(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081243
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】水田排水システム及び排水装置
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20220524BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20220524BHJP
【FI】
A01G25/00 501D
A01G25/00 601D
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192674
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】506067109
【氏名又は名称】株式会社farmo
(74)【代理人】
【識別番号】100100402
【弁理士】
【氏名又は名称】名越 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】永井 洋志
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水田の管理者に作業負担をかけることなく水田の状態を制御する水田排水システムを提供する。
【解決手段】水田300の水を排水する排水管330に接続され、排水管330を流れる水の流水・止水を制御する排水装置Wを備えた水田排水システムであって、排水装置Wは、本体部10に収容されている通信制御装置と、一端部が排水管330に回転自在に接続されたL字配管70と、本体部10に取付けられており且つL字配管70の他端部側を上下方向に移動自在に保持する配管昇降機構50とを備え、L字配管70は他端部が開放された排水入口70aになっており、通信制御装置は、外部のサーバ装置から送信される、排水入口70aの高さ位置が指定された配管位置設定命令を受信し、配管位置設定命令に応じて配管昇降機構50の動作を制御し、配管位置設定命令で指定されている高さ位置に排水入口70aを配置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田の水を排水路に排水する排水管に接続され、該排水管を流れる水の流水・止水を制御する排水装置を備えた水田排水システムであって、
前記排水装置は、
前記水田の作土面に設置される肢部を有する本体部と、
前記本体部に収容されている通信制御装置と、
一端部が前記排水管に回転自在に接続されたL字配管と、
前記本体部に取付けらており、且つ前記L字配管の他端部側を上下方向に移動自在に保持する配管昇降機構とを備え、
前記L字配管は、他端部が自由端になっていると共に、該自由端が開放された排水入口になっており、
前記通信制御装置は、外部のサーバ装置から送信される、前記排水入口の高さ位置が指定された配管位置設定命令を受信し、該配管位置設定命令に応じて前記配管昇降機構の動作を制御するようになっており、
前記配管昇降機構が前記通信制御装置に制御されて動作すると、前記排水管に接続されている前記L字配管の一端部が該排水管の周方向に沿って回転すると共、前記L字配管の他端部側が上下方向に移動し、前記配管位置設定命令で指定されている高さ位置に、前記L字配管の排水入口を配置するようになっていることを特徴とする水田排水システム。
【請求項2】
前記配管昇降機構は、
前記L字配管の他端部側を上昇させて前記L字配管の排水入口が、前記水田に貯水されている水の水面よりも上方の位置に配置することにより、前記L字配管に前記水田の水が流入されないようにして前記排水管に流れる水を止水したり、
前記L字配管の他端部側を下降させて、少なくとも、前記L字配管の排水入口の一部が、前記水田の水の水面よりも下方の位置に配置することにより、前記L字配管に前記水田の水が流入されるようにして前記排水管から水田の水を排水させたりすることができるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の水田排水システム。
【請求項3】
前記配管昇降機構は、前記通信制御装置に制御されて回転動作する回転機構と、該回転機構の回転動作を直線動作に変換して上下方向に往復移動する往復移動機構と、該往復移動機構の下端部に取り付けられて前記L字配管の他端部側を保持する配管保持部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水田排水システム。
【請求項4】
前記サーバ装置は、
前記水田を管理する農業従事者が保持するユーザ端末に、前記排水装置が保持するL字配管の排水入口の希望高さを受け付ける農業従事者用Webページを提供し、
前記ユーザ端末から前記農業従事者用Webページ上で、前記排水装置が保持するL字配管の排水入口の希望高さを受け付けると共に、該受け付けた排水入口の希望高さを指定した前記配管位置設定命令を生成し、対応する前記排水装置に対して、前記生成した配管位置設定命令を送信するようになっていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の水田排水システム。
【請求項5】
前記サーバ装置は、
前記排水装置が設置された水田を田んぼダムとして機能させる権限を有している行政担当者の管理者端末に、前記排水装置に対する排水停止要求或いは排水停止解除要求の設定を受け付ける行政担当者用Webページを提供し、
前記管理者端末から前記行政担当者用Webページ上で排水停止要求の入力を受け付けると、前記水田からの排水が停止される排水入口の高さ寸法を指定した配管位置設定命令を生成し、対応する前記排水装置に対して、前記生成した配管位置設定命令を送信し、
前記管理者端末から該行政担当者用Webページ上で排水停止解除要求の入力を受け付けると、前記水田からの排水ができる排水入口の高さ寸法を指定した配管位置設定命令を生成し、対応する排水装置Wに対して、前記生成した配管位置設定命令を送信するようになっていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の水田排水システム。
【請求項6】
前記サーバ装置は、
前記排水装置を識別する排水装置IDに、該排水装置IDにより特定される排水装置が設置された水田を田んぼダムとして機能させる権限を有している行政担当者を識別する行政担当者IDとを対応付けて記憶している排水装置行政情報データベースと、
前記行政担当者の管理者端末に対して、前記排水装置に対する排水停止要求或いは排水停止解除要求の設定を受け付ける行政担当者用Webページを提供し、該行政担当者用Webページ上で排水停止解除要求及び排水停止解除要求のいずれかを受け付け、該受け付けた前記要求に応じた排水入口の高さ寸法を指定した配管位置設定命令を生成する排水装置制御部とを有し、
前記排水装置制御部は、前記行政担当者用Webページ上において、前記管理者端末から前記行政担当者IDの入力要求を受け付けるようになっており、前記排水装置行政情報データベースから受け付けた行政担当者IDに対応付けられている排水装置IDを読み出し、該読み出した排水装置IDにより特定される排水装置に対して、前記生成した配管位置設定命令を送信するようになっていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の水田排水システム。
【請求項7】
段差型の水田群において、高さが異なる、隣接する水田同士が排水管により接続され、該排水管を流れる水の流水・止水を制御する排水装置を備えた水田排水システムであって、
前記水田群の隣接する水田同士においては、前記排水管を介して高い位置にある水田から低い位置にある水田に水が流れるようになっており、
前記排水装置は、
隣接する水田同士のなかの高い位置にある水田の作土面に設置される肢部を有する本体部と、
隣接する水田同士のなかの高い位置にある水田側の排水管に、その一端部が回転自在に接続されたL字配管と、
前記本体部に収容されている通信制御装置と、
前記本体部に取付けらており、且つ前記L字配管の他端部側を上下方向に移動自在に保持する配管昇降機構とを備え、
前記L字配管は、他端部が自由端になっていると共に、該自由端が開放された排水入口になっており、
前記通信制御装置は、外部のサーバ装置から送信される、前記排水入口の高さ位置が指定された配管位置設定命令を受信し、該配管位置設定命令に応じて前記配管昇降機構の動作を制御するようになっており、
前記配管昇降機構が前記通信制御装置に制御されて動作すると、前記排水管に接続されている前記L字配管の一端部が該排水管の周方向に沿って回転すると共、前記L字配管の他端部側が上下方向に移動し、前記配管位置設定命令で指定されている高さ位置に、前記L字配管の排水入口を配置するようになっていることを特徴とする水田排水システム。
【請求項8】
水田の水を排水路に排水する排水管に接続され、該排水管を流れる水の流水・止水を制御する排水装置であって、
前記排水装置は、
前記水田の作土面に設置される肢部を有する本体部と、
前記本体部に収容されている通信制御装置と、
一端部が前記排水管に回転自在に接続されたL字配管と、
前記本体部に取付けらており、且つ前記L字配管の他端部側を上下方向に移動自在に保持する配管昇降機構とを備え、
前記L字配管は、他端部が自由端になっていると共に、該自由端が開放された排水入口になっており、
前記通信制御装置は、前記配管昇降機構の動作を制御するようになっており、
前記配管昇降機構が前記通信制御装置に制御されて動作すると、前記排水管に接続されている前記L字配管の一端部が該排水管の周方向に沿って回転すると共、前記L字配管の他端部側が上下方向に移動し、前記L字配管の排水入口に高さ位置を変更できるようになっていることを特徴とする排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田排水システム及び水田排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農業従事者等の水田の管理者は、苗植えから稲刈りが終わるまで、稲の生育の段階や気温の状態に合わせて、水田の水の深さ(水位)を調整することを必須の作業としている。例えば、稲作農業従事者は、水田の排水入口に水門扉(水門シャッター)を設けておき、定期的に水田に出向いて、手動により水門扉を開放させることで水田から水を排水したり、或いは、手動により水門扉を閉塞して水田からの排水を停止したりすることで、水田の水位の調整を行っている。
【0003】
また、近年では、稲の育成とは別の視点で、豪雨による河川の氾濫を防止するために水田を利用する「田んぼダム」といわれるシステムが注目されている。この「田んぼダム」では、豪雨の際に降った雨水を水田に一時的に貯留し、時間をかけて少しずつ河川などに排水することで、河川の氾濫等の水害の発生を防止しようとしている。そして、特許文献1には、水田を「田んぼダム」として利用するための装置(水田用貯水量調整装置)が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の水田用貯水量調整装置は、水田の畦に埋設される排水管に接続されている水田用排水桝を備えている。水田用排水桝は、方形状底版と、方形状底版の後端部から上方に立設する垂直壁と、方形状底版の左右両側から上方に立設する一対の側壁とを備えた、前面側が開放された箱状に形成されている。また、上記の垂直壁の下端側に排水孔が設けられている。
この水田用排水桝は、開放された前面を水田側に向けて設置すると共に、後端の垂直壁の排水孔に排水管を接続して用いられている。
【0005】
また、上記の水田用排水桝には、その前端側(水田側)の一対の側壁の対向位置に、土留板差し戸口が設けられていると共に、この土留板差し戸口と、後端側の垂直壁のほぼ中間位置に貯水量調整板差し戸口が設けられている。
そして、土留板差し戸口には、水田の土壌が水田用排水桝の中に入るのを阻止する、土壌面とほぼ同じ高さの土留板が垂直に差し込まれていると共に、この土留板の上に、営農水位Sとなる高さの営農水位調整板が垂直に差し込まれている。
また、貯水量調整板差し戸口には、営農水位Sより10cm程度の高さである貯水水位S1(S1>S)の高さに形成した貯水量調整板を垂直に差し込めるように構成されている。なお、貯水量調整板の下部に排水量調整孔が穿設されている。
【0006】
この構成によれば、水田には、営農水位調整板の高さ(以下営農水位という)まで水が溜められる。また、降雨などにより、営農水位調整板を越えて「営農水位調整板及び土留板と、貯水量調整板との間の空間部」に水が入った場合、この水は、貯水量調整板の下部に穿設された排水量調整孔から排水孔に取り付けられた排水管を介して排水されていくようになっている。
