(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081323
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】跳上抑制装置および引戸
(51)【国際特許分類】
E05F 7/04 20060101AFI20220524BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20220524BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
E05F7/04
E05D15/06 125Z
E05D15/06 121
E05F5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192782
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】池田 祥平
【テーマコード(参考)】
2E034
2E050
【Fターム(参考)】
2E034CA13
2E034DA11
2E050NA01
2E050PA02
2E050PB03
2E050PC02
2E050PC04
2E050PD03
(57)【要約】
【課題】簡易な構成の跳上抑制装置および引戸を提供する。
【解決手段】下レールを走行する引戸の跳上抑制装置であって、上レールに沿ってスライドするレールスライダと、上レールに沿って開閉する引戸の上端部に固定されるケース体と、ケース体に取り付けられる板状部材であり、レールスライダに設けられた収容空間に下方向から挿入され、開閉方向と直交する水平方向の少なくとも一方の面に設けられた連結板側係合部を有する連結板と、連結板に対して押し付け可能な状態で水平方向に沿って移動可能に収容空間に配置され、連結板側係合部と対向する面に設けられた係止具側係合部を有し、かつ、係止具側係合部と反対側の面に設けられ、レールスライダの側面から外側に突出した凸部を有する係止具と、上レールに設けられ、凸部と当接したとき連結板に押し付けるように係止具を移動させる側壁部を有するレールホルダとを備える。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸枠の下枠に設けられた下レールまたは前記下枠の床面を開閉方向に沿って走行する下枠荷重の引戸に取り付けられる跳上抑制装置であって、
上レールに沿ってスライドするレールスライダと、
前記上レールに沿って開閉する前記引戸の上端部に固定されるケース体と、
前記ケース体に取り付けられる板状部材であり、前記レールスライダに設けられた収容空間に対して下方向から挿入され、前記開閉方向と直交する水平方向の少なくとも一方の面に設けられた連結板側係合部を有する連結板と、
前記水平方向に沿って移動可能であり前記連結板に対して押し付け可能な状態で前記収容空間に配置され、前記連結板側係合部と対向する面に設けられた係止具側係合部を有するとともに、前記係止具側係合部とは反対側の面に設けられ、前記レールスライダの側面から外側に突出した凸部を有する係止具と、
前記上レールに設けられ、前記凸部と当接したとき前記収容空間の内部で前記連結板に対して押し付けるように前記係止具を移動させる側壁部を有するレールホルダと
を備える跳上抑制装置。
【請求項2】
前記連結板は、前記開閉方向と直交する水平方向の両面に前記連結板側係合部を有し、
前記係止具は、前記連結板を両側から挟持可能な状態で前記水平方向に沿って移動可能に配置された一対であり、前記連結板側係合部と対向する面に前記係止具側係合部をそれぞれ有する
請求項1に記載の跳上抑制装置。
【請求項3】
前記レールスライダには、当該レールスライダの前記側壁部から外側に突出した前記凸部の下面と当接される弾性部が設けられている
請求項1又は2に記載の跳上抑制装置。
【請求項4】
前記レールホルダの前記側壁部の端部には、当該端部の角が滑らかに面取りされた曲線状の開口端面が形成されている
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の跳上抑制装置。
【請求項5】
前記レールホルダは、前記レールスライダに取り付けられる引戸緩衝装置による緩衝力またはブレーキ力が作用する上レールの位置に取り付けられている
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の跳上抑制装置。
【請求項6】
引戸枠の下枠に設けられた下レールまたは前記下枠の床面を開閉方向に沿って走行する下枠荷重の引戸に取り付けられる跳上抑制装置を有する引戸であって、
前記跳上抑制装置は、
上レールに沿ってスライドするレールスライダと、
前記上レールに沿って開閉する前記引戸の上端部に固定されるケース体と、
前記ケース体に取り付けられる板状部材であり、前記レールスライダに設けられた収容空間に対して下方向から挿入され、前記開閉方向と直交する水平方向の少なくとも一方の面に設けられた連結板側係合部を有する連結板と、
前記水平方向に沿って移動可能であり前記連結板に対して押し付け可能な状態で前記収容空間に配置され、前記連結板側係合部と対向する面に設けられた係止具側係合部を有するとともに、前記係止具側係合部とは反対側の面に設けられ、前記レールスライダの側面から外側に突出した凸部を有する係止具と、
前記上レールに設けられ、前記凸部と当接したとき前記収容空間の内部で前記連結板に対して押し付けるように前記係止具を移動させる側壁部を有するレールホルダと
を備える、引戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跳上抑制装置および引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、戸枠の下部に設けられた下レール上を走行させる非吊下式引戸(以下、これを単に「引戸」と言う場合があるものとする。)においては、戸枠に対し上下方向(重力方向)に僅かな遊びをもって組み付けられている。このような引戸においては、例えばユーザが引戸を閉める際、急激に閉じることのないようにその動作を緩慢にする引戸緩衝装置(クローザやブレーキ機構)が引戸の上端の左右両端部に取り付けられている。
【0003】
このような引戸では、当該引戸が閉じられる際、引戸緩衝装置によって引戸の上端部にのみブレーキ力が作用し、引戸の下端部にはブレーキ力が作用せずに慣性力が働いているため、引戸が傾いて跳ね上がることがある。また、引戸の走行中に上端部が引戸緩衝装置によって走行方向と反対方向に緩衝力やブレーキ力を受けるために発生するモーメントによって引戸が跳ね上がることがある。
