(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081028
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】支柱取付具
(51)【国際特許分類】
E01F 7/04 20060101AFI20220524BHJP
E01F 9/658 20160101ALI20220524BHJP
E01F 9/623 20160101ALI20220524BHJP
E01F 9/608 20160101ALI20220524BHJP
【FI】
E01F7/04
E01F9/658
E01F9/623
E01F9/608
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192306
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】591281862
【氏名又は名称】中井工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 周二
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 覚
(72)【発明者】
【氏名】坂元 誠志
【テーマコード(参考)】
2D001
2D064
【Fターム(参考)】
2D001PD10
2D064AA11
2D064AA22
2D064DB07
2D064DB12
2D064HA11
(57)【要約】
【課題】 様々な外周形状の支柱に、より汎用的に用いることができ、かつ容易に取付けることができる支柱取付具を提供する。
【解決手段】 支柱を対象物に取付ける支柱取付具であって、前記支柱を水平方向の内側に挟む立板部と、前記立板部の下側から前記水平方向の内側に延びる底板部と、前記底板部から上側に延びる突起部と、をそれぞれ有し、前記水平方向に向かい合わせにして前記対象物上に設置される一対の保持部と、前記一対の保持部を前記対象物に固定する固定部と、を備え、前記固定部は、前記一対の保持部のそれぞれの前記底板部を前記固定部と前記対象物とにより上下方向に挟み、前記底板部が前記固定部及び前記対象物の間で摺動可能な状態で、内面が前記突起部と掛かることで、前記底板部が前記固定部及び前記対象物の間よりも前記水平方向の外側に移動することを規制する枠部を有する、支柱取付具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱を対象物に取付ける支柱取付具であって、
前記支柱を水平方向の内側に挟む立板部と、前記立板部の下側から前記水平方向の内側に延びる底板部と、前記底板部から上側に延びる突起部と、をそれぞれ有し、前記水平方向に向かい合わせにして前記対象物上に設置される一対の保持部と、
前記一対の保持部を前記対象物に固定する固定部と、
を備え、
前記固定部は、前記一対の保持部のそれぞれの前記底板部を前記固定部と前記対象物とにより上下方向に挟み、前記底板部が前記固定部及び前記対象物の間で摺動可能な状態で、内面が前記突起部と掛かることで、前記底板部が前記固定部及び前記対象物の間よりも前記水平方向の外側に移動することを規制する枠部を有する、
支柱取付具。
【請求項2】
前記固定部は、前記枠部とは別体として設けられ、止具を締結することで前記枠部を上から押さえる押え板部をさらに有し、
前記押え板部には、前記止具を挿入する第1貫通孔が形成され、
前記枠部の内幅は、前記第1貫通孔の内幅よりも大きい、
請求項1に記載の支柱取付具。
【請求項3】
前記立板部は、
前記上下方向に延び、前記水平方向の外側から前記支柱を覆う覆い部と、
前記覆い部の下側に位置し、前記覆い部から前記水平方向の外側に突出する膨らみ部と、を有し、
前記固定部の外周面は、前記膨らみ部及び前記底板部により形成される収容部に収容可能である、
請求項2に記載の支柱取付具。
【請求項4】
前記膨らみ部の側壁には、前記止具を締結するための工具を挿入可能な第2貫通孔が形成されている、
請求項3に記載の支柱取付具。
【請求項5】
前記立板部は、前記第2貫通孔よりも上側において、前記覆い部から前記水平方向の内側に突出し、前記支柱の下端を受ける支柱受け板をさらに有する、
請求項4に記載の支柱取付具。
【請求項6】
前記突起部は、前記底板部の内端面に設けられ、
前記内端面には、相手方の前記保持部に設けられた前記突起部が挿入される凹み部が形成されている、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の支柱取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
支柱を地面に立てる際、支柱の支持耐力を向上させるために、支柱本体の下部と連結するベースプレートを用いる技術が知られている。例えば、特許文献1には、ベースプレートを、当該ベースプレートの中心部を貫通して地面に位置決めするアンカーと、当該アンカーの基端に螺着する固定ナットとにより、地面に固定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
支柱には、用途等に応じて、様々な外周形状のものがある。従来、ベースプレート等の支柱取付具は、支柱の外周形状ごとに用意する必要があった。複数種類の支柱に1種類の支柱取付具を適用することができれば(すなわち、支柱取付具の汎用性が高くなれば)、支柱取付具の小品種多量生産が可能となり、支柱取付具の生産効率が向上する等の効果が得られる。
【0005】
