(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008088
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】マルチウェルデバイス及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220105BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20220105BHJP
【ＦＩ】
C12M1/00 A
C12P21/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】ＯＬ
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021081673
(22)【出願日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】16/893,593
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596064112
【氏名又は名称】ポール・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Ｐａｌｌ Ｃｏｒｐｏｒａｔｉｏｎ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ティル， ジェームス ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】トマ， ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン， ウィリアム スコット
(72)【発明者】
【氏名】ラガヴァン， バラス クマル
(72)【発明者】
【氏名】ダレッシオ， ダニエル
【テーマコード（参考）】
4B029
4B064
【Ｆターム（参考）】
4B029BB01
4B029DG08
4B029GA03
4B029HA06
4B064AG01
4B064CA01
4B064CC15
(57)【要約】
【課題】細胞を増殖させた後、目的のタンパク質を得るための新規なマルチウェルデバイス及びその使用方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、前記課題を解決するためのマルチウェルデバイス及びマルチウェルデバイスを使用する濾過方法を提供するものである。本発明による、流体サンプルを処理するためのマルチウェルデバイスは、上側受容プレートと、中間濾過プレートと、下側収集プレートとを備える。このマルチウェルデバイスを用いて、細胞含有流体からタンパク質を得るためには、上側受容プレートのウェル内に細胞含有流体のサンプルを配置し、サンプルを濾過し、もって下側収集プレート内のウェル内にタンパク質含有流体を得る。
【選択図】図１Ａ
【解決手段】本発明は、前記課題を解決するためのマルチウェルデバイス及びマルチウェルデバイスを使用する濾過方法を提供するものである。本発明による、流体サンプルを処理するためのマルチウェルデバイスは、上側受容プレートと、中間濾過プレートと、下側収集プレートとを備える。このマルチウェルデバイスを用いて、細胞含有流体からタンパク質を得るためには、上側受容プレートのウェル内に細胞含有流体のサンプルを配置し、サンプルを濾過し、もって下側収集プレート内のウェル内にタンパク質含有流体を得る。
【選択図】図１Ａ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体サンプルを処理するためのマルチウェルデバイスであって、
上側受容プレートと、中間濾過プレートと、下側収集プレートとを備え、
（ａ）前記上側受容プレートが、細胞を含む流体サンプルを受容するための複数のウェルを備え、前記上側受容プレート内の前記複数のウェルそれぞれが、内面を有する側壁と、下方向に突出するカラー及び底部流体流れポートを含む底端とを含み、前記上側受容プレートが、２つの対の対向する側壁を含み、前記上側受容プレート内の前記２つの対の対向する側壁の少なくとも１つ内の各対向する側壁が、前記中間濾過プレート上の対応する側壁にある対応するウェルの側壁を受容するための下側開口部を有する溝を含み、
（ｂ）前記中間濾過プレートが、複数のウェルを備え、前記中間濾過プレート内の前記複数のウェルそれぞれが、前記上側受容プレート内の対応するウェルの前記底部流体流れポートを通過した前記流体サンプルを濾過するためのフィルタを備え、
