(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022080988
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】フェイスカバー付き帽子
(51)【国際特許分類】
A42B 1/018 20210101AFI20220524BHJP
【FI】
A42B1/18 B
A42B1/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192236
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】597093115
【氏名又は名称】株式会社シオジリ製帽
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】塩尻 英一
(57)【要約】
【課題】
不使用時のフェイスカバーを邪魔にならない位置に保持し、フェイスカバーの紛失を防止することができるフェイスカバー付き帽子を提供する。
【解決手段】
頭部に被るクラウン10と、クラウン10の前側下縁から垂下されて着用者の顔面を覆うフェイスカバー30とを備えたフェイスカバー付き帽子1において、不使用時のフェイスカバー30を折り畳んで上側に持ち上げることで、フェイスカバー30をクラウン10の内面に沿った状態とし、その状態でもフェイスカバー付き帽子1を頭部に着用できるようにした。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に被るクラウンと、
クラウンの前側下縁から垂下されて着用者の顔面を覆うフェイスカバーと
を備えたフェイスカバー付き帽子であって、
不使用時のフェイスカバーを折り畳んで上側に持ち上げることで、フェイスカバーをクラウンの内面に沿った状態とし、その状態でも頭部に着用できるようにした
ことを特徴とするフェイスカバー付き帽子。
【請求項2】
フェイスカバーが、前方に凸な球面状を為す請求項1記載のフェイスカバー付き帽子。
【請求項3】
フェイスカバーに、前記折り畳む際の目安となる折り目が形成された請求項1又は2記載のフェイスカバー付き帽子。
【請求項4】
クラウンの前側の空気をクラウンの内側に取り込むためのクラウン前側通気部が、クラウンの前側下部に設けられるとともに、
着用者の目を出すための目出し部が、フェイスカバーの上部に設けられ、
フェイスカバーを折り畳んでクラウンの内面に沿わせたときの目出し部が、クラウン前側通気部に重なるようにした
請求項1~3いずれか記載のフェイスカバー付き帽子。
【請求項5】
フェイスカバーに、着用者の頭部に掛けるための掛け紐が設けられた請求項1~4いずれか記載のフェイスカバー付き帽子。
【請求項6】
フェイスカバーが、クラウンに対して着脱可能な状態で取り付けられた請求項1~5いずれか記載のフェイスカバー付き帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の顔面を覆うフェイスカバーを備えたフェイスカバー付き帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
日差しが強い時期に屋外で活動すると、顔が日焼けしてしまう。このため、着用者の顔面を覆うフェイスカバーを備えた帽子(フェイスカバー付き帽子)が提案されている。例えば、特許文献1の
図1には、クラウン6の下縁に日除け布1(フェイスカバー)を縫い付けた帽子が記載されている。また、特許文献2の
図1には、前鍔の先端縁から日除け布(フェイスカバー)を垂下した状態に設けた帽子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-183440号公報
【特許文献2】実用新案登録第3218185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2の帽子等、従来のフェイスカバー付き帽子は、フェイスカバーを使用しないときに、フェイスカバーが邪魔になるという課題があった。この課題は、フェイスカバーを着脱可能な構造とすれば、解決することができる。しかし、その場合には、取り外したフェイスカバーを紛失しやすいという別の課題が生ずる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、不使用時のフェイスカバーを邪魔にならない位置に保持し、フェイスカバーの紛失を防止することができるフェイスカバー付き帽子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