また、豪雨の場合は、営農水位調整板を越えて上記空間部へ流れ込む水が増加する。上記空間部へ流れ込む水量が、貯水量調整板に設けられた排水量調整孔からの排水量より多くなると、田んぼの水位は、単位時間あたりの空間部への流入量と排水量調整孔からの排水量の差の分だけ上昇する。そして、豪雨の場合でも貯水水位S1を越えるまでは、排水路に流れ込む水量は、排水量調整孔から排水される水量しか排出されないため、降雨量に関わらず一定に保たれ、排水路に短時間に一気に雨水が流れこむことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来技術の手動で水門扉を開閉させる方法は、水田の管理者が実際に水田まで出向いて行く必要があり、水田の管理者にとり大きな負担になっている。
また、特許文献1に記載の水田用貯水量調整装置は、稲の生育の段階や気温の状態に合わせて、水田の水位を調整しようとする場合に、水田の管理者が水田に出向いて、水田用排水桝の「土留板」の上に差し込む「営農水位調整板」を取り換える作業が必要であり、こちらも、作業者の負担が大きかった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、水田の管理者に作業負担をかけることなく、水田の状態を制御することができる水田排水システム及び水田排水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1態様は、水田の水を排水路に排水する排水管に接続され、該排水管を流れる水の流水・止水を制御する排水装置を備えた水田排水システムであって、前記排水装置は、前記水田の作土面に設置される肢部を有する本体部と、前記本体部に収容されている通信制御装置と、一端部が前記排水管に回転自在に接続されたL字配管と、前記本体部に取付けらており、且つ前記L字配管の他端部側を上下方向に移動自在に保持する配管昇降機構とを備え、前記L字配管は、他端部が自由端になっていると共に、該自由端が開放された排水入口になっており、前記通信制御装置は、外部のサーバ装置から送信される、前記排水入口の高さ位置が指定された配管位置設定命令を受信し、該配管位置設定命令に応じて前記配管昇降機構の動作を制御するようになっており、前記配管昇降機構が前記通信制御装置に制御されて動作すると、前記排水管に接続されている前記L字配管の一端部が該排水管の周方向に沿って回転すると共、前記L字配管の他端部側が上下方向に移動し、前記配管位置設定命令で指定されている高さ位置に、前記L字配管の排水入口を配置するようになっていることを特徴とする。
【0011】
このように、本発明の第1態様によれば、排水装置は、外部のサーバ装置から送信される配管位置設定命令で指定されている高さ位置に、保持しているL字配管の排水入口を配置することができる。すなわち、水田に設置された排水装置は、サーバ装置からの配管位置設定命令により、保持しているL字配管の排水入口の高さ位置を調整することができる。
そのため、水田の管理者(農業従事者等の管理者)は、サーバ装置に対して、所望する水位の位置に、排水入口の高さ位置を設定すれば、所望する水位の高さ位置に、L字配管の排水入口の高さ位置を配置させることできる。これにより、管理者が水田まで出向かなくても水田の水位の調整をすることができる。
また、この構成によれば、水田に貯水されている水のうち、所望高さ位置の水を排水することもできる。例えば、田植え直後の時期等に水田にできるだけ暖かい水を残しておきたいことがあるが、このような場合、本発明の第1態様によれば、水田の底面(作土面)・近傍の位置に、L字配管の排水入口を配置させ、水田の底面(作土面)付近の水温が低い水を排水させるようにすれば良い。また、例えば、第1態様によれば、夏場の時期に、水温が高い水面近傍の水を排水させることで、水田に貯水された水の水温が上昇することを抑制することもできる。なお、水面近傍の水を排水するようにすれば(上澄みが排水されるので)、排水管に泥が貯まりにくくなるという効果もある。
また、本発明の第1態様の構成によれば、例えば、L字配管の排水入口の高さ位置を高くすることで、水田からの排水を停止させることができるため、水田を「田んぼダム」として機能させることもできる。
【0012】
また、前記配管昇降機構は、前記L字配管の他端部側を上昇させて前記L字配管の排水入口が、前記水田に貯水されている水の水面よりも上方の位置に配置することにより、前記L字配管に前記水田の水が流入されないようにして前記排水管に流れる水を止水したり、前記L字配管の他端部側を下降させて、少なくとも、前記L字配管の排水入口の一部が、前記水田の水の水面よりも下方の位置に配置することにより、前記L字配管に前記水田の水が流入されるようにして前記排水管から水田の水を排水させたりすることができるようになっていることが望ましい。
このように、本発明によれば、外部のサーバ装置からの配管位置設定命令により、水田の水の排水を止めたり、或いは、水田の水が排水できる状態にすることができる。そのため、例えば、水田の管理者が、豪雨や台風の時期に現場まで出向かなくても、水田の排水を止めた状態にして、水田を田んぼダムとして機能させて水害の発生を防止するこができる。また、豪雨や台風がおさまったときに、すみやかに、田んぼダムとして機能を解除して、通常の稲作をする水田の状態に戻すことができる。
【0013】
また、前記配管昇降機構は、前記通信制御装置に制御されて回転動作する回転機構と、該回転機構の回転動作を直線動作に変換して上下方向に往復移動する往復移動機構と、該往復移動機構の下端部に取り付けられて前記L字配管の他端部側を保持する配管保持部とを備えていることが望ましい。
このように、配管昇降機構が、回転機構と、回転機構の回転動作を直線動作に変換して上下方向に往復移動する往復移動機構とを備えた装置構成になっており、コストが嵩む構成部品を用いる必要がないため、排水装置を低コストで製造することができる。
【0014】
また、前記サーバ装置は、前記水田を管理する農業従事者が保持するユーザ端末に、前記排水装置が保持するL字配管の排水入口の希望高さを受け付ける農業従事者用Webページを提供し、前記ユーザ端末から前記農業従事者用Webページ上で、前記排水装置が保持するL字配管の排水入口の希望高さを受け付けると共に、該受け付けた排水入口の希望高さを指定した前記配管位置設定命令を生成し、対応する前記排水装置に対して、前記生成した配管位置設定命令を送信するようになっていることが望ましい。
この構成によれば、農業従事者が保持するユーザ端末を操作して、サーバ装置にアクセスして、サーバ装置が提供するWebページ上で、排水装置が保持するL字配管の排水入口の希望高さを入力すれば、水田の水位や水温を調整することができる。
【0015】
また、前記サーバ装置は、前記排水装置が設置された水田を田んぼダムとして機能させる権限を有している行政担当者の管理者端末に、前記排水装置に対する排水停止要求或いは排水停止解除要求の設定を受け付ける行政担当者用Webページを提供し、前記管理者端末から前記行政担当者用Webページ上で排水停止要求の入力を受け付けると、前記水田からの排水が停止される排水入口の高さ寸法を指定した配管位置設定命令を生成し、対応する前記排水装置に対して、前記生成した配管位置設定命令を送信し、前記管理者端末から該行政担当者用Webページ上で排水停止解除要求の入力を受け付けると、前記水田からの排水ができる排水入口の高さ寸法を指定した配管位置設定命令を生成し、対応する排水装置Wに対して、前記生成した配管位置設定命令を送信するようになっていることが望ましい。
【0016】
このように、本発明の第1態様では、サーバ装置は、前記排水装置が設置された水田を田んぼダムとして機能させる権限を有している行政担当者の管理者端末に、排水装置に対する排水停止要求或いは排水停止解除要求の設定を受け付ける行政担当者用Webページを提供している。したがって、行政担当者が管理者端末を操作し、サーバ装置が提供するWebページ上で、水田に設置した排水装置に対する「排水停止要求」を入力すれば、水田に貯水された水を排水しないように、排水装置Wが保持するL字配管の排水入口の位置が設定される。すなわち、行政担当者が、豪雨や台風が予測される場合に、順番に、複数の水田に出向くことなく、管理者端末を操作することで、水田からの排水を停止させ、水田を「田んぼダム」として機能させ、水害の発生する可能性を軽減させることができる。
なお、行政担当者は、豪雨や台風がおさまれば、管理者端末を操作して、サーバ装置が提供するWebページ上で、排水装置に対する「排水停止解除要求」を入力すれば、水田に貯水された水を排水できるように、排水装置が保持するL字配管の排水入口の位置が設定される。すなわち、行政担当者は、豪雨や台風がおさまれば、速やかに且つ簡単に、「田んぼダム」としての機能を解除し、排水を行う、通常の水田に戻すことができる。
さらに、本発明の第1態様によれば、水田を「田んぼダム」として機能させる場合においても、排水装置が保持するL字配管の排水入口の位置を、水田の畦が決壊しない高さを想定した位置になるようにサーバ装置に設定しておくこともでき、畦が決壊する可能性を軽減できる(畦が決壊する高さになる前に、排水装置により水田の水を排水させることができる。
【0017】
また、前記サーバ装置は、前記排水装置を識別する排水装置IDに、該排水装置IDにより特定される排水装置が設置された水田を田んぼダムとして機能させる権限を有している行政担当者を識別する行政担当者IDとを対応付けて記憶している排水装置行政情報データベースと、前記行政担当者の管理者端末に対して、前記排水装置に対する排水停止要求或いは排水停止解除要求の設定を受け付ける行政担当者用Webページを提供し、該行政担当者用Webページ上で排水停止解除要求及び排水停止解除要求のいずれかを受け付け、該受け付けた前記要求に応じた排水入口の高さ寸法を指定した配管位置設定命令を生成する排水装置制御部とを有し、前記排水装置制御部は、前記行政担当者用Webページ上において、前記管理者端末から前記行政担当者IDの入力要求を受け付けるようになっており、前記排水装置行政情報データベースから受け付けた行政担当者IDに対応付けられている排水装置IDを読み出し、該読み出した排水装置IDにより特定される排水装置に対して、前記生成した配管位置設定命令を送信するようになっていることが望ましい。
【0018】
この構成によれば、行政担当者が「田んぼダムとして機能させる権限を有している水田」が複数あるような場合に、サーバ装置を介して、複数の水田の各排水装置に対して、一斉に、水田からの排水を停止させた状態にしたり、或いは、水田から水を排水できる状態にしたりすることができる。したがって、天気が急変して、急激に、予想外の雨量の豪雨が発生するようなケースにおいて、行政担当者が、迅速に、複数の水田を「田んぼダム」として機能させる状態にすることができる。すなわち、本発明によれば、近年の異常気象等の急激に発生する豪雨による水害対策に期待できる。
【0019】
また、本発明の第2態様は、段差型の水田群において、高さが異なる、隣接する水田同士が排水管により接続され、該排水管を流れる水の流水・止水を制御する排水装置を備えた水田排水システムであって、前記水田群の隣接する水田同士においては、前記排水管を介して高い位置にある水田から低い位置にある水田に水が流れるようになっており、前記排水装置は、隣接する水田同士のなかの高い位置にある水田の作土面に設置される肢部を有する本体部と、隣接する水田同士のなかの高い位置にある水田側の排水管に、その一端部が回転自在に接続されたL字配管と、前記本体部に収容されている通信制御装置と、前記本体部に取付けらており、且つ前記L字配管の他端部側を上下方向に移動自在に保持する配管昇降機構とを備え、前記L字配管は、他端部が自由端になっていると共に、該自由端が開放された排水入口になっており、前記通信制御装置は、外部のサーバ装置から送信される、前記排水入口の高さ位置が指定された配管位置設定命令を受信し、該配管位置設定命令に応じて前記配管昇降機構の動作を制御するようになっており、前記配管昇降機構が前記通信制御装置に制御されて動作すると、前記排水管に接続されている前記L字配管の一端部が該排水管の周方向に沿って回転すると共、前記L字配管の他端部側が上下方向に移動し、前記配管位置設定命令で指定されている高さ位置に、前記L字配管の排水入口を配置するようになっていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第2態様によれば、棚田のような段差型の水田群において、台風や豪雨等の際に、サーバ装置を介して、排水装置の動作を制御することで、高い位置にある水田の作土面に設置した排水装置Wにより、高い位置の水田から低い位置に水田への水の流れを停止させ、台風や豪雨等の際に水が貯まりやすい低い位置の水田で水が氾濫することを防止できる。また、水が貯まりにくい、高い位置の水田については、「田んぼダム」として利用することもできる。
【0021】
