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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081401
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】積層型電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
H01G4/30 201C
H01G4/30 201D
H01G4/30 311D
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021144182
(22)【出願日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0155173
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジェ フン
(72)【発明者】
【氏名】ナ、ヒュン ウン
(72)【発明者】
【氏名】チャ、ユン ジョン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC09
5E001AJ01
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE18
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】積層型電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含む積層型電子部品であって、上記内部電極と上記誘電体層との界面には、Sn及びNiを含む複合層が配置されており、上記内部電極は、上記複合層と隣接した界面部と、上記界面部の間に配置される中央部と、を含み、上記界面部はセラミック添加剤を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層、及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を備える積層型電子部品であって、
前記内部電極と前記誘電体層との界面には、Sn及びNiを含む複合層が配置されており、
前記内部電極は、前記複合層と隣接した界面部と、前記界面部の間に配置される中央部と、を有し、前記界面部はセラミック添加剤を含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記界面部は、前記複合層と前記内部電極の界面から、前記内部電極の厚さの1/3の深さまでの領域である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記界面部は、前記セラミック添加剤を5~15面積%含む、請求項2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記中央部におけるセラミック添加剤の面積%が、前記界面部におけるセラミック添加剤の面積%の1/2以下である、請求項2または3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記複合層のSnの濃度が、前記中央部のSnの濃度の5倍以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記複合層は、前記Sn及びNiをNiSnの形態で含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記セラミック添加剤がBaTiOである、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記内部電極は、Niを主成分として含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記複合層の平均厚さが10~30nmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記内部電極の平均厚さが0.41μm以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記内部電極は、内部電極の連結性が85%以上である、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
セラミックグリーンシートを準備する段階と、
内部電極用ペーストを前記セラミックグリーンシート上に塗布して内部電極パターンを形成する段階と、
前記内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成する段階と、
前記積層体を一次か焼する段階と、
前記一次か焼された積層体を二次か焼する段階と、
前記二次か焼された積層体を焼成することで、誘電体層及び内部電極を含む本体を形成する段階と、
前記本体に外部電極を形成する段階と、を含む積層型電子部品の製造方法であって、
前記内部電極用ペーストは、Sn粉末、セラミック添加剤、及び導電性粉末を含み、
前記導電性粉末はコア-シェル構造を有し、前記コアにはNiを含み、前記シェルにはNi、S、及びOを含む、積層型電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記導電性粉末は平均サイズが100nm未満である、請求項12に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記シェルはSを1000~2000ppm含む、請求項12または13に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記シェルの表面にはNiOが配置される、請求項12から14のいずれか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記導電性粉末100wt%に対して前記Sn粉末が0.3~1.0wt%である、請求項12から15のいずれか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項17】
