(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080877
(43)【公開日】2022-05-30
(54)【発明の名称】HDマトリクスヘッドライトによる、距離に依存した画像対象物の投影方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20220523BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
B60Q1/04 Z
B60Q1/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021185525
(22)【出願日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】10 2020 130 473.0
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン フンメル
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン ボスラー
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ ゴルトシュミット
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA22
3K339AA43
3K339BA03
3K339BA21
3K339BA22
3K339CA01
3K339EA01
3K339EA02
3K339GB01
3K339KA07
3K339KA28
3K339MA01
3K339MA04
3K339MC01
3K339MC03
3K339MC21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】HDマトリクスヘッドライトを用いた投影方法であって、文字又はシンボル(又は記号)を含む投影すべき画像を、投影可能性に応じて車両前方域に判読可能又は認識可能に表示する方法を提示する。
【解決手段】第一に、近域において、少なくとも1つの壁43又は壁状の対象物が検出された場合において、HDマトリックスヘッドライトに第1のライトモジュールのみが配置されている場合には、第1のライトモジュールによって、設定された画像の簡素化された画像の投影41を、壁43又は壁状の対象物に実行する。第二に、空いている近域が検出され、且つ遠域において壁22又は壁状の対象物が検出された場合には、第1のライトモジュールによって、設定された画像の投影21を、壁22又は壁状の対象物に実行する。第三に、空いている車両前方域が検出された場合には、第1のライトモジュールによって、設定された画像の地面への投影31を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離に依存したHDマトリクスヘッドライト投影の方法であって、ここで、車両に含まれる少なくとも1つのHDマトリクスヘッドライト内に少なくとも1つのライトモジュールが配置されており、そのHDマトリクスヘッドライトの光源は複数の点光源を含むディスプレイを有するものであり、
前記少なくとも1つのライトモジュールによって、コントローラによって設定された画像を、車両により近い側の領域である近域と当該近域より前方に遠い領域である遠域とから構成される車両前方域に投影し、
前記少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールによって、前記コントローラによって設定された画像を、前記遠域において鮮明に表示し、
少なくとも1つのセンサによって、地面にある少なくとも1つの対象物に向けて、前記車両前方域を投影方向にスキャンし、
前記スキャンの結果に依存して、前記設定された画像の投影(21、31、41)のために、以下の場合分けを行う、すなわち、
・前記近域において、少なくとも1つの壁(43)又は壁状の対象物が検出された場合において、前記少なくとも1つのHDマトリックスヘッドライトに前記第1のライトモジュールのみが配置されている場合には、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールによって、前記設定された画像の簡素化された画像の投影(41)を、前記壁(43)又は前記壁状の対象物に実行し、
・空いている近域が検出され、且つ前記遠域において壁(22)又は壁状の対象物が検出された場合には、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールによって、前記設定された画像の投影(21)を、前記壁(22)又は前記壁状の対象物に実行し、
・空いている車両前方域が検出された場合には、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールによって、前記設定された画像の地面への投影(31)を実行する、距離に依存したHDマトリクスヘッドライト投影の方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのHDマトリックスヘッドライトにおける前記近域での投影のために、前記少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールが、配置されており、
前記コントローラによって設定された前記画像を、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第2のライトモジュールによって、前記近域において焦点深度の範囲内で表示し、
前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第2のライトモジュールは、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールと比較して、より大きな角度範囲を照らすものであり、
