(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080899
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】電動コンプレッサ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20220524BHJP
F04D 29/056 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
F04D29/58 Q
F04D29/056 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019062547
(22)【出願日】2019-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 国彰
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕司
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 達身
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 光
(72)【発明者】
【氏名】飯嶋 海
(72)【発明者】
【氏名】福井 達哉
(72)【発明者】
【氏名】湯本 良介
(72)【発明者】
【氏名】勝 義仁
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB07
3H130AB27
3H130AB42
3H130AC14
3H130BA33E
3H130BA33G
3H130BA66E
3H130BA66G
3H130CA21
3H130DB01X
3H130DB08X
3H130DD01Z
3H130DG01X
(57)【要約】
【課題】電動コンプレッサの高性能化を図る。
【解決手段】電動コンプレッサ1は、回転軸6と、コンプレッサインペラ7と、回転軸6を回転可能に支持する軸受13A、13Bと、回転軸6およびコンプレッサインペラ7を回転させるモータ3と、軸受13Bおよびモータ3を収容するモータハウジング18と、を備える。モータハウジング18は、ハウジング開口23aを含むモータハウジング18と、軸受13Bを保持するスリーブ部16を含む背面プレート19と、を有する。背面プレート19は、軸受13Bのための冷却水を流動させる流路を形成する流路形成部材28を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を有すると共に、前記回転軸線の方向における第1端および第2端を含む回転軸と、
前記回転軸の前記第1端に取り付けられ、前記第2端の方を向く背面を含むコンプレッサインペラと、
前記回転軸の前記第2端に取り付けられ、前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、
前記第1端および前記第2端の間に配置され、前記回転軸および前記コンプレッサインペラを回転させるモータと、
前記軸受および前記モータを収容するケーシングと、を備え、
前記ケーシングは、
前記第2端側の端部に設けられたハウジング開口を含み、前記回転軸線に沿って延びるハウジングと、
前記軸受を保持する軸受保持部を含み、前記ハウジングの端部に取り付けられ、前記ハウジング開口を閉鎖するプレートと、を有し、
前記プレートは、前記軸受のための冷却液を流動させる流路を形成する流路形成部材を含む、電動コンプレッサ。
【請求項2】
前記流路形成部材は、前記回転軸線上であって前記軸受の背面側に配置される、請求項1に記載の電動コンプレッサ。
【請求項3】
前記プレートは、
前記回転軸線上に設けられた前記軸受保持部と、前記軸受保持部に対して背面側に設けられた壁部と、を含み、前記ハウジングに固定されて前記ハウジング開口を閉鎖する閉鎖部材と、
前記壁部に対面する流路端面を含み、前記壁部から前記流路端面が前記背面側に離間して配置されるように前記閉鎖部材に固定される前記流路形成部材と、を含み、
前記壁部と前記流路端面との隙間は、前記流路を構成する、請求項1又は2に記載の電動コンプレッサ。
【請求項4】
