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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081347
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20220524BHJP
   F16H 3/089 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B60L15/20 K
F16H3/089
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192845
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】田島 陽一
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
【テーマコード(参考)】
3J528
5H125
【Fターム(参考)】
3J528EA21
3J528EB37
3J528EB63
3J528EB66
3J528EB76
3J528EB95
3J528FB06
3J528FB12
3J528FB14
3J528FC32
3J528FC65
3J528GA01
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BE05
5H125CA02
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】車両の加速性能の向上が可能で、かつ変速前後の加速フィーリングを良好にすることが可能な車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】車両用駆動装置は、第1モータと、第2モータと、第1モータの回転を変速して前輪に伝達する第1変速機と、第2モータの回転を変速して後輪に伝達する第2変速機と、制御部とを備える。制御部は、第1変速機と第2変速機とを共にLo状態にする1速段の状態と、第1変速機と第2変速機とを共にHi状態にする2速段の状態と、第1変速機と第2変速機との一方をHi状態かつ他方をLo状態にする3速段の状態とに制御可能である。駆動力線図において、1速段の最大駆動力線DF1と、2速段の最大駆動力線DF2と、3速段の最大駆動力線DF3とを有しており、2速段の最大駆動力線DF2が1速段の最大駆動力線DF1及び3速段の最大駆動力線DF3を越えた領域Xで、2速段の状態に制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転電機と、
第2回転電機と、
前記第1回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して前輪に伝達する第1変速機と、
前記第2回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して後輪に伝達する第2変速機と、
前記第1変速機と前記第2変速機との変速を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1変速機と前記第2変速機とを共に1速段にする第1状態と、
前記第1変速機と前記第2変速機とを共に2速段にする第2状態と、
前記第1変速機と前記第2変速機との一方を2速段かつ他方を1速段にする第3状態と、に制御可能であり、
駆動力と車速との関係における駆動力性能を示す駆動力線図において、
前記第1状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とが最大駆動力である場合の第1最大駆動力線と、
前記第2状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とが最大駆動力である場合の第2最大駆動力線と、
前記第3状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とが最大駆動力である場合の第3最大駆動力線と、を有し、
前記制御部は、要求される駆動力及び車速が、前記第3最大駆動力線が前記第1最大駆動力線及び前記第2最大駆動力線を越えた領域に含まれる場合に、前記第3状態となるように制御する、
車両用駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1変速機と前記第2変速機との一方を1速段かつ他方を2速段にする第4状態に制御可能である、
請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第3状態は、前記第1変速機を2速段かつ前記第2変速機を1速段にする状態である、
請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第1変速機の1速段は、前記第2変速機の1速段よりもギヤ比が大きく、
前記第1変速機の2速段は、前記第2変速機の2速段よりもギヤ比が小さく、
前記制御部は、車速が低い方から順に、前記第1状態、前記第4状態、前記第3状態、前記第2状態となるように制御し、
