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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081256
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ポリイソシアネート組成物及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20220524BHJP
   C08G 18/74 20060101ALI20220524BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20220524BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20220524BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C08G18/40 018
C08G18/74
C08G18/73
C08G18/42 069
C08G18/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192690
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】武井 麗
(72)【発明者】
【氏名】東 昌嗣
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034FB01
4J034FC02
4J034FD01
4J034FD02
4J034GA33
4J034GA36
4J034GA48
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC67
4J034JA42
4J034QB14
4J034RA08
(57)【要約】
【課題】-10℃程度の低温環境下での主剤への相溶性が良好であり、塗膜としたときの-10℃程度の低温及び23℃程度の常温での柔軟性に優れるポリイソシアネート組成物を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)と、から誘導され、前記ポリエーテルポリオール(B)100質量部に対して、20質量部以上のポリプロピレングリコールを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)と、から誘導され、
前記ポリエーテルポリオール(B)100質量部に対して、20質量部以上のポリプロピレングリコールを含む、ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ポリカプロラクトンポリオール(A)の数平均分子量が500以上1500以下であり、且つ、
前記ポリエーテルポリオール(B)の数平均分子量が1000以上7000以下である、請求項1に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記ポリエーテルポリオール(B)において、ポリプロピレングリコールに対するポリテトラメチレンエーテルグリコールの質量比が0/100以上60/40以下である、請求項2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
前記ポリカプロラクトンポリオール(A)及び前記ポリエーテルポリオール(B)の水酸基に対する前記ジイソシアネートのイソシアネート基のモル比が2以上10以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテルポリオール(B)に対する前記ポリカプロラクトンポリオール(A)の質量比が10/90以上90/10以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物と、ポリオールと、を含む、樹脂組成物。
【請求項7】
粘着剤組成物である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、硬化型ポリウレタンに関して、従来の硬化剤では解決できない塗膜物性を達成させるべく、硬化剤の高品質化や高性能化が市場ニーズとして増えている。特に、硬化により最終物性を発現する塗膜、粘着剤、接着剤やシーリング等においては、硬化剤に由来する性能が大きく寄与するため更なる開発が求められている。特に、市場の流れとして、硬化後組成物の高柔軟性が求められる傾向がある。
【0003】
特許文献1及び2には、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールで変性されたポリイソシアネート組成物が開示されている。該組成物を配合して形成された塗膜では、伸展性や耐屈曲性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-28518号公報
【特許文献2】特開平2-1718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載のポリイソシアネート組成物よりも、過酷な環境下、具体的には、-10℃程度の低温での柔軟性により優れる塗膜が得られるポリイソシアネート組成物が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、-10℃程度の低温環境下での主剤への相溶性が良好であり、塗膜としたときの-10℃程度の低温及び23℃程度の常温での柔軟性に優れるポリイソシアネート組成物を提供する。また、前記ポリイソシアネート組成物を用いた樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)と、から誘導され、
前記ポリエーテルポリオール(B)100質量部に対して、20質量部以上のポリプロピレングリコールを含む、ポリイソシアネート組成物。
(2) 前記ポリカプロラクトンポリオール(A)の数平均分子量が500以上1500以下であり、且つ、
前記ポリエーテルポリオール(B)の数平均分子量が1000以上7000以下である、(1)に記載のポリイソシアネート組成物。
(3)ポリエーテルポリオール(B)において、前記ポリプロピレングリコールに対するポリテトラメチレンエーテルグリコールの質量比が0/100以上60/40以下である、(2)に記載のポリイソシアネート組成物。