前記導電性粉末100wt%に対して前記セラミック添加剤が5~20wt%である、請求項12から16のいずれか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項18】
前記セラミック添加剤がBaTiOである、請求項12から17のいずれか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項19】
前記一次か焼する段階は、250~350℃の温度及び中還元雰囲気で行われる、請求項12から18のいずれか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項20】
前記中還元雰囲気は、窒素(N)気体と、0.2~1.0vol.%の水素(H)気体とが混合された気体雰囲気である、請求項19に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項21】
前記二次か焼する段階は、600~900℃で行われる、請求項12から20のいずれか一項に記載の積層型電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の1つである積層型セラミックキャパシター(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピューター、スマートフォン、及び携帯電話などの種々の電子製品のプリント回路基板に取り付けられ、電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサーである。
【0003】
かかる積層型セラミックキャパシターは、小型でありながらも高容量が保障され、且つ実装が容易であるという利点を有するため、種々の電子装置の部品として用いられることができる。近年、電子装置の部品の小型化に伴い、積層型セラミックキャパシターの小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
積層型セラミックキャパシターの小型化及び高容量化のためには、内部電極及び誘電体層の厚さを薄く形成できる技術が必要である。
【0005】
しかしながら、内部電極と誘電体層の薄層化により、内部電極の連結性が低下し、平滑度が減少する可能性があるため、信頼性が低下する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の様々な目的の1つは、積層型電子部品の信頼性を向上させることにある。
【0007】
本発明の様々な目的の1つは、内部電極の電極連結性を向上させることにある。
【0008】
本発明の様々な目的の1つは、内部電極の平滑度を増加させることにある。
【0009】
本発明の様々な目的の1つは、信頼性が高い小型及び高容量の積層型電子部品を提供することにある。
【0010】
但し、本発明の目的は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含む積層型電子部品であって、上記内部電極と上記誘電体層との界面には、Sn及びNiを含む複合層が配置されており、上記内部電極は、上記複合層と隣接した界面部と、上記界面部の間に配置される中央部と、を含み、上記界面部はセラミック添加剤を含む。
【0012】
本発明の他の実施形態による積層型電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートを準備する段階と、内部電極用ペーストを上記セラミックグリーンシート上に塗布して内部電極パターンを形成する段階と、上記内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成する段階と、上記積層体を一次か焼する段階と、上記一次か焼された積層体を二次か焼する段階と、上記二次か焼された積層体を焼成することで、誘電体層及び内部電極を含む本体を形成する段階と、上記本体に外部電極を形成する段階と、を含む積層型電子部品の製造方法であって、上記内部電極用ペーストは、Sn粉末、セラミック添加剤、及び導電性粉末を含み、上記導電性粉末はコア-シェル構造を有し、上記コアにはNiを含み、上記シェルにはNi、S、及びOを含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の様々な効果の1つは、積層型電子部品の信頼性を向上させたことである。
【0014】
本発明の様々な効果の1つは、内部電極の厚さ方向の収縮を極大化し、長さ及び幅方向の収縮を抑えることにより、内部電極を薄くしながらも、内部電極の連結性及び平滑度を向上させたことである。
【0015】
但し、本発明の多様で且つ有益な利点と効果は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
図2図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
図3図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
図4】本発明の一実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
図5図2のP1領域を拡大して示した図である。
図6図5のP2領域を拡大して示した図である。
図7】(a)はSnとNiの濡れ性、(b)はSnとBaTiOの濡れ性を説明するための図である。
図8】本発明の他の実施形態による積層型電子部品の製造方法を説明するための図である。
図9】本発明の他の実施形態による積層型電子部品の製造方法を説明するための図である。
図10】本発明の他の実施形態による積層型電子部品の製造方法を説明するための図である。
図11】本発明の他の実施形態による積層型電子部品の製造方法を説明するための図である。
図12】比較例の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンした図である。
図13】発明例の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンした図である。
