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特開2022-81503CRISPR/Cas9の核送達を通じた細胞RNAの追跡と操作
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081503
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】CRISPR/Cas9の核送達を通じた細胞RNAの追跡と操作
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/195 20060101AFI20220524BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20220524BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220524BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20220524BHJP
【FI】
C07K14/195
C07K14/47 ZNA
C12N15/09 110
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022023996
(22)【出願日】2022-02-18
(62)【分割の表示】P 2018545579の分割
【原出願日】2016-11-22
(31)【優先権主張番号】62/259,014
(32)【優先日】2015-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
(71)【出願人】
【識別番号】506138351
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】マーク ファン
(72)【発明者】
【氏名】ランジャン バトラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェネ ヨー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ネレス
(57)【要約】
【課題】
RNAを追跡するための現在の方法、RNAの量を求めるための現在の方法、RNAの量または構造を変化させる現在の方法にはさまざまな欠点がある。そうした欠点を補う改善された方法と組成物を提供する。
【解決手段】
RNAを標的とする新規Cas9ポリペプチド及びそれらを使用する方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
(a)ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチド、ここで当該ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドは野生型(WT)Cas9ポリペプチドに対応するドメイン又はドメインの一部を欠き、当該ドメインはHNAヌクレアーゼドメイン、RuvCヌクレアーゼドメイン、活性部位を含むββα-メタルフォールド、又はそれらの組合せを含み、当該ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドは、DNase、DNA開裂、ニッカーゼ活性又はそれらの組合せを欠く;及び
(b)以下:
(1)5'末端に、標的RNAにハイブリダイズまたは結合するRNA配列、及び
(2)3'末端に、以下:
(i)前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドと結合、ハイブリダイズ又は連結するRNA配列を含むCas9ポリペプチド足場;又は
(ii)当該sgRNAの5'末端をCas9ヌクレアーゼ不活性ポリペプチドに結合、共有結合または非共有結合させるリンカー;
を含む、組換えまたは合成によるシングルガイドRNA(sgRNA);
を含み、当該核タンパク質複合体はPAMmerオリゴヌクレオチドを含まない、操作された核タンパク質複合体。
【請求項2】
前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドが、以下:
Haloferax mediteranii、Mycobacterium tuberculosis、Francisella tularensis subsp. novicida、Pasteurella multocida、Neisseria meningitidis、Campylobacter jejune、Streptococcus thermophilus LMD-9 CRISPR 3、Campylobacter lari CF89-12、Mycoplasma gallisepticum str. F、Nitratifractor salsuginis str DSM 16511、Parvibaculum lavamentivorans、Roseburia intestinalis、Neisseria cinerea、Gluconacetobacter diazotrophicus、Azospirillum B510、Sphaerochaeta globus str. Buddy、Flavobacterium columnare、Fluviicola taffensis、Bacteroides coprophilus、Mycoplasma mobile、Lactobacillus farciminis、Streptococcus pasteurianus、Lactobacillus johnsonii、Staphylococcus pseudintermedius、Filifactor alocis、Treponema denticola、Legionella pneumophila str. Paris、Sutterella wadsworthensis、Corynebacter diphtheriae、Streptococcus aureus及びFrancisella novicida;
からなる群から選択されるものから単離され又は由来する古細菌又は細菌Cas9ポリペプチドから単離され又は由来する配列を含む、請求項1に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項3】
前記sgRNAの3’末端又はCas9ポリペプチド足場が、以下:
Haloferax mediteranii, Mycobacterium tuberculosis, Francisella tularensis subsp. novicida, Pasteu rella multocida, Neisseria meningitidis, Campylobacter jejune, Streptococcus thermophilus LMD-9 CRISPR 3, Campylobacter lari CF89-12, Mycoplasma gallisepticum str. F, Nitratifractor salsuginis str DSM 16511, Parvibaculum lavamentivorans, Roseburia intestinalis, Neisseria cinerea, Gluconacetobacter diazotrophicus, Azospirillum B510, Sphaerochaeta globus str. Buddy, Flavobacteri um columnare, Fluviicola taffensis, Bacteroides coprophilus, Mycoplasma mobile, Lactobacillus farciminis, Streptococcus pasteurianus, Lactobacillus johnsonii, Staphylococcus pseud intermedius, Filifactor alocis, Treponema denticola, Legionella pneumophila str. Paris, Sutterella wadsworthensis, Corynebacter diphtheriae, Streptococcus aureus及びFrancisella novicida;
の1つ以上の野生型(WT)コグネイトガイド核酸から単離され又は由来する配列を含む、請求項1に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項4】
前記sgRNAの5’末端が約15~25ヌクレオチド長で、前記Cas9ポリペプチド足場のRNA配列が85~100ヌクレオチド長である、請求項1に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項5】
前記sgRNAの5’末端のRNA配列が、20、21又は22ヌクレオチド長である、請求項4に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項6】
前記Cas9ポリペプチド足場のRNA配列が、90, 91, 92, 93, 94又は95ヌクレオチド長である、請求項4又は5のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項7】
前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドが、エフェクタポリペプチド、ターゲティング剤、酵素、検出可能部分又はそれらの組合せと共有結合又は非共有結合している、請求項4~6のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項8】
前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドが、エフェクタポリペプチド、ターゲティング剤、酵素、検出可能部分又はRNA改変ポリペプチドと非共有的に会合している、請求項4~7のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項9】
前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドが、エフェクタポリペプチド、ターゲティング剤、酵素、検出可能部分又はRNA改変ポリペプチドと共有的に会合している、請求項4~7のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項10】
前記エフェクタポリペプチドが、RNA改変ポリペプチドを含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項11】
前記ターゲティング剤が、以下:
(a)細胞質ポリアデニル化エレメント結合タンパク質(CPEB)、ジンクフィンガー結合タンパク質(ZBP)、TIA-1、PSF、PSF のDNA結合ドメイン(DBD)、脆弱X精神遅滞タンパク質 (FMRP)、IGF-II mRNA結合タンパク質(IMP)-l(IMP1)、IMP2、IMP3、細胞骨格結合タンパク質、 膜貫通タンパク質;又は
(b)(a)のタンパク質のドメインの組合せを含む曽佐されたタンパク質;
を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項12】
前記RNA改変ポリペプチドが、スプライシング因子またはRNAスプライシングドメイン、RBFOX2ドメイン含有タンパク質、RNAのスプライシングに影響を与えることが知られているタンパク質、RNA開裂ドメイン、又はPTNドメイン含有タンパク質を含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項13】
前記RNA開裂ドメインがエンドヌクレアーゼを含有する、請求項12に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項14】
前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドがリンカーによって前記シングルガイドRNA(sgRNA)に共有結合している、請求項1~13のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項15】
前記シングルガイドRNA(sgRNA)の3’末端が、Cas9ポリペプチド足場に、二次RNA構造を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項16】
前記シングルガイドRNA(sgRNA)が、転写終止配列を除去する1つ以上の点変異を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項17】
前記シングルガイドRNA(sgRNA)が、そのシングルガイドRNAを分解に対して安定化させる変化、または5'末端の追加ヌクレオチドまたは追加化学的部分を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項18】
前記シングルガイドRNA(sgRNA)の5'末端にある前記追加ヌクレオチドまたは追加化学的部分が、2'-O-メチル、チオホスホノアセテート連結、チオホスホノアセテート塩基、2'-F、ロックされた核酸(LNA)、2'-Oメトキシエチル、及びロックされていない核酸(UNA)からなる群から選択される、請求項17に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項19】
前記シングルガイドRNAが、1つ以上のメチルホスホネート連結、またはチオホスホノアセテート連結、またはホスホロチオエート連結を含んでいて、その連結が、そのsgRNA に対するRNAヌクレアーゼ活性を少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上低下させる、請求項1~18のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項20】
前記シングルガイドRNA(sgRNA)が、RNAターゲティングを少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上向上させる変化、または5'末端の追加ヌクレオチドまたは追加化学的部分を含んでいる、請求項1~19のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項21】
前記シングルガイドRNAが、標的の認識を少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上向上させるか、このシングルガイドRNAに対するヌクレアーゼ活性を少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上低下させるため、このsgRNA のCas9ポリペプチド足場に、2'-フッ素塩基修飾、および/または2'-O-メチル塩基修飾、および/または2'-メトキシエチル塩基修飾を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項22】
前記シングルガイドRNAが、前記標的RNAの少なくとも一部と相補的である配列を含んでいて、その部分が、その標的RNAの少なくとも約5%、または10%、または15%である、請求項1~21のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項23】
前記シングルガイドRNAが、前記標的RNAの少なくとも一部と相補的である配列を含んでいて、その部分が、その標的RNAの少なくとも約5~20%である、請求項1~22のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項24】
CRISPRを標的とするRNA(crRNA)とトランス活性化型cRNA(tracrRNA)をさらに含んでいて、前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドが、CRISPRを標的とするそのRNA(crRNA)とそのトランス活性化型cRNA(tracrRNA)の組み合わせと複合体になるか、共有結合または非共有結合する、請求項1~23のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項25】
前記RNA改変ポリペプチドがさらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドと複合体になるか、共有結合または非共有結合する、請求項1~24のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項26】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの改変されたヌクレオチドを含む、請求項25に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項27】
前記少なくとも1つの改変されたヌクレオチドが、2'OMe RNAヌクレオチドと 2'OMe DNAヌクレオチドを含有する、請求項26に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項28】
細胞の核に送達されるように改造されている、請求項1~27のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項29】
標的RNAとともに前記核の外に輸送されるように改造されている、請求項28に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項30】
前記Cas9ポリペプチドが、核局在化シグナル、1つ以上のリンカーペプチド、1つ以上のXTENペプチド、SV40核局在化シグナルと共有結合又は非共有結合されている、請求項28又は29に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項31】
前記Cas9ポリペプチドがヌクレアーゼ-ヌルである、請求項1~30のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項32】
前記標的RNAが反復配列を含み、当該標的RNAとハイブリダイズまたは結合する前記sgRNAの5'末端が、その反復配列にハイブリダイズできる配列を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項33】
前記反復配列が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループから選択される、請求項32に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項34】
前記標的RNAが、疾患または病気または感染症と関連している、請求項32又は33に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項35】
当該疾患または病気が、RNAマイクロサテライト反復伸長によって起こるか、RNAマイクロサテライト反復伸長と関連している、請求項34に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項36】
前記疾患または病気または感染症が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脆弱X関連振戦/失調症候群、球脊髄性筋萎縮症、眼咽頭型筋ジストロフィー、脆弱X症候群、ウイルス感染症、細菌感染症、ヘルペスウイルス科または単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎)、ジカウイルス、エンテロウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、ムンプスウイルス、サイトメガロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、パラミクソウイルス科または麻疹ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルスの感染症からなる群から選択される、請求項34又は35に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項37】
前記Cas9ポリペプチドがエフェクタポリペプチドと会合していて、そのペプチドが毒性タンパク質である、請求項1~36のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項38】
前記Cas9ポリペプチドが、エフェクタポリペプチド、ターゲティング剤、酵素、検出可能な薬剤または部分のいずれかと共有又は非共有結合しており、そのCas9ポリペプチドが組み換えまたは合成によるポリペプチドである、請求項1~37のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項39】
前記検出可能な薬剤または部分が、検出可能なポリペプチド含む、請求項38に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項40】
前記検出可能なポリペプチドが、その検出可能なポリペプチドが細胞の核の中にあるときに不活性化されているポリペプチドを含む、請求項39に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項41】
前記検出可能なポリペプチドが、その検出可能なポリペプチドが細胞の核の中にあるときに検出可能でなく、その検出可能なポリペプチドが細胞の核の中にないときに検出可能である、請求項40に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項42】
前記検出可能なポリペプチドが、細胞の核の中にないとき検出可能であり、当該検出可能なポリペプチドが、検出可能な別の薬剤との会合を通じて検出可能である、請求項41に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項43】
前記検出可能なポリペプチドが、蛍光ポリペプチド、分割された蛍光ポリペプチド、又は発光ポリペプチドを含有する、請求項39~42のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項44】
前記蛍光ポリペプチドが、緑色蛍光タンパク質(GFP)または強化型(enhanced)GFPを含む、請求項37に記載の操作された核タンパク質複合体。
【請求項45】
請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をコードする1つまたは複数の核酸又はベクターを含むベクターであって、そのベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、合成ベクターのいずれかであるか、そのベクターを含むか、そのベクターに由来する、ベクター。
【請求項46】
以下:
(a)請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体;または
(b)請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をコードする1つまたは複数の核酸又はベクター;
を含有し、哺乳動物細胞またはヒト細胞である、細胞。
【請求項47】
請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をコードするキメラ核酸であって、その核酸が、組み換えまたは合成による核酸であり、その核酸が、構成的プロモータまたは誘導性プロモータに機能可能に連結されている、キメラ核酸。
【請求項48】
前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチド、前記sgRNA、前記エフェクタポリペプチド、前記検出可能なポリペプチドのうちの1つ以上、またはこれらの組み合わせの発現が、調節可能なプロモータまたは構成的プロモータによって制御される、請求項47に記載の核酸。
【請求項49】
請求項47または48に記載の核酸を含むベクターであって、そのベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、合成ベクターのいずれかを含むか、そのベクターに由来する、ベクター。
【請求項50】
請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体を含むか、請求項47または48に記載の核酸を含むか、請求項49に記載のベクターを含む細胞または組織。
【請求項51】
請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体、請求項47または48に記載の核酸、請求項49に記載のベクター、又は請求項50に記載の細胞または組織を含有する組成物。
【請求項52】
哺乳動物対象またはヒト対象の疾患または病気または感染症の症状を治療する、または予防する、または改善する、または低減させる方法であって、その哺乳動物対象またはヒト対象に請求項51に記載の組成物を投与する工程を含み、当該組成物が、細胞内のRNAを改変することによって、当該疾患、病気又は感染症の症状を治療、予防、改善又は低減する、方法。
【請求項53】
ナノ粒子、または粒子、またはミセル、またはリポソームまたはリポプレックス、またはポリマーソーム、またはポリプレックス、またはデンドリマーが、前記操作された核タンパク質複合体、前記操作された核タンパク質複合体をコードする1つ以上の核酸、又は前記操作された核タンパク質複合体をコードする1つ以上のベクターを含有又は担持している、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記ナノ粒子、または粒子、またはミセル、またはリポソームまたはリポプレックス、またはポリマーソーム、またはポリプレックス、またはデンドリマーが、更に、細胞侵入部分又はペプチドを更に含有又は発現する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
