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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081259
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】磁界センサヘッド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/032 20060101AFI20220524BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20220524BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20220524BHJP
   G02B 6/27 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G01R33/032
G01R33/02 A
G02B6/26
G02B6/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192695
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】宮本 光教
(72)【発明者】
【氏名】久保 利哉
【テーマコード(参考)】
2G017
2H137
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AD12
2G017AD15
2G017BA05
2H137AA14
2H137AB01
2H137AB05
2H137AB06
2H137BA04
2H137BA05
2H137BA12
2H137BA13
2H137BB02
2H137BC42
2H137BC47
2H137BC50
2H137BC51
2H137BC53
2H137CA22E
2H137CA33
2H137CC01
2H137CC11
2H137EA01
2H137EA11
2H137FA06
(57)【要約】
【課題】単一の光路により形成可能であり、且つ、精度高く製造可能な磁界センサヘッドを提供する。
【解決手段】磁界センサヘッド30は、光ファイバ31、32と、一端が光ファイバ31、32に光学的に接続されたGIファイバ33と、GIファイバ33の他端に接合された磁性膜34と、磁性膜34のGIファイバ33に接合された面と反対の面に接合された反射膜35と、反射膜の磁性膜に接合された面と反対の面に接合された支持部材36とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、
一端が前記光ファイバに光学的に接続されたGIファイバと、
前記GIファイバの他端に接合された磁性膜と、
前記磁性膜の前記GIファイバに接合された面と反対の面に接合された反射膜と、
前記反射膜の前記磁性膜に接合された面と反対の面に接合された支持部材と、
を有する、ことを特徴とする磁気センサヘッド。
【請求項2】
前記GIファイバのクラッド径は、前記光ファイバのクラッド径と同一である、請求項1に記載の磁気センサヘッド。
【請求項3】
前記磁性膜、前記反射膜及び前記支持部材は、前記磁性膜の前記GIファイバに接合された面、及び前記支持部材の前記反射膜の前記磁性膜に接合された面の反対の面を正方形状の底面とする四角柱形状を有する棒状部材を形成する、請求項2に記載の磁気センサヘッド。
【請求項4】
前記磁性膜は、希土類鉄ガーネットである、請求項3に記載の磁気センサヘッド。
【請求項5】
前記棒状部材の底面の辺の長さは、20μm以上であり且つ前記GIファイバのクラッド径以下である、請求項4に記載の磁気センサヘッド。
【請求項6】
前記棒状部材の底面の対角線の長さは、前記GIファイバのクラッド径以下である、請求項5に記載の磁気センサヘッド。
【請求項7】
前記GIファイバから前記反射膜に導入される光のビーム径は、20mm以上であり且つ前記反射膜の辺の長さ以下である、請求項5に記載の磁気センサヘッド。
【請求項8】
光ファイバの一端とGIファイバの一端とを融解接続し、