前記近域において少なくとも1つの壁又は壁状の対象物が検出された場合には、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールをオフし、且つ前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第2のライトモジュールによって、前記設定された画像の前記壁又は前記壁状の対象物への投影を実行するように、設定された画像の投影のための前記場合分けを変更する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールには、±10度の角度範囲の照明を選択し、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第2のライトモジュールには、±20度の角度範囲の照明を選択する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コントローラによって設定された前記画像には複数の記号のシーケンスを選択し、前記コントローラによって設定され簡素化された前記画像には複数の記号又は1つの記号のみを選択する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのセンサを、超音波センサ、LiDAR、レーダ、運転者支援中央コントローラのカメラ、の中から選択する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
距離に依存したHDマトリクスヘッドライト投影用のシステムであって、コントローラと、車両に配置された少なくとも1つのHDマトリクスヘッドライトと、前記少なくとも1つのHDマトリクスヘッドライトに配置された少なくとも1つのライトモジュールと、車両前方域をスキャンする少なくとも1つのセンサとを備え、
前記少なくとも1つのHDヘッドライトは、光源として、複数の点光源を含むディスプレイを有し、
前記少なくとも1つのライトモジュールは、前記コントローラによって設定された画像を車両により近い側の領域である近域と当該近域より前方に遠い領域である遠域とから構成される前記車両前方域に投影するように構成されており、
前記少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールは、前記コントローラによって設定された前記画像を前記遠域において光学的に鮮明に表示するように構成されており、
前記少なくとも1つのセンサは、地面に位置する少なくとも1つの対象物に向けて、前記車両前方域を投影方向にスキャンするように構成されており、
前記コントローラは、さらに、前記スキャンの結果に依存して、前記設定された画像の投影(21、31、41)のために、以下の場合分け、すなわち、
・前記近域において少なくとも1つの壁(43)又は壁状の対象物が検出された場合において、前記少なくとも1つのHDマトリックスヘッドライトに前記第1のライトモジュールのみが配置されている場合には、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールによって、前記壁又は前記壁状の対象物への前記設定された画像の簡素化された画像の投影(41)を実行し、
・空いている近域が検出され、且つ前記遠域において壁(22)又は壁状の対象物が検出された場合には、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールによって、前記壁(22)又は前記壁状の対象物への前記設定された画像の投影(21)を実行し、
・空いている車両前方域が検出された場合には、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールによって、前記設定された画像の地面への投影(31)を実行する場合分け、を行うように構成されている、距離に依存したHDマトリクスヘッドライト投影用のシステム。
【請求項7】
前記近域における前記設定された画像の投影のために、前記少なくとも1つのHDマトリックスヘッドライトに、前記少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールが配置されており、
前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第2のライトモジュールは、前記コントローラによって設定された前記画像を前記近域において焦点深度の範囲内で表示するように構成されており、
前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第2のライトモジュールは、さらに、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールと比較して、より大きな角度範囲を照らすように構成されており、
