(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080924
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】リソソーム活性促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/232 20060101AFI20220524BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220524BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220524BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220524BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220524BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20220524BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220524BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20220524BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20220524BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220524BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20220524BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
A61K36/232
A61P43/00 107
A61P3/06
A61P3/00
A61P43/00 111
A61P17/00
A61P3/08
A61P19/08
A61P25/08
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K127:00
A61K135:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192148
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】多田 明弘
(72)【発明者】
【氏名】三谷 信
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 知佳
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC432
4C083CC04
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE12
4C088AB41
4C088AC05
4C088BA08
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA06
4C088ZA89
4C088ZA96
4C088ZB21
4C088ZC19
4C088ZC21
4C088ZC33
4C088ZC35
(57)【要約】
【課題】新規なリソソーム活性促進剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、セリ科(Apiaceae)シシウド属(Angelica)に属する植物の抽出物を有効成分とする、線維芽細胞のリソソーム活性促進剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリ科(Apiaceae)シシウド属(Angelica)に属する植物の抽出物を有効成分とする、線維芽細胞のリソソーム活性促進剤。
【請求項2】
セリ科(Apiaceae)シシウド属(Angelica)に属する植物が、アシタバ(Angelica keiskei)である、請求項1に記載の線維芽細胞のリソソーム活性促進剤。
【請求項3】
真皮のリソソーム活性を促進するための、請求項1又は2に記載の線維芽細胞のリソソーム活性促進剤。
【請求項4】
前記植物の抽出物の含有量が、乾燥質量を基準として、0.5~4.0質量%であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の線維芽細胞のリソソーム活性促進剤。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の線維芽細胞のリソソーム活性促進剤を含む、線維芽細胞のリソソーム活性を促進するための外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維芽細胞におけるリソソーム活性促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リソソームは、真核生物が持つ細胞小器官の一つであり、内部に加水分解酵素を持つ細胞内消化の場である。エンドサイトーシスやオートファジーによって膜内に取り込まれた生体高分子はリソソームにおいて分解され、分解物のうち有用なものは、細胞質に吸収され再利用され、不用物はエキソサイトーシスによって細胞外に廃棄されるか、残余小体として細胞内に留まる。
【0003】
リソソームの活性は種々の疾患に関わっていることが知られている。代表的な疾患としては、リソソーム蓄積症が知られている。リソソーム蓄積症は、多くの場合リソソーム内で働く加水分解酵素の欠損または変異によって当該酵素の基質が分解されずに沈着物として細胞内に蓄積することによって発症する。リソソーム蓄積症には、広範な臨床的不均一性および生物学的多様性があり、脂質蓄積症、ムコ多糖症、ムコ脂質症、および糖タンパク質蓄積症が含まれる(特許文献1及び2参照)。
【0004】
そこで、近年、リソソーム活性を向上させる成分の探索がなされており、イネ科(Poaceae)ジュズダマ属(Coix)に属する植物の抽出物、カバノキ科(Betulaceae)カバノキ属(Betula)に属する植物の抽出物が、リソソーム活性を促進することが知られている(特許文献3)。
