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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081194
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/00 20060101AFI20220524BHJP
   H02K 15/08 20060101ALI20220524BHJP
   H02K 3/12 20060101ALI20220524BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
H02K15/00
H02K15/08
H02K3/12
H02K3/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192583
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】古賀 清隆
(72)【発明者】
【氏名】小淵 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】竹味 智彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇史
【テーマコード(参考)】
5H603
5H615
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CB03
5H603CC04
5H603CC17
5H603CD23
5H603CE13
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP12
(57)【要約】
【課題】コイルエンド部を鋳造により容易に形成することが可能なステータの製造方法およびステータを提供する。
【解決手段】このステータ100の製造方法では、コイルエンド部鋳造工程S160は、コイルエンド部用絶縁部材40の第1湯道41に注湯された第1溶融金属22a(溶融銅)を冷却固化することにより、隣接するコイルエンド部22同士がコイルエンド部用絶縁部材40により絶縁された状態でコイルエンド部22を形成するコイルエンド部固化工程S163を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを含むステータコアと、前記複数のスロット各々に収容される複数のスロット収容部、および、互いに異なる前記スロットに収容されるスロット収容部同士を接続するとともに前記ステータコアの軸方向における端面から突出するように配置される複数のコイルエンド部を含むコイル部と、を備えるステータの製造方法であって、
前記スロットに前記スロット収容部を配置するスロット収容部配置工程と、
前記コイルエンド部を鋳造により形成するコイルエンド部鋳造工程と、を備え、
前記コイルエンド部鋳造工程は、
前記コイルエンド部に対応する形状の第1湯道を有する絶縁性のコイルエンド部用絶縁部材の前記第1湯道に第1溶融金属を注湯する第1金属注湯工程と、
前記第1金属注湯工程の後、前記コイルエンド部用絶縁部材の前記第1湯道に注湯された前記第1溶融金属を冷却固化することにより、隣接する前記コイルエンド部同士が前記コイルエンド部用絶縁部材により絶縁された状態で、2つの前記スロット収容部を接続する前記コイルエンド部を形成するコイルエンド部固化工程と、を含む、ステータの製造方法。
【請求項2】
前記スロット収容部配置工程は、前記スロット収容部と連続的に形成され前記スロット収容部と前記コイルエンド部とを接続するための接合部が前記ステータコアの前記端面から突出するように前記スロットに前記スロット収容部を配置する工程であり、
前記コイルエンド部鋳造工程は、前記スロット収容部配置工程および前記第1金属注湯工程の後、前記接合部を、前記コイルエンド部用絶縁部材の前記第1湯道に注湯された前記第1溶融金属に挿入する接合部挿入工程をさらに含み、
前記コイルエンド部固化工程は、前記接合部挿入工程の後、前記第1溶融金属を冷却固化することにより、前記接合部を介して前記スロット収容部と接続された前記コイルエンド部を形成する工程である、請求項1に記載のステータの製造方法。
【請求項3】
前記接合部挿入工程は、先端部の断面積が前記先端部とは反対側の部分の断面積よりも大きい前記接合部を、前記コイルエンド部用絶縁部材の前記第1湯道に注湯された前記第1溶融金属に挿入する工程である、請求項2に記載のステータの製造方法。
【請求項4】
前記スロット収容部に対応する形状の貫通孔を有する絶縁性のスロット収容部用絶縁部材の前記貫通孔に、前記接合部が前記貫通孔から突出するように、前記スロット収容部を挿入するスロット収容部挿入工程をさらに備え、
前記スロット収容部配置工程は、前記スロット収容部挿入工程の後、前記スロット収容部が挿入された前記スロット収容部用絶縁部材を前記スロットに配置する工程である、請求項2または3に記載のステータの製造方法。
【請求項5】
前記スロット収容部に対応する形状の第2湯道を有する絶縁性のスロット収容部用絶縁部材を前記スロットに配置するスロット収容部用絶縁部材配置工程と、
前記スロット収容部用絶縁部材配置工程の後、互いに対応する前記コイルエンド部用絶縁部材の前記第1湯道と前記スロット収容部用絶縁部材の前記第2湯道とが連続するように、前記ステータコアおよび前記スロット収容部用絶縁部材に対して前記コイルエンド部用絶縁部材を配置するコイルエンド部用絶縁部材配置工程と、をさらに備え、
前記スロット収容部配置工程は、前記スロット収容部を鋳造により形成するスロット収容部鋳造工程であり、
前記スロット収容部鋳造工程は、
前記スロット収容部用絶縁部材配置工程の後、前記スロット収容部用絶縁部材の前記第2湯道に第2溶融金属を注湯する第2金属注湯工程と、
