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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081162
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】結合金具
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/086 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
F16L37/086
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192536
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸城 賢三
(72)【発明者】
【氏名】和泉田 拓実
(72)【発明者】
【氏名】荒井 匠
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE26
3J106EA03
3J106EB02
3J106ED36
3J106EE02
3J106EF15
(57)【要約】
【課題】 受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を効果的に抑制する。
【解決手段】 一実施形態に係る結合金具は、差し金具と、受け金具とを備え、差し金具を受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた凸部と、前記受け金具に設けられ前記受け金具の軸に向けて付勢された爪とが係合し、前記外周面に対しスライド可能に設けられた押し輪を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記爪を押し上げることにより前記凸部と前記爪の係合が解除される。前記押し輪の内周面は、第1内径を有する第1部分と、前記第1内径よりも小さい第2内径を有する第2部分と、を含む。前記第1部分および前記第2部分は、前記押し輪の軸を中心とした周方向に並んでいる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し金具を受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた凸部と、前記受け金具に設けられ前記受け金具の軸に向けて付勢された爪とが係合し、前記外周面に対しスライド可能に設けられた押し輪を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記爪を押し上げることにより前記凸部と前記爪の係合が解除される結合金具であって、
前記押し輪の内周面は、第1内径を有する第1部分と、前記第1内径よりも小さい第2内径を有する第2部分と、を含み、
前記第1部分および前記第2部分は、前記押し輪の軸を中心とした周方向に並んでいる、
結合金具。
【請求項2】
前記差し口は、前記外周面に設けられた止め輪を備え、
前記押し輪は、前記軸と平行な軸方向において前記凸部と前記止め輪の間に位置し、
前記第2内径は、前記止め輪の外径よりも小さい、
請求項1に記載の結合金具。
【請求項3】
前記第1内径は、前記止め輪の前記外径よりも大きい、
請求項2に記載の結合金具。
【請求項4】
前記第2部分は、前記第2内径を有する中央部と、前記周方向において前記中央部の両側方にそれぞれ位置する第1側部および第2側部と、を含み、
前記第1側部および前記第2側部は、前記中央部に近づくほど内径が小さくなる形状を有している、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項5】
前記押し輪の前記内周面は、複数の前記第2部分を有している、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項6】
前記押し輪の前記内周面は、一対の前記第2部分を有し、
前記一対の前記第2部分は、前記軸を挟んで対向している、
請求項5に記載の結合金具。
【請求項7】
前記押し輪の前記内周面は、3つの前記第2部分を有し、
前記3つの前記第2部分は、前記軸を中心とした半径方向において互いに対向しない位置に設けられている、
請求項5に記載の結合金具。
【請求項8】
前記押し輪は、前記凸部の側の先端と、前記先端の反対側に位置する後端と、を有し、
前記第2部分は、前記後端側から前記先端側に向かうに連れて前記軸から離れるように傾斜している、
請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項9】
前記押し輪の前記内周面は、前記第1内径よりも小さい第3内径を有する第3部分をさらに含み、
