(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081201
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】絶縁構造および絶縁構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 27/08 20060101AFI20220524BHJP
H01J 27/04 20060101ALI20220524BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20220524BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J27/04
H01J37/08
H01J37/317 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192598
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000183196
【氏名又は名称】住友重機械イオンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】石田 勇二
【テーマコード(参考)】
5C030
5C034
【Fターム(参考)】
5C030DE04
5C034CC01
(57)【要約】
【課題】汚染物の付着による絶縁性能の低下を抑制しうる絶縁構造を提供する。
【解決手段】絶縁構造74は、第1端部82と、第2端部84と、第1端部82と第2端部84の間を接続する軸部86と、軸部86の外面94と対向する内面96を有し、第1端部82から第2端部84に向けて延在する包囲部88と、を備える。軸部86の外面94と包囲部88の内面96の間の隙間90は、外部と連通するように構成される。第1端部82、第2端部84、軸部86および包囲部88は、電気絶縁材料で構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部と、
第2端部と、
前記第1端部と前記第2端部の間を接続する軸部と、
前記軸部の外面と対向する内面を有し、前記第1端部から前記第2端部に向けて延在する包囲部と、を備え、
前記軸部の前記外面と前記包囲部の前記内面の間の隙間は、外部と連通するように構成され、
前記第1端部、前記第2端部、前記軸部および前記包囲部は、電気絶縁材料で構成されることを特徴とする絶縁構造。
【請求項2】
前記隙間は、外部から直接視認できない部分を有するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の絶縁構造。
【請求項3】
前記軸部の前記外面および前記包囲部の前記内面の少なくとも一方は、凹部または凸部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁構造。
【請求項4】
前記軸部の前記外面は、凹部または凸部を有し、前記包囲部の前記内面は、凹部または凸部を有することを特徴とする請求項3に記載の絶縁構造。
【請求項5】
前記包囲部の前記内面は、前記軸部の前記外面の凹部に対応する位置に設けられる凸部、および、前記軸部の前記外面の凸部に対応する位置に設けられる凹部の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項3に記載の絶縁構造。
【請求項6】
前記凹部または前記凸部は、周方向または螺旋状に延びることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の絶縁構造。
【請求項7】
前記包囲部の外面は、円筒面であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の絶縁構造。
【請求項8】
前記絶縁構造は、径方向に延びる開口を有し、前記隙間は、前記開口を通じて外部と連通することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の絶縁構造。
【請求項9】
前記包囲部は、前記第1端部に接続され、前記包囲部と前記第2端部の間に開口が設けられ、前記隙間は、前記開口を通じて外部と連通することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の絶縁構造。
【請求項10】
前記開口は、前記軸部から径方向に離れるにつれて開口幅が大きくなるように構成されることを特徴とする請求項8または9に記載の絶縁構造。
【請求項11】
前記隙間は、前記開口から離れるにつれて前記軸部の前記外面と前記包囲部の前記内面の間の距離が小さくなるように構成されることを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載の絶縁構造。
【請求項12】
前記第1端部、前記第2端部、前記軸部および前記包囲部は、同一材料で構成されることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の絶縁構造。
【請求項13】
前記第1端部、前記第2端部、前記軸部および前記包囲部は、セラミック材料または樹脂材料で構成されることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の絶縁構造。
【請求項14】
絶縁構造の製造方法であって、前記絶縁構造は、第1端部と、第2端部と、前記第1端部と前記第2端部の間を接続する軸部と、前記軸部の外面と対向する内面を有し、前記第1端部から前記第2端部に向けて延在する包囲部と、を備え、前記軸部の前記外面と前記包囲部の前記内面の間の隙間は、外部と連通するように構成され、
前記第1端部、前記第2端部、前記軸部および前記包囲部を電気絶縁材料で形成することを特徴とする絶縁構造の製造方法。
【請求項15】
前記第1端部、前記第2端部、前記軸部および前記包囲部の少なくとも一部を積層造形法により形成することを特徴とする請求項14に記載の絶縁構造の製造方法。
【請求項16】
前記第1端部、前記第2端部、前記軸部および前記包囲部の少なくとも一部を機械切削により形成することを特徴とする請求項14または15に記載の絶縁構造の製造方法。
【請求項17】
前記軸部の少なくとも一部を含む第1部品と、前記包囲部の少なくとも一部を含む第2部品とを備える複数の部品を形成することと、
前記複数の部品を接合することと、を備えることを特徴とする請求項14から16のいずれか一項に記載の絶縁構造の製造方法。
【請求項18】
前記複数の部品を接合することは、各部品に形成される係合部を互いに係合させることを含むことを特徴とする請求項17に記載の絶縁構造の製造方法。
【請求項19】
前記複数の部品を接合することは、前記複数の部品を仮接合することと、前記複数の部品の仮接合部分を硬化させて前記複数の部品を固着させることと、を含むことを特徴とする請求項17または18に記載の絶縁構造の製造方法。
【請求項20】
前記隙間に支持部材を配置しながら前記第1端部、前記第2端部、前記軸部および前記包囲部の少なくとも一部を構成する中間体を形成することと、
前記中間体から前記支持部材を除去することと、を備えることを特徴とする請求項14から19のいずれか一項に記載の絶縁構造の製造方法。
【請求項21】
前記支持部材は、樹脂材料で構成され、前記支持部材を除去することは、前記支持部材を加熱して溶融、蒸発または熱分解させること、または、前記支持部材を溶剤を用いて溶解させることを含むことを特徴とする請求項20に記載の絶縁構造の製造方法。