支持部材に反射膜及び磁性膜が積層され且つ前記磁性膜を正方形状の底面とする四角柱形状を有する棒状部材の前記底面を、前記GIファイバの他端に接着剤によって接着する
ことを含み、
前記棒状部材の底面の辺の長さは、20μm以上であり且つ前記GIファイバのクラッド径以下である、
ことを更に含む、ことを特徴とする磁気センサヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記棒状部材の底面の辺の長さは、前記GIファイバのクラッド径以下である、請求項8に記載の磁気センサヘッドの製造方法。
【請求項10】
基材の上に反射層を積層し、
前記反射層の上に磁性層を作成し、
前記反射層及び前記磁性層が積層された基材を、前記磁性層が正方形状の平面形状を有するようにハーフダイシングして、前記基材に一端が接合された前記棒状部材を形成し、
前記棒状部材を前記基材から切断する、
ことを更に含む、請求項8又は9に記載の磁気センサヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界センサヘッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コアに非軸対称な応力を加えることで、伝搬する光の偏波面保持性を高めた偏波保持ファイバ(Polarization Maintaining Fiber、PMF)が知られている。偏波保持ファイバとして、PANDA(Polarization-maintaining AND Absorption-reducing)ファイバ、ボウタイ(Bow-tie)ファイバ及び楕円ジャケット(Elliptical Jacket)ファイバ等が知られている。
【0003】
また、偏波保持ファイバを使用した磁界センサヘッドが知られている。例えば、特許文献1には、第1偏波保持ファイバの速相軸及び低速軸に対して速相軸及び低速軸を45度傾斜させた第2偏波保持ファイバを偏波保持ファイバと、グラニュラー膜であるファラデー回転子との間に配置した磁界センサヘッドが記載されている。特許文献1に記載される磁界センサヘッドでは、第2偏波保持ファイバが偏波保持ファイバに導入された直線偏波光を円偏波光に変換する偏波変換素子として機能して、1/4波長板を使用することなくファラデー回転子に送受光を伝送できる。
【0004】
特許文献1に記載される磁界センサヘッドでは、1/4波長板を使用することなくファラデー回転子に送受光が伝送可能であるが、磁界センサヘッドの検出感度を更に向上させることが望まれている。特許文献2には、GRINレンズを光ファイバと磁性膜との間に配置した磁界センサヘッドが記載される。特許文献2に記載される磁界センサヘッドは、GRINレンズを光ファイバと磁性膜との間に配置することで、光が入射する磁性膜の領域をコア径よりも大きくして、検出感度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-126006号公報
【特許文献2】特表2002-528707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載される磁界センサヘッドは、光ファイバとファラデー回転子との間にGRINレンズが配置されるため、光ファイバとGRINレンズとの間の光軸調整が煩雑となり、製造することが容易ではない。
【0007】
本発明は、製造が容易にあり且つ検出感度が高い磁界センサヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る磁界センサヘッドは、光ファイバと、一端が光ファイバに光学的に接続されたGIファイバと、GIファイバの他端に接合された磁性膜と、磁性膜のGIファイバに接合された面と反対の面に接合された反射膜と、反射膜の磁性膜に接合された面と反対の面に接合された支持部材とを有する。
【0009】