各フィルタが、約１マイクロメートル～約２０マイクロメートルの範囲内の平均ポアサイズ、上流面、及び下流面を有する上側深層フィルタ層であって、前記深層フィルタ層の前記上流面が前記フィルタの上流面を構成する、上側深層フィルタ層と、約０．４マイクロメートル～約０．８マイクロメートルの範囲内の平均ポアサイズを有するマイクロポーラス膜を備える中間層と、約０．２マイクロメートルの平均ポアサイズを有するマイクロポーラス膜を備える、上流面及び下流面を有する底層であって、約０．２マイクロメートルの平均ポアサイズを有する前記マイクロポーラス膜の前記下流面が前記フィルタの下流面を構成する、底層とを備え、
前記中間濾過プレート内の前記複数のウェルそれぞれが、内面を有する側壁と、前記フィルタの前記下流面の下方に位置する底壁であって、流体流れポートと、前記底壁から上方向に突出するリブ配置とを含み、前記リブ配置が、前記側壁の前記内面から離間された上面を有する、底壁とを含み、前記フィルタが、前記上側受容プレートの前記下方向に突出するカラーの端部と、前記中間濾過プレート内の前記リブ配置の前記上面との間の圧縮によって前記ウェル内に密封され、
前記中間濾過プレート内の前記複数のウェルのそれぞれの前記底壁はまた、前記流体流れポートを取り囲む下方向に突出するカラーを含み、隣接する中間濾過プレートウェルの下方向に突出するカラー間の空間が、前記下側収集プレート内の対応するウェルの上端を受容するための下側開口部を備えた溝を形成し、
前記中間濾過プレート内の前記流体流れポートが、濾過された流体サンプルが前記中間濾過プレート内のウェルから前記下側収集プレート内の対応するウェルまで進むことを可能にするように配置され、
前記中間濾過プレートの側壁にあるウェルの側壁が、前記上側受容プレートの前記対応する対向する側壁内の対応する溝内に受容可能であり、
（ｃ）前記下側収集プレートが、前記中間濾過プレートの前記対応するウェル内の前記流体流れポートを通過した前記濾過された流体サンプルを受容するように配置された複数のウェルを備え、前記複数のウェルそれぞれが、上端及び底端を有し、前記下側収集プレート内の前記複数のウェルのそれぞれの前記上端が、前記中間濾過プレート内の対応するウェルの前記下方向に突出するカラーを取り囲む溝内に受容可能である、マルチウェルデバイス。
上側受容プレートと、中間濾過プレートと、下側収集プレートとを備え、
（ａ）前記上側受容プレートが、細胞を含む流体サンプルを受容するための複数のウェルを備え、前記上側受容プレート内の前記複数のウェルそれぞれが、内面を有する側壁と、下方向に突出するカラー及び底部流体流れポートを含む底端とを含み、前記上側受容プレートが、２つの対の対向する側壁を含み、前記上側受容プレート内の前記２つの対の対向する側壁の少なくとも１つ内の各対向する側壁が、前記中間濾過プレート上の対応する側壁にある対応するウェルの側壁を受容するための下側開口部を有する溝を含み、
（ｂ）前記中間濾過プレートが、複数のウェルを備え、前記中間濾過プレート内の前記複数のウェルそれぞれが、前記上側受容プレート内の対応するウェルの前記底部流体流れポートを通過した前記流体サンプルを濾過するためのフィルタを備え、
各フィルタが、約１マイクロメートル～約２０マイクロメートルの範囲内の平均ポアサイズ、上流面、及び下流面を有する上側深層フィルタ層であって、前記深層フィルタ層の前記上流面が前記フィルタの上流面を構成する、上側深層フィルタ層と、約０．４マイクロメートル～約０．８マイクロメートルの範囲内の平均ポアサイズを有するマイクロポーラス膜を備える中間層と、約０．２マイクロメートルの平均ポアサイズを有するマイクロポーラス膜を備える、上流面及び下流面を有する底層であって、約０．２マイクロメートルの平均ポアサイズを有する前記マイクロポーラス膜の前記下流面が前記フィルタの下流面を構成する、底層とを備え、
前記中間濾過プレート内の前記複数のウェルそれぞれが、内面を有する側壁と、前記フィルタの前記下流面の下方に位置する底壁であって、流体流れポートと、前記底壁から上方向に突出するリブ配置とを含み、前記リブ配置が、前記側壁の前記内面から離間された上面を有する、底壁とを含み、前記フィルタが、前記上側受容プレートの前記下方向に突出するカラーの端部と、前記中間濾過プレート内の前記リブ配置の前記上面との間の圧縮によって前記ウェル内に密封され、
前記中間濾過プレート内の前記複数のウェルのそれぞれの前記底壁はまた、前記流体流れポートを取り囲む下方向に突出するカラーを含み、隣接する中間濾過プレートウェルの下方向に突出するカラー間の空間が、前記下側収集プレート内の対応するウェルの上端を受容するための下側開口部を備えた溝を形成し、
前記中間濾過プレート内の前記流体流れポートが、濾過された流体サンプルが前記中間濾過プレート内のウェルから前記下側収集プレート内の対応するウェルまで進むことを可能にするように配置され、
