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特開2022-81199パネル固定部材、外壁パネル固定構造、及び外壁パネル固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081199
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】パネル固定部材、外壁パネル固定構造、及び外壁パネル固定方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20220524BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
E04F13/08 101U
E04B2/56 604A
E04B2/56 631J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192595
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 岳史
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】永原 左知子
(72)【発明者】
【氏名】木暮 優斗
(72)【発明者】
【氏名】大石 朋子
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】高井 克典
(72)【発明者】
【氏名】中根 駿
【テーマコード(参考)】
2E002
2E110
【Fターム(参考)】
2E002FB02
2E002JB02
2E002MA01
2E002MA12
2E110AA42
2E110AA43
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA12
2E110BD23
2E110CC03
2E110CC04
2E110CC23
2E110DA03
2E110DB23
2E110DC02
2E110GA33W
2E110GA33Z
2E110GB01Z
(57)【要約】
【課題】 切断小口をさらに加工する必要がなく、外壁パネルの位置の調整が可能であり、水平面内方向の負荷を受け流しやすいパネル固定部材、外壁パネル固定構造、及び外壁パネル固定方法を提供する。
【解決手段】パネル固定部材1は、中空部10を有し、外壁の縁部に配置される縁部外壁パネル4を外壁下地板3に固定するパネル固定部材1であって、縁部外壁パネル4の裏面に固定される裏側固定具13と、外壁下地板3に固定され、裏側固定具13に連結される下地側固定具14と、を備え、裏側固定具13は、縁部外壁パネル4の裏面に当接する本体部15と、基端部16aが本体部15に固定されるとともに、先端16bが折れ曲がって形成されており、縁部外壁パネル4の裏面から中空部10に形成される挿入孔23に挿入されて、当該先端16aが中空部10に引っ掛かって係止される差し込み部16と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有し、外壁の縁部に配置される縁部外壁パネルを外壁下地板に固定するパネル固定部材であって、
前記縁部外壁パネルの裏面に固定される裏側固定具と、
前記外壁下地板に固定され、前記裏側固定具に連結される下地側固定具と、
を備え、
前記裏側固定具は、前記縁部外壁パネルの裏面に当接する本体部と、基端部が前記本体部に固定されるとともに、先端が折れ曲がって形成されており、前記縁部外壁パネルの裏面から中空部に形成される挿入孔に挿入されて、当該先端が前記中空部に引っ掛かって係止される差し込み部と、を有することを特徴とするパネル固定部材。
【請求項2】
前記本体部は鉛直方向に長い長孔が形成されるとともに、前記長孔に挿入される固定ボルトが設けられており、
前記差し込み部の基端部は前記固定ボルトに螺着するネジ孔が形成されることを特徴とする請求項1に記載のパネル固定部材。
【請求項3】
前記本体部は、前記縁部外壁パネルの端縁から突出し、前記下地側固定具と連結される突出部を有し、当該突出部には屋内外方向に貫通する連結孔が形成され、
前記下地側固定具は、前記連結孔に挿入される連結ボルトが螺着可能な連結ネジ孔が形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパネル固定部材。
【請求項4】
