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特開2022-81377光ファイバ被覆層形成用組成物及びその硬化層、並びに硬化層を有する光ファイバ及び光ファイバ被覆層形成用組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081377
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】光ファイバ被覆層形成用組成物及びその硬化層、並びに硬化層を有する光ファイバ及び光ファイバ被覆層形成用組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20220524BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C08F290/06
G02B6/44 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053354
(22)【出願日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2020192249
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592109732
【氏名又は名称】日本特殊コーティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓海
(72)【発明者】
【氏名】篠原 宣康
【テーマコード(参考)】
2H250
4J127
【Fターム(参考)】
2H250BA32
2H250BB07
2H250BB14
2H250BB18
2H250BB33
2H250BD07
2H250BD14
2H250BD17
4J127AA03
4J127AA04
4J127BA051
4J127BA151
4J127BB021
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD441
4J127BD471
4J127BE241
4J127BF191
4J127BF631
4J127BG141
4J127BG281
4J127CA01
4J127CB102
4J127CB141
4J127CB343
4J127CC113
4J127CC162
4J127DA21
4J127DA27
4J127DA28
4J127EA12
4J127FA39
(57)【要約】
【課題】アルコキシシリル基を含むウレタンオリゴマーによる硬化後のヤング率変化が小さく、かつ適切なガラス密着力を得ることができる光ファイバ被覆層形成用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 下記式(I):
*-NH-CO-N(R)-R-SiR -(OR3-n (I)
[式中、Rは、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、Rは、ハロゲンで置換されていてもよいメチレン基、ハロゲンで置換されていてもよく、炭素原子間にヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団を有していてもよいC2-10のアルキレン基、または置換基を有していてもよいフェニレン基であり、Rは、アルキル基であり、Rは、C1-6のアルキル基である。ここで*は結合手であり、nは0以上2以下の整数を示す]
で表される構造を含む化合物を含有する、光ファイバ被覆層形成用組成物により、上記の課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
*-NH-CO-N(R)-R-SiR -(OR3-n (I)
[式中、Rは、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、Rは、ハロゲンで置換されていてもよいメチレン基、ハロゲンで置換されていてもよく、炭素原子間にヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団を有していてもよいC2-10のアルキレン基、または置換基を有していてもよいフェニレン基であり、Rは、アルキル基であり、Rは、C1-6のアルキル基である。ここで*は結合手であり、nは0以上2以下の整数を示す]
で表される構造を含む化合物を含有する、光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項2】
式(I)のRが、水素原子、またはC1-10のアルキル基である、請求項1に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項3】
式(I)のRが、炭素原子間にヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団を有していてもよいC2-10のアルキレン基である、請求項1または2に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項4】
前記ヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団がNH、O、Sから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項5】
式(I)のRがC1-10のアルキル基である、請求項1から4のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項6】
式(I)のRがC2-6のアルキル基である、請求項1から5のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項7】
式(I)で表される構造を含む化合物の含有量が組成物100質量部当たり0.05質量部以上4.5質量部未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項8】
式(I)で表される構造を含む化合物の含有量が組成物100質量部当たり0.4質量部以上3質量部未満である、請求項7に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項9】
式(I)で表される構造を含む化合物がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである、請求項1から8のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項10】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが一つの(メタ)アクリレート基を含む、請求項9に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項11】
光重合開始剤をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項12】
反応性希釈剤モノマーをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物から形成される硬化層。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化層を有する光ファイバ。
【請求項15】
請求項14に記載の光ファイバを2以上含む、光ファイバリボンまたは光ファイバケーブル。
【請求項16】
下記式(I):
*-NH-CO-N(R)-R-SiR -(OR3-n (I)
[式中、Rは、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、Rは、ハロゲンで置換されていてもよいメチレン基、ハロゲンで置換されていてもよく、炭素原子間にヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団を有していてもよいC2-10のアルキレン基、または置換基を有していてもよいフェニレン基であり、Rは、アルキル基であり、Rは、C1-6のアルキル基である。ここで*は結合手であり、nは0以上2以下の整数を示す]