前記第2金属注湯工程の後、前記スロット収容部用絶縁部材の前記第2湯道に注湯された前記第2溶融金属を冷却固化することにより、同一の前記スロット内に収容される前記スロット収容部同士、および、前記ステータコアと前記スロット収容部とが前記スロット収容部用絶縁部材により絶縁された状態の前記スロット収容部を形成するスロット収容部固化工程と、を含み、
前記第2金属注湯工程は、前記コイルエンド部用絶縁部材配置工程の後、前記コイルエンド部用絶縁部材の前記第1湯道を介して、前記第1金属注湯工程と並行して行う工程であり、
前記スロット収容部固化工程は、前記第1金属注湯工程および前記第2金属注湯工程の後、前記コイルエンド部固化工程と同時に行う工程である、請求項1に記載のステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルエンド部を鋳造により形成するステータの製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、コイルエンド部の形状に対応する金型(鋳型)に溶融銅を注湯するとともに、注湯された溶融銅を冷却固化することによりコイルエンド部を形成するステータの製造方法が開示されている。上記特許文献1に記載されているステータの製造方法では、コイルエンド部が形成された後、コイルエンド部から金型が取り除かれる。その後、コイルエンド部をワニスまたはエポキシ材料により浸漬して焼成することによって、コイルエンド部が絶縁体で覆われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5845389号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているステータの製造方法では、コイルエンド部が形成された後、コイルエンド部から金型(鋳型)を取り除く工程や、コイルエンド部を絶縁体で覆う工程が行われており、工程数が比較的多くなる。このため、コイルエンド部を鋳造により容易に形成することが可能なステータの製造方法が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、コイルエンド部を鋳造により容易に形成することが可能なステータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるステータの製造方法は、複数のスロットを含むステータコアと、複数のスロット各々に収容される複数のスロット収容部、および、互いに異なるスロットに収容されるスロット収容部同士を接続するとともにステータコアの軸方向における端面から突出するように配置される複数のコイルエンド部を含むコイル部と、を備えるステータの製造方法であって、スロットにスロット収容部を配置するスロット収容部配置工程と、コイルエンド部を鋳造により形成するコイルエンド部鋳造工程と、を備え、コイルエンド部鋳造工程は、コイルエンド部に対応する形状の第1湯道を有する絶縁性のコイルエンド部用絶縁部材の第1湯道に第1溶融金属を注湯する第1金属注湯工程と、第1金属注湯工程の後、コイルエンド部用絶縁部材の第1湯道に注湯された第1溶融金属を冷却固化することにより、隣接するコイルエンド部同士がコイルエンド部用絶縁部材により絶縁された状態で、2つのスロット収容部を接続するコイルエンド部を形成するコイルエンド部固化工程と、を含む。
【0008】
この発明の一の局面におけるステータの製造方法では、上記のように、コイルエンド部鋳造工程は、コイルエンド部用絶縁部材の第1湯道に注湯された第1溶融金属を冷却固化することにより、隣接するコイルエンド部同士がコイルエンド部用絶縁部材により絶縁された状態でコイルエンド部を形成するコイルエンド部固化工程を含む。これにより、隣接するコイルエンド部同士がコイルエンド部用絶縁部材により絶縁された状態でコイルエンド部が形成されるので、コイルエンド部鋳造工程において鋳型として用いたコイルエンド部用絶縁部材を、コイルエンド部の鋳造後も絶縁部材としてそのまま用いることができる。これにより、コイルエンド部が形成された後、コイルエンド部から鋳型を取り除く工程や、コイルエンド部を絶縁体で覆う工程が不要となる。その結果、コイルエンド部を鋳造により容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記のように、コイルエンド部を鋳造により容易に形成することが可能なステータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態によるステータを示した斜視図である。
図2】第1実施形態によるステータのステータコアを示した斜視図である。
図3】第1実施形態によるステータを周方向から見た断面図である。
図4】第1実施形態によるステータの分解斜視図である。
図5】第1実施形態によるステータのスロット収容部用絶縁部材を示した斜視図である。
図6】第1実施形態によるステータのコイルエンド部用絶縁部材を示した模式図である。
図7】第1実施形態によるステータの製造方法を示すフロー図である。
図8】第1実施形態によるステータの製造方法におけるスロット収容部挿入工程を説明するための図である。
図9】第1実施形態によるステータのコイル部の接合部を説明するための図である。
図10】(a)図9の700―700線に沿った断面図である。(b)図9の800―800線に沿った断面図である。(c)図9の900―900線に沿った断面図である。
図11】第1実施形態によるステータの製造方法におけるスロット収容部配置工程を説明するための図である。
図12】第1実施形態によるステータの製造方法における第1金属注湯工程を説明するための図である。
図13】第1実施形態によるステータの製造方法における接合部挿入工程を説明するための図である。
図14】第1実施形態によるステータの製造方法におけるコイルエンド部固化工程を説明するための図である。
図15】第2実施形態によるステータのコイルエンド部用絶縁部材を示した模式図である。
図16】第2実施形態によるステータの製造方法を示すフロー図である。
図17】第2実施形態によるステータの製造方法における第1金属注湯工程を説明するための図である。
