(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081348
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20220524BHJP
F16H 3/089 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B60L15/20 K
F16H3/089
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192846
(22)【出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 賢司
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武史
【テーマコード(参考)】
3J528
5H125
【Fターム(参考)】
3J528EA21
3J528EB37
3J528EB63
3J528EB66
3J528EB76
3J528EB95
3J528FB06
3J528FB12
3J528FB14
3J528FC32
3J528FC65
3J528GA01
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BE05
5H125CA02
5H125CA08
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】車両の電費向上を図ることが可能な車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】車両用駆動装置は、第1モータと、第2モータと、第1モータの回転を変速して前輪に伝達する第1変速機と、第2モータの回転を変速して後輪に伝達する第2変速機と、制御部とを備える。制御部は、第1変速機と第2変速機とを共にLo状態にする1速段の状態と、第1変速機と第2変速機とを共にHi状態にする2速段の状態と、第1変速機と第2変速機との一方をHi状態かつ他方をLo状態にする3速段の状態とに制御可能である。駆動力線図において、1速段の最高効率点(MPP1、MRP1)、2速段の最高効率点(MPP2、MRP2)、3速段の最高効率点(MPP3、MRP3)を有しており、1速段~3速段の最高効率点でそれぞれ1速段~3速段の状態に制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転電機と、
第2回転電機と、
前記第1回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して前輪に伝達する第1変速機と、
前記第2回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して後輪に伝達する第2変速機と、
前記第1変速機と前記第2変速機との変速を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1変速機と前記第2変速機とを共に1速段にする第1状態と、
前記第1変速機と前記第2変速機とを共に2速段にする第2状態と、
前記第1変速機と前記第2変速機との一方を2速段かつ他方を1速段にする第3状態と、に制御可能であり、
駆動力と車速との関係における駆動力性能を示す駆動力線図において、
前記第1状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とによる合計の効率が最高である場合の第1最高効率点と、
前記第2状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とによる合計の効率が最高である場合の第2最高効率点と、
前記第3状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とによる合計の効率が最高である場合の第3最高効率点と、を有し、
前記制御部は、要求される駆動力及び車速が、前記第1最高効率点のときに前記第1状態になるように制御し、前記第2最高効率点のときに前記第2状態になるように制御し、前記第3最高効率点のときに前記第3状態になるように制御する、
車両用駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1最高効率点と前記第3最高効率点との間で前記第1状態と前記第3状態との切換えを行い、前記第2最高効率点と前記第3最高効率点との間で前記第2状態と前記第3状態との切換えを行う、
請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1回転電機と前記第2回転電機との両方を駆動制御する四輪駆動モードと、前記第1回転電機と前記第2回転電機との一方を駆動制御する二輪駆動モードと、を選択的に切換え可能であり、
前記二輪駆動モードにおいて、前記第1変速機と前記第2変速機とのうちの、前記第1回転電機と前記第2回転電機との駆動制御する方に駆動連結された方を1速段にする第4状態と、
前記二輪駆動モードにおいて、前記第1変速機と前記第2変速機とのうちの、前記第1回転電機と前記第2回転電機との駆動制御する方に駆動連結された方を2速段にする第5状態と、に制御可能であり、
前記駆動力線図において、
前記第4状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機との駆動制御する方の効率が最高である場合の第4最高効率点と、
前記第5状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機との駆動制御する方の効率が最高である場合の第5最高効率点と、を有し、
前記制御部は、要求される駆動力及び車速が、前記第4最高効率点のときに前記第4状態になるように制御し、前記第5最高効率点のときに前記第5状態になるように制御する、
請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第1変速機の1速段は、前記第2変速機の1速段と異なるギヤ比であり、
前記第1変速機の2速段は、前記第2変速機の2速段と異なるギヤ比であり、
前記制御部は、
前記第1変速機と前記第2変速機との一方を1速段かつ他方を2速段にする第6状態、に制御可能であり、
前記駆動力線図において、
前記第6状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とによる合計の効率が最高である場合の第6最高効率点、を有し
前記制御部は、要求される駆動力及び車速が、前記第6最高効率点のときに前記第6状態になるように制御する、
請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
第1回転電機と、
第2回転電機と、
前記第1回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して前輪に伝達する第1変速機と、
前記第2回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して後輪に伝達する第2変速機と、
前記第1変速機と前記第2変速機との変速を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1回転電機と前記第2回転電機との両方を駆動制御する四輪駆動モードと、前記第1回転電機と前記第2回転電機との一方を駆動制御する二輪駆動モードと、を選択的に切換え可能であり、
前記四輪駆動モードにおいて、前記第1変速機と前記第2変速機とを共に1速段にする第7状態と、
前記四輪駆動モードにおいて、前記第1変速機と前記第2変速機とを共に2速段にする第8状態と、
前記二輪駆動モードにおいて、前記第1変速機と前記第2変速機とのうちの、前記第1回転電機と前記第2回転電機との駆動制御する方に駆動連結された方を1速段にする第9状態と、
前記二輪駆動モードにおいて、前記第1変速機と前記第2変速機とのうちの、前記第1回転電機と前記第2回転電機との駆動制御する方に駆動連結された方を2速段にする第10状態と、に制御可能であり、
前記制御部は、要求される駆動力及び車速が、前記二輪駆動モードで達成可能な状態で、前記二輪駆動モードにおける前記第1回転電機と前記第2回転電機との駆動制御する方の効率より、前記四輪駆動モードにおける前記第1回転電機と前記第2回転電機とによる合計の効率が良いときは、前記四輪駆動モードに制御する、
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車に搭載される車両用駆動装置として、前輪を駆動する第1回転電機と、後輪を駆動する第2回転電機と、それら前輪と第1回転電機との間で変速を行う第1変速機と、それら後輪と第2回転電機との間で変速を行う第2変速機と、を備え、四輪駆動で走行することが可能なものが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1のものは、前後輪の一方に駆動連結された変速機の変速中に生じる駆動トルクの変化を、前後輪の他方に駆動連結された回転電機(以下、「モータ」という)の駆動トルクにより打ち消すようにモータを制御することが提案されている。また、特許文献2のものは、前後輪の一方に駆動連結された変速機の変速中に生じる駆動トルクの変化を、前後輪の他方に駆動連結されたモータの駆動トルクにより打ち消すことができない場合、前後輪の一方に駆動連結されたモータの駆動トルクを低下させつつ、前後輪の他方に駆動連結されたモータの駆動トルクを増大させておくことが提案されている。これら特許文献1及び特許文献2のものは、2つの変速機を1つずつ変速させるため、例えば一方の変速機が2速段に変速された際に他方の変速段が1速段のままである状態となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-107042号公報
【特許文献2】特開2011-67018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的にモータの力行時にあって、消費電力に対して出力する駆動力の出力効率が最高となる車速及び駆動力の関係があり、
図13(A)及び
