コネクタ間の接触安定性を高くすることができる。
【0073】
図3において、プリンタ1の前後方向は、外部底面131と直交する方向から見てプリンタカバー3が閉鎖状態のときのプラテンローラ10を前側とし、ヒンジ8(又はヒンジ軸81)を後側として定義される。
図12に示すように、本体側コネクタ設置部313が設けられている位置は、プリンタカバーが閉鎖状態のときに、プリンタ1の前後方向を基準として、プラテン保持ブラケット27がプラテン軸10aの第2の被支持部10dを保持する位置と、ヒンジ軸81との間に位置する。
ここで、前述したように、プラテン軸10aの第2の被支持部10dの上下方向の変位は、プラテン保持ブラケット27によって規制されている。そのため、前後方向でプラテン軸10aの第2の被支持部10dとヒンジ軸81との間に位置する本体側コネクタ301と、プラテン軸10aが取り付けられたプリンタカバー3に固定されたカバー側コネクタ321との接触安定性が高いものとなる。
【0074】
つまり、プリンタ1では、ヒンジ位置と、プリンタカバーと本体ケースのロック位置との間にコネクタ間の接点が配置されているため、接触安定性を高くすることができる。仮に、ヒンジ位置とロック位置の間にコネクタ間の接点がないとしたならば、本体ケースの歪みやロック位置のずれが接点位置のずれに影響を与えやすくなる。
プリンタ1を持ち運びしている途中で本体側コネクタ301とカバー側コネクタ321が離れた場合には、位置検出センサ343やラベルセンサ345の設定がリセットされてしまうため、本体側コネクタ301とカバー側コネクタ321の接触安定性は重要である。
【0075】
(10)周辺回路
図18を参照すると、本体側コネクタ雌端子303-1~303-6は、本体側回路335に接続されている。また、本体側回路335には電源334が接続されている。
【0076】
また、6組の本体側コネクタ雌端子303-1~303-6とカバー側コネクタ雄端子323-1~323-6のうち、第1の組と第2の組の本体側コネクタ雌端子303-1、303-2およびカバー側コネクタ雄端子323-1、323-2は、反射型の位置検出センサ343に対応したものである。反射型の位置検出センサ343は、連続紙353に光を照射し、連続紙353に付されている黒色の位置検出用マークを連続紙353からの反射光の強度により検出する。第1の組のカバー側コネクタ雄端子323-1と第2の組のカバー側コネクタ雄端子323-2は、それぞれ、フレキシブル基板337の基板内配線339-1、339-2を介して、位置検出センサ343に接続される。
【0077】
第3の組と第4の組の本体側コネクタ雌端子303-3、303-4およびカバー側コネクタ雄端子323-3、323-4は、透過型のラベルセンサ345に対応したものである。透過型のラベルセンサ345は、発光素子347から発光側光学フィルタ351、連続紙353および受光側光学フィルタ349を介して受光した光の強度により連続紙353のラベルを検出する。第3の組のカバー側コネクタ雄端子323-3と第4の組のカバー側コネクタ雄端子323-4は、それぞれ、フレキシブル基板337の基板内配線339-3、339-4を介して、ラベルセンサ345に接続される。
【0078】
第5の組と第6の組の本体側コネクタ雌端子303-5、303-6およびカバー側コネクタ雄端子323-5、323-6は、プリンタカバー3の開閉を検出するためのものである。第5の組のカバー側コネクタ雄端子323-5と第6の組のカバー側コネクタ雄端子323-6は、フレキシブル基板337の基板内配線339-5により短絡される。
第6の組の本体側コネクタ雌端子303-6およびカバー側コネクタ雄端子323-6は、グランド配線に対応する。
【0079】
図2を参照すると、連続紙通路前面9aと連続紙通路後面36aが、それぞれ、本体および内側プリンタカバー36に設けられている。連続紙通路前面9aと連続紙通路後面36aによって、プリンタカバー3を閉鎖状態にしたときに、プラテンローラ10およびサーマルヘッド28に到達する直前の連続紙353が通過する通路が形成される。
連続紙通路前面9aおよび連続紙通路後面36aには、それぞれ発光側光学フィルタ351および受光側光学フィルタ349が設けられている。発光側光学フィルタ351および受光側光学フィルタ349は、プリンタカバー3を閉鎖状態にしたときに、ロール体355からサーマルヘッド28まで搬送されている連続紙353を挟んで相互に対向する。
【0080】
発光側光学フィルタ351の内面側に発光素子347が配置されている。
図7に示すように、連続紙通路後面36aの裏側には、ラベルセンサ345を搭載したセンサ用基板341が配置されている。プリンタカバー3を閉鎖状態にしたときに、発光素子347にラベルセンサ345が対向する。
【0081】
図7に示すように、カバー側コネクタ設置部329においてカバー側コネクタ雄端子323(
図7では見えない)に接続されたフレキシブル基板337が内側プリンタカバー36の内面(外側プリンタカバー37に対向する面)の辺縁部を経由してセンサ用基板341に接続されている。
【0082】
