(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081096
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】地盤試料の探査装置及び探査方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/04 20060101AFI20220524BHJP
G01N 23/02 20060101ALI20220524BHJP
E21B 10/02 20060101ALI20220524BHJP
E21B 49/02 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
E02D1/04
G01N23/02
E21B10/02
E21B49/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192423
(22)【出願日】2020-11-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開の事実1:2020年7月1日に第55回地盤工学研究発表会講演概要集のウェブサイト(https://confit.atlas.jp/guide/event/jgs55/proceedings/list)に掲載 公開の事実2:2020年7月22日に第55回地盤工学研究発表会(オンライン開催(https://www.jiban.or.jp/?page_id=13243))で発表
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】506332605
【氏名又は名称】基礎地盤コンサルタンツ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511006476
【氏名又は名称】つくばテクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】近藤 明彦
(72)【発明者】
【氏名】松村 聡
(72)【発明者】
【氏名】水谷 崇亮
(72)【発明者】
【氏名】小濱 英司
(72)【発明者】
【氏名】森川 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭太
(72)【発明者】
【氏名】武政 学
(72)【発明者】
【氏名】小林 陵平
(72)【発明者】
【氏名】王 波
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 典生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 修一
(72)【発明者】
【氏名】劉 小軍
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰三
【テーマコード(参考)】
2D043
2D129
2G001
【Fターム(参考)】
2D043AB01
2D043BA07
2D043BA10
2D043BB09
2D129GA13
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001LA03
2G001SA29
(57)【要約】
【課題】コアの乱れを抑えることができる地盤試料の探査装置及び探査方法を提供する。
【解決手段】地盤試料の探査装置1Aは、コアチューブ200を地盤Gに貫入させるための貫入装置20と、地盤の、貫入されたコアチューブの周囲を環状に、コアチューブの貫入方向に掘進して地盤の探査用環状孔Hを掘削する掘削装置30と、掘削された探査用環状孔の内部に配置されて、コアチューブの内部の地盤試料を探査可能な探査ユニット40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアチューブを地盤に貫入させるための貫入装置と、
前記地盤の、貫入された前記コアチューブの周囲を環状に、前記コアチューブの貫入方向に掘進して前記地盤の探査用環状孔を掘削する掘削装置と、
掘削された前記探査用環状孔の内部に配置されて、前記コアチューブの内部の地盤試料を探査可能な探査ユニットと、を備える
地盤試料の探査装置。
【請求項2】
前記コアチューブは、軸心方向の少なくとも一部に前記探査ユニットで探査可能な素材で形成された探査可能領域があり、
前記探査ユニットは、前記地盤に貫入された前記コアチューブの前記探査可能領域に位置するように前記探査用環状孔に配置され、前記コアチューブの外部から前記地盤試料を探査する
請求項1に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項3】
前記探査ユニットは、
前記地盤試料に探査波を放出する放出部と、
前記地盤試料により変化した前記探査波を検出する検出器と、を有する
請求項1又は2に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記放出部によって放出された前記探査波のうち、前記地盤試料を透過した探査波を検出する
請求項3に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項5】
前記探査ユニットは、前記地盤に貫入された前記コアチューブを挟むように前記放出部及び前記検出器を配置し、前記コアチューブの軸心方向と一致する回転軸に対して回転させながら前記地盤試料を探査する
請求項3又は4に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項6】
前記探査波は電磁波である
請求項3~5のいずれか一項に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項7】
前記掘削装置は、掘削によって発生した土砂を外部に排出する排土機構を含む
請求項1~6のいずれか一項に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項8】
前記排土機構は、前記掘削装置の駆動と連動して動作する
請求項7に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項9】
前記排土機構は、前記貫入方向と一致する軸に取り付けられ、前記軸に対して回転するスクリュー状のコンベアを有し、
前記軸は、前記掘削装置を駆動する動力源によって回転する
請求項8に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項10】
前記掘削装置は、端部に掘削部を有し、前記貫入方向と一致する回転軸に対して前記掘削部を回転させつつ前記貫入方向に掘進させる