また、本発明の第3態様は、水田の水を排水路に排水する排水管に接続され、該排水管を流れる水の流水・止水を制御する排水装置であって、前記排水装置は、前記水田の作土面に設置される肢部を有する本体部と、前記本体部に収容されている通信制御装置と、一端部が前記排水管に回転自在に接続されたL字配管と、前記本体部に取付けらており、且つ前記L字配管の他端部側を上下方向に移動自在に保持する配管昇降機構とを備え、前記L字配管は、他端部が自由端になっていると共に、該自由端が開放された排水入口になっており、前記通信制御装置は、前記配管昇降機構の動作を制御するようになっており、前記配管昇降機構が前記通信制御装置に制御されて動作すると、前記排水管に接続されている前記L字配管の一端部が該排水管の周方向に沿って回転すると共、前記L字配管の他端部側が上下方向に移動し、前記L字配管の排水入口に高さ位置を変更できるようになっていることを特徴とする。
【0022】
このように、本発明の第3態様によれば、通信制御装置に制御された配管昇降機構により、L字配管の排水入口に高さ位置を変更できるようになっている。そのため、水田の管理者は、上述した従来技術(手動で水門扉を開閉させる作業や、水田用排水桝の「土留板」の上に差し込む「営農水位調整板」を取り換える作業が必要な従来技術)と比べて、少ない作業負担で水田の状態(水位、水温等の状態や「田んぼダム」にしている状態)を制御することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、水田の管理者に作業負担をかけることなく、水田の状態を制御することができる水田排水システム、及び水田排水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態の水田排水システムの全体構成を示した模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の水田排水システムを構成する排水装置が水田に設置され、水田からの排水を停止している状態を示した模式図であり、(a)が水田に設置された排水装置を正面視した模式図であり、(b)が水田に設置された排水装置を側面視した模式図である。
【
図3】本発明の実施形態の水田排水システムを構成する排水装置が水田に設置され、水田から水を排水している状態を示した模式図であり、(a)が水田に設置された排水装置を正面視した模式図であり、(b)が水田に設置された排水装置を側面視した模式図である。
【
図4】本発明の実施形態の水田排水システムを構成する排水装置が水田に設置された状態を上方から視た模式図である。
【
図5】本発明の実施形態の水田排水システムを構成する排水装置と、水田の畦に埋設されている排水管との接続部の構造を説明するための模式図である。
【
図6】本発明の実施形態の水田排水システムを構成する排水装置の構成を説明するための模式図であり、(a)が配管昇降機構がL字配管を下方の位置まで降ろして保持している状態を示した模式図であり、(b)が配管昇降機構がL字配管を上方の位置まで上げて保持している状態を示した模式図である。
【
図7】
図6に示す配管昇降機構の構成の一部を拡大して示した模式図である。
【
図8】本発明の実施形態の水田排水システムを構成する排水装置の本体部に収容された装置の構成を示した模式図である。
【
図9】本発明の実施形態の水田排水システムを構成するサーバ装置の機能構成を示した模式図である。
【
図10】本発明の実施形態のサーバ装置に設けられた排水装置状態データベースの構成の一例を示した模式図である。
【
図11】本発明の実施形態のサーバ装置に設けられた排水装置ユーザ情報データベースの構成の一例を示した模式図である。
【
図12】本発明の実施形態のサーバ装置に設けられた排水装置行政情報データベースの構成の一例を示した模式図である。
【
図13】本発明の実施形態のサーバ装置に設けられた水位センサデータベースの構成の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態の水田排水システムについて図面を用いて説明する。
【0026】
先ず、本発明の実施形態の水田排水システムの全体構成について
図1~4を用いて説明する。
ここで、
図1は、本実施形態の水田排水システムの全体構成を示した模式図である。
図2は、本実施形態の水田排水システムを構成する排水装置が水田に設置され、水田からの排水を停止している状態を示した模式図である。また、
図3は、本実施形態の水田排水システムを構成する排水装置が水田に設置され、水田から水を排水している状態を示した模式図である。また、
図4は、本実施形態の水田排水システムを構成する排水装置が水田に設置された状態を上方から視た模式図である。
【0027】
《システムの概略》
図1に示すように、本実施形態の水田排水システムは、水田300に貯水されている水の排水・止水を制御する排水装置Wと、水田300に貯水されている水の水位を測定(検知)する水位センサSと、インターネット等のネットワークNWに接続された中継器50と、中継器50を介して水位センサSが検知した水位を取得すると共に、排水装置Wに対して排水或いは排水の停止させる動作を指示するサーバ装置(以下、「サーバ」という)100とを有している。
【0028】
また、排水装置Wは、
図2~4に示すように、その一端部が排水路DCと連通している排水管330に接続されたL字配管70を有している。このL字配管70は、その他端部の開放された自由端が排水入口70aになっており、水田300に貯水されている水が、開放されている排水入口70aから管内に流入し、その一端部から排水管330に流れていき、排水路DCに排水されるようになっている。
また、排水管330は、水田300の畦320に埋設されており、一端部側が水田300側に突出するように配置され、他端部側が排水路DC側に突出するように配置されている。また、排水管330の水田側に突出させて配置されている一端部にL字配管70が回転自在に接続されている(
図2~4参照)。
そして、排水装置Wは、L字配管70の自由端側を上下方向に往復移動自在に保持しており、農業従事者や行政担当者が所望する高さ位置に、L字配管70の自由端の排水入口70aを移動させ、その移動させた高さ位置で保持できるように構成されている(
図2、3参照)。
【0029】
例えば、排水装置Wは、
図2に示すように、L字配管70の自由端(排水入口70a)の全体が、水田300に貯水されている水の水面よりも上方の位置(すなわち、水位よりも高い位置)に配置されるように、L字配管70の自由端側を上昇させた位置で保持できるようになっている。排水装置Wが、この高さ位置になるように、L字配管70を保持することで、水田300に貯水されている水がL字配管70の管内に流入されないようになるため、水田300から排水管330を介しての排水を止めることができる。
【0030】
また、排水装置Wは、例えば、
図3に示すように、少なくとも、L字配管70の自由端(排水入口70a)の一部(下方側の部分)が、水田300に貯水されている水の水面よりも下方の位置になるように、L字配管70の自由端側を下降させた状態で保持できるようになっている。排水装置Wが、この位置で、L字配管70の自由端側を保持することで、水田300に貯水された水がL字配管70を介して排水管330に流入され、その後、排水管330から排水路DCに排水される。
【0031】
また、本実施形態の排水装置Wは、
図2及び
図3に示す位置以外に、L字配管70の自由端(排水入口70a)の高さ方向の位置を任意の位置に調整することができるようになっている。この構成によれば、水田300の水位が所望する水位になるように制御することができる。また、この構成によれば、水田300に貯水されている水のうち、所望高さの水位の水を排水することができ、水田300に貯水された水の水温を調整することができる。例えば、本実施形態の排水装置Wによれば、田植え直後にできるだけ暖かい水を残しておくために水田の底面(作土面)付近の水(水温が低い水)を排水させたりすることができる。また、本実施形態の排水装置Wによれば、例えば、夏場の時期に、水温が高い水面近傍の水を排水させたりすることで、水田300に貯水された水の水温の上昇を抑制することができる。なお、水面近傍の水を排水するようにすれば(上澄みが排水されるので)、排水管330や排水路DC泥が貯まりにくくなるという効果もある。
【0032】
また、水位センサSは、所定時間毎に、水田300の水位を検知するセンサ部(図示せず)と、中継器50と無線により通信可能な通信部(図示せず)と、センサ部及び通信部に電力を供給する電源部(図示せず)とを備えている。
【0033】
そして、水位センサSは、所定時間毎に、センサ部が水田300の水位を検知(測定)し、通信部が中継器50を介して、サーバ100に検知した水位を含む水位情報を送信するようになっている。この水位情報には、水位センサSが測定した水位と、水位センサSを識別する水位センサIDと、水位を検知(測定)した日時を示す水位取得日時が含まれている。
なお、本実施形態で用いられる水位センサSは、周知技術のものが用いられているため、詳細な説明を省略するが、例えば、水位センサSには、非接触で水位を測定できる既存の超音波式水位センサを用いることができる。
【0034】
中継器50は、排水装置W及び水位センサSと無線により通信可能に構成されている共に、ネットワークNWを介してサーバ100と通信可能に構成されている。
そして、中継器50は、水位センサSから送られてくる「水位情報」を受信すると、ネットワークNWを介して、サーバ100に、「水位情報」を送信する。
また、中継器50は、ネットワークNWを介して、サーバ100から送られてくる「配管位置設定命令」を受信すると、排水装置Wに対して、受信した「配管位置設定命令」を送信する。
なお、中継器50は、周知技術のものを用いるため詳細な説明を省略する。
【0035】
また、サーバ100は、ネットワークNW及び中継器50を介して、排水装置W及び水位センサSと通信可能の構成されている。また、サーバ100は、ネットワークNWを介して、水田300を管理しているユーザ(農業従事者)が保持しているユーザ端末UTと通信可能に構成されている。また、サーバ100は、ネットワークNWを介して、所定地域の複数の水田300を管理している行政機関の担当者(行政担当者(例えば、市役所、町役場等の防災担当者))が保持している管理者端末GTと通信可能に構成されている。
【0036】
そして、サーバ100は、水位センサSから送られてくる「水位情報」を受信し、その水位情報を記憶して管理する。
また、サーバ100は、水田300を管理しているユーザ(農業従事者)のユーザ端末UTからのアクセス要求に応じて、ユーザ端末UTに対して、ユーザ(農業従事者)が管理している水田の水位が提示されたWebサイト(Webページにより構成されるWebサイト)を提供する。また、サーバ100は、行政担当者の管理者端末GTからのアクセス要求に応じて、管理者端末GTに対して、行政担当者が管理している水田の水位が提示されたWebサイトを提供する。
【0037】
また、サーバ100は、水田300を管理しているユーザ(農業従事者)のユーザ端末UTからのアクセス要求に応じて、ユーザ端末UTに対して、水田排水システムで管理する水田300に設置された排水装置Wに設けたL字配管70の自由端にある「排水入口70aの希望高さ寸法」の設定を受け付けるWebサイト(Webページにより構成されるWebサイト)を提供する。農業従事者は、ユーザ端末UTを操作して、サーバ装置100が提供するWebサイト上で、水田300に設置した排水装置Wの「排水入口70aの希望高さ寸法」を入力する。
サーバ100は、ユーザ端末UTからの「排水入口70aの希望高さ寸法」の入力を受け付けると、受け付けた「排水入口70aの希望高さ寸法」を指定した「配管位置設定命令」を生成し、対応する排水装置Wに対して、生成した「配管位置設定命令」を送信する。
【0038】
また、サーバ100は、水田300を管理している行政担当者の管理者端末GTからのアクセス要求に応じて、管理者端末GTに対して、行政担当者が管理する水田300に設置された排水装置Wの「排水停止要求或いは排水停止解除要求」の設定を受け付けるWebサイト(Webページにより構成されるWebサイト)を提供する。行政担当者は、管理者端末GTを操作して、サーバ装置100が提供するWebサイト上で、水田300に設置した排水装置Wの「排水停止要求或いは排水停止解除要求」を入力する。
【0039】
サーバ100は、管理者端末GTからの「排水停止要求」の入力を受け付けると、水田300からの排水が停止される「排水入口の高さ寸法(予め設定されている寸法)」を指定した「配管位置設定命令」を生成し、対応する排水装置Wに対して、生成した「配管位置設定命令」を送信する。また、サーバ100は、管理者端末GTからの「排水停止解除要求」の入力を受け付けると、排水ができる「排水入口の高さ寸法(予め設定されている寸法)」を指定した「配管位置設定命令」を生成し、対応する排水装置Wに対して、生成した「配管位置設定命令」を送信する。
【0040】
そして、排水装置Wは、中継器50を介して、サーバ100が送信した「配管位置設定命令」を受信すると、受信した「配管位置設定命令」に定められた高さ寸法になるように、L字配管70の自由端(排水入口70a)の位置を設定する。排水装置Wは、設定されたL字配管70の自由端(排水入口70a)の位置により、水田に貯水されている水を排水したり、排水を停止させたりする。