単一のベクターが、前記操作された核タンパク質複合体又はその1つ以上の成分をコードする核酸を含有又は担持し;又は単一のベクターが、前記操作された核タンパク質複合体の各成分を含有又は担持する、請求項52~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記前記操作された核タンパク質複合体の1つ以上の成分が、ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチド、sgRNA及びエフェクタポリペプチドを含有する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、合成ベクターを含有し、又は由来する、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチド、前記sgRNA、前記エフェクタポリペプチドのうちの1つ以上、またはこれらの組み合わせの発現を、調節可能なプロモータまたは構成的プロモータによって制御する、請求項52~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記シングルガイドRNA(sgRNA)、及び前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドをコードする核酸を異なるベクターが含有又は担持し、当該ベクターが、アデノウイルスベクター、AAVベクター、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、又は合成ベクターを含有し、又は由来する、請求項52~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記シングルガイドRNA(sgRNA)、及び前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドをコードする核酸を同一のベクターが含有又は担持し、当該ベクターが、アデノウイルスベクター、AAVベクター、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、又は合成ベクターを含有し、又は由来する、請求項52~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記エフェクタポリペプチドをコードする核酸及びRNA改変ポリペプチドをコードする核酸を異なるベクターが含有又は担持し、当該ベクターが、アデノウイルスベクター、AAVベクター、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、又は合成ベクターを含有し、又は由来する、請求項52~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記疾患または病気が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループから選択された反復配列によって起こる、請求項52~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記疾患または病気または感染症が:
(a)RNAマイクロサテライト反復伸長によって起こるか、RNAマイクロサテライト反復伸長に関連しており;又は
(b)筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脆弱X関連振戦/失調症候群、球脊髄性筋萎縮症、眼咽頭型筋ジストロフィー、脆弱X症候群、ウイルス感染症、細菌感染症からなるグループからなされ、場合によっては、前記ウイルス感染症が、ヘルペスウイルス科または単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎)、ジカウイルス、エンテロウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、ムンプスウイルス、サイトメガロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、パラミクソウイルス科、麻疹ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルスの感染症からなる群から選択される;
請求項58~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記組成物が、経口、肺、腹腔内(ip)、静脈内(iv)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、口腔内、鼻腔内、舌下、眼内、直腸、膣からなる群から選択される経路によって投与される、請求項52~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体を発現させる方法であって、請求項45又は49のベクター、または請求項47又は48の核酸を、細胞の中に、その細胞が前記核タンパク質複合体を発現する条件下で導入することを含む方法。
【請求項66】
細胞内の標的RNAを追跡する方法、または標的RNAの量を測定する方法であって、前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドが、検出可能な部分に共有結合する、または非共有結合する請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体を細胞に投与して、その操作された核タンパク質複合体がその細胞内の標的RNAに結合することを可能にし、その細胞内のその標的RNAの位置を明らかにすること、またはその細胞内のその標的RNAの量を測定することを含む方法。
【請求項67】
前記操作された核タンパク質複合体が、前記細胞の核内で前記標的RNAに結合し、その後、その核からその標的RNAとともに外に輸送される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
蛍光顕微鏡法またはそれと同等な方法を用い、前記細胞内の前記標的RNAの位置、または前記細胞内の前記標的RNAの量を求める、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
インビトロで、または生体内で細胞内の標的RNAの量または構造を改変する方法であって、請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体が、その細胞内のその標的RNAの量または構造が改変される条件下でその細胞内のその標的RNAと結合することを可能とする工程を含み、前記ヌクレアーゼ不活性Cas9がエフェクタポリペプチドと共有結合する、または非共有結合し、当該エフェクタポリペプチドがRNA改変ポリペプチドを含有する、方法。
【請求項70】
インビトロで、または生体内で細胞内の標的RNAの量または構造を改変する方法であって、請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体の1つ以上の成分が、その細胞内のその標的RNAの量または構造が改変される条件下でその細胞内で発現する工程を含み、前記ヌクレアーゼ不活性Cas9がエフェクタポリペプチドと共有結合する、または非共有結合し、当該エフェクタポリペプチドがRNA改変ポリペプチドを含有し、当該改変された核タンパク質複合体の1つ以上の成分が、ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチド、sgRNA、エフェクタタンパク質、検出可能な部分のいずれか、またはこれらの組み合わせを含有する、方法。
【請求項71】
サンプル中のRNAの含量またはダイナミクスを測定する方法であって:
請求項1~44のいずれか1項に記載の改変された核タンパク質複合体を当該サンプルに導入する工程;及び当該サンプル中の検出可能な薬剤の量を測定する工程;
を含み、前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドが、検出可能な部分に共有結合する、または非共有結合する、方法。
【請求項72】
請求項47又は48の核酸、または請求項45又は49のベクターを、前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドが発現する条件下で前記サンプルに導入することを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記サンプルが、組織サンプル、生検サンプル、血清サンプル、血液サンプル、痰サンプルのいずれかを含むか、そのサンプルに由来する、請求項71又は72に記載の方法。
【請求項74】
前記サンプルが複数の細胞を含む、請求項71~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記サンプル中の標的RNAの発現レベルまたは含量を測定することを含む、請求項71~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記サンプルの出所となる個人の疾患または病気または感染症を、そのサンプル中の前記標的RNAの発現レベルまたは含量を測定することによって診断する工程を含む、請求項71~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
その標的RNAがウイルス感染症または細菌感染症に由来する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
そのウイルス感染症が、ヘルペスウイルス科または単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎)、ジカウイルス、エンテロウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、ムンプスウイルス、サイトメガロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、パラミクソウイルス科、麻疹ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルスの感染症である、請求項76又は77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記標的RNAが反復配列を含む、請求項71~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記反復配列が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループから選択される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記疾患または病気が
(a)RNAマイクロサテライト反復伸長によって起こるか、RNAマイクロサテライト反復伸長と関連していて、又は
(b)その疾患または病気が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脆弱X関連振戦/失調症候群、球脊髄性筋萎縮症、眼咽頭型筋ジストロフィー、脆弱X症候群からなる群から選択される、
請求項79又は80に記載の方法。
【請求項82】
サンプル中の標的RNAを改変する方法であって、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をサンプルに導入する工程を含み、前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドがエフェクタポリペプチドに共有結合または非共有結合し、当該エフェクタポリペプチドが、RNA改変ポリペプチドを含有することにより、当該RNA改変ポリペプチドを使用して当該サンプル中の標的RNAを改変する、方法。
【請求項83】
請求項47又は48の核酸、または請求項49のベクターを、前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドが発現する条件下で前記サンプルに導入することを含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
PAMmerオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む、請求項82又は83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記サンプルが組織を含む、請求項82~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記サンプルが複数の細胞を含む、請求項82~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記サンプル中の標的RNAの量を改変することを含む、請求項82~86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記標的RNAが反復配列を含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記反復配列が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループから選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記反復配列が疾患に関連している、請求項88又は89に記載の方法。
【請求項91】
前記疾患が、
(a)RNAマイクロサテライト反復伸長によって起こるか、RNAマイクロサテライト反復伸長と関連している、又は
(b)その疾患または病気が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脆弱X関連振戦/失調症候群、球脊髄性筋萎縮症、眼咽頭型筋ジストロフィー、脆弱X症候群からなる群から選択される、
請求項90に記載の方法。
【請求項92】
以下:
(a)請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体、ここで前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドがエフェクタポリペプチドに共有結合する、または非共有結合し、当該エフェクタポリペプチドがRNA改変ポリペプチドを含有する;または
(b)請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をコードする1つまたは複数の核酸又はベクター、ここで前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドがエフェクタポリペプチドに共有結合する、または非共有結合し、当該エフェクタポリペプチドがRNA改変ポリペプチドを含有する;
を含有する医薬組成物であって、経腸送達用または非経口送達用に製剤化されるか、静脈内(iv)送達用に製剤化される、医薬組成物。
【請求項93】
更に賦形剤を含有する、請求項92に記載の医薬組成物。
【請求項94】
ナノ粒子、粒子、ミセル、リポソームまたはリポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックス又はデンドリマーが、前記操作された核タンパク質複合体、当該核タンパク質複合体をコードする核酸またはベクターを含有又は担持する、請求項92又は93に記載の医薬組成物。
【請求項95】
前記ナノ粒子または粒子が、脂質、ポリマー、ヒドロゲルのいずれか、またはこれらの組み合わせを含む、請求項94に記載の医薬組成物。
【請求項96】
前記sgRNA及び前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドが同じベクターに収容され、又は異なるベクターに収容される、請求項92~95のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項97】
前記ヌクレアーゼ不活性Cas9ポリペプチドをコードする核酸と、前記sgRNAをコードする核酸が、1つ以上のベクターに担持され、当該1つ以上のベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、又は合成ベクターを含む、又は由来する、請求項92~96のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による優先権出願の組み込み
本出願とともに提出される出願データシートの中で外国または国内の優先権主張が確認される出願はすべて、37 CFR 1.57のもとで参照により本明細書に組み込まれている。特に本出願は、2015年11月23日に出願された「CRISPR /Cas9の核送達を通じた細胞RNAの追跡と操作」という名称のアメリカ合衆国仮出願シリアル番号第62/259014号の優先権の恩恵を主張するものであり、その開示内容の全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
連邦が資金提供する研究開発のもとでなされる発明の権利に関する宣言
本発明は、アメリカ合衆国国立衛生研究所から与えられたNIH助成/契約番号HG004659とNS075449という政府支援によってなされた。
【0003】
コンパクトディスクで提出される「配列リスト」、または表、またはコンピュータプログラムリストの参照
本出願は、電子形式の配列リストとともに提出中である。配列リストは、2016年11月22日に作成したUCSD097-001WO_SEQLIST.TXTという名称のファイルとして提供される。そのサイズは105 kbである。電子形式の配列リストに含まれる情報は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0004】
本出願は、遺伝子操作に関するものであり、さまざまな実施態様において、RNAに結合するように操作したCas9ポリペプチドを提供する。
【背景技術】
【0005】
RNAを追跡するための現在の方法、RNAの量を求めるための現在の方法、RNAの量または構造を変化させる現在の方法にはさまざまな欠点がある。そうした欠点を補う改善された方法と組成物が、本明細書で提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いくつかの実施態様が、以下の番号の請求項に記載されている。
1.(a)Cas9ポリペプチドと、
(b)組み換えまたは合成によるシングルガイドRNA(sgRNA)
を含む操作された核タンパク質複合体であって、
そのsgRNAは、
(1)5'末端に、ハイブリダイゼーションによって(ハイブリダイズまたは結合して)標的RNAを認識するRNA配列を含むとともに、
(2)3'末端に、(i)前記Cas9ポリペプチドと結合または会合することのできるRNA配列(Cas9ポリペプチド結合「足場配列」)、または(ii)このsgRNA の前記5' RNAハイブリダイズ末端または5' RNA結合末端を前記Cas9ポリペプチドに結合または共有結合または非共有結合させるリンカーを含むように操作されるか設計されていて、
場合によっては、この核タンパク質複合体はPAMmerオリゴヌクレオチドを含んでおらず、
場合によっては、前記Cas9ポリペプチドは、
(1)古細菌または細菌のCas9ポリペプチドであるか、古細菌または細菌のCas9ポリペプチドに由来する、または
(2)対応する野生型(WT)Cas9ポリペプチドの1つのドメイン、または1つのドメインの一部を欠いていて、場合によってはそのドメインは、Cas9のHNHおよび/またはRuvCヌクレアーゼドメインであるか、Cas9ポリペプチド活性部位を含むββα-メタルフォールドを含むか、これらの組み合わせである、または
(3)DNアーゼの(すなわちDNAを開裂させる)能力または活性、またはニッカーゼ活性、またはこれらの組み合わせを欠いていて、場合によってはそのDNアーゼの(すなわちDNAを開裂させる)能力または活性が、Cas9のHNHおよび/またはRuvCヌクレアーゼドメイン、またはCas9ポリペプチドDNアーゼ活性部位、またはCas9ポリペプチド活性部位を含むββα-メタルフォールド、またはこれらの組み合わせのすべてまたは一部の改変(変異)または除去によって除去されている、または
(4)Cas9のHNHおよび/またはRuvCヌクレアーゼドメイン、またはCas9ポリペプチドDNアーゼ活性部位、またはCas9ポリペプチド活性部位を含むββα-メタルフォールド、またはこれらの組み合わせのすべてまたは一部を欠いていることで、場合によっては前記ポリペプチドのサイズが小さくなり、Cas9をコードするヌクレオチドをウイルスベクターや他の送達ベクターの中にパッケージすることが容易になっている、または
(5)WT Cas9ポリペプチドのバリアントであり、1つ以上のアミノ酸変異を有する結果として、DNアーゼ活性またはヌクレアーゼ活性が対応するWT Cas9ポリペプチドと比べて低下している、のいずれかであり、
あるいは場合によっては、古細菌または細菌の前記Cas9ポリペプチドは、以下のもの: Haloferax mediteranii、Mycobacterium tuberculosis、Francisella tularensis subsp. novicida、Pasteurella multocida、Neisseria meningitidis、Campylobacter jejune、Streptococcus thermophilus LMD-9 CRISPR 3、Campylobacter lari CF89-12、Mycoplasma gallisepticum str. F、Nitratifractor salsuginis str DSM 16511、Parvibaculum lavamentivorans、Roseburia intestinalis、Neisseria cinerea、Gluconacetobacter diazotrophicus、Azospirillum B510、Sphaerochaeta globus str. Buddy、Flavobacterium columnare、Fluviicola taffensis、Bacteroides coprophilus、Mycoplasma mobile、Lactobacillus farciminis、Streptococcus pasteurianus、Lactobacillus johnsonii、Staphylococcus pseudintermedius、Filifactor alocis、Treponema denticola、Legionella pneumophila str. Paris、Sutterella wadsworthensis、Corynebacter diphtheriae、Streptococcus aureusのいずれかであるか;RNAを標的とするように改変されるか目的変更されたFrancisella novicida(場合によってはFrancisella novicida Cpfl)または Natronobacterium gregoryi Argonauteであるか、これらのいずれかを含むか、これらのいずれかに由来し、場合によっては前記sgRNA 3'末端または「足場配列」は、これら細菌または古細菌それぞれの野生型(WT)コグネイトガイド核酸の全体または一部を含むか、その野生型(WT)コグネイトガイド核酸に由来する、操作された核タンパク質複合体。
2.前記sgRNA の前記5' RNAハイブリダイズ末端または5' RNA結合末端は、ヌクレオチド約15~25個、または20個、または21個、または22個の長さであり、前記Cas9ポリペプチドと結合または会合することのできる前記RNA配列が、ヌクレオチド約85~100個、または90個、または91個、または92個、または93個、または94個、または95個の長さであり、
場合によっては、前記Cas9ポリペプチドは、エフェクタポリペプチドおよび/またはターゲティング剤および/または酵素および/または検出可能な部分に会合する、または融合する、共有結合する、または非共有結合するようにされていて、場合によっては、そのエフェクタポリペプチドは、RNA改変ポリペプチドを含み、
場合によっては、前記Cas9ポリペプチドは組み換えまたは合成によるポリペプチドであり、
場合によっては、前記標的RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、シグナル認識粒子RNA(SRP RNA)、トランスファーRNA(tRNA)、小さな核RNA(snRNA)、小さな仁RNA(snoRNA)、アンチセンスRNA(aRNA)、長い非コード RNA(IncRNA)、マイクロRNA(miRNA)、piwi相互作用 RNA(piRNA)、小さな干渉RNA(siRNA)、短いヘアピンRNA(shRNA)、レトロトランスポゾンRNA、ウイルスゲノムRNA、ウイルス非コードRNAのいずれかである(または、ハイブリダイゼーションによって、またはハイブリダイズして、または結合して前記標的RNAを認識する前記RNA配列は、これらRNAに対してアンチセンスである)、請求項1に記載の操作された核タンパク質複合体。
3.前記Cas9ポリペプチドが、前記エフェクタポリペプチド、前記ターゲティング剤、前記検出可能な部分、前記RNA改変ポリペプチドのいずれかに非共結合する、請求項1または2に記載の操作された核タンパク質複合体。
4.前記Cas9ポリペプチドが、前記エフェクタポリペプチド、前記ターゲティング剤、前記検出可能な部分に融合するか共有結合していて、
場合によっては、前記エフェクタポリペプチドは、RNA改変ポリペプチドであるか、RNA改変ポリペプチドを含み、場合によっては、前記ターゲティング剤は、細胞質ポリアデニル化エレメント結合タンパク質(CPEB)、ジンクフィンガー結合タンパク質(ZBP)、TIA-1(3'UTR mRNA結合タンパク質)、PSF(スプライスソームの1つのタンパク質要素)、PSF のDNA結合ドメイン(DBD)、脆弱X精神遅滞タンパク質 (FMRP)、IGF-II mRNA結合タンパク質(IMP)-l(IMP1)、IMP2、IMP3、細胞骨格結合タンパク質、 膜貫通タンパク質、コンビナトリアル輸送現象を生じさせるためこれらタンパク質のドメインの組み合わせを含む操作されたタンパク質のいずれかであるか、これらタンパク質のいずれかを含み、
場合によっては、前記酵素がある化合物の合成の改変に関与していて、場合によっては、その化合物はポリペプチドまたは核酸であり、場合によっては、前記Cas9ポリペプチドが標的RNAに会合することで、生合成経路に中間生成物が局所的に蓄積されて、医学的または技術的に有用な化合物の産生が、自由に浮遊している生合成酵素と比べて増幅される、請求項1または2に記載の操作された核タンパク質複合体。
5.前記RNA改変ポリペプチドが、スプライシング因子またはRNAスプライシングドメインを、場合によってはRBFOX2ドメイン含有タンパク質(RNAのスプライシングに影響を与えることが知られているタンパク質)、RNA開裂ドメイン(エンドヌクレアーゼ)のいずれかを、場合によってはPINドメイン含有タンパク質として含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
6.前記Cas9ポリペプチドがリンカーによって前記シングルガイドRNA(sgRNA)に共有結合している、請求項1~5のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
7.前記シングルガイドRNA(sgRNA)が、前記3'末端足場配列に、二次RNA構造の延長部を有するか、二次RNA構造を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
8.前記シングルガイドRNA(sgRNA)が、転写終止配列または転写後にsgRNAを不安定にする配列の一部または全体をトランス作用ヌクレアーゼの作用を通じて除去することを通じてこのシングルガイドRNA の発現レベルを少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上向上させる1つ以上の点変異を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