前記中間濾過プレートの側壁にあるウェルの側壁が、前記上側受容プレートの前記対応する対向する側壁内の対応する溝内に受容可能であり、
（ｃ）前記下側収集プレートが、前記中間濾過プレートの前記対応するウェル内の前記流体流れポートを通過した前記濾過された流体サンプルを受容するように配置された複数のウェルを備え、前記複数のウェルそれぞれが、上端及び底端を有し、前記下側収集プレート内の前記複数のウェルのそれぞれの前記上端が、前記中間濾過プレート内の対応するウェルの前記下方向に突出するカラーを取り囲む溝内に受容可能である、マルチウェルデバイス。
【請求項2】
前記上側受容プレート内の前記下方向に突出するカラーそれぞれが、内面及び外面を有し、前記上側受容プレート内の隣接する下方向に突出するカラーの前記外面間の空間が、前記中間濾過プレート内の対応するウェルのテーパ状上端を受容するための下側開口部を備えた溝を形成する、請求項１に記載のマルチウェルデバイス。
【請求項3】
細胞含有流体からタンパク質を得るための方法であって、
請求項１又は２に記載のマルチウェルデバイスの上側受容プレートのウェル内に細胞含有流体のサンプルを配置するステップと、
前記サンプルを濾過するステップと、
下側収集プレート内のウェル内にタンパク質含有流体を得るステップと
を含む、方法。
請求項１又は２に記載のマルチウェルデバイスの上側受容プレートのウェル内に細胞含有流体のサンプルを配置するステップと、
前記サンプルを濾過するステップと、
下側収集プレート内のウェル内にタンパク質含有流体を得るステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
[0001]細胞を増殖させた後、目的のタンパク質を得るためのいくつかの手順は、遠心管内で細胞試料を遠心分離することと、上澄みを吸引除去することと、シリンジフィルタを使用して残りの流体中の他の材料からタンパク質を分離することとを含む。
【0002】
[0002]目的のタンパク質を得るための改良されたデバイス及び方法が、必要とされている。
【0003】
[0003]本発明は、先行技術の欠点の少なくともいくつかを改善することを実現する。本発明のこれら及び他の利点は、以下に記載する説明から明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本発明の一実施形態は、流体サンプルを処理するためのマルチウェルデバイス（ｍｕｌｔｉｗｅｌｌ ｄｅｖｉｃｅ）であって、上側受容プレートと、中間濾過プレートと、下側収集プレートとを備え、（ａ）上側受容プレートが、細胞を含む流体サンプルを受容するための複数のウェルを備え、上側受容プレート内の複数のウェルそれぞれが、内面を有する側壁と、下方向に突出するカラー及び底部流体流れポートを含む底端とを含み、上側受容プレートが、２つの対の対向する側壁を含み、上側受容プレート内の２つの対の対向する側壁の少なくとも１つ内の各対向する側壁が、中間濾過プレート上の対応する側壁にある対応するウェルの側壁を受容するための下側開口部を有する溝を含み、（ｂ）中間濾過プレートが、複数のウェルを備え、中間濾過プレート内の複数のウェルそれぞれが、上側受容プレート内の対応するウェルの底部流体流れポートを通過した流体サンプルを濾過するためのフィルタを備え、各フィルタが、約１マイクロメートル～約２０マイクロメートルの範囲内の平均ポアサイズ、上流面、及び下流面を有する上側深層フィルタ層であって、深層フィルタ層の上流面がフィルタの上流面を構成する、上側深層フィルタ層と、約０．４マイクロメートル～約０．８マイクロメートルの範囲内の平均ポアサイズを有するマイクロポーラス膜を備える中間層と、約０．２マイクロメートルの平均ポアサイズを有するマイクロポーラス膜を備える、上流面及び下流面を有する底層であって、約０．２マイクロメートルの平均ポアサイズを有するマイクロポーラス膜の下流面がフィルタの下流面を構成する、底層とを備え、中間濾過プレート内の複数のウェルそれぞれが、内面を有する側壁と、フィルタの下流面の下方に位置する底壁であって、流体流れポートと、底壁から上方向に突出するリブ配置とを含み、リブ配置が側壁の内面から離間された上面を有する、底壁とを含み、フィルタが、上側受容プレートの下方向に突出するカラーの端部と、中間濾過プレート内のリブ配置の上面との間の圧縮によってウェル内に密封され、中間濾過プレート内の複数のウェルのそれぞれの底壁はまた、流体流れポートを取り囲む下方向に突出するカラーを含み、隣接する中間濾過プレートウェルの下方向に突出するカラー間の空間が、下側収集プレート内の対応するウェルの上端を受容するための下側開口部を備えた溝を形成し、中間濾過プレート内の流体流れポートが、濾過された流体サンプルが中間濾過プレート内のウェルから下側収集プレート内の対応するウェルまで進むことを可能にするように配置され、中間濾過プレートの側壁にあるウェルの側壁が、上側受容プレートの対応する対向する側壁内の対応する溝内に受容可能であり、（ｃ）下側収集プレートが、中間プレートの対応するウェル内の流体流れポートを通過した濾過された流体サンプルを受容するように配置された複数のウェルを備え、複数のウェルそれぞれが、上端及び底端を有し、下側収集プレート内の複数のウェルのそれぞれの上端が、中間濾過プレート内の対応するウェルの下方向に突出するカラーを取り囲む溝内に受容可能である、マルチウェルデバイスを提供する。
