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特開2022-80907軌道算出装置、軌道算出方法、軌道算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080907
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】軌道算出装置、軌道算出方法、軌道算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20220524BHJP
   G06T 7/246 20170101ALI20220524BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G06T7/246
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192118
(22)【出願日】2020-11-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】512206769
【氏名又は名称】株式会社Qoncept
(74)【代理人】
【識別番号】100183988
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 泰帥
(72)【発明者】
【氏名】林 建一
(72)【発明者】
【氏名】南部 俊輔
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA09
2F065BB15
2F065CC16
2F065DD03
2F065FF04
2F065JJ03
2F065QQ03
2F065QQ18
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065RR09
2F065UU05
5L096CA04
5L096FA09
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA04
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】
フィギュアスケートなど跳躍を伴う運動競技などにおいて、機材が簡易な単眼カメラで撮像した動画像から動体の軌道を精度高く算出することで跳躍の高さや飛距離を計測するとのニーズがある。
【解決手段】
本発明は、画像フレームの情報から目標とする動体の特定点を検出し、連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出し、離陸点と着陸点を通過する放物運動を記述できる曲線と、特定点が存在する直線の位置関係から特定点の三次元での軌道を算出することを特徴とする単眼カメラで撮像した複数の画像フレームの情報から跳躍する目標とする動体の三次元での軌道を算出する装置、方法、プログラムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単眼カメラで撮像した複数の画像フレームの情報から跳躍する目標とする動体の三次元での軌道を算出する軌道算出装置であって、
前記画像フレームの情報から前記目標とする動体の特定点を検出する検出部と、
前記画像フレームに撮像された前記特定点の像についての三次元位置と、前記単眼カメラのレンズの光学中心の三次元位置と、を結んだ存在直線を算出する存在直線算出部と、
連続する複数の前記画像フレームの情報から前記特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した前記変化量から前記目標とする動体が離陸した離陸点を判定して、前記離陸点における前記特定点の三次元位置を算出する離陸点算出部と、
連続する複数の前記画像フレームの情報から前記特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した前記変化量から前記目標とする動体が着地した着地点を判定して、前記着地点における前記特定点の三次元位置を算出する着地点算出部と、
前記離陸点算出部が算出した前記離陸点における前記特定点の三次元位置と、前記着地点算出部が算出した前記着地点における前記特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線と、前記目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の前記画像フレームに撮像された前記特定点の像についての前記存在直線と、の位置関係から前記特定点の三次元での軌道を算出する軌道算出部と、
を備えることを特徴とする軌道算出装置。
【請求項2】
前記離陸点算出部は、
撮像された時刻の正順に連続する複数の前記画像フレームの情報から前記特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量が閾値より大きい場合に前記目標とする動体が離陸したとして離陸点を判定して、離陸点における前記特定点の三次元位置を算出する手段、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の軌道算出装置。
【請求項3】
前記着地点算出部は、
撮像された時刻の逆順に連続する複数の前記画像フレームの情報から前記特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量が閾値より大きい場合に前記目標とする動体が着地したとして着地点を判定して、着地点における前記特定点の三次元位置を算出する手段、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の軌道算出装置。
【請求項4】
前記着地点算出部は、
前記離陸点が撮像された時刻以降であって撮像された時刻の正順に連続する複数の前記画像フレームの情報から前記特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量の正負が反転した場合に前記目標とする動体が跳躍の頂点に達したと判定して前記頂点が撮像された時刻を取得し、前記頂点が撮像された時刻から前記離陸点が撮像された時刻を減じた時間の2倍の時間に一定の時間を加算した時間が前記離陸点が撮像された時刻から経過した時刻から、撮像された時刻の逆順に連続する複数の前記画像フレームの情報から前記特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量が閾値より大きい場合に前記目標とする動体が着地したとして着地点を判定して、着地点における前記特定点の三次元位置を算出する手段、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の軌道算出装置。
【請求項5】
前記軌道算出部は、
前記離陸点算出部が算出した前記離陸点における前記特定点の三次元位置と、前記着地点算出部が算出した前記着地点における前記特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線であって、