請求項1~9のいずれか一項に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項11】
前記掘削部は、略中心に前記コアチューブの透孔が形成され、外面にビットが前記透孔の周囲に配置された掘削面を有する
請求項10に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項12】
前記掘削部の前記回転軸を構成し、前記コアチューブが内部を通過可能に形成され、前記掘削部に接続されて前記掘削部とともに回転可能な第1の管をさらに備える
請求項10又は11に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項13】
前記第1の管と軸心方向を一致させて前記第1の管を覆い、内面と前記第1の管との間で前記探査ユニットを格納可能な中空空間を形成する第2の管をさらに備える
請求項12に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項14】
前記第2の管を前記第1の管に対して、前記第1の管の回転を伝達せず推進力を伝達するように接合する接合部材をさらに備える
請求項13に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項15】
前記第1の管と前記コアチューブとは、それぞれ、軸心方向の少なくとも一部に前記探査ユニットで探査可能な素材で形成された探査可能領域があり、
前記探査ユニットは、前記第1の管の前記探査可能領域を探査可能な位置に前記内空空間内で前記第1の管に固定され、
前記第1の管の前記探査可能領域が前記コアチューブの前記探査可能領域に重なるまで前記掘削装置が前記探査用環状孔を掘削して、前記掘削装置が停止した後に、前記探査ユニットが前記地盤試料を探査する
請求項13又は14に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項16】
前記貫入装置、前記掘削装置、及び、前記探査ユニットの駆動を制御する制御装置をさらに備える
請求項1~15のいずれか一項に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項17】
前記制御装置は、前記貫入装置における前記コアチューブの前記地盤への貫入の後に、前記掘削装置を駆動させて前記探査用環状孔を形成させ、前記貫入装置及び前記掘削装置の停止の後に、前記探査ユニットでの前記地盤試料の探査を行わせる
請求項16に記載の地盤試料の探査装置。
【請求項18】
地盤にコアチューブを貫入し、
前記地盤の、貫入された前記コアチューブの周囲を掘削して前記地盤の探査用環状孔を形成し、
形成された前記探査用環状孔に探査ユニットを挿入して前記コアチューブの内部の地盤試料を探査することで探査データを得る、ことを含む
地盤試料の探査方法。
【請求項19】
前記コアチューブは、軸心方向の少なくとも一部に前記探査ユニットで探査可能な素材で形成された探査可能領域があり、
前記探査用環状孔が少なくとも前記探査可能領域に前記探査ユニットを挿入可能な深度となるまで掘削し、前記掘削を停止してから前記探査ユニットで前記地盤試料を探査する、ことを繰り返すことを含む
請求項18に記載の地盤試料の探査方法。
【請求項20】
前記探査ユニットで前記地盤試料を探査することは、前記コアチューブの外部から前記探査可能領域を透過して探査することを含む
請求項19に記載の地盤試料の探査方法。
【請求項21】
掘削された前記探査用環状孔から掘削装置を取り出すことをさらに含み、
前記探査用環状孔に前記探査ユニットを挿入することは、前記掘削装置が取り出された後の前記探査用環状孔に前記探査ユニットを投下することを含む
請求項19又は20に記載の地盤試料の探査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地盤試料の探査装置及び探査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の物理パラメータや力学パラメータを得るために、地盤から試料(コア)を採取し、試験に用いることが一般的に行われていた。コアを得るためには、地盤にサンプラーを回転圧入し、サンプラー内の土試料をサンプラーごと地表まで引き抜いてサンプラー内からコアを取り出す。高精度に物理パラメータや力学パラメータを得るためには、乱れの少ないコアの採取が求められていた。
【0003】
しかしながら、原位置からサンプラーによるコア引き抜きやコアの運搬などによって、コアに乱れが生じる場合もある。先行する特開2018-189378号公報(以下、特許文献1)は、この点を考慮した地盤試料の探査方法を開示している。すなわち、特許文献1の探査方法は、地盤に地盤試料を残留させることができる形状のサンプラーを地盤に貫入するサンプラー貫入工程と、サンプラーの貫入によって形成した地盤試料を、サンプラー又はサンプラーの上方のいずれかに設けられた探査装置を用いて土中又は地表付近でX線探査し、長尺の地盤試料の探査データを取得する探査工程とで構成されている。
【0004】
特許文献1の探査方法におけるサンプラー貫入工程では、略中央部に透孔を有したビットが先端に取り付けられたサンプラーによって地盤にボアホールを形成する。このビットが用いられることにより、ビットにより削られなかった地盤が透孔を通過し地盤試料(コア)として残留するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、一般的に、地盤を掘削すると掘削方向に応力の乱れが生じるものである。特に、特許文献1の方法で用いられるサンプラーは、コアを残留させつつコア周辺に探査装置を配置する空間を形成するものであるため、探査装置を配置するための空間を掘削する際に、探査前のコアが位置する地盤に応力の乱れが作用する場合がある。その場合、コアには乱れが含まれる場合もある。そこで、コアの乱れを抑えることができる地盤試料の探査装置及び探査方法を提供する。
【0007】
ある実施の形態に従うと、地盤試料の探査装置は、コアチューブを地盤に貫入させるための貫入装置と、地盤の、貫入されたコアチューブの周囲を環状に、コアチューブの貫入方向に掘進して地盤の探査用環状孔を掘削する掘削装置と、掘削された探査用環状孔の内部に配置されて、コアチューブの内部の地盤試料を探査可能な探査ユニットと、を備える。
【0008】
他の実施の形態に従うと、地盤試料の探査方法は、地盤にコアチューブを貫入し、地盤の、貫入されたコアチューブの周囲を掘削して地盤の探査用環状孔を形成し、形成された探査用環状孔に探査ユニットを挿入してコアチューブの内部の地盤試料を探査することで探査データを得る、ことを含む。