前記近域において少なくとも1つの壁又は壁状の対象物が検出された場合には、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールがオフされ、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第2のライトモジュールによって、前記設定された画像の前記壁又は前記壁状の対象物への投影が実行されるように、設定された画像の投影のための前記場合分けが変更される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第1のライトモジュールは、±10度の角度範囲の照明を有し、前記少なくとも1つのライトモジュールの前記第2のライトモジュールは、±20度の角度範囲の照明を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラによって設定された前記画像は、複数の記号のシーケンスを含み、前記設定された画像の、前記コントローラによって簡素化された画像は、複数の記号又は1つの記号のみを含む、請求項6~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセンサは、超音波センサ、運転者支援中央コントローラのカメラ、LiDAR、レーダ、の中から選択される、請求項6~9のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の高解像度HDマトリクスヘッドライトによる、距離に依存した画像対象物の投影方法に関する。さらに、その方法を実行するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の高精細(High Definition、略してHD)メインヘッドライトは、車両前方を単純に照らすだけでなく、適切なコントローラを用いることによって、付加的な情報を表示することができる。このようにして、ドライバをサポートする情報及び車両の制御に関わる情報を、例えばシンボルとして車両前方域に投影することができる。
【0003】
特許文献1には、複数の光源を備えた光源モジュールが記載されており、各光源は描写パターンに対応している。光源はそれぞれ独立してON/OFFできる。
【0004】
また、特許文献2は、同じ面を照らすための2つの投影装置を備えたヘッドライトを開示しており、その際、2つの投影装置はそれぞれ複数の点光源を備えている。両投射装置の点光源のうち、それぞれの照明領域が重ならないものを無効にすることによって、投影されたシンボルの高輝度化及び高鮮明化を実現している。
【0005】
特許文献3は、シンボルを車道に投影するための2つのヘッドライトを備えた照明装置を提示しており、そのそれぞれのヘッドライトは複数の点光源を有している。投影されるシンボルは2つの部分画像に分割され、その2つの部分画像は、それぞれのヘッドライトに割り当てられている。
【0006】
同様に、このようなHDマトリクスヘッドライトによって、車両前方域に、認識価値を有し、特定のプロセスを伴う画像シーケンスを投影することが可能である。この画像シーケンスは、例えば、車両の始動時に再生されるシナリオによって表現される。このようなシナリオを表示するために、それぞれのメインヘッドライト(Hauptscheinwerfer、略してHSW)に例えば別のライトモジュールを組み込むことができる。このライトモジュールは、光源としてHDマトリックスを使用するが、独自の画像システムを備えており、HSWの特性と比較して、車両前方域を照らす際の画像特性が形式的に優れている。HSWに組み込まれているこのようなライトモジュールの焦点深度は、通常、4メートル強の距離範囲に限られており、その焦点深度においては、例えば、投影された文字が判読できる程度である。一方、車両から1メートル以内の壁に投影すると、投影は非常に非鮮明に見えてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102015224313号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102017114903号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102017115974号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような背景のもとに、本発明の課題は、HDマトリクスヘッドライトを用いた投影方法であって、文字又はシンボル(又は記号)を含む投影すべき画像を、投影可能性に応じて車両前方域に判読可能又は認識可能に表示する方法を提示することである。さらに、この方法を実行できるシステムを提供することも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するために、距離に依存したHDマトリクスヘッドライト投影の方法を提案する。その方法において、車両に含まれる少なくとも1つのHDマトリクスヘッドライトには少なくとも1つのライトモジュールが配置され、そのライトモジュールの光源は、複数の点光源を含むディスプレイを有している。少なくとも1つのライトモジュールによって、コントローラによって設定された画像を車両前方域に投影する。車両前方域は、車両により近い側の領域である近域と、当該近域より前方に遠い領域である遠域とによって構成されており、その際、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールによって、コントローラによって設定された画像を、遠域において鮮明に表示する。少なくとも1つのセンサによって、地面にある少なくとも1つの対象物に向けて、車両前方域を投影方向にスキャンする。スキャンの結果に依存して、設定された画像の投影のために、以下の場合分けを行う。
【0010】
・近域において、少なくとも1つの壁又は壁状の対象物が検出された場合において、少なくとも1つのHDマトリックスヘッドライトに第1のライトモジュールのみが配置されている場合には、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールによって、設定された画像の簡素化された画像の投影を、壁又は壁状の対象物に実行する。
【0011】
・空いている近域が検出され、且つ遠域において壁又は壁状の対象物が検出された場合には、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールによって、設定された画像の投影を、壁又は壁状の対象物に実行する。
【0012】