前記目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の前記画像フレームに撮像された1ないし複数の前記特定点の像についての存在直線との距離の合計を最小とする前記曲線を、前記特定点の三次元での軌道として算出する手段、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の軌道算出装置。
【請求項6】
前記軌道算出部は、
前記離陸点算出部が算出した前記離陸点における前記特定点の三次元位置と、前記着地点算出部が算出した前記着地点における前記特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線であって、
前記目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の前記特定点について、撮像された時刻における前記画像フレームに撮像された前記特定点の像についての存在直線と、前記特定点の撮像された時刻における前記曲線上の予測位置と、の距離を算出し、算出された1ないし複数の前記予測位置との距離の合計を最小とする前記曲線を、前記特定点の三次元での軌道として算出する手段、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の軌道算出装置。
【請求項7】
単眼カメラで撮像した複数の画像フレームの情報から跳躍する目標とする動体の三次元での軌道を算出する軌道算出方法であって、
前記画像フレームの情報から前記目標とする動体の特定点を検出する検出ステップと、
前記画像フレームに撮像された前記特定点の像についての三次元位置と、前記単眼カメラのレンズの光学中心の三次元位置と、を結んだ存在直線を算出する存在直線算出ステップと、
連続する複数の前記画像フレームの情報から前記特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した前記変化量から前記目標とする動体が離陸した離陸点を判定して、前記離陸点における前記特定点の三次元位置を算出する離陸点算出ステップと、
連続する複数の前記画像フレームの情報から前記特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した前記変化量から前記目標とする動体が着地した着地点を判定して、前記着地点における前記特定点の三次元位置を算出する着地点算出ステップと、
前記離陸点算出ステップで算出した前記離陸点における前記特定点の三次元位置と、前記着地点算出ステップで算出した前記着地点における前記特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線と、前記目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の前記画像フレームに撮像された前記特定点の像についての前記存在直線と、の位置関係から前記特定点の三次元での軌道を算出する軌道算出ステップと、
を備えることを特徴とする軌道算出方法。
【請求項8】
単眼カメラで撮像した複数の画像フレームの情報から跳躍する目標とする動体の三次元での軌道をコンピュータに算出させる軌道算出プログラムであって、
前記画像フレームの情報から前記目標とする動体の特定点を検出する検出ステップと、
前記画像フレームに撮像された前記特定点の像についての三次元位置と、前記単眼カメラのレンズの光学中心の三次元位置と、を結んだ存在直線を算出する存在直線算出ステップと、
連続する複数の前記画像フレームの情報から前記特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した前記変化量から前記目標とする動体が離陸した離陸点を判定して、前記離陸点における前記特定点の三次元位置を算出する離陸点算出ステップと、
連続する複数の前記画像フレームの情報から前記特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した前記変化量から前記目標とする動体が着地した着地点を判定して、前記着地点における前記特定点の三次元位置を算出する着地点算出ステップと、
前記離陸点算出ステップで算出した前記離陸点における前記特定点の三次元位置と、前記着地点算出ステップで算出した前記着地点における前記特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線と、前記目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の前記画像フレームに撮像された前記特定点の像についての前記存在直線と、の位置関係から前記特定点の三次元での軌道を算出する軌道算出ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする軌道算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道算出装置、軌道算出方法、軌道算出プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィギュアスケートなど跳躍を伴う運動競技において、撮像した動画像から動体の軌道を算出することで跳躍の高さや飛距離を計測するニーズがある。
【0003】
フィールドで行う運動競技では、跳躍の高さや飛距離の計測に適した競技場内の位置に設置したカメラで撮像した画像データに基づいて動体の三次元空間の位置を算出する技術が知られている。例えば、特許文献1に記載の技術などである。
【0004】
また、複数のカメラが同期をとって撮像したステレオ画像データから動体の連続した三次元位置を求めることで動体の軌道を算出することも一般的である。例えば、特許文献2に記載の技術などである。
【0005】
なお、非特許文献1には、画像データからの2次元での人間の姿勢推定についての技術が開示されている。非特許文献1については、発明を実施するための形態において触れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-336917号公報
【特許文献2】特開2005-235104号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Zhe Cao Je, et al.,‘Realtime Multi-Person 2D Pose Estimation using Part Affinity Fields’ arXiv:1611.08050v2 [cs.CV] 14 Apr 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、フィギュアスケートのようにリンク内にカメラを設置できない運動競技では、特許文献1に記載の技術などは利用できない。また、特許文献2に記載のステレオマッチングでは、複数のカメラが同期をとって撮像することが必要となるが、単眼カメラで撮像した動画像から動体の軌道を精度高く算出できれば、跳躍の高さや飛距離を計測するための撮像機材も簡易にできる。
【0009】