【請求項22】
前記絶縁構造は、セラミック材料または樹脂材料で構成されることを特徴とする請求項14から21のいずれか一項に記載の絶縁構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁構造および絶縁構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、半導体の導電性を変化させる目的、半導体の結晶構造を変化させる目的などのために、半導体ウェハにイオンを注入する工程(イオン注入工程ともいう)が標準的に実施されている。イオン注入工程で使用される装置は、一般にイオン注入装置と呼ばれる。イオン注入装置は、ソースガスをプラズマ化してイオンを生成するためのイオン生成装置を備える。イオン生成装置で生成されるイオンは、引出電極によって印加される電場を通じて引き出される。引出電極は、絶縁構造によって支持される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁構造の表面には、イオン注入装置の使用によって導電性の汚染物が付着する。汚染物が付着すると絶縁構造の絶縁性能が低下するため、定期的なメンテナンスが必要とされる。絶縁構造のメンテナンス頻度が高いと、イオン注入装置の生産性の低下につながる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、汚染物の付着による絶縁性能の低下を抑制しうる絶縁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の絶縁構造は、第1端部と、第2端部と、第1端部と第2端部の間を接続する軸部と、軸部の外面と対向する内面を有し、第1端部から第2端部に向けて延在する包囲部と、を備える。軸部の外面と包囲部の内面の間の隙間は、外部と連通するように構成される。第1端部、第2端部、軸部および包囲部は、電気絶縁材料で構成される。
【0007】
本発明の別の態様は、絶縁構造の製造方法である。絶縁構造は、第1端部と、第2端部と、第1端部と第2端部の間を接続する軸部と、軸部の外面と対向する内面を有し、第1端部から第2端部に向けて延在する包囲部と、を備え、軸部の外面と包囲部の内面の間の隙間は、外部と連通するように構成される。この方法は、第1端部、第2端部、軸部および包囲部を電気絶縁材料で形成する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によれば、汚染物の付着による絶縁性能の低下を抑制しうる絶縁構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るイオン注入装置の概略構成を示す上面図である。
【
図2】
図1のイオン注入装置の概略構成を示す側面図である。
【
図3】実施の形態に係るイオン生成装置の構成を概略的に示す図である。
【
図4】実施の形態に係る絶縁構造の構成を詳細に示す断面図である。
【
図5】
図4に示す絶縁体の外観を示す斜視図である。
【
図6】中間体を積層造形法で形成する工程を模式的に示す図である。
【
図7】
図4に示す絶縁体の別の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図7の複数の部品を接合する工程を模式的に示す斜視図である。
【
図9】変形例に係る絶縁体の構成を詳細に示す断面図である。
【
図10】別の変形例に係る絶縁体の構成を詳細に示す断面図である。
【
図12】さらに別の変形例に係る絶縁体の構成を詳細に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0012】
図1は、実施の形態に係るイオン注入装置10を概略的に示す上面図であり、
図2は、イオン注入装置10の概略構成を示す側面図である。イオン注入装置10は、被処理物Wの表面にイオン注入処理を施すよう構成される。被処理物Wは、例えば基板であり、例えば半導体ウェハである。説明の便宜のため、本明細書において被処理物WをウェハWと呼ぶことがあるが、これは注入処理の対象を特定の物体に限定することを意図しない。
【0013】
イオン注入装置10は、ビームを一方向に往復走査させ、ウェハWを走査方向と直交する方向に往復運動させることによりウェハWの処理面全体にわたってイオンビームを照射するよう構成される。本書では説明の便宜上、設計上のビームラインAに沿って進むイオンビームの進行方向をz方向とし、z方向に垂直な面をxy面と定義する。イオンビームを被処理物Wに対し走査する場合において、ビームの走査方向をx方向とし、z方向及びx方向に垂直な方向をy方向とする。したがって、ビームの往復走査はx方向に行われ、ウェハWの往復運動はy方向に行われる。
【0014】
イオン注入装置10は、イオン生成装置12と、ビームライン装置14と、注入処理室16と、ウェハ搬送装置18とを備える。イオン生成装置12は、イオンビームをビームライン装置14に与えるよう構成される。ビームライン装置14は、イオン生成装置12から注入処理室16へイオンビームを輸送するよう構成される。注入処理室16には、注入対象となるウェハWが収容され、ビームライン装置14から与えられるイオンビームをウェハWに照射する注入処理がなされる。ウェハ搬送装置18は、注入処理前の未処理ウェハを注入処理室16に搬入し、注入処理後の処理済ウェハを注入処理室16から搬出するよう構成される。イオン注入装置10は、イオン生成装置12、ビームライン装置14、注入処理室16およびウェハ搬送装置18に所望の真空環境を提供するための真空排気系(図示せず)を備える。
【0015】
ビームライン装置14は、ビームラインAの上流側から順に、質量分析部20、ビームパーク装置24、ビーム整形部30、ビーム走査部32、ビーム平行化部34および角度エネルギーフィルタ(AEF;Angular Energy Filter)36を備える。なお、ビームラインAの上流とは、イオン生成装置12に近い側のことをいい、ビームラインAの下流とは注入処理室16(またはビームストッパ46)に近い側のことをいう。
【0016】
質量分析部20は、イオン生成装置12の下流に設けられ、イオン生成装置12から引き出されたイオンビームから必要なイオン種を質量分析により選択するよう構成される。質量分析部20は、質量分析磁石21と、質量分析レンズ22と、質量分析スリット23とを有する。
【0017】
質量分析磁石21は、イオン生成装置12から引き出されたイオンビームに磁場を印加し、イオンの質量電荷比M=m/q(mは質量、qは電荷)の値に応じて異なる経路でイオンビームを偏向させる。質量分析磁石21は、例えばイオンビームにy方向(
図1および
図2では-y方向)の磁場を印加してイオンビームをx方向に偏向させる。質量分析磁石21の磁場強度は、所望の質量電荷比Mを有するイオン種が質量分析スリット23を通過するように調整される。
【0018】
質量分析レンズ22は、質量分析磁石21の下流に設けられ、イオンビームに対する収束/発散力を調整するよう構成される。質量分析レンズ22は、質量分析スリット23を通過するイオンビームのビーム進行方向(z方向)の収束位置を調整し、質量分析部20の質量分解能M/dMを調整する。なお、質量分析レンズ22は必須の構成ではなく、質量分析部20に質量分析レンズ22が設けられなくてもよい。
【0019】
質量分析スリット23は、質量分析レンズ22の下流に設けられ、質量分析レンズ22から離れた位置に設けられる。質量分析スリット23は、質量分析磁石21によるビーム偏向方向(x方向)がスリット幅方向と一致するように構成され、x方向が相対的に短く、y方向が相対的に長い形状の開口23aを有する。