前記流路形成部材は、前記流路端面に開口する第1流路穴および第2流路穴を含む、請求項3に記載の電動コンプレッサ。
【請求項5】
前記流路形成部材は、
前記流路端面に開口する第1流路穴および第2流路穴と、
前記回転軸線上に設けられて前記流路端面から突出し、前記壁部に当接する軸面部と、
前記流路端面から突出し、前記第1流路穴の開口と前記第2流路穴の開口との間に設けられた仕切り壁部と、を含み、
前記仕切り壁部は、前記第1流路穴の開口と前記第2流路穴の開口とを結ぶ仮想線と交差する位置に設けられる、請求項3又は4に記載の電動コンプレッサ。
【請求項6】
前記ハウジングに設けられ、前記冷却液を受け入れる冷却液導入部と、
前記ハウジングに設けられ、前記冷却液を排出する冷却液排出部と、
一方の端部が前記冷却液導入部に接続され、他方の端部が前記流路形成部に接続された第1チューブと、
一方の端部が前記冷却液排出部に接続され、他方の端部が前記流路形成部に接続された第2チューブと、をさらに備える、請求項3~5のいずれか一項に記載の電動コンプレッサ。
【請求項7】
前記ハウジングに設けられ、前記冷却液を受け入れる冷却液導入部と、
前記ハウジングに設けられ、前記冷却液を排出する冷却液排出部と、
前記プレートに設けられ、前記冷却液導入部から前記流路形成部材へ前記冷却液を導く第1流路部と、
前記プレートに設けられ、前記流路形成部材から前記冷却液排出部へ前記冷却液を導く第2流路部と、をさらに備える、請求項3~5のいずれか一項に記載の電動コンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動コンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、発電機および電動機を備えたターボチャージャを開示する。このターボチャージャは、水ジャケットを備える。水ジャケットは、発電機の固定子を保持する固定子取り付け部の内部において、冷却対象である固定子を囲むように設けられている。特許文献2は、電動過給機のステータを冷却するモータを開示する。このモータが備える冷却構造は、冷却対象であるステータの軸線のまわりを囲むように設けられた貫通流路を有する。特許文献3は、ターボチャージャシステムを開示する。このシステムのハウジングには、ステータに近接する流路が設けられている。この流路を通過する油は、軸受の潤滑にも利用されることが開示されている。特許文献4は、軸受の冷却構造を開示する。この冷却構造では、軸受を周方向に均一に冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-130176号公報
【特許文献2】特開2017-99417号公報
【特許文献3】特表2001-527613号公報
【特許文献4】特開2017-141924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該技術分野では、コンプレッサの高性能化が望まれている。コンプレッサの高性能化は、インペラの回転数の増加を伴う。その結果、回転軸および回転軸を受ける軸受の回転数も増加する。軸受の回転数が増加すると、回転により軸受に生じる熱も増加する。軸受が所望の性能を発揮可能な温度範囲は決められていることが多い。従って、軸受の仕様温度に起因して、回転数にも制限が発生し、ひいてはコンプレッサの高性能化が妨げられるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示では、高性能化が可能な電動コンプレッサを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電動コンプレッサは、回転軸線を有すると共に、回転軸線の方向における第1端および第2端を含む回転軸と、回転軸の第1端に取り付けられ、第2端の方を向く背面を含むコンプレッサインペラと、回転軸の第2端に取り付けられ、回転軸を回転可能に支持する軸受と、第1端および第2端の間に配置され、回転軸およびコンプレッサインペラを回転させるモータと、軸受およびモータを収容するケーシングと、を備え、ケーシングは、第2端側の端部に設けられたハウジング開口を含み、回転軸線に沿って延びるハウジングと、軸受を保持する軸受保持部を含み、ハウジングの端部に取り付けられ、ハウジング開口を閉鎖するプレートと、を有し、プレートは、軸受のための冷却液を流動させる流路を形成する流路形成部材を含む。
