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特開2022-81441乳化重合用乳化剤組成物、重合物、エマルション及びエマルションの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081441
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】乳化重合用乳化剤組成物、重合物、エマルション及びエマルションの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/24 20060101AFI20220524BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20220524BHJP
   C09K 23/02 20220101ALI20220524BHJP
【FI】
C08F2/24 A
C08F20/00 510
B01F17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185521
(22)【出願日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020192482
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西本剛
【テーマコード(参考)】
4D077
4J011
【Fターム(参考)】
4D077AB15
4D077AC01
4D077BA13
4D077BA15
4D077DC02Y
4D077DC19Y
4D077DC38Y
4D077DC59Y
4J011AA05
4J011KA06
4J011KA14
4J011KA23
4J011KB02
4J011KB08
4J011KB29
(57)【要約】
【課題】耐水白化性、機械安定性及び高温粘着特性に優れる乳化重合用乳化剤組成物、重合物、エマルション及びエマルションの製造方法を提供する。
【解決手段】アニオン性反応性乳化剤(A)と、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して5重量部以上50重量部以下のノニオン性反応性乳化剤(B)と、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下の尿素(C)と、を含み、アニオン性反応性乳化剤(A)及びノニオン性反応性乳化剤(B)は、それぞれ、エチレン性不飽和炭化水素基及びエチレン性不飽和炭化水素基以外の脂肪族炭化水素基を有する乳化重合用乳化剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性反応性乳化剤(A)と、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して5重量部以上50重量部以下のノニオン性反応性乳化剤(B)と、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下の尿素(C)と、を含み、
アニオン性反応性乳化剤(A)及びノニオン性反応性乳化剤(B)は、それぞれ、エチレン性不飽和炭化水素基およびエチレン性不飽和炭化水素基以外の脂肪族炭化水素基を有する乳化重合用乳化剤組成物。
【請求項2】
エチレン性不飽和炭化水素基以外の脂肪族炭化水素基の炭素数が8~16である請求項1に記載の乳化重合用乳化剤組成物。
【請求項3】
エチレン性不飽和炭化水素基が下記式(1)で表される基である請求項1または2に記載の乳化重合用乳化剤組成物。
CH=CR-(CH- (1)
[式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、dは1又は2の整数を表す]。
【請求項4】
アニオン性反応性乳化剤(A)が、下記式(2)で表される化合物及び下記式(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の乳化重合用乳化剤組成物。
CH=CR-(CH-O-(YO)-(EO)-SOX (2)
[式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、dは1又は2の整数を表し、eは1~2の整数を表し、Yは-CH-CHR-または-CHR-CH-であり(Rはエチレン性不飽和炭化水素基以外の炭素数が8~16の脂肪族炭化水素基を表す)、eが2の場合Yはそれぞれ独立に-CH-CHR-または-CHR-CH-であり、EOはエチレンオキシ基を表し、fは5~30の整数を表し、XはNH又はアルカリ金属元素を表す]
O-(Z)-(EO)-SOX (3)
[式(3)中、Rはエチレン性不飽和炭化水素基以外の炭素数が8~16の脂肪族炭化水素基を表し、gは1又は2の整数を表し、Zは下記式(3a)で表される基または下記式(3b)で表される基を表し、gが2の場合Zはそれぞれ独立に下記式(3a)で表される基または下記式(3b)で表される基を表し、EOはエチレンオキシ基を表し、fは5~30の整数を表し、XはNH又はアルカリ金属元素を表す]。
【化1】
【請求項5】
重合性組成物の重合物であって、重合性組成物が、請求項1~4のいずれか1項に記載の乳化重合用乳化剤組成物及びエチレン性不飽和単量体を含有する、重合物。
【請求項6】
請求項5に記載の重合物を含有するエマルション。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の乳化重合用乳化剤組成物の存在下、水性媒体中でエチレン性不飽和単量体を乳化重合する工程を含む、エマルションの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化重合用乳化剤組成物、重合物、エマルション及びエマルションの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乳化重合用の乳化剤として、アルキルベンゼン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤が用いられている。
これらの界面活性剤を乳化剤として、エチレン性不飽和単量体を重合して得られた樹脂エマルションは、塗料用途及び粘接着剤用途等に使用される。
【0003】
このような樹脂エマルションから得られた塗膜は、使用した乳化剤が遊離しているため耐水性が低く、水と接触し続けると白化する等の課題がある。そこで上記課題を改善するために、たとえば、一分子中に反応性基として二重結合を有する反応性界面活性剤と、尿素、スルファミン酸類及び硫酸アンモニウム等から選ばれる少なくとも1種を含む界面活性剤組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4564809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の界面活性剤組成物を乳化剤組成物として用いて重合した樹脂エマルションから得られる塗膜についても、耐水白化性、機械安定性が十分ではなかった。また、このような塗膜においては高温にした場合に粘着力が上昇しにくいという性質(高温粘着特性)が求められている。
