(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022008112
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】回路モジュール、回路装置、布製品、及び、布製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20220105BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
H01Q9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087710
(22)【出願日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2020108930
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2(2020)年11月15日~11月19日の「IEEE MTT-S Wireless Power Transfer Conference 2020」(オンライン開催(http://wptc2020.org/))(WPTC-W1O:Microwave RF Wireless Power Transfer III W1O.5(10:00-10:15))にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】道関 隆国
(72)【発明者】
【氏名】田中 亜実
(72)【発明者】
【氏名】西川 久
(72)【発明者】
【氏名】金本 美穂
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AA06
5J047AA14
5J047AB07
5J047EF02
(57)【要約】
【課題】容易に布製品に取り付け可能な回路モジュールを提供する。
【解決手段】回路モジュール101は、回路基板20と、回路基板に配置された回路10,40と、を備え、回路基板には、導電糸が通過可能な内径を有する貫通孔30A,30Bが形成され、貫通孔の内面31に、貫通孔に通された導電糸102をアンテナとして、導電糸からの給電点となる導電体32が形成され、導電体と回路とが接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板に配置され、アンテナが接続される回路と、を備え、
前記回路基板には、前記アンテナとなる導電糸が挿通される1又は複数の貫通孔が形成され、
前記回路は、前記貫通孔の内面に、前記アンテナとなる前記導電糸への給電点となる導電体を有する
回路モジュール。
【請求項2】
前記貫通孔に挿通された前記導電糸が前記導電体に接した点が、前記給電点を形成する
請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項3】
前記導電体は、前記内面から、少なくとも前記貫通孔の前記回路基板の表面の縁部を覆う範囲まで前記回路基板の表面に延設されている
請求項1または2に記載の回路モジュール。
【請求項4】
前記導電体の、前記回路基板の表面に延設された領域は、第1の向きの長さが、前記第1の向きとは異なる第2の向きの長さよりも長く、
前記第1の向きは、前記貫通孔に挿通された前記導電糸の、前記回路基板の表面に沿って延びる向きを含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の回路モジュール。
【請求項5】
前記回路は、前記貫通孔に挿通された前記導電糸が前記アンテナとして受信した電磁波を直流電流に整流する整流器を含む
請求項1~4のいずれか一項に記載の回路モジュール。
【請求項6】
前記複数の貫通孔は、第1の貫通孔と第2の貫通孔とを含み、
前記回路は、前記第1の貫通孔に配置された前記導電体と、前記第2の貫通孔に配置された前記導電体とに接続された、ガンママッチング回路を含む
請求項5に記載の回路モジュール。
【請求項7】
前記回路基板には、前記導電糸が挿通される、1又は複数の固定用孔がさらに形成されている
請求項6に記載の回路モジュール。
【請求項8】
前記固定用孔には、前記導電体が配置されていない
請求項7に記載の回路モジュール。
【請求項9】
前記固定用孔は、前記複数の貫通孔のいずれよりも前記回路基板において外周側に配置されている
請求項7又は8に記載の回路モジュール。
【請求項10】
前記複数の前記固定用孔は、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とを間に挟むように前記回路基板に配置されている
請求項7~9のいずれか一項に記載の回路モジュール。
【請求項11】
前記固定用孔は、前記回路基板において前記複数の前記貫通孔と同一の直線上に配置されている
請求項7~10のいずれか一項に記載の回路モジュール。
【請求項12】
前記回路は、
前記第1の貫通孔に配置された前記導電体に形成された第1の給電点に接続される第1の給電線と、
前記第2の貫通孔に配置された前記導電体に形成された第2の給電点に接続される第2の給電線と、をさらに有し、
前記第1の給電線上には、前記ガンママッチング回路を構成するコンデンサが設けられている
請求項6に記載の回路モジュール。
【請求項13】
前記第1の給電点と前記第2の給電点とは、導電線によって接続されている
請求項12に記載の回路モジュール。
【請求項14】
