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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080966
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/04 20060101AFI20220524BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220524BHJP
【FI】
F24F6/04
H01M8/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192201
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】梶尾 克宏
【テーマコード(参考)】
3L055
5H127
【Fターム(参考)】
3L055AA10
5H127AB04
5H127AC02
5H127BB02
5H127BB34
5H127EE17
(57)【要約】
【課題】セパレータに過剰な外力を作用させることなく、温度が変化した場合でもセパレータと水交換膜との間のシール性能を高く維持できる加湿器を構成する。
【解決手段】含水ガスが供給されることで含水ガスの水分を乾燥ガスに与える加湿モジュールAwが、一方の面に乾燥ガス側水交換部が形成され、他方の面に含水ガス側水交換部が形成された複数のセパレータ10を有している。乾燥ガス側水交換部と含水ガス側水交換部との境界に水交換膜を挟み込む状態で複数のセパレータ10を積層し、加湿モジュールAwのうち、複数のセパレータ10の積層方向での端部位置に加圧空間Sを配置し、流体を加圧空間Sに案内する仕切部17を形成している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥ガスが流れる乾燥ガス供給路と、
含水ガスが流れる含水ガス供給路と、
前記乾燥ガス供給路と連通した乾燥ガス側水交換部および前記含水ガス供給路と連通した含水ガス側水交換部の少なくとも一方が互いに異なる面に形成された板状の複数のセパレータと、
前記乾燥ガス側水交換部と前記含水ガス側水交換部とが交互に配置されるように複数の前記セパレータが積層された状態で、隣接する前記セパレータの境界に挟み込まれる水交換膜と、を有し、
前記乾燥ガス供給路からの前記乾燥ガスが前記乾燥ガス側水交換部に供給され、且つ、前記含水ガス供給路からの前記含水ガスが前記含水ガス側水交換部に供給されることで前記含水ガスの水分を、前記水交換膜を介して前記乾燥ガスに与える加湿モジュールを備え、
前記加湿モジュールにおける複数の前記セパレータの積層方向の端部位置に加圧空間が配置され、流体を前記加圧空間に案内する仕切部が形成されている加湿器。
【請求項2】
前記流体が、前記含水ガス供給路に供給される前記含水ガスと、前記乾燥ガス供給路に供給される前記乾燥ガスとのいずれか一方である請求項1に記載の加湿器。
【請求項3】
前記含水ガス供給路と前記乾燥ガス供給路とのいずれか一方が、前記加圧空間に加圧ガスを供給する加圧用流路に連通している請求項1又は2に記載の加湿器。
【請求項4】
加圧ガスを前記加圧空間に供給する加圧用流路が、前記セパレータに形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の加湿器。
【請求項5】
前記加圧空間に案内された前記流体を排出する排出部が前記セパレータに形成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の加湿器。
【請求項6】
前記仕切部が、前記加湿モジュールの外面に形成され、前記流体の圧力の漏出を防止するシール材で構成されている請求項1~5のいずれか一項に記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池のカソードガスを加湿するための加湿器を例に挙げると、ガスを案内するセパレータと、水を透過する膜とを交互に配置する構成が多く採用され、このような構成を有する加湿器として、例えば、以下に説明する特許文献1と特許文献2とを例に挙げることができる。