頭部に被るクラウンと、
クラウンの前側下縁から垂下されて着用者の顔面を覆うフェイスカバーと
を備えたフェイスカバー付き帽子であって、
不使用時のフェイスカバーを折り畳んで上側に持ち上げることで、フェイスカバーをクラウンの内面に沿った状態とし、その状態でも頭部に着用できるようにした
ことを特徴とするフェイスカバー付き帽子
を提供することによって解決される。
【0007】
このように、不使用時のフェイスカバーをクラウンの内面に沿わせることができるようにしたことによって、不使用時のフェイスカバーが邪魔にならないようにするだけでなく、不使用時のフェイスカバーの紛失を防止することも可能になる。
【0008】
本発明のフェイスカバー付き帽子においては、フェイスカバーを、前方(フェイスカバーとして使用しているときの前方)に凸な球面状に形成することが好ましい。これにより、フェイスカバーで顔面を覆った際に、口元や鼻先周辺に空間を確保し、着用者が息苦しさを感じにくくすることができる。また、不使用時のフェイスカバーを、クラウンの内面に綺麗に沿わせやすくすることもできる。このため、フェイスカバーを使用していないときの帽子(フェイスカバーをクラウンの内面に沿わせているときの帽子)の被り心地をよくするだけでなく、そのときの帽子の見た目を良くすることも可能になる。
【0009】
本発明のフェイスカバー付き帽子においては、フェイスカバーに、前記折り畳む際(不使用時のフェイスカバーをクラウンの内面に沿わせるために折り畳む際)に目安となる折り目を形成することも好ましい。これにより、不使用時のフェイスカバーを折り畳む作業を行いやすくなるだけでなく、フェイスカバーにおける意図しない箇所に不格好な折り目が形成されないようにすることができる。
【0010】
本発明のフェイスカバー付き帽子においては、
クラウンの前側の空気をクラウンの内側に取り込むためのクラウン前側通気部を、クラウンの前側下部に設けるとともに、
着用者の目を出すための目出し部を、フェイスカバーの上部に設け、
フェイスカバーを折り畳んでクラウンの内面に沿わせたときの目出し部が、クラウン前側通気部に重なるようにする
ことが好ましい。
【0011】
このように、クラウン前側通気部を設けることによって、クラウンの内側を効率的にベンチレーション(換気)し、帽子の着用者の頭部を蒸れにくくすることができる。しかし、不使用時のフェイスカバーをクラウンの内側に収容した際に、クラウン前側通気部がフェイスカバーで覆われてしまうと、上記のベンチレーション効果が奏されにくくなる。この点、フェイスカバーに目出し部を設け、不使用時のフェイスカバーをクラウンの内側に収容したときに、その目出し部がクラウン前側通気部に重なるようにすることで、収納時のフェイスカバーがクラウン前側通気部における通気を阻害しないようにすることができる。
【0012】
本発明のフェイスカバー付き帽子においては、フェイスカバーに、着用者の頭部に掛けるための掛け紐を設けることも好ましい。これにより、使用時のフェイスカバーを、風等で捲れないように着用者の顔面に保持させることができる。この構成は、フェイスカバーを衛生マスクとして利用する場合に特に好適である。
【0013】
本発明のフェイスカバー付き帽子においては、フェイスカバーを、クラウンに対して着脱可能な状態で取り付けることも好ましい。これにより、フェイスカバーのみを取り外して洗濯することも可能になる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によって、不使用時のフェイスカバーを邪魔にならない位置に保持し、フェイスカバーの紛失を防止することができるフェイスカバー付き帽子を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】フェイスカバーを下ろした状態でフェイスカバー付き帽子を着用した様子を示した側面図である。
【
図2】フェイスカバーを下ろした状態のフェイスカバー付き帽子を示した側面図である。
【
図3】フェイスカバーを折り畳んだ状態のフェイスカバー付き帽子を示した側面図である。