前記連結孔は水平方向に長い長孔状に形成されることを特徴とする請求項3に記載のパネル固定部材。
【請求項5】
外壁下地板に複数の予め定められた寸法の一般外壁パネルを並べて配置して外壁を形成する際に、当該外壁の縁部に前記一般外壁パネルよりも小さく形成される余白部に、請求項1から請求項4のいずれかのパネル固定部材を用いて、前記縁部外壁パネルを固定する外壁パネル固定構造であって、
前記余白部に固定する前記縁部外壁パネルは、前記一般外壁パネルを前記余白部の形状に応じて切断するとともに、裏面から中空部に向かって挿入孔を形成したものであることを特徴とする外壁パネル固定構造。
【請求項6】
前記裏側固定具の前記差し込み部が、前記縁部外壁パネルの前記挿入孔に挿入される際に、前記差し込み部の先端が前記中空部に引っ掛かって係止されるとともに、前記差し込み部と前記挿入孔とが接着剤によって接着されるものであり、
当該接着剤は前記挿入孔を塞ぐことを特徴とする請求項5に記載の外壁パネル固定構造。
【請求項7】
外壁下地板に複数の予め定められた寸法の一般外壁パネルを並べて配置して外壁を形成する際に、当該外壁の縁部に前記一般外壁パネルよりも小さく形成される余白部に、請求項1から請求項4のいずれかのパネル固定部材を用いて、前記縁部外壁パネルを固定する外壁パネル固定方法であって、
前記余白部の形状に応じて、前記外壁の縁部側が切断面となるように、前記一般外壁パネルを切断する切断工程と、
前記切断工程で切断された縁部外壁パネルの裏面から前記縁部外壁パネルの中空部に向かって挿入孔を形成する挿入孔形成工程と、
前記パネル固定部材の前記裏側固定具に形成された前記差し込み部を前記挿入孔に挿入して、当該差し込み部の先端を前記縁部外壁パネルの前記中空部に引っ掛けて係止し、前記裏側固定具を前記縁部外壁パネルの裏面に固定する裏側固定具取付工程と、
前記パネル固定部材の前記下地側固定具を前記外壁下地板に固定する下地側固定具取付工程と、
前記裏側固定具と前記下地側固定具とを連結する連結工程と、
を備えることを特徴とする外壁パネル固定方法。
【請求項8】
前記裏側固定具取付工程は、前記差し込み部を前記挿入孔に挿入して、当該差し込み部の先端を前記縁部外壁パネルの前記中空部に引っ掛けて係止するときに、接着剤を前記差し込み部と前記挿入孔との間に注入して、前記差し込み部と前記挿入孔とを接着することを特徴とする請求項7に記載の外壁パネル固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁縁部の寸法に合わせるために、一部を切断した外壁パネルを当該外壁縁部の外壁下地板に固定するためのパネル固定部材、及び、当該パネル固定部材を用いた外壁パネル固定構造、外壁パネル固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外壁下地板に外壁パネルを複数並べて取り付けることにより、外壁面を形成する構造において、外壁パネル同士を相じゃくり継ぎや本実継ぎのように継ぐことで、屋外側に目地が露出しないように形成している。そして、外壁パネルは外壁下地板に、例えば、特許文献1に示すように、外壁下地板に固定されるベース板と、当該ベース板に対して水平方向に直交するようにして折り曲げられた折り曲げ部と、当該折り曲げ部の先端に形成された係止部により構成された取り付け金具を用いて取り付けられる。この取り付け金具は、先端部が円弧状に屈曲成形された係止部は、その下面に形成された凹部において外壁パネルの雄実を係止すると共に、その上面に形成された凸部において外壁パネルの雌実を係止するように作用することで、取り付け金具が屋外側に露出することなく、外壁パネルを外壁下地板に取り付けている。
【0003】
上述のような取り付け金具は、外壁パネルの上下に形成された継ぎ部の形状を利用して外壁パネルを外壁下地板に取り付けるものであるので、例えば、窓上部又は窓下部などの寸法に合わせるために外壁パネル上下の端部を切断した場合には、当該取り付け金具で外壁パネルを取り付けることはできない。そこで、外壁パネルの切断小口にドリルなどで係止孔を形成し、当該係止孔に挿入されて係止される差込み部を有するクリップ金具と、下地材に固定されてクリップ金具の一部を受ける落とし口を備えたクリップ受け金具とにより構成される取り付け金具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-62635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の取り付け金具は、切断小口に係止孔を穿孔するので、外壁パネルの厚さによっては切断小口の強度が弱くなる恐れがある。また、クリップ金具をクリップ受け金具に挿入するためには、係止孔の位置やクリップ受け金具の外壁下地板への取り付け位置などに高い施工精度が求められる。そして、クリップ金具をクリップ受け金具に挿入する構成であるので、外壁下地板に対する外壁パネルの水平面内方向の揺れを全く許容できず、例えば地震などの際に外壁パネルに加わる負荷を受け流すことができず、外壁パネルの破損などが起こりやすい。