前記第1部分および前記第3部分は、前記軸と平行な軸方向に並んでいる、
請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項10】
前記第3部分は、前記周方向に連続した環状に形成され、前記第2部分と繋がっている、
請求項9に記載の結合金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差し金具を受け金具に差し込むことにより両金具が結合される差込式の結合金具に関する。
【背景技術】
【0002】
消防用ホース同士を接続するための金具として、雄金具である差し金具と、雌金具である受け金具とを備えた差込式の結合金具が知られている(例えば特許文献1,2参照)。この結合金具においては、差し金具の先端に設けられた環状の凸部と、受け金具に設けられ当該金具の内側に向けて付勢された複数の爪とを係合させることにより、差し金具が受け金具に対して抜け止めされる。
【0003】
各爪は受け金具の軸を中心とした半径方向に移動可能であり、結合時においては差し金具の外周面に接触している。また、差し金具にはその外周面に沿ってスライド可能な押し輪が装着されている。この押し輪により各爪を半径方向に押し上げることで各爪と凸部の係合が解除され、差し金具を受け金具から抜き出すことが可能となる。
【0004】
実際の消防活動においては結合金具が現場の障害物などに接触した際に押し輪が押され、差し金具と受け金具が離脱する虞がある。この点に関し、特許文献1,2においては意図せぬ離脱を抑制するための結合金具の構造が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示された結合金具においては、差し金具の外周面および押し輪の内周面に滑り止め溝が形成され、かつこれら外周面と内周面の間に隙間が設けられている。これにより、障害物によって押し輪に不均等な力が加わった場合には押し輪の先端の一部が差し金具の外周面から浮き上がるとともに他の部分が当該外周面に当接する。この当接した部分において差し金具の外周面と押し輪の内周面の溝が係合するために押し輪の移動が規制され、押し輪の先端が爪に到達しない。
【0006】
特許文献2に開示された結合金具においては、軸線方向に延びる保護枠が受け金具の周囲に設けられ、結合時には保護枠が押し輪(解除部材)のフランジ部よりも受け金具側に位置している。さらに保護枠は弾性を有しており、障害物が押し輪に接触した場合でも保護枠の内縁を弾性変形させてフランジ部を受け口側に移動させる十分な力が加わらない限り、押し輪の先端が爪に到達しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-14477号公報
【特許文献2】特開2018-31464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1,2に開示された結合金具を踏まえても、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を抑制するための構造に関しては未だに種々の改善の余地がある。
【0009】
そこで、本発明は、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱をより効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係る結合金具は、差し金具と、受け金具とを備え、差し金具を受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた凸部と、前記受け金具に設けられ前記受け金具の軸に向けて付勢された爪とが係合し、前記外周面に対しスライド可能に設けられた押し輪を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記爪を押し上げることにより前記凸部と前記爪の係合が解除される。前記押し輪の内周面は、第1内径を有する第1部分と、前記第1内径よりも小さい第2内径を有する第2部分と、を含む。前記第1部分および前記第2部分は、前記押し輪の軸を中心とした周方向に並んでいる。
【0011】
前記差し口は、前記外周面に設けられた止め輪をさらに備えてもよい。この場合において、前記押し輪は、前記軸と平行な軸方向において前記凸部と前記止め輪の間に位置し、前記第2内径は、前記止め輪の外径よりも小さくてもよい。また、前記第1内径は、前記止め輪の前記外径よりも大きくてもよい。
【0012】
前記第2部分は、前記第2内径を有する中央部と、前記周方向において前記中央部の両側方にそれぞれ位置する第1側部および第2側部と、を含んでもよい。この場合において、前記第1側部および前記第2側部は、前記中央部に近づくほど内径が小さくなる形状を有してもよい。