図14図13において、内部電極と誘電体層の界面を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0018】
なお、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜のために任意で示したものであり、本発明が必ずしも図示されたものに限定されない。また、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に異なる趣旨の説明がされていない限り、他の構成要素を除外する趣旨ではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は、積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は、長さ(L)方向、第3方向は、幅(W)方向と定義されることができる。
【0020】
[積層型電子部品]
図1は本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、図2図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、図3図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、図4は本発明の一実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示した分解斜視図であり、図5図2のP1領域を拡大して示した図であり、図6図5のP2領域を拡大して示した図である。
【0021】
以下、図1から図6を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111、及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極131、132と、を含む積層型電子部品であって、上記内部電極と上記誘電体層との界面には、Sn及びNiを含む複合層CLが配置されており、上記内部電極121、122は、上記複合層CLと隣接した界面部IPと、上記界面部の間に配置される中央部CPと、を含み、上記界面部IPはセラミック添加剤23を含む。
【0023】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0024】
本体110の具体的な形状は特に制限されないが、図示されたように、本体110は、六面体形状またはそれに類似の形状からなることができる。焼成過程における、本体110に含まれているセラミック粉末の収縮により、本体110は、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0025】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2と、上記第1及び第2面1、2と連結されて第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、且つ第3及び第4面3、4と連結されて第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6と、を有することができる。
【0026】
本体110を成す複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認が困難な程度に一体化されることができる。
【0027】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り、特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、またはチタン酸ストロンチウム系材料などが使用できる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCa)TiO、Ba(Ti1-yCa)O、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O、またはBa(Ti1-yZr)Oなどが挙げられる。
【0028】
上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に、本発明の目的に応じて、種々のセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0029】
一方、誘電体層111の厚さtdは、特に限定する必要はない。
【0030】
但し、一般に、誘電体層を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に、誘電体層の厚さが0.41μm以下である場合には、信頼性が低下する恐れがある。
【0031】
後述のように、本発明の一実施形態によると、内部電極の厚さ方向の収縮を極大化することで、内部電極を薄くしながらも、内部電極の連結性及び平滑度を向上させることができるため、誘電体層が非常に薄い場合にも信頼性を効果的に向上させることができる。これにより、誘電体層の厚さが0.41μm以下である場合にも、十分な信頼性を確保することができる。
【0032】
したがって、誘電体層111の厚さが0.41μm以下である場合に、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。
【0033】
上記誘電体層111の厚さtdは、上記第1内部電極121と第2内部電極122との間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味し得る。
【0034】
上記誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンして測定することができる。
【0035】
例えば、本体110の幅方向の中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の誘電体層において、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。
【0036】
上記等間隔である30個の地点で測定した厚さは、第1及び第2内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Aで測定されることができる。