【0004】
このような引戸の跳ね上がりは、引戸が上枠に衝突することによる騒音や下ローラの脱輪の原因となり、また引戸緩衝装置の耐久性にも悪影響を及ぼしかねない。更には、引戸緩衝装置による引戸の円滑な引き込みの妨げにもなる。これらのことから、引戸の跳ね上がりの防止や跳ね上がりを抑制することが求められている。引戸の跳ね上がりを抑制するものとして引戸の上部ガイド装置(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0005】
この特許文献1における引戸の上部ガイド装置では、スプリングが内蔵された内蔵ダンパ部材の上端部がランナ体の下面に当接している。このため、ランナ体と引戸の上下方向の遊び等に起因して引戸が跳ね上がろうとする場合であっても、上部ガイド装置における内蔵ダンパ部材のダンパ作用により引戸固定体とランナ体との急激な相対距離の変化を抑制できるので、引戸の跳ね上げを効果的に抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の引戸の上部ガイド装置においては、内蔵ダンパ部材を上部ガイド装置に組み込まなければならず構造が複雑化すると共に、内蔵ダンパ部材は比較的高価な部品でありコストアップにつながることが懸念される。
【0008】
また、特許文献1に記載の引戸の上部ガイド装置においては、上レールに引戸を吊り込む際、内蔵ダンパ部材の抗力に反して引戸固定体を引戸の取付部の高さに合わせなければならず、吊り込み時の操作性が良いとはいえなかった。さらに、内蔵ダンパ部材は、そのダンパ作用によりランナ体に対して常に荷重がかかった状態となっているため、引戸の走行時の走行抵抗となっている。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながら使い勝手の優れた跳上抑制装置および引戸を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明の跳上抑制装置においては、引戸枠の下枠に設けられた下レールまたは前記下枠の床面を開閉方向に沿って走行する下枠荷重の引戸に取り付けられる跳上抑制装置であって、上レールに沿ってスライドするレールスライダと、前記上レールに沿って開閉する前記引戸の上端部に固定されるケース体と、前記ケース体に取り付けられる板状部材であり、前記レールスライダに設けられた収容空間に対して下方向から挿入され、前記開閉方向と直交する水平方向の少なくとも一方の面に設けられた連結板側係合部を有する連結板と、前記水平方向に沿って移動可能であり前記連結板に対して押し付け可能な状態で前記収容空間に配置され、前記連結板側係合部と対向する面に設けられた係止具側係合部を有するとともに、前記係止具側係合部とは反対側の面に設けられ、前記レールスライダの側面から外側に突出した凸部を有する係止具と、前記上レールに設けられ、前記凸部と当接したとき前記収容空間の内部で前記連結板に対して押し付けるように前記係止具を移動させる側壁部を有するレールホルダとを備える。
【0011】
本発明において、前記連結板は、前記開閉方向と直交する水平方向の両面に前記連結板側係合部を有し、前記係止具は、前記連結板を両側から挟持可能な状態で前記水平方向に沿って移動可能に配置された一対であり、前記連結板側係合部と対向する面に前記係止具側係合部をそれぞれ有することが好ましい。
【0012】
本発明において、前記レールスライダには、当該レールスライダの前記側壁部から外側に突出した前記凸部の下面と当接される弾性部が設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記レールホルダの前記側壁部の端部には、当該端部の角が滑らかに面取りされた曲線状の開口端面が形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明において、前記レールホルダは、前記レールスライダに取り付けられる引戸緩衝装置による緩衝力またはブレーキ力が作用する上レールの位置に取り付けられていることが好ましい。
【0015】
また、本発明においては、引戸枠の下枠に設けられた下レールまたは前記下枠の床面を開閉方向に沿って走行する下枠荷重の引戸に取り付けられる跳上抑制装置を有する引戸であって、前記跳上抑制装置は、上レールに沿ってスライドするレールスライダと、前記上レールに沿って開閉する前記引戸の上端部に固定されるケース体と、前記ケース体に取り付けられる板状部材であり、前記レールスライダに設けられた収容空間に対して下方向から挿入され、前記開閉方向と直交する水平方向の少なくとも一方の面に設けられた連結板側係合部を有する連結板と、前記水平方向に沿って移動可能であり前記連結板に対して押し付け可能な状態で前記収容空間に配置され、前記連結板側係合部と対向する面に設けられた係止具側係合部を有するとともに、前記係止具側係合部とは反対側の面に設けられ、前記レールスライダの側面から外側に突出した凸部を有する係止具と、前記上レールに設けられ、前記凸部と当接したとき前記収容空間の内部で前記連結板に対して押し付けるように前記係止具を移動させる側壁部を有するレールホルダとを備える。
【発明の効果】
【0016】
簡易な構成でありながら使い勝手の優れた跳上抑制装置および引戸を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態における跳上抑制装置を備えた引戸が上レールに組み込まれた状態を示す略線的斜視図である。
【
図2】本実施の形態における跳上抑制装置を備えたレールスライダが引戸緩衝装置に組付けられた状態を示す平面図である。
【
図3】本実施の形態における跳上抑制装置を備えたレールスライダが引戸と切り離された状態を示す略線的斜視図である。
【
図4】本実施の形態における跳上抑制装置を備えたレールスライダが上レール(透明な状態および非透明な状態)に組み付けられた状態を示す略線的斜視図である。
【
図5】本実施の形態における跳上抑制装置を備えたレールスライダが上レールに組み付けられた状態を示す側面図である。
【
図6】本実施の形態における跳上抑制装置が組み込まれたレールスライダおよびケース体の構成を示す略線的斜視図および分解斜視図である。
【
図7】本実施の形態における跳上抑制装置を構成するレールスライダ、連結板、係止具、および、ケース体の組付状態を示す断面図である。
【
図8】本実施の形態における跳上抑制装置のレールスライダの構成を示す略線図である。
【
