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▶ 株式会社三鷹ホールディングスの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081317
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】抗菌性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/29 20060101AFI20220524BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A61K8/29
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192774
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】520006735
【氏名又は名称】株式会社三鷹ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 学
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB241
4C083AB242
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC442
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD392
4C083BB23
4C083BB46
4C083BB48
4C083CC02
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC31
4C083DD32
4C083DD33
4C083EE03
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】新規な抗菌性及び消臭性化粧料、特に、紫外線及び/又は近赤外線防御効果に優れる日焼け防止抗菌性化粧料を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明の抗菌性化粧料、特に、日焼け防止抗菌性化粧料は、リン酸チタニウム系化合物、並びに、ケイ酸チタニウム系化合物及びホウ酸チタニウム系化合物のいずれか一方を含有するリン酸チタニウム系化合物が配合されていることを特徴とする。更に、本発明の日焼け防止抗菌性化粧料は、近赤外線防御剤を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸チタニウム系化合物を含有することを特徴とする抗菌性化粧料。
【請求項2】
前記リン酸チタニウム系化合物が、化学式が、Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OR)(Rは炭素数1~4のアルキル基、x,y,z,m,nはそれぞれ0以上の数であり、x+3y+2z+m+n=4を満たす)で表されるリン酸チタニウム系化合物又はその縮合体であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性化粧料。
【請求項3】
前記リン酸チタニウム系化合物が、四塩化チタンを水と炭素数1~4のアルコールとの混合溶媒と反応させた後、リン酸と反応させて得られる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性化粧料。
【請求項4】
ケイ酸チタニウム系化合物及びホウ酸チタニウム系化合物の少なくともいずれか一方を更に含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の抗菌性化粧料。
【請求項5】
前記ケイ酸チタニウム系化合物は、四塩化ケイ素を水もしくはアルコール、あるいは水とアルコールの混合溶液と反応させ、得られた反応溶液に四塩化チタンを添加して反応させることによって調製されたケイ酸チタニウム系化合物であり、前記ホウ酸チタニウム系化合物は、ホウ酸を水もしくはアルコール、あるいは水とアルコールの混合溶液に溶解させ、得られたホウ酸溶液に四塩化チタンを添加して反応させることによって調製されたホウ酸チタニウム系化合物であることを特徴とする請求項4に記載の抗菌性化粧料。
【請求項6】
前記ケイ酸チタニウム系化合物の化学組成がTiO・SiOであり、前記ホウ酸チタニウム系化合物の化学組成がTiO・Bであることを特徴とする請求項4又は5に記載の抗菌性化粧料。
【請求項7】
前記リン酸チタニウム系化合物、前記ケイ酸チタニウム系化合物、及び、前記ホウ酸チタニウム系化合物の平均粒子径が、5~100nmであることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の抗菌性化粧料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の抗菌性化粧料を用いた日焼け防止抗菌性化粧料。
【請求項9】
酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化セリウム、タルク、マイカ、硫酸バリウム、合成金雲母、ホウケイ酸、窒化ホウ素、アルミニウム塩水酸化物、シアニン化合物、及び、フロタシアニン化合物からなる群より選ばれる1種以上の赤外線防御剤を更に含有することを特徴とする請求項8に記載の日焼け防止抗菌性化粧料。
【請求項10】
