(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081037
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】多管式熱交換器および湿式微粒化装置
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20220524BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
F28F9/02 A
F28D7/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192323
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】徳道 世一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 章
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA31
3L103AA37
3L103DD08
(57)【要約】
【課題】熱交換能力が高く、分解作業および洗浄作業が行い易い多管式熱交換器および湿式微粒化装置を提供することを課題とする。
【解決手段】多管式熱交換器100は、被冷却物を通過させるための複数の冷却配管1と、複数の冷却配管1の径方向外側を覆い、冷却媒を流すための筒胴体2と、複数の冷却配管1の一端側に設けられた入口側接液部3と、複数の冷却配管1の他端側に設けられた遊動ヘッド4と、を備えている。入口側接液部3および遊動ヘッド4は、開口端に入口側開封蓋5および出口側開封蓋6を有している。遊動ヘッド4の外周部には、当該遊動ヘッド4を移動可能に支持する出口フランジ7を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を通過させるための複数の冷却配管と、
前記複数の冷却配管の径方向外側を覆い、冷却媒を流すための筒胴体と、
前記複数の冷却配管の一端側に設けられた入口側接液部と、
前記複数の冷却配管の他端側に設けられた遊動ヘッドと、を備え、
前記入口側接液部および前記遊動ヘッドは、開口端に開封蓋をそれぞれ有し、
前記遊動ヘッドの外周部には、当該遊動ヘッドを移動可能に支持する出口フランジを有していること、
を特徴とする多管式熱交換器。
【請求項2】
前記入口側接液部と前記筒胴体とを固定するための第1固定部材と、
前記出口フランジと前記筒胴体とを固定するための第2固定部材と、を備えていること、
を特徴とする請求項1記載の多管式熱交換器。
【請求項3】
前記遊動ヘッドの外周面には、緩衝機能を有する緩衝部材を備えていること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の多管式熱交換器。
【請求項4】
前記複数の冷却配管と、前記入口側接液部と、前記遊動ヘッドとは、一体化させて冷却管ユニットを構成していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の多管式熱交換器。
【請求項5】
前記筒胴体内には、前記複数の冷却配管を支持し、前記冷却媒を流すための流通口を有する仕切板を備えていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に多管式熱交換器。
【請求項6】
前記仕切板は、前記筒胴体内に軸方向に適宜な間隔で配置されて前記筒胴体内を区画する複数の部材から成り、
それぞれの前記仕切板に形成された前記流通口が、前記仕切板の外周方向にずらした位置に配置されていること、
を特徴とする請求項5記載の多管式熱交換器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の多管式熱交換器を備えた湿式微粒化装置であって、
前記多管式熱交換器は、前記複数の冷却配管と、前記入口側接液部と、前記遊動ヘッドと、を一体化させた冷却管ユニットを有していること、
