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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081153
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ロータリダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/14 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
F16F9/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192521
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕史
(72)【発明者】
【氏名】奥村 謙一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 渉
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮平
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA42
3J069AA44
3J069DD43
3J069DD48
3J069EE01
3J069EE62
(57)【要約】
【課題】回転により発生する制動トルクを簡易な構成で簡単に調整できるロータリダンパを提供する。
【解決手段】ロータリダンパ1は、円筒室111内に充填された粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させる。このロータリダンパ1は、蓋15をケース11へのねじ込み式としなっており、蓋15のケース11へのねじ込み量によって、蓋15と仕切り部115との隙間G1を調整し、隙間G1を介して移動する粘性流体の移動量を調整して、回転により発生する制動トルクを調整できる。また、蓋15と仕切り部115との間に、塑性変形あるいは弾性変形可能な部材で形成され、蓋15に反力を付与する軸力発生部材17が配置されており、これにより、蓋15のケース11へのねじ込みに対して軸力を発生させ、蓋15とケース11との螺合部分から粘性流体が漏れるのを防止しつつ、隙間G1の調整シロを大きくできる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
一端が開口し、前記粘性流体が充填された円筒室を有するケースと、
前記円筒室内に、前記円筒室に対して相対的に回転可能に収容されたロータと、
前記ケースの開口側に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込む蓋と、を備え、
前記ロータは、
円筒状のロータ本体と、
前記ロータ本体の外周面から径方向外方へ突出し、先端面が前記円筒室の側壁面と近接して、前記円筒室を仕切るベーンと、を有し、
前記ケースは、
前記円筒室の側壁面から径方向内方に突出し、先端面が前記ロータ本体の外周面と近接して、前記円筒室を仕切る仕切り部と、
前記ケースの開口側に形成された第1ネジ部と、を有し、
前記蓋は、
前記蓋に形成され、前記ケースの開口側に形成された前記第1ネジ部と螺合する第2ネジ部を有し、
前記ロータリダンパは、さらに、
前記蓋の裏面と当該蓋の裏面に対向する前記仕切り部の面との間に配置され、前記蓋の前記第2ネジ部の、前記ケースの前記第1ネジ部へのねじ込みに対して軸力を発生させる、塑性変形あるいは弾性変形可能な部材で形成された軸力発生部材を備え、
前記蓋の裏面と当該蓋の裏面に対向する前記ベーンの面との隙間は、
前記粘性流体の移動を制限する流路として機能し、かつ前記蓋の前記第2のネジ部の、前記ケースの前記第1のネジ部へのねじ込み量によって調整可能である
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリダンパであって、
前記仕切り部は、
前記蓋の裏面に対向する面に設けられ、前記軸力発生部材を前記仕切り部に装着するための凸部を有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項3】
請求項2に記載のロータリダンパであって、
前記軸力発生部材は、
前記凸部に向けて突出する調整部をさらに有し、
前記凸部は、
前記軸力発生部材の前記調整部が挿入されて、底面が当該調整部の先端部と当接する挿入部を有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項4】
請求項3に記載のロータリダンパであって、
前記調整部は、
当該調整部の先端部が当該調整部の根元部に対して幅狭に形成されており、
当該調整部の根元部に形成され、前記挿入部の側壁面と圧接する圧接部を有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか一項に記載のロータリダンパであって、
前記軸力発生部材は、
前記凸部を挟み込んで把持する一対のアーム部を有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項6】
請求項5に記載のロータリダンパであって、
前記一対のアーム部は、
前記凸部の側面と圧接する圧接部を有する
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項7】
請求項1に記載のロータリダンパであって、
前記ケースは、熱可塑性樹脂で形成されており、
前記軸力発生部材は、前記仕切り部と一体的に形成されている
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載のロータリダンパであって、
前記仕切り部の先端面と前記ロータ本体の外周面との隙間を塞ぐ第1シール材をさらに備える