本発明は、耐水白化性、機械安定性及び高温粘着特性に優れる乳化重合用乳化剤組成物、重合物、エマルション及びエマルションの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、アニオン性反応性乳化剤(A)と、アニオン性反応性乳化剤(B)100重量部に対して5重量部以上50重量部以下のノニオン性反応性乳化剤(B)と、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下の尿素(C)と、を含み、アニオン性反応性乳化剤(A)及びノニオン性反応性乳化剤(B)は、それぞれ、エチレン性不飽和炭化水素基およびエチレン性不飽和炭化水素基以外の脂肪族炭化水素基を有する乳化重合用乳化剤組成物、重合性組成物の重合物であって、重合性組成物が、前記乳化重合用乳化剤組成物及びエチレン性不飽和単量体を含有する、重合物、前記重合物を含有するエマルション、ならびに、前記乳化重合用乳化剤組成物の存在下、水性媒体中でエチレン性不飽和単量体を乳化重合する工程を含む、エマルションの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐水白化性、機械安定性及び高温粘着特性に優れる乳化重合用乳化剤組成物、重合物、エマルション及びエマルションの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[乳化重合用乳化剤組成物]
本発明の乳化重合用乳化剤組成物は、アニオン性反応性乳化剤(A)と、ノニオン性反応性乳化剤(B)と、尿素(C)と、を含む。アニオン性反応性乳化剤(A)及びノニオン性反応性乳化剤(B)は、それぞれ、エチレン性不飽和炭化水素基以外の脂肪族炭化水素基およびエチレン性不飽和炭化水素基を有する。以下において、「乳化重合用乳化剤組成物」を「乳化剤組成物」ということがある。
【0009】
アニオン性反応性乳化剤(A)及びノニオン性反応性乳化剤(B)が、それぞれ有するエチレン性不飽和炭化水素基以外の脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数8~16の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数が8~14の脂肪族炭化水素基、さらに好ましくは炭素数が10~14の脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基及びアルケニル基等が挙げられる。
【0010】
アニオン性反応性乳化剤(A)及びノニオン性反応性乳化剤(B)が、それぞれ有するエチレン性不飽和炭化水素基としては、例えば下記式(1)で表される基が挙げられる。CH=CR-(CH- (1)
式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、dは1又は2の整数を表す。
【0011】
アニオン性反応性乳化剤(A)としては、エチレン性不飽和炭化水素基以外の炭素数8~16の脂肪族炭化水素基及び式(1)で表される基を有する化合物を含むことが好ましい。このような化合物としては、例えば下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、及び下記式(4)で表される化合物等が挙げられる。本発明において、アニオン性反応性化合物(A)は、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましい。式(2)~(4)で表される化合物について説明する。
【0012】
式(2)で表される化合物は以下の通りである。
CH=CR-(CH-O-(YO)-(EO)-SOX (2)
式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、dは1又は2の整数を表す。式(2)のCH=CR-(CH-で表される基は式(1)で表される基に対応する。
式(2)中、eは1~2の整数を表し、Yは-CH-CHR-または-CHR-CH-である。前記Rはエチレン性不飽和炭化水素基以外の炭素数が8~16の脂肪族炭化水素基を表す。eが2の場合、Yはそれぞれ独立に-CH-CHR-または-CHR-CH-であり、2つのYにそれぞれ含まれるRは同一であっても相違していてもよい。
【0013】
としては、例えば炭素数8~16のアルキル基が挙げられ、当該アルキル基は直鎖、分岐及び環状のいずれであってもよい。Rとしては、具体的には、炭素数8~16の直鎖アルキル基(例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基及びヘキサデシル基等)、炭素数8~16の分岐アルキル基(例えば、2-エチルヘキシル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、イソデシル基及びイソトリデシル基等)ならびに炭素数8~16の環状アルキル基(シクロオクチル基等)等が挙げられる。
【0014】
eが2(YOが2つ)の場合、式(2)の化合物は以下の式(2A)~(2D)に示す態様を採りうる。
【化1】
【0015】
式(2)において、EOはエチレンオキシ基を表し、fは5~30の整数を表す。fはEOの付加モル数である。耐水白化性の観点から、fは10以上20以下であることが好ましい。
式(2)において、XはNH又はアルカリ金属元素を表す。アルカリ金属元素としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。乳化剤組成物を用いて得た後述の重合物の平均粒子径を小さくするという観点から、XとしてはNHおよびナトリウムが好ましい。
【0016】
式(3)で表される化合物は以下の通りである。
O-(Z)-(EO)-SOX (3)
式(3)中、Rはエチレン性不飽和炭化水素基以外の炭素数が8~16の脂肪族炭化水素基を表す。Rとしては、式(2)で表される化合物に含まれるRと同じものが挙げられる。
【0017】
式(3)中、gは1又は2の整数を表し、Zは下記式(3a)で表される基または下記式(3b)で表される基を表し、gが2の場合(Zが2つの場合)、Zはそれぞれ独立に下記式(3a)で表される基または下記式(3b)で表される基を表す。下記式(3a)で表される基及び下記式(3b)で表される基には、それぞれエチレン性不飽和炭化水素基(-CH-CH=CH)が含まれる。当該エチレン性不飽和炭化水素基は、式(1)においてRが水素原子、dが1の基である。
【化2】
【0018】
式(3)中、EOはエチレンオキシ基を表し、fは5~30の整数を表す。fはEOの付加モル数である。耐水白化性の観点から、fは10以上20以下であることが好ましい。
式(3)中、XはNH又はアルカリ金属元素を表す。アルカリ金属元素としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。乳化剤組成物を用いて得た後述の重合物の平均粒子径を小さくするという観点から、XとしてはNHおよびナトリウムが好ましい。
【0019】
式(4)で表される化合物は以下の通りである。
CH=CH-CH-O-CO-CH(SOX)-CH-COOR (4)
式(4)中、XはNH又はアルカリ金属元素を表す。アルカリ金属元素としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられる。乳化剤組成物を用いて得た後述の重合物の平均粒子径を小さくするという観点から、XとしてはNHおよびナトリウムが好ましい。式(4)中、Rはエチレン性不飽和炭化水素基以外の炭素数が8~16の脂肪族炭化水素基を表す。Rとしては、式(2)の化合物に含まれるRと同じものが挙げられる。式(4)のCH=CH-CH-で表される基は式(1)で表される基の一態様[式(1)においてRが水素原子でd=1である態様]である。
【0020】
アニオン性反応性乳化剤(A)としては、市販の乳化剤を用いてもよい。このようなアニオン性反応性乳化剤としては、アデカリアソープ SR-10[(株)ADEKA製]、アクアロン KH-10[第一工業製薬(株)製]及びエレミノール JS-20[三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。これらは、エチレン性不飽和炭化水素基以外の脂肪族炭化水素基およびエチレン性不飽和炭化水素基を有するアニオン性乳化剤である。