図13(B)に示すように、駆動力と車速との関係を示す駆動力線図において、2つの変速機が両方とも1速段の場合の最高出力効率点MPP1、2つの変速機が両方とも2速段の場合の最高出力効率点MPP2、として表すことができる。なお、2つの変速機が両方とも1速段である場合は、最大駆動力性能である最高駆動力線DF1の範囲内に、例えば出力効率が90%程度の高出力効率領域HPA1があり、2つの変速機が両方とも2速段である場合は、最大駆動力性能である最高駆動力線DF2の範囲内に、例えば出力効率が90%程度の高出力効率領域HPA2がある。
【0006】
また反対に、回生時おける充電効率が最高となる車速及び回生力の関係があり、
図13(A)及び
図13(B)に示すように、駆動力と車速との関係を示す駆動力線図において、2つの変速機が両方とも1速段の場合の最高回生効率点MRP1、2つの変速機が両方とも2速段の場合の最高回生効率点MRP2、として表すことができる。なお、2つの変速機が両方とも1速段である場合は、上記と同様に、例えば回生効率が90%程度の高回生効率領域HRA1があり、2つの変速機が両方とも2速段である場合は、例えば回生効率が90%程度の高回生効率領域HRA2がある。
【0007】
上記特許文献1や特許文献2のものは、2つの変速機のうちの一方が変速中に他方を変速しないタイミングがあり、同時に変速を行わないとしても、アップ変速線SLU1を越えた場合に第1変速機及び第2変速機を順次1速段から2速段に変速して、両方とも2速段にすることが一般的であり、少なくとも最高出力効率点を考慮した変速制御は行っていない。そのため、1速段の場合の最高出力効率点MPP1と2速段の場合の最高出力効率点MPP2との間にアップ変速線SLU1があれば、2つの変速機が共に1速段であるときの最高出力効率点MPP1、或いは2つの変速機が共に2速段であるときの最高出力効率点MPP2を用いた走行ができるとしても、さらなる電費向上を図ることができていない。
【0008】
そこで本発明は、車両の電費向上を図ることが可能な車両用駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態である車両用駆動装置は、
第1回転電機と、
第2回転電機と、
前記第1回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して前輪に伝達する第1変速機と、
前記第2回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して後輪に伝達する第2変速機と、
前記第1変速機と前記第2変速機との変速を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1変速機と前記第2変速機とを共に1速段にする第1状態と、
前記第1変速機と前記第2変速機とを共に2速段にする第2状態と、
前記第1変速機と前記第2変速機との一方を2速段かつ他方を1速段にする第3状態と、に制御可能であり、
駆動力と車速との関係における駆動力性能を示す駆動力線図において、
前記第1状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とによる合計の効率が最高である場合の第1最高効率点と、
前記第2状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とによる合計の効率が最高である場合の第2最高効率点と、
前記第3状態のときに前記第1回転電機と前記第2回転電機とによる合計の効率が最高である場合の第3最高効率点と、を有し、
前記制御部は、要求される駆動力及び車速が、前記第1最高効率点のときに前記第1状態になるように制御し、前記第2最高効率点のときに前記第2状態になるように制御し、前記第3最高効率点のときに前記第3状態になるように制御する。
【0010】
また、本発明の一形態である車両用駆動装置は、
第1回転電機と、
第2回転電機と、
前記第1回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して前輪に伝達する第1変速機と、
前記第2回転電機の回転を2段以上の変速段で変速して後輪に伝達する第2変速機と、
前記第1変速機と前記第2変速機との変速を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1回転電機と前記第2回転電機との両方を駆動制御する四輪駆動モードと、前記第1回転電機と前記第2回転電機との一方を駆動制御する二輪駆動モードと、を選択的に切換え可能であり、
前記四輪駆動モードにおいて、前記第1変速機と前記第2変速機とを共に1速段にする第7状態と、
前記四輪駆動モードにおいて、前記第1変速機と前記第2変速機とを共に2速段にする第8状態と、
前記二輪駆動モードにおいて、前記第1変速機と前記第2変速機とのうちの、前記第1回転電機と前記第2回転電機との駆動制御する方に駆動連結された方を1速段にする第9状態と、
前記二輪駆動モードにおいて、前記第1変速機と前記第2変速機とのうちの、前記第1回転電機と前記第2回転電機との駆動制御する方に駆動連結された方を2速段にする第10状態と、に制御可能であり、
前記制御部は、要求される駆動力及び車速が、前記二輪駆動モードで達成可能な状態で、前記二輪駆動モードにおける前記第1回転電機と前記第2回転電機との駆動制御する方の効率より、前記四輪駆動モードにおける前記第1回転電機と前記第2回転電機とによる合計の効率が良いときは、前記四輪駆動モードに制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、車両の電費向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に係る車両用駆動装置が搭載される車両の概略構成を示す模式図。
【
図2】本実施の形態に係る車両用駆動装置における第1モータ及び第1変速機を示すスケルトン図。
【
図3】第1の実施の形態に係る3速設定の駆動力線図。
【
図5】第2の実施の形態に係る4速設定の駆動力線図。
【
図7】第3の実施の形態に係る二輪駆動モードで2速設定かつ四輪駆動モードで3速設定である場合の効率を示す駆動力線図。
【
図8】第3の実施の形態に係る二輪駆動モードで2速設定かつ四輪駆動モードで3速設定である場合の変速判断領域を示す駆動力線図。
【
図9】第3の実施の形態に係る二輪駆動モードで2速設定かつ四輪駆動モードで3速設定の係合表。
【
図10】第4の実施の形態に係る二輪駆動モードで4速設定かつ四輪駆動モードで4速設定である場合の効率を示す駆動力線図。
【
図11】第4の実施の形態に係る二輪駆動モードで4速設定かつ四輪駆動モードで4速設定である場合の変速判断領域を示す駆動力線図。
【
図12】第4の実施の形態に係る二輪駆動モードで4速設定かつ四輪駆動モードで4速設定の係合表。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施の形態>
以下、第1の実施の形態に係る車両用駆動装置について説明する。まず、本実施の形態に係る車両用駆動装置が搭載される車両の概略構成について
図1を用いて説明する。
【0014】
図1に示すように、車両用駆動装置1が搭載される電気自動車である車両100は、矢印A方向を前進の走行方向としており、大まかに、変速を制御可能な制御部(ECU)10と、前輪側の駆動ユニット20と、その駆動ユニット20に左右のドライブシャフト95L,95Rを介して駆動連結される左右の前輪90L,90Rと、後輪側の駆動ユニット60と、その駆動ユニット20に左右のドライブシャフト96L,96Rを介して駆動連結される左右の後輪91L,90Rとを備えている。
【0015】
前輪側(フロント)の駆動ユニット20には、制御部10によって制御されるインバータ35と、前輪駆動用の第1回転電機(モータ・ジェネレータ)である第1モータ(MG1)30と、その第1モータ30の回転を変速して左右の前輪90L,90Rに伝達する前輪用の変速機である第1変速機(TM1)40と、が備えられている。また同様に、後輪側(リヤ)の駆動ユニット60には、制御部10によって制御されるインバータ75と、後輪駆動用の第2回転電機(モータ・ジェネレータ)である第2モータ(MG2)70と、その第2モータ70の回転を変速して左右の後輪91L,91Rに伝達する後輪用の変速機である第2変速機(TM2)80と、が備えられている。
【0016】
ついで、前輪側の駆動ユニット20について
図2を用いて説明する。なお、後輪側の駆動ユニット60については、以下に説明する前輪側の駆動ユニット20と同様の構成であるので、括弧内に付した符号により同じものであることを指して、その説明を省略する。
【0017】
駆動ユニット20(駆動ユニット60も同様である)のインバータ35は、制御部10によりPWM制御され、不図示のバッテリの電力により第1モータ30(第2モータ70も同様である)を力行し、或いは第1モータ30により回生して不図示のバッテリに充電する。第1モータ30は、駆動ユニット20のケース21に固定された固定子であるステータ31と、ステータ31に配策されたコイルからの磁力によって埋め込み磁石が誘導されることで回転する回転子であるロータ32とを有している。また、ロータ32は、ロータ軸33に対して回転不能に固定されている。
【0018】
ロータ軸33に駆動連結された第1変速機40は、1速段(1st)としてのLo状態と、2速段(2nd)としてのHi状態とに変速可能である。なお、本明細書中において、第1変速機40や第2変速機80の単体では1速段又は2速段に変速可能であるが、後述するように車両用駆動装置1の全体としての1速段の状態、2速段の状態、3速段の状態と区別するため、変速機の単体の1速段(第1速段)についてはLo状態、変速機の単体の2速段(第2速段)についてはHi状態という。なお、本実施の形態では、ロータ軸33と、第1変速機40の入力軸41が別体であるものを説明しているが、一体の一本軸であっても構わない。
【0019】