で表される構造を含む化合物を含有する、光ファイバ被覆層形成用組成物の、光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項17】
式(I)のRが、水素原子、またはC1-10のアルキル基である、請求項16に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項18】
式(I)のRが、炭素原子間にヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団を有していてもよいC2-10のアルキレン基である、請求項16または17に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項19】
前記ヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団がNH、O、Sから選択される、請求項16から18のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項20】
式(I)のRがC1-10のアルキル基である、請求項16から19のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項21】
式(I)のRがC2-6のアルキル基である、請求項16から20のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項22】
式(I)で表される構造を含む化合物の含有量が組成物100質量部当たり0.05質量部以上4.5質量部未満である、請求項16から21のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項23】
式(I)で表される構造を含む化合物の含有量が組成物100質量部当たり0.4質量部以上3質量部未満である、請求項22に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項24】
式(I)で表される構造を含む化合物がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである、請求項16から23のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項25】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが単一(メタ)アクリレート基からなる、請求項16から24のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項26】
光重合開始剤をさらに含む、請求項16から25のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項27】
反応性希釈剤モノマーをさらに含む、請求項16から26のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
【請求項28】
ガラスファイバの少なくとも一部の表面に、請求項1から12のいずれか一項に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物を配置すること、及び
該組成物を硬化させて被覆層を形成することを含む、
光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ被覆層形成用組成物及びその硬化層、硬化層を有する光ファイバ及びその製造方法、並びに光ファイバ被覆層形成用組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、ガラスを熱溶融紡糸して得たガラスファイバに、保護補強を目的として樹脂を被覆して製造されている。この樹脂被覆としては、ガラスファイバの表面にまず柔軟な第一次の被覆層(以下、「第一次被覆層」ともいう。)を設け、その外側に剛性の高い第二次の被覆層(以下、「第二次被覆層」ともいう。)を設けた構造が知られている。1本のガラスファイバに第一次被覆層及び第二次被覆層を設けた構造を有する光ファイバを通常、光ファイバ素線というが、光ファイバ素線は、第二次の被覆層の外側にさらに着色されたインキ層やアップジャケット層を有していてもよい。さらに、これらの樹脂被覆を施された複数の光ファイバ素線を結束材料で固めたテープ状光ファイバや光ファイバケーブルもよく知られている。
光ファイバ素線の第一次の被覆層を形成するための樹脂組成物(被覆材)をプライマリ材、第二次の被覆層を形成するための樹脂組成物をセカンダリ材、複数の光ファイバ素線の結束材料として用いられる樹脂組成物をバンドリング材と称している。また、複数のテープ状光ファイバや光ファイバケーブルをさらに結束材料でまとめる場合もあり、このとき用いられる結束材料もバンドリング材と称している。これらの樹脂被覆方法としては、液状硬化性樹脂組成物を塗布し、熱または光、特に紫外線により硬化させる方法が広く用いられている。
これらの被覆材のうち、プライマリ材においては、外部からの局所的な圧力によりガラスファイバに曲げ等が生じないようにするため、硬化物が柔軟であることが必要とされている。そのため、第一次被覆層は、通常、0.1~10MPaのヤング率を有している。
特開2012-111674号公報には、光ファイバ素線のプライマリ材として好適な樹脂組成物として、ウレタンオリゴマー及び単官能アクリルモノマーを含有する放射線硬化性樹脂組成物が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、アルコキシシリル基を含むウレタンオリゴマーによるプライマリ材の硬化後のヤング率変化を抑制しつつ、適切なガラス密着力を得ることを目的とする。プライマリ材に配合されたアルコキシシリル基を含むウレタンオリゴマーによるプライマリ材のヤング率変化が大きい場合、光ファイバの伝送特性が悪化するため好ましくない。
【0004】
本発明の態様として、以下の(1)~(25)が挙げられる。
(1) 下記式(I):
*-NH-CO-N(R)-R-SiR -(OR3-n (I)
[式中、Rは、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、Rは、ハロゲンで置換されていてもよいメチレン基、ハロゲンで置換されていてもよく、炭素原子間にヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団を有していてもよいC2-10のアルキレン基、または置換基を有していてもよいフェニレン基であり、Rは、アルキル基であり、Rは、C1-6のアルキル基である。ここで*は結合手であり、nは0以上2以下の整数を示す]
で表される構造を含む化合物を含有する、光ファイバ被覆層形成用組成物。
(2)式(I)のRが、水素原子、またはC1-10のアルキル基である、(1)に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
(3)式(I)のRが、炭素原子間にヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団を有していてもよいC2-10のアルキレン基である、(1)または(2)に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
(4)上記ヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団がNH、O、Sから選択される、請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
(5)式(I)のRがC1-10のアルキル基である、(1)から(4)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
(6)式(I)のRがC2-6のアルキル基である、(1)から(5)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
(7) 式(I)で表される構造を含む化合物の含有量が組成物100質量部当たり0.05質量部以上4.5質量部未満である、(1)から(6)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