【0003】
特許文献1には、複数のセパレータと複数の加湿膜とを交互に配置し、これらの積層方向の両端の加圧板を貫通する複数のねじ棒の一端側にナットと座金とバネを備え、バネの付勢力によりセパレータに積層方向に圧力を作用させる構成が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載される加湿器では、セパレータからの水の漏出を防ぐシール部、あるいは、セパレータに対する加湿膜の位置を決めるセパレータシール部等を備えている。
【0005】
特許文献2には、積層する状態で第一の枠体(セパレータ)と第二の枠体とを交互に配置し、これらの間に配置される加湿膜を挟む位置の一方に加湿流体流路を形成し、他方に被加湿流体流路を形成しており、加湿流体流路に連通するマニホールドと、被加湿流体流路に連通するマニホールドとを、第一の枠体と第二の枠体とに対して積層方向に貫通するように形成した構成が記載されている。
【0006】
特許文献2に記載される加湿器では、複数の第一の枠体と複数の第二の枠体とを挟む位置に保持板を配置し、これらを積層方向に貫通する複数の連結ロッドにナットを螺合させて、ナットの締結力によって第一の枠体と第二の枠体とを一体化している。また、加湿膜の外周を取り囲む領域に第一のシール部を形成し、マニホールドを形成する開口の外周にシール部を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-163035号公報
【特許文献2】特開2008-282740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1と特許文献2との構成に限らず、一方の面に含水ガス側水交換部が形成され、他方の面に乾燥ガス側水交換部が形成された板状のセパレータを有し、含水ガス側水交換部と乾燥ガス側水交換部とが交互に配置されるように複数のセパレータの位置を決め、これらの境界に水交換膜(特許文献1、特許文献2の加湿膜)を配置した加湿器では、例えば、乾燥ガスの圧力によってセパレータが変形して水交換部と水交換膜の距離が離れる方向の力が発生し、セパレータと水交換膜との隙間などから乾燥ガスが漏出することが懸念される。
【0009】
このような不都合は、含水ガスが供給される流路側でも発生することもあり、ガスの漏出を抑制するため、特許文献1では、ねじ棒に螺合するナットの操作によってバネの付勢力の設定で対応している。また、特許文献2は、バネを用いないものであるが、特許文献1と同様に連結ロッドにナットを螺合させ、締結力の作用によって対応している。しかしながら、特許文献1,2のようにバネの付勢力や締結力を常時作用させるものでは、これらの力の作用によってセパレータに悪影響を与え、セパレータと水交換膜との間に大きな隙間を作り出す不都合が生じてしまうおそれがある。
【0010】
更に、この種の加湿器では、供給されるカソードガス(基本的に空気)、あるいは、カソードオフガス(燃料電池スタックから排出される流体)の温度によりセパレータが熱膨張し、セパレータと水交換膜との間に間隙が形成される方向(セパレータの板厚方向)に力が作用することもあり、熱膨張の影響によるシール性能の低下の抑制も望まれる。
【0011】
このような理由から、セパレータに過剰な外力を作用させることなく、温度が変化した場合でも、セパレータと水交換膜との間のシール性能を十分に確保できる加湿器が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る加湿器の特徴構成は、乾燥ガスが流れる乾燥ガス供給路と、含水ガスが流れる含水ガス供給路と、前記乾燥ガス供給路と連通した乾燥ガス側水交換部および前記含水ガス供給路と連通した含水ガス側水交換部の少なくとも一方が互いに異なる面に形成された板状の複数のセパレータと、前記乾燥ガス側水交換部と前記含水ガス側水交換部とが交互に配置されるように複数の前記セパレータが積層された状態で、隣接する前記セパレータの境界に挟み込まれる水交換膜と、を有し、前記乾燥ガス供給路からの前記乾燥ガスが前記乾燥ガス側水交換部に供給され、且つ、前記含水ガス供給路からの前記含水ガスが前記含水ガス側水交換部に供給されることで前記含水ガスの水分を、前記水交換膜を介して前記乾燥ガスに与える加湿モジュールを備え、前記加湿モジュールにおける複数の前記セパレータの積層方向の端部位置に加圧空間が配置され、流体を前記加圧空間に案内する仕切部が形成されている点にある。