図18】第2実施形態によるステータの製造方法におけるコイルエンド部用金属供給道除去工程を説明するための図である。
図19】第3実施形態によるステータを周方向から見た断面図である。
図20】第3実施形態によるステータの製造方法を示すフロー図である。
図21】第3実施形態によるステータの製造方法におけるスロット収容部用鋳造工程の準備を説明するための図である。
図22】第3実施形態によるステータの製造方法における第2金属注湯工程を説明するための図である。
図23】第4実施形態によるステータを周方向から見た断面図である。
図24】第4実施形態によるステータの製造方法を示すフロー図である。
図25】第4実施形態によるステータの製造方法におけるスロット収容部用絶縁部材配置工程を説明するための図である。
図26】第4実施形態によるステータの製造方法におけるコイルエンド部用絶縁部材配置工程を説明するための図である。
図27】第4実施形態によるステータの製造方法における第1金属注湯工程および第2金属注湯工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1図14を参照して、第1実施形態によるステータ100の構成、および、第1実施形態によるステータ100の製造方法を説明する。
【0013】
(ステータの構成)
以下の説明では、ステータ100の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、Z方向、R方向およびC方向とする。また、Z方向の一方側および他方側を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、R方向の一方側(内径側)および他方側(外径側)を、それぞれ、R1側およびR2側とする。
【0014】
図1に示すように、ステータ100は、ステータコア10を備える。ステータコア10は、Z方向に沿った中心軸線を中心軸とした円筒形状を有する。ステータコア10は、複数の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)がZ方向に積層されることにより形成されている。なお、ステータ100は、インナーロータ型の回転電機の一部を構成するステータである。
【0015】
図2に示すように、ステータコア10は、円環状のバックヨーク11と、バックヨーク11からR1側に突出する複数のティース12と、C方向に隣接するティース12同士の間に形成される複数のスロット13と、を含む。複数のスロット13の各々は、Z方向に延びるように設けられている。
【0016】
図3に示すように、ステータ100は、コイル部20を備える。コイル部20は、ステータコア10に対して、複数回巻回されている。コイル部20は、複数のスロット13各々に収容される複数のスロット収容部21を含む。また、コイル部20は、互いに異なるスロット13に収容されるスロット収容部21同士を接続するとともにステータコア10のZ方向における端面10aから突出するように配置されるコイルエンド部22を含む。なお、コイル部20は、ステータ100を製造する際に、スロット収容部21とコイルエンド部22とを接合するために用いられた接合部23を含む。
【0017】
コイル部20は、銅により形成されている。スロット収容部21および接合部23は、圧延等により成形された銅線から構成されている。コイルエンド部22は、鋳造により形成されている。コイル部20の断面形状は、矩形状である。コイルエンド部22の断面積は、スロット収容部21の断面積S3(図10参照)と略等しい。
【0018】
図4に示すように、ステータ100はスロット収容部用絶縁部材30を備える。スロット収容部用絶縁部材30は、複数のスロット13内の各々に配置されている。スロット収容部用絶縁部材30は、直方体形状を有する。スロット収容部用絶縁部材30は、絶縁性である。スロット収容部用絶縁部材30は、窒素珪素、シリカ、(アルミナを主成分とする)複合セラミックス材料等のセラミックス材料から形成されている。
【0019】
図5に示すように、スロット収容部用絶縁部材30は、スロット収容部21(図3参照)に対応する形状の(複数の)第2湯道31を有する。図3に示すように、スロット収容部用絶縁部材30は、同一のスロット13内に収容されるスロット収容部21同士、および、ステータコア10とスロット収容部21とを絶縁するように構成されている。スロット収容部用絶縁部材30の両端部は、ステータコア10の端面10aから所定の距離だけ突出するように配置されている。すなわち、スロット収容部用絶縁部材30のZ方向の長さL1は、ステータコア10のZ方向の長さL2よりも大きい。なお、第2湯道31は、特許の請求の範囲の「貫通孔」の一例である。
【0020】
図1に示すように、ステータ100は、コイルエンド部用絶縁部材40を備える。コイルエンド部用絶縁部材40は、ステータコア10の端面10aに接するように、ステータコア10のZ1側およびZ2側にそれぞれ配置されている。コイルエンド部用絶縁部材40は、円筒形状を有する。コイルエンド部用絶縁部材40は、絶縁性である。コイルエンド部用絶縁部材40は、窒素珪素、シリカ、(アルミナを主成分とする)複合セラミックス材料等のセラミックス材料から形成されている。
【0021】
図6に示すように、コイルエンド部用絶縁部材40は、コイルエンド部22(図3参照)に対応する形状の(複数の)第1湯道41を有する。また、図3に示すように、コイルエンド部用絶縁部材40は、隣接するコイルエンド部22同士を絶縁するように構成されている。また、コイルエンド部用絶縁部材40は、コイルエンド部22の形成時に鋳型として用いられる。これにより、コイルエンド部22の形成時に鋳型として用いられたコイルエンド部用絶縁部材40が、隣接するコイルエンド部22同士を絶縁するためにそのまま用いられているので、コイルエンド部22が形成された後、コイルエンド部22から鋳型を取り除く工程や、コイルエンド部22を絶縁体で覆う工程が不要となる。その結果、コイルエンド部22を鋳造により容易に形成することができる。