(8)式(I)で表される構造を含む化合物の含有量が組成物100質量部当たり0.4質量部以上3質量部未満である、(7)に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
(9)式(I)で表される構造を含む化合物がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである、(1)から(8)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
(10)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが一つの(メタ)アクリレート基を含む、(9)に記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
(11)光重合開始剤をさらに含む、(1)から(10)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
(12)反応性希釈剤モノマーをさらに含む、(1)から(11)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成用組成物。
(13)(1)から(12)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成用組成物から形成される硬化層。
(14)(13)に記載の硬化層を有する光ファイバ。
(15)(14)に記載の光ファイバを2以上含む、光ファイバリボンまたは光ファイバケーブル。
(16)下記式(I):
*-NH-CO-N(R)-R-SiR -(OR3-n (I)
[式中、Rは、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、Rは、ハロゲンで置換されていてもよいメチレン基、ハロゲンで置換されていてもよく、炭素原子間にヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団を有していてもよいC2-10のアルキレン基、または置換基を有していてもよいフェニレン基であり、Rは、アルキル基であり、Rは、C1-6のアルキル基である。ここで*は結合手であり、nは0以上2以下の整数を示す]
で表される構造を含む化合物を含有する、光ファイバ被覆層形成用組成物の、光ファイバ被覆層形成のための使用。
(17)式(I)のRが、水素原子、またはC1-10のアルキル基である、(16)に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
(18)式(I)のRが、炭素原子間にヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団を有していてもよいC2-10のアルキレン基である、(16)または(17)に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
(19)上記ヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団がNH、O、Sから選択される、(16)から(18)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
(20)式(I)のRがC1-10のアルキル基である、(16)から(19)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
(21)式(I)のRがC2-6のアルキル基である、(16)から(20)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
(22)式(I)で表される構造を含む化合物の含有量が組成物100質量部当たり0.05質量部以上4.5質量部未満である、(16)から(21)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
(23)式(I)で表される構造を含む化合物の含有量が組成物100質量部当たり0.4質量部以上3質量部未満である、(22)に記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
(24)式(I)で表される構造を含む化合物がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである、(16)から(23)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
(25)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがひとつの(メタ)アクリレート基を含む、(16)から(24)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
(26)光重合開始剤をさらに含む、(16)から(25)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
(27)反応性希釈剤モノマーをさらに含む、(16)から(26)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成のための使用。
(28)ガラスファイバの少なくとも一部の表面に、(1)から(12)のいずれかに記載の光ファイバ被覆層形成用組成物を配置すること、及び
該組成物を硬化させて被覆層を形成することを含む、
光ファイバの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0006】
本実施形態の光ファイバ被覆層形成用組成物は、下記式(I):
*-NH-CO-N(R)-R-SiR -(OR3-n (I)
で表される構造を含む化合物(以下、「成分(A)」とも言う。)を含有する、光ファイバ被覆層形成用組成物である。
【0007】
式(I)中、Rは、水素原子、アルキル基、またはアリール基である。Rは、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。アルキル基はC1-10のアルキル基であることが好ましく、C1-6のアルキル基であることがより好ましい。アリール基はC6-10のアリール基であることが好ましい。
式(I)中、Rは、メチレン基、炭素数2個以上、10個以下である(以下、「C2-10」などと記載する。)アルキレン基、または置換基を有していてもよいフェニレン基である。フェニレンの置換基としては、例えば、ハロゲン、水酸基、C1-6のアルキル基、C1-6のアルコキシ基が挙げられる。Rは、メチレン基又はC2-10のアルキレン基であることが好ましく、C2-6アルキレン基であることがより好ましい。上記メチレン基及びアルキレン基は、ハロゲンで置換されていてもよく、また、上記アルキレン基は、炭素原子間にヘテロ原子若しくはヘテロ原子を含む原子団を有していてもよい。上記ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子等が挙げられ、ヘテロ原子を含む原子団としては、例えば、NH等が挙げられ、ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素が挙げられる。
式(I)中、Rはアルキル基であり、C1-10のアルキル基であることが好ましく、C1-6のアルキル基であることがより好ましい。
式(I)中、RはC1-6のアルキル基であり、C2-6のアルキル基であることが好ましく、C2-4のアルキル基であることがより好ましい。
ここで*は結合手であり、nは0以上2以下の整数を示す。nは、0または1が好ましく、0がより好ましい。
【0008】
これに限定されるものではないが、式(I)の構造の具体例として、以下の構造を挙げることができる。
*-NH-CO-NH-(CH-Si(OMe) 式(IV)
*-NH-CO-NH-(CH-Si(OEt) 式(V)
【0009】