【0020】
質量分析スリット23は、質量分解能の調整のためにスリット幅が可変となるように構成されてもよい。質量分析スリット23は、スリット幅方向に移動可能な二枚の遮蔽体により構成され、二枚の遮蔽体の間隔を変化させることによりスリット幅が調整可能となるように構成されてもよい。質量分析スリット23は、スリット幅の異なる複数のスリットのいずれか一つに切り替えることによりスリット幅が可変となるよう構成されてもよい。
【0021】
ビームパーク装置24は、ビームラインAからイオンビームを一時的に退避し、下流の注入処理室16(またはウェハW)に向かうイオンビームを遮蔽するよう構成される。ビームパーク装置24は、ビームラインAの途中の任意の位置に配置することができるが、例えば、質量分析レンズ22と質量分析スリット23の間に配置できる。質量分析レンズ22と質量分析スリット23の間には一定の距離が必要であるため、その間にビームパーク装置24を配置することで、他の位置に配置する場合よりもビームラインAの長さを短くすることができ、イオン注入装置10の全体を小型化できる。
【0022】
ビームパーク装置24は、一対のパーク電極25(25a,25b)と、ビームダンプ26と、を備える。一対のパーク電極25a,25bは、ビームラインAを挟んで対向し、質量分析磁石21のビーム偏向方向(x方向)と直交する方向(y方向)に対向する。ビームダンプ26は、パーク電極25a,25bよりもビームラインAの下流側に設けられ、ビームラインAからパーク電極25a,25bの対向方向に離れて設けられる。
【0023】
第1パーク電極25aはビームラインAよりも重力方向上側に配置され、第2パーク電極25bはビームラインAよりも重力方向下側に配置される。ビームダンプ26は、ビームラインAよりも重力方向下側に離れた位置に設けられ、質量分析スリット23の開口23aの重力方向下側に配置される。ビームダンプ26は、例えば、質量分析スリット23の開口23aが形成されていない部分で構成される。ビームダンプ26は、質量分析スリット23とは別体として構成されてもよい。
【0024】
ビームパーク装置24は、一対のパーク電極25a,25bの間に印加される電場を利用してイオンビームを偏向させ、ビームラインAからイオンビームを退避させる。例えば、第1パーク電極25aの電位を基準として第2パーク電極25bに負電圧を印加することにより、イオンビームをビームラインAから重力方向下方に偏向させてビームダンプ26に入射させる。
図2において、ビームダンプ26に向かうイオンビームの軌跡を破線で示している。また、ビームパーク装置24は、一対のパーク電極25a,25bを同電位とすることにより、イオンビームをビームラインAに沿って下流側に通過させる。ビームパーク装置24は、イオンビームを下流側に通過させる第1モードと、イオンビームをビームダンプ26に入射させる第2モードとを切り替えて動作可能となるよう構成される。
【0025】
質量分析スリット23の下流にはインジェクタファラデーカップ28が設けられる。インジェクタファラデーカップ28は、インジェクタ駆動部29の動作によりビームラインAに出し入れ可能となるよう構成される。インジェクタ駆動部29は、インジェクタファラデーカップ28をビームラインAの延びる方向と直交する方向(例えばy方向)に移動させる。インジェクタファラデーカップ28は、
図2の破線で示すようにビームラインA上に配置された場合、下流側に向かうイオンビームを遮断する。一方、
図2の実線で示すように、インジェクタファラデーカップ28がビームラインA上から外された場合、下流側に向かうイオンビームの遮断が解除される。
【0026】
インジェクタファラデーカップ28は、質量分析部20により質量分析されたイオンビームのビーム電流を計測するよう構成される。インジェクタファラデーカップ28は、質量分析磁石21の磁場強度を変化させながらビーム電流を測定することにより、イオンビームの質量分析スペクトラムを計測できる。計測した質量分析スペクトラムを用いて、質量分析部20の質量分解能を算出することができる。
【0027】
ビーム整形部30は、収束/発散四重極レンズ(Qレンズ)などの収束/発散装置を備えており、質量分析部20を通過したイオンビームを所望の断面形状に整形するよう構成されている。ビーム整形部30は、例えば、電場式の三段四重極レンズ(トリプレットQレンズともいう)で構成され、三つの四重極レンズ30a,30b,30cを有する。ビーム整形部30は、三つのレンズ装置30a~30cを用いることにより、イオンビームの収束または発散をx方向およびy方向のそれぞれについて独立に調整しうる。ビーム整形部30は、磁場式のレンズ装置を含んでもよく、電場と磁場の双方を利用してビームを整形するレンズ装置を含んでもよい。
【0028】
ビーム走査部32は、ビームの往復走査を提供するよう構成され、整形されたイオンビームをx方向に走査するビーム偏向装置である。ビーム走査部32は、ビーム走査方向(x方向)に対向する走査電極対を有する。走査電極対は可変電圧電源(図示せず)に接続されており、走査電極対の間に印加される電圧を周期的に変化させることにより、電極間に生じる電界を変化させてイオンビームをさまざまな角度に偏向させる。その結果、イオンビームがx方向の走査範囲全体にわたって走査される。
図1において、矢印Xによりビームの走査方向及び走査範囲を例示し、走査範囲でのイオンビームの複数の軌跡を一点鎖線で示している。
【0029】
ビーム平行化部34は、走査されたイオンビームの進行方向を設計上のビームラインAの軌道と平行にするよう構成される。ビーム平行化部34は、y方向の中央部にイオンビームの通過スリットが設けられた円弧形状の複数の平行化レンズ電極を有する。平行化レンズ電極は、高圧電源(図示せず)に接続されており、電圧印加により生じる電界をイオンビームに作用させて、イオンビームの進行方向を平行に揃える。なお、ビーム平行化部34は他のビーム平行化装置で置き換えられてもよく、ビーム平行化装置は磁界を利用する磁石装置として構成されてもよい。
【0030】
ビーム平行化部34の下流には、イオンビームを加速または減速させるためのAD(Accel/Decel)コラム(図示せず)が設けられてもよい。
【0031】
角度エネルギーフィルタ(AEF)36は、イオンビームのエネルギーを分析し必要なエネルギーのイオンを下方に偏向して注入処理室16に導くよう構成されている。角度エネルギーフィルタ36は、電界偏向用のAEF電極対を有する。AEF電極対は、高圧電源(図示せず)に接続される。
図2において、上側のAEF電極に正電圧、下側のAEF電極に負電圧を印加させることにより、イオンビームを下方に偏向させる。なお、角度エネルギーフィルタ36は、磁界偏向用の磁石装置で構成されてもよく、電界偏向用のAEF電極対と磁界偏向用の磁石装置の組み合わせで構成されてもよい。
【0032】
このようにして、ビームライン装置14は、ウェハWに照射されるべきイオンビームを注入処理室16に供給する。
【0033】
注入処理室16は、ビームラインAの上流側から順に、エネルギースリット38、プラズマシャワー装置40、サイドカップ42、センターカップ44およびビームストッパ46を備える。注入処理室16は、
図2に示されるように、1枚又は複数枚のウェハWを保持するプラテン駆動装置50を備える。
【0034】