さらに、本発明に係る磁界センサヘッドでは、GIファイバのクラッド径は、光ファイバのクラッド径と同一であることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る磁界センサヘッドでは、磁性膜、反射膜及び支持部材は、磁性膜のGIファイバに接合された面、及び支持部材の反射膜の磁性膜に接合された面の反対の面を正方形状の底面とする四角柱形状を有する棒状部材を形成することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る磁界センサヘッドでは、磁性膜は、希土類鉄ガーネットであることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る磁界センサヘッドでは、棒状部材の底面の辺の長さは、20μm以上であり且つGIファイバのクラッド径以下であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係る磁界センサヘッドでは、棒状部材の底面の対角線の長さは、GIファイバのクラッド径以下であることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係る磁界センサヘッドでは、GIファイバから反射膜に導入される光のビーム径は、20μm以上であり且つ反射膜の辺の長さ以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る磁界センサヘッドの製造方法は、光ファイバの一端とGIファイバの一端とを融解接続し、支持部材に反射膜及び磁性膜が積層され且つ磁性膜を正方形状の底面とする四角柱形状を有する棒状部材の底面を、GIファイバの他端に接着剤によって接着することを含み、棒状部材の底面の辺の長さは、20μm以上であり且つGIファイバのクラッド径以下である。
【0016】
さらに、本発明に係る磁界センサヘッドの製造方法では、基材の上に反射層を積層し、反射層の上に磁性層を作成し、反射層及び磁性層が積層された基材を、磁性層が正方形状の平面形状を有するようにハーフダイシングして、基材に一端が接合された棒状部材を形成し、棒状部材を基材から切断することを更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る発明では、GRINレンズの代わりにGIファイバを使用することで、検出感度が高い磁界センサヘッドが容易に製造可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る磁界センサヘッドを有する磁界センサ装置を示すブロック図である。
図2】第1偏波保持ファイバの図1に示すA-A線に沿う断面図である。
図3】(a)は図1に示す磁性膜、反射膜及び支持部材により形成される棒状部材の斜視図であり、図3(b)は(a)に示す磁性膜の平面写真であり、図3(c)は第1偏波保持ファイバと磁性膜との位置関係を示す図である。
図4図1に示す信号処理部の回路ブロック図である。
図5図1に示す磁性膜、反射膜及び支持部材により形成される棒状部材の製造方法を示す図であり、(a)は第1工程を示し、(b)は第2工程を示し、(c)は第3工程を示し、(d)は第4工程を示し、(e)は第5工程を示す。
図6図1に示す磁界センサヘッドの製造方法を示す図であり、(a)は第1工程を示し、(b)は第2工程を示し、(c)は第3工程を示し、(d)は第4工程を示し、(e)は第5工程を示す。
図7】変形例に係る磁界センサヘッドにおける第1偏波保持ファイバと磁性膜との位置関係を示す図である。
図8】GIファイバの好ましい長さの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して、本発明に係る磁界センサヘッド及びその製造方法について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0020】
(実施形態に係る磁界センサヘッドの構成及び機能)
図1は、実施形態に係る磁界センサヘッドを有する磁界センサ装置を示すブロック図である。
【0021】
磁界センサ装置1は、発光部10と、光分岐部20と、磁界センサヘッド30と、検出信号発生部40とを有する。発光部10は、発光素子11と、アイソレータ12と、偏光子13とを有する。
【0022】
発光素子11は、例えば半導体レーザ又は発光ダイオードである。具体的には、発光素子11として、ファブリペローレーザー、スーパールミネッセンスダイオード等を好ましく用いることができる。
【0023】
アイソレータ12は、発光素子11から入射された光を光分岐部20側に透過すると共に、光分岐部20から入射された光を発光素子11側に透過しないことで、発光素子11を保護する。アイソレータ12は、例えば偏光依存型光アイソレータであり、偏光無依存型光アイソレータであってもよい。