【0006】
そこで、本発明は、切断小口をさらに加工する必要がなく、外壁パネルの位置の調整が可能であり、水平面内方向の負荷を受け流しやすいパネル固定部材、外壁パネル固定構造、及び外壁パネル固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパネル固定部材は、中空部を有し、外壁の縁部に配置される縁部外壁パネルを外壁下地板に固定するパネル固定部材であって、前記縁部外壁パネルの裏面に固定される裏側固定具と、前記外壁下地板に固定され、前記裏側固定具に連結される下地側固定具と、を備え、前記裏側固定具は、前記縁部外壁パネルの裏面に当接する本体部と、基端部が前記本体部に固定されるとともに、先端が折れ曲がって形成されており、前記縁部外壁パネルの裏面から中空部に形成される挿入孔に挿入されて、当該先端が前記中空部に引っ掛かって係止される差し込み部と、を有することを特徴としている。
【0008】
本発明のパネル固定部材は、前記本体部は鉛直方向に長い長孔が形成されるとともに、前記長孔に挿入される固定ボルトが設けられており、前記差し込み部の基端部は前記固定ボルトに螺着するネジ孔が形成されることを特徴としている。
【0009】
本発明のパネル固定部材は、前記本体部は、前記縁部外壁パネルの端縁から突出し、前記下地側固定具と連結される突出部を有し、当該突出部には屋内外方向に貫通する連結孔が形成され、前記下地側固定具は、前記連結孔に挿入される連結ボルトが螺着可能な連結ネジ孔が形成されることを特徴としている。
【0010】
本発明のパネル固定部材は、前記連結孔は水平方向に長い長孔状に形成されることを特徴としている。
【0011】
本発明の外壁パネル固定構造は、外壁下地板に複数の予め定められた寸法の一般外壁パネルを並べて配置して外壁を形成する際に、当該外壁の縁部に前記一般外壁パネルよりも小さく形成される余白部に、上記のいずれかのパネル固定部材を用いて、前記縁部外壁パネルを固定する外壁パネル固定構造であって、前記縁部外壁パネルは、前記一般外壁パネルを前記余白部の形状に応じて切断するとともに、裏面から中空部に向かって挿入孔を形成したものであることを特徴としている。
【0012】
本発明の外壁パネル固定構造は、前記裏側固定具の前記差し込み部が、前記縁部外壁パネルの前記挿入孔に挿入される際に、前記差し込み部の先端が前記中空部に引っ掛かって係止されるとともに、前記差し込み部と前記挿入孔とが接着剤によって接着されるものであり、当該接着剤は前記挿入孔を塞ぐことを特徴としている。
【0013】
本発明の外壁パネル固定方法は、外壁下地板に複数の予め定められた寸法の一般外壁パネルを並べて配置して外壁を形成する際に、当該外壁の縁部に前記一般外壁パネルよりも小さく形成される余白部に、上記のいずれかのパネル固定部材を用いて、前記縁部外壁パネルを固定する外壁パネル固定方法であって、前記余白部の形状に応じて、前記外壁の縁部側が切断面となるように、前記一般外壁パネルを切断する切断工程と、前記切断工程で切断された縁部外壁パネルの裏面から前記縁部外壁パネルの中空部に向かって挿入孔を形成する挿入孔形成工程と、前記パネル固定部材の前記裏側固定具に形成された前記差し込み部を前記挿入孔に挿入して、当該差し込み部の先端を前記縁部外壁パネルの前記中空部に引っ掛けて係止し、前記裏側固定具を前記縁部外壁パネルの裏面に固定する裏側固定具取付工程と、前記パネル固定部材の前記下地側固定具を前記外壁下地板に固定する下地側固定具取付工程と、前記裏側固定具と前記下地側固定具とを連結する連結工程と、を備えることを特徴としている。
【0014】