【0007】
電動コンプレッサでは、軸受が生じる熱を排出する冷却液を、プレートに設けた流路に流している。従って、軸受が生じた熱は、冷却液に移動する。その結果、熱を含んだ冷却液は流路を通じて電動コンプレッサの外部へ排出することが可能になる。従って、軸受から熱が良好に取り除かれるので、軸受を冷却することが可能である。その結果、軸受の回転数が増加した場合であっても、軸受の温度を所望の仕様温度範囲に収めることが可能になる。従って、回転数の増加が抑制されにくくなるので、電動コンプレッサの高性能化を図ることができる。
【0008】
本開示の電動コンプレッサにおいて、流路形成部材は、回転軸線上であって軸受の背面側に配置されてもよい。この構成によれば、流路を構成する部材が軸受の周囲に配置されることがない。その結果、軸受の周囲に電動コンプレッサを構成する部品を配置することができる。従って、ケーシングの内部空間を有効に利用することが可能になるので、電動コンプレッサを小型化することができる。
【0009】
本開示の電動コンプレッサにおいて、プレートは、回転軸線上に設けられた軸受保持部と、軸受保持部に対して背面側に設けられた壁部と、を含み、ハウジングに固定されてハウジング開口を閉鎖する閉鎖部材と、壁部に対面する流路端面を含み、壁部から流路端面が背面側に離間して配置されるように閉鎖部材に固定される流路形成部材と、を含み、壁部と流路端面との隙間は、流路を構成してもよい。この構成によれば、軸受から移動する熱は、軸受保持部から壁部に移動し、その後に壁部から冷却液に移動する。ここで、円筒形状を有する軸受の背面側に設けられた壁部は、所定の面積が確保される。従って、壁部と冷却液との接触面積を確保できるので、良好な熱移動を実現することができる。
【0010】
本開示の電動コンプレッサにおいて、流路形成部材は、流路端面に開口する第1流路穴および第2流路穴を含んでもよい。この構成によれば、部品点数を増加させることなく、冷却液を外部から導入すると共に熱を受けた冷却液を外部に排出することができる。
【0011】
本開示の電動コンプレッサにおいて、流路形成部材は、流路端面に開口する第1流路穴および第2流路穴と、回転軸線上に設けられて流路端面から突出し、壁部に当接する軸面部と、流路端面から突出し、第1流路穴の開口と第2流路穴の開口との間に設けられた仕切り壁部と、を含み、仕切り壁部は、第1流路穴の開口と第2流路穴の開口とを結ぶ仮想線と交差する位置に設けられてもよい。回転軸線の周りに形成される流路の長さは、第1流路口から第2流路口までの距離である。この構成によれば、第1流路口と第2流路口までの距離が十分に確保される。その結果、冷却液と壁部との接触面積を十分に確保することが可能であるので、さらに良好な熱移動を実現することができる。
【0012】
本開示の電動コンプレッサは、ハウジングに設けられ、冷却液を受け入れる冷却液導入部と、ハウジングに設けられ、冷却液を排出する冷却液排出部と、一方の端部が冷却液導入部に接続され、他方の端部が流路形成部に接続された第1チューブと、一方の端部が冷却液排出部に接続され、他方の端部が流路形成部に接続された第2チューブと、をさらに備えてもよい。この構成によれば、簡易な構成によって、モータおよび軸受を冷却することができる。
【0013】
本開示の電動コンプレッサは、ハウジングに設けられ、冷却液を受け入れる冷却液導入部と、ハウジングに設けられ、冷却液を排出する冷却液排出部と、プレートに設けられ、冷却液導入部から流路形成部材へ冷却液を導く第1流路部と、プレートに設けられ、流路形成部材から冷却液排出部へ冷却液を導く第2流路部と、をさらに備えてもよい。この構成によれば、部品点数の増加させることなく、モータおよび軸受を冷却することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の電動コンプレッサは、高性能化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の電動コンプレッサを示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電動コンプレッサの要部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、流路形成部材の先端面を平面視した図である。