【0013】
前記押し輪の前記内周面は、複数の前記第2部分を有してもよい。例えば、前記押し輪の前記内周面は、一対の前記第2部分を有し、前記一対の前記第2部分は、前記軸を挟んで対向している。
【0014】
他の例として、前記押し輪の前記内周面は、3つの前記第2部分を有し、前記3つの前記第2部分は、前記軸を中心とした半径方向において互いに対向しない位置に設けられている。
【0015】
前記押し輪は、前記凸部の側の先端と、前記先端の反対側に位置する後端とを有し、前記第2部分は、前記後端側から前記先端側に向かうに連れて前記軸から離れるように傾斜していてもよい。
【0016】
前記押し輪の前記内周面は、前記第1内径よりも小さい第3内径を有する第3部分をさらに含んでもよい。この場合において、前記第1部分および前記第3部分は、前記軸と平行な軸方向に並んでいてもよい。前記第3部分は、前記周方向に連続した環状に形成され、前記第2部分と繋がっていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、受け金具と差し金具の意図せぬ離脱を効果的に抑制することが可能な改善された結合金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1実施形態に係る結合金具の概略的な側面図である。
図2図2は、図1に示した受け口をしめ輪側から軸方向に沿って見た図である。
図3図3は、受け口と差し口が連結された状態における結合金具の部分断面図である。
図4図4は、押し輪を後端側から見た図である。
図5図5は、図4におけるV-V線に沿う押し輪の概略的な断面図である。
図6図6は、図4におけるVI-VI線に沿う押し輪の概略的な断面図である。
図7図7は、第1部分を含む差し口の概略的な断面図である。
図8図8は、第2部分を含む差し口の概略的な断面図である。
図9図9は、第2実施形態に係る押し輪を後端側から見た図である。
図10図10は、第3実施形態に係る押し輪を後端側から見た図である。
図11図11は、第4実施形態に係る押し輪の概略的な横断面図である。
図12図12は、図11におけるXII-XII線に沿う押し輪の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
いくつかの実施形態につき図面を参照しながら説明する。
各実施形態においては、主に消防分野での使用が想定される差込式の結合金具を例示する。ただし、当該結合金具は、消防分野以外にも工業用や農業用の流路の結合など種々の用途で利用できる。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る結合金具Cの概略的な側面図である。結合金具Cは、受け口Fと、差し口Mとを備えている。受け口Fは、軸AX1を中心とした円筒状の受け金具1(雌金具)を備えている。差し口Mは、軸AX2を中心とした円筒状の差し金具2(雄金具)を備えている。
【0021】
図1において、受け金具1と差し金具2は、軸AX1,AX2が一致した状態で並んでいる。この状態において軸AX1,AX2と平行な方向を軸方向Dxと定義する。また、軸AX1,AX2を中心として軸AX1,AX2から離れる方向を半径方向Drと定義する。
【0022】
受け金具1は、軸方向Dxにおいて第1端部1aおよび第2端部1bを有している。さらに受け金具1は、消防用ホースの端部に挿入される装着部11を第1端部1a側に有するとともに、装着部11よりも外径が大きい拡径部12を第2端部1b側に有している。装着部11の外周面には、消防用ホースを抜け止めするための軸方向Dxに並ぶ複数の環状の段差が形成されている。
【0023】
受け口Fは、拡径部12に連結された環状のしめ輪3と、しめ輪3の外周面に装着された環状のバンド4とをさらに備えている。しめ輪3は金属材料で形成され、例えば複数のねじによって拡径部12に連結されている。バンド4は例えばゴムで形成され、その外周面は受け口Fおよび差し口Mにおいて最も半径方向Drに突出している。
【0024】
差し金具2は、軸方向Dxにおいて第1端部2aおよび第2端部2bを有している。さらに差し金具2は、受け金具1側の消防用ホースとは異なる他の消防用ホースの端部に挿入される装着部21を第1端部2a側に有するとともに、周囲よりも半径方向Drにやや突出した環状の凸部22を第2端部2b側に有している。装着部21の外周面には、装着部11と同じく複数の環状の段差が形成されている。
【0025】
差し口Mは、装着部21と凸部22の間における差し金具2の外周面2cに固定された環状の止め輪5と、止め輪5よりも凸部22側に位置する押し輪6とをさらに備えている。止め輪5は、例えば外周面2cに設けられた環状の溝に装着された金属線であり、少なくとも一部が外周面2cよりも半径方向Drに突出している。