エネルギースリット38は、角度エネルギーフィルタ36の下流側に設けられ、角度エネルギーフィルタ36とともにウェハWに入射するイオンビームのエネルギー分析をする。エネルギースリット38は、ビーム走査方向(x方向)に横長のスリットで構成されるエネルギー制限スリット(EDS;Energy Defining Slit)である。エネルギースリット38は、所望のエネルギー値またはエネルギー範囲を持つイオンビームをウェハWに向けて通過させ、それ以外のイオンビームを遮蔽する。
【0035】
プラズマシャワー装置40は、エネルギースリット38の下流側に位置する。プラズマシャワー装置40は、イオンビームのビーム電流量に応じてイオンビームおよびウェハWの表面(ウェハ処理面)に低エネルギー電子を供給し、イオン注入で生じるウェハ処理面上の正電荷の蓄積によるチャージアップを抑制する。プラズマシャワー装置40は、例えば、イオンビームが通過するシャワーチューブと、シャワーチューブ内に電子を供給するプラズマ発生装置とを含む。
【0036】
サイドカップ42(42R,42L)は、ウェハWへのイオン注入処理中にイオンビームのビーム電流を測定するよう構成される。
図2に示されるように、サイドカップ42R,42Lは、ビームラインA上に配置されるウェハWに対して左右(x方向)にずれて配置されており、イオン注入時にウェハWに向かうイオンビームを遮らない位置に配置される。イオンビームは、ウェハWが位置する範囲を超えてx方向に走査されるため、イオン注入時においても走査されるビームの一部がサイドカップ42R、42Lに入射する。これにより、イオン注入処理中のビーム電流量がサイドカップ42R、42Lにより計測される。
【0037】
センターカップ44は、ウェハ処理面におけるビーム電流を測定するよう構成される。センターカップ44は、駆動部45の動作によりx方向に可動となるよう構成され、イオン注入時にウェハWが位置する注入位置から待避され、ウェハWが注入位置にないときに注入位置に挿入される。センターカップ44は、x方向に移動しながらビーム電流を測定することにより、x方向のビーム走査範囲の全体にわたってビーム電流を測定することができる。センターカップ44は、ビーム走査方向(x方向)の複数の位置におけるビーム電流を同時に計測可能となるように、複数のファラデーカップがx方向に並んだアレイ状に形成されてもよい。
【0038】
サイドカップ42およびセンターカップ44の少なくとも一つは、ビーム電流量を測定するための単一のファラデーカップを備えてもよいし、ビームの角度情報を測定するための角度計測器を備えてもよい。角度計測器は、例えば、スリットと、スリットからビーム進行方向(z方向)に離れて設けられる複数の電流検出部とを備える。角度計測器は、例えば、スリットを通過したビームをスリット幅方向に並べられる複数の電流検出部で計測することにより、スリット幅方向のビームの角度成分を測定できる。サイドカップ42およびセンターカップ44の少なくとも一つは、x方向の角度情報を測定可能な第1角度測定器と、y方向の角度情報を測定可能な第2角度測定器とを備えてもよい。
【0039】
プラテン駆動装置50は、ウェハ保持装置52と、往復運動機構54と、ツイスト角調整機構56と、チルト角調整機構58とを含む。ウェハ保持装置52は、ウェハWを保持するための静電チャック等を含む。往復運動機構54は、ビーム走査方向(x方向)と直交する往復運動方向(y方向)にウェハ保持装置52を往復運動させることにより、ウェハ保持装置52に保持されるウェハをy方向に往復運動させる。
図2において、矢印YによりウェハWの往復運動を例示する。
【0040】
ツイスト角調整機構56は、ウェハWの回転角を調整する機構であり、ウェハ処理面の法線を軸としてウェハWを回転させることにより、ウェハの外周部に設けられるアライメントマークと基準位置との間のツイスト角を調整する。ここで、ウェハのアライメントマークとは、ウェハの外周部に設けられるノッチやオリフラのことをいい、ウェハの結晶軸方向やウェハの周方向の角度位置の基準となるマークをいう。ツイスト角調整機構56は、ウェハ保持装置52と往復運動機構54の間に設けられ、ウェハ保持装置52とともに往復運動される。
【0041】
チルト角調整機構58は、ウェハWの傾きを調整する機構であり、ウェハ処理面に向かうイオンビームの進行方向とウェハ処理面の法線との間のチルト角を調整する。本実施の形態では、ウェハWの傾斜角のうち、x方向の軸を回転の中心軸とする角度をチルト角として調整する。チルト角調整機構58は、往復運動機構54と注入処理室16の内壁の間に設けられており、往復運動機構54を含むプラテン駆動装置50全体をR方向に回転させることでウェハWのチルト角を調整するように構成される。
【0042】
プラテン駆動装置50は、イオンビームがウェハWに照射される注入位置と、ウェハ搬送装置18との間でウェハWが搬入または搬出される搬送位置との間でウェハWが移動可能となるようにウェハWを保持する。
図2は、ウェハWが注入位置にある状態を示しており、プラテン駆動装置50は、ビームラインAとウェハWとが交差するようにウェハWを保持する。ウェハWの搬送位置は、ウェハ搬送装置18に設けられる搬送機構または搬送ロボットにより搬送口48を通じてウェハWが搬入または搬出される際のウェハ保持装置52の位置に対応する。
【0043】
ビームストッパ46は、ビームラインAの最下流に設けられ、例えば、注入処理室16の内壁に取り付けられる。ビームラインA上にウェハWが存在しない場合、イオンビームはビームストッパ46に入射する。ビームストッパ46は、注入処理室16とウェハ搬送装置18の間を接続する搬送口48の近くに位置しており、搬送口48よりも鉛直下方の位置に設けられる。
【0044】
図3は、実施の形態に係るイオン生成装置12の構成を概略的に示す断面図である。イオン生成装置12は、アークチャンバ60と、カソード62と、リペラー64と、第1引出電極70と、第2引出電極72と、絶縁構造74とを備える。
【0045】
アークチャンバ60は、略直方体の箱形状を有する。アークチャンバ60は、プラズマPが生成されるプラズマ生成室Rを区画する。アークチャンバ60は、高融点材料で構成され、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)などの高融点金属やそれらの合金、グラファイト(C)等で構成されている。これにより、プラズマ生成室R内が高温(例えば700℃~2000℃)となる環境下において、アークチャンバ60の熱による損傷を抑制できる。
【0046】
カソード62は、プラズマ生成室Rに熱電子を放出する。カソード62は、いわゆる傍熱型カソード(IHC;Indirectly Heated Cathode)であり、フィラメント62aと、カソードヘッド62bとを有する。フィラメント62aは、フィラメント電源により加熱されて1次熱電子を発生させる。フィラメント62aで発生した1次熱電子は、フィラメント62aとカソードヘッド62bの間に印加されるカソード電圧により加速される。カソードヘッド62bは、フィラメント62aからの1次熱電子により加熱され、プラズマ生成室Rに2次熱電子を供給する。カソードヘッド62bで発生した2次熱電子は、アークチャンバ60とカソード62の間に印加されるアーク電圧によって加速される。
【0047】
リペラー64は、カソード62と対向する位置に設けられる。リペラー64は、プラズマ生成室R内に供給される2次熱電子や、プラズマ生成室R内のソースガス分子の電離によって発生する電子を跳ね返し、プラズマ生成室R内に電子を滞留させてプラズマ生成効率を高める。
【0048】