【0037】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み、容量が形成される容量形成部Aと、上記容量形成部Aの上部及び下部に形成されたカバー部112、113と、を含むことができる。
【0038】
また、上記容量形成部Aは、キャパシターの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層することで形成されることができる。
【0039】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層することで形成されることができ、基本的に、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0040】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0041】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0042】
一方、カバー部112、113の厚さは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtpは20μm以下であることができる。
【0043】
また、上記容量形成部Aの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0044】
マージン部114、115は、本体110の第6面6に配置されたマージン部114と、第5面5に配置されたマージン部115と、を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。
【0045】
マージン部114、115は、図3に示されたように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面の間の領域を意味し得る。
【0046】
マージン部114、115は、基本的に、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0047】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上に、マージン部が形成されるべき箇所を除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであることができる。
【0048】
また、内部電極121、122による段差を抑えるために、積層後に内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの両側面に、幅方向に積層することでマージン部114、115が形成されてもよい。
【0049】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に配置されることができる。
【0050】
内部電極121、122は第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0051】
図2を参照すると、第1内部電極121は、第4面4から離隔して第3面3を介して露出し、第2内部電極122は、第3面3から離隔して第4面4を介して露出することができる。
【0052】
この際、第1及び第2内部電極121、122は、その間に配置された誘電体層111により互いに電気的に分離されることができる。
【0053】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成することで形成されることができる。
【0054】
図6を参照すると、内部電極121、122と誘電体層111との界面には、Sn及びNiを含む複合層CLが配置されており、内部電極121、122は、複合層CLと隣接した界面部IPと、上記界面部の間に配置される中央部CPと、を含み、上記界面部IPはセラミック添加剤23を含むことができる。
【0055】
内部電極121、122を薄層化するための従来の一般的な方法として、内部電極を形成するための導電性ペーストを薄く印刷して焼成する方法がある。しかしながら、このような方法では、焼成時に全ての方向に収縮が起こるため、電極が切れる現象が発生する恐れがあり、内部電極の平滑度が低下するという問題があった。
【0056】
本発明では、焼結時における収縮挙動を制御することで、内部電極を薄くしながらも、内部電極の連結性及び平滑度を向上させることができる。
【0057】
通常、焼結時には、15~25%の収縮が第1方向、第2方向、第3方向の全ての方向に起こるが、本発明では、焼結時における内部電極の第1方向(厚さ方向)の収縮を極大化し、第2及び第3方向(長さ及び幅方向)の収縮を抑えることで、内部電極を薄くしながらも、内部電極の連結性及び平滑度を向上させることができる。
【0058】
図7の(a)はSnとNiの濡れ性、(b)はSnとBaTiOの濡れ性を説明するための図である。図7を参照すると、SnとNiは、接触角(θ1)が90度(degree)以下であって濡れ性が高く、SnとBaTiOは、接触角(θ2)が90度(degree)を超えて濡れ性が低いことが確認できる。Sn及びNiを含む複合層CLは、セラミック添加剤23との濡れ性が低いため、セラミック添加剤23が誘電体層111に移動することを抑えるバリアー(barrier)の役割を果たし、セラミック添加剤23が界面部IPにトラップされるようにすることができる。
【0059】
界面部IPにはセラミック添加剤23がトラップされて横方向の焼結収縮が抑制され、中央部CPは界面部IPにより拘束され、厚さ方向に集中的な収縮が起こるようになる。これにより、内部電極を薄くしながらも、内部電極の連結性及び平滑度を向上させることができる。
【0060】
一実施形態において、上記界面部IPは、上記複合層CLと上記内部電極121、122の界面から、上記内部電極の厚さの1/3の深さまでの領域であることができる。
【0061】
すなわち、内部電極を第1方向に3等分した時に、界面部IPの間に中央部CPが配置された形態であることができる。