【
図5】
図5は、変形例の電動コンプレッサの要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。以下の説明において、特に断らない限り、「径方向」および「周方向」との語は、回転軸6或いは回転軸線Xを基準として用いられる。また、「主面」とは、その法線の向きが回転軸の第2端から第1端へ向かう面をいう。「背面」とは、その法線の向きが回転軸の第1端から第2端へ向かう面をいう。
【0017】
図1に示される電動コンプレッサ1は、たとえば車両または船舶の内燃機関に適用される。電動コンプレッサ1は、遠心圧縮機の一種であり、コンプレッサ2を備えている。電動コンプレッサ1は、モータ3によってコンプレッサ2を駆動する。その結果、コンプレッサ2の動作によって、空気等の気体が圧縮される。
【0018】
電動コンプレッサ1は、たとえば車両または船舶の内燃機関に適用された過給機(図示せず)に接続されてもよい。その場合、電動コンプレッサ1は、過給機のコンプレッサに対して圧縮空気を送る。過給機に電動コンプレッサ1を組み合わせることにより、電動コンプレッサ1は、過給機の立ち上げを助けることができる。
【0019】
電動コンプレッサ1は、ケーシング4と、ケーシング4内で回転可能に支持された回転軸6と、回転軸6に取り付けられたコンプレッサインペラ7と、を有する。ケーシング4は、モータ3を収納するモータケーシング8と、コンプレッサインペラ7を収納するコンプレッサケーシング9と、を有する。コンプレッサケーシング9は、モータケーシング8の第1端側(図示左側)に設けられている。コンプレッサケーシング9は、吸入口9aと、スクロール部9bと、吐出口9cと、を含む。なお、モータケーシング8の径方向外側または第2端側(図示右側)等に、インバータおよびインバータケーシング等が設けられてもよい。
【0020】
回転軸6は、回転軸線Xを有する。回転軸6は、回転軸線Xの方向における第1端6aと、第2端6bと、第1端6aおよび第2端6bの間の中央部6cと、を含む。回転軸6の第2端6bおよび中央部6cは、モータケーシング8に収容されている。回転軸6の第1端6aは、モータケーシング8から突出しており、モータケーシング8の外部に位置する。第1端6aは、コンプレッサケーシング9内に配置されている。
【0021】
モータ3は、ロータ11と、ステータ12と、を有する。ロータ11は、回転軸6の中央部6cに取り付けられており、回転軸6に固定された一または複数の永久磁石(図示せず)を含む。ステータ12は、ロータ11を包囲するようにしてモータケーシング8の内面に保持されている。すなわち、ステータ12は、回転軸6の周囲に配置されている。ステータ12は、ロータ11を包囲するように配置された円筒状のコア12aと、コア12aに導線が巻回されてなるコイル12bとを含む。導線を通じてステータ12のコイル12bに交流電流が流されると、ロータ11およびステータ12の相互作用によって、回転軸6とコンプレッサインペラ7とが一体になって回転する。コンプレッサインペラ7が回転すると、コンプレッサインペラ7は、吸入口9aを通じて外部の空気を吸入し、スクロール部9bを通じて空気を圧縮し、吐出口9cから吐出する。吐出口9cから吐出された圧縮空気は、前述の内燃機関に供給される。
【0022】
上記構成を別の観点で説明すると、ロータ11とコイル12bとを含むモータ3は、回転軸6の第1端6aおよび第2端6bの間に配置されている。モータ3は、通電を受けて、回転軸6およびコンプレッサインペラ7を回転させるように構成されている。
【0023】
電動コンプレッサ1は、ケーシング4に対して回転軸6を回転可能に支持する軸受13A、13Bを備える。軸受13A、13Bは、モータケーシング8内に設けられている。軸受13A、13Bは、回転軸線Xの方向に離間して配置され、回転軸6を両持ちで支持している。軸受13Aは、モータケーシング8のコンプレッサインペラ7側に形成された円筒状のスリーブ部14に保持されている。軸受13Bは、モータケーシング8のコンプレッサインペラ7とは反対側に形成された円筒状のスリーブ部16(軸受保持部)に保持されている。軸受13Aおよび軸受13Bの間に、モータ3が配置される。