有機紫外線吸収剤を更に含有することを特徴とする請求項8又は9に記載の日焼け防止抗菌性化粧料。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の日焼け防止抗菌性化粧料を皮膚に塗布する皮膚の紫外線及び近赤外線防御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸チタニウム化合物を含有する抗菌性化粧料、特に、リン酸チタニウム化合物は、抗菌性に加え、紫外線防御機能を有しているため、日焼け防止抗菌性化粧料に関する。しかし、本発明は、抗菌性を有するリン酸チタニウム系化合物を用いたことを特徴とする抗菌性を有する化粧料であり、各種化粧料に応用することができる。
【背景技術】
【0002】
太陽光に対する皮膚防御の観点から、従来は、紫外線防御化粧料が日焼け防止化粧料として中心的な存在であったが、近年は、健康意識の高まり、及び、皮膚の光老化に関する研究の進展により、近赤外線防御機能を有する日焼け防止化粧料が求められるようになってきた。
【0003】
そのため、近赤外線防御機能を有する日焼け防止化粧料に関する報告が数多く認められる。これらは、近赤外線が皮膚の上層である表皮の組織よりも深部の真皮の組織に到達することを阻害し、近赤外線によるその組織の損傷を防止する日焼け防止化粧料に関するものである。
【0004】
例えば、近赤外線防御機能を発現する無機系素材として、タルク(特許文献1)、二酸化チタン(特許文献2)、酸化セリウム(特許文献3)、優れた赤外線防御機能と高い透明性を両立した、酸化チタン粉末と酸化亜鉛粉末(特許文献4、6、並びに、8~11)、マイカ、タルク、セリサイト、硫酸バリウム、合成金雲母、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化亜鉛、ホウケイ酸から選択される二種以上の混合物(特許文献5)、シリカと二酸化チタンの混合物(特許文献7)が開示されている。また、近赤外線防御機能を発現する有機系素材としては、例えば、シアニン化合物及びフタロシアニン化合物等の色素が開示されている(非特許文献1)。
【0005】
しかし、化粧料においては、日焼け防止機能だけではなく、原料又は製造や充填に由来する微生物を殺菌し増殖を抑えて、微生物による変質、変臭、及び、カビの発生を防ぐことが本質的に求められるため、防腐殺菌剤等を含有する抗菌性化粧料に関する検討も行われてきた(特許文献11)。
【0006】
また、紫外線及び/又は近赤外線による、免疫が抑制され感染症が増すリスク及び皮膚の常在菌バランスへの悪影響も予想されるため、日焼け防止化粧料は抗菌性を有することが好ましい。
【0007】
日焼け防止化粧料への抗菌性を付与するためには、安全性を考慮した防腐殺菌剤の添加が有効であるが(特許文献12)、紫外線又は近赤外線防御機能を有する素材自体に抗菌性が備わっていれば、新たな防腐殺菌剤等の抗菌性素材を添加する必要がなく、化粧料に配合する素材を低減できる上、混合、分散等の製造工程を簡略化することができて好適である。
【0008】
しかしながら、紫外線防御機能及び/又は近赤外線防御機能に加え、抗菌性を有する日焼け防止化粧料に関する開示も示唆も認められない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-158546号公報
【特許文献2】特開2015-086157号公報
【特許文献3】特開2016-204368号公報
【特許文献4】特開2017-095361号公報
【特許文献5】特開2017-155006号公報
【特許文献6】特開2017-171655号公報
【特許文献7】特表2020-511579号公報
【特許文献8】特開2020-105175号公報
【特許文献9】特開2020-105176号公報
【特許文献10】特開2020-105177号公報
【特許文献11】特開1996-040830号公報
【特許文献12】特開平8-40830号公報
【特許文献13】特許第3829640号公報
【特許文献14】特許第4430877号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】熊谷洋二郎,「近赤外線吸収色素」,日本印刷学会誌,2001年,第38巻,第1号,pp.35-38
【非特許文献2】飯田武揚,山岡一彦,野尻成治,野崎弘,「四塩化チタンの加水分解による酸化チタンの結晶生成過程とその物性」,工業化学雑誌,1966年,69巻,11号,pp.2087-2095
【非特許文献3】古南博,大谷文章,「はじめての電気化学計測-基礎とノウハウ 光触媒の調整法」,電気化学および工業物理化学(DENKI KAGAKU),1988年,66巻,10号,pp.996-1003
【非特許文献4】佐治孝,「縮合リン酸の生成と物性および応用」,工業化学雑誌,1963年,66巻,5号,pp.528-537
【非特許文献5】田中豊助,「有機ホウ素化合物の化学」,有機合成化学,1964年,第22巻,第10号,pp.806-815
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、従来の日焼け防止化粧料は、紫外線及び/又は近赤外線から皮膚を防御することに力点が置かれ、紫外線及び/又は近赤外線による、免疫が抑制され感染症が増加するリスク、及び、紫外線及び近赤外線防御による皮膚の常在菌バランスへの悪影響を考慮した日焼け防止化粧料は認められない。
【0012】