9.前記シングルガイドRNA(sgRNA)が、そのシングルガイドRNAを分解に対して安定化させる変化、または5'末端の追加ヌクレオチドまたは追加化学的部分を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
10.前記シングルガイドRNA(sgRNA)の5'末端にある前記追加ヌクレオチドまたは追加化学的部分が、2'-O-メチル、ホスホロチオエート、チオホスホノアセテートという連結と塩基からなるグループから選択され、場合によっては、化学的安定化のための前記変化または前記追加化学的部分が、2'-F、ロックされた核酸(LNA)、2'-Oメトキシエチル、ロックされていない核酸(UNA)のいずれかである、請求項9に記載の操作された核タンパク質複合体。
11.前記シングルガイドRNAが、1つ以上のメチルホスホネート連結、またはチオホスホノアセテート連結、またはホスホロチオエート連結を含んでいて、場合によってはその連結が、そのsgRNA に対するRNAヌクレアーゼ活性を少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上低下させる、請求項1~10のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
12.前記シングルガイドRNA(sgRNA)が、RNAターゲティングを少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上向上させる変化、または5'末端の追加ヌクレオチドまたは追加化学的部分を含んでいる、請求項1~11のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
13.前記シングルガイドRNAが、標的の認識を少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上向上させるか、このシングルガイドRNAに対するヌクレアーゼ活性を少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上低下させるため、このsgRNA のスペーサまたは足場領域に、2'-フッ素塩基修飾、および/または2'-O-メチル塩基修飾、および/または2'-メトキシエチル塩基修飾を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
14.前記シングルガイドRNAが、前記標的RNAに対してアンチセンスであって、生理学的条件下でその標的RNAの少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上、または約5%~20%とハイブリダイズすることを可能にするのに十分な配列を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
15.前記シングルガイドRNAが、前記標的RNAの少なくとも一部とアンチセンスまたは相補的である配列を含んでいて、その部分が、場合によってはその標的RNAの少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上、またはその標的RNAの約5%~20%以上である、請求項1~14のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
16.CRISPRを標的とするRNA(crRNA)とトランス活性化型cRNA(tracrRNA)をさらに含んでいて、前記Cas9ポリペプチドが、CRISPRを標的とするそのRNA(crRNA)とそのトランス活性化型cRNA(tracrRNA)の組み合わせと複合体になるか、連結するか、共有結合または非共有結合する、請求項1~15のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
17.前記RNA改変ポリペプチドがさらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドと複合体になるか、共有結合または非共有結合する、請求項1~16のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
18.前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの改変されたヌクレオチドを含む、請求項17に記載の操作された核タンパク質複合体。
19.前記少なくとも1つの改変されたヌクレオチドが、2'OMe RNAヌクレオチドと 2'OMe DNAヌクレオチドからなるグループから選択される、請求項18に記載の操作された核タンパク質複合体。
20.前記核タンパク質複合体がさらにPAMmerオリゴヌクレオチドを含み、場合によっては、そのPAMmerが、前記sgRNA によって与えられる標的特異性を維持するのに必要な5'オーバーハングも有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
21.PAMmerオリゴヌクレオチドが、1つ以上の改変された塩基または連結を含む、請求項20に記載の操作された核タンパク質複合体。
22.前記1つ以上の改変された塩基または連結が、ロックされた核酸と、ヌクレアーゼに対して安定化された連結からなるグループから選択される、請求項21に記載の操作された核タンパク質複合体。
23.細胞の核に送達されるように改造されている、請求項1~22のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
24.標的RNAとともに前記核の外に輸送されるように改造されている、請求項23に記載の操作された核タンパク質複合体。
25.前記Cas9ポリペプチドが、核局在化シグナル、1つ以上のリンカーペプチド、XTENペプチド、場合によってはSV40核局在化シグナルのいずれかを含むか、そのいずれかをさらに含むか、場合によってはそのいずれかに融合するか連結されている、請求項23または24に記載の操作された核タンパク質複合体。
26.前記Cas9ポリペプチドがヌクレアーゼ-ヌルである、請求項1~25のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
27.前記標的RNAが反復配列を含み、ハイブリダイゼーションによって(ハイブリダイズまたは結合して)その標的RNAを認識する前記5'末端RNA配列が、その反復配列にハイブリダイズできる配列、またはその反復配列と相補的な配列を含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
28.前記反復配列が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループから選択される、請求項27に記載の操作された核タンパク質複合体。
29.前記標的RNAが、疾患または病気または感染症と関連していて、場合によってはその疾患または病気が、RNAマイクロサテライト反復伸長によって起こるか、RNAマイクロサテライト反復伸長と関連している、請求項27または28に記載の操作された核タンパク質複合体。
30.前記疾患または病気または感染症の選択が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脆弱X関連振戦/失調症候群、球脊髄性筋萎縮症、眼咽頭型筋ジストロフィー、脆弱X症候群、ウイルス感染症、細菌感染症からなるグループからなされ、場合によっては、前記ウイルス感染症が、ヘルペスウイルス科または単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎)、ジカウイルス、エンテロウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、ムンプスウイルス、サイトメガロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、パラミクソウイルス科または麻疹ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルスの感染症である、請求項29に記載の操作された核タンパク質複合体。
31.前記Cas9ポリペプチドがエフェクタポリペプチドと会合していて、そのペプチドが毒性タンパク質である、請求項1~30のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
32.前記Cas9ポリペプチドが、エフェクタポリペプチド、ターゲティング剤、酵素、検出可能な薬剤または部分のいずれかに融合、または結合、または会合していて、場合によっては、そのCas9ポリペプチドが組み換えまたは合成によるポリペプチドである、請求項1~31のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
33.前記検出可能な薬剤または部分が、前記Cas9ポリペプチドに融合または連結された検出可能なポリペプチドまたは組成物を含む、請求項32に記載の操作された核タンパク質複合体。
34.前記検出可能なポリペプチドが、その検出可能なポリペプチドが細胞の核の中にあるときに不活性化されているポリペプチドを含む、請求項33に記載の操作された核タンパク質複合体。
35.前記検出可能なポリペプチドが、その検出可能なポリペプチドが細胞の核の中にあるときに検出可能でなく、その検出可能なポリペプチドが細胞の核の中にないときに検出可能である、請求項34に記載の操作された核タンパク質複合体。
36.前記検出可能なポリペプチドが、細胞の核の中にないとき、検出可能な別の薬剤との会合を通じて検出可能である、請求項35に記載の操作された核タンパク質複合体。
37.前記検出可能なポリペプチドが、蛍光ポリペプチド、分割された蛍光ポリペプチド、発光ポリペプチドのいずれかであるか、前記検出可能な薬剤または部分が、蛍光剤、分割された蛍光剤、発光剤のいずれかを含む、請求項32~36のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
38.前記蛍光ポリペプチドが、緑色蛍光タンパク質(GFP)または強化型(enhanced)GFPを含むか、緑色蛍光タンパク質(GFP)または強化型GFPである、請求項37に記載の操作された核タンパク質複合体。
39.前記シングルガイドRNA(sgRNA)が、転写終止配列または転写後にsgRNAを不安定にする配列の一部または全体をトランス作用ヌクレアーゼの作用を通じて除去することを通じてこのシングルガイドRNA の発現レベルを少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上向上させる1つ以上の点変異を含む、請求項1~38のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
40.前記Cas9ポリペプチドが、CRISPRを標的とするRNA(crRNA)とトランス活性化型cRNA(tracrRNA)の組み合わせと複合体になる、請求項1~39のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
41.前記Cas9ポリペプチドがさらにアンチセンスオリゴヌクレオチドと複合体になり、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、前記標的RNA内の配列と相補的なPAMmerオリゴヌクレオチドを含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
42.前記PAMmerオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの改変されたヌクレオチドを含む、請求項41に記載の操作された核タンパク質複合体。
43.前記少なくとも1つの改変されたヌクレオチドが、2'OMe RNAヌクレオチドと 2'OMe DNAヌクレオチドからなるグループから選択される、請求項20に記載の操作された核タンパク質複合体。
44.前記Cas9ポリペプチドが細胞の核に送達されるように改造されている、請求項1~43のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体。
45.前記Cas9ポリペプチドが標的RNAとともに前記核の外に輸送されるように改造されている、請求項44に記載の操作された核タンパク質複合体。
46.請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をコードする1つまたは複数の核酸(場合によっては1つまたは複数のベクター)を含むベクターであって、場合によっては、そのベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、合成ベクターのいずれかであるか、そのベクターを含むか、そのベクターに由来する、ベクター。
47.(a)請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体;または
(b)請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をコードする1つまたは複数の核酸(場合によっては1つまたは複数のベクター)
を内部に含んでいるか、含んでいたことがある細胞であって、
場合によっては、その細胞が、哺乳動物細胞またはヒト細胞である、細胞。
48.請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をコードするキメラ核酸であって、場合によっては、その核酸が、組み換えまたは合成による核酸であり、場合によっては、その核酸が、構成的プロモータまたは誘導性プロモータに機能可能に連結されている、キメラ核酸。
49.前記Cas9ポリペプチド、前記sgRNA、前記PAMmerオリゴヌクレオチド、前記エフェクタポリペプチド、前記検出可能な部分のうちの1つ以上、またはこれらの組み合わせの発現が、調節可能なプロモータまたは構成的プロモータによって制御される、請求項48に記載の核酸。
50.請求項48または49に記載の核酸を含むベクターであって、場合によっては、そのベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、合成ベクターのいずれかであるか、またはそのベクターを含むか、そのベクターに由来する、ベクター。
51.請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体を含むか、請求項48または49に記載の核酸を含むか、請求項50に記載のベクターを含む細胞または組織。
52.哺乳動物対象またはヒト対象の疾患または病気または感染症の症状を治療する、または予防する、または改善する、または低減させる方法であって、その哺乳動物対象またはヒト対象に、
(a)前記Cas9ポリペプチドが、場合によってはRNA改変ポリペプチドを含むエフェクタポリペプチドに会合する、または結合する、または共有結合する、または非共有結合するように改造された、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体;または
(b)前記Cas9ポリペプチドが、場合によってはRNA改変ポリペプチドを含むエフェクタポリペプチドに会合する、または結合する、または共有結合する、または非共有結合するように改造された、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をコードしていて、細胞内で発現することによりその操作された核タンパク質複合体を発現させる1つまたは複数の核酸(場合によっては1つまたは複数のベクター);または
(c)(i)前記Cas9ポリペプチドが、場合によってはRNA改変ポリペプチドを含むエフェクタポリペプチドに会合する、または結合する、または共有結合する、または非共有結合するように改造された、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体;または
(ii)前記Cas9ポリペプチドが、場合によってはRNA改変ポリペプチドを含むエフェクタポリペプチドに会合する、または結合する、または共有結合する、または非共有結合するように改造された、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をコードする1つまたは複数の核酸(場合によっては1つまたは複数のベクター)と、
場合によっては賦形剤と
を含む医薬組成物(場合によっては、その医薬組成物は、経腸送達用または非経口送達用に製剤化されるか、静脈内(iv)送達用に製剤化される);または
(d)請求項51に記載の細胞または組織
を投与することを含んでいて、
その投与により細胞内のRNAを改変し、前記疾患または病気または感染症の症状を治療するか、予防するか、改善するか、低減させ、
場合によっては、前記操作された核タンパク質複合体、または前記Cas9ポリペプチドをコードする前記核酸またはベクターを、場合によっては細胞侵入部分または細胞侵入ポリペプチドを含むか発現することがさらに可能であるナノ粒子、または粒子、またはミセル、またはリポソームまたはリポプレックス、またはポリマーソーム、またはポリプレックス、またはデンドリマーに入れて運ぶか、その中に収容する、方法。
53.前記操作された核タンパク質複合体の1つまたはすべての構成要素をコードする前記1つまたは複数の核酸を、単一のベクターによって運ぶ、および/または単一のベクターの中に収容するか、または各構成要素(前記Cas9ポリペプチド、前記sgRNA、前記エフェクタポリペプチド、または構成要素の組み合わせ)を別々のベクターによって運び、および/または別々のベクターの中に収容し、
場合によっては、その1つまたは複数のベクターが、1つ以上のアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、合成ベクターのいずれかである、請求項52に記載の方法。
54.前記Cas9ポリペプチド、前記sgRNA、前記PAMmerオリゴヌクレオチド、前記エフェクタポリペプチドのうちの1つ以上、またはこれらの組み合わせの発現を、調節可能なプロモータまたは構成的プロモータによって制御する、請求項52または53に記載の方法。
55.前記シングルガイドRNA(sgRNA)をコードする核酸を、前記Cas9ポリペプチドをコードする核酸と同じベクター、場合によっては、アデノウイルスベクター、AAVベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、合成ベクターのいずれかによって運ぶか、そのベクターの中に収容する、請求項52~54のいずれか1項に記載の方法。
56.前記sgRNAをコードする核酸と前記Cas9ポリペプチドをコードする核酸を、異なるベクター、場合によっては、アデノウイルスベクター、AAVベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、合成ベクターのいずれかによって運ぶか、そのベクターの中に収容する、請求項52~55のいずれか1項に記載の方法。
57.前記エフェクタポリペプチド(場合によってはRNA改変ポリペプチド)をコードする核酸を、同じベクター(場合によっては、AAVベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、合成ベクターのいずれか)によって運ぶか、別々のベクターによって運ぶか、別々のベクターの中に収容する、請求項52~56のいずれか1項に記載の方法。
58.前記疾患または病気が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループから選択された反復配列によって起こる、請求項52~57のいずれか1項に記載の方法。
59.前記疾患または病気または感染症が、RNAマイクロサテライト反復伸長によって起こるか、RNAマイクロサテライト反復伸長に関連していて、その疾患または病気または感染症の選択が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脆弱X関連振戦/失調症候群、球脊髄性筋萎縮症、眼咽頭型筋ジストロフィー、脆弱X症候群、ウイルス感染症、細菌感染症からなるグループからなされ、場合によっては、前記ウイルス感染症が、ヘルペスウイルス科または単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎)、ジカウイルス、エンテロウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、ムンプスウイルス、サイトメガロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、パラミクソウイルス科、麻疹ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルスの感染症である、請求項52~58のいずれか1項に記載の方法。
60.投与経路の選択が、経口、肺、腹腔内(ip)、静脈内(iv)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、口腔内、鼻腔内、舌下、眼内、直腸、膣からなるグループからなされる、請求項52~59のいずれか1項に記載の方法。
61.請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体を発現させる方法であって、請求項46または50のベクター、または請求項48または49の核酸を、細胞の中に、その細胞が前記核タンパク質複合体を発現する条件下で導入することを含む方法。
62.細胞内の標的RNAを追跡する方法、または標的RNAの量を測定する方法であって、前記Cas9ポリペプチドが、検出可能な部分に会合する、または結合する、または共有結合する、または非共有結合するように改造された、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体を細胞に投与して、その操作された核タンパク質複合体がその細胞内の標的RNAに結合することを可能にし、その細胞内のその標的RNAの位置を明らかにすること、またはその細胞内のその標的RNAの量を測定することを含む方法。
63.前記操作された核タンパク質複合体が、前記細胞の核内で前記標的RNAに結合し、その後、その核からその標的RNAとともに外に輸送される、請求項61に記載の方法。
64.蛍光顕微鏡法またはそれと同等な方法を用い、前記細胞内の前記標的RNAの位置、または前記細胞内の前記標的RNAの量を求める、請求項63または64に記載の方法。
65.インビトロで、または生体内で細胞内の標的RNAの量または構造を改変する方法であって、前記Cas9ポリペプチドが、場合によってはRNA改変ポリペプチドを含むエフェクタポリペプチドに会合する、または結合する、または共有結合する、または非共有結合するように改造された、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体が、その細胞内のその標的RNAの量または構造が改変される条件下で、その細胞内でその標的RNAに結合することを可能にすることを含む方法。
66.インビトロで、または生体内で細胞内の標的RNAの量または構造を改変する方法であって、前記Cas9ポリペプチドが、場合によってはRNA改変ポリペプチドを含むエフェクタポリペプチドに会合する、または結合する、または共有結合する、または非共有結合するように改造された、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体の1つ以上の構成要素を、細胞内で、その細胞内のその標的RNAの量または構造が改変される条件下にて発現させることを含んでいて、前記操作された核タンパク質複合体の前記1つ以上の構成要素が、Cas9ポリペプチド、sgRNA、PAMmerオリゴヌクレオチド、エフェクタタンパク質、検出可能な部分のいずれか、またはこれらの組み合わせを含む方法。
67.サンプル中のRNAの含量またはダイナミクスを測定する方法であって、前記Cas9ポリペプチドが、検出可能な部分に会合する、または結合する、または共有結合する、または非共有結合するように改造された、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をサンプルに導入し;
そのサンプル中のその検出可能な部分の量を観察する、または検出する、または測定することを含む方法。
68.請求項48または49の核酸、または請求項46または50のベクターを、前記Cas9ポリペプチドが発現する条件下で前記サンプルに導入することを含む、請求項67に記載の方法。
69.シングルガイドRNAを導入することをさらに含む、請求項67または68に記載の方法。
70.PAMmerオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む、請求項67~69のいずれか1項に記載の方法。
71.前記サンプルが、組織サンプル、生検サンプル、血清サンプル、血液サンプル、痰サンプルのいずれかを含むか、そのサンプルに由来する、請求項67~70のいずれか1項に記載の方法。
72.前記サンプルが複数の細胞を含む、請求項67~71のいずれか1項に記載の方法。
73.前記サンプル中の標的RNAの発現レベルまたは含量を測定することを含む、請求項67~72のいずれか1項に記載の方法。
74.前記サンプルの疾患または病気または感染症、またはそのサンプルの出所となる個人の疾患または病気または感染症を、そのサンプル中の前記標的RNAの発現レベルまたは含量に基づいて診断することを含んでいて、
場合によっては、その標的RNAがウイルス感染症または細菌感染症に由来し、場合によっては、そのウイルス感染症が、ヘルペスウイルス科または単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎)、ジカウイルス、エンテロウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、ムンプスウイルス、サイトメガロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、パラミクソウイルス科、麻疹ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルスの感染症である、請求項67~73のいずれか1項に記載の方法。
75.前記標的RNAが反復配列を含む、請求項67~74のいずれか1項に記載の方法。
76.前記反復配列が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループから選択される、請求項75に記載の方法。
77.前記反復配列が、疾患または病気または感染症に関連している、請求項75または76に記載の方法。
78.前記疾患または病気が、RNAマイクロサテライト反復伸長によって起こるか、RNAマイクロサテライト反復伸長と関連していて、その疾患または病気の選択が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脆弱X関連振戦/失調症候群、球脊髄性筋萎縮症、眼咽頭型筋ジストロフィー、脆弱X症候群からなるグループからなされる、請求項77に記載の方法。
79.サンプル中の標的RNAを改変する方法であって、