前記駆動力線図において、前記第4状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とが最大駆動力である場合の第4最大駆動力線を有し、
前記制御部は、要求される駆動力及び車速が、前記第4最大駆動力線が前記第1最大駆動力線及び前記第2最大駆動力線を越えた領域に含まれる場合に、前記第4状態となるように制御する、
請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第2変速機の1速段は、前記第1変速機の1速段よりもギヤ比が大きく、
前記第2変速機の2速段は、前記第1変速機の2速段よりもギヤ比が小さく、
前記制御部は、車速が低い方から順に、前記第1状態、前記第3状態、前記第4状態、前記第2状態となるように制御し、
前記駆動力線図において、前記第4状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とが最大駆動力である場合の第4最大駆動力線を有し、
前記制御部は、要求される駆動力及び車速が、前記第4最大駆動力線が前記第1最大駆動力線及び前記第2最大駆動力線を越えた領域に含まれる場合に、前記第4状態となるように制御する、
請求項2に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車に搭載される車両用駆動装置として、前輪を駆動する第1回転電機と、後輪を駆動する第2回転電機と、それら前輪と第1回転電機との間で変速を行う第1変速機と、それら後輪と第2回転電機との間で変速を行う第2変速機と、を備え、四輪駆動で走行することが可能なものが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1のものは、前後輪の一方に駆動連結された変速機の変速中に生じる駆動トルクの変化を、前後輪の他方に駆動連結された回転電機(以下、「モータ」という)の駆動トルクにより打ち消すようにモータを制御することが提案されている。また、特許文献2のものは、前後輪の一方に駆動連結された変速機の変速中に生じる駆動トルクの変化を、前後輪の他方に駆動連結されたモータの駆動トルクにより打ち消すことができない場合、前後輪の一方に駆動連結されたモータの駆動トルクを低下させつつ、前後輪の他方に駆動連結されたモータの駆動トルクを増大させておくことが提案されている。これら特許文献1及び特許文献2のものは、2つの変速機を1つずつ変速させるため、例えば一方の変速機が2速段に変速された際に他方の変速段が1速段のままである状態となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-107042号公報
【特許文献2】特開2011-67018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的にモータは回転速度が高くなると、ある回転速度から逆起電力が大きくなるため、図6(A)に示すように、モータがその回転速度となる車速よりも車速が高くなると、1速段の最大駆動力線DF1、2速段の最大駆動力線DF2で示すよう最大駆動力性能が下がる。また、変速機を1速段から2速段にアップシフトすると、モータの回転速度が低くなって逆起電力の影響は小さくなるが、駆動トルクもギヤ比に応じて下がる。要するに、車速が所定の車速よりも低い範囲では、変速機が1速段である方が最大駆動力性能が高く、車速が所定の車速よりも高い範囲では、変速機が2速段である方が最大駆動力性能が高くなるという特性がある。
【0006】
そのため、上記のように前輪とモータとの間に第1変速機と、後輪とモータとの間に第2変速機とを備えた構成にあっても、基本的に1速段から2速段へのアップシフトを判断するアップ変速線SLU1は、1速段の最大駆動力線DF1と2速段の最大駆動力線DF2とが交差する所定の車速の近辺に設定されていて、図6(A)及び図6(B)に示すように、所定の車速未満の車速ではそれら第1変速機及び第2変速機を1速段で、所定の車速以上の車速では第1変速機及び第2変速機を2速段に制御することが一般的である。特許文献1及び特許文献2のものも、同時に変速を行わないとしても、アップ変速線SLU1を越えた場合に第1変速機及び第2変速機を順次1速段から2速段に変速して、両方とも2速段にすることが一般的である。なお、2速段から1速段へのダウンシフトを判断するダウン変速線SLD1については、変速判断のハンチングが生じないように、アップ変速線SLU1よりも低速側にずらして設定されている。
【0007】
しかしながら、第1変速機及び第2変速機が1速段であって車両の加速中にあると、アップ変速線SLU1に近づくにつれてモータの逆起電力が大きくなっていき、最大駆動力線DF1で示すように最大駆動力性能が急に低下して、車両の加速が鈍くなるという問題がある。また、アップ変速線SLU1に到達して第1変速機及び第2変速機を1速段から2速段に変速する際、1速段の最大駆動力線DF1及び2速段の最大駆動力線DF2で示すように、車速が上昇していく過程で、それらの最大駆動力性能の傾斜角度の差が大きくなり、変速前後における駆動力性能の変化の差によって変速前後の加速フィーリングが良好ではなくなるという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、車両の加速性能の向上が可能で、かつ変速前後の加速フィーリングを良好にすることが可能な車両用駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態である車両用駆動装置は、