を特徴とする湿式微粒化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多管式熱交換器および湿式微粒化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器としは、プレート式熱交換器よりも、構造がシンプルで、圧力損失が少なく、高粘性物の熱交換を可能にした多管式熱交換器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された多管式熱交換器は、大口径の円筒形状の套管(1)と、套管(1)内に遊挿された2本のU字状の伝熱管(2)と、2本の伝熱管(2)内にある小口径の複数の内管(3)と、を備えて構成されている。多管式熱交換器は、套管(1)および内管(3)内に熱媒、伝熱管(2)にプロセス流体を注入して、各流体間で互いに熱交換している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3491229号公報(特許請求の範囲、
図1、
図3および
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の多管式熱交換器のように、高粘度原料を熱交換する場合は、熱交換器内で層流流れを形成し、冷却配管の壁面に近づくほど流速が遅くなって高粘度原料の多くが管央を流れて停滞して壁面に付着し易い。このため、高粘度原料は、冷却管の内外の界面(管壁)で熱交換されるため、管央の高粘度原料が冷却され難くなっている。
【0006】
したがって、2本の伝熱管(2)で高粘度原料を熱交換する特許文献1に記載の多管式熱交換器は、伝熱管(2)の本数が少なく、分解作業や洗浄作業が行い易いが、熱交換能力が低いという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、熱交換能力が高く、分解作業および洗浄作業が行い易い多管式熱交換器および湿式微粒化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る多管式熱交換器は、被冷却物を通過させるための複数の冷却配管と、前記複数の冷却配管の径方向外側を覆い、冷却媒を流すための筒胴体と、前記複数の冷却配管の一端側に設けられた入口側接液部と、前記複数の冷却配管の他端側に設けられた遊動ヘッドと、を備え、前記入口側接液部および前記遊動ヘッドは、開口端に開封蓋をそれぞれ有し、前記遊動ヘッドの外周部には、当該遊動ヘッドを移動可能に支持する出口フランジを有していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、多管式熱交換器を備えた湿式微粒化装置であって、前記多管式熱交換器は、前記冷却配管と、前記入口側接液部と、前記遊動ヘッドとを一体化させた冷却管ユニットを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱交換能力が高く、分解作業および洗浄作業が行い易い多管式熱交換器および湿式微粒化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る多管式熱交換器および湿式微粒化装置の一例を示す中央縦断面図である。
【
図2】多管式熱交換器内に配置された冷却管ユニットを示す中央縦断面図である。
【
図5】
図1に示す多管式熱交換器の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1~
図9を参照して本発明の実施形態に係る多管式熱交換器100および湿式微粒化装置200を説明する。多管式熱交換器100および湿式微粒化装置200を説明する前に、多管式熱交換器100によって冷却される被冷却物について説明する。以下、
図1に示す流入口5b側を入口側、流出口6b側を出口側として適宜説明する。
【0013】
<被冷却物>
被冷却物は、例えば、粒子を含む懸濁液である。多管式熱交換器100で熱交換可能な被冷却物は、粘度10,000cPを超える高粘度原料であっても、熱交換して冷却したり、加熱したりすることが可能である。
【0014】
<湿式微粒化装置>
湿式微粒化装置200は、加圧した原料同士を超高速で衝突させたり、原料をセラミックのボールに衝突させたりすることによって、原料を分散、粉砕、乳化、表面改質、劈開を行って微粒化させる装置である。湿式微粒化装置200は、
図1に示す小型サイズの多管式熱交換器100を備えている。
なお、湿式微粒化装置200は、一つの多管式熱交換器100を備えた装置に限定されず、複数の多管式熱交換器100を直列接続したり、複数の多管式熱交換器100を並列接続して熱交する能力を向上させたものでであってもよい。
【0015】
<多管式熱交換器>
多管式熱交換器100は、冷却媒が流れる筒胴体2内に設けた複数の冷却配管1に被冷却物を通過させることで、被冷却物と冷却媒とを熱交換させて、被冷却物を冷却させるための熱交換装置である。多管式熱交換器100は、冷却管ユニットUと、筒胴体2と、入口側開封蓋5と、出口側開封蓋6と、出口フランジ7と、クランプバンド9A,9Bと、緩衝部材C1,C2と、シール部材S1,S2,S3,S4と、第1固定部材B1と、第2固定部材B2と、座金W1,W2と、を備えて成る。多管式熱交換器100は、U字ホルト等から成る締結具UBによって基台8に固定されている。