【0005】
他方、ケラチノサイト内におけるリソソーム活性を向上させメラノソームタンパク質の分解を促進することにより美白効果が得られることが知られている(特許文献4、非特許文献1及び2)。
【0006】
また、リソソーム内酵素であるカテプシンB1、Dがコラーゲンを分解すること(非特許文献3)、ヒアルロン酸がリソソーム内に取り込まれ分解されること(非特許文献4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2014-517015号公報
【特許文献2】特表2014-523881号公報
【特許文献3】特開2017-206468号公報
【特許文献4】特開2015-10071号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】富士フイルム株式会社、“シミの原因となるメラニン色素が表皮細胞内で分解される現象を実証 美白有用成分「AMA(エーエムエー)」にメラニン色素分解促進効果を確認”、[online]、2013年11月28日、[令和2年9月9日検索]、インターネット〈URL:https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1385607762.pdf〉
【非特許文献2】富士フイルム株式会社、“タンパク質分解酵素「カテプシンV」がシミの原因となるメラニン色素を含むメラノソームの分解に関与することを発見 米ぬか脂質に含有される「オリザノール」が、メラノソームの分解を促すことを確認”、[online]、2015年11月5日、[令和2年9月9日検索]、インターネット〈URL:https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1446691328.pdf〉
【非特許文献3】Biochem.J.(1974)137,387-398
【非特許文献4】Matrix Biol.2002Jan;21(1):15-23.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したようにリソソームは種々の疾患に関連しており、その活性を向上させ得る成分の開発が望まれている。そこで、本発明は、新規なリソソーム活性促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、セリ科(Apiaceae)シシウド属(Angelica)に属する植物の抽出物を有効成分とする、線維芽細胞のリソソーム活性促進剤である。
本発明の線維芽細胞のリソソーム活性促進剤は、リソソームの活性低下に起因する疾患の治療又は予防や、リソソームの活性に関連する生体機能向上、特に皮膚状態の改善に有用である。
【0011】
本発明の好ましい形態では、セリ科(Apiaceae)シシウド属(Angelica)に属する植物が、アシタバ(Angelica keiskei)である。
【0012】
本発明の好ましい形態では、本発明は、真皮のリソソーム活性を促進するためのリソソーム活性促進剤である。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記植物の抽出物の含有量が、乾燥質量を基準として、0.5~4.0質量%である。
【0014】
本発明は、上記線維芽細胞のリソソーム活性促進剤を含む、線維芽細胞のリソソーム活性を促進するための外用剤にも関する。
このような本発明の外用剤は、容易に継続使用することができ、リソソームの活性低下に起因する疾患の治療又は予防や、リソソームの活性に関連する生体機能向上、特に皮膚状態の改善に有用である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の線維芽細胞のリソソーム活性促進剤は、線維芽細胞においてリソソームの活性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】試験例1における、アシタバ抽出物を未添加の場合(コントロール)における、真皮線維芽細胞のリソソーム活性を示す蛍光写真である。写真中のスケールバーは500μmを示す。
【
図2】試験例1における、0.1%のアシタバ抽出物を添加した場合における、真皮線維芽細胞のリソソーム活性を示す蛍光写真である。写真中のスケールバーは500μmを示す。
【
図3】試験例1における、0.05%のアシタバ抽出物を添加した場合における、真皮線維芽細胞のリソソーム活性を示す蛍光写真である。写真中のスケールバーは500μmを示す。
【
図4】試験例2における、アシタバ抽出物を未配合の化粧水を添加した場合における、真皮線維芽細胞のリソソーム活性を示す蛍光写真である。写真中のスケールバーは、500μmを示す。
【
図5】試験例2における、アシタバ抽出物を配合した化粧水を添加した場合における、真皮線維芽細胞のリソソーム活性を示す蛍光写真である。写真中のスケールバーは、500μmを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の線維芽細胞のリソソーム活性促進剤(以下、単にリソソーム活性促進剤という)は、セリ科(Apiaceae)シシウド属(Angelica)に属する植物の抽出物(以下、単にシシウド属の抽出物ともいう)を含む。
前記セリ科(Apiaceae)シシウド属(Angelica)に属する植物としては、アシタバ(Angelica keiskei)が好ましく挙げられる。
【0018】
シシウド属に属する植物の抽出部位は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、葉部、茎部、花部、果実部、根部などが挙げられるが、これらの中でも、特に葉部及び/又は茎部を用いることが好ましい。
【0019】
抽出に際して、シシウド属に属する植物の抽出部位又はその乾燥物は、予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。抽出部位の乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。
【0020】
抽出は、常圧、若しくは加圧、減圧下で、室温、冷却又は加熱した状態で抽出溶媒に浸漬させて抽出する方法、水蒸気蒸留などの蒸留法を用いて抽出する方法並びに抽出部位を圧搾して抽出物を得る圧搾法などが例示され、これらの方法を単独で、又は2種以上を組み合わせて抽出を行うこともできる。