【0026】
押し輪6は、軸方向Dxにおいて、先端6aと、その反対側の後端6bとを有している。さらに、押し輪6は、先端6aを含む円筒部61と、後端6bを含むフランジ部62とを有している。円筒部61は、外周面2cを囲う円筒状である。フランジ部62は、円筒部61から半径方向Drに突出している。先端6aは、軸方向Dxにおいて凸部22の側面と対向している。凸部22および止め輪5により、押し輪6が差し金具2に対し抜け止めされている。
【0027】
図2は、受け口Fをしめ輪3側から見た図である。図2に示すように、軸AX1,AX2を中心とした周方向Dθを定義する。図2に示すように、受け金具1の内部には、3つの爪7A,7B,7Cが配置されている。
【0028】
爪7A,7B,7Cは、周方向Dθに沿った円弧状であり、均等な間隔で周方向Dθに並んでいる。なお、受け口Fが備える爪の数は3つに限定されず、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0029】
図3は、受け口Fと差し口Mが連結された状態における結合金具Cの部分断面図である。押し輪6は、差し金具2の外周面2cに対して固定されていない。押し輪6は、差し口Mと受け口Fが結合されていない状態および差し口Mと受け口Fが結合された状態の双方において、外周面2cに対し周方向Dθに回動可能であるとともに、凸部22と止め輪5の間において軸方向Dxにスライド可能である。
【0030】
図3に示すように、受け金具1の第2端部1bは、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。しめ輪3は、第2端部1bと軸方向Dxに対向する端部3aを有している。端部3aは、周方向Dθの全体において軸AX1に向けて突出している。
【0031】
受け口Fは、拡径部12の内側に配置されたシール材8と、爪7A,7B,7Cを保持する爪座9とをさらに備えている。シール材8は、例えば環状のゴムパッキンである。爪座9は、しめ輪3によって受け金具1に固定されており、第2端部1bと端部3aの間に配置されている。
【0032】
爪7Aは、爪座9と第2端部1bの間において、半径方向Drと平行に移動可能である。爪7Aは、例えば板ばねである弾性部材70によって軸AX1に向けて付勢されている。なお、爪7B,7Cも爪7Aと同じく爪座9と第2端部1bの間において半径方向Drと平行に移動可能であり、弾性部材70によって軸AX1に向けて付勢されている。
【0033】
受け口Fと差し口Mを結合する際には、しめ輪3の開口を通じて差し金具2の第2端部2bを受け金具1の拡径部12に挿入する。このとき、凸部22が弾性部材70の付勢力に抗して爪7A,7B,7Cを半径方向Drに押し上げる。これにより、図3に示すように第2端部2bが拡径部12の内面に接触する位置まで差し金具2が受け金具1に差し込まれる。
【0034】
第2端部2bが拡径部12の内面に接触した状態においては、受け金具1の内部に形成された第1流路10と、差し金具2の内部に形成された第2流路20とが接続される。このとき、シール材8のリップが凸部22の外周面22aに接触し、受け金具1と差し金具2の隙間が液密に保たれる。
【0035】
さらに、爪7A,7B,7Cが弾性部材70の付勢力により差し金具2の外周面2cに接触する。この状態においては、爪7A,7B,7Cのそれぞれの一部が凸部22と軸方向Dxに対向する。すなわち、凸部22と爪7A,7B,7Cが軸方向Dxに係合するために、受け金具1と差し金具2を離脱させることができない。
【0036】
受け金具1と差し金具2を離脱させる際には、フランジ部62を押して、押し輪6を凸部22に向けスライドさせる。これにより、押し輪6の先端6aが爪7A,7B,7Cを押し上げ、凸部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除される。凸部22と爪7A,7B,7Cの係合が解除された状態においては、差し金具2を受け金具1から抜き出すことができる。
【0037】
図4は、押し輪6を後端6b側から見た図である。図5は、図4におけるV-V線に沿う押し輪6の概略的な断面図である。図6は、図4におけるVI-VI線に沿う押し輪6の概略的な断面図である。
【0038】
図4乃至図6に示すように、押し輪6の軸をAX6と定義する。また、図4に示すように、軸AX6を中心とした半径方向Dr6および周方向Dθ6を定義する。さらに、図5および図6に示すように、軸AX6と平行な軸方向Dx6を定義する。軸AX6が軸AX1,AX2と一致している状態においては、半径方向Dr6と半径方向Drが一致し、周方向Dθ6と周方向Dθが一致し、軸方向Dx6と軸方向Dxが一致する。
【0039】