図9】本実施の形態における跳上抑制装置の係止具の構成を示す略線的斜視図である。
【
図10】本実施の形態における跳上抑制装置の連結板の構成を示す略線図である。
【
図11】本実施の形態における跳上抑制装置の連結板の構成を示す断面図である。
【
図12】本実施の形態における跳上抑制装置のレールホルダの構成を示す略線図である。
【
図13】本実施の形態における跳上抑制装置のレールスライダとレールホルダとの相対位置関係を示す略線的斜視図である。
【
図14】本実施の形態におけるレールスライダの係止具と連結板とが通常位置および係合位置にある状態を示す略線的断面図である。
【
図15】本実施の形態におけるレールスライダとレールホルダと係止具との相対位置の遷移(1)を示す略線図及び断面図である。
【
図16】本実施の形態におけるレールスライダとレールホルダと係止具との相対位置の遷移(2)を示す略線図及び断面図である。
【
図17】本実施の形態におけるレールスライダの係止具と連結板とが係合する際の弾性部による機能の説明に供する略線的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を括弧を付して記載している。
【0019】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態にかかる跳上抑制装置は、引戸枠の下枠に設けられた下レールまたは前記下枠の床面を開閉方向に沿って走行する下枠荷重の引戸(D)に取り付けられる跳上抑制装置(100)であって、上レール(L1)に沿ってスライドするレールスライダ(10)と、前記上レール(L1)に沿って開閉する前記引戸(D)の上端部に固定されるケース体(30)と、前記ケース体(30)に取り付けられる板状部材であり、前記レールスライダ(10)に設けられた収容空間(11g)に対して下方向から挿入され、前記開閉方向(ab方向)と直交する水平方向(ef方向)の少なくとも一方の面に設けられた連結板側係合部(59)を有する連結板(50)と、前記水平方向(ef方向)に沿って移動可能であり前記連結板(50)に対して押し付け可能な状態で前記収容空間(11g)に配置され、前記連結板側係合部(59)と対向する面に設けられた係止具側係合部(23)を有するとともに、前記係止具側係合部(23)とは反対側の面に設けられ、前記レールスライダ(10)の側面(11b)から外側に突出した凸部(22)を有する係止具(20)と、前記上レール(L1)に設けられ、前記凸部(22)と当接したとき前記収容空間(11g)の内部で前記連結板(50)に対して押し付けるように前記係止具(20)を移動させる側壁部(72b)を有するレールホルダ(70)と備える。
【0020】
〔2〕上記跳上抑制装置(100)において、前記連結板(50)は、前記開閉方向(ab方向)と直交する水平方向(ef方向)の両面に前記連結板側係合部(59)を有し、前記係止具(20)は、前記連結板(50)を両側から挟持可能な状態で前記水平方向(ef方向)に沿って移動可能に配置された一対であり、前記連結板側係合部(59)と対向する面に前記係止具側係合部(23)をそれぞれ有することが好ましい。
【0021】
〔3〕上記跳上抑制装置(100)において、前記レールスライダ(10)には、当該レールスライダ(10)の前記側壁部(11b)から外側に突出した前記凸部(22)の下面と当接される弾性部(16)が設けられていることが好ましい。
【0022】
〔4〕上記跳上抑制装置(100)において、前記レールホルダ(70)の前記側壁部(72)の端部には、当該端部の角が滑らかに面取りされた曲線状の開口端面(72bf)が形成されていることが好ましい。
【0023】
〔5〕上記跳上抑制装置(100)において、前記レールホルダ(70)は、前記レールスライダ(10)に取り付けられる引戸緩衝装置(CL)による緩衝力またはブレーキ力が作用する上レール(L1)の位置に取り付けられていることが好ましい。
【0024】
〔6〕本発明の代表的な実施の形態にかかる引戸は、引戸枠の下枠に設けられた下レールまたは前記下枠の床面を開閉方向に沿って走行する下枠荷重の引戸(D)に取り付けられる跳上抑制装置(100)を有する引戸(D)であって、前記跳上抑制装置(100)は、上レール(L1)に沿ってスライドするレールスライダ(10)と、前記上レール(L1)に沿って開閉する前記引戸(D)の上端部に固定されるケース体(30)と、前記ケース体(30)に取り付けられる板状部材であり、前記レールスライダ(10)に設けられた収容空間(11g)に対して下方向から挿入され、前記開閉方向(ab方向)と直交する水平方向(ef方向)の少なくとも一方の面に設けられた連結板側係合部(59)を有する連結板(50)と、前記水平方向(ef方向)に沿って移動可能であり前記連結板(50)に対して押し付け可能な状態で前記収容空間(11g)に配置され、前記連結板側係合部(59)と対向する面に設けられた係止具側係合部(23)を有するとともに、前記係止具側係合部(23)とは反対側の面に設けられ、前記レールスライダ(10)の側面(11b)から外側に突出した凸部(22)を有する係止具(20)と、前記上レール(L1)に設けられ、前記凸部(22)と当接したとき前記収容空間(11g)の内部で前記連結板(50)に対して押し付けるように前記係止具(20)を移動させる側壁部(72b)を有するレールホルダ(70)とを備える。
【0025】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態にかかる跳上抑制装置を備えたレールスライダが取り付けられている引戸の構成について
図1乃至
図5を参照しながら詳細に説明する。ここで、
図1は、本実施の形態における跳上抑制装置を備えた引戸が上レールに組み込まれた状態を示す略線的斜視図である。
図2は、本実施の形態における跳上抑制装置を備えたレールスライダが引戸緩衝装置に組付けられた状態を示す平面図である。
図3は、本実施の形態における跳上抑制装置を備えたレールスライダが引戸と切り離された状態を示す略線的斜視図である。
図4は、本実施の形態における跳上抑制装置を備えたレールスライダが上レール(透明な状態および非透明な状態)に組み付けられた状態を示す略線的斜視図である。
図5は、本実施の形態における跳上抑制装置を備えたレールスライダが上レールに組み付けられた状態を示す側面図である。
【0026】
図1乃至
図5に示すように、本実施の形態においては、建物等の構造物における開口の周縁部に固定された引戸枠(図示せず)の下枠に設けられた下レールまたは下枠の床面を開閉方向に沿ってスライド移動する下枠荷重の引戸Dを対象とするものである。