【0009】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態に係る探査装置の概略図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る探査装置での地盤試料の探査方法を説明する図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態に係る探査装置での地盤試料の探査方法を説明する図である。
【
図4】
図4は、第2の実施の形態に係る探査装置の概略図である。
【
図5】
図5は、第3の実施の形態に係る探査装置の概略図である。
【
図6】
図6は、第3の実施の形態に係る探査装置での地盤試料の探査方法を説明する図である。
【
図7】
図7は、第3の実施の形態に係る探査装置での地盤試料の探査方法を説明する図である。
【
図8】
図8は、第3の実施の形態に係る探査装置での地盤試料の探査方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1.地盤試料の探査装置及び探査方法の概要>
【0012】
(1)実施の形態に係る地盤試料の探査装置は、コアチューブを地盤に貫入させるための貫入装置と、地盤の、貫入されたコアチューブの周囲を環状に、コアチューブの貫入方向に掘進して地盤の探査用環状孔を掘削する掘削装置と、掘削された探査用環状孔の内部に配置されて、コアチューブの内部の地盤試料を探査可能な探査ユニットと、を備える。
【0013】
貫入装置は、一例として、コアチューブに回転力と推進力とを与えることによって、コアチューブを地盤に回転圧入する。掘削装置は、一例として、先端に掘削面を有し、掘削面に回転力及び推進力を与えるように駆動することで掘進するものである。
【0014】
探査ユニットは、例えばX線などの探査波を被検体に対して放出し、被検体に放出することで変化した探査波を検出することによって被検体を探査するものである。
【0015】
この探査装置では、貫入装置によってコアチューブの地盤への貫入が開始された後に、掘削装置によって探査用環状孔が掘削される。貫入と掘削とは少なくとも一部が重複して行われてもよい。さらに、掘削が開始された後に探査用環状孔の内部から探査ユニットによって探査される。掘削と探査も、少なくとも一部が重複して行われてもよい。すなわち、掘削装置による探査用環状孔に先立ってコアチューブの貫入が開始される。そのため、コアチューブ内の地盤の試料への、掘進方向の先端付近の地盤の応力の乱れの影響を排することができる。そのため、探査用環状孔の掘削による応力の乱れのない地盤試料の探査データを得ることができる。
【0016】
(2)好ましくは、コアチューブは、軸心方向の少なくとも一部に探査ユニットで探査可能な素材で形成された探査可能領域があり、探査ユニットは、地盤に貫入されたコアチューブの探査可能領域に位置するように探査用環状孔に配置され、コアチューブの外部から地盤試料を探査する。これにより、コアチューブの外側からコアチューブの探査可能領域を介してコアチューブ内の地盤試料を探査することができる。そのため、コアチューブから地盤試料を取り出すことなく探査データが得られる。これにより、コアチューブから地盤試料を取り出す際に生じる地盤試料の乱れが排されるとともに、地盤から地盤試料を取り出す作業や運搬、保管の手間が不要となる。
【0017】
(3)好ましくは、探査ユニットは、地盤試料に探査波を放出する放出部と、地盤試料により変化した探査波を検出する検出器と、を有する。探査波は、非破壊で内部を検査する際に用いられるものであって、例えば、電磁波や振動、などである。これにより、被検体を非破壊にて探査して内部構造を得ることができる。
【0018】
(4)好ましくは、検出器は、放出部によって放出された探査波のうち、地盤試料を透過した探査波を検出する。これにより、探査波の透過によって地盤試料の内部を探査できる。
【0019】
(5)好ましくは、探査ユニットは、地盤に貫入されたコアチューブを挟むように放出部及び検出器を配置し、コアチューブの軸心方向と一致する回転軸に対して回転させながら地盤試料を探査する。これにより、コアチューブ内の地盤試料を複数の方向から探査することができ、立体的な構造を再現するための探査データが得られる。
【0020】
(6)好ましくは、探査波は電磁波である。これにより、探査装置に電磁波を用いて被検体を探査する探査装置を用いることができる。
【0021】
(7)好ましくは、掘削装置は、掘削によって発生した土砂を外部に排出する排土機構を含む。これにより、掘削しながら掘削によって発生した土砂を外部に排出することができる。
【0022】
(8)好ましくは、排土機構は、掘削装置の駆動と連動して動作する。これにより、掘削と同時に掘削によって発生した土砂を外部に排出することができる。
【0023】
(9)好ましくは、排土機構は、貫入方向と一致する回転軸に対して回転するスクリュー状のコンベアを含む。これにより、回転させることで掘削によって発生した土砂を装置外部まで搬送し、排出することができる。
【0024】
(10)好ましくは、掘削装置は、端部に掘削部を有し、貫入方向と一致する回転軸に対して掘削部を回転させつつ貫入方向に掘進させる。これにより、貫入方向と一致する掘進方向に掘進して探査用環状孔を形成することができる。
【0025】
(11)好ましくは、掘削部は、略中心にコアチューブの透孔が形成され、外面にビットが透孔の周囲に配置された掘削面を有する。これにより、コアチューブの地盤への貫入を可能にしつつ、先端で掘削が可能になる。
【0026】
(12)好ましくは、探査装置は、掘削部の回転軸を構成し、コアチューブが内部を通過可能に形成され、掘削部に接続されて掘削部とともに回転可能な第1の管をさらに備える。これにより、コアチューブの地盤への貫入を可能にしつつ、掘削部を回転させて掘削が可能になる。
【0027】
(13)好ましくは、探査装置は、第1の管と軸心方向を一致させて第1の管を覆い、内面と第1の管との間で探査ユニットを格納可能な中空空間を形成する第2の管をさらに備える。探査ユニットが中空空間に格納されることによって、第1の管及び第2の管を掘削に伴って探査用環状孔に挿入することで、探査ユニットが探査用環状孔に挿入されるようになる。
【0028】
(14)好ましくは、探査装置は、第2の管を第1の管に対して、第1の管の回転を伝達せず推進力を伝達するように接合する接合部材をさらに備える。これにより、第2の管には第1の管の回転力が伝達されず、推進力が伝達される。そのため、第2の管は掘削時に回転せず、推進させることができる。
【0029】
