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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081331
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】薬剤吸入器及びカウンタ機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192801
(22)【出願日】2020-11-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】512317087
【氏名又は名称】ニップファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】小野 新一
(57)【要約】
【課題】簡易かつコンパクトな構成のカウンタ機構を備える薬剤の吸入器を提供する。
【解決手段】吸入器100は、ブリスタ開封手段の動作に連動して、一又は複数のブリスタストリップから台紙を徐々に引き剥がし、吸入口41を通じて吸入可能な空間に一回使用量分の粉状薬剤を順次供給する。吸入器100は、ブリスタ開封手段の動作に連動してブリスタストリップによって個包装された薬剤の残存数を提示するためのカウンタ機構を有する。カウンタ機構は、裏面側に螺旋状のラックギア52aが形成され、表面側にラックギア52aに沿って薬剤の残存数を示す情報が螺旋状に並んで表記されたカウンタダイヤル50と、このラックギア52aに嵌合され、ブリスタ開封手段の動作に連動して一定方向に回動するピニオンギア60とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリスタ開封手段によって一又は複数のブリスタストリップから台紙を徐々に引き剥がし、前記吸入口を通じて吸入可能な空間に一回使用量分の粉状薬剤を順次供給するための吸入器であって、
前記ブリスタ開封手段の動作に連動して前記ブリスタストリップによって個包装された前記薬剤の残存数を提示するためのカウンタ機構を有し、
前記カウンタ機構は、
裏面側に螺旋状のラックギアが形成され、表面側に前記ラックギアに沿って前記薬剤の残存数を示す情報が螺旋状に並んで表記されたカウンタダイヤルと、
前記ラックギアに嵌合され、前記ブリスタ開封手段の動作に連動して一定方向に回動するピニオンギアを含む
吸入器。
【請求項2】
前記吸入器の筐体は、前記カウンタダイヤルに表記された前記薬剤の残存数を示す情報のうちの一つを当該筐体外部から視認するための窓部を有する
請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記カウンタ機構は、前記ピニオンギアが回動したときに前記カウンタダイヤルの移動方向を一定方向に規制するスライドレーンをさらに含む
請求項1又は請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
裏面側に螺旋状のラックギアが形成され、表面側に前記ラックギアに沿って使用回数を示す情報が螺旋状に並んで表記されたカウンタダイヤルと、
前記ラックギアに嵌合され、使用操作に連動して一定方向に回動するピニオンギアを含む
カウンタ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスタストリップに個包装された粉状薬剤を吸入するための吸入器に関する。具体的に説明すると、本発明は、薬剤の残使用数を使用者に提示するためのカウンタ機構を備えるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば気道の炎症を抑制したり気管支の拡張を促進させる薬剤を患者に吸入させるための吸入器が知られている(特許文献1~4等)。このような薬剤の吸入器は、患者自らの吸気力を利用して粉末状の薬剤を炎症患部である気道や肺に対して直接投与するものであるため、少量の薬剤であっても患部に集中的に塗布することができ,副作用の発生を抑制できると共に、効果の表出が早くなるという利点を有している。
【0003】
