(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081017
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20220524BHJP
E06B 1/70 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B1/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192281
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】穴井 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】大西 久夫
(72)【発明者】
【氏名】草開 常徳
【テーマコード(参考)】
2E011
2E239
【Fターム(参考)】
2E011MA02
2E239CA02
2E239CA22
2E239CA29
2E239CA32
2E239CA55
2E239CA62
2E239CA66
(57)【要約】 (修正有)
【課題】十分な防火性能を有する建具を提供する。
【解決手段】アルミニウム製の下枠2とステンレス製の補助材3を備え、補助材3は、下枠2の上に載置され、かつ、外レール31と、内レール32と、両レールを繋ぐ基板33と、を有し、基板33の外障子11の下方位置の長手方向に加熱発泡材41が設けられ、基板33の内障子12の下方位置の長手方向に加熱発泡材42が設けられ、基板33の外障子11と内障子12の召合せ部の下方位置に加熱発泡材43が設けられ、これらの加熱発泡材41,42,43が連続している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製の下枠とステンレス製の補助材を備え、
補助材は、下枠の上に載置され、かつ、外レールと、内レールと、両レールを繋ぐ基板と、を有し、
基板の外障子の下方位置の長手方向に加熱発泡材が設けられ、
基板の内障子の下方位置の長手方向に加熱発泡材が設けられ、
基板の外障子と内障子の召合せ部の下方位置に加熱発泡材が設けられ、
これらの加熱発泡材が連続していることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部に設けられる建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部にはサッシが設けられることがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、アルミ材にて形成された従来のサッシは、アルミ材の融点が低く耐熱性の問題があるが故に十分な防火性能をクリアすることができなかった。このことから、防火性能の向上が求められていた。
本発明は、十分な防火性能を有する建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、アルミニウム製の下枠とステンレス製の補助材を備え、補助材は、下枠の上に載置され、かつ、外レールと、内レールと、両レールを繋ぐ基板と、を有し、基板の外障子の下方位置の長手方向に加熱発泡材が設けられ、基板の内障子の下方位置の長手方向に加熱発泡材が設けられ、基板の外障子と内障子の召合せ部の下方位置に加熱発泡材が設けられ、これらの加熱発泡材が連続していることを特徴とする建具とすることで前述の課題を解決した。
【発明の効果】
【0005】
十分な防火性能を有する建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】障子が納められる前の下枠部分を拡大した縦断面図
【
図4】下枠及び補助材を上(内周側)から見た平面図
【
図5】火災が発生したときの建具の状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
(実施例)
以下、図面を使って説明するが、以下の図面は説明を目的に作成されたもので、分かりやすくするため、説明に不要な部材を意図的に図示していない場合がある。また、説明のため部材を意図的に大きくまたは小さく図示している場合があり、正確な縮尺を示す図面ではない。なお、以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0008】
建具1を有する建造物であれば、どのような建造物であってもよい。実施例では、玄関の土間部に納められる建具1について説明する。