【0024】
偏光子13は、発光素子11が発した光を直線偏波光に偏光するための光学素子であり、その種類は特に限定されない。偏光子13で得られる直線偏波光は、光分岐部20を介して磁界センサヘッド30に入射光101として入射される。
【0025】
光分岐部20は、発光部10から出射された光を磁界センサヘッド30に透過すると共に、磁界センサヘッド30から出射された戻り光102を検出信号発生部40に分岐する。なお、透過及び分岐の方向は逆であってもよい。光分岐部20は、例えばハーフミラーであるが、光ファイバを結合分岐する光カプラ、光を分割するビームスプリッタ、及び光サーキュレータ等の光を分波可能な他の光学素子であってもよい。
【0026】
磁界センサヘッド30は、第1偏波保持ファイバ31と、第2偏波保持ファイバ32と、GIファイバ33と、磁性膜34と、反射膜35と、支持部材36とを有し、少なくともその一部が所定の磁界内に配置可能である。磁性膜34、反射膜35及び支持部材36は、棒状部材37を形成する。磁界センサヘッド30は、発光部10が出射した直線偏波光が入射光101として導入されると共に、導入された入射光101に応じた戻り光102を導出する。
【0027】
検出信号発生部40は、偏光分離素子41と、第1受光素子42と、第2受光素子43と、信号処理部50とを有し、第1偏波保持ファイバ31から導出された戻り光102を受光する。偏光分離素子41は、プリズム型、平面型、ウェッジ基板型及び光導波路型等の偏光ビームスプリッタ(PBS)であり、第1偏波保持ファイバ31から導出された戻り光102をS偏光成分44とP偏光成分45とに分離する。
【0028】
第1受光素子42及び第2受光素子43のそれぞれは、例えばPINフォトダイオードである。第1受光素子42はS偏光成分44を受光し、第2受光素子43はP偏光成分45を受光する。第1受光素子42及び第2受光素子43のそれぞれは、受光した光を光電変換して、受光した光の光量の応じた電気信号を出力する。
【0029】
図2は、第1偏波保持ファイバ31の図1に示すA-A線に沿う断面図である。
【0030】
第1偏波保持ファイバ31は、PANDAファイバであり、コア310と、一対の応力付与部311及び312と、クラッド314とを有する。第1偏波保持ファイバ31のコア径は約10μmであり、クラッド径は125μmである。コア310は、酸化ケイ素(SiO2)により形成されるクラッド314よりも屈折率が大きくなるように例えば二酸化ケイ素に二酸化ゲルマニウム(GeO2)を添加して形成される。一対の応力付与部311及び312のそれぞれは、例えば二酸化ケイ素に酸化ホウ素(B23)を添加して形成され、第1偏波保持ファイバ31の紡糸の冷却工程においてクラッド314より大きく収縮してX軸方向に引張応力を付与する。
【0031】
第1偏波保持ファイバ31は、発光部10から光分岐部20を介して導入される入射光101の偏光面201が遅相軸であるX軸及び速相軸であるY軸のそれぞれに対して45度傾斜して導入されるように配置される。第1偏波保持ファイバ31は、導入される入射光101の偏光面201に対してX軸及びY軸が45度傾斜して配置されることで、導入された入射光101を、X軸に沿って伝搬する第1直線偏波と、Y軸に沿って伝搬する第2直線偏波とに分離して伝搬する。X軸に導入される第1直線偏波の振幅は、Y軸に導入される第2直線偏波の振幅と等しい。
【0032】
なお、第1偏波保持ファイバ31は、PANDAファイバであるが、ボウタイファイバ及び楕円ジャケットファイバ等の他の偏波保持ファイバであってもよい。
【0033】
第2偏波保持ファイバ32は、第1偏波保持ファイバ31と同様にPANDAファイバである。第2偏波保持ファイバ32の構成は、第1偏波保持ファイバ31の構成と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。第2偏波保持ファイバ32のコア径及びクラッド径は、第1偏波保持ファイバ31のコア径及びクラッド径と同一である。
【0034】