第1回転電機と、
第2回転電機と、
前記第1回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して前輪に伝達する第1変速機と、
前記第2回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して後輪に伝達する第2変速機と、
前記第1変速機と前記第2変速機との変速を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1変速機と前記第2変速機とを共に1速段にする第1状態と、
前記第1変速機と前記第2変速機とを共に2速段にする第2状態と、
前記第1変速機と前記第2変速機との一方を2速段かつ他方を1速段にする第3状態と、に制御可能であり、
駆動力と車速との関係における駆動力性能を示す駆動力線図において、
前記第1状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とが最大駆動力である場合の第1最大駆動力線と、
前記第2状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とが最大駆動力である場合の第2最大駆動力線と、
前記第3状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とが最大駆動力である場合の第3最大駆動力線と、を有し、
前記制御部は、要求される駆動力及び車速が、前記第3最大駆動力線が前記第1最大駆動力線及び前記第2最大駆動力線を越えた領域に含まれる場合に、前記第3状態となるように制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、第3最大駆動力線が第1最大駆動力線及び第2最大駆動力線を越えた領域の駆動力を出力することができ、車両の加速性能を向上できる。また、変速前後の駆動力差も小さくなり、変速前後の加速フィーリングを良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る車両用駆動装置が搭載される車両の概略構成を示す模式図。
図2】本実施の形態に係る車両用駆動装置における第1モータ及び第1変速機を示すスケルトン図。
図3図3(A)は第1の実施の形態に係る3速設定の駆動力線図、図3(B)は第1の実施の形態に係る3速設定の係合表。
図4図4(A)は第2の実施の形態に係る4速設定の駆動力線図、図4(B)は第2の実施の形態に係る4速設定の係合表。
図5】第3の実施の形態に係る4速設定の係合表。
図6図6(A)は2速設定の駆動力線図、図6(B)は2速設定の係合表。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施の形態>
以下、第1の実施の形態に係る車両用駆動装置について説明する。まず、本実施の形態に係る車両用駆動装置が搭載される車両の概略構成について図1を用いて説明する。
【0013】
図1に示すように、車両用駆動装置1が搭載される電気自動車である車両100は、矢印A方向を前進の走行方向としており、大まかに、制御部(ECU)10と、前輪側の駆動ユニット20と、その駆動ユニット20に左右のドライブシャフト95L,95Rを介して駆動連結される左右の前輪90L,90Rと、後輪側の駆動ユニット60と、その駆動ユニット20に左右のドライブシャフト96L,96Rを介して駆動連結される左右の後輪91L,90Rとを備えている。
【0014】
前輪側(フロント)の駆動ユニット20には、制御部10によって制御されるインバータ35と、前輪駆動用の第1回転電機(モータ・ジェネレータ)である第1モータ(MG1)30と、その第1モータ30の回転を変速して左右の前輪90L,90Rに伝達する前輪用の変速機である第1変速機(TM1)40と、が備えられている。また同様に、後輪側(リヤ)の駆動ユニット60には、制御部10によって制御されるインバータ75と、後輪駆動用の第2回転電機(モータ・ジェネレータ)である第2モータ(MG2)70と、その第2モータ70の回転を変速して左右の後輪91L,91Rに伝達する後輪用の変速機である第2変速機(TM2)80と、が備えられている。
【0015】
ついで、前輪側の駆動ユニット20について図2を用いて説明する。なお、後輪側の駆動ユニット60については、以下に説明する前輪側の駆動ユニット20と同様の構成であるので、括弧内に付した符号により同じものであることを指して、その説明を省略する。
【0016】
駆動ユニット20(駆動ユニット60も同様である)のインバータ35は、制御部10によりPWM制御され、不図示のバッテリの電力により第1モータ30(第2モータ70も同様である)を力行し、或いは第1モータ30により回生して不図示のバッテリに充電する。第1モータ30は、駆動ユニット20のケース21に固定された固定子であるステータ31と、ステータ31に配策されたコイルからの磁力によって埋め込み磁石が誘導されることで回転する回転子であるロータ32とを有している。また、ロータ32は、ロータ軸33に対して回転不能に固定されている。