【0041】
このように、本実施形態の水田排水システムでは、ユーザ(農業従事者)がユーザ端末UTを操作して、サーバ100が提供するWebサイト上で、サーバ100に「排水入口70aの希望高さ寸法」を入力すると、サーバ100が、排水装置Wを制御して、排水装置Wが保持するL字配管70の自由端(排水入口70a)の位置を、ユーザが入力した「希望高さ位置」に設定できる。そのため、ユーザは、水田300まで足を運ばなくても水田300の水位調整を行うことができる。
また、本実施形態では、排水装置Wが、L字配管70の排水入口70aの高さ方向の位置を任意の位置に調整することができるようになっているため、水田300に貯水されている水のうち、所望高さの水位の水を排水することで(例えば、夏場の昼間に、水温が高い水面近傍の水を排水することで)、水田300に貯水された水の水温を調整することができる。
【0042】
また、本実施形態では、行政担当者が管理者端末GTを操作し、サーバ100が提供するWebサイト上で、水田300に設置した排水装置Wの「排水停止要求」を入力すれば、水田に貯水された水を排水しないように、排水装置Wが保持するL字配管70の排水入口70aの位置が設定される(
図2参照)。そのため、行政担当者が、豪雨や台風が予測される場合に、順番に、複数の水田300に出向くことなく、管理者端末GTを操作することで、水田300からの排水を停止させ、水田300を「田んぼダム」として機能させ、水害の発生する可能性を軽減させることができる。
また、行政担当者は、豪雨や台風がおさまれば、管理者端末GTを操作して、サーバ100が提供するWebサイト上で、水田300に設置した排水装置Wの「排水停止解除要求」を入力すれば、水田に貯水された水を排水できるように、排水装置Wが保持するL字配管70の排水入口70aの位置が設定される(
図3参照)。すなわち、行政担当者は、豪雨や台風がおさまれば、すみやか、且つ、簡単に、「田んぼダム」としての機能を解除し、排水を行う、通常の水田300に戻すことができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、水田300を「田んぼダム」として機能させる場合においても、排水装置Wが保持するL字配管70の排水入口70aの位置を、水田300の畦320が決壊しない高さを想定した位置になるようにサーバ100に設定しておくこともでき、畦320が決壊する可能性を軽減できる(畦320が決壊する高さになる前に、排水装置Wにより水田300の水を排水させることができる)。
【0044】
《排水装置の構成》
次に、本実施形態の水田排水システムを構成する排水装置Wの構成について、上述した
図1~4と、
図5~8とを参照しながら説明する。
【0045】
ここで、
図5は、本実施形態の水田排水システムを構成する排水装置と、水田の畦に埋設されている排水管との接続部の構造を説明するための模式図である。
図6は、本実施形態の水田排水システムを構成する排水装置の構成を説明するための模式図であり、(a)が配管昇降機構がL字配管を下方の位置まで降ろして保持している状態を示した模式図であり、(b)が配管昇降機構がL字配管を上方の位置まで上げて保持している状態を示した模式図である。
図7は、
図6に示す配管昇降機構の構成の一部を拡大して示した模式図である。
図8は、本実施形態の水田排水システムを構成する排水装置の本体部に収容された装置の構成を示した模式図である。
【0046】
図2~8に示すように、本実施形態の排水装置Wは、水田300の設置エリア(作土面等の設置エリア)に設置される肢部1及び肢部1に支持された筐体部2を有する本体部10と、筐体部2に収容されている通信制御装置20(
図8参照)と、筐体部2に収容されている電源部30(
図8参照)と、一端部が排水管330に回転自在に接続されたL字配管70(
図4参照)と、本体部10に取付けらており且つL字配管70の他端部側を上下方向に移動自在に保持する配管昇降機構50とを備えている。
なお、電源部30は、通信制御装置20及び配管昇降機構50に電力を供給する。
【0047】
また、
図6、7に示すように、配管昇降機構50は、通信制御装置20に制御されて動作するモータ(回転機構)51と、モータ51の回転動作を直線動作に変換して上下方向に往復移動する往復移動機構52と、往復移動機構52の先端部(下端部)に取り付けられている配管保持部60とを備えている(
図6、7参照)。また、配管保持部60が、L字配管70の他端部側を保持している。
なお、L字配管70は、
図4に示すように、その一端部が、排水管330に回転自在に接続されている。また、L字配管70は、排水管330との接続部分において、その内径寸法が、排水管330の外径寸法と比べて、僅かに大きくなっている。そして、L字配管70の一端部側の排水管接続部70b(
図5参照)に、排水管330の一端部を挿入した際に、L字配管70の内周面と、排水管330の外周面との間に僅かな隙間sが形成されるようになっている。
【0048】
そして、通信制御装置20に制御された配管昇降機構50は、往復移動機構52の先端部の配管保持部60を下降させることで、
図6(a)に示すような下方側の位置に、L字配管70の自由端(排水入口70a)側を配置することができる。この位置に、L字配管70の自由端(排水入口70a)を配置することで、L字配管70を介して、水田300に貯水された水を排水管330に流して排水させることができる。
或いは、制御装置20に制御された配管昇降機構50は、往復移動機構52の先端部の配管保持部60を上昇させることで、
図6(b)に示すような上方側の位置に、L字配管70の自由端(排水入口70a)側を配置することができる。この位置に、L字配管70の自由端(排水入口70a)を配置することで、水田300に貯水された水がL字配管70に流入されなくなり(
図2参照)、排水管330への排水が停止される。
【0049】
なお、上述したように、L字配管70の内周面と、排水管330の外周面との間に僅かな隙間sが形成されている。そのため、配管昇降機構50により、L字配管70の自由端(排水入口70a)を上下方向に移動させる際、L字配管70の一端部が、排水管330の外周側面に対して円周方向に回転するようになっている(
図5参照)。
以下、排水装置Wの各構成部を順番に説明していく。
【0050】
<本体部10>
本体部10を構成する肢部1は、
図6に示すように、水田300の作土面等の設置エリアに略垂直に立設される一対の棒状の垂直脚部1a、1aと、一対の垂直脚部1a、1aの間に横架された横棒部1bと、横棒部1bの上方側の長手方向(左右方向)・略中間部分に立設・固定されている垂直縦棒部1cとを備えている。
また、垂直脚部1a、1a、横棒部1b、及び垂直縦棒部1cは、いずれも、両端が貫通した中空円筒状の円管で形成されている。
また、横棒部1bは、垂直脚部1a、1aの上方側の位置において、垂直脚部1a、1aに対して直角に配置されている。また、横棒部1bは、その一端部が、一方の垂直脚部1aの側面部に固定されており、その他端部が、他方の垂直脚部1aの側面部に固定されている。また、横棒部1bは、垂直縦棒部1cが固定されている「長手方向(左右方向)・略中間部分」に、上下方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に、後述する昇降シャフト52dが挿通されている。
【0051】
また、本体部10を構成する筐体部2は、中空箱状に形成されており、その内部に、
図8に示すように、通信制御装置20、電源部30及びモータ51が収容されている。また、筐体部2は、その上面部にアンテナATが突設されている。このアンテナATは、通信制御装置20に接続されており、通信制御装置20が中継器50と行う通信処理に用いられる。
また、筐体部2は、下面部の中央部分が垂直縦棒部1cの上端との接続部になっている。また、筐体部2は、上記の接続部に開口が形成され、この開口により、筐体部2の箱内と、垂直縦棒部1cの筒内とが連通している。
【0052】
なお、本実施形態の排水装置Wは、本体部10を構成する1対の垂直脚部1a、1aの下端を水田300の作土面(設置エリア面)等に挿入して差し込んで設置した後、さらに、垂直脚部1a、1の筒内に、杭(鉄杭等の杭)Pを挿入して作土面に打ち込むことができるようになっている(
図2、3、6参照)。本実施形態の排水装置Wは、この構成により、水田300等の設置エリア面に安定した状態で設置することができる。
【0053】
<配管昇降機構50>
また、配管昇降機構50は、モータ(回転機構)51と、モータ51の回転動作を直線動作に変換して上下方向に往復移動する往復移動機構52とを備えており、往復移動機構52の先端部(下端部)に配管保持部60が取り付けられている。
【0054】
また、モータ(回転機構)51は、例えば、DCサーボモータにより構成されている。また、モータ51は、本体部10を構成する筐体部2の内部に収容設置されており、電源部30から電力が供給されると共に、通信制御装置20に制御されて回転動作を行うようになっている。
また、モータ51は、筐体部2に形成されている開口(垂直縦棒部1cとの接続部に形成された開口)にモータ51の回転軸51a(
図6、7参照)が位置するように位置決めされて設置されている。
【0055】
また、往復移動機構52は、
図6、7に示すように、モータ51の回転軸51aに取り付けられた略ドーナツ状のカップリング部材52aと、モータ51の回転軸51aにカップリング部材52aを介して接続固定された回転シャフト52bと、回転シャフト52bの下端部の筒内に内嵌・固定されたナット52c(
図7参照)と、ナット52cに螺合された昇降シャフト52dとを備えている。なお、回転シャフト52bは、その上端部の筒内に、カップリング部材52aが内嵌・固定されている。
【0056】
上記の回転シャフト52bは、両端が貫通した中空円筒状に形成されている。
また、回転シャフト52bは、脚部1を構成する垂直縦棒部1cの筒内に回転自在に収容されており、モータ51の回転軸51aの回転にともない回転する。また、回転シャフト52bがモータ51の回転にともない回転すると、回転シャフト52bの下端に固定されているナット52cが回転シャフト52bと共に回転するようになっている。
【0057】
また、昇降シャフト52dは、その上端部側にナット52cに螺合するネジ溝が形成された円柱棒状に形成されている。或いは、昇降シャフト52dは、長手方向の全域にナット52cに螺合するネジ溝が形成された長ネジ(寸切りボルト)で形成されている。
そして、昇降シャフト5bは、その上端部側が回転シャフト52bの下端部の筒内に内嵌・固定されているナット52cに螺合しており、その上端部側が回転シャフト52bの筒内に配置されている。
また、昇降シャフト52dは、その下端部側が、回転シャフト52b及び回転シャフト52bを収容している垂直縦棒部1cの下端部から突出し、さらに、垂直縦棒部1cの下端部に接続されている横棒部1bを挿通し、横棒部1bよりも下方の位置まで延設されている。
【0058】
また、昇降シャフト52dの下端部には、L字配管70の他端部側を保持している配管保持部60が接続固定されている。
配管保持部60は、
図2、3に示すように、側面視で略コの字状の取手部60aと、取手部60bに固定されているバンド部60bとを有している。取手部60aが、往復移動機構52の昇降シャフト52dの下端部に固定されている。また、バンド部60bが、L字配管70の他端部側の外周部に巻き回されて、L字配管70の他端部側を保持している。
【0059】
上記のように構成された配管昇降機構50は、モータ51を駆動させて、モータ51の回転軸51aを第1方向に回転させると、モータ51の回転軸51aと共に、回転シャフト52bが第1方向に回転する。また、回転シャフト52bが第1方向に回転すると、回転シャフト52bの下端のナット52cも第1方向に回転し、ナット52cに螺合している昇降シャフト52dが下降する(昇降シャフト52dが回転シャフト52bの下端から押し出されていく)。これにより、昇降シャフト52dの下端部に固定されている配管保持部60に保持されているL字配管70の自由端側が下降していくと共に、排水管330に接続されているL字配管70の一端部が排水管330の周方向に沿って回転する。例えば、
図6(b)に示す状態から
図6(a)に示す状態に遷移させることができる。
【0060】
また、配管昇降機構50は、モータ51を駆動させて、モータ51の回転軸51aを第2方向(第1方向と反対回転の方向)に回転させると、モータ51の回転軸51aと共に、回転シャフト52bが第2方向に回転する。また、回転シャフト52bが第2方向に回転すると、回転シャフト52bの下端のナット52cも第2方向に回転し、ナット52cに螺合している昇降シャフト52dが上方に向けて移動する(回転シャフト52bの筒内に引き込まれていく)。これにより、昇降シャフト52dの下端部に固定されている配管保持部60に保持されているL字配管70の自由端側が上昇していくと共に、排水管330に接続されているL字配管70の一端部が排水管330の周方向に沿って回転する。例えば、