【0013】
加湿器は、複数のセパレータの含水ガス供給路と乾燥ガス供給路とに供給されるガスの圧力がセパレータを変形させ、セパレータと水交換膜の距離が離れる方向に作用するものである。これに対し、本特徴構成では、流体が仕切部によって加圧空間に案内される。このため、加湿モジュールを構成する複数のセパレータと水交換膜とを密着させる方向に、流体の圧力を作用させることが可能となり、セパレータの変形を抑制するので、セパレータと水交換膜との間の間隙が大きくなるという不都合を招くことがない。また、このように作用する圧力は、熱膨張収縮によってセパレータと水交換膜との相対的な位置関係が変化しても低下することがないため、セパレータと水交換膜との距離を適正に保つことも可能となる。特に、本特徴構成は、流体を加圧空間の広い面に作用させることが可能であるため、例えば、スプリングの圧力を作用させる構成のようにセパレータの特定の位置に継続的に圧力を作用させることに起因してセパレータの一部を変形させるという不都合を招くこともない。
従って、セパレータに過剰な外力を作用させることなく、温度が変化した場合でも、セパレータと水交換膜との間のシール性能を十分に確保できる加湿器が構成された。
【0014】
上記構成に加えた構成として、前記流体が、前記含水ガス供給路に供給される前記含水ガスと、前記乾燥ガス供給路に供給される前記乾燥ガスとのいずれか一方であっても良い。
【0015】
これによると、加圧だけに用いるガスや、加圧だけに用いる液体の供給源を備えることなく、含水ガスと乾燥ガスとのいずれか一方を加圧空間に供給するだけで、複数のセパレータと水交換膜とに対し重ね合わせ方向に圧力を作用させることが可能となる。
【0016】
上記構成に加えた構成として、前記流体が、前記乾燥ガス供給路に供給される前記乾燥ガスであっても良い。
【0017】
加湿器では、コンプレッサ等で加圧した乾燥ガスを乾燥ガス供給路に供給している。従って、加圧用の流体として乾燥ガスを用いるものでは、複数のセパレータと複数の水交換膜とに対し重ね合わせ方向に乾燥ガスの圧力を作用させることが可能となる。
【0018】
上記構成に加えた構成として、前記含水ガス供給路と前記乾燥ガス供給路とのいずれか一方が、前記加圧空間に加圧ガスを供給する加圧用流路に連通しても良い。
【0019】
これによると、例えば、含水ガス供給路と乾燥ガス供給路との一方と、加圧用流路とを連通路等で連通させることにより、含水ガス供給路と乾燥ガス供給路とのいずれかからのガスを、加圧のための流体として加圧空間に供給することが可能となる。
【0020】
上記構成に加えた構成として、前記流体が、前記含水ガスと前記乾燥ガスのいずれとも異なる加圧ガスであっても良い。
【0021】
これによると、例えば、コンプレッサで加圧された空気を専用の加圧ガスとして用いることにより、必要とする圧力を複数のセパレータと水交換膜とに対し重ね合わせ方向に作用させ、高いシール性能を得ることも可能となる。
【0022】
上記構成に加えた構成として、前記加圧ガスを前記加圧空間に供給する加圧用流路が、前記セパレータに形成されても良い。
【0023】
これによると、加圧空間に対して乾燥ガス、含水ガス、外部からのガス、外部からの液体等の流体を供給する場合でも、セパレータに形成された加圧用流路を介して加圧空間に供給することが可能となるので、セパレータの外部に流路を形成する必要もない。
【0024】
上記構成に加えた構成として、前記加圧空間に案内された前記流体を排出する排出部が前記セパレータに形成されても良い。
【0025】
これによると、加圧空間に供給された流体を、排出部を介して外部に排出することが可能となる。また、加圧空間に乾燥ガスを供給する構成では、排出部から排出された乾燥ガスをセパレータに設けられた乾燥ガス排出路、含水ガス供給路、含水ガス排出路のいずれかに供給することも可能であり、加圧空間に対して過大な圧力が作用する現象の抑制も可能となる。
【0026】