【0022】
(ステータの製造方法)
図7に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0023】
<ステータコア成形工程>
まず、ステータコア10(図2参照)を成形するステータコア成形工程S110が行われる。具体的には、ステータコア成形工程S110において、複数の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)が積層されることによって、円筒形状を有するステータコア10が成形される。この際、プレス加工によって、電磁鋼板の積層方向(Z方向)に延びるスロット13(図2参照)がステータコア10に形成される。
【0024】
<コイルエンド部用絶縁部材成形工程>
次に、コイルエンド部用絶縁部材40(図1参照)を成形するコイルエンド部用絶縁部材成形工程S120が行われる。具体的には、コイルエンド部用絶縁部材成形工程S120において、セラミックス材料が焼き固められることによって、絶縁性のコイルエンド部用絶縁部材40が成形される。この際、コイルエンド部22(図3参照)に対応する形状の第1湯道41(図6参照)がコイルエンド部用絶縁部材40に形成される。
【0025】
<スロット収容部用絶縁部材成形工程>
次に、スロット収容部用絶縁部材30(図5参照)を成形するスロット収容部用絶縁部材成形工程S130が行われる。具体的には、スロット収容部用絶縁部材成形工程S130において、セラミックス材料が焼き固められることによって、絶縁性のスロット収容部用絶縁部材30が成形される。この際、スロット収容部21(図3参照)に対応する形状の第2湯道31(図5参照)がスロット収容部用絶縁部材30に形成される。
【0026】
<スロット収容部挿入工程>
次に、スロット収容部用絶縁部材30(図6参照)にスロット収容部21(図3参照)を挿入するスロット収容部挿入工程S140が行われる。図8に示すように、スロット収容部挿入工程S140は、スロット収容部21に対応する形状の第2湯道31を有する絶縁性のスロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31に、接合部23が第2湯道31から突出するように、スロット収容部21を挿入する工程である。具体的には、第2湯道31の断面積と略等しい断面積を有するとともに、第2湯道31の貫通方向(Z方向)の長さL2よりも長い長さL3を有する銅線21aが準備される。そして、銅線21aの両端部が第2湯道31から突出するように、銅線21aが第2湯道31に挿入される。そして、銅線21aのうち、第2湯道31に挿入された部分(の殆ど)がスロット収容部21として用いられる。また、銅線21aのうち、第2湯道31から突出した部分が、後述するコイルエンド部鋳造工程S160およびコイルエンド部鋳造工程S170において、スロット収容部21とコイルエンド部22とを接合するための接合部23として用いられる。
【0027】
図9に示すように、スロット収容部挿入工程S140では、スロット収容部21よりも細い接合部23を有する銅線21aが準備される。また、スロット収容部挿入工程S140では、は、接合部23の先端部23aが、接合部23の先端部23aとは反対側(スロット収容部21側)の部分23bよりも太い銅線21aが準備される。具体的には、図10に示すように、接合部23において、先端部23aの断面積S1は、先端部23aとは反対側の部分23bの断面積S2よりも大きい。また、先端部23aの断面積S1および先端部23aとは反対側の部分23bの断面積S2は、スロット収容部21の断面積S3よりも小さい。なお、銅線21aの形状は、図9に示されているようなR方向から見て左右対称の形状に限らず、R方向から見て左右非対称な形状であってもよい。
【0028】
<スロット収容部配置工程>
次に、スロット13(図3参照)にスロット収容部21(図3参照)を配置するスロット収容部配置工程S150が行われる。図11に示すように、スロット収容部配置工程S150は、スロット収容部21と連続的に形成されスロット収容部21とコイルエンド部22とを接続するための接合部23がステータコア10の端面10aから突出するようにスロット13にスロット収容部21を配置する工程である。
【0029】
上述したように、スロット収容部挿入工程S140において、スロット収容部21は、接合部23が第2湯道31から突出するようにスロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31に挿入されている。すなわち、スロット収容部配置工程S150は、スロット収容部21が挿入されたスロット収容部用絶縁部材30をスロット13に配置する工程である。これにより、接合部23が第2湯道31から突出するようにスロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31に挿入された状態のスロット収容部21がスロット13に配置されるので、スロット収容部21をステータコア10の端面10aから突出するようにスロット13に容易に配置することができる。
【0030】
また、上述したように、スロット収容部挿入工程S140において、接合部23の断面積(先端部23aの断面積S1および先端部23aとは反対側の部分23bの断面積S2)がスロット収容部21の断面積S3よりも小さい銅線21aが準備されている。すなわち、スロット収容部配置工程S150は、スロット収容部21の断面積S3よりも小さい断面積(S1、S2)を有する接合部23がステータコア10の端面10aから突出するようにスロット13にスロット収容部21を配置する工程である。これにより、接合部23の断面積(S1、S2)が比較的小さくなるので、後述するスロット収容部挿入工程S140において、コイルエンド部用絶縁部材40の第1湯道41に注湯されたコイルエンド部22の材料としての第1溶融金属22a(図12参照)に接合部23を挿入する際に、コイルエンド部用絶縁部材40の第1湯道41に接合部23を容易に挿入することができる。