また、支柱取付具は、取付が容易であることが求められる。このため、支柱取付具の汎用性を高める際、支柱取付具の作業性が低下することを防止する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、様々な外周形状の支柱に、より汎用的に用いることができ、かつ容易に取付けることができる支柱取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る支柱取付具は、支柱を対象物に取付ける支柱取付具であって、前記支柱を水平方向の内側に挟む立板部と、前記立板部の下側から前記水平方向の内側に延びる底板部と、前記底板部から上側に延びる突起部と、をそれぞれ有し、前記水平方向に向かい合わせにして前記対象物上に設置される一対の保持部と、前記一対の保持部を前記対象物に固定する固定部と、を備え、前記固定部は、前記一対の保持部のそれぞれの前記底板部を前記固定部と前記対象物とにより上下方向に挟み、前記底板部が前記固定部及び前記対象物の間で摺動可能な状態で、内面が前記突起部と掛かることで、前記底板部が前記固定部及び前記対象物の間よりも前記水平方向の外側に移動することを規制する枠部を有する、支柱取付具である。
【0008】
このように構成することで、一対の保持部の向かい合う距離を、支柱の外径に合わせて調整することを可能としつつ、保持部の位置を調整する際に、底板部が固定部及び対象物の間から外れることを防止することができる。これにより、支柱取付具の汎用性を高めつつ、支柱取付具を容易に取付けることができる。
【0009】
(2)好ましくは、前記固定部は、前記枠部とは別体として設けられ、止具を締結することで前記枠部を上から押さえる押え板部をさらに有し、前記押え板部には、前記止具を挿入する第1貫通孔が形成され、前記枠部の内幅は、前記第1貫通孔の内幅よりも大きい。このように構成することで、一対の保持部の水平方向の位置の調整代を大きくすることができる。
【0010】
(3)好ましくは、前記立板部は、前記上下方向に延び、前記水平方向の外側から前記支柱を覆う覆い部と、前記覆い部の下側に位置し、前記覆い部から前記水平方向の外側に突出する膨らみ部と、を有し、前記固定部の外周面は、前記膨らみ部及び前記底板部により形成される収容部に収容可能である。このように構成することで、膨らみ部を設けない場合と比べて、一対の保持部の水平位置の調整幅を維持したまま、一対の保持部の最小内径をより小さくすることができ、支柱取付具の汎用性を高めることができる。
【0011】
(4)好ましくは、前記膨らみ部の側壁には、前記止具を締結するための工具を挿入可能な第2貫通孔が形成されている。このように構成することで、作業者は第2貫通孔から水平方向に工具を挿入して止具を締結することができるため、作業性が向上する。
【0012】
(5)好ましくは、前記立板部は、前記第2貫通孔よりも上側において、前記覆い部から前記水平方向の内側に突出し、前記支柱の下端を受ける支柱受け板をさらに有する。このように構成することで、作業者は、支柱が挿入されている状態で止具を本締めすることが可能となる。作業者は、支柱を挿入した後、実際の支柱が立つ位置を確認しながら、保持部の水平方向の位置を調整することができるため、作業性が向上する。
【0013】
(6)好ましくは、前記突起部は、前記底板部の内端面に設けられ、前記内端面には、相手方の前記保持部に設けられた前記突起部が挿入される凹み部が形成されている。このように構成することで、凹み部を形成しない場合と比べ、互いの立板部の距離をより近くすることができ、一対の保持部の最小内径をより小さくすることができる。この結果、支柱取付具の汎用性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、様々な外周形状の支柱に、より汎用的に用いることができ、かつ容易に取付けることができる支柱取付具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る支柱取付具を説明する図である。
【
図2】第2実施形態に係る支柱取付具を説明する図である。
【
図3】第2実施形態に係る支柱取付具を説明する図である。
【
図10】保持部に枠部を載せた様子を示す図である。
【
図11】保持部と枠部との位置関係を説明する図である。
【
図12】保持部と枠部との位置関係を説明する図である。
【
図15】変形例に係る支柱取付具を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
<従来例の課題について>
図16は、従来例とその課題を説明する図である。
図16(a)は、従来の支柱取付具90及び支柱P1の断面図を示す。支柱P1は、支柱取付具90を介して、対象物T1上に設置される。対象物T1は、例えばコンクリート製、鋼製又は木製のブロックである。なお、対象物T1は、杭基礎の杭頭に被せられる接合部材であってもよいし、地面であってもよい。
【0018】
支柱取付具90(ベースプレート)は、支柱P1の下部が挿入される円筒形状の筒部91と、筒部91の下部に一体形成され、支柱P1本体よりも大径の支圧板92と、を有する。筒部91には、ボルトB2を挿入するための一対の貫通孔91a,91aが形成されている。支圧板92の中心部には、アンカーボルトB1を挿入するための貫通孔92aが形成されている。
【0019】
以下、支柱P1の延びる方向を、「上下方向」と称する。本実施形態において、上下方向は鉛直方向と一致するが、鉛直方向に対して傾いた方向であってもよい。支柱P1に対して対象物T1が位置する側を「下側」と称し、その反対側を「上側」と称する。また、上下方向と直交する方向を「水平方向」と称する。支柱P1の中心C1側を「水平方向内側(又は、単に内側)」と称し、中心C1から離れる側を「水平方向外側(又は、単に外側)」と称する。
【0020】