前記導電体は高耐食性素材で形成され、
前記回路を前記回路基板の表面において封止する封止体をさらに含む
請求項1~6,12,13のいずれか一項に記載の回路モジュール。
【請求項15】
回路基板、及び、前記回路基板に配置され、アンテナが接続される回路を有する回路モジュールと、
アンテナとなる導電糸と、を備え、
前記回路基板には、前記導電糸が挿通される1又は複数の貫通孔が形成され、
前記回路は、前記貫通孔の内面に、前記アンテナとなる前記導電糸への給電点となる導電体を有する
回路装置。
【請求項16】
前記複数の貫通孔は、第1の貫通孔と第2の貫通孔とを含み、
前記導電糸は、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との両方に挿通されて前記回路モジュールに取り付けられ、
前記導電糸は、前記第1の貫通孔から延びる部分を第1のエレメント、前記第2の貫通孔から延びる部分を第2のエレメントとしたダイポールアンテナとして電磁波を受信する
請求項15に記載の回路装置。
【請求項17】
前記回路モジュールは、前記導電糸に対してスライド自在に取り付けられている
請求項16に記載の回路装置。
【請求項18】
前記回路は、前記第1の貫通孔の内面に配置された前記導電体と、前記第2の貫通孔の内面に配置された前記導電体とに接続されたガンママッチング回路を含み、
前記回路モジュールは、ガンママッチングが成立する位置にスライドされて、前記導電糸に対する位置が決定されるよう構成されている
請求項17に記載の回路装置。
【請求項19】
前記導電糸は、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とのそれぞれに、同一の方向で巻き回されている
請求項16~18のいずれか一項に記載の回路装置。
【請求項20】
回路基板、及び、前記回路基板に配置され、アンテナが接続される回路を有する回路モジュールと、
アンテナとなる導電糸と、
前記導電糸によって縫製されることによって前記回路モジュールが取り付けられる生地と、を備え、
前記回路基板には、前記導電糸が挿通される1又は複数の貫通孔が形成され、
前記回路は、前記貫通孔の内面に、前記導電糸への給電点となる導電体を有し、
前記導電糸は、前記導電体と接する点を前記給電点とするよう前記貫通孔に挿通され、
前記導電糸は、さらに、前記生地に縫製されている
布製品。
【請求項21】
回路モジュールが生地に縫製された布製品の製造方法であって、
前記回路モジュールは、回路基板、及び、前記回路基板に配置され、アンテナが接続される回路を有し、
前記回路基板には、導電糸が挿通される1又は複数の貫通孔が形成され、
前記回路は、前記貫通孔の内面に、前記アンテナとなる前記導電糸への給電点となる導電体を有し、
前記貫通孔に、前記導電糸を挿通し、
前記貫通孔に挿通した前記導電糸を生地に縫製する、ことを含む
布製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路モジュール、回路装置、布製品、及び、布製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
服飾品などの布製品にLED(Light Emitting Diode)などの負荷を取り付けたいと要望する場合がある。この場合、負荷回路や電力供給用の回路を有する回路モジュールを接着剤で生地に貼り付ける方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、接着剤を用いて回路モジュールを貼り付けるとすると、布製品を製造する過程で、縫製とは別に接着工程が生じてしまうという問題がある。また、接着剤で回路モジュールが張り付けられた布製品は洗濯ができない、又は、洗濯がしにくい場合があり、洗濯が希望される布製品には不向きである。
【0005】
本開示は、容易に布製品に取り付け可能な回路モジュール、回路装置、そのようにして製造された布製品、及び、布製品の製造方法を提供するものである。
【0006】
ある実施の形態に従うと、回路モジュールは、回路基板と、回路基板に配置され、アンテナが接続される回路と、を備え、回路基板には、アンテナとなる導電糸が挿通される1又は複数の貫通孔が形成され、回路は、貫通孔の内面に、アンテナとなる導電糸への給電点となる導電体を有する。
【0007】
他の実施の形態に従うと、回路装置は、回路基板、及び、回路基板に配置され、アンテナが接続される回路を有する回路モジュールと、アンテナとなる導電糸と、を備え、回路基板には、導電糸が挿通される1又は複数の貫通孔が形成され、回路は、貫通孔の内面に、アンテナとなる導電糸への給電点となる導電体を有する。
【0008】
他の実施の形態に従うと、布製品は、回路基板、及び、回路基板に配置され、アンテナが接続される回路を有する回路モジュールと、アンテナとなる導電糸と、導電糸によって縫製されることによって回路モジュールが取り付けられる生地と、を備え、回路基板には、導電糸が挿通される1又は複数の貫通孔が形成され、回路は、貫通孔の内面に、導電糸への給電点となる導電体を有し、導電糸は、導電体と接する点を給電点とするよう貫通孔に挿通され、導電糸は、さらに、生地に縫製されている。
【0009】
他の実施の形態に従うと、布製品の製造方法は、回路モジュールが生地に縫製された布製品の製造方法であって、回路モジュールは、回路基板、及び、回路基板に配置され、アンテナが接続される回路を有し、回路基板には、導電糸が挿通される1又は複数の貫通孔が形成され、回路は、貫通孔の内面に、アンテナとなる導電糸への給電点となる導電体を有し、貫通孔に、導電糸を挿通し、貫通孔に挿通した導電糸を生地に縫製する、ことを含む。