図6(a)に示す状態から
図6(b)に示す状態に遷移させることができる。
【0061】
なお、
図6、7に示す配管昇降機構50は、あくまでも一例に過ぎない。例えば、配管昇降機構50の往復移動機構52は、カップリング部材52aに接続固定されている回転シャフト52bが長ネジ(寸切りボルト)で形成されていても良い。この場合、カップリング部材52aの下端に、長ネジの上端部に接続・固定されている。また、この場合、昇降シャフト52dが、両端が貫通した中空筒状の円管で形成されており、昇降シャフト52dの上端部の筒内に、ナット52cが内嵌・固定されている。また、ナット52cに、回転シャフト52bを構成する長ネジの下端部側が螺合されている。また、円管で形成された昇降シャフト52dの下端部に、
図6、7と同様、配管保持部60が固定されている。
この構成によっても、
図6、7に示す配管昇降機構50と同様の機能が実現される。
【0062】
また、上述した実施形態に示す往復移動機構52は、
図6、7に示すような「ネジとナット」の構成ではなく、ボールネジを用いて構成するようにしてもよいし、周知の電動シリンダー(電動アクチュエータ)を用いる構成であってもよい。
【0063】
<通信制御装置20>
次に、通信制御装置20の構成について説明する。
図8に示すように、通信制御装置20は、制御処理部21と、通信処理部22と、記憶部23と、ユーザから各種操作を受け付ける操作部(図示せず)とを有している。また、記憶部23には、水田300に設置された排水装置Wが保持しているL字配管70の排水入口70aの高さ寸法(現状の高さ寸法)が記憶されている。また、記憶部23には、排水装置Wを識別する排水装置IDが記憶されている。
なお、上記の排水装置IDは、製品の出荷時(製造時)、或いは、排水装置Wを設置する際に、製造業者(或いはユーザ)の操作により、記憶部23に記憶される。また、水田300に、排水装置Wを設置した際、ユーザや設置業者の操作により、記憶部23に、設置したときの排水入口70aの高さ寸法が記憶される。
【0064】
制御処理部21は、図示しない操作部の操作により、通信制御装置20の設定を受け付ける。
また、制御処理部21は、通信処理部22を介してサーバ100との間で各種情報の授受を行うと共に、配管昇降機構50の動作を制御し、配管昇降機構50の昇降シャフト52dの下端部に固定されている配管保持部60に保持されているL字配管70の他端部側を上下方向に移動させ、水田300から水が排水される状態(例えば、
図3に示す状態)や、水田300からの排水が停止される状態(例えば、
図2に示す状態)にすることにより、水田300に貯水されている水の排水制御を行う。
【0065】
例えば、
図2に示すように、排水装置Wが、水田300の排水を停止している状態にあったとする。ここでは、水田300の水位が30cm未満であり(例えば、29cm)であり、L字配管70の排水入口70aの高さ寸法が30cmに設定されていたとする。すあわち、排水入口70aが水田300に貯水されている水の水面よりも上方に配置され、L字配管70の管内に水が流入されない状態になっており、水田300の排水が停止されているものとする。また、排水装置Wの記憶部23には、現状の「L字配管70の排水入口70aの高さ寸法」として「30cm」が記憶されているものとする。このときに、制御処理部21は、通信処理部22を介して、サーバ100から送信される「配管位置設定命令(排水できるようにする配管位置設定命令)」を受信したとする。ここでは、「L字配管70の排水入口70aの高さ寸法を10cmに指定した」配管位置設定命令を受信したとする。
この場合、制御処理部21は、記憶部に記憶している高さ寸法(30cm)を読み出し、読み出した高さ寸法(30cm)と、配管位置設定命令で指定された高さ寸法(10cm)との差分(-20cm(20cm、下降させる))を算出する。
そして、制御処理部21は、配管昇降機構50に対して、配管昇降機構50の昇降シャフト52dの下端部に固定されている配管保持部60に保持されているL字配管70の他端部側を、20cmの長さ寸法分・下降させる下降命令信号を送信し、配管保持部60に保持されているL字配管70の他端部側を、現状の位置から「20cm」下降させて停止し、その状態を維持させる。これにより、水田300から水が排水される状態になる。
【0066】
上記の下降命令信号は、昇降シャフト52dが所定寸法(ここでは「20cm」)・下降されるように、モータ51の回転軸51aを第1方向に所定回数だけ回転させる信号である。制御処理部21は、モータ51に下降令信号を送信し、モータ51の回転軸51aを第1方向に所定回数だけ回転させる。なお、制御処理部21は、昇降シャフト52dの上下方向の移動距離と、当該移動距離に対応するモータ51の回転軸51aの回転数とを関連付けた情報を保持しており、この情報を用いて、上下方向の移動距離に対応する回転数を算出する。
そして、モータ51の回転軸51aが第1方向に回転すると、モータ51の回転軸51aと共に、回転シャフト52bが第1の方向に回転する。また、回転シャフト52bが第1方向に回転すると、回転シャフト52bの下端のナット52cも第1方向に回転し、ナット52cに螺合している昇降シャフト52dが下方に向けて下降する。これにより、昇降シャフト52dの下端部に固定されている配管保持部60に保持されているL字配管70の他端部側が、現状の位置から「20cm」分・下降して停止し、その状態が維持される。なお、L字配管70の他端部側が下降している最中には、排水管330に接続されているL字配管70の一端部は、排水管330の周方向に沿って回転している。
その後、制御処理部21は、記憶部23に記憶されている排水入口70aの高さ寸法を「30cm」から「10cm」に更新する。これにより、記憶部23には、現状の排水入口70aの高さ寸法」である「10cm」が記憶された状態になる。
【0067】
なお、モータ51の駆動を停止しても、配管保持部60を固定している昇降シャフト52dが、ナット52cに螺合している構成であるため、配管保持部60が保持されているL字配管70の一端部側は、移動前の状態から「10cm」の位置に下降させた状態が維持される。
【0068】
また、排水装置Wの「L字配管70の排水入口70aの高さ寸法」が「10cm」の位置にあり、水田300から水が排水されている状態のときに、制御処理部21は、通信処理部22を介して、サーバ100から送信される「配管位置設定命令(排水を停止させる配管位置設定命令)」を受信したとする。
ここでは、L字配管70の排水入口70aの高さ寸法を30cmと指定した」配管位置設定命令」を受信したとする。
この場合、制御処理部21は、記憶部に記憶している高さ寸法(10cm)を読み出し、読み出した高さ寸法(10cm)と、配管位置設定命令で指定された高さ寸法(30cm)との差分(+20cm(20cm、上昇させる))を算出する。
そして、制御処理部21は、配管昇降機構50に対して、配管昇降機構50の昇降シャフト52dの下端部に固定されている配管保持部60に保持されているL字配管70の他端部側を、20cmの長さ寸法分・上昇させる上昇命令信号を送信し、配管保持部60に保持されているL字配管70の一端部側を、現状の位置から「20cm」上昇させて停止し、その状態を維持させる。これにより、水田300から水が排水されない状態になる。
【0069】
上記の上昇命令信号は、昇降シャフト52dが所定距離(ここでは「20cm」)・上昇されるように、モータ51の回転軸51aを第2方向に所定回数だけ回転させる信号である。制御処理部21は、モータ51に上昇信号を送信し、モータ51の回転軸51aを第2方向に所定回数だけ回転させる。
そして、モータ51の回転軸51aが第2方向に回転すると、モータ51の回転軸51aと共に、回転シャフト52bが第2の方向に回転する。また、回転シャフト52bが第2方向に回転すると、回転シャフト52bの下端のナット52cも第2方向に回転し、ナット52cに螺合している昇降シャフト52dが上方に向けて上昇する。これにより、昇降シャフト52dの下端部に固定されている配管保持部60に保持されているL字配管70の他端部側が、現状の位置から「20cm」分・上昇して停止し、その状態を維持させる。なお、L字配管70の他端部側が上昇している最中には、排水管330に接続されているL字配管70の一端部は、排水管330の周方向に沿って回転している。
その後、制御処理部21は、記憶部23に記憶されている排水入口70aの高さ寸法を「10cm」から「30cm」に更新する。これにより、記憶部23には、現状の排水入口70aの高さ寸法」が記憶されたことになる。
【0070】
通信処理部22は、アンテナAT及び中継器50を介して、サーバ100から送られてくる「配管位置設定命令」を受信し、制御処理部21に受信した「配管位置設定命令」を送信する。
なお、本実施形態では、通信処理部22は、1~2km程度離れた位置に設置された中継器50から、無線により、「配管位置設定命令」を受信するようになっている。
【0071】
また、通信制御装置20のハードウェア構成について特に限定されるものではない。例えば、通信制御装置20は、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、I/Oインターフェイス、通信インターフェイス、無線回路、アンテナ、操作ボタン等の操作部を有する情報処理装置を用いることができる。この場合、補助記憶装置に、制御処理部21及び通信処理部22の機能を実現するためのプログラムが記憶されている。また、補助記憶装置の所定領域が記憶部23になっている。そして、制御処理部21及び通信処理部22の機能は、CPUが補助記憶装置に記憶されているプログラムを主記憶装置にロードして実行することにより実現される。
【0072】
<電源部30>
また、電源部30は、通信制御装置20及びモータ51に電力を供給するものであり、例えば、ソーラパネルを有する太陽光発電部(図示せず)と、太陽光発電部が発電した電力を蓄電する蓄電部(図示せす)とを有する構成のものを用いることができる。また、例えば、電源部30は、電池により構成することもできる。
【0073】
《サーバ100》
次に、本実施形態の水田排水システムを構成するサーバ100について、
図9~13を参照しながら説明する。
ここで、
図9は、本実施形態の水田排水システムを構成するサーバ装置の機能構成を示した模式図である。
図10は、本実施形態のサーバ装置に設けられた排水装置状態データベースの構成の一例を示した模式図である。
図11は、本実施形態のサーバ装置に設けられた排水装置ユーザ情報データベースの構成の一例を示した模式図である。
図12は、本実施形態のサーバ装置に設けられた排水装置行政情報データベースの構成の一例を示した模式図である。
図13は、本実施形態のサーバ装置に設けられた水位センサデータベースの構成の一例を示した模式図である。
【0074】
図9に示すように、サーバ100は、排水装置制御部110と、水位情報取得部120と、記憶部130とを有している。記憶部130には、排水装置状態データベース210、排水装置ユーザ情報データベース220、排水装置行政情報データベース230及び水位センサデータベース240が記憶されている。
【0075】
なお、サーバ100のハードウェア構成について特に限定されるものではない。例えば、サーバ100は、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、I/Oインターフェイス、通信インターフェイスを有するコンピュータ(1台或いは複数台のコンピュータ)により構成される。この場合、補助記憶装置には、排水装置制御部110及び水位情報取得部120の機能を実現するためのプログラムが記憶されている。また、補助記憶装置の所定領域が記憶部130になっている。そして、排水装置制御部110及び水位情報取得部120の機能は、CPUが補助記憶装置に記憶されているプログラムを主記憶装置にロードして実行することにより実現される。
【0076】
次に、サーバ100の構成のうち、記憶部130に記憶されている各データベース(排水装置状態データベース210、排水装置ユーザ情報データベース220、排水装置行政情報データベース230及び水位センサデータベース240)について説明する。
【0077】
<排水装置状態データベース210>
排水装置状態データベース210は、水田300に設置された排水装置Wの状態を管理するために用いられるものであり、例えば、
図10に示す構成のものを用いることができる。
【0078】
図10に示すように、排水装置状態データベース210は、排水装置Wを識別する排水装置IDを登録するためのフィールド210aと、排水装置IDにより識別される排水装置Wが設置されている水田300の位置情報を登録するためのフィールド210bと、排水装置IDにより識別される排水装置Wが保持しているL字配管70の排水入口70aの高さ位置を登録するためのフィールド210cと、水田300のステータスを登録するためのフィールド210dとを備えたレコード(複数のレコード)により構成されている。すなわち、排水装置状態データベース210は、「排水装置ID」に、「水田300の位置情報」、「L字配管70の排水入口70aの高さ位置」及び「水田300のステータス」を対応付けて記憶している。