(4) 前記ポリカプロラクトンポリオール(A)及び前記ポリエーテルポリオール(B)の水酸基に対する前記ジイソシアネートのイソシアネート基のモル比が2以上10以下である、(1)~(3)のいずれか一つに記載のポリイソシアネート組成物。
(5) 前記ポリエーテルポリオール(B)に対する前記ポリカプロラクトンポリオール(A)の質量比が10/90以上90/10以下である、(1)~(4)のいずれか一つに記載のポリイソシアネート組成物。
(6) (1)~(5)のいずれか一つに記載のポリイソシアネート組成物と、ポリオールと、を含む、樹脂組成物。
(7) 粘着剤組成物である、(6)に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
上記態様のポリイソシアネート組成物によれば、-10℃程度の低温環境下での主剤への相溶性が良好であり、塗膜としたときの-10℃程度の低温及び23℃程度の常温での柔軟性に優れるポリイソシアネート組成物を提供することができる。上記態様の樹脂組成物は、前記ポリイソシアネート組成物を含み、塗膜としたときの-10℃程度の低温及び23℃程度の常温での柔軟性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0010】
なお、本明細書において、「ポリオール」とは、一分子中に2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
また、本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、2つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物が複数結合した反応物を意味する。
また、本明細書において、特に断りがない限り、「(メタ)アクリル」は、メタクリルとアクリルとを包含し、「(メタ)アクリレート」はメタクリレートとアクリレートとを包含するものとする。
【0011】
≪ポリイソシアネート組成物≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、ジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)と、から誘導されたものである。すなわち、本実施形態のポリイソシアネート組成物は、ジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)との反応物であり、ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)で変性されたポリイソシアネートを含むものである。ジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、ポリエーテルポリオール(B)100質量部に対して、20質量部以上のポリプロピレングリコールを含む。
【0012】
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、上記のとおり、2種類の異なるポリオールを用い、且つ、ポリエーテルポリオール(B)としてポリプロピレングリコールを含むことで、従来よりも高柔軟性を示し、具体的には、-10℃程度の低温環境下での主剤への相溶性が良好であり、-10℃程度の低温及び23℃程度の常温での柔軟性に優れる塗膜が得られる。
【0013】
次いで、本実施形態のポリイソシアネート組成物の各構成成分について以下に詳細を説明する。
【0014】
<ポリイソシアネート>
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、一分子中にジイソシアネート、ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)に由来する構成単位を全て有するポリイソシアネートであってもよく、一分子中にジイソシアネート、ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)からなる群より選ばれる少なくとも1種以上に由来する構成単位を有するポリイソシアネートの混合物であってもよい。
【0015】
ポリイソシアネートは、アロファネート構造、ウレトジオン構造、イミノオキサジアジンジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレア構造、ウレタン構造、及びビウレット構造からなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の構造を有することができる。中でも、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、ウレア構造、及びイソシアヌレート基からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造を有することが好ましい。
【0016】
[ジイソシアネート]
ジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0017】
脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、エチル(2,6-ジイソシアナト)ヘキサノエート、1,6-ジイソシアナトヘキサン(以下、「HDI」と略記する場合がある)、1,9-ジイソシアナトノナン、1,12-ジイソシアナトドデカン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチル-1、6-ジイソシアナトヘキサン等が挙げられる。これら脂肪族ジイソシアネートを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
脂環族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「水添XDI」と略記する場合がある)、1,3-又は1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル1-イソシアナト-3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「IPDI」と略記する場合がある)、4-4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン(以下、「水添MDI」と略記する場合がある)、2,5-又は2,6-ジイソシアナトメチルノルボルナン等が挙げられる。これら脂環族ジイソシアネートを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0019】