【0010】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る回路装置の概念図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態に係る回路装置の正面概略図である。
【
図4】
図4は、導電糸の通し方の他の例を示した図である。
【
図5】
図5は、導電糸の通し方の他の例を示した図である。
【
図6】
図6は、回路モジュールに配置される回路の一例を表した回路図である。
【
図8】
図8は、回路モジュールに配置されるガンママッチング回路の一例を表した回路図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る回路装置を用いたガンママッチの結果を表したグラフである。
【
図10】
図10は、布製品の製造方法の流れの概略を表したフローチャートである。
【
図13】
図13は、第2の実施の形態に係る回路装置の正面概略図である。
【
図15】
図15は、第3の実施の形態に係る回路装置の正面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1.回路モジュール、回路装置、布製品、及び、布製品の製造方法の概要>
【0013】
(1)実施の形態に係る回路モジュールは、回路基板と、回路基板に配置され、アンテナが接続される回路と、を備え、回路基板には、アンテナとなる導電糸が挿通される1又は複数の貫通孔が形成され、回路は、貫通孔の内面に、アンテナとなる導電糸への給電点となる導電体を有する。
【0014】
導電糸が挿通される貫通孔が形成されていることから、貫通孔に導電糸を挿通することができる。回路が貫通孔の内面に導電体を有することから、貫通孔に挿通された導電糸が接することで給電点とすることができる。つまり、貫通孔に導電糸を挿通するだけで導電糸を回路モジュールに接続でき、容易にアンテナとして用いることができる。また、導電糸をアンテナとして用いる際に、はんだなどの熱を用いた接着ができないところ、挿通するだけで接続できるようになる。また、挿通された導電糸を生地に縫製することで、回路モジュールに導電糸を接続した回路装置を生地に容易に装着し、布製品を製造することができる。
【0015】
(2)好ましくは、貫通孔に挿通された導電糸が導電体に接した点が、給電点を形成する。これにより、貫通孔を挿通するだけで導電糸をアンテナとして容易に接続できる。
【0016】
(3)好ましくは、導電体は、内面から、少なくとも貫通孔の回路基板の表面の縁部を覆う範囲まで回路基板の表面に延設されている。これにより、貫通孔に挿通された導電糸が導電体に接しやすくなり、接続が容易になる。
【0017】
(4)好ましくは、導電体の、回路基板の表面に延設された領域は、第1の向きの長さが、第1の向きとは異なる第2の向きの長さよりも長く、第1の向きは、貫通孔に挿通された導電糸の、回路基板の表面に沿って延びる向きを含む。これにより、導電糸を貫通孔に巻き回すなどしたときにも導電糸が導電体に接しやすくなり、接続が容易になる。
【0018】
(5)好ましくは、回路は、貫通孔に挿通された導電糸がアンテナとして受信した電磁波を直流電流に整流する整流器を含む。これにより、導電糸をアンテナとしてレクテナを構成でき、無線によって電力の供給が可能になる。
【0019】
(6)好ましくは、複数の貫通孔は、第1の貫通孔と第2の貫通孔とを含み、回路は、第1の貫通孔に配置された導電体と、第2の貫通孔に配置された導電体とに接続された、ガンママッチング回路を含む。これにより、ガンママッチを行い、アンテナのインピーダンスを変化させて整流器のインピーダンスとマッチングさせることができる。また、第1の貫通孔と第2の貫通孔とに1本の導電糸を挿通させた場合にも導電体間の接続をショートさせることで、1本の導電糸をダイポールアンテナとして機能させることができる。
【0020】
(7)好ましくは、回路基板には、導電糸が挿通される、1又は複数の固定用孔がさらに形成されている。複数の貫通孔の少なくとも一つに挿通された導電糸が固定用孔に挿通されて、生地に縫製されることによって、回路モジュールのスライドが容易になってガンママッチングが可能になるとともに、スライド後の生地に対する回路モジュールの位置が保持されやすくなる。
【0021】
(8)好ましくは、固定用孔には、導電体が配置されていない。固定用孔に導電体が形成されていないことは、例えば、固定用孔の内面又はその近傍において、絶縁体である回路基板の表面が露出していることを指す。また、他の例として、固定用孔の内面又はその近傍に、絶縁体が形成されていることであってもよい。固定用孔に導電体が形成されていないことにより、固定用孔は導電糸が接しても、給電点を形成することはない。これにより、固定用孔は、給電点とせずに回路モジュールの位置の保持に用いることができる。
【0022】
(9)好ましくは、固定用孔は、複数の貫通孔のいずれよりも回路基板において外周側に配置されている。これにより、固定用孔が複数の貫通孔より回路モジュールの内周側に配置されるよりも、複数の貫通孔の間隔を短くできる。すなわち、複数の貫通に導電糸が接して形成される接給電点の間隔を短くできる。これにより、ガンママッチングを容易にすることができる。