すなわち、本発明の課題は、紫外線防御機能及び/又は近赤外線防御機能に優れた日焼け防止機能に加え、抗菌性を備えた日焼け止め化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、抗菌性及び消臭性を有する、リン酸チタニウム系化合物、並びに、ケイ酸チタニウム系化合物及びホウ酸チタニウム系化合物のいずれか一方を含有するリン酸チタニウム系化合物(特許文献13)が、紫外線防御機能を有することを見出し、上記化合物を化粧料に適用した抗菌性化粧料、特に、抗菌性日焼け防止化粧料を発明するに至った。更に、赤外線防御機能を有する素材を含有させることにより、抗菌性及び紫外線防御機能を損なうことなく、近赤外線防御機能も付与でき、抗菌性日焼け防止化粧料の高機能化を図ることも見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、リン酸チタニウム系化合物を含有することを特徴とする抗菌性及び消臭性化粧料、特に、リン酸チタニウム化合物は、抗菌性に加え、紫外線防御機能を有しているため、リン酸チタニウム系化合物を含有することを特徴とする日焼け防止抗菌性化粧である。
【0015】
しかし、リン酸チタニウム系化合物を化粧料に適用した例はなく、各種用途の抗菌性及び消臭性化粧料として幅広い有効性を発揮することができるため、本発明は、リン酸チタニウム系化合物を含有することを特徴とする新規性及び進歩性を有する抗菌性及び消臭性化粧料であると言える。
【0016】
このようなリン酸チタニウム系化合物としては、特許文献13に記載されているように、化学式が、Ti(OH)(PO(HPO(HPO(OR)(Rは炭素数1~4のアルキル基、x,y,z,m,nはそれぞれ0以上の数であり、x+3y+2z+m+n=4を満たす)で表されるリン酸チタニウム系化合物又はその縮合体であることが好ましい。しかし、四塩化チタンを水と炭素数1~4のアルコールとの混合溶媒と反応させた後、リン酸と反応させて得られる、化学構造を特定することが困難である化合物を有効成分としてもよい。
【0017】
更に、本発明の日焼け防止抗菌性化粧料には、消臭性を高めることを目的として、ケイ酸チタニウム系化合物及びホウ酸チタニウム系化合物の少なくともいずれか一方を含有することがより好ましい。
【0018】
そして、このケイ酸チタニウム系化合物は、四塩化ケイ素を水もしくはアルコール、あるいは水とアルコールの混合溶液と反応させ、得られた反応溶液に四塩化チタンを添加して反応させることによって調製されたケイ酸チタニウム系化合物であり、このホウ酸チタニウム系化合物は、ホウ酸を水もしくはアルコール、あるいは水とアルコールの混合溶液に溶解させ、得られたホウ酸溶液に四塩化チタンを添加して反応させることによって調製されたホウ酸チタニウム系化合物であることが好ましい。
【0019】
また、ケイ酸チタニウム系化合物の化学組成がTiO・SiOであり、ホウ酸チタニウム系化合物の化学組成がTiO・Bであることが好ましい。
【0020】
特に、リン酸チタニウム系化合物、ケイ酸チタニウム系化合物、及び、ホウ酸チタニウム系化合物が、紫外線防御機能を有しているのは、レイリー散乱による紫外線防御機能を発現できる平均粒子径の5~100nmに調整したことに起因している。更に、製造条件を調整するか、又は、粒子径を分別することによって、平均粒子径を5~10nmにすると、紫外線防御機能が更に向上することが分かった。
【0021】
すなわち、本発明の日焼け止め化粧料は、抗菌性及び消臭性を有することが知られていたリン酸チタニウム系化合物、ケイ酸チタニウム系化合物、及び、ホウ酸チタニウム系化合物の平均粒子径を5~100nmに制御することによって、紫外線防御機能も備える抗菌性及び消臭性素材として化粧料に適用することによって達成されたものである。
【0022】
このようなリン酸チタニウム系化合物、ケイ酸チタニウム系化合物、及び、ホウ酸チタニウム系化合物の日焼け止め化粧料に使用可能な粉体は、特許文献13及び14に準じて次のようにして製造される。
【0023】
リン酸チタニウム系化合物は、四塩化チタンとリン酸を主原料として製造される。四塩化チタンを、水と炭素数1~4の脂肪族アルコールの混合溶液に混合して反応させる第一工程、第一工程で製造された反応溶液にリン酸を添加してリン酸チタニウム系化合物の水/アルコール混合溶液を製造する第二工程、そして、リン酸チタニウム系化合物を単離してリン酸チタニウム系化合物を単離する第三工程を経て製造される。
【0024】
第一工程において、水/アルコール混合溶液は、水を30~70体積%とし、四塩化チタンの添加量は、体積比で水/アルコール混合溶液100部に対して、0.01~30部の範囲とする。また、四塩化チタンと水/アルコールとを混合して反応させる際の反応温度及び環境の相対湿度は、それぞれ、0~35℃及び10~80%とする。この工程において、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合反応が進み、ナノ粒子が生成されるが、反応温度が高すぎると、粒子径が大きくなり、最終生成物の平均粒子径を5~100nmとするためには、0~20℃の反応温度であることがより好ましい(非特許文献2及び3)。
【0025】
第二工程において、第一工程で製造された反応溶液を水/アルコール混合溶液等の溶剤で10~500倍に希釈した後、リン酸を添加して反応させる。ここで、リン酸の添加量は、体積比で、反応溶液100部に対して8~500部の範囲とする。この反応溶液にリン酸を添加すると、室温で直ちに反応が生じ、リン酸チタニウム系化合物が生成し、リン酸チタニウム系化合物の水/アルコール溶液を得ることができる。ここで、リン酸の脱水縮合反応が生起し、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合物と融合される(非特許文献4)が、粒子径に及ぼす影響は大きくない。
【0026】