【0021】
浸漬によって抽出する場合、シシウド属に属する植物の植物体、地上部、根茎部、及び/又は種子の乾燥物1質量部に対して溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、溶媒の沸点付近の温度であれば数時間浸漬することにより行うことができる。浸漬後は、室温まで冷却し、不要物を除去した後、溶媒を減圧濃縮等により濃縮液をえることができる。濃縮液を5℃で静置し、析出した澱をろ過することにより、所望の抽出物を得ることができる。
【0022】
抽出溶媒としては、極性溶媒が好ましく、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びブタノール等のアルコール類、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びグリセリン等の多価アルコール類、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、並びにジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン等のエーテル類から選択される1種又は2種以上が好適に例示でき、中でも1,3-ブチレングリコール、又は水を用いて抽出することが好ましい。
このようにして得られた抽出物、又はこれを適宜濃縮したものを本発明のリソソーム活性促進剤とすることができる。
【0023】
また、シシウド属の抽出物は、市販のものを用いることができ、これを本発明のリソソーム活性促進剤とすることができる。例えば、「アシタバ抽出液BG(丸善製薬株式会社製)」を用いることができる。
【0024】
本発明のリソソーム活性促進剤全量に対し、シシウド属の抽出物の含有量は、乾燥質量を基準として、好ましくは0.5~4.0質量%であり、より好ましくは0.9~2.7質量%であり、さらに好ましくは1.5~2.0質量%である。
【0025】
本発明のリソソーム活性促進剤は、線維芽細胞におけるリソソームの活性を促進する効果に優れる。線維芽細胞は、結合組織を構成する細胞の一つであり、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等の細胞外基質を構成する成分を合成する働きを担う。
線維芽細胞は、真皮等の皮膚組織、皮膚支帯等の皮下組織、筋組織、神経組織に存在する。本発明のリソソーム活性促進剤は、上記の線維芽細胞が分布する組織のリソソーム活性を促進するために用いることができ、好ましくは、真皮における線維芽細胞のリソソーム活性を促進するために用いることができる。
【0026】
本発明のリソソーム活性促進剤は、当該リソソーム活性促進剤を原液で利用しても良いし、当該リソソーム活性促進剤を任意の濃度に希釈して利用してもよい。また、本発明のリソソーム活性促進剤は、製剤化に用いられる任意の成分と適宜組み合わせて配合することにより、外用剤又は経口剤の形態とすることができる。
本発明においては、リソソーム活性促進剤を含む外用剤又は経口剤の形態とすることが好ましい。
【0027】
外用剤としては化粧料、医薬部外品、医薬品などが好適に例示でき、本発明の効果を損ねない限度において、通常使用される任意成分を含有することもできる。このような任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボカド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、2,4-ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0028】
経口剤としては、例えば、菓子やパン、麺などの一般食品、ドリンク製剤、カプセル剤や錠剤の形態をとる健康増進の目的を有する食品群(例えば、特定保健用食品等)、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤や、錠剤の形態をとる経口投与医薬品等が例示できる。
経口剤の形態とする場合においては、許容される任意成分を含有することができる。この様な任意成分としては、食品であれば、塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、酢等の調味成分、着色成分、フレーバー等の矯臭成分、増粘剤、乳化・分散剤、保存料、安定剤、各種ビタミン類等が好適に例示でき、健康増進の目的を有する食品群や医薬品であれば、結晶セルロース、乳糖等の賦形剤、アラビヤガムやヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、クロスカルメロースナトリウム、デンプン等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、矯味、矯臭剤、着色剤、各種ビタミン類等が好ましく例示できる。これらを常法に従って処理することにより、本発明の経口剤を製造することができる。
【0029】
外用剤におけるシシウド属の抽出物の総含有量は、乾燥質量として、0.0005~0.0040質量%、より好ましくは0.0009~0.0027質量%である。
経口剤におけるシシウド属の抽出物の総含有量は、乾燥質量として、0.05~100質量%、より好ましくは30~80質量%とすることができる。
また、固形分として前記植物の抽出物を1日あたり10~1000mgを1回又は数回に分けて飲用する形態とすることが好ましい。
【0030】