これら脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートは、いずれを単独で使用してもよく、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
中でも、ジイソシアネートとしては、HDI、IPDI、水添XDI、又は水添MDIが好ましく、HDI又はIPDIがより好ましく、HDIがさらに好ましい。
【0021】
ポリイソシアネートの製造には、上述したジイソシアネートに加えて、以下に示すようなイソシアネートモノマーを更に用いてもよい。
(1)ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート。
(2)4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある)、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある)、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある)等のトリイソシアネート。
【0022】
<ポリカプロラクトンポリオール(A)>
ポリカプロラクトンポリオールは、特に限定されないが、具体的には、ε-カプロラクトンを2価以上、好ましくは3価のアルコールを開始剤として、触媒の存在下に開環重合して得ることができる。このような開始剤としては、特に限定されないが、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルブリコール等の2価アルコール;トリメチロールプロパン、グリセリン等の3価アルコール等が用いられる。低粘度のポリイソシアネートを得るという面では、分岐を有するポリカプロラクトンポリオールが好ましい。そのようなポリカプロラクトンポリオールは、3価以上のアルコールを開始剤として用いることで得ることができる。
【0023】
触媒としては、特に限定されないが、具体的には、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等の有機チタン系化合物;オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、塩化第一スズ、臭化第一スズ等のスズ化合物が用いられる。
【0024】
ε-カプロラクトンの開環重合は、特に限定されないが、具体的には、窒素ガス雰囲気下、所望の分子量になるようにε-カプロラクトンと上記開始剤とのモル比を設定し、さらに、ε-カプロラクトンに対して触媒を0.1質量ppm以上100質量ppm以下添加し、150℃以上200℃以下の温度で4時間以上10時間以下反応させることによって行なうことができる。
【0025】
ポリイソシアネートは、ポリカプロラクトンポリオール(A)の水酸基と、ジイソシアネートのイソシアネート基との反応により、ウレタン基が形成されている。
【0026】
ポリカプロラクトンポリオール(A)の平均水酸基官能基数は2.0以上8.0以下が好ましく、2以上6以下がより好ましく、2以上5以下がさらに好ましく、3が特に好ましい。なお、ここでいうポリカプロラクトンポリオール(A)の平均水酸基官能基数はポリカプロラクトンポリオール(A)1分子内に存在する水酸基の数である。
【0027】
ポリカプロラクトンポリオール(A)の数平均分子量としては、500以上1500以下が好ましく、600以上1400以下がより好ましく、700以上1300以下がさらに好ましく、850以上1250以下が特に好ましい。
ポリカプロラクトンポリオール(A)の数平均分子量が上記範囲内であることで、得られる塗膜の低温及び常温での柔軟性により優れる。ポリカプロラクトンポリオール(A)の数平均分子量Mnは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
【0028】
市販されているポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ダイセル社製の商品名「プラクセル305」(数平均分子量550)、「プラクセル308」(数平均分子量850)、「プラクセル309」(数平均分子量900)、「プラクセル312」(数平均分子量1250)、「プラクセル205」(数平均分子量530)、「プラクセル210」(数平均分子量1000);DIC(株)製の商品名「ポリライトOD-X-2735」(数平均分子量500)、「ポリライトOD-X-2586」(数平均分子量850)、「ポリライトOD-X-2588」(数平均分子量1250)等が挙げられる。
【0029】
<ポリエーテルポリオール(B)>
ポリエーテルポリオール(B)は、ポリプロピレングリコール(PPG、ポリオキシプロピレンポリオールともいう)を含む。
本実施形態のポリイソシアネート組成物におけるポリエーテルポリオール(B)100質量部に対する、PPGの含有量は、20質量部以上であり、40質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、55質量部以上がさらに好ましく、60質量部が特に好ましく、100質量部が最も好ましい。PPGの含有量が上記下限値以上であることで、低温環境下での主剤への相溶性をより良好なものとすることができる。
【0030】
ポリプロピレングリコールとしては、特に限定されないが、具体的には、ポリオキシプロピレンジオール若しくはトリオール;ポリオキシプロピレンジオール若しくはトリオールの末端にエチレンオキサイドを付加重合させた所謂プルロニック(登録商標)タイプのポリオキシプロピレンジオール若しくはトリオール;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリマージオール若しくはトリオール等が挙げられる。この中でも、ジイソシアネートとの反応性が優れることから、前記プルロニック(登録商標)タイプのポリオキシプロピレンジオール若しくはトリオールが好ましい。