【0017】
ロータ軸33に駆動連結された第1変速機40は、1速段(1st)としてのLo状態と、2速段(2nd)としてのHi状態とに変速可能である。なお、本明細書中において、第1変速機40や第2変速機80の単体では1速段又は2速段に変速可能であるが、後述するように車両用駆動装置1の全体としての1速段の状態、2速段の状態、3速段の状態と区別するため、変速機の単体の1速段についてはLo状態、変速機の単体の2速段についてはHi状態という。なお、本実施の形態では、ロータ軸33と、第1変速機40の入力軸41が別体であるものを説明しているが、一体の一本軸であっても構わない。
【0018】
第1変速機40(第2変速機80も同様である)の入力軸41には、第1モータ30のロータ軸33が駆動連結されており、入力軸41の外周には、Loギヤとしての第1ギヤ42とその第1ギヤ42より大径なHiギヤとしての第2ギヤ43とが回転可能に支持されている。また、入力軸41の外周には、スリーブ44が回転不能かつ軸方向に移動可能に配置されている。即ち、スリーブ44が軸方向に移動して第1ギヤ42に係合すると、入力軸41と第1ギヤ42とが一体に回転する。反対に、スリーブ44が軸方向に移動して第2ギヤ43に係合すると、入力軸41と第2ギヤ43とが一体に回転する。
【0019】
入力軸41と平行に配置されたカウンタ軸47には、第1ギヤ42に噛合する第3ギヤ45と、第2ギヤ43に噛合すると共にその第3ギヤ45よりも小径な第4ギヤ46と、がそれぞれ固定されている。また、カウンタ軸47には、第3ギヤ45と第4ギヤ46との軸方向の間においてカウンタギヤ48が固定されている。カウンタギヤ48は、ディファレンシャル装置50のデフリングギヤ51に噛合されている。そして、ディファレンシャル装置50には、図示を省略したサイドギヤのそれぞれに、上述した左右のドライブシャフト95L,95Rが駆動連結されている。
【0020】
詳しくは後述するように制御部10が第1変速機40をLo状態にすることを判断すると、不図示の電動モータによってシフトフォークを介してスリーブ44を第1ギヤ42の側に移動駆動し、入力軸41と第1ギヤ42とが一体に係合される。これにより、第1モータ30のロータ軸33は、入力軸41、第1ギヤ42、第3ギヤ45、カウンタ軸47、カウンタギヤ48、デフリングギヤ51を介してディファレンシャル装置50に駆動連結され、さらに、左右のドライブシャフト95L,95Rを介して左右の前輪90L,90Rに駆動連結され、第1モータ30の回転速度をLo状態のギヤ比で変速して前輪90L,90Rに伝達する。なお、第1の実施の形態におけるLo状態のギヤ比は、図3(B)に示すように、「16」である。
【0021】
また、制御部10が第1変速機40をHi状態にすることを判断すると、不図示の電動モータによってシフトフォークを介してスリーブ44を第2ギヤ43の側に移動駆動し、入力軸41と第2ギヤ43とが一体に係合される。これにより、第1モータ30のロータ軸33は、入力軸41、第2ギヤ43、第4ギヤ46、カウンタ軸47、カウンタギヤ48、デフリングギヤ51を介してディファレンシャル装置50に駆動連結され、さらに、左右のドライブシャフト95L,95Rを介して左右の前輪90L,90Rに駆動連結され、第1モータ30の回転速度をHi状態のギヤ比で変速して前輪90L,90Rに伝達する。なお、第1の実施の形態におけるHi状態のギヤ比は、図3(B)に示すように、「8」である。
【0022】
続いて、第1の実施の形態に係る車両用駆動装置1の変速制御について図3(A)及び図3(B)を用いて説明する。図3(B)に示すように、制御部10は、車両用駆動装置1の状態として、3速段の設定(3速設定)を有している。詳細には、1速段の状態では、前輪用(フロント)の第1変速機40をLo状態、かつ後輪用(リヤ)の第2変速機80をLo状態に制御する。2速段の状態では、前輪用(フロント)の第1変速機40をLo状態、かつ後輪用(リヤ)の第2変速機80をHi状態に、或いは反対に前輪用(フロント)の第1変速機40をHi状態、かつ後輪用(リヤ)の第2変速機80をLo状態に制御する。そして、3速段の状態では、前輪用(フロント)の第1変速機40をHi状態、かつ後輪用(リヤ)の第2変速機80をHi状態に制御する。
【0023】
換言すると、これら1速段の状態、2速段の状態、3速段の状態は、第1変速機40と第2変速機80との変速段の状態の組合せによって車両用駆動装置1の全体としての疑似的な3段変速を達成するものであり、1速段の状態では第1変速機40と第2変速機80とを共に同じLo状態に、2速段の状態では第1変速機40と第2変速機80との一方をLo状態でかつ第1変速機40と第2変速機80と他方をHi状態に、3速段の状態では第1変速機40と第2変速機80とを共に同じHi状態に、それぞれを変速制御する。
【0024】