【0005】
[0005]マルチウェルデバイスの実施形態を使用する濾過方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】本発明の一実施形態による組み立てられたマルチウェルデバイスの上面図である。
【図1C】上側受容プレート内のウェルの底部内に受容された濾過プレート内のウェルを示す拡大断面図であり、上側受領プレートのカラーの下端と中間濾過プレートのリブ配置の上面との間にシールされたフィルタも示しており、カラーの端部及びリブ構成の上面は、フィルタの円周を圧縮している。
【図2A】上側受容プレートの上部斜視図であり、略正方形形状を有するボアを有するウェルの上部も示している。
【図2B】上側受容プレートの上面図である。
【図2C】上側受容プレートの底面図であり、略環状形状を有するボアを有するウェルの下部も示している。
【図2D】図２Ｂの線ＡＡ－ＡＡに沿った上側受容プレートの断面図であり、各ウェルの側壁の内面及び各ウェルの下方向に傾けられた側壁を示しており、この場所ではボアは略正方形形状から略環状形状に変化しており、各ウェルは、底部流体流れポートを提供する下方向に突出するカラーを含み、カラーは、内面及び外面を有し、側壁の内面は、カラーの内面と連続しており、隣接するカラーの外面間の空間は、中間濾過プレート内のウェルの上端を受け入れるための下側開口部を備えた溝を形成し、上側受容プレートの対向する側壁それぞれは、濾過プレートの側壁にある対応するウェルの側壁を受け入れるための下側開口部を備えた溝を形成している。
【図3A】フィルタが存在しない中間濾過プレートの上部斜視図であり、流体流れポート、及び中間濾過プレートウェルの側壁から上方向に突出する径方向構成を有するリブ配置も示している。
【図3B】フィルタが存在しない中間濾過プレートの上面図である。
【図3C】フィルタが存在しない中間濾過プレートの底面図である。
【図3D】フィルタが存在しない中間濾過プレートの、図３Ｂの線Ａ－Ａに沿った中間濾過プレートの断面図であり、中間濾過プレートウェルの底壁の下面から下方向に突出するカラーと、各流体流れポートと流体連通する下方向に突出するスパウトとを示しており、各カラーは、中央に位置するスパウトから離間されており、隣接するカラーの外面間の空間は、下側収集プレート内のウェルの上端を受容するための下側開口部を備えた溝を形成し、ウェルの上端は、上側受容プレート内の対応するウェル内の下方向に突出するカラー間の溝内に受容されるように配置されている。
【図3E】フィルタが存在しない中間濾過プレートの、図３Ｂの線Ａ－Ａに沿ったウェルの断面図であり、側壁の内面から離間された上面を揺するリブ配置を有する底壁を示しており、底壁は、流体流れポートに向かって下方向に傾斜しており、下方向に面するスパウトは、流体流れポートと連通している。
【図4A】下側収集プレートの上面図である。
【図4B】下側収集プレートの底面図である。
【図5】組み立てられたデバイス内の３つのプレートのそれぞれ内のウェルの概略断面図であり、細胞含有流体サンプルを添加する前のウェルを（左側に）示し、上側受容プレート内に細胞を含むウェル、及び下側収集プレート内に濾液を含むウェルを（右側に）示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0011]本発明の一実施形態によれば、流体サンプルを処理するためのマルチウェルデバイスが提供され、マルチウェルデバイスが、上側受容プレートと、中間濾過プレートと、下側収集プレートとを備え、（ａ）上側受容プレートが、細胞を含む流体サンプルを受容するための複数のウェルを備え、上側受容プレート内の複数のウェルそれぞれが、内面を有する側壁と、下方向に突出するカラー及び底部流体流れポートを含む底端とを含み、上側受容プレートが、２つの対の対向する側壁を含み、上側受容プレート内の２つの対の対向する側壁の少なくとも１つ内の各対向する側壁が、中間濾過プレート上の対応する側壁にある対応するウェルの側壁を受容するための下側開口部を有する溝を含み、（ｂ）中間濾過プレートが、複数のウェルを備え、中間濾過プレート内の複数のウェルそれぞれが、上側受容プレート内の対応するウェルの底部流体流れポートを通過した流体サンプルを濾過するためのフィルタを備え、各フィルタが、約１マイクロメートル～約２０マイクロメートルの範囲内の平均ポアサイズ、上流面、及び下流面を有する上側深層フィルタ層であって、深層フィルタ層の上流面がフィルタの上流面を構成する、上側深層フィルタ層と、約０．