(15)好ましくは、第1の管とコアチューブとは、それぞれ、軸心方向の少なくとも一部に探査ユニットで探査可能な素材で形成された探査可能領域があり、探査ユニットは、第1の管の探査可能領域を探査可能な位置に内空空間内で第1の管に固定され、第1の管の探査可能領域がコアチューブの探査可能領域に重なるまで掘削装置が探査用環状孔を掘削して、掘削装置が停止した後に、探査ユニットが地盤試料を探査する。これにより、コアチューブの外側からコアチューブの探査可能領域を介してコアチューブ内の地盤試料を探査することができる。そのため、コアチューブから地盤試料を取り出すことなく探査データが得られる。これにより、コアチューブから地盤試料を取り出す際に生じる地盤試料の乱れが排されるとともに、地盤から地盤試料を取り出す作業や運搬、保管の手間が不要となる。
【0030】
(16)好ましくは、探査装置は、貫入装置、掘削装置、及び、探査ユニットの駆動を制御する制御装置をさらに備える。これにより、探査装置での探査方法を自動化することができる。
【0031】
(17)好ましくは、制御装置は、貫入装置におけるコアチューブの地盤への貫入の後に、掘削装置を駆動させて探査用環状孔を形成させ、貫入装置及び掘削装置の停止の後に、探査ユニットで地盤試料の探査を行わせる。これにより、上記の探査方法を自動化することができる。
【0032】
(18)実施の形態に係る地盤試料の探査方法は、地盤にコアチューブを貫入し、地盤の、貫入されたコアチューブの周囲を掘削して探査用環状孔を形成し、形成された探査用環状孔に探査ユニットを挿入してコアチューブの内部の地盤試料を探査することで探査データを得る、ことを含む。この方法により、コアチューブ内の地盤の試料への、掘進方向の先端付近の地盤の応力の乱れの影響を排することができる。そのため、探査用環状孔の掘削による応力の乱れのない地盤試料の探査データを得ることができる。
【0033】
(19)好ましくは、コアチューブは、軸心方向の少なくとも一部に探査ユニットで探査可能な素材で形成された探査可能領域があり、
探査方法は、探査用環状孔が少なくとも探査可能領域に探査ユニットを挿入可能な深度となるまで掘削し、掘削を停止してから探査ユニットで地盤試料を探査する、ことを繰り返すことを含む。これにより、規定の深度までの地盤試料の任意の深度の探査データや、連続的な探査データを得ることができる。
【0034】
(20)好ましくは、探査ユニットで地盤試料を探査することは、コアチューブの外部から探査可能領域を透過して探査することを含む。これにより、コアチューブから地盤試料を取り出すことなく探査データが得られる。これにより、コアチューブから地盤試料を取り出す際に生じる地盤試料の乱れが排されるとともに、地盤から地盤試料を取り出す作業や運搬、保管の手間が不要となる。
【0035】
(21)好ましくは、探査方法は、掘削された探査用環状孔から掘削装置を取り出すことをさらに含み、探査用環状孔に探査ユニットを挿入することは、掘削装置が取り出された後の探査用環状孔に探査ユニットを投下することを含む。これにより、掘削装置とは独立した探査ユニットを用いて地盤試料の探査データを得ることができる。
【0036】
<2.地盤試料の探査装置及び探査方法の例>
【0037】
[第1の実施の形態]
【0038】
図1を参照して、第1の実施の形態に係る探査装置1Aは、内管(第1の管)21及び外管(第2の管)22と、内管21と外管22との間に形成される中空空間23と、を有する二重管構造体2を有する。
【0039】
内管21は両端211,212が開口し、内空をコアチューブ200が通過可能である。コアチューブ200の外径が60mm程度であるとき、内管21の内径は70mm程度である。これにより、内管21の内空をコアチューブ200が通過可能となる。
【0040】
外管22は内管21と軸心が一致しており、内周面と内管21の外周面とで中空空間23を形成するように内管21を覆っている。内管21の内径が70mm程度であるとき、外管22の内径は300mm~340mm程度である。これにより、中空空間23には後述する探査ユニット40が格納可能となる。
【0041】
内管21は、スチール鋼など、後述する掘削時の推力の伝達に耐え得る素材で形成されている。外管22もまた、スチール鋼など、掘削された後述する探査用環状孔Hの土圧などに耐え得る素材で形成されている。内管21の軸心方向Aの少なくとも一部は、周方向にわたって電磁波を透過する素材によって探査可能領域213が形成されている。電磁波がX線である場合、探査可能領域213の素材は原子量が低い元素を用いた素材であって、例えば、ポリエチレン樹脂やCFRP(カーボン/炭素繊維強化プラスチック)などである。なお、電磁波は、後述する、非破壊にてコアを探査するレーダから放出される探査波の一例である。
【0042】
また、探査装置1Aに用いられるコアチューブ200は、軸心方向Aの少なくとも一部が、周方向にわたって電磁波を透過する素材によって探査可能領域201が形成されている。少なくとも先端は、スチール鋼など、地盤Gへの貫入時の推力に耐え得る素材で形成されている。探査可能領域201は、例えば、ポリエチレン樹脂やCFRPなどで形成されている。
【0043】
二重管構造体2は、地盤試料の探査時に、地盤Gに対して
図1に示されたように載置される。すなわち、二重管構造体2は、内管21及び外管22の一方の端部を地盤Gに向けて地盤Gの表面に載荷される。このように載置された状態を、「探査時配置状態」とも称する。以降の説明での、二重管構造体2の上下は、探査時配置状態での上下と一致している。
【0044】
コアチューブ200は、内管21の上端211から挿入され、内管21の内空を軸心方向Aで下端212に向かって通過し、下端212から放出される。探査装置1Aは、さらに、内管21の下端212から放出されたコアチューブ200を地盤Gに貫入させるための貫入装置20を含む。
【0045】
貫入装置20は、コアチューブ200を地盤Gに貫入する、一般的な貫入装置であってよい。貫入は圧入であって、一例として回転圧入とする。この場合、貫入装置20は、接続されたコアチューブ200に対して回転力(トルク)を与えるモータM1と、推進力を与える推進部20Aと、を含む。
【0046】
推進部20Aは、例えば、モータM1に接続され、モータM1の回転力をコアチューブ200の貫入方向Iに変換する機構であって、一例として、モータM1とギヤを介して接した、軸心方向がコアチューブ200の貫入方向Iであるボールねじなどである。貫入装置20でのコアチューブ200の貫入方向Iは、内管21の軸心方向Aと一致している。
【0047】
貫入装置20は、モータM1が回転することでコアチューブ200を回転させ、その回転力を推進部20Aによって貫入方向Iに変換してコアチューブ200に伝達する。これにより、コアチューブ200は貫入方向Iに回転圧入される。貫入装置20は、後述する制御装置10と有線又は無線にて接続されて、制御装置10から入力される制御信号に従って駆動する。
【0048】
探査装置1Aは、さらに、掘削装置30を含む。掘削装置30は、地盤Gに貫入させたコアチューブ200の周囲に地盤の探査用環状孔Hを掘削するために用いられる。探査用環状孔Hは、コアチューブ200の周囲に形成される環状のボアホールである。すなわち、掘削装置30は、貫入方向Iと一致する掘削方向Dでコアチューブ200の周囲に探査用環状孔Hを掘削する。