【0023】
(10)好ましくは、複数の固定用孔は、第1の貫通孔と第2の貫通孔とを間に挟むように回路基板に配置されている。これにより、固定用孔が第1の貫通孔及び第2の貫通孔より回路モジュールの内周側に配置されるよりも、第1の貫通孔と第2の貫通孔と複数の貫通孔の間隔を短くできる。これにより、ガンママッチングを容易にすることができる。
【0024】
(11)好ましくは、固定用孔は、回路基板において複数の貫通孔と同一の直線上に配置されている。固定用孔が回路基板において複数の貫通孔と同一の直線上に配置されていることは、一例として、固定用孔の中心が、複数の貫通孔それぞれの中心の配置されている仮想的な直線上となるように固定用孔が配置されていることを指す。これにより、回路モジュールのスライドが容易になる。
【0025】
(12)好ましくは、回路は、第1の貫通孔に配置された導電体に形成された第1の給電点に接続される第1の給電線と、第2の貫通孔に配置された導電体に形成された第2の給電点に接続される第2の給電線と、をさらに有し、第1の給電線上には、ガンママッチング回路を構成するコンデンサが設けられている。これにより、ガンママッチングが可能になるとともに、1本の導電糸をダイポールアンテナとして機能させることができる。
【0026】
(13)好ましくは、第1の給電点と第2の給電点とは、導電線によって接続されている。これにより、第1の貫通孔に第1の導電糸、第2の貫通孔に第2の導電糸をそれぞれ巻き回し、ダイポールアンテナとして用いる場合に、インピーダンスマッチングが可能になる。
【0027】
(14)好ましくは、導電体は高耐食性素材で形成され、回路を回路基板の表面において封止する封止体をさらに含む。封止体は、例えば樹脂である。これにより、回路基板に配置された回路への水や埃の進入を防止できる。そのため、回路モジュールを取り付けた布製品を屋外で用いたり、洗濯したりすることが可能になる。
【0028】
(15)実施の形態に係る回路装置は、(1)~(14)に記載の回路モジュールと、アンテナとなる導電糸と、を備え、回路基板には、導電糸が挿通される1又は複数の貫通孔が形成され、回路は、貫通孔の内面に、アンテナとなる導電糸への給電点となる導電体を有する。これにより、導電糸を生地に縫製することで、生地に容易に装着し、布製品を製造することができる。
【0029】
(16)好ましくは、複数の貫通孔は、第1の貫通孔と第2の貫通孔とを含み、導電糸は、第1の貫通孔と第2の貫通孔との両方に挿通されて回路モジュールに取り付けられ、導電糸は、第1の貫通孔から延びる部分を第1のエレメント、第2の貫通孔から延びる部分を第2のエレメントとしたダイポールアンテナとして電磁波を受信する。これにより、導電糸をアンテナとしてレクテナを構成でき、無線によって電力の供給が可能になる。
【0030】
(17)好ましくは、回路モジュールは、導電糸に対してスライド自在に取り付けられている。スライドさせることにより導電糸に対する位置が調整されてアンテナの長さを変化させることができ、アンテナのインピーダンスを変化させることができ、ガンママッチングが可能になる。
【0031】
(18)好ましくは、回路は、第1の貫通孔の内面に配置された導電体と、第2の貫通孔の内面に配置された導電体とに接続されたガンママッチング回路を含み、回路モジュールは、ガンママッチングが成立する位置にスライドされて、導電糸に対する位置が決定されるよう構成されている。これにより、ガンママッチを行い、アンテナのインピーダンスを変化させて整流器のインピーダンスとマッチングさせることができる。
【0032】
(19)好ましくは、導電糸は、第1の貫通孔と第2の貫通孔とのそれぞれに、同一の方向で巻き回されている。これにより、回路モジュールを、導電糸に対してスライド自在に取り付けることができる。
【0033】
(20)実施の形態に係る布製品は、(15)~(19)に記載の回路装置と、導電糸によって縫製されることによって回路モジュールが取り付けられる生地と、を備え、導電糸は、さらに、生地に縫製されている。これにより、縫製工程によって生地に回路装置を容易に取り付け、布製品を製造できる。
【0034】
(21)実施の形態に係る布製品の製造方法は、(20)の布製品の製造方法であって、貫通孔に、アンテナとして電磁波を受信する導電糸を通し、貫通孔に挿通した誘電糸を生地に縫製する、ことを含む。これにより、縫製工程によって生地に回路装置を容易に取り付け、布製品を製造できる。
【0035】
<2.回路モジュール、回路装置、布製品、及び、布製品の製造方法の例>
【0036】
図1を参照して、実施の形態に係る回路モジュール101は、回路基板20と、回路基板20に配置された回路と、を備える。回路は、マッチング回路50、整流回路10、及び、LED(Light Emitting Diode)41などの負荷を含む負荷回路40(
図2等)、などである。マッチング回路50にはアンテナが接続される。接続されるアンテナは、第1のアンテナ素子AE1及び第2のアンテナ素子AE2からなるダイポールアンテナである。回路と第1のアンテナ素子AE1及び第2のアンテナ素子AE2とは、それぞれ、給電点K1,K2で接続されている。
【0037】
[第1の実施の形態]
【0038】
図2及び
図3を参照して、第1の実施の形態に係る回路装置100は、回路モジュール101と、導電糸102と、を備える。回路モジュール101の回路基板20の、1以上の回路が配置された面を表面21とする。
【0039】