【0027】
なお、
図1に示すように、説明の都合上、引戸Dの開閉方向を左右方向と言う場合があるものとする。すなわち、引戸Dを閉じる矢印a方向を閉方向または左方向、引戸Dを開く矢印b方向を開方向または右方向とする。また、引戸Dの開閉方向(矢印ab方向)と直交する垂直な重力方向(矢印cd方向)を上下方向と言う場合があるものとする。すなわち、引戸Dが跳ね上がる矢印c方向を上方向、引戸Dが下レールに押し付けられる矢印d方向を下方向とする。さらに、引戸Dの開閉方向(矢印ab方向)と直交する水平な奥行方向(矢印ef方向)を前後方向または水平方向と言う場合があるものとする。すなわち引戸Dが紙面の手前側から奥側へ押される際の矢印e方向を奥側、引戸Dが紙面の奥側から手前側へ引っ張られる際の矢印f方向を手前側とする。但し、この左右方向、上下方向および前後方向(水平方向)は、説明の便宜上用いられるのであって、引戸Dの使用状況によっては異なる方向として定義することができる。
【0028】
引戸Dは、平面視略長方形状からなる板状部材の戸本体D1と、その戸本体D1の上端側の左右両端部に収容された状態で固定された全体略直方体形状からなる1対のケース体30と、当該1対のケース体30の上方にそれぞれ取り付けられた1対のレールスライダ10と、閉方向(矢印a方向)に設けられたレールスライダ10に取り付けられている引戸緩衝装置CLとを備えている。この場合、
図2に示すように、閉方向(矢印a方向)に設けられたレールスライダ10に対してのみ引戸緩衝装置CLが取り付けられている。但し、これに限らず、開方向(矢印b方向)に設けられたレールスライダ10に対して引戸緩衝装置CLが取り付けられていてもよく、また、閉方向(矢印a方向)および開方向(矢印b方向)の双方に引戸緩衝装置CLが取り付けられていてもよい。
【0029】
引戸Dの戸本体D1は、種々の材料からなる平面視長方形状の板状部材であり、その上端側の両端部(角部)には、ケース体30を収容して固定するための収容凹部KC(
図3)がそれぞれ形成されている。この戸本体D1のそれぞれの収容凹部KCにケース体30が収容された状態で一体に固定される。
【0030】
レールスライダ10および引戸緩衝装置CLは、引戸枠の上枠に設けられた上レールL1に取り付けられ、引戸D全体が開閉方向(矢印ab方向)へスライド移動可能となる。また、上レールL1には、後述するレールホルダ70が当該上レールL1と一体に取り付けられている。
【0031】
この上レールL1は、引戸枠の上枠に固定されており、
図5に示すように、下方に開口する略U字状に形成されている。上レールL1は、長手方向に延在する天壁部L1a、その天壁部L1aの短手側両端縁から下方向へそれぞれ延びる1対の側壁部L1bと、その1対の側壁部L1bの下方向先端縁から前後方向(矢印ef方向)に沿って互いに近づくように延びて対向した状態に隔離配置された1対のフランジ部L1cとを備えている。なお、一対の側壁部L1bおよび一対のフランジ部L1cともに、天壁部L1aと同様に長手方向に延在している。上レールL1は、そのU字状の内側の収容空間にレールスライダ10のほぼ全部を収容した状態で、当該レールスライダ10を当該上レールL1に沿って開閉方向(矢印ab方向)にスライドさせる。また、上レールL1は、そのU字状の内側の収容空間であって、閉方向(矢印a方向)の端部にレールホルダ70を収容している。
【0032】
次に、ケース体30およびレールスライダ10について説明するが、ここでは、閉方向(矢印a方向)に設けられたケース体30およびレールスライダ10を
図6乃至
図9を参照しながら説明する。
図6は、本実施の形態における跳上抑制装置が組み込まれたレールスライダおよびケース体の構成を示す略線的斜視図および分解斜視図である。
図7は、本実施の形態における跳上抑制装置を構成するレールスライダ、連結板、係止具、および、ケース体の組付状態を示す断面図である。
図8は、本実施の形態における跳上抑制装置のレールスライダの構成を示す略線図である。
図9は、本実施の形態における跳上抑制装置の係止具の構成を示す略線的斜視図である。
【0033】
ケース体30は、
図6および
図7に示すように、全体略直方体形状からなる部材であり、後述する連結板50を収容した状態で当該連結板50を固定するケース本体部31と、当該ケース本体部31の閉方向(矢印a方向)に対して一体に設けられたパネル部33とを備えている。
【0034】
ケース体30のケース本体部31は、その内側に連結板50の連結板本体部51を収容可能な収容空間31s(
図6)を有し、かつ収容空間31sの上方向(矢印c方向)に開口を有する略直方体形状の箱状部材である。ケース本体部31の収容空間31sに通じる上方向(矢印c方向)の開口は、連結板50の連結板本体部51の上方向部分が収容空間31sから一部飛び出した状態でケース本体部31に固定するために設けられている。
【0035】
また、ケース本体部31は、収容空間31sと連通するように奥行方向(矢印ef方向)に貫通された貫通孔31hを有する。したがって、ケース本体部31の収容空間31sに連結板50が収容された状態で、固定ピン52がケース本体部31の貫通孔31hを介して連結板本体部51の貫通孔51hに嵌入されると、ケース体30に対して連結板50が上下方向(矢印cd方向)および開閉方向(矢印ab方向)に規制された状態で固定される。
【0036】
ケース体30のパネル部33は、ケース本体部31の閉方向(矢印a方向)の側に一体に設けられている。このパネル部33は、上方向の端部に円柱形状の操作子33nが取り付けられている。ケース体30においては、パネル部33の操作子33nが回転されたことに応じて、連結板50の連結板本体部51を前後方向(矢印ef方向)へ位置調整することが可能となる。
【0037】
レールスライダ10は、
図6乃至
図9に示すように、全体略直方体形状からなる部材であり、戸本体D1に固定されたケース体30と上下方向(矢印cd方向において)ほぼ対向した位置に配置される。レールスライダ10は、上レールL1に収容された状態で当該上レールL1に沿って移動する樹脂材料から形成されたスライド本体部11、スライド本体部11が上レールL1に沿って移動するために上レールL1の1対のフランジ部L1cを上下方向から挟み込んだ状態で摺動する左右1対のスライダ部12、スライド本体部11の開方向(矢印b方向)の一端面11dから更に開方向へ突出した角柱形状の取付部14を有している。
【0038】