第2偏波保持ファイバ32は、第1偏波保持ファイバ31の遅相軸及び速相軸に対して第2遅相軸及び第2速相軸を45度傾斜して第1偏波保持ファイバ31に光学的に接続される。第2偏波保持ファイバ32は、例えば融着接続によって第1偏波保持ファイバ31に接続される。なお、第2偏波保持ファイバ32は、接着剤を介する接続等の融着接続以外の接続方法によって第1偏波保持ファイバ31に接続されてもよい。特許文献1に記載されるように、第2偏波保持ファイバ32は、ビート長の4分の1の長さを有することで、1/4波長板として機能する。
【0035】
GIファイバ33は、コアの屈折率を放射線状に分布させることで、第2偏波保持ファイバ32からコアに導入された光をピッチPの周期を有する正弦波で伝送する光ファイバである。GIファイバ33の一端は、第2偏波保持ファイバ32を介して第1偏波保持ファイバ31に光学的に接続される。GIファイバ33のクラッド径は、第1偏波保持ファイバ31及び第2偏波保持ファイバ32のクラッド径と同一である。
【0036】
GIファイバ33は、ピッチPの4分の1の長さを有することで、第2偏波保持ファイバ32から導入された光をコリメート光としてと磁性膜34に導出する。また、磁性膜34から導入されたコリメート光を第2偏波保持ファイバ32のコアに導出する。
【0037】
図3(a)は磁性膜34、反射膜35及び支持部材36により形成される棒状部材37の斜視図であり、図3(b)は磁性膜34の平面写真であり、図3(c)は第1偏波保持ファイバ31と磁性膜34との位置関係を示す図である。
【0038】
磁性膜34の表面34aは、正方形状の平面形状を有し、GIファイバ33の他端に不図示の接着材によって接着されることでGIファイバ33の他端に接合される。磁性膜34のGIファイバ33に接合された面と反対の面は、反射膜35の一方の面に接合される。反射膜35の磁性膜34に接合された面と反対の面は、支持部材36の一方の端面に接合される。
【0039】
磁性膜34、反射膜35及び支持部材36は、磁性膜34の表面34a及び支持部材36の磁性膜34に接合された端面と反対の端面35aを底面とする四角柱上の棒状部材37を形成する。磁性膜34の表面34aが正方形状の平面形状を有するので、磁性膜34、反射膜35及び支持部材36によって形成される棒状部材37の底面の形状は、正方形である。
【0040】
磁性膜34の表面34aの一辺の長さは、125μmであり、GIファイバ33のクラッド径と同一であり、磁性膜34は、表面34aの中心がGIファイバ33の中心に一致するように配置される。磁性膜34の表面34aの一辺の長さがGIファイバ33のクラッド径と同一であり且つ表面34aの中心がGIファイバ33の中心に一致するので、磁性膜34は、表面34aの辺の中心にGIファイバ33の外縁が内接するように配置される。
【0041】
磁性膜34は、希土類鉄ガーネットを希少金属元素で置換したRx3-xFe512の組成式で表されるガーネット型結晶構造を有する単結晶であり、GIファイバ33から出射された円偏波光の位相を磁界センサ素子が配置される磁界に応じて変化させるファラデー回転子である。Rは希少金属(Rare earth metal)であり、Yと置換可能な元素である。
【0042】
希土類元素は、単独で安定してFeとガーネット型結晶構造を形成するY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群から選ばれる一種又は二種以上の元素であり、代表的にはYである。この希土類元素をBiやCeで置換したガーネット単結晶は特に大きなファラデー効果を有しているため、ファラデー素子として好ましく用いられる。
【0043】
図3(b)に示すように磁性膜34は、幅が10μm程度であり且つ長さが100μm以上である縞状磁区を有する。第1偏波保持ファイバ31及び第2偏波保持ファイバ32のコア径は10μm程度であり、入射光101を第2偏波保持ファイバ32のコアから磁性膜34に直接導出すると、磁化による光変調を適切に得られないおそれがある。GIファイバ33によって125μm程度まで光束を広げることで、適切に光変調を得ることができる。
【0044】