本発明の外壁パネル固定方法は、前記裏側固定具取付工程は、前記差し込み部を前記挿入孔に挿入して、当該差し込み部の先端を前記縁部外壁パネルの前記中空部に引っ掛けて係止するときに、接着剤を前記差し込み部と前記挿入孔との間に注入して、前記差し込み部と前記挿入孔とを接着することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のパネル固定部材によると、縁部外壁パネルの裏面から中空部に形成される挿入孔に裏側固定具の差し込み部を挿入して、当該差し込み部の先端の折れ曲がった部分を中空部に引っ掛けて係止することで、裏側固定具を縁部外壁パネルに固定し、当該裏側固定具と外壁下地板に固定された下地側固定具と、を連結することで、縁部外壁パネルを外壁下地板に固定するものである。挿入孔は縁部外壁パネルの裏面から穿孔するものであるので、縁部外壁パネル端部を穿孔する場合に比べて加工が容易であり、差し込み部の先端の折れ曲がった部分を中空部に引っ掛けることで、縁部外壁パネルの面外方向にも鉛直及び水平の面内方向にも移動できないように、裏側固定具を取り付けることができ、縁部外壁パネルを外壁下地板に確実に固定することができる。
【0016】
本発明のパネル固定部材によると、本体部は鉛直方向に長い長孔が形成されており、この長孔に挿入される固定ボルトに差し込み部の基端部に形成されたネジ孔が螺着することで差し込み部と本体部とが接続されている。縁部外壁パネルに裏面から中空部にまで形成される挿入孔の高さ位置は、縁部外壁パネルの中空部の位置に応じて定まるので、差し込み部が長孔の範囲で本体部に対して摺動可能であり、中空部の高さ位置に対応して定まる挿入孔の高さ位置に応じて、差し込み部の位置を上下に調整することができる。
【0017】
本発明のパネル固定部材によると、縁部外壁パネルの端縁から突出する突出部に形成された連結孔に連結ボルトを挿入し、当該連結ボルトを下地側固定具に形成された連結ネジ孔に螺着させることで、裏側固定具と下地側固定具とを連結するので、裏側固定具は下地側固定具に対して若干の揺動が許容されることとなる。したがって、例えば地震などの外力が縁部外壁パネルの水平面内方向に加わった場合であっても、縁部外壁パネルに若干の揺動が許容されることによって、縁部外壁パネルへの負荷を低減させることができ、縁部外壁パネルの破損を抑制できる。
【0018】
本発明のパネル固定部材によると、連結孔は水平方向に長い長孔状に形成されるので、連結ボルトを水平方向に摺動させることで、下地側固定具に対して、裏側固定具及び縁部外壁パネルを水平方向に移動させることができ、縁部外壁パネルの水平方向の位置を調整することができる。
【0019】
本発明の外壁パネル固定構造によると、縁部外壁パネルは、余白部の形状に応じて切断するとともに、裏面から中空部に向かって挿入孔を形成したものであり、上述のいずれかのパネル固定部材を用いて余白部の外壁下地板に固定するので、縁部外壁パネルの切断小口に孔をあける場合に比べて加工が容易であり、縁部外壁パネルを外壁下地板に確実に固定することができる。
【0020】
本発明の外壁パネル固定構造によると、差し込み部の先端が中空部に引っ掛かって係止されるとともに、差し込み部と挿入孔とが接着剤によって接着されるものであるので、裏側固定具を強固に縁部外壁パネルの裏面に固定することができる。そして、接着剤は挿入孔を塞ぐので、縁部外壁パネルの挿入孔への水の浸入を抑制することができる。
【0021】
本発明の外壁パネル固定方法によると、余白部の形状に応じて一般外壁パネルを切断し、切断された縁部外壁パネルの裏面から縁部外壁パネルの中空部に向かって挿入孔を形成するので、縁部外壁パネルの切断小口に孔をあける場合に比べて容易に加工することができる。そして、差し込み部を挿入孔に挿入して、差し込み部の先端を縁部外壁パネルの中空部に引っ掛けて係止することで、裏側固定具を縁部外壁パネルの裏面に固定するので簡単に裏側固定具を縁部外壁パネルの裏面に固定することができ、裏側固定具が縁部外壁パネルの面内方向及び面外方向のいずれの方向にも脱落しないように固定することができる。
【0022】
本発明の外壁パネル固定方法によると、差し込み部を挿入孔に挿入して、差し込み部の先端を中空部に引っ掛けて係止するときに、接着剤を差し込み部と挿入孔との間に注入して差し込み部と挿入孔とを接着するので、裏側固定具を縁部外壁パネルに強固に固定することができるとともに、接着剤により挿入孔を塞いで、挿入孔から水が浸入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】外壁パネル固定構造を示す断面図