そこで、本発明は、フィギュアスケートなど跳躍を伴う運動競技などにおいて、単眼カメラで撮像した動画像から動体の軌道を精度高く算出する装置、方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、単眼カメラで撮像した複数の画像フレームの情報から跳躍する目標とする動体の三次元での軌道を算出する軌道算出装置であって、画像フレームの情報から目標とする動体の特定点を検出する検出部と、画像フレームに撮像された特定点の像についての三次元位置と、単眼カメラのレンズの光学中心の三次元位置と、を結んだ存在直線を算出する存在直線算出部と、連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量から目標とする動体が離陸した離陸点を判定して、離陸点における特定点の三次元位置を算出する離陸点算出部と、連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量から目標とする動体が着地した着地点を判定して、着地点における特定点の三次元位置を算出する着地点算出部と、離陸点算出部が算出した離陸点における特定点の三次元位置と、着地点算出部が算出した着地点における特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線と、目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の画像フレームに撮像された特定点の像についての存在直線と、の位置関係から特定点の三次元での軌道を算出する軌道算出部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、目標とする動体の特定点とは、画像フレームの情報から目標とする動体について軌道を算出するために特定する点をいう。例えば、後述する本発明の実施形態として説明するフィギュアスケート競技では、スケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部を特定点としている。特定点については、本願書面において同様である。
【0012】
また、本願書面において、前述の通り、画像フレームに撮像された特定点の像についての三次元位置と単眼カメラのレンズの光学中心の三次元位置を結んだ直線を存在直線という。
【0013】
ここで、連続する画像フレームとは、2つの画像フレームの間に別の画像フレームが存在しない状態であって、必ずしも画像フレーム番号が連続である必要はない。例えば、2つの画像フレームが連続であっても、もともと間に存在した画像フレームがコマ落とし処理されたために画像フレーム番号が連続でない場合などがある。また、連続する複数の画像フレームは、同じ時間の流れに沿って時刻の順で複数の画像フレームが連続しているものとする。このため、本発明において、画像フレームの情報には、撮像された画像情報に加えて、画像フレームが撮像された時刻を情報として含む。いずれも、本願書面において同様である。
【0014】
本発明の一態様である軌道算出装置は、離陸点算出部は、撮像された時刻の正順に連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量が閾値より大きい場合に目標とする動体が離陸したとして離陸点を判定して、離陸点における特定点の三次元位置を算出する手段を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様である軌道算出装置は、着地点算出部は、撮像された時刻の逆順に連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量が閾値より大きい場合に目標とする動体が着地したとして着地点を判定して、着地点における特定点の三次元位置を算出する手段を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様である軌道算出装置は、着地点算出部は、離陸点が撮像された時刻以降であって撮像された時刻の正順に連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量の正負が反転した場合に目標とする動体が跳躍の頂点に達したと判定して頂点が撮像された時刻を取得し、頂点が撮像された時刻から離陸点が撮像された時刻を減じた時間の2倍の時間に一定の時間を加算した時間が離陸点が撮像された時刻から経過した時刻から、撮像された時刻の逆順に連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量が閾値より大きい場合に目標とする動体が着地したとして着地点を判定して、着地点における特定点の三次元位置を算出する手段を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様である軌道算出装置は、軌道算出部は、離陸点算出部が算出した離陸点における特定点の三次元位置と、着地点算出部が算出した着地点における特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線であって、目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の画像フレームに撮像された1ないし複数の特定点の像についての存在直線との距離の合計を最小とする曲線を、特定点の三次元での軌道として算出する手段を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様である軌道算出装置は、軌道算出部は、離陸点算出部が算出した離陸点における特定点の三次元位置と、着地点算出部が算出した着地点における特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線であって、目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の特定点について、撮像された時刻における画像フレームに撮像された特定点の像についての存在直線と、特定点の撮像された時刻における曲線上の予測位置と、の距離を算出し、算出された1ないし複数の予測位置との距離の合計を最小とする曲線を、特定点の三次元での軌道として算出する手段を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明は、単眼カメラで撮像した複数の画像フレームの情報から跳躍する目標とする動体の三次元での軌道を算出する軌道算出方法であって、画像フレームの情報から目標とする動体の特定点を検出する検出ステップと、画像フレームに撮像された特定点の像についての三次元位置と、単眼カメラのレンズの光学中心の三次元位置と、を結んだ存在直線を算出する存在直線算出ステップと、連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量から目標とする動体が離陸した離陸点を判定して、離陸点における特定点の三次元位置を算出する離陸点算出ステップと、連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量から目標とする動体が着地した着地点を判定して、着地点における特定点の三次元位置を算出する着地点算出ステップと、離陸点算出ステップで算出した離陸点における特定点の三次元位置と、着地点算出ステップで算出した着地点における特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線と、目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