一般的な吸入デバイスでは、一又は複数のブリスタストリップが渦状に巻かれた状態で収納される。図5に示されるように、薬剤を封入した帯状のブリスタストリップ200は、長尺の基部シート210と台紙220の内面同士を貼り合わせて構成される。また、この基部シート210には、薬剤を封入する空間をなすブリスタ211がその長手方向に一定間隔をおいて複数形成されている。各ブリスタ211には、所望の薬剤が一度の投与に適した量だけ入れられており、投薬時には基部シート210から台紙220が徐々に引き剥がされて適量の薬剤が露出するようになっている。なお、吸入器内のブリスタストリップ200には、例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、又は胸部感染のような呼吸器疾患治療用の薬剤が封入されている。なお、薬剤は公知のものを使用すればよい。特に、特許文献2には、2つのブリスタストリップからそれぞれ薬剤を取り出し、マニホールド内にて混合することが可能な吸入器が開示されている。
【0004】
また、特許文献2から特許文献4には、薬剤の残存数を提示するためのカウンタ機構が開示されている。カウンタ機構は、吸入口を開閉するためのカバーと、ブリスタストリップから台紙を引き剥がすためのピール機構と連動している。具体的には、吸入口カバーを開くとピール機構によってブリスタストリップから台紙が部分的に引き剥がされて、ブリスタストリップから一回使用量分の薬剤が取り出される。そして、これと同時に、カウンタ機構が提示する残存数が1つ減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004-512147号公報
【特許文献2】特表2009-502287号公報
【特許文献3】特表2007-526562号公報
【特許文献4】特開2014-113260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば特許文献3に開示されたカウンタ機構は、一の位と十の位を別々のダイヤルで示すこととしている。つまり、一の位を示すダイヤルが一回転したときに十の位を示すダイヤルを所定角度だけ回動させて、十の位が示す数字を一つ繰り上げる。しかしながら、2桁の残存数を2つのダイヤルで提示することとすると、カウンタ機構の構造が複雑化し、吸入器の小型化の妨げになるという問題がある。また、一の位のダイヤルと十の位のダイヤルのいずれか一方にでも不具合が発生すると正確な残存数を提示できなくなるという問題も考えられる。特に、吸入器は微細な粉状の薬剤を扱うものであるが、カウンタ機構を構成するダイヤルやギアの数が増えると、薬剤の微粒子が各ダイヤルやギアの間に挟まってしまい、カウンタ機構が適切に機能しなくなるという不具合が発生することも懸念される。
【0007】
これに対して、例えば特許文献4に示されるように、カウンタ機構の構造を簡素化するために、1つのダイヤルの外周付近に2桁以上の残存数を表記することも可能である。しかし、その場合には、表記すべき残存数が増えるほどダイヤルの直径が大きくなり、その結果吸入器全体のサイズが大きくなるとともに、吸入器のデザイン設計に大きな制約を与えるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、簡易かつコンパクトな構成のカウンタ機構を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、従来発明が抱える問題の解決手段について鋭意検討した結果、円盤状のダイヤルに薬剤の残存数などを示す情報を螺旋状に表記することにより、直径の小さい1つのダイヤルでも多数の残存数を提示できるという知見を得た。そして、吸入口カバーやレバーなどを含むブリスタ開封手段の動作などに応じて当該ダイヤルを回動させる機構を設けることで、簡易かつコンパクトなカウンタ機構を実現できることに想到し、本発明を完成させた。具体的に説明すると、本発明は以下の構成を有する。
【0010】
本発明の第1の側面は、粉状薬剤の吸入器に関する。本発明に係る吸入器は、ブリスタストリップから台紙を引き剥がすことによりブリスタを開封するブリスタ開封手段を備える。ブリスタ開封手段は、例えば、吸入口を開閉する吸入口カバーの開閉動作に連動してブリスタストリップから台紙を引き剥がすものであってもよいし、吸入口カバーとは別に設けられたレバーの起倒動作に連動してブリスタストリップから台紙を引き剥がすものであってもよい。このように、吸入器は、ブリスタ開封手段によって一又は複数のブリスタストリップから台紙を徐々に引き剥がし、吸入口を通じて吸入可能な空間に一回使用量分の粉状薬剤を順次供給する。つまり、本発明の吸入器は、1つのブリスタストリップから一回使用量分の薬剤を取り出すものであってもよいし、2つ以上のブリスタストリップからそれぞれ薬剤を取り出して混合し一回使用量分とするものであってもよい。また、本発明に係る吸入器は、ブリスタ開封手段の動作に連動してブリスタストリップによって個包装された薬剤の残存数を提示するためのカウンタ機構を備える。なお、「残存数」は、0に向かって漸減するカウントダウン方式で示されるものであってもよいし、0から漸増するカウントアップ方式で示されるものであってもよい。カウントアップ方式であっても、薬剤の数には当然限りがあり最大数は決まっているため、その最大数を使用者に予め知らせておくことで、使用者に対して薬剤の残存数を提示することが可能である。なお、ブリスタの残数がなくなったときに、それ以上はカウンタダイヤルを回転できなくこととして、駆動システムを停止させることとしてもよい。