上記構成に加えた構成として、前記仕切部が、前記加湿モジュールの外面に形成され、前記流体の圧力の漏出を防止するシール材で構成されても良い。
【0027】
これによると、例えば、複数のセパレータのうち積層方向での端部位置のものの外壁にシールを、セパレータの外壁から突出するように形成することで、セパレータの外壁を加工することなく加圧空間を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】加湿器の斜視図である。
図2】加湿器のガスポート間の構造を示す断面図である。
図3】セパレータの第1乾燥ガス供給路の部位の断面図である。
図4】加圧ガス供給路から加圧空間に亘る領域の構造を示す断面図である。
図5】下部プレートの平面図である。
図6】セパレータの上面の構造と水交換膜とを示す斜視図である。
図7】セパレータの下面の構造を示す斜視図である。
図8】加湿モジュールの上端のセパレータの平面図である。
図9】別実施形態(a)のセパレータの平面図である。
図10】別実施形態(a)変形例のセパレータの平面図である。
図11】別実施形態(b)のセパレータの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、上端の上部プレート1と、下端の下部プレート2と、複数(実施形態では3つ)の加湿モジュールAwと、上部プレート1と下部プレート2とに貫通する複数のボルト3と、これに螺合するナット4と、乾燥ガス供給路Pと、含水ガス供給路Qと、を備えて加湿器Aが構成されている。
【0030】
この加湿器Aは、図1図2に示すように、上部プレート1と下部プレート2との間に複数の加湿モジュールAwを挟み込み、ボルト3とナット4との締結により複数の加湿モジュールAwを一体化している。加湿モジュールAwは、複数のセパレータ10を積層し、これら複数のセパレータ10を積層方向に貫通する乾燥ガス供給路Pと、含水ガス供給路Qとを有している。
【0031】
この加湿器Aは、自動車等の車両に搭載される燃料電池セル(図示せず)に供給される空気(乾燥ガスの一例:カソードガスと称することもある)を加湿する。この加湿を実現するため、加湿器Aは、燃料電池のFCセルから排出された反応後で水分を含む空気(含水ガスの一例:カソードオフガスと称することもある)が供給され、このように供給されたカソードオフガスの水分を、カソードガスに与えるように機能する。尚、加湿器Aを用いる姿勢は、図1に示す姿勢に限るものではないが、以下の説明では、図1に示す姿勢に従って上下関係等を説明している。
【0032】
〔加湿器のガス供給路の概要〕
図1図3に示すように、乾燥ガス供給路Pは、セパレータ10の乾燥ガス側水交換部10dの上流側の第1乾燥ガス供給路Paと、下流側の第2乾燥ガス供給路Pbとで構成されている。含水ガス供給路Qは、含水ガス側水交換部10wの上流側の第1含水ガス供給路Qaと、下流側の第2含水ガス供給路Qbとで構成されている。
【0033】
尚、図2には乾燥ガス供給路Pとして、第1乾燥ガス供給路Paと、第2乾燥ガス供給路Pbとを示しているが、加湿器Aには、これと同様の構成となるように、含水ガス供給路Qとして、第1含水ガス供給路Qaと、第2含水ガス供給路Qbとが形成され、含水ガス側水交換部10wを介して連通している。
【0034】
本実施形態においては、第1乾燥ガス供給路Paに流れる乾燥ガスを第1乾燥ガスと称し、第2乾燥ガス供給路Pbに流れる乾燥ガスを第2乾燥ガスと称し、第1含水ガス供給路Qaに流れる含水ガスを第1含水ガスと称し、第2含水ガス供給路Qbに流れる含水ガスを第2含水ガスと称している。
【0035】
図1図2図5に示すように、下部プレート2は、第1乾燥ガス供給路Paに連通する第1乾燥ガスポート21と、第2乾燥ガス供給路Pbに連通する第2乾燥ガスポート22と、第1含水ガス供給路Qaと連通する第1含水ガスポート23と、第2含水ガス供給路Qbと連通する第2含水ガスポート24とを備えている。
【0036】
図面には示していないが第1乾燥ガスポート21に対してコンプレッサ(図示せず)で加圧された第1乾燥ガス(空気)が供給され、加湿モジュールAwで加湿された第2乾燥ガス(カソードガス)が、第2乾燥ガスポート22から燃料電池セルに供給される。また、第1含水ガスポート23に対して燃料電池セルから排出された第1含水ガス(空気:カソードオフガスと称される)が供給され、加湿モジュールAwで水分が奪われた第2含水ガスが、第2含水ガスポート24から排出される。