前記Cas9ポリペプチドが、場合によってはRNA改変ポリペプチドを含むエフェクタポリペプチドに会合する、または結合する、または共有結合する、または非共有結合するように改造された、請求項1~44のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をサンプルに導入し;
前記RNA改変ポリペプチドを用いてそのサンプル中の標的RNAを改変することを含む方法。
80.請求項45または49の核酸、または請求項50のベクターを、前記Cas9ポリペプチドが発現する条件下で前記サンプルに導入することを含む、請求項79に記載の方法。
81.シングルガイドRNAを導入することをさらに含む、請求項79または80に記載の方法。
82.PAMmerオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む、請求項79~81のいずれか1項に記載の方法。
83.前記サンプルが組織を含む、請求項79~82のいずれか1項に記載の方法。
84.前記サンプルが複数の細胞を含む、請求項79~83のいずれか1項に記載の方法。
85.前記サンプル中の標的RNAの量を改変することを含む、請求項79~84のいずれか1項に記載の方法。
86.前記標的RNAが反復配列を含む、請求項85に記載の方法。
87.前記反復配列が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループから選択される、請求項86に記載の方法。
88.前記反復配列が疾患に関連している、請求項86または87に記載の方法。
89.前記疾患が、RNAマイクロサテライト反復伸長によって起こるか、RNAマイクロサテライト反復伸長と関連していて、その疾患または病気の選択が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脆弱X関連振戦/失調症候群、球脊髄性筋萎縮症、眼咽頭型筋ジストロフィー、脆弱X症候群からなるグループからなされる、請求項88に記載の方法。
90.(a)前記Cas9ポリペプチドが、場合によってはRNA改変ポリペプチドを含むエフェクタポリペプチドに会合する、または結合する、または共有結合する、または非共有結合するように改造された、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体;または
(b)前記Cas9ポリペプチドが、場合によってはRNA改変ポリペプチドを含むエフェクタポリペプチドに会合する、または結合する、または共有結合する、または非共有結合するように改造された、請求項1~45のいずれか1項に記載の操作された核タンパク質複合体をコードする1つまたは複数の核酸(場合によっては1つまたは複数のベクター)と、
場合によっては賦形剤を含む医薬組成物であって、
場合によっては、その医薬組成物が、経腸送達用または非経口送達用に製剤化されるか、静脈内(iv)送達用に製剤化される、医薬組成物。
91.前記操作された核タンパク質複合体、またはその核タンパク質複合体をコードする核酸またはベクターが、ナノ粒子、粒子、ミセル、リポソームまたはリポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックス、デンドリマーのいずれかの中に入れて運ばれ、それらはさらに、細胞侵入部分または細胞侵入ペプチドをさらに含むことができる、請求項90に記載の医薬組成物。
92.前記ナノ粒子または粒子が、脂質、ポリマー、ヒドロゲルのいずれか、またはこれらの組み合わせを含む、請求項91に記載の医薬組成物。
93.前記sgRNAが、前記Cas9ポリペプチドと同じベクターに収容されるか、前記Cas9ポリペプチドとは異なるベクターに収容される、請求項90~92のいずれか1項に記載の医薬組成物。
94.前記Cas9ポリペプチドをコードする核酸と、前記sgRNAをコードする核酸が、1つ以上のベクター、場合によってはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、合成ベクターいずれかの中に入れて運ばれる、請求項90~93のいずれか1項に記載の医薬組成物。
95.組み換えまたは合成によるCas9ポリペプチドであって、
そのCas9ポリペプチドは、
(a)古細菌または細菌のCas9ポリペプチドであるか、古細菌または細菌のCas9ポリペプチドに由来し;
(b)(i)対応する野生型(WT)Cas9ポリペプチドの1つのドメイン、または1つのドメインの一部を欠いていて、場合によってはそのドメインは、Cas9のHNHおよび/またはRuvCヌクレアーゼドメインであるか、Cas9ポリペプチド活性部位を含むββα-メタルフォールドを含むか、これらの組み合わせである、または
(ii)DNアーゼの(すなわちDNAを開裂させる)能力または活性、またはニッカーゼ活性、またはこれらの組み合わせを欠いていて、場合によってはそのDNアーゼの(すなわちDNAを開裂させる)能力または活性が、Cas9のHNHおよび/またはRuvCヌクレアーゼドメイン、またはCas9ポリペプチドDNアーゼ活性部位、またはCas9ポリペプチド活性部位を含むββα-メタルフォールド、またはこれらの組み合わせのすべてまたは一部の改変(変異)または除去によって除去されている、または
(iii)Cas9のHNHおよび/またはRuvCヌクレアーゼドメイン、またはCas9ポリペプチドDNアーゼ活性部位、またはCas9ポリペプチド活性部位を含むββα-メタルフォールド、またはこれらの組み合わせのすべてまたは一部を欠いていることで、場合によってはポリペプチドのサイズが小さくなり、Cas9をコードするヌクレオチドをウイルスや他の送達ベクターの中にパッケージすることが容易になっている、または
(iv)WT Cas9ポリペプチドのバリアントであり、1つ以上のアミノ酸変異を有する結果として、DNアーゼ活性またはヌクレアーゼ活性が対応するWT Cas9ポリペプチドと比べて低下している、のいずれかであり、
場合によっては、古細菌または細菌のCas9ポリペプチドは、以下のもの: Haloferax mediteranii、Mycobacterium tuberculosis、Francisella tularensis subsp. novicida、Pasteurella multocida、Neisseria meningitidis、Campylobacter jejune、Streptococcus thermophilus LMD-9 CRISPR 3、Campylobacter lari CF89-12、Mycoplasma gallisepticum str. F、Nitratifractor salsuginis str DSM 16511、Parvibaculum lavamentivorans、Roseburia intestinalis、Neisseria cinerea、Gluconacetobacter diazotrophicus、Azospirillum B510、Sphaerochaeta globus str. Buddy、Flavobacterium columnare、Fluviicola taffensis、Bacteroides coprophilus、Mycoplasma mobile、Lactobacillus farciminis、Streptococcus pasteurianus、Lactobacillus johnsonii、Staphylococcus pseudintermedius、Filifactor alocis、Treponema denticola、Legionella pneumophila str. Paris、Sutterella wadsworthensis、Corynebacter diphtheriae、Streptococcus aureusのいずれかであるか;RNAを標的とするように改変されるか目的変更されたFrancisella novicida(場合によってはFrancisella novicida Cpfl)または Natronobacterium gregoryi Argonauteであるか、これらのいずれかを含むか、これらのいずれかに由来し、
場合によっては、前記Cas9ポリペプチドはsgRNAをさらに含み、場合によってはそのsgRNAは、そのCas9ポリペプチドの出所となる野生型(WT)の細菌または古細菌の野生型(WT)コグネイトガイド核酸の全体または一部を含むか、その野生型(WT)コグネイトガイド核酸に由来するCas9ポリペプチドに結合または会合することのできる「足場配列」を含み、
場合によっては、前記sgRNAはその5'末端に、ハイブリダイゼーション(ハイブリダイズすること、または結合すること)によって標的RNA を認識するRNA配列をさらに含み、
場合によっては、前記Cas9ポリペプチドは、エフェクタポリペプチドおよび/またはターゲティング剤および/または酵素および/または検出可能な部分に会合する、または融合する、共有結合する、または非共有結合するように改造されていて、場合によっては、そのエフェクタポリペプチドがRNA改変ポリペプチドを含む、組み換えまたは合成によるCas9ポリペプチド。
96.請求項95に記載のCas9ポリペプチドをコードする組み換えまたは合成による核酸であって、場合によってはその核酸が、請求項95に記載のCas9ポリペプチドをコードするキメラ核酸とsgRNAである、組み換えまたは合成による核酸。
97.請求項98の核酸を内部に含んでいるか含んでいたことがあるベクターであって、場合によってはそのベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクター、合成ベクターのいずれかであるか、そのベクターを含むか、そのベクターに由来する、ベクター。
98.請求項95に記載のCas9ポリペプチドまたは請求項96に記載の核酸を内部に含んでいるか含んでいたことがある、細胞または組織。
99.標的RNAを認識するように操作されているとともに、RNA改変ポリペプチドと会合するように改造されているCas9ポリペプチド。
100.前記RNA改変ポリペプチドと非共有結合するように改造されている、請求項99に記載のCas9ポリペプチド。
101.前記RNA改変ポリペプチドに融合されている、請求項100に記載のCas9ポリペプチド。
102.前記RNA改変ポリペプチドがスプライシング因子である、請求項99~101のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
103.シングルガイドRNAとの複合体にされている、請求項99~102のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
104.前記シングルガイドRNAが、シングルガイドRNA足場配列の中に二次構造の延長部を有する、請求項103に記載のCas9ポリペプチド。
105.前記シングルガイドRNAが、転写終止配列または転写後にsgRNAを不安定にする配列の一部または全体をトランス作用ヌクレアーゼの作用を通じて除去することを通じてこのシングルガイドRNA の発現レベルを向上させる1つ以上の点変異を含む、請求項103または104に記載のCas9ポリペプチド。
106.前記シングルガイドRNAが、5'末端に、そのシングルガイドRNAを分解に対して安定化させる変化を含む、請求項103~105のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
107.前記シングルガイドRNAが、5'末端に、RNAターゲティングを改善する変化を含む、請求項103~106のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
108.前記シングルガイドRNAの5'末端にある前記変化が、2'-O-メチル、ホスホロチオエート、チオホスホノアセテートという連結と塩基からなるグループから選択される、請求項107に記載のCas9ポリペプチド。
109.前記シングルガイドRNAが、標的の認識を改善するため、またはこのシングルガイドRNAに対するヌクレアーゼ活性を低下させるため、このsgRNA のスペーサまたは足場領域に、2'-フッ素塩基修飾、および/または2'-O-メチル塩基修飾、および/または2'-メトキシエチル塩基修飾を含む、請求項103~108のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
110.前記シングルガイドRNAが、標的RNAに対するヌクレアーゼ活性を低下させる1つ以上のメチルホスホネート連結、またはチオホスホノアセテート連結、またはホスホロチオエート連結を含む、請求項103~109のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
111.前記シングルガイドRNAが、前記標的RNAの少なくとも一部にハイブリダイズする、請求項103~110のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
112.前記シングルガイドRNAが、前記標的RNAの少なくとも一部と相補的な配列を含む、請求項103~111のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
113.クラスター化されて規則的な間隔で配置された短い回文反復(CRISPR)を標的とするRNA(crRNA)とトランス活性化型cRNA(tracrRNA)の組み合わせと複合体になる、請求項103~112のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
114.前記RNA改変ポリペプチドがさらにアンチセンスオリゴヌクレオチドと複合体になる、請求項103~113のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
115.前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの改変されたヌクレオチドを含む、請求項114に記載のCas9ポリペプチド。
116.前記少なくとも1つの改変されたヌクレオチドが、2'OMe RNAヌクレオチドと 2'OMe DNAヌクレオチドからなるグループから選択される、請求項115に記載のCas9ポリペプチド。
117.前記アンチセンスオリゴヌクレオチドがPAMmerオリゴヌクレオチドを含む、請求項114~116のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
118.前記PAMmerオリゴヌクレオチドが、1つ以上の改変された塩基または連結を含む、請求項117に記載のCas9ポリペプチド。
119.前記1つ以上の改変された塩基または連結が、ロックされた核酸と、ヌクレアーに対して安定化された連結からなるグループから選択される、請求項118に記載のCas9ポリペプチド。
120.細胞の核に送達されるように改造されている、請求項119に記載のCas9ポリペプチド。
121.標的RNAとともに前記核から外に輸送されるように改造されている、請求項120に記載のCas9ポリペプチド。
122.核局在化シグナルを含む、請求項120または121に記載のCas9ポリペプチド。
123.ヌクレアーゼ-ヌルである、請求項99~122のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
124.前記標的RNAが反復配列を含む、請求項103~123のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
125.前記反復配列の選択が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループからなされる、請求項124に記載のCas9ポリペプチド。
126.前記標的RNAが疾患と関連している、請求項124または125に記載のCas9ポリペプチド。
127.前記疾患の選択が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群からなるグループからなされる、請求項126に記載のCas9ポリペプチド。
128.ヒト対象の疾患を治療または改善する方法であって、請求項99~127のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチドをコードする核酸をそのヒト対象に投与することを含む方法。
129.前記Cas9ポリペプチドをコードする核酸をアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによって運ぶ、請求項128に記載の方法。
130.前記sgRNAをコードする核酸を投与することをさらに含む、請求項128または129に記載の方法。
131.前記sgRNAをコードする核酸を前記AAVベクターによって運ぶ、請求項130に記載の方法。
132.前記sgRNAをコードする核酸を第2のAAVベクターによって運ぶ、請求項131に記載の方法。
133.前記疾患が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループから選択された反復配列によって起こる、請求項128~132のいずれか1項に記載の方法。
134.前記疾患の選択が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群からなるグループからなされる、請求項128~133のいずれか1項に記載の方法。
135.投与経路の選択が、経口、肺、腹腔内(ip)、静脈内(iv)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、口腔内、鼻腔内、舌下、眼内、直腸、膣からなるグループからなされる、請求項128~134のいずれか1項に記載の方法。
136.請求項99~127のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチドをコードする核酸と、賦形剤を含む医薬組成物。
137.前記Cas9ポリペプチドをコードする核酸をナノ粒子に入れて運ぶ、請求項136に記載の医薬組成物。
138.前記ナノ粒子が、脂質、ポリマー、ハイドロゲルのいずれか、またはこれらの組み合わせを含む、請求項137に記載の医薬組成物。
139.前記sgRNAをコードする核酸をさらに含む、請求項136~138のいずれか1項に記載の医薬組成物。
140.前記Cas9ポリペプチドをコードする核酸、または前記sgRNAをコードする核酸を1つ以上のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによって運ぶ、請求項136~139のいずれか1項に記載の医薬組成物。
141.標的RNAを認識するように操作されているCas9ポリペプチドであって、そのCas9ポリペプチドが検出可能な薬剤と会合している、Cas9ポリペプチド。
142.請求項141に記載のCas9ポリペプチドにおいて、前記検出可能な薬剤が、このCas9ポリペプチドに融合された検出可能なポリペプチドである、Cas9ポリペプチド。
143.前記検出可能なポリペプチドが、この検出可能なポリペプチドが細胞の核の中にあるとき不活性化されているポリペプチドを含む、請求項142に記載のCas9ポリペプチド。
144.前記検出可能なポリペプチドが、細胞の核の中にあるときには検出可能でなく、細胞の核の中にないときに検出可能である、請求項143に記載のCas9ポリペプチド。
145.前記検出可能なポリペプチドが、細胞の核の中にないとき、検出可能な別の薬剤との会合を通じて検出可能である、請求項144に記載のCas9ポリペプチド。
146.前記検出可能なポリペプチドが蛍光ポリペプチドである、請求項141~145のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
147.前記蛍光ポリペプチドが強化型GFPを含む、請求項146に記載のCas9ポリペプチド。
148.シングルガイドRNAと複合体になる、請求項141~147のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
149.前記シングルガイドRNAが、シングルガイドRNA足場配列の中に二次構造の延長部を有する、請求項148または149に記載のCas9ポリペプチド。
150.前記シングルガイドRNAが、転写終止配列または転写後にsgRNAを不安定にする配列の一部または全体をトランス作用ヌクレアーゼの作用を通じて除去することを通じてこのシングルガイドRNA の発現レベルを少なくとも約5%、または10%、または15%、またはそれ以上向上させる1つ以上の点変異を含む、請求項148に記載のCas9ポリペプチド。
151.前記シングルガイドRNAが、5'末端に、このシングルガイドRNAを分解に対して安定化させる変化を含む、請求項148~150のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
152.前記シングルガイドRNAが、5'末端に、RNAターゲティングを改善する変化を含む、請求項148~151のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
153.前記シングルガイドRNAの5'末端にある前記変異が、2'-O-メチル、ホスホロチオエート、チオホスホノアセテートという連結と塩基からなるグループから選択される、請求項148~152のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
154.前記シングルガイドRNAが、標的の認識を改善するため、またはこのシングルガイドRNAに対するヌクレアーゼ活性を低下させるため、このsgRNA のスペーサまたは足場領域に、2'-フッ素塩基修飾、および/または2'-O-メチル塩基修飾、および/または2'-メトキシエチル塩基修飾を含む、請求項148~153のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
155.前記シングルガイドRNAが、前記標的RNAに対するヌクレアーゼ活性を低下させる1つ以上のメチルホスホネート連結、またはチオホスホノアセテート連結、またはホスホロチオエート連結を含む、請求項148~154のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
156.前記シングルガイドRNAが、前記標的RNAの少なくとも一部にハイブリダイズする、請求項148~155のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
157.前記シングルガイドRNAが、前記標的RNAの少なくとも一部と相補的な配列を含む、請求項148~156のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
158.前記シングルガイドRNAが、クラスター化されて規則的な間隔で配置された短い回文反復(CRISPR)を標的とするRNA(crRNA)とトランス活性化型cRNA(tracrRNA)の組み合わせと複合体になる、請求項148~157のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
159.前記シングルガイドRNAが、前記標的RNA中の配列と相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドとさらに複合体になる、請求項148~158のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
160.前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの改変されたヌクレオチドを含む、請求項159に記載のCas9ポリペプチド。
161.前記少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドが、2'OMe RNAヌクレオチドと 2'OMe DNAヌクレオチドからなるグループから選択される、請求項160に記載のCas9ポリペプチド。
162.前記アンチセンスオリゴヌクレオチドがPAMmerオリゴヌクレオチドを含む、請求項159~161のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
163.前記PAMmerオリゴヌクレオチドが、1つ以上の改変された塩基または連結を含む、請求項162に記載のCas9ポリペプチド。
164.前記1つ以上の改変された塩基または連結が、ロックされた核酸と、ヌクレアーゼに対して安定化された連結からなるグループから選択される、請求項163に記載のCas9ポリペプチド。
165.細胞の核に送達されるように改造されている、請求項141~164のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
166.標的RNAとともに前記核から外に輸送されるように改造されている、請求項165に記載のCas9ポリペプチド。
167.核局在化シグナルを含む、請求項165または166に記載のCas9ポリペプチド。
168.ヌクレアーゼ-ヌルである、請求項141~167のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
169.前記標的RNAが反復配列を含む、請求項141~168のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチド。
170.前記反復配列の選択が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループからなされる、請求項169に記載のCas9ポリペプチド。
171.前記標的RNAが疾患と関連している、請求項169または170に記載のCas9ポリペプチド。
172.前記疾患の選択が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群からなるグループからなされる、請求項171に記載のCas9ポリペプチド。
173.請求項141~172のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチドをコードする核酸。
174.請求項173に記載の核酸を含むベクター。
175.請求項173に記載の核酸または請求項174に記載のベクターを含む細胞。
176.請求項141~172のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチドを発現させる方法であって、請求項172に記載の核酸または請求項174に記載のベクターを、細胞の中に、その細胞がそのCas9ポリペプチドを発現する条件下で導入することを含む方法。
177.細胞内の標的RNAを追跡する方法、または標的RNAの量を測定する方法であって、請求項141~172のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチドがその細胞内でその標的RNAに結合できるようにし、その細胞内のその標的RNAの位置を求めるか、その細胞内のその標的RNAの量を求めることを含む方法。
178.Cas9ポリペプチドが前記細胞の核内で前記標的RNAに結合し、その後、その標的RNAとともにその核から外に輸送される、請求項177に記載の方法。