【0031】
<(一方側の)コイルエンド部鋳造工程>
次に、ステータコア10(図3参照)の端面10a(図3参照)から突出するようにコイルエンド部22(図3参照)を鋳造により形成する(一方側の)コイルエンド部鋳造工程S160が行われる。コイルエンド部鋳造工程S160は、Z1側およびZ2側にそれぞれ設けられるコイルエンド部22のうちのZ1側のコイルエンド部22を形成する工程である。コイルエンド部鋳造工程S160は、第1金属注湯工程S161と、接合部挿入工程S162と、コイルエンド部固化工程S163と、を含む。接合部挿入工程S162は、第1金属注湯工程S161の後に行われる。コイルエンド部固化工程S163は、接合部挿入工程S162の後に行われる。
【0032】
図12に示すように、第1金属注湯工程S161は、コイルエンド部22(図11参照)に対応する形状の第1湯道41を有する鋳型としての絶縁性のコイルエンド部用絶縁部材40の第1湯道41にコイルエンド部22の材料としての第1溶融金属22aを注湯する工程である。具体的には、第1金属注湯工程S161において、第1湯道41のステータコア10側に形成された開口が上側になるようにコイルエンド部用絶縁部材40が配置される。そして、第1湯道41に、第1湯道41の開口を介して、上側から第1溶融金属22aを注湯する。第1溶融金属22aは、略1200℃に加熱された溶融銅である。
【0033】
図13に示すように、接合部挿入工程S162は、接合部23を、コイルエンド部用絶縁部材40の第1湯道41に注湯された第1溶融金属22a(溶融銅)に挿入する工程である。具体的には、第1湯道41に第1溶融金属22a(溶融銅)が注湯された状態で、ステータコア10の端面10aから突出するように配置された接合部23が、第1湯道41に上側から挿入される。なお、接合部挿入工程S162では、接合部23は、ステータコア10の端面10aがコイルエンド部用絶縁部材40のステータコア10側の面と接する状態となるまで、第1湯道41に挿入される。
【0034】
上述したように、スロット収容部挿入工程S140において、接合部23の先端部23aの断面積S1が先端部23aとは反対側の部分23bの断面積S2よりも大きい銅線21aが準備されている。すなわち、接合部挿入工程S162は、先端部23aの断面積S1が先端部23aとは反対側の部分23bの断面積S2よりも大きい接合部23を、コイルエンド部用絶縁部材40の第1湯道41に注湯された第1溶融金属22a(溶融銅)に挿入する工程である。これにより、接合部23が先端部23aの断面積S1が先端部23aとは反対側の部分23bの断面積S2よりも大きいことにより、第1溶融金属22a(溶融銅)に挿入された接合部23(の先端部23a)を、第1溶融金属22a(溶融銅)が固化した後に固化した第1溶融金属22a(溶融銅)に引っ掛け易くすることができる。その結果、接合部23が挿入された状態で第1溶融金属22a(溶融銅)が(コイルエンド部固化工程S163において)冷却固化された後、接合部23(ひいては、コイルエンド部22)をスロット収容部21と強固に接続することができる。
【0035】
図14に示すように、コイルエンド部固化工程S163は、コイルエンド部用絶縁部材40の第1湯道41に注湯された第1溶融金属22a(溶融銅)を冷却固化することにより、隣接するコイルエンド部22同士がコイルエンド部用絶縁部材40により絶縁された状態で、2つのスロット収容部21接続するコイルエンド部22を形成する工程である。これにより、隣接するコイルエンド部22同士がコイルエンド部用絶縁部材40により絶縁された状態でコイルエンド部22が形成されるので、コイルエンド部鋳造工程S160において鋳型として用いたコイルエンド部用絶縁部材40を、コイルエンド部22の鋳造後も絶縁部材としてそのまま用いることができる。これにより、コイルエンド部22が形成された後、コイルエンド部22から鋳型を取り除く工程や、コイルエンド部22を絶縁体で覆う工程が不要となる。その結果、コイルエンド部22を鋳造により容易に形成することができる。
【0036】
また、コイルエンド部固化工程S163は、第1溶融金属22a(溶融銅)を冷却固化することにより、接合部23を介してスロット収容部21と接続されたコイルエンド部22を形成する工程である。これにより、注湯された第1溶融金属22a(溶融銅)にコイルエンド部22と連続的に形成された接合部23が挿入された状態で第1溶融金属22a(溶融銅)が冷却固化されるので、コイルエンド部22を、接合部23を介して、スロット収容部21と容易に接続することができる。
【0037】
<(他方側の)コイルエンド部鋳造工>
次に、ステータコア10(図3参照)の端面10a(図3参照)から突出するようにコイルエンド部22(図3参照)を鋳造により形成する(他方側の)コイルエンド部鋳造工程S170が行われる。コイルエンド部鋳造工程S170は、Z1側およびZ2側にそれぞれ設けられるコイルエンド部22のうちのZ2側のコイルエンド部22を形成する工程である。コイルエンド部鋳造工程S170は、コイルエンド部鋳造工程S160と略同様である。なお、コイルエンド部鋳造工程S170では、コイルエンド部鋳造工程S160とステータコア10の上下を逆に入れ換えた状態で行われる。
【0038】
なお、上記の製造フローにおいて、ステータコア成形工程S110、コイルエンド部用絶縁部材成形工程S120およびスロット収容部用絶縁部材成形工程S130の順序は互いに入れ換えてもよい。
【0039】
[第2実施形態]
図15図18を参照して、第2実施形態によるステータ200の構成、および、第2実施形態によるステータ200の製造方法を説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付している。
【0040】
(ステータの構成)