【
図4】フェイスカバーをクラウンの内面に沿わせた状態のフェイスカバー付き帽子を示した側面図である。
【
図5】フェイスカバーをクラウンの内面に沿わせた状態のフェイスカバー付き帽子を示した底面図である。
【
図6】フェイスカバーをクラウンの内側に収容した状態でフェイスカバー付き帽子を着用した様子を示した側面図である。
【
図7】フェイスカバー付き帽子の前側部分を、左右方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のフェイスカバー付き帽子の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。しかし、本発明のフェイスカバー付き帽子の技術的範囲は、以下で述べる実施形態に限定されない。本発明のフェイスカバー付き帽子には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0017】
図1は、フェイスカバー30を下ろした状態でフェイスカバー付き帽子1を着用した様子を示した側面図である。本実施形態のフェイスカバー付き帽子1は、
図1に示すように、クラウン10と、前鍔20と、フェイスカバー30とを備えている。
【0018】
クラウン10は、着用者の頭部を覆うための部分であり、通常、半球状に形成される。前鍔20は、着用者の目に入る日差しを遮るための部分である。本実施形態のフェイスカバー付き帽子1において、前鍔20は、平面視半円状乃至は平面視三日月状を為しており、クラウン10の前側下縁から前方に突出した状態で設けられている。フェイスカバー30は、着用者の顔面を覆うための部分である。このフェイスカバー30を下ろした状態でフェイスカバー付き帽子1を着用することによって、着用者の顔面を日焼けから守ることができる。フェイスカバー30は、日除けだけでなく、衛生マスクとして利用することもできる。
【0019】
しかし、フェイスカバー付き帽子1では、不使用時(着用者の顔面をフェイスカバー30で覆わないとき)のフェイスカバー30が邪魔になるという問題があった。この点、本発明に係るフェイスカバー付き帽子1では、
図2の矢印A
1に示すように、不使用時のフェイスカバー30を折り畳むとともに、
図3の矢印A
2に示すように、折り畳んだフェイスカバー30を上側に持ち上げることで、
図4及び
図5に示すように、フェイスカバー30をクラウン10の内面に沿った状態とすることが可能となっている。
【0020】
図2は、フェイスカバー30を下ろした状態のフェイスカバー付き帽子1を示した側面図である。
図3は、フェイスカバー30を折り畳んだ状態のフェイスカバー付き帽子1を示した側面図である。
図4は、フェイスカバー30をクラウン10の内面に沿わせた状態のフェイスカバー付き帽子1を示した側面図であり、
図5は、動状態のフェイスカバー付き帽子1の底面図である。
【0021】
図4及び
図5に示すように、フェイスカバー30をクラウン10の内側に収容して、フェイスカバー30をクラウン10の内面に沿わせた状態とすることで、その状態でも、フェイスカバー付き帽子1を頭部に着用することが可能になる。
図6に、フェイスカバー30をクラウン10の内側に収容した状態でフェイスカバー付き帽子1を着用した様子を示す。
【0022】
このように、不使用時のフェイスカバー30をクラウン10の内面に沿わせることで、不使用時のフェイスカバー30が邪魔にならないようにすることができる。また、不使用時のフェイスカバー30を帽子本体(クラウン10及び前鍔20)から取り外す必要がないので、フェイスカバー30の紛失を防止することもできる。
【0023】
本実施形態のフェイスカバー付き帽子1は、その用途を特に限定されるものではなく、各種の帽子で採用することができる。なかでも、ランニング帽や野球帽等の運動帽や、農作業時等に着用する作業帽に好適に採用することができる。
【0024】
以下、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1の各部について詳しく説明する。
【0025】
[クラウン]
既に述べたように、クラウン10は、半球状に形成されるところ、通常、複数枚の生地を繋ぎ合わせることによって形成される。本実施形態のフェイスカバー付き帽子1においては、クラウン10を左右方向に分割する複数枚の生地によってクラウン10を構成している。しかし、クラウン10の生地構成は、これに限定されない。クラウン10は、クラウン10を前後方向に分割する複数枚の生地によって構成してもよいし、クラウン10を周方向に分割する複数枚の生地(れんげ)によって構成してもよい。