支柱取付具90により支柱P1を対象物T1に取付ける手順を説明する。はじめに、アンカーボルトB1を対象物T1に固定する。次に、対象物T1から突出しているアンカーボルトB1を貫通孔92aに挿入して、支圧板92を対象物T1上に載置する。その後、アンカーボルトB1の頭部にナットN1を締結することで、支圧板92を対象物T1上に固定する。続いて、筒部91に支柱P1の下部を挿入する。このとき、支柱P1に設けられた一対の貫通孔P1a,P1aが、筒部91の一対の貫通孔91a,91aと連通するように、支柱P1を挿入する。最後に、一方の貫通孔91aにボルトB2を挿入し、一対の貫通孔P1a,P1aを介して他方の貫通孔91aからボルトB2の端部を突出させ、当該ボルトB2の端部にナットN2を締結することで、筒部91に支柱P1を固定する。以上により、支柱P1が支柱取付具90により対象物T1に取り付けられる。
【0021】
<支柱取付具の第1改良>
ここで、従来の支柱取付具90では、支柱P1を固定するために、筒部91の内周形状を支柱P1の外周形状に応じた形状とする必要がある。このため、支柱P1の種類ごとに支柱取付具90を用意する必要があった。支柱P1の外周形状としては、例えば直径60mmから120mmまでの円筒形状の支柱(丸管)や、幅60mmから幅160mmまでの角筒形状の支柱(角管)が挙げられる。角管の場合、外周形状は正方形(例えば、幅及び奥行きがともに120mmの正方形)であってもよいし、長方形(例えば、幅90mm、奥行き160mmの長方形)であってもよい。支柱P1は、例えば、鋼製、アルミ製、又は木製である。以上のように、支柱P1には多種多様な種類があり、当該種類ごとに支柱取付具90を生産する場合、多品種生産とならざるを得ない。
【0022】
そこで、発明者らは、従来単一部材であった筒部91及び支圧板92を水平方向に分割して、一対の保持部2a,2bとすることを着想した。このように構成すれば、支柱P1の幅に応じて保持部2a,2bが向かい合う距離を調整することで、汎用性を向上させることができる。
【0023】
図16(b)は、支柱取付具90を改良した支柱取付具90aを示す。支柱取付具90aは、一対の保持部2a,2bと、固定部3とを備える。一対の保持部2a,2bは、対象物T1上に向かい合わせに設置され、支柱P1を挟持する。一対の保持部2a,2bは、それぞれ同じ形状を有し、特に区別しない場合は単に「保持部2」と称する。保持部2は、上下方向に延びる立板部21と、対象物T1上に立板部21を立てるための土台となる底板部24とを有する。
【0024】
底板部24は、立板部21の下側から水平方向内側に延びる部分である。なお、底板部24は、立板部21の下側から水平方向外側に延びる部分を有してもよい。立板部21には、ボルトB2を挿入するための貫通孔23aが形成されている。固定部3は、底板部24を対象物T1に押さえつけて固定するための円盤状の部材である。固定部3の中央部にはアンカーボルトB1を挿入するための貫通孔3aが形成されている。
【0025】
支柱取付具90aにより支柱P1を対象物T1に取付ける手順を説明する。はじめに、作業者は、アンカーボルトB1を対象物T1に固定するとともに、対象物T1上に一対の保持部2a,2bを載置する。次に、作業者は、対象物T1から突出しているアンカーボルトB1を貫通孔3aに挿入して、固定部3を底板部24上に載置する(載置工程S11)。続いて、作業者は、ナットN1をアンカーボルトB1の頭部に緩めに締結する(仮締め工程S12)。これにより、底板部24は固定部3と対象物T1とに挟まれて仮固定される。
【0026】
このとき、底板部24は、固定部3により完全には締め付けられていないため、作業者が保持部2を手で水平方向に動かすことで、底板部24を固定部3及び対象物T1の間で摺動させることができる。これにより、作業者は、一対の保持部2a,2bの向かい合う距離を、支柱P1の外径に合わせて調整する(調整工程S13)。保持部2a,2bの距離を調整後、作業者は、ナットN1を本締めする。これにより、底板部24は固定部3により完全に締め付けられ、作業者が保持部2を水平方向に動かそうとしても、底板部24は固定部3及び対象物T1の間で摺動しない。最後に、支柱P1を一対の保持部2a,2bの内側に挿入した後、
図16(a)と同様にボルトB2を貫通孔23aに挿入し、ボルトB2及びナットN2により支柱P1を保持部2a,2bに固定する(支柱取付工程S14)。
【0027】
<支柱取付具の第2改良>
ここで、支柱取付具90aの課題を
図16(c)に示す。調整工程S13において、作業者が保持部2を手で動かし、底板部24を固定部3及び対象物T1の間で摺動させる際、保持部2を水平方向の外側に所定距離を超えて動かすと、底板部24が固定部3及び対象物T1の間から外れることがある。この場合、保持部2はバランスを崩して対象物T1から脱落するおそれがある。このため、支柱取付具90aは、設置の作業性を向上する必要がある。
【0028】
そこで、発明者らは、支柱取付具90aに、底板部24から上側に延びる突起部25を追加し、固定部3に、突起部25が掛かることで保持部2の対象物T1上における水平方向の移動範囲を規制する枠部32を設けることを着想した。このように構成すれば、調整工程S13の際に底板部24が対象物T1から脱落することを防止することができるため、設置の作業性を向上させることができる。
【0029】
<支柱取付具の概略構成>
図1は、第1実施形態の支柱取付具10aを概略的に説明する図である。
図1(a)は、支柱取付具90aを改良した支柱取付具10aを示す。支柱取付具10aは、一対の保持部20a,20bと、固定部30と、を備える。一対の保持部20a,20bと固定部30は、例えば、それぞれ鋳造により形成される鋳鉄製又は鋳鋼製の部材である。なお、一対の保持部20a,20bと固定部30は、それぞれ鍛造により形成されてもよい。
【0030】
一対の保持部20a,20bは、対象物T1上に向かい合わせに設置され、支柱P1を挟持する。一対の保持部20a,20bは、それぞれ同じ形状を有し、特に区別しない場合は単に「保持部20」と称する。保持部20は、立板部21と、底板部24と、突起部25とを有する。立板部21及び底板部24は、改良前の支柱取付具90aの立板部21及び底板部24と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0031】