第1変速機40(第2変速機80も同様である)の入力軸41には、第1モータ30のロータ軸33が駆動連結されており、入力軸41の外周には、Loギヤとしての第1ギヤ42とその第1ギヤ42より大径なHiギヤとしての第2ギヤ43とが回転可能に支持されている。また、入力軸41の外周には、スリーブ44が回転不能かつ軸方向に移動可能に配置されている。即ち、スリーブ44が軸方向に移動して第1ギヤ42に係合すると、入力軸41と第1ギヤ42とが一体に回転する。反対に、スリーブ44が軸方向に移動して第2ギヤ43に係合すると、入力軸41と第2ギヤ43とが一体に回転する。
【0020】
入力軸41と平行に配置されたカウンタ軸47には、第1ギヤ42に噛合する第3ギヤ45と、第2ギヤ43に噛合すると共にその第3ギヤ45よりも小径な第4ギヤ46と、がそれぞれ固定されている。また、カウンタ軸47には、第3ギヤ45と第4ギヤ46との軸方向の間においてカウンタギヤ48が固定されている。カウンタギヤ48は、ディファレンシャル装置50のデフリングギヤ51に噛合されている。そして、ディファレンシャル装置50には、図示を省略したサイドギヤのそれぞれに、上述した左右のドライブシャフト95L,95Rが駆動連結されている。
【0021】
詳しくは後述するように制御部10が第1変速機40をLo状態にすることを判断すると、不図示の電動モータによってシフトフォークを介してスリーブ44を第1ギヤ42の側に移動駆動し、入力軸41と第1ギヤ42とが一体に係合される。これにより、第1モータ30のロータ軸33は、入力軸41、第1ギヤ42、第3ギヤ45、カウンタ軸47、カウンタギヤ48、デフリングギヤ51を介してディファレンシャル装置50に駆動連結され、さらに、左右のドライブシャフト95L,95Rを介して左右の前輪90L,90Rに駆動連結され、第1モータ30の回転速度をLo状態のギヤ比で変速して前輪90L,90Rに伝達する。
【0022】
また、制御部10が第1変速機40をHi状態にすることを判断すると、不図示の電動モータによってシフトフォークを介してスリーブ44を第2ギヤ43の側に移動駆動し、入力軸41と第2ギヤ43とが一体に係合される。これにより、第1モータ30のロータ軸33は、入力軸41、第2ギヤ43、第4ギヤ46、カウンタ軸47、カウンタギヤ48、デフリングギヤ51を介してディファレンシャル装置50に駆動連結され、さらに、左右のドライブシャフト95L,95Rを介して左右の前輪90L,90Rに駆動連結され、第1モータ30の回転速度をHi状態のギヤ比で変速して前輪90L,90Rに伝達する。
【0023】
続いて、第1の実施の形態に係る車両用駆動装置1の変速制御について
図3及び
図4を用いて説明する。
図4に示すように、制御部10は、車両用駆動装置1の状態として、四輪駆動モードの3速段の設定(3速設定)を有している。詳細には、1速段の状態(第1状態)では、前輪用(フロント)の第1変速機40をLo状態、かつ後輪用(リヤ)の第2変速機80をLo状態に制御する。2速段の状態(第3状態)では、前輪用(フロント)の第1変速機40をLo状態、かつ後輪用(リヤ)の第2変速機80をHi状態に、或いは反対に前輪用(フロント)の第1変速機40をHi状態、かつ後輪用(リヤ)の第2変速機80をLo状態に制御する。そして、3速段の状態(第2状態)では、前輪用(フロント)の第1変速機40をHi状態、かつ後輪用(リヤ)の第2変速機80をHi状態に制御する。
【0024】
換言すると、これら1速段の状態、2速段の状態、3速段の状態は、第1変速機40と第2変速機80との変速段の状態の組合せによって車両用駆動装置1の全体として四輪駆動モードの疑似的な3段変速を達成するものであり、1速段の状態では第1変速機40と第2変速機80とを共に同じLo状態に、2速段の状態では第1変速機40と第2変速機80との一方をLo状態でかつ第1変速機40と第2変速機80と他方をHi状態に、3速段の状態では第1変速機40と第2変速機80とを共に同じHi状態に、それぞれを変速制御する。
【0025】
次に、車両用駆動装置1が、四輪駆動モードにあって、1速段の状態、2速段の状態、3速段の状態に制御された際の駆動力性能について、
図3を用いて説明する。
図3に示すように、車両用駆動装置1としての駆動力と車速との関係における駆動力線図において、不図示のバッテリの充電残量が十分にあるとした条件で、第1モータ30と第2モータ70とから最大駆動力を出力したとすると、第1変速機40と第2変速機80とが共にLo状態である1速段の状態の第1最大駆動力線としての最大駆動力性能は、最大駆動力線(以下、「1速最大駆動力線」という)DF1で示される。また、同様の条件で、第1変速機40がLo状態かつ第2変速機80がHi状態、又は第1変速機40がHi状態かつ第2変速機80がLo状態である2速段の状態の最大駆動力性能は、第3最大駆動力線としての最大駆動力線(以下、「2速最大駆動力線」という)DF2で示される。そして、同様の条件で、第1変速機40と第2変速機80とが共にHi状態である3速段の状態の最大駆動力性能は、第2最大駆動力線としての最大駆動力線(以下、「3速最大駆動力線」という)DF3で示される。
【0026】
車両用駆動装置1が1速段の状態では、第1モータ30と第2モータ70とにおいて逆起電圧が発生し始める回転速度を越えると出力可能な駆動力が低下していくため、1速最大駆動力線DF1で示すように、第1変速機40及び第2変速機80がLo状態であるギヤ比に応じて逆起電圧が発生する車速を越えると最大駆動力性能(出力可能な最大駆動力)が低下していく。一方、3速段の状態にあっても、第1モータ30と第2モータ70とにおいて逆起電圧が発生し始める回転速度を越えると出力可能な駆動力が低下していくが、第1変速機40及び第2変速機80がHi状態であるギヤ比に応じて逆起電圧が発生する車速が1速段よりも高くなる。しかしながら、3速段の状態にあっては、逆起電圧が発生し始める回転速度よりも回転速度が低い状態で、ギヤ比に応じて車両用駆動装置1として出力可能な駆動力が1速段の状態よりも低くなる。
【0027】
車両用駆動装置1が2速段の状態では、第1変速機40と第2変速機80との一方がLo状態で、第1変速機40と第2変速機80と他方がHi状態であるため、第1モータ30と第2モータ70との一方の最大駆動力線が1速最大駆動力線DF1の半分となり、第1モータ30と第2モータ70との他方の最大駆動力線が3速最大駆動力線DF3の半分となり、2速最大駆動力線DF2は、これらを合算した形となって、逆起電圧の発生によって駆動力が低下する車速が1速段の状態と3速段の状態との間となり、逆起電圧が発生し始める回転速度よりも回転速度が低い状態で出力可能な駆動力も1速段の状態と3速段の状態との間となる。
【0028】
ついで、車両用駆動装置1が1速段の状態、2速段の状態、3速段の状態に制御された際の最高出力効率点、高出力効率領域、最高回生効率点、高回生効率領域について説明する。上述のように車両用駆動装置1が1速段の状態である場合には、1速最大駆動力線DF1の範囲内において、例えば第1モータ30と第2モータ70とによる車両100の駆動力の出力効率(消費した電力に対して車両100の走行駆動力となる割合)が所定の効率として90%以上となる1速段の高出力効率領域HPA1がある。そして、この高出力効率領域HPA1の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる1速段の最高出力効率点MPP1(第1最高効率点)がある。
【0029】
同様に、2速段の状態である場合には、2速最大駆動力線DF2の範囲内において、出力効率が90%以上となる2速段の高出力効率領域HPA2があり、この高出力効率領域HPA2の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる2速段の最高出力効率点MPP2(第3最高効率点)がある。さらに、3速段の状態である場合には、3速最大駆動力線DF3の範囲内において、出力効率が90%以上となる3速段の高出力効率領域HPA3があり、この高出力効率領域HPA3の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる3速段の最高出力効率点MPP3(第2最高効率点)がある。なお、本実施の形態における3速段の高出力効率領域HPA3は、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)における2速段の高出力効率領域HPA2に相当し、3速段の最高出力効率点MPP3は、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)における2速段の最高出力効率点MPP2に相当することになる。
【0030】
一方、駆動力線図において駆動力が0よりも低いマイナスであって、つまり車両が減速する際の回生力を示す部分でも、1速最大駆動力線DF1、2速最大駆動力線DF2、3速最大駆動力線DF3がそのまま反転した形で、最大回生力性能を示している。そして、同様に、1速段の状態である場合には、1速最大駆動力線DF1の範囲内において、回生効率が90%以上となる1速段の高回生効率領域HRA1があり、この高回生効率領域HRA1の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる1速段の最高回生効率点MRP1(第1最高効率点)がある。さらに、2速段の状態である場合には、2速最大駆動力線DF2の範囲内において、回生効率が90%以上となる2速段の高回生効率領域HRA2があり、この高回生効率領域HRA2の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる2速段の最高回生効率点MRP2(第3最高効率点)がある。
【0031】
そして、3速段の状態である場合には、3速最大駆動力線DF3の範囲内において、回生効率が90%以上となる3速段の高回生効率領域HRA3があり、この高回生効率領域HRA3の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる3速段の最高回生効率点MRP3(第2最高効率点)がある。なお、各変速段における高出力効率領域及び最高出力効率点に対して、高回生効率領域及び最高回生効率点は、インバータ35の特性上、車速(モータの回転速度)が僅かに低くなる。また、本実施の形態における3速段の高回生効率領域HRA3は、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)における2速段の高回生効率領域HRA2に相当し、3速段の最高回生効率点MRP3は、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)における2速段の最高回生効率点MRP2に相当することになる。