【0062】
一方、界面部IPは、上記セラミック添加剤23を5~15面積%含むことができる。
【0063】
界面部IPにおいて、セラミック添加剤23が5面積%未満である場合には、セラミック添加剤23による横方向の焼結収縮の抑制効果が不十分であり、15面積%を超える場合には、セラミック添加剤の含量が過度に多くて、内部電極の薄層化において却って不利である。
【0064】
界面部IPに含まれたセラミック添加剤の面積%は、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の5個の内部電極において、内部電極の厚さの1/3の深さまでの領域でセラミック添加剤が占める面積を測定し、平均値を計算したものであることができる。
【0065】
中央部CPにもセラミック添加剤が一部含まれ得るが、界面部IPより少ないセラミック添加剤が含まれることができる。また、中央部CPには、セラミック添加剤が含まれなくてもよい。
【0066】
具体的な例として、中央部CPにおけるセラミック添加剤の面積%は、界面部IPにおけるセラミック添加剤23の面積%の1/2以下であることができる。また、中央部CPにおけるセラミック添加剤の面積%は、5面積%未満であることができる。
【0067】
一実施形態において、複合層CLのSnの濃度は、上記中央部CPのSnの濃度の5倍以上であることができる。
【0068】
これは、複合層CLのSnの濃度が上記中央部CPのSnの濃度の5倍未満である場合には、セラミック添加剤23が界面部IPにトラップされる効果が不十分になり得るためである。
【0069】
複合層CLのSnの濃度と中央部CPのSnの濃度の割合は、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の5個の内部電極に対して、内部電極の厚さ方向に沿ってEDS(Energy disperse X-ray Spectrometer)ラインスキャン(Line Scan)分析を行い、厚さ方向の中央でのSnの濃度と複合層CLでのSnの濃度の割合を測定し、平均値を計算したものであることができる。
【0070】
一実施形態において、複合層CLは、上記Sn及びNiをNiSnの形態で含むことができる。
【0071】
複合層CLに含まれたNiSnは、内部電極121、122と誘電体層111との界面をSAD(Selected Area Diffraction Pattern)分析することで確認することができる。
【0072】
一実施形態において、界面部IPに含まれたセラミック添加剤23はBaTiOであることができる。
【0073】
これは、BaTiOはSnとの濡れ性が高いため、Ni及びSnを含む複合層CLによってセラミック添加剤23が誘電体層111に移動することを抑える効果がより顕著になることができるためである。
【0074】
一実施形態において、上記内部電極121、122はNiを主成分として含むことができる。内部電極121、122に含まれたSnは232℃以上で液化し、界面部に移動してNiと金属間化合物(Intermetallic Compounds)を形成する。また、内部電極121、122はNiを主成分として含み、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0075】
一実施形態において、複合層CLの厚さは10~30nmであることができる。
【0076】
複合層CLの厚さが10nm未満である場合には、バリアー(barrier)の役割が不十分であり、30nmを超える場合には、焼結早期収縮によるデラミネーション(Delamination)不良が発生する恐れがある。
【0077】
一方、内部電極121、122の厚さteは、特に限定する必要はない。
【0078】
但し、一般に、内部電極121、122を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に、内部電極121、122の厚さが0.41μm以下である場合には、内部電極の連結性及び平滑度が低下する恐れがある。
【0079】
上述のように、本発明の一実施形態によると、内部電極の厚さ方向の収縮を極大化することで、内部電極を薄くしながらも、内部電極の連結性及び平滑度を向上させることができるため、内部電極121、122の厚さが0.41μm以下である場合にも、優れた内部電極の連結性及び平滑度を確保することができる。
【0080】
したがって、内部電極121、122の厚さが0.41μm以下である場合に、本発明による効果がより顕著になることができ、キャパシター部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0081】
上記内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さを意味し得る。
【0082】
上記内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンして測定することができる。
【0083】
例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の第1及び第2内部電極121、122において、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。
【0084】
一実施形態において、内部電極121、122は、内部電極の連結性が85%以上であることができる。
【0085】
内部電極の連結性とは、内部電極の全長に対して実際に内部電極が形成された部分の長さの割合と定義されることができる。
【0086】
例えば、図5のように、内部電極121の何れか一地点で測定された電極の全長をb、実際に電極が形成された部分の長さをそれぞれe1、e2、e3、e4と規定すると、実際に電極が形成された部分の長さの和(e=e1+e2+e3+e4)を電極の全長bで除した値であるe/bで上記内部電極の連結性を表現することができる。
【0087】
内部電極の連結性が85%未満である場合には、十分な静電容量を確保することが困難になることがある。
【0088】