【0016】
<冷却管ユニット>
図2に示すように、冷却管ユニットUは、複数の冷却配管1と、複数の冷却配管1の入口側端部に設けた入口側接液部3と、複数の冷却配管1の出口側端部に設けられた遊動ヘッド4と、を一体化させて構成された組付体である。冷却管ユニットUは、
図1に示すように、一度組み付けた後でも、第1固定部材B1および第2固定部材B2を緩めて離脱することで、冷却管ユニットUを覆っている筒胴体2から引き抜くことができる構造になっている。
【0017】
このため、
図2に示す冷却管ユニットUは、経年使用で冷却配管1の外表面が汚れて熱交換性能が低下した場合でも、洗浄によって熱交換機能を回復させることが可能である。また、冷却管ユニットUは、筒胴体2から引き抜いた後、別に用意した冷却管ユニットUに交換することも可能になっている。
【0018】
これにより、冷却管ユニットUの単体だけをカードリッジ式に交換できるので、予期せぬ破損や、性能低下にも対応することができる。また、使用者が冷却配管1に付着する微量な残留物を嫌う場合においても、専用の冷却管ユニットUを準備して交換するだけでよいため、利便性が高い。
【0019】
<冷却配管>
冷却配管1は、被冷却物を通過させるための配管である。冷却配管1は、入口側接液部3から仕切板13,12,11を挿通して遊動ヘッド4に亘って筒胴体2の径方向に適宜な間隔で平行に配置された複数(例えば、22本)の配管から成る(
図7~
図9参照)。
冷却配管1は、流入口5b側が入口側接液部3にチューブエキスパンダによる拡管接合などによって接合され、流出口6b側が遊動ヘッド4にチューブエキスパンダによる拡管接合などによって接合されている。冷却配管1は、ステンレス鋼等の熱伝導率の高い素材によって形成されている。冷却配管1の直径は、φ4.0mm~φ6.0mmであり、好ましくは、φ4.2mm~φ5.2mmから成る。冷却配管1の長さは、例えば、700mm程度である。
【0020】
このため、冷却配管1は、比較的内径の細いものから形成されているので、通常の配管よりも、配管の中心を通過する被冷却物まで冷却することできるようになっている。また、冷却配管1は、多数の配管で構成していることで、冷却配管1全体の表面積を大きくしているため、冷却能力の高いものになっている。
【0021】
このように、冷却配管1は、当該冷却配管1を通過する被冷却物の量を少量に規制するために比較的内径の細いステンレス鋼で形成した配管を多数備えて構成されているので、熱伝導率がよく、被冷却物を冷却する冷却能力の高いものになっている。さらに、熱交換機の冷却能力能力の向上させる場合は、筒胴体2の胴回りを大きくし冷却配管1の本数を追加してもよい。
【0022】
<仕切板>
図2に示すように、仕切板11,12,13は、複数の冷却配管1を適宜な間隔で軸方向に平行に束ねるように支持する支持板の役目と、筒胴体2内を流れる冷却媒の流れを旋回方向に変えるための邪魔板の役目と、筒胴体2内を複数区画するための仕切部材の役目と、を果たす板部材である。仕切板11,12,13は、軸方向(冷却配管1に対して垂直な方向)に適宜な間隔で平行に配置された複数(例えば、3枚)のステンレス鋼等の金属製の円板から成る。
図7~
図9に示すように、それぞれの仕切板11,12,13には、冷却媒(冷却水)を流すための流通口11a,11b,11c,12a,12b,12c,13a,13b,13cと、冷却配管挿設孔11d,12d,13dと、連結部材挿設孔11e,12e,13eと、が形成されている。
なお、仕切板11,12,13の数および流通口11a~11c,12a~12c,13a~13cの数は、適宜変更しても構わない。
【0023】
仕切板11,12,13の外周部には、半円形の流通口11a,12a,13aと、流通口11a,12a,13aの外周方向の左右に適宜な間隔を介して隣設されて流通口11a,12a,13aよりも小さい流通口11b,11c,12b,12c,13b,13cと、が切欠形成されている。
【0024】
図7または
図8に示すように、仕切板12の流通口12aは、仕切板11の流通口11aに対して流入口5b(
図1参照)側から見て時計回り方向に角度θ2(例えば、120°)ずらして配置されている。
図8または
図9に示すように、仕切板13の流通口13aは、仕切板12の流通口12aに対して流入口5b(