図2】一般外壁パネルの構成を説明する斜視図。
図3】外壁パネル固定構造を示す正面図。
図4】縁部外壁パネルの構成を説明する一部省略斜視図。
図5】(A)は裏側固定具の本体部の構成を説明する斜視図、(B)は正面図。
図6】差し込み部及び固定ボルトの構成を示す斜視図。
図7】(A)は下地側固定具の構成を説明する斜視図、(B)は正面図。
図8】開口部の下部に形成される外壁パネル固定構造を説明する断面図。
図9】開口部の上部に形成される外壁パネル固定構造を説明する断面図。
図10】開口部の下側に一般外壁パネルを固定し、開口部のサッシ枠と一般外壁パネルとの間に余白部が形成された状態を説明する断面図。
図11】切断工程を説明する図。
図12】挿入孔形成工程を説明する図。
図13】裏側固定具取付工程を説明する断面図。
図14】裏側固定具取付工程を説明する一部省略斜視図。
図15】下地側固定具取付工程を説明する断面図。
図16】連結工程を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のパネル固定部材1、外壁パネル固定構造2、及び外壁パネル固定方法の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。本実施形態におけるパネル固定部材1は、図1に示すように、外壁下地板3に外壁の縁部に配置される縁部外壁パネル4を固定する金具である。なお、縁部外壁パネル4は陶製のものに限定されるものではなく、例えば窯業系サイディング材としての外壁パネルであればよい。
【0025】
縁部外壁パネル4は一般外壁パネルの一部を切断して形成されるものである。まず、一般外壁パネル5について説明する。一般外壁パネル5は、水平方向に長く鉛直方向に短い矩形に形成されており、表面は凹凸の化粧模様が形成され、裏面は平面状に形成されている。一般外壁パネル5の上端は、裏面側が上方に突出する上端さね6が形成されており、表面側は裏面側に比べて低くなるように形成されている。また、一般外壁パネル5の下端は、表面側が下方に突出する下端さね7が形成されており、裏面側にも表面側よりも短く下方に突出する裏さね8が形成されており、下端さね7と裏さね8との間に下端溝9が形成されている。
【0026】
一般外壁パネル5の内部には中空部10が形成されている。中空部10は一般外壁パネル5の幅方向に沿って形成された孔であり、本実施形態においては円形又は長孔状の断面形状の複数の平行な水平孔である。
【0027】
一般外壁パネル5は、建物の図示しない構造躯体に固定される外壁下地板3の屋外側に配置されて外壁面を形成している。一般外壁パネル5は、図1に示すように、外壁下地板3にビス固定される固定金物11によって上端に形成された上端さね6及び下端に形成された裏さね8が係止されることによって外壁下地板3に固定されている。一般外壁パネル5は、例えば高さ方向に約300mm、幅方向に約1500mmで、厚さは約18.5mmに形成されている。なお、幅方向の長さは一般外壁パネル5が設置される位置によって異なる寸法となる。一般外壁パネル5は、高さ方向及び幅方向に複数枚並べて配置される。本実施形態の外壁面には、腰窓の開口部12が配置されている。開口部12の両側に配置される一般外壁パネル5は、幅が約240mmに形成されている。開口部12は、幅が約1000mmで高さが約700mmに形成されている。
【0028】
開口部12の上部及び開口部12の下部は、図3に示すように、高さ方向に約300mmの一般外壁パネル5は収まらないので、開口部12の上部及び開口部12の下部の寸法に合うように、一般外壁パネル5を切断した縁部外壁パネル4が配置される。縁部外壁パネル4は、図4に示すように、開口部12側が切断面となるように一般外壁パネル5を切断して形成される。すなわち、開口部12の上部においては、一般外壁パネル5の下側部分を切り落として縁部外壁パネル4を形成し、開口部12の下部においては、一般外壁パネル5の上側部分を切り落として縁部外壁パネル4を形成する。縁部外壁パネル4は裏面から一つの中空部10にかけて穿たれた挿入孔23が設けられており、後述するパネル固定部材1を取り付け可能としている。
【0029】