【0037】
特に、加湿器Aは、図1図4に示すように、複数の加湿モジュールAwを上下に貫通するように加圧ガス供給路Rが形成されている。この加圧ガス供給路R(加圧用流路の一例)は、下部プレート2に形成された連通路2aにより第1乾燥ガス供給路Paに連通しており、第1乾燥ガスを加圧空間Sに供給する。この加圧空間Sは、複数の加湿モジュールAwの間に形成されており、第1乾燥ガスを流通させることにより複数の加湿モジュールAwの夫々において複数のセパレータ10を圧着させる圧力を得るものである。この加圧ガス供給路R、及び、これに関連する構成は後述する。
【0038】
〔加湿モジュール〕
図6図7に示すように、セパレータ10は樹脂を正方形状に成形したプレート状であり、一方の面に乾燥ガス側水交換部10dが形成され、他方の面に含水ガス側水交換部10wが形成されている。このセパレータ10は、第1乾燥ガス供給口11と、第2乾燥ガス供給口12と、第1含水ガス供給口13と、第2含水ガス供給口14とが四隅に貫通孔として形成され、外周部分の第1乾燥ガス供給口11に近接する箇所に加圧ガス供給孔15が穿設されている。
【0039】
このセパレータ10は、図6図7に示すように、乾燥ガス側水交換部10dを上面に配置した平面視における乾燥ガス側水交換部10dの形状と、この平面視におけるセパレータ10の左右を入れ替えるように裏返した状態での含水ガス側水交換部10wの形状とが等しくなる形状を有している。また、複数のセパレータ10を積層した状態では、乾燥ガス側水交換部10dと、含水ガス側水交換部10wとの境界に水交換膜6が挟み込まれる。
【0040】
図6に示すセパレータ10の一方の面において、第1乾燥ガス供給口11と乾燥ガス側水交換部10dと第2乾燥ガス供給口12にこの順序で乾燥ガスが流れる。また、第1含水ガス供給口13と含水ガス側水交換部10wと第2含水ガス供給口14にこの順序で含水ガスが流れる。
【0041】
つまり、第1乾燥ガス供給口11と第2乾燥ガス供給口12とは、平面視でセパレータ10の対角方向に配置され、図面には詳しく示していないが乾燥ガス側水交換部10dは、空気が偏りなく流れるように複数の凸条が形成されている。これと同様に、第1含水ガス供給口13と第2含水ガス供給口14とは対角方向に配置され、図面には示していないが、含水ガス側水交換部10wには、空気が偏りなく流れるように複数のリブ状部で流路が形成されている。
【0042】
更に、加湿モジュールAwは、セパレータ10を積層することにより、複数の第1乾燥ガス供給口11が縦方向にマニホールド状の空間が形成され、この空間で第1乾燥ガス供給路Paが形成される。これと同様に複数の第2乾燥ガス供給口12により第2乾燥ガス供給路Pbが形成され、複数の第1含水ガス供給口13により第1含水ガス供給路Qaが形成され、複数の第2含水ガス供給口14により第2含水ガス供給路Qbが形成される。更に、複数の加圧ガス供給孔15で加圧ガス供給路Rが形成される。
【0043】
図6図7に二点鎖線で示すように、セパレータ10の両面にガスケット16が配置されている。このガスケット16は、セパレータ10の表面と水交換膜6との間でのガスの漏出を防止する。また、ガスケット16は、第1乾燥ガス供給口11と、第2乾燥ガス供給口12と、第1含水ガス供給口13と、第2含水ガス供給口14と、加圧ガス供給孔15とに流れるガスが、積層方向で隣り合うセパレータ10の境界面からの漏出を防止する。尚、ガスケット16は、後述する仕切部17と封止部18と比較して積層方向での厚みが小さいゴムや樹脂材料が用いられている。
【0044】
図2図3に示すように、複数のセパレータ10と、これらの間に挟まれる複数の水交換膜6とで1つの加湿モジュールAwを構成している。この加湿モジュールAwは、積層方向で隣接するセパレータ10の外周部分を接着剤等で接着することで複数のセパレータ10の一体化が図られている。尚、複数のセパレータ10は必ずしも接着する必要はなく、例えば、凸部と凹部とにより積層方向に嵌合する構造を用いることや、熱溶着の技術で複数のセパレータ10を一体化しても良い。