アークチャンバ60の側壁には、ガス導入口66が設けられる。ガス導入口66は、図示しないガスボンベ等からソースガスをプラズマ生成室Rに供給する。ソースガスとして、希ガスや、水素(H2)、ホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)等の水素化物、三フッ化ホウ素(BF3)、四フッ化ゲルマニウム(GeF4)等のフッ化物が用いられる。また、ソースガスには、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、酸素(O2)などの酸素原子(O)を含む物質も用いられる。
【0049】
プラズマ生成室Rには、カソード62からリペラー64に向かう方向(または、その逆方向)に磁場Bが印加されている。磁場Bは、図示しない電磁石等により生成され、電磁石を流れるマグネット電流を調整することで、磁場Bの強度が調整される。プラズマ生成室R内で運動する電子は、プラズマ生成室Rに印加される磁場Bに束縛され、磁場Bに沿って螺旋状に運動する。プラズマ生成室Rにおいて螺旋状に運動する電子は、プラズマ生成室Rに導入されたソースガス分子と衝突し、ソースガス分子を電離させてイオンと新たな電子を発生させ、プラズマ生成室RにプラズマPを生成する。プラズマ生成室Rにおいて電子を螺旋状に運動させることにより、プラズマ生成効率を高めることができる。
【0050】
アークチャンバ60の前面にはイオンビームIBを引き出すためのフロントスリット68が設けられる。フロントスリット68は、カソード62からリペラー64に向かう方向に延びる細長い形状を有している。プラズマ生成室R内で生成されたイオンは、第1引出電極70および第2引出電極72によりイオンビームIBとして引き出される。
【0051】
第1引出電極70は、サプレッション電極であり、グランド電位に対して負の電位となるようにサプレッション電圧が印加される。第2引出電極72は、グランド電極であり、グランド電位に接続される。アークチャンバ60には、グランド電位に対して正の電位となるように引出電圧が印加されている。第1引出電極70と第2引出電極72の間には絶縁構造74が設けられる。絶縁構造74は、第1引出電極70および第2引出電極72を機械的に支持し、第1引出電極70と第2引出電極72の間を電気的に絶縁する。
【0052】
絶縁構造74は、第1カバー76と、第2カバー78と、絶縁体80とを備える。第1カバー76および第2カバー78は、導電性材料で構成され、金属やグラファイトで構成される。絶縁体80は、電気絶縁材料で構成され、セラミックや樹脂で構成される。第1カバー76は、第1引出電極70と絶縁体80の間に設けられる。第2カバー78は、第2引出電極72と絶縁体80の間に設けられる。
【0053】
第1カバー76および第2カバー78は、絶縁体80の外側に設けられ、絶縁体80の表面への汚染物の付着を抑制する。第1カバー76および第2カバー78は、入れ子構造となっており、図示する例では、第1カバー76が外側、第2カバー78が内側となるように配置されている。なお、第1カバー76が内側、第2カバー78が外側となるように配置されてもよい。
【0054】
図4は、実施の形態に係る絶縁構造74の構成を詳細に示す断面図である。絶縁構造74は、第1引出電極70と第2引出電極72の間に設けられる。絶縁構造74は、第1カバー76と、第2カバー78と、絶縁体80とを備える。絶縁構造74は、第1ねじ104によって第1引出電極70と固定され、第2ねじ106によって第2引出電極72と固定される。
【0055】
絶縁構造74の説明において、第1引出電極70から第2引出電極72に向かう方向を軸方向ともいう。軸方向に直交する方向、例えば、絶縁体80の外面98に直交する方向を径方向ともいう。また、軸方向および径方向の双方に直交する方向、つまり、軸方向まわりの方向を周方向ともいう。
【0056】
第1カバー76は、第1底部76aと、第1側壁部76bとを有し、カップ形状となるように構成される。第1底部76aは、第1引出電極70と絶縁体80の間に挟み込まれる部分である。第1底部76aには、第1ねじ104が挿通される貫通孔が設けられる。第1側壁部76bは、第1底部76aの外周から軸方向に延びる部分であり、円筒状に構成される。第1側壁部76bの内径は、第2カバー78の外径よりも大きい。第1側壁部76bは、第2カバー78から径方向に離れて配置されている。第1側壁部76bの軸方向の長さは、絶縁体80の軸方向の長さの50%~80%程度である。第1側壁部76bの開口端は、第2引出電極72から軸方向に離れている。
【0057】
第2カバー78は、第2底部78aと、第2側壁部78bとを有し、カップ形状となるように構成される。第2底部78aは、第2引出電極72と絶縁体80の間に挟み込まれる部分である。第2底部78aに、第2ねじ106が挿通される貫通孔が設けられる。第2側壁部78bは、第2底部78aの外周から軸方向に延びる部分であり、円筒状に構成される。第2側壁部78bの内径は、絶縁体80の外径よりも大きい。第2側壁部78bは、絶縁体80から径方向に離れて配置されている。第2側壁部78bの軸方向の長さは、絶縁体80の軸方向の長さの30%~60%程度である。第2側壁部78bは、第1側壁部76bと軸方向の範囲が重なるように構成される。第2側壁部78bの開口端は、第1底部76aから軸方向に離れている。
【0058】
絶縁体80は、第1端部82と、第2端部84と、軸部86と、包囲部88とを備える。第1端部82は、第1ねじ104によって第1引出電極70および第1カバー76と接続される部分である。第1端部82の中央には第1ねじ104が挿通される第1取付孔100が設けられる。第2端部84は、第2ねじ106によって第2引出電極72および第2カバー78と接続される部分である。第2端部84の中央には第2ねじ106が挿通される第2取付孔102が設けられる。
【0059】
軸部86は、第1端部82と第2端部84の間を接続する部分であり、第1端部82から第2端部84に向けて軸方向に延びる。軸部86は、包囲部88の内側に設けられる。軸部86は、柱状部材であり、回転対称となる形状を有する。軸部86の直径は、第1端部82および第2端部84の直径よりも小さい。軸部86の直径は、軸方向の位置に応じて変化する。軸部86の外面94には内側凹部94aおよび内側凸部94bが設けられている。内側凹部94aおよび内側凸部94bは、周方向に連続して延びる。
【0060】
包囲部88は、軸部86の外側に設けられる。包囲部88は、第1端部82から第2端部84に向けて軸方向に延びる。包囲部88は、筒状部材であり、回転対称となる形状を有する。包囲部88は、第1端部82と接続され、第2端部84から離れている。包囲部88と第2端部84の間には開口92が形成される。開口92は、径方向に延びている。開口92は、第2端部84の近傍に設けられる。開口92は、軸部86から径方向に離れるについて開口幅が大きくなるように構成され、例えばテーパ状に形成される。開口92は、第2カバー78によってカバーされる。
【0061】
包囲部88は、内面96と、外面98とを有する。包囲部88の内面96は、軸部86の外面94と対向する。包囲部88の内面96と軸部86の外面94の間には隙間90が形成される。隙間90は、開口92を通じて絶縁体80の外部と連通する。包囲部88の外面98は、円筒面であり、実質的に凹凸のない平滑面となるよう構成される。包囲部88の外面98は、第1カバー76の第1側壁部76bおよび第2カバー78の第2側壁部78bと径方向に対向する。
【0062】