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載のロータリダンパであって、
前記ベーンの先端面と前記円筒室の側壁面との隙間を塞ぐ第2シール材をさらに備える
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載のロータリダンパであって、
前記仕切り部に形成され、前記ロータの回転方向に沿って当該仕切り部の両側面間を貫く第1流路と、
前記ロータが前記円筒室に対して相対的に正転方向に回転した場合に、前記第1流路を塞ぎ、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に反転方向に回転した場合に、前記第1流路を解放する第1逆止弁と、をさらに備える
ことを特徴とするロータリダンパ。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載のロータリダンパであって、
前記ベーンに形成され、前記ロータの回転方向に沿って当該ベーンの両側面間を貫く第2流路と、
前記ロータが前記円筒室に対して相対的に正転方向に回転した場合に、前記第2流路を塞ぎ、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に反転方向に回転した場合に、前記第2流路を解放する第2逆止弁と、をさらに備える
ことを特徴とするロータリダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリダンパに関し、特に、回転により発生する制動トルクを調整可能なロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
正転方向の回転に対して強い制動トルクを発生させる一方、反転方向の回転に対しては弱い制動トルクを発生させるロータリダンパが知られている。例えば、特許文献1には、構造が簡単で安価に製造可能なロータリダンパが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のロータリダンパは、円筒室を備えたケースと、円筒室内に回転自在に収容されたロータと、円筒室内に充填された粘性流体と、ケースの開口側端面に取り付けられて円筒室内にロータを粘性流体とともに封じ込める蓋と、を備えている。
【0004】
ロータは、円筒形状のロータ本体と、円筒室の側壁面と僅かな隙間を形成するように、ロータ本体の外周面から径方向外方に突出して形成されたベーンと、を有する。ベーンには、ロータの回転方向と垂直な一方の側面(第一の側面と呼ぶ)から他方の側面(第二の側面と呼ぶ)へと繋がる流路が形成されている。また、ベーンの先端面(円筒室の側壁面と対向する面)には、円筒室の側壁面との僅かな隙間を埋めるシール材が取り付けられている。このシール材は、ベーンに形成された流路の開閉を行う弾性体の逆止弁を有する。また、円筒室の側壁面には、ロータ本体の外周面と僅かな隙間を形成するように、径方向内方に突出した仕切り部が形成されている。
【0005】
以上のような構成において、特許文献1に記載のロータリダンパは、ベーンの第一の側面から第二の側面へ向かう方向(正転方向)に回転させる力がロータに加わると、円筒室内の粘性流体によって逆止弁がベーンの第二の側面に押し付けられて、流路が逆止弁で塞がれる。これにより、粘性流体の移動が、円筒室の仕切り部とロータ本体の外周面との隙間およびケースの閉口側端面(底面)とベーンの下面(ケースの閉口側端面と対向する面)との隙間を介してのみに制限されて、ベーンの第二の側面側の粘性流体に対する圧力が高まり、強い制動トルクが発生する。一方、ベーンの第二の側面から第一の側面へ向かう方向(反転方向)に回転させる力がロータに加わると、ベーンの第一の側面側の粘性流体が、流路に流入して逆止弁を押し上げて流路を開放する。したがって、粘性流体の移動がベーンに形成された流路においても行われるため、ベーンの第一の側面側の粘性流体に対する圧力は高くならず、このため、弱い制動トルクが発生する。
【0006】
さらに、特許文献1に記載のロータリダンパは、正転方向に回転させる力がロータに加わった場合に発生する強い制動トルクを調整するための制動力調整機構を備えている。この制動力調整機構は、ケースの開口側端面と蓋との間に介在するように配置された弾性部材と、弾性部材を介して蓋をケースの開口側端面に取り付けるための複数のボルトと、を備えて構成される。ケースの開口側端面には、複数のネジ穴が形成されており、弾性部材および蓋には、これらのネジ穴に対応する位置に貫通穴が形成されている。複数のボルトは、それぞれ、蓋および弾性部材の貫通穴に挿入され、ケースの開口側端面に形成されたネジ穴と螺合する。そして、複数のボルトの締め具合により、蓋によってケースの円筒室内に押し込まれるロータの押込量が調整される。その結果、ケースの閉口側端面とベーンの下面との隙間が調整され、正転方向に回転させる力がロータに加わった場合に発生する強い制動トルクを調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-301272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のロータリダンパの制動力調整機構は、ケースの開口側端面と蓋との間に介在するように配置された弾性部材と、弾性部材を介して蓋をケースの開口側端面に取り付けるための複数のボルトと、を備えているため、ロータリダンパの部品点数が増加する。また、ロータを円筒室内に適切に配置するためには、蓋によるロータの押込量が蓋の全面において均一となるように、複数のボルト各々の締め具合を同じにする必要がある。このため、制動トルクの調整作業が煩雑である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転により発生する制動トルクを簡易な構成で簡単に調整できるロータリダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、充填された粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパにおいて、蓋をケースへのねじ込み式とし、蓋のケースへのねじ込み量によって蓋とベーンとの隙間を調整することにより、これらの隙間を介して移動する粘性流体の移動量を調整し、これによって、回転により発生する制動トルクを調整できるようにした。また、蓋と円筒室の仕切り部との間に、塑性変形あるいは弾性変形可能な部材で形成され、蓋に反力を付与する軸力発生部材を配置することにより、蓋のケースへのねじ込みに対して軸力を発生させ、蓋とケースとの螺合部分から粘性流体が漏れるのを防止しつつ、蓋とベーンとの隙間の調整シロを大きくして、制動トルクの調整範囲を広くした。