・空いている車両前方域が検出された場合には、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールによって、設定された画像の地面への投影を実行する。
【0013】
言うまでもなく、上記のような各場合は相互に排他的である。例えば、近域に壁又は壁状の対象物が存在する場合には、遠域にも壁又は壁状の対象物があるかどうかは問題ではない。なぜなら、近域にある壁又は壁状の対象物は、投影方向において、遠域にある壁又は壁状の対象物に必ず影を作るからである。近域に壁又は壁状の対象物がある場合には、必ずそこに画像を完全に投影しようとされる。さらに、壁又は壁状の対象物は、本発明の意味において、設定された画像を投影するのに十分な表面を有する投影面であると解される。
【0014】
近域の例としては、少なくとも1つのHDマトリックスヘッドライトによって形成される車両のメインヘッドライトまでの、最大で2メートルまでの距離又は最大で4メートルまでの距離であると解される。遠域の例としては、それに依存して、2メートル以上又は4メートル以上の距離であると解される。また、それぞれの例は、少なくとも1つのセンサのスキャン距離に依存すると解される。センサが、例えば2メートルの距離までしかスキャンできない場合、近域と遠域との境界は、有利には2メートルに設定される。
【0015】
少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールは、パフォーマンスモジュールとも呼ばれる。なぜなら、第1のライトモジュールは、ロービーム用又はハイビーム用の光学システムとは対照的に、画像内のより小さなピクセルの形において、より高い画質及び高い強さと同時に、対応するコントラストを備えたより良い画質を有するからである。地面に投影する場合、パフォーマンスモジュールは、十分な強さを有し、同時に画像を精細に表現する。
【0016】
設定された画像、例えばレタリング又はラベルを、設定された画像の簡素化された画像、例えばシンボルへの本発明による修正によって、このシンボルは、有利にも、不鮮明な表現の場合においても、近域において認識可能である。これは、このシンボルは、レタリングと比べて大きく表現することもでき、また、複雑でない画像形態を有し、不鮮明の場合であっても、ぼやけの少ない画像形態を有するためである。
【0017】
また、コントローラによって設定された画像は、変化する画像情報を含むことができ、その変化する画像情報として、例えば、家のガレージを出るとき又は到着するときにそれぞれのアニメーションの再生が考えられ得る。その際、それぞれのアニメーションは、例えば、「Leaving-Home」又は「Advanced Coming-Home」のように記された標語とともに、それぞれの運転状況に依存したシナリオに組み込まれる。
【0018】
本発明による方法の一実施形態でおいては、少なくとも1つのHDマトリックスヘッドライトにおける近域の投影のために、少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールが配置されている。コントローラによって設定された画像を、少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールによって、近域において鮮明に表示する。少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールは、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールと比較して、より大きな角度範囲を照らすものである。近域において少なくとも1つの壁又は壁状の対象物が検出された場合に、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールをオフし、且つ、少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールによって、設定された画像の壁又は壁状の対象物への投影を実行するように、車両前方域のスキャンのための場合分けを変更する。
【0019】
少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールは、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールと比較して、より大きな角度範囲において、設定された画像の投影をより大きく形成する。そのため、有利にも、画像の認識性は向上される。さらに、それによって、少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールは、近域においては、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールよりも優れた焦点深度を有する。その際、遠域のための条件は逆となる。
【0020】
その結果、有利にも、投影面からの距離、及び、少なくとも1つのライトモジュールの光学的特性に依存した本発明による方法によって、可能な限り鮮明で且つ認識可能な、設定された画像の再現が可能になる。
【0021】
本発明による方法の別の実施形態においては、近域のために少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールを配置することができない場合には、又は、設定された画像の、コントローラによって簡素化された画像を作成することができない場合には、設定された画像の近域のための投影が防止される。
【0022】