包囲部88の内径は、軸方向の位置に応じて変化する。包囲部88の内面96には外側凸部96aおよび外側凹部96bが設けられる。外側凸部96aおよび外側凹部96bは、周方向に連続して延びる。外側凸部96aは、内側凹部94aに対応する位置に設けられ、外側凹部96bは、内側凸部94bに対応する位置に設けられる。軸部86および包囲部88は、軸部86の外面94と包囲部88の内面96の間の距離(つまり、隙間90の幅)が実質的に一定となるように構成される。なお、軸部86の外面94と包囲部88の内面96の間の距離は、一定でなくてもよく、例えば、開口92から離れるにつれて隙間90の幅が小さくなるように構成されてもよい。
【0063】
絶縁体80の内部に形成される隙間90は、入り組んだラビリンス構造を有し、絶縁体80の外部から直接視認できない部分を有するように構成される。隙間90は、軸方向に直線的に延びるのではなく、径方向内側および径方向外側に屈曲するように延びている。ここで、絶縁体80の外部から直接視認できない部分とは、開口92から隙間90の奥を見ようとしたときに、軸部86または包囲部88によって視線が遮られることで見えない部分のことを言う。外部から直接視認できない部分は、隙間90のいずれかの地点と開口92を結ぶ直線を引いたときに、その直線と軸部86および包囲部88の少なくとも一方が重なることとなる地点に相当する。
【0064】
図5は、
図4に示す絶縁体80の外観を示す斜視図である。図示されるように、絶縁体80は、全体として円柱形状である。包囲部88の外面98は、円筒面で構成される。包囲部88と第2端部84の間には開口92が形成されている。開口92は、周方向に連続するように形成される。したがって、包囲部88は、全周にわたって第2端部84から離れている。開口92の軸方向の開口幅は、全周にわたって一定であることが好ましい。
【0065】
本実施の形態に係る絶縁構造74によれば、第1端部82と第2端部84の間に開口92が設けられるため、絶縁体80の外面98に導電性の汚染物が付着したとしても、開口92によって第1端部82と第2端部84の間の電気的絶縁を確保できる。また、開口92の奥には隙間90が設けられるため、隙間90の全体にわたって導電性の汚染物が付着しなければ、第1端部82と第2端部84の間の電気的絶縁を確保できる。隙間90がラビリンス構造を有するため、開口92から隙間90に侵入する汚染物は隙間90の奥まで到達しにくい。その結果、絶縁体80の絶縁性能の低下を抑制することができ、絶縁構造74のクリーニングや交換といったメンテナンスの頻度を下げることができる。
【0066】
つづいて、絶縁体80の製造方法について説明する。絶縁体80は、絶縁体80の全体が電気絶縁材料で形成される。つまり、第1端部82、第2端部84、軸部86および包囲部88が電気絶縁材料で形成される。ある実施例において、第1端部82、第2端部84、軸部86および包囲部88は、同一の材料で構成される。絶縁体80は、例えば、アルミナ(Al2O3)、酸化シリコン(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)などのセラミック材料で構成される。絶縁体80は、酸化物系セラミック材料で構成されてもよく、アルミナ、酸化シリコン、酸化マグネシウムの単体または混合物で構成されてもよい。絶縁体80は、エポキシやポリイミドなどのエンジニアリングプラスチックで構成されてもよい。
【0067】
絶縁体80は、入り組んだラビリンス構造の隙間90を有するため、機械切削などの一般的な加工法を用いて絶縁体80を一体的に成形することが難しい。絶縁体80を一体的に成形する場合、積層造形法などのいわゆる三次元印刷技術を用いることができる。例えば、第1端部82から第2端部84に向けて、軸部86および包囲部88を積層造形することで、ラビリンス構造を有する隙間90を一体的に成形できる。
【0068】
図6は、中間体120を積層造形法で形成する工程を模式的に示す図である。中間体120は、本体部材122と、支持部材124とを含む。本体部材122は、絶縁体80となる部分であり、第1端部82、第2端部84、軸部86および包囲部88の少なくとも一部に対応する形状を有する。支持部材124は、本体部材122を機械的に支持する部分であり、絶縁体80の隙間90を充填するように配置される。支持部材124は、本体部材122の外側に配置されてもよい。
【0069】
中間体120は、本体部材122および支持部材124を積層させる造形ヘッド110を矢印Sで示されるようにスキャンすることで形成される。造形ヘッド110は、本体部材122を積層するための第1ヘッド112と、支持部材124を積層するための第2ヘッド114とを有する。第1ヘッド112から本体部材122を形成する第1材料を吐出し、第2ヘッド114から支持部材124を形成する第2材料を吐出することで造形層126が形成される。複数の造形層126を積み重ねることで中間体120が形成される。
【0070】
図示する例では、造形ヘッド110が第1ヘッド112および第2ヘッド114を有し、第1ヘッド112および第2ヘッド114が一体的に駆動するよう構成される。なお、第1ヘッド112および第2ヘッド114が別体として構成され、第1ヘッド112および第2ヘッド114が独立して駆動するよう構成されてもよい。
【0071】
第1材料は、絶縁体80を構成する材料を含む。絶縁体80がセラミック材料で構成される場合、第1材料は、セラミックの微粒子を含む。第1材料は、第1ヘッド112から吐出可能な液状物質であることが好ましく、水や樹脂などの液体を含んでもよい。第1材料が水を含む場合、中間体120を加熱しながら第1材料を積層することで第1材料を乾燥させて硬化させてもよい。第1材料は、紫外線硬化樹脂を含んでもよく、第1ヘッド112から吐出した第1材料に紫外光を照射することで第1材料を硬化させてもよい。絶縁体80が樹脂で構成される場合、第1材料は、樹脂材料であってもよい。第1材料は、紫外線硬化樹脂や熱硬化性樹脂であってもよい。
【0072】
支持部材124は、第1材料とは異なる第2材料で構成される。第2材料は、中間体120の成形後に、第1材料を残したまま、第2材料のみを選択的に除去可能となる材料で構成される。第2材料は、加熱による溶融、蒸発または熱分解が可能となる樹脂材料、溶剤を用いた溶解が可能となる樹脂材料で構成される。第2材料は、例えば、熱可塑性の樹脂であり、加熱して軟化させた第2材料を第2ヘッド114から吐出することで第2材料を積層できる。
【0073】
第1材料がセラミックの微粒子を含む場合、中間体120を加熱することで本体部材122を硬化させてもよい。中間体120を加熱する工程において、支持部材124が溶融、蒸発または熱分解によって除去されてもよい。中間体120を加熱する工程において、支持部材124が完全に除去されてもよいし、部分的に除去されてもよい。支持部材124が部分的に残っている場合、支持部材124を溶剤などを用いて除去してもよい。支持部材124は、機械切削などによって除去されてもよい。支持部材124を除去した後、本体部材122を再加熱してもよい。支持部材124を除去する前の第1加熱工程で、本体部材122を乾燥させ、支持部材124を除去した後の第2加熱工程で本体部材122を焼成または焼結させてもよい。第2加熱工程は、第1加熱工程よりも高温であってもよい。本体部材122を焼結させることで、電気絶縁性の優れたセラミック材料で構成される絶縁体80ができあがる。
【0074】
第1材料が紫外線硬化樹脂を含む場合、中間体120を加熱しなくてもよい。中間体120に含まれる支持部材124は、溶剤などを用いて除去されてもよいし、機械切削などによって除去されてもよい。第1材料が熱硬化性樹脂を含む場合、中間体120を加熱することで本体部材122を硬化させてもよい。中間体120を加熱する工程において、支持部材124が溶融、蒸発または熱分解によって完全に、または、部分的に除去されてもよい。支持部材124は、溶剤などを用いて除去されてもよいし、機械切削などによって除去されてもよい。