本発明の一実施形態によると、内部電極の厚さ方向の収縮を極大化することで、内部電極を薄くしながらも、内部電極の連結性を向上させることができるため、内部電極の連結性を85%以上に確保することができる。
【0089】
内部電極の連結性の上限を特に限定する必要はないが、製造工程などを考慮すると、その上限は97%であることができる。
【0090】
外部電極131、132は、本体110に配置されて内部電極121、122と連結される。
【0091】
図2に示された形態のように、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0092】
本実施形態では、積層型電子部品100が2個の外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的によって変わり得る。
【0093】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば如何なる物質を用いて形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらには、多層構造を有することができる。
【0094】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132aと、電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bと、を含むことができる。
【0095】
電極層131a、132aのより具体的な例としては、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0096】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順に形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式により形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式により形成されてもよい。
【0097】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を用いることができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びこれらの合金のうち1つ以上であることができる。
【0098】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0099】
めっき層131b、132bのより具体的な例としては、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよい。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0100】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0101】
但し、小型化及び高容量化をともに達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くし、積層数を増加させる必要があるため、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。
【0102】
したがって、製造誤差、外部電極のサイズなどを考慮すると、積層型電子部品100の長さが0.44mm以下であり、幅が0.22mm以下である場合、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向のサイズを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品100の第3方向のサイズを意味し得る。
【0103】
[積層型電子部品の製造方法]
図8から図11は、本発明の他の実施形態による積層型電子部品の製造方法を説明するための図である。
【0104】
以下、図8から図11を参照して、本発明の他の実施形態による積層型電子部品の製造方法について説明する。
【0105】
本発明の他の実施形態による積層型電子部品の製造方法は、セラミックグリーンシートを準備する段階と、内部電極用ペーストを上記セラミックグリーンシート上に塗布して内部電極パターンを形成する段階と、上記内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成する段階と、上記積層体を一次か焼する段階と、上記一次か焼された積層体を二次か焼する段階と、上記二次か焼された積層体を焼成することで、誘電体層及び内部電極を含む本体を形成する段階と、上記本体に外部電極を形成する段階と、を含む積層型電子部品の製造方法であって、上記内部電極用ペーストは、Sn粉末22、セラミック添加剤23、及び導電性粉末21を含み、上記導電性粉末はコア21a-シェル21b構造を有し、上記コア21aにはNiを含み、上記シェル21bにはNi、S、及びOを含む。
【0106】
<セラミックグリーンシートを準備する段階>
先ず、誘電体層111を形成するためのセラミックグリーンシートを準備する。
【0107】
上記セラミックグリーンシートは、本体110の誘電体層111を形成するためのものであり、セラミック粉末11、ポリマー、及び溶剤を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレードなどの工法により所定の厚さを有するシート(sheet)状に製作することができる。
【0108】
<内部電極パターンを形成する段階>
その後、上記それぞれのセラミックグリーンシートの少なくとも一面に、内部電極用導電性ペーストを所定の厚さで印刷して内部電極を形成する。内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができる。
【0109】
上記内部電極用ペーストは、Sn粉末、セラミック添加剤、及び導電性粉末を含み、上記導電性粉末はコア-シェル構造を有し、上記コアにはNiを含み、上記シェルにはNi、S、及びOを含むことができる。かかる内部電極用ペーストを用いて内部電極を形成することにより、焼結時における内部電極の第1方向(厚さ方向)の収縮を極大化し、第2及び第3方向(長さ及び幅方向)の収縮を抑えることで、内部電極を薄くしながらも、内部電極の連結性及び平滑度を向上させることができる。また、上述の本発明の一実施形態による積層型電子部品の内部電極の構造をより容易に実現することができる。