次に、車両用駆動装置1が1速段の状態、2速段の状態、3速段の状態に制御された際の駆動力性能と変速判断との関係について図3(A)を用いて説明する。図3(A)に示すように、車両用駆動装置1としての駆動力と車速との関係における駆動力線図において、不図示のバッテリの充電残量が十分にあるとした条件で、第1モータ30と第2モータ70とから最大駆動力を出力したとすると、第1変速機40と第2変速機80とが共にLo状態である1速段の状態の第1最大駆動力線としての最大駆動力性能は、最大駆動力線(以下、「1速最大駆動力線」という)DF1で示される。また、同様の条件で、第1変速機40がLo状態かつ第2変速機80がHi状態、又は第1変速機40がHi状態かつ第2変速機80がLo状態である2速段の状態の最大駆動力性能は、第3最大駆動力線としての最大駆動力線(以下、「2速最大駆動力線」という)DF2で示される。そして、同様の条件で、第1変速機40と第2変速機80とが共にHi状態である3速段の状態の最大駆動力性能は、第2最大駆動力線としての最大駆動力線(以下、「3速最大駆動力線」という)DF3で示される。
【0025】
車両用駆動装置1が1速段の状態では、第1モータ30と第2モータ70とにおいて逆起電圧が発生し始める回転速度を越えると出力可能な駆動力が低下していくため、1速最大駆動力線DF1で示すように、第1変速機40及び第2変速機80がLo状態であるギヤ比に応じて逆起電圧が発生する車速を越えると最大駆動力性能(出力可能な最大駆動力)が低下していく。一方、3速段の状態にあっても、第1モータ30と第2モータ70とにおいて逆起電圧が発生し始める回転速度を越えると出力可能な駆動力が低下していくが、第1変速機40及び第2変速機80がHi状態であるギヤ比に応じて逆起電圧が発生する車速が1速段よりも高くなる。しかしながら、3速段の状態にあっては、逆起電圧が発生し始める回転速度よりも回転速度が低い状態で、ギヤ比に応じて車両用駆動装置1として出力可能な駆動力が1速段の状態よりも低くなる。
【0026】
車両用駆動装置1が2速段の状態では、第1変速機40と第2変速機80との一方がLo状態で、第1変速機40と第2変速機80と他方がHi状態であるため、第1モータ30と第2モータ70との一方の最大駆動力線が1速最大駆動力線DF1の半分となり、第1モータ30と第2モータ70との他方の最大駆動力線が3速最大駆動力線DF3の半分となり、2速最大駆動力線DF2は、これらを合算した形となって、逆起電圧の発生によって駆動力が低下する車速が1速段の状態と3速段の状態との間となり、逆起電圧が発生し始める回転速度よりも回転速度が低い状態で出力可能な駆動力も1速段の状態と3速段の状態との間となる。このため、2速最大駆動力線DF2は、領域Xで示す車速の範囲で、1速最大駆動力線DF1及び3速最大駆動力線DF3を上回る。
【0027】
また、制御部10の不図示の記憶部には、1速段の状態から2速段の状態へのアップシフト変速を判断するアップ変速線SLU1、2速段の状態から3速段の状態へのアップシフト変速を判断するアップ変速線SLU2、2速段の状態から1速段の状態へのダウンシフト変速を判断するダウン変速線SLD1、3速段の状態から2速段の状態へのダウンシフト変速を判断するダウン変速線SLD2、がそれぞれ車速の値の直線として記憶されて設定されている。なお、本第1の実施の形態では、これらの変速線が車速だけに応じて設定されているが、運転者に要求される要求駆動力(アクセル開度)と車速とに応じて変速判断が可能となるように設定されていてもよく、つまり図3(A)の駆動力線図において、傾斜ないし湾曲した変速線であっても構わない。また、車速の微小な変動によってハンチングが生じないように、アップ変速線SLU1に対してダウン変速線SLD1は一定の低さの車速に設定されており、アップ変速線SLU2に対してダウン変速線SLD2も一定の低さの車速に設定されている。
【0028】
そして、本第1の実施の形態において、アップ変速線SLU1は、1速最大駆動力線DF1と2速最大駆動力線DF2とが交差する車速に設定されており、アップ変速線SLU2は、2速最大駆動力線DF2と3速最大駆動力線DF3とが交差する車速に設定されている。このため、例えば運転者に要求される要求駆動力が最大(アクセル開度が全開)であって、車両100が加速していく状態で、車両用駆動装置1が1速段の状態で車速がアップ変速線SLU1に到達すると、第1変速機40と第2変速機80との一方がLo状態からHi状態に変速されることで、車両用駆動装置1が2速段の状態に制御され、さらに、車両用駆動装置1が2速段の状態で車速がアップ変速線SLU2に到達すると、第1変速機40と第2変速機80との他方もLo状態からHi状態に変速されることで、車両用駆動装置1が3速段の状態に制御される。
【0029】
これにより、上述した領域Xで示す車速の範囲で、2速最大駆動力線DF2で示す最大駆動力が出力可能となり、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(図6(A)及び図6(B)参照)に比して、車両100の加速性能を向上することできる。また、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(図6(A)及び図6(B)参照)に比して、最大駆動力性能として、1速最大駆動力線DF1の傾斜角度から2速最大駆動力線DF2の傾斜角度を経由して3速最大駆動力線DF3の傾斜角度に滑らかに繋がり、それらの傾斜角度の差が小さくなって、変速前後における駆動力性の変化の差が小さくなり、速前後の加速フィーリングを良好にすることができる。