本発明のリソソーム活性促進剤は、リソソーム活性の低下により引き起こされる種々の疾患の治療又は予防のために用いることができる。このような疾患としては、脂質蓄積症、ムコ多糖症、ムコ脂質症及び糖タンパク質蓄積症を含むリソソーム蓄積症が挙げられ、さらに具体的には、アクチベーター欠損症/GM2ガングリオシドーシス、α-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠乏症、シスチン症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(例えば、I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス(例えば、乳児性、後期乳児性/若年性、成人性/慢性)、I cell病/ムコリピドーシスII、乳児性遊離シアル酸蓄積症/ISSD、若年性ヘキソサミニダーゼA欠乏症、クラッベ病(例えば、乳児性発症、遅延性発症)、異染性白質ジストロフィー、ムコ多糖症疾患、偽性ハーラーポリジストロフィー/ムコリピドーシスIIIA(例えば、MPS I ハーラー症候群、MPS I シャイエ症候群、MPS I ハーラー・シャイエ症候群、MPS II ハンター症候群、サンフィリッポ症候群A型/MPS III A、サンフィリッポ症候群B型/MPS III B、サンフィリッポ症候群C型/MPS III C、サンフィリッポ症候群D型/MPS III D、モルキオA型/MPS IV A、モルキオB型/MPS IV B、MPS IX ヒアルロニダーゼ欠損症、MPS VI マロトー・ラミー、MPS VII スライ症候群、ムコリピドーシスI/シアリドーシス、ムコリピドーシスIII C、ムコリピドーシスIV型)、多種スルファターゼ欠損症、ニーマン・ピック病(例えば、A型、B型、C型)、神経セロイドリポフスチン症(例えば、CLN6病-非定型後期乳児性、遅発変異型、早期若年性、バッテン・シュピールマイアー・フォークト/若年性NCL/CLN3病、後期乳児性CLN5のフィンランド変異型、ヤンスキー・ビールショースキー病/後期乳児性CLN2/TPP1病、クッフス/成人発症NCL/CLN4病、北部型癲癇(Northern Epilepsy)/後期乳児性CLN8の変異型、サンタボーリ・ハルシア(Santavuori-Haltia)/乳児性CLN1/PTT病、β-マンノシドーシス)、ポンペ病/糖原蓄積症II型、濃化異骨症、サンドホフ病/GM2ガングリオシドーシス(例えば、成人性発症、乳児性、若年性)、シンドラー病、サラ病/シアル酸蓄積症、テイ・サックス病/GM2ガングリオシドーシスまたはウォルマン病等が挙げられる。
【0031】
本発明のリソソーム活性促進剤は、リソソーム活性の低下によって引き起こされる、皮膚状態の低下に対して用いることができ、具体的には、ヒアルロン酸産生促進、又はコラーゲン産生促進の用途で用いることができる。
【実施例0032】
<試験例1>アシタバ抽出物を用いた、線維芽細胞におけるリソソーム活性の評価
培地(10%FBS+1%AA/DMEM)に懸濁した正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF、#5884 新生児)を、2.5×104 cells/wellとなるように4 wellチャンバーに分配し、37℃、5%CO2環境下で24時間培養した。
新たな培地にアシタバ抽出物(アシタバ抽出液BG(丸善製薬株式会社製))を最終濃度が0.1%、又は0.05%(乾燥質量でそれぞれ0.00148%、0.00074%)となるように添加し、エキス含有培地とした。培養後の細胞について、チャンバー内の培地を前記エキス含有培地に交換し、37℃、5%CO2環境下で24時間培養した。コントロールとしては、培養後に交換する培地としてアシタバ抽出物を未添加の培地を添加し、同様の条件で培養したものを用いた。
【0033】
培養後、培地を除去し、PBSで洗浄後、下記の染色培地を500μl/wellずつ添加し、37℃で30分以上培養した。
・染色培地:Lysosomal Metabolic Health Assay Kit(Marker Gene Technologies,Inc.)のEsterGreen 1unitに対して、10μlのDMSOを添加し、前記培地で10000倍希釈したもの
【0034】
培地を除去し、PBSで洗浄後、滅菌水で5倍希釈した5×Opti-Klearを500μl/wellずつ添加し、観察用の細胞を調製した。その後、蛍光顕微鏡により、EX/EM:490/520nmの測定波長で細胞の観察を行った。結果を
図1~3に示す。
【0035】
図1~3に示すように、アシタバ抽出物を0.1%(
図2)、及び0.05%(
図3)を添加した場合は、前記抽出物を未添加のコントロール(
図1)と比して、リソソームの蛍光強度が上昇した。
よって、アシタバ抽出物には線維芽細胞におけるリソソーム活性を促進する作用があることが明らかとなった。
【0036】
<試験例2>アシタバ抽出物を有効成分とする化粧水を用いた、線維芽細胞におけるリソソーム活性の評価
(1)化粧水の製造
以下に示す処方に従って、皮膚外用剤である化粧料を作成した。即ち、処方成分を80℃ に加熱し、攪拌、可溶化した後に、攪拌冷却して実施例1の化粧水を得た。また、下記のアシタバ抽出液BGを等量の水に替えた比較例1(アシタバ抽出液BGを未添加)も作成した。
【0037】
【0038】
(2)リソソーム活性の評価試験
培地(10%FBS+1%AA/DMEM)に懸濁した正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF、#5884 新生児)を、2.5×104 cells/wellとなるように4 wellチャンバーに分配し、37℃、5%CO2環境下で24時間培養した。
新たな培地に実施例1又は比較例1を40倍希釈となるように添加し、これらを化粧水含有培地とした。培養後の細胞について、チャンバー内の培地を化粧水含有培地に交換し、37℃、5%CO2環境下で24時間培養した。
【0039】
培養後、培地を除去し、PBSで洗浄後、下記の染色培地を500μl/wellずつ添加し、37℃で30分以上培養した。
・染色培地:Lysosomal Metabolic Health Assay Kit(Marker Gene Technologies,Inc.)のEsterGreen 1unitに対して、10μlのDMSOを添加し、前記培地で10000倍希釈したもの
【0040】
培地を除去し、PBSで洗浄後、滅菌水で5倍希釈した5×Opti-Klearを500μl/wellずつ添加し、観察用の細胞を調製した。その後、蛍光顕微鏡により、EX/EM:490/520nmの測定波長で細胞の観察を行った。結果を
図4及び5に示す。
【0041】
図4及び5に示すように、アシタバ抽出物を含む実施例1を添加した場合(
図5)は、当該抽出物を含まない比較例1を添加した場合(
図4)と比して、リソソームの蛍光強度が上昇した。
よって、アシタバ抽出物を配合した化粧水には線維芽細胞におけるリソソーム活性を促進する作用があることが明らかとなった。