の画像フレームに撮像された特定点の像についての存在直線と、の位置関係から特定点の三次元での軌道を算出する軌道算出ステップと、を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明は、単眼カメラで撮像した複数の画像フレームの情報から跳躍する目標とする動体の三次元での軌道をコンピュータに算出させる軌道算出プログラムであって、画像フレームの情報から目標とする動体の特定点を検出する検出ステップと、画像フレームに撮像された特定点の像についての三次元位置と、単眼カメラのレンズの光学中心の三次元位置と、を結んだ存在直線を算出する存在直線算出ステップと、連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量から目標とする動体が離陸した離陸点を判定して、離陸点における特定点の三次元位置を算出する離陸点算出ステップと、連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量から目標とする動体が着地した着地点を判定して、着地点における特定点の三次元位置を算出する着地点算出ステップと、離陸点算出ステップで算出した離陸点における特定点の三次元位置と、着地点算出ステップで算出した着地点における特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線と、目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の画像フレームに撮像された特定点の像についての存在直線と、の位置関係から特定点の三次元での軌道を算出する軌道算出ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フィギュアスケートなど跳躍を伴う運動競技などにおいて、単眼カメラで撮像した動画像から動体の軌道を精度高く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】軌道算出装置のブロック図である。
図2】軌道算出装置のハードウェア構成図である。
図3】フィギュアスケート競技でスケーターがジャンプした様子を模式的に描いた図である。
図4】実施例に係る軌道算出装置の動作を示すフローチャートである。
図5】実施例の説明で使用する座標系を記述した図である。
図6図5の座標系において三次元空間の目標とする特定点をカメラで撮像した様子を表した図である。
図7】離陸点算出処理と着地点算出処理について説明するための図である。
図8】軌道算出処理の例を示す図である。
図9】軌道算出処理の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、重複する説明は省略し、各図面において同一又は相当部分には同一の符号を付す。
【0024】
本実施形態に係る軌道算出装置、方法、プログラムは、例えば、フィギュアスケートなど跳躍を伴う運動競技などにおいて、単眼カメラで撮像した動画像から動体の軌道を精度高く算出することができる。
【0025】
図1は、軌道算出装置のブロック図である。軌道算出装置1は、単独で装置として構成される形態のみならず、他の装置に組み込まれて使用される形態であってもよい。軌道算出装置1を組み込む他の装置は、例えば、スマートフォン、情報携帯端末、デジタルカメラ、ゲーム端末、テレビ等の電化製品であってもよい。軌道算出装置1は、図2に示すように、物理的には、中央演算装置(CPU)201、入力装置202、出力装置203、主記憶装置(RAM/ROM)204、補助記憶装置205を含むコンピュータとして構成される。
【0026】
軌道算出装置1の各機能は、図2に示す中央演算装置(CPU)201、主記憶装置(RAM/ROM)204等に、単眼カメラで撮像した動画像から目標とする動体の特定の点の位置変化を追跡して、追跡する目標とする動体の特定の点が遮蔽された場合にも見失うことなく三次元位置の軌道を算出するようにコンピュータを機能させるプログラムを読み込ませることにより、中央演算装置(CPU)201の制御により入力装置202、出力装置203を動作させるとともに、主記憶装置(RAM/ROM)204、補助記憶装置205とデータの読み書きを行うことで実現される。
【0027】
図1に示すように、軌道算出装置1は、検出部101、存在直線算出部102、離陸点算出部103、着地点算出部104及び軌道算出部105を備える。軌道算出装置1には、外部から入力として、単眼カメラによって撮像された目標とする動体の動画についての画像フレームの情報が与えられる。画像フレームの情報には、撮像された画像情報に加えて、画像フレームが撮像された時刻を情報として含む。また、軌道算出装置1は、目標とする動体の特定点の軌道についての情報を外部へ出力する。
【0028】
図1のブロック図に従って、軌道算出装置1の各ブロックの機能を説明する。なお、各ブロックの詳細な動作については、実施例の中で後述する。
【0029】
検出部101は、画像フレームの情報から、目標とする動体の特定点を検出する。
【0030】
存在直線算出部102、は、画像フレームに撮像された特定点の像についての三次元位置と、単眼カメラのレンズの光学中心の三次元位置と、を結んだ存在直線を算出する。具体的な算出処理については、実施例の中で後述する。
【0031】
離陸点算出部103は、連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量から目標とする動体が離陸した離陸点を判定して、離陸点における特定点の三次元位置を算出する。具体的な算出処理については、実施例の中で後述する。
【0032】
着地点算出部104は、連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量から目標とする動体が着地した着地点を判定して、着地点における特定点の三次元位置を算出する。具体的な算出処理については、実施例の中で後述する。
【0033】
軌道算出部105は、離陸点算出部が算出した離陸点における特定点の三次元位置と、着地点算出部が算出した着地点における特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線と、目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の画像フレームに撮像された特定点の像についての存在直線と、の位置関係から特定点の三次元での軌道を算出する。具体的な算出処理については、実施例の中で後述する。
【0034】
次に、本実施形態に係る軌道算出装置1の動作について説明する。説明理解の容易性を考慮して、単眼カメラで撮像したフィギュアスケート競技の画像からジャンプしたスケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部の軌道を算出する場合の軌道算出装置1の動作を実施例として説明する。なお、これは例示であって、フィギュアスケート競技のみに本発明の適用を限るものではない。
【実施例0035】