【0021】
アニオン性反応性乳化剤(A)としては、式(2)~式(4)で表される化合物以外のアニオン性反応性乳化剤を用いてもよい。このようなアニオン性反応性乳化剤としては、例えば、式(2)~式(4)中のXが有機アンモニウムである化合物、式(2)~式(3)中のEOの少なくとも一部がEO以外のアルキレンオキシ基である化合物等が挙げられる。前記有機アンモニウムとしては炭素数1~10のアルキルアンモニウム(モノメチルアンモニウム、モノブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等)及び炭素数1~10のアルカノールアンモニウム(モノエタノールアンモニウム及びトリエタノールアンモニウム等)等が挙げられる。前記のEO以外のアルキレンオキシ基としては、プロピレンオキシ基(PO)及びブチレンオキシ基(BO)等が挙げられる。
【0022】
ノニオン性反応性乳化剤(B)としては、例えば下記式(5)の化合物が挙げられる。RO-(Z)-(AO)-H (5)
式(5)中、Rはエチレン性不飽和炭化水素基以外の炭素数が8~16の脂肪族炭化水素基を表す。Rとしては、式(2)の化合物に含まれるRと同じものが挙げられる。
【0023】
式(5)中、gは1又は2の整数を表し、Zは式(5a)で表される基または式(5b)で表される基を表し、gが2の場合(Zが2つの場合)、Zはそれぞれ独立に式(5a)で表される基または式(5b)で表される基を表す。下記式(5a)で表される基及び下記式(5b)で表される基には、それぞれエチレン性不飽和炭化水素基(-CH-CH=CH)が含まれる。当該エチレン性不飽和炭化水素基は、式(1)においてRが水素原子、dが1の基である。
【化3】
【0024】
式(5)中、AOはアルキレンオキシ基を表し、fは5~30の整数を表す。fはAOの付加モル数である。耐水白化性の観点から、fは10以上20以下であることが好ましい。アルキレンオキシ基としてはエチレンオキシ基(EO)、プロピレンオキシ基(PO)及びブチレンオキシ基(BO)が挙げられる。これらのうち、エチレンオキシ基が好ましい。式(5)で表される化合物は、EO、PO及びBOのうちの一種を単独で含むものであっても、二種以上を含むものであってもよい。
【0025】
ノニオン性反応性乳化剤(B)としては、市販の乳化剤を用いてもよい。このような市販のノニオン性反応性乳化剤としては、脂肪族系ノニオン性反応性乳化剤(アデカリアソープ ER-10、(株)ADEKA製]、芳香族系ノニオン性反応性乳化剤(第一工業製薬(株)製、アクアロンAN-10)等が挙げられる。これらのノニオン性反応性乳化剤は、式(5)で表される化合物とともに用いてもよい。
【0026】
本発明の乳化剤組成物は、アニオン性反応性乳化剤(A)と、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して5重量部以上50重量部以下のノニオン性反応性乳化剤(B)と、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下の尿素(C)と、を含む。
【0027】
乳化剤組成物に含まれるノニオン性反応性乳化剤(B)の含有量が、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して5重量部以上50重量部以下であると、耐水白化性、機械安定性及び高温粘着特性に優れる乳化重合用乳化剤組成物を提供することができる。乳化剤組成物に含まれるノニオン性反応性乳化剤(B)の含有量は、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上であり、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。ノニオン性反応性乳化剤(B)の含有量が、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して5重量部未満であると、機械安定性が低下することがある。また、ノニオン性反応性乳化剤(B)の含有量が、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して50重量部超であると、重合安定性が低下することがある。
【0028】
乳化剤組成物に含まれる尿素(C)の含有量が、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して1.0重量部以上5.0重量部以下であると、機械安定性及び高温粘着特性に優れる乳化重合用乳化剤組成物を提供することができる。乳化重合用乳化剤組成物に含まれる尿素(C)の含有量は、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して、好ましくは1.2重量部以上、より好ましくは1.5重量部以上であり、好ましくは4.0重量部以下、より好ましくは2.5重量部以下である。尿素(C)の含有量が、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して1.0重量部未満であると、耐水白化性および機械安定性のうちの少なくとも一方が低下する。また、尿素(C)の含有量が、アニオン性反応性乳化剤(A)100重量部に対して5.0重量部超であると、重合安定性が低下する。
【0029】
本発明の乳化剤組成物は、前記のアニオン性反応性乳化剤(A)、ノニオン性反応性乳化剤(B)及び尿素(C)以外にも水、有機溶剤(エタノール等)、前記(A)の製造で生じる副生物および前記(B)の製造で生じる副生成物等を含有していても良い。
【0030】
本発明の乳化剤組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、尿素(C)をあらかじめ水に溶解してから、他の成分[前記(A)および前記(B)等]と混合する方法等により製造することができる。この方法において、尿素を溶解するために用いる水の量は、乳化剤組成物に配合する尿素(C)の量以上(例えば乳化剤組成物中の尿素の含有量を1重量%とする場合は、尿素を溶解させるための水の量は前記組成物の重量に基づき1重量%以上の量)であることが好ましい。均一に混合することができ、ハンドリング性が良いという観点から、尿素を溶解する水の量は、乳化剤組成物の重量に基づき1重量%以上10重量%以下であるのがより好ましい。
【0031】
本発明の乳化剤組成物が含有する、アニオン性反応性乳化剤(A)、ノニオン性反応性乳化剤(B)及び尿素(C)の合計重量の割合は、輸送コスト並びに分離及び沈殿を防ぐ観点から、乳化剤組成物の重量を基準として、15~99重量%であることが好ましく、輸送コストを更に抑える観点からは、20~98.5重量%であることが更に好ましい。
【0032】
[重合物]
本発明の重合物は、重合性組成物の重合物である。重合性組成物は、本発明の乳化重合用乳化剤組成物(乳化剤組成物)及びエチレン性不飽和単量体を含有する。
前記のエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリロイル基を有する単量体、スチレン化合物、及び、その他のビニル基を有する単量体等が挙げられる。
なお、本願において、「(メタ)アクリロイル」の表記はアクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリル」の表記はアクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0033】