【0011】
吸入器のカウンタ機構は、カウンタダイヤルとピニオンギアを備える。カウンタダイヤルは、円盤状であり、その裏面側には螺旋状のラックギアが形成されており、表面側にはラックギアに沿って薬剤の残存数を示す情報が螺旋状に並んで表記されている。なお、「薬剤残存数を示す情報」は、数字、文字、図形、色又は記号などの情報提示手段が印刷又は刻印などの公知の表記方法でカウンタダイヤルの表面に表記されていればよい。ピニオンギアは、ラックギアに嵌合され、ブリスタ開封手段の動作に連動して一定方向に回動する。ピニオンギアの回転軸は固定されておりピニオンギアの位置は不動であるが、ピニオンギアが回動することでカウンタダイヤルは移動する。これにより、カウンタダイヤルに表記された複数の残存数を示す情報のうち、特定位置(例えばピニオンギアの回転軸の真上)に到来した情報が実際の残存数であることを提示することができる。このように、本発明では、カウンタダイヤルに多数の数字等を螺旋状に並べて表記するものであるため、例えば2桁以上の残存数を提示する場合であっても直径の小さい1つのカウンタダイヤルにまとめて数字等を表記しておくことが可能である。これにより、従来技術のように2桁以上の残存数を提示するために2つのカウンタダイヤルを設けたり直径の大きいダイヤルを設けたりする必要がなくなるため、カウンタ機構の構造の簡素化とコンパクト化を実現することができる。
【0012】
本発明に係る吸入器は、その筐体に、カウンタダイヤルに表記された薬剤の残存数を示す情報のうちの一つを当該筐体外部から視認するための窓部を有することが好ましい。これにより、使用者にとって理解しやすい態様で薬剤の残存数を提示することができる。
【0013】
本発明に係る吸入器において、カウンタ機構は、ピニオンギアが回動したときにカウンタダイヤルの移動方向を一定方向に規制するスライドレーンをさらに含むことが好ましい。このようにスライドレーンを設けてカウンタダイヤルの移動方向を制限することにより、残存数を安定して提示できるとともに、カウンタダイヤルの移動のために予め用意しておくブランクスペースを最小化できる。
【0014】
本発明の第2の側面は、カウンタ機構に関する。本発明の第2の側面に係るカウンタ機構は、吸入器用のカウンタ機構としてだけでなく、何らかの使用回数を提示する手段として広く利用することができる。具体的に説明すると、カウンタ機構は、裏面側に螺旋状のラックギアが形成され、表面側にラックギアに沿って使用回数を示す情報が螺旋状に並んで表記されたカウンタダイヤルと、このラックギアに嵌合され、使用操作に連動して一定方向に回動するピニオンギアを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易かつコンパクトな構成のカウンタ機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る吸入器の一実施形態を表面側から示した斜視図である。
図2図2は、図1に示した吸入器から吸入口カバーとトップカバーを取り外した状態を示している。
図3図3は、本発明に係る吸入器の一実施形態について、カウンタ機構を中心とした内部構造の例を示している。
図4図4は、本発明に係るカウンタ機構の一実施形態の構造を模式的に表している。
図5図5は、吸入器に収納されているブリスタストリップの概要を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0018】
図1は、本発明に係る吸入器100の一実施形態を示している。図1に示した吸入器100の筐体20の内部には、2つのブリスタストリップ200(図5参照)が収納されている。この吸入器100では、筐体20に取り付けられた吸入口カバー10を開くと薬剤の吸入口が露出する。また、吸入口カバー10の開閉動作は筐体20内部のピール機構と連動している。このように、本実施形態では、吸入口カバー10とピール機構によってブリスタ開封手段が構成されている。吸入口カバー10を開くと、ピール機構によって2つのブリスタストリップ200の台紙220が部分的に引き剥がされ、基材シート210のブリスタ211から取り出された粉末状の薬剤がマニホールドへ供給されて、そのマニホールド内で混合される。この混合された薬剤は吸入口を通じて吸入することが可能となる。このような吸入口カバー10に連動したピール機構は、例えば特許文献1から特許文献4に示されるように既に公知であり、本発明に係る吸入器100においても、出願時点において公知となっている種々のピール機構を適宜採用できる。このため、本願明細書においては、ブリスタストリップ200のピール機構の詳細については図示と説明を割愛する。