スライド本体部11は、上方向(矢印c方向)の天面11a、当該天面11aと垂直な前後方向(矢印ef方向)の1対の側面11b、および、天面11aと対向配置された下方向(矢印d方向)の底面11cを有している。また、スライド本体部11には、天面11a、側面11bおよび底面11cとは垂直な開方向(矢印b方向)を向いた一端面11dを有し、その一端面11dに引戸緩衝装置CLと結合するための略立方体形状からなる取付部14が設けられている。この取付部14は、上下方向(矢印cd方向)に沿って貫通した状態で形成された雌ネジ部14mを有している。さらに、スライド本体部11には、一端面11dと背向し、閉方向(矢印a方向)を向いた他端面11eを有している。
【0039】
また、
図8に示すように、スライド本体部11は、連結板50の上方部分を下方向(矢印d方向)の開口から部分的に収容可能な断面長方形状の貫通孔からなる収容空間11gを有している。この収容空間11gは、スライド本体部11を上下方向(矢印cd方向)に貫通しており、上方向(矢印c方向)の開口からは後述する2つの係止具20を収容可能である。
【0040】
図8に示すように、収容空間11gの上方向(矢印c方向)および下方向(矢印d方向)の開口は、略十字形状を有している。収容空間11gは、連結板50を収容するためにスライド本体部11の長手方向に沿って長く形成された連結板用収容空間部分11gaと、2つの係止具20を収容するためにスライド本体部51の長手方向に沿って連結板用収容空間部分11gaよりも短く形成された係止具用収容空間部分11gbとを有し、連結板用収容空間部分11gaおよび係止具用収容空間部分11gbが空間として連通し、全体として略十字形状を画成している。
【0041】
さらに、スライド本体部11は、両側の側面11bのほぼ中央に、前後方向(矢印ef方向)に貫通した断面長方形状の貫通孔11bhが設けられている。この貫通孔11bhは、上述した収容空間11gと交差するように連通している。
【0042】
スライド本体部11における側面11bには、当該スライド本体部11の下方端と貫通孔11bhとの間であって、貫通孔11bhを塞ぐことのない位置に当該側面11bから前後方向(矢印ef方向)へ突出した薄板状の第1スライダ12aが一体に設けられている。さらに、スライド本体部11における側面11bには、第1スライダ12aの下方向であって、側面11bの下方端に当該側面11bから前後方向(矢印ef方向)へ突出した薄板状の第2スライダ12bが一体に設けられている。
【0043】
第1スライダ12aおよび第2スライダ12bは、互いに平行に配置されている。第1スライダ12aと第2スライダ12bとの間の隙間は、上レールL1のフランジ部L1cの厚さよりも僅かに大きい。第1スライダ12aは、第2スライダ12bよりも開閉方向(矢印ab方向)の長さが短い。なお、第1スライダ12aの開閉方向(矢印ab方向)の長さが、第2スライダ12bの開閉方向(矢印ab方向)より長くてもよく、また、双方共に同じ長さであってもよい。また、第1スライダ12aおよび第2スライダ12bは、側面11bからの突出量が等しく、かつ、レールスライダ10が上レールL1に吊り込まれる際、上レールL1の側壁部L1bの内周面に接触することのない突出量に設定されている。因みに、第1スライダ12aの突出量が第2スライダ12bの突出量よりも大きくてもよい。
【0044】
実際上、レールスライダ10が上レールL1に吊り込まれる際、スライダ部12の第1スライダ12aが上レールL1の内側空間に収容されるが、第2スライダ12bは上レールL1の下方向(矢印d方向)の外側に位置付けられる。第1スライダ12aおよび第2スライダ12bは、スライド本体部11と一体に形成されている。ただし、これに限るものではなく、第1スライダ12aおよび第2スライダ12bは、スライド本体部11に後付けにより取り付けられていてもよい。
【0045】
スライダ部12の第1スライダ12aおよび第2スライダ12bは、
図5に示したように、上レールL1の側壁部L1bとの間でフランジ部L1cを介してスライド可能となっている。すなわち、上レールL1のフランジ部L1c、第1スライダ12aおよび第2スライダ12bは、摩擦抵抗の少ない樹脂材料でかつ摩擦抵抗の少ない表面に仕上げられている。ただし、これに限らず、第1スライダ12aおよび第2スライダ12bの代わりに、上レールL1のフランジ部L1cを転がりながら移動する第1ローラおよび第2ローラによりフランジ部L1cが挟持されるような構造であってもよい。
【0046】
スライド本体部11の側面11bに設けられた貫通孔11bhの内側空間には、断面略逆U字状の弾性部16が当該側面11bから前後方向(矢印ef方向)へ突出することのないように設けられている。弾性部16は、貫通孔11bhの内側であって、かつ、収容空間11gの係止具用収容空間部分11gbに配置されている。弾性部16の前後方向(矢印ef方向)における幅は、係止具用収容空間部分11gbの短手方向の長さとほぼ同じか、僅かに短くされており、上述した連結板50を収容可能な連結板用収容空間部分11gaを弾性部16によって塞ぐことのないように設定されている。
【0047】
また、弾性部16は、中央部分に上方向に僅かに飛び出た逆V字状の突起16kが設けられている。弾性部16は、自身の存在によって貫通孔11bhの開口を一部塞いでおり、貫通孔11bhにおいて突起16kの上方には僅かな隙間が存在している。弾性部16は、上下方向(矢印cd方向)に弾性変形可能である。
【0048】
図9に示すように、係止具20は、全体的に略長方形の薄板状の樹脂からなる係止具本体21からなり、その係止具本体21の一方の面には、その中央部分から突出した凸部22が一体に設けられている。凸部22は、レールスライダ10の移動方向(矢印ab方向)に沿って形成されている。凸部22における係止具本体21の一方の面からの突出量は、係止具20がスライダ本体部11に形成された収容空間11gの係止具用収容空間部分11gbに収容された際、その側面11bから所定の長さだけ突出するように設定されている。具体的には、後述するレールホルダ70における1対の側壁部72bに接触し、係止具20が前後方向(矢印ef方向)へ移動可能な長さである。
【0049】
係止具本体21の他方の面には、その全面にわたって、凹凸状に形成された係止具側係合部23が設けられている。係止具側係合部23は、レールスライダ10の移動方向に沿って形成された凸部と凹部とが交互に複数配置されている。係止具側係合部23は、後述する連結板50の連結板側係合部59と係合されたとき、レールスライダ10の移動方向(矢印ab方向)とは直交する上下方向(矢印cd方向)の移動が規制される形状であればよい。この場合の係止具側係合部23は、具体的には、鋸の歯のような形状であるが、これに限るものではなく、その他種々の形状であってもよい。