【0031】
ポリプロピレングリコールの製造方法としては、開始剤と触媒に、プロピレンオキサイド、必要に応じてエチレンオキサイド等を単独又は混合物を添加して製造する方法が挙げられる。開始剤としては、特に限定されないが、具体的には、多価アルコール、多価フェノール、ポリアミン、アルカノールアミン、又はこれらの混合物が挙げられ、より具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;エチレンジアミン等のジアミン;及びこれらの混合物が挙げられる。また、触媒としては、特に限定されないが、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物;アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒;金属ポルフィリン、複合金属シアン化合物錯体、金属と3座配位以上のキレート化剤との錯体、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等の複合金属錯体が挙げられる。その他、多価アルコールを脱水縮合してポリプロピレングリコールを得る方法等が挙げられる。
【0032】
市販されているポリプロピレングリコールとしては、旭硝子株式会社製の商品名「エクセノール510」(末端EO付加タイプのポリオキシプロピレンジオール、数平均分子量4000)、「エクセノール840」(末端EO付加タイプのポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量6500)、「エクセノール1020」(末端EO付加タイプのポリオキシプロピレンジオール、数平均分子量1000)、「エクセノール2020」(末端EO付加タイプのポリオキシプロピレンジオール、数平均分子量2000)等が挙げられる。
【0033】
ポリエーテルポリオール(B)は、ポリプロピレングリコールに加えて、その他のポリエーテルポリオールを含むことができる。
その他のポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、又は、強塩基性触媒を使用して、多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール、ポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール、上記ポリエーテルを媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオールが挙げられる。
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、及び、グリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
【0034】
中でも、その他のポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG、ポリオキシテトラメチレンポリオールともいう)が好ましい。
【0035】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールは触媒を用いたテトラヒドロフランのカチオン重合等によって製造される。使用する触媒としては、特に限定されないが、具体的には、無水酢酸-過塩素酸、フルオロスルホン酸、又は発煙硫酸等が用いられる。例えば、ポリオキシテトレメチレングリコールの製造は、特に限定されないが、具体的には、通常は原料のテトラヒドロフランに対しておおよそ1質量%以上30質量%以下のフルオロスルホン酸を添加し、5℃以上65℃以下の温度で数分間以上数十時間以下反応させる条件下で行うことができる。また、上述したポリプロピレングリコールの製造法と同様に多価アルコール等を開始剤とし、強塩基性触媒等を用い、ブチレンオキサイド付加することで得ることができる。さらに、生成するポリテトラメチレンエーテルグリコールの分子量は重合温度、重合時間、触媒使用量等を変えることで調節される。
【0036】
市販されているポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「PTMG1000」(数平均分子量1000)、「PTMG2000」(数平均分子量2000)、「PTMG3000」(数平均分子量2900)、「PTMG4000」(数平均分子量4000)等が挙げられる。
【0037】
ポリエーテルポリオール(B)において、ポリプロピレングリコールに対するポリテトラメチレンエーテルグリコールの質量比(PTMG/PPGの質量比)は0/100以上80/20以下が好ましく、0/100以上60/40以下がより好ましく、0/100以上50/50以下がさらに好ましく、0/100以上45/55以下が特に好ましい。
PTMG/PPGの質量比が上記範囲内であることで、低温環境下での主剤への相溶性をより良好なものとすることができる。
【0038】
ポリエーテルポリオール(B)の数平均分子量としては、1000以上7000以下であることが好ましく、2000以上7000以下であることがより好ましく、3000以上6700以下であることがさらに好ましく、4000以上6500以下であることが特に好ましい。
ポリエーテルポリオール(B)の数平均分子量が上記範囲内であることで、得られる塗膜の低温及び常温での柔軟性により優れる。ポリエーテルポリオール(B)の数平均分子量Mnは、例えば、GPC測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。また、ポリエーテルポリオール(B)を2種以上混合して用いる場合には、その混合物の数平均分子量を算出する。
【0039】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、ポリエーテルポリオール(B)に対するポリカプロラクトンポリオール(A)の質量比((A)/(B)の質量比)が10/90以上90/10以下であることが好ましく、15/85以上85/15以下がより好ましく、18/82以上83/17以下がさらに好ましい。
(A)/(B)の質量比が上記下限値以上であることで、低温環境下での主剤への相溶性をより良好なものとすることができる。一方、上記上限値以下であることで、低温及び常温での柔軟性により優れる塗膜が得られる。