反射膜35は、磁性膜34を透過した光を磁性膜34に向けて反射して戻り光102を発生するミラー素子である。反射膜35は、磁界センサヘッド30を透過した円偏波光と回転方向が反対の円偏波光を磁性膜34に出射する。反射膜35としては、例えば、銀(Ag)膜、金(Au)膜、アルミニウム(Al)膜又は誘電体多層膜ミラー等を用いることができる。特に、反射率の高いAg膜及び耐食性が高いAu膜が成膜上簡便で好ましい。反射膜35の厚さは、98%以上の十分な反射率を確保できる大きさであればよく、例えばAg膜の場合には、50nm以上かつ200nm以下であることが好ましい。反射膜35を用いて磁性膜34内で光を往復させることにより、ファラデー回転角を大きくすることができる。
【0045】
支持部材36は、ガラスにより形成された端面が正方形状の直方体状の部材であり、一端に磁性膜34及び反射膜35と共に棒状部材37を形成する。
【0046】
図4は、信号処理部50の回路ブロック図である。
【0047】
信号処理部50は、第1増幅回路51と、第2増幅回路52と、第1除算回路53と、第2除算回路54と、差動増幅回路55とを有する。信号処理部50は、第1受光素子42及び第2受光素子43により光電変換された電気信号から2つの偏光成分の強度を差分検出し、検出した数値を電流値に置き換える。
【0048】
第1増幅回路51及び第2増幅回路52のそれぞれは、オペアンプ及び抵抗素子等により形成されるアナログ増幅回路である。
【0049】
第1増幅回路51は、第1受光素子42からS偏光成分44の光量Lpに応じた第1電気信号Es1が入力され、入力された第1電気信号Es1を増幅して第1増幅電気信号Es2を出力する。第2増幅回路52は、第2受光素子43からP偏光成分45の光量Lpに応じた第2電気信号Ep1が入力され、入力された第2電気信号Ep1を増幅して第2増幅電気信号Ep2を出力する。
【0050】
第1除算回路53及び第2除算回路54のそれぞれは、オペアンプ及び抵抗素子等により形成されるアナログ除算回路である。
【0051】
第1除算回路53は、第2増幅電気信号Ep2で第1増幅電気信号Es2を除算し、除算した出力値を示す第1アナログ信号(Es2/Ep2)を差動増幅回路55のマイナス入力端子に出力する。第2除算回路54は、第1増幅電気信号Es2で第2増幅電気信号Ep2を除算し、除算した出力値を示す第2アナログ信号(Ep2/Es2)を差動増幅回路55のマイナス入力端子に出力する。
【0052】
差動増幅回路55は、例えばオペアンプであり、第1除算回路53から入力される第1アナログ信号(Es2/Ep2)と第2除算回路54から入力される第2アナログ信号(Ep2/Es2)を差動増幅して検出信号Edを出力する。
【0053】
(実施形態に係る磁界センサヘッドの製造方法)
図5は磁性膜34、反射膜35及び支持部材36により形成される棒状部材37の製造方法を示す図であり、図5(a)は第1工程を示し、図5(b)は第2工程を示し、図5(c)は第3工程を示し、図5(d)は第4工程を示し、図5(e)は第5工程を示す。
【0054】
まず、第1工程において、複数の支持部材36の基材であるガラスの基材400が提供される。ガラスの基材400の表面401の辺のそれぞれは、正方形である支持部材36の端面の整数倍の長さを有する。ガラスの基材400の高さは、支持部材36の長さよりも長い。
【0055】
次いで、第2工程において、ガラスの基材400の表面401に反射膜35の基材である反射層410が積層される。反射層410は、銀、金及びアルミニウム等の反射膜35を形成する部材をガラスの基材400の表面401に蒸着することにより形成される。
【0056】
次いで、第3工程において、ガラスの基材400の表面401に反射膜35の基材である磁性層420が積層される。磁性層420は、例えばフラックス成長法、金属有機化学気相成長法及びゾルゲル法等の既知の積層法により反射層410の表面に積層される。
【0057】
次いで、第4工程において、反射層410及び磁性層420が積層された基材400を、磁性層が正方形状の平面形状を有するように格子状にハーフダイシングする。基材400の深さは、支持部材36の長さと同一である。基材400がハーフダイシングされることにより、底面が基材400によって固定され、表面に磁性膜34及び反射膜35が積層された棒状部材37が形成される。
【0058】
そして、第5工程において、第4工程で形成された棒状部材37のそれぞれを基材400から切断して、棒状部材37の製造が終了する。