突起部25は、底板部24の水平方向内側の端面である内端面24aに設けられる直方体形状の部分である。突起部25は、底板部24の上面24bよりも上側に突出している。上面24bから突起部25の上側までの高さを「高さh1」と称する。なお、突起部25は、底板部24のうち内端面24a以外の場所に設けられてもよい。例えば、突起部25は、底板部24の上面24bから高さh1だけ上側に延びるように設けられてもよい。
【0032】
固定部30は、ナットN1を受ける押え板部31と、枠部32とを有する。
図1(a)では、固定部30を、押え板部31と枠部32が一体形成された単一部材として示しているが、後述の実施例に示すように押え板部31と枠部32は別部材であってもよい。押え板部31は、
図16(b)に示す固定部3と同様の形状を有する円盤状の部分である。押え板部31の中央部にはアンカーボルトB1を挿入するための第1貫通孔31aが形成されている。第1貫通孔31aの内径は、ナットN1の外径よりも小さい。
【0033】
枠部32は、押え板部31の下側に設けられる。枠部32は、円筒形状を有し、その内面32aにより収容部SP1を形成する。枠部32の内幅は、対象物T1の外幅よりも小さく、第1貫通孔31aの内幅よりも大きい。枠部32の外幅は、押え板部31の外幅と等しい。押え板部31の下側の面である下面31bから枠部32の下側の面である下面32bまでの高さを「高さh2」と称する。
【0034】
枠部32の高さh2は、突起部25の高さh1よりも高い。このため、
図1(b)に示すように、固定部30を底板部24上に載置すると、枠部32の下面32bが底板部24の上面24bに接している状態で、収容部SP1に突起部25を収容することができる。このとき、突起部25の上側は押え板部31の下面31bと接さず、これらの間にはわずかに隙間がある。
【0035】
支柱取付具10aにより支柱P1を対象物T1に取付ける手順を説明する。はじめに、作業者は、アンカーボルトB1を対象物T1に固定するとともに、対象物T1上に一対の保持部20a,20bを載置する。次に、作業者は、対象物T1から突出しているアンカーボルトB1を第1貫通孔31aに挿入して、固定部30を底板部24上に載置する。このとき、枠部32の収容部SP1に突起部25を収容する。続いて、作業者は、ナットN1をアンカーボルトB1の頭部に緩めに締結することで、底板部24を固定部30と対象物T1との間で仮固定する。
【0036】
なお、上記の順序は適宜変更されてもよい。例えば、作業者は、アンカーボルトB1を対象物T1に固定した後、保持部20を載置する前に、アンカーボルトB1を第1貫通孔31aに挿入して固定部30を対象物T1上に載置してもよい。この場合、作業者は、アンカーボルトB1の頭部にナットN1を緩めに締結した後、固定部30を上側に持ち上げて、固定部30と対象物T1との間に潜り込ませるように保持部20を設置する。
【0037】
次に、底板部24が固定部30により仮固定されている状態で、作業者は、一対の保持部20a,20bを手で動かして、底板部24を固定部30及び対象物T1の間で摺動させる。これにより、一対の保持部20a,20bの向かい合う距離を、支柱P1の外径に合わせて調整する。ここで、
図1(b)に示すように、保持部20を水平方向外側に所定量動かすと、枠部32の内面32aが、収容部SP1に収容された突起部25と当接する。このため、保持部20は、水平方向外側に所定量を超えて移動することができない。
【0038】
すなわち、枠部32の内面32aは、突起部25の外側の面と掛かることで、保持部20が対象物T1上において所定量を超えて移動することを規制する機能を有する。これにより、保持部20の位置を調整する際に、底板部24が固定部30及び対象物T1の間から外れることを防止することができる。一対の保持部20a,20bの距離を調整した後、作業者は、ナットN1を本締めし、支柱P1を一対の保持部20a,20bの内側に挿入して、ボルトB2及びナットN2により支柱P1を一対の保持部20a,20bに固定する。
【0039】
以上のように、第1実施形態に係る支柱取付具10aは、上下方向に延びる支柱P1を対象物T1に取付ける支柱取付具であって、支柱P1を上下方向と交差する水平方向の内側に挟む立板部21と、立板部21の下側から水平方向の内側に延びる底板部24と、底板部24から上側に延びる突起部25と、をそれぞれ有し、水平方向に向かい合わせにして対象物T1上に設置される一対の保持部20a,20bと、一対の保持部20a,20bを対象物T1に固定する固定部30と、を備え、固定部30は、一対の保持部20a,20bのそれぞれの底板部24を固定部30と対象物T1とにより上下方向に挟み、底板部24が固定部30及び対象物T1の間で摺動可能な状態で、内面32aが突起部25と掛かることで、底板部24が固定部30及び対象物T1の間よりも水平方向の外側に移動することを規制する枠部32を有する。
【0040】
このように構成することで、一対の保持部20a,20bの向かい合う距離を、支柱P1の外径に合わせて調整することを可能としつつ、保持部20の位置を調整する際に、底板部24が固定部30及び対象物T1の間から外れることを防止することができる。これにより、支柱取付具の汎用性を高めつつ、支柱取付具を容易に取付けることができる。
【0041】
<第2実施形態>
図2を参照して、第2実施形態に係る支柱取付具10bを説明する。支柱取付具10bにおいて、上記の第1実施形態に係る支柱取付具10aと共通する構成には共通の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0042】
<支柱取付具の第3改良>