前記の(メタ)アクリロイル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、化合物全体の炭素数が4~32の(メタ)アクリル酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等]、化合物全体の炭素数が4~32の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル[(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等]、(メタ)アクリルアミド、化合物全体の炭素数が5~32のN,N-ジアルキルアクリルアミド[N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等]、前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルのアルキレンオキサイド(アルキレンオキサイドは炭素数2~4のものが好ましい)付加物(付加モル数は1~100モルであることが好ましい)、及び、炭素数4~32のアルコール(ラウリルアルコール等)のアルキレンオキサイド(アルキレンオキサイドは炭素数2~4のものが好ましい)付加物(付加モル数は1~100モルであることが好ましい)の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記のスチレン化合物としては、炭素数8~10のスチレン化合物が好ましく、具体的には、スチレン、スチレンスルホン酸、ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン及びパラメチルスチレン等が挙げられる。
前記のその他のビニル基を有する単量体としては、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルスルホン酸、イソプレン、プロピレン、エチレン、ブタジエン及びクロロプレン等が挙げられる。
前記のエチレン性不飽和単量体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0034】
前記の重合性組成物が含有する乳化剤組成物の重量割合は、乳化性及び耐水性の観点から、重合性組成物(水、有機溶剤及び副生成物等の非重合性の成分を含む。以下において同じ。)の重量を基準として、乳化剤組成物が含有する、アニオン性反応性乳化剤(A)、ノニオン性反応性乳化剤(B)及び尿素(C)の合計重量が0.05~15.0重量%となる量であることが好ましく、0.1~5重量%となる量であることがより好ましい。
前記の重合性組成物が含有するエチレン性不飽和単量体の重量割合は、重合性組成物の重量を基準として、25~99.95重量%であることが好ましく、50~99.95重量%であることが更に好ましい。
【0035】
本発明の重合物は、例えば、後に詳述する本発明のエマルションの製造方法を実施することにより、本発明の重合物を含有するエマルションとして得ることができる。
【0036】
[エマルション]
本発明のエマルションは、本発明の重合物を含有する。
前記の重合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
また、本発明のエマルションは、水性媒体を含有していてもよい。
前記の水性媒体としては、水及び水溶性有機溶媒等が挙げられる。
前記の水溶性有機溶媒としては、25℃における水100gに対する溶解度が100g以上である溶媒が挙げられる。25℃における水100gに対する溶解度が100g以上である溶媒としては、炭素数1~4の1価のアルコール(メタノール、エタノール及びn-又はiso-プロパノール等)、炭素数2~9のグリコール(エチレングリコール及びジエチレングリコール等)、アミド(N-メチルピロリドン等)、ケトン(アセトン等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピラン等)、ラクトン(γ-ブチロラクトン等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)及びニトリル(アセトニトリル等)等が挙げられる。
前記の水性媒体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0037】
本発明のエマルションが含有する重合物の重量割合は、エマルションの重量を基準として、15~80重量%であることが好ましい。
本発明のエマルションが含有する水性媒体の重量割合は、エマルションの重量を基準として、20~85重量%であることが好ましい。
【0038】
[エマルションの製造方法]
本発明のエマルションの製造方法としては、本発明の乳化剤組成物の存在下、水性媒体中でエチレン性不飽和単量体を乳化重合する工程を含む製造方法等が挙げられる。
前記の乳化重合する工程としては、具体的には、以下の(1)および(2)の工程等が挙げられる。
(1)本発明の乳化剤組成物、水性媒体及び重合開始剤並びに、必要に応じて、緩衝剤(炭酸水素ナトリウム等)を混合し、次に、エチレン性不飽和単量体を滴下し、乳化重合を実施する。
(2)本発明の乳化剤組成物、水性媒体及びエチレン性不飽和単量体を、ホモミキサー等を用いて混合し、単量体乳化液を作成する。次いで、本発明の乳化剤組成物、水性媒体及び重合開始剤並びに、必要に応じて、緩衝剤(炭酸水素ナトリウム等)を混合し、あらかじめ作成した単量体乳化液を滴下し、乳化重合を実施する。
上記2種類の工程の内、重合安定性の観点から、(2)の工程が好ましい。
前記の乳化重合する工程において、エチレン性不飽和単量体の滴下時間及び単量体乳化液の滴下時間は、好ましくは1~5時間であり、より好ましくは1~4時間である。乳化重合時の温度は、好ましくは40~100℃であり、より好ましくは50~90℃である。
【0039】
前記の乳化重合する工程で用いる重合開始剤としては、過酸化物及びアゾ化合物等が挙げられる。
過酸化物として好ましいものとしては、水溶性過酸化物[過酢酸、t-ブチルパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウム等]等が挙げられる。
アゾ化合物として好ましいものとしては、水溶性アゾ化合物[アゾビスアミジノプロパン(塩)及びアゾビスシアノバレリン酸(塩)等]等が挙げられる。
本願において、水溶性有過酸化物及び水溶性アゾ化合物の「水溶性」とは、25℃における水100gに対する溶解度が1g以上である性質を指す。
【0040】
本発明のエマルションの製造方法において、乳化剤組成物の重量割合は、乳化性及び耐水性の観点から、乳化剤組成物、エチレン性不飽和単量体、水性媒体及び重合開始剤の合計重量を基準として、乳化剤組成物に含まれるアニオン性反応性乳化剤(A)、ノニオン性反応性乳化剤(B)及び尿素(C)の合計重量が、0.02~6重量%となる量であることが好ましい。
前記の製造方法において、エチレン性不飽和単量体の重量割合は、乳化剤組成物、エチレン性不飽和単量体、水性媒体及び重合開始剤の合計重量を基準として、5~75重量%であることが好ましい。
前記の製造方法において、水性媒体の重量割合は、乳化剤組成物、エチレン性不飽和単量体、水性媒体及び重合開始剤の合計重量を基準として、20~85重量%であることが好ましい。
前記の製造方法において、重合開始剤の重量割合は、乳化剤組成物、エチレン性不飽和単量体、水性媒体及び重合開始剤の合計重量を基準として、0.002~5重量%であることが好ましい。
【0041】
エマルションの分散安定性の観点から、本発明のエマルションの製造方法は、上述の乳化重合する工程の後に、アルカリ水溶液(アンモニア水溶液等)等でpHを調整し、pHを7~9にする工程を含むことが好ましい。
【0042】
[エマルションの用途]
本発明のエマルションを、乾燥させることにより、本発明の重合物を含有する乾燥物(膜等)を得ることができる。
本発明の重合物を含有する膜は、耐水性に優れるため、塗料、接着剤、紙加工剤及び繊維加工剤等の用途に適している。前記膜の具体的な用途の一例として、表面保護シート等が挙げられる。