【0075】
絶縁体80に設けられる第1取付孔100および第2取付孔102は、絶縁体80を製造する工程の任意のタイミングで形成できる。第1取付孔100および第2取付孔102は、中間体120を積層造形する工程で形成されてもよい。この場合、第1取付孔100および第2取付孔102には支持部材124が充填されてもよい。第1取付孔100および第2取付孔102は、本体部材122の積層造形後に本体部材122を機械切削することで形成されてもよい。本体部材122がセラミック材料を含む場合、第1取付孔100および第2取付孔102は、本体部材122の焼結前に形成されてもよいし、本体部材122の焼結後に形成されてもよい。
【0076】
中間体120は、
図6に示される工程とは別の方法で形成されてもよい。例えば、造形ヘッド110から第1材料を少量吐出させる工程と、少量吐出させた第1材料を硬化させる工程とを交互に繰り返すことで、中間体120が形成されてもよい。この場合、中間体120は、本体部材122のみで構成されてもよい。つまり、隙間90に支持部材124が充填されなくてもよい。
【0077】
また、造形ヘッド110から第1材料を吐出するのではなく、第1材料の層にレーザなどを照射して第1材料を選択的に硬化させることで中間体120が形成されてもよい。例えば、セラミックの微粒子で構成される材料層にレーザを照射して材料層を部分的に硬化または焼結させることで、中間体120が積層造形されてもよい。この場合、隙間90に支持部材124が充填されてもよいし、隙間90に支持部材124を充填することなく中間体120が形成されてもよい。したがって、中間体120は、本体部材122のみで構成されてもよい。
【0078】
絶縁体80は、複数の部品を接合することで形成されてもよい。例えば、絶縁体80の一部を構成する複数の部品を個別に成形し、複数の部品をその後に接合してもよい。複数の部品のそれぞれは、積層造形法などの三次元印刷技術を用いて形成されてもよいし、機械切削や金型などを利用した一般的な成形技術を用いて形成されてもよい。
【0079】
図7は、
図4に示す絶縁体80の別の構成例を模式的に示す断面図である。
図7の例では、絶縁体80が複数の部品80a,80b,80cから構成される。第1部品80aは、第2端部84および軸部86を含む。第2部品80bは、第1端部82の第1部分82bと、包囲部88の第1部分88bとを含む。第3部品80cは、第1端部82の第2部分82cと、包囲部88の第2部分88cとを含む。複数の部品80a~80cのそれぞれは、任意の手法を用いて成形されることができ、例えば、三次元印刷技術を用いて成形されてもよいし、金型を用いて成形されてもよいし、機械切削により成形されてもよい。
【0080】
図8は、
図7の複数の部品80a~80cを接合する工程を模式的に示す斜視図である。第1部品80aの周囲に第2部品80bおよび第3部品80cを配置し、複数の部品80a~80cを接合することで、
図7の絶縁体80ができあがる。具体的には、第1部品80aの軸部86の第1先端部86bを第1端部82の第1部分82bに接合し、第1部品80aの軸部86の第2先端部86cを第1端部82の第2部分82cに接合する。また、第2先端部86を第2部分82cに接合すると同時に、第2部品80bと第3部品80cを接合し、第1端部82および包囲部88を一体化させる。
【0081】
複数の部品80a~80cは、接着剤を用いて互いに接合されてもよい。複数の部品80a~80cを接着剤を用いて仮接合した後、複数の部品80a~80cの仮接合部分を硬化させて複数の部品80a~80cを互いに固着させてもよい。例えば、絶縁体80がセラミックで構成される場合、焼結前の部品80a~80cを第1材料を用いて仮接合し、仮接合後の絶縁体80を加熱して焼結させることで、仮接合部分を硬化させてもよい。焼結前の部品80a~80cを仮接合する場合、複数の部品80a~80cの間の隙間90に支持部材を配置してもよい。支持部材は、仮接合された部品80a~80cの焼結前、焼結中または焼結後に除去される。
【0082】
なお、絶縁体80を複数の部品に分割する場合の分割箇所は、
図7および
図8に示される例に限られない。例えば、絶縁体80の軸部86が複数の部品に分割されてもよい。ある実施例において、第1部品が軸部86の第1部分を有し、第2部品が軸部86の第2部分を有し、第3部品が軸部86の第3部分を有してもよい。この場合、第1部品が第2端部84をさらに有し、第2部品が第1端部82および包囲部88の一部をさらに有し、第3部品が第1端部82および包囲部88の別の一部をさらに有してもよい。また、絶縁体80を複数の部品に分割する場合の分割数も特に限られず、四以上の部品に分割されてもよい。
【0083】
図9は、変形例に係る絶縁体180の構成を詳細に示す断面図である。本変形例では、絶縁体180が第1部品180aおよび第2部品180bで構成される。また、本変形例では、軸部186の外面194に内側凹部194aおよび内側凸部194bが設けられる一方で、包囲部188の内面196に凹凸が設けられていない。軸部186と包囲部188の間に形成される隙間190は、軸方向に直線的に延びる第1部分190aと、第1部分190aから分岐して径方向に延びる第2部分190bとを有する。
【0084】
絶縁体180は、第1端部182と、第2端部184と、軸部186と、包囲部188とを備える。第1端部182および第2端部184のそれぞれは、
図4の第1端部82および第2端部84と同様に構成される。軸部186は、第1端部182から第2端部184に向けて軸方向に延在する柱状部材である。軸部186の外面194には複数の内側凹部194aおよび複数の内側凸部194bが設けられる。包囲部188は、第1端部182から第2端部184に向けて軸方向に延びる円筒状部材である。包囲部188の内面196および外面198は、円筒面で形成され、実質的に凹凸のない平滑面となるよう構成される。軸部186と包囲部188の間には隙間190が形成される。包囲部188と第2端部184の間には開口192が形成される。絶縁体180は、全体として円柱形状であり、回転対称形状を有する。絶縁体180の外観は、
図5に示す絶縁体80の外観と同様である。
【0085】
第1部品180aは、第2端部184と、軸部186の第1部分186aとを含む。第2部品180bは、第1端部182と、軸部186の第2部分186bと、包囲部188とを含む。第1部品180aおよび第2部品180bには、両者を接続するための係合部200が設けられる。係合部200は、第1部品180aに設けられる係合凹部200aと、第2部品180bに設けられる係合凸部200bとを有する。なお、第1部品180aに係合凸部が設けられ、第2部品180bに係合凹部が設けられてもよい。係合部200は、ねじ切り構造を有してもよい。
【0086】
絶縁体180は、第1部品180aと第2部品180bを接合することで製造できる。まず、第1部品180aおよび第2部品180bのそれぞれを任意の方法で成形する。第1部品180aおよび第2部品180bのそれぞれは、金型を用いて成形されてもよいし、機械切削により成形されてもよいし、三次元印刷技術を用いて成形されてもよい。つづいて、第1部品180aと第2部品180bの係合部200を係合させて接合する。係合部200を接着剤を用いて接合してもよく、係合部200が着脱不可となるように構成されてもよい。絶縁体180がセラミックで構成される場合、焼結前の第1部品180aおよび第2部品180bを接合し、接合後の絶縁体180を加熱して焼結させることで、接合部分を硬化させて一体化させてもよい。