179.蛍光顕微鏡法またはそれと同等な方法を用い、前記細胞内の前記標的RNAの位置、または前記細胞内の前記標的RNAの量を求める、請求項177または178に記載の方法。
180.請求項99~127のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチドをコードする核酸。
181.請求項180に記載の核酸を含むベクター。
182.請求項180に記載の核酸または請求項181に記載のベクターを含む細胞。
183.請求項99~127のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチドを発現させる方法であって、請求項180に記載の核酸または請求項181に記載のベクターを、細胞内に、その細胞がそのCas9ポリペプチドを発現する条件下で導入することを含む方法。
184.細胞内の標的RNAの量または構造を改変する方法であって、請求項99~127のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチドをその細胞内でその標的RNAに、その細胞内のその標的RNAの量または構造が改変される条件下で結合することを可能にすることを含む方法。
185.サンプル中のRNAの含量またはダイナミクスを測定する方法であって、
請求項141~172のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチドをそのサンプルの中に導入し;
そのサンプル中の検出可能な薬剤を観察することを含む方法。
186.請求項131に記載の核酸または請求項132に記載のベクターを、前記Cas9ポリペプチドが発現する条件下で前記サンプルの中に導入することを含む、請求項185に記載の方法。
187.シングルガイドRNAを導入することをさらに含む、請求項87または88に記載の方法。
188.アンチセンスオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む、請求項87~89のいずれか1項に記載の方法。
189.前記サンプルが組織を含む、請求項87~90のいずれか1項に記載の方法。
190.前記サンプルが複数の細胞を含む、請求項87~91のいずれか1項に記載の方法。
191.前記サンプル中の標的RNAの含量を測定することを含む、請求項87~92のいずれか1項に記載の方法。
192.前記サンプル中の前記標的RNAの含量に基づいてそのサンプルの疾患の状態を診断することを含む、請求項93に記載の方法。
193.前記疾患の選択が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群からなるグループからなされる、請求項94に記載の方法。
194.サンプル中の標的RNAを改変する方法であって、
請求項99~127のいずれか1項に記載のCas9ポリペプチドをそのサンプルの中に導入し;
前記RNA改変ポリペプチドを用いてそのサンプル中のその標的RNAを改変することを含む方法。
195.請求項180に記載の核酸または請求項181に記載のベクターを、前記Cas9ポリペプチドが発現する条件下で前記サンプルの中に導入することを含む、請求項96に記載の方法。
196.シングルガイドRNAを導入することをさらに含む、請求項194または195に記載の方法。
197.アンチセンスオリゴヌクレオチドを導入することをさらに含む、請求項194~196のいずれか1項に記載の方法。
198.前記サンプルが組織を含む、請求項194~197のいずれか1項に記載の方法。
199.前記サンプルが複数の細胞を含む、請求項194~198のいずれか1項に記載の方法。
200.前記サンプル中の標的RNAを改変することを含む、請求項194~199のいずれか1項に記載の方法。
201.前記標的RNAが反復配列を含む、請求項200に記載の方法。
202.前記反復配列の選択が、CTG、CCTG、CAG、GGGGCCと、これらの任意の組み合わせからなるグループからなされる、請求項201に記載の方法。
203.前記反復配列が疾患に関連している、請求項201または202に記載の方法。
204.前記疾患の選択が、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群からなるグループからなされる、請求項203に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1。DNAまたはRNAに結合した、S. pyogenes Cas9とシングルガイドRNA(sgRNA)の複合体。A:Cas9:sgRNA複合体は、プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)と呼ばれるDNA NGGモチーフを必要とする可能性がある。DNAが結合する場合、PAMはDNA標的そのものによって供給される。Cas9がDNAを標的とする機構はいろいろな文献に記載されている(Sander JD、Joung JK「ゲノムを編集し、調節し、標的とするためのCRISPR-Cas系」Nat Biotechnol. 2014年;第32巻(4): 347~355ページ;Sternberg SH、Redding S、Jinek M、Greene EC、Doudna JA「RNA誘導型のCRISPR関連エンドヌクレアーゼCas9によるDNA の点検」Nature 2014年;第507巻(7490):62~67ページ;Wu X、Kriz AJ、Sharp PA「CRISPR-Cas9系の標的特異性」Quant Biol 2014年;第2巻(2):59~70ページ;Jiang F、Taylor DW、Chen JS、Kornfeld JE、Zhou K、Thompson AJ、Nogales E、Doudna JA 「DNA開裂を開始させるためのCRISPR-Cas9 R-ループ複合体の構造」Science 2016年;第351巻(6275):867~871ページ)。B:可能な実施態様では、RNAを標的とする Cas9(RCas9)は、PAM モチーフの供給をPAMmerと呼ばれる短いオリゴヌクレオチドに頼っている。ミスマッチがあるPAMmerを用いることにより、RNAに対するRCas9の特異性が、コード化DNAを回避しつつ実現される。PAMmerは、sgRNAによって与えられる標的特異性の維持に必要な5'オーバーハングも有する。その結果として、PAMmerの5'末端は、少なくとも部分的に標的RNAとハイブリダイズした状態から外れると考えられる。なぜなら、Cas9が関与してPAMmer:標的RNA二本鎖構造がほどかれることにより、sgRNAが標的RNAにハイブリダイズするときに回収されるエネルギーコストが与えられるからである。
【0008】
図2図2。RCas9の代表的応用分野のまとめ。A~Dは、本明細書に例示したRCas9系によってRNAの運命を操作することのできる手段を示している。A:ヌクレアーゼ活性型Cas9を用いると、siRNAで処理しにくいRNA標的を開裂させることができよう。B:逆に、標的RNAの分解を阻止する束縛因子によって遺伝子発現を増幅することができよう。C:可能な実施態様では、局所的翻訳や他の活動(例えばRNAヌクレアーゼ活性)のため、Cas9を輸送剤に融合させることによってRNAを細胞内のさまざまな作用部位へと強制すること、または向かわせることができよう。D:可能な実施態様では、スプライシング因子にCas9を融合させることによってプレmRNAのプロセシングを変化させ、異なるエキソンを強制的に選択させる。E:可能な実施態様では、RNAの運命を変化させるとともにRCas9を用い、分割された発光タンパク質または蛍光タンパク質によりRNAの量の時間変化を追跡する。分割された発光タンパク質または蛍光タンパク質は、RNA上でCas9タンパク質が隣りに結合することに導かれて完成形になる。F:可能な実施態様では、分割された蛍光タンパク質を用い、稀な細胞を、その細胞のRNA含量によって明らかにする。RNAの含量は、FACSによって単離した後に研究することで求める。G:可能な実施態様では、分割された毒性タンパク質を、またはプロドラッグを変換して活性型にするタンパク質を、Cas9への融合を通じてRNAに依存したやり方で完成形にする。
【0009】
図3-1】図3。RNAを標的とするCas9を用いたmRNAターゲティング。(A)可能な実施態様では、ヒト細胞におけるmRNAのRNAターゲティングでは、3つの構成要素を核に送達する必要がある。その3つの構成要素とは、SV40核局在化シグナルをタグとして付けたヌクレアーゼ不活性なCas9に、EGFPまたはmCherryがC末端に融合したもの(dCas9-EGFP)と、発現がU6ポリメラーゼIIIプロモータによって制御されるsgRNAと、ホスホジエステル骨格を持ち、DNA塩基と2'-O-メチルRNA塩基からなるPAMmerである。sgRNAとPAMmerは、コードDNAがPAM配列を持たない標的mRNAの隣接領域に対してアンチセンスである。核内でRCas9/mRNA複合体が形成された後、その複合体は細胞質へと輸送される。
図3-2】図3。RNAを標的とするCas9を用いたmRNAターゲティング。(B)RCas9系はHE 293T細胞に送達され、sgRNAとPAMmerは、GAPDHの3'UTRを標的とするか、ヒト細胞の中に存在するはずのないλバクテリオファージからの配列を標的とした(配列「N/A」を標的とする)。細胞核の輪郭を白い点線で示してある。(C)細胞質RCas9シグナルがある細胞の割合を記録した。(D)MS2アプタマーに隣接してRCas9のための標的部位を有するウミホタルルシフェラーゼmRNAを構成した。RCas9がmRNAに結合することのあらゆる翻訳効果を明らかにするため、PESTタンパク質分解シグナルをルシフェラーゼに付着させた。
図3-3】図3。RNAを標的とするCas9を用いたmRNAターゲティング。(E)ルシフェラーゼmRNAを標的とするRCas9系の一過性トランスフェクションの後にEGFPのRNA免疫沈降を実施し、非ターゲティングsgRNA+PAMmer、または単独のEGFPと比較した。同様の実験においてウミホタルルシフェラーゼのmRNAとタンパク質の量をターゲティング条件と非ターゲティング条件で比較したところ、ウミホタルルシフェラーゼのRNAの量(F)またはタンパク質の量(G)に有意な違いは明らかにならなかった。これは、MCP-EGFPの存在下でmRNAの量が増加することとは対照的である。スケール棒は10ミクロンを表わす。
【0010】
図4-1】図4。RCas9を用いたβ-アクチンmRNA局在化の追跡。(A)RCas9系の一例をU2OS細胞に送達し、その細胞でFISHを実施してβ-アクチンmRNAを探した。β-アクチンmRNAを標的とするsgRNA+PAMmerを有するRCas9を、λバクテリオファージからの配列に対してアンチセンスの非ターゲティングsgRNA+PAMmer(「-」sgRNAと「-」PAMmer)と比較した。右側の擬似カラー画像には核の輪郭を点線で示してある。
図4-2】図4。RCas9を用いたβ-アクチンmRNA局在化の追跡。(B)各条件において60~80個の細胞でシグナルが重複している細胞質の面積の割合の累積分布を用い、RCas9とFISHの共局在化をマンダーの重複係数の形にして画素ごとに分析した結果をまとめてある。右側に示した頻度ヒストグラムは、各条件での重複の程度を示している。PAMmerが存在していると、β-アクチンmRNAを標的とするsgRNAの存在下でRCas9とFISHの間の共局在化が有意により大きくなる(p=0.035。両側マン-ホイットニー検定)。スケール棒は20ミクロンを表わす。
【0011】
図5-1】図5。ストレス顆粒に輸送されるmRNAの追跡。(A)β-アクチンmRNAを標的とするRCas9系の一例を、mCherryに融合したG3BP1(ストレス顆粒に効率的に輸送されることが知られているタンパク質)を発現するHEK293細胞に送達した。亜ヒ酸ナトリウムを用いて細胞に酸化ストレスを与え、RCas9とG3BP1の局在化を測定した。(B)ストレス(200μMの亜ヒ酸ナトリウム)を受けた細胞内のRCas9とG3BP1のシグナル分布を測定し、RCas9凝集体を伴うG3BP1陽性ストレス顆粒の割合として記録した。誤差棒は、3つの生物学的レプリケートそれぞれに由来する30~40個の細胞(合計で90~120個の細胞)から計算した標準偏差であり、RCas9重複凝集体は、G3BP1重複凝集体がある周囲の細胞質シグナルよりも50%以上大きいRCas9シグナルの累積として定義した。
図5-2】図5。ストレス顆粒に輸送されるmRNAの追跡。(C)β-アクチンmRNAを標的とするRCas9が存在する細胞を用い、ストレス顆粒に輸送されるRNAの画像をリアルタイムで取得した。時刻ゼロの時点で細胞の画像を取得し、亜ヒ酸ナトリウムを適用した。60分後、細胞の画像を再度取得し、RCas9とG3BP1陽性ストレス顆粒を比較すると、β-アクチンmRNAを標的とするsgRNAとPAMmerの存在下でだけ、凝集体の密な相関が明らかになった。
図5-3】図5。ストレス顆粒に輸送されるmRNAの追跡。(D)同様の実験において、β-アクチンmRNAを標的とするRCas9のシグナルが時間経過とともにストレス顆粒に累積されていく様子を追跡した。8~11個のストレス顆粒をそれぞれの条件で8分ごとに32分間にわたって追跡した。細い線は個々の顆粒を表わし、太い線は各条件での平均シグナルを表わす(詳しい手続きに関しては「方法」の項を参照されたい)。誤差棒は標準誤差を表わし、スケール棒は5ミクロンを表わす。
【0012】
図6図6。GAPDHを標的とするsgRNA 種配列にミスマッチが存在するときのdCas9-GFPの核輸送の程度。GAPDHの3'UTRを標的とするsgRNA 種配列にミスマッチを0塩基、4塩基、8塩基、12塩基導入し、RCas9系とともにトランスフェクトした。細胞質シグナルの程度を共焦点顕微鏡法で評価した。細胞質シグナルを消すのに8塩基のミスマッチで十分であった。さらに、非ターゲティング対照は、完全なミスマッチである種配列(12塩基のミスマッチ)と識別できなかった。細胞核の輪郭を白い点線で示してある。スケール棒は10ミクロンを表わす。
【0013】
図7-1】図7。可能な実施態様(「置換1、置換2」)と、RNAを標的とするCas9(RCas9)の一例の利用。置換1と置換2は、いくつかの実施態様でどれが、RNAを標的とするCas9の一例を用いてRNAを測定し、操作するための最小構成要素になることができるかを記述している。このRCas9系は、Streptococcus pyogenes (化膿連鎖球菌)Cas9タンパク質と、シングルガイドRNAと、PAMmerとして知られる短いオリゴヌクレオチドで構成される(置換1)か、Streptococcus pyogenes Cas9タンパク質とシングルガイドRNAだけで構成される。それぞれの使用例(1~3)は、生きた細胞の文脈におけるRCas9系の技術的応用または生物医学的応用の別々の例を記述している。使用例1は、標的RNA(例えば反復含有RNA)の存在、局在、運動の追跡を記述しており、診断と研究での用途がある(この使用例の裏付けとなるデータを図7B図7Cに示してある)。反復含有RNAは、宿主に疾患(例えば筋ジストロフィー、家族性ALS、ハンチントン病や、他の多くの病気)を引き起こす。使用例2は、生きた細胞でRCas9を治療に応用する一例を記述しており、標的とされるRNAを破壊するCas9に融合されたエンドヌクレアーゼ(エフェクタ)タンパク質が使用されている。この一般的な原理を利用すると、神経変性疾患からがんまでという多彩な疾患を引き起こすRNAを開裂させることができる。筋ジストロフィーを引き起こす反復含有RNAを標的とする文脈でのこの用途の裏付けとなるデータを図7Dに示してある。RNAスプライシングの使用例3は、RCas9を用いたRNAのスプライシングの変化を記述している。機能を喪失するRNAスプライシングは多くの疾患(がんや脊髄性筋萎縮症(SMA)が含まれる)と結び付いている。この使用例には、スプライシングを変化させるエフェクタ(例えばスプライシング因子や、プレmRNAを標的としてRNAスプライシングを変化させる他のタンパク質)が関与する。この使用例の裏付けとなるデータは図7Eに示してある。
図7-2】図7。可能な実施態様(「置換1、置換2」)と、RNAを標的とするCas9(RCas9)の一例の利用。置換1と置換2は、いくつかの実施態様でどれが、RNAを標的とするCas9の一例を用いてRNAを測定し、操作するための最小構成要素になることができるかを記述している。このRCas9系は、Streptococcus pyogenes (化膿連鎖球菌)Cas9タンパク質と、シングルガイドRNAと、PAMmerとして知られる短いオリゴヌクレオチドで構成される(置換1)か、Streptococcus pyogenes Cas9タンパク質とシングルガイドRNAだけで構成される。それぞれの使用例(1~3)は、生きた細胞の文脈におけるRCas9系の技術的応用または生物医学的応用の別々の例を記述している。使用例1は、標的RNA(例えば反復含有RNA)の存在、局在、運動の追跡を記述しており、診断と研究での用途がある(この使用例の裏付けとなるデータを図7B図7Cに示してある)。反復含有RNAは、宿主に疾患(例えば筋ジストロフィー、家族性ALS、ハンチントン病や、他の多くの病気)を引き起こす。使用例2は、生きた細胞でRCas9を治療に応用する一例を記述しており、標的とされるRNAを破壊するCas9に融合されたエンドヌクレアーゼ(エフェクタ)タンパク質が使用されている。この一般的な原理を利用すると、神経変性疾患からがんまでという多彩な疾患を引き起こすRNAを開裂させることができる。筋ジストロフィーを引き起こす反復含有RNAを標的とする文脈でのこの用途の裏付けとなるデータを図7Dに示してある。RNAスプライシングの使用例3は、RCas9を用いたRNAのスプライシングの変化を記述している。機能を喪失するRNAスプライシングは多くの疾患(がんや脊髄性筋萎縮症(SMA)が含まれる)と結び付いている。この使用例には、スプライシングを変化させるエフェクタ(例えばスプライシング因子や、プレmRNAを標的としてRNAスプライシングを変化させる他のタンパク質)が関与する。この使用例の裏付けとなるデータは図7Eに示してある。
図7-3】図7。可能な実施態様(「置換1、置換2」)と、RNAを標的とするCas9(RCas9)の一例の利用。置換1と置換2は、いくつかの実施態様でどれが、RNAを標的とするCas9の一例を用いてRNAを測定し、操作するための最小構成要素になることができるかを記述している。このRCas9系は、Streptococcus pyogenes (化膿連鎖球菌)Cas9タンパク質と、シングルガイドRNAと、PAMmerとして知られる短いオリゴヌクレオチドで構成される(置換1)か、Streptococcus pyogenes Cas9タンパク質とシングルガイドRNAだけで構成される。それぞれの使用例(1~3)は、生きた細胞の文脈におけるRCas9系の技術的応用または生物医学的応用の別々の例を記述している。使用例1は、標的RNA(例えば反復含有RNA)の存在、局在、運動の追跡を記述しており、診断と研究での用途がある(この使用例の裏付けとなるデータを図7B図7Cに示してある)。反復含有RNAは、宿主に疾患(例えば筋ジストロフィー、家族性ALS、ハンチントン病や、他の多くの病気)を引き起こす。使用例2は、生きた細胞でRCas9を治療に応用する一例を記述しており、標的とされるRNAを破壊するCas9に融合されたエンドヌクレアーゼ(エフェクタ)タンパク質が使用されている。この一般的な原理を利用すると、神経変性疾患からがんまでという多彩な疾患を引き起こすRNAを開裂させることができる。筋ジストロフィーを引き起こす反復含有RNAを標的とする文脈でのこの用途の裏付けとなるデータを図7Dに示してある。RNAスプライシングの使用例3は、RCas9を用いたRNAのスプライシングの変化を記述している。機能を喪失するRNAスプライシングは多くの疾患(がんや脊髄性筋萎縮症(SMA)が含まれる)と結び付いている。この使用例には、スプライシングを変化させるエフェクタ(例えばスプライシング因子や、プレmRNAを標的としてRNAスプライシングを変化させる他のタンパク質)が関与する。この使用例の裏付けとなるデータは図7Eに示してある。
図7-4】図7。可能な実施態様(「置換1、置換2」)と、RNAを標的とするCas9(RCas9)の一例の利用。置換1と置換2は、いくつかの実施態様でどれが、RNAを標的とするCas9の一例を用いてRNAを測定し、操作するための最小構成要素になることができるかを記述している。このRCas9系は、Streptococcus pyogenes (化膿連鎖球菌)Cas9タンパク質と、シングルガイドRNAと、PAMmerとして知られる短いオリゴヌクレオチドで構成される(置換1)か、Streptococcus pyogenes Cas9タンパク質とシングルガイドRNAだけで構成される。それぞれの使用例(1~3)は、生きた細胞の文脈におけるRCas9系の技術的応用または生物医学的応用の別々の例を記述している。使用例1は、標的RNA(例えば反復含有RNA)の存在、局在、運動の追跡を記述しており、診断と研究での用途がある(この使用例の裏付けとなるデータを図7B図7Cに示してある)。反復含有RNAは、宿主に疾患(例えば筋ジストロフィー、家族性ALS、ハンチントン病や、他の多くの病気)を引き起こす。使用例2は、生きた細胞でRCas9を治療に応用する一例を記述しており、標的とされるRNAを破壊するCas9に融合されたエンドヌクレアーゼ(エフェクタ)タンパク質が使用されている。この一般的な原理を利用すると、神経変性疾患からがんまでという多彩な疾患を引き起こすRNAを開裂させることができる。筋ジストロフィーを引き起こす反復含有RNAを標的とする文脈でのこの用途の裏付けとなるデータを図7Dに示してある。RNAスプライシングの使用例3は、RCas9を用いたRNAのスプライシングの変化を記述している。機能を喪失するRNAスプライシングは多くの疾患(がんや脊髄性筋萎縮症(SMA)が含まれる)と結び付いている。この使用例には、スプライシングを変化させるエフェクタ(例えばスプライシング因子や、プレmRNAを標的としてRNAスプライシングを変化させる他のタンパク質)が関与する。この使用例の裏付けとなるデータは図7Eに示してある。
【0014】
図7-5】図7B。反復含有RNAの効率的な認識を示すデータ(使用例1)。Cas9を蛍光タンパク質に融合させることにより、置換1と置換2の両方がシグナル分布を生じさせ、CUG反復含有RNAの存在と位置が明らかになる。これら反復のRCas9測定を、CUG反復を追跡するための確立された手段(CUG RNA蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、「FISH」)と比較する。詳細な方法は後述する。
図7-6】図7C。反復含有RNAの効率的な認識を示すデータ(使用例1)。Cas9を蛍光タンパク質に融合させることにより、置換1と置換2の両方がシグナル分布を生じさせ、CUG反復含有RNAの存在と位置が明らかになる。これら反復のRCas9測定を、CUG反復を追跡するための確立された手段(CUG RNA蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、「FISH」)と比較する。詳細な方法は後述する。
【0015】
図7-7】図7D。RCas9系の一例を用いたRNAの開裂を示すデータ(使用例2)。ここでは、生きた細胞でRCas9系の置換1と置換2を用い、筋ジストロフィーを引き起こす(反復CUG RNA塩基からなる)RNAを標的とした。RNAを開裂させるRCas9系の置換2(使用例2)を応用すると、CUG反復含有RNAの量が大きく減少した(RCas9系なしの場合(最も左側の棒)と比べてRNAのレベルで約35%の低下)。棒グラフは、ノーザンドットプロット(下)の定量結果を示している。
図7-8】図7D。RCas9系の一例を用いたRNAの開裂を示すデータ(使用例2)。ここでは、生きた細胞でRCas9系の置換1と置換2を用い、筋ジストロフィーを引き起こす(反復CUG RNA塩基からなる)RNAを標的とした。RNAを開裂させるRCas9系の置換2(使用例2)を応用すると、CUG反復含有RNAの量が大きく減少した(RCas9系なしの場合(最も左側の棒)と比べてRNAのレベルで約35%の低下)。棒グラフは、ノーザンドットプロット(下)の定量結果を示している。
【0016】
図7-9】図7E。RCas9系の一例を用いたRNAスプライシングの変化を示すデータ(使用例3)。ここには、エキソン6~8を有するヒトSMN2ミニ遺伝子からなるプレmRNAのスプライシングが示されている。FOX2に融合したRCas9の標的をエキソン7の下流とすることにより、スプライシングが異なるエキソン7の含有が促進される。このエキソンの含有促進は、脊髄性筋萎縮症の治療に有効であることが知られている。棒グラフは、SMN2ミニ遺伝子に関するRT-PCRの定量結果である。このミニ遺伝子は、FOX2に融合したMS2コートタンパク質(MS2-FOX2)が強く結合するRCas9結合部位に隣接したMS2アプタマー部位を有する。これは、このエキソンがFOX2の結合によって調節されることを示す陽性対照として機能する。FOX2の代わりにGFPが関与する陰性対照(棒グラフの最も右端近くに表示)は、このエキソンの調節にFOX2が必要であることを示している。
【0017】
図7-10】図7F。RCas9系の一例を用いたRNAの開裂を示すデータ(使用例2)。筋ジストロフィー1型(DM1)の分子的特徴は、CTG反復RNA凝集体の中のMBNL1タンパク質との関連である(Ho他、2005年、J Cell Sci;Batra他、2014年、Mol Cell)。本明細書では、RCas9系の置換1が、MBNL1タンパク質の分布を、反復RNAの存在なしで観察される分布と再び同じにすることを示す(真ん中の行と最も下の行を比較されたい)。図7B図7Dは、RCas9がCTG反復RNAを開裂させうることを示している。このデータは、RCas9が関与してRNAが開裂すると、関連する分子表現型(MBNL1分布)が健康なパターンに戻ることを示している。
【0018】
図7-11】図7G。RCas9系の一例を用いたRNAの開裂を示すデータ(使用例2)。本明細書では、RCas9系の置換2を用い、C9orf72と結び付いたALSを引き起こすRNA(反復GGGGCC(配列ID番号19)RNA塩基からなる)を生きたヒト細胞内で標的とした。RNAを開裂させるRCas9系の置換2を適用する(使用例2)と、反復RNAの量が大きく低下したため、反復RNA をFISHで検出できなかった(最下行の画像)。