押し輪6は、内周面63を有している。図4に示すように、内周面63は、一対の第1部分64(64A,64B)と、一対の第2部分65(65A,65B)とを含む。第1部分64A,64Bは、軸AX6を挟んで対向している。第2部分65A,65Bは、軸AX6を挟んで対向している。
【0040】
第1部分64A,64Bは、いずれも周方向Dθ6において第1長さL1を有している。第2部分65A,65Bは、いずれも周方向Dθ6において第2長さL2を有している。第1長さL1は、第2長さL2よりも十分に大きい(L1>L2)。例えば、第1長さL1は第2長さL2の10倍以上である。
【0041】
なお、第1部分64Aの周方向Dθ6における長さと、第1部分64Bの周方向Dθ6における長さとが異なってもよい。同様に、第2部分65Aの周方向Dθ6における長さと、第2部分65Bの周方向Dθ6における長さとが異なってもよい。
【0042】
第1部分64A,64Bは、軸AX6を中心とした曲面である。第2部分65A,65Bは、軸AX6に向けて突出した形状を有している。すなわち、第2部分65A,65Bは、凸部ということもできる。
【0043】
具体的には、第2部分65Aは、中央部65aと、周方向Dθ6において中央部65aの両側方にそれぞれ位置する第1側部65bおよび第2側部65cとを含む。中央部65aは、第2部分65Aにおいて軸AX6に向け最も突出した箇所である。なお、第2部分65Bは、第2部分65Aと同様の形状を有している。第2部分65Aの中央部65aと第2部分65Bの中央部65aは、軸AX6を挟んで対向している。すなわち、これら中央部65aは、周方向Dθ6において180度ずれた位置にある。
【0044】
第1部分64A,64Bは、第1内径R1を有している。第1内径R1は、第1部分64Aから軸AX6を通って第1部分64Bに至る直線の長さに相当する。
【0045】
第2部分65A,65Bは、第2内径R2を有している。第2内径R2は、第2部分65A,65Bの中央部65a間の距離に相当する。
【0046】
第2内径R2は、第1内径R1よりも小さい(R1>R2)。第1内径R1と第2内径R2の差は、例えば1mm以上であり、好ましくは2mm以上である。一例では、結合金具Cが一般的な65A町野金具と同様の構成である場合において、第1内径R1は66.4~66.6mmであり、第2内径R2は64mmである。
【0047】
第1側部65bおよび第2側部65cは、中央部65aに近づくほど内径が小さくなる形状を有している。すなわち、第1側部65bおよび第2側部65cの内径は、第2内径R2以上かつ第1内径R1以下の範囲で変化する。
【0048】
図4の例においては、第1側部65bが曲率半径rbの曲面であり、第2側部65cが曲率半径rcの曲面である。第1側部65bの曲率中心Obは、中央部65aと軸AX6を繋ぐ線分よりも左方の領域(当該線分に対し第1側部65bと同じ側の領域)に位置している。第2側部65cの曲率中心Ocは、中央部65aと軸AX6を繋ぐ線分よりも右方の領域(当該線分に対し第2側部65cと同じ側の領域)に位置している。第2部分65Bの第1側部65bおよび第2側部65cの形状も、第2部分65Aと同様である。
【0049】
押し輪6の内周面63の形状は、軸方向Dx6における全体にわたり、図4に示したものと同様である。すなわち、図5に示すように第1部分64A,64Bを含む断面においては、内周面63が軸方向Dx6と平行な直線状となる。同じく、図6に示すように第2部分65A,65Bを含む断面においては、内周面63が軸方向Dx6と平行な直線状となる。
【0050】
ただし、押し輪6の内周面63は、軸方向Dx6において必ずしも一様である必要はない。例えば図6の断面において、第2部分65A,65Bが後端6b側に設けられ、第2部分65A,65Bよりも先端6a側に内径が第2内径R2よりも大きい部分が設けられてもよい。
【0051】
図5に示すように、第1部分64A,64Bを含む断面において、円筒部61は第1厚さt1を有している。図6に示すように、第2部分65A,65Bを含む断面において、円筒部61は第2厚さt2を有している。第1厚さt1は、第2厚さt2よりも小さい(t1<t2)。なお、円筒部61の外径は、周方向Dθ6のいずれの位置においても同じである。
【0052】
図7は、第1部分64A,64Bを含む差し口Mの概略的な断面図である。図8は、第2部分65A,65Bを含む差し口Mの概略的な断面図である。これらの図に示すように、押し輪6は、軸方向Dx6において凸部22と止め輪5の間に位置している。
【0053】
止め輪5は、外径R5を有している。図7に示すように、第1内径R1は、外径R5よりも大きい(R1>R5)。一方、図8に示すように、第2内径R2は、外径R5よりも小さい(R2<R5)。
【0054】
図7および図8においては、軸方向Dx6が差し金具2の軸方向Dxと平行な状態の押し輪6を実線で示すとともに、軸方向Dx6が軸方向Dxに対して最大限に傾いた状態の押し輪6を鎖線で示している。