第三工程において、第二工程で製造されたリン酸チタニウム系化合物の水/アルコール溶液が、常圧乾燥、減圧乾燥等の方法で単離され、リン酸チタニウム系化合物を日焼け止め化粧料に使用できる粉体として製造された。第二工程で製造されたリン酸チタニウム系化合物の水/アルコール溶液は透明で、外観上、リン酸チタニウム系化合物が溶解しているように見えるが、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合物にリン酸の脱水縮合反応によって融合したリン酸チタニウム系化合物は、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合によって形成されたナノ粒子を維持しており、溶媒を除去すると、紫外線遮断機能を有する平均粒子径の化粧料に適した粉体が得られる。
【0027】
ケイ酸チタニウム系化合物は、四塩化ケイ素と四塩化チタンを主原料として製造される。四塩化ケイ素を、水と炭素数1~4の脂肪族アルコールの混合溶液に混合して反応させる第一工程、第一工程で製造された反応溶液に四塩化チタンを添加してケイ酸チタニウム系化合物の水/アルコール混合溶液を製造する第二工程、そして、ケイ酸チタニウム系化合物を単離してケイ酸チタニウム系化合物を単離する第三工程を経て製造される。
【0028】
第一工程において、水/アルコール混合溶液は、水を30~70体積%とし、四塩化ケイ素の添加量は、水/アルコール混合溶液100部に対して、体積比で0.01~30部の範囲とする。また、四塩化ケイ素と水/アルコールとを混合して反応させる際の反応温度及び環境の相対湿度は、それぞれ、0~35℃及び10~80%とする。この工程において、四塩化ケイ素の加水分解、脱水縮合反応が進み、ナノ粒子が生成されるが、四塩化チタン同様、反応温度が高すぎると、粒子径が大きくなり、最終生成物の平均粒子径を5~100nmとするためには、0~20℃の反応温度であることがより好ましい。
【0029】
第二工程において、第一工程で製造された反応溶液100部に四塩化チタンを体積比で8~100部添加し、反応温度及び環境の相対湿度を、それぞれ、0~35℃及び10~80%として反応させると、ケイ酸チタニウム系化合物が生成し、ケイ酸チタニウム系化合物の水/アルコール混合溶液を得ることができる。この工程において、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合反応が進み、四塩化ケイ素の加水分解、脱水縮合反応物と融合して、ケイ酸チタニウム系化合物が生成するが、反応温度が高すぎると、粒子径が大きくなるため、最終生成物の平均粒子径を5~100nmとするためには、0~20℃の反応温度であることがより好ましい
【0030】
第三工程において、第二工程で製造されたケイ酸チタニウム系化合物の水/アルコール溶液が、常圧乾燥、減圧乾燥等の方法で単離され、リン酸チタニウム系化合物を日焼け止め化粧料に使用できる粉体として製造された。生成されたケイ酸チタニウム系化合物は、TiO・SiOの化学組成を有する化合物である。第二工程で製造されたケイ酸チタニウム系化合物の水/アルコール溶液は透明で、外観上、ケイ酸チタニウム系化合物が溶解しているように見えるが、四塩化ケイ素の加水分解、脱水縮合物に四塩化チタニウムの加水分解、脱水縮合反応によって融合したケイ酸チタニウム系化合物はナノ粒子を形成しており、溶媒を除去すると、紫外線遮断機能を有する平均粒子径の化粧料に適した粉体が得られる。
【0031】
ホウ酸チタニウム系化合物は、ホウ酸と四塩化チタンを主原料として製造される。ホウ酸を、水と炭素数1~4の脂肪族アルコールの混合溶液に混合して反応させる第一工程、第一工程で製造された反応溶液に四塩化チタンを添加してホウ酸チタニウム系化合物の水/アルコール混合溶液を製造する第二工程、そして、ホウ酸チタニウム系化合物を単離してホウ酸チタニウム系化合物を単離する第三工程を経て製造される。
【0032】
第一工程において、水/アルコール混合溶液は、水を30~70体積%とし、ホウ酸の添加量は、水/アルコール混合溶液100部に対して、体積比で0.01~30部の範囲とする。また、ホウ酸と水/アルコールとを混合して反応させる際の反応温度及び環境の相対湿度は、それぞれ、20~50℃及び10~80%とする。ホウ酸とアルコールから生成したホウ酸アルキルが加水分解、脱水縮合反応を生起して、加水分解、脱水縮合物のナノ粒子が生成する(非特許文献5)。
【0033】
第二工程において、第一工程で製造された反応溶液100部に四塩化チタンを体積比で8~100部添加し、反応温度及び環境の相対湿度を、それぞれ、0~35℃及び10~80%として反応させると、ホウ酸チタニウム系化合物が生成し、ホウ酸チタニウム系化合物の水/アルコール混合溶液を得ることができる。この工程において、四塩化チタンの加水分解、脱水縮合反応が進み、ホウ酸アルキルの加水分解、脱水縮合反応物と融合して、ケイ酸チタニウム系化合物が生成するが、反応温度が高すぎると、粒子径が大きくなるため、最終生成物の平均粒子径を5~100nmとするためには、0~20℃の反応温度であることがより好ましい(非特許文献2及び3)。
【0034】
第三工程において、第二工程で製造されたホウ酸チタニウム系化合物の水/アルコール溶液が、常圧乾燥、減圧乾燥等の方法で単離され、ホウ酸チタニウム系化合物を日焼け止め化粧料に使用できる粉体として製造された。生成されたホウ酸チタニウム系化合物は、TiO・Bの化学組成を有する化合物である。第二工程で製造されたホウ酸チタニウム系化合物の水/アルコール溶液は透明で、外観上、ホウ酸チタニウム系化合物が溶解しているように見えるが、ホウ酸アルキルの加水分解、脱水縮合化合物に四塩化チタニウムの加水分解、脱水縮合反応によって融合したホウ酸チタニウム系化合物はナノ粒子を形成しており、溶媒を除去すると、紫外線遮断機能を有する平均粒子径の化粧料に適した粉体が得られる。