【0045】
〔加湿空間〕
この加湿器Aでは、第1乾燥ガス供給路Paに加圧された第1乾燥ガス(空気)が乾燥ガス側水交換部10dに供給されるため、セパレータ10の乾燥ガス側水交換部10dに作用する圧力でセパレータ10が変形することにより水交換膜6を浮き上がらせ、空気の漏出を招くことも考えられた。このような漏出を防止するため、加湿器Aでは、複数の加湿モジュールAwの各々を上下に挟む位置に加圧空間Sを形成することで、複数の加湿モジュールAwの各々のセパレータ10に積層方向に圧力を作用させ、水交換膜6の浮き上がりを防止するように構成されている。
【0046】
図2図3に示すように、複数(3つ)の加湿モジュールAwを備えた加湿器Aでは、夫々の加湿モジュールAwの上端のセパレータ10の上面が平坦に形成されている。これと同様に、下端のセパレータ10の下面も平坦に形成されている。すなわち、加湿モジュールAwの積層方向の端に位置するセパレータ10の外側の面には、乾燥ガス側水交換部10dと含水ガス側水交換部10wはいずれも形成されていない。
【0047】
このような構成から、図2図4図8に示すように、加湿モジュールAwの上端のセパレータ10の上面には、シール材で成る仕切部17が固定状態で備えられている。また、第1乾燥ガス供給口11と、第2乾燥ガス供給口12と、第1含水ガス供給口13と、第2含水ガス供給口14とを個別に取り囲むように仕切部17と同じシール材で成る封止部18が固定状態で備えられている。
【0048】
これと同様に、下部プレート2の上面に対し、図2図4図5に示すように、ゴム等の可撓性の材料を用いたシール材で成る仕切部17が固定状態で備えられている。また、第1乾燥ガス供給口11と、第2乾燥ガス供給口12と、第1含水ガス供給口13と、第2含水ガス供給口14とを個別に取り囲むように仕切部17と同じシール材で成る封止部18が固定状態で備えられている。
【0049】
夫々の仕切部17は、平面視で閉じたループ状に配置され、このループ状の空間で加圧空間Sが形成され、この加圧空間Sに加圧ガス供給路Rが連通している。つまり、仕切部17は、加圧ガス供給路Rからの加圧ガスを加圧空間Sの内部に案内すると同時に、加圧ガスを加圧空間Sの内部に封ずるように機能する。封止部18は、各供給口からのガスの漏出を防止する。
【0050】
仕切部17に用いられるシール材は、図2に断面を示すように、粘着性のゴム等の材料により基部17aと突起部17bとが一体形成され、基部17aをセパレータ10の上面等に接着等により固定している。これにより、例えば、上下方向(積層方向)に圧力が作用した場合には突起部17bが圧縮方向に弾性変形することで、仕切部17の全体を大きく変形させる不都合を抑制し、良好なシール性能を維持する。尚、この仕切部17の断面形状は、図2に示す形状に限るものではなく、例えば、台形であっても良い。また、例えば、セパレータ10の表面に凹状の溝を形成し、この溝に対して仕切部17の基部17aの一部を沈み込ませるように備えても良い。封止部18に用いられるシール材も仕切部17に用いられるシール材と共通する断面形状を有している。
【0051】
図5図8では、仕切部17と封止部18とを分離するように配置しているが、これらは一体的に形成されるものでも良い、また、仕切部17と封止部18とは接着剤によって固定するものに限らず、焼き付けによって固定しても良い。
【0052】
加湿モジュールAwの上端のセパレータ10の上面に対し、同じ断面形状の仕切部17と封止部18とを備えることにより、加圧空間Sを形成するための仕切部17との突出端の位置と、第1乾燥ガス供給口11と、第2乾燥ガス供給口12と、第1含水ガス供給口13と、第2含水ガス供給口14とを取り囲む領域の封止部18の突出端の位置を等しくし、これらを上部プレート1の下面に等しく当接させ、良好なシールを可能にしている。
【0053】