【0026】
クラウン10を構成する複数枚の生地の繋ぎ合わせは、通常、縫合によって行われるが、シームレス加工(例えば、超音波による振動で生地同士を摩擦することで熱を発生させ、生地を溶融させて互いに溶着させる加工等)等、他の方法によって繋ぎ合わせてもよい。また、クラウン10は、複層構造とすることもできる。例えば、クラウン10を、クラウン10の外面を形成するクラウン表地と、クラウン10の内面を形成するクラウン裏地とで構成してもよい。
【0027】
ところで、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1では、
図1に示すように、クラウン10の前側下部に、クラウン前側通気部11を設けている。このクラウン前側通気部11によって、
図7に示すように、前鍔20の上側にある空気101をクラウン10の内側に取り込むことや、その逆に、クラウン10の内側の空気をクラウン10の外側へと送出することができるようになっている。したがって、クラウン10の内外のベンチレーション(換気)を行って、着用者の頭部を蒸れにくくすることが可能となっている。
図7は、フェイスカバー付き帽子1の前側部分を、左右方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図7においては、フェイスカバー30の図示を省略している。
【0028】
クラウン前側通気部11は、クラウン10に開口部を設けただけの単純な構造としてもよい。しかし、クラウン10の内側には、
図7に示すように、ビン皮40(着用者の頭部の汗を吸い取るための部材であり、通常、肌触りのよい生地の内側に吸水素材を収容したものが用いられる。)等、他の部材が設けられることがあるところ、このビン皮40等がクラウン前側通気部11から見えてしまうと、フェイスカバー付き帽子1の見た目が悪くなるおそれがある。
【0029】
このため、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1では、クラウン前側通気部11(クラウン10に設けた開口部)の内側に、裏当て用メッシュ生地12を裏当てしており、ビン皮40等、クラウン10の内側の部材が、クラウン前側通気部11から見えにくくしている。裏当て用メッシュ生地12の上縁は、クラウン前側通気部11の上縁から上側にある程度離れた箇所でクラウン10に縫着している。これにより、クラウン前側通気部11の上下幅を広く確保しなくても、クラウン前側通気部11を通じてベンチレーションを行いやすくすることが可能となっている。
【0030】
また、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1においては、
図2に示すように、クラウン10の後側下部にサイズ調節手段50を設けている。これにより、着用者の頭囲に応じて、クラウン10の下縁の長さを調節することができるようになっている。サイズ調節手段50の構造は、特に限定されないが、通常、左右一対のベルトを用いたものとされる。
【0031】
[前鍔]
既に述べたように、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1においては、クラウン10の前側下縁から前方に突出した状態に前鍔20を設けているところ、この前鍔20における基端縁(クラウン10の下縁に対して縫着される側の端縁)の近くに、前鍔通気部21を設けている。これにより、
図7に示すように、前鍔20の下側にある空気101を、前鍔通気部21を通じて前鍔20の上側に移動させることができるようになっている。したがって、前鍔20の上側の空気101だけでなく、前鍔20の下側の空気102も、クラウン前側通気部11を通じてクラウン10の内側に取り込み、クラウン10のベンチレーションをより効果的に行うことが可能となっている。
【0032】
