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  • 特開-人体吊り上げ用補助具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081131
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】人体吊り上げ用補助具
(51)【国際特許分類】
   A61G 1/00 20060101AFI20220524BHJP
   A61G 1/044 20060101ALI20220524BHJP
   A62B 35/00 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
A61G1/00 702
A61G1/044
A62B35/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192480
(22)【出願日】2020-11-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】320012048
【氏名又は名称】川尻 康夫
(72)【発明者】
【氏名】川尻 康夫
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184BB03
2E184KA01
2E184KA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】介護施設や災害救助にも対応できる、簡便な人体吊り上げ用補助具を提供する。
【解決手段】中央から左右に振り分けた吊りベルト1の両下端にD環係止部2と、左右1対の略U字形状の脇ベルト4の頂点にD環係止部2aを設けてD環3を介して接続し、左右1対の脇ベルト4の両下端にベルト挿通部5をそれぞれに設け、長さ調整用係止留具6を備えた胸ベルト7を挿通する。胸ベルト7の上方に位置する正面ベルト8は、他の構成する各ベルトに比べて細身で長さが調整できる面ファスナー係合機構9を備えており、背面ベルト10と同様に左右の脇ベルト4間の正面側と背面側にそれぞれ固着し、さらに胸ベルト7が左右の脇下に当接する部分には、吊り上げ地の体重による食い込み及び、痛み防止に緩衝帯11が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体吊り上げ用補助具であって、略U字形状の吊りベルト(1)の両下端にD環係止部(2)と、左右1対の略U字形状の脇ベルト(3)の頂点にD環係止部(2a)を設けてD環(3)を介して接続し、前記左右1対の脇ベルト(4)の両下端にベルト挿通部(5)をそれぞれに設けて、長さ調整用係止留具(6)を備えた胸ベルト(7)を挿通し、該胸ベルト(7)より上方の前記左右の脇ベルト(4)正面側に固着された正面ベルト(8)は、細身で長さ調整用の面ファスナー係合機構(9)を備えており、背面側の同位置にある背面ベルト(10)を固着することで全体形状を維持し、さらに前記胸ベルト(7)が左右の脇下に当接する部分に緩衝帯(11)を設けたことを特徴とする、人体吊り上げ用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に介護施設や災害救助等に用いられる人体吊り上げ用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会においては、身内による老々介護や介護施設の世話になるのが一般的である。しかしながら、寝たきりや痴呆症の被介護者は自分の意志で自由に身体を動かせないため、全体重を介護人が支えることになる。例えばベットから車いすに移す単純な作業でも、先ずベットに上体を起こし、被介護者を抱え上げて車いすに移す作業は、若い介護人でも相当な体力を要する過酷な作業であり、介護人の腰痛の訴えや介護職が敬遠される一因ともなっている。
【0003】
また、身内による老々介護では介護人自身の体力も衰えているため、被介護者の下着の取り換えやトイレ等の下の世話をするためには、被介護人を吊り上げる昇降機に頼らざるを得なく、実際に昇降機をレンタルする場合には、被介護者を吊り上げる座面式(腰掛布)タイプ(特許文献1参照)の買い取り条件付きの貸し出しであった。
【0004】
しかしながら、レンタル品では被介護者を抱え上げて腰掛布に座らせ、両足を足環に通してから吊り上げなければならず、さらには座面式のために下着の取り換えや、トイレ等の下の世話をする場合には使用できないという致命的な欠陥があり、より現状に即した吊り上げ補助具が望まれている。
【0005】
また、昨今の異常気象による影響か大雨災害が多発しており、最近の傾向としては狭い地域での突発的災害が多いため、救助を求める人も多人数に上り、救助ヘリによる人体吊り上げ等の救出活動も頻繁に行われているが、さらに簡便で効率の良い人体吊り上げ具の開発が望まれている。
人体吊り上げ具の発明には、例えば、実全平02-130654(特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実全平02-130654公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願出願人は、認知症で寝たきりの老妻を数年に亘り介護してきた経緯があり、病室で使用する簡易型吊り上げ機(昇降機)のレンタル品は、被介護者用の座面式(腰掛布)補助具の買い上げとセットでの貸し出しが条件であり、さらには座面式のために被介護者を抱え上げなければならず、下着の取り換えやトイレ及び下の世話等には対応できないという問題があった。