【0032】
制御部10の不図示の記憶部には、低車速側から到達した際に(つまり車速が上昇する際に)アップシフトを判断して変速の制御を実行するアップ変速線として、1速段の状態から2速段の状態へのアップシフト変速を判断するアップ変速線SLU1、2速段の状態から3速段の状態へのアップシフト変速を判断するアップ変速線SLU2、がそれぞれ車速の値の直線として記憶されて設定されている。また、制御部10の不図示の記憶部には、高車速側から到達した際に(つまり車速が下降する際に)ダウンシフトを判断して変速の制御を実行するダウン変速線として、2速段の状態から1速段の状態へのダウンシフト変速を判断するダウン変速線SLD1、3速段の状態から2速段の状態へのダウンシフト変速を判断するダウン変速線SLD2、がそれぞれ車速の値の直線として記憶されて設定されている。
【0033】
なお、本第1の実施の形態では、これらの変速線が車速だけに応じて設定されているが、運転者に要求される要求駆動力(アクセル開度)と車速とに応じて変速判断が可能となるように設定されていてもよく、つまり
図3の駆動力線図において、傾斜ないし湾曲した変速線であったり、後述する第3の実施の形態のように領域で設定されているものであっても構わない。また、車速の微小な変動によってハンチングが生じないように、アップ変速線SLU1に対してダウン変速線SLD1は一定の低さの車速に設定されており、アップ変速線SLU2に対してダウン変速線SLD2も一定の低さの車速に設定されている。
【0034】
そして、本第1の実施の形態において、アップ変速線SLU1は、1速段の最高出力効率点MPP1と2速段の最高出力効率点MPP2との間に設定されており、アップ変速線SLU2は、2速段の最高出力効率点MPP2と3速段の最高出力効率点MPP3との間に設定されている。要するに、1速段の最高出力効率点MPP1と2速段の最高出力効率点MPP2との間で1速段の状態と2速段の状態との切換えを行い、2速段の最高出力効率点MPP2と3速段の最高出力効率点MPP3との間で2速段の状態と3速段の状態との切換えを行うことになる。このため、例えば第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)に比して、車両用駆動装置1を2速段の状態に制御することで、2速段の最高出力効率点MPP2を用いた車両100の走行が可能となり、1速段の状態と3速段の状態との間にある2速段の状態となる中間の車速で出力効率を向上できる。特に運転者が要求する駆動力(アクセル開度)が高い状態では、
図3における1速段の高出力効率領域HPA1、2速段の高出力効率領域HPA2、3速段の高出力効率領域HPA3の範囲内に連続的に維持されて加速される状態となり、例えば第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)のように2つの高出力効率領域の間が途切れてしまうことが無く、従って、出力効率を向上することができて、電費向上を図ることができる。
【0035】
また、本第1の実施の形態において、ダウン変速線SLD1は、1速段の最高回生効率点MRP1と2速段の最高回生効率点MRP2との間に設定されており、ダウン変速線SLD2は、2速段の最高回生効率点MRP2と3速段の最高回生効率点MRP3との間に設定されている。要するに、1速段の最高回生効率点MRP1と2速段の最高回生効率点MRP2との間で1速段の状態と2速段の状態との切換えを行い、2速段の最高回生効率点MRP2と3速段の最高回生効率点MRP3との間で2速段の状態と3速段の状態との切換えを行うことになる。このため、例えば第1変速機40と第2変速機80との両方をHi状態からLo状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)に比して、車両用駆動装置1を2速段の状態に制御することで、2速段の最高回生効率点MRP2を用いた第1モータ30及び第2モータ70による回生が可能となり、1速段の状態と3速段の状態との間にある2速段の状態となる中間の車速で回生効率を向上できる。特に運転者が要求する回生力(ブレーキ踏圧)が高い状態では、
図3における1速段の高回生効率領域HRA1、2速段の高回生効率領域HRA2、3速段の高回生効率領域HRA3の範囲内に連続的に維持されて減速される状態となり、例えば第1変速機40と第2変速機80との両方をHi状態からLo状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)のように2つの高出力効率領域の間が途切れてしまうことが無く、従って、回生効率を向上することができて、電費向上を図ることができる。
【0036】
なお、以上説明した本第1の実施の形態において2速段の状態では、第1変速機40をLo状態でかつ第2変速機80をHi状態にしても、反対に第1変速機40をHi状態でかつ第2変速機80をLo状態にしても、どちらでもよい旨を説明した。しかしながら、車両100が前進走行中(
図1の矢印A方向)に加速する際には、車両100の荷重が後輪91L,91Rにかかり易く、反対に車両100が前進走行中に減速する際には、車両100の荷重が前輪90L,90Rにかかり易い。そのため、車両100の加速時には第1変速機40がHi状態でかつ第2変速機80がLo状態であると、駆動力が路面に効率よく伝達されて加速効率が良好になり、反対に車両100の減速時には第1変速機40がLo状態でかつ第2変速機80がHi状態であると、第1モータ30が高回転状態で回生可能となって回生効率が良好になる。
【0037】
そのため、車両100の加速時において、アップ変速線SLU1の到達を判断して1速段の状態から2速段の状態に変速する際には、第1変速機40をLo状態からHi状態に変速し、さらに、アップ変速線SLU2の到達を判断して2速段の状態から3速段の状態に変速する際には、第2変速機80をLo状態からHi状態に変速し、その後の車両100の減速時において、ダウン変速線SLD2の到達を判断して3速段の状態から2速段の状態に変速する際には、第1変速機40をHi状態からLo状態に変速し、さらに、ダウン変速線SLD1の到達を判断して2速段の状態から1速段の状態に変速する際には、第2変速機80をHi状態からLo状態に変速することが考えられる。
【0038】
また、車両100の性能として加速性能を燃費性能より重視する場合には、2速段の状態として第1変速機40をHi状態でかつ第2変速機80をLo状態にするだけで、第1変速機40をLo状態でかつ第2変速機80をHi状態にはしないようにしてもよい。さらに、車両100の性能として燃費性能を加速性能より重視する場合には、2速段の状態として第1変速機40をLo状態でかつ第2変速機80をHi状態にするだけで、第1変速機40をHi状態でかつ第2変速機80をLo状態にはしないようにしてもよい。
【0039】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態に係る車両用駆動装置1について
図5及び
図6を用いて説明する。上記第1の実施の形態では、第1変速機40と第2変速機80とにおいてLo状態とHi状態とのギヤ比が同じものを説明したが、本第2の実施の形態においては、第1変速機40のLo状態(1速段)のギヤ比が第2変速機80のLo状態(1速段)のギヤ比よりも大きく、第1変速機40のHi状態(2速段)のギヤ比が第2変速機80のHi状態(2速段)のギヤ比よりも小さくなるように構成されている。
【0040】
具体的には、
図6に示すように、第1変速機40のLo状態のギヤ比は、第1ギヤ42と第3ギヤ45との歯数比で設定され(
図2参照)、そのギヤ比は「15」であり、第1変速機40のHi状態のギヤ比は、第2ギヤ43と第4ギヤ46との歯数比で設定され、そのギヤ比は「6」である。また、第2変速機80のLo状態のギヤ比は、第1ギヤ42と第3ギヤ45との歯数比で設定され、そのギヤ比は「12」であり、第2変速機80のHi状態のギヤ比は、第2ギヤ43と第4ギヤ46との歯数比で設定され、そのギヤ比は「9」である。
【0041】
そして、1速段の状態(第1状態)では、第1変速機40と第2変速機80との両方がLo状態に、2速段の状態(第3状態)では、第1変速機40がLo状態にかつ第2変速機80がHi状態に、3速段の状態(第6状態)では、第1変速機40がHi状態にかつ第2変速機80がLo状態に、4速段の状態(第2状態)では、第1変速機40と第2変速機80との両方がHi状態に、それぞれ変速制御される。
【0042】
このように構成された第2の実施の形態に係る車両用駆動装置1では、
図5の駆動力線図に示すように、四輪駆動モードにあって、1速段の状態、2速段の状態、3速段の状態、4速段の状態に応じて、1速最大駆動力線DF1、2速最大駆動力線DF2、3速最大駆動力線DF3、4速最大駆動力線DF4を有することになる。
【0043】
これにより、車両用駆動装置1が1速段の状態である場合には、1速最大駆動力線DF1の範囲内において、出力効率が90%以上となる1速段の高出力効率領域HPA1があり、この高出力効率領域HPA1の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる1速段の最高出力効率点MPP1(第1最高効率点)がある。また、2速段の状態である場合には、2速最大駆動力線DF2の範囲内において、出力効率が90%以上となる2速段の高出力効率領域HPA2があり、この高出力効率領域HPA2の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる2速段の最高出力効率点MPP2(第3最高効率点)がある。さらに、3速段の状態である場合には、3速最大駆動力線DF3の範囲内において、出力効率が90%以上となる3速段の高出力効率領域HPA3があり、この高出力効率領域HPA3の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる3速段の最高出力効率点MPP3(第6最高効率点)がある。そして、4速段の状態である場合には、4速最大駆動力線DF4の範囲内において、出力効率が90%以上となる4速段の高出力効率領域HPA4があり、この高出力効率領域HPA4の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる4速段の最高出力効率点MPP4(第2最高効率点)がある。