図15に示すように、ステータ200は、コイルエンド部用絶縁部材240を備える。コイルエンド部用絶縁部材240は、第1実施形態のコイルエンド部用絶縁部材40と同様に、複数の第1湯道41を有する。また、コイルエンド部用絶縁部材240は、第1実施形態のコイルエンド部用絶縁部材40と異なり、複数の第1湯道41の各々に対応する複数の分岐部42aを含む。複数の分岐部42aは、複数の第1湯道41の各々に第1溶融金属22a(溶融銅)を注湯する際に、複数の第1湯道41に第1溶融金属22a(溶融銅)を供給するために用いられる。分岐部42aの詳細は、後述する。
【0041】
なお、第2実施形態のステータ200のその他の構成は、上記第1実施形態のステータ100と同様である。
【0042】
(ステータの製造方法)
図16に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0043】
<コイルエンド部用絶縁部材成形工程>
ステータコア成形工程S110の後、コイルエンド部用絶縁部材240(図17参照)を成形するコイルエンド部用絶縁部材成形工程S220が行われる。図17に示すように、コイルエンド部用絶縁部材成形工程S220は、複数の第1湯道41と、第1溶融金属22a(溶融銅)を複数の第1湯道41に供給するためのコイルエンド部用金属供給道42と、を有するコイルエンド部用絶縁部材240が成形される。コイルエンド部用金属供給道42は、複数の第1湯道41の各々に対応する複数の分岐部42aと、複数の分岐部42aの各々と接続された共通部42bと、を含む。
【0044】
<(一方側の)コイルエンド部鋳造工程>
スロット収容部配置工程S150の後、ステータコア10(図3参照)の端面10a(図3参照)から突出するようにコイルエンド部22(図3参照)を鋳造により形成する(一方側の)コイルエンド部鋳造工程S260が行われる。コイルエンド部鋳造工程S260は、第1金属注湯工程S261と、コイルエンド部用金属供給道除去工程S264と、を含む。コイルエンド部用金属供給道除去工程S264は、コイルエンド部固化工程S163の後に行われる。
【0045】
図17に示すように、第1金属注湯工程S261は、上述したコイルエンド部用絶縁部材240の第1湯道41にコイルエンド部用金属供給道42を介して第1溶融金属22a(溶融銅)を注湯する工程である。具体的には、第1金属注湯工程S261において、コイルエンド部用金属供給道42の共通部42bのステータコア10(図3参照)側とは反対側に形成された開口が下側になるようにコイルエンド部用絶縁部材240が配置される。そして、コイルエンド部用金属供給道42の共通部42bから第1溶融金属22a(溶融銅)が注湯される。共通部42bから注湯された第1溶融金属22a(溶融銅)は、共通部42bと接続された複数の分岐部42aを介して、複数の第1湯道41に供給される。
【0046】
図18に示すように、コイルエンド部用金属供給道除去工程S264は、複数の第1湯道41の内部のコイルエンド部22同士がコイルエンド部用金属供給道42の内部の第1溶融金属22a(溶融銅)が冷却固化した部分を介して互いに接続されない状態となるように、コイルエンド部用金属供給道42のうちの少なくとも共通部42bを除去する工程である。具体的には、複数の分岐部42aが互いに接続されない状態となるように、コイルエンド部用絶縁部材240のうちの複数の分岐部42aが形成されている部分が切断(カット)される。これにより、複数の第1湯道41の内部のコイルエンド部22同士がコイルエンド部用金属供給道42の内部の第1溶融金属22a(溶融銅)が冷却固化した部分を介して互いに接続されてしまうのを防止することができる。
【0047】
<(他方側の)コイルエンド部鋳造工>
(一方側の)コイルエンド部鋳造工程S260の後、ステータコア10(図3参照)の端面10a(図3参照)から突出するようにコイルエンド部22(図3参照)を鋳造により形成する(他方側の)コイルエンド部鋳造工程S270が行われる。コイルエンド部鋳造工程S270は、コイルエンド部鋳造工程S260と略同様である。
【0048】
なお、第2実施形態のステータ200の製造方法のその他の工程は、上記第1実施形態のステータ100の製造方法と同様である。
【0049】
[第3実施形態]
図19図22を参照して、第3実施形態によるステータ300の構成、および、第3実施形態によるステータ300の製造方法を説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付している。
【0050】
(ステータの構成)
図19に示すように、ステータ300は、コイル部320を備える。コイル部320は、スロット収容部321と、コイルエンド部22と、接合部323と、を含む。コイルエンド部22は、第1実施形態と同様に、鋳造により形成されている。一方、第3実施形態では、スロット収容部21(図3参照)および接合部23(図3参照)が圧延等により成形された銅線から構成されている第1実施形態と異なり、スロット収容部321および接合部323は、鋳造により形成されている。なお、スロット収容部321および接合部323の形状は、第1実施形態のスロット収容部21および接合部23の形状と同様である。
【0051】
なお、第3実施形態のステータ300のその他の構成は、上記第1実施形態のステータ100と同様である。
【0052】
(ステータの製造方法)
図20に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0053】
<スロット収容部鋳造工程(スロット収容部配置工程)>
スロット収容部用絶縁部材成形工程S130の後、スロット収容部321(図19参照)を鋳造により形成するスロット収容部鋳造工程S350(スロット収容部配置工程)が行われる。スロット収容部鋳造工程S350は、第2金属注湯工程S351と、スロット収容部固化工程S352と、を含む。スロット収容部固化工程S352は、第2金属注湯工程S351の後に行われる。
【0054】