図8-1】図8A。完全長Cas9タンパク質と、短縮されたCas9タンパク質。RNAを標的とするCas9が、病因となるCTG反復延長RNAを破壊する能力を維持するような、Cas9タンパク質の短縮を説明するドメイン構造マップ。Cas9タンパク質のこの新規なバリアントは以前には決して示されたことがなく、完全長Cas9タンパク質や、本分野で以前に用いられてきた他のCas9タンパク質とは異なっている。それに加え、この短縮されたCas9(「ΔHNH」と呼ぶ)をアデノ随伴ウイルス(AAV)にパッケージして送達することで、RCas9系を治療に応用することが容易になる。AAVは、コードされた治療系(例えばRCas9)を送達するのにますます多く利用されるようになっている手段だが、送達されるDNAは約4.5 kbに制限される。Cas9のこの短縮バージョンにより、RCas9系全体を単一のAAVベクターにパッケージすることが容易になるため、RCas9を宿主の治療に応用することが容易になる。最上部に示した完全長Cas9ドメイン構造の下には、Cas9短縮バリアントである「Recのみ」と「ΔHNH」のドメイン構造が示されている。ΔHNH短縮バリアントは、完全長(FL)Cas9タンパク質から残基775~909が失われている。
【0019】
図8-2】図8B。完全長Cas9タンパク質を有するRCas9系を用いたCTG反復の分解を、短縮されたCas9タンパク質を有するRCas9系と比較して示すデータ。COSM6細胞に、RNAを標的とするCas9系(Cas9タンパク質または短縮バージョンが、CTG反復を標的とするシングルガイドRNA(sgRNA)または非ターゲティング(NT)sgRNAを有するPINエンドヌクレアーゼに融合されている)を、CTG反復をコードするプラスミドとともにトランスフェクトした。ノーザンブロットを通じ、さまざまな短縮バージョンのRCas9系の能力を、CTG反復RNAについて、ローディング対照としてのU6 snRNAと比較した。完全長Cas9と、PINドメインに融合したΔHNHの両方が、CTG反復RNAの開裂をサポートするが、その反復を標的とするsgRNAの存在下においてだけである。
【0020】
図8-3】図8C図8Bからのノーザンブロットシグナルの定量結果。完全長Cas9とΔHNH Cas9短縮体の両方が、CTG RNAの効果的な開裂をサポートする(95%超の喪失)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書で言及するあらゆる刊行物、特許、特許出願は、個々の刊行物、特許、特許出願を参照により具体的かつ個別に組み込むことが指示されているのと同じように、あらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み込まれている。例えばPCT/US14/53301は、あらゆる目的でその全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0022】
定義
【0023】
特に断わらない限り、本明細書で用いるあらゆる技術用語は、本開示が属する分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を持つ。本明細書と添付の請求項で用いる単数形「1つの」、「その」は、文脈からそうでないことが明らかにわかる場合を除き、複数形を含む。本明細書では、「または」への言及は、特に断わらない限り「および/または」を包含するものとする。
【0024】
本明細書では、「会合する」または「と会合する」は、2つ以上の部分(例えば化学基、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド)が互いに共有結合または非共有結合していることを意味する。例えばタンパク質は、ヌクレオチド、蛍光剤、別のタンパク質と会合させることができる。会合は、2つ以上のタンパク質またはペプチドが1つの融合タンパク質を形成することを意味することが可能である。会合として、物理的な会合が可能である。いくつかの場合には、2つ以上のタンパク質またはペプチドが、互いに「束縛される」または「付着した状態になる」または「連結される」。会合として、2つのタンパク質またはペプチドの間の共有結合が可能である。
【0025】
本明細書では、「ポリペプチド」に、タンパク質、タンパク質の断片、ペプチドが含まれ、それは、天然の供給源から単離されたものでも、組み換え技術によって作製されたものでも、化学的に合成されたものでもよい。ポリペプチドは、1回以上修飾すること(例えば翻訳後修飾(例えばグリコシル化など)や、他の修飾(PEG化など))ができる。ポリペプチドは、1個以上の非天然アミノ酸(例えば側鎖が修飾されたアミノ酸)を含有することができる。本明細書に記載したポリペプチドは、典型的には、少なくとも約10個のアミノ酸を含んでいる。
【0026】
本明細書では、「サンプル」という用語は、標的を含む組成物を意味することができる。本開示の方法、装置、システムによる分析に適したサンプルには、細胞、組織、臓器、生物や、細胞、組織、生物から得られた組成物が含まれる。
【0027】
本明細書では、「特異的に結合する」という用語は、特定の結合ペアの結合特異性を意味する。特定の標的ポリペプチド配列の標的特異的核酸配列によるハイブリダイゼーションが他の潜在的標的の存在下において起こるというのが、そのような結合の1つの特徴である。特異的結合には2つの異なる核酸分子が関与していて、一方の核酸分子が、化学的または物理的な手段を通じて第2の核酸分子と特異的にハイブリダイズする。その2つの核酸分子は、結合パートナーを、似た特徴を持つ他のアッセイ構成要素から識別できるように互いに結合しているという意味で関係がある。結合要素ペアのメンバーは、リガンドと受容体(抗リガンド)、特異的結合ペア(SBP)メンバーとSBPパートナーなどと呼ばれる。
【0028】
「ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド」は、本明細書では交換可能に用いられ、任意の長さのヌクレオチドからなるポリマーを意味し、そこにはDNAとRNAが含まれる。ポリヌクレオチド配列またはヌクレオチド配列として、二本鎖または一本鎖が可能であろう。ポリヌクレオチド配列またはヌクレオチド配列が一本鎖である場合、2本の相補的な鎖のいずれかを意味することができよう。ヌクレオチドとして、デオキシリボヌクレオチド、および/またはリボヌクレオチド、および/または修飾されたヌクレオチドまたは塩基、および/またはこれらの類似体、またはDNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み込むことのできる任意の基質が可能である。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド(例えばメチル化されたヌクレオチドとその類似体)を含むことができる。ヌクレオチド構造への修飾は、存在する場合には、ポリマーを形成する前、または形成した後になすことができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド要素によって中断することができる。ポリヌクレオチドは、重合後にさらに修飾して、例えば標識要素と共役させることができる。他のタイプの修飾に含まれるのは、例えば「キャップ」、1つ以上の天然ヌクレオチドの、類似したヌクレオチドによる置換、ヌクレオチド間修飾(例えば帯電していない連結(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カバメートなど)を有する修飾と、帯電した連結(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を有する修飾、ペンダント状部分(例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リシンなど))を有する修飾、インターカレータ(例えばアクリジン、ソラーレンなど)を有する修飾、キレータ(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化性金属など)を有する修飾、アルキル化剤を有する修飾、修飾された連結(例えばα芳香族核酸など)を有する修飾)のほか、修飾されていない形態のポリヌクレオチドである。さらに、糖の中に通常存在する任意のヒドロキシル基を、例えばホスホン酸基、リン酸基で置き換えること、または標準的な保護基で保護すること、または活性化させて追加されるヌクレアーゼへのさらなる連結を準備すること、または固体支持体に共役させることができる。5'末端と3'末端のOHは、ホスホリル化すること、またはアミンで置き換えること、または炭素原子が1~20個の有機キャップ基部分で置き換えることができる。他のヒドロキシルも、誘導体化して標準的な保護基にすることができる。ポリヌクレオチドは、本分野で一般に知られているリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形態(その中には、例えば2'-O-メチル-2'-O-アリル、2'-フルオロ、2'-アジド-リボース、炭素環糖類似体、α-アノマー糖、エピマー糖(アラビノース、キシロース、リキソース)が含まれる)、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、脱塩基ヌクレオシド類似体(例えばメチルリボシド)も含有することができる。1つ以上のホスホジエステル連結を別の連結基で置き換えることができる。別の連結基の非限定的な例に含まれるのは、リン酸が、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO、CH2(「ホルムアセタール」)で置き換えられた実施態様である(ただし、それぞれのRとR'は、独立に、Hであるか、置換されたアルキル(1~20C)または置換されていないアルキルであり、そのアルキルは、場合によってはエーテル(-O-)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アラルジルを含有する)。ポリヌクレオチドのすべての連結が同じである必要はない。上記の説明は、本明細書で言及するあらゆるポリヌクレオチドに適用され、その中にはRNAとDNAが含まれる。
【0029】
本明細書では、「オリゴヌクレオチド」は、一般には短くて、一般には一本鎖で、一般には合成されたポリヌクレオチドで、一般には長さが約200個未満のヌクレオチド(だが、必ずしもその長さである必要はない)からなるものを意味する。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、互いに排他的ではない。ポリヌクレオチドに関する上の説明は、オリゴヌクレオチドにも等しくかつ完全に当てはまる。
【0030】
本明細書では、「相同である」、「実質的に相同である」、「実質的な相同性」という用語は、1つのアミノ酸配列を参照アミノ酸配列と比較したとき、少なくとも50%、または60%、または70%、または80%、または90%一致しているアミノ酸配列を意味する。配列一致または相同性の割合は、参照配列の対応する部分をアラインメントして互いに比較することによって計算される。
【0031】
本明細書では、「相補的、またはマッチした」は、2つの核酸配列が少なくとも50%一致することを意味する。好ましいのは、2つの核酸配列が、少なくとも60%、または70%、または80%、または90%、または95%、または96%、または97%、または98%、または99%、または100%一致することである。「相補的、またはマッチした」は、2つの核酸配列が、あまり厳しくない条件、および/または中程度に厳しい条件、および/または非常に厳しい条件でハイブリダイズできることも意味する。
【0032】
本明細書では、「実質的に相補的、または実質的にマッチした」は、2つの核酸配列が少なくとも90%一致することを意味する。好ましいのは、2つの核酸配列が少なくとも95%、または96%、または97%、または98%、または99%、または100%一致することである。あるいは「実質的に相補的、または実質的にマッチした」は、2つの核酸配列が非常に厳しい条件でハイブリダイズできることを意味する。
【0033】
本明細書では、「向上する、改善する」は、変化が、少なくとも約1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、225%、250%、275%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%のいずれか、またはそれ以上であること、またはこれらの任意の2つの値の間の任意の値であることを意味する。あるいは「向上する、改善する」は、変化が、少なくとも約1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、500倍、1000倍、2000倍のいずれか、またはそれ以上であるであること、またはこれらの任意の2つの値の間の任意の値であることを意味することができよう。
【0034】
本明細書では、「複合体化された」は、非共有結合で連結または会合していることを意味する。
【0035】
本明細書では、「ヌクレアーゼ-ヌル」は、ヌクレアーゼ活性が低下したポリペプチド、エンドDNアーゼ活性、エキソDNアーゼ活性、RNアーゼ活性が低下したポリペプチド、ニッカーゼ活性が低下したポリペプチド、DNAおよび/またはRNAを開裂させる能力が低下したポリペプチドを意味する。
【0036】
本明細書では、「低下したヌクレアーゼ活性」は、ヌクレアーゼ、ニッカーゼ、DNアーゼ、RNアーゼの活性の低下が、少なくとも約1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%のいずれか、またはそれ以上であること、またはこれらの任意の2つの値の間の任意の値であることを意味する。あるいは「低下したヌクレアーゼ活性」は、低下が、少なくとも約1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、500倍、1000倍、2000倍のいずれか、またはそれ以上であること、またはこれらの任意の2つの値の間の任意の値であることを意味することができる。
【0037】
本明細書では、「輸送剤」は、核タンパク質複合体を細胞内の望む位置に向かわせるあらゆるポリペプチドを意味することができ、その例として、細胞質ポリアデニル化要素結合タンパク質(CPEB)、ジンクフィンガー結合タンパク質(ZBP)、TIA-1(3'UTR mRNA結合タンパク質)、PSF(スプライスソームのタンパク質成分)、PSF のDNA結合ドメイン(DBD)、脆弱X精神遅滞タンパク質 (FMRP)、IGF-II mRNA結合タンパク質(IMP)-l(IMP1)、IMP2、IMP3、細胞骨格結合タンパク質、 膜貫通タンパク質や、コンビナトリアル輸送現象を生じさせるため上記タンパク質のドメインの組み合わせを含む操作されたタンパク質がある。
【0038】
一般に、ハイブリッドの安定性は、イオン濃度と温度の関数である。典型的には、ハイブリダイゼーション反応は、あまり厳しくない条件下で実施され、その後、厳しさを変え、だがより厳しい条件での洗浄が続く。中程度の厳しさでのハイブリダイゼーションは、核酸分子(例えばプローブ)が相補的な核酸分子に結合できるようにする条件を意味する。ハイブリダイズした核酸分子は、一般に、少なくとも60%一致している(例えば少なくとも70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%一致している)。中程度に厳しい条件は、50%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、5×SSPE、0.2%SDS、42℃の中でのハイブリダイゼーションの後、0.2×SSPE、0.2%SDS、42℃の中での洗浄と同等な条件である。非常に厳しい条件は、例えば50%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、5×SSPE、0.2%SDS、42℃の中でのハイブリダイゼーションの後、0.1×SSPE、0.1%SDS、65℃の中での洗浄によって提供できる。
【0039】
あまり厳しくないハイブリダイゼーションは、10%ホルムアミド、5×デンハルト溶液、6×SSPE、0.2%SDS、22℃の中でのハイブリダイゼーションの後、1×SSPE、0.2%SDS、37℃の中での洗浄と同等な条件である。デンハルト溶液は、1%フィコール、1%ポリビニルピロリドン、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有している。20×SSPE(塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、エチレンジアミド四酢酸(EDTA))は、3Mの塩化ナトリウム、0.2Mのリン酸ナトリウム、0.025MのEDTAを含有している。中程度に厳しいハイブリダイゼーションと非常に厳しいハイブリダイゼーションのための他の適切な緩衝液と条件は、当業者に周知である。
【0040】
RNAを標的とするCas9ポリペプチド(RCas9)
【0041】
本明細書に開示したいくつかの実施態様により、標的RNAを認識するように操作されたCas9ポリペプチドが提供され、そのCas9ポリペプチドにはエフェクタが会合している。いくつかの実施態様は、Cas9ポリペプチドは、Streptococcus pyogenes Cas9ポリペプチドである。いくつかの実施態様では、Cas9ポリペプチドは、Streptococcus pyogenes Cas9ポリペプチドの中に変異(例えばD10A、またはH840A、またはその両方(配列ID番号31))を含んでいる。
【0042】
いくつかの実施態様は、本明細書に提示したCas9ポリペプチド含有核タンパク質複合体の1つのバージョンに関するものであり、このバージョンは、生きた細胞内でDNAの代わりにRNAを標的とするように目的変更または操作された、クラスター化されて規則的な間隔で配置された短い回文反復(CRISPR)/Cas9、すなわちCRISPR/Cas9に関係している。CRISPRは、ヒト細胞内で単純なプログラムによりDNAの認識を可能にすることでゲノム操作に革命を起こし、イメージングと遺伝子発現改変における関連技術をサポートしている。われわれは、RCas9またはCRISPR/Cas9を用いてRNAを標的とする類似手段を開発した。いくつかの実施態様では、本明細書に提示した核タンパク質複合体は、Cas9タンパク質と、シングルガイドRNA(sgRNA)と、場合によっては(化学的に修飾された、または合成された)アンチセンスPAMmerオリゴヌクレオチドを含んでいる。PAMmerは、標的RNAへのハイブリダイゼーションを通じたCas9による認識のためのDNA基質を模倣するのに役立つアンチセンスオリゴヌクレオチドである。Cas9タンパク質とsgRNA要素が合わさって、あらゆる仮想RNA配列を認識することができる。
【0043】
したがって可能な実施態様では、本明細書に提示した組成物と方法により、基礎生物学と治療の多くの分野に以前から存在する問題に対する解決法が提供される。この技術は、基礎生物学と薬開発のためのツールとして、生きた細胞内でのRNA局在化と遺伝子発現の非破壊的測定をすでにサポートしてきた(下記の考察を参照されたい)。治療の観点からは、本明細書に提示した組成物と方法により、RNAスプライシングまたはRNA編集の改変を通じてRNA組成物を狙い通り改変できることで、疾患(例えばがんや神経変性疾患)に関与するRNAの特徴を逆転させることが可能になる。本明細書に提示した核タンパク質複合体は、最初の簡単にプログラム可能な核酸誘導型RNA結合タンパク質として、現状とは際立って異なっている。
【0044】
いくつかの実施態様では、本明細書に例示した核タンパク質複合体は、検出可能な薬剤(例えば蛍光剤、蛍光タンパク質、酵素など)と会合するか、検出可能な薬剤を含んでいる。いくつかの実施態様では、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型GFP(EGFP(配列ID番号30))、青色蛍光タンパク質またはその誘導体(EBFP、EBFP2、Azurite、mKalama1)、シアン色蛍光タンパク質またはその誘導体(ECFP、Cerulean、CyPet、mTurquoise2)、黄色蛍光タンパク質またはその誘導体(YFP、Citrine、Venus、YPet)、UnaG、dsRed、eqFP611、Dronpa、TagRFPs、KFP、EosFP、Dendra、IrisFPなどのいずれか、またはその断片である。いくつかの実施態様では、蛍光タンパク質を2つの半片に分割してそのそれぞれにCas9ポリペプチドを融合させることができるため、その2つのCas9ポリペプチドが隣のRNA標的に結合するとき、蛍光タンパク質の2つの半片は互いに近接することになって蛍光シグナルを発生させる。例えば蛍光タンパク質Venusを2つの半片、すなわちN末端部分とC末端部分に分割することができる。いくつかの実施態様では、N末端部分は残基1~155または1~173(配列ID番号25)を含んでいる。いくつかの実施態様では、N末端部分はI152L変異を含んでいる(配列ID番号24;I152Lはバックグラウンド相補変異体を減らした:Kodama他 Biotechniques 2010年11月第49巻(5):793~805ページから)。いくつかの実施態様では、C末端部分は、残基155~238(配列ID番号26)を含んでいる。いくつかの実施態様では、酵素は、ルシフェラーゼ(ガウシア、ウミシイタケ、ホタルのバリアント)、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ、ユビキチン、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、毒素(例えばジフテリア毒素)などである。いくつかの実施態様では、酵素を2つの半片に分割してそのそれぞれにCas9ポリペプチドを融合させることができるため、その2つのCas9ポリペプチドが隣のRNA標的に結合するとき、酵素の2つの半片は互いに近接することになって酵素活性を生じさせる。いくつかの実施態様では、酵素は化合物の合成の改変に関与する。いくつかの実施態様では、化合物は、ポリペプチドまたは核酸である。いくつかの実施態様では、Cas9ポリペプチドが標的RNAに会合すると生合成経路に中間産物が局所的に蓄積し、自由に浮遊している生合成酵素と比べて医学的または技術的に有用な化合物の産生が増幅される。
【0045】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示した核タンパク質複合体は、エフェクタポリペプチド(例えば、RNAを開裂させるヌクレアーゼ(例えばPINドメインタンパク質(例えばヒトSMG6(配列ID番号27))))またはその断片と会合する。いくつかの実施態様では、本明細書に提示した核タンパク質複合体は、RNA結合タンパク質(例えばヒトRBFOX1(配列ID番号28)、ヒトRBFOX2(配列ID番号29))など、またはその断片と会合する。いくつかの実施態様では、Cas9ポリペプチドはスプライシング因子またはその断片と会合する。いくつかの実施態様では、ヌクレアーゼ、またはRNA結合タンパク質、またはスプライシング因子を2つの半片に分割してそのそれぞれにCas9ポリペプチドを融合させることができるため、その2つのCas9ポリペプチドが隣のRNA標的に結合するとき、ヌクレアーゼ、またはRNA結合タンパク質、またはスプライシング因子の2つの半片は互いに近接することになって酵素活性を生じさせる。
【0046】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示した核タンパク質複合体はさらに、1つ以上の核局在化シグナル、または1つ以上の安定で不活性なリンカーポリペプチド(例えばXTENペプチド)、またはこれらの組み合わせと会合するか、それを含んでいる。XTENペプチドは、翻訳融合された生物薬の血清半減期の延長を、その流体力学的半径を大きくし、化学的PEG化に対するタンパク質系機能性類似体として作用させることによって実現するのに使用されてきた。XTENペプチドは、化学的に安定であり、非カチオン性であり、非疎水性であり、拡張された非構造化配置を採用することが予測されるため、XTENに基づくリンカーペプチドは、安定で不活性なリンカー配列として機能してCas9ポリペプチドをエフェクタポリペプチド(例えばRNA改変ポリペプチド)または検出可能な部分に接合させることができる。
【0047】
短縮されたCas9ポリペプチド
【0048】
RNAを結合させることのできるStreptococcus pyogenes Cas9の短縮バージョンは、標的RNAを特異的に変化させるが、DNA配列は変化させない一方で、Cas9タンパク質のサイズを小さくしてアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに合わせることができるという点で有利である。いくつかの実施態様では、核タンパク質複合体は、DNAを開裂させるHNHドメインまたはRuvCドメイン、またはこれらの組み合わせの一部またはすべてを欠いたCas9の短縮バージョンを含んでいる。そのためCAs9のDNA開裂能力(ヌクレアーゼ-ヌルCas9が産生される)が消え、そのサイズが小さくなることにより、これらの重要な特徴の両方が推進される。いくつかの実施態様では、導入遺伝子をパッケージするのに約4.5 kbを送達することのできるAAVが使用される。いくつかの実施態様では、より大きな導入遺伝子をパッケージできるAAVベクターが使用される。その大きさは、例えば、約4.6 kb、4.7 kb、4.8 kb、4.9 kb、5.0 kb、5.1 kb、5.2 kb、5.3 kb、5.4 kb、5.5 kb、5.6 kb、5.7 kb、5.8 kb、5.9 kb、6.0 kb、6.1 kb、6.2 kb、6.3 kb、6.4 kb、6.5 kb、6.6 kb、6.7 kb、6.8 kb、6.9 kb、7.0 kb、7.5 kb、8.0 kb、9.0 kb、l0.0 kb、11.0 kb、12.0 kb、13.0 kb、14.0 kb、15.0 kbのいずれか、またはそれ以上である。
【0049】
他の実施態様では、核タンパク質複合体は、特定のDNA残基と接触する他のドメイン(例えばPAMmer相互作用ドメイン、すなわちPAM-IDドメイン)のすべてまたは一部、またはRecドメインのすべてまたは一部、またはこれらの組み合わせを欠いた短縮体を含むため、Cas9がRNAに結合する能力を維持するサイズがさらに小さくなる。ヌクレアーゼ-ヌルCas9をエフェクタ(例えばPINドメイン、またはRNAに作用するがDNAには作用しない他のエフェクタ)に融合させることにより、これらの実施態様から、RNAを変化させる一方でコードDNAは標的としない手段が提供される。
【0050】
いくつかの実施態様では、Cas9活性部位(10と840)が変異してアラニン(D10AとH840A)になることでStreptococcus pyogenes Cas9の開裂活性が消え、ヌクレオチド欠損Cas9、すなわちdCas9が生じる。RuvCドメインは、dCas9一次構造の3つの不連続な部分(残基1~60と、719~775と、910~1099)の間に分布している。Recローブ(lobe)は残基61~718で構成されている。NHNドメインは残基776~909で構成されている。PAM-IDドメインは残基1100~1368で構成されている。
【0051】