本発明による方法のさらなる実施形態においては、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールには、±10度の角度範囲の照明を選択し、少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールには、±20度の角度範囲の照明を選択する。それによって、少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールによって、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールに比べて、画像内のそれぞれのピクセルは、2倍の大きさにおいて、且つ4倍の暗さにおいて表示される。これは、特に本発明による場合分けの際に有利であることを示す。なぜなら、それによって、近域においては固有の眩しさが軽減され、画像が、品質を失うことなく、見る人にとって好ましいサイズを有する一方で、遠域においては、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールの利点(より少ない描写エラーを有するより小さい開口角)が発揮されるからである。それに対して、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールの光学特性をより短い距離に向けて設計し、その結果、近域に焦点を当てることで、少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールの配置が不要になると、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールに設定された運転タスクの画像要求(例えば、眩しさ軽減、性能、色)に決定的な不利益が生じることになる。
【0023】
本発明による方法のさらなる実施形態においては、コントローラによって設定された画像には複数の記号のシーケンスを選択し、コントローラによって設定され簡素化された画像には複数の記号又は1つの記号のみを選択する。例えば、車両のシルエットのような対象物の表現は、文字又は非常に細かく描かれた画像に対して、より認識しやすく、投影面の前に存在する障害物に関しても画質が影響を受けにくいため、ここでは有利になる。
【0024】
本発明による方法のさらに別の実施形態においては、少なくとも1つのセンサを、超音波センサ、LiDAR(ライダー)、レーダ、運転者支援中央コントローラのカメラ、の中から選択する。超音波センサによって、例えば、2メートルの距離までにおいて、壁又は壁状の対象物が存在するかどうかが検査される。運転者支援中央コントローラ(当業者はzFASと略す)のカメラは、車両の前方に適切な投影面が存在するかどうかを判断するために、特に車両前方域の遠域のスキャンを担う。一般的に、設定された画像を、遠域において壁又は壁状の対象物に投影すると、距離が長くなるにつれてロバスト性が低下するため、この場合は地面への投影を行うことになる。zFASカメラは、そのために必要な情報を提供する。
【0025】
全体的に、本発明による方法は、有利にも、最大で±10度の角度領域を有するHDシステムを取り扱うための処方を提供するものである。運転中のメインヘッドライトとしての使用を超えたこのようなHDシステムにおいて、必要に応じて、設定された画像の簡素化された画像を提案する本発明による場合分けによって、近域の領域においては認識できない投影を防止することも有利である。
【0026】
さらに、距離に依存したHDマトリクスヘッドライト投影用のシステムが請求される。このシステムは、コントローラと、車両に配置された少なくとも1つのHDマトリクスヘッドライトと、少なくとも1つのHDマトリクスヘッドライトに配置された少なくとも1つのライトモジュールと、車両の前方域をスキャンする少なくとも1つのセンサとを含む。少なくとも1つのHDヘッドライトは、光源として、複数の点光源を含むディスプレイを有する。少なくとも1つのライトモジュールは、コントローラによって設定された画像を、車両により近い側の領域である近域と当該近域より前方に遠い領域である遠域とによって構成される車両前方域に投影するように構成されている。少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールは、コントローラによって設定された画像を遠域に光学的に鮮明に投影するように構成されている。少なくとも1つのセンサは、地面に位置する少なくとも1つの対象物に向けて、車両前方域を投影方向にスキャンするように構成されている。コントローラは、さらに、スキャンの結果に依存して、設定された画像の投影のために、以下の場合分けを行うように構成されている。
【0027】
・近域において少なくとも1つの壁又は壁状の対象物が検出された場合において、少なくとも1つのHDマトリックスヘッドライトに第1のライトモジュールのみが配置されている場合には、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールによって、壁又は壁状の対象物への設定された画像の簡素化された画像の投影を実行する。
【0028】
・空いている近域が検出され、且つ遠域において壁又は壁状の対象物が検出された場合には、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールによって、壁又は壁状の対象物への設定された画像の投影を実行する。
【0029】
・空いている車両前方域が検出された場合には、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールによって、設定された画像の地面への投影を実行する。
【0030】