前鍔通気部21は、前鍔20の基端縁に開口部を設けただけの単純な構造としてもよい。しかし、この場合には、前側通気部21を通じて着用者の目元に日差しが当たりやすくなり、前鍔20が庇としての機能を発揮しにくくなる。このため、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1では、クラウン前側通気部11と同様、前鍔通気部21も、メッシュ生地で覆った構造としている。具体的には、前鍔20及び前鍔通気部21を以下のように構成している。
【0033】
すなわち、
図4に示すように、前鍔20を前鍔芯材22と、前鍔芯材22の上面側を覆う前鍔表地23と、前鍔芯材22の下面側を覆う前鍔裏地24とで構成している。前鍔芯材22は、前鍔20の保形を行うためのものであり、樹脂やエラストマーや厚紙等、ある程度の厚みと硬さを有する素材で形成される。また、前鍔表地23は、第一生地23aと第二生地23bと第三生地23cとを重ねて構成しており、このうち、第二生地23b及び第三生地23cを、メッシュ生地としている。第三生地23cは、第二生地23bよりも厚手となっている。さらに、前鍔裏地24も、メッシュ生地としている。前鍔裏地24は、第二生地23bと同程度の厚さのメッシュ生地としている。
【0034】
前鍔20を上記のような層構成とした上で、前鍔芯材22の基端縁中央部に開口部を設けるとともに、メッシュ生地からなる前鍔表地23の第二生地23b及び第三生地23c、並びに、前鍔裏地24を上記の開口部にも延長して設けることで、メッシュ生地で覆われた前鍔通気部21を形成している。このような構造とすることで、前鍔通気部21における通気性を確保しながら、前鍔通気部21の遮光性を確保することができる。また、前鍔通気部21を目立ちにくくして、フェイスカバー付き帽子1の見た目を良くすることも可能となっている。
【0035】
[フェイスカバー]
フェイスカバー30は、通常、遮光性を有する生地によって形成される。ただし、フェイスカバー30を通気性の低い生地で形成すると、着用者が息苦しさを感じるおそれがある。このため、フェイスカバー30は、ラッセルメッシュ生地やトリコットメッシュ生地等の経編メッシュ生地や、緯編メッシュ生地や、平織メッシュ生地や、綾織メッシュ生地や、朱子織メッシュ生地等、通気性を有するメッシュ生地によって形成される。これらのメッシュ生地は、通常、ポリエステルやナイロン等の合成繊維や、綿等の天然繊維や、或いはこれらの複合繊維等を編製又は織製することによって形成される。フェイスカバー30に使用する生地の目を小さくしたり、フェイスカバー30に抗菌処理を施したりすると、フェイスカバー30に衛生マスクとしての機能を付与することもできる。
【0036】
フェイスカバー30は、平坦な面状のものであってもよい。しかし、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1では、
図2に示すように、フェイスカバー30を、前方に凸な球面状に湾曲させている。このような形態のフェイスカバー30は、複数枚の生地を立体的に繋ぎ合わせることや、平坦な生地を熱プレスすること等によって得ることができる。
【0037】
このように、フェイスカバー30を球面状とすることによって、
図1に示すように、フェイスカバー30を下ろした状態でフェイスカバー付き帽子1を着用した際に、着用者の口元周辺に空間を確保し、着用者が息苦しさを感じにくくすることができる。また、
図2の矢印A
1に示すようにフェイスカバー30を折り畳み、
図3の矢印A
2に示すようにフェイスカバー30を持ち上げた際に、フェイスカバー30が、球面状を為すクラウン20の内面に綺麗に沿うようにすることもできる。したがって、
図6に示すように、フェイスカバー30をクラウン10の内側に収容した状態でフェイスカバー付き帽子1を着用する際の被り心地や見た目を良くすることができる。
【0038】
フェイスカバー30をどの程度の曲率半径で球面状に形成するかは、クラウン10の寸法(半球状のクラウン10の曲率半径)等に応じて適宜決定される。フェイスカバー30の曲率半径とクラウン10の曲率半径とが大きく異なっていると、不使用時のフェイスカバー10をクラウン10の内面に綺麗に沿わせにくくなり、クラウン10の内側に収容したフェイスカバー30にシワが形成される等の不具合が生じやすくなるからである。このため、フェイスカバー30の曲率半径は、クラウン10の曲率半径(人間の頭部の曲率半径に略一致)と同程度に形成することが好ましい。人間の頭部は、完全な半球状とはなっておらず、半球状のクラウン10も、完全な球面には形成されない(場所によって曲率半径が変化している)ところ、フェイスカバー30も、そのように形成される。