【0079】
ここで、フィールド210aに登録される「排水装置ID」は、排水装置Wを識別するための一意の情報であり、英数字記号等により構成される。
フィールド210bに登録される「水田300の位置情報」は、排水装置Wが設置されている水田300の位置を特定する情報であり、図示する例では、「緯度、経度」を示している。なお、「水田300の位置情報」として「緯度、経度」に代えて住所を用いるようにしても良い。
【0080】
フィールド210cに登録される「L字配管70の排水入口70aの高さ位置」は、
図2(b)に示すように、排水装置Wが設置された作土面(作土層の上面)300aから、L字配管70の排水入口70aの下端部までの高さ寸法(h)のことをいう。
フィールド210dに登録される「ステータス」は、水田300の状態を示す情報のことを云い、本実施形態では、水田300が「田んぼダム」として用いられている状態、或いは、水田300が稲作をしている通常の状態であること示す情報のことをいう。水田300が「田んぼダム」として用いられているときには、フィールド210dには「田んぼダム」が登録される。また、水田300が稲作をしている通常の状態のときには、フィールド210dには「通常」が登録される。
【0081】
<排水装置ユーザ情報データベース220>
排水装置ユーザ情報データベース220は、排水装置Wと、その排水装置Wを利用して水田200の排水・止水を管理しているユーザ(農業従事者)とを対応付けた情報が登録されているデータベースであり、例えば、
図11に示す構成のものを用いることができる。
【0082】
図11に示すように、排水装置ユーザ情報データベース220は、排水装置Wを識別する排水装置IDを登録するためのフィールド220aと、排水装置Wを利用して水田300の排水・止水を管理しているユーザ(農業従事者)を識別するユーザIDを登録するためのフィールド220bとを備えたレコード(複数のレコード)により構成されている。すなわち、排水装置ユーザ情報データベース220は、「排水装置ID」に、「ユーザID」を対応付けて記憶している。
【0083】
なお、フィールド220aに登録される排水装置IDは、
図10の排水装置状態データベース210に登録されるものと同じである。
また、フィールド220bに登録されるユーザIDは、排水装置IDにより識別される排水装置Wが設置されている水田300において、その排水装置Wを利用して水田300の排水・止水を管理し、稲作をしているユーザ(農業従事者)を識別するための一意の情報であり、英数字記号等により構成される。
なお、農業従事者は、複数の水田300で稲作をしていることが多く、排水装置ユーザ情報データベース220では、複数のレコードに、同じユーザIDが登録されている。
【0084】
<排水装置行政情報データベース230>
排水装置行政情報データベース230は、排水装置Wと、豪雨等の際に排水装置Wが設置された水田300を田んぼダムとして機能させる権限を有している行政担当者(市役所、町役場の防災担当者等)とを対応付けた情報が登録されているデータベースであり、例えば、
図12に示す構成のものを用いることができる。
【0085】
図12に示すように、排水装置行政情報データベース230は、排水装置Wを識別する排水装置IDを登録するためのフィールド230aと、排水装置IDにより識別される排水装置Wが設置された水田300を田んぼダムとして機能させる権限を有している行政担当者を識別する行政担当者IDを登録するためのフィールド230bとを備えたレコード(複数のレコード)により構成されている。すなわち、排水装置行政情報データベース230は、「排水装置ID」に、「行政担当者ID」を対応付けて記憶している。
【0086】
なお、フィールド230aに登録される排水装置IDは、
図10の排水装置状態データベース210に登録されるものと同じである。
また、フィールド230bに登録される行政担当者IDは、排水装置IDにより識別される排水装置Wが設置されている水田300があるエリアを管轄している行政担当者であり、且つ、その排水装置Wを利用して、排水装置Wが設置されている水田300を田んぼダムとして機能させる権限を有している行政担当者を識別するための一意の情報であり、英数字記号等により構成される。
なお、稲作が行われている地域においては、行政担当者が管轄しているエリアに、複数の水田300が設けられている。そのため、排水装置行政情報データベース230は、複数のレコードに、同じ行政担当者IDが登録されている。
【0087】
水位センサデータベース240は、水田300に設置された水位センサSが計測した水位を記憶して管理するものであり、例えば、
図13に示す構成のものを用いることができる。
【0088】
図示するように、水位センサデータベース240は、水位センサを識別する水位センサIDを登録するためのフィールド240aと、水位センサIDにより特定される水位センサSが設置された水田300を管理しているユーザ(農業従事者)を識別するユーザIDを登録するためのフィールド240bと、水位センサIDにより特定される水位センサSが設置された水田300を田んぼダムとして機能させる権限を有している行政担当者を識別する行政担当者IDを登録するためのフィールド240cと、水位センサIDにより特定される水位センサSが設置された水田300の位置情報を登録するためのフィールド240dと、水位センサIDにより特定される水位センサSが測定した水位の測定日時(取得日時)を登録するためのフィールド240eと、水位センサIDにより特定される水位センサSが測定した水位を登録するためのフィールド240fとを備えたレコード(複数のレコード)により構成されている。すなわち、水位センサデータベース240は、水位センサIDに、ユーザID、行政担当者ID、位置情報、水位取得日時、及び水位を対応付けて記憶している。
【0089】
なお、フィールド240aに登録される水位センサIDは、水位センサSを識別するための一意の情報であり、英数字記号等により構成される。
フィールド240bに登録されるユーザIDは、
図11に示す排水装置ユーザ情報データベース220に登録されるものと同じである。
フィールド240cに登録される行政担当者IDは、
図12に示す排水装置行政情報データベース220に登録されるものと同じである。
フィールド240dに登録される位置情報は、
図10の排水装置状態データベース210に登録されるものと同じである。
フィールド240eに登録される水位取得日時とは、サーバ100が水位センサSから水位を取得した日時を示す情報(〇〇年〇月〇日〇時〇分等の年日時分を示す情報)である。
フィールド240fに登録される水位とは、サーバ100が水位センサSから水位を取得した水位を示す情報であり、例えば、「10cm」や「30cm」等の情報を云う。
【0090】
また、水位センサデータベース240のフィールド240a、240b、240c、240dのデータは、水田300に水位センサSを設置する際に、水位センサSの設置業者やユーザ(農業従事者)等が、サーバ100にアクセスして登録する情報である。
また、水位センサデータベース240のフィールド240e、240fの情報は、サーバ100の水位情報取得部120が、水センサSから送信される「水位情報」を受信して登録するものである。
【0091】
次に、
図9に戻り、サーバ100の構成のなかの、排水装置制御部110及び水位情報取得部120の構成について説明する。
【0092】
排水装置制御部110は、ユーザ(農業従事者)が操作するユーザ端末UTに対して、排水装置Wの「排水入口70aの希望高さ寸法」の入力を受け付けるためのWebサイトを提供し、そのWebサイト上において、ユーザ端末UTから、排水装置Wの「排水入口70aの希望高さ寸法」の入力を受け付ける。
そして、排水装置制御部110は、ユーザ端末UTから「排水入口70aの希望高さ寸法」の入力を受け付けると、その受け付けた「排水入口70aの希望高さ寸法」を指定した「配管位置設定命令」を生成し、対応する排水装置Wに対して、中継器50を介して、生成した「配管位置設定命令」を送信する。
【0093】
また、排水装置制御部110は、行政担当者が操作する管理者端末GTに対して、「排水停止要求或いは排水停止解除要求」の入力を受け付けるためのWebサイトを提供し、そのWebサイト上において、管理者端末GTから排水装置Wの「排水停止要求或いは排水停止解除要求」を受け付ける。
そして、排水装置制御部110は、行政担当者の管理者端末GTからの「排水停止要求」の入力を受け付けると、水田300からの排水が停止される「排水入口の高さ寸法(予め設定されている寸法)」を指定した「配管位置設定命令」を生成し、対応する排水装置Wに対して、中継器50を介して、生成した「配管位置設定命令」を送信する。
また、排水装置制御部110は、サーバ100は、管理者端末GTからの「排水停止解除要求」の入力を受け付けると、排水ができる「排水入口の高さ寸法(予め設定されている寸法)」を指定した「配管位置設定命令」を生成し、対応する排水装置Wに対して、中継器50を介して、生成した「配管位置設定命令」を送信する。
【0094】
また、水位情報取得部120は、水田300に設置された水位センサSが、所定時間毎に、中継器50及びネットワークNWを介して、送信してくる「水位センサID、水位取得日時、及び水位が含まれている水位情報」を受信する。
また、水位情報取得部120は、「水位情報」を受信すると、水位センサデータベース240にアクセスし、受信した「水位情報」に含まれる水位センサIDが登録されているレコードを読み出す。そして、水位情報取得部110は、読み出したレコードのフィールド240dに、受信した「水位情報」に含まれる「水位取得日時」を登録して、読み出したレコードのフィールド240eに、受信した「水位情報」に含まれる「水位」を登録して、その後、水位センサデータベース240に当該レコードを格納する。
【0095】
この水位情報取得部120及び水位センサデータベース240の構成により、サーバ100が、水位センサSを設置した水田300毎に、各水田300の水位を記憶して管理することができる。
【0096】
なお、水位情報取得部120は、ユーザ(農業従事者)が操作するユーザ端末UTからの水位情報要求(ユーザIDが含まれる水位情報要求)を受け付けると、水位センサデータベース240にアクセスして、水位情報要求に含まれるユーザIDにより特定されるユーザが管理する水田300の水位を取得し、ユーザ端末UTに対して、ユーザが管理する水田300の水位を示す情報を提供する。
また、水位情報取得部120は、行政担当者が操作する管理者端末GTからの水位情報要求(行政担当者IDが含まれる水位情報要求)を受け付けると、水位センサデータベース240にアクセスして、水位情報要求に含まれる行政担当者IDにより特定される行政担当者が権限を有する水田300の水位を取得し、管理者端末GTに対して、行政担当者が権限を有する水田300の水位を示す情報を提供する。
【0097】
《ユーザ端末UT》
ユーザ端末UTは、スマートフォンやパソコン(パーソナルコンピュータ)等の情報処理装置により構成されており、サーバ100にアクセスするためのアプリアプリケーションプログラム(専用アプリ)がインストールされている。また、上記の専用アプリには、ユーザ端末UTを保持するユーザ(農業従事者)のユーザIDと、当該ユーザが水田300に設置した排水装置IDとが登録されているものとする。
【0098】
《管理者端末GT》
また、管理者端末GTは、スマートフォンやパソコン(パーソナルコンピュータ)により構成されており、サーバ100にアクセスするためのアプリアプリケーションプログラム(専用アプリ)がインストールされている。また、上記の専用アプリには、管理者端末GTを保持する行政担当者の行政担当者IDと、当該行政担当者が田んぼダムとして機能させる権限を有している水田300に設置した排水装置IDとが登録されているものとする。
【0099】
《水田排水システムの全体動作》
次に、本実施形態の水田排水システムが行う処理の流れについて、2つのケースを例示して説明する。2つのケースのうちの一つ目は、「ユーザ(農業従事者)がサーバ100を介して排水装置Wを制御して水田300の水位や水温を調整するケース」である。また、二つ目は、「行政担当者がサーバ100を介して排水装置Wを制御して水田300を田んぼダムとして用いるケース」である。
【0100】
《排水装置Wを制御して水田300の水位や水温を調整するケース》
最初に、ユーザ(農業従事者)がサーバ100を介して排水装置Wを制御して水田300の水位や水温を調整するケースの例を説明する。
ここでは、ユーザ(農業従事者)が管理している水田300に設置された排水装置Wが、