ここで、上記の第1実施形態に係る支柱取付具10aの内径(すなわち、一方の立板部21の内面から他方の立板部21の内面までの距離)は、支柱P1の外径に合うように調整される。支柱取付具10aの調整可能な最小内径Wminが小さいほど、外径の小さい支柱P1と適合でき、支柱取付具10aの調整可能な最大内径Wmaxが大きいほど、外径の大きい支柱P1と適合できる。支柱取付具10aの調整可能な幅を「調整幅Ad」と称すると、最大内径Wmaxは最小内径Wminと調整幅Adの和となる(Wmax=Wmin+Ad)。このため、支柱取付具10aの汎用性をより高めるためには、最小内径Wminをより小さくしつつ、調整幅Adをより大きくする必要がある。
【0043】
図1(b)を参照する。支柱取付具の調整幅Adは、立板部21の内側から突起部25の外側までの距離Wa1の2倍(2×Wa1)と、枠部32の内径Wa2と、の小さい方となる(Ad=min(2×Wa1,Wa2))。また、支柱取付具10aの最小内径Wminは、立板部21の内側から突起部25の内側までの距離Wb1の2倍(2×Wb1)と、固定部30の外径Wb2と、の大きい方となる(Wmin=max(2×Wb1,Wb2))。このため、最小内径Wminをより小さくするために、距離Wb1及び外径Wb2を小さくすると、距離Wa1及び内径Wa2も小さくなるため、調整幅Adも小さくなる。以上により、支柱取付具10aでは、最小内径Wminをより小さくしつつ、調整幅Adをより大きくすることができない。
【0044】
そこで、第2実施形態に係る支柱取付具10bでは、固定部30の一部を水平方向に収容する膨らみ部26を設けることで、最小内径Wminをより小さくしつつ、調整幅Adをより大きくし、汎用性をより高めている。
【0045】
図2(a)は、最大内径Wmaxの状態で対象物T1上に固定されている支柱取付具10bを示す。また、
図2(b)は、最小内径Wminの状態で対象物T1上に固定されている支柱取付具10bを示す。
【0046】
支柱取付具10bは、一対の保持部200a,200bと、固定部30と、を備える。一対の保持部200a,200bは、対象物T1上に向かい合わせに設置され、支柱P1を挟持する。一対の保持部200a,200bは、それぞれ同じ形状を有し、特に区別しない場合は単に「保持部200」と称する。保持部200は、立板部210と、底板部24と、突起部25とを有する。
【0047】
立板部210は、覆い部23と、膨らみ部26とを有する。覆い部23は、上下方向に延び、支柱P1を水平方向の外側から覆う部分である。覆い部23には、貫通孔23aが形成されている。膨らみ部26は、覆い部23の下側に位置し、覆い部23から外側に突出する円筒形状又は角筒形状の部分である。底板部24は、膨らみ部26の下側から水平方向内側に延びる部分である。
【0048】
膨らみ部26は、側壁27と、上壁28とを有する。側壁27は、覆い部23よりも外側に位置し、上下方向に延びる壁である。側壁27には、工具TL1(
図3(a))を挿入するための第2貫通孔27aが形成されている。第2貫通孔27aの少なくとも一部は、固定部30の上面30bから上壁28の下面28aまで形成されている。上壁28は、一端が側壁27の上側と接続し、他端が覆い部23の下側と接続する壁であり、水平方向に延びる。膨らみ部26及び底板部24により、第2収容部SP2が形成される。
【0049】
底板部24の上面24bから、上壁28の下面28aまでの距離を「距離h3」と称する。距離h3は、固定部30の高さh4よりも長い。このため、
図2(b)に示すように、固定部30の外側の一部は、第2収容部SP2に収容可能である。第2収容部SP2に固定部30の一部が収容されているとき、固定部30の外周面30aは、覆い部23の内面23bよりも外側に位置する。
【0050】
ここで、側壁27の内側から覆い部23の内面23bまでの距離を「距離Wc1」と称する。距離Wc1は、第2収容部SP2の水平方向の幅である。
図2(b)に示すように、支柱取付具10bの最小内径Wminは、底板部24のうち覆い部23の内面23bよりも内側に突出する部分の幅(Wb1-Wc1)の2倍(2×(Wb1-Wc1))と、固定部30の外径Wb2から距離Wc1の2倍を引いた値(Wb2-2×Wc1)と、の大きい方となる(Wmin=max(2×(Wb1-Wc1),Wb2-2×Wc1))。このため、支柱取付具10aと支柱取付具10bとでWb1,Wb2の値が同じ場合、最小内径Wminは、距離Wc1を引く分、支柱取付具10bの方がより小さくなる。
【0051】
図2(a)に示すように、支柱取付具10bの調整幅Adは、第1実施形態の支柱取付具10aの調整幅Adと同様であり、Ad=min(2×Wa1,Wa2)の関係となる。このため、支柱取付具10bによれば、膨らみ部26のない支柱取付具10aと比べ、同じ調整幅Adのまま最小内径Wminをより小さくすることができ、支柱取付具の汎用性を高めることができる。
【0052】
図3は、支柱取付具10bを取付ける様子を説明する図である。
支柱取付具10bにより支柱P1を対象物T1に取付ける手順を説明する。底板部24を固定部30と対象物T1との間で仮固定し、保持部200の位置を調整するまでは、支柱取付具10aの取付手順と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
一対の保持部200a,200bの距離を調整した後、作業者は、ナットN1を本締めする。ここで、第2貫通孔27aの少なくとも一部は固定部30の上面30bから上壁28の下面28aまで形成されているため、
図3(a)に示すように、作業者は、第2貫通孔27aから工具TL1を挿入してナットN1を締めることができる。このため、第2貫通孔27aのない場合と比べ、作業性が向上する。最後に、作業者は、
図3(b)に示すように支柱P1を一対の保持部200a,200bの内側に挿入した後、ボルトB2を貫通孔23aに挿入し、ボルトB2及びナットN2により支柱P1を一対の保持部200a,200bに固定する。