「光ファイバ第一次被覆層」とは、ガラスファイバに設けられる被覆層のうちガラスファイバに最も近い位置に配置される被覆層であると理解される。第一次被覆層は、ガラスファイバ表面の少なくとも一部を覆うように設けられていてもよい。「光ファイバ第一次被覆層形成用」とは、光ファイバの第一次被覆層の形成に使用され得ること、または光ファイバの第一次被覆層を形成するためのものであると理解される。
本実施形態の組成物は、光ファイバ一次被覆層形成用(プライマリ材)として特に好適である。
【0010】
「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」とは、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基と、主鎖の繰返し単位中にウレタン結合(-NHCOO-)とを含むオリゴマーと理解される。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、一般的に、ジオールとジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートが反応してウレタン結合をすることにより形成され得る。使用可能なジオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートについては後述する。
【0011】
「構造を含む」とは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがその構造中に上記式(I)の構造を少なくとも一つ含むと理解される。好ましくは、主鎖の少なくとも一方の末端に式(I)の構造を含む。
【0012】
成分(A)は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることが好ましい。以下、成分(A)であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを「ウレタンオリゴマー(A)」とも言う。
ウレタンオリゴマー(A)は、主鎖の少なくとも一方の末端に式(I)の構造を有することが好ましく、片方の末端のみに式(I)の構造を有することがより好ましい。
【0013】
ウレタンオリゴマー(A)のウレタン結合を形成するジオールとしては、特に限定されないが、脂肪族ポリエーテルジオールが好ましく、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール及び二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルジオールなどが好ましい。
【0014】
上記イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン-1-オキシド、イソブテンオキシド、3,3-ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステルなどの環状エーテル類が挙げられる。
【0015】
二種以上の上記イオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールの具体例としては、例えばテトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン-1-オキシドとエチレンオキシドなどの組み合わせより得られる二元共重合体;テトラヒドロフラン、ブテン-1-オキシド及びエチレンオキシドの組み合わせより得られる三元重合体などを挙げることができる。
【0016】
また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミンなどの環状イミン類;β-プロピオラクトン、グリコール酸ラクチドなどの環状ラクトン酸;あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。
【0017】
上記脂肪族ポリエーテルジオールは、例えばPTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学株式会社製)、PPG400、PPG1000、PPG3000、EXCENOL720、1020、2020(以上、AGC株式会社製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日油株式会社製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土谷化学工業株式会社製)、Z-3001-4、Z-3001-5、PBG2000A、PBG2000B、EO/BO4000、EO/BO2000(以上、第一工業製薬株式会社製)、Acclaim2200、2220、3201、3205、4200、4220、8200、12000(以上、住友バイエルウレタン株式会社製)等の市販品としても入手することができる。
【0018】
これらの脂肪族ポリエーテルジオールのうち、1種又は2種以上の炭素数2~4のイオン重合性環状化合物の開環重合体であって、平均分子量1000~5000のジオールを用いるのが、樹脂液の高速塗布性と被覆材の柔軟性の両立の点から好ましい。このような好ましいジオール化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン-1-オキシド及びイソブテンオキシドから選ばれる1種又は2種以上のオキシドの開環重合体であって、平均分子量1000~4000のものが挙げられる。特に平均分子量1000~3000のプロピレンオキシドの開環重合体が好ましい。
【0019】
ウレタンオリゴマー(A)のウレタン結合を形成するジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートとして、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、4-ジフェニルプロパンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ジイソシアネートとして、例えば、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、1,6-ヘキサンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0020】
このうち経済性及び安定した品質の組成物が得られる点から、芳香族ジイソシアネートがより好ましく、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートが特に好ましい。これらのジイソシアネートは単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0021】
ウレタンオリゴマー(A)の合成で用いられる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、水酸基が第一級炭素原子に結合した水酸基含有(メタ)アクリレート(第一水酸基含有(メタ)アクリレートという)、及び水酸基が第二級炭素原子に結合した水酸基含有(メタ)アクリレート(第二水酸基含有(メタ)アクリレートという)を用いることが好ましく、第一水酸基含有(メタ)アクリレートが特に好ましい。水酸基が第三級炭素原子に結合した水酸基含有(メタ)アクリレート(第三水酸基含有(メタ)アクリレートという)はイソシアネート基(以下、「NCO」とも言う)との反応性に劣るため好ましくない。
【0022】
第一水酸基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
第二水酸基含有(メタ)アクリレートとして、例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も挙げられる。
【0024】
本発明の光ファイバ被覆層形成用組成物中におけるウレタンオリゴマー(A)の含有量は、組成物100質量部当たり、0.05質量部以上10質量部未満であることが好ましく、0.05質量部以上5質量部未満であることがより好ましく、0.05質量部以上4.5質量部未満であることがさらに好ましく、0.4質量部以上4.5質量部未満であることがさらにより好ましく、0.4質量部以上3質量部未満または0.5質量部以上3質量部未満であることが特に好ましい。ウレタンオリゴマー(A)の含有量がこれらの範囲内にあることにより、プライマリ材の硬化後のヤング率変化を抑制しつつ、適切なガラス密着力を得ることができる。