図1参照)側から見て時計回り方向に角度θ1(例えば、120°)ずらして配置されている。
図7または
図9に示すように、仕切板11の流通口11aは、仕切板13の流通口13aに対して流入口5b(
図1参照)側から見て反時計回り方向に角度θ3(例えば、120°)ずらして配置されている。
【0025】
このように、仕切板11,12,13は、流通口11a~11c,12a~12c,13a~13cの位置を流入口5b(
図1参照)側から見て時計回り方向にずらして配置されていることで、筒胴体2(
図1参照)内を流れる冷却媒が乱流状態で冷却媒入口21a側から冷却媒出口21b側に向かって流れるように指向している。
【0026】
図2、
図7~
図9に示すように、冷却配管挿設孔11d,12d,13dは、複数の冷却配管1をそれぞれ支持する貫通孔である。冷却配管挿設孔11d,12d,13dは、仕切板11,12,13に、上下左右方向に適宜な間隔を介して穿孔されている。
【0027】
図2に示すように、連結部材挿設孔11e,12e,13eは、入口側接液部3から軸線に沿って遊動ヘッド4方向に延設された三本の連結部材14を仕切板11,12,13にそれぞれ挿設するための貫通孔である。
図7~
図9に示すように、三つの連結部材挿設孔11e,12e,13eは、仕切板11,12,13の外周部寄りの位置に、周方向に120度の間隔で配置されている。
【0028】
<連結部材>
図2に示すように、連結部材14は、仕切板11,12,13を軸方向に適宜な間隔で保持するための部材である。連結部材14は、基端側(流出口6b側)が入口側接液部3の連結部材設置穴3fに間隔され、先端側(流出口6b側)が前記した三つの連結部材挿設孔11e,12e,13eにそれぞれ挿設されて、軸方向に延設された三つのステンレス鋼等の金属製の円柱状の部材から成る。
【0029】
<筒胴体>
図1に示すように、筒胴体2は、冷却媒を流すための冷却媒流路Aを形成する部材である。筒胴体2は、冷却管ユニットU(冷却配管1)の径方向外側を覆うためのステンレス鋼等の金属製の筒状部材から成る。つまり、筒胴体2内には、仕切板11,12,13と、仕切板11,12,13と入口側接液部3とを連結する連結部材14と、が配設されている。筒胴体2は、筒体21と、筒体21の流入口5b側の端部に接合されたフランジ部材22と、筒体21の流出口6b側の端部に接合されたフランジ部材23と、を一体に連結して成る。
【0030】
筒体21には、流入口5b側寄りの位置に冷却媒出口21bが設けられ、流出口6b側寄りの位置に冷却媒入口21aが設けられている。
フランジ部材22は、筒胴体2と入口側接液部3とを連結するための第1固定部材B1を設置するための部材である。フランジ部材23は、筒胴体2と遊動ヘッド4とを連結するための第2固定部材B2を設置するための部材である。フランジ部材22,23は、厚板材の環状部材から成る。フランジ部材22,23には、第1固定部材B1または第2固定部材B2が螺着される雌ねじ部22a,23aが形成されている。
【0031】
<入口側接液部>
図2に示すように、入口側接液部3は、複数の冷却配管1の入口側と、連結部材14の入口側と、を保持する部材である。入口側接液部3は、ステンレス鋼等の金属製の略円筒状のヘルール配管(「サニタリー配管」ともいう)から成る。入口側接液部3の入口側には、入口側開封蓋5およびクランプバンド9Aが設けられている。入口側接液部3の出口側には、連結部材14および筒胴体2が設けられている。入口側接液部3は、入口側接液部本体3aと、入口側フランジ部3bと、出口側フランジ部3cと、配管挿設部3dと、固定部材設置孔3eと、連結部材設置穴3fと、を有している。
【0032】
入口側接液部本体3aは、円筒状に形成されている。入口側接液部本体3aの入口側の外周部には、入口側フランジ部3bが形成されている。入口側接液部本体3aの出口側の外周部には、出口側フランジ部3cが形成されている。
図1に示すように、入口側フランジ部3bには、入口側開封蓋5の拡径部5dの外周部が、クランプバンド9Aによって連結されている。
出口側フランジ部3cには、複数の第1固定部材B1が挿設される複数の固定部材設置孔3eが形成されている。
【0033】
図2に示すように、配管挿設部3dは、入口側接液部本体3aの入口側端部に形成された小径部である。配管挿設部3dには、仕切板11,12,13によって径方向に適宜な間隔で束ねるように支持された冷却配管1の入口側端部が嵌着されている。配管挿設部3dの開口端と、複数の冷却配管1の開口端は、面一の状態に配置されている。
【0034】