図3は、本実施例において、好適な例として説明するフィギュアスケート競技でスケーターがジャンプした様子を模式的に描いた図である。図3では、301から305のそれぞれはジャンプしたスケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部を示し、本実施例においては、スケート靴のエッジの先端部を特定点とする。301は離陸点における特定点、302は着地点における特定点を示し、303から305はジャンプ途中における空中での特定点を示している。特に、304はジャンプの軌道における頂点での特定点を示している。
【0036】
フィギュアスケート競技では、ジャンプの高さや飛距離が演技の優劣決定の大きな要素であって、フィギュアスケート競技を撮像した画像からスケーターのジャンプの軌道を得るニーズは大きい。一方、近年、いわゆるスマートフォンなどのデバイスに内蔵されたカメラの高性能化もあり、単眼カメラによって簡便に動画像を撮像することも一般的になっている。フィギュアスケートなど跳躍を伴う運動競技などにおいて単眼カメラで撮像した動画像から動体の軌道を精度高く算出することができれば、スマートフォンなどの簡易な機材でジャンプの高さや飛距離を計測するとのニーズに応えることができる。このため、本発明は、フィギュアスケート競技において好適に採用されるものである。これは、例示であって、フィギュアスケート競技のみに本発明の適用を限るものではない。
【0037】
図4は、実施例に係る軌道算出装置1の動作を示すフローチャートである。図4のフローチャートに従って実施例における軌道算出装置1の動作を説明する。
【0038】
軌道算出装置1には、単眼カメラによって撮像された複数の画像フレームの情報が入力される。本実施例では、画像フレームの情報には、撮像された画像情報に加えて、画像フレームが撮像された時刻が情報として含まれる。軌道算出装置1は、処理する画像フレームの情報がすべて入力された後に動作を開始する。動作の開始は、画像フレームの情報の入力後に自動的であっても、明示的な命令によるものであってもよい。軌道算出装置1は、入力された画像フレームの情報について図4のフローチャートの処理を行う。
【0039】
軌道算出装置1は、動作を開始すると、検出部101が検出処理(S401)を実行する。検出処理(S401)では、入力された画像データから、撮像された目標とする動体の特定点を検出する。本実施例では、前述の通り、特定点としてスケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部の点をとる。
【0040】
画像データからの特定点の検出については、画像データから特定点の画像フレームにおける二次元平面での座標が検出できれば方法は問わない。例えば、非特許文献1などで開示されている画像データからの2次元での人間の姿勢推定技術などによる。また、撮像対象のスケーターがあらかじめ特定点につけたマーカを画像データから検出する方法によってもよい。検出部101による検出処理(S401)が終了すると、存在直線算出部102が存在直線算出処理(S402)を開始する。
【0041】
ここで、存在直線算出部102が行う存在直線算出処理(S402)の説明に先立って、一旦、図4のフローチャートを離れ、本実施例の説明で使用する座標系について説明する。図5は、本実施例の説明で使用する座標系を記述した図である。
【0042】
座標系ΣXYZは、実三次元空間での三次元直交座標系である。本実施例においては、座標系ΣXYZは、フィギュアスケート競技を行うリンクの氷面509の形状が長軸方向、短軸方向の各々において対称である長円形であるとし、氷面509上であって長軸と短軸の交点を原点O(0,0,0)501とし、長軸方向にX軸を、短軸方向にY軸をとる三次元直交座標系とする。
【0043】
また、本実施例では、座標系ΣXYZで三次元座標が既知である複数の点(以下、基準点)として、氷面509の外縁とX軸の2つ交点(505と506)と、氷面509の外縁とY軸の2つ交点(507と508)について三次元座標を次の通り設定する。ここでは、リンクの長軸方向の長さが2A、短軸方向の長さが2Bとした例である。A及びBは定数である。
基準点505:(X,Y,Z)=(A,0,0)
基準点506:(X,Y,Z)=(-A,0,0)
基準点507:(X,Y,Z)=(0,B,0)
基準点508:(X,Y,Z)=(0,-B,0)
【0044】
なお、これは例示であって、三次元座標系と基準点の設定をこれに限るものではない。三次元座標系と基準点の設定は、目標とする動体の運動特性や環境条件などにあわせて適したものを設定することが望ましい。本実施例では、後述の通り、カメラのレンズの光学中心の三次元位置座標とレンズの外部パラメータを求めるために三次元位置座標が既知である基準点を利用する。
【0045】
座標系Σxyzは、カメラのレンズの光学中心に原点502を持つ三次元直交座標系である。座標系Σuvは、画像フレーム(撮像素子面)504に固定された原点503を持つ二次元直交座標系である。座標系Σuvは、座標系Σxyzを平行移動した座標系で、xy座標軸とuv座標軸は平行である。また、座標系Σxyzのz軸と画像フレーム504の交点が座標系Σuvの原点503となる。座標系Σxyzのz軸は画像フレーム504と直交する。
【0046】
以上が、本実施例の説明で使用する座標系について説明である。
【0047】
図4に戻り、存在直線算出部102が行う存在直線算出処理の説明に戻る。図6を用いて、存在直線算出処理(S402)が行う画像フレームにおける目標とする特定点の像の三次元位置とカメラのレンズの光学中心とを結んで構成される三次元直線の算出について説明する。
【0048】
図6は、図5の座標系において三次元空間の目標とする特定点Pをカメラで撮像した様子を表した図である。三次元直交座標系ΣXYZにおける目標とする特定点Pの三次元位置を、P(X,Y,Z)とする。目標とする特定点Pは、レンズの光学中心を三次元直交座標系Σxyzの原点602にもつカメラで画像フレーム504に像P’として撮像される。画像フレーム504での二次元直交座標系Σuvにおける像P’の二次元位置をP’(u,v)とする。
【0049】
図6では、レンズの光学中心(三次元直交座標系Σxyzの原点502)の三次元直交座標系ΣXYZにおける位置をP0(X0,Y0,Z0)とする。レンズの光学中心を原点502とする三次元直交座標系Σxyzのz軸が光軸にあたる。光軸は、画像フレーム504と直交し、その交点は画像フレームでの二次元直交座標系Σuvの原点503となる。原点503の二次元位置をQ(u0,v0)とする。三次元直交座標系Σxyzの原点502と二次元直交座標系Σuvの原点503の距離が焦点距離であって、長さをdとする。
【0050】
図6において、レンズの光学中心を原点502とする三次元直交座標系Σxyzからみた像P’の位置は、P’(u-u0,v-v0,d)となる。ここで、比例定数をk、レンズの光学中心を原点502とする三次元直交座標系Σxyzから三次元空間における三次元直交座標系ΣXYZへの座標変換行列をRとする。本実施例では三次元空間における三次元直交座標系ΣXYZにおけるカメラの位置座標とローテーションが与えられれば、座標変換行列Rを決定することができる。
【0051】
ローテーションとは、いわゆるレンズの外部パラメータであって、図6において座標系Σxyzから座標系ΣXYZに座標変換する際の三軸の回転角度パラメータである。ローテーションの値が決定することで、レンズの光軸が定まる。図6において、座標系Σxyzのz軸が光軸である。