【0050】
ここで、係止具20の凸部22が係止具本体21の略中央に設けられているため、レールスライダ10のスライダ本体部11の側面11bから飛び出ている凸部22がレールホルダ70における1対の側壁部72bに接触して外側から押されたとき、係止具20の係止具側係合部23が傾くことなく全体的にバランス良く内側へ移動することになる。
【0051】
次に、連結板50について
図10および
図11を参照しながら説明する。
図10は、本実施の形態における跳上抑制装置の連結板の構成を示す略線図である。
図11は、本実施の形態における跳上抑制装置の連結板の構成を示す断面図である。
【0052】
連結板50は、
図6および
図10および
図11に示すように、上下方向(矢印cd方向)に長い平面視長方形状の薄板状部材からなる連結板本体部51と、連結板本体部51をケース体30に固定するための固定ピン52とを有している。連結板本体部51は、その中央の下部に固定ピン52を挿通するための貫通孔51hを有している。
【0053】
連結板本体部51は、一方の側のほぼ中央に上方係合部53、一方の側の下方に下方係合部55を有している。上方係合部53は、連結板本体部51のほぼ中央の端部に一体に形成され、下方係合部55は連結板本体部51の下方端部に一体に形成されている。連結板本体部51の上方係合部53および下方係合部55は、
図7に示すように、パネル部33の一部と係合される。
【0054】
連結板本体部51の上方向の両端部には、下方向(矢印d方向)に向かって鉤状に折れ曲がった形状の係止爪57a、57bが一体に形成されている。ケース体30のケース本体部31に連結板50が一体に固定されるとともに、連結板50はレールスライダ10の収容空間11gに対して上下方向(矢印cd方向)に所定量の遊びをもって挿入される。このとき、
図7に示すように、連結板50が最下方に移動した場合でも、係止爪57a、57bがレールスライダ10の収容空間11gの中に形成された段差部11pa、11pbに係止され、レールスライダ10からの脱落が防止される。
【0055】
連結板本体部51の上半分の部位には、凹凸状に形成された連結板側係合部59が設けられている。連結板側係合部59は、レールスライダ10の移動方向(矢印ab方向)に沿って形成された凸部と凹部とが交互に複数配置されている。この場合、連結板側係合部59の凸部および凹部の数は、係止具側係合部23の凸部および凹部の数と同じとする。但し、これに限らず、いずれか一方の凸部および凹部の数の方が多く、または、少なくてもよい。
【0056】
連結板側係合部59においても、係止具20の係止具側係合部23と係合されたとき、レールスライダ10の移動方向(矢印ab方向)とは直交する上下方向(矢印cd方向)の移動が規制される形状であればよい。この場合の連結板側係合部59は、具体的には、鋸の歯のような形状であるが、これに限るものではなく、その他種々の形状であってもよい。但し、連結板側係合部59および係止具側係合部23の形状は互いに同じであることが好ましい。
【0057】
ところで、
図1、
図3および
図4に示すように、上レールL1の閉方向(矢印a方向)の端部には、レールホルダ70が取り付けられている。実際上、レールホルダ70は、レールスライダ10に取り付けられた引戸緩衝装置CLによる緩衝力またはブレーキ力が作用するときレールスライダ10の位置に取り付けられている。なお、レールホルダ70は、上レールL1の閉方向(矢印a方向)の端部にのみ取り付けられているが、これに限るものではなく、上レールL1の開方向(矢印b方向)の端部に対して取り付けられるようにしてもよい。
【0058】
このレールホルダ70について
図12及び
図13を参照しながらその構成を説明する。
図12は、本実施の形態における跳上抑制装置のレールホルダの構成を示す略線図である。
図13は、本実施の形態における跳上抑制装置のレールスライダとレールホルダとの相対位置関係を示す略線的斜視図である。
【0059】
レールホルダ70は、下方向に開口する全体的に断面逆U字状に形成された樹脂からなる部品であり、レールホルダ本体72と、上レールL1の凹部に嵌合される突出した部分である嵌合部74とを有する。レールホルダ本体72は、長手方向に延在する天壁部72aと、その天壁部72aの短手側両端縁から下方向へそれぞれ延びる1対の側壁部72bとを備えている。嵌合部74は、天壁部72aと一体に形成されている。なお、一対の側壁部72bについても、天壁部72aと同様に長手方向に延在している。側壁部72bの長手方向の長さは、係止具20の係止具側係合部23の開閉方向(矢印ab方向)の長さよりも長く、かつ、連結板50の連結版側係合部59の開閉方向(矢印ab方向)の長さよりも長い。
【0060】
嵌合部74は、天壁部72aの上面から突出し、長手方向に延在する断面長方形状の部分である。この嵌合部74は、上レールL1の天壁部L1aの内側に形成された溝部L1am(
図5、
図13)に嵌合される部分である。嵌合部74の長手方向の中央部分には、上レールL1にネジで取り付けるための貫通孔74hが設けられている。
【0061】
図12に示すように、レールホルダ本体72は、そのU字状の内側の収容空間70sを有し、その収容空間70sに対して、引戸Dと共に走行するレールスライダ10が進入および退出可能となっている。この収容空間70sは、天壁部72aの内側の面である内側天井面72as、側壁部72bの内側の面でなる内側面72bsによって画成される空間である。
【0062】
一対の側壁部72bにおける内側面72bsと内側面72bsとの間の距離d1(
図12)は、レールスライダ10のスライダ本体部11の側壁11bから外側に飛び出ている1対の係止具20における2個の凸部22と凸部22との最大幅d2(
図8)よりも狭く形成されている。
【0063】
なお、一対の側壁部72bの内側面72bsの両側端部には、収容空間70sの開口を拡げるように当該両側端部の角が滑らかに面取りされた曲線状の開口端面72bfがそれぞれ形成されている。この開口端面72bfは、引戸Dの開閉方向(矢印ab方向)への移動とともに、レールホルダ70の収容空間70sにレールスライダ10が円滑に進入し、かつ退出するために形成されている。
【0064】
次に、このような構成の引戸Dの組み立て方法について説明する。最初に、