【0055】
図7において、例えば力Pがフランジ部62の図中下部(第1部分64B側の部分)に加わると、押し輪6にモーメントが働き、鎖線で示すように押し輪6が傾斜する。このとき、先端6aのうち第1部分64B側の部分と、後端6bのうち第1部分64A側の部分とが外周面2cに接触する。力Pがフランジ部62の図中上部に加わると、押し輪6の傾斜方向は逆となる。
【0056】
同様に、図8において、例えば力Pがフランジ部62の図中下部(第2部分65B側の部分)に加わると、押し輪6にモーメントが働き、鎖線で示すように押し輪6が傾斜する。このとき、先端6aのうち第2部分65B側の部分と、後端6bのうち第2部分65A側の部分とが外周面2cに接触する。力Pがフランジ部62の図中上部に加わると、押し輪6の傾斜方向は逆となる。
【0057】
上述の通り、第1内径R1は第2内径R2よりも大きい。したがって、第1部分64A,64Bを含む断面における内周面63と外周面2cの隙間は、第2部分65A,65Bを含む断面における当該隙間よりも大きい。この隙間が大きいことにより、図8に示すように力Pが加わった場合よりも、図7に示すように力Pが加わった場合の方が、押し輪6は軸方向Dxに対して大きく傾くことが可能となる。
【0058】
従来の差込式の結合金具においては、押し輪の内径が周方向の全体にわたって一様な形状である。また、押し輪の内周面と差し金具の外周面の隙間が極めて小さく、全体的に本実施形態における第2部分65A,65Bと外周面2cの隙間と同程度である。このような結合金具で結合された消防用ホースを用いた消火活動において、フランジ部が何らかの障害物に当たると、押し輪が意図せず押されて差し金具と受け金具が離脱する可能性がある。このような離脱は、消火活動の重大な遅延に繋がりかねない。
【0059】
これに対し、本実施形態においては内周面63が大きい内径の第1部分64A,64Bを有している。そのため、フランジ部62のうち第1部分64A,64B近傍の箇所が障害物等で押された場合であっても、図7に示すように押し輪6が大きく傾き、押し輪6を爪7A,7B,7Cに向けてスライドさせる力が働きにくい。これにより、受け金具1と差し金具2の意図せぬ離脱を抑制できる。
【0060】
このように押し輪6が傾いた状態において、先端6aがしめ輪3の端部3aや爪座9に当たってそれ以上押し込めないように端部3aや爪座9の内径を規定してもよい。この場合には、より確実に受け金具1と差し金具2の意図せぬ離脱を抑制できる。
【0061】
なお、仮に内周面63の内径を全体的に大きくする場合、止め輪5による抜け止めが作用しなくなる。そのため、内周面63の内径を全体的に大きくする場合には、止め輪5の外径R5を超えない範囲で当該内径を定める必要がある。
【0062】
この点に関し、本実施形態においては、内周面63が第1部分64A,64Bよりも内径が小さい第2部分65A,65Bを有している。この第2部分65A,65Bが抜け止めの役割を担えば、第1部分64A,64Bの第1内径R1を外径R5よりも大きくし、押し輪6をより大きい角度で傾斜させることが可能となる。
【0063】
なお、受け金具1と差し金具2を意図的に離脱させる際には、例えば押し輪6のフランジ部62の180度ずれた2か所を同時に押せば、押し輪6を傾かせることなく押し込むことができる。したがって、本実施形態に係る構造を適用した場合であっても、離脱の作業に特段の手間は生じない。
【0064】
以上の実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。その他にも、用途に応じた種々の構造を結合金具に適用できる。
以下に、押し輪に適用し得る他の実施形態を開示する。これら実施形態において特に言及しない構成については、第1実施形態と同様のものを適用し得る。
【0065】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態に係る押し輪6を後端6b側から見た図である。この図の例において、押し輪6は、第1部分64と第2部分65を1つずつ有している。本実施形態において、第1内径R1は、第1部分64上の2点を繋ぎかつ軸AX6を通る直線の長さに相当する。また、第2内径R2は、第2部分65の中央部65aから軸AX6を通って第1部分64に至る直線の長さに相当する。
【0066】
[第3実施形態]
図10は、第3実施形態に係る押し輪6を後端6b側から見た図である。この図の例において、押し輪6の内周面63は、3つの第1部分64(64A,64B,64C)と、3つの第2部分65(65A,65B,65C)とを有している。
【0067】
第2部分65A,65B,65Cは、周方向Dθ6において120度ずつずれた位置にある。すなわち、第2部分65A,65B,65Cは、半径方向Dr6において互いに対向しない位置に設けられている。