【0087】
本変形例においても、絶縁体180の隙間190は、外部から直接視認できない部分を有するように構成される。したがって、本変形例においても上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0088】
図9の例では、軸186の外面194のみに凹凸を設けることとしたが、包囲部188の内面196に凹凸を形成してもよい。この場合、第1部品180aを第2部品180bに挿入可能とするため、軸186の外面194の凹凸と包囲部188の内面196の凹凸が噛み合わないように形成されてもよい。例えば、軸186の外面194の凸部に対応する位置に包囲部188の内面196の凸部が配置され、軸186の外面194の凹部に対応する位置に包囲部188の内面196の凹部が配置されてもよい。その他、軸186の外面194には凹凸を設けず、包囲部188の内面196のみに凹凸を形成してもよい。
【0089】
図10は、別の変形例に係る絶縁体280の構成を詳細に示す断面図である。本変形例では、上述の変形例と同様、絶縁体280が第1部品280aおよび第2部品280bで構成される。なお、本変形例では、軸部286の外面294に内側凹部294aおよび内側凸部294bが設けられ、包囲部288の内面296に外側凸部296aおよび外側凹部296bが設けられる。第1部品280aおよび第2部品280bの接合を可能とするため、軸部286の外面294および包囲部288の内面296に形成される凹凸が螺旋状に延びるように構成される。
【0090】
絶縁体280は、第1端部282と、第2端部284と、軸部286と、包囲部288とを備える。第1端部282および第2端部284のそれぞれは、
図4の第1端部82および第2端部84と同様に構成される。軸部286は、第1端部282から第2端部284に向けて軸方向に延在する柱状部材である。軸部286の外面294には内側凹部294aおよび内側凸部294bが螺旋状に設けられる。包囲部288は、第1端部282から第2端部284に向けて軸方向に延びる円筒状部材である。包囲部288の内面296には外側凸部296aおよび外側凹部296bが螺旋状に延びる。外側凸部296aは、内側凹部294aに対応する位置に設けられ、外側凹部296bは内側凸部294bに対応する位置に設けられる。包囲部288の外面298は、円筒面で形成され、実質的に凹凸のない平滑面となるよう構成される。軸部286と包囲部288の間には螺旋状に延びる隙間290が形成される。包囲部288と第2端部284の間には開口292が形成される。絶縁体280は、全体として円柱形状である。絶縁体280の外観は、
図5に示す絶縁体80の外観と同様である。
【0091】
第1部品280aは、第2端部284と、軸部286の第1部分286aとを含む。第2部品280bは、第1端部282と、軸部286の第2部分286bと、包囲部288とを含む。第1部品280aおよび第2部品280bには、両者を接続するための係合部300が設けられる。係合部300は、第1部品280aに設けられる係合凹部300aと、第2部品280bに設けられる係合凸部300bとを有する。なお、第1部品280aに係合凸部が設けられ、第2部品280bに係合凹部が設けられてもよい。係合部300は、ねじ切り構造を有してもよい。本変形例の第1部品280aおよび第2部品280bは、
図9の第1部品180aおよび第2部品180bと同様に成形できる。
【0092】
図11は、
図10の第1部品280aの外観を示す側面図である。図示されるように、軸部286の第1部分286aの外面294には、螺旋状に延びる内側凹部294aおよび内側凸部294bが設けられる。なお、第2部品280bの包囲部288の内面296には、内側凹部294aおよび内側凸部294bに対応するように螺旋状に延びる外側凸部296aおよび外側凹部296bが設けられる。絶縁体280の隙間290を構成する凹部および凸部を螺旋状に形成することで、第2部品280bに対して第1部品280aを回転させながら挿入して係合部300を互いに係合させることができる。その後、
図9の絶縁体180と同様の方法で、第1部品280aおよび第2部品280bを一体化させて絶縁体280を製造できる。
【0093】
本変形例においても、絶縁体280の隙間290は、外部から直接視認できない部分を有するように構成される。したがって、本変形例においても上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0094】
図12は、さらに別の変形例に係る絶縁体380の構成を詳細に示す断面図である。本変形例に係る絶縁体380は、第1端部82と、第2端部84と、軸部86と、第1包囲部388aと、第2包囲部388bとを含む。第1端部82、第2端部84および軸部86は、上述の実施の形態と同様に構成される。第1包囲部388aは、第1端部82に接続され、第1端部82から第2端部84に向けて軸方向に延びる。第2包囲部388bは、第2端部84に接続され、第2端部84から第1端部82に向けて軸方向に延びる。軸部86と第1包囲部388aの間に第1隙間390aが形成され、軸部86と第2包囲部388bの間に第2隙間390bが形成される。第1包囲部388aと第2包囲部388bの間には開口392が設けられる。第1隙間390aおよび第2隙間390bは、開口392を通じて絶縁体380の外部と連通する。絶縁体380は、三次元印刷技術を用いて一体的に形成されてもよいし、複数の部品を接合して形成されてもよい。
【0095】
本変形例においても、絶縁体380の隙間390a,390bは、外部から直接視認できない部分を有するように構成される。したがって、本変形例においても上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0096】
上述の実施の形態および変形例では、絶縁体80,180,280,380の全体が同一材料で構成される場合について示した。別の実施の形態では、絶縁体を構成する複数の部品が異なる材料で構成されてもよい。別の実施の形態では、複数の部品を接合するための接合部品を用いてもよい。接合部品は、絶縁体を構成する材料とは異なる材料で構成されてもよい。接合部品は、金属、樹脂またはセラミックなどで構成されてもよい。
【0097】
上述の実施の形態では、絶縁体80,180,280,380を含む絶縁構造74をイオン生成装置12の引出電極に用いる場合について示した。別の実施の形態では、イオン注入装置10の任意の箇所に絶縁構造74を用いてもよい。例えば、ビームパーク装置24、ビーム走査部32、ビーム平行化部34、角度エネルギーフィルタ36などに設けられ、高電圧が印加される電極を支持するための構造として絶縁構造74を用いてもよい。
【0098】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組み合わせや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれ得る。
【符号の説明】
【0099】
74…絶縁構造、80…絶縁体、82…第1端部、84…第2端部、86…軸部、88…包囲部、90…隙間、92…開口、94…外面、94a…内側凹部、94b…内側凸部、96…内面、96a…外側凸部、96b…外側凹部、120…中間体、122…本体部材、124…支持部材。