【0049】
掘削装置30は、掘削方向Dの先端に掘削部を有し、貫入方向Iと一致する回転軸に対して回転させつつ貫入方向Iに掘進させる。掘削部は、例えば、掘削面31である。掘削面31は、外管22の下端222を閉塞するよう配置され、外管22の断面と概ね同じサイズの円形形状である。
【0050】
掘削面31と外管22の下端222とは一体的に接合されず、外管22に対して相対的な移動を許容するように接合されている。掘削面31の中心、又は、略中心部分は、内管21の下端212に接合されている。これにより、掘削面31と内管21とは一体として挙動する。言い換えると、内管21は、掘削面31の回転軸を構成している。
【0051】
掘削面31の内管21の内空部分には、コアチューブの透孔311が形成されている。これにより、コアチューブ200を内管21から掘削面31の透孔311を経て地盤Gに貫入させることができる。
【0052】
掘削面31の外面にはビット32が配置されている。掘削面31の外面は、探査時配置状態で下面である。ビット32は、透孔311の周囲に配置され、一例として、180°などの周方向に等間隔に配置されている。また、ビット32は、カンナ型ビットやクラッシャーなど、地盤Gの土質に応じて付け替え可能であってもよい。
【0053】
掘削装置30は、さらに、駆動装置33を含む。駆動装置33は、後述する制御装置10と有線又は無線にて接続されて、制御装置10から入力される制御信号に従って駆動する。
【0054】
駆動装置33はモータM1を動力源としてその回転を利用して掘削面31を掘削方向Dの中心軸に対して回転させる。一例として、コアチューブ200の貫入の終了後、モータM1の接続先を内管21に切り替えることによって、モータM1を駆動装置33の動力源とすることができる。この場合、駆動装置33は、内管21に接合されている掘削面31、探査ユニット40、ケース40A、及び、後述するスクリューコンベア37Aとともに回転する。すなわち、掘削面31は内管21を中心軸として回転する。その結果、掘削面31に接した、コアチューブ200周囲の地盤Gが掘削される。
【0055】
掘削装置30は、さらに、モータM1の動力を利用して掘削面31を掘削方向Dに推進する。すなわち、掘削装置30は、モータM1の回転を推進力に変換して内管21に伝達する。これにより、内管21が軸心方向Aに推進する。内管21には掘削面31が一体となって挙動するように結合されているため、その推進力が掘削面31に伝達される。そのために、掘削面31が軸心方向Aに推進され、その結果、掘削装置30は、軸心方向Aに一致する掘削方向Dに掘進する。
【0056】
駆動装置33は、さらに、間に複数のスラストベアリング36を挟んで接している、内管21の外周に形成された環状の鍔部34、及び、外管22の内周に形成された環状凸部35と、を含む。これらは外管22を内管21に対して、内管21の回転を伝達せず、掘削方向Dの推進力を伝達するように接合する接合部材の一例である。
【0057】
駆動装置33による内管21の回転に従って鍔部34は回転し、スラストベアリング36との間で、相対的に周方向の位置が変化する。さらに、スラストベアリング36と環状凸部35とも、相対的に周方向の位置が可変である。これにより、鍔部34の回転の環状凸部35への伝達は抑えられ、駆動装置33による内管21の回転力は外管22に伝達しない。
【0058】
駆動装置33によって内管21に与えられた掘削方向Dの推進力によって鍔部34は、スラストベアリング36に軸心方向Aの応力を与える。スラストベアリング36は与えられた軸心方向Aの応力を環状凸部35へ伝達する。その結果、掘削方向Dの推進力が外管22に伝達される。
【0059】
内管21には掘削面31が一体となって挙動するように結合されているため、掘削装置30が探査用環状孔Hを掘削時には掘削面31とともに内管21は回転し、外管22は回転しない。また、二重管構造体2全体が掘削方向Dの推進力によって掘進する。その結果、探査用環状孔Hの掘削時に、二重管構造体2が探査用環状孔Hの内部に位置するようになる。なお、鍔部34、環状凸部35、及び、スラストベアリング36は、掘削方向Dの推進力を外管22に伝達する機構の一例であって、回転を伝達せずに推進力を伝達する機構であれば他の機構であってもよい。
【0060】
好ましくは、スラストベアリング36を間に挟んだ鍔部34及び環状凸部35は、内管21及び外管22の上端211,221に近い位置に設けられる。これにより、中空空間23を大きくすることができるとともに、内部への土砂の流入を抑えることができる。
【0061】
中空空間23には、探査ユニット40が配置されている。探査ユニット40は、被検体の内部を非破壊にて探査する装置であって、電磁波などの探査波を被検体に対して放出し、被検体により変化した探査波を検出することで被検体を探査するものである。探査波は、例えば電磁波であり、電磁波は、例えばX線である。この場合、探査ユニット40はCT探査ユニットであり、レーダであるX線の放出部42及び検出器41を有する。被検体により変化した電磁波は、例えば、被検体を透過したX線である。これにより、X線を利用して被検体の内部が探査、すなわちスキャンされる。探査波は電磁波の他、超音波などの振動であってもよい。その場合、レーダは振動子となり、被検体を伝播した振動を検出器によって検出する。
【0062】
放出部42及び検出器41は、ケース40Aに納められている。これにより、ケース40Aを防塵、防水としておくことで、放出部42及び検出器41への塵や水の影響を抑えることができる。
【0063】
探査ユニット40は、放出部42と検出器41とを、その間の回転軸に対して全周(360度)又は略全周回転させながら、放出部42と検出器41との間に設置された被検体に対して放出部42でX線を放出し、被検体を透過したX線を検出器41で検出する。
【0064】
放出部42と検出器41とは、ケース40A内の回転台45Aに固定されている。回転台45Aは、ケース40Aに対しては位置が可変なようにケース40A内に配置されて、駆動部45の駆動によって回転軸を内管21の軸心と一致させて回転する。回転台45Aが回転することにより、放出部42と検出器41とは、ケース40Aから独立して回転軸を内管21の軸心と一致させて回転する。
【0065】
ケース40A内で、放出部42と検出器41とは、回転軸を内管21の軸心と一致させ、内管21の探査可能領域213を挟むように取り付けられている。これにより、放出部42で放出され探査可能領域213を介してコアチューブ200内部の地盤試料を透過したX線は、検出器41で検出される。
【0066】