【0009】
(建具全体の構造)
図1は、建具1を有する住宅の玄関の縦断面図であり、
図2は、建具1を有する住宅の玄関の横断面図である。建具1は、玄関の開口部に設けられた下枠2、上枠5、竪枠8を四周枠組みした枠体内に、外障子11と内障子12が納められている。下枠2は、アルミニウム製であり、下枠2の上には、ステンレス製の補助材3が長手方向に亘って取り付けられている。補助材3は、下外レール31と、下内レール32と、両レールを繋ぐ基板33を有している。上枠5は、アルミニウム製であり、上外レール51と、上内レール52を有している。外障子11及び内障子12は、枠体内を左右動する可動障子であり、それぞれの四周の框の内周側にグレイジングチャンネル7を取付けたガラスパネル6を嵌め込んである。基板33の外障子11の下方位置の長手方向には加熱発泡材である外遮炎材41が配設されている。また、基板33の内障子12の下方位置の長手方向にも加熱発泡材である内遮炎材42が配設されている。さらに、基板33の外障子11と内障子12の召合せ部の下方位置には加熱発泡材である中遮炎材43が配設されている。また、外障子11と内障子12、それぞれの下框内部にも、遮炎材Aが配設されている。かかる加熱発泡材は、例えば所定温度(具体的には、150℃~250℃の温度)で加熱されることで発泡する公知のものであり、例えば積水化学工業株式会社製の商品名「フィブロック」を用いることができる。
【0010】
(建具の下枠周辺の構造)
図3は、外障子11と内障子12が納められる前の下枠2の部分を拡大した様子を示す縦断面図であって、下枠2の周辺を示している。下枠2は、屋内側に段差部211のある上面板部21、屋外側側壁22、屋内側側壁23、突出部24で構成されている。屋外側側壁22は、上面板部21の屋外側端部に下方に突出して設けられた長尺のものとされている。屋内側側壁23は、上面板部21の屋内側端部に下方に突出して設けられた長尺のものとされており、下端が鉤状とされ、アンカー部材25に接続されている。突出部24は、上面板部21の屋内側端部に上方に突出して設けられた長尺のものとされている。
【0011】
上面板部21の上には、ステンレス製の補助材3が下枠2の上にネジ等により固定されている。下枠2の下にはモルタル13に埋め込まれているアンカー部材25が長手方向に複数設けられている。屋外側のモルタル13の上にはタイル等が設けられ、上面が上面板部21の上面と略同面となるように屋外側床部14が形成されている。下枠2の屋外側側壁22と屋外側床部14の間にはシール材が充填されている。屋内側のモルタル13の上にはタイル等が設けられ、上面が上面板部21の上面と略同面となるように屋外側床部14が形成されている。下枠2の突出部24と屋内側床部15との間にはシール材が充填されている。
【0012】
ステンレス製の補助材3は、下外レール31と下内レール32と有するところ、これらのレールの高さは、屋内側床部15よりも若干高いものとされている。下外レール31と下内レール32の間の補助材3の部分は基板33を形成している。当該基板33の上であって、外障子11と内障子12の召合せ部の下方位置には、風止め板26が載置されている。風止め板26の上には、加熱発泡材である中遮炎材43が設けられている。召合せ部ではない、外障子11及び内障子12の下方位置の基板33の上には、加熱発泡材である外遮炎材41及び内遮炎材42が、それぞれ設けられている。
【0013】
このような床構造の建具1においては、屋内側床部15が屋外側床部14よりも、突出部24の高さ分と上面板部21の段差分だけ高くされているので、屋外側から火災によって生じた熱流は、突出部24に突き当たる。仮に、突出部がなければ、そのまま屋内側に熱流が吹き込むことになり、炎の侵入も早まるところ、突出部24により熱流が乱されて滞留することになり、炎の侵入速度を抑えることができる。このため、屋内外に設けられた段差が防火に寄与することになる。また、屋内側からの火炎による熱流は、突出部24で形作られるクランク部の下側に敢えて回り込むような流れとはならず、屋内外に設けられた段差により屋内外の炎や煙の侵入を妨げることができ、やはり、屋内外に設けられた段差が防火に寄与することになる。加えて、熱耐性の強いステンレス製の下外レール31と下内レール32とが屋内側床部15よりも高いことから、より一層、熱気流を遮断する効果が高められている。
【0014】
(遮炎材の配置構造)