【0039】
フェイスカバー30をクラウン10の内側に収容する際の折り畳み方は、特に限定されない。しかし、複雑な折り畳み方にすると、フェイスカバー30を折り畳む際に手間取るようになる。また、折り畳みの回数が多すぎると、
図4に示すように、折り畳んだフェイスカバー30をクラウン10の内面に沿わせた際に、折り畳まれたフェイスカバー30が厚くなってしまい、フェイスカバー付き帽子1の被り心地や見た目が悪くなるおそれがある。このため、フェイスカバー30は、その折り畳み回数を少なくし、その折り畳み方をシンプルにした方が好ましい。
【0040】
この点、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1では、
図2の矢印A
2に示すように、フェイスカバー30を上下に二つ折りするようにしている。すなわち、フェイスカバー30の下側部分31を、フェイスカバー30の上側部分32の裏側に重ねた状態に折り畳むようにしている。フェイスカバー30の下側部分31と上側部分32との境界部は、予め折り目33が形成された状態となっている。このため、フェイスカバー30を折り畳む際に、フェイスカバー30をどの箇所で折り曲げればよいのかが分かりやすくなっている。
【0041】
既に述べたように、球面状を為すフェイスカバー30は、複数枚の生地を立体的に繋ぎ合わせることによって得ることができるところ、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1では、フェイスカバー30を、下側部分31と上側部分32とをそれぞれ別の生地で形成し、下側部分31の生地と上側部分32の生地とを繋ぎ合わせた線(縫合線等)が、折り目33となるようにしている。フェイスカバー30を構成する複数枚の生地の繋ぎ合わせは、通常、縫合によって行われるが、シームレス加工(例えば、超音波による振動で生地同士を摩擦することで熱を発生させ、生地を溶融させて互いに溶着させる加工等)等、他の方法によって繋ぎ合わせてもよい。
【0042】
クラウン10の内面又はフェイスカバー30には、折り畳んでクラウン10の内面に沿った状態となったフェイスカバー30を、その状態で保持するためのフェイスカバー保持手段を設けてもよい。これにより、クラウン10の内側に収容したフェイスカバー30がクラウン10の内側から垂れ落ちてこないようにすることができる。フェイスカバー保持手段としては、面ファスナーや、スナップボタンや、ベルトや、紐等が例示される。
【0043】
帽子本体(クラウン10及び前鍔20)に対してフェイスカバー30を取り付ける箇所は、帽子本体の前側部分であれば、特に限定されないが、フェイスカバー30は、通常、クラウン10の前側部分の側方下縁か、前鍔20の後側部分の側方に取り付けられる。この点、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1では、
図2に示すように、フェイスカバー30の上側部分の左右方向両端部に、左右一対の上向き突片部34(同図では、一方の上向き突片部34のみが表れている。)を設けており、それぞれの上向き突片部34の上端部を、クラウン10の前側部分における側方下縁に取り付けている。
【0044】
図7に示すように、クラウン10の内側における、クラウン10の下縁に沿った箇所には、ビン皮40を環状に設けているところ、上向き突片部34の上端部は、クラウン10とビン皮40との隙間で取り付けている。これにより、着用者の頭部に対する上向き突片部34の上端部の当たりをビン皮40で和らげ、フェイスカバー付き帽子1の被り心地を良くすることが可能となっている。
【0045】
また、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1では、上向き突片部34の一部が前鍔20の上面に載るようにしている。これにより、フェイスカバー30を下ろしたときに、フェイスカバー30が左右方向に綺麗に広がるようになっている。このため、着用者の顔面とフェイスカバー30との間に適度な隙間を形成して、フェイスカバー30が着用者の顔面に貼り付いた状態となりにくくなっている。
【0046】
フェイスカバー30における左右一対の上向き突片部34の間は、