【0035】
以下、本発明のリン酸チタニウム系化合物を含有することを特徴とする抗菌性及び消臭性化粧料について、特に、皮膚に塗布する日焼け防止抗菌性化粧料に求められる添加剤について説明するが、本発明の化粧料は、シャンプー、リンス、ヘアウォーター、ヘアクリーム、及び、トニック、ヘアカラー等の頭髪用化粧品、スキンローション、シェービング、及び、リップスティック、及び、アイカラー等の皮膚用化粧品、並びに、香水、オーデコロン、バスオイル、マニキュア、ネイルカラー等の仕上げ用化粧品に応用することができ、それぞれの化粧品に一般的な成分及び配合を適用することが好ましい。
【0036】
本発明の日焼け止め化粧料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化セリウム、タルク、マイカ、硫酸バリウム、合成金雲母、ホウケイ酸、窒化ホウ素、アルミニウム塩水酸化物、シアニン化合物、及び、フロタシアニン化合物からなる群より選ばれる1種以上の近赤外線防御剤を含有することがより好ましい。
【0037】
特に、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウムから構成される群より選ばれる1種以上であることが好ましく、酸化チタン及び/又は酸化亜鉛、であることがより好ましい。
【0038】
酸化チタンとしては公知のもので、近赤外線の散乱効果に優れている平均粒子径が0.5~10μmの酸化チタンを用いることができる(特許文献2、4、及び、6)。また、酸化チタンの結晶構造は、ルチル型、アナターゼ型、アモルファスのいずれでもよいが、優れた近赤外線防御効果の観点からルチル型が好ましい。
【0039】
また、酸化チタンは、厚さが30nm~360nmで、かつ、アスペクト比が50~300でであるものを用いると、近赤外線防御効果に加え、皮膚に塗布した際に白くなり、見た目が自然な化粧料としてより好ましい(特許文献8~10)。
【0040】
このような酸化チタンとして、例えば、COQ社製「Featheleve PT-9001K」、「Featheleve PT-7001K」、「Featheleve PT-7401K」、「Featheleve PT-7801K」、「Featheleve PT-7901K」等を挙げることができる。
【0041】
酸化亜鉛も、公知のものを用いることができるが、0.4~10μmの平均粒子径のものが好ましい(特許文献4)。特に、酸化チタン同様、厚さが30nm~360nmで、かつ、アスペクト比が50~300である板状に調整すると近赤外線防御効果の他、皮膚に塗布した際に白くなり、見た目が自然な化粧料としてより好ましい(特許文献8~10)。
【0042】
このような酸化チタン及び酸化亜鉛は、単独で用いてもよいが、併用することもできる。酸化亜鉛は、酸化チタンにはない透明性を有しており、併用することによって、日焼け止め抗菌性化粧料とした場合の白さを調整することができる。
【0043】
酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化セリウム、タルク、マイカ、硫酸バリウム、合成金雲母、ホウケイ酸、窒化ホウ素、アルミニウム塩水酸化物は、公知のものを用いることができる(特許文献3、5、並びに、7~10)。
【0044】
ただし、酸化セリウムは、平均粒子径が、400nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、160nm以下であることがより更に好ましい(特許文献3)。
【0045】
また、有機系近赤外線防御剤であるシアニン化合物及びフタロシアニン化合物を用いることがより好ましい(非特許文献1)。例えば、シアニン化合物としては、基本骨格のインドレニン誘導体とアセトアルデヒド誘導体を加熱縮合したもの、フタロシアニン化合物としては、各種置換基を導入して、吸収波長の最適化及び溶媒可溶性の付与等を図ったものばかりではなく、ベンゼン環をナフタレン環に置換えたナフトロシアニン化合物、及び、環ナフタレンの構造異性体であるアズレンを縮合したフタロシアニン類縁体(アズレノシアニン)を用いることもできる。
【0046】
更に、本発明の日焼け防止抗菌性化粧料は、光散乱効果により紫外線を遮断するリン酸チタニウム系化合物、ケイ酸チタニウム系化合物、及び、ホウ酸チタニウム系化合物に加え、光吸収効果により紫外線を遮断する有機紫外線吸収剤を更に含有させることによって、紫外線遮断効果を高めることがより更に好ましい。
【0047】
有機紫外線吸収剤としては、公知のサリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤等を用いることができるが、特に、油溶性のサリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤等であることがより好ましい。
【0048】