(A)/(B)の質量比は、例えば、各ポリオールの配合量から算出することができる。
【0040】
<ポリイソシアネート組成物の製造方法>
ポリイソシアネートは、上記ジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)と、ポリエーテルポリオール(B)とを反応させて得られる。以下、ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)を併せて、ポリオールと称する場合がある。
【0041】
ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)は、それぞれ単独又は混合物として用いることができる。混合物として用いる場合には、ジイソシアネートと反応させる前に混合してもよいし、それぞれのポリオールを単独でジイソシアネートと反応させてポリイソシアネートとした後で混合することもできる。
すなわち、ポリイソシアネート組成物の製造方法としては、例えば、ジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)と、ポリエーテルポリオール(B)とを同時に反応させてポリイソシアネート組成物を得る方法;ジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)と反応させたものと、ジイソシアネートと、ポリエーテルポリオール(B)とを反応させたものとを混合して、ポリイソシアネート組成物を得る方法;ジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)又はポリエーテルポリオール(B)とを反応させた後、残りのポリオールをさらに反応させてポリイソシアネート組成物を得る方法等が挙げられる。
【0042】
ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)の配合量は、ポリエーテルポリオール(B)に対するポリカプロラクトンポリオール(A)の質量比が上記範囲内となるように配合することが好ましい。
【0043】
ポリオールとジイソシアネートとの反応は下記のように行われる。反応温度は、通常、室温(23℃程度)以上200℃以下であり、80℃以上120℃以下が好ましい。反応温度が上記下限値以上であれば、反応時間がより短くなり、一方、上記上限値以下であれば、望ましくない副反応によるポリイソシアネートの粘度上昇をより回避でき、生成するポリイソシアネートの着色もより回避できる。
【0044】
反応は、無溶媒で行なってもよく、イソシアネート基に不活性な任意の溶媒を用いて行なってもよい。また、必要であれば、イソシアネート基と水酸基の反応を促進するため、公知の触媒を用いてもよい。
【0045】
反応に際して、ポリカプロラクトンポリオール(A)及びポリエーテルポリオール(B)の水酸基に対するジイソシアネートのイソシアネート基のモル比(水酸基/イソシアネート基のモル比)が2以上10以下であることが好ましく、3以上9以下がより好ましく、4以上8以下がさらに好ましい。水酸基/イソシアネート基のモル比が上記下限値以上であることで、ジイソシアネートとポリオールとの間の逐次付加反応による、ポリイソシアネートの粘度上昇をより回避できる。一方で、上記上限値以下であることで、生産性がより良好となる。
【0046】
反応終了時には、反応混合物中の未反応のジイソシアネートを、例えば、薄膜蒸留装置、溶剤抽出等の公知の方法により回収する。未反応のジイソシアネートの残留量が少なければ、熱硬化時にジイソシアネートに起因する臭気、毒性、又は刺激性等がより回避できる。
【0047】
<ポリイソシアネート組成物の物性>
本実施形態のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基含有率(NCO基含有率)は、実質的に溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態で、ポリイソシアネート組成物の総質量に対して3質量%以上8質量%以下であることが好ましく、3.1質量%以上7.5質量%以下であることがより好ましく、3.3質量%以上7.3質量%以下であることがさらに好ましい。
NCO基含有率は、例えば、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基を過剰のアミン(ジブチルアミン等)と反応させ、残ったアミンを塩酸等の酸で逆滴定することによって求めることができる。
【0048】
≪樹脂組成物≫
本実施形態の樹脂組成物は、硬化剤成分として上述したポリイソシアネート組成物と、主剤成分としてポリオールと、を含む。
【0049】
本実施形態の樹脂組成物は、上記ポリイソシアネート組成物を硬化剤成分として含むことで、-10℃程度の低温及び23℃程度の常温での柔軟性に優れる塗膜が得られる。
【0050】
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、建築用塗料、自動車用塗料、自動車補修用塗料、プラスチック用塗料、粘着剤、接着剤、建材、家庭用水系塗料、その他コーティング剤、シーリング剤、インキ、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック原料、繊維処理剤等に使用することができる。
中でも、本実施形態の樹脂組成物は、特に塗膜としたときの低温及び常温での柔軟性が良好であることから、粘着剤組成物として好適に用いられる。
【0051】
次いで、本実施形態の樹脂組成物に含まれる各構成成分について以下に詳細を説明する。
【0052】
<ポリオール>
ポリオールとして具体的には、例えば、脂肪族炭化水素ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、エポキシ樹脂、含フッ素ポリオール、アクリルポリオール等が挙げられる。
中でも、ポリオールとしては、アクリルポリオールであることが好ましい。
【0053】
[脂肪族炭化水素ポリオール]
前記脂肪族炭化水素ポリオールとしては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエンやその水素添加物等が挙げられる。
【0054】
[ポリエーテルポリオール]