【0011】
例えば、本発明は、
粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパであって、
一端が開口し、前記粘性流体が充填された円筒室を有するケースと、
前記円筒室内に、前記円筒室に対して相対的に回転可能に収容されたロータと、
前記ケースの開口側に取り付けられ、前記ロータを前記粘性流体とともに前記円筒室内に封じ込む蓋と、を備え、
前記ロータは、
円筒状のロータ本体と、
前記ロータ本体の外周面から径方向外方へ突出し、先端面が前記円筒室の側壁面と近接して、前記円筒室を仕切るベーンと、を有し、
前記ケースは、
前記円筒室の側壁面から径方向内方に突出し、先端面が前記ロータ本体の外周面と近接して、前記円筒室を仕切る仕切り部と、
前記ケースの開口側に形成された第1ネジ部と、を有し、
前記蓋は、
前記蓋に形成され、前記ケースの開口側に形成された前記第1ネジ部と螺合する第2ネジ部を有し、
前記ロータリダンパは、さらに、
前記蓋の裏面と当該蓋の裏面に対向する前記仕切り部の面との間に配置され、前記蓋の前記第2ネジ部の、前記ケースの前記第1ネジ部へのねじ込みに対して軸力を発生させる、塑性変形あるいは弾性変形可能な部材で形成された軸力発生部材を備え、
前記蓋の裏面と当該蓋の裏面に対向する前記ベーンの面との隙間は、
前記粘性流体の移動を制限する流路として機能し、かつ前記蓋の前記第2ネジ部の、前記ケースの前記第1ネジ部へのねじ込み量によって調整可能である。
【0012】
ここで、前記ロータリダンパは、必要に応じて、前記仕切り部の先端面と前記ロータ本体の外周面との隙間を塞ぐ第1シール材をさらに備えてもよい。また、必要に応じて、前記ベーンの先端面と前記円筒室の側壁面との隙間を塞ぐ第2シール材をさらに備えてもよい。
【0013】
また、前記ロータリダンパは、前記仕切り部あるいは前記ベーンに形成され、前記ロータの回転方向に沿って前記仕切り部あるいは前記ベーンの両側面間を貫く流路と、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に正転方向に回転した場合に、前記流路を塞ぎ、前記ロータが前記円筒室に対して相対的に反転方向に回転した場合に、前記流路を解放する逆止弁と、をさらに備えるものでもよい。ここで、前記ロータリダンパが前記第1シール材あるいは第2シール材を備える場合、前記逆止弁は、前記第1シール材あるいは前記第2シール材と一体的に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蓋をケースへのねじ込み式とし、蓋のケースへのねじ込み量によって蓋とベーンとの隙間を調整可能としている。このため、部品点数を増加させることなく、簡易な構成かつ簡単な作業で、この隙間を介して移動する粘性流体の移動量を調整して、回転により発生する制動トルクを調整することができる。
【0015】
また、本発明によれば、蓋と円筒室の仕切り部との間に、塑性変形あるいは弾性変形可能な部材で形成され、蓋に反力を付与する軸力発生部材を配置することにより、蓋のケースへのねじ込みに対して軸力を発生させ、蓋とケースとの螺合部分から粘性流体が漏れるのを防止しつつ、蓋とベーンとの隙間の調整シロを大きくして、制動トルクの調整範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(A)~図1(C)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の正面図、側面図、および背面図である。
図2図2(A)は、図1(A)に示すロータリダンパ1のA-A断面図であり、図2(B)は、図1(B)に示すロータリダンパ1のB-B断面図である。
図3図3(A)および図3(B)は、図2(A)に示すロータリダンパ1のA部拡大図およびB部拡大図である。
図4図4(A)は、図2(A)に示すロータリダンパ1のC部拡大図であり、図4(B)は、図2(B)に示すロータリダンパ1のD部拡大図である。
図5図5(A)は、ケース11の正面図であり、図5(B)は、図5(A)に示すケース11のC-C断面図であり、図5(C)は、ケース11の背面図であり、図5(D)は、図5(A)に示すケース11のE部拡大図であり、図5(E)は、図5(A)に示すケース11のD-D断面拡大図である。
図6図6(A)および図6(B)は、ロータ12の正面図および側面図であり、図6(C)は、図6(A)に示すロータ12のE-E断面図である。
図7図7(A)および図7(B)は、第1シール材13の正面図および側面図であり、図7(C)は、図7(A)に示す第1シール材13のF-F断面図である。
図8図8(A)および図8(B)は、第2シール材14の正面図および側面図であり、図8(C)は、図8(A)に示す第2シール材14のG-G断面図である。
図9図9(A)~図9(C)は、蓋15の正面図、側面図、および背面図であり、図9(D)は、図9(A)に示す蓋15のH-H断面図である。