探査ユニット40は、さらに、放出部42と検出器41とを回転させるための駆動部45を有する。駆動部45は、動力源であるモータM3と、その回転を回転台45Aに伝達して回転させるため1つ、又は2以上のギヤなどと、を含む。駆動部45は、後述の制御装置10からの制御信号に従って指定された角度、モータM3を回転させ、その回転を回転台45Aに伝達する。これにより、放出部42及び検出器41を、指定された角度で回転させることができる。
【0067】
探査ユニット40は、さらに、後述の制御装置10と無線通信を行う通信機44、及び、通信機44が受信した制御装置10からの制御信号に従って探査ユニット40の制御を行うコントローラ43を含む。通信機44は、例えば、無線通信モジュールである。コントローラ43の行う探査ユニット40の制御は、探査動作を行わせるための制御、探査動作によって得られたデータの制御装置10への送信のための制御、などを含む。
【0068】
コントローラ43及び通信機44もまた、ケース40Aに内包されている。これにより、ケース40Aを防塵、防水としておくことで、コントローラ43及び通信機44への塵や水の影響を抑えることができる。
【0069】
ケース40Aは内管21に対して固定されている。そのため、放出部42と検出器41とは、内管21を回転軸とし、内管21の回転とは独立して回転する。すなわち、内管21が回転していないときに放出部42と検出器41とは回転可能である。
【0070】
ケース40Aは内管21に対して固定されているため、掘削装置30によって二重管構造体2全体が掘削方向Dに掘進して探査用環状孔Hの内部に位置するのに伴って、ケース40Aは探査用環状孔Hの内部に位置するようになる。従って、探査用環状孔Hを掘削することは、探査用環状孔Hの内部に探査ユニット40を挿入することにもなる。
【0071】
掘削装置30はスクリューコンベア37Aを含む。スクリューコンベア37Aは、掘削によって発生した土砂を外部に排出する排土機構である。スクリューコンベア37は、スクリュー(らせん)状の羽根の一方端が掘削面31の裏面、他方端が外管22の上端221まで連続して内管21及び探査ユニット40のケース40Aの外面に取り付けられたものである。
【0072】
排土機構は、掘削装置30の駆動と連動して動作する。すなわち、内管21の回転に伴って回転することによってコンベアとして機能する。スクリューコンベア37Aは、内管21の回転により、掘削面31の裏面の端部から外管22の上端221の端部まで物体を搬送する。これにより、掘削面31で地盤Gを掘削している際に、生じた土砂が上端221まで運搬(揚土)され、二重管構造体2の外部に排出(排土)される。
【0073】
探査装置1Aは、さらに、制御装置10を含む。制御装置10は、プロセッサ11とメモリ12とを有するコンピュータで構成される。メモリ12は、一次記憶装置であってもよいし、二次記憶装置であってもよい。メモリ12は、プロセッサ11によって実行されるコンピュータプログラムを記憶している。制御装置10は、有線又は無線にて通信を行うための通信装置13をさらに有する。
【0074】
制御装置10は、貫入装置20と有線又は無線にて接続されて、貫入装置20の駆動を制御する。また、制御装置10は、掘削装置30と有線又は無線にて接続されて、掘削装置30の駆動を制御する。また、制御装置10は、探査ユニット40の通信機44と無線通信を行って制御信号を送信し、探査ユニット40の駆動を制御する。また、制御装置10は、探査ユニット40の通信機44と無線通信を行って、探査結果を取得する。制御装置10がこれら装置を制御することで、ユーザ操作に頼ることなく自動で、後述する探査装置1Aでの探査方法(
図2)を実現することができる。すなわち、
図2に示された、コアチューブ200の貫入から探査ユニット40での探査の実行までの一連の動作を全自動で行うことができる。
【0075】
探査装置1Aでの探査方法は、
図2を参照して、大きくは、ステップS11,S12,S13の3つのステップからなる。
図2の例では、ステップS11,S12,S13が1つずつ順に実行される。しかしながら、この3ステップは、少なくとも一部が重複して実行されるものであってもよい。すなわち、ステップS11とステップS12が同時に実行されたり、一部が重複して実行されたりしてもよい。また、ステップS12とステップS13も、少なくとも一部が重複して実行されるものであってもよい。また、ステップS11~S13が同時に実行されてもよい。これは、以降の実施の形態で示される探査方法でも同様である。
【0076】
図2を参照して、初めに、探査装置1Aの二重管構造体2を探査時配置状態として、地盤試料を探査する地盤Gの表面に載置する。その状態で、内管21にコアチューブ200をセットし、貫入装置20を接続する。
【0077】
ステップS11は、地盤Gにコアチューブ200を貫入する工程である。ステップS11で制御装置10は、貫入装置20に制御信号を出力し、コアチューブ200を地盤Gへ貫入させる。
【0078】
ステップS11で貫入装置20は、制御装置10の制御に従ってモータM1を回転させてコアチューブ200を回転させつつ、推進部20Aによって貫入方向Iの推進力をコアチューブ200に与える。これにより、
図2に示されたように、二重管構造体2は探査時配置状態で地盤Gの表面に載置された状態を維持しつつ、コアチューブ200が内管21の下端212から地盤Gの内部に貫入される。
【0079】
コアチューブ200が予め規定している深度まで、つまり、予め規定している長さ、地盤Gに貫入されると、制御装置10は、貫入装置20に制御信号を出力して、貫入装置20の駆動を停止させ、ステップS11の工程が終了する。貫入の深度は、例えば、貫入装置20による貫入の速度が規定の速度であるとすると、貫入装置20の駆動時間などによって規定することができる。一例として、制御装置10はステップS12で駆動時間を指定して、貫入装置20に駆動を指示する。これにより、コアチューブ200が予め規定している深度まで地盤Gに貫入される。そして、これにより、コアチューブ200内に地盤Gの一部が入り込み、地盤試料として用いることができるようになる。
【0080】
所定の深度までコアチューブ200を貫入させると、二重管構造体2に対して掘削装置30がセットされる。具体的には、内管21の上端211に、掘削装置30の駆動装置33として利用する貫入装置20の推進部20Aを接続する。
【0081】
ステップS12は、地盤Gの、貫入されたコアチューブ200の周囲を掘削して探査用環状孔Hを形成し、探査用環状孔Hに探査ユニット40を挿入する工程である。ステップS12で制御装置10は、掘削装置30に制御信号を出力して掘削装置30を駆動させ、探査用環状孔Hを掘削させる。
【0082】