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、以下(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得られるものが挙げられる。
(1)多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール又はポリテトラメチレンエーテルグリコール。
(2)アルキレンオキサイドに多官能化合物を反応させて得られるポリエーテルポリオール。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオールを媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリンやプロピレングリコール等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
前記多官能化合物としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
【0055】
[ポリエステルポリオール]
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、以下の(1)又は(2)のいずれかのポリエステルポリオールが挙げられる。
(1)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール樹脂。
(2)ε-カプロラクトンを多価アルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0056】
[エポキシ樹脂]
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、β-メチルエピクロ型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ型脂肪族不飽和化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、エステル型多価カルボン酸、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、ハロゲン化型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、及びこれらエポキシ樹脂をアミノ化合物、ポリアミド化合物等で変性した樹脂等が挙げられる。
【0057】
[含フッ素ポリオール]
前記含フッ素ポリオールとしては、例えば、参考文献1(特開昭57-34107号公報)、参考文献2(特開昭61-275311号公報)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0058】
[アクリルポリオール]
前記アクリルポリオールは、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーを重合させる、又は、一分子中に1個以上の活性水素を持つ重合性モノマーと、必要に応じて、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得られる。
【0059】
前記一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーとしては、例えば、以下(i)~(iii)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル。
(iii)グリセリンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル。
【0060】
前記重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、以下の(i)~(v)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル。
(ii)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル。
(iii)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
(iv)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド。
(v)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等。
【0061】
また、参考文献3(特開平1-261409号公報)及び参考文献4(特開平3-006273号公報)等で開示されている重合性紫外線安定性単量体を共重合して得られるアクリルポリオール等が挙げられる。
【0062】
前記重合性紫外線安定性単量体として具体的には、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0063】
例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得ることができる。
【0064】
水系ベースアクリルポリオールを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性又は水分散性を付与することができる。
【0065】
[イソシアネート基/水酸基]
本実施形態の樹脂組成物に含まれるポリオールの水酸基に対するポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基のモル比)は、必要とする樹脂膜の物性により決定されるが、通常、0.01以上22.5以下である。
【0066】
<その他成分>
本実施形態の樹脂組成物は、その他添加剤を更に含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば、ポリオールと反応しうるポリイソシアネート組成物以外の硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。
【0067】
前記硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシ基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
【0068】