図10図10(A)~図10(D)は、軸力発生部材17の正面図、上面図、底面図、および側面図であり、図10(E)は、図10(C)に示す軸力発生部材17のI-I断面拡大図であり、図10(F)は、図10(D)に示す軸力発生部材17のJ-J断面拡大図である。
図11図11(A)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1において、ケース11の仕切り部115の凸部18に装着された軸力発生部材17を、ロータリダンパ1の中心から見た拡大図であり、図11(B)は、図11(A)に示す軸力発生部材17のK-K断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態を説明する。
【0018】
図1(A)~図1(C)は、本発明の一実施の形態に係るロータリダンパ1の正面図、側面図、および背面図である。また、図2(A)は、図1(A)に示すロータリダンパ1のA-A断面図であり、図2(B)は、図1(B)に示すロータリダンパ1のB-B断面図である。また、図3(A)および図3(B)は、図2(A)に示すロータリダンパ1のA部拡大図およびB部拡大図であり、図4(A)は、図2(A)に示すロータリダンパ1のC部拡大図であり、図4(B)は、図2(B)に示すロータリダンパ1のD部拡大図である。
【0019】
図示するように、本実施の形態に係るロータリダンパ1は、ケース11と、ケース11に対して相対的に回転可能にケース11内に収容されたロータ12と、ケース11内に充填されたシリコーンオイル等の粘性流体(不図示)と、ロータ12を粘性流体とともにケース11内に封じ込める蓋15と、一対の軸力発生部材17と、を備えている。
【0020】
図5(A)は、ケース11の正面図であり、図5(B)は、図5(A)に示すケース11のC-C断面図であり、図5(C)は、ケース11の背面図であり、図5(D)は、図5(A)に示すケース11のE部拡大図であり、図5(E)は、図5(A)に示すケース11のD-D断面拡大図である。
【0021】
ケース11は、アルミニウム等の金属製であり、図示するように、ケース11内に、一端が開口した円筒室(底付き円筒状の空間)111が形成されており、この円筒室111の底部112には、ロータ12挿入用の開口部113が形成されている。ロータ12は、後述するロータ本体121の下端部123a(図6参照)がこの開口部113に挿入されることにより、ロータ12の回転軸120が円筒室111の中心線110と一致するように、円筒室111内に収容される(図2(A)参照)。また、円筒室111の側壁面114には、径方向内方に突出し、先端面116がロータ12の後述するロータ本体121の外周面124(図6参照)と近接して、円筒室111を仕切る一対の仕切り部115が、円筒室111の中心線110に沿って、この中心線110に対して軸対称に形成されている。
【0022】
一対の仕切り部115には、それぞれ、後述の第1シール材13が装着される(図4(B)参照)。また、一対の仕切り部115は、それぞれ、蓋15の裏面153(図9参照)との対向面である上面119に形成され、軸力発生部材17を装着するための凸部18を有する。凸部18の上面180には、軸力発生部材17の後述する調整部174を挿入するための溝181が円筒室111の径方向に沿って形成されており、その溝底182は、仕切り部115の上面119よりも蓋15側に位置している。また、ケース11の径方向に沿った凸部18の両側面183には、それぞれ、軸力発生部材17の後述する圧接部175を装着するための溝184が円筒室111の中心線110に沿って形成されている。
【0023】
また、円筒室111の側壁面114の開口側118には、第1ネジ部として、蓋15の後述する雄ネジ部152(図9参照)と螺合する雌ネジ部117が形成されている。
【0024】
図6(A)および図6(B)は、ロータ12の正面図および側面図であり、図6(C)は、図6(A)に示すロータ12のE-E断面図である。
【0025】
ロータ6は、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂であり、図示するように、円筒状のロータ本体121と、ロータ12の回転軸120に対して軸対称に形成された一対のベーン(回転翼)122と、を備えている。ベーン122は、ロータ12の回転軸120に沿って形成され、ロータ本体121の外周面124から径方向外方へ突出し、先端面125がケース11の円筒室111の側壁面114と近接して、円筒室111を仕切る。ベーン122には、ロータ12の回転方向に沿ってベーン122の両側面127a、127b間を貫く流路126が形成されている。また、一対のベーン122には、それぞれ、後述の第2シール材14が装着される(図4(B)参照)。
【0026】
ロータ本体121には、外部からの回転力をロータ12に伝達する六角シャフト(不図示)を挿入するための貫通孔128が、回転軸120を中心にして形成されている。そして、ロータ本体121の下端部123aは、ケース11の円筒室111の底部112に形成された開口部113に回転可能に挿入され(図4(A)参照)、ロータ本体121の上端部123bは、蓋15の後述する開口部150(図9参照)に回転可能に挿入される(図3(A)、(B)参照)。
【0027】
なお、円筒室111の開口部113から粘性流体が外部に漏れないように、Oリング16a等のシール材を、ロータ本体121の下端部123aと円筒室111の開口部113との間に介在させてもよい(図4(A)参照)。
【0028】
図7(A)および図7(B)は、第1シール材13の正面図および側面図であり、図7(C)は、図7(A)に示す第1シール材13のF-F断面図である。
【0029】
図示するように、第1シール材13は、ケース11の円筒室111に形成された仕切り部115に装着可能なコの字形状を有しており、底部130が仕切り部115の先端面116とロータ12のロータ本体121の外周面124との間に介在することにより、これらの隙間を塞ぐ(図4(B)参照)。なお、第1シール材13は、相対的に回転するケース11およびロータ12間に配置されるため、その素材には、ポリアミド等の摺動性に優れた樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