【0052】
また、実施例においては、いわゆるレンズの内部パラメータ(焦点距離、レンズのひずみ)は既知とする。図6において、カメラのレンズの光学中心(座標系Σxyzの原点502)と座標系Σuvの原点503の距離が焦点距離となる。なお、レンズのひずみが結果に影響を及ぼすような場合は、ひずみを除去した画像を生成し、以降の処理はひずみ除去後の画像に対して行うものとする。ひずみ除去には、例えば、OpenCVで公開されているひずみ補正用の関数を使用することができる。
【0053】
レンズの光学中心を原点502とする三次元直交座標系Σxyzにおいて、レンズの光学中心(原点502)と像P’と目標とする特定点Pは同じ直線上にあることから次の式(数1)が成り立つ。
【0054】
【数1】
【0055】
なお、本実施例では、P’のX要素及びY要素であるu-u0及びv-v0は検出部101が存在直線算出部102に引き渡す二次元位置の座標から求めることができ、dは焦点距離であって既知である。
【0056】
前式(数1)は、レンズの光学中心と像P’と目標とする特定点Pを結ぶ三次元直交座標系ΣXYZにおける直線の式である。三次元直交座標系Σxyzの原点502にレンズの光学中心を備えたカメラで特定点Pを撮像したときに、画像フレーム504の像P’の二次元直交座標系Σuvでの二次元座標を決定できれば、前式(数1)が算出でき、三次元直交座標系ΣXYZにおいて前式(数1)で示される直線上に目標とする特定点Pが存在する。
【0057】
カメラのレンズの光学中心の三次元位置座標とローテーションが事前に与えられていない場合には、三次元位置座標が既知である基準点を利用して、カメラのレンズの光学中心の三次元位置座標とレンズの外部パラメータを求めて座標変換行列Rを決定する。前述の通り、本実施例では、基準点505、506、507及び508の4点について三次元直交座標系ΣXYZでの三次元座標が次の通り既知であり、二次元直交座標系Σuvにおける各基準点の像の二次元座標も計測することができる。
基準点505:(X,Y,Z)=(A,0,0)
基準点506:(X,Y,Z)=(-A,0,0)
基準点507:(X,Y,Z)=(0,B,0)
基準点508:(X,Y,Z)=(0,-B,0)
【0058】
前述、図6を用いて、レンズの光学中心を原点502とする三次元直交座標系Σxyzにおいて、レンズの光学中心(原点502)と像P’と目標Pは同じ直線上にあることから、三次元直交座標系Σxyzにおけるレンズの光学中心と像P’と目標とする特定点Pを結ぶ三次元直交座標系ΣXYZにおける直線の式(数1)を求めた。直線の式(数1)において、P(X,Y,Z)をそれぞれの基準点とし、P’(u,v)をそれぞれの基準点に対応する画像フレームの像とし、dは既知であることから、三次元直交座標系ΣXYZにおけるカメラのレンズの光学中心P0(X0,Y0,Z0)及び座標変換行列Rを構成するローテーションが算出される。
【0059】
三次元直交座標系ΣXYZにおけるカメラのレンズの光学中心P0(X0,Y0,Z0)及び座標変換行列Rを構成するローテーション(座標系Σxyzから座標系ΣXYZに座標変換する際の三軸の回転角度パラメータ)の算出にあたっては、未知の要素の数が6であり、画像フレームの目標とする動体の像は二次元直交座標系Σuvの要素で与えられることから、基準点の数は3で足りる。しかしながら、基準点を増やすことによる算出精度の向上を考慮して、本実施例では、基準点の数を4としている。基準点の数は計測したい空間や利用可能な基準点の配置に合わせて適した数とすることが望ましく、基準点の数を4に限るものではない。
【0060】
本実施形態においては、非線形最小二乗法により、カメラの三次元座標系における位置座標とローテーションの算出処理を行う。なお、これは例示であって、処理の方法はこれに限るものではなく、カメラの三次元座標系における位置座標とローテーションが精度高く算出できれば他の処理の方法によってもよい。例えば、高い精度が期待できるLM法(Levenberg-Marquardt Method)による算出、基準点の数を増やしてDLT法(Direct Linear Transformation method)による算出なども考えられる。
【0061】
以上が、存在直線算出部102による存在直線算出処理(S402)についての説明である。存在直線算出部102による存在直線算出処理(S402)が終了すると、離陸点算出部103が離陸点算出処理(S403)を開始する。
【0062】
離陸点算出処理(S403)では、連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量から目標とする動体が離陸した離陸点を判定して、離陸点における特定点の三次元位置を算出する。
【0063】
本実施例において、離陸点算出処理(S403)では、撮像された時刻の正順に連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量が閾値より大きい場合に目標とする動体が離陸したとして離陸点を判定して、離陸点における特定点の三次元位置を算出する。
【0064】
図7を用いて、離陸点算出部103による離陸点算出処理(S403)について説明する。離陸点算出処理(S403)では、スケーターがジャンプしていないものとして、特定点の位置の算出を行う。
【0065】
図7で、画像フレーム504におけるスケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部の点701の像702の二次元直交座標系Σuvにおける二次元位置の座標が検出部101から存在直線算出部102に引き渡されるので、前述、図6を用いた説明の通り、存在直線算出処理(S402)で、図7におけるレンズの光学中心(502)と特定点701の像702を結ぶ存在直線が前述の直線の式(数1)により求められる。
【0066】
次に、離陸点算出処理(S403)は、スケーターがジャンプしていないものとして、特定点の位置の算出を行う。スケーターがジャンプしていない場合、特定点は、スケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部とリンクの接点701である。スケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部とリンクの接点701は、リンクの氷面509に存在する。この際、特定点(スケーターが装着したスケート靴のエッジとリンクの接点701)は、存在直線算出処理(S402)で算出された存在直線上に存在し、かつ、リンクの氷面509に存在することから、両者の交点を特定点として三次元位置の座標を算出する。なお、算出される特定点の三次元直交座標系ΣXYZにおけるZ座標の値は0となる。
【0067】
前述の通り、離陸点算出処理(S403)では、スケーターがジャンプしていないものとして、特定点の位置の算出を行うが、実際にはスケーターはジャンプしている。ジャンプの際、実際にはスケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部はリンクの氷面509に接していないため、リンクの氷面509と存在直線算出処理(S402)で算出された直線の交点を特定点とすると、スケーターが離陸した瞬間に特定点の三次元座標のX要素、Y要素の値がカメラのレンズの光学中心から遠ざかる向きに急激に変動する。