【0008】
特許文献1は、主に災害救助を対象にした人体吊り上げ用避難具であり、被災者の身体を安定させる目的で足輪に両足を通し、腰掛布に座らせるタイプのため介護施設には不向きであった。被介護者を抱え上げることなく、ベットに上体を起こした状態で上半身に装着するだけで使用でき、被介護者を吊り上げた状態で下着の取り換えや下の世話も容易に行える等、介護人の身体的苦痛を軽減する簡易な人体つり上げ用補助具の開発が切に望まれていた。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み、長年の老老介護者としての経験から改良を重ね、介護者の身体的負担を軽減でき、また災害救助などでは不特定多数の被災者を効率よく装着できる、廉価で簡便な人体つり上げ用補助具の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
略U字形状の吊りベルト1の両下端にD環係止部2と、左右1対の略U字形状の脇ベルト4の頂点にD環係止部2aを設けてD環3を介して接続し、左右1対の脇ベルト4の両下端にベルト挿通部5をそれぞれに設け、長さ調整用係止留具6を備えた胸ベルト7を挿通する。胸ベルト7より上方の左右脇ベルト4正面側に固着された正面ベルト8は、細身で長さが調整できる面ファスナー係合機構9を備えており、背面側の同位置にある背面ベルト10は固着することで全体形状を維持し、さらに前記胸ベルト7が左右の脇下に当接する部分に緩衝帯11を設ける。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、被介護者や災害被災者の身体を吊り上げる際の補助具であり、介護施設の場合は座面式でないので上半身に簡単に装着でき、人体吊り上げ器具(昇降機)と併用して使用する。例えば、認知症の被介護者は自分の意志で身体を自由に動かせないため介護者がすべてを補う必要があり、特に困難を伴う下着の取り換えやトイレ・及び下の世話等では、ベットに上体を起こした状態のまま上半身に補助具を装着し、そのまま昇降機で吊り上げた状態で行える。
【0012】
本発明は、被介護者を抱え上げることなく余裕のある左右脇ベルトに腕を通して胸ベルトを締めて身体を固定し、さらに上方の開き止め用正面ベルトを体形に合わせて面ファスナーで係合することで、自分の意志で身体が自由にならない認知症の被介護者や幼児の、いわゆるバンザイ状態でのすっぽ抜けを防止できる。
【0013】
本発明は、被介護者や災害被災者の様々な体形に左右されずに装着できるように、左右の脇ベルトには余裕を持たせ、また、胸ベルトが両脇下に当接する部分には吊り上げ時の体重による食い込みや痛みを和らげるために緩衝帯を設けており、また背面ベルトは左右の脇ベルト間の背面側に固着されているが、胸ベルトと正面ベルトはフリーなので使用者が大人でも子供でも、それぞれの体形に合わせての調節が可能である。
【0014】
本発明は、実際に老々介護に携わった経験から改良を重ねて開発したものであり、介護施設では被介護者を抱え上げることなくトイレや下の世話ができ、災害救助では不特定多数を相手に迅速に装着しなければならず、被災者が全体形状を一見しただけで装着方法が理解できる、より簡便で廉価な人体つり上げ具を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例の外観図である。
図2】本発明の一実施例の装着時の正面図である。
図3】本発明の一実施例の装着時の背面図である。
図4】本発明の一実施例の装着時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
人体吊り上げ用補助具であって、略U字形状の吊りベルト1の両下端にD環係止部2と、左右1対の略U字形状の脇ベルト4の頂点にD環係止部2aを設けてD環3を介して接続し、左右1対の脇ベルト4の両下端にベルト挿通部5をそれぞれに設け、長さ調整用係止留具6を備えた胸ベルト7を挿通する。胸ベルト7より上方の左右の脇ベルト4正面側に固着された正面ベルト8は、細身で長さ調整用の面ファスナー係合機構9を備えており、背面側の同位置にある背面ベルト10は固着し、さらに前記胸ベルト7が左右の脇下に当接する部分に緩衝帯11を設ける。
ベルト挿通部5の4か所に挿通された胸ベルト7と、左右の脇ベルト4間に固着された背面ベルト10によって補助具の全体形状は維持され、また、正面側の胸ベルト7と正面ベルト8はフリーサイズなので簡単に装着でき、使用者する大人や子供の体形に合わせて調節することができる。
【実施例0017】
本発明は、高齢化社会において身内による老々介護の過酷さを軽減するために、自らの実体験に基づいて改良を重ね開発したもので、主に介護従事者の負担軽減とともに災害時における救助ヘリによる人体吊り上げも多発していることから、より安全で簡便な人体吊り上げ具を目指したものである。
以下に実施例について、各図を参照にして本発明の作用及び動作を説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施例の外観図である。
略U字形状の吊りベルト1の両下端にD環係止部2と、左右1対の略U字形状の脇ベルト4の頂点にD環係止部2aを設けてD環3を介して接続し、左右1対の脇ベルト4の両下端にベルト挿通部5をそれぞれに設け、長さ調整用係止留具6が正面になるように胸ベルト7が挿通されている。胸ベルト7より上方に位置する正面ベルト8は細身で長さ調整用の面ファスナー係合機構9を備えており、背面ベルト10と同様に左右の脇ベルト4間の正面側と背面側にそれぞれ固着し、さらに胸ベルト7が左右の脇下に当接する部分には、吊り上げ時の体重による食い込み及び、痛み防止に緩衝帯11が設けられている。