図8(A)および図8(B)は、第2シール材14の正面図および側面図であり、図8(C)は、図8(A)に示す第2シール材14のG-G断面図である。
【0031】
図示するように、第2シール材14は、ロータ12のベーン122に装着可能なコの字形状を有しており、ベーン122の回転方向の幅t1(図6(A)参照)より広い幅t2を有する底部140と、底部140の一方の端部141に一体的に形成され、ベーン122に形成された流路126の径方向の幅t3(図6(B)参照)より広い幅t4を有する第1脚部143と、底部140の他方の端部142に一体的に形成され、ベーン122に形成された流路126の径方向の幅t3より狭い幅t5を有する第2脚部144と、を有する。
【0032】
ベーン122に装着された第2シール材14は、底部140がベーン122の先端面125とケース11の円筒室111の側壁面114との間に介在することにより、これらの隙間を塞ぐ(図4(B)参照)。また、図2(B)に示すように、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に正転方向Nに回転すると、第2シール材14の第1脚部143がベーン122の一方の側面127aと当接して、ベーン122に形成された流路126を塞ぐ。一方、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に反転方向Rに回転すると、第2シール材14の第1脚部143がベーン122の一方の側面127aから離れ、第2脚部144がベーン122の他方の側面127bに当接して、ベーン122に形成された流路126を開放する。なお、第2シール材14は、相対的に回転するケース11およびロータ12間に配置されるため、その素材には、ポリアミド等の摺動性に優れた樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
図9(A)~図9(C)は、蓋15の正面図、側面図、および背面図であり、図9(D)は、図9(A)に示す蓋15のH-H断面図である。
【0034】
図示するように、蓋15には、ケース11の円筒室111の底部112に形成された開口部113と対向する位置に、ロータ12のロータ本体121の上端部123bを挿入するための開口部150が形成されている。また、蓋15の外周面151には、第2ネジ部として、円筒室111の側壁面114の開口側118に形成された雌ネジ部117と螺合する雄ネジ部152が形成されている。また、蓋15の下面(裏面)153は、ロータ12のベーン122の上面129との間に、円筒室111に充填された粘性流体の流路として機能する隙間G1を形成する(図3(B)参照)。これらの粘性流体の流路として機能する隙間G1は、蓋15のケース11へのねじ込み量(蓋15の雄ネジ部152とケース11の雌ネジ部117との螺合量)を調整することにより調整可能である。
【0035】
なお、蓋15の開口部150から粘性流体が外部に漏れないように、Oリング16b等のシール材を、ロータ12のロータ本体121の上端部123bと蓋15の開口部150との間に介在させてもよい。同様に、蓋15の雄ネジ部152とケース11の円筒室111の雌ネジ部117との螺合部分から粘性流体が外部に漏れないように、Oリング16c等のシール材を、蓋15の外周面151と円筒室111の側壁114との間に介在させてもよい(図3(A)および図3(B)参照)。
【0036】
図10(A)~図10(D)は、軸力発生部材17の正面図、上面図、底面図、および側面図であり、図10(E)は、図10(C)に示す軸力発生部材17のI-I断面拡大図であり、図10(F)は、図10(D)に示す軸力発生部材17のJ-J断面拡大図である。また、図11(A)は、本実施の形態に係るロータリダンパ1において、ケース11の仕切り部115の凸部18に装着された軸力発生部材17を、ロータリダンパ1の中心から見た拡大図(図5(A)のF方向矢視図に相当)であり、図11(B)は、図11(A)に示す軸力発生部材17のK-K断面拡大図である。
【0037】
軸力発生部材17は、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂、焼結金属等の塑性変形可能な部材、あるいは、天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂系エラストマー等の弾性変形可能な部材で形成され、ケース11の一対の仕切り部115の上面119に形成された凸部18にそれぞれ装着されて、仕切り部115の上面119と蓋15の裏面153との間に介在し、蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との隙間を塞ぐとともに、蓋15のケース11へのねじ込みに対して軸力を発生させる。
【0038】
図示するように、軸力発生部材17は、蓋15の裏面153と接触する上面171を有する矩形状の本体部170と、本体部170の下面172に形成され、ケース11の仕切り部115の上面119に形成された凸部18の両側面183を挟み込んで凸部18を把持する一対のアーム部173と、一対のアーム部173間に配置され、凸部18に向けて突出して、凸部18の溝181に挿入される調整部174と、を有する。
【0039】
一対のアーム部173は、それぞれ、凸部18の両側面183に形成された溝184に圧接する圧接部175を有する。圧接部175は、凸部18の両側面183に形成された溝184とともに、軸力発生部材17を凸部18に装着する際の位置決めとして機能する。また、この圧接部175により、一対のアーム部173は、軸力発生部材17が凸部18から脱落しないように軸力発生部材17を強く把持する。一対のアーム部173は、調整部174の長さL2と、仕切り部115の上面119からこの上面119に形成された凸部18の溝181の溝底182までの長さL3(図5(E)参照)との合計より短い長さL4(<L2+L3)を有する。