連結部材設置穴3fは、連結部材14の入口側端部が挿着される穴である。連結部材設置穴3fは、入口側接液部本体3aの出口側端面に周方向に適宜な間隔で形成された三つの穴から成る。
【0035】
<遊動ヘッド>
遊動ヘッド4は、複数の冷却配管1の出口側を保持する部材である。遊動ヘッド4は、ステンレス鋼等の金属製の略円筒状のヘルール配管から成る。
図1に示すように、遊動ヘッド4の出口側には、出口側開封蓋6がクランプバンド9Bによって連結されている。遊動ヘッド4の外周部には、緩衝部材C1,C2を介在して遊動ヘッド4を移動(摺動)可能に支持する出口フランジ7が配置されている。
図2に示すように、遊動ヘッド4は、入口側緩衝部材設置溝4aと、出口側緩衝部材設置溝4bと、小径部4cと、フランジ部4dと、内壁4eと、配管挿設部4fと、緩衝機能部4gと、を有している。
【0036】
図5に示すように、入口側緩衝部材設置溝4aは、例えば、Oリングから成る緩衝部材C1を係合させるための環状溝である。入口側緩衝部材設置溝4aは、遊動ヘッド4の外周面に形成された緩衝機能部4gの入口側寄りに縦断面視して円弧状に膨らんだ部位の中央部に形成されている。このため、遊動ヘッド4の外周面において、入口側緩衝部材設置溝4aの開口縁のみが、出口フランジ7の内周面に摺接して配置されている。入口側緩衝部材設置溝4aに係合された緩衝部材C1は、外周部が僅かに入口側緩衝部材設置溝4aから出た状態に係合されている。
【0037】
出口側緩衝部材設置溝4bは、例えば、Oリングから成る緩衝部材C2を係合させるための環状溝である。出口側緩衝部材設置溝4bは、緩衝機能部4gの出口側寄りの縦断面視して円弧状に膨らんだ外径D1(
図2参照)の部位から縮径した外径D2(
図2参照)の小径部位に形成されている。このため、遊動ヘッド4の外周面において、出口側緩衝部材設置溝4bの開口縁は、出口フランジ7の内周面から離間して非接触状態に配置されている。出口側緩衝部材設置溝4bに係合された緩衝部材C2は、縦断面視して外周部が入口側緩衝部材設置溝4aから半分出た状態に係合されている。
【0038】
緩衝部材C1,C2は、遊動ヘッド4の外周部に外嵌される出口フランジ7の内壁面に当接して配置されることで、出口フランジ7に対して遊動ヘッド4を摺動可能に配置するための機能を備えた部材である。緩衝部材C1,C2は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)、ニトリルゴム、フッ素ゴム等によって形成されたOリング等のシール部材から成る。入口側の緩衝部材C1は、スラスト方向の熱伸縮を許容するシール機能も果たす。流出口6b側(出口側)寄りの位置に配置された緩衝部材C2は、緩衝機能を有する部材から成る。緩衝部材C2は、シール性を要求していないため、意図的にOリング溝を深くし、Oリングを浮かせることで、部品挿入時の抵抗を減少させることを可能にしている。
なお、冷却配管1のうち数本が配管詰まりを起こした場合などは、配管毎に熱膨張に偏りが生じ、遊動ヘッド4が角度をもって出口側方向に伸びてしまうことが想定される。
出口側緩衝部材設置溝4bに係合された緩衝部材C2は、角度をもった伸びに対して、出口フランジ7と遊動ヘッド4との金属接触を防ぐ役割を担っている。
【0039】
緩衝機能部4gは、縦断面視して円弧状に膨らんだ丸みがかった形状の入口側緩衝部材設置溝4aの開口端部と、入口側緩衝部材設置溝4aおよび出口側緩衝部材設置溝4bに挿設される緩衝部材C1,C2と、で出口フランジ7の内壁を摺動可能に弾性支持する部位である。このため、緩衝機能部4gは、出口フランジ7と遊動ヘッド4との間にかかった負荷を緩衝部材C1,C2で緩和させる機能と、遊動ヘッド4をスラスト方向(軸方向)に摺動可能に支持するシールの機能と、を果たす。
【0040】
小径部4cは、出口側緩衝部材設置溝4bとフランジ部4dとの間に形成された環状溝形状の小径部位である。
フランジ部4dは、出口側開封蓋6の拡径部6dの入口側端面にシール部材S4を介在させて合致させ、フランジ部4dと拡径部6dとをクランプバンド9Bで連結するための部位である。
【0041】
図5に示すように、内壁4eは、筒胴体2の冷却媒流路Aに連通する中空部位である。内壁4eの内径は、配管挿設部4fの内径よりも大きく形成されて、径方向に適宜な間隔で束ねた状態の複数の冷却配管1から離間した位置に形成されている。
【0042】
配管挿設部4fは、径方向に適宜な間隔を介して束ねた状態の複数の冷却配管1の出口側端部を内嵌させて保持する部位である。配管挿設部4fの出口側開口端には、冷却管ユニットU内に収容された複数の冷却配管1の出口側開口端が揃えるようにして内嵌されている。