回路基板20には、導電糸102が挿通される貫通孔が形成されている。導電糸102が挿通される貫通孔とは、導電糸102の太さより大きな内径を有する。好ましくは、貫通孔は複数形成されている。一例として、
図2に示されたように貫通孔30A,30Bの2つの貫通孔が形成されている。
【0040】
貫通孔30A,30Bそれぞれの内面31に、導電体32が形成されている。好ましくは、導電体32は、高耐食性素材で形成されている。ここで用いられる高耐食性素材は、好適には金である。例えば、貫通孔30A,30Bそれぞれの内面31に金メッキが施されている。金などである高耐食性素材で導電体32が形成されることによって、導電性と耐食性とが両立する。これにより、水や汗などで錆びにくくなる。
【0041】
好ましくは、
図2及び
図3に示されたように、回路基板20の表面21に配置された整流回路10、マッチング回路50、及び、負荷回路40は、封止体22によって表面21において封止されている。
図2では、表面21に配置された回路を表現するため、封止体22が点線で表されている。封止体22は、例えば樹脂である。これにより、回路基板20の表面21に配置された回路への水や埃の進入を防止できる。そのため、布製品Cを屋外で用いたり、洗濯したりすることが可能になる。
【0042】
導電糸102は貫通孔30A,30Bに挿通されることによってアンテナAE1,AE2(
図1)として機能し、電磁波を受信する。電磁波は、例えば電波である。導電糸102は、導電性を有し、好ましくは、高耐食性素材で形成された糸である。一例として、導電糸102は銀糸である。これにより、導電糸102は水や汗などで錆びにくくなる。
【0043】
導電糸102は、貫通孔30A,30Bに挿通されることにより、導電糸102を用いて回路モジュール101を生地C1に取り付けることができる。すなわち、回路モジュール101は、導電糸102で縫製されることによって生地C1に取り付けられ布製品Cとなる。
【0044】
通常、生地C1に回路モジュール101を取り付ける場合には接着剤などの縫製とは異なる素材を用いた取り付ける工程が必要となる。この点、導電糸102を用いた縫製によって取り付けることによって、回路モジュール101を取り付ける布製品Cの製造工程が、通常の布製品の縫製工程と同じとすることができる。そのため、接着などの別工程を設ける必要がなく、製造を容易にすることができる。
【0045】
貫通孔30A,30Bそれぞれの内面31に導電体32が配されていることによって、貫通孔30A,30Bに挿通された導電糸102が導電体32に接した点K1,K2が給電点を形成する。好ましくは、プリントパターンで形成するなどによって、貫通孔30A,30Bの内面31の導電体32は、連続している。これにより、導電糸102を挿通して後述するダイポールアンテナとして機能させる際に、ダイポールアンテナの抵抗を抑えることができる。
【0046】
回路上の給電点K1,K2にアンテナを接続する場合、通常、はんだなどの接着手段を用いる。しかしながら、実施の形態に係る回路装置100ではアンテナとして糸を用いているため、はんだなどの熱を用いた接着を行うことができない。この点、回路モジュール101の貫通孔30A,30Bそれぞれの内面31に導電体32が配されていることによって、貫通孔30A,30Bに導電糸102を挿通することで給電点K1,K2にアンテナが接続される。つまり、はんだなどの熱を用いた接着を行うことなく導電糸形状のアンテナの接続が可能になる。
【0047】
好ましくは、導電体32は、貫通孔30A,30Bそれぞれの内面31から、少なくとも貫通孔30A,30Bの回路基板20の表面21の縁部35を覆う範囲まで回路基板20の表面21に延設されている。より好ましくは、縁部35を超えて表面21まで延設されている。これにより、貫通孔30A,30Bに通した導電糸102は導電体32と接触しやすくなり、アンテナの接続がされやすくなる。具体的には、導電糸102は給電点K1,K2に接するとともに、貫通孔30A,30Bの給電点K1,K2と逆側の縁でも接触するようになる。このように、複数個所で接触することでより確実に電気的に結合させることができる。
【0048】
より好ましくは、導電体32の、回路基板20の表面21に延設された領域は、特定の向きの長さが他の向きの長さよりも長い。特定の向きは、貫通孔30A,30Bに通した導電糸102の、回路基板20の表面21に沿って延びる向きを含む。
【0049】
一例として、回路モジュール101に対して、導電糸102を、
図2及び
図3に示されたように固定する。すなわち、
図2及び
図3では、導電糸102は、貫通孔30A,30Bそれぞれに、同一の方向で巻き回されている。このとき、導電糸102は、貫通孔30Aに挿通され、回路基板20の表面21に沿って外周に向けて延びる。
【0050】
図2及び
図3の場合、導電体32は、貫通孔30Aから外周に向かう向き(第1の向き)の長さが第1の向きとは異なる他の向き(第2の向き)の長さよりも長い。具体的には、第1の向きの長さL1は、中心に向か向きの長さL2よりも長い(L1>L2)。また、第1の向きの長さL1は、中心に向かう向きに直交する向きの長さL3よりも長い(L1>L3)。これは、貫通孔30B周囲の導電体32についても同様である。これにより、貫通孔30A,30Bに通した導電糸102は導電体32と接触しやすくなり、アンテナの接続がされやすくなる。
【0051】
導電糸102を
図2及び