【0059】
図6は磁界センサヘッド30の製造方法を示す図であり、図6(a)は第1工程を示し、図6(b)は第2工程を示し、図6(c)は第3工程を示し、図6(d)は第4工程を示し、図6(e)は第5工程を示す。
【0060】
まず、第1工程において、第1偏波保持ファイバ31の端部に、第2偏波保持ファイバ32の基材440が、互いの遅相軸及び速相軸が45度傾斜するように融着接続される。次いで、第2工程において、第1偏波保持ファイバ31の端部と接続された端部からの距離がビート長の4分の1の長さとなるように、ファイバクリーバー500で基材450を切断して第2偏波保持ファイバ32を形成する。
【0061】
次いで、第3工程において、ファイバクリーバー500で切断された第2偏波保持ファイバ32の端部に、GIファイバ33の基材450が融着接続される。次いで、第4工程において、第2偏波保持ファイバ32の端部と接続された端部からの距離がピッチPの4分の1の長さとなるように、ファイバクリーバー500で基材450を切断してGIファイバ33を形成する。
【0062】
そして、ファイバクリーバー500で切断されたGIファイバ33の端部に、図5を参照して説明された製造法によって製造された棒状部材37の磁性膜34が、接着剤によって接着されて接合される。GIファイバ33のクラッド径と磁性膜34の一辺の長さは同一なので、磁性膜34の表面がGIファイバ33の端面に接着されるとき、磁性膜34の表面の辺の中央にGIファイバ33の端面の外縁が接するようにセルフアライメントされる。
【0063】
(実施形態に係る磁界センサヘッドの作用効果)
磁界センサヘッド30は、第2偏波保持ファイバ32と磁性膜34との間に配置されるGIファイバ33が第2偏波保持ファイバ32から導出される入射光101の光束を広げることで、検出感度を高くすることができる。
【0064】
また、磁界センサヘッド30は、第2偏波保持ファイバ32から導出される入射光101の光束を広げる素子として、第2偏波保持ファイバ32との間の光学調芯が容易なGIファイバ33を採用するので、容易に製造可能である。
【0065】
また、磁界センサヘッド30では、GIファイバ33のクラッド径が第1偏波保持ファイバ31及び第2偏波保持ファイバ32のクラッド径に等しいので、第1偏波保持ファイバ31及び第2偏波保持ファイバ32とGIファイバ33との間の光学調芯が更に容易になる。
【0066】
また、磁界センサヘッド30では、磁性膜34の表面34aの一辺の長さがGIファイバ33のクラッド径と同一であるので、磁性膜34をGIファイバ33に接着剤によって接着するときに、磁性膜34は、セルフアライメントされるので光学調芯が容易である。
【0067】
また、磁界センサヘッド30を製造するとき、支持部材36に反射膜35及び磁性膜34が積層された棒状部材37をGIファイバ33に接着剤によって接着するので、支持部材36を把持してGIファイバ33と磁性膜34とを容易に接着できる。
【0068】
(実施形態に係る磁界センサヘッドの変形例)
磁界センサヘッド30は、1/4波長板として機能する第2偏波保持ファイバ32を有するが、実施形態に係る磁界センサヘッドは、第2偏波保持ファイバ32を有していなくてもよい。実施形態に係る磁界センサヘッドが第2偏波保持ファイバ32を有さないとき、磁界センサヘッドを含む磁界センサ装置の構造は、適宜変更される。
【0069】
また、磁界センサヘッド30では、GIファイバ33のクラッド径は、第2偏波保持ファイバ32のクラッド径と同一であるが、実施形態に係る磁界センサヘッドでは、GIファイバのクラッド径は、接合される光ファイバのクラッド径と相違してもよい。
【0070】
また、磁界センサヘッド30では、GIファイバ33の長さは、ピッチPの4分の1であるが、実施形態に係る磁界センサヘッドでは、GIファイバの長さは、ピッチPの4分の3であってもよい。また、実施形態に係る磁界センサヘッドでは、GIファイバの長さは、正数n及びピッチPによって、n×P×(1±1/4)の長さであってもよい。
【0071】
また、磁界センサヘッド30では、磁性膜34の表面34aの一辺の長さがGIファイバ33のクラッド径と同一であるが、実施形態に係る磁界センサヘッドでは、磁性膜の表面の一辺の長さは、20μm以上であればよい。磁性膜の表面の一辺の長さを20μm以上にすることで、適切に光変調を得ることが可能な程度の範囲の縞状磁区に入射光101を照射することができる。