前記硬化触媒としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン系化合物の金属塩、活性メチレン系化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。
前記ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0069】
前記溶剤としては、例えば、1-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso-プロパノール、1-プロパノール、iso-ブタノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら溶剤を、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0070】
また、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤及び造膜助剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0071】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、従来公知の方法により製造できる。
本実施形態の樹脂組成物が粘着剤組成物である場合に、例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、コーター等により基材フィルムに塗工した後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。
【0072】
本実施形態の樹脂組成物は、軽量化、柔軟化、密着性の向上効果を図るため、発泡させてもよい。発泡方法としては、化学的方法、物理的方法、熱膨張型のマイクロバルーンの利用等がある。各々、無機系発泡剤若しくは有機系発泡剤等の化学的発泡剤又は物理的発泡剤等の添加、或いは熱膨張型のマイクロバルーンの添加等により材料内部に気泡を分布させることができる。
【0073】
また、中空フィラー(既膨張バルーン)を添加することにより、軽量化、柔軟化、密着性の向上を図ってもよい。
【0074】
本実施形態の樹脂組成物が粘着剤組成物である場合に、粘着力、凝集力調整のため粘着付与樹脂を添加してもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、石油系粘着付与樹脂、スチレン系粘着付与樹脂等が挙げられる。これら粘着付与樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、粘着付与樹脂の軟化点は90℃以上160℃以下であることが好ましい。
【実施例0075】
以下、本実施形態を実施例及び比較例に基づいて更に詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0076】
<試験項目>
実施例及び比較例で製造されたポリイソシアネート組成物について、以下に示す方法に従い、各物性の測定及び各評価を行った。
【0077】
[物性1]
(イソシアネート基(NCO)含有率)
まず、フラスコに測定試料2g以上3g以下を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、測定試料を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、ポリイソシアネート試料無しで、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)含有率(NCO%)(質量%)を算出した。
【0078】
イソシアネート基(NCO)含有率(質量%) = (V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0079】
[物性2]
(数平均分子量)
数平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
【0080】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0081】
[樹脂組成物の調製]
各ポリイソシアネート組成物と、アクリルポリオール(Allnex社製、商品名「Setalux1152」)とを、水酸基に対するイソシアネート基のモル比が1.0となるように混合し、さらに固形分が50質量%となるように酢酸ブチルで希釈した。次いで、希釈溶液にさらにスズ触媒(日東化成(株)社製、商品名「ネオスタンU-100」)を固形分に対して300質量ppmとなる量混合して、各樹脂組成物を得た。
【0082】
[評価1]
(主剤への相溶性)
調製直後の各樹脂組成物を、-10℃の環境で5日間保持した。塗液の状態を目視観察して、以下の評価基準に従い、評価した。
【0083】
(評価基準)
◎:透明均一
△:一部に濁り有
×:全体に濁り有
【0084】
[塗膜の作製]
各樹脂組成物をポリプロピレン板上に膜厚30μmとなるように塗布し、120℃、30分間加熱乾燥させた。その後、23℃、50%湿度環境下で1日間乾燥して各塗膜を作製した。
【0085】
[評価2]
(低温破断伸度)
作製した塗膜を短冊状に切り出して試験片を作製した。次いで、長さ20mm、幅10mmとなるように引張試験機(テンシロン万能試験機)に装着し、試験温度-10℃において引張速度20mm/minで試験を実施し、破断した伸度%を測定した。破断した伸度から、以下の評価基準に従い、評価した。
【0086】
(評価基準)
◎:破断伸度150%以上
○:破断伸度100%以上150%未満
×:破断伸度100%未満
【0087】
[評価3]
(低温低応力性(伸度20%時の応力))
作製した塗膜を短冊状に切り出して試験片を作製した。次いで、長さ20mm、幅10mmとなるように引張試験機(テンシロン万能試験機)に装着し、試験温度-10℃において引張速度20mm/minで試験を実施した。伸度20%における応力値から、以下の評価基準に従い、評価した。
【0088】
(評価基準)
◎:10MPa未満
○:10MPa以上30MPa未満
×:30MPa以上
【0089】
[評価4]
(常温低応力性(伸度75%時の応力))
作製した塗膜を短冊状に切り出して試験片を作製した。次いで、長さ20mm、幅10mmとなるように引張試験機(テンシロン万能試験機)に装着し、試験温度23℃において引張速度20mm/minで試験を実施した。伸度75%における応力値から、以下の評価基準に従い、評価した。