また、本発明の重合物は、平均粒子径を小さくすることができることから、特に塗料及び接着剤の用途に好適である。
【実施例0043】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
[乳化重合用乳化剤の製造]
[製造例1:アニオン性反応性乳化剤(A-1)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、減圧及窒素導入ラインの付いたオートクレーブに1-デカノールを158重量部(1モル部)及びアリルグリシジルエーテル114重量部(1モル部)、t-ブトキシカリウム1.4重量部を仕込み、窒素置換を行った後攪拌を開始し、130℃に昇温した後、同温度で8時間撹拌した(1段階目の付加反応)。
次いでエチレンオキサイド440重量部(10モル部)を逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで3時間攪拌した(2段階目の付加反応)。
30℃に冷却後、加熱攪拌装置及び冷却装置の付いたガラス製反応装置に取り出し、スルファミン酸107重量部(1.1モル部)を仕込み、窒素を通気し、攪拌しながら100℃まで昇温した。同温度で8時間反応後、25重量%アンモニア水溶液でpHが8.0となるように調整し、反応容器から取り出し、アニオン性反応性乳化剤(A-1)を得た。アニオン性反応性乳化剤(A-1)は、式(3)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(3)においてR=直鎖C1021(直鎖デシル基)、Zは式(3a)で表される基、f=10、g=1、X=NHであり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(A-1)は、式(3)中のZが式(3b)で表される基である化合物(R、f、g、X、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0045】
[製造例2:アニオン性反応性乳化剤(A-2)の製造]
製造例1において、2段階目の付加反応で投入するエチレンオキサイド440重量部(10モル部)を880重量部(20モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、アニオン性反応性乳化剤(A-2)を得た。アニオン性反応性乳化剤(A-2)は式(3)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(3)においてR=直鎖C1021、Zは式(3a)で表される基、f=20、g=1、X=NHであり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(A-2)は、式(3)中のZが式(3b)で表される基である化合物(R、f、g、X、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0046】
[製造例3:アニオン性反応性乳化剤(A-3)の製造]
製造例1において、1段階目の付加反応で投入するアリルグリシジルエーテル114重量部(1モル部)を171重量部(1.5モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、アニオン性反応性乳化剤(A-3)を得た。アニオン性反応性乳化剤(A-3)は式(3)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(3)において、R=直鎖C1021、Zは式(3a)で表される基、f=10、g=1.5、X=NHであり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(A-3)は、式(3)中のZが式(3b)で表される基である化合物(R、f、g、X、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0047】
[製造例4:アニオン性反応性乳化剤(A-4)の製造]
加熱攪拌装置及び冷却装置の付いたガラス製反応装置に、アニオン性反応性乳化剤(A-1)809重量部(1モル部)及び水酸化ナトリウム30重量%水溶液133重量部(1モル部)を仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温し、圧力-0.1MPaGでアンモニアと水を留去し、アニオン性反応性乳化剤(A-4)を得た。アニオン性反応性乳化剤(A-4)は式(3)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(3)において、R=直鎖C1021、Zは式(3a)で表される基、f=10、g=1、X=Naであり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(A-4)は、式(3)中のZが式(3b)で表される基である化合物(R、f、g、X、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0048】
[製造例5:アニオン性反応性乳化剤(A-6)の製造]
製造例1において、2段階目の付加反応で投入するエチレンオキサイド440重量部(10モル部)を1760重量部(40モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、アニオン性反応性乳化剤(A-6)を得た。アニオン性反応性乳化剤(A-6)は式(3)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(3)において、R=直鎖C1021、Zは式(3a)で表される基、f=40、g=1、X=NHであり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(A-6)は、式(3)中のZが式(3b)で表される基である化合物(R、f、g、X、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0049】
[製造例6:アニオン性反応性乳化剤(A-7)の製造]
製造例1において、1段階目の付加反応で投入する1-デカノール158重量部(1モル部)を1-オクタノール130重量部(1モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、アニオン性反応性乳化剤(A-7)を得た。アニオン性反応性乳化剤(A-7)は式(3)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(3)において、R=直鎖C17(直鎖オクチル基)、Zは式(3a)で表される基、f=10、g=1、X=NHであり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(A-7)は式(3)中のZが式(3b)で表される基である化合物(R、f、g、X、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0050】
[製造例7:アニオン性反応性乳化剤(A-8)の製造]
製造例1において、1段階目の付加反応で投入する1-デカノール158重量部(1モル部)を1-ヘキサデカノール242重量部(1モル部)に、2段階目の付加反応で投入するエチレンオキサイド440重量部(10モル部)を880重量部(20モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、アニオン性反応性乳化剤(A-8)を得た。アニオン性反応性乳化剤(A-8)は式(3)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(3)において、R=直鎖C1633(直鎖ヘキサデシル基)、Zは式(3a)で表される基、f=20、g=1、X=NHであり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(A-8)は式(3)中のZが式(3b)で表される基である化合物(R、f、g、X、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0051】