【0054】
以上のように、第2実施形態に係る支柱取付具10bの立板部210は、上下方向に延び、水平方向の外側から支柱P1を覆う覆い部23と、覆い部23の下側に位置し、覆い部23から水平方向の外側に突出する膨らみ部26と、を有し、固定部30の外周面30aは、膨らみ部26及び底板部24により形成される第2収容部SP2に収容可能である。このように構成することで、膨らみ部26を設けない場合と比べて、同じ調整幅Adのまま最小内径Wminをより小さくすることができ、支柱取付具の汎用性を高めることができる。
【0055】
また、第2実施形態に係る支柱取付具10bの膨らみ部26の側壁27には、ナットN1を締結するための工具TL1を挿入可能な第2貫通孔27aが形成されている。このように構成することで、作業者は第2貫通孔27aから水平方向に工具TL1を挿入してナットN1を締結することができるため、作業性が向上する。
【0056】
<実施例>
実施例に係る支柱取付具10cを説明する。支柱取付具10cは、第2実施形態に係る支柱取付具10bをより具体的に示したものである。支柱取付具10cについて、支柱取付具10bと同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0057】
<支柱取付具の全体構成>
図4は、支柱取付具10cを斜め上から見下ろした斜視図である。支柱取付具10cは、一対の保持部200a,200bと、固定部300と、を備える。一対の保持部200a,200bは、対象物T1上に設置され、固定部300により固定される。
【0058】
<対象物の構成>
図5は、実施例に係る対象物T1を説明する図である。
図5(a)は対象物T1を斜め上から見下ろした斜視図であり、
図5(b)及び
図5(c)はそれぞれ
図5(a)の矢印VB,矢印VCから見た正面図及び側面図である。対象物T1は、杭基礎(図示省略)の杭頭に被せられる接合部材60と、接合部材60上に載置される受け板50と、を有する。
【0059】
接合部材60は、上下方向に貫通する貫通孔61aが中央に形成されている円盤部61と、内部に杭基礎の杭頭を収容する第1筒部62と、円盤部61と第1筒部62の間に設けられ、内部にナットN3を収容する第2筒部63と、を有する。第1筒部62の上部には、第2筒部63の内部と連通する貫通孔62aが形成されている。第1筒部62の側面には、水平方向に貫通する一対の貫通孔62b,62bが形成されている。
【0060】
受け板50は、円盤部61上に載置される円盤状の部材である。受け板50の外径は、円盤部61の外径よりも大きい。受け板50の中央には、上下方向に貫通する貫通孔50aが形成されている。受け板50は、対象物T1上のスペースを広げる機能を有する。上下方向から平面視すると、円盤部61の面積よりも受け板50の面積の方が広いため、保持部200の調整幅Adをより大きくとりつつ、保持部200が対象物T1上から脱落することを防止することができる。なお、円盤部61により充分なスペースが確保できている場合、受け板50を設けなくてもよい。
【0061】
<保持部の構成>
図6は、水平方向の内側から保持部200aを見下ろした斜視図である。
図7は、水平方向の外側から保持部200aを見下ろした斜視図である。
図8は、保持部200aを説明する図である。
図8(a)は保持部200aの平面図であり、
図8(b)及び
図8(c)は、それぞれ
図8(a)の矢印VIIIB,矢印VIIICから見た正面図及び側面図である。
【0062】
保持部200aは、立板部210と、底板部24とを有する。立板部210は、覆い部23と、膨らみ部26とを有する。覆い部23は、
図8(a)に示すように平面視すると、L字型の形状を有する。L字形状のうち長辺側を第1板部231と称し、短辺側を第2板部232と称する。第1板部231には、複数の(本実施例では5個の)貫通孔23a1~23a5が形成されている。貫通孔23a1~23a5は、特に区別しない場合、単に「貫通孔23a」と称する。
【0063】
図7及び
図8(a)を参照する。膨らみ部26は、角筒形状を有する角筒領域261と、円筒形状を有する円筒領域262とを有する。円筒領域262は、膨らみ部26のうち第2板部232側から第1板部231の中央部付近にわたって設けられている。円筒領域262の側壁27の曲率半径は、固定部300の半径よりも大きい。第1板部231の中央部付近で円筒領域262と角筒領域261とが接続している。側壁27の第2貫通孔27aは、角筒領域261及び円筒領域262の両方にわたって形成されている。
【0064】
底板部24は、
図8(a)に示すように平面視すると、第1板部231及び第2板部232の両方よりも水平方向内側に突出している。底板部24の内端面24aは、
図6に示すように、L字端面24a1と、凸端面24a2と、凹端面24a3とを含む。L字端面24a1は、第1板部231及び第2板部232の形状に対応してL字状に屈曲する端面である。凸端面24a2は、L字端面24a1の第2板部232側において水平方向の内側に突出する端面である。凹端面24a3は、L字端面24a1の反対側で凸端面24a2と接続し、凸端面24a2よりも水平方向の外側に凹む端面である。
【0065】
突起部25は、L字端面24a1の中央に設けられている。
図8(b)に示すように、第1板部231の外側から見ると、突起部25は、円筒領域262と角筒領域261とが接続している部分と重複する。
【0066】
<枠部の構成>
図9は、固定部300を説明する図である。
図9(a)は、固定部300の平面図である。
図9(b)は、固定部300の正面図である。
図9(c)は、変形例に係る固定部300aの平面図である。本実施例において、固定部300は、押え板部31と、枠部32とを有する。押え板部31と枠部32とはそれぞれ別体として設けられる。押え板部31は、円盤形状を有する板材であり、中央にボルトB3を挿入する第1貫通孔31aが形成されている。押え板部31は、ボルトB3を締結することで枠部32を上から押さえる機能を有する。