４マイクロメートル～約０．８マイクロメートルの範囲内の平均ポアサイズを有するマイクロポーラス膜を備える中間層と、約０．２マイクロメートルの平均ポアサイズを有するマイクロポーラス膜を備える、上流面及び下流面を有する底層であって、約０．２マイクロメートルの平均ポアサイズを有するマイクロポーラス膜の下流面がフィルタの下流面を構成する、底層とを備え、中間濾過プレート内の複数のウェルそれぞれが、内面を有する側壁と、フィルタの下流面の下方に位置する底壁であって、流体流れポートと、底壁から上方向に突出するリブ配置とを含み、リブ配置が、側壁の内面から離間された上面を有する、底壁とを含み、フィルタが、上側受容プレートの下方向に突出するカラーの端部と、中間濾過プレート内のリブ配置の上面との間の圧縮によってウェル内に密封され、中間濾過プレート内の複数のウェルのそれぞれの底壁はまた、流体流れポートを取り囲む下方向に突出するカラーを含み、隣接する中間濾過プレートウェルの下方向に突出するカラー間の空間が、下側収集プレート内の対応するウェルの上端を受容するための下側開口部を備えた溝を形成し、中間濾過プレート内の流体流れポートが、濾過された流体サンプルが中間濾過プレート内のウェルから下側収集プレート内の対応するウェルまで進むことを可能にするように配置され、中間濾過プレートの側壁にあるウェルの側壁が、上側受容プレートの対応する対向する側壁内の対応する溝内に受容可能であり、（ｃ）下側収集プレートが、中間プレートの対応するウェル内の流体流れポートを通過した濾過された流体サンプルを受容するように配置された複数のウェルを備え、複数のウェルそれぞれが、上端及び底端を有し、下側収集プレート内の複数のウェルのそれぞれの上端が、中間濾過プレート内の対応するウェルの下方向に突出するカラーを取り囲む溝内に受容可能である。
【0008】
[0012]好ましくは、上側受容プレート内の下方向に突出するカラーそれぞれは、内面及び外面を有し、上側受容プレート内の隣接する下方向に突出するカラーの外面間の空間は、中間濾過プレート内の対応するウェルのテーパ状上端を受容するための下側開口部を備えた溝を形成する。
【0009】
[0013]マルチウェルデバイスの実施形態を使用する濾過方法も提供される。
【0010】
[0014]１つの実施形態では、細胞含有流体からタンパク質を得るための方法が提供され、この方法は、マルチウェルデバイスの一実施形態の上側受容プレートのウェル内に細胞含有流体のサンプルを配置するステップと、サンプルを濾過するステップと、下側収集プレート内のウェル内にタンパク質含有流体を得るステップとを含む。
【0011】
[0015]好適には、タンパク質は、より小さい労働集約的な方法で、より短い時間で得ることができる。さらに、複数の遠心管、ピペットチップ、滅菌フィルタ、及びシリンジの代わりに多壁デバイスを使用することは、より環境に優しい。さらに、上側の正方形又は略正方形のボアと、下側の環状又は略環状のボアとを有する上側受容プレートを使用することにより、フィルタを依然としてウェル内に密封しながら、より大量のサンプルの濾過が可能になる。
【0012】
[0016]各プレート（典型的には略長方形に配置される）は、複数のウェル、図示する実施形態では２４ウェルを含むが、プレートはより多数のウェル、例えば９４ウェル、又は３８４ウェル、又は３８４ウェルよりも多い数、又は２４ウェル未満を含むことができる。典型的には、ウェルは、二次元構成で配置される。上側受容プレート内のウェルの上部を除いて、ウェルは典型的には円筒形であり、ウェルは、流体不透過性壁を有し、サンプリングされる流体の所望の用途及び量に合わせた深さ及び幅を有する。
【0013】
[0017]濾過プレートのウェルの各々は、３つの層又は３つのフィルタ要素を備えるフィルタを含み、いくつかの実施形態では、フィルタは、３つの層又は３つのフィルタ要素からなる。フィルタは、ウェルの底部に配置される。以下でより詳細に説明するように、上側受容プレート及び濾過プレートは、フィルタのそれぞれの上面及び底面の一部に接触する構造を含み、それにより、フィルタは、流体が迂回することなくウェル内に密封される。
【0014】
[0018]次に、本発明の各構成要素について以下でより詳細に説明する。ここで、同様の構成要素は同様の参照番号を有する。
【0015】