【0019】
また、図1に示されるように、筐体20はトップカバー21とボトムカバー22を組み合わせて構成されたものであり、ブリスタストリップ200及びその他内部機構の収納空間を形成している。トップカバー21は、吸入器100の正面側を覆うカバー部材であり、その一部に当該カバーを厚み方向に貫通する窓部21aが形成されている。使用者は、このトップカバー21の窓部21aを通じて、筐体20内部に収納されたカウンタ機構によって提示される薬剤の残存数を目視によって確認することができる(図1に示した例では薬剤の残存数が「30」であることが提示されている)。カウンタ機構は、前述の吸入口カバー10或いはピール機構と連動しており、閉じた状態にある吸入口カバー10が開かれるとカウンタ機構によって提示される残存数が1つカウントダウン(又はカウントアップ)されることとなる。本発明は、このような薬剤等の残存数を提示するカウンタ機構に特徴を持つものである。そこで。以下ではこのカウンタ機構を中心に本発明の具体的内容を詳しく説明する。
【0020】
図2は、図1に示した吸入器100から吸入口カバー10とトップカバー21を取り外した状態を示している。図2に示されるように、筐体20の内部には、主に2つのブリスタストリップ200及びそれらのピール機構を収納したケーシング30が設けられており、またこのケーシング30の吸入側にはマニホールド42に連通した吸入口41を持つマウスピース40が設けられている。なお、ケーシング30は、トップカバー21側に位置する上蓋31と、ボトムカバー22側に位置する底蓋32とを組み合わせた構成となっている。本発明の吸入器100では、吸入口カバー10を開くことで、吸入口41が形成されたマウスピース40が露出する。使用者はこのマウスピース40を咥えたまま息を吸い込むことで、マニホールド42内で混合された2種の薬剤が吸入口41を通じて吸入することができる。なお、マウスピース40とマニホールド42は別々の部品とすることもできるし、一体の部品とすることもできる。
【0021】
次に、図2から図4に示されるように、吸入器100は、薬剤の残存数を使用者に提示するためのカウンタ機構を備える。カウンタ機構は、ピール機構と同様に、吸入口カバー10の開閉に連動しており、吸入口カバー10を閉じた状態から開いた状態に遷移させることで、薬剤の残存回数をカウントダウン(或いはカウントアップ)するように構成されている。図3(a)は、吸入器100から吸入口カバー10と筐体20を取り外した状態を示す表面側の斜視図であり、図3(a)は、同状態の裏側の斜視図である。図3(a)は、主にカウンタ機構に示しており、図3(b)は、カウンタ機構を吸入口カバー10の動作と連動させるための連動機構を示している。また、図4は、カウンタ機構を構成する各要素の動作をわかりやすく示すために、各要素を模式的に抽出して示している。図4(a)は、主にカウンタ機構の表面側を示し、図4(b)では、主にカウンタ機構の裏側を透過的に示している。
【0022】
各図に示されるように、カウンタ機構は、主要な構成要素として、カウンタダイヤル50とピニオンギア60を備える。また、カウンタ機構は、好ましい要素として、スライドレーン70を備えている。本実施形態において、カウンタ機構を構成する要素50,60,70は、ケーシング30の上蓋31側、具体的にはケーシング30の上蓋31と筐体20のトップカバー21の間に配置されている。
【0023】
カウンタダイヤル50は、円盤状の部材であり、その表面51には薬剤の残存数51aを示す数字や、文字、図形、色又は記号などの情報提示手段が螺旋状に並んで表記されており、その裏面52には当該情報提示手段の並びに対応するように螺旋状のラックギア52aが形成されている。図4に示した例では、薬剤の最大使用回数は「30」であり、カウンタダイヤル50の表面51の中心付近に「0」(ゼロ)の数字が表記され、そこから外周方向に向かって螺旋状に広がるようにして「0」から「30」までの数字が並べて表記されている。この場合、カウンタ機構によって、最初に薬剤の最大使用回数である「30」が使用者に提示され、吸入口カバー10の開閉を繰り返すごとにカウンタ機構によって提示される薬剤の残存数が「0」に向かってカウントダウンすることとなる。なお、反対に、カウンタダイヤル50の中心付近に最大使用回数に対応する「30」の数字を表記しておき、そこから外周方向に螺旋状に広がるようにして「30」から「0」までの数字を並べて表記することも可能である。この場合には、残存数が「0」から「30」に向かってカウントアップすることとなる。また、カウンタダイヤル50の裏面52には、上記数字の列に対応するに螺旋状のラックギア52aが形成されている。具体的には、数字を昇順又は降順で仮想線よって繋いだことを想定した場合に、当該仮想線がなす螺旋と同じ螺旋状のラックギア52aが当該仮想線の真下に形成されていることとなる。