【0030】
なお、以上説明した本第1の実施の形態において2速段の状態では、第1変速機40をLo状態でかつ第2変速機80をHi状態にしても、反対に第1変速機40をHi状態でかつ第2変速機80をLo状態にしても、どちらでもよい旨を説明した。しかしながら、車両100が前進走行中(図1の矢印A方向)に加速する際には、車両100の荷重が後輪91L,91Rにかかり易く、反対に車両100が前進走行中に減速する際には、車両100の荷重が前輪90L,90Rにかかり易い。そのため、車両100の加速時には第1変速機40がHi状態でかつ第2変速機80がLo状態であると、駆動力が路面に効率よく伝達されて加速効率が良好になり、反対に車両100の減速時には第1変速機40がLo状態でかつ第2変速機80がHi状態であると、第1モータ30が高回転状態で回生可能となって回生効率が良好になる。
【0031】
そのため、車両100の加速時において、アップ変速線SLU1の到達を判断して1速段の状態から2速段の状態に変速する際には、第1変速機40をLo状態からHi状態に変速し、さらに、アップ変速線SLU2の到達を判断して2速段の状態から3速段の状態に変速する際には、第2変速機80をLo状態からHi状態に変速し、その後の車両100の減速時において、ダウン変速線SLD2の到達を判断して3速段の状態から2速段の状態に変速する際には、第1変速機40をHi状態からLo状態に変速し、さらに、ダウン変速線SLD1の到達を判断して2速段の状態から1速段の状態に変速する際には、第2変速機80をHi状態からLo状態に変速することが考えられる。
【0032】
また、車両100の性能として加速性能を燃費性能より重視する場合には、2速段の状態として第1変速機40をHi状態でかつ第2変速機80をLo状態にするだけで、第1変速機40をLo状態でかつ第2変速機80をHi状態にはしないようにしてもよい。さらに、車両100の性能として燃費性能を加速性能より重視する場合には、2速段の状態として第1変速機40をLo状態でかつ第2変速機80をHi状態にするだけで、第1変速機40をHi状態でかつ第2変速機80をLo状態にはしないようにしてもよい。
【0033】
また、本第1の実施の形態においては、アップ変速線SLU1が1速最大駆動力線DF1と2速最大駆動力線DF2との交点となる車速に、アップ変速線SLU2が2速最大駆動力線DF2と3速最大駆動力線DF3との交点となる車速に、それぞれ設定されているが、必ずしも一致してなくてもよい。要するに、領域Xの範囲の少なくとも一部で2速段の状態となるように、アップ変速線SLU1とアップ変速線SLU2とが設定されていれば、1速段の状態と3速段の状態とだけの場合よりも駆動力性能を向上できる。
【0034】
また、本第1の実施の形態においては、ダウン変速線SLD1とダウン変速線SLD2とが、単にアップ変速線SLU1とアップ変速線SLU2とから一定の低さの車速に設定されているものとして説明したが、回生時に2速段の状態で1速段の状態と3速段の状態とよりも回生可能な駆動力性能が上がる領域があり、その領域の少なくとも一部で2速段の状態となるようにダウン変速線SLD1とダウン変速線SLD2とが設定されていることが好ましい。
【0035】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態に係る車両用駆動装置1について図4(A)及び図4(B)を用いて説明する。上記第1の実施の形態では、第1変速機40と第2変速機80とにおいてLo状態とHi状態とのギヤ比が同じものを説明したが、本第2の実施の形態においては、第1変速機40のLo状態(1速段)のギヤ比が第2変速機80のLo状態(1速段)のギヤ比よりも大きく、第1変速機40のHi状態(2速段)のギヤ比が第2変速機80のHi状態(2速段)のギヤ比よりも小さくなるように構成されている。
【0036】
具体的には、図4(B)に示すように、第1変速機40のLo状態のギヤ比は、第1ギヤ42と第3ギヤ45との歯数比で設定され(図2参照)、そのギヤ比は「15」であり、第1変速機40のHi状態のギヤ比は、第2ギヤ43と第4ギヤ46との歯数比で設定され、そのギヤ比は「6」である。また、第2変速機80のLo状態のギヤ比は、第1ギヤ42と第3ギヤ45との歯数比で設定され、そのギヤ比は「12」であり、第2変速機80のHi状態のギヤ比は、第2ギヤ43と第4ギヤ46との歯数比で設定され、そのギヤ比は「9」である。
【0037】
そして、1速段の状態では、第1変速機40と第2変速機80との両方がLo状態に、2速段の状態では、第1変速機40がLo状態にかつ第2変速機80がHi状態に、3速段の状態では、第1変速機40がHi状態にかつ第2変速機80がLo状態に、4速段の状態では、第1変速機40と第2変速機80との両方がHi状態に、それぞれ変速制御される。
【0038】