[0019]特に図１Ｂ及び図５に示す図示する実施形態によれば、マルチウェルデバイス１０００は、複数のウェル１０１を含む上側受容プレート１００と、各々がフィルタ２５０を含む複数のウェル２０１を含む中間濾過プレート２００と、複数のウェル３０１を含む下側収集プレート３００とを備える。
【0016】
[0020]上側受容プレート１００の図示する実施形態は、図１Ａ～図１Ｃ、図２Ａ～図２Ｄにより詳細に示されている。図示する上側受容プレートは、上部１００Ａ及び下部１００Ｂと、２対の対向する側壁１１０及び１２０と、細胞を含む流体サンプルを受容するための複数のウェル１０１とを有する。ウェル１０１は、内面１０２Ａを有する側壁１０２と、上端１３０Ａと、底端１３０Ｂと、底壁１０３と、受容プレート底部流体流れポート１０５を有する下方向に突出するカラー１０４とを有する。ウェルそれぞれは、ボア１２５を有する。下方向に突出するカラー１０４は、内面１０２Ａと連続的である内面１０４Ａと、外面１０４Ｂと、端部１０４Ｃ（図１Ｃを参照されたい。）とを有する。以下でより詳細に論じるように、カラー端部１０４Ｃは、中間濾過プレートのウェル内のフィルタの上面を圧縮して、ウェル内のフィルタの密封を助ける。
【0017】
[0021]好ましくは、受容プレート内の隣接する下方向に突出するカラー１０４の外面１０４Ｂ間の空間は、中間濾過プレート２００内の対応するウェル２０１の上端２３０Ａを受容するための下側開口部を備えた溝１０９’を形成する（図１Ｂ及び図１Ｃを参照されたい）。参照のために図１Ｃを使用すると、好ましくは、溝１０９’内に受容される上端２３０Ａはテーパ状であり、いくつかの実施形態では、外面１０４Ｂの下部は窪んでおり、２３０のテーパ状上端は、隣接する外面を押し広げ、上側受容プレート内に受容されるときに窪みを越えて到達する。
【0018】
[0022]好ましくは、特に図２Ａに示すように、ウェルの上側ボア１２５Ａは、正方形の構成を有し、下側ボア１２５Ｂは、環状構成を有する。
【0019】
[0023]少なくとも１対の対向する側壁（対向する側壁１１０として示す）は、下部１００Ｂに、中間濾過プレート２００上の対応する側壁２１０にある対応するウェルの側壁２０２を受け入れるための下側開口部を有する溝１０９を含む（図１Ｂ及び図１Ｃを参照されたい）。
【0020】
【0021】
[0025]中間濾過プレート２００の図示する実施形態は、図１Ｂ、図１Ｃ、及び図３Ａ～図３Ｅにより詳細に示されている。図示する中間濾過プレートは、２対の対向する側壁２１０及び２２０と、上側受容プレートウェル１０１から進んできた細胞を含む流体サンプルを受容するための複数のウェル２０１とを含む。ウェル２０１は、内面２０２Ａを有する側壁２０２と、上端２３０Ａ（図１Ｃに示すように溝１０９’内に嵌合する端部に合わせてテーパ状である）と、下端２３０Ｂと、底壁２０３とを有し、底壁は、底壁から上方向に突出するリブ配置２１５であって、側壁の内面から離間された上面２１５Ａを有する（図１Ｃ及び図３Ｅを参照されたい）、リブ配置と、スパウト２０７と連通する濾過プレート流体流れポート２０５と、スパウトを取り囲み、スパウトから離間された下方向に突出するカラー２０４であって、内面２０４Ａ及び外面２０４Ｂを有する、下方向に突出するカラーとを有する。図３Ｅは、流体流れポートに向かって下方向に傾斜した底壁を示す。隣接する中間濾過プレートウェルの下方向に突出するカラーの外面間の空間は、下側収集プレート３００内の対応するウェル３０１の上端３３０Ａを受け入れるための下側開口部を備えた溝２０９を形成する（図１Ｂを参照されたい）。
【0022】
[0026]図示するリブ配置２１５は、側壁の近くに環状の上方向に突出する外側リブを有し、より中央に位置して、径方向に配置された上方向に突出する複数のリブを有する。好ましくは、図示するように、リブの上面は非平面であり、例えば丸みを帯びている。径方向に配置された上方向に突出する複数のリブは、ウェルのための排水格子を構成することができる。
【0023】
[0027]図３Ｃに示すように、中間濾過プレートの下部は、複数の強化リブ２８０を含むことができる。
【0024】
[0028]図１Ｂ及び図１Ｃに示すように、中間濾過プレート２００のウェル２０１は、フィルタ２５０を含み、フィルタのそれぞれは、深層フィルタ２５１を備える上層と、マイクロポーラス膜２５２を備える中間層と、マイクロポーラス膜２５３を備える底層とを備える。各層は、上流面及び下流面を有し、上層の上流面は、フィルタの上流面２５１Ａを含み、底層の下流面は、フィルタの下流面２５３Ａを含む。
【0025】
[0029]図１Ｃに示すように、上側受容プレート１００のカラー端部１０４Ｃは、中間濾過プレートのウェル内のフィルタの上流面を圧縮し、リブ配置２１５の上面２１５Ａ（特に側壁近くの環状外側リブの上面）は、フィルタの下流面を圧縮し、したがって迂回を可能にすることなくフィルタをウェル内に密封する。
【0026】