このように、最も上端の加湿モジュールAwの上端のセパレータ10の上面の仕切部17の内部領域で、且つ、セパレータ10の上面と、上部プレート1の下面との間に加圧空間Sが形成されている。また、加湿モジュールAwの上端のセパレータ10の上面の仕切部17の内部領域で、且つ、セパレータ10の上面と、これに対向するセパレータ10の下面との間に加圧空間Sが形成されている。更に、下部プレート2の上面の仕切部17の内部領域で、且つ、下部プレート2の上面と、最も下端の加湿モジュールAwの下端のセパレータ10の下面との間に加圧空間Sが形成されている。また、この加湿器Aでは加圧空間Sを複数設ける必要はなく、加湿空間Sは一箇所だけ設けても良い。
【0054】
〔ガスの流れ〕
この加湿器Aでは、図2に示すように、第1乾燥ガスは第1乾燥ガスポート21から第1乾燥ガス供給路Paに流れ、複数のセパレータ10の第1乾燥ガス供給口11から乾燥ガス側水交換部10dに流れ、更に、第2乾燥ガス供給口12から第2乾燥ガス供給路Pbにおいて第2乾燥ガスとして流れ、第2乾燥ガスポート22から燃料電池セルに送り出される。
【0055】
このように乾燥ガスが流れる場合に、乾燥ガス側水交換部10dでは、水交換膜6を介して含水ガス側水交換部10wを流れる含水ガスの水分が与えられる結果、第2乾燥ガスは多くの水分を含むことになる。
【0056】
また、図4に示すように、第1乾燥ガスの一部が、連通路2aを介して加圧ガス供給路Rに供給され、この加圧ガス供給路Rから複数の加圧空間Sに第1乾燥ガスの圧力が作用するため、複数の加湿モジュールAwは上下方向から圧力が作用する。このように作用する圧力は、加湿モジュールAwを構成する複数のセパレータ10を互いに圧接させる方向に作用するため、セパレータ10に供給される乾燥ガスの圧力が隣接するセパレータ10を離間させる方向に作用する状況であってもセパレータ10を互いに圧接させ、水交換膜6の浮き上がりを抑制しガスの漏出の抑制を実現する。
【0057】
〔実施形態の作用効果〕
このように加湿器Aを、複数の加湿モジュールAwを積層して構成し、加湿モジュールAwを積層方向に貫通するように加圧ガス供給路Rを形成し、夫々の加湿モジュールAwの上下両側に加圧空間Sを形成し、この加圧空間Sに対して加圧ガス供給路Rからの流体を供給するように構成している。これにより、加湿モジュールAwに対して上側と下側とから圧縮するように圧力を作用させることが可能となり、例えば、温度上昇による熱膨張により積層する位置のセパレータ10の位置関係が変化した場合でも、加湿モジュールAwを構成する複数のセパレータ10と、セパレータ10の間に挟み込まれる水交換膜6の浮き上がりを防ぎ、セパレータ10と水交換膜6との間から空気の漏れを防ぎ、良好な加湿を維持する。
【0058】
加圧空間Sを形成するために、例えば、セパレータ10の上面に対し、ゴム等の柔軟に変形し得るシール材で成る仕切部17を設けることにより、流体が供給される空間を特別に形成することなく、例えば、セパレータ10の上面と上部プレート1との間に加圧空間Sを形成し、セパレータ10の広い面に対する加圧を可能にしている。
【0059】
また、加圧空間Sに連通する加圧ガス供給路Rを形成し、これに対して第1乾燥ガス供給路Paに供給される乾燥ガスの一部を供給するため、加圧ガスを特別に作り出す機構を備えないで済む。
【0060】
この加湿器Aでは、複数の加湿モジュールAwとして共通する構成のものを用い、これらを積層するように配置している。このため夫々の加湿モジュールAwの上端のセパレータ10の上面に仕切部17を備え、下部プレート2の上面に仕切部17を備え、加圧空間Sに乾燥ガスを供給することで複数の加湿モジュールAwに対して個別に、上下方向に圧縮するように圧力を作用させることが可能となる。これにより、積層方向での中間部位のセパレータ10に作用する圧力が不足する等の不都合を招くことなく、複数のセパレータ10に均一の圧力を作用させてガスの漏出を抑制できる。
【0061】
尚、加湿モジュールAwの上端のセパレータ10の上面の仕切部17を例に挙げると、この仕切部17と同じ断面形状の封止部18を、第1乾燥ガス供給口11と、第2乾燥ガス供給口12と、第1含水ガス供給口13と、第2含水ガス供給口14とを取り囲む領域に備えることにより、4つの供給口を取り囲む封止部18と、加圧空間Sを形成するための仕切部17との突出端の位置を等しくして良好なシール性能を現出する。
【0062】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0063】