例えば、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキサン酸グリセリル、ジパラメトキシケイ皮酸モノー2-エチルヘキサン酸グリセリル、2,5―ジイソプロピルケイ皮酸メチル、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソベンチル、パラメトキシケイ皮酸イソポロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、及び、4-イソプロピルベンゾイルメタン、4-tert-ブチルー4’-メトキシベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、並びに、オクトクリレン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチルー1,3-ペンタンジオン、ジノキサート、メチル-O-アミノベンゾエート、3-(4-メチルベンジリデン)カンフル、オクチルトリアゾン、ジエチルアモノヒドキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(2-(4-ジエチルアモノー2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸ヘキシルエステル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(2,4-ビス([4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]フェニル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、及び、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン等の紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0049】
優れた紫外線防御効果、皮膚に塗布した際の見た目の自然さ、及び、塗布後の化粧のりの観点から、油溶性の潤滑剤を含有することが好ましい。油溶性の潤滑剤の具体例としては、例えば、エステル油、シリコーン油、炭化水素油、高級脂肪酸、及び、高級アルコール等を挙げることができる。
【0050】
エステル油としては、例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクシルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ジエチレングリコール、ジカプリン酸ネオベンチルグリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ネオベンチルグリコール、及び、安息香酸アルキル(C12~C15)等がある。
【0051】
シリコーン油としては、皮膚に塗布した際のべたつき抑制の観点からメチルポリシロキサンが特に好ましい。
【0052】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、水添ポリイソブテン等の形質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、流動オゾケライト、スクアラン、プリスタン、スクワレン、及び、イソヘキサデカン等がある。
【0053】
高級脂肪酸としては、炭素数12以上22以下の脂肪酸が好ましく、具体的には、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、及び、リノレイン酸等がある。
【0054】
高級アルコールとしては、炭素数12以上28以下のアルコールが好ましく、具体的には、オレインアルコール、2-デシルテトラデシノール、ドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等がある。
【0055】
本発明の日焼け防止抗菌性化粧料の製造方法は特に限定されず、日焼け防止抗菌性化粧料の剤型に応じて公知の方法を適宜用いることができる。例えば、リン酸チタニウム系化合物、近赤外線防御剤、及び、その他の各種成分を全て配合し、ディスパー等により均一に混合、分散する方法、水性媒体以外の全成分を配合し、ディスパー等により均一に混合した後に、水性媒体を配合して更にホモジナイザー等により撹拌し、混合、分散する方法等を挙げることができる。また、日焼け防止抗菌性化粧料を、油中水型乳化組成物又は水中油型乳化組成物とする場合には、水相と油相とをそれぞれ調製した後、両者を混合、分散する方法を用いることが好ましい。
【0056】
本発明は、本発明の日焼け防止抗菌性化粧料を皮膚に塗布するという、皮膚の紫外線及び近赤外線防御方法を提供する。この紫外線及び赤外線防御方法は、本発明の日焼け防止抗菌性化粧料を皮膚に塗布する工程を有しているだけでよい。
【0057】
本発明の紫外線及び近赤外線防御方法においては、波長280nm~400nmの紫外線防御率が、好ましくは10%以上であり、より好ましくは12%以上であり、更に好ましくは15%以上である。また、波長1500nmの近赤外線防御率が、好ましくは10%以上であり、より好ましくは12%以上であり、更に好ましくは15%以上である。
【0058】
本発明のリン酸チタニウム系化合物、近赤外線防御剤、及び、紫外線防御剤を含む日焼け防止抗菌性化粧料を皮膚に塗布する紫外線及び近赤外線防御方法において、上記紫外線防御率及び近赤外線防御率を全て満足することができる。
【発明の効果】
【0059】