図3に示されたように回路モジュール101に対してセットすることによって、導電糸102を生地C1に縫製した範囲において、回路モジュール101が生地C1に対して矢印Aの向き、及び、矢印Bの向きにスライド自在となる。これにより、後述するガンママッチが可能になる。
【0052】
なお、
図2及び
図3に示された導電糸102を回路モジュール101にセットする方法は一例であって、他の方法でもよい。第1の実施の形態に係る回路装置100では、1本の導電糸102を連続して貫通孔30A,30Bの両方に挿通する方法であればよい。好ましくは、回路モジュール101が生地C1に対してスライド自在となる方法でセットされる。例えば、導電糸102を貫通孔30A,30Bの両方に巻き回す必要はなく、一方のみ、又は、いずれも巻き回さずに通すのみであってもよい。
【0053】
すなわち、導電糸102を貫通孔30A,30Bのいずれも巻き回さずに挿通させ、回路基板20の表面21又はその反対側の面(裏面)のいずれかに貫通孔30A,30Bそれぞれから導電糸102を延ばす方法であってもよい。この場合、好ましくは、導電体32の回路基板20の表面21に延設された領域は、貫通孔30A,30Bから導電糸102の回路基板20の表面21において延びる向きの長さを他の向きより長くする。
【0054】
具体的には、
図4に示されたように、貫通孔30A,30Bそれぞれから裏面側に導電糸102を延ばす場合と、
図5に示されたように表面21側に導電糸102を延ばす場合とについて説明する。
図4の場合、回路基板20の表面21において導電糸102は中心向きに延びるため、導電体32の中心に向けての延設される長さL12は、外周に向けて延設される長さL11よりも長い。また、
図5の場合、回路基板20の表面21において導電糸102は外周向きに延びるため、導電体32の外周に向けての延設される長さL212は、中心に向けて延設される長さL22よりも長い。これにより、貫通孔30A,30Bに通した導電糸102は導電体32と接触しやすくなり、給電点の形成をより確実にすることができる。
【0055】
図2及び
図6を参照して、回路基板20の表面21に配置された回路は、整流回路10を含む。整流回路10は、整流器11を含む。整流回路10には、アンテナとして機能する導電糸102が受信した電磁波が供給される。
【0056】
整流器11は、導電糸102が受信し、供給された電磁波を直流電流に整流変換し、他の回路に供給する。他の回路は、例えば、LED(Light Emitting Diode)41などの負荷を含む負荷回路40である。これにより、負荷回路40は電力を消費することができる。すなわち、LED41を点灯させることができる。
【0057】
回路基板20の表面21に配置された回路は、さらに、マッチング回路50を含む。マッチング回路50は、アンテナとして機能する導電糸102と整流器11とのインピーダンスをマッチングする回路であって、第1の実施の形態に係る回路モジュール101では、ガンママッチングを行う。
【0058】
マッチング回路50は、貫通孔30Aの内面31に配置された導電体32と、貫通孔30Bの内面31に配置された導電体32とに接続され、導電体32に形成される給電点K1,K2を含む。ガンママッチ用のマッチング回路50は、さらに、コンデンサ51を含む。コンデンサ51は、可変コンデンサであってもよい。コンデンサ51は、給電点K1に接続された給電線に配置されており、第1の部分102Aに接続されている。
【0059】
導電糸102は、給電点K1から延びる第1の部分102A、給電点K2から延びる第2の部分102B、及び、給電点K1と給電点K2との間の第3の部分102Cと、に区分される。
【0060】
図7を参照して、給電点K1に第1の給電線52が接続され、給電点K2に第2の給電線53が接続されている。第1の給電線52上に、マッチング回路50を構成するコンデンサ51が設けられている。
【0061】
第1の給電線52上にコンデンサ51が設けられていることによって、第3の部分102Cによる給電点K1と給電点K2との結線がショートされ、給電点K1から延びる第1の部分102Aが第1のアンテナ素子AE1、給電点K2から延びる第2の部分102Bが第2のアンテナ素子AE2として機能して
図1に示された回路と等価となる。つまり、1本の導電糸102によってダイポールアンテナが実現される。
【0062】
図8を用いて、マッチング回路50でのガンママッチについて説明する。
図8を参照して、
図3に示されたように、回路モジュール101が生地C1に対して矢印Aの向き、及び、矢印Bの向きにスライドすることによって、ダイポールアンテナとして機能する導電糸102上における給電点K1,K2の位置が変化する。これにより、ダイポールアンテナのインピーダンスを変化させることができる。給電点K1,K2の位置を導電糸102の中央寄りとすることでアンテナ素子のインピーダンスを低く、端にするほどインピーダンスを高くすることができる。その結果、整流器11のインピーダンスとマッチングされる。
【0063】
送信される電磁波の周波数fが2.45GHzである場合、電磁波の波長をλとすると、第1のアンテナ素子AE1及び第2のアンテナ素子AE2の合計長さ、つまり、ダイポールアンテナとして機能する導電糸102の合計長さLはλ/2となり、概ね6cm程度となる。この場合、第2の部分102Bの長さLBを合計長さLの半分、つまり3cm程度とし、すなわち、給電点K2を概ね中央とする。その状態から、導電糸102上において回路モジュール101を移動させることで、アンテナのインピーダンスを整流器11のインピーダンスとマッチングする。これにより、回路モジュール101の導電糸102に対する位置、すなわち、第1の部分102Aの長さLA及び第2の部分102Bの長さLBを決定することができる。つまり、第1の実施の形態に係る回路装置100では、回路モジュール101を生地C1に対してスライドさせることで容易にインピーダンスマッチングを行うことができる。