【0044】
なお、本実施の形態における4速段の高出力効率領域HPA4は、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)における2速段の高出力効率領域HPA2に相当し、4速段の最高出力効率点MPP4は、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)における2速段の最高出力効率点MPP2に相当することになる。
【0045】
一方、駆動力線図において駆動力が0よりも低いマイナスであって、つまり車両が減速する際の回生力を示す部分でも、1速最大駆動力線DF1、2速最大駆動力線DF2、3速最大駆動力線DF3、4速最大駆動力線DF4がそのまま反転した形で、最大回生力性能を示している。
【0046】
そして、同様に、1速段の状態である場合には、1速最大駆動力線DF1の範囲内において、回生効率が90%以上となる1速段の高回生効率領域HRA1があり、この高回生効率領域HRA1の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる1速段の最高回生効率点MRP1(第1最高効率点)がある。さらに、2速段の状態である場合には、2速最大駆動力線DF2の範囲内において、回生効率が90%以上となる2速段の高回生効率領域HRA2があり、この高回生効率領域HRA2の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる2速段の最高回生効率点MRP2(第3最高効率点)がある。さらに、3速段の状態である場合には、3速最大駆動力線DF3の範囲内において、回生効率が90%以上となる2速段の高回生効率領域HRA3があり、この高回生効率領域HRA3の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる3速段の最高回生効率点MRP3(第6最高効率点)がある。そして、4速段の状態である場合には、4速最大駆動力線DF4の範囲内において、回生効率が90%以上となる4速段の高回生効率領域HRA4があり、この高回生効率領域HRA4の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる4速段の最高回生効率点MRP4(第2最高効率点)がある。
【0047】
なお、各変速段における高出力効率領域及び最高出力効率点に対して、高回生効率領域及び最高回生効率点は、インバータ35の特性上、車速(モータの回転速度)が僅かに低くなる。また、本実施の形態における4速段の高回生効率領域HRA4は、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)における2速段の高回生効率領域HRA2に相当し、4速段の最高回生効率点MRP4は、第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)における2速段の最高回生効率点MRP2に相当することになる。
【0048】
また、アップ変速線SLU1は、1速段の最高出力効率点MPP1と2速段の最高出力効率点MPP2との間に設定されており、アップ変速線SLU2は、2速段の最高出力効率点MPP2と3速段の最高出力効率点MPP3との間に設定されており、アップ変速線SLU3は、3速段の最高出力効率点MPP3と4速段の最高出力効率点MPP4との間に設定されている。このため、例えば第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)に比して、車両用駆動装置1を2速段の状態に制御することで、2速段の最高出力効率点MPP2を用いた車両100の走行が可能となり、車両用駆動装置1を3速段の状態に制御することで、3速段の最高出力効率点MPP3を用いた車両100の走行が可能となり、1速段の状態と4速段の状態との間にある2速段の状態と3速段の状態となる中間の車速で出力効率を向上できる。
【0049】
さらに、特に運転者が要求する駆動力(アクセル開度)が高い状態では、
図5における1速段の高出力効率領域HPA1、2速段の高出力効率領域HPA2、3速段の高出力効率領域HPA3、4速段の高出力効率領域HPA4の範囲内に連続的に維持されて加速される状態となり、例えば第1変速機40と第2変速機80との両方をLo状態からHi状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)のように2つの高出力効率領域の間が途切れてしまうことが無く、従って、出力効率を向上することができて、電費向上を図ることができる。
【0050】
また、ダウン変速線SLD1は、1速段の最高回生効率点MRP1と2速段の最高回生効率点MRP2との間に設定されており、ダウン変速線SLD2は、2速段の最高回生効率点MRP2と3速段の最高回生効率点MRP3との間に設定されており、ダウン変速線SLD3は、3速段の最高回生効率点MRP3と4速段の最高回生効率点MRP4との間に設定されている。このため、例えば第1変速機40と第2変速機80との両方をHi状態からLo状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)に比して、車両用駆動装置1を2速段の状態に制御することで、2速段の最高回生効率点MRP2を用いた第1モータ30及び第2モータ70による回生が可能となり、車両用駆動装置1を3速段の状態に制御することで、3速段の最高回生効率点MRP3を用いた第1モータ30及び第2モータ70による回生が可能となり、1速段の状態と4速段の状態との間にある2速段の状態と3速段の状態となる中間の車速で回生効率を向上できる。
【0051】
さらに、特に運転者が要求する回生力(ブレーキ踏圧)が高い状態では、
図5における1速段の高回生効率領域HRA1、2速段の高回生効率領域HRA2、3速段の高回生効率領域HRA3、4速段の高回生効率領域HRA4の範囲内に連続的に維持されて減速される状態となり、例えば第1変速機40と第2変速機80との両方をHi状態からLo状態に切換えてしまう場合(
図13(A)及び
図13(B)参照)のように2つの高出力効率領域の間が途切れてしまうことが無く、従って、回生効率を向上することができて、電費向上を図ることができる。
【0052】
そして、本第2の実施の形態に係る車両用駆動装置1は、第1変速機40(フロント)のLo状態のギヤ比(GR15)が第2変速機80(リヤ)のLo状態のギヤ比(GR12)よりも大きいギヤ比であると共に、2速段の状態で第1変速機40(フロント)がLo状態かつ第2変速機80(リヤ)がHi状態となるため、車両100の減速時にあって、車速が低くて2速段の状態又は1速段の状態となる際に、車両100の荷重が前輪90L,90Rにかかり易い状態で、第1モータ30が高回転状態で回生可能となって回生効率が良好になる。
【0053】
なお、第2の実施の形態における、これ以外の構成、作用、及び効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0054】
<第3の実施の形態>
続いて、上記第1の実施の形態を一部変更した第3の実施の形態に係る車両用駆動装置1について
図7、
図8、及び
図9を用いて説明する。上記第1の実施の形態では、フルタイムの四輪駆動を前提としたものであったが、車両100を走行させる際に、四輪駆動は、変速機の伝達効率等を考慮すると必ずしも電費が良好になるとは限らないため、本第3の実施の形態においては、
図9に示すように、前輪90L,90R(又は後輪91L,91R)を用いた二輪駆動モード(2WD)と、第1の実施の形態と同様の3速設定による四輪駆動モード(4WD)と、選択的に切換え可能なものである。この二輪駆動モードでは、第1モータ(MG1)30の回転を第1変速機(TM1)40によりLo状態又はHi状態に切換える前輪駆動の2段変速、或いは、第2モータ(MG2)70の回転を第2変速機(TM2)80によりLo状態又はHi状態に切換える後輪駆動の2段変速を実行可能である。
【0055】
従って、
図7の駆動力線図において、駆動力の出力時(モータの力行時)で、四輪駆動モードの1速段の状態(第1状態、第7状態)(以下、「四輪1速段」という)である場合には、四輪1速段の1速最大駆動力線DF1の範囲内において、出力効率が90%以上となる四輪1速段の高出力効率領域HPA1があり、この四輪1速段の高出力効率領域HPA1の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる四輪1速段の最高出力効率点MPP1(第1最高効率点)がある。四輪駆動モードの2速段の状態(第3状態)(以下、「四輪2速段」という)である場合には、四輪2速段の2速最大駆動力線DF2の範囲内において、出力効率が90%以上となる四輪2速段の高出力効率領域HPA2があり、この四輪2速段の高出力効率領域HPA2の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる四輪2速段の最高出力効率点MPP2(第3最高効率点)がある。四輪駆動モードの3速段の状態(第2状態、第8状態)(以下、「四輪3速段」という)である場合には、四輪3速段の3速最大駆動力線DF3の範囲内において、出力効率が90%以上となる四輪3速段の高出力効率領域HPA3があり、この四輪3速段の高出力効率領域HPA3の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる四輪3速段の最高出力効率点MPP3(第2最高効率点)がある。
【0056】
また、