【0024】
コンプレッサインペラ7は、たとえば回転軸6の第1端6aに設けられた軸端ナット17によって、回転軸6に取り付けられている。回転軸6と、回転軸6に固定されたコンプレッサインペラ7、ロータ11、ならびに軸受13A、13Bとは、ケーシング4内で一体となって回転体を構成している。
【0025】
ここで、モータケーシング8は、モータ3のステータ12および軸受13Bを冷却する冷却構造を備えている。以下、モータケーシング8が備える冷却構造について、詳細に説明する。
【0026】
モータケーシング8は、回転軸6、ロータ11、ステータ12、軸受13A、13Bを収容する。モータケーシング8は、モータハウジング18と、背面プレート19と、を有する。
【0027】
モータハウジング18は、端面壁21と、側壁22と、を有している。例えば、モータハウジング18の形状は、一端が閉鎖された円筒状又は角筒状であってよい。つまり、モータハウジング18の一方の端部は、端面壁21によって閉鎖されている。モータハウジング18の他方の端部23は、開放されており、ハウジング開口23aを形成する。端面壁21は、軸受13Aを保持するスリーブ部14を含む。軸受13Aは、回転軸6においてコンプレッサインペラ7側を支持している。従って、端面壁21は、コンプレッサインペラ7側に配置される。スリーブ部14には、軸受13Aの外形形状とほぼ同じ配置穴が設けられている。軸受13Aは、この配置穴にはめ込まれている。従って、スリーブ部14は、回転軸線X上に設けられている。さらに具体的には、スリーブ部14の配置穴の中心軸は、回転軸線Xと重複する。
【0028】
モータハウジング18は、モータ3を冷却するためのモータ冷却部24を有する。モータ冷却部24は、例えば、モータハウジング18に設けられたハウジング流路24sを含む。当該ハウジング流路24sに冷却水が提供されると、モータ3のステータ12が発する熱が冷却水に移動し、モータハウジング18の外部に排出される。モータ冷却部24は、ハウジング導入口24aと、ハウジング排出口24bと、ハウジング流路24sと、を含む。ハウジング導入口24aは、他方の端部23に設けられており、ハウジングチューブ接続部26A(冷却液導入部)が接続されている。
【0029】
ハウジング流路24sは、モータハウジング18の側壁22の内部に設けられている。ハウジング流路24sは、回転軸線Xのまわりにステータ12を囲んでいる。この構成によれば、ステータ12が発する熱を効率よく排出することができる。ハウジング排出口24bは、ハウジング導入口24aと同様に、他方の端部23に設けられており、ハウジングチューブ接続部26B(冷却液排出部)が接続されている。
【0030】
モータハウジング18は、軸受13Bを収容している。従って、モータハウジング18の他方の端部23は、回転軸線Xにおいて回転軸6の第2端6bよりも突出している。他方の端部23には、背面プレート19が取り付けられている。背面プレート19は、ハウジング開口23aを閉鎖する。背面プレート19は、閉鎖部材27と、流路形成部材28と、を含む。
【0031】
図2に示すように、閉鎖部材27は、フランジ29と、本体31と、を含む。回転軸線Xの方向から見てフランジ29は、ハウジング開口23aを覆っている。従って、フランジ29の縁部は、モータハウジング18の他方の端部23に固定されている。フランジ29の外周部には、貫通穴29HA、29HBが設けられている。貫通穴29HAは、ハウジング導入口24aに接続されている。貫通穴29HBは、ハウジング排出口24bに接続されている。さらに、フランジ29には、流路形成部材28を固定するためのねじ穴(不図示)が設けられている。
【0032】
フランジ29において、回転軸線Xが通る領域には、本体31が設けられている。本体31の形状は、略円筒状であり、本体31の中心軸線は、回転軸線Xと重複する。本体31は、フランジ29の主面29aに設けられており、モータ3に向かって主面29aから突出する。
【0033】