図6を再度参照すると、プリンタカバー3が開放されているときには、電源334から電力の供給を受けている本体側回路335に接続されている本体側コネクタ雌端子303が露出する。ここで、本体側コネクタ雌端子303は、本体側コネクタ当接面309に対して窪んだ位置にある。つまり、カバー側コネクタ雄端子323と接触する本体側コネクタ雌端子303の先端が本体側コネクタ第2凹部307内に位置するので、利用者が本体側コネクタ雌端子303に触れてしまうことに起因する静電気放電を防止することができる。
【0083】
また、プリンタカバー3が開放されているときには、利用者がカバー側コネクタ雄端子323に触れてしまう可能性がある。しかし、プリンタカバー3が開放されているときには、カバー側コネクタ雄端子323に接続されている位置検出センサ343、ラベルセンサ345には電力が供給されていないので、これらの電子部品が静電気放電等により破壊してしまうことを防止することができる。
【0084】
なお、図示した例では、本体側コネクタを雌型とし、カバー側コネクタを雄型としたが、その限りではない。本体側コネクタを雄型とし、カバー側コネクタを雌型としてもよい。
【0085】
従来のプリンタでは、プリンタカバーを本体ケースに回転可能に接続するヒンジ付近を経由するケーブルによりプリンタカバーに備えられたセンサと本体ケースにある電子回路を接続していた。従って、プリンタカバーを開閉するたびにケーブルが撓み、ケーブルが断線する可能性があった。また、プリンタカバーの開閉時に電子回路とセンサが電気的に接続されたままであるので、電気的不具合が生ずるおそれがあった。更に、このようなケーブルを配線するための部品をわざわざ用いる必要があった。配線の手間もかかるため、プリンタカバーを交換するときの足かせとなっていた。
【0086】
それに対して、本実施形態のプリンタ1では、プリンタカバー3を本体ケース2に回転可能に接続するヒンジ8付近を経由するケーブルを利用しない。従って、プリンタカバーの開閉に伴うケーブルの断線が生じ得ない。また、ケーブルを配線するための部品をわざわざ用いる必要がない。ケーブル配線の手間がかからないため、プリンタカバー3の交換が容易になる。
プリンタカバー3が開放状態に在るときには位置検出センサ343、ラベルセンサ345は、本体側回路335(電源に接続された回路の一例)に電気的に接続されておらず、プリンタカバー3にある他の回路部品も本体側回路335に電気的に接続されていない。そのため、プリンタカバー3が開放状態に在るときにプリンタカバー3にあるこれらの電子部品により放電等の電気的不具合が生じることを避けることができる。
【0087】
図3に示すように、印字時には、プラテンローラ10は、コイルばね157によりサーマルヘッド28および印字媒体を介して後方向に付勢される。コイルばね157の付勢方向はプリンタ1の前後方向であるが、
図15に示したように、プラテン軸10aがプラテン軸支持部26の後側壁部26eにより後方から支えらえるため、プラテン軸10aの後方への変位が抑制される。
側方突条部311と側方溝部327が係合している状態は維持されるので、カバー側コネクタ当接面325が本体側コネクタ当接面309に対して横方向に移動することは制限されるが、前後方向に移動することは可能である。プラテン軸10aが前後方向に僅かに移動した場合でも、カバー側コネクタ当接面325が本体側コネクタ当接面309上で前後方向にスライドしつつ、コネクタ間の接触が維持される。
【0088】
また、プラテンローラ10の前後方向の位置や姿勢の変動により本体側コネクタ当接面309からカバー側コネクタ当接面325までの距離が変動しても、本体側コネクタ301とカバー側コネクタ321の接続状態は良好に維持される。すなわち、
図17Bに示したように、カバー側コネクタ雄端子323は、カバー側コネクタ当接面325に対して表側に突出する部分の長さが長くなる方向に付勢されている。そのため、上記距離の変動をカバー側コネクタ雄端子323の突出長の変化により吸収し、本体側コネクタ雌端子303とカバー側コネクタ雄端子323との接触状態は良好に維持される。
【0089】
次に、衝撃吸収性について述べる。
図19に示すように、プリンタカバー3に外部から衝撃(外力F)が与えられたとき、ヒンジ軸81が本体側軸受用長穴82(
図14参照)に沿ってスライドするように変形して衝撃を吸収する場合がある。
また、プリンタカバー3に外部から衝撃が与えられたとき、ヒンジ軸81が本体側軸受用長穴82に沿ってスライドし、且つ、プラテン軸10aがプラテン保持ブラケット27の一対のアーム部27gにより保持されたままプラテンローラ10が前後方向にスライドして衝撃を吸収する場合がある。
【0090】
このような衝撃を与えられた場合でも、本体側コネクタ雌端子303およびカバー側コネクタ雄端子323の接触状態は、以下の理由から良好に維持される。
本体側軸受用長穴82の長軸は、ヒンジ軸81がプリンタ1の外部底面131に対して水平な面においてヒンジ軸81に対して垂直な方向にスライドするように前後方向に延びている。
既に説明したように、本体側コネクタ当接面309およびカバー側コネクタ当接面325は、プリンタ1の外部底面131に対して水平である。