ステップS12で掘削装置30の駆動装置33は、制御装置10の制御信号に従って駆動する。すなわち、駆動装置33は、推進部20AによるモータM1の回転を利用して内管21を回転させつつ、モータM1の回転から得られた推進力を内管21に伝達させる。これにより、一体で挙動するように内管21に当接された掘削面31は地盤Gを掘削しながら、内管21の軸心方向Aに一致する掘削方向Dに掘進する。これにより、貫入されたコアチューブ200の周囲に探査用環状孔Hが形成される。また、探査用環状孔Hが形成されると同時に、探査ユニット40が探査用環状孔H内に挿入される。
【0083】
探査用環状孔Hが予め規定している深度まで形成されると、制御装置10は、掘削装置30に制御信号を出力して掘削装置30の駆動を停止させ、ステップS12の工程が終了する。探査用環状孔Hの深度もまた、例えば、掘削装置30による掘削の速度が規定の速度であるとすると、掘削装置30の駆動時間などによって規定することができる。一例として、制御装置10はステップS12で駆動時間を指定して、掘削装置30に駆動を指示する。これにより、予め規定している深度まで探査用環状孔Hに形成される。
【0084】
予め規定されている探査用環状孔Hの深度は、内管21の探査可能領域213が、貫入されているコアチューブ200の探査可能領域201に重なる深さである。これにより、内管21の外部から放出部42によって放出されるX線がコアチューブ200の探査可能領域201を透過してコアチューブ200内の地盤試料に放出される。また、コアチューブ200内の地盤試料を透過したX線が、コアチューブ200の探査可能領域201及び内管21の探査可能領域213を透過して検出器41で検出される。探査可能領域213が、貫入されているコアチューブ200の探査可能領域201に重なるような内管21の位置を、以降の説明において探査位置という。探査位置は、探査可能領域213の少なくとも一部が探査可能領域201に重なっていればよい。ステップS12で所定の深度まで探査用環状孔Hを形成することによって、探査ユニット40が探査位置まで挿入される。
【0085】
ステップS13は、コアチューブ200の内部の地盤試料を探査することで探査データを得る工程である。ステップS13で制御装置10は、探査ユニット40での探査を行わせる。
【0086】
ステップS13で探査ユニット40のコントローラ43は、制御装置10からの制御信号に従って駆動部45を駆動させて、放出部42及び検出器41をコアチューブ200の探査可能領域201及び内管21の探査可能領域213の周りで回転させながら探査を行わせる。これにより、探査位置におけるコアチューブ200内の試料が探査される。
【0087】
好ましくは、ステップS13で得られた探査データは、探査ユニット40の通信機44によって制御装置10に送信される。これにより、制御装置10から探査データを得ることができる。
【0088】
この探査方法では、ステップS12の探査用環状孔Hの掘削に先立ってステップS11でコアチューブ200を地盤Gに貫入させる。掘削面31を用いて探査用環状孔Hを掘削する際には、特に、掘削方向Dの先端付近の地盤Gの応力の乱れが生じるものであるところ、先だってコアチューブ200が貫入されているため、コアチューブ200内の地盤Gの試料への応力の乱れの影響を排することができる。すなわち、この探査方法では、探査用環状孔Hの掘削による応力の乱れのない地盤試料の探査データを得ることができる。
【0089】
好ましくは、この探査方法では、上記のステップS12,S13が、
図3に示されたように、ステップS11でコアチューブ200が貫入された深度に応じて繰り返される。ステップS11でコアチューブ200が貫入される深度は、探査データが必要な深度に対応した深度である。
【0090】
すなわち、ステップS12の探査位置におけるステップS13の探査が終了すると、
図3を参照して、ステップS14は、ステップS12と同様の、地盤Gの、貫入されたコアチューブ200の周囲を掘削して探査用環状孔Hを形成し、探査用環状孔Hに探査ユニット40を挿入する工程である。また、ステップS15は、ステップS13と同様の、コアチューブ200の内部の地盤試料を探査することで探査データを得る工程である。ステップS12,S13に相当する工程が繰り返されることによって、必要な深度まで地盤Gの連続的な探査データが得られる。
【0091】
<変形例>
【0092】
なお、貫入装置20、掘削装置30、及び、探査ユニット40の少なくとも1つはユーザ操作を受け付ける操作部を有し、ユーザ操作に従って駆動してもよい。すなわち、貫入装置20は、ユーザ操作に従って接続されたコアチューブ200を地盤Gに貫入してもよい。また、掘削装置30の駆動装置33は、ユーザ操作に従って掘削面31を回転させて、探査用環状孔Hを掘削してもよい。また、探査ユニット40の駆動部45は、ユーザ操作に従って、放出部42と検出器41とを回転させてもよい。さらに、回転角度の指定や、探査のタイミングの指定を受け付けてもよい。これにより、制御装置10を簡素化、又は、省略することができる。なお、これは、以降の実施の形態に係る探査装置1B,1Cでも同様とする。
【0093】
[第2の実施の形態]
探査装置は、上記の3工程を含む探査方法が実現できるものであれば、具体的な構成は探査装置1Aのものに限定されない。例えば、
図4に示された、第2の実施の形態に係る探査装置1Bであってもよい。この探査装置1Bであっても、
図2、
図3に示された、上記の3工程を含む探査方法が実現できる。
【0094】
図4において、
図1の探査装置1Aと同じ構成には同じ参照符号が付され、同一の構成は一部、省略されている。以降の説明において、共通する構成についての重複する説明は省略し、探査装置1Aと比較しながら、主に探査装置1Aと相違する点を示す。
【0095】
探査装置1Bでは、駆動装置33は動力源となるモータM2を含む。掘削面31に対して、内管21及び外管22ともに接合されておらず、相対的な位置が可変である。従って、モータM2の回転力は駆動装置33によって掘削面31に伝搬され、内管21には伝搬されない。すなわち、探査装置1Bは、探査用環状孔Hを掘削時に内管21は回転しない。
【0096】
内管21及び外管22は、上板22A及び下板22Bで、それぞれ、外管22の上端221と対応する位置の内管21、及び、内管21の下端212と外管22の対応する位置が固定され、外管22が閉塞されている。これにより、内管21及び外管22は一体となって挙動するとともに、その間に形成される中空空間23が上板22A及び下板22Bによって仕切られている。これにより、中空空間23への土砂の流入を抑えることができる。
【0097】
なお、モータM2の回転力は、下板22Bを経由して外管22には伝搬される。外管22に伝搬した回転力は、上板22Aを経由して内管21を通じて貫入装置20まで伝達される。貫入装置20が回転しないよう掘削時に固定されることによって、外管22は、貫入装置20から反力を得ることができる。これにより、探査装置1Bは、探査用環状孔Hを掘削時に外管22も回転しない。