[0030]フィルタ層は、任意の適切なポア構造、例えば、（例えば、バブルポイントによって、又は例えば米国特許第４，３４０，４７９号明細書に記載されているようなＫＬによって、又は毛細管凝縮流動ポロメトリーによって証明された）ポアサイズ、ポア率、（例えば、米国特許第４，９２５，５７２号明細書に記載されているような修正されたＯＳＵＦ２試験を使用して特徴付けられる場合）ポア直径、又は流体が層を通過するときに１つ又は複数の目的の材料の通過を低減又は可能にする除去率を有することができる。
【0027】
[0031]典型的には、深層フィルタ層は、約１マイクロメートル～約２０マイクロメートルの範囲内、好ましくは約６マイクロメートル～約１５マイクロメートルの範囲内の平均孔径を有する。典型的には、中間層膜は、約０．４マイクロメートル～約０．８マイクロメートルの範囲内の平均ポアサイズを有し、いくつかの実施形態では、約０．６５マイクロメートルの平均ポアサイズを有する。底層膜は、好ましくは、例えば約０．２マイクロメートルの平均ポア率を有する滅菌濾過をもたらすように評価される。
【0028】
[0032]様々な適切なフィルタ層が市販されている。
【0029】
[0033]フィルタ層は、任意の所望の臨界湿潤表面張力（例えば、米国特許第４，９２５，５７２号明細書に定義されているＣＷＳＴ）を有することができる。ＣＷＳＴは、当技術分野で知られているように、例えば、米国特許第５，１５２，９０５号明細書、同第５，４４３，７４３号明細書、同第５，４７２，６２１号明細書、及び同第６，０７４，８６９号明細書にさらに開示されているように選択することができる。
【0030】
[0034]下側収集プレート３００の図示する実施形態は、図１Ｂ及び図４Ａ～図４Ｃにより詳細に示されている。図示する下側収集プレートは、２対の対向する側壁３１０及び３２０と、中間濾過プレートウェル２０１から進んだ濾過された流体サンプルを受容するための複数のウェル３０１とを含む。ウェル３０１は、内面３０２Ａを有する側壁３０２と、上端３３０Ａと、下端３３０Ｂと、底壁３０３とを有する。図１Ｂに示すように、下側収集プレート３００内のウェルの上端３３０Ａは、中間濾過プレート２００内の対応するウェル２０１の下方向に突出するカラー２０４を取り囲む溝２０９内に受容可能である。
【0031】
[0035]プレートは、処理される流体と適合する任意の不透過性熱可塑性材料を含む任意の適切な剛性不透過性材料から製造することができる。例えば、プレートは、ステンレス鋼などの金属から、又はポリマーから製造することができる。好ましい実施形態では、プレートは、アクリル、ポリプロピレン、ポリスチレン、又はポリカーボネート樹脂などのポリマーから製造される。
【0032】
[0036]以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、当然ながら、決してその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例0033】
[0037]この実施例は、哺乳動物（チャイニーズハムスター卵巣；（ＣＨＯ））の細胞含有流体サンプルからのタンパク質の分離を実証する。サンプルは、２５００万細胞／ｍｌ超の密度を有する５ｍｌのＣＨＯ細胞培養物であり、評価するタンパク質の量がより多くなるように（総タンパク質約１０ｍｇ及びＩｇＧ約３ｍｇ）、ガンマグロブリン（ＩｇＧを含有）を添加した。
【0034】
[0038]マルチウェルデバイスが、図に全体的に示すように組み立てられる。フィルタは３つの層を含む。最上流層は、深層フィルタシート（ＳＥＩＴＺ Ｋ Ｃｅｌｌｕｌｏｓｅ ７００Ｐ；Ｐａｌｌ Ｃｏｒｐｏｒａｔｉｏｎ；ポートワシントン、ニューヨーク州）であり、中間層は、０．６５μｍの非対称ポリエーテルスルホン膜であり、底層は、０．２μｍの対称ポリエーテルスルホン膜（底層と組み合わされた中間層は、ＳＵＰＯＲ ＥＫＶ フィルタとして市販されている；Ｐａｌｌ Ｃｏｒｐｏｒａｔｉｏｎ；ポートワシントン、ニューヨーク州）である。
【0035】
[0039]１組のサンプルを真空マニホールド装置（Ｐａｌｌ Ｃｏｒｐｏｒａｔｉｏｎ Ｍｕｌｔｉ－ＷｅｌｌＰｌａｔｅ Ｖａｃｕｕｍ Ｍａｎｉｆｏｌｄ）を用いて濾過し、別の組の細胞を遠心分離（Ｅｐｐｅｎｄｏｒｆ ５８１０遠心分離機）を用いて濾過する。
【0036】
[0040]結果は、以下の通りである。
【表1】
【0037】
[0041]結果は、全体的に、真空及び遠心分離の両方を使用した濾過について同様である。
【0038】
[0042]この実施例は、デバイスが吸収性及び濁度に影響を及ぼす細胞を除去し、タンパク質の回収を可能とすることを示した。
【0039】