【0043】
<入口側開封蓋>
入口側開封蓋5(開封蓋)は、冷却管ユニットUの入口側に配置されて、入口側接液部3の入口側フランジ部3bに取り付けられるヘルール配管から成る。入口側開封蓋5は、円筒状の入口側開封蓋本体5aと、冷却配管1内を流れる被冷却物が流入する流入口5bと、配管等に接続される流入口フランジ部5cと、クランプバンド9A(ヘルールクランプ)によって入口側接液部3の入口側フランジ部3bに連結される拡径部5dと、を有している。
【0044】
<出口側開封蓋>
図1または
図5に示すように、入口側開封蓋5および出口側開封蓋6は、サニタリー式の開封蓋を構成する部材である。出口側開封蓋6は、冷却管ユニットUの出口側に配置されて、遊動ヘッド4のフランジ部4dに取り付けられるヘルール配管から成る。出口側開封蓋6は、円筒状の出口側開封蓋本体6aと、冷却配管1内を通過した被冷却物が排出される流出口6bと、配管等に接続される流出口フランジ部6cと、クランプバンド9B(ヘルールクランプ)によって遊動ヘッド4のフランジ部4dに連結される拡径部6dと、を有している。
【0045】
<出口フランジ>
図5に示すように、出口フランジ7は、遊動ヘッド4の緩衝機能部4gと、緩衝機能を有する緩衝部材C1,C2と、を軸方向に摺動可能に内嵌した固定フランジ部材である。出口フランジ7は、遊動ヘッド4を摺動可能に内嵌した円筒部7aと、筒胴体2のフランジ部材23に第2固定部材B2で固定されるフランジ部7bと、第2固定部材B2を挿設するための固定部材挿通孔7cと、をステンレス鋼等の金属で一体形成して成る。
【0046】
このため、遊動ヘッド4は、出口フランジ7に対して軸方向に摺動が可能であり、冷却配管1が熱膨張した際は、冷却配管1に付随して摺動するため、熱の影響による冷却配管1、遊動ヘッド4、および、その接続箇所の破壊を防ぐ機能を有している。遊動ヘッド4が摺動した際、冷却媒流路A内の冷却媒(冷却水)は、出口フランジ7の内壁に圧接している緩衝部材C1,C2のシール機能によって止められる。
【0047】
<第1固定部材および第2固定部材>
第1固定部材B1は、入口側接液部3と筒胴体2とを固定するための部材である。第2固定部材B2は、出口フランジ7と筒胴体2とを固定するための部材である。第1固定部材B1および第2固定部材B2は、例えば、ボルトから成る。
【0048】
≪作用≫
次に、
図1~
図9を参照しながら本発明の実施形態に係る多管式熱交換器100および湿式微粒化装置200の作用を説明する。
【0049】
<熱交換工程>
図1に示す冷却配管1を通過させる被冷却物を筒胴体2を流れる冷却媒と熱交換する場合は、まず、入口側開封蓋5の流入口5bから冷却配管1内に被冷却物(高粘度原料)が供給されて、出口側開封蓋6の流出口6bから排出される。
【0050】
被冷却物と熱交換される冷却媒(冷却液)は、筒胴体2の冷却媒入口21aから筒体21内に供給され、筒胴体2内の冷却媒流路Aを流れて、冷却配管1内を流れる被冷却物と熱交換して冷却されながら、冷却媒出口21bから排出される。つまり、冷却媒は、冷却配管1内を流れる被冷却物とは逆方向に向かって流れる。
【0051】
冷却媒は、冷却媒入口21aから冷却媒出口21bまでの冷却媒流路Aを流れる際に、
図7~
図9に示す筒胴体2内に複数の仕切板11~13の流通口11a~11c,12a~12c,13a~13cを通って冷却媒出口21bに流れる。冷却媒は、流通口11a~11c,12a~12c,13a~13cが仕切板11~13の外周部に形成されて、軸線上に設けられていないため、筒胴体2内を乱流となって流れる。
【0052】
また、仕切板11~13の流通口11a~11c,12a~12c,13a~13cは、軸方向(流入口5b、冷却媒出口21b側)から見て、それぞれ時計回り方向に120度ずらして配置されている。このため、冷却媒は、冷却媒入口21a(
図1参照)側から反時計回り方向に旋回するように冷却媒流路A内を冷却媒出口21b側に流れる。
また、冷却媒は、冷却配管1が仕切板11~13の冷却配管挿設孔11d,12d,13dに隙間を介して支持されているので、その隙間を通って冷却媒流路Aを冷却媒入口21a側から冷却媒出口21b側に流れる。
このため、仕切板11~13は、熱交換を促進させることができる。
【0053】
<分解工程>
多管式熱交換器100を分解する場合は、まず、
図1に示す締結具UBを外し、多管式熱交換器100を基台8から取り外す。次に、入口側のクランプバンド9Aを外し、入口側開封蓋5を入口側接液部3から取り外す。続いて、出口側のクランプバンド9Bを外し、出口側開封蓋6を遊動ヘッド4から取り外す。