図2に示すように、排水ができない高さ位置で、L字配管70が保持されている状態であるものとする。
【0101】
また、説明を簡略化するために、ユーザが1枚の水田300だけを管理しているものとする。
また、排水装置WのL字配管70の排水入口70aの高さ位置が「30cm」に設定されており、水田300が「田んぼダム」として利用していない「通常の状態」であるものとする。すなわち、水田300は、通常に稲作をしている状態で、排水装置Wからの排水を停止している状態になっているものとする。
なお、この状態のため、サーバ100の排水装置状態データベース210のなかの、本ケースの排水装置Wを特定する排水装置IDが登録されているレコードでは、フィールド210cに「30cm」が登録され、フィールド210dに「通常」が登録されている(例えば、
図10の例において、一番上のレコード)。また、水田300に設置された排水装置Wを構成する通信制御装置20の記憶部23には、L字配管70の排水入口70aの高さ位置として「30cm」が記憶されている。
【0102】
そして、水田300を管理するユーザ(農業従事者)が、水田300に設置された排水装置Wの排水入口70aの高さ位置を変更する場合、先ず、ユーザ端末UTの専用アプリ(プログラム)を起動させ、サーバ100にアクセス要求を送信する。
【0103】
サーバ100は、上記のアクセス要求を受け付けると、ユーザ端末UTに初期画面(ログイン画面)を提示したWebページを提供し、ユーザ端末UTから「ユーザID」の入力を受け付ける。
サーバ100は、ユーザ端末UTから「ユーザID」の入力を受け付けると、排水装置ユーザ情報データベース220を参照し、受け付けた「ユーザID」に対応付けられている「排水装置ID」を読み出す。また、サーバ100は、排水装置情報状態データベース21を参照して、読み出した「排水装置ID」が登録されているレコードを抽出する。
また、サーバ100は、抽出したレコードのフィールド210dに登録されている「ステータス」が通常であるか否かを判定する。
【0104】
具体的には、サーバ100は、抽出したレコードのフィールド210dのステータスが通常である場合、排水装置Wに設けたL字配管70の「排水入口70aの希望高さ寸法」の設定を受け付ける排水入口設定Webページ(農業従事者用Webページ)を生成し、ユーザ端末UTに対して、排水入口設定Webページを送信する(提供する)。本ケースでは、水田300が「田んぼダム」になっていないので、排水入口設定Webページが送信される。なお、排水入口設定Webページには、読み出したレコードのフィールド210dcに登録されている「排水入口位置(本例では、30cm)」が記載されている。すなわち、排水入口設定Webページには、排水装置Wの現状の「排水入口位置」が提示されている。
【0105】
なお、サーバ100は、ステータスが「田んぼダム」になっているときには、水田300を田んぼダムとして利用している旨を示すWebページを生成し、ユーザ端末UTにその生成したWebページを送信する(提供する)。すなわち、水田300を「田んぼダム」として利用している間は、ユーザ(農業従事者)が排水装置Wを制御できないように設定されている。
【0106】
次に、ユーザ端末UTは、サーバ100から送信された排水入口設定Webページを受信する。これにより、ユーザ端末UTのディスプレイに、排水入口設定Webページが表示される。ユーザがユーザ端末UTを操作して、排水入口設定Webページ上で、水田300に設置した排水装置Wの「排水入口70aの希望高さ寸法」を入力すると、ユーザ端末UTからサーバ100に、「排水入口70aの希望高さ寸法」が送信される。ここでは、ユーザが、ユーザ端末UTを操作して、排水装置Wから排水させるために、排水入口設定Webページに、「排水入口70aの希望高さ寸法」として「5cm」を入力したとする。
【0107】
サーバ100は、ユーザ端末UTからの「排水入口70aの希望高さ寸法(5cm)」の入力を受け付けると、受け付けた「排水入口70aの希望高さ寸法(5cm)」を指定した「配管位置設定命令」を生成し、中継器50を介して、対応する排水装置Wに対して、生成した「配管位置設定命令」を送信する。
なお、サーバ100は、排水装置状態データベース210から抽出したレコードのフィールド210cの「排水入口位置」を、受け付けた「希望高さ寸法(5cm)」に更新した上で、排水装置状態データベース210に、当該レコードを格納する(上書きする)。
【0108】
その後、排水装置Wは、中継器50を介して、サーバ100が送信した「配管位置設定命令(5cm)」を受信する。具体的には、排水装置Wを構成する通信制御装置20の通信処理部22が「配管位置設定命令(5cm)」を受信する。また、制御処理部21が通信処理部22から「配管位置設定命令(5cm)」を受けとる。そして、制御処理部21は、「配管位置設定命令(5cm)」を受けとると、記憶部23に記憶している高さ寸法(30cm)を読み出し、読み出した高さ寸法(30cm)と、配管位置設定命令で指定された高さ寸法(5cm)との差分(-25cm(25cm、下降させる))を算出する。
【0109】
そして、制御処理部21は、配管昇降機構50に対して、配管昇降機構50の昇降シャフト52dの下端部に固定されている配管保持部60に保持されているL字配管70の自由端側を、25cmの長さ分・下降させる下降命令信号を送信する。配管昇降機構50は、下降命令信号により動作し、配管保持部60に保持されているL字配管70の自由端側を、現状の位置から「25cm」下降させて停止し、その状態を維持させる。なお、L字配管70の自由端側が下降している最中には、排水管330に接続されているL字配管70の一端部が排水管330の周方向に沿って回転している。
これにより、排水装置Wに設けられたL字配管70の排水入口70aが、水田300の作土面から「5cm」の高さ寸法の位置で保持された状態になり(例えば、
図3に示すような状態になる)、水田300から水が排水される状態になる。
また、制御処理部21は、記憶部23に記憶している高さ寸法を「30cm」から「5cm」に書き換える(上書きする)。
【0110】
このように、本実施形態の水田排水システムでは、ユーザ(農業従事者)がユーザ端末UTを操作して、サーバ100から提供されるWebページに「排水入口70aの希望高さ寸法」を入力すると、サーバ100が、排水装置Wを制御して、排水装置Wが保持するL字配管70の自由端(排水入口70a)の位置を、ユーザが入力した「希望高さ位置」に設定できる。そのため、ユーザは、水田300まで足を運ばなくても水田300の水位調整が行うことができる。
【0111】
また、本実施形態では、排水装置Wが、L字配管70の自由端(排水入口70a)の高さ方向の位置を任意の位置に調整することができるようになっている。そのため、水田300に貯水されている水のうち、所望高さの水位の水を排水することができる。例えば、夏場の昼間に、水温が高い水面近傍の水を排水することたできる。そのため、本実施形態の排水装置Wによれば、排水入口70aの高さ方向の位置を設定することで、水田300に貯水された水の水温を調整することができる。
【0112】
《排水装置Wを制御して水田300を田んぼダムとして用いるケース》
次に、管理者端末GTがサーバ100を介して排水装置Wを制御して水田を田んぼダムとして用いるケースの例を説明する。
ここでは、行政担当者が管理している、複数の水田300に設置された排水装置Wが、いずれも、排水ができる高さ位置で、L字配管70を保持している状態であるものとする(水田300のステータスも通常になっている)。
【0113】
そして、行政担当者が、豪雨や台風が予想されている状況において、田んぼダムとして機能させる権限を有している水田300を田んぼダムとして利用する場合、先ず、管理者端末GTの専用アプリを起動させて、サーバ100にアクセス要求を送信する。
【0114】
サーバ100は、上記のアクセス要求を受け付けると、管理者端末GTに初期画面(ログイン画面)を提示してWebページを提供し、管理者端末GTから「行政担当者ID」の入力を受け付ける。
サーバ100は、管理者端末GTから「行政担当者ID」の入力を受け付けると、排水装置行政情報データベース230を参照し、受け付けた「行政担当者ID」に対応付けられている「排水装置ID」を読み出す。また、サーバ100は、排水装置情報状態データベース21を参照して、読み出した「排水装置ID」が登録されているレコードを抽出する。ここでは、サーバ100により、複数の「排水装置ID」が読み出され、「排水装置ID」が登録されている、複数のレコードが抽出される。
次に、サーバ100は、管理者端末GTに対して、行政担当者が管理する水田300に設置された排水装置Wの「排水停止要求或いは排水停止解除要求」の設定を受け付ける田んぼダム設定Webページ(行政担当者用Webページ)を提供する。
【0115】
次に、管理者端末GTは、サーバ100から送信された田んぼダム設定Webページを受信し、管理者端末GTのディスプレイに、田んぼダム設定Webページを表示する。行政担当者は、管理者端末GTを操作して、田んぼダム設定Webページ上で、「排水停止要求」を入力する。これにより、管理者端末GTからサーバ100に、「排水停止要求」が送信される。
【0116】
サーバ100は、管理者端末GTからの「排水停止要求」の入力を受け付けると、水田300からの排水が停止される「排水入口70aの高さ寸法(予め設定されている寸法(例えば、30cm))」を指定した「配管位置設定命令」を生成する。
また、サーバ100は、上記の抽出したレコードに登録されている排水装置IDにより特定される排水装置W(複数の排水装置W)に対して、中継器50を介して、排水が停止される「排水入口70aの高さ寸法(予め設定されている寸法(例えば、30cm))」を指定した「配管位置設定命令」を送信する。
実際の運用では、行政担当者が管理している、所定エリアにある、複数の排水装置Wに対して、排水が停止される「排水入口70aの高さ寸法(予め設定されている寸法(例えば、30cm))」を指定した「配管位置設定命令」が一斉送信される。
なお、サーバ100は、排水装置状態データベース210から抽出した各レコードについて、フィールド210cの「排水入口位置」を、予め設定されている寸法(例えば、30cm)に更新し、フィールド210dの「ステータス」を「田んぼダム」に更新した上で、排水装置状態データベース210に、当該レコードを格納する(上書きする)。
【0117】
次に、排水装置Wが、中継器50を介して、サーバ100が送信した「配管位置設定命令(30cm)」を受信する。
ここでは、説明を簡略化するために、複数の排水装置Wのうちの1台の排水装置Wの動作について説明する。
なお、1台の排水装置Wは、L字配管70の一端部の排水入口70aの高さ位置が「10cm」に設定されており、水田300が「田んぼダム」として利用していない「通常の状態」であるものとする。すなわち、水田300は、通常に稲作をしている状態で、排水装置Wからの排水をしているものとする。
また、この状態であるため、水田300に設置された排水装置Wを構成する通信制御装置20の記憶部23には、L字配管70の一端部の排水入口70aの高さ位置として「10cm」が記憶されている。
【0118】
具体的には、排水装置Wを構成する通信制御装置20の通信処理部22が「排水が停止される「排水入口の高さ寸法(予め設定されている寸法(例えば、30cm))」を指定した「配管位置設定命令」を受信する。また、制御処理部21が通信処理部22から「配管位置設定命令(30cm)」を受け付ける。そして、制御処理部21は、「配管位置設定命令(30cm)」を受け付けると、記憶部23に記憶している高さ寸法(10cm)を読み出し、読み出した高さ寸法(10cm)と、配管位置設定命令で指定された高さ寸法(30cm)との差分(+20cm(20cm、上昇させる))を算出する。
そして、制御処理部21は、配管昇降機構50に対して、配管昇降機構50の昇降シャフト52dの下端部に固定されている配管保持部60に保持されているL字配管70の自由端(排水入口70a)を、20cmの寸法分・上昇させる上昇命令信号を送信する。配管昇降機構50は、上昇命令信号を受信すると、上昇命令信号にしたがい、配管保持部60に保持されているL字配管70の自由端(排水入口70a)を、現状の位置から「20cm」上昇させて停止し、その状態が維持させる。なお、L字配管70の自由端側が上昇している最中には、排水管330に接続されているL字配管70の一端部が排水管330の周方向に沿って回転している。
これにより、排水装置Wに設けられたL字配管70の排水入口70aが、水田300の作土面から「30cm」の高さ寸法の位置で保持された状態になり(例えば、
図2に示す状態になり)、排水装置Wからの排水が停止する。
また、制御処理部21は、記憶部23に記憶している高さ寸法を「10cm」から「30cm」に書き換える(上書きする)。
【0119】
また、豪雨や台風がおさまり、上記の設定した田んぼダムの機能を解除する場合、行政担当者は、管理者端末GTの専用アプリを起動させて、サーバ100にアクセス要求を送信する。