【0068】
周方向Dθ6において、第1部分64Aは第2部分65A,65Bの間に位置し、第1部分64Bは第2部分65B,65Cの間に位置し、第1部分64Cは第2部分65A,65Cの間に位置している。第1部分64A,64B,64Cの周方向Dθ6における長さは、第2部分65A,65B,65Cの周方向Dθ6における長さよりも十分に大きい。
【0069】
本実施形態において、第1内径R1は、第1部分64A,64B,64C上の2点を繋ぎかつ軸AX6を通る直線の長さに相当する。また、第2内径R2は、中央部65aと第1部分64A,64B,64C上の1点とを繋ぎかつ軸AX6を通る直線の長さに相当する。
【0070】
第2および第3実施形態の構成であっても、例えば、第1内径R1を止め輪5の外径R5よりも大きくし、第2内径R2を外径R5よりも小さくすることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0071】
第1実施形態のように第2部分65A,65Bが半径方向Dr6において対向している場合、図8に示したように、これら第2部分65A,65Bと軸AX6を含む平面内では押し輪6の傾斜可能範囲が小さい。一方、第2実施形態や第3実施形態においては第2部分65(65A,65B,65C)が半径方向Dr6において互いに対向しないので、第2部分65(65A,65B,65C)のいずれかと軸AX6を含む平面内でも押し輪6の傾斜可能範囲が大きくなる。そのため、受け金具1と差し金具2の意図せぬ離脱をより効果的に抑制できる。
【0072】
なお、第2部分65の数は1つ、2つまたは3つに限られず、4つ以上であってもよい。第2部分65を奇数個設け、かつ半径方向Dr6において互いに対向しないように配置すれば、第2部分65のいずれかと軸AX6を含む平面内で押し輪6の傾斜可能範囲を広げる効果が得られる。
【0073】
[第4実施形態]
図11は、第4実施形態に係る押し輪6(円筒部61)の概略的な横断面図である。本実施形態においては、第3実施形態と同じく押し輪6の内周面63が3つの第1部分64(64A,64B,64C)と3つの第2部分65(65A,65B,65C)を有している。
【0074】
図11の例においては、第2部分65A,65B,65Cが平坦な先端面65dを有している。本実施形態における第2内径R2は、例えば先端面65dの中央部と第1部分64A,64B,64C上の1点とを繋ぎかつ軸AX6を通る直線の長さに相当する。
【0075】
なお、先端面65dは、曲面であってもよい。この場合において、先端面65dは、軸AX6を中心とした曲率を有してもよい。また、第2部分65A,65B,65Cは、上述の各実施形態における第2部分65と同様の形状を有してもよい。さらに、上述の各実施形態における第2部分65に図11と同様の第2部分65の形状を適用することもできる。
【0076】
図12は、図11におけるXII-XII線に沿う押し輪6の概略的な断面図である。押し輪6の内周面63は、第3部分66をさらに備えている。第3部分66は、第1内径R1よりも小さい第3内径R3を有している。
【0077】
図12の例において、第3部分66は、後端6b側に位置し、周方向Dθ6に連続した環状に形成されている。第3部分66は、第2部分65A,65B,65Cと繋がっている。第1部分64A,64B,64Cと第3部分66は、軸方向Dx6に並んでいる。
【0078】
例えば、第3部分66の軸方向Dx6における幅Wは、フランジ部62の軸方向Dx6における幅と同程度かそれ以下である。一例として、幅Wは2mm以下である。
【0079】
図12の例においては、第2部分65Aが後端6b側から先端6a側に向かうに連れて軸AX6から離れるように傾斜している。第2部分65B,65Cも同様である。すなわち、第2内径R2は、軸方向Dx6における位置によって変化する。ただし、いずれの位置においても、第2内径R2は第1内径R1以下である。一例として、第2内径R2は、後端6b側において第3内径R3と等しく、先端6a側において第1内径R1と等しい。
【0080】
本実施形態の構成であっても、例えば、第3内径R3を止め輪5の外径R5よりも小さくすることで、上述の各実施形態と同様の効果を得ることができる。また、図12のように第2部分65A,65B,65Cが傾斜していれば、先端6a側の内径が全体的に大きくなり、押し輪6が傾斜しやすくなる。これにより、受け金具1と差し金具2の意図せぬ離脱をより効果的に抑制できる。なお、第1乃至第3実施形態における第2部分65が本実施形態と同様に傾斜していてもよい。
【0081】
以上の実施形態において、第2部分65(65A,65B,65C)の形状は、第1部分64(64A,64B,64C)よりも内径が小さければ、図4図9図11に示したものに限られない。