縁部外壁パネル4を外壁下地板3に固定するパネル固定部材1は、図5から図7に示すように、縁部外壁パネル4の裏面に固定される裏側固定具13と、外壁下地板3に固定され、裏側固定具13に連結される下地側固定具14と、を備える。裏側固定具13は、縁部外壁パネル4の裏面に当接する本体部15と、基端部16aが本体部15に固定されるとともに、先端16bが折れ曲がって形成されており、縁部外壁パネル4の裏面から中空部10に形成される挿入孔23に挿入されて、先端16bが中空部10に引っ掛かって係止される差し込み部16と、を有する。
【0030】
本体部15は、図5に示すように、縁部外壁パネル4の裏面に固定され、水平断面がコの字形状の固定体17と、固定体17の側方に平板上に形成され、先端が縁部外壁パネル4の端縁から突出する突出部18と、を有している。固定体17は、一端が縁部外壁パネル4の裏面に当接し、他端が縁部外壁パネル4の裏面から遠ざかる方向に延びており、且つ、鉛直方向に沿って形成される互いに平行な一対の側板17aと、一対の側板17aの他端同士をつなぐ背面板17bと、により構成されている。背面板17bには、鉛直方向に延びる長孔17cが形成されている。突出部18は、固定体17の一方の側板17aの縁部外壁パネル4の裏面に当接する一端から当該縁部外壁パネル4の裏面に沿って形成されており、先端が縁部外壁パネル4の端縁から開口部12が形成される側に向かって突出している。突出部18は、突出する先端に外壁下地板3に固定される下地側固定具14に連結するための連結孔18aが形成されている。連結孔18aは水平方向に長い長孔状に形成されている。
【0031】
差し込み部16は、図6に示すように、正方形の板状に形成された基端部16aと、基端部16aから伸びて先端16bが折れ曲がる挿入部16cと、を有している。基端部16aには、本体部15の固定体17の背面板17bに形成される長孔17cに挿入される固定ボルト19が螺着するネジ孔16dが形成されている。ネジ孔16dは基端部16aに形成された貫通孔にナットをカシメ固定又は溶接して形成したものである。差し込み部16は、基端部16aから外壁パネルの裏面に向かって伸びて挿入部16cを形成しており、先端16bが縁部外壁パネル4の面内方向であり、且つ、水平な方向に折れ曲がっている。挿入部16cは縁部外壁パネル4に形成された挿入孔23に挿入されて、折れ曲がった先端16bが当該縁部外壁パネル4の中空部10に引っ掛かるものである。差し込み部16の先端16bを縁部外壁パネル4の中空部10に引っ掛けた状態で、固定体17の長孔17cに挿入される固定ボルト19が基端部16aのネジ孔16dに螺着して、差し込み部16を固定体17の背面板17bに接近する方向に移動させることで、差し込み部16の先端16bと固定部の側板17aとで縁部外壁パネル4を挟み込んで、縁部外壁パネル4の裏面に裏側固定具13を固定する。
【0032】
下地側固定具14は、図7に示すように、外壁下地板3に固定される2つのビス挿入孔14cが形成された平板状の下地固定部14aと、下地固定部14aの一方の側面から屋外方向に突出するように形成されており、裏側固定具13に連結される連結部14bと、を有する。下地固定部14aは、矩形平板状で2つのビス挿入孔14cにそれぞれ固定用ビス14dを挿入し、当該固定用ビス14dを外壁下地板3に打ち込むことで、外壁下地板3に固定されるものである。連結部14bは上方から見てコの字形状に形成されており、2つの互いに平行な側面板14eと、2つの側面板14eを繋ぐ連結板14fとを有している。2つの側面板14eは下部分が外壁下地板3に当接するとともに、上側部分が外壁下地板3から離間するように切りかかれて形成されている。連結板14fは外壁下地板3から離れて形成されており、上部に連結ボルト14hを螺着可能な連結ネジ孔14gが形成されている。連結ネジ孔14gは、裏側固定具13の突出部18に形成された連結孔18aに挿入された連結ボルト14hを螺着させることで、裏側固定具13と下地側固定具14とを互いに連結している。
【0033】
開口部12の下部に配置される縁部外壁パネル4を固定する外壁パネル固定構造2は、図1及び図8に示すように、外壁の下端から順に固定金物11を用いて一般外壁パネル5を固定したときに、開口部12と一般外壁パネル5との間に形成され、一般外壁パネル5の高さ寸法よりも高さ方向の長さが短い余白部20に上述のパネル固定部材1を用いて、縁部外壁パネル4を固定する外壁パネル固定構造2である。縁部外壁パネル4の下端に形成される裏さね8が外壁下地板3にビス固定された固定金物11に係止されて固定されており、縁部外壁パネル4の裏面に固定された裏側固定具13と、外壁下地板3に固定された下地側固定具14とを連結ボルト14hで連結することにより、余白部20に縁部外壁パネル4を固定している。