【0068】
このことから、離陸点算出処理(S403)は、一例として、次の処理をとる。特定点であるスケーターが装着したスケート靴のエッジ先端部とリンクの接点509の三次元座標のX要素、Y要素の値が撮像された時刻が連続した過去5フレームから求めた特定点の三次元座標のX要素、Y要素の値の多項式近似による予測値を算出する。撮像された時刻の正順に隣接する二つの特定点について、三次元座標のX要素、Y要素の値の前述の予測値の差を求める。三次元座標のX要素、Y要素の値の予測値の差からカメラのレンズの光学中心から遠ざかる向きの特定点の移動量を算出し、これを変化量とする。例えば、変化量がカメラのレンズの光学中心から遠ざかる向きに50以上の変動である場合を、閾値を越えた変動として定めるなどと定める。離陸点算出処理(S403)は、撮像された時刻の正順に特定点について変化量を算出して、算出した変化量があらかじめ定めた閾値より大きい場合に目標とする動体が離陸したとして離陸点を判定して、離陸点における特定点の三次元位置を算出して次の処理に引き渡す。なお、これは例示であって、離陸点算出処理(S403)や閾値の取り方などは、これに限るものではない。
【0069】
離陸点算出処理(S403)が終了すると、着地点算出部104が着地点算出処理(S404)を開始する。本実施例において、着地点算出処理(S404)では、連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出して、算出した変化量から目標とする動体が離陸した離陸点を判定して、離陸点における特定点の三次元位置を算出する。
【0070】
着地点算出処理(S404)は、撮像された時刻の逆順に連続する複数の画像フレームの情報について、前述の離陸点算出処理(S403)と同様の処理を行うことで、着地点における特定点の三次元位置を算出する。離陸点算出処理(S403)と着地点算出処理(S404)とは、連続する複数の画像フレームが撮像された時刻が正順と逆順との違いがあるが、その他の処理においては共通するため、説明を割愛する。
【0071】
また、着地点算出処理(S404)について、次に説明する処理によってもよい。スケーターのジャンプは放物運動であるとの特性を利用して、着地点算出処理(S404)の処理を軽減するものである。離陸点が撮像された時刻以降であって撮像された時刻の正順に連続する複数の画像フレームの情報から特定点の三次元位置に関する変化量を算出する。ここで、変化量とは、前述の通り、三次元座標のX要素、Y要素の値の予測値の差からカメラのレンズの光学中心から遠ざかる向きの特定点の移動量を算出し、これを変化量とする。次に、算出した変化量の正負が反転した際の画像フレームが撮像された時刻を取得する。この時刻を目標とする動体がジャンプの頂点が撮像された時刻と定める。頂点が撮像された時刻から離陸点が撮像された時刻を減じた時間の2倍の時間に一定の時間を加算した時間を離陸点が撮像された時刻に加算した時刻を算出する。算出された時刻から、撮像された時刻の逆順に連続する複数の画像フレームの情報から特定点の位置の三次元座標に関する変化量を算出する。算出した変化量があらかじめ定めた閾値より大きい場合に目標とする動体が着地したとして着地点を判定して、着地点における特定点の三次元位置を算出する。
【0072】
図3を参照して具体的に説明する。前述の通り、図3は、本実施例において、好適な例として説明するフィギュアスケート競技でスケーターがジャンプした様子を模式的に描いた図である。図3に模式的に示すように、スケーターのジャンプは放物運動であるとの特性もつ。図3では、301から305のそれぞれはジャンプしたスケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部を示し、本実施例においては、スケート靴のエッジの先端部を特定点である。301は離陸点における特定点、302は着地点における特定点を示し、303から305はジャンプ途中における空中での特定点を示している。特に、304はジャンプの軌道における頂点での特定点を示している。着地点算出処理(S404)では、放物運動の特徴に基づいて離陸点における特定点301と着地点における特定点302が頂点での特定点304を中心としてほぼ対象に位置することを利用している。特定点が離陸点301から頂点での特定点304に至る時間と頂点304から着地点における特定点302に至る時間がほぼ同じと推測されることから、離陸点における特定点301が撮像された時刻に特定点が離陸点における特定点301から頂点での特定点304に至る時間の2倍を加算すれば、おおむね着地点における特定点302が撮像された時刻を求めることができる。この時刻に一定のバッファとしての時間(例えば1秒など)を加算した時刻から初めて、時刻の逆順に連続する複数の画像フレームの情報から着地点を算出する。これにより、着地点における特定点302の近傍から着地点における特定点302の探索を効率的に行うことができるため処理が軽減される。なお、頂点での特定点304は、特定点の三次元座標のX要素、Y要素の値がカメラのレンズの光学中心から遠ざかる向きの変動から近づく向きの変動に変化したことで判定する。なお、これは例示であって、着地点算出処理(S404)や閾値の取り方などは、これに限るものではない。
【0073】
着地点算出処理(S404)が終了すると、軌道算出部105が軌道算出処理(S405)を開始する。軌道算出処理(S405)は、離陸点算出処理(S403)が算出した離陸点における特定点の三次元位置と、着地点算出処理(S404)が算出した着地点における特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線と、目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の画像フレームに撮像された特定点の像についての存在直線との位置関係から特定点の三次元での軌道を算出する。
【0074】
図8は、軌道算出処理(S405)の例を示す図である。図8を用いて、軌道算出処理(S405)の一例について説明する。この例では、軌道算出処理(S405)は、離陸点算出処理(S403)が算出した離陸点における特定点の三次元位置と、着地点算出処理(S404)が算出した着地点における特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線であって、目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の画像フレームに撮像された1ないし複数の特定点の像についての存在直線との距離の合計を最小とする曲線を、特定点の三次元での軌道として算出する。
【0075】
図8では、説明理解の容易性を考慮して、特定点を、離陸点301、着地点302、空中での特定点303及び304の4点とする。空中での特定点の数が増えても同様である。特定点303についての存在直線が801、特定点304についての存在直線が802で示される。また、一点鎖線で示される曲線805は、離陸点における特定点301と、着地点における特定点302を通過する放物運動を記述できる曲線である。