図7の駆動力線図において、駆動力の出力時(モータの力行時)で、二輪駆動モードの1速段の状態(第4状態、第9状態)(以下、「二輪1速段」という)である場合には、二輪1速段の1速最大駆動力線DF11の範囲内において、出力効率が90%以上となる二輪1速段の高出力効率領域HPA11があり、この二輪1速段の高出力効率領域HPA11の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる二輪1速段の最高出力効率点MPP11(第4最高効率点)がある。二輪駆動モードの2速段の状態(第5状態、第10状態)(以下、「二輪2速段」という)である場合には、二輪2速段の2速最大駆動力線DF12の範囲内において、出力効率が90%以上となる二輪2速段の高出力効率領域HPA12があり、この二輪2速段の高出力効率領域HPA12の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる二輪2速段の最高出力効率点MPP12(第5最高効率点)がある。
【0057】
なお、二輪駆動モードでは、第1モータ30と第2モータ70との一方と、その駆動されるモータの方に駆動連結された第1変速機40或いは第2変速機80を用いた走行となるため、第1モータ30と第2モータ70との両方を用いた四輪駆動モードに対して最大駆動力がほぼ半分となる。要するに、二輪1速段の1速最大駆動力線DF11の範囲は、駆動力の大きさとして、四輪1速段の1速最大駆動力線DF1の範囲のほぼ半分であり、二輪2速段の2速最大駆動力線DF12の範囲は、駆動力の大きさとして、四輪3速段の3速最大駆動力線DF3の範囲のほぼ半分となる。
【0058】
一方、
図7の駆動力線図において、駆動力の回生時(モータの回生時)で、四輪駆動モードの1速段の状態である場合には、四輪1速段の1速最大駆動力線DF1の範囲内において、回生効率が90%以上となる四輪1速段の高回生効率領域HRA1があり、この四輪1速段の高回生効率領域HRA1の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる四輪1速段の最高回生効率点MRP1(第1最高効率点)がある。四輪駆動モードの2速段の状態である場合には、四輪2速段の2速最大駆動力線DF2の範囲内において、出力効率が90%以上となる四輪2速段の高回生効率領域HRA2があり、この四輪2速段の高回生効率領域HRA2の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる四輪2速段の最高回生効率点MRP2(第3最高効率点)がある。四輪駆動モードの3速段の状態である場合には、四輪3速段の3速最大駆動力線DF3の範囲内において、回生効率が90%以上となる四輪3速段の高回生効率領域HRA3があり、この四輪3速段の高回生効率領域HRA3の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる四輪3速段の最高回生効率点MRP3(第2最高効率点)がある。
【0059】
また、
図7の駆動力線図において、駆動力の回生時(モータの回生時)で、二輪駆動モードの1速段の状態である場合には、二輪1速段の1速最大駆動力線DF11の範囲内において、回生効率が90%以上となる二輪1速段の高回生効率領域HRA11があり、この二輪1速段の高回生効率領域HRA11の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる二輪1速段の最高回生効率点MRP11(第4最高効率点)がある。二輪駆動モードの2速段の状態である場合には、二輪2速段の2速最大駆動力線DF12の範囲内において、回生効率が90%以上となる二輪2速段の高回生効率領域HRA12があり、この二輪2速段の高回生効率領域HRA12の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる二輪2速段の最高回生効率点MRP12(第5最高効率点)がある。
【0060】
ところで、この第3の実施の形態においては、運転者の要求駆動力(アクセル開度やブレーキ踏圧)と車速とに基づき行われる変速判断が、
図8に示すように駆動力線図において設定された各変速判断領域に、要求駆動力と車速とにより定まる現在の走行状態が位置することによって行われる。この
図8に示す駆動力線図の変速判断領域が変速マップとして制御部10の記憶領域に記憶されていることになる。
【0061】
詳細には、
図7及び
図8に示すように、四輪駆動モードの1速段の状態として変速判断される四輪1速段の変速判断領域SA1は、基本的に四輪1速段の1速最大駆動力線DF1と二輪1速段の1速最大駆動力線DF11との間にあって、四輪1速段の高出力効率領域HPA1及び高回生効率領域HRA1が概ね含まれるように設定され、少なくとも四輪1速段の最高出力効率点MPP1及び最高回生効率点MRP1が含まれるように設定されている。また、四輪駆動モードの2速段の状態として変速判断される四輪2速段の変速判断領域SA2は、基本的に四輪2速段の2速最大駆動力線DF1と二輪1速段の1速最大駆動力線DF11との間にあって、四輪2速段の高出力効率領域HPA2及び高回生効率領域HRA2が概ね含まれるように設定され、少なくとも四輪2速段の最高出力効率点MPP2及び最高回生効率点MRP2が含まれるように設定されている。さらに、四輪駆動モードの3速段の状態として変速判断される四輪3速段の変速判断領域SA3は、基本的に四輪3速段の3速最大駆動力線DF3と二輪2速段の2速最大駆動力線DF12との間にあって、四輪3速段の高出力効率領域HPA3及び高回生効率領域HRA3が概ね含まれるように設定され、少なくとも四輪3速段の最高出力効率点MPP3及び最高回生効率点MRP3が含まれるように設定されている。
【0062】
従って、1速段の最高出力効率点MPP1と2速段の最高出力効率点MPP2との間で1速段の状態と2速段の状態との切換えを行い、2速段の最高出力効率点MPP2と3速段の最高出力効率点MPP3との間で2速段の状態と3速段の状態との切換えを行うことになる。また、1速段の最高回生効率点MRP1と2速段の最高回生効率点MRP2との間で1速段の状態と2速段の状態との切換えを行い、2速段の最高回生効率点MRP2と3速段の最高回生効率点MRP3との間で2速段の状態と3速段の状態との切換えを行うことになる。
【0063】
また、二輪駆動モードの1速段の状態として変速判断される二輪1速段の変速判断領域SA11は、基本的に二輪1速段の1速最大駆動力線DF11の範囲内にあって、二輪1速段の高出力効率領域HPA11及び高回生効率領域HRA11が概ね含まれるように設定され、少なくとも二輪1速段の最高出力効率点MPP11及び最高回生効率点MRP11が含まれるように設定されている。そして、二輪駆動モードの2速段の状態として変速判断される二輪2速段の変速判断領域SA12は、基本的に二輪2速段の2速最大駆動力線DF12の範囲内にあって、二輪2速段の高出力効率領域HPA12及び高回生効率領域HRA12が概ね含まれるように設定され、少なくとも二輪2速段の最高出力効率点MPP12及び最高回生効率点MRP12が含まれるように設定されている。
【0064】
なお、本第3の実施の形態における各変速判断領域は、それらの境界が変速線ということになるが、変速判断のハンチングが生じないように、例えば最初の変速判断から次の変速判断まで一定時間の変速禁止期間を設けてもよいし、アップシフト用の変速判断領域とダウンシフト用の変速判断領域との2種類を記憶領域に準備しておいてもよい。
【0065】
以上のように、制御部10により各変速判断領域によって変速判断が行われると、四輪駆動モードの1速段~3速段と二輪駆動モードの1速段~2速段が適宜に選択され、駆動時(力行時)であっても回生時であっても、各変速段で最高効率となる最高効率点でその変速段が選択される。
【0066】
ところで、特開平6-107042号公報や特開2011-67018号公報に開示されている車両用駆動装置では、四輪駆動により走行するものであるが、駆動力を出力する際の出力効率や回生する際の回生効率は、駆動力と車速との関係において、必ずしも四輪駆動に適している状態とは限らず、さらなる効率の向上が図れていないという問題がある。
【0067】
即ち、
図7に示すように、四輪駆動モードと二輪駆動モードの各変速段における高出力効率領域及び高回生効率領域や最高出力効率点及び最高回生効率点は、駆動力線図において駆動力と車速とに応じて異なる位置にある。従って、本第3の実施の形態のように
図8に示す変速判断領域を設定することで、四輪駆動モードと二輪駆動モードとを適宜に切換えて選択することで、少なくとも各変速段における最高効率点ではその変速段で走行することができ、車両の電費向上を図ることができる。
【0068】
また、
図7に示すように、例えば四輪1速段の高出力効率領域HPA1及び高回生効率領域HRA1は、二輪1速段の1速最大駆動力線DF11の範囲内にも存在しており、この部分は、二輪1速段で走行するよりも四輪1速段で走行する方が効率が良いことを示している。さらに、例えば四輪2速段の高出力効率領域HPA2及び高回生効率領域HRA2と、四輪3速段の高出力効率領域HPA3及び高回生効率領域HRA3とは、二輪2速段の2速最大駆動力線DF12の範囲内にも存在しており、これらの部分は、二輪2速段で走行するよりも四輪2速段或いは四輪3速段で走行する方が効率が良いことを示している。
【0069】
そして、本第3の実施の形態においては、
図8に示すように、四輪1速段の変速判断領域SA1は、二輪1速段の1速最大駆動力線DF11の範囲内にも延びている。これにより、要求される駆動力及び車速が、二輪駆動モードの1速段で達成可能な状態でも、二輪駆動モードにおいて駆動制御される方の第1モータ30(又は第2モータ70)の効率より、四輪駆動モードの1速段で第1モータ30と第2モータ70とによる合計の効率が良いときは、四輪駆動モードの1速段に制御されるので、出力効率或いは回生効率が良好となり、車両の燃費向上が図られている。
【0070】
また同様に、四輪2速段の変速判断領域SA2及び四輪3速段の変速判断領域SA3は、二輪2速段の2速最大駆動力線DF12の範囲内にも延びている。これにより、要求される駆動力及び車速が、二輪駆動モードの2速段で達成可能な状態でも、二輪駆動モードにおいて駆動制御される方の第1モータ30(又は第2モータ70)の効率より、四輪駆動モードの1速段で第1モータ30と第2モータ70とによる合計の効率が良いときは、四輪駆動モードの2速段又は3速段に制御されるので、出力効率或いは回生効率が良好となり、車両の燃費向上が図られている。
【0071】