【0024】
ピニオンギア60は、カウンタダイヤル50の裏面52に形成されたラックギア52aに嵌合する小口径の円形ギアである。ピニオンギア60は、後述する連動機構によって吸入口カバー10に連動しており、この吸入口カバー10の開閉動作に連動して一定方向に回動する。このように、ピニオンギア60と螺旋状のラックギア52aが嵌合していることで、ピニオンギア60の回転運動が螺旋状のラックギア52aに沿った直線運動に変換される。ピニオンギア60自体は、吸入器100内において位置が固定されており、回転軸を中心として一定方向に回動するものの、その回動によって回転軸の位置が変わることはない。他方で、固定されたピニオンギア60の回動に伴って、カウンタダイヤル50はラックギア52aに沿ってその位置が変動する。このカウンタダイヤル50の位置の変動方向は、スライドレーン70によって規制することが好ましい。
【0025】
スライドレーン70は、カウンタダイヤル50の移動方向を一定方向に規制するための要素である。本実施形態において、スライドレーン70は、ケーシング30の上蓋31上に設けられている。スライドレーン70は、カウンタダイヤル50の外周縁に当接する位置に設けられている。このため、ピニオンギア60の回動に伴ってカウンタダイヤル50が移動を開始すると、カウンタダイヤル50はこのスライドレーン70に沿って摺動しながら、スライドレーン70が延在する方向に徐々に移動する。スライドレーン70の延在方向は、カウンタダイヤル50の移動前後のスペースを考慮して適宜設計すればよい。
【0026】
図4(a)に示されているように、筐体20のトップカバー21に形成された窓部21aの位置は不動である。例えば、図4に示されるように、窓部21aは、ピニオンギア60の直上に設けておくことが好ましい。ただし、窓部21aは、カウンタダイヤル50の移動の前後に亘って当該カウンタダイヤル50と重なる位置であって、カウンタダイヤル50に表記された薬剤の残存数51aを繋ぐ螺旋状の仮想線上と重なる位置であれば、ピニオンギア60の直上に限らず設けることが可能である。このように、窓部21aの位置が不動であるため、ピニオンギア60の回動に伴ってカウンタダイヤル50が一定方向に移動すると、窓部21aを通じて視認可能な残存数51aの数字が変わることとなる。具体的には、図4(a)から図4(b)には、カウンタダイヤル50、ピニオンギア60、スライドレーン70、及び窓部21aの相対的な位置関係が、カウンタダイヤル50の移動に伴って変動する様子を模式的に示している。これらの図から、カウンタダイヤル50がスライドレーン70に沿って回転しながら一定方向に移動することにより、窓部21aを通じて視認される薬剤の残存数51aが一つずつカウントダウンされて様子が判る。
【0027】
続いて、図3を参照して、吸入口カバー10と前述したカウンタ機構を連動させる連動機構について詳しく説明する。なお、図3に示された連動機構は、2つのブリスタストリップのピール機構と吸入口カバー10とを連動させる役割をも同時に担っている。この連動機構は、ハブギア81、ラチェットギア82、2つのインデックスホイール83a,83b、2つのベーススプール84a,84b、4つのアイドラギア85a~85d、及び中継ギア86を含んで構成されている。
【0028】
まず、図3(b)に示されるように、吸入口カバー10を閉じた状態から開いた状態へと遷移させると、吸入口カバー10は回動支点を中心にして矢印で示した方向に向かって回動する。吸入口カバー10の回動支点は、ケーシング30の底蓋32側の中央付近に設けられたハブギア81に結合されており、吸入口カバー10を一定角度で回動させると、このハブギア81も吸入口カバー10と同方向に同角度で回動する。このハブギア81はラチェットギア82に結合されており、またこのラチェットギア82は2つのアイドラギア(第1アイドラギア85a及び第3アイドラギア85c)と嵌合している。ラチェットギア82は、ハブギア81の一定方向の回転運動を第1及び第3アイドラギア85a,85cに伝達するものの、それとは反対方向の回転運動については2つのアイドラギア85a,85cに対して空回りし運動を伝達しないように構成されている。具体的には、吸入口カバー10を閉じた状態から開いた状態に遷移させる場合には、ハブギア81の回転運動がラチェットギア82を介して第1及び第3アイドラギア85a,85cに伝達され、吸入口カバー10を開いた状態から閉じた状態に遷移させる場合には、ハブギア81の回転運動は2つのアイドラギア85a,85cに伝達されない。