本発明の抗菌性化粧料は、リン酸チタニウム系化合物が、抗菌性及び消臭性に加え、紫外線防御機能を有しているため、特に、日焼け防止抗菌性化粧料として、紫外線防御機能及び/又は近赤外線防御機能に優れているばかりか、原料又は製造や充填に由来する微生物を殺菌し増殖を抑えて、微生物による変質、変臭、及び、カビの発生を防ぐと共に、紫外線及び/又は近赤外線による免疫が抑制されて、感染症が増すリスク及び皮膚の常在菌バランスへの悪影響も防ぐことができる。しかも、リン酸チタニウム系化合物を含有する各種化粧料、例えば、シャンプー、リンス、ヘアウォーター、ヘアクリーム、及び、トニック、ヘアカラー等の頭髪用化粧品、スキンローション、シェービング、及び、リップスティック、及び、アイカラー等の皮膚用化粧品、並びに、香水、オーデコロン、バスオイル、マニキュア、ネイルカラー等の仕上げ用化粧品に応用した場合にも、原料又は製造や充填に由来する微生物を殺菌し増殖を抑えて、微生物による変質、変臭、及び、カビの発生を防ぐと共に、感染症が増すリスク及び毛髪や皮膚等の常在菌バランスへの悪影響も防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の抗菌性化粧料について、日焼け防止抗菌性化粧料を実施例として取り上げて具体的に説明する。しかし、本発明の抗菌性化粧料は、シャンプー、リンス、ヘアウォーター、ヘアクリーム、及び、トニック、ヘアカラー等の頭髪用化粧品、スキンローション、シェービング、及び、リップスティック、及び、アイカラー等の皮膚用化粧品、並びに、香水、オーデコロン、バスオイル、マニキュア、ネイルカラー等の仕上げ用化粧品に適用することが可能であり、それぞれの用途の一般的な成分及び配合を適用することが可能である。すなわち、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想によってのみ限定されるものである。
【0061】
本実施例によって製造された日焼け防止抗菌性化粧料及びそれを用いた皮膚に塗布する紫外線及び近赤外線防御方法において行われた各種評価は以下の方法を採用した。
【0062】
(紫外線防御率)
各実施例の日焼け防止抗菌性化粧料を光路長3mmの石英セルに詰め、紫外・可視・近赤外分光光度計(日立ハイテクサイエンス(株)製 「U-4100」にて、積分球モードで、紫外線(280~400nm)の透過率を測定した。また、同様にグリセリンを光路長3mmの石英セルに詰め、対照用の試料とした。測定用試料の透過率を対照用試料の透過率で除した値を透過率X(%)とし、100-X(%)を紫外線防御率とした、この値が大きい程、紫外線防御効果が高いことを意味する。
【0063】
(近赤外線防御率)
各実施例の日焼け防止抗菌性化粧料28.5mgを5cm×5cmのポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)基板(HelioScreen社製「HD6」に塗布し、15分間乾燥させて測定用試料とした。同様にグリセリンをPMMA基板に塗布し、15分間乾燥させたものを対照用試料とした。測定用試料、対照用試料それぞれについて、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3600」)にて、積分球モードで、波長1500nmの透過率を測定した。測定用試料の透過率を対照用試料の透過率で除した値を透過率X(%)とし、100-X(%)を近赤外線防御率とした、この値が大きい程、近赤外線防御効果が高いことを意味する。
【0064】
(皮膚に塗布した際の見た目の自然さ)
各実施例の日焼け防止抗菌性化粧料0.1mgを、前腕内側の約2cm×5cmの面積に塗布した直後の白さについて、とても白く、非常に不自然さを感じる場合を1点、自然な白さで違和感がない場合を5点として5段階で評価した。専門パネラー5名で評価を行い、その平均点を評価結果とした。
【0065】
(塗布後の化粧のり)
各実施例の日焼け防止抗菌性化粧料0.1mgを、前腕内側の約2cm×5cmの面積に塗布し、その上にパウダーファンデーションを塗布した際のファンデーションの「のりの良さ」を、ファンデーションが不均一で非常にのりが悪い場合を1点、ファンデーションが均一で非常にのりが良い場合を5点として5段階で評価した。専門パネラー5名で評価を行い、その平均点を評価結果とした。
【0066】
(抗菌性試験)
各実施例の日焼け防止抗菌性化粧料を、無菌水に1.0%(w/v)濃度で懸濁し、懸濁液を調製した。常法に従って寒天培地をいれたシャーレを用意し、各懸濁液を0.01ml塗布した。各シャーレを開放状態で24時間屋外に放置した後、シャーレに蓋をして、36±2℃で、5日間保持した後、400倍の顕微鏡で観察し、菌の育成状況を、顕著な菌の育成が認められた場合を1点、菌の育成が認められなかった場合を3点として3段階で評価した。
【0067】
(リン酸チタニウム系化合物の調製)
リン酸チタニウム系化合物は、四塩化チタンを、水と炭素数1~4の脂肪族アルコールの混合溶液に混合して反応させる第一工程、第一工程で製造された反応溶液にリン酸を添加してリン酸チタニウム系化合物の水/アルコール混合溶液を製造する第二工程、そして、リン酸チタニウム系化合物を単離してリン酸チタニウム系化合物を単離する第三工程を経て製造された。第一工程において、水/アルコール混合溶液は、水を50体積%とし、四塩化チタンの添加量は、水/アルコール混合溶液100部に対して、体積比で10部の範囲とし、四塩化チタンと水/アルコールとを混合して反応させる際の反応温度及び環境の相対湿度は、それぞれ、0℃及び50%とした。第二工程において、第一工程で製造された反応溶液を水/アルコール混合溶液等の溶剤で250倍に希釈した後、この反応溶液100部に、体積比で250部のリン酸を添加して反応させてリン酸チタニウム系化合物を生成した。そして、第三工程において、第二工程で製造されたリン酸チタニウム系化合物の水/アルコール溶液の減圧乾燥でリン酸チタニウム系化合物粉体として単離された。このリン酸チタニウム系化合物の平均粒子径は、電子顕微鏡観察により、約50nmであった。このリン酸チタニウム系化合物粉体を実施例1~3に供した。
【0068】
≪実施例1≫
下記に示す成分のうち、水及びエタノールを除く全成分を配合してディスパーで均一に混合した。次いで得られた混合液に水及びエタノールを添加し、ホモジナイザーを用いて均一に混合、分散し、下記組成の油中水型乳化組成物(日焼け防止抗菌性化粧料)を製造した。