なお、第3の実施の形態における、これ以外の構成、作用、及び効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0072】
<第4の実施の形態>
続いて、上記第2の実施の形態を一部変更した第4の実施の形態に係る車両用駆動装置1について
図10、
図11、及び
図12を用いて説明する。上記第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様にフルタイムの四輪駆動を前提としたものであったが、本第4の実施の形態においては、上記第3の実施の形態と同様に、
図12に示すように、前輪90L,90R及び後輪91L,90Rを用いた二輪駆動モード(2WD)と、第2の実施の形態と同様の4速設定による四輪駆動モード(4WD)とを選択的に切換え可能なものである。
【0073】
即ち、本第4の実施の形態においては、上記第2の実施の形態と同様に、第1変速機40のLo状態(1速段)のギヤ比が第2変速機80のLo状態(1速段)のギヤ比よりも大きく、第1変速機40のHi状態(2速段)のギヤ比が第2変速機80のHi状態(2速段)のギヤ比よりも小さく、第2変速機80のLo状態(1速段)のギヤ比よりも第1変速機40のHi状態(2速段)のギヤ比が大きくなるように構成されている。
【0074】
従って、本第4の実施の形態においては、制御部10が、二輪駆動モードにおいて、ギヤ比の順に、第1モータ30を駆動制御し、かつ第1変速機40をLo状態にする二輪駆動の1速段(第9状態)(以下、「二輪1速段」という)と、第2モータ70を駆動制御し、かつ第2変速機80をLo状態にする二輪駆動の2速段(第9状態)(以下、「二輪2速段」という)と、第1モータ30を駆動制御し、かつ第1変速機40をHi状態にする二輪駆動の3速段(第10状態)(以下、「二輪3速段」という)と、第2モータ70を駆動制御し、かつ第2変速機80をHi状態にする二輪駆動の4速段(第10状態)(以下、「二輪4速段」という)と、に制御可能である。
【0075】
このように構成された第4の実施の形態では、
図10の駆動力線図において、駆動力の出力時(モータの力行時)で、四輪1速段(第1状態、第7状態)である場合には、四輪1速段の1速最大駆動力線DF1の範囲内において、出力効率が90%以上となる四輪1速段の高出力効率領域HPA1があり、この四輪1速段の高出力効率領域HPA1の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる四輪1速段の最高出力効率点MPP1(第1最高効率点)がある。四輪2速段(第3状態)である場合には、四輪2速段の2速最大駆動力線DF2の範囲内において、出力効率が90%以上となる四輪2速段の高出力効率領域HPA2があり、この四輪2速段の高出力効率領域HPA2の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる四輪2速段の最高出力効率点MPP2(第3最高効率点)がある。四輪3速段(第6状態)である場合には、四輪3速段の3速最大駆動力線DF3の範囲内において、出力効率が90%以上となる四輪3速段の高出力効率領域HPA3があり、この四輪3速段の高出力効率領域HPA3の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる四輪3速段の最高出力効率点MPP3(第6最高効率点)がある。そして、四輪4速段(第2状態、第8状態)である場合には、四輪4速段の4速最大駆動力線DF4の範囲内において、出力効率が90%以上となる四輪4速段の高出力効率領域HPA4があり、この四輪4速段の高出力効率領域HPA4の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる四輪4速段の最高出力効率点MPP4(第2最高効率点)がある。
【0076】
また、
図10の駆動力線図において、駆動力の出力時(モータの力行時)で、前輪走行となる二輪1速段である場合には、二輪1速段の1速最大駆動力線DF11の範囲内において、出力効率が90%以上となる二輪1速段の高出力効率領域HPA11があり、この二輪1速段の高出力効率領域HPA11の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる二輪1速段の最高出力効率点MPP11がある。後輪走行となる二輪2速段である場合には、二輪2速段の2速最大駆動力線DF12の範囲内において、出力効率が90%以上となる二輪2速段の高出力効率領域HPA12があり、この二輪2速段の高出力効率領域HPA12の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる二輪2速段の最高出力効率点MPP12がある。前輪走行となる二輪3速段である場合には、二輪3速段の3速最大駆動力線DF13の範囲内において、出力効率が90%以上となる二輪3速段の高出力効率領域HPA13があり、この二輪3速段の高出力効率領域HPA13の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる二輪3速段の最高出力効率点MPP13がある。そして、後輪走行となる二輪4速段である場合には、二輪4速段の4速最大駆動力線DF14の範囲内において、出力効率が90%以上となる二輪4速段の高出力効率領域HPA14があり、この二輪4速段の高出力効率領域HPA14の範囲内における略中央に、出力効率が最高となる二輪4速段の最高出力効率点MPP14がある。
【0077】
なお、第3の実施の形態と同様に、二輪駆動モードでは、第1モータ30と第2モータ70との一方と、その駆動されるモータの方に駆動連結された第1変速機40或いは第2変速機80を用いた走行となるため、第1モータ30と第2モータ70との両方を用いた四輪駆動モードに対して最大駆動力がほぼ半分となる。要するに、二輪1速段の1速最大駆動力線DF11の範囲は、駆動力の大きさとして、四輪1速段の1速最大駆動力線DF1の範囲のほぼ半分であり、二輪2速段の2速最大駆動力線DF12の範囲は、駆動力の大きさとして、四輪2速段の2速最大駆動力線DF2の範囲のほぼ半分であり、二輪3速段の3速最大駆動力線DF13の範囲は、駆動力の大きさとして、四輪3速段の3速最大駆動力線DF3の範囲のほぼ半分であり、二輪4速段の4速最大駆動力線DF14の範囲は、駆動力の大きさとして、四輪4速段の4速最大駆動力線DF4の範囲のほぼ半分となる。
【0078】
一方、
図10の駆動力線図において、駆動力の回生時(モータの回生時)で、四輪1速段の状態である場合には、四輪1速段の1速最大駆動力線DF1の範囲内において、回生効率が90%以上となる四輪1速段の高回生効率領域HRA1があり、この四輪1速段の高回生効率領域HRA1の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる四輪1速段の最高回生効率点MRP1(第1最高効率点)がある。四輪2速段の状態である場合には、四輪2速段の2速最大駆動力線DF2の範囲内において、出力効率が90%以上となる四輪2速段の高回生効率領域HRA2があり、この四輪2速段の高回生効率領域HRA2の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる四輪2速段の最高回生効率点MRP2(第3最高効率点)がある。四輪3速段の状態である場合には、四輪3速段の3速最大駆動力線DF3の範囲内において、回生効率が90%以上となる四輪3速段の高回生効率領域HRA3があり、この四輪3速段の高回生効率領域HRA3の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる四輪3速段の最高回生効率点MRP3(第6最高効率点)がある。四輪4速段の状態である場合には、四輪4速段の4速最大駆動力線DF4の範囲内において、回生効率が90%以上となる四輪4速段の高回生効率領域HRA4があり、この四輪4速段の高回生効率領域HRA4の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる四輪4速段の最高回生効率点MRP4(第2最高効率点)がある。
【0079】
また、
図10の駆動力線図において、駆動力の回生時(モータの回生時)で、二輪1速段の状態である場合には、二輪1速段の1速最大駆動力線DF11の範囲内において、回生効率が90%以上となる二輪1速段の高回生効率領域HRA11があり、この二輪1速段の高回生効率領域HRA11の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる二輪1速段の最高回生効率点MRP11がある。二輪2速段の状態である場合には、二輪2速段の2速最大駆動力線DF12の範囲内において、回生効率が90%以上となる二輪2速段の高回生効率領域HRA12があり、この二輪2速段の高回生効率領域HRA12の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる二輪2速段の最高回生効率点MRP12がある。二輪3速段の状態である場合には、二輪3速段の3速最大駆動力線DF13の範囲内において、回生効率が90%以上となる二輪3速段の高回生効率領域HRA13があり、この二輪3速段の高回生効率領域HRA13の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる二輪3速段の最高回生効率点MRP13がある。二輪4速段の状態である場合には、二輪4速段の4速最大駆動力線DF14の範囲内において、回生効率が90%以上となる二輪4速段の高回生効率領域HRA14があり、この二輪4速段の高回生効率領域HRA14の範囲内における略中央に、回生効率が最高となる二輪4速段の最高回生効率点MRP14がある。
【0080】
また、
図10及び