サーバ100は、上記のアクセス要求を受け付けると、管理者端末GTに初期画面(ログイン画面)を提示してWebページを提供し、管理者端末GTから「行政担当者ID」の入力を受け付ける。
サーバ100は、管理者端末GTから「行政担当者ID」の入力を受け付けると、排水装置行政情報データベース230を参照し、受け付けたアクセス要求に含まれている「行政担当者ID」に対応付けられている「排水装置ID」を読み出す。また、サーバ100は、排水装置情報状態データベース21を参照して、読み出した「排水装置ID」が登録されているレコードを抽出する。
また、サーバ100は、上記の管理者端末GTに対して、田んぼダム設定Webページを提供する。
【0120】
また、行政担当者は、管理者端末GTを操作して、田んぼダム設定Webページ上で、「排水停止解除要求」を入力する。これにより、管理者端末GTからサーバ100に、「排水停止解除要求」が送信される。
【0121】
サーバ100は、管理者端末GTからの「排水停止解除要求」の入力を受け付けると、水田300からの排水停止が解除される「排水入口の高さ寸法(予め設定されている寸法(例えば、5cm))」を指定した「配管位置設定命令」を生成する。
また、サーバ100は、上記の抽出したレコードに登録されている排水装置IDにより特定される排水装置W(複数の排水装置W)に対して、中継器50を介して、排水停止が解除される「排水入口の高さ寸法(予め設定されている寸法(例えば、5cm))」を指定した「配管位置設定命令」を送信する。
実際の運用では、行政担当者が管理している、所定エリアにある、複数の排水装置Wに対して、排水停止が解除される「排水入口の高さ寸法(予め設定されている寸法(例えば、5cm))」を指定した「配管位置設定命令」が一斉送信される。
なお、サーバ100は、排水装置状態データベース210から抽出した各レコードについて、フィールド210cの「排水入口位置」を、予め設定されている寸法(例えば、5cm)に更新し、フィールド210dの「ステータス」を「通常」に更新した上で、排水装置状態データベース210に、当該レコードを格納する(上書きする)。
【0122】
次に、排水装置Wは、中継器50を介して、サーバ100が送信した「配管位置設定命令(5cm)」を受信する。
ここでは、説明を簡略化するために、複数の排水装置Wのうちの1台の排水装置Wの動作について説明する。
なお、1台の排水装置Wは、L字配管70の自由端の排水入口70aの高さ位置が「30cm」に設定されている。そして、排水装置Wを構成する通信制御装置20の記憶部23には、L字配管70の一端部の排水入口70aの高さ位置として「30cm」が記憶されている。
【0123】
具体的には、排水装置Wを構成する通信制御装置20の通信処理部22が「排水停止が解除される「排水入口70aの高さ寸法(予め設定されている寸法(例えば、5cm))」を指定した「配管位置設定命令」を受信する。また、制御処理部21が通信処理部22から「配管位置設定命令(5cm)」を受け付ける。そして、制御処理部21は、「配管位置設定命令(5cm)」を受け付けると、記憶部23に記憶している高さ寸法(30cm)を読み出し、読み出した高さ寸法(30cm)と、配管位置設定命令で指定された高さ寸法(5cm)との差分(-25cm(25cm、下降させる))を算出する。
そして、制御処理部21は、配管昇降機構50に対して、配管昇降機構50の昇降シャフト52dの下端部に固定されている配管保持部60に保持されているL字配管70の一端部側を、25cmの寸法分・下降させる下降命令信号を送信する。
配管昇降機構50は、下降命令信号を受信すると、下降命令信号にしたがい、配管保持部60に保持されているL字配管70の一端部側を、現状の位置から「25cm」下降させて停止し、その状態を維持させる。すなわち、排水装置Wに設けられたL字配管70の排水入口70aが、水田300の作土面から「5cm」の高さ寸法の位置で保持された状態になり(例えば、
図3に示す状態になり)、排水装置Wからの排水停止が解除されて、水田から排水がなされている状態になる。
また、制御処理部21は、記憶部23に記憶している高さ寸法を「30cm」から「5cm」に書き換える(上書きする)。
【0124】
このように、このように、本実施形態では、豪雨や台風が発生した場合に、行政担当者が管理者端末GTを操作し、サーバ装置100が提供するWebサイト上で、水田300に設置した排水装置Wの「排水停止要求」を入力すれば、水田300に貯水された水を排水しないように、排水装置Wが保持するL字配管70の自由端(排水入口70a)の位置が設定される(
図2参照)。そのため、行政担当者が、豪雨や台風が発生した場合に、順番に、複数の水田300に出向くことなく、管理者端末GTを操作することで、複数の水田300からの排水を一斉に停止させ、担当するエリアの複数の水田300を「田んぼダム」として機能させ、水害の発生する可能性を軽減させることができる。
また、行政担当者は、豪雨や台風がおさまれば、管理者端末GTを操作し、水田に貯水された水を排水できる位置に、排水装置Wが保持するL字配管70の自由端(排水入口70a)を設定するだけで、簡単に、複数の水田300で構成される「田んぼダム」としての機能を解除し、排水を行う、通常の水田300に戻すことができる。
【0125】
また、本実施形態によれば、水田300を「田んぼダム」として機能させる場合においても、排水装置Wが保持するL字配管70の排水入口70aの位置を、水田300の畦320が決壊しない高さを想定した位置に設定することもでき、畦320が決壊する可能性を軽減できる(畦320が決壊する高さになる前に、排水装置Wにより水田300の水を排水させることができる)
【0126】
以上、説明したように、本実施形態によれば、水田300の管理者(農業従事者、行政担当者)に作業負担をかけることなく、水田300の状態を制御することができる水田排水システムを提供することができる。
【0127】
また、本実施形態の水田排水システムは、豪雨や台風等が発生していない通常のときには、農業従事者が、水田300まで出向くことなく、ユーザ端末UTからサーバ100にアクセスして、ウェブページ上で操作をするだけで、水田300に設置した排水装置Wを排水入口70aの高さを設定することで、水田300に貯水されている水の状態(水位や水温)を調整することができる。
また、本実施形態によれば、豪雨や台風等が発生したときには、通常時に農業従事者が利用している水田排水システムを行政担当者が利用することで、行政担当者が、例えば、広域のエリアの複数の水田300の排水を一斉に停止することができる。すなわち、行政担当者の手間をかけることなく、広域なエリアにある、複数の水田300を「田んぼダム」として機能させることができる。
【0128】
《本発明を棚田において用いる変形例》
上述した実施形態では、水田300の水を排水路DCに排水するための配水管330に、排水装置WのL字配管の一端部を接続して、排水管330を介して水田300の水の排水を制御しているが、この用途に限定されるものではない。
例えば、棚田のような、隣接する水田300・300同士の高さが異なる段差型の水田群において、高さが異なる、隣接する水田300・300同士を排水管330で接続し、高い位置にある水田300から、低い位置にある水田300に、排水管330を介して水が流れるようにしておく。そして、高い位置にある水田300の作土面に、本発明の排水装置Wを設置して、排水管330を流れる水の流水・止水を制御する。
【0129】
具体的には、変形例の排水装置Wは、隣接する水田300・300同士のなかの高い位置にある水田300の作土面に設置される肢部を有する本体部10と、本体部10に収容されている通信制御装置20と、隣接する水田300・300同士のなかの高い位置にある水田300側の排水管330に、その一端部が回転自在に接続されたL字配管70と、本体部10に取付けらており、L字配管70の他端部側を上下方向に移動自在に保持する配管昇降機構50とを備えている。また、L字配管70は、他端部が自由端になっていると共に、自由端が開放された排水入口70aになっている。そして、通信制御装置30は、サーバ100から送信される、排水入口の高さ位置が指定された配管位置設定命令を受信し、受信した配管位置設定命令に応じて前記配管昇降機構の動作を制御するようになっている。
【0130】
この変形例の構成によれば、棚田のような段差型の水田群において、台風や豪雨等の際に、サーバ100を介して、排水装置Wの動作を制御することで、高い位置にある水田300の作土面に設置した排水装置Wにより、高い位置の水田300から低い位置に水田300への水の流れを停止させ、台風や豪雨等の際に水が貯まりやすい低い位置の水田300で水が氾濫することを防止できる。また、水が貯まりにくい、高い位置の水田300について、「田んぼダム」として利用することができる。
なお、本変形例においても、上述した実施形態と同様、水田300の管理者(農業従事者、行政担当者)に作業負担をかけることなく、水田300の状態を制御することができる水田排水システムを提供することができる。
【0131】
なお、本発明の水田排水システムは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、排水装置Wに設けられた通信制御装置20が中継器50を介して、インターネット等のネットワークNW経由で、サーバ100と通信するように構成されているが、特にこれに限定されるものではない。排水装置Wに設けられた通信制御装置20が、中継器50を通さずに、直接、インターネット等のネットワークNW経由で、サーバ100と通信するように構成されていても良い。
【0132】
また、上述した実施形態では、行政担当者だけが、水田300を「田んぼダム」として機能させることができるようにしているが、これは一例に過ぎない。農業従事者のユーザ端末UTから水田300を「田んぼダム」をとして機能させることができるようにしても良い。
【0133】
また、上述した実施形態では、行政担当者が、サーバ100に、排水装置Wに対する排水停止要求或いは排水停止解除要求の設定することで、サーバ100が、「排水停止要求或いは排水停止解除要求」応じたL字配管70の排水入口70aの高さ寸法を指定した配管位置設定命令を生成し、排水装置Wに、生成した配管位置設定命令を送信して、排水装置Wの動作を制御しているが、特にこれに限定されるものではない。サーバ100が、行政担当者の管理端末に対しても、農業従事者のユーザ端末UTに対して提供するものと同じ内容のWebページを提供し、行政担当者から、L字配管70の排水入口70aの希望高さを受け付けるように構成されていても良い。
【0134】
また、上述した実施形態では、水田300に貯水される水の水位が30cm未満であり、L字配管70の排水入口70aの高さ寸法が30cmに設定されると、L字配管70の管内に水田300の水が流入せずに、排水を停止できる場合について説明したが、特にこれに限定されるものではない。排水装置Wが排水を停止させるための、L字配管70の排水入口70aの高さ寸法については、適宜設定されるものである。
【0135】
また、排水装置W毎に、「排水装置Wが排水を停止させるための、L字配管70の排水入口70aの高さ寸法」が設定されていても良い。この場合、例えば、サーバ100の排水装置状態データベース210のレコードに、「排水装置Wが排水を停止させるための、L字配管70の排水入口70aの高さ寸法」が登録されるフィールドを追加して設けておく。
そして、サーバ100は、管理者端末GTからの「排水停止要求」の入力を受け付けると、排水装置状態データベース210を参照して、排水装置W毎に、水田300からの排水が停止される「排水入口70aの高さ寸法」を指定した「配管位置設定命令」を生成する。
【0136】
また、排水装置WのL字配管70の排水入口70aが形成されている他端部に、塩ビ管等の直管を取り付けるようにすることで、上述した実施形態と比べて、排水入口70aを高い位置に配置できるようにすることができる。
【0137】
300…水田
320…畦
330…排水管
DC…排水路
NW…ネットワーク
S…水位センサ
50…中継器
W…排水装置
10…本体部
1…肢部(本体部)
1a…垂直脚部
1b…横棒部
1c…垂直縦棒部
2…筐体部(本体部)
P…杭
20…通信制御装置
21…制御処理部
22…通信処理部
23…記憶部
AT…アンテナ
30…電源部
50…配管昇降機構
51…モータ(回転機構)
51a…回転軸
52…往復移動機構
52a…カップリング部材
52b…回転シャフト
52c…ナット
52d…昇降シャフト
60…配管保持部
60a…取手部
60b…バンド部
70…L字配管
70a…排水入口
70b…排水管接続部
100…サーバ装置
110…排水装置制御部
120…水位情報取得部
130…記憶部
210…排水装置状態データベース
220…排水装置ユーザ情報データベース
230…排水装置行政情報データベース
240…水位センサデータベース
GT…管理者端末
UT…ユーザ端末