本体31の形状は、略円筒形状である。本体31は、周壁31aと、隔離壁35と、を含む。周壁31aの一方の端部は、モータ3に対面する。周壁31aの他方の端部は、フランジ29の主面29aに連続する。隔離壁35は、内部領域S1および外部領域S2を形成する。つまり、隔離壁35は、周壁31aの両端の間に設けられている。隔離壁35によって隔離された内部領域S1および外部領域S2は、互いに水密および気密が保たれてもよい。そして、隔離壁35は、周壁31aに対して熱的に接続されている。周壁31aおよび隔離壁35は、一体化されている。
【0034】
内部領域S1は、周壁31aの先端側の一部と隔離壁35とに囲まれている。ここで、内部領域S1を囲む周壁31aの一部は、スリーブ部16である。このスリーブ部16は、軸受13Bに対して熱的に接続されている。ここでいう熱的に接続されているとは、スリーブ部16の内周面16aが軸受13Bの外周面13Baに対して直接に接触(押圧)されている場合を含む。さらに、熱的に接続されているとは、スリーブ部16の内周面16aと軸受13Bの外周面13Baとの間に伝熱グリスといった別の部材が配置されている場合を含んでもよい。この構成によれば、軸受13Bにおいて生じた熱は、軸受13Bの外周面13Baからスリーブ部16の内周面16aに伝わる。
【0035】
さらに、この内部領域S1には、回転軸6の第2端6bと、軸受13Bと、が配置されている。例えば、内部領域S1に配置された回転軸6の第2端6bは、単に、回転可能に支持されているだけであり、第2端6bにコンプレッサ2とは別の流体機械(例えば、タービンインペラ)が接続されることはない。さらに、内部領域S1には、軸受13Bをモータ3に向けて押圧する圧縮バネ32が配置されている。圧縮バネ32は、軸受13Bと、隔離壁35の主面35aとの間に配置されている。
【0036】
外部領域S2は、周壁31aの基端側の一部と、隔離壁35とに囲まれている。
図2では、外部領域S2の内径は、内部領域S1の内径と同じである例を示している。しかし、外部領域S2の内径は、内部領域S1の内径と異なっていてもよい。外部領域S2は、フランジ29の背面29bに形成されたフランジ開口29sを含む。このフランジ開口29sを介して、外部領域S2には、流路形成部材28が差し込まれる。
【0037】
流路形成部材28は、閉鎖部材27と協働して、軸受13Bを冷却するための流路を形成する。流路形成部材28は、回転軸線X上であって、軸受13Bの背面側に配置される。ここでいう回転軸線X上の位置とは、軸受13Bの外周面13Ba上の位置を除く全ての位置を含む。つまり、流路形成部材28は、軸受13Bの外周面13Ba上には配置されない。流路形成部材28が回転軸線Xと重複するように配置されていればよいので、流路形成部材28によって形成される流路は、厳密に回転軸線Xと重複する構成に限定されない。例えば、流路形成部材28によって形成される流路は、軸受13Bの背面側において、回転軸線Xを囲むように形成されてもよい。
【0038】
流路形成部材28は、フランジ33と、本体34と、を含む。フランジ33の形状は、回転軸線Xの方向から見て円形である。フランジ33の中心軸線は、回転軸線Xと重複する。フランジ33の外周部には、いくつかのボルト穴BH(
図3参照)が設けられている。ボルトBは、ボルト穴BHを介して閉鎖部材27のねじ穴にねじ込まれる。その結果、流路形成部材28は、閉鎖部材27に固定される。また、流路形成部材28におけるフランジ33の主面33aと、閉鎖部材27におけるフランジ29の背面29bとの間には、シール部材30が挟みこまれている。
【0039】
本体34の形状は、円柱状であり、フランジ33の主面33aから隔離壁35へ向けて突出する。流路形成部材28の本体34の外形形状は、閉鎖部材27の外部領域S2の内形形状と略同じである。流路形成部材28における本体34の外周面34sと閉鎖部材27における本体31の内周面31cとの間には、隙間がないとみなしてもよいし、わずかな隙間があるとしてもよい。
【0040】
図3および
図4に示すように、本体34の先端面36は、隔離壁35の背面35bに対面する。先端面36は、当接面37と、流路端面38と、を含む。当接面37は、回転軸線Xの方向に沿って流路端面38から突出する。そして、当接面37は、隔離壁35の背面35bに対面する。より詳細には、当接面37は、隔離壁35の背面35bに接触あるいは押し当てられてよい。一方、流路端面38は、隔離壁35の背面35bに対面するが、隔離壁35の背面35bに当接しない。つまり、流路端面38は、隔離壁35の背面35bから離間している。その結果、流路端面38と隔離壁35の背面35bとの間には、隙間D(