【0054】
次に、第1固定部材B1を外し、入口側接液部3を筒胴体2のフランジ部材22から取外す。続いて、第2固定部材B2を外し、出口フランジ7を筒胴体2のフランジ部材23から取外す。そして、入口側接液部3を引っ張って冷却管ユニットUを筒胴体2内から引き抜く。このように、冷却管ユニットUは、筒胴体2に対して自由に挿脱可能になっているので、分解作業および組立作業が容易である。
【0055】
<洗浄工程>
多管式熱交換器100を簡易的に洗浄をする場合は、まず、クランプバンド9A,9Bを外し、入口側開封蓋5および出口側開封蓋6を多管式熱交換器100から取り外す。この後、入口側接液部3から冷却配管1内に水を流して洗浄する。あるいは、極細のブラシを冷却配管1内に挿入して冷却配管1を洗浄する。冷却配管1内に原料が詰まった場合は、極細のブラシを突っ込んで詰まりを解消させる。
【0056】
多管式熱交換器100を全体的に洗浄をする場合は、分解および洗浄する際に、第1固定部材B1(必要に応じて第2固定部材B2も取り外す)を取り外し、冷却管ユニットUを入口側接液部3方向に引っ張って取り出す。このように、冷却管ユニットUには、仕切板11,12,13が入口側接液部3から軸方向に配設された三本の連結部材14に固定されて、筒胴体2に固定されていないので、筒胴体2内から引き抜くことが可能になっている。このため、多管式熱交換器100は、容易に分解したり、洗浄したりすることが可能である。
【0057】
冷却配管1、入口側接液部3、遊動ヘッド4、入口側開封蓋5、出口側開封蓋6等がステンレス鋼(例えば、SUS304)で形成されている。また、シール部材S1,S2,S3,S4および緩衝部材C1,C2は、繰り返して使用できるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成されているので、ランニングコストを低減させることができる。このため、多管式熱交換器100は、被冷却物に接する全ての部材がステンレス鋼またはポリテトラフルオロエチレンで形成されているので、有機溶媒耐性に優れている。
【0058】
また、多管式熱交換器100は、入口側接液部3と入口側開封蓋5、および、遊動ヘッド4と出口側開封蓋6と、をサニタリー仕様にしてクランプバンド9A,9Bで着脱できるようにしたので、分解作業、洗浄作業および組立作業を容易にすることができる。
【0059】
また、多管式熱交換器100は、高粘性の被冷却物を均一に熱交換して冷却するために、被冷却物が通過する冷却配管1の内径を意図的に小さくしたことで、各冷却配管1を流れる被冷却物の量を減らして、冷え易い環境を作って、熱伝導率および熱交換の効率を向上させた。
【0060】
また、多管式熱交換器100は、その小径の冷却配管1を多数備えていることで、器内の圧力が増加するのを抑制している。このため、多管式熱交換器100は、設計圧力が1.OMPaで高粘度原料の冷却に適している。
【0061】
このように、本発明に係る多管式熱交換器100は、
図1に示すように、被冷却物を通過させるための複数の冷却配管1と、複数の冷却配管1の径方向外側を覆い、冷却媒を流すための筒胴体2と、複数の冷却配管1の一端側に設けられた入口側接液部3と、複数の冷却配管1の他端側に設けられた遊動ヘッド4と、を備え、入口側接液部3および遊動ヘッド4は、開口端に開封蓋(入口側開封蓋5、出口側開封蓋6)をそれぞれ有し、遊動ヘッド4の外周部には、当該遊動ヘッド4を移動可能に支持する出口フランジ7を有していることを特徴とする。
【0062】
かかる構成によれば、本発明の多管式熱交換器100は、被冷却物を通過させるための多数の冷却配管1を、冷却媒を流すための筒胴体2内に配置していることで、熱交換能力を高くすることができる。冷却配管1の他端側に設けられた遊動ヘッド4は、遊動ヘッド4を移動可能に支持する出口フランジ7を有していることで、出口フランジ7を容易に取り外して分解し、入口側接液部3、冷却配管1及び遊動ヘッド4を洗浄することができる。このため、多管式熱交換器100は、分解作業および洗浄作業を行い易くすることができる。
【0063】
また、
図1に示すように、多管式熱交換器100は、入口側接液部3と筒胴体2とを固定するための第1固定部材B1と、出口フランジ7と筒胴体2とを固定するための第2固定部材B2と、を備えていることが好ましい。
【0064】