このように構成された第2の実施の形態に係る車両用駆動装置1では、図4(A)の駆動力線図に示すように、1速段の状態、2速段の状態、3速段の状態、4速段の状態に応じて、1速最大駆動力線DF1(第1最大駆動力線)、2速最大駆動力線DF2(第4最大駆動力線)、3速最大駆動力線DF3(第3最大駆動力線)、4速最大駆動力線DF4(第2最大駆動力線)を有することになる。また、アップ変速線SLU1は、1速最大駆動力線DF1と2速最大駆動力線DF2との交点となる車速に、アップ変速線SLU2は、2速最大駆動力線DF2と3速最大駆動力線DF3との交点となる車速に、アップ変速線SLU3は、3速最大駆動力線DF3と4速最大駆動力線DF4との交点となる車速に、それぞれ設定され、さらに、ダウン変速線SLD1は、アップ変速線SLU1から一定の低い車速に、ダウン変速線SLD2は、アップ変速線SLU2から一定の低い車速に、ダウン変速線SLD3は、アップ変速線SLU3から一定の低い車速に、それぞれ設定されている。
【0039】
これにより、第1変速機40と第2変速機80とが共にLo状態である1速最大駆動力線DF1と、第1変速機40と第2変速機80とが共にHi状態である4速最大駆動力線DF4とに対して、2速段の状態では2速最大駆動力線DF2が上回る領域X1,X3ができ、3速段の状態では3速最大駆動力線DF3が上回る領域X2,X3ができる。このため、領域X1,X3で示す車速の範囲で、2速最大駆動力線DF2で示す最大駆動力が出力可能となり、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(図6(A)及び図6(B)参照)に比して、車両100の加速性能を向上することでき、さらに、領域X2,X3で示す車速の範囲で、3速最大駆動力線DF3で示す最大駆動力が出力可能となり、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(図6(A)及び図6(B)参照)に比して、車両100の加速性能を向上することできる。
【0040】
また、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(図6(A)及び図6(B)参照)に比して、最大駆動力性能として、1速最大駆動力線DF1の傾斜角度から2速最大駆動力線DF2の傾斜角度と3速最大駆動力線DF3の傾斜角度とを経由して4速最大駆動力線DF4の傾斜角度に滑らかに繋がり、それらの傾斜角度の差が小さくなって、変速前後における駆動力性の変化の差が小さくなり、速前後の加速フィーリングを良好にすることができる。
【0041】
そして、本第2の実施の形態に係る車両用駆動装置1は、第1変速機40(フロント)のLo状態のギヤ比(GR15)が第2変速機80(リヤ)のLo状態のギヤ比(GR12)よりも大きいギヤ比であると共に、2速段の状態で第1変速機40(フロント)がLo状態かつ第2変速機80(リヤ)がHi状態となるため、車両100の減速時にあって、車速が低くて2速段の状態又は1速段の状態となる際に、車両100の荷重が前輪90L,90Rにかかり易い状態で、第1モータ30が高回転状態で回生可能となって回生効率が良好になる。
【0042】
なお、第2の実施の形態における、これ以外の構成、作用、及び効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0043】
<第3の実施の形態>
続いて、上記第2の実施の形態を一部変更した第3の実施の形態に係る車両用駆動装置1について図5を用いて説明する。本第3の実施の形態は、第2の実施の形態に比して、第1変速機40のLo状態とHi状態のギヤ比と、第2変速機80のLo状態とHi状態のギヤ比とを入れ替えたものである。即ち、本第3の実施の形態においては、第1変速機40のLo状態(1速段)のギヤ比が第2変速機80のLo状態(1速段)のギヤ比よりも小さく、第1変速機40のHi状態(2速段)のギヤ比が第2変速機80のHi状態(2速段)のギヤ比よりも大きくなるように構成されている。
【0044】
具体的には、図5に示すように、第1変速機40のLo状態のギヤ比は「12」であり、第1変速機40のHi状態のギヤ比は「9」である。また、第2変速機80のLo状態のギヤ比は「15」であり、第2変速機40のHi状態のギヤ比は「6」である。
【0045】
そして、1速段の状態では、第1変速機40と第2変速機80との両方がLo状態に、2速段の状態では、第1変速機40がHi状態にかつ第2変速機80がLo状態に、3速段の状態では、第1変速機40がLo状態にかつ第2変速機80がHi状態に、4速段の状態では、第1変速機40と第2変速機80との両方がHi状態に、それぞれ変速制御される。
【0046】
このように構成された第3の実施の形態に係る車両用駆動装置1では、1速段の状態、2速段の状態、3速段の状態、4速段の状態に応じて、第2の実施の形態と同様に(図4(A)参照)、1速最大駆動力線DF1(第1最大駆動力線)、2速最大駆動力線DF2(第3最大駆動力線)、3速最大駆動力線DF3(第4最大駆動力線)、4速最大駆動力線DF4(第2最大駆動力線)を有することになる。また、アップ変速線SLU1は、1速最大駆動力線DF1と2速最大駆動力線DF2との交点となる車速に、アップ変速線SLU2は、2速最大駆動力線DF2と3速最大駆動力線DF3との交点となる車速に、アップ変速線SLU3は、3速最大駆動力線DF3と4速最大駆動力線DF4との交点となる車速に、それぞれ設定され、さらに、ダウン変速線SLD1は、アップ変速線SLU1から一定の低い車速に、ダウン変速線SLD2は、アップ変速線SLU2から一定の低い車速に、ダウン変速線SLD3は、アップ変速線SLU3から一定の低い車速に、それぞれ設定されている。