【0025】
ウレタンオリゴマー(A)の合成は、ジオール成分とジイソシアネート成分とを反応させた後に、下記式(II)の構造を含む化合物および水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて行うことが好ましい。このような反応により、好ましくは、片末端または両末端が式(I)の構造を含む化合物で封止されたウレタンオリゴマーが得られる。片末端が式(I)の構造を含む化合物で封止されたウレタンオリゴマーがより好ましい。下記式(II)の構造を含む化合物と水酸基含有(メタ)アクリレートの比率を適宜調整することにより、片末端が式(I)の構造を含む化合物で封止されたウレタンオリゴマーを得ることができる。
【0026】
NH(R)-R-SiR -(OR3-n (II)
【0027】
上記式(II)のR、R、R、Rおよびnは、それぞれ式(I)と同様である。
上記式(II)の構造を含む化合物としては、好ましくは、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができ、γ-アミノプロピルトリエトキシシランがさらに好ましい。
【0028】
ウレタンオリゴマー(A)の合成において、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7-トリメチル-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等から選ばれるウレタン化触媒を、反応物の総量に対して0.01~1質量%を用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常5~90℃、特に10~80℃で行うのが好ましい。
【0029】
一実施形態において、光ファイバ被覆層形成用組成物に、成分(A)以外のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することができる。成分(A)以外のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、前記式(I)の構造を含まないウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであれば特に限定されないが、分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基および1個の水酸基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基および1個の前記式(I)以外のケイ素含有基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等を挙げることができる。
分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ジオールとジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。
分子中に1個の(メタ)アクリロイル基および1個の水酸基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する1個の(メタ)アクリロイル基およびアルコールに由来する水酸基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。
分子中に1個の(メタ)アクリロイル基および1個の前記式(I)以外のケイ素含有基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する1個の(メタ)アクリロイル基および前記式(I)以外のシランカップリング剤に由来する水酸基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。前記式(I)以外のシランカップリング剤としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0030】
一実施形態において、光ファイバ被覆層形成用組成物に、分子中に(メタ)アクリロイル基を有しないウレタンオリゴマーを配合することもできる。分子中に(メタ)アクリロイル基を有しないウレタンオリゴマーは、例えば、ジオールとジイソシアネートとアルコールを反応させて得られるウレタンオリゴマーである。アルコールとしては、炭素数1~8の低級アルコールが好ましく、例えば、メタノールやn-オクタノール等の脂肪族アルコールが好ましい。
【0031】
一実施形態において、光ファイバ被覆層形成用組成物に、成分(A)以外のエチレン性不飽和基を1個有する化合物(成分(B))を配合することもできる。成分(B)は、典型的にはエチレン性不飽和基を1個有するモノマーである。成分(B)としては、脂肪族構造含有(メタ)アクリレート、脂環式構造含有(メタ)アクリレート、芳香族構造含有(メタ)アクリレート、ビニル基含有ラクタム、(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
これらのうち、成分(B)である脂肪族構造含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
成分(B)である脂環式構造含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
成分(B)である芳香族構造含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
成分(B)であるビニル基含有ラクタムとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
成分(B)である(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、
成分(B)としては、以上に挙げた化合物に加えて、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等;水酸基含有(メタ)アクリレートとして、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等を挙げることができる。
これらの(B)成分の中では、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の脂肪族構造含有(メタ)アクリレートとN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタムが好ましい。
【0032】
また、上記の成分(B)の市販品として、アロニックスM-111、M-113、M-114、M-117(以上、東亞合成社製);KAYARAD、TC110S、R629、R644(以上、日本化薬社製);IBXA、ビスコート3700(大阪有機化学工業社製)等が挙げられる。
【0033】
成分(B)は、本発明の液状硬化性樹脂組成物全量100質量%に対して、5~45質量%、特に10~30質量%配合するのが好ましい。質量部単位では、成分(B)は、本発明の組成物全量100質量部に対して、5質量部以上、45質部以下で配合することが好ましく、特に10質量部以上、30質量部以下で配合するのが好ましい。
【0034】
一実施形態において、光ファイバ被覆層形成用組成物に、エチレン性不飽和基を2個以上含む化合物(成分(C))を配合することができる。(成分(C)は、典型的にはエチレン性不飽和基を2個以上含むモノマーである。なお、成分(B)及び(C)は、反応性希釈剤モノマーと称することもある。具体例としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。また、市販品としては、例えばユピマーUV SA1002、SA2007(以上、三菱化学株式会社製);ビスコート700(大阪有機化学工業株式会社製);KAYARAD R-604、DPCA-20、-30、-60、-10、HX-620、D-310、D-330(以上、日本化薬株式会社製);アロニックスM-210、M-215、M-315、M-325(以上、東亞合成株式会社製)等が挙げられる。