【0110】
図8は、セラミック粉末11を含むセラミックグリーンシート上に、Sn粉末22、セラミック添加剤23、及び導電性粉末21を含む内部電極用導電性ペーストが印刷されたことを示したものである。導電性粉末21はコア21a-シェル21b構造を有し、上記コア21aにはNiを含み、上記シェル21bにはNi、S、及びOを含む。
【0111】
シェル21bに含まれたNi、S、及びOは、低温でNiが収縮されることを遅延させる役割を果たすことができる。
【0112】
シェルが、Sが含まれていないNi-Oの構造を有する場合には、二次か焼の初期に表面のOがCと反応し、CO、COなどを生成して揮発するため、Niの収縮を遅延させることが困難である。
【0113】
これに対し、本発明のようにシェル21bがNi、S、及びOを含む場合、SとOが強く結合されていて、二次か焼の初期に酸化膜の保存が可能であるため、Niの収縮を遅延させることができる。また、Ni粒子21a間のネッキング(Necking)を遅延させることで、セラミック添加剤23が内部電極の界面部に移動できる通路(Path)を提供する役割を果たすことができる。
【0114】
一実施形態において、導電性粉末は平均サイズが100nm未満であることができる。
【0115】
内部電極を薄く形成するためには、微粒の導電性粉末を用いることが有利である。一般的な微粒の導電性粉末は、焼結収縮開始温度が低温に移動するが、誘電体層との焼結開始温度の差が大きくなり、デラミネーション(delamination)などの不良が発生する可能性がある。
【0116】
しかし、本発明によると、導電性粉末21のシェル21bに含まれたNi、S、及びOは、低温でNiが収縮されることを遅延させる役割を果たすことができるため、100nm未満の微粒粉末を用いる場合にもデラミネーション(delamination)などの不良を抑制することができる。
【0117】
一実施形態において、コア-シェル構造で、シェル21bはSを1000~2000ppm含むことができる。
【0118】
導電性粉末が微粒化するほど、十分な収縮遅延効果を得るためには、さらに高いS含量が必要である。平均粒径100nm以下の導電性粉末が1000ppm以上のSでコーティングされた場合に、収縮遅延効果が十分になることができる。Sが2000ppmを超える場合には、収縮遅延効果の点から有意差がない。
【0119】
一実施形態において、上記シェル21bの表面にはNi-Oが配置されることができる。ナノサイズの金属粉末が大気中に露出すると、酸素と反応して発熱反応が起こるが、これを防止するために、シェル21bの表面にNi-Oが配置されることができる。
【0120】
一実施形態において、Sn粉末22は、上記導電性粉末21の100wt%に対して0.3~1.0wt%であることができる。Sn粉末22が0.3wt%未満である場合には、複合層CLを10nm以上に形成するには不十分であり、1.0wt%を超える場合には、複合層CLが30nm以上と過多に形成され、焼結収縮が促進されてデラミネーション(Delamination)不良を誘発することがある。
【0121】
一実施形態において、セラミック添加剤23は、上記導電性粉末21の100wt%に対して5~20wt%であることができる。平均粒径100nm以下の導電性粉末を内部電極121、122の主材料として用いる場合、導電性粉末100wt%に対して5wt%以上の添加剤が必要であり、平均粒径が小さくなるにつれて、焼結収縮を抑えるためにさらに高い含量のセラミック添加剤が必要になる。セラミック添加剤の割合が導電性粉末100wt%に対して20wt%を超える場合には、内部電極の薄層化において不利である。
【0122】
一実施形態において、上記セラミック添加剤23はBaTiOであることができる。
【0123】
これは、BaTiOはSnとの濡れ性が高いため、Ni及びSnを含む複合層CLによってセラミック添加剤23がセラミックグリーンシートに移動することを抑える効果がより顕著になることができるためである。
【0124】
<積層体形成段階>
内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成する。積層体を積層方向(第1方向)から加圧し、圧着させることができる。
【0125】
この際、積層体を、1個の積層型電子部品の本体に対応する領域毎に切断してチップ化することができる。また、内部電極パターンの一端が第2方向の両端面(end surface)を介して交互に露出するように切断することができる。
【0126】
<一次か焼段階>
その後、上記積層体を一次か焼する段階を行うことができる。
【0127】
図9を参照すると、一次か焼段階で、融点の低いSn粉末22が液状の形態でセラミックシートとの界面に移動するようになり、Snはセラミック粉末11との濡れ性が低いため、界面に層状22'として配置されるようになる。
【0128】
一実施形態において、一次か焼する段階は、250~350℃の温度及び中還元雰囲気で行われることができる。上記温度範囲でSn粉末を液状の形態とすることができ、Snは酸化反応性が高いため、中還元雰囲気で熱処理することによりSnの酸化を防止することができる。
【0129】
この際、Snの酸化を防止するための中還元雰囲気は、窒素(N)気体と0.2~1.0vol.%の水素(H)気体が混合された気体雰囲気であることができる。
【0130】
<二次か焼段階>
その後、一次か焼された積層体を二次か焼する段階を行うことができる。
【0131】
導電性粉末21のシェル21bがNi、S、及びOを含む場合、SとOが強く結合されていて、二次か焼の初期に酸化膜の保存が可能であるため、Niが収縮されることを遅延させることができる。また、Ni粒子21a間のネッキング(Necking)を遅延させることで、セラミック添加剤23が内部電極の界面部に移動できる通路(Path)を提供する役割を果たすことができる。
【0132】