【0029】
ハブギア81に結合されたラチェットギア82は、まず、第1アイドラギア85aを介して第1インデックスホイール83aと連結されている。つまり、ラチェットギア82、第1アイドラギア85a、第1インデックスホイール83aの順で回転運動が伝達される。このため、第1アイドラギア85aは、ハブギア81と逆方向に回動するものの、第1インデックスホイール83aは、ハブギア81と同方向に回動する。また、第1アイドラギア85aは、第2アイドラギア85bを介して第2インデックスホイール83bと連結されている。つまり、ラチェットギア82、第1アイドラギア85a、第2アイドラギア85b、第2インデックスホイール83bの順で回転運動が伝達される。このため、第2アイドラギア85bは、ハブギア81と同方向に回動するものの、第1アイドラギア85a及び第2インデックスホイール83bは、ハブギア81と逆方向に回動する。このようにして、2つのインデックスホイール83a,83bは、吸入口カバー10を開く動作に連動して、互いに反対方向に回動することとなる。
【0030】
インデックスホイール83a,83bは、ブリスタストリップ200から台紙220を引き剥がす役割を担う。各インデックスホイール83a,83bの回転軸は、ケーシング30内において、ブリスタストリップ200の台紙220(又は基部シート210)の始端部付近に係合されており、インデックスホイール83a,83bが回動することで、台紙220と基部シート210とを分離するための引張力がブリスタストリップ200に付与される。ピール機構は、2つのインデックスホイール83a,83bによって、2つのブリスタストリップ200からほぼ同時に台紙220を引き剥がすことで、ブリスタストリップ200から取り出された薬剤がマニホールド42内で混合されているように構成されている。
【0031】
他方で、ハブギア81に結合されたラチェットギア82は、第3アイドラギア85cを介して第1ベーススプール84aに対しても連結されている。つまり、ラチェットギア82、第3アイドラギア85c、第1ベーススプール84aの順で回転運動が伝達される。このため、第3アイドラギア85cは、ハブギア81と逆方向に回動するものの、第1ベーススプール84aは、ハブギア81と同方向に回動する。また、第3アイドラギア85cは、第4アイドラギア85dを介して第2ベーススプール84bと連結されている。つまり、ラチェットギア82、第3アイドラギア85c、第4アイドラギア85d、第2ベーススプール84bの順で回転運動が伝達される。このため、第4アイドラギア85dは、ハブギア81と同方向に回動するものの、第3アイドラギア85c及び第2ベーススプール84bは、ハブギア81と逆方向に回動する。このようにして、2つのベーススプール84a,84bは、吸入口カバー10を開く動作に連動して、互いに反対方向に回動することとなる。
【0032】
ベーススプール84a,84bは、ブリスタストリップ200を上記したインデックスホイール83a,83b側に向かって繰り出す役割を担う。各ベーススプール84a,84b回転軸は、ケーシング30内において、ブリスタストリップ200の終端部付近に係合されている。また、使用開始前の状態では、長尺のブリスタストリップ200は、各ベーススプール84a,84b回転軸に巻きつけられた状態となっている。そして、吸入口カバー10を開く動作に連動して、ベーススプール84a,84bが回動することで、ブリスタストリップ200はインデックスホイール83a,83b側へと送り出される。ピール機構においては、ブリスタストリップ200の台紙220の始端部付近をインデックスホイール83a,83bの回転軸に取り付け、ブリスタストリップ200の終端部付近をベーススプール84a,84bの回転軸に取り付けておくことで、始端部から終端部までの間に一定の張力を付与して緩みが生まれないようにしている。
【0033】