図6に示しように、ケース体30のケース本体部31に設けられた収容空間31sに連結板50の連結板本体部51を収容する。このときケース本体部31の貫通孔31hの位置と連結板本体部51の貫通孔51hの位置とを合わせた状態で固定ピン52によりケース本体部31と連結板50の連結板本体部51とを一体に固定する。
【0065】
これにより、ケース体30に対して連結板50が開閉方向(矢印ab方向)および上下方向(矢印cd方向)への動きが規制された状態となるが、引戸Dが跳ね上げられる時には、ケース体30および連結板50が引戸Dと一体になって上下方向(矢印cd方向)へ移動可能な状態となる。
【0066】
一方、レールスライダ10のスライド本体部11に設けられた収容空間11gのうち中央の連結板用収容空間部分11gaを除く2つの係止具用収容空間部分11gbに対して、上方向(矢印c方向)から2個の係止具20を挿入する。このとき、係止具20の凸部22が弾性部16の上に載置されると共に、スライド本体部11の側面11bに設けられた貫通孔11bhから凸部22が外側に飛び出した状態となる。
【0067】
ケース体30と一体に取り付けられた連結板50の連結板本体部51は、レールスライダ10のスライド本体部11に設けられた収容空間11gのうち中央の連結板用収容空間部分11gaに対して、下方向(矢印d方向)から挿入される。実際には、連結板50の全てではなく、連結板側係合部59の部分が挿入された状態となる。このとき、連結板50とレールスライダ10とは上下方向(矢印cd方向)において相対移動可能な状態であるが、連結板本体部51の係止爪57a、57bがレールスライダ10のスライダ本体部11の収容空間11gの中に形成された段差部11pa、11pbに係止され、レールスライダ10からの脱落が防止されている(
図7)。
【0068】
これにより、
図6に示すように、ケース体30とレールスライダ10とが連結板50を介して互いに取り付けられた状態となる。
【0069】
このようにケース体30と連結板50とが一体に組み込まれたレールスライダ10は、
図2に示すように、当該レールスライダ10の取付部14の雌ネジ部14mと引戸緩衝装置CLの被取付部41とを対向配置した状態でネジ14nによって取り付けられる。
図3には、ケース体30、レールスライダ10、係止具20、連結板50、および、引戸緩衝装置CLが一体に取り付けられた状態が示されている。
【0070】
なお、この場合、閉方向(矢印a方向)に設けられたレールスライダ10に対して引戸緩衝装置CLが取り付けられており、開方向(矢印b方向)のレールスライダ10には取り付けられていないが、引戸緩衝装置CLは引戸Dが開方向(矢印b方向)へ移動する際にもブレーキ作用をもたらすことができる。なお、閉方向(矢印a方向)のレールスライダ10に引戸緩衝装置CLが取り付けられているが、これに限るものではなく、開方向(矢印b方向)のレールスライダ10に取り付けられていてもよく、また引戸緩衝装置CLの代わりに他の構成からなるブレーキ機構やストッパ機構を用いてもよい。
【0071】
図5に示すように、レールスライダ10は、スライド本体部11の第1スライダ12aおよび第2スライダ12bによって上レールL1の1対のフランジ部L1cを挟み付けた状態に取り付けられる。この場合、レールスライダ10は、上レールL1に対して上下方向(矢印cd方向)および前後方向(矢印ef方向)への動きが規制され、開閉方向(矢印ab方向)へのスライド移動のみが許容される。その後、
図13に示すように、上レールL1の天壁部L1aの内側に形成された溝部L1amにレールホルダ70の嵌合部74を嵌合させた後、貫通孔74hを介して天壁部L1aに対してネジにより固定する。これにより上レールL1の内側空間に対してレールホルダ70が収容された状態で取り付けられる。
【0072】
図4には、レールホルダ70が取り付けられた上レールL1に対してレールスライダ10がスライド可能に取り付けられた状態が示されている。このレールスライダ10には、引戸緩衝装置CLおよびケース体30が既に取り付けられた状態にある。したがって、レールスライダ10、引戸緩衝装置CLおよびケース体30が上レールL1に取り付けられた状態において、引戸枠の上枠に対して当該上レールL1が取り付けられる。かくして、
図13に示すように、当該ケース体30、レールスライダ10、係止具20、連結板50および上レールL1に固定されたレールホルダ70によって跳上抑制装置としての跳上抑制機構100が構築されることになる。
【0073】
その後、引戸Dの下ローラ(図示せず)を下レールに乗せることにより、当該引戸Dを戸枠に対して開閉可能な状態に取り付ける。最後に、
図3に示すように、ケース体30が引戸Dの戸本体D1の上端側の両側端部(角部)に形成された収容凹部KCに収容された状態で一体に取り付けられて固定される(
図1、
図13)。このとき、レールスライダ10は、引戸Dの重量を受けることなく、引戸Dを開閉方向(矢印ab方向)へガイドすることができる。
【0074】
このような取付方法により、上レールL1に対する引戸Dの吊り込みを容易にすることができる。
図1には、ケース体30を介してレールスライダ10および引戸緩衝装置CLが戸本体D1に取り付けられた状態が示されている。このようにして、跳上抑制機構100が組み込まれた引戸Dが戸枠に取り付けられる。
【0075】
以上の構成において、引戸Dの跳ね上げを跳上抑制機構100によって抑制する動作について
図14乃至
図17を用いて説明する。
図14は、本実施の形態におけるレールスライダの係止具と連結板とが通常位置および係合位置にある状態を示す略線的断面図である。
図15は、本実施の形態におけるレールスライダとレールホルダと係止具との相対位置の遷移(1)を示す略線図及び断面図である。
図16は、本実施の形態におけるレールスライダとレールホルダと係止具との相対位置の遷移(2)を示す略線図及び断面図である。
図17は、本実施の形態におけるレールスライダの係止具と連結板とが係合する際の弾性部による機能の説明に供する略線的断面図である。
【0076】
引戸Dでは、開閉方向(矢印ab方向)へ動かされていない静止状態や、開閉方向(矢印ab方向)へ移動された場合であっても引戸緩衝装置CLのブレーキ力が作用していない状態では、
図14(A)に示すように、跳上抑制機構100の係止具20の係止具側係合部23と連結板50の連結板側係合部59とが係合されることはない。すなわち、跳上抑制機構100の係止具20の係止具側係合部23と連結板50の連結板側係合部59とが係合されていない非係合状態が維持されている。
【0077】