【0035】
エチレン性不飽和基を2個以上含む化合物の含有量は、硬化物のヤング率を光ファイバのプライマリ材(第一次被覆層形成材)として好適な範囲内に調整することが容易である観点から、樹脂組成物全量に対して、好ましくは2質量%以下(0~2質量%)であり、より好ましくは1.5質量%以下(0~1.5質量%)である。質量部単位では、成分(C)は、組成物全量100質量部に対して、好ましくは2質量部以下(0~2質量部)であり、より好ましくは1.5質量部以下(0~1.5質量部)である。
【0036】
本発明の樹脂組成物を光硬化させる場合には、光重合開始剤(成分(D))を用い、必要に応じて、さらに光増感剤を添加することができる。ここで、光重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24-61、DAROCUR1116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製);LUCIRIN TPO(BASF社製);ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。また、光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0037】
光重合開始剤(D)は、本発明の液状硬化性樹脂組成物全量100質量%に対して、0.1~10質量%、特に0.3~7質量%配合するのが好ましい。質量部単位では、光重合開始剤(D)は、組成物全量100質量部に対して、0.1質量部以上、10質量部以下で配合することが好ましく、特に0.3質量部以上、7質量質量部以下で配合するのが好ましい。
【0038】
一実施形態において、発明の効果を阻害しない範囲内で、光ファイバ被覆層形成用組成物に、シランカップリング剤を配合することもできる。シランカップリング剤としては、特に限定されず、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を使用することができる。また、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド等を用いることもできる。その市販品としては、SH6062、SZ6030(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)、KBE903、603、403(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、被覆とガラスとの密着力の観点から、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらのシランカップリング剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0039】
シランカップリング剤の含有量は、光ファイバ被覆層形成用組成物全量に対して、硬化物とガラスファイバとの密着力の維持の点から好ましくは0.01~2質量%であり、より好ましくは0.1~1.5質量%であり、特に好ましくは0.5~1.5質量%である。質量部単位では、シランカップリング剤の含有量は、組成物全量100質量部に対して、硬化物とガラスファイバとの密着力の維持の点から好ましくは0.01質量部以上、2質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上、1.5質量部以下であり、特に好ましくは0.5質量部以上、1.5質量部以下である。
【0040】
一実施形態において、上記成分以外に各種添加剤、例えば酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を必要に応じて配合することができる。
【0041】
酸化防止剤としては、例えばIRGANOX245、1010、1035、1076、1222(以上、BASFジャパン株式会社製)、ANTIGENE P、3C、Sumilizer GA-80、GP(住友化学工業株式会社製)等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えばTINUVIN P、234、320、326、327、328、329、213(以上、BASFジャパン株式会社製)、Seesorb102、103、501、202、712、704(以上、シプロ化成株式会社製)等が挙げられる。光安定剤としては、例えばTINUVIN 292、144、622LD、サノールLS-770、765(以上、BASFジャパン株式会社製)、TM-061(住友化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
また、界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤が、光ファイバ素線を温水に浸漬した場合の欠損発生を効果的に抑制するため好ましく、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が特に好ましい。
【0043】
一実施形態において、発明の効果を阻害しない範囲内で、本発明の光ファイバ被覆層形成用組成物に、任意選択的に他のオリゴマー、ポリマー、テトラエトキシシラン等のシラン化合物(前記のシランカップリング剤以外のシラン化合物)、その他の添加剤等を配合することができる。
【0044】
他のオリゴマー、ポリマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むシロキサンポリマー、グリシジルメタアクリレート等が挙げられる。
【0045】
光ファイバ被覆層形成用組成物の製造方法は、特に限定されず、従来公知の攪拌機付き反応容器で溶融ブレンドすることにより行うことができる。
【0046】
光ファイバ被覆層形成用組成物の粘度は、ハンドリング性、塗布性の点から25℃において好ましくは0.1~10Pa・sであり、より好ましくは1~8Pa・sである。
【0047】
光ファイバ被覆層形成用組成物の硬化層は、光ファイバの第一次被覆層として好適な低いヤング率を有している。光ファイバ被覆層形成用組成物の硬化物のヤング率は、硬化層形成後14日間経過後の値として、光ファイバの第一次被覆層として好ましく用いることができる観点から、好ましくは25℃において0.1MPa以上、1.0MPa以下(0.1~1.0MPa)である。光ファイバ被覆層形成用組成物の硬化層のヤング率が25℃において0.1~1.0MPaである場合、光ファイバに局所的に圧力がかかった場合にガラスファイバの曲げが生じる、いわゆるマイクロベンディングを防ぐことができる。光ファイバ被覆層形成用組成物の硬化層のヤング率は、より好ましくは0.2MPa以上、0.9MPa以下(0.2~0.9MPa)であり、さらに好ましくは0.3MPa以上、0.85MPa以下(0.3~0.85MPa)である。
【0048】
ヤング率は、硬化膜形成後に一定の経時変化を示す。硬化層形成後14日間でのヤング率の変化量は、0.05MPa以下であることが好ましく、0.04MPa以下であることがさらに好ましい。ヤング率の変化量がこの範囲にあることにより、品質がより安定した(伝送特性の特に優れた)光ファイバを得ることができる。
【0049】
ガラス密着力は、硬化層形成後14日間経過後の値として、40N/m以上、85N/m未満であることが好ましく、50N/m以上、70N/m未満であることがさらにこのましく、50N/m以上、65N/m未満であることが特に好ましい。ガラス密着力がこの範囲にあることにより、光ファイバに局所的に圧力がかかった場合であってもガラスファイバと硬化膜が剥離しにくく安定した品質の光ファイバを得ることができるほか、光ファイバの接続工事を行う際に被覆層である硬化膜を剥離除去する作業性が向上する。
【0050】
ガラス密着力は、硬化膜形成後に一定の経時変化を示す。硬化層形成後14日間の変化量は、15N/m以上、60N/m未満であることが好ましく、15N/m以上、40N/m未満であることがさらに好ましく、20N/m以上、40N/m未満であることが特に好ましい。ガラス密着力の変化量がこの範囲にあることにより、品質がより安定した光ファイバを製造することができる。