図11に示すように、四輪1速段の状態として変速判断される四輪1速段の変速判断領域SA1は、基本的に四輪1速段の1速最大駆動力線DF1と二輪1速段の1速最大駆動力線DF11との間にあって、四輪1速段の高出力効率領域HPA1及び高回生効率領域HRA1が概ね含まれるように設定され、少なくとも四輪1速段の最高出力効率点MPP1及び最高回生効率点MRP1が含まれるように設定されている。また、四輪2速段の状態として変速判断される四輪2速段の変速判断領域SA2は、基本的に四輪2速段の2速最大駆動力線DF1と二輪2速段の2速最大駆動力線DF12との間にあって、四輪2速段の高出力効率領域HPA2及び高回生効率領域HRA2が概ね含まれるように設定され、少なくとも四輪2速段の最高出力効率点MPP2及び最高回生効率点MRP2が含まれるように設定されている。さらに、四輪3速段の状態として変速判断される四輪3速段の変速判断領域SA3は、基本的に四輪3速段の3速最大駆動力線DF3と二輪3速段の3速最大駆動力線DF13との間にあって、四輪3速段の高出力効率領域HPA3及び高回生効率領域HRA3が概ね含まれるように設定され、少なくとも四輪3速段の最高出力効率点MPP3及び最高回生効率点MRP3が含まれるように設定されている。そして、四輪4速段の状態として変速判断される四輪4速段の変速判断領域SA4は、基本的に四輪4速段の4速最大駆動力線DF4と二輪4速段の4速最大駆動力線DF14との間にあって、四輪4速段の高出力効率領域HPA4及び高回生効率領域HRA4が概ね含まれるように設定され、少なくとも四輪4速段の最高出力効率点MPP4及び最高回生効率点MRP4が含まれるように設定されている。
【0081】
また、二輪1速段の状態として変速判断される二輪1速段の変速判断領域SA11は、基本的に二輪1速段の1速最大駆動力線DF11の範囲内にあって、二輪1速段の高出力効率領域HPA11及び高回生効率領域HRA11が概ね含まれるように設定され、少なくとも二輪1速段の最高出力効率点MPP11及び最高回生効率点MRP11が含まれるように設定されている。また、二輪2速段の状態として変速判断される二輪2速段の変速判断領域SA12は、基本的に二輪2速段の2速最大駆動力線DF12の範囲内にあって、二輪2速段の高出力効率領域HPA12及び高回生効率領域HRA12が概ね含まれるように設定され、少なくとも二輪2速段の最高出力効率点MPP12及び最高回生効率点MRP12が含まれるように設定されている。さらに、二輪3速段の状態として変速判断される二輪3速段の変速判断領域SA13は、基本的に二輪3速段の3速最大駆動力線DF13の範囲内にあって、二輪3速段の高出力効率領域HPA13及び高回生効率領域HRA13が概ね含まれるように設定され、少なくとも二輪3速段の最高出力効率点MPP13及び最高回生効率点MRP13が含まれるように設定されている。そして、二輪4速段の状態として変速判断される二輪4速段の変速判断領域SA14は、基本的に二輪4速段の4速最大駆動力線DF14の範囲内にあって、二輪4速段の高出力効率領域HPA14及び高回生効率領域HRA14が概ね含まれるように設定され、少なくとも二輪4速段の最高出力効率点MPP14及び最高回生効率点MRP14が含まれるように設定されている。
【0082】
なお、本第4の実施の形態における各変速判断領域でも、それらの境界が変速線ということになるが、変速判断のハンチングが生じないように、例えば最初の変速判断から次の変速判断まで一定時間の変速禁止期間を設けてもよいし、アップシフト用の変速判断領域とダウンシフト用の変速判断領域との2種類を記憶領域に準備しておいてもよい。
【0083】
以上のように、制御部10により各変速判断領域によって変速判断が行われると、四輪駆動モードの1速段~4速段と二輪駆動モードの1速段~4速段が適宜に選択され、駆動時(力行時)であっても回生時であっても、各変速段で最高効率となる最高効率点でその変速段が選択される。
【0084】
そして、
図10に示すように、四輪駆動モードと二輪駆動モードの各変速段における高出力効率領域及び高回生効率領域や最高出力効率点及び最高回生効率点は、駆動力線図において駆動力と車速とに応じて異なる位置にあるので、本第4の実施の形態のように
図11に示す変速判断領域を設定することで、四輪駆動モードと二輪駆動モードとを適宜に切換えて選択することで、少なくとも各変速段における最高効率点ではその変速段で走行することができ、車両の電費向上を図ることができる。
【0085】
また、
図10に示すように、例えば四輪1速段~四輪4速段の高出力効率領域HPA1~HPA4及び高回生効率領域HRA1~HRA4は、二輪1速段の1速最大駆動力線DF11~二輪4速段の4速最大駆動力線DF4の範囲内にも存在しており、これらの部分は、二輪駆動モードで走行するよりも四輪モードで走行する方が効率が良いことを示している。
【0086】
そして、本第4の実施の形態においても、
図11に示すように、四輪1速段の変速判断領域SA1は、二輪1速段の1速最大駆動力線DF11の範囲内にも延び、四輪2速段の変速判断領域SA2は、二輪2速段の2速最大駆動力線DF12の範囲内にも延び、四輪3速段の変速判断領域SA3は、二輪3速段の3速最大駆動力線DF13の範囲内にも延び、四輪4速段の変速判断領域SA4は、二輪4速段の4速最大駆動力線DF14の範囲内にも延びている。これにより、要求される駆動力及び車速が、二輪駆動モードで達成可能な状態でも、二輪駆動モードにおいて駆動制御される方の第1モータ30(又は第2モータ70)の効率より、四輪駆動モードで第1モータ30と第2モータ70とによる合計の効率が良いときは、四輪駆動モードに制御されるので、出力効率或いは回生効率が良好となり、車両の燃費向上が図られている。
【0087】
なお、第4の実施の形態における、これ以外の構成、作用、及び効果は、第1乃至第3の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0088】
<他の実施の形態の可能性>
なお、以上説明した第1乃至第4の実施の形態においては、第1変速機40と第2変速機80とが、Lo状態とHi状態との2段の変速段で変速するものを説明したが、これに限らず、3段の変速段で変速するものなど、2段以上の変速段で変速する変速機であってもよい。特に第1変速機40が3段の変速段、第2変速機80が2段の変速段を有するものであってもよく、第1変速機40と第2変速機とが共に最低変速段で第1状態となり、第1変速機40と第2変速機とが共に最高変速段で第2状態となり、第1変速機40と第2変速機とが異なる変速段である場合に第3状態や第4状態となるものであってもよい。
【0089】
また、第1乃至第4の実施の形態において、第1変速機40と第2変速機80とがスリーブ44の軸方向の移動で係合する、所謂噛合いクラッチで構成されているものを説明したが、これに限らず、例えば摩擦係合要素の係合によって伝達経路を変更することで2段以上の変速段を達成できるものであれば、どのような変速機であってもよい。
【0090】
また、第2の実施の形態及び第4の実施の形態において、第1変速機40のLo状態のギヤ比が第2変速機80のLo状態のギヤ比よりもギヤ比が大きく、かつ第1変速機40のHi状態のギヤ比が第2変速機80のHi状態のギヤ比よりもギヤ比が小さいものを説明したが、反対に、第1変速機40のLo状態のギヤ比が第2変速機80のLo状態のギヤ比よりもギヤ比が小さく、かつ第1変速機40のHi状態のギヤ比が第2変速機80のHi状態のギヤ比よりもギヤ比が大きいものであってもよい。このようにギヤ比を反対にした場合は、2速段の状態で、第1変速機40がHi状態にかつ第2変速機80がLo状態に制御され、3速段の状態で、第1変速機40がLo状態にかつ第2変速機80がHi状態に制御されることになる。そして、この場合は、2速段の状態で、後輪91L,91Rに荷重がかかる加速時に第2変速機80がLo状態となるため、駆動力の伝達効率を良好にすることができる。
【0091】
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態においては、変速判断を車速に応じて設定された変速線で行い、第3の実施の形態及び第4の実施の形態においては、変速判断を要求駆動力と車速とに応じて設定された変速判断領域で行うものを説明したが、反対に、第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、変速判断を要求駆動力と車速とに応じて設定された変速判断領域で行うものであってもよく、第3の実施の形態及び第4の実施の形態において、変速判断を車速に応じて設定された変速線で行うものであってもよい。
【0092】
また、第3の実施の形態及び第4の実施の形態において、二輪駆動モードと四輪駆動モードとで制御するものを説明したが、特に二輪駆動モードにあって、所謂パートタイム四輪駆動のように、前輪90L,90Rと後輪91L,91Rとの一方のスリップ等を検出した場合に他方を駆動するようにしてもよい。
【0093】
また、第1乃至第4の実施の形態において、四輪駆動モードで第1変速機40と第2変速機80との一方をLo状態に他方をHi状態にしたり、第1変速機40と第2変速機80との他方をLo状態に一方をHi状態にしたりする所謂中間段を形成するものについて説明したが、二輪駆動モードの効率よりも四輪駆動モードの効率が良いときに二輪駆動モードではなく四輪駆動モードを選択するものでは、四輪駆動モードで中間段を形成しないものであっても構わない。
【符号の説明】
【0094】
1…車両用駆動装置/10…制御部/30…第1モータ(第1回転電機)/40…第1変速機/70…第2モータ(第2回転電機)/80…第2変速機/90L,90R…前輪/91L,91R…後輪/MPP1…四駆1速段の最高出力効率点(第1最高効率点)/MPP2…四駆2速段の最高出力効率点(第3最高効率点)/
図3及び
図7のMPP3…四駆3速段の最高出力効率点(第2最高効率点)/
図5及び
図11のMPP3…四駆3速段の最高出力効率点(第6最高効率点)/
図5及び
図11のMPP4…四駆4速段の最高出力効率点(第2最高効率点)/
図7のMPP11…二駆1速段の最高出力効率点(第4最高効率点)/
図7のMPP12…二駆2速段の最高出力効率点(第5最高効率点)/MRP1…四駆1速段の最高回生効率点(第1最高効率点)/MRP2…四駆2速段の最高回生効率点(第3最高効率点)/
図3及び
図7のMRP3…四駆3速段の最高回生効率点(第2最高効率点)/
図5及び
図11のMRP3…四駆3速段の最高回生効率点(第6最高効率点)/
図5及び
図11のMRP4…四駆4速段の最高回生効率点(第2最高効率点)/
図7のMRP11…二駆1速段の最高回生効率点(第4最高効率点)/
図7のMRP12…二駆2速段の最高回生効率点(第5最高効率点)