図21および図22に示すように、第2金属注湯工程S351は、スロット収容部321(図19参照)に対応する形状の第2湯道31を有する鋳型としての絶縁性のスロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31にスロット収容部321の材料としての第2溶融金属321a(溶融銅)を注湯する工程である。具体的には、スロット収容部用絶縁部材30に加えて、接合部323に対応する形状の接合部用湯道51を有する鋳型としての接合部用鋳型部材50が準備される。そして、互いに対応するスロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31と接合部用鋳型部材50の接合部用湯道51の位置とが連続するように、スロット収容部用絶縁部材30に対して接合部用鋳型部材50が配置される。すなわち、スロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31および接合部用鋳型部材50の接合部用湯道51によって、それぞれ、スロット収容部321の形状および接合部323の形状に対応する空間が形成される。そして、図22に示すように、接合部用鋳型部材50に形成された供給口(図示しない)から、接合部用湯道51および第2湯道31に第2溶融金属321a(溶融銅)が注湯される。
【0055】
スロット収容部固化工程S352は、スロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31に注湯された第2溶融金属21b(溶融銅)を冷却固化することにより、同一のスロット13内に収容されるスロット収容部321同士、および、ステータコア10とスロット収容部321とが鋳型としてのスロット収容部用絶縁部材30により絶縁された状態のスロット収容部321を形成する工程である。具体的には、スロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31および接合部用鋳型部材50の接合部用湯道51に注湯された第2溶融金属321a(溶融銅)が冷却固化される。そして、スロット収容部用絶縁部材30から接合部用鋳型部材50が取り外されることにより、接合部323(図19参照)が第2湯道31から突出するように、第2湯道31内にスロット収容部321が形成される状態となる。これにより、スロット収容部321が鋳造により形成されるので、図19に示すように、スロット収容部321をステータコア10の端面10aから突出するようにスロット13に配置可能な形状に容易に成形することができる。
【0056】
なお、第3実施形態のステータ300の製造方法のその他の工程は、上記第1実施形態のステータ100、または、上記第2実施形態のステータ200の製造方法と同様である。
【0057】
[第4実施形態]
図24図27を参照して、第4実施形態によるステータ400の構成、および、第4実施形態によるステータ400の製造方法を説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付している。
【0058】
(ステータの構成)
図23に示すように、ステータ400は、コイル部420を備える。コイル部420は、スロット収容部421と、コイルエンド部22と、を含む。一方、コイル部420は、第1実施形態のコイル部20(図3参照)と異なり、接合部23(図3参照)を含まない。また、コイルエンド部22は、第1実施形態と同様に、鋳造により形成されている。一方、スロット収容部21(図3参照)が圧延等により成形された銅線から構成されている第1実施形態と異なり、スロット収容部421は、鋳造により形成されている。
【0059】
なお、第4実施形態のステータ400のその他の構成は、上記第1実施形態のステータ100と同様である。
【0060】
(ステータの製造方法)
図24に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0061】
<コイルエンド部用絶縁部材成形工程>
ステータコア成形工程S110の後、第2実施形態のステータ200の製造方法と同様に、コイルエンド部用絶縁部材240(図17参照)を成形するコイルエンド部用絶縁部材成形工程S220が行われる。
【0062】
<スロット収容部用絶縁部材配置工程>
スロット収容部用絶縁部材成形工程S130の後、スロット収容部用絶縁部材配置工程S440が行われる。図25に示すように、スロット収容部用絶縁部材配置工程S440は、スロット収容部421に対応する形状の第2湯道31を有する鋳型としての絶縁性のスロット収容部用絶縁部材30をスロット13に配置する工程である。
【0063】
<コイルエンド部用絶縁部材配置工程>
スロット収容部用絶縁部材配置工程S440の後、コイルエンド部用絶縁部材配置工程S450が行われる。図26に示すように、コイルエンド部用絶縁部材配置工程S450は、互いに対応するコイルエンド部用絶縁部材240の第1湯道41とスロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31とが連続するように、ステータコア10およびスロット収容部用絶縁部材30に対して(コイルエンド部用金属供給道42(図17参照)を含む)コイルエンド部用絶縁部材240を配置する工程である。
【0064】
<スロット収容部鋳造工程(スロット収容部配置工程)>
スロット収容部用絶縁部材配置工程S440の後、コイルエンド部22(図23参照)を鋳造により形成するコイルエンド部鋳造工程S460およびスロット収容部21を鋳造により形成するスロット収容部鋳造工程S470(スロット収容部配置工程)が行われる。コイルエンド部鋳造工程S460は、第2実施形態のステータ200の製造方法と略同様の、第1金属注湯工程S261と、コイルエンド部固化工程S263と、コイルエンド部用金属供給道除去工程S264と、を含む。また、スロット収容部鋳造工程S470は、第2金属注湯工程S471と、スロット収容部固化工程S472と、を含む。スロット収容部固化工程S472は、第2金属注湯工程S471の後に行われる。