【0051】
光ファイバ被覆層形成用組成物は、上記範囲内のヤング率及びガラス密着力を示すものであることが好ましい。さらに、ヤング率の経時変化が上記範囲内であることにより、硬化後のヤング率変化を抑制しつつ、適切なガラス密着力がもたらされることは、光ファイバの品質の安定性の観点から、より好ましい。また、ガラス密着力の経時変化が上記範囲内であることも、より好ましく、ヤング率の経時変化とガラス密着力の経時変化の双方が上記範囲内であることは、さらに好ましい。
【0052】
光ファイバ被覆層形成用組成物の硬化層を含む光ファイバは、ガラスファイバの表面に第一次被覆層として光ファイバ被覆層形成用組成物の硬化層が設けられている。光ファイバは、第一次被覆層の外側に接する、ヤング率が1,000MPa以上、好ましくは1,000~2,000MPaである第二次被覆層を含むことが好ましい。ガラスファイバの表面に第一次被覆層及び第二被覆層がこの順で設けられているものは、光ファイバ素線として用いることができる。
【0053】
光ファイバの製造方法は、ガラスファイバの少なくとも一部の表面に、光ファイバ被覆層形成用組成物を配置すること、及び前記光ファイバ被覆層形成用組成物を硬化することを含み、光ファイバ被覆層形成用組成物が上記した光ファイバ被覆層形成用組成物を含有する。
【0054】
ガラスファイバの少なくとも一部の表面に光ファイバ被覆層形成用組成物を配置する方法は、限定されず、従来公知の方法により、ガラスファイバの表面に放射線重合性組成物を塗布する、ガラスファイバを光ファイバ被覆層形成用組成物中に浸漬する等により行うことができる。
【0055】
放射線照射により前記光ファイバ被覆層形成用組成物を硬化する方法は、特に限定されず、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、及びγ線等から選択される1以上の放射線を放射線重合性組成物に照射する。
【0056】
光ファイバの製造は、一般的には、溶融した石英母材を熱溶融して線引きしつつ、プライマリ材およびセカンダリ材を塗布し、放射線硬化して第一次被覆層及び第二次被覆層を形成することにより製造される。
光ファイバリボンまたは光ファイバケーブルなどの集合体は、上記した光ファイバ被覆層形成用組成物の硬化層を含む光ファイバを2以上含む集合体であり、光ファイバを結束材料で固めたテープ状光ファイバや光ファイバケーブルとすることができる。
【実施例0057】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0058】
[ウレタンアクリレートの合成]
(合成例1)ウレタンアクリレート(A)の合成例1
撹拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が2,000のポリプロピレングリコール65.2g、2,4-トリレンジイソシアネート7.57g、2,6-ジ-t-ブチル―p-クレゾール0.0180gをそれぞれ仕込み、これらを撹拌しながら液温度が40℃になるまで加温した。続いてジブチル錫ジラウレート0.0200gを添加した後、撹拌しながら液温度を10分かけて60℃まで上げた。その後60分撹拌し、残留イソシアネート基濃度が1.17質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン0.315g、2-ヒドロキシエチルアクリレート1.72gを添加し、液温度70℃にて60分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.313質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、メタノール0.178gを添加し、液温度70℃にて60分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.0500質量%以下になった時を反応終了とした。
得られたウレタンオリゴマーは、表2の実施例1に記載された3種類のウレタンオリゴマーである、「HT-(PPG2000-T)3-H」、「HT-(PPG2000-T)3-NH-(CH2)3-Si(OEt)3」および「HT-(PPG2000-T)3-OMe」の混合物である。
なお、表2に示したウレタンオリゴマーの構造において、「H」はヒドロキシエチルアクリレート残基を、「T」はトリレンジイソシアネート残基を、「PPG2000」は分子量2000のポリプロピレングリコール残基を、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基をそれぞれ示す。
【0059】
(合成例2)ウレタンアクリレート(A)の合成例2
撹拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が2000のポリプロピレングリコール65.4g、2,4-トリレンジイソシアネート7.60g、2,6-ジ-t-ブチル―p-クレゾール0.0180gをそれぞれ仕込み、これらを撹拌しながら液温度が40℃になるまで加温した。続いてジブチル錫ジラウレート0.0200gを添加した後、撹拌しながら液温度を10分かけて60℃まで上げた。その後60分撹拌し、残留イソシアネート基濃度が1.25質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン0.0315g、2-ヒドロキシエチルアクリレート1.72gを添加し、液温度70℃にて60分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.386質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、メタノール0.220gを添加し、液温度70℃にて60分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.0500質量%以下になった時を反応終了とした。
得られたウレタンオリゴマーは、表2の実施例5に記載された3種類のウレタンオリゴマーである、「HT-(PPG2000-T)3-H」、「HT-(PPG2000-T)3-NH-(CH2)3-Si(OEt)3」および「HT-(PPG2000-T)3-OMe」の混合物である。
【0060】
(合成例3)ウレタンアクリレート(A)の合成3
撹拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が2,000のポリプロピレングリコール65.3g、2,4-トリレンジイソシアネート7.58g、2,6-ジ-t-ブチル―p-クレゾール0.0180gをそれぞれ仕込み、これらを撹拌しながら液温度が40℃になるまで加温した。続いてジブチル錫ジラウレート0.0200gを添加した後、撹拌しながら液温度を10分かけて60℃まで上げた。その後60分撹拌し、残留イソシアネート基濃度が1.25質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.256g、2-ヒドロキシエチルアクリレート1.72gを添加し、液温度70℃にて60分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.311質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、メタノール0.178gを添加し、液温度70℃にて60分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.0500質量%以下になった時を反応終了とした。
得られたウレタンオリゴマーは、表2の実施例8に記載された3種類のウレタンオリゴマーである、「HT-(PPG2000-T)3-H」、「HT-(PPG2000-T)3-NH-(CH2)3-Si(OMe)3」および「HT-(PPG2000-T)3-OMe」の混合物である。
【0061】
(比較合成例4)成分(A)に該当しないウレタンアクリレートの合成例1