【0098】
中空空間23には、内管21に対して、軸心方向Aを回転軸と一致させて回転可能に探査ユニット40が配置されている。放出部42と検出器41とは、回転台45Aに接続されている。回転台45Aは、さらに、内管21に接続されている。回転台45Aは、内管21に位置が可変であって、軸心方向Aを回転軸と一致させて回転する。これにより、回転台45Aに接続された放出部42と検出器41とが内管21の周囲を回転するようになる。
【0099】
掘削装置30は、貫入装置20から得られた推進力を外管22に伝達する。外管22は、受けた推進力を、下板22Bを経由して掘削面31に伝達する。これにより、掘削面31が掘削方向Dに推進される。その結果、掘削装置30は、軸心方向Aに一致する掘削方向Dに掘進する。
【0100】
探査装置1Bの掘削装置30は、排土機構の一例として排土管37Bを含む。排土管37Bの下端372は、掘削面31の裏面と下板22Bとで挟まれた空間に位置している。掘削面31の裏面と下板22Bとで挟まれた空間には、掘削面31によって掘削された土砂が入り込む。その空間に排土管37Bの下端372が位置していることで、下端372から排土管37B内に土砂が入り込む。
【0101】
排土管37Bは下板22Bを経て中空空間23を探査ユニット40と干渉しない位置で、上板22Aに達するまで延びている。排土管37Bの上端371には、図示しない排土装置が接続されて、管内を吸引する。これにより、下端372から排土管37B内に入り込んだ土砂が上端371まで吸引(揚土)され、上端371から探査装置1B外に排出(排土)される。
【0102】
好ましくは、排土管37Bは、探査ユニット40が駆動中に、回転する探査ユニット40と干渉しない機構を有する。一例として、排土管37Bは、探査ユニット40のケース40Aと干渉する中央部37B1が、排土管37Bから取り外し可能な構造を有する。中央部37B1は回転台45Aに接続されて、探査ユニット40の回転時にケース40Aとの位置関係を保って内管21を回転軸として回転する。
【0103】
これにより、排土管37Bを中空空間23において、探査ユニット40の回転時にケース40Aと干渉する位置に配置することができる。その結果、中空空間23を小さくすることができ、装置全体の小型につながる。
【0104】
なお、探査装置1Bは内管21を有しない構造であってもよい。この場合、内管21の探査ユニット40を配置する位置には、下板22Bと同様の板部材が接続され、その板材に回転台45Aが設置される。また、好ましくは、掘削面31付近に、中空空間23への土砂の流入を防止するための板材などが設けられる。
【0105】
[第3の実施の形態]
掘削装置30の他の例として、
図5に示された、探査装置1Cでは、掘削装置30は、掘削部に相当するオーガビット32Aを先端に有するスパイラルオーガ37Cを用いる。スパイラルオーガ37Cの回転軸はコアチューブ200が通過可能な中空37Dを有する。スパイラルオーガ37Cは、排土機構となる、回転軸に取り付けられたスクリュー状のコンベアを有したオーガである。スパイラルオーガ37Cに駆動装置33を接続して回転させることにより、貫入されたコアチューブ200の周囲に探査用環状孔Hを掘削することができるとともに、生じた土砂を探査装置1C外に排土することができる。
【0106】
スパイラルオーガ37Cの中空37Dを介して先端にビット32Bを取り付け可能である。ビット32Bも駆動装置33を接続して回転させることにより、中空37Dの真下も掘削可能である。
【0107】
探査装置1Cでの探査方法について、
図6~
図8を用いて説明する。
図6を参照して、初めに、スパイラルオーガ37Cにビット32Bを取り付ける。ステップS21で、スパイラルオーガ37Cとビット32Bとの双方を駆動装置33に接続し、これらを用いて地盤Gを掘削する。所定の深度まで掘削すると、ステップS22で駆動装置33を停止して、ビット32Bをスパイラルオーガ37Cから引き抜く。
【0108】
ビット32Bが引き抜かれたスパイラルオーガ37Cの中空37Dに、コアチューブ200をセットする。
図7を参照して、ステップS23でコアチューブ200に貫入装置20を接続し、貫入装置20によって地盤Gに貫入させる。
【0109】
コアチューブ200が貫入した後、ステップS24でスパイラルオーガ37Cを駆動装置33に接続し、スパイラルオーガ37Cで地盤Gを掘削する。これにより、貫入されたコアチューブ200の周囲の地盤が掘削される。
【0110】
図8を参照して、コアチューブ200の周囲の地盤が掘削された後、ステップS25でスパイラルオーガ37Cを地盤Gより引き上げる。これにより、コアチューブ200の周囲に探査用環状孔Hが形成される。その後、ステップS26で地表から探査用環状孔Hに探査ユニット40を投下し、コアチューブ200の外部から内部の地盤試料を探査する。
【0111】
第3の実施の形態に係る探査装置1Cでも、探査用環状孔Hの掘削に先立ってコアチューブ200を地盤Gに貫入させる。そのため、コアチューブ200内の地盤Gの試料への応力の乱れの影響を排することができる。すなわち、この探査装置1Cであっても、上記した探査装置1A,1Bと同様に探査用環状孔Hの掘削による応力の乱れのない地盤試料の探査データを得ることができる。
【0112】
また、探査装置1Cでは、一体化されていない探査ユニット40を用いることができる。そのため、既存の探査ユニットを用いることができるとともに、探査ユニットの交換も容易に行うことができる。
【0113】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0114】
1A :探査装置
1B :探査装置
1C :探査装置
2 :二重管構造体
10 :制御装置
11 :プロセッサ
12 :メモリ
13 :通信装置
20 :貫入装置
20A :推進部
21 :内管
22 :外管
22A :上板
22B :下板
23 :中空空間
30 :掘削装置
31 :掘削面
32A :オーガビット
32B :ビット
33 :駆動装置
34 :鍔部
35 :環状凸部
36 :スラストベアリング
37 :スクリューコンベア
37A :スクリューコンベア
37B :排土管
37B1 :中央部
37C :スパイラルオーガ
37D :中空
40 :探査ユニット
40A :ケース
41 :検出器
42 :放出部
43 :コントローラ
44 :通信機
45 :駆動部
45A :回転台
200 :コアチューブ
201 :探査可能領域
211 :上端
212 :下端
213 :探査可能領域
221 :上端
222 :下端
311 :透孔
371 :上端
372 :下端
A :軸心方向
D :掘削方向
G :地盤
H :探査用環状孔
I :貫入方向
M1 :モータ
M2 :モータ
M3 :モータ