図10は二次か焼が完了した状態を示した模式図である。図10を参照すると、セラミックシートとの界面では、Sn層とNi粒子が反応してSnとNiを含む複合層CLが形成され、セラミック添加剤23は複合層CLとの界面に移動する。Sn及びNiを含む複合層CLはセラミック添加剤との濡れ性が低いため、セラミック添加剤23がセラミックグリーンシートの方に移動することを抑えるバリアー(barrier)の役割を果たして、セラミック添加剤23が界面部にトラップされるようにする。
【0133】
一実施形態において、二次か焼する段階は600~900℃で行われることができる。上記温度範囲では、SnとNiを含む複合層CLの形成及びセラミック添加剤23の移動が容易であることができる。
【0134】
<焼結段階>
その後、二次か焼された積層体を焼結することで、誘電体層及び内部電極を含む本体を形成することができる。
【0135】
図11を参照すると、界面部IPにはセラミック添加剤23がトラップされて横方向の焼結収縮が抑えられ、中央部CPは界面部IPにより拘束され、厚さ方向に集中的な収縮が起こるようになる。これにより、内部電極を薄くしながらも、内部電極の連結性及び平滑度を向上させることができる。また、セラミック粉末11が焼結されて誘電体層111が形成される。
【0136】
一実施形態において、焼結工程は還元雰囲気で行われることができる。また、焼結工程は昇温速度を調節して行われることができ、これに制限されるものではないが、上記昇温速度は700℃以下で30℃/60s~50℃/60sであり、焼結温度は900~1300℃であることができる。
【0137】
<外部電極形成段階>
その後、本体に外部電極を形成する段階を行うことができる。
【0138】
この際、本体110の第2方向の両端面(end surface)に露出した第1及び第2内部電極121、122の露出部分を覆い、第1及び第2内部電極と電気的に連結されるように第1及び第2外部電極131、132を形成することができる。
【0139】
また、第1及び第2外部電極131、132の表面には、必要に応じて、ニッケル、スズ、パラジウムなどでめっき処理を行うことができる。
【0140】
[(実施例)]
内部電極用導電性ペーストを印刷したセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成した後、一次か焼、二次か焼、焼結工程を行い、外部電極を形成することで、発明例及び比較例のサンプルチップを製作した。発明例及び比較例では、内部電極用導電性ペーストを除いた他の条件は同様に適用した。
【0141】
比較例では、平均サイズ60nmのNi粉末、及びセラミック添加剤として平均サイズ10nmのBaTiO粉末を含む内部電極用導電性ペーストを使用した。
【0142】
発明例では、コアにはNiを含み、シェルにはNi、S、及びOを含むコア-シェル構造の導電性粉末、セラミック添加剤、及びSn粉末を含む内部電極用導電性ペーストを使用した。上記導電性粉末の平均サイズは60nm、上記セラミック添加剤の平均サイズは10nm、上記Sn粉末の平均サイズは60nmであり、導電性粉末100wt%に対してSn粉末は1wt%添加した。また、上記セラミック添加剤はBaTiOであった。
【0143】
サンプルチップの第3方向の中央で第1及び第2方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Eletron Microscope)でイメージスキャンした図12(比較例)及び図13(発明例)を比較すると、発明例は、内部電極の平滑度が比較例と比べて大幅に向上したことが確認できる。
【0144】
また、上記断面画像における全ての内部電極の全長に対して、実際に内部電極が形成された部分の長さを測定し、各内部電極の電極連結性を求めた後、その平均値を求めた結果、発明例は内部電極の連結性が93%、比較例は内部電極の連結性が84%と、内部電極の連結性が9%改善されたことが確認できた。
【0145】
また、発明例の内部電極の平均厚さは、比較例と比べて5.8%減少した。
【0146】
図13において内部電極と誘電体層の界面を拡大した図14を参照すると、誘電体層と内部電極の界面には、Ni及びSnを含む複合層が配置されており、内部電極の界面部には共材がトラップされていることが確認できる。
【0147】
下記表1は、発明例の本体の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の5個の内部電極において、内部電極の厚さの1/3の深さまでの領域(界面部)でセラミック添加剤が占める面積を測定し、それぞれの値及びその平均値を記載したものである。
【0148】
【表1】
【0149】
上記表1から確認できるように、発明例では、界面部IPはセラミック添加剤23を5~15面積%含むことができる。
【0150】
下記表2は、発明例の本体の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の5個の内部電極に対して、内部電極の厚さ方向に沿ってEDS(Energy disperse X-ray Spectrometer)ラインスキャン分析を行い、厚さ方向の中央でのSnの濃度と複合層CLでのSnの濃度の割合を測定し、それぞれの値及びその平均値を記載したものである。
【0151】
【表2】
【0152】
上記表2を参照すると、複合層CLのSnの濃度が、中央部CPのSnの濃度より5倍以上高いことが確認できる。
【0153】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態及び添付図面により限定されず、添付の特許請求の範囲により限定しようとする。よって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者による多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0154】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a 電極層
132b めっき層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14