また、図3に示されるように、本実施形態においては、第2ベーススプール84bの回転軸が、ケーシング30の底蓋32から上蓋31まで厚み方向に貫通するように延在している。また、第2ベーススプール84bの回転軸は、ケーシング30の上蓋31側に設けられた中継ギア86の中心に結合されており、この中継ギア86の回転軸としても機能している。そして、この中継ギア86は、前述したカウンタ機構を構成するピニオンギア60に嵌合している。このため、吸入口カバー10を開く動作に伴って、第2ベーススプール84bが回動すると、それに連動して、中継ギア86、ピニオンギア60、及びカウンタダイヤル50へと順に回動運動が伝達される。なお、図示した実施形態では、第2ベーススプール84bと中継ギア86を繋げることとしているが、第1ベーススプール84aと中継ギア86を繋げることも可能である。このようにして、本実施形態に係る吸入器100では、吸入口カバー10が、連動機構を介して、カウンタ機構及びピール機構に連動するように構成されている。なお、本実施形態においては、吸入口カバー10を一度開く動作によって、窓部21aを通じて視認できるカウンタダイヤル50の残存数の表記が一つカウントダウン(又はカウントアップ)されるように調整されている。これは、ギアの大きさやカウンタダイヤル50に表記される残存数の間隔を適宜調整することで容易に達成できる。
【0034】
なお、以上に説明した実施形態では、吸入口カバー10がピール機構に連動しており、これらによってブリスタ開封手段が構成されている例を説明したが、本発明のブリスタ開封手段はこれに限定されない。例えば、吸入口カバー10とは別に、手動で起こしたり倒したりすることのできるレバーを設けておき、このレバーをピール機構に連動させることもできる。この場合、吸入口カバー10とピール機構を連動させる必要ない。使い方としては、レバーを倒してピール機構を駆動させた後に吸入口カバー10を開いて薬剤を吸入できる状態としてもよいし、吸入口カバー10を開いた後にレバーを倒してピール機構を駆動させて薬剤を吸入できる状態としてもよい。また、その他、ピール機構に連動させるものとしては、これらの吸入口カバー10やレバーに限られず、その他にボタン式ものやグリップ式ものを採用することも可能である。
【0035】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、粉末状の薬剤の吸入器又はそのカウンタ機構に関する。従って、本発明は、例えば製薬産業において利用され得る。
【符号の説明】
【0037】
10…吸入口カバー 20…筐体
21…トップカバー 21a…窓部
22…ボトムカバー 30…ケーシング
31…上蓋 32…底蓋
40…マウスピース 41…吸入口
42…マニホールド 50…カウンタダイヤル
51…表面 51a…残存数
52…裏面 52a…ラックギア
60…ピニオンギア 70…スライドレーン
81…ハブギア 82…ラチェットギア
83a,83b…インデックスホイール 84a,84b…ベーススプール
85a~85d…アイドラギア 86…中継ギア
100…吸入器 200…ブリスタストリップ
210…基部シート 211…ブリスタ
220…台紙
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-03-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリスタ開封手段によって一又は複数のブリスタストリップから台紙を徐々に引き剥がし、吸入口を通じて吸入可能な空間に一回使用量分の粉状薬剤を順次供給するための吸入器であって、
前記ブリスタ開封手段の動作に連動して前記ブリスタストリップによって個包装された前記薬剤の残存数を提示するためのカウンタ機構を有し、
前記カウンタ機構は、
裏面側に螺旋状のラックギアが形成され、表面側に前記ラックギアに沿って前記薬剤の残存数を示す情報が螺旋状に並んで表記されたカウンタダイヤルと、
前記ラックギアに嵌合され、前記ブリスタ開封手段の動作に連動して一定方向に回動するピニオンギアを含む
吸入器。
【請求項2】
前記吸入器の筐体は、前記カウンタダイヤルに表記された前記薬剤の残存数を示す情報のうちの一つを当該筐体外部から視認するための窓部を有する
請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記カウンタ機構は、前記ピニオンギアが回動したときに前記カウンタダイヤルの移動方向を一定方向に規制するスライドレーンをさらに含む
請求項1又は請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
裏面側に螺旋状のラックギアが形成され、表面側に前記ラックギアに沿って使用回数を示す情報が螺旋状に並んで表記されたカウンタダイヤルと、
前記ラックギアに嵌合され、使用操作に連動して一定方向に回動するピニオンギアを含む
カウンタ機構。