[製造例8:アニオン性反応性乳化剤(A-10)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、減圧及窒素導入ラインの付いたオートクレーブにメタリルアルコールを72重量部(1モル部)及び1,2-ドデシレンオキサイドを184重量部(1モル部)、t-ブトキシカリウム1.3重量部を仕込み、窒素置換を行った後攪拌を開始し、130℃に昇温した後、同温度で8時間撹拌した(1段階目の付加反応)。
次いでエチレンオキサイド440重量部(10モル部)を逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで3時間攪拌した(2段階目の付加反応)。
30℃に冷却後、加熱攪拌装置及び冷却装置の付いたガラス製反応装置に取り出し、スルファミン酸107重量部(1.1モル部)を仕込み、窒素を通気し、攪拌しながら100℃まで昇温した。同温度で8時間反応後、25重量%アンモニア水溶液でpH8.0となるよう調整し、反応容器から取り出し、アニオン性反応性乳化剤(A-10)を得た。アニオン性反応性乳化剤(A-10)は式(2)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(2)においてR=CH、Yは-CH-CHR(R=直鎖C1021:直鎖デシル基)、d=1、e=1、f=10、X=NHである化合物である。(A-10)は、式(2)中のYが-CHR-CH-である化合物(R、R、d、e、fおよびXは前記と同じ)を含みうる。
【0052】
[製造例9:アニオン性反応性乳化剤(A-11)の製造]
製造例8において、1階目の付加反応で投入するメタリルアルコール72重量部(1モル部)を3-メチル-3-ブテン-1-オール86重量部(1モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、アニオン性反応性乳化剤(A-11)を得た。アニオン性反応性乳化剤(A-11)は式(2)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(2)においてR=CH、Yは-CH-CHR(R=直鎖C1021)、d=2、e=1、f=10、X=NHである化合物である。(A-11)は、式(2)中のYが-CHR-CH-である化合物(R、R、d、e、fおよびXは前記と同じ)を含みうる。
【0053】
[製造例10:ノニオン性反応性乳化剤(B-1)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、減圧及窒素導入ラインの付いたオートクレーブに1-デカノール158重量部(1モル部)及びアリルグリシジルエーテル114重量部(1モル部)、t-ブトキシカリウム1.4重量部を仕込み、窒素置換を行った後攪拌を開始し、130℃に昇温した後、同温度で8時間撹拌した(1段階目の付加反応)。
次いでエチレンオキサイド220重量部(5モル部)を逐次滴下し、同温度で圧平衡になるまで3時間攪拌した(2段階目の付加反応)。
反応容器から取り出し、ノニオン性反応性乳化剤(B-1)を得た。ノニオン性反応性乳化剤(B-1)は式(5)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(5)において、R=直鎖C1021(直鎖デシル基)、Zは式(5a)で表される基、f=5、g=1であり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(B-1)は、式(5)中のZが式(5b)で表される基である化合物(R、f、g、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0054】
[製造例11:ノニオン性反応性乳化剤(B-2)の製造]
製造例10において、2段階目の付加反応で投入するエチレンオキサイド220重量部(5モル部)を440重量部(10モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、ノニオン性反応性乳化剤(B-2)を得た。ノニオン性反応性乳化剤(B-2)は式(5)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(5)において、R=直鎖C1021、Zは式(5a)で表される基、f=10、g=1であり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(B-2)は、式(5)中のZが式(5b)で表される基である化合物(R、f、g、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0055】
[製造例12:ノニオン性反応性乳化剤(B-3)の製造]
製造例10において、2段階目の付加反応で投入するエチレンオキサイド220重量部(5モル部)を880重量部(20モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、ノニオン性反応性乳化剤(B-3)を得た。ノニオン性反応性乳化剤(B-3)は式(5)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(5)において、R=直鎖C1021、Zは式(5a)で表される基、f=20、g=1であり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(B-3)は、式(5)中のZが式(5b)で表される基である化合物(R、f、g、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0056】
[製造例13:ノニオン性反応性乳化剤(B-4)の製造]
製造例10において、1段階目の付加反応で投入する1-デカノール158重量部(1モル部)を1-オクタノール130(1モル部)に、2段階目の付加反応で投入するエチレンオキサイド220重量部(5モル部)を440重量部(10モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、ノニオン性反応性乳化剤(B-4)を得た。ノニオン性反応性乳化剤(B-4)は式(5)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(5)において、R=直鎖C17(直鎖オクチル基)、Zは式(5a)で表される基、f=10、g=1であり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(B-4)は、式(5)中のZが式(5b)で表される基である化合物(R、f、g、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0057】
[製造例14:ノニオン性反応性乳化剤(B-5)の製造]
製造例10において、1段階目の付加反応で投入する1-デカノール158重量部(1モル部)を1-ドデカノール186(1モル部)に、2段階目の付加反応で投入するエチレンオキサイド220重量部(5モル部)を440重量部(10モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、ノニオン性反応性乳化剤(B-5)を得た。ノニオン性反応性乳化剤(B-5)は式(5)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(5)において、R=直鎖C1225(直鎖ドデシル基)、Zは式(5a)で表される基、f=10、g=1であり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(B-5)は、式(5)中のZが式(5b)で表される基である化合物(R、f、g、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0058】