【0090】
(評価基準)
◎:2MPa未満
○:2MPa以上5MPa未満
×:5MPa以上
【0091】
<ポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例1]
(ポリイソシアネート組成物PA-a1の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 1000g、及び、3官能ポリカプロラクトンポリオール(DIC株式会社製、商品名「OD-X2588」、数平均分子量1250)496.0gを仕込み、撹拌下反応器内温度を100℃に保持し、ウレタン化反応を進行させた。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート前駆体を得た。ポリイソシアネート前駆体100.0gをフラスコに仕込み、ポリオキシプロピレンジオール(AGC株式会社製、商品名「エクセノール510」、数平均分子量4000)57.0gを仕込み、撹拌下反応器内温度を100℃に保持し、ウレタン化反応を進行させ、ポリイソシアネート組成物PA-a1を得た。
【0092】
[実施例2~6]
(ポリイソシアネート組成物PA-a2~PA-a6の製造)
表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、各ポリイソシアネート組成物を得た。
【0093】
[実施例7]
(ポリイソシアネート組成物PA-a7の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 1000g、3官能ポリカプロラクトンポリオール(DIC株式会社製、商品名「OD-X2735」、数平均分子量500)150.0g、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学(株)製、商品名「PTMG1000」、数平均分子量1000)200.0g、及び、ポリオキシプロピレンジオール(AGC株式会社製、商品名「エクセノール510」、数平均分子量4000)300.0gを仕込み、撹拌下反応器内温度を100℃に保持し、ウレタン化反応を進行させた。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネート組成物PA-a6を得た。
【0094】
[実施例8及び比較例1~3]
(ポリイソシアネート組成物PA-a8及びPA-b1~PA-b3の製造)
表2に示す組成とした以外は、実施例7と同様の方法を用いて、各ポリイソシアネート組成物を得た。
【0095】
得られた各ポリイソシアネート組成物の物性及び上記記載の方法を用いた評価結果を表1及び表2に示す。
【0096】
なお、表1及び表2において、各略称は以下の化合物を示す。
【0097】
(ポリカプロラクトンポリオール(A))
A:ポリカプロラクトンポリオール
OD-X-2735:DIC株式会社製、3官能ポリカプロラクトンポリオール、数平均分子量500
OD-X-2586:DIC株式会社製、3官能ポリカプロラクトンポリオール、数平均分子量850
OD-X-2588:DIC株式会社製、3官能ポリカプロラクトンポリオール、数平均分子量1250
【0098】
(ポリエーテルポリオール(B))
B1:ポリプロピレングリコール
Excenol510:AGC株式会社製、ポリオキシプロピレンジオール、数平均分子量4000
Excenol840:AGC株式会社製、ポリオキシプロピレントリオール、数平均分子量6500
Excenol1020:AGC株式会社製、ポリオキシプロピレンジオール、数平均分子量1000
【0099】
B2:その他のポリエーテルポリオール
PTMG1000:三菱化学(株)製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量1000
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
ジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)と、ポリエーテルポリオール(B)と、から誘導され、且つ、ポリエーテルポリオール(B)100質量部に対して20質量部以上のポリプロピレングリコールを含むポリイソシアネート組成物PA-a1~PA-a8(実施例1~8)では、-10℃程度の低温環境下での主剤への相溶性が良好であり、塗膜としたときの-10℃程度の低温での破断伸度、並びに、-10℃程度の低温及び23℃程度の常温での低応力性に優れていた。
【0103】
ジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)と、から誘導されたポリイソシアネート組成物PA-b1(比較例1)では、-10℃程度の低温環境下での主剤への相溶性は良好であったが、塗膜としたときの-10℃程度の低温での破断伸度、並びに、-10℃程度の低温及び23℃程度の常温での低応力性が不良であった。
また、ジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)と、ポリプロピレングリコールを含まないポリエーテルポリオール(B)と、から誘導されたポリイソシアネート組成物PA-b2(比較例2)では、塗膜としたときの-10℃程度の低温での破断伸度、並びに、-10℃程度の低温及び23℃程度の常温での低応力性は許容範囲内であったが、-10℃程度の低温環境下での主剤への相溶性が不良であった。
また、ジイソシアネートと、ポリカプロラクトンポリオール(A)と、ポリエーテルポリオール(B)と、から誘導され、且つ、ポリエーテルポリオール(B)100質量部に対して20質量部未満(10質量部)のポリプロピレングリコールを含むポリイソシアネート組成物PA-b3(比較例3)では、塗膜としたときの-10℃程度の低温での破断伸度、並びに、-10℃程度の低温及び23℃程度の常温での低応力性は許容範囲内であったが、-10℃程度の低温環境下での主剤への相溶性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本実施形態のポリイソシアネート組成物によれば、-10℃程度の低温環境下での主剤への相溶性が良好であり、塗膜としたときの-10℃程度の低温及び23℃程度の常温での柔軟性に優れるポリイソシアネート組成物を提供することができる。