本発明によるシステムの一実施形態においては、近域における設定された画像の投影のために、少なくとも1つのHDマトリクスヘッドライトに、少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールが配置されている。少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールは、コントローラによって設定された画像を近域において焦点深度の範囲内で表示するように構成されている。さらに、少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールは、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールと比較して、より大きな角度範囲を照らすように構成されている。近域において少なくとも1つの壁又は壁状の対象物が検出された場合には、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールがオフされ、少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールによって、設定された画像の壁又は壁状の対象物への投影が実行されるように、設定された画像を投影するための場合分けが変更される。
【0031】
本発明によるシステムの続く一実施形態においては、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールは、±10度の角度範囲の照明を有し、少なくとも1つのライトモジュールの第2のライトモジュールは、±20度の角度範囲の照明を有する。
【0032】
本発明によるシステムのさらなる一実施形態においては、コントローラによって設定された画像は、複数の記号(サイン)のシーケンスを含み、設定された画像の、コントローラによって簡素化された画像は、複数の記号又は1つの記号のみを含む。
【0033】
本発明によるシステムのさらにさらなる一実施形態においては、少なくとも1つのセンサは、超音波センサ、運転者支援中央コントローラのカメラ、LiDAR、レーダ、の中から選択される。
【0034】
このように、本発明による場合分けは、有利にも、それぞれの自由で適切な車両前方域に対して、設定された画像の最適なタイプの投影を提供する。それによって、それぞれの場合において可能な限り最高の画質が実現され、可能な実施形態によれば、疑わしい場合には低品質の画像を防止することができる。
【0035】
本発明のさらなる利点及び実施形態は、本明細書及び添付の図面に示される。
【0036】
上述の特徴及び以下に説明する特徴は、それぞれの場合に示された組み合わせだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせ又は単独においても使用できると解される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明による方法の一実施形態における様々な投影状況を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1においては、本発明による方法の一実施形態における様々な投影状況が示されている。暗闇の中において車両が家のガレージ12、22、32、42に近づく場合が例に挙げられる。その際、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールを用いて、設定された画像11、21、31、41の、コントローラによって指示された投影のみが示される(例えば、ヘッドライトの照明は示されない)。第1の状況10においては、約1メートルの距離にある近くの壁13、例えば側方に移動した庭門への、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールを用いての、設定された画像の、回避されるべき不鮮明な投影11が示されている。その際、車両は、約4メートル離れた遠くの壁12、例えばガレージのドアに向かって移動する。第2の状況20においては、本発明によれば、近くの壁23への、設定された画像の投影が回避され、代わりに約4メートル離れた壁22が選択される。車両が壁22に向かって一直線に移動するため、側方に位置する近くの壁23によって投影経路が妨害されることなく、投影21は、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールによって、完全に鮮明に、及び認識可能に表示される。第3の状況30においては、車両は、第1の状況10及び第2の状況20の2つの状況に比べてややより遠くの壁32の前方に、例えば10メートル離れたところに位置している。遠くの壁32までの車両前方域の遠域は空いている面を有しており、また、この状況30においては、車両前方域内に、例えば、側方に移動した庭門が存在しないため、本発明による場合分けによって、設定された画像の地面への投影31が指示される。第4の状況40においては、車両のメインヘッドライトから約1.5メートルの距離に近くの壁43が存在し、それによって、第3の状況30のような地面への投影はできない。遠くの壁42は、十分な品質によって投影を実行するには遠すぎる。そのため、本発明によれば、設定された画像の簡素化された画像41が、少なくとも1つのライトモジュールの第1のライトモジュールによって、光学的に不鮮明に、或いは、ぼやけて、近くの壁43に表示されるものの、しかしながら、その画像は、所定の記号やシンボル(ここでは一例として、正方形状に配置された4つのドット)への参照の簡素化によって、認識可能に表示される。
【符号の説明】
【0039】
10 近くの壁へのパターン投影
11 近くの壁への不鮮明な画像投影
12 遠くの壁(約4m)
13 近くの壁(約1m)
20 遠くの壁へのパターン投影
21 遠くの壁への画像投影
22 遠くの壁(約4m)
23 近くの壁(約1m)
30 地面へのパターン投影
31 地面への画像投影(約5m)
32 より遠くの壁(約10m)
40 近くの壁への簡素化した画像のパターン投影
41 近くの壁への簡素化した画像の不鮮明な投影
42 より遠くの壁(約10m)
43 近くの壁(約1.5m)
【外国語明細書】