【0067】
枠部32は、円盤形状を有する板枠であり、内面32aは平面視するとオーバル形状を有する。内面32aを平面視した際の形状はこれに限られず、例えば、円形又は楕円形であってもよい。内面32aは、第1貫通孔31aと上下方向に連通する。内面32aの最小の内幅Wd2は、第1貫通孔31aの内幅Wd1(すなわち、第1貫通孔31aの内径)よりも大きい。
【0068】
また、
図9(c)の変形例に示すように、枠部32は、複数の内面32a1,32a2を有していてもよい。2個の内面32a1は、円形に形成され、それぞれ突起部25を1つずつ収容する。内面32a1の内径は、第1貫通孔31aの内径よりも大きい。1個の内面32a2は上下方向に第1貫通孔31aと連通する。内面32a2の内径は、第1貫通孔31aの内径と等しい。
【0069】
<支柱取付具の取付手順>
次に、支柱取付具10cの取付手順について説明する。
図5を参照する。はじめに、作業者は、杭基礎(図示省略)の杭頭に接合部材60を被せ、一対の貫通孔62b,62bにボルトを貫入してナットを締結し、杭基礎と接合部材60とを固定する。次に、作業者は、第2筒部63の内部にナットN3を収容し、円盤部61上に受け板50を載置する。
【0070】
続いて、作業者は、受け板50上に一対の保持部200a,200bを載置した後、底板部24上に枠部32を載置する。このとき、作業者は、突起部25が枠部32の内側に位置するように一対の保持部200a,200bの位置を調整する。
【0071】
図10は、底板部24上に枠部32を載置した後の様子を示す斜視図である。この状態の後、作業者は、
図4に示すように押え板部31を枠部32上に載置し、ボルトB3を第1貫通孔31aに挿入し、ナットN3と緩く締結させる。ボルトB3は、第1貫通孔31a、枠部32内、受け板50の貫通孔50a、円盤部61の貫通孔61aにこの順に挿入され、ナットN3と締結する。これにより、底板部24が固定部300により仮固定されている状態となる。
【0072】
次に、作業者は、一対の保持部200a,200bを手で動かして、底板部24を固定部300及び対象物T1の間で摺動させる。これにより、一対の保持部200a,200bの向かい合う距離を、支柱P1の外径に合わせて調整する。このとき、保持部200を水平方向外側に所定量動かすと、枠部32の内面32aが、突起部25と当接する。これにより、保持部200の位置調整の際に、底板部24が固定部300及び対象物T1の間から外れることを防止することができる。
【0073】
最後に、作業者は、ボルトB3を本締めし、支柱P1を一対の保持部200a,200bの内側に挿入して、ボルトB2を一対の貫通孔23a(例えば、貫通孔23a1,23a1)に挿入してナットN2を締結することで、支柱P1を固定する。
【0074】
図11及び
図12を参照して、保持部200の位置を調整する際の、底板部24、突起部25及び枠部32の位置関係を説明する。
図11は、
図10の矢印XIに示す切断線により切断した断面を上側から見た平面断面図である。
図11では、一対の保持部200a,200bの位置として、一対の第1板部231間の距離d1と、一対の第2板部232間の距離d2とが等しい例を挙げている(例えば、d1=d2=120mm)。支柱P1の断面形状が正方形状や、円形状となる場合に、一対の保持部200a,200bは
図11のような位置に調整される。
【0075】
一対の保持部200a,200bの距離を遠ざけると、枠部32が底板部24の上面24bと接する面積が小さくなり、枠部32の安定性が低下するおそれがある。すなわち、枠部32が底板部24上でぐらつきやすくなり、取付の作業性が悪化するおそれがある。これに対し、本実施例の底板部24は、凸端面24a2を有するため、枠部32の安定性の低下を抑制することができる。
【0076】
図11に示すように、一対の保持部200a,200bをある程度遠ざけても、枠部32の一部は凸端面24a2と上下方向に重複する。このため、枠部32は、第1板部231が対向する方向のみならず、第2板部232が対向する方向にも、底板部24により支持され、枠部32の安定性の低下が抑制される。
【0077】
また、
図11には、枠部32の上側に位置する第1貫通孔31aを仮想線にて示している。
図4に示すように、第1貫通孔31aにはボルトB3が挿入される。このため、ボルトB3挿入後は、押え板部31は水平方向にほとんど移動できない。これに対し、枠部32の内幅は第1貫通孔31aの内幅よりも大きい。このため、ボルトB3の挿入後であっても、内面32aがボルトB3に当接するまで、枠部32は水平方向に移動できる。そして、保持部200の水平方向の移動範囲は枠部32の内面32aの位置によって決まるため、枠部32の水平方向の移動に伴って、保持部200も水平方向に移動することができる。
【0078】
例えば、作業者が一対の保持部200a,200bを持って、保持部200a,200bの互いの距離を一定に維持したまま、
図11の矢印AR1に示す方向に移動させると、枠部32の内面32aに突起部25が当接するため、枠部32も矢印AR1の方向に移動する。このように、枠部32の内幅を第1貫通孔31aの内幅よりも大きくすることで、保持部200a,200bの水平方向の位置の調整代を大きくすることができる。
【0079】
図12は、
図11と同じ断面を示す。
図12は、
図11と一対の保持部200a,200bの距離が異なる。
図12において、一対の第1板部231は互いに最も近接し、一対の第2板部232は互いに最も近接し、その間の距離はいずれも最小内径Wminとなる(すなわち、d1=d2=Wmin)。本実施例において、最小内径Wminは、例えば60mmである。
【0080】