【0082】
上記各実施形態においては消防用ホースが受け口Fおよび差し口Mの双方に接続される結合金具Cを例示したが、受け口Fおよび差し口Mの少なくとも一方が消火栓や消防車両などの構造物に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0083】
C…結合金具、F…受け口、M…差し口、1…受け金具、2…差し金具、3…しめ輪、4…バンド、5…止め輪、6…押し輪、7A,7B,7C…爪、8…シール材、9…爪座、22…凸部、64(64A,64B,64C)…第1部分、65(65A,65B,65C)…第2部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し金具を受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた凸部と、前記受け金具に設けられ前記受け金具の軸に向けて付勢された爪とが係合し、前記外周面に対しスライド可能に設けられた押し輪を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記爪を押し上げることにより前記凸部と前記爪の係合が解除される結合金具であって、
前記押し輪の内周面は、第1内径を有する第1部分と、前記第1内径よりも小さい第2内径を有する第2部分と、を含み、
前記第1部分および前記第2部分は、前記押し輪の軸を中心とした周方向に並んでおり
前記押し輪は、前記差し金具の前記外周面に対して前記周方向に回動可能である、
結合金具。
【請求項2】
前記差し金具の前記外周面に設けられた止め輪を備え、
前記押し輪は、前記軸と平行な軸方向において前記凸部と前記止め輪の間に位置し、
前記第2内径は、前記止め輪の外径よりも小さい、
請求項1に記載の結合金具。
【請求項3】
前記第1内径は、前記止め輪の前記外径よりも大きい、
請求項2に記載の結合金具。
【請求項4】
前記第2部分は、前記第2内径を有する中央部と、前記周方向において前記中央部の両側方にそれぞれ位置する第1側部および第2側部と、を含み、
前記第1側部および前記第2側部は、前記中央部に近づくほど内径が小さくなる形状を有している、
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項5】
前記押し輪の前記内周面は、複数の前記第2部分を有している、
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項6】
前記押し輪の前記内周面は、一対の前記第2部分を有し、
前記一対の前記第2部分は、前記軸を挟んで対向している、
請求項5に記載の結合金具。
【請求項7】
前記押し輪の前記内周面は、3つの前記第2部分を有し、
前記3つの前記第2部分は、前記軸を中心とした半径方向において互いに対向しない位置に設けられている、
請求項5に記載の結合金具。
【請求項8】
前記押し輪は、前記凸部の側の先端と、前記先端の反対側に位置する後端と、を有し、
前記第2部分は、前記後端側から前記先端側に向かうに連れて前記軸から離れるように傾斜している、
請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項9】
前記押し輪の前記内周面は、前記第1内径よりも小さい第3内径を有する第3部分をさらに含み、
前記第1部分および前記第3部分は、前記軸と平行な軸方向に並んでいる、
請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【請求項10】
前記第3部分は、前記周方向に連続した環状に形成され、前記第2部分と繋がっている、
請求項9に記載の結合金具。
【請求項11】
前記差し金具と前記押し輪の前記第1部分を含む断面における前記内周面と前記外周面の隙間は、前記差し金具と前記押し輪の前記第2部分を含む断面における前記内周面と前記外周面の隙間よりも大きい、
請求項1乃至10のうちいずれか1項に記載の結合金具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
一実施形態に係る結合金具は、差し金具と、受け金具とを備え、差し金具を受け金具に挿入することにより、前記差し金具の外周面に設けられた凸部と、前記受け金具に設けられ前記受け金具の軸に向けて付勢された爪とが係合し、前記外周面に対しスライド可能に設けられた押し輪を前記爪と前記外周面の間に移動させて前記爪を押し上げることにより前記凸部と前記爪の係合が解除される。前記押し輪の内周面は、第1内径を有する第1部分と、前記第1内径よりも小さい第2内径を有する第2部分と、を含む。前記第1部分および前記第2部分は、前記押し輪の軸を中心とした周方向に並んでいる。前記押し輪は、前記差し金具の前記外周面に対して前記周方向に回動可能である。