[0043]本明細書で引用する刊行物、特許出願、及び特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが個別にかつ具体的に示され、その全体が本明細書に記載されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
[0044]発明を説明する文脈において（特に特許請求の範囲の文脈において）用語「１つ（ａ）」及び「１つ（ａｎ）」及び「その（ｔｈｅ）」及び「少なくとも１つ（ａｔ ｌｅａｓｔ ｏｎｅ）」及び同様の指示対象の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を対象とすると解釈されるものである。「少なくとも１つ」という用語の後に１つ又は複数の項目のリスト（例えば、「Ａ及びＢの少なくとも１つ」）を使用することは、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、リストされた項目（Ａ又はＢ）から選択された１つの項目、又はリストされた項目（Ａ及びＢ）の２つ以上の任意の組み合わせを意味すると解釈されるものである。「備える」、「有する」、「含む」、及び「含有する」という用語は、別段明記しない限り、制限のない用語（すなわち、「含むが、これらに限定されない」を意味する）として解釈されるものである。本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書で別段の指示がない限り、範囲内にある各個別の値を個別に参照する簡略化された方法として役立つことを意図するにすぎず、各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に説明するすべての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、又は例示的な言語（例えば、「など」）の使用は、本発明をよりよく明らかにすることを意図するにすぎず、別段の請求がない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中の言語は、請求されていない要素を本発明の実施に必須であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0041】
[0045]本発明を実施するために発明者に知られている最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が、本明細書に説明される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読むことで、当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がそのような変形を適切に使用することを期待し、本発明者らは、本明細書に具体的に説明する以外の方法で本発明を実施することを意図する。したがって、本発明は、適用される法律によって許可されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された主題のすべての改変形態及び同等物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上記で説明する要素の任意の組み合わせは、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【符号の説明】
【0042】
１００…上側受容プレート、１００Ａ…上部、１００Ｂ…下部、１０１…上側受容プレートウェル、１０２…側壁、１０２Ａ…内面、１０３…底壁、１０４…下方向に突出するカラー、１０４Ａ…内面、１０４Ｂ…外面、１０４Ｃ…カラー端部、１０５…受容プレート底部流体流れポート、１０９…溝、１０９’…溝、１１０…側壁、１２５…ボア、１２５Ａ…上側ボア、１２５Ｂ…下側ボア、１３０Ａ…上端、１３０Ｂ…底端、１８０…強化リブ、２００…中間濾過プレート、２０１…中間濾過プレートウェル、２０２…側壁、２０２Ａ…内面、２０３…底壁、２０４…下方向に突出するカラー、２０４Ａ…内面、２０４Ｂ…外面、２０５…濾過プレート流体流れポート２０５、２０７…スパウト、２０９…溝、２１０…側壁、２１５…リブ配置、２１５Ａ…上面、２３０Ａ…上端、２３０Ｂ…下端、２５０…フィルタ、２５１…深層フィルタ、２５１Ａ…上流面、２５２…マイクロポーラス膜、２５３…マイクロポーラス膜、２５３Ａ…下流面、２８０…強化リブ、３００…下側収集プレート、３０１…ウェル、３０２…側壁、３０２Ａ…内面、３０３…底壁、３１０…側壁、３３０Ａ…上端、３３０Ｂ…下端、１０００…マルチウェルデバイス
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【外国語明細書】