図12に示したように、プリンタカバー3が閉鎖位置にあるときには、把持部溝27bの上下にある浮き防止面27kおよび沈み防止面27pの面の向きは、本体側コネクタ当接面309およびカバー側コネクタ当接面325の向きとほぼ同じである。
従って、外部から衝撃が与えられても、本体側コネクタ当接面309およびカバー側コネクタ当接面325の接触状態はほとんど変化せず、本体側コネクタ雌端子303およびカバー側コネクタ雄端子323の接触状態も良好に維持される。
【0091】
また、カバー側コネクタ雄端子323がカバー側コネクタ当接面325に対して表側に突出する部分の長さが長くなる方向に付勢されている。そのため、衝撃により本体側コネクタ当接面309からカバー側コネクタ当接面325までの上下方向の距離が変動しても、当該距離の変動をカバー側コネクタ雄端子323の突出長の変化により吸収する。そのため、本体側コネクタ雌端子303とカバー側コネクタ雄端子323との接触状態は良好に維持される。
【0092】
プリンタ1は縦置きにすることができる。すなわち、
図4および
図5に示すように、複数の本体側緩衝部材141それぞれにある先端面142および複数のカバー側緩衝部材151それぞれにある先端面152により構成される平面PLを底面にしてプリンタ1を縦置きにすることができる。
【0093】
例えば、プリンタ1を置く場所が完全な平面でない場合、あるいはプリンタ1が多少傾いても縦置き状態を維持する場合、本体側軸受用長穴82に沿ってヒンジ軸81がスライドすることがある。その場合、プリンタカバー3が本体ケース2に対してスライドする。
【0094】
このような場合であっても、衝撃吸収性に関連して述べた理由と同じ理由により、本体側コネクタ当接面309およびカバー側コネクタ当接面325の接触状態はほとんど変動せず、本体側コネクタ雌端子303およびカバー側コネクタ雄端子323の接触状態が良好に維持される。
【0095】
本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の種々の形で実施することができる。そのため、前述した各実施形態は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるべきではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更はすべて本発明の範囲内のものである。
【0096】
例えば、上述したプリンタ1では、プラテン軸10aは、プラテン軸支持部26とプラテン保持ブラケット27により上下前後方向の四方から位置が規定される場合について説明したが、その限りではない。プラテン軸支持部26を設けず、プラテン保持ブラケット27によりプラテン軸10aの変位を制限する構成であってもよい。そのような構成でも、
図11に示したように、プラテン軸10aは、浮き防止面27kおよび沈み防止面27pの二面によって上下方向で規制されるため、プリンタカバー3が閉鎖状態の場合のプラテン軸10aに対する本体側コネクタ301の相対的な位置精度が確保される。それによって、本体側コネクタ301とカバー側コネクタ321との相対的な位置精度が高いものとなる。
【符号の説明】
【0097】
1…プリンタ
2…本体ケース
2a…内部底面
3…プリンタカバー
4…表示パネル
6a…ロール体ガイド
8…ヒンジ
9…ロール体収容室
9a…連続紙通路前面
10…プラテンローラ
10a…プラテン軸
10c…第1の被支持部
10d…第2の被支持部
19…仮留部
21…ガイド部
26…プラテン軸支持部
26c…底部
26d…前側壁部
26e…後側壁部
27…プラテン保持ブラケット
27a…回転軸
27b…把持部溝
27d…上側把持部
27e…下側把持部
27f…上面
27g…アーム部
27h…ビーム部
27i…フック
27j…穴
27k…浮き防止面
27n…先端部
27p…沈み防止面
28…サーマルヘッド
29…コイルばね
30…係合突起
33…回転軸
36…内側プリンタカバー
36a…連続紙通路後面
36b…軸受け保持部
37…外側プリンタカバー
37a…軸受け保持部
38…接点電極
39…接続端子部
61…軸受け
81…ヒンジ軸
82…本体側軸受用長穴
83…内側プリンタカバー側軸受用丸穴
84…外側プリンタカバー側軸受用丸穴
85…トーションばね
121,123…後面部
127…上端辺縁部
129…下端辺縁部
131…外部底面
133…境界線
141…本体側緩衝部材
142…先端面
151…カバー側緩衝部材
152…先端面
157…コイルばね
301…本体側コネクタ
303…本体側コネクタ雌端子
305…本体側コネクタ第1凹部
307…本体側コネクタ第2凹部
309…本体側コネクタ当接面
311…側方突条部
313…本体側コネクタ設置部
321…カバー側コネクタ
323…カバー側コネクタ雄端子
324…カバー側コネクタ雄端子基部
325…カバー側コネクタ当接面
327…側方溝部
329…カバー側コネクタ設置部
331…固定部材
334…電源
335…本体側回路
337…フレキシブル基板
339-1~339-5…基板内配線
341…センサ用基板
343…位置検出センサ
345…ラベルセンサ
347…発光素子
349…受光側光学フィルタ
351…発光側光学フィルタ
353…連続紙
355…ロール体