(a)加圧空間Sに供給する流体に乾燥ガスを用いても良い。その一例を図9に示しており、この別実施形態(a)では、第1乾燥ガス供給路Paに供給される乾燥ガスの一部を、第1乾燥ガス供給口11から仕切部17の内部の加湿空間Sに供給する加圧ガス分岐流路Ra(加圧用流路の一例)が形成されている。
【0064】
また、この別実施形態(a)の変形例を図10に示しており、この変形例では、仕切部17の内部の加圧空間Sに供給された乾燥ガスを、第2乾燥ガス供給口12に送り出す加圧ガス排出路Rb(排出部の一例)が形成され、加圧空間Sに乾燥ガスを供給すると同時に乾燥ガスを排出できるように構成されている。
【0065】
(b)加圧空間Sに供給する流体に含水ガスを用いても良い。その一例を図11に示しており、この別実施形態(b)では第1含水ガス供給路Qaに供給される含水ガスの一部を第1含水ガス供給口13から仕切部17の内部の加湿空間Sに供給する供給路Ra(加圧用流路の一例)が形成されている。また、図11には、先に説明した別実施形態(a)の変形例と同様に、加圧空間Sに供給された乾燥ガスを、第2含水ガス供給口14に送り出す加圧ガス排出路Rb(排出部の一例)を形成しており、加圧空間Sに乾燥ガスを供給すると同時に乾燥ガスを排出できるように構成されている。尚、この別実施形態(b)の構成では加圧ガス排出路Rbを必ずしも形成する必要はない。
【0066】
(c)加圧空間Sに供給する流体として、例えば、コンプレッサで加圧された空気や、加圧専用の窒素ガスのように乾燥ガスと、含水ガスとは異なるガスであっても良い。
【0067】
(d)加圧空間Sに供給する流体は、ガスに限るものではなく、例えば、水やオイル等の液体であっても良い。このように液体を用いる場合には、例えば、バネ圧を液体に作用させる構造や、圧力を作用させるためのアキュムレータ等を用いることにより、コンプレッサ等のアクチュエータを用いないように構成することも可能となる。
【0068】
(e)加湿器Aは、複数の加湿モジュールAwを備えた構成に限るものではなく、単一の加湿モジュールAwを備えたものでも良い。また、複数の加湿モジュールAwを備えた加湿器Aにおいて、複数の加湿モジュールAwの夫々を構成するセパレータ10の数が異なっても良い。
【0069】
(f)例えば、第1乾燥ガスを加圧ガス供給路Rに供給するための連通路2aの構成に換えて、下部プレート2の外部に第1乾燥ガス供給路Paと加圧ガス供給路Rとを連通させるための管路等を形成することが可能であり、また、この連通のための管路等を複数の加湿モジュールAw毎に形成することも可能である。
【0070】
(g)加圧空間Sからガスを排出する排出部をセパレータ10に形成する。このように排出部を形成することにより、加圧空間Sに供給された流体(加圧ガス)を、排出部を介して外部に排出することが可能となる。また、加圧空間Sに乾燥ガスを供給する構成では、排出口から排出された乾燥ガスをセパレータ10に対し第1乾燥ガスとして供給することも可能であり、また、加圧空間Sに対して過大な圧力が作用する現象の抑制も可能となる。この構成では、加圧空間Sに乾燥ガス等が供給される流路の断面積と、排出部の流路断面積とを等しくするものを想定しているが、排出部の流路断面積を小さく設定しても良い。
【0071】
(h)複数の加圧ガス供給路Rを備える。このように複数の加圧ガス供給路Rを形成するためにセパレータ10に貫通孔を形成するものを想定しているが、セパレータ10の外部に複数の管路を設ける等の構成を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、複数のセパレータを積層した構成の加湿器に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
6 水交換膜
10 セパレータ
10d 乾燥ガス側水交換部
10w 含水ガス側水交換部
17 仕切部
Aw 加湿モジュール
P 乾燥ガス供給路
Q 含水ガス供給路
R 加圧ガス供給路(加圧用流路)
Rb 加圧ガス排出路(排出部)
S 加圧空間
図1
図2
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図11