かかる構成によれば、入口側接液部3と筒胴体2とは、第1固定部材B1によって固定して取り付けたり、取り外して分解したりすることができる。出口フランジ7と筒胴体2とは、第2固定部材B2によって固定して取り付けたり、取り外して分解したりすることができる。
【0065】
また、
図1に示すように、遊動ヘッド4の外周面には、緩衝機能を有する緩衝部材C1,C2を備えていることが好ましい。
【0066】
かかる構成によれば、多管式熱交換器100は、遊動ヘッド4の外周面に緩衝部材C1,C2を備えていることで、出口フランジ7内に移動可能に配置された遊動ヘッド4と、出口フランジ7との間にかかった負荷を緩衝することができる。
【0067】
また、
図2に示すように、複数の冷却配管1と、入口側接液部3と、遊動ヘッド4とは、一体化させて冷却管ユニットUを構成していることが好ましい。
【0068】
かかる構成によれば、冷却管ユニットUは、複数の冷却配管1と、入口側接液部3と、遊動ヘッド4と、を一体化させているので、筒胴体2に容易に着脱できるため、分解作業および洗浄作業を容易にすることができる。
【0069】
また、
図2、
図7~
図9に示すように、筒胴体2内には、複数の冷却配管1を支持し、冷却媒を流すための流通口11a~11c,12a~12c,13a~13cを有する仕切板11,12,13を備えていることが好ましい。
【0070】
かかる構成によれば、仕切板11~13は、筒胴体2内に配置された複数の冷却配管1を径方向に適宜な間隔を介して配置されるように支持することができる。仕切板11,12,13は、筒胴体2内に設けることで、筒胴体2内を複数に区画するように仕切って、冷却媒が流通口11a~11c,12a~12c,13a~13cを流れるように規制することができる。
【0071】
また、仕切板11~13は、筒胴体2内に軸方向に適宜な間隔で配置されて筒胴体2内を区画する複数の部材から成り、それぞれの仕切板11~13に形成された流通口11a~11c,12a~12c,13a~13cが、仕切板11~13の外周方向にずらした位置に配置されていることが好ましい。
【0072】
かかる構成によれば、各仕切板11~13の流通口11a~11c,12a~12c,13a~13cは、仕切板11~13の外周方向にずれて配置されていることで、冷却媒が筒胴体2内を入口側から出口側へ乱流状態で流れるようにすることができる。このため、冷却媒は、筒胴体2内の冷却配管1に触れる時間が長くなるように流れるので、効率よく冷却配管1内の被冷却物を冷却することができるため、冷却能力を向上させることができる。
【0073】
また、本発明は、多管式熱交換器100を備えた湿式微粒化装置200であって、多管式熱交換器100は、複数の冷却配管1と、入口側接液部3と、遊動ヘッド4とを一体化させた冷却管ユニットUを有していることを特徴とする。
【0074】
かかる構成によれば、本発明の湿式微粒化装置200は、複数の冷却配管1と、入口側接液部3と、遊動ヘッド4とを一体化させた冷却管ユニットUを有することで、筒胴体2に容易に着脱できるため、分解作業および洗浄作業を容易にすることができる。
【0075】
≪変形例≫
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造および変更が可能であり、本発明はこれら改造および変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0076】
前記実施形態では、多管式熱交換器100の一例として、被冷却物を冷却媒で冷却する場合を説明したが、多管式熱交換器100は、冷却媒を加熱媒体として使用することで、被加熱物を加熱するのに使用したり、被加熱物を加熱して殺菌するのに使用したりしてもよい。つまり、多管式熱交換器100は、冷却配管1を被加熱物を通過させるための配管として使用し、筒胴体2を加熱媒体を流すための配管として使用してもよい。
【0077】
また、前記実施形態では、本発明の多管式熱交換器100の一例として、湿式微粒化装置200に使用される場合を例に挙げて説明したが、多管式熱交換器100は、湿式微粒化装置200に使用されることには限定されず、その他の装置に適宜使用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 冷却配管
2 筒胴体
3 入口側接液部
4 遊動ヘッド
5 入口側開封蓋(開封蓋)
6 出口側開封蓋(開封蓋)
7 出口フランジ
11a,11b,11c,12a,12b,12c,13a,13b,13c 流通口
11,12,13 仕切板
100 多管式熱交換器
200 湿式微粒化装置
B1 第1固定部材
B2 第2固定部材
C1,C2 緩衝部材
U 冷却管ユニット