【0040】
調整部174は、仕切り部115の上面119に形成された凸部18の溝181の深さL1(図5(E)参照)よりも長い長さL2(>L1)を有し、その先端部176は、その根元部177に対して厚さ方向が幅狭に形成されている。ここで、凸部18の溝181は、調整部174の先端部176の塑性変形あるいは弾性変形を許容する大きさを有する。また、調整部174の根元部177は、厚さ方向の両側面179に、凸部18の溝181の両側壁185と圧接する圧接部178を有する。この圧接部178により、調整部174は、凸部18の溝181に嵌合し、軸力発生部材17の凸部18からの脱落をより確実に阻止する。
【0041】
一対のアーム部173が、調整部174の長さL2と、仕切り部115の上面119から凸部18の溝181の溝底182までの長さL3との合計より短い長さL4を有し、調整部174が、凸部18の溝181の深さL1よりも長い長さL2を有するので、一対のアーム部173を仕切り部115の上面119に当接させることなく、調整部174の先端部176を凸部18の溝181の溝底182に当接させることができる。また、凸部18の溝181が、調整部174の先端部176の塑性変形あるいは弾性変形を許容する大きさを有するので、蓋15のケース11へのねじ込みに対して、軸力を発生させつつ、本体部170の塑性変形あるいは弾性変形に加えて、調整部174の先端部176が積極的に塑性変形あるいは弾性変形することにより、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1の調整シロを大きくすることができる。
【0042】
上記構成のロータリダンパ1において、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に正転方向Nに回転すると(図2(B)参照)、第2シール材14の第1脚部143がベーン122の一方の側面127aと当接して、ベーン122に形成された流路126を塞ぐ。このとき、ケース11の円筒室111の仕切り部115に装着された第1シール材13により、仕切り部115の先端面116とロータ12のロータ本体121の外周面124との隙間が塞がれ、かつ、ロータ12のベーン122に装着された第2シール材14により、ベーン122の先端面125とケース11の円筒室111の側壁面114との隙間が塞がれている(図4(B)参照)。したがって、円筒室111内に充填された粘性流体の移動が、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1を介してのみに制限され、ベーン122とベーン122に対して正転方向N側に位置する仕切り部115とにより区切られた領域111a(図2(B)参照)内の粘性流体に対する圧力が高まる。このため、強い制動トルクが発生する。
【0043】
ここで、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1は、蓋15のケース11へのねじ込み量(蓋15の雄ネジ部152とケース11の雌ネジ部117との螺合量)を調整することにより調整可能である。このため、この隙間G1を介して移動する粘性流体の移動量を調整することにより、回転により発生する制動トルクを調整できる。
【0044】
また、蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との間に、蓋15に反力を付与する軸力発生部材17を配置することにより、蓋15のケース11へのねじ込みに対して軸力を発生させ、蓋15の雄ネジ部152とケース11の雌ネジ部117との螺合部分から粘性流体が漏れるのを防止しつつ、隙間G1の調整シロを大きくして、制動トルクの調整範囲を広くすることができる。
【0045】
一方、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に反転方向Rに回転すると(図2(B)参照)、第2シール材14の第1脚部143がベーン122の一方の側面127aから離れて、ベーン122に形成された流路126を開放する。したがって、円筒室111内に充填された粘性流体の移動が、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1に加えて、ベーン122に形成された流路126を介して行われるため、ベーン122とベーン122に対して反転方向R側に位置する仕切り部115とにより区切られた領域111b(図2(B)参照)内の粘性流体に対する圧力は高くならない。このため、弱い制動トルクが発生する。
【0046】
以上、本発明の一実施の形態を説明した。
【0047】
本実施の形態によれば、充填された粘性流体の移動を制限することにより、加えられた回転力に対して制動トルクを発生させるロータリダンパ1において、蓋15をケース11へのねじ込み式とし、蓋15のケース11へのねじ込み量によって、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1を調整可能としている。このため、部品点数を増加させることなく、簡易な構成かつ簡単な作業で、隙間G1を介して移動する粘性流体の移動量を調整して、回転により発生する制動トルクを調整することができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との間に、塑性変形あるいは弾性変形可能な部材で形成され、蓋15に反力を付与する軸力発生部材17を配置することにより、蓋15のケース11へのねじ込みに対して軸力を発生させ、蓋15の雄ネジ部152とケース11の雌ネジ部117との螺合部分から粘性流体が漏れるのを防止しつつ、隙間G1の調整シロを大きくして、制動トルクの調整範囲を広くすることができる。また、軸力発生部材17の軸力により蓋15とケース11とが強固に螺合し、蓋15が回転する方向に外力が加わった場合でも、蓋15が容易に回転するのを防止することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、仕切り部115の上面119に凸部18を設けるとともに、軸力発生部材17に、凸部18を挟み込んで把持する一対のアーム部173を設けている。このため、軸力発生部材17を仕切り部115に容易に取り付けることができる。