【0064】
図9に示された曲線E1~E3は、それぞれ、実施の形態に係る回路装置100が生地C1に取り付けられた布製品Cを用い、受信する電磁波の周波数を2.45GHzとしてガンママッチを行ったときの結果を示している。
【0065】
図9において、曲線E1~E3は、それぞれ、第1~第3の導電糸を用いた結果であって、回路装置100の、電磁波の周波数ごとのVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)を表している。VSWRは1に近いほど理想的であるのに対して、曲線E1~E3のいずれも、2.45GHzでVSWRが1に近づいている。従って、実施の形態に係る回路装置100において、上記の方法でアンテナのインピーダンスと整流器11のインピーダンスとのマッチングが十分に行われていることが確認された。
【0066】
布製品Cの製造方法の概略は、一例として、
図10に示される流れが考えられる。すなわち、
図10を参照して、導電糸102を針などによって回路モジュール101の貫通孔30に通し(ステップS1)、通過させた後に、生地C1に縫い付ける(ステップS2)。
【0067】
ステップS1,S2では、
図3~
図5に示されたように、生地C1に対してスライド自在に回路モジュール101を縫い付ける。
図2の例の場合、例えば、図の左側から右側に縫製を進めるとすると、生地C1の回路モジュール101の取り付け側(以下、上面)から導電糸102を下面に通し、さらに、下面から上面に通して貫通孔30Aを下面側から表面21に向けて導電糸102を通す。貫通孔30Aの表面21側から出た導電糸102を回路モジュール101の外周側に巻き回して再度、生地C1の下面まで通す。
【0068】
次に、導電糸102を生地C1の下面から上面に通し、回路モジュール101の外周側から貫通孔30Bの表面21へ通す。貫通孔30Bを通して下面から出た導電糸102を生地C1の上面から下面に通し、再度、上面に通す。
【0069】
縫い付けられた回路モジュール101を生地C1に対して、矢印Aの向き、又は、矢印Bの向きにスライドさせることで、ガンママッチを行う(ステップS3)。その結果によって、回路モジュール101の生地C1における位置を決定する(ステップS4)。
【0070】
なお、布製品Cを量産するなど複数製造する場合、ガンママッチを行って位置を決定することは毎回行われなくてもよい。例えば、設計の過程において試作品にてガンママッチを行って位置を決定し、以降の量産過程においては、決定された位置に回路モジュール101を取り付けるようにしてもよい。
【0071】
このようにして製造される布製品Cは、例えば、
図11に表された腕輪などの服飾品、
図12に表された靴下などの衣服などが挙げられる。このような布製品Cに対しては、無線による給電によって、例えばLEDの点灯などが可能になる。そのため、ファッション性やデザイン性に優れた布製品Cを提供することが可能になる。また、汗や水に強いことから水に濡れることが想定されるもの、汗に触れる可能性のあるもの、洗濯の要求があるもの、などの布製品に応用することができる。
【0072】
[第2の実施の形態]
【0073】
回路装置100の他の例として、2本の導電糸が結ばれるものであってもよい。すなわち、
図13に示されたように、回路基板20に設けられた2つの貫通孔30A,30Bそれぞれに、異なる導電糸102D,102Eが挿通されてもよい。具体的には、
図13及び
図14に示されたように、導電糸102D,102Eは、それぞれ、貫通孔30A,30Bに挿通され、さらに生地C1を縫製して結ばれていてもよい。この場合、導電糸102D,102Eは、それぞれ、第1のアンテナ素子AE1、第2のアンテナ素子AE2として機能し、この場合であっても
図1の回路と等価となる。
【0074】
この場合、好ましくは、
図14に示されたように、貫通孔30A,30Bそれぞれに設けられた導電体32は、導電線54によって接続されている。一例として導電線54は、回路基板20の裏面側に設けられる。
【0075】
導電線54が設けられることによって、給電点K1と給電点K2とが結線され、マッチング回路50にてガンママッチが可能になる。これにより、
図13及び
図14に示されたような2つの貫通孔30A,30Bそれぞれに、異なる導電糸102D,102Eが挿通される用いられ方においても、
図8で説明された方法と同様に、マッチング回路50でのガンママッチを行うことができる。
【0076】
[第3の実施の形態]
【0077】
回路装置100の他の例として、回路基板20に、固定用孔がさらに形成されていてもよい。固定用孔は、導電糸102によって縫製されることにより回路モジュール101を生地C1に取り付ける際に、生地C1に対する回路モジュール101の位置の保持のために用いられる。固定用孔は、導電糸102の太さより大きな内径を有し、導電糸102が挿通される。固定用孔の内径は、貫通孔30A,30Bと同じであってもよい。それにより、製造を容易にすることができる。
【0078】