撹拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が2,000のポリプロピレングリコール65.3g、2,4-トリレンジイソシアネート7.58g、2,6-ジ-t-ブチル―p-クレゾール0.0180gをそれぞれ仕込み、これらを撹拌しながら液温度が40℃になるまで加温した。続いてジブチル錫ジラウレート0.0200gを添加した後、撹拌しながら液温度を10分かけて60℃まで上げた。その後60分撹拌し、残留イソシアネート基濃度が1.25質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.280g、2-ヒドロキシエチルアクリレート1.72gを添加し、液温度70℃にて90分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.312質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、メタノール0.178gを添加し、液温度70℃にて60分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.0500質量%以下になった時を反応終了とした。
得られたウレタンオリゴマーは、表2の比較例2に記載された3種類のウレタンオリゴマーである、「HT-(PPG2000-T)3-H」、「HT-(PPG2000-T)3-S-(CH2)3-Si(OMe)3」および「HT-(PPG2000-T)3-OMe」の混合物である。
【0062】
(比較合成例5)成分(A)に該当しないウレタンアクリレートの合成例2
撹拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が2,000のポリプロピレングリコール65.4g、2,4-トリレンジイソシアネート7.59g、2,6-ジ-t-ブチル―p-クレゾール0.0180gをそれぞれ仕込み、これらを撹拌しながら液温度が40℃になるまで加温した。続いてジブチル錫ジラウレート0.0200gを添加した後、撹拌しながら液温度を10分かけて60℃まで上げた。その後60分撹拌し、残留イソシアネート基濃度が1.25質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.140g、2-ヒドロキシエチルアクリレート1.72gを添加し、液温度70℃にて90分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.353質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、メタノール0.201gを添加し、液温度70℃にて60分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.0500質量%以下になった時を反応終了とした。
得られたウレタンオリゴマーは、表2の比較例3に記載された3種類のウレタンオリゴマーである、「HT-(PPG2000-T)3-H」、「HT-(PPG2000-T)3-S-(CH2)3-Si(OMe)3」および「HT-(PPG2000-T)3-OMe」の混合物である。
【0063】
(比較合成例6)成分(A)に該当しないウレタンアクリレートの合成例3
撹拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が2,000のポリプロピレングリコール65.4g、2,4-トリレンジイソシアネート7.60g、2,6-ジ-t-ブチル―p-クレゾール0.0180gをそれぞれ仕込み、これらを撹拌しながら液温度が40℃になるまで加温した。続いてジブチル錫ジラウレート0.0200gを添加した後、撹拌しながら液温度を10分かけて60℃まで上げた。その後60分撹拌し、残留イソシアネート基濃度が1.25質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.0280g、2-ヒドロキシエチルアクリレート1.72gを添加し、液温度70℃にて90分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.386質量%(仕込み量に対する割合)以下となった後、メタノール0.220gを添加し、液温度70℃にて60分反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.0500質量%以下になった時を反応終了とした。
得られたウレタンオリゴマーは、表2の比較例4に記載された3種類のウレタンオリゴマーである、「HT-(PPG2000-T)3-H」、「HT-(PPG2000-T)3-S-(CH2)3-Si(OMe)3」および「HT-(PPG2000-T)3-OMe」の混合物である。
【0064】
γ-アミノプロピルトリエトキシシラン封止ウレタンアクリレートオリゴマーの含有量が上記合成例1~3とは異なるウレタンオリゴマー混合物を合成する際のレシピ変更点を、表1に示す。表1に示した合成例は、上から順に、表2の実施例1~7及び比較例1で用いた「HT-(PPG2000-T)3-H」、「HT-(PPG2000-T)3-S-(CH2)3-Si(OMe)3」および「HT-(PPG2000-T)3-OMe」のウレタンオリゴマー混合物に対応する。
【0065】
【表1】
PPG:数平均分子量が2,000のポリプロピレングリコール
TDI:2,4-トリレンジイソシアネート
γ-APTES:γ-アミノプロピルトリエトキシシラン
MeOH:メタノール
NCO%(1):PPGとTDI反応後の残留イソシアネート基濃度であり、合成時の基準値を示したものである。
NCO%(2):γ-アミノプロピルトリエトキシシランとHEA反応後の残留イソシアネート基濃度であり、合成時の基準値を示したものである。
【0066】
[評価方法]
(1)粘度:
実施例及び比較例で得られた組成物の25℃における粘度を、粘度計TVB-10H(東機産業社製)を用いてJIS K 6833-1及びJIS K 7117-1に準拠して測定した。
【0067】
(2)ヤング率:
実施例及び比較例で得られた組成物の硬化物のヤング率を測定した。381μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気中で1J/cmのエネルギーの紫外線を照射して硬化させ、ガラス板から剥離することにより試験用フィルムを得た。この硬化フィルムを温度23℃、相対湿度50%下で所定時間静置後、延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるように短冊状サンプルを作製した。この短冊状サンプルを同温度、相対湿度条件下で引張り試験機5542C4600(インストロンジャパン社製)を用い、JIS K7161-1に準拠して引張試験を行った。引張速度は1mm/minで、2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
【0068】
(3)ガラス密着力:
実施例及び比較例で得られた組成物の硬化物のガラス密着力を測定した。381μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気中で1J/cmのエネルギーの紫外線を照射し硬化させ、試験用フィルムを得た。この硬化フィルムを温度23℃、相対湿度50%下で所定時間静置後、延伸部が幅10mm、長さ50mmとなるように短冊状サンプルを作製した。この短冊状サンプルを同温度、相対湿度条件下で引張試験機5542C4600(インストロンジャパン社製)を用いてJIS Z 0237に準拠してガラス密着力試験を行った。引張速度は50mm/minで30秒後の抗張力からガラス密着力を求めた。
【0069】
上記の評価により得られた結果を以下の表2、表3に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
なお、表2において示される、オリゴマーの末端構造は以下の通りである。
*-NH-CO-S-(CH-Si(OMe) 式(III)
*-NH-CO-NH-(CH-Si(OMe) 式(IV)
*-NH-CO-NH-(CH-Si(OEt) 式(V)
上記式(III)、(IV)および(V)において、「Me」はメチル基であり、「Et」はエチル基であり、「*」は結合手を示す。
【0072】
【表3】
表3における「ND」は、ガラス密着率が過大で測定不可であったことを意味している。