【0050】
また、本実施の形態では、軸力発生部材17に、一対のアーム部173間に配置され、仕切り部115の上面119に設けられた凸部18に向けて突出し、凸部18の溝181に挿入されて、この溝181の溝底182と当接する調整部174を設けるとともに、凸部18の溝181を、調整部174の先端部176の塑性変形あるいは弾性変形を許容する大きさとしている。このため、蓋15のケース11へのねじ込みに対して、調整部174の先端部176が溝181の溝底182を押圧して、積極的に塑性変形あるいは弾性変形するので、隙間G1の調整シロをさらに大きくすることができる。
【0051】
また、本実施の形態において、軸力発生部材17の一対のアーム部173は、それぞれ、仕切り部115の上面119に形成された凸部18の両側面183に形成された溝184に圧接する圧接部175を有する。この圧接部175により、一対のアーム部173は、軸力発生部材17が凸部18から脱落しないように軸力発生部材17を強く把持することができる。また、この圧接部175は、凸部18の両側面183に形成された溝184とともに、軸力発生部材17を凸部18に装着する際の位置決めとして機能し、軸力発生部材17を凸部18に正しく装着することができる。
【0052】
また、本実施の形態において、軸力発生部材17の調整部174は、根元部177の両側面179に、凸部18の溝181の両側壁185と圧接する圧接部178を有する。この圧接部178により、調整部174は、凸部18の溝181に嵌合し、軸力発生部材17の凸部18からの脱落をより確実に阻止することができる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、第1シール材13および第2シール材14にポリアミド等の摺動性に優れた樹脂を用いることにより、第1シール材13および第2シール材14がロータ12のロータ本体121の外周面124を摺動可能に支持する滑り軸受として機能するため、外部からの回転力をロータ12に伝達する六角シャフトの偏心等によるガタつきを吸収して、六角シャフトを滑らかに回転させることができる。
【0054】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0055】
例えば、上記の実施の形態では、ベーン122に形成された流路126以外の粘性流体の流路として、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1を用いる場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との隙間を塞がないように軸力発生部材17を配置することにより、ベーン122に形成された流路126以外の粘性流体の流路として、蓋15の裏面153とベーン122の上面129との隙間G1に加えて、蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との隙間を用いてもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、円筒室111に一対の仕切り部115を設けるとともに、ロータ12に一対のベーン122を設けた場合を例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。円筒室111に形成された仕切り部115およびロータ12に形成されたベーン122が同数であれば、1または3以上形成されていてもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、ベーン122に装着された第2シール材14に、ベーン122に形成された流路126を開閉する逆止弁の機能を持たせているが、本発明はこれに限定されない。ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に正転方向Nに回転すると、ベーン122に形成された流路126を塞ぎ、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に反転方向Rに回転すると、ベーン122に形成された流路126を開放する逆止弁を、第2シール材14とは別個に設けてもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、ベーン122に、ロータ12の回転方向に沿ってベーン122の両側面127a、127bを貫く流路126を形成しているが、本発明はこれに限定されない。ベーン122に代えて、あるいはベーン122とともに、仕切り部115に、ロータ12の回転方向に沿って仕切り部115の両側面を貫く流路を形成してもよい。この場合、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に正転方向Nに回転すると、仕切り部115に形成された流路を塞ぎ、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に反転方向Rに回転すると、仕切り部115に形成された流路を開放する逆止弁を設ける。
【0059】