引戸Dは、例えば閉方向(矢印a方向)に閉められる動作が行われた場合、当該引戸Dが戸枠に到達する直前で引戸緩衝装置CLによるブレーキ力が作用する。このときブレーキ力は、戸本体D1の上端部において作用し、戸本体D1の下端部では作用しない。このため戸本体D1の下端部だけが慣性力で移動し続けることになり、戸枠に片当たりする事態が生じる。これにより引戸Dの戸本体D1が上方向(矢印c方向)に跳ね上がろうとする。
【0078】
しかしながら、
図15(A)および(B)に示すように、引戸緩衝装置CLによるブレーキ力が作用する位置に取り付けられたレールホルダ70の収容空間70sにレールスライダ10のスライダ本体部11が進入すると、レールホルダ70における1対の側壁部72bの内側面72bsに対してレールスライダ10のスライダ本体部11に配置された2個の係止具20の凸部22がそれぞれ接触して内側へ押される。
【0079】
このため、2個の係止具20はスライダ本体部11の収容空間11gの中で互いに近づくように移動し、連結板50を両側から挟み付ける。このとき、
図14(B)および
図15(B)に示すように、係止具20の係止具側係合部23と連結板50の連結板側係合部59とが互いに係合することにより、引戸Dに固定されているケース体30と一体化された連結板50の上方向(矢印c方向)への移動が抑制される。
【0080】
その後、
図16(C)に示すように、レールホルダ70の収容空間70sにレールスライダ10のスライダ本体部11が進入している間、2個の係止具20が連結板50を両側から挟持し続けるので、係止具側係合部23と連結板側係合部59との係合状態が維持される。
【0081】
その後、
図16(D)に示すように、レールホルダ70の収容空間70sからレールスライダ10のスライダ本体部11が通過すると、レールホルダ70の側壁部72bによって係止具20の凸部22が押されなくなるので、係止具側係合部23と連結板側係合部59との係合状態が解除される。このとき、走行中である引戸Dの上下方向(矢印cd方向)の僅かながたつきと共に連結板50が上下方向(矢印cd方向)へ動くので、係止具20が連結板50から自然と離間され、非係合状態に戻る。
【0082】
ところで、
図17(A)に示すように、係止具20の係止具側係合部23と連結板50の連結板側係合部59とが互いに係合する際、お互いの歯が完全に噛合しない状態が起こり得る。しかしながら、2個の係止具20は収容空間11gの内部で上方向(矢印c方向)へ移動可能な遊びがあり、また、下方向(矢印d方向)には係止具20の凸部22が弾性部16を押し下げることが可能な遊びがある。したがって、
図17(B)に示すように、2個の係止具20が連結板50を挟み付ける際、係止具20が僅かに上下方向に移動することにより、係止具側係合部23と連結板側係合部59とが完全に噛み合うことができる。因みに、係止具20の凸部22が弾性部16の中央に形成された突起16kに当接されるため、当該突起16kに応力が集中し易く、突起16kを中心として弾性部16を下方向(矢印d方向)へ容易に撓ませることができる。
【0083】
このように、2個の係止具20が連結板50を両側から挟み付け、係止具20の係止具側係合部23と連結板50の連結板側係合部59とが係合されるため、引戸Dの戸本体D1が上方向(矢印c方向)へそれ以上跳ね上がることが防止される。すなわち、引戸緩衝装置CLによるブレーキ力が作用して引戸Dが上方向に跳ね上がろうとするタイミングでスライドレール10がレールホルダ70の収容空間70sに進入し、係止具側係合部23と連結板側係合部59とが係合することにより戸本体D1の跳ね上がりを抑制することができる。
【0084】
このように跳上抑制機構100は、上レールL1に固定されたレールホルダ70とレールスライダ10との機械的な接触だけを利用して係止具20と連結板50との係合状態を形成することができるので、一段と簡易な構成でありながら、引戸Dの跳ね上がりを誤動作なく効果的に抑制することができる。これにより、引戸Dが上枠に衝突することによる騒音や下ローラの脱輪を防止でき、また引戸用緩衝装置CLの故障を誘発することも防止することができる。
【0085】
また、引戸Dの戸本体D1を上レールL1に取り付ける際、従来のような内蔵ダンパ部材を用いた引戸のように内蔵ダンパ部材の抗力に反して取り付けるといった煩雑な操作を強いることなく、従来に比して取付時の操作性を向上させることができる。
【0086】
3.他の実施の形態
なお、本実施の形態においては、1対の係止具20によって連結板50を両側から挟み付けることにより、係止具側係合部23と連結板側係合部59とを係合させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、連結板50は少なくとも一方の面にのみ連結板側係合部59を有し、1個の係止具20を連結板50に対して押し付けて係止具側係合部23と連結板側係合部59とを係合させることにより引戸Dの撥ね上げを抑制するようにしてもよい。
【0087】
また、本実施の形態においては、上レールL1に対してレールホルダ70を取り付けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、上レールL1に対してレールホルダ70を予め一体に形成しておくようにしてもよい。
【0088】
さらに、本実施の形態においては、引戸用緩衝装置CLのブレーキ力が作用する上レールL1の位置に対してレールホルダ70を取り付けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、引戸用緩衝装置CLのブレーキ力が作用するよりも前の上レールL1の位置に対してレールホルダ70を一体に形成するようにしてもよい。この場合、引戸Dの跳ね上がりを確実に防止することができる。
【0089】
なお、その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の跳上抑制機構100を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
10…レールスライダ、11…スライド本体部、11g…収容空間、12…スライダ部、12a…第1スライダ、12b…第2スライダ、14…取付部、16…弾性部、20…係止具、22…凸部、23…係止具側係合部、30…ケース体、31…ケース本体部、33…パネル部、31s…収容空間、31h…貫通孔、41…被取付部、50…連結板、51…連結板本体部、59…連結板側係合部、70…レールホルダ、70s…収容空間、72…レールホルダ本体、72a…天壁部、72b…側壁部、74…嵌合部、CL…引戸緩衝装置、D…引戸、D1…戸本体、L1…上レール。