このとき、保持部200aの凸端面24a2は、保持部200bの突起部25の内側の面25aよりも保持部200bのL字端面24a1に近づき、保持部200aの凸端面24a2は保持部200bのL字端面24a1とほとんど隙間なく対向する。また、保持部200aの突起部25は、保持部200bの凸端面24a2及び凹端面24a3により形成される領域(凹み部)に挿入される。凸端面24a2及び凹端面24a3により相手方の突起部25が挿入される凹み部を形成することで、凹み部を形成しない場合と比べ、互いの立板部210の距離をより近くすることができ、最小内径Wminをより小さくすることができる。この結果、支柱取付具10cの汎用性をより高めることができる。
【0081】
また、
図12に示すように、一対の保持部200a,200bを最近接させた際の一対のL字端面24a1間の距離d3は、第1貫通孔31aの内径よりも大きい。これにより、ボルトB3を緩く締結した状態で、一対の保持部200a,200bを水平に移動させることができ、保持部200a,200bの水平方向の位置の調整代を大きくすることができる。
【0082】
<変形例>
<保持部の変形例>
図13は、変形例に係る保持部201の斜視図である。保持部201は、支柱受け板29を有する点で、実施例の保持部200と相違し、その他の点は共通する。変形例に係る立板部210は、支柱受け板29をさらに有する。支柱受け板29は、第2貫通孔27aよりも上側において、覆い部23から水平方向の内側に突出する板状の部分である。支柱受け板29は、より具体的には、上下方向において膨らみ部26の上壁28と同じ高さに位置する。
【0083】
図14は、保持部201を説明する図である。
図14(a)は、保持部201の平面図である。
図14(b)及び
図14(c)は、それぞれ
図14(a)の矢印XIVB,矢印XIVCから見た保持部201の正面図及び側面図である。
図14(a)に示すように、支柱受け板29の水平方向内側の端面である内端面29aは、底板部24のL字端面24a1と上下方向に重複する。本変形例の凸端面24a2は、支柱受け板29よりも内側に突出しているが、支柱受け板29の内端面29aは凸端面24a2と上下方向に重複する位置に位置してもよい。
【0084】
図14(b)及び
図14(c)には、仮想線により、覆い部23の内側に挿入される支柱P1を示している。保持部201は、支柱受け板29により支柱P1の下端P1bを受ける。支柱受け板29は第2貫通孔27aよりも上側に位置するため、挿入された支柱P1の下端P1bも、第2貫通孔27aよりも上側に位置する。このため、支柱P1を挿入した後も、第2貫通孔27aから工具TL1を挿入して、中央に位置するボルトB3を締めたり緩めたりすることが可能となる。
【0085】
上記の第2実施形態及び実施例に係る保持部200の場合、
図3(b)に示すように、支柱P1を挿入すると、支柱P1は底板部24の上面24bまで挿入されるため、支柱P1が第2貫通孔27aを水平方向に覆い、工具TL1により中央の止具(ナットN1又はボルトB3)を締結することができなくなる。このため、上記の第2実施形態及び実施例の保持部200を用いる場合、作業者は、先に中央の止具を本締めし、その後支柱P1を挿入する。
【0086】
これに対し、保持部201によれば、作業者は、支柱P1が挿入されている状態で保持部201の位置を微調整してから、ボルトB3を本締めすることが可能となる。作業者は、支柱P1を挿入した後、実際の支柱P1が立つ位置を確認しながら、保持部201の水平方向の位置を調整することができるため、作業性が向上する。
【0087】
<支柱取付具の変形例>
図15は、変形例に係る支柱取付具10dを示す図である。支柱取付具10dは、受け板50を挟んで、支柱取付具10bを上下方向に向かい合わせに連結したものである。
図15に示すように、上側の支柱取付具10bを支柱P11を挟持するように調整し、下側の支柱取付具10bを支柱P11とは異なる外径の支柱P12を挟持するように調整する。このように構成すれば、支柱取付具10dは、それぞれ異なる外径の支柱P11,P12の変換継手として機能する。この場合、一方の支柱取付具10bから見て、他方の支柱取付具10bは「対象物T1」となる。
【0088】
<その他>
以上のとおり開示した実施形態及び変形例はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明は、図示する形態に限られず、本発明の範囲内において他の形態であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
10a:支柱取付具、10b:支柱取付具、10c:支柱取付具、10d:支柱取付具、2a,2b:保持部、20a,20b:保持部、200a,200b:保持部、201:保持部、21:立板部、210:立板部、23:覆い部、23a:貫通孔、23b:内面、231:第1板部、232:第2板部、23a1~23a5:貫通孔、24:底板部、24a:内端面、24a1:L字端面、24a2:凸端面、24a3:凹端面、24b:上面、25:突起部、25a:面、26:膨らみ部、261:角筒領域、262:円筒領域、27:側壁、27a:第2貫通孔、28:上壁、28a:下面、29:支柱受け板、29a:内端面、3:固定部、30:固定部、30a:外周面、300:固定部、300a:固定部、3a:貫通孔、31:押え板部、31a:第1貫通孔、31b:下面、32:枠部、32a:内面、32a1,32a2:内面、32b:下面、50:受け板、50a:貫通孔、60:接合部材、61:円盤部、61a:貫通孔、62:第1筒部、62a:貫通孔、62b:貫通孔、63:第2筒部、90:支柱取付具、90a:支柱取付具、91:筒部、91a:貫通孔、92:支圧板、92a:貫通孔、SP1:収容部、SP2:第2収容部、P1:支柱、P1a:貫通孔、P1b:下端、T1:対象物、B1:アンカーボルト、B2:ボルト、B3:ボルト、N1:ナット、N2:ナット、N3:ナット、TL1:工具