【0065】
図27に示すように、第2金属注湯工程S471は、スロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31にスロット収容部421の材料としての第2溶融金属422a(溶融銅)を注湯する工程である。上述したように、スロット収容部用絶縁部材30およびコイルエンド部用絶縁部材240は、互いに対応するコイルエンド部用絶縁部材240の第1湯道41とスロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31とが連続するように配置されている。したがって、コイルエンド部用絶縁部材240の第1湯道41に供給される第2溶融金属422a(溶融銅)が、第2湯道31にも供給される。すなわち、第2金属注湯工程S471は、コイルエンド部用絶縁部材40の第1湯道41を介して、第1金属注湯工程S261と並行して行う工程である。なお、第2溶融金属422aは、特許請求の範囲の「第1溶融金属」の一例である。
【0066】
スロット収容部固化工程S472は、スロット収容部用絶縁部材30の第2湯道31に注湯された第2溶融金属422a(溶融銅)を冷却固化することにより、同一のスロット13内に収容されるスロット収容部421同士、および、ステータコア10とスロット収容部421とが鋳型としてのスロット収容部用絶縁部材30により絶縁された状態のスロット収容部421を形成する工程である。そして、第2金属注湯工程S471と第1金属注湯工程S261とが並行して行われるので、第2湯道31に注湯された第2溶融金属422a(溶融銅)と、第1湯道41に注湯された第2溶融金属422a(溶融銅)とが同時に冷却固化される。すなわち、スロット収容部固化工程S472は、第1金属注湯工程S261および第2金属注湯工程S471の後、コイルエンド部固化工程S262と同時に行う工程である。これにより、コイルエンド部22の鋳造とスロット収容部421の鋳造とを一度に行うことができるので、コイルエンド部22の鋳造とスロット収容部421の鋳造とが個別に行われる場合と比較して工程数を少なくすることができる。また、接合部23がコイルエンド部用絶縁部材40の第1湯道41に注湯された第2溶融金属422a(溶融銅)に挿入された後、第2溶融金属422a(溶融銅)が冷却固化される場合と異なり、スロット13にスロット収容部421を配置する際に、接合部23をステータコア10の端面10aから突出する形状に成形する工程を省略することができる。
【0067】
なお、第4実施形態のステータ400の製造方法のその他の工程は、上記第1実施形態のステータ100の製造方法と同様である。
【0068】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0069】
たとえば、上記第1~第3実施形態では、接合部23の先端部23aの断面積S1が、接合部23の先端部23aとは反対側の部分23bの断面積S2よりも大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接合部の先端部の断面積が、接合部の先端部とは反対側の部分の断面積よりも小さくてもよいし、接合部の先端部とは反対側の部分の断面積と等しくてもよい。
【0070】
また、上記第1~第3実施形態では、接合部23の断面積(先端部23aの断面積S1および先端部23aとは反対側の部分23bの断面積S2)が、スロット収容部21(321)の断面積S3よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接合部の断面積が、スロット収容部の断面積よりも大きくてもよいし、スロット収容部の断面積と等しくてもよい。
【0071】
また、上記第1~第3実施形態では、接合部23(323)を、第2湯道31から突出させる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接合部を第2湯道から突出させなくてもよい。
【0072】
また、上記第1~第4実施形態では、スロット収容部用絶縁部材30およびコイルエンド部用絶縁部材40(240)がセラミックス材料から形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、スロット収容部用絶縁部材およびコイルエンド部用絶縁部材の少なくとも一方がセラミックス材料以外の絶縁性を有する材料から形成されていてもよい。
【0073】
また、上記第1~第4実施形態では、コイル部20が、銅により形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、コイル部が、アルミにより形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…ステータコア、10a…(ステータコアの軸方向における)端面、13…スロット、20、320、420…コイル部、21、321、421…スロット収容部、22…コイルエンド部、22a、422a…第1溶融金属、23、323、…接合部、23a…(接合部の)先端部、23b…(接合部の)先端部とは反対側の部分、30…スロット収容部用絶縁部材、31…第2湯道(貫通孔)、40、240…コイルエンド部用絶縁部材、41…第1湯道、100、200、300、400…ステータ、321a…第2溶融金属、422a…第2溶融金属(第1溶融金属)、S1…(接合部の先端部の)断面積、S2…(接合部の先端部とは反対側の部分の)断面積
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図10
図11
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図13
図14
図15
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