【0034】
また、開口部12の上部に配置される縁部外壁パネル4を固定する外壁パネル固定構造2は、図1及び図9に示すように、開口部12の上方に配置される一般外壁パネル5と、開口部12との間に形成される余白部20に、パネル固定部材1を用いて縁部外壁パネル4を固定する外壁パネル固定構造2である。縁部外壁パネル4の上端に形成される上端さね6が外壁下地板3にビス固定された固定金物11に係止されて固定され、縁部外壁パネル4の裏面に固定された裏側固定具13と、外壁下地板3に固定された下地側固定具14とを連結ボルト14hで連結することにより、余白部20に縁部外壁パネル4を固定している。
【0035】
なお、外壁パネル固定構造2は開口部12の上部又は下部に縁部外壁パネル4を固定するものに限定されるものではない。外壁パネル固定構造2は、例えばバルコニーの腰壁や建物のオーバーハング部のように一部の外壁が屋外方向に突出している場合のように、外壁の高さが一般外壁パネル5の倍数となっておらず、一般外壁パネル5を高さ方向に並べて配置した場合に一般外壁パネル5を配置することができない余白部20が生じる場合に、用いることができる。
【0036】
以上のような、外壁パネル固定構造2を施工する外壁パネル固定方法は、図10に示すように、まず、建物の構造躯体に外壁下地板3を固定するとともに、外壁下地板3が設けられていない開口部12を形成し、当該開口部12にサッシ枠21などを固定する。なお、サッシ枠21は外壁下地板3との気密防水性を保つために、上下に当該外壁下地板3の表面に固定されるヒレ部22が形成されている。外壁下地板3が固定されると、次に、下端から順に固定金物11を外壁下地板3にビス25でビス止めし、一般外壁パネル5の下端に形成された裏さね8を固定金物11に係止させ、その後、上端さね6に固定金物11をはめ込んで、当該固定金物11を外壁下地板3にビス止めする。なお、最も下端の固定金物11は図示しないが、上端さね6を係止する必要がないので、裏さね8のみを係止可能な形状であればよい。
【0037】
そして、開口部12の下部に形成される余白部20を残して、開口部12の下側の一般外壁パネル5を固定すると、次に、縁部外壁パネル4を取り付ける作業を行う。縁部外壁パネル4を取り付ける作業の工程は、まず、図11に示すように、一般外壁パネル5を余白部20の大きさに合わせて予め工場で切断する切断工程を行う。具体的には、開口部12の上部に形成される縁部外壁パネル4は一般外壁パネル5の下側部分を余白部20の大きさに合わせて切り落とし、開口部12の下部に形成される縁部外壁パネル4は一般外壁パネル5の上側部分を余白部20の大きさに合わせて切り落とす。これにより、縁部外壁パネル4の一般外壁パネル5側の端部には上端さね6、又は下端さね7及び裏さね8が形成された状態となり、一般外壁パネル5を外壁下地板3に固定する一般的な固定金物11で固定することができ、縁部外壁パネル4の開口部12側の端部には切断面が形成される。そして、次に、図12に示すように、縁部外壁パネル4の裏面に、当該縁部外壁パネル4に裏側固定具13を固定する際に、差し込み部16の先端16bが挿入されることとなる位置に当該裏面から中空部10にかけて挿入孔23を穿孔する挿入孔形成工程が行われる。挿入孔23は縁部外壁パネル4の高さ方向における中空部10が存在する位置に形成される。これら切断工程及び挿入孔形成工程は、それぞれ、工場で行って縁部外壁パネル4を形成してから建築現場に運搬することが加工精度や現場での施工簡略化の観点からは好ましいが、切断工程及び挿入孔形成工程は建築現場で行われるものであってもかまわない。
【0038】
建築現場に縁部外壁パネル4が運搬されると、次に、図13及び図14に示すように、当該縁部外壁パネル4に裏側固定具13を取り付ける裏側固定具取付工程が行われる。この工程では、裏側固定具13は、縁部外壁パネル4の上端又は下端から突出部18の一部が突き出して連結孔18aが屋外側に露出するように配置されて、縁部外壁パネル4に固定される。具体的には、裏側固定具13の差し込み部16の先端16bを縁部外壁パネル4の裏面に形成された挿入孔23に挿入し、裏側固定具13の本体部15に形成されている長孔17cに挿入された固定ボルト19を差し込み部16の基端部16aのネジ孔16dに螺着させて締め付けることで、裏側固定具13と縁部外壁パネル4とを固定する。このとき固定ボルト19の長孔17c内での相対位置を調整することで、裏側固定具13の高さ方向の位置を調整し、当該裏側固定具13の突出部18の連結孔18aが形成されている位置が縁部外壁パネル4の上端又は下端から突出するように配置するとともに、当該突出部18が開口部12のサッシ枠21と干渉することがないように配置する。