図2参照)が形成される。この隙間Dは、流路の一部を構成する。隙間Dを流れる冷却水は、隔離壁35の背面35bに接触しながら流れる。従って、冷却水は、隔離壁35の背面35bから熱を受ける。
【0041】
さらに、本体34は、冷却水を隙間Dに導入する第1流路穴39と、隙間Dから冷却水を排出する第2流路穴41と、を含む。第1流路穴39および第2流路穴41は、共に貫通穴であり、フランジ33の背面33bに形成される背面開口39b、41b(
図2参照)と、流路端面38に形成される主面開口39a、41aと、を含む。背面開口39bには、プレートチューブ接続部42Aが連結されている。このプレートチューブ接続部42Aには、チューブ43A(第1チューブ)の一方の端部が接続されている。チューブ43Aの他方の端部は、ハウジングチューブ接続部26Aに接続されている。つまり、モータ3および軸受13Bを冷却するための冷却水は、ハウジングチューブ接続部26Aから共通して提供されている。背面開口41bには、プレートチューブ接続部42Bが接続されている。このプレートチューブ接続部42Bには、チューブ43B(第2チューブ)の一方の端部が接続されている。チューブ43Bの他方の端部は、ハウジングチューブ接続部26Bに接続されている。つまり、モータ3および軸受13Bが発した熱を受けた冷却水は、ハウジングチューブ接続部26Bから共通して排出されている。
【0042】
ここで、
図3および
図4を参照しながら、流路端面38に形成された第1流路穴39の主面開口39aと、第2流路穴41の主面開口41aとについてさらに詳細に説明する。
【0043】
すでに述べたように、隔離壁35の背面35bと流路端面38との間の隙間Dは、流路の一部を形成する。冷却水が隔離壁35から熱を受けるとき、冷却水が接触可能な隔離壁35の背面35bの面積が大きいほど、熱は隔離壁35から冷却水へ移動しやすい。冷却水が接触可能な隔離壁35の背面35bの面積は、流路端面38の面積と等価である。従って、流路形成部材28の先端面36において、流路端面38の占める割合が大きいほど、隔離壁35から冷却水への熱移動にとって有利である。
【0044】
一方、
図4に示す例では、冷却水は、主面開口39aから隙間Dに流れ込み、主面開口41aから外部へ排出される(矢印A1参照)。つまり、冷却水は、隙間Dにとどまることなく、流動する。さらに、冷却構造の性能は、上述した流路端面38の面積に加えて、さらに、隙間Dを流れる冷却水の流量の影響も受ける。従って、隙間Dにおいて、冷却水を主面開口39aから主面開口41aへ向かう流れを生じさせることが望まれる。つまり、主面開口39aから主面開口41aへ向かう方向の流れを積極的に生じさせる。そこで、隙間Dにおける流れの方向を規定するために、当接面37は、軸面部37aと、仕切り壁部37bと、を含む。
【0045】
軸面部37aは、先端面36における中央に形成される。軸面部37aは、流路端面38に対して凸となっている。その結果、軸面部37aの外周面と本体31の内周面との間に、平面視して円環状の隙間Dが形成される。この円環状の隙間Dは、仕切り壁部37bによって円弧状とされている。つまり、仕切り壁部37bは、軸面部37aの外周面と本体31の内周面との間に設けられており、隙間Dの一部を塞いでいる。その結果、回転軸線Xの方向から見たとき、隙間Dは、円弧形状であり、一方の端部と他方の端部とが形成される。そして、一方の端部には、第1流路穴39の主面開口39aが設けられる。他方の端部23には、第2流路穴41の主面開口41aが設けられる。この構造によれば、第1流路穴39の主面開口39aから第2流路穴41の主面開口41aに向かう冷却水の流れは、矢印A1に示される方向に一意に決まる。従って、隙間Dにおいて良好に冷却水を流動させることができる。
【0046】
さらに、上述した流路端面38の面積の観点からすれば、第1流路穴39の主面開口39aから第2流路穴41の主面開口41aに至る距離(矢印A1の長さ)は、長い方がよい。そこで、仕切り壁部37bは、主面開口39aの中心と主面開口41aの中心とを結ぶ仮想線Kと交差する位置に設けられる。この配置によれば、隙間Dを通る経路上の距離(矢印A1の長さ)は、仕切り壁部37bを通る経路上の距離(矢印A2の長さ)よりも長くすることができる。具体的には、隙間Dを通る経路上の距離は、回転軸線Xを中心とする円周長の半分以上とすることができる。この構成によれば、第1流路穴39と第2流路穴41までの長さが十分に確保される。その結果、冷却水と隔離壁35との接触面積を十分に確保することが可能であるので、良好な熱移動を実現することができる。