好ましくは、固定用孔は複数形成されている。一例として、第3の実施の形態に係る回路モジュール101の回路基板20には、
図15及び
図16に示されたように、固定用孔61A,61Bの2つの貫通孔が形成されている。貫通孔30A,30Bは、それぞれの内面31に導電体32が形成されているものの、固定用孔61A,61Bの内面62には、いずれも、導電体は形成されていない。
【0079】
固定用孔61A,61Bそれぞれの内面62に導電体が形成されていないことは、一例として、固定用孔61A,61Bの内面62又はその近傍において、絶縁体である回路基板20の表面が露出していることを指す。また、他の例として、固定用孔61A,61Bの内面62又はその近傍に、絶縁体が形成されていることであってもよい。
【0080】
固定用孔61A,61Bそれぞれの内面62に導電体が形成されていないことによって、固定用孔61A,61Bは導電糸102が接しても、内面62やその近傍に給電点を形成することはない。これにより、固定用孔61A,61Bは、給電点とせずに回路モジュール101の位置の保持に用いることができる。
【0081】
第3の実施の形態に係る回路モジュール101は、貫通孔30A,30Bの少なくとも一方に挿通された導電糸102によって挿通される。好ましくは、導電糸102の、貫通孔30Aに挿通された側の端部が貫通孔30A近傍に形成された固定用孔61Aに挿通され、貫通孔30Bに挿通された側の端部が貫通孔30B近傍に形成された固定用孔61Bに挿通される。言い換えると、1本の導電糸102が、連続して、固定用孔61A、貫通孔30A、貫通孔30B、固定用孔61Bの順に挿通される。
【0082】
その際に、回路モジュール101は、導電糸102によって生地C1に縫製される。
図16を参照して、例えば、図の左側から右側に縫製を進めるとすると、生地C1の下面から導電糸102を上面に通して固定用孔61Aに通し、回路モジュール101の表面21に向けて導電糸102を通す。次に、回路モジュール101の表面21から貫通孔30Aを通して生地C1の下面から出た導電糸102を、生地C1の下面から上面に通し、貫通孔30Bを表面21に向けて通す。次に、導電糸102を、回路モジュール101の表面21から固定用孔61Bを通して生地C1の下面から出す。
【0083】
第3の実施の形態に係る回路モジュール101がこのように生地C1に取り付けられることによっても、回路モジュール101が生地C1に対して矢印Aの向き、及び、矢印Bの向きにスライドすることが可能になり、かつ、移動後の生地C1に対する回路モジュール101の位置の保持されやすくなる。そのため、固定用孔61A,61Bの内径は、貫通孔30A,30Bより大きくてもよい。それにより、回路モジュール101のスライドが容易になる。又は、固定用孔61A,61Bの内径は、貫通孔30A,30Bより小さくてもよい。それにより、移動後の生地C1に対する回路モジュール101の位置が固定されやすくなる。
【0084】
また、固定用孔61A,61Bは、回路基板20において貫通孔30A及び貫通孔30Bと同一の直線上に配置されていてもよい。具体的には、
図15の例では、固定用孔61A,61Bは、それぞれの中心P3,P4が、貫通孔30A及び貫通孔30Bの中心P1,P2の配置されている仮想的な直線SL上に配置されている。なお、固定用孔61A,61B、貫通孔30A、及び貫通孔30Bは、その中心P1,P2,P3,P4が、仮想的な直線SL上に位置している必要はなく、孔のいずれかの位置が、仮想的な直線SL上に位置していれば足りる。これにより、回路モジュール101のスライドが容易になる。又は、固定用孔61A,61Bは、貫通孔30A及び貫通孔30Bの配置される直線から外れた位置に配置されていてもよい。これにより、移動後の生地C1に対する回路モジュール101の位置が固定されやすくなる。
【0085】
また、好ましくは、固定用孔61A,61Bは、いずれも、貫通孔30A,30Bより回路モジュール101の外周側に配置されている。すなわち、固定用孔61Aは、貫通孔30Aの貫通孔30Bより遠い側に形成され、固定用孔61Bは、貫通孔30Bの貫通孔30Aより遠い側に形成されている。これにより、固定用孔61A,61Bが貫通孔30A,30Bより回路モジュール101の内周側に配置されるよりも、貫通孔30A,30Bの間隔を短くできる。すなわち、給電点K1,K2の間隔を短くできる。これにより、上記のガンママッチングを容易にすることができる。
【0086】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 :整流回路
11 :整流器
20 :回路基板
21 :表面
22 :封止体
30 :貫通孔
30A :貫通孔
30B :貫通孔
31 :内面
32 :導電体
33 :給電線
35 :縁部
40 :負荷回路
41 :LED
50 :マッチング回路
51 :可変コンデンサ
52 :第1給電線
53 :第2給電線
54 :導電線
61A :固定用孔
61B :固定用孔
62 :内面
100 :回路装置
101 :回路モジュール
102 :導電糸
102A :第1の部分
102B :第2の部分
102C :第3の部分
A :矢印
AE1 :第1のアンテナ素子
AE2 :第2のアンテナ素子
B :矢印
C :布製品
C1 :生地
K1 :給電点
K2 :給電点
L1 :長さ
L2 :長さ
L3 :長さ
LA :長さ
LB :長さ
L :合計長さ
P1 :中心
P2 :中心
P3 :中心
P4 :中心
SL :直線
f :周波数