【0019】
図2は、本発明の一実施例の装着時の正面図である。
余裕をもって形設された左右の脇ベルト4に使用者の両腕を通し、正面ベルト8と胸ベルト7はフリー設計なので、胸ベルト7の長さ調整用係止留具6を正面にして締め、身体を固定してさらに正面ベルト8の面ファスナー係合機構9で体形に合わせて係合することで、被介護者や災害被災者及び幼児等の吊り上げ時の、いわゆるバンザイ状態でのすっぽ抜けを防止する。
【0020】
図3は、本発明の一実施例の装着時の背面図である。
背面ベルト10は左右の脇ベルト4間の背面側に固着されているが、ベルト挿通部5の4か所に挿通された胸ベルト7と相俟って、補助具の全体形状を維持する構造上の問題でもあり、災害救助等では被災者が装着方法に悩むことなく一見しただけで理解でき、自分で簡単に装着できるように工夫したものである。
【0021】
図4は、本発明の一実施例の装着時の側面図である。
人体を吊り上げる際には使用者の全体重が両脇下にかかるため、胸ベルト7が両脇に食い込む痛みを和らげる目的でその部分には緩衝帯11が設けられている。
なお、実施例では左右前後のベルト挿通部5に挿通された胸ベルト7の脇下に当接する点線部分に、厚さ1センチほどのポリエチレン材を巻き付けて対応をした。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、高齢化社会における老々介護の過酷な現状に鑑み、自らの実体験を基に開発したものであり、主に介護職従事者の身体的苦痛を和らげる目的と、昨今の異常気象の影響下で大雨災害時に救助ヘリによる救出活動が頻繁に行われていることから、簡便で迅速に装着できる廉価な人体吊り上げ用補助具を提供して産業に貢献するものである。
【符号の説明】
【0023】
1 吊りベルト
2 D環係止部
2a D環係止部
3 D環
4 脇ベルト
5 ベルト挿通部
6 係止留具
7 胸ベルト
8 正面ベルト
9 面ファスナー係合機構
10 背面ベルト
11 緩衝帯
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体吊り上げ用補助具であって、中央から左右に振り分けた吊りベルト(1)の両下端にD環係止部(2)と、左右1対の脇ベルト(4)の頂点にD環係止部(2a)を設けてD環(3)を介して接続し、前記左右1対の脇ベルト(4)の両下端にベルト挿通部(5)をそれぞれに設けて、長さ調整用係止留具(6)を備えた胸ベルト(7)を挿通し、該胸ベルト(7)より上方の前記左右の脇ベルト(4)正面側に固着された正面ベルト(8)は、他の構成する各ベルトに比べて細身で長さ調整用の面ファスナー係合機構(9)を備えており、背面側の同位置にある背面ベルト(10)を固着することで全体形状を維持し、さらに前記胸ベルト(7)が左右の脇下に当接する部分に緩衝帯(11)を設けたことを特徴とする、人体吊り上げ用補助具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
中央から左右に振り分けた吊りベルト1の両下端にD環係止部2と、左右1対の脇ベルト4の頂点にD環係止部2aを設けてD環3を介して接続し、左右1対の脇ベルト4の両下端にベルト挿通部5をそれぞれに設け、長さ調整用係止留具6を備えた胸ベルト7を挿通する。胸ベルト7より上方の左右の脇ベルト4正面側に固着された正面ベルト8は、他の構成する各ベルトに比べて細身で長さが調整できる面ファスナー係合機構9を備えており、背面側の同位置にある背面ベルト10を固着することで全体形状を維持し、さらに胸ベルト7が左右の脇下に当接する部分に緩衝帯11を設ける。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
人体吊り上げ用補助具であって、中央から左右に振り分けた吊りベルト1の両下端にD環係止部2と、左右1対の脇ベルト4の頂点にD環係止部2aを設けてD環3を介して接続し、左右1対の脇ベルト4の両下端にベルト挿通部5をそれぞれに設け、長さ調整用係止留具6を備えた胸ベルト7を挿通する。胸ベルト7より上方の左右の脇ベルト4正面側に固着された正面ベルト8は、他の構成する各ベルトに比べて細身で長さが調整できる面ファスナー係合機構9を備えており、背面側の同位置にある背面ベルト10は固着し、さらに胸ベルト7が左右の脇下に当接する部分に緩衝帯11を設ける。
ベルト挿通部5の4カ所に挿通された胸ベルト7と、左右の脇ベルト4間に固着された背面ベルト10によって補助具の全体形状は維持され、また、正面側の胸ベルト7と正面ベルト8はフリーサイズなので簡単に装着でき、使用する大人や子供の体形に合わせて調整することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
図1は、本発明の一実施例の外観図である。
中央から左右に振り分けた吊りベルト1の両下端にD環係止部2と、左右1対の脇ベルト4の頂点にD環係止部2aを設けてD環3を介して接続し、左右1対の脇ベルト4の両下端にベルト挿通部5をそれぞれに設け、長さ調整用係止留具6が正面になるように胸ベルト7が挿通されている。胸ベルト7より上方に位置する正面ベルト8は、他の構成する各ベルトに比べて細身で長さが調整できる面ファスナー係合機構9を備えており、背面ベルト10と同様に左右の脇ベルト4間の正面側と背面側にそれぞれ固着し、さらに胸ベルト7が左右の脇下に当接する部分には、吊り上げ地の体重による食い込み及び、痛み防止に緩衝帯11が設けられている。