[製造例15:ノニオン性反応性乳化剤(B-6)の製造]
製造例10において、1段階目の付加反応で投入する1-デカノール158重量部(1モル部)を1-ヘキサデカノール242(1モル部)に、2段階目の付加反応で投入するエチレンオキサイド220重量部(5モル部)を440重量部(10モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、ノニオン性反応性乳化剤(B-6)を得た。ノニオン性反応性乳化剤(B-6)は式(5)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(5)において、R=直鎖C1633(直鎖ヘキサデシル基)、Zは式(5a)で表される基、f=20、g=1であり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(B-6)は、式(5)中のZが式(5b)で表される基である化合物(R、f、g、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0059】
[製造例16:ノニオン性反応性乳化剤(B-7)の製造]
製造例10において、2段階目の付加反応で投入するエチレンオキサイド220重量部(5モル部)を2200重量部(50モル部)にした以外は同様の操作を行い、ノニオン性反応性乳化剤(B-7)を得た。ノニオン性反応性乳化剤(B-7)は式(5)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(5)において、R=直鎖C1021、Zは式(5a)で表される基、f=50、g=1であり、式(1)で表される基[式(1)において、R=H、d=1]を有する化合物である。(B-7)は、式(5)中のZが式(5b)で表される基である化合物(R、f、g、Rおよびdは前記と同じ)を含みうる。
【0060】
[製造例17:アニオン性反応性乳化剤(A-13)の製造]
製造例8において、1階目の付加反応で投入するメタリルアルコール72重量部(1モル部)をアリルアルコール58重量部(1モル部)に、1,2-ドデシレンオキサイド184重量部(1モル部)を1,2-デシレンオキサイド156重量部(1モル部)にしたこと以外は同様の操作を行い、アニオン性反応性乳化剤(A-11)を得た。アニオン性反応性乳化剤(A-13)は式(2)で表される化合物からなる。本製造例で得られる化合物は、式(2)においてR=H、Yは-CH-CHR(R=直鎖C17)、d=1、e=1、f=10、X=NHである化合物である。(A-13)は、式(2)中のYが-CHR-CH-である化合物(R、R、d、e、fおよびXは前記と同じ)を含みうる。
【0061】
アニオン反応性乳化剤(A-1)~(A-4)、アニオン反応性乳化剤(A-6)~(A-8)、アニオン反応性乳化剤(A-10)~(A-11)、アニオン反応性乳化剤(A-13)及びノニオン反応性乳化剤(B-1)~(B-7)に含まれる化合物を表1に示す。表1の「化合物の種類」の欄において、「式(3)」とは式(3)で表される化合物を意味し、「式(2)」とは式(2)で表される化合物を意味し、「式(5)」とは式(5)で表される化合物を意味する。表2および3において、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」である。
【0062】
なお、式(3)で表される化合物が、式(3a)で表される基および式(3b)で表される基のいずれの基を有する化合物であるかということ、式(2)で表される化合物が、Yとして-CH-CHRおよび-CHR-CH-のいずれを有する化合物であるかということ、ならびに式(5)で表される化合物が、式(5a)で表される基および式(5b)で表される基のいずれの基を有する化合物であるかということに関しては、それぞれの化合物の製造において用いる材料(例えば製造例1および製造例10の場合はアリルグリシジルエーテル、t-ブトキシカリウム等)の構造や性質等から明らかではあるが、得られた化合物のH-NMR測定によっても確認することができる。
【0063】
表1~4に記載の記号の原料は以下の通りである。
(A-1):製造例1で製造したアニオン反応性乳化剤
(A-2):製造例2で製造したアニオン反応性乳化剤
(A-3):製造例3で製造したアニオン反応性乳化剤
(A-4):製造例4で製造したアニオン反応性乳化剤
(A-5):(株)ADEKA製、アデカリアソープ SR-10[式(3)においてR=がアルキル基、Zは式(3a)で表される基、f=10、g=1、X=NHであり、式(1)で表される基(R=H、d=1)を有する化合物]
(A-6):製造例5で製造したアニオン反応性乳化剤
(A-7):製造例6で製造したアニオン反応性乳化剤
(A-8):製造例7で製造したアニオン反応性乳化剤
(A-9):第一工業製薬(株)製、アクアロン KH-10[式(2)中の、RがH、dが1、Yが-CH-CHR(R:エチレン性不飽和炭化水素基以外の脂肪族炭化水素基)、XがNHである化合物]
(A-10):製造例8で製造したアニオン反応性乳化剤
(A-11):製造例9で製造したアニオン反応性乳化剤
(A-12):三洋化成工業(株)製、エレミノール JS-20[式(4)中のXがNa、Rがアルキル基(エチレン性不飽和炭化水素基以外の脂肪族炭化水素基)である化合物]
(A-13):製造例17で製造したアニオン反応性乳化剤
(B-1):製造例10で製造したノニオン反応性乳化剤
(B-2):製造例11で製造したノニオン反応性乳化剤
(B-3):製造例12で製造したノニオン反応性乳化剤
(B-4):製造例13で製造したノニオン反応性乳化剤
(B-5):製造例14で製造したノニオン反応性乳化剤
(B-6):製造例15で製造したノニオン反応性乳化剤
(B-7):製造例16で製造したノニオン反応性乳化剤
【0064】
【表1】
【0065】
[実施例1:重合物を含有するエマルションの製造]
(1-1:乳化重合用乳化剤組成物の調製)
尿素1.5重量部をあらかじめ水で溶解し、アニオン反応性乳化剤(A-1)100重量部及びノニオン反応性乳化剤(B-1)10重量部と混合することにより乳化重合用乳化剤組成物を調製した。尿素を溶解するために使用した水の量は、乳化重合用乳化剤組成物の重量に基づき5重量%となるようにした。乳化重合用乳化剤組成物中の、アニオン反応性乳化剤(A-1)、ノニオン反応性乳化剤(B-1)及び尿素の合計割合は、当該組成物の重量に基づき95重量%である。
【0066】
(1-2:エマルションの製造)
(1-1)で調製した乳化重合用乳化剤組成物1.9重量部、イオン交換水50重量部、アクリル酸ブチル46重量部、アクリル酸2-エチルヘキシル46重量部、メタクリル酸メチル5質量部及びアクリル酸3重量部をポリカップに入れて、ホモミキサーを用いて3000rpm、10分間攪拌し、単量体乳化液を作成した。
加熱攪拌装置、冷却装置及び環流管の付いたガラス製反応装置に、乳化重合用乳化剤組成物0.2重量部及びイオン交換水80重量部を仕込み、窒素を通気しながら攪拌を開始し、80℃に昇温した。次いで過硫酸アンモニウム0.2重量部を投入し、単量体乳化液を3時間かけて滴下した。続けて2時間熟成後、30℃まで冷却し、25重量%アンモニア水溶液でpH8.0となるよう調整し、重合物を含有するエマルションを得た。当該エマルションについて評価試験を行った。結果を表2に示す。