リン酸化チタニウム化合物 15.0質量%
酸化チタン 15.0質量%
(CQV社製「Featheleve PT-9001K」)
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン重合体 1.0質量%
(東レ・ダウコーニング(株)製「シリコーン SH3775M」)
N-プロピオニルポリエチレンイミン・メチルポリシロキサン重合体 0.2質量%
(花王(株)製「ポリシリコーンー9」)
紫外線吸収剤 10.0質量%
(パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、BASF社製「ユビナールMC80」)
紫外線吸収剤 2.0質量%
(ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、BASF社製「チノソーブS」)
エタノール 10.0質量%
グリセリン 1.0質量%
水 45.8質量%
【0069】
≪実施例2≫
下記に示す成分のうち、水、1,3-ブチレングリコール、及び、エタノールを入れて混合して水相を調製した。一方、80℃程度の温度において、残りの成分を混合して油相を調製した。得られた水相及び油相をホモジナイザーに投入し、均一に混合、分散後、冷却して下記組成の水中油型乳化組成物(日焼け防止抗菌性化粧料)を製造した。
リン酸チタニウム系化合物 15.0質量%
酸化チタン 15.0質量%
(CQV社製「Featheleve PT-7001K」)
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 5.0質量%
(日清オイリオ(株)製「エステモールN-01」)
デカメチルシクロペンタシクロキサン 3.0質量%
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF405」)
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.6質量%
(花王(株)製「レオドール TW-S120V」)
ステアリン酸ソルビタン 0.6質量%
(花王(株)製「レオドール SP-S10V」)
乳化剤 1.5質量%
((アクリル酸 Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー分散液、セビック社製「SIMULGEL EG」)
紫外線吸収剤 10.0質量%
(パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、BASF社製「ユビナールMC80」)
紫外線吸収剤 1.0質量%
(ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、BASF社製「チノソーブS」)
エタノール 10.0質量%
1,3-ブチレングリコール 1.0質量%
水 37.3質量%
【0070】
≪実施例3≫
下記に示す成分のうち、水、増粘剤、1,3-ブチレングリコール、及び、エタノールを入れて混合して水相を調製した。一方、80℃程度の温度において、下記に示す成分のうち水酸化カリウム以外の成分を混合して油相を調製した。得られた水相及び油相をホモジナイザーに投入してある程度混合した後、水酸化カリウムを添加して更に均一に分散し、冷却して下記組成の水中油型乳化組成物(日焼け防止抗菌性化粧料)を製造した。
リン酸化チタニウム系化合物 15.0質量%
酸化チタン 15.0質量%
(CQV社製「Featheleve PT-7401K」)
パルミチン酸イソプロピル 3.0質量%
(花王(株)製「エキセパールIPP」)
メチルポリシロキサン 1.0質量%
(信越化学工業(株)製「シリコーン KF-96A-10cs」)
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.1質量%
(花王(株)製「レオドール TW-S120V」)
増粘剤 0.4質量%
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、ルーブリゾール社製「PEMULEN TR-1」)
油ゲル化剤 1.0質量%
(パルミチン酸デキストリン、千葉製粉(株)製「レオパールKL2」)
紫外線吸収剤 8.0質量%
(パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、BASF社製「ユビナールMC80」)
紫外線吸収剤 2.0質量%
(ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、BASF社製「チノソーブS」)
エタノール 5.0質量%
1,3-ブチレングリコール 3.0質量%
水酸化カリウム 0.3質量%
水 46.2質量%
【0071】
現在、上記各種評価を実施中であるが、実施例1~3の日焼け防止抗菌性化粧料は、分光光度測定、官能試験、抗菌性試験等その途中経過から、近赤外線遮光性、紫外線遮光性、及び、抗菌性に優れていることが確認されている。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の日焼け防止抗菌性化粧料は、抗菌性を有し、かつ、紫外線及び赤外線の防御効果に優れるので、例えば、日焼け止め用の化粧液、クリーム、乳液、パック等の皮膚化粧料として有用である。また、抗菌性及び消臭性を有するリン酸チタニウム系化合物を含有する化粧料は、頭髪用化粧品、皮膚用化粧品、仕上げ用化粧品として使用されている化粧品のための化粧料として幅広く利用することができる。