【0076】
曲線805は、例えば、次の式(数2)で示す3つの式で表すことができる。式(数2)は、ここでは三次元直交座標系ΣXYZで表記されている。次の表記についての取り決めは、式(数2)の説明のみに適用する。tは時刻、mは質量、gは重力加速度、vは速度、kは粘性係数を示す。また、添字x、y、zによって三次元直交座標系ΣXYZでのX要素、Y要素、Z要素を示す。
【0077】
式(数2)で示す三次元直交座標系ΣXYZでのX要素、Y要素、Z要素のそれぞれを表す式は、各々3つのパラメータを有する。X要素を示す第1式では、x、vx0、k/mの3つ、Y要素を示す第2式では、y、vy0、k/mの3つ、Z要素を示す第2式では、z、vz0、k/mの3つである。式(数2)に離陸点301の座標の値と離陸した時刻、着地点302の座標の値と着地した時刻を代入することで、各々の式の3つのパラメータのうち2つまでを決めることができる。
【0078】
【数2】
【0079】
軌道算出処理(S405)は、図8で示す、曲線805と存在直線801の距離803と、曲線805と存在直線802の距離804の合計が最小となるように上述の式(数2)で各々の式について残りひとつのパラメータの値を算出して、算出した曲線を特定点の三次元での軌道と決定する。
【0080】
また、図9は、軌道算出処理(S405)の別の例を示す図である。図9を用いて、軌道算出処理(S405)の別の例について説明する。この例では、軌道算出処理(S405)は、離陸点算出処理(S403)が算出した離陸点における特定点の三次元位置と、着地点算出処理(S404)が算出した着地点における特定点の三次元位置と、を通過する放物運動を記述できる曲線であって、目標とする動体の離陸後であって着地前における1ないし複数の特定点について、撮像された時刻における画像フレームに撮像された特定点の像についての存在直線と、特定点の撮像された時刻における曲線上の予測位置と、の距離を算出し、算出された1ないし複数の予測位置との距離の合計を最小とする曲線を、特定点の三次元での軌道として算出する。
【0081】
図9では、説明理解の容易性を考慮して、特定点を、離陸点301、着地点302、空中での特定点303及び304の4点とする。空中での特定点の数が増えても同様である。特定点303についての存在直線が801、特定点304についての存在直線が802で示される。また、一点鎖線で示される曲線905は、離陸点における特定点301と、着地点における特定点302を通過する放物運動を記述できる曲線である。曲線905は、図8での曲線805と同様に、例えば、上述の式(数2)で表すことができる。
【0082】
軌道算出処理(S405)は、空中での特定点303が撮像された時刻から上述の式(数2)によってその時刻における曲線905上の特定点の予測位置901を算出する。同様に、空中での特定点304が撮像された時刻から上述の式(数2)によってその時刻における曲線905上の特定点の予測位置902を算出する。
【0083】
軌道算出処理(S405)は、曲線905上の特定点の予測位置901と存在直線801の距離903と、曲線905上の特定点の予測位置902と存在直線802の距離904の合計が最小となるように上述の式(数2)で各々の式について残りひとつのパラメータの値を算出して、算出した曲線を特定点の三次元での軌道と決定する。
【0084】
以上が、実施例についての説明である。
【0085】
次に、コンピュータを軌道算出装置として機能させるための軌道算出プログラムについて説明する。コンピュータの構成は、図2に示す通りである。
【0086】
軌道算出プログラムは、メインモジュール、入出力モジュール及び演算処理モジュールを備える。メインモジュールは、処理を統括的に制御する部分である。入出力モジュールは、画像データなどの入力情報をコンピュータに取得させ、算出した軌道の情報を数値や画像でコンピュータに出力させる。演算処理モジュールは、検出モジュール、存在直線算出モジュール、離陸点算出モジュール、着地点算出モジュール及び軌道算出モジュールを備える。メインモジュール、入力モジュール及び演算処理モジュールを実行させることにより実現される機能は、軌道算出装置1の検出部101、存在直線算出部102、離陸点算出部103、着地点算出部104及び軌道算出部105の機能とそれぞれ同様である。
【0087】
軌道算出プログラムは、例えば、ROM等の記憶媒体又は半導体メモリによって提供される。また、軌道算出プログラムは、ネットワークを介して提供されてもよい。
【0088】
以上、本実施形態に係る軌道算出装置、軌道算出方法及び軌道算出プログラムによれば、フィギュアスケートなど跳躍を伴う運動競技などにおいて、単眼カメラで撮像した動画像から動体の軌道を精度高く算出することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 軌道算出装置
101 検出部
102 存在直線算出部
103 離陸点算出部
104 着地点算出部
105 軌道算出部
201 中央演算装置(CPU)
202 入力装置
203 出力装置
204 主記憶装置(RAM/ROM)
205 補助記憶装置
301 ジャンプしたスケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部(離陸点における特定点)
302 ジャンプしたスケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部(着地点における特定点)
303 ジャンプしたスケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部(空中での特定点)
304 ジャンプしたスケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部(空中での特定点)
305 ジャンプしたスケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部(空中での特定点)
501 三次元直交座標系ΣXYZの原点
502 カメラのレンズの光学中心
503 二次元直交座標系Σuvの原点
504 画像フレーム(撮像素子面)
505 基準点
506 基準点
507 基準点
508 基準点
509 リンクの氷面
701 スケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部の点
702 スケーターが装着したスケート靴のエッジの先端部の点の像
801 特定点303についての存在直線
802 特定点304についての存在直線
803 曲線805と存在直線801の距離
804 曲線805と存在直線802の距離
805 離陸点と着地点を通過する放物運動を記述できる曲線
901 特定点303が撮像された時刻における曲線905上の特定点の予測位置
902 特定点304が撮像された時刻における曲線905上の特定点の予測位置
903 曲線905上の特定点の予測位置901と存在直線801の距離
904 曲線905上の特定点の予測位置902と存在直線802の距離
905 離陸点と着地点を通過する放物運動を記述できる曲線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9