RECローブは、sgRNAと標的DNA/RNAを認識するための構造的足場であると見なすことができる。NUCローブは、2つのヌクレアーゼドメイン(NHNとRuvC)に加え、PAM配列を認識するPAM相互作用ドメイン(PAM-ID)を含有している。いくつかの実施態様では、98個のヌクレオチドからなるsgRNAは、同様に2つの主要な構造要素に分解することができる。すなわち、第1の構造要素は、標的特異的なガイド区画または「スペーサ」区画(ヌクレオチド1~20)に加え、反復-テトラループ-アンチ反復とステム-ループ1(SL1)領域を含有し、第2の構造要素は、ステム-ループ2と3(SL2、SL3)を含有する。いくつかの実施態様では、SL2-SL3区画には主にNUCローブが結合する。
【0052】
最近の研究により、1368個のアミノ酸からなるStreptococcus pyogenes Cas9は、RECローブ(アミノ酸56~714)とNUCローブ(アミノ酸1~57が729~1368に融合)を含む2つのポリペプチドに分割でき、それらをトランスで組み合わせると機能的ヌクレアーゼを形成できることが示された(Wright AV、Sternberg SH、Taylor DW、Staahl BT、Bardales JA、Kornfeld JE、Doudna JA 「分割されたCas9酵素複合体の合理的な設計」Proc Natl Acad Sci USA 2015年;第12巻(10):2984~2989ページ)。この研究の結果から、NUCローブ全体が失われたCas9コンストラクトは、sgRNAと大きな親和性で組み合わさることができるものの、完全長Cas9よりも顕著に小さな親和性であることがわかる。現在のところ、この範囲での親和性の変化が、CRISPR/Cas9のDNA編集効率に対して、またはCRISPR/Cas9が細胞内のRNAを標的とする能力に対してどのように影響を与えるかは未知である。
【0053】
いくつかの実施態様では、標的RNA配列を大きな親和性で認識し、それにPIN RNAエンドヌクレアーゼドメインが融合したものをモデルRNAに誘導して破壊するであろうSpCas9の最小コンストラクトを作製する。いくつかの実施態様では、その最小コンストラクトは、RECのみのコンストラクトであろう。いくつかの実施態様では、このコンストラクトに、欠けているのがHNHドメイン、またはPAM-IDドメイン、または各ドメインの一部、または各ドメインの両方、またはこれらの組み合わせである、最小ではないコンストラクトが含まれるであろう。いくつかの実施態様では、HNHドメインは、残基775と909の間に5残基の可撓性リンカーを挿入することによって切除されるであろう(ΔHNH)。いくつかの実施態様では、PAM-IDのすべてまたは一部が除去される。いくつかの実施態様では、Cas9を残基1098の位置で短縮し(ΔPAM-ID #1)、残基1138と1345を8残基リンカーに融合させる(ΔPAM-ID #2)か、残基1138を残基1200に、残基1218を残基1339に(それぞれ5残基と2残基のリンカーを用いて)融合させ(ΔPAM-ID #3)、PAM-IDすべてまたは一部を除去する。ΔPAM-ID #2コンストラクトとΔPAM-ID #3コンストラクトは、sgRNA反復-アンチ反復(残基1099~1138)区画とSL2-SL3(残基1200~1218と1339~1368)区画の結合に寄与するPAM-IDのエレメントを保持したままであろう。いくつかの実施態様では、HNH欠失体は、それら3つのPAM-ID欠失体と組み合わされることになろう。
【0054】
いくつかの実施態様では、核タンパク質複合体は、対応する野生型(WT)Cas9ポリペプチドと比較して、(1)HNHドメイン、(2)少なくとも1つのRuvCヌクレアーゼドメイン、(3)Cas9ポリペプチドDNアーゼ活性部位、(4)Cas9ポリペプチド活性部位を含むββα-メタルフォールドのいずれかのすべてまたは一部を欠いたCas9ポリペプチドを含むか、(5)HNHドメイン、少なくとも1つのRuvCヌクレアーゼドメイン、Cas9ポリペプチドDNアーゼ活性部位、Cas9ポリペプチド活性部位を含むββα-メタルフォールドのうちの1つ以上のすべてまたは一部を欠いたCas9ポリペプチドを含むことができ、この複合体は、PAMmerオリゴヌクレオチドを含んでいてもいなくてもよい。
【0055】
シングルガイドRNA(sgRNA)
【0056】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示した核タンパク質複合体は、シングルガイドRNA(sgRNA)と複合体にされる。いくつかの実施態様では、シングルガイドRNAは、シングルガイドRNA足場配列の中に二次構造の延長部を有する。いくつかの実施態様では、シングルガイドRNAは、転写終止配列または転写後にシングルガイドRNAを不安定にする配列の一部または全体をトランス作用ヌクレアーゼの作用を通じて除去することを通じてシングルガイドRNA の発現レベルを改善する1つ以上の点変異を含んでいる。いくつかの実施態様では、シングルガイドRNAは、5'末端に、そのシングルガイドRNAを分解に対して安定化させる変化を含んでいる。いくつかの実施態様では、そのシングルガイドRNAの5'末端にある変化は、2'-O-メチル、ホスホロチオエート、チオホスホノアセテートという連結と塩基からなるグループから選択される。いくつかの実施態様では、シングルガイドRNAは、標的の認識を改善するため、またはこのシングルガイドRNAに対するヌクレアーゼ活性を低下させるため、そのsgRNA のスペーサまたは足場領域に、2'-フッ素塩基修飾、および/または2'-O-メチル塩基修飾、および/または2'-メトキシエチル塩基修飾を含んでいる。いくつかの実施態様では、シングルガイドRNAは、標的に対するヌクレアーゼ活性を低下させる1つ以上のメチルホスホネート連結、チオホスホノアセテート連結、ホスホロチオエート連結を含んでいる。
【0057】
いくつかの実施態様では、シングルガイドRNAは、例えば標的RNAにハイブリダイズすることによってその標的RNAを認識することができる。いくつかの実施態様では、シングルガイドRNAは、標的RNAと相補的な配列を含んでいる。いくつかの実施態様では、シングルガイドRNAの長さは、10 nt、20 nt、30 nt、40 nt、50 nt、60 nt、70 nt、80 nt、90 nt、100 nt、110 nt、120 nt、130 nt、140 nt、150 nt、160 nt、170 nt、180 nt、190 nt、200 nt、300 nt、400 nt、500 nt、1,000 nt、2,000 ntのいずれか、またはこれらの値の任意の2つの間の範囲であるか、ほぼこれらの値であるか、これらの値未満であるか、これらの値よりも大きい。いくつかの実施態様では、シングルガイドRNAは、1つ以上の修飾されたヌクレオチドを含むことができる。
【0058】
可能な実施態様では、多彩なRNA標的をシングルガイドRNAによって認識することができる。例えば標的RNAとして、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、シグナル認識粒子RNA(SRP RNA)、トランスファーRNA(tRNA)、小さな核RNA(snRNA)、小さな仁RNA(snoRNA)、アンチセンスRNA(aRNA)、長い非コード RNA(IncRNA)、microRNA(miRNA)、piwi相互作用 RNA(piRNA)、小さな干渉RNA(siRNA)、短いヘアピンRNA(shRNA)、レトロトランスポゾンRNA、ウイルスゲノムRNA、ウイルス非コードRNAなどが可能である。いくつかの実施態様では、標的RNAとして、発病に関与するRNA、または病気(例えば、がん、神経変性疾患、皮膚疾患、内分泌疾患、腸疾患、感染症、神経疾患、肝臓疾患、心臓疾患、自己免疫疾患など)に関する治療標的が可能である。
【0059】
いくつかの実施態様では、標的RNAは反復配列を含むことができる。例えば反復配列として、CTG、CCTG、CAG、GGGGCC、またはこれらの任意の組み合わせが可能である。いくつかの実施態様では、反復配列は、例えば筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群などの疾患に関連している。
【0060】
PAMmerオリゴヌクレオチド
【0061】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示した核タンパク質複合体はさらに、標的RNA内の1つの配列と相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドと複合体にされる。いくつかの実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PAMmerオリゴヌクレオチドを含んでいる。いくつかの実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドを含んでいる。いくつかの実施態様では、その少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドは、2'OMe RNAヌクレオチドと 2'OMe DNAヌクレオチドからなるグループから選択される。いくつかの実施態様では、PAMmerオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾された塩基または連結を含んでいる。いくつかの実施態様では、その1つ以上の修飾された塩基または連結は、ロックされた核酸と、ヌクレオチドに対して安定化された連結からなるグループから選択される。いくつかの実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAに近接した配列と相補的である。例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAからの約10 nt、20 nt、30 nt、40 nt、50 nt、60 nt、70 nt、80 nt、90 nt、100 ntの配列と相補的にすることができる。いくつかの実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、10 nt、20 nt、30 nt、40 nt、50 nt、60 nt、70 nt、80 nt、90 nt、100 nt、110 nt、120 nt、130 nt、140 nt、150 nt、160 nt、170 nt、180 nt、190 nt、200 nt、300 nt、400 nt、500 nt、1,000 nt、2,000 ntのいずれか、またはこれらの値の任意の2つの間の範囲であるか、ほぼこれらの値であるか、これらの値未満であるか、これらの値よりも大きい。いくつかの実施態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、RNA、またはDNA、またはその両方を含んでいる。
【0062】
Cas9ポリペプチドをコードする核酸
【0063】
本明細書に開示したいくつかの実施態様により、場合によってはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド(例えばRNAエンドヌクレアーゼ))が会合している本明細書に提示した核タンパク質複合体のCas9ポリペプチド、またはsgRNA、または融合タンパク質をコードする核酸が提供される。
【0064】
核酸として、天然の核酸DNA、天然の核酸RNA、人工核酸(ペプチド核酸(PNA)、モルフォリノ、ロックされた核酸(LNA)、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)が含まれる)が可能である。一本鎖核酸と二本鎖核酸の両方を本開示で用いることができる。いくつかの実施態様では、核酸は組み換えDNA分子である。
【0065】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示したCas9ポリペプチドは、古細菌または細菌のCas9ポリペプチドを含んでいる。いくつかの実施態様では、Cas9ポリペプチドは、以下のもの: Haloferax mediteranii、Mycobacterium tuberculosis、Francisella tularensis subsp. novicida、Pasteurella multocida、Neisseria meningitidis、Campylobacter jejune、Streptococcus thermophilus LMD-9 CRISPR 3、Campylobacter lari CF89-12、Mycoplasma gallisepticum str. F、Nitratifractor salsuginis str DSM 16511、Parvibaculum lavamentivorans、Roseburia intestinalis、Neisseria cinerea、Gluconacetobacter diazotrophicus、Azospirillum B510、Sphaerochaeta globus str. Buddy、Flavobacterium columnare、Fluviicola taffensis、Bacteroides coprophilus、Mycoplasma mobile、Lactobacillus farciminis、Streptococcus pasteurianus、Lactobacillus johnsonii、Staphylococcus pseudintermedius、Filifactor alocis、Treponema denticola、Legionella pneumophila str. Paris、Sutterella wadsworthensis、Corynebacter diphtheriae、Streptococcus aureusのいずれかであるか;RNAを標的とするように改変されるか目的変更されたFrancisella novicida(場合によってはFrancisella novicida Cpfl)または Natronobacterium gregoryi Argonauteであるか、これらのいずれかを含むか、これらのいずれかに由来し、場合によっては、sgRNA 3'末端または「足場配列」は、これら細菌または古細菌それぞれの野生型(WT)コグネイトガイド核酸の全体または一部を含むか、その野生型(WT)コグネイトガイド核酸に由来する。
【0066】
本明細書では、「機能可能に連結した」は、直線状DNA配列が、同じDNA分子の他の部分に影響を与えることができる状況を意味する。例えばプロモータがコード配列の転写を制御しているとき、それはそのコード配列と機能可能に連結している。
【0067】
本明細書に開示したいくつかの実施態様により、Cas9ポリペプチドをコードする核酸、またはsgRNAをコードする核酸、または場合によってはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド(例えばRNAエンドヌクレアーゼ))が会合したCas9ポリペプチドの一例の融合タンパク質をコードする核酸を含む遺伝子操作された組み換えベクターが提供される。使用されるベクターは、原核生物であれ、真核生物であれ、選択された宿主内での発現に適したベクター、例えばファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクターを含むことができる。ウイルスベクターとして、複製コンピテントレトロウイルスベクター、または複製欠陥レトロウイルスベクターが可能である。ウイルスの増殖は、一般に、複製欠陥ベクターを含む補完性宿主細胞の中でだけ起こり、例えば本明細書に提示した方法で複製欠陥レトロウイルスベクターを用いるときにはウイルスの複製が起こらないであろう。ベクターは、コザック配列(Lodish他、『Molecular Cell Biology』、第4版、1999年)を含むことができ、ATG開始コドンも含むことができる。真核宿主の中で機能するプロモータには、SV40、LTR、CMV、EF-1a、アカヒレβ-アクチンプロモータなどが含まれる。
【0068】
一過性かつ安定に発現させるベクターを設計するとき、コピー数と位置の効果を考慮する。コピー数は、例えばジヒドロ葉酸レダクターゼの増幅によって増加させることができる。位置の効果は、例えばチャイニーズハムスター伸長因子1ベクターpDEF38(CHEF l)、遍在クロマチン開放エレメント(UCOE)、ヒトの足場/マトリックス付着領域(S/MAR)、人工染色体発現(ACE)ベクターによるほか、本分野で知られている部位特異的組み込み法を利用することによって最適化できる。ベクターと興味ある遺伝子を含有する発現コンストラクトはさらに、転写開始、転写終止のための部位を含有するとともに、転写される領域に、翻訳のためのリボソーム結合部位を含有している。コンストラクトによって発現した転写産物のコード部分は、先頭の翻訳開始コドンと、翻訳されるポリペプチドのほぼ末端に位置する終止コドン(UAA、UGA、UAGのいずれか)を含むことができる。
【0069】
上記の因子を考慮すると、細菌の中でCas9ポリペプチドを発現させるのに適したベクター、および/またはsgRNAを発現させるのに適したベクター、および/または場合によってはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、または細菌中のRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質を発現させるのに適したベクターの例に含まれるのは、Biotechnology Research Institute(モントリオール、カナダ国)から入手できるpTTベクター;Qiagen社(ミシソーガ、オンタリオ州、カナダ国)から入手できるpQE70、pQE60、pQE-9;Invitrogen社(カールズバッド、カリフォルニア州)から入手できる、pcDNA3に由来するベクター;Stratagene社(ラジョラ、カリフォルニア州)から入手できるpBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH6a、pNH18A、pNH46A;Pharmacia社(ピーパック、ニュージャージー州)から入手できるptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5である。適切な真核生物ベクターには、Stratagene社(ラジョラ、カリフォルニア州)から入手できるpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTl、pSG;Pharmacia社(ピーパック、ニュージャージー州)から入手できるpSVK3、pBPV、pMSG、pSVLがある。
【0070】
Cas9ポリペプチドを発現させるためのベクター、またはsgRNAを発現させるためのベクター、または場合によってはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質を発現させるためのベクターに含まれるのは、pTTベクターの骨格を含むベクター(Durocher他、Nucl. Acids Res. 第30巻:E9ページ(2002年))である。簡単に述べると、pTTベクターの骨格は、pIRESpuro/EGFP(pEGFP)ベクターとpSEAP-basicベクターを例えばClontech社(パロアルト、カリフォルニア州)から取得することによって調製でき、pcDNA3.1ベクター、pCDNA3.1/Myc-(His)6ベクター、pCEP4ベクターは、例えばInvitrogen社(カールズバッド、カリフォルニア州)から取得できる。本明細書では、pTT骨格ベクターは、pTT5-ゲートウェイベクターを生成させることと、哺乳動物細胞の中でタンパク質を一過性発現させるのに使用することができる。pTT5ベクターを誘導体化して例えばpTT5-A、pTT5-B、pTT5-D、pTT5-E、pTT5-H、pTT5-Iにすることができる。本明細書では、pTT2ベクターは、哺乳動物細胞系の中で安定な発現のためのコンストラクトを生成させることができる。
【0071】
pTTベクターは、ハイグロマイシン(BsmIとSalIで切除した後にフィルインと連結)発現カセットとEBNA1(ClaIとNsiIで切除した後にフィルインと連結)発現カセットを削除することによって調製できる。ColEI起点(β-ラクタマーゼオープンリーディングフレーム(ORF)の3'末端を含むFspI-SalI断片)は、pMBI起点(と、β-ラクタマーゼORFの同じ3'末端)を含有するpcDNA3.1由来のFspI-SalI断片で置き換えることができる。HindIIIとEcoRVで消化させたpcDNA3.1/Myc-Hisの中でのフレーム内連結の後にMyc-(His)6 C末端融合タグをSEAP(pSEAP-basicからのHindIII-HpaI断片)に付加することができる。その後プラスミドを、LB培地の中で増殖させた大腸菌(DH5α)の中で増幅し、MAXIプレップカラム(Qiagen社、ミシソーガ、オンタリオ州、カナダ国)を用いて精製することができる。定量するため、プラスミドをその後例えば50 mMトリス-HCl pH 7.4の中で希釈し、吸光度を260 nmと280 nmで測定することができる。A260/A280比が約1.75~約2.00のプラスミド調製物は、Fc融合コンストラクトの作製に適している。
【0072】
発現ベクターpTT5を用いると、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータで制御してcDNAを染色体外で複製することが可能になる。プラスミドベクターpCDNA-pDEST40は、高レベル発現のためのCMVプロモータを使用できるゲートウェイ適合ベクターである。SuperGlo GFPバリアント(sgGFP)は、Q-Biogene社(カールズバッド、カリフォルニア州)から取得できる。pCEP5ベクターの調製は、SalIとXbaI酵素を用いた逐次消化と自己連結によってpCEP4のCMVプロモータとポリアデニル化シグナルを除去することによって実現でき、プラスミドpCEP4Δとなる。CMV5-ポリ(A)発現カセットをコードするpAdCMV5(Massie他、J. Virol. 第72巻:2289~2296ページ(1998年))からのGblIII断片をBgIIIで直線化されたpCEP4Δの中で連結させるとpCEP5ベクターになる。
【0073】
Cas9ポリペプチドを発現させるためのベクター、またはsgRNAを発現させるためのベクター、または場合によってはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質を発現させるためのベクターに含まれるのは、CHO-S細胞またはCHO-Sに由来する細胞で用いるのに最適化されたベクター(例えばpDEF38(CHEF1)や、それと同様のベクター(Running Deer他、Biotechnol. Prog. 第20巻:880~889ページ(2004年)))を含むベクターである。CHEFベクターは、CHO細胞の中での維持された高発現につながるDNAエレメントとその誘導体を含有している。DNAエレメントの非限定的な例に含まれるのは、移入遺伝子の転写サイレンシングを阻止するエレメントである。
【0074】
ベクターは、宿主内での増殖に関する選択マーカーを含むことができる。可能な実施態様では、形質転換された細胞の選択を、本質的な細胞機能を抑制する化学剤や他の薬剤の存在下または不在下での繁殖能力に基づいて行なえるようにするための選択マーカーを用いる。選択マーカーは、そのマーカーを発現する細胞に表現型を与えるため、適切な条件下でその細胞を同定することができる。したがって適切なマーカーは、細胞を適切な選択培地の中で増殖させるとき、その選択マーカーに薬剤耐性または薬剤感受性を与えるタンパク質をコードする遺伝子、またはその選択マーカーに色彩を与えるタンパク質をコードする遺伝子、またはその選択マーカーをコードする分子をトランスフェクトされた細胞の抗原特性を変化させる遺伝子を含んでいる。
【0075】
適切な選択マーカーに含まれるのは、真核細胞培養物の中でのネオマイシン耐性に関するジヒドロ葉酸レダクターゼまたはG418;大腸菌とそれ以外の細菌の中での培養に関するテトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子である。適切な選択マーカーにやはり含まれるのは、細胞毒性マーカーと薬剤耐性マーカー(それらマーカーによって細胞を、1種類以上の細胞毒素または薬を含有する培地で増殖する能力によって選択する);栄養要求マーカー(それらマーカーによって細胞を、特定の栄養素またはサプリメント(例えばチミジンやヒポキサンチン)を含む規定の培地、または含まない規定の培地で増殖する能力によって選択する);代謝マーカー(例えば規定の物質(例えば唯一の炭素供給源としての適切な糖)を含有する規定の培地で増殖する能力によって細胞を選択する);発色基質上で着色されたコロニーを形成するか、細胞に蛍光を出させる能力を細胞に与えるマーカーである。
【0076】
上述のように、Cas9ポリペプチドを発現させるためのベクター、またはsgRNAを発現させるためのベクター、または場合によってはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質を発現させるためのベクターは、レトロウイルスベクターの中に構成することもできる。そのような1つのベクターとして、マウス第6染色体に位置することになるROSA geoレトロウイルスベクターを、レトロウイルスの転写に関して逆向きのレポータ遺伝子を用い、スプライス受容体配列の下流に構成した(アメリカ合衆国特許第6,461,864号;Zambrowicz他、Proc. Natl. Acad. Sci. 第94号:3789~3794ページ(1997年))。胚性幹(ES)細胞にROSA geoレトロウイルスベクターを感染させると、そのES細胞の中にレトロウイルス遺伝子がランダムにトラップされてROSA geo26(ROSA26)マウス株が得られた。
【0077】
Cas9ポリペプチドをコードする核酸、またはsgRNAをコードする核酸、または場合によってはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質をコードする核酸(場合によっては、1つまたは複数のベクターに収容される)を含むDNAインサートは、適切なプロモータ(例えばファージλのPLプロモータ;大腸菌のlac、trp、phoA、tacプロモータ;SV40の初期プロモータと後期プロモータ;レトロウイルスLTRのプロモータ)に機能可能に連結することができる。適切なベクターとプロモータには、エンハンサを有するpCMVベクターであるpcDNA3.1;エンハンサとイントロンを有するpCMVベクターであるpCIneo;エンハンサとイントロンと三区分リーダーを有するpCMVベクターであるpTT2;CHEF1も含まれる。他の適切なベクターとプロモータは、当業者に知られているであろう。プロモータ配列には、バックグラウンドよりも上の検出可能なレベルで興味ある遺伝子の転写を開始させるのに必要な少なくとも最少数の塩基またはエレメントが含まれる。プロモータ配列の中には、転写開始部位のほか、RNAポリメラーゼの結合にとって重要なタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が存在することができる。可能な実施態様では、真核生物プロモータは、「TATA」ボックスと「CAT」ボックスを含有することがしばしばあるが、必ずしもそうとは限らない。