【0047】
本開示の電動コンプレッサ1では、軸受13Bが生じる熱を排出する冷却液を、背面プレート19に設けた流路に流している。従って、軸受13Bが生じた熱は、冷却水に移動する。その結果、熱を含んだ冷却水は流路を通じて電動コンプレッサ1の外部へ排出することが可能になる。従って、軸受13Bから熱が良好に取り除かれるので、軸受13Bを冷却することが可能である。その結果、軸受13Bの回転数が増加した場合であっても、軸受13Bの温度を所望の仕様温度範囲に収めることが可能になる。従って、回転数の増加が抑制されにくくなるので、電動コンプレッサ1の高性能化を図ることができる。
【0048】
本開示の電動コンプレッサ1の流路形成部材28は、回転軸線X上であって軸受13Bの背面側に設けられる。この構成によれば、流路が軸受13Bの周囲に配置されることがない。その結果、軸受13Bの周囲に電動コンプレッサ1を構成する部品を配置することができる。従って、ケーシング4の内部空間を有効に利用することが可能になるので、電動コンプレッサ1を小型化することができる。
【0049】
本開示の電動コンプレッサ1の流路形成部材28には、流路端面38に開口する第1流路穴39および第2流路穴41が設けられる。この構成によれば、部品点数を増加させることなく、冷却水を外部から導入すると共に熱を受けた冷却水を外部に排出することができる。
【0050】
本開示の電動コンプレッサ1は、ハウジングチューブ接続部26Aとプレートチューブ接続部42Aとを接続するチューブ43A、および、ハウジングチューブ接続部26Bとプレートチューブ接続部42Bとを接続するチューブ43Bを有する。この構成によれば、簡易な構成によって、モータ3および軸受13Bを冷却することができる。
【0051】
以上、本開示の電動コンプレッサについて説明したが、電動コンプレッサは上記の例示に制限されない。
【0052】
例えば、
図5に示すように本開示の電動コンプレッサ1Aは、チューブ43A、43Bに代えて、背面プレート19Aの閉鎖部材27Aに設けられた冷却液供給部51を有してもよい。冷却液供給部51は、貫通穴29HAから第1流路穴39に連通する穴52a(第1流路部)と、貫通穴29HBから第2流路穴41に連通する穴52b(第2流路部)と、を含む。この構成によれば、部品点数の増加させることなく、モータ3および軸受13Bを冷却することができる。
【符号の説明】
【0053】
1,1A 電動コンプレッサ
2 コンプレッサ
3 モータ
4 ケーシング
6 回転軸
6a 第1端
6b 第2端
6c 中央部
7 コンプレッサインペラ
8 モータケーシング
9 コンプレッサケーシング
9a 吸入口
9b スクロール部
9c 吐出口
11 ロータ
12 ステータ
12a コア
12b コイル
13A,13B 軸受
14 スリーブ部
16 スリーブ部(軸受保持部)
17 軸端ナット
18 モータハウジング(ハウジング)
19,19A 背面プレート(プレート)
21 端面壁
22 側壁
23 端部
23a ハウジング開口
24 モータ冷却部
24s ハウジング流路
24a ハウジング導入口
24b ハウジング排出口
26A ハウジングチューブ接続部(冷却液導入部)
26B ハウジングチューブ接続部(冷却液排出部)
27,27A 閉鎖部材
28 流路形成部材
29 フランジ
29s フランジ開口
31 本体
32 圧縮バネ
33 フランジ
34 本体
35 隔離壁(壁部)
30 シール部材
36 先端面
37 当接面
37a 軸面部
37b 仕切り壁部
38 流路端面
39 第1流路穴
41 第2流路穴
39b 背面開口
41b 背面開口
39a 主面開口
41a 主面開口
42A プレートチューブ接続部
42B プレートチューブ接続部
43A チューブ
43B チューブ
51 冷却液供給部
52a 穴(第1流路部)
52b 穴(第2流路部)
D 隙間
X 回転軸線
K 仮想線