図1に示すように、目を出すための目出し部35となっている。これにより、フェイスカバー30を使用しているときでも、着用者の視界を良好に確保することができる。この目出し部35は、
図4に示すように、フェイスカバー30を折り畳んでクラウン10の内面に沿わせた際に、クラウン前側通気部11に重なるようにしている。換言すると、折り畳んでクラウン10の内面に沿わせたときのフェイスカバー30が、クラウン前側通気部11を塞がないようになっている。これにより、フェイスカバー30をクラウン10の内側に収容した状態でフェイスカバー付き帽子1を着用したときでも、クラウン前側通気部11における通気性を確保し、クラウン前側通気部11を通じてクラウン10の内外のベンチレーション効果が良好に奏されるようになっている。
【0047】
フェイスカバー30は、帽子本体(クラウン10及び前鍔20)に対して取り外すことができない状態で取り付けてもよい。これにより、フェイスカバー30の紛失を防ぐことができる。しかし、フェイスカバー30は、汚れやすい部分であるところ、これだけを取り外して洗濯したい場合等も考えられる。このため、フェイスカバー30は、帽子本体に対して着脱可能な状態で取り付けることも好ましい。フェイスカバー30を着脱可能とする場合には、スナップボタンや面ファスナー等を用いてフェイスカバー30を帽子本体に取り付けるとよい。
【0048】
帽子本体(クラウン10及び前鍔20)に対して着脱可能な状態でフェイスカバー30を取り付ける場合には、フェイスカバー30の取り付け箇所を変更(調節)できるようにすることもできる。これにより、着用者の頭部の寸法や、フェイスカバー30の用途(フェイスカバー30を日除けとして使用するか、衛生マスクとして使用するか等)に応じて、フェイスカバー30を適切な位置に取り付けることが可能になる。
【0049】
ところで、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1では、
図1に示すように、フェイスカバー30における上下方向中間部に、掛け紐60を取り付けている。この掛け紐60を着用者の頭部の後側に掛けることによって、使用時のフェイスカバー30を、風等で捲れないように着用者の顔面に保持させることができる。掛け紐60は、その一端部をフェイスカバー30に対して着脱できるようにしておくとよい。掛け紐60は、フェイスカバー30の左右両側にそれぞれループ状に設け、着用者の両側の耳にそれぞれ掛ける形態としてもよい。
【0050】
掛け紐60は、伸縮性を有さない素材で形成してもよいが、この場合には、着用者の頭部に掛けた掛け紐60が緩くなりすぎたり、逆にきつくなりすぎたりするおそれがある。このため、本実施形態のフェイスカバー付き帽子1では、掛け紐60を、伸縮性を有するゴム紐によって形成している。これにより、掛け紐60を適度な張力で着用者の頭部に掛けることが可能になる。フェイスカバー30を折り畳む際には、掛け紐60は、
図2の矢印A
3に示すように、フェイスカバー30の内側に折り込むことができる。
【0051】
上記のほか、フェイスカバー30における着用者の口元周辺を覆う部分に、保冷材収容部(図示省略)を設けることも好ましい。この保冷材収容部は、例えば、ポケット状に形成することができる。この保冷材収容部に保冷材(図示省略)を収容することよって、フェイスカバー30を使用しているときの着用者の口元周辺の空気を保冷材で冷却し、着用者が暑さや息苦しさを感じにくくすることができる。
【0052】
この場合、保冷材収容部に収容する保冷材は、通常、シート状乃至はマット状(厚手シート状)のものとされる。
図6に示すように、フェイスカバー30をクラウン10の内面に沿わせた状態でフェイスカバー付き帽子1を着用した際には、保冷材収容部に収容した保冷剤で、着用者の頭頂を冷却することも可能になる。
【符号の説明】
【0053】
1 フェイスカバー付き帽子
10 クラウン
11 クラウン前側通気部
12 裏当て用メッシュ生地
20 前鍔
21 前鍔通気部
22 前鍔芯材
23 前鍔表地
23a 第一生地
23b 第二生地
23c 第三生地
24 前鍔裏地
30 フェイスカバー
31 フェイスカバーの上側部分
32 フェイスカバーの下側部分
33 折り目
34 上向き突片部
35 目出し部
40 ビン皮
50 サイズ調節手段
60 掛け紐
101 前鍔の上側にある空気
102 前鍔の下側にある空気