【0039】
なお、縁部外壁パネル4の挿入孔23に、差し込み部16の先端16b挿入する前に、挿入孔23又は差し込み部16の先端16bに接着剤を塗布しておき、その後、差し込み部16の先端16bを挿入孔23に挿入して接着固定するものであってもよい。このようにすれば、差し込み部16が挿入孔23により強固に固定される。このとき、接着剤は、挿入孔23と差し込み部16の先端16bとの隙間を完全に塞ぐように塗布されることが好ましい。このように構成すると挿入孔23に水が浸入することを抑制することができる。
【0040】
次に、図15に示すように、下地側固定具14の下地固定部14aに形成されたビス挿入孔14cに固定用ビス14dを挿入して、外壁下地板3に打ち込んで、当該下地側固定具14を外壁下地板3に固定する下地側固定具取付工程を行う。下地側固定具14を取り付ける位置は、当該下地側固定具14の連結部14bに形成された連結ネジ孔14gが、縁部外壁パネル4を配置したときに裏側固定具13の連結孔18aが配置される位置に整合する位置となるように配置される。
【0041】
下地側固定具14を外壁下地板3に固定すると、次に、図16に示すように、開口部12の下部に配置される縁部外壁パネル4の下端を一般外壁パネル5と突き合わせられる位置に設けられた固定金具に嵌め込んで取り付けるとともに、裏側固定具13の連結孔18aから連結ボルト14hを挿入して、下地側固定具14の連結ネジ孔14gに螺合させて、裏側固定具13と下地側固定具14とを連結し、外壁下地板3に縁部外壁パネル4を固定する連結工程を行う。そして、開口部12の上部に配置される縁部外壁パネル4にも裏側固定具13を取り付ける裏側固定具取付工程を行う。その後、裏側固定具13の連結孔18aから連結ボルト14hを挿入して、下地側固定具14の連結ネジ孔14gに螺合させて、裏側固定具13と下地側固定具14とを連結して固定する。そして、開口部12の上側の縁部外壁パネル4の上端さね6に固定金物11をはめ込んで、当該固定金物11を外壁下地板3にビス止めし、開口部12の上側の縁部外壁パネル4を外壁下地板3に固定する連結工程を行う。
【0042】
このように開口部12の上下の縁部外壁パネル4を外壁下地板3に固定する際には、連結孔18aが水平方向に長い長孔状であるので縁部外壁パネル4の水平方向の位置を調整しながら、連結工程を行うことができる。また、裏側固定具13及び下地側固定具14の接続は、連結ボルト14hによってピン接合されるものであるので、例えば地震などで水平方向の外力が加わった場合でも、縁部外壁パネル4が若干揺動することを許容することができ、縁部外壁パネル4の破損などを抑制することができる。
【0043】
連結工程を終えると、開口部12の上側の縁部外壁パネル4の上端さね6にはめ込まれて外壁下地板3にビス止めされた固定金物11に、一般外壁パネル5の下端に形成された裏さね8を固定金物11に係止させ、その後、当該一般外壁パネル5の上端さね6にさらに固定金物11をはめ込んで、当該固定金物11を外壁下地板3にビス止めする作業を繰り返して、一般外壁パネルを上方に連続して配置する。そして、縁部外壁パネル4と開口部12のサッシ枠21との間に、図8及び図9に示すように、防水材24を充填し、外壁の施工を完了する。
【0044】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るパネル固定部材1、外壁パネル固定構造2、外壁パネル固定方法は、住宅の外壁を形成する際に用いられるパネル固定部材1、外壁パネル固定構造2、外壁パネル固定方法として好適である。
【符号の説明】
【0046】
1 パネル固定部材
2 外壁パネル固定構造
3 外壁下地板
4 縁部外壁パネル
10 中空部
13 裏側固定具
14 下地側固定具
15 本体部
16 差し込み部
17c 長孔
18 突出部
18a 連結孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
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