図4は、下枠2の上に補助材3が載置されている状態を上(内周側)から見た一部を破断させた平面図である。下外レール31に沿ったレールの屋内側であって、外障子11の下方位置の長手方向には加熱発泡材である外遮炎材41が配設されている。下内レール32に沿ったレールの屋外側であって、内障子12の下方位置の長手方向には加熱発泡材である内遮炎材42が配設されている。見込み方向における下外レール31と下内レール32の間であって、外障子11と内障子12の召合せ部の下方位置に加熱発泡材である中遮炎材43が配設されている。このように、また、
図4に端的に示されるように、外障子11と内障子12の下方位置に配設される外遮炎材41と内遮炎材42とは、召合せ部の下方位置に配設される中遮炎材43を介在して連続して配設されている。
【0015】
(火災発生時の状況)
図5は、火災が発生したときの建具の状態を示す側断面図である。(a)は建具が加熱される前の状態であり、(b)は建具が加熱された後の状態を示している。ここでは、屋外で火災が発生し、外部から熱流が伝えられようとしている様子が示されている。火災が発生すると、先ず、融点の低い樹脂製の戸車が溶融する。そして、外障子11と内障子12が下へ下がり、かつ、加熱側に反る形となる。
図5(b)では、戸車の車輪が消失し、外障子11と内障子12が加熱側に反りつつ、下がっている様子が示されている。しかし、屋外からの熱流が補助材3の外部を熱し、当該熱がステンレス製の補助材を通して、外遮炎材41、内遮炎材42及び中遮炎材43に伝わることで、加熱発泡材が上向きに発泡し、かつ、外障子11と内障子12の下方位置の加熱発泡材が召合せ部の下方位置の加熱発泡材部分で繋がり連続した形となるため、熱流のそれ以上の流れは遮断されることになる。
【0016】
本実施形態においては、外障子11と内障子12の下框部分に配設された遮炎材Aも発泡して、下外レール31と外障子11の下框の隙間、及び下内レール32と内障子12の下框の隙間を塞ぐようにされているため、さらに、熱流の遮断が達成されることになる。
【0017】
(建具の施工手順)
本発明の建具1の施工手順を説明する。
図3から理解されるように、下枠2とアンカー部材25が埋め込まれるように、下枠2周辺をモルタル13で固める。アンカー部材25もモルタル13で一緒に固められることになるため、下枠2の固定は単体で固定される場合よりも強固なものとなる。屋内側のモルタル13の高さは屋内側のタイル等の屋内側床材の上面が下枠2の突出部24の上端と略同面になるように調節される。その後、屋内側のモルタル13の上に屋内側のタイル等の屋内側床材を突出部24との間に所定間隔を有するようにして貼る。下枠2の突出部24と屋内側のタイル等の屋内側床材との間にシール材を充填して、屋内側床部15を仕上げる。
【0018】
屋外側のモルタル13の高さは屋外側のタイル等の屋外側床材の上面が下枠2の上面板部21と略同面になるように調節される。その後、屋外側のモルタル13の上に屋外側のタイル等の屋外側床材を屋外側側壁22との間に所定間隔を有するようにして貼る。下枠2の屋外側側壁22と屋外側のタイル等の屋外側床材との間にシール材を充填して、屋外側床部14を仕上げる。
【0019】
上枠5、竪枠8を施工し、枠全体の固定及び仕上げをしつつ、下枠2の上に外障子11及び内障子12を移動させるための下外レール31及び下内レール32を備えた補助材3を取付ける。その後、下枠2、上枠5、竪枠8を四周枠組みした枠体内に外障子11と内障子12を収めて建具1が完成する。
【0020】
以上、本発明に係る実施例の建具1について、図面を参照して詳述し、その構造及び施工手順について説明してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、外障子11と内障子12の下框内部の遮炎材Aは、それぞれ下框の屋内側の内部に設けられているが、下框の屋外側の内部に設けてもよいし、場合によって設けなくともよい。
【0021】
また、前述の実施例は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 建具
11 外障子
12 内障子
13 モルタル
14 屋外側床部
15 屋内側床部
2 下枠
21 上面板部
22 屋外側側壁
23 屋内側側壁
24 突出部
25 アンカー部材
3 補助材
31 下外レール
32 下内レール
33 基板
41 外遮炎材(加熱発泡材)
42 内遮炎材(加熱発泡材)
43 中遮炎材(加熱発泡材)
5 上枠
51 上外レール
52 上内レール
6 ガラスパネル
7 グレイジングチャンネル
8 竪枠