【0072】
また、磁界センサヘッド30では、GIファイバのクラッド径は、磁性膜の表面の対角線の長さ以上であり且つ磁性膜の表面の辺の長さ以下であるときに、磁性膜の表面をGIファイバに接着するときにセルフアライメントすることができる。
【0073】
図7は、変形例に係る磁界センサヘッドにおける第1偏波保持ファイバと磁性膜との位置関係を示す図である。
【0074】
図7に示す変形例に係る磁界センサヘッドは、磁性膜、反射膜及び支持部材のそれぞれを平面視したときの面積が磁界センサヘッド30と相違する。磁性膜、反射膜及び支持部材のそれぞれを平面視したときの面積以外の変形例に係る磁界センサヘッドの構成要素の構成及び機能は、磁界センサヘッド30の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0075】
磁性膜64は、一辺の長さが88.4μmの正方形状の表面64aを有し、表面64aの対角線の長さがGIファイバ33のクラッド径と一致し、4つの角がGIファイバの外縁に内接するように配置される。
【0076】
変形例に係る磁界センサヘッドでは、表面64aの対角線の長さがGIファイバ33のクラッド径と一致するので、磁性膜64の表面がGIファイバ33に接着されるとき、表面64aの角がGIファイバ33の端面の外縁が接するようにセルフアライメントされる。なお、棒状部材の底面の辺の長さは、GIファイバのクラッド径以下であってもよい。
【0077】
また、実施形態に係る磁界センサヘッドでは、磁性膜の表面の対角線の長さがGIファイバのクラッド径以上であり且つ磁性膜の表面の辺の長さがGIファイバのクラッド径以下であるとき、磁性膜がセルフアライメントしてGIファイバに接着されるので光学調芯が容易である。
【0078】
図8は、GIファイバ33の好ましい長さの一例を説明するための図である。図8に示す例では、入射光101の波長は1550nsであり、クラッド径は125μmであり、NAは0.1であり、√Aは1.0である。
【0079】
図8に示す例では、GIファイバ33から反射膜に導入される入射光101のビーム径がGIファイバ33のクラッド径と一致するときのGIファイバ33の長さは、1.55mmである。本発明に係る磁界センサヘッド1で使用されるGIファイバ33の長さを1.55mmとすることで、磁性膜34の全面に亘って光を導入できる。
【0080】
また、GIファイバ33から反射膜に導入される入射光101のビーム径が20μmであるときのGIファイバ33の長さは、1.03mmである。実施形態に係る磁界センサヘッドで使用されるGIファイバの長さを1.03mmとすることで、磁性膜の一辺の長さが20μmであるときに磁性膜の全面に亘って光を導入できる。
【0081】
また、GIファイバ33から反射膜に導入される入射光101のビーム径が88.4mmであるときのGIファイバ33の長さは、1.49mmである。実施形態に係る磁界センサヘッドで使用されるGIファイバの長さを1.49mmとすることで、磁性膜の一辺の長さが88.4mmであり、磁性膜の対角線の長さがGIファイバ33のクラッド径と一致するときに磁性膜の全面に亘って光を導入できる。
【0082】
実施形態に係る磁界センサヘッドでは、GIファイバ33の長さを図8において双方向矢印Aで示される1.03mm以上且つ1.55mm以下とすることが好ましい。実施形態に係る磁界センサヘッドは、GIファイバ33の長さを1.03mm以上且つ1.55mm以下とすることで、GIファイバ33から反射膜に導入される入射光101のビーム径を20μm以上であり且つ反射膜の辺の長さ以下とすることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 磁界センサ装置
10 発光部
20 光分岐部
30 磁界センサヘッド
31 第1偏波保持ファイバ
32 第2偏波保持ファイバ
33 GIファイバ
34 磁性膜
35 反射膜
36 支持部材
37 棒状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8