なお、仕切り部115に流路を形成する場合、第1シール材13を第2シール材14と同様の形状、すなわち、仕切り部115の外周縁の周方向幅より広い幅を有する底部と、底部の一方の端部に一体的に形成され、仕切り部115に形成された流路の径方向の幅より広い幅を有する第1脚部と、底部の他方の端部に一体的に形成され、仕切り部115に形成された流路の径方向の幅より狭い幅を有する第2脚部と、を有する形状としてもよい。そして、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に正転方向Nに回転すると、第1シール材13の第1脚部が仕切り部115の一方の側面と当接して、仕切り部115に形成された流路を塞ぎ、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に反転方向Rに回転すると、第1シール材13の第1脚部が仕切り部115の一方の側面から離れ、第2脚部が仕切り部115の他方の側面に当接して、仕切り部115に形成された流路を開放する逆止弁としての機能を、第1シール材13に持たせてもよい。
【0060】
また、ベーン122に流路126を形成しない場合、第2シール材14は、ベーン122の先端面125とケース11の円筒室111の側壁面114との隙間を塞ぐことができるものであれば、どのような形状でもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に正転方向Nに回転した場合に強い制動トルクを発生させ、ロータ12がケース11の円筒室111に対して相対的に反転方向Rに回転した場合に弱い制動トルクを発生させる、いわゆる一方向性のロータリダンパを例にとり説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明は、正転方向Nおよび反転方向Rの両方向において強い制動トルクを発生させる、いわゆる双方向性のロータリダンパにも適用可能である。この場合、ロータ12のベーン122から流路126を省略する。また、第2シール材14は、ベーン122の先端面125とケース11の円筒室111の側壁面114との隙間を塞ぐことができるものであればよい。
【0062】
また、本実施の形態では、ケース11の円筒室111に設けられた仕切り部115に第1シール材13を装着しているが、本発明はこれに限定されない。第1シール材13は、省略されていてもよい。同様に、ロータ12のベーン122に第2シール材14を装着しているが、第2シール材14も省略されていてもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、蓋15の裏面153と仕切り部115の上面119との間に、塑性変形あるいは弾性変形可能な部材で形成された軸力発生部材17を配置することにより、蓋15のケース11へのねじ込みに対して軸力を発生させている。しかし、本発明はこれに限定されない。ケース11を熱可塑性樹脂で形成し、仕切り部115の上面119に蓋15の裏面153と当接する凸部を軸力発生部としてケース11と一体的に形成してもよい。この場合、軸力発生部(凸部)が、蓋15のケース11へのねじ込みに対して軸力を発生させ、蓋15の雄ネジ部152とケース11の雌ネジ部117との螺合部分から粘性流体が漏れるのを防止しつつ、塑性変形あるいは弾性変形することにより、隙間G1の調整シロを大きくして、制動トルクの調整範囲を広くすることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、ケース11の内周面(円筒室111の側壁面114)の開口側118に雌ネジ部117を第1ネジ部として形成し、蓋15の外周面151にケース11の雌ネジ部117と螺合する雄ネジ部152を第2ネジ部として形成している。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、蓋15をボトルキャップ形状(底付き円筒形状)とし、その筒部の内周面に雌ネジ部を第2ネジ部として形成し、ケース11の外周面の開口側118に、蓋15の雌ネジ部と螺合する雄ネジ部を第1ネジ部として形成してもよい。
【0065】
本実施の形態に係るロータリダンパ1は、例えば、自動車、鉄道車両、航空機、船舶等で用いられるリクライニング機能付きの座席シートに広く適用できる。また、双方向に回転する回転体の一方向側への回転運動を制動することが必要とされる装置であれば、リクライニング機能付きの座席シート以外の装置にも広く適用できる。
【符号の説明】
【0066】
1:ロータリダンパ 11:ケース 12:ロータ
13:第1シール材 14:第2シール材 15:蓋
16a、16b、16c:Oリング 17:軸力発生部材
18:凸部 111:円筒室 112:円筒室111の底部
113:円筒室111の開口部 114:円筒室111の側壁
115:仕切り部 116:仕切り部115の先端面
117:雌ネジ部 118:円筒室111の開口側
119:仕切り部115の上面 121:ロータ本体
122:ベーン 123a、123b:ロータ本体121の端部
124:ロータ本体の外周面 125:ベーン122の先端面
126:流路 127a、127b:ベーン122の側面
128:ロータ本体121の貫通穴 129:ベーン122の上面
130:第1シール材13の底部 140:第2シール材14の底部
141、142:第2シール材14の底部140の端部
143:第2シール材14の第1脚部
144:第2シール材14の第2脚部
150:蓋15の開口部 151:蓋15の外周面
152:雄ネジ部 153:蓋15の下面
170:軸力発生部材17の本体部 171:本体部171の上面
172:本体部171の下面 173:アーム部
174:調整部 175:圧接部
176:調整部174の先端部 177:調整部174の根元部
178:圧接部 179の根元部177の側面
180:凸部18の上面 181:溝 182:溝底
183:凸部18の側面 184:溝 185:溝181の側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11