【0047】
本第3の実施の形態においても、第2の実施の形態と同様に、第1変速機40と第2変速機80とが共にLo状態である1速最大駆動力線DF1と、第1変速機40と第2変速機80とが共にHi状態である4速最大駆動力線DF4とに対して、2速段の状態では2速最大駆動力線DF2が上回る領域X1,X3ができ、3速段の状態では3速最大駆動力線DF3が上回る領域X2,X3ができる。このため、領域X1,X3で示す車速の範囲で、2速最大駆動力線DF2で示す最大駆動力が出力可能となり、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(図6(A)及び図6(B)参照)に比して、車両100の加速性能を向上することでき、さらに、領域X2,X3で示す車速の範囲で、3速最大駆動力線DF3で示す最大駆動力が出力可能となり、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(図6(A)及び図6(B)参照)に比して、車両100の加速性能を向上することできる。
【0048】
また、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(図6(A)及び図6(B)参照)に比して、最大駆動力性能として、1速最大駆動力線DF1の傾斜角度から2速最大駆動力線DF2の傾斜角度と3速最大駆動力線DF3の傾斜角度とを経由して4速最大駆動力線DF4の傾斜角度に滑らかに繋がり、それらの傾斜角度の差が小さくなって、変速前後における駆動力性の変化の差が小さくなり、速前後の加速フィーリングを良好にすることができる。
【0049】
そして、本第3の実施の形態に係る車両用駆動装置1は、第1変速機40(フロント)のLo状態のギヤ比(GR12)が第2変速機80(リヤ)のLo状態のギヤ比(GR16)よりも小さいギヤ比であると共に、2速段の状態で第1変速機40(フロント)がHi状態かつ第2変速機80(リヤ)がLo状態となるため、車両100の加速時にあって、車速が低くて2速段の状態又は1速段の状態となる際に、車両100の荷重が後輪91L,91Rにかかり易い状態で、駆動力が路面に効率よく伝達されて加速効率が良好になる。
【0050】
なお、第3の実施の形態における、これ以外の構成、作用、及び効果は、第1及び第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0051】
<他の実施の形態の可能性>
なお、以上説明した第1乃至第3の実施の形態においては、第1変速機40と第2変速機80とが、Lo状態とHi状態との2段の変速段で変速するものを説明したが、これに限らず、3段の変速段で変速するものなど、2段以上の変速段で変速する変速機であってもよい。特に第1変速機40が3段の変速段、第2変速機80が2段の変速段を有するものであってもよく、第1変速機40と第2変速機とが共に最低変速段で第1状態となり、第1変速機40と第2変速機とが共に最高変速段で第2状態となり、第1変速機40と第2変速機とが異なる変速段である場合に第3状態や第4状態となるものであってもよい。
【0052】
また、第1乃至第3の実施の形態において、第1変速機40と第2変速機80とがスリーブ44の軸方向の移動で係合する、所謂噛合いクラッチで構成されているものを説明したが、これに限らず、例えば摩擦係合要素の係合によって伝達経路を変更することで2段以上の変速段を達成できるものであれば、どのような変速機であってもよい。
【0053】
また、第1乃至第3の実施の形態において、変速判断を変速線に基づき行うものを説明したが、これに限らず、駆動力線図に対応して変速判断を要求駆動力と車速とに応じて設定された変速判断領域が記録された変速マップを備え、このような変速マップに応じて変速判断を行うものであってもよい。また、このように変速判断領域を設定する場合は、それらの境界が変速線ということになるが、変速判断のハンチングが生じないように、例えば最初の変速判断から次の変速判断まで一定時間の変速禁止期間を設けてもよいし、アップシフト用の変速判断領域とダウンシフト用の変速判断領域との2種類を記憶領域に準備しておいてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…車両用駆動装置/10…制御部/30…第1モータ(第1回転電機)/40…第1変速機/70…第2モータ(第2回転電機)/80…第2変速機/90L,90R…前輪/91L,91R…後輪/DF1…1速最大駆動力線(第1最大駆動力線)/図3(A)のDF2…2速最大駆動力線(第3最大駆動力線)/図3(A)のDF3…3速最大駆動力線(第2最大駆動力線)/図4(A)のDF2…2速最大駆動力線(第4最大駆動力線)/図4(A)のDF3…3速最大駆動力線(第3最大駆動力線)/図4(A)のDF4…4速最大駆動力線(第2最大駆動力線)/X…領域/X1…領域/X2…領域/X3…領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6