【0067】
[実施例2~20、比較例4~5:重合物を含有するエマルションの製造]
(2-1:実施例2~17、比較例4~5で用いる乳化重合用乳化剤組成物の調製)
実施例1の(1-1)において、アニオン反応性乳化剤の種類及び量、ノニオン反応性乳化剤の種類及び量、ならびに尿素の量を、表2、表3または表4に記載通りとしたこと以外は、実施例1の(1-1)と同じ操作を行い、各例で用いる乳化重合用乳化剤組成物を調製した。水の使用量は、乳化重合用乳化剤組成物の重量に基づき5重量%となるようにした。各例の乳化重合用乳化剤組成物中の、アニオン反応性乳化剤、ノニオン反応性乳化剤及び尿素の合計割合は、当該組成物の重量に基づき95重量%である。
(2-2:実施例2~20、比較例4~5のエマルションの製造)
実施例1の(1-2)において、乳化重合用乳化剤組成物1.9重量部を、(2-1)で得た乳化重合用乳化剤組成物1.9重量部に代えたこと以外は、実施例1の(1-2)と同じ操作を行い、重合物を含有するエマルションを得た。当該エマルションについて評価試験を行った。結果を表2、表3または表4に示す。
【0068】
[比較例1:重合物を含有するエマルションの製造]
実施例1の(1-2)において、乳化重合用乳化剤組成物1.9重量部に代えて、アニオン反応性乳化剤(A-5)1.8重量部を用いたこと以外は実施例1の(1-2)と同じ操作を行い、重合物を含有するエマルションを得た。当該エマルションについて評価試験を行った。結果を表4に示す。
【0069】
[比較例2:重合物を含有するエマルションの製造]
(C2-1:乳化重合用乳化剤組成物の調製)
尿素0.5重量部をあらかじめ水で溶解し、アニオン反応性乳化剤(A-5)100重量部と混合することにより乳化重合用乳化剤組成物を調製した。水の使用量は乳化重合用乳化剤組成物の重量に基づき5重量%となるようにした。乳化重合用乳化剤組成物中の、アニオン反応性乳化剤(A-5)及び尿素の合計割合は、当該組成物の重量に基づき95重量%である。
(C2-2:比較例2のエマルションの製造)
実施例1の(1-2)において、乳化重合用乳化剤組成物1.9重量部を(C2-1)で得た乳化重合用乳化剤組成物1.9重量部に代えたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、重合物を含有するエマルションを得た。当該エマルションについて実施例1と同様に評価試験を行った。結果を表4に示す。
【0070】
[比較例3:重合物を含有するエマルションの製造]
(C3-1:乳化重合用乳化剤組成物の調製)
アニオン反応性乳化剤(A-1)100重量部とノニオン反応性乳化剤(B-3)25重量部とを混合することにより乳化重合用乳化剤組成物を調製した。乳化重合用乳化剤組成物中の、アニオン反応性乳化剤(A-1)及びノニオン反応性乳化剤(B-3)の合計割合は、当該組成物の重量に基づき100重量%である。
(C3-2:比較例3のエマルションの製造)
実施例1の(1-2)において、乳化重合用乳化剤組成物1.9重量部を(C3-1)で得た乳化重合用乳化剤組成物1.8重量部に代えたこと以外は、実施例1と同じ操作を行い、重合物を含有するエマルションを得た。当該エマルションについて実施例1と同様に評価試験を行った。結果を表4に示す。
【0071】
[評価試験]
[エマルションの評価]
実施例および比較例で製造したエマルションについて下記の評価試験を行った。
(1)重合安定性の評価(凝集分濃度)
各例のエマルションを100メッシュの金網で濾過することで、凝集物を回収し、水洗後、105℃で3時間乾燥し、重量を測定した。エマルションの全固形分重量に対する凝集物の重量割合を凝集分濃度として重量%で算出した。凝集分濃度が低いほど凝集物量が少なく、重合安定性が高いことを示す。
エマルション製造時の歩留まりの観点から凝集物量は1重量%以下であることが好ましい。
【0072】
(2)乳化性の評価(平均粒子径)
動的光散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、製品名SZ-100)を用いて、エマルションの体積平均粒子径を測定した。体積平均粒子径が小さいほど、乳化性が高いことを示す。
エマルションの経時安定性の観点から、体積平均粒子径は130nm以下であることが好ましい。
【0073】
(3)機械安定性の評価
35℃に温調したエマルション200gをマーロン試験機にて荷重10kg、回転数1020rpm、試験時間5分の条件で試験を行った。試験後のエマルションを100メッシュの金網で濾過することで、凝集物を回収し、水洗後、105℃で3時間乾燥し、重量を測定した。エマルション200gの全固形分重量に対する凝集物の重量割合を算出し、凝集分濃度(重量%:表では「%」と記載)とした。凝集分濃度が低いほど凝集物量が少なく、機械安定性が高いことを示す。
エマルション使用時における作業性の観点から凝集分濃度は1重量%以下であることが好ましい。
【0074】
[塗膜の評価]
実施例および比較例で製造したエマルションを用いた塗膜について下記の評価試験を行った。
(1)試験用塗膜(粘着フィルム)の作製
各例のエマルションに、アジリジン系硬化剤(トリメチロールプロパントリス(2-メチル-1-アジリジンプロピオネート))を配合して塗布液を作製した。硬化剤の配合量は、エマルションと硬化剤との全重量に基づき2重量%とした。塗布液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、製品名コスモシャインA-4300)に、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗布した。塗布後80℃で5分乾燥させた後、45℃で2日間養生したものを200mm×25mmの大きさに裁断し、試験用粘着フィルムを得た。
【0075】
(2)初期粘着力の測定
(1)で作製した試験用粘着フィルムを、ガラス板(AGC株式会社製ソーダ石灰ガラス、15cm×12cm×2mm)の上に重ねて上部から1Nで押圧することにより貼り合わせ、引張試験機を用い、試験用粘着フィルムの剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。剥離強度の測定は、23℃で引っ張り速度1000mm/分の条件で、試験用粘着フィルムの上面に対し180°の角度から引っ張った。剥離強度測定は5つの試料について行い、最も高い値および最も低い値を除外した平均値を初期粘着力とした。
塗膜を表面保護シートに使用する場合、浮き剥がれがなく剥がすときに容易に剥がすことができる観点から剥離強度は0.01~0.15N/25mmの範囲が好ましい。
【0076】
(3)耐熱性の評価
試験用粘着フィルムをガラス板に貼り合わせた後、140℃で90分加熱したこと以外は、(2)と同じ操作を行い、剥離強度を測定した。剥離強度が低いほど耐熱性(高温粘着特性)が高いことを示す。
基材へのノリ残り防止の観点から剥離強度は0.6N/25mm以下が好ましい。
【0077】
(4)耐水白化性の評価
試験用粘着フィルムを沸騰した水に1時間浸漬し、取り出した後のフィルムのヘイズを、ヘイズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製、HM-150)を用いて測定した。ヘイズが低いほど耐水白化性に優れることを示す。
ヘイズは10%以下であることが好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
表2及び表3に示すように、実施例のエマルションを用いて作製した粘着フィルムは、耐水白化性、機械安定性及び高温粘着特性に優れている。この結果から、本発明によれば、耐水白化性、機械安定性及び高温粘着特性に優れる乳化重合用乳化剤組成物、重合物、エマルション及びエマルションの製造方法を提供できるということがわかる。