【0078】
本明細書に開示したいくつかの実施態様により、動物(ヒトを含む)の生体内で、組織特異的に機能するプロモータの制御下にて、Cas9ポリペプチド発現させるためのベクター、またはsgRNA発現させるためのベクター、または場合によってはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質を発現させるためのベクターが提供される。例えば、Cas9ポリペプチドの発現、またはsgRNAの発現、または場合によってはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質の発現を制御するプロモータは、PCT/US06/00668に記載されているように、肝臓特異的にすることができる。
【0079】
追加アミノ酸(特に帯電したアミノ酸)の領域をポリペプチドのN末端に付加することで、処理中とその後の保管中の全期間を通じ、宿主細胞精製における安定性と持続性を改善することができる。また、アミノ酸部分をポリペプチドに付加して精製を容易にすることができる。そのようなアミノ酸は、ポリペプチドを最終的に調製する前に除去してもよいし、除去しなくてもよい。Cas9ポリペプチドを、または場合によってはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質をマーカー配列(例えばペプチド)に融合させることで、その融合したポリペプチドの精製を容易にすることができる。マーカーアミノ酸配列として、6ヒスチジンペプチド(特にpQEベクター(Qiagen社、ミシソーガ、オンタリオ州、カナダ国)の中に提供されるタグなど)が可能であり、その多くは市販されている。例えばGentz他、Proc. Natl. Acad. Sci. 第86巻:821~824ページ(1989年)に記載されているように、6ヒスチジンによって融合タンパク質の精製が簡単になる。精製に役立つ別のペプチドタグであるヘマグルチニンHAタグは、インフルエンザのヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応する(Wilson他、Cell 第37巻:767~778ページ(1984年))。本明細書に提示したポリヌクレオチドまたはポリペプチドを用いて上記の任意のマーカーを操作することができる。
【0080】
発現コンストラクトはさらに、転写開始部位と転写終止部位を含有するとともに、転写された領域内に、翻訳のためのリボソーム結合部位を含有することができる。コンストラクトが発現する転写産物のコード部分は、頭部の翻訳開始コドンと、翻訳されるポリペプチドの終端に適切に位置する終止コドン(UAA、UGA、UAG)を含むことができる。
【0081】
Cas9ポリペプチドを発現する細胞
【0082】
本明細書に開示したいくつかの実施態様により、Cas9ポリペプチドをコードするか、sgRNAをコードするか、エフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質をコードする1つまたは複数の核酸(例えば1つまたは複数のベクター)を含む細胞系が提供される。いくつかの実施態様では、トランスフェクトされる細胞系として、原核細胞系、真核細胞系、酵母細胞系、昆虫細胞系、動物細胞系、哺乳動物細胞系、ヒト細胞系などが可能である。哺乳動物細胞の中で発現するタンパク質は、適切にグリコシル化されている。哺乳動物細胞は、Cas9ポリペプチドを産生すること、またはsgRNAを産生すること、または場合によってはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば本開示の検出可能な試薬、RNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質を産生することができる。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、HEK293、CHO、sp2/0、NSO、COS、BHK、PerC6である。他の多くの細胞も発現と産生のための宿主として使用できるため、本開示に包含される。
【0083】
融合タンパク質を組み換えで作製するには、分子クローニングプロトコルに基づく分子クローニング法(例えばSambrookとRussel『Molecular Cloning』(第3版、CSHL Press社、2001年)に記載されている方法)を利用する。融合タンパク質をコードするDNA配列は、通常の技術(例えば遺伝子全体の合成、またはスプライスされたDNA断片)によって取得することができる。多くのベクターを用いることができる。ベクターの構成要素の非限定的な例には、一般に、発現したタンパク質を分泌させるためのシグナル配列、1つ以上のマーカー遺伝子(例えば、真核細胞で安定な細胞系をスクリーニングするための選択マーカー遺伝子)、複製起点、エンハンサエレメント、転写終止配列、ポリAなどのうちの1つ以上が含まれる。
【0084】
動物細胞のトランスフェクションには、典型的には、細胞膜に一過性の孔または「穴」を開けて材料の取り込みを可能にすることが含まれる。遺伝材料(例えば超螺旋構造プラスミドDNAまたはsiRNAコンストラクト)をトランスフェクトすることができ、抗体などのタンパク質さえトランスフェクトすることができる。真核生細胞の中に外来DNAを導入するさまざまな方法が存在している。トランスフェクションは、リン酸カルシウムを用い、電気穿孔によって実施すること、またはリポソームを生成させる材料(リポソームは細胞膜と融合してその内部のカーゴを降ろす)をカチオン性脂質と混合することによって実施することができる。トランスフェクションのための担体として多くの材料が用いられてきた。それらは3種類に分類すること、すなわち(カチオン性)ポリマー、リポソーム、ナノ粒子に分類することができる。
【0085】
Cas9ポリペプチドの回収、またはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質の回収は、細胞から、沈降法、または超遠心分離法、またはクロマトグラフィ法(イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、免疫アフィニティクロマトグラフィ、HPLCなどが含まれる)によって実現することができる。回収した融合タンパク質は、RP-HPLCを利用してさらに精製することができる。Cas9ポリペプチドが分泌されるとき、またはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質が分泌されるとき、Millipore社、Amicon社、Pellicon社などから市販されている超濾過膜を用いて上清を濃縮することができる。
【0086】
いくつかの実施態様では、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを利用してCas9ポリペプチドを回収すること、またはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質を回収することができる。プロテインAは、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)のいくつかの株によって産生される細胞壁の成分であり、組み換えで作製することができる。プロテインAは、分子量が約42,000ダルトンの単一のポリペプチド鎖からなり、炭化水素をほとんど含有しないかまったく含有しない。プロテインAは、たいていの免疫グロブリン分子(その中にはIgGが含まれる)のFc領域に特異的に結合する(Sjoquist他、Eur. J. Biochem. 第29巻:572~578ページ(1972年);Hjelm他、Eur. J. Biochem. 第57巻:395~403ページ(1975年))。
【0087】
Cas9ポリペプチドの精製、またはエフェクタまたは検出可能な部分(例えば検出可能な試薬、またはRNA改変ポリペプチド)が会合したCas9ポリペプチドの融合タンパク質の精製には、プロテインGアフィニティクロマトグラフィも利用できる。プロテインGは、G群streptococci(溶血性連鎖球菌)によって産生される細菌細胞壁タンパク質であり、組み換えで作製することもできる。プロテインGは、プロテインAと同様、たいていの哺乳動物の免疫グロブリン分子に、主としてそのFc領域を通じて結合する(Bjorck他、J. Immunol. 第133巻:969~974ページ(1984年);Guss他、EMBO J. 第5巻:1567~1575ページ(1986年);Åkerstrom他、J. Biol. Chem. 第261巻:10,240~10,247ページ(1986年))。Cas9結合分子を用いたアフィニティクロマトグラフィをさらに利用して本開示のCas9ポリペプチドを精製することができる。例えばプロテインA/Gは、プロテインAとプロテインG両方のIgG結合プロファイルを併せ持つ遺伝子操作されたタンパク質である。プロテインA/Gは遺伝子融合産物であり、特に非病原性バチルス属から分泌させることができる。プロテインA/Gは、典型的には分子量が約50,000ダルトンであり、プロテインAからの4つのFc結合ドメインと、プロテインGからの2つのFc結合ドメインを含有するにように設計された(Sikkema、Amer. Biotech. Lab. 第7巻:42ページ(1989年);Eliasson他、J. Biol. Chem. 第263巻:4323~4327ページ(1988年))。
【0088】
標的RNAの量を追跡または測定する方法
【0089】
本明細書に開示したいくつかの実施態様により、サンプル(例えば細胞)中の標的RNAを追跡するための組成物と方法、または標的RNAの量を測定するための組成物と方法が提供され、その方法は、本明細書に例示したCas9ポリペプチドをその細胞中のその標的RNAに結合できるようにして、その細胞中のその標的RNAの位置を求めるか、その細胞中のその標的RNAの量を求めることを含んでいる。いくつかの実施態様では、本明細書に開示した検出可能な薬剤が会合したCas9ポリペプチドをサンプルに導入する。いくつかの実施態様では、標的RNAを認識するシングルガイドRNA、および/またはアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えばPAMmerオリゴヌクレオチド)をさらにサンプルに導入する。
【0090】
いくつかの実施態様では、Cas9ポリペプチドがその細胞の核内でその標的RNAに結合し、その後その核からその標的RNAとともに外に輸送される。いくつかの実施態様では、蛍光顕微鏡法を用いてその細胞中のその標的RNAの位置、またはその細胞中のその標的RNAの量を求める。
【0091】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示した方法は、そのサンプル中の標的RNAの含量を測定することを含んでいる。いくつかの実施態様では、この方法は、その細胞中のその標的RNAの含量に基づいて疾患を診断することを含んでいる。いくつかの実施態様では、疾患の選択は、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群などからなるグループからなされる。
【0092】
標的RNAを改変する方法
【0093】
本明細書に開示したいくつかの実施態様により、サンプル中の標的を改変する方法が提供される。この方法は、本明細書に例示したCas9ポリペプチドをサンプルの中に導入し、RNA改変ポリペプチドを用いてそのサンプル中のその標的RNAを改変することを含んでいる。可能な実施態様では、そのRNA改変ポリペプチドをCas9ポリペプチドに連結または融合させることができる。いくつかの実施態様では、RNA改変ポリペプチドと会合した本明細書に例示のCas9ポリペプチドをサンプルに導入する。いくつかの実施態様では、標的RNAを認識するシングルガイドRNA(sgRNA)、および/またはアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えばPAMmerオリゴヌクレオチド)をさらにサンプルに導入し、いくつかの実施態様では、そのsgRNAをCas9ポリペプチドと会合させるか、Cas9ポリペプチドと共発現させる。
【0094】
いくつかの実施態様では、RNA改変ポリペプチドは、標的RNAを断片化することができる。いくつかの実施態様では、RNA改変ポリペプチドは、標的RNAのスプライシングを変化させることができる。
【0095】
いくつかの実施態様では、上記の方法は、サンプル中の標的RNAを改変することによってそのサンプルの疾患を治療することを含んでいる。いくつかの実施態様では、疾患の選択は、筋ジストロフィー、ハンチントン病、家族性ALS、がん、脊髄性筋萎縮症、脆弱X症候群などからなるグループからなされる。
【0096】
生きた細胞内のRNAを標的とする現在の方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)または操作したRNA結合タンパク質との核酸塩基対合に頼っている。ASOは標的RNAをあいまいさなく認識するが、標的RNAを破壊する機能、または他の核酸またはタンパク質がRNAと会合するのを阻止する手段としては限られている。操作されたRNA結合タンパク質は設計することが難しくてコストがかかり、すべてのRNA標的について完全に再設計せねばならず、構造化されたRNAを標的とする能力が弱く、RNAに対する親和性は予想できないくらい異なる。操作されたRNA結合タンパク質は、ASOとは異なり、治療のため標的RNAを変化させる多彩なタンパク質因子を運んでRNAを追跡することができる。それを用いたいくつかのCas9ポリペプチドと方法が、2014年12月11日に提出された「一本鎖標的核酸を改変するための方法と組成物」という名称のPCT/US2014/069730(WO2015/089277として公開)で論じられている。なおその開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0097】
可能な実施態様では、本明細書に例示したRCas9ポリペプチドとRCas9複合体はこれらのアプローチ両方の強みを併せ持っており、簡単にプログラムできて強力なRNAの結合を核酸塩基対合に基づいて可能にするとともに、選択した効果を標的RNAに対して実現するあらゆるタンパク質因子を運ぶことができる。可能な実施態様では、本明細書に例示したRCas9ポリペプチドとRCas9複合体はCRISPR関連技術も取り込んでいて、そうした技術には、トランス作用するタンパク質因子、光で活性化可能なCasタンパク質、薬で活性化可能なCasタンパク質、光遺伝学と適合性のあるCasタンパク質をリクルートすることのできる、改変されたシングルガイドRNAが含まれる。
【0098】
RNA局在化を追跡する広く利用されている方法で生きた細胞に適合した方法は現在存在しない。FISHプロトコルは、興味ある細胞/組織の破壊を必要とするが、生きた細胞内における非破壊的RNA追跡に大いに興味が持たれている。可能な実施態様では、本明細書に例示したRCas9ポリペプチドとRCas9複合体が、この重要なギャップを埋めることができる。
【0099】
RNAのスプライシングの調節に関し、PUFタンパク質スプライシング因子、2'-O-メチルRNAオリゴヌクレオチド、2'-O-2-メトキシエチルRNAオリゴヌクレオチドには欠点がある(Wang Y、Cheong CG、Hall TM、Wang Z. 2009年「設計された特異性を持つようにスプライシング因子を操作する」Nat Methods第6巻:825~830ページ)。上述のように、PUFタンパク質とオリゴヌクレオチドの弱点が原因で、スプライシングの調節に関して広く使用されている因子は存在しない。可能な実施態様では、本明細書に記載したRCas9技術を利用して基礎研究と治療のための改良されたスプライシング調節に対処できる必要がある。
【0100】
本明細書に記載したいくつかの実施態様は、生きた細胞内のRNAを追跡するためのRCas9の設計と応用に関する。いくつかの実施態様では、RCas9は、蛍光タンパク質に融合したRCas9タンパク質の変異体と、哺乳動物細胞での発現がU6ポリメラーゼIIIプロモータによって制御されるシングルガイドRNAと、2'OMe RNA塩基と2'OMe DNA塩基からなるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでいる。これらの構成要素は、トランスフェクション剤を用いて細胞核に送達し、RCas9複合体を形成するmRNAに結合させることができる。その後RCas9複合体は、標的RNAと結合したまま核から出ていくため、蛍光顕微鏡法で標的mRNA局在化を追跡することができる。他の実施態様により、治療や研究のため、細胞内のRNAの量を測定することや、スプライシング因子または他のRNA改変酵素にCas9を融合させてRNAの特徴を変化させることができる。いくつかの実施態様では、RCas9は、細胞核に送達された後、局在化させる、または検出する、または測定する標的mRNAとともに外に輸送される。
【0101】
本明細書では、RCas9 RNAの追跡を、RNA追跡に関して確立されている方法と比較した。確立されている方法(例えば蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)は、興味ある細胞を殺す必要があるのに対し、RCas9は、生きた細胞の中で高品質のRNA追跡測定を提供した。さらに、RCas9は、生きた細胞の細胞質の中を移動するRNAの追跡をサポートした。われわれは、mRNAの検出に応答して細胞核からRCas9がともに外に輸送されることも明らかにする。分割されたタンパク質または不活性化されたタンパク質をRCas9に付着させるとともに、他方の半片または活性化されたペプチドを細胞質に局在させることにより、RNAの量に応じて分割されたタンパク質の活性をうまく再現することができた。
【0102】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示したRCas9を用いて生きた細胞の中でRNAを追跡する。RNAを追跡する現在の方法では、興味ある細胞を殺す必要がある。多くの疾患が変化したRNA局在化パターンを特徴としているため、薬の開発には、病気の細胞内で、薬による治療に反応する内在性RNAを追跡する方法が必要になろう。
【0103】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示したRCas9を用い、遺伝子発現に基づいて細胞の非破壊的単離を行なう。RCas9系を用いて生きた細胞内のRNAの量を蛍光から読み取ることができる。こうすることで、患者の血液中を循環しているがん細胞、または患者生検サンプルからのがん細胞を単離することができよう。これらの稀な細胞は、その発現に基づいてRCas9を用いて単離し、増殖させ、研究することができよう。すると、MRIまたはPETというイメージング法で同定するのに十分なくらい腫瘍が大きくなるよりもはるか前にがんを検出することが可能になる。
【0104】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示したRCas9を用いて生きた細胞内でRNAの組成を改変する。RNA改変酵素に融合されるCas9が結合を強制する能力は、急速に成長しているRNAの代謝とプロセシングの分野に基本的なツールを提供するであろう。ヒトゲノム計画は、RNAの重要性の研究へと焦点を移してきているが、RNAプロセシングの帰結を研究したり利用したりするための操作ツールは大きく欠けている。
【0105】
Streptococcus pyogenes CRISPR-Cas系は、Cas9タンパク質とガイドRNAを同時に細胞に送達することで特定のDNA配列を認識できるようにしているため、ゲノム編集と遺伝子調節のツールとして広い応用を獲得している。本明細書に提示したように、プログラム可能なやり方でRNAに結合してそのRNAを開裂させることのできるCas9の発見と操作は、本明細書に提示した系と方法が普遍的な核酸認識技術として有用であることを示している。可能な実施態様では、本明細書に例示したRNAを標的とするCas9(RCas9)により、生きた細胞内でのRNA基質の同定と操作が可能になるため、細胞での遺伝子発現の研究が促進され、最終的には患者特異的、疾患特異的な診断と治療のツールを生み出すことができると考えられる。本明細書では、RCas9の開発について記述し、それを、RNAターゲティングの以前の方法(そこには、操作されたRNA結合タンパク質や、他のタイプのCRISPR-Cas系が含まれる)と比較する。転写ダイナミクスのライブでのイメージングから、患者特異的治療法や合成生物学での応用まで、可能な利用例を提供する。
【0106】
はじめに
【0107】
ヒトゲノム計画が10年以上前に終了したことで、健康と疾患における細胞の挙動の遺伝的基礎を理解するさまざまな基礎が確立している。それ以来、機能的遺伝子エレメントの重要性と、それら機能的遺伝子エレメントがどのようにして遺伝子発現に影響を与えるかを理解することに研究がシフトしてきている(ENCODEプロジェクトコンソーシアム2012年「ヒトゲノム内のDNAエレメントの総合百科事典」Nature 第489巻:57~74ページ)。一個人の全細胞がほぼ同じDNAを含有しているため、細胞のタイプ(例えば心筋細胞とニューロン)の機能の違いは、ゲノムの転写活性な部分と密接に結びついている。その結果として、個々の細胞の中で転写されたRNAを測定すると細胞が何であるかが明らかになり、健康状態と疾患状態が識別される。例えば特定のRNA転写産物の集団の発現レベルから、自閉症スペクトラム障害のモデルにおけるニューロン発達の疾患関連異常が同定された(Pasca SP、Portmann T、Voineagu I、Yazawa M他、2011年「iPSC由来のニューロンを用いたティモシー症候群に関連する細胞表現型の解明」Nat Med第17巻:1657~1662ページ)。別の一例として、マイクロRNA(miR)として知られるある種の小さな非コードRNAの発現が、発がん性形質転換の特徴的な印であるとますます認識されるようになっている。腫瘍マイクロRNAシグネチャは、悪性腫瘍のタイプとそれに関連する臨床上の帰結を知らせるバイオマーカーとして役立つ可能性がある(Lu J、Getz G、Miska EA、Alvarez-Saavedra E他、2005年「マイクロRNAの発現プロファイル がヒトのがんを分類する」Nature第435巻:834~838ページ;MacKenzie TA、Schwartz GN、Calderone HM、Graveel CR他、2014年「miR-21の間質発現が三重陰性乳がんにおける高リスク群を同定する」Am J Pathol第184巻:3217~3225ページ)。これらの研究とそれ以外の研究により、生体内の情報をもたらしてくれるRNAを追跡することが、疾患のモデル化、診断、潜在的な治療法にとってのカギとなるであろうことが明確になっている。
【0108】
特定のRNAが発現すると明らかに細胞の状態と挙動に影響が及ぶため、これらRNAのプロセシングに影響を与える機構を解明することが非常に重要になってきている。タンパク質をコードするRNAは、転写された後に一連の成熟工程を経る。そうした工程には、選択的スプライシング、核輸送、細胞内ターゲティング、ターンオーバー、時空間的に制限された翻訳が含まれる。これらの工程にはRNA結合タンパク質(RBP)が関与していて、これら因子とそのRNA標的の機能不全がヒトで疾患を引き起こす(Gerstberger S、Hafner M、Ascano M、Tuschl T 2014年「ヒトRNA結合タンパク質の進化的保存および発現と、ヒト遺伝子疾患におけるその役割」Adv Exp Med Biol 第825巻:1~55ページ)。機能を獲得した伸長RNAエレメントによって起こるRBPの細胞内分布の変化も、ヒトの疾患における一般的なテーマになりつつある。例えばC90RF72遺伝子内のイントロン性7ヌクレオチド反復の伸長が、前頭側頭葉変性症と筋萎縮性側索硬化症という2種類の一般的な神経変性疾患で最も頻繁に変異している遺伝子座であることが最近判明した(DeJesus-Hernandez M、Mackenzie IR、Boeve BF、Boxer AL他、2011年「C90RF72の非コード領域における伸長GGGGCC 6ヌクレオチド反復が、染色体9pと結び付いた FTDとALSを引き起こす」Neuron第72巻:245~256ページ;Renton AE、Majounie E、Waite A、Simon-Sanchez J他、2011年「C90RF72 における6ヌクレオチド反復伸長が、染色体9p21と結び付いたALS-FTDの原因である」Neuron第72巻:257~268ページ)。内在性RNAのプロセシングを標的とする生体内アプローチが、発生と疾患の基本的な生物学的理解への道と、治療法への新たな道を開くと考えられる。
【0109】
最近の刊行物は、RNAに誘導されたRNA認識の潜在力に注目している(O'Connell MR、Oakes BL、Sternberg SH、East-Seletsky A他、2014年「CRISPR/Cas9によるプログラム可能なRNA認識と開裂」Nature第516巻:263~266ページ)。本明細書では、哺乳動物細胞でDNAを認識するのに用いられてきたStreptococcus pyogenes CRISPR-Cas系のエフェクタヌクレアーゼであるCas9の目的変更と操作が、RNAプログラム型RNA認識技術としての潜在力を持つことに注目する。
【0110】
現在のRNA認識様式とその限界
【0111】
デザイナーRNA認識因子の開発が、生物学と医学における多彩な進歩をサポートするであろう。デザイナーRBPは、RNAのプロセシングと量を標的とした改変とは別に、RNA認識に応答したまったく新しい活動(例えば、細胞のタイプを非侵襲的に検出するためのシグナルを発生させること、または特定のタイプの細胞でだけシグナル伝達タンパク質とその基質の会合を促進することのほか、特定の発現プロファイルを示す細胞を除去することさえも)を生み出せる可能性がある。この幅広い潜在力が、デザイナーRNA認識因子を開発する動機となってきたが、成功の程度はさまざまである。
【0112】
理想的なRNA認識システムがあれば、内在性RNAへの強くかつ特異的な結合が可能になり、簡単かつ予測可能なターゲティングにとって十分なモジュール性を示すと考えられる。操作された天然の核酸結合タンパク質に基づいたプログラム可能なRNA認識への進出が見られるが、そのタンパク質は、いくつかの用途では強力であるものの、プログラム可能性が制限されるという問題を抱えている、および/または特異的であるには短すぎる認識配列しか認識しない、および/または可能なあらゆるRNA配列を標的とするにはタンパク質反復配列の大きなライブラリを必要とする。CRISPR-Cas9(クラスター化されて規則的な間隔で配置された短い回文反復)系は、タンパク質による核酸の直接的認識とは逆に、細菌に適合した免疫系を形成し、RNAに誘導されたタンパク質を用いて侵入する核酸を認識する。
【0113】
1つの明白な戦略は、天然のRNA結合タンパク質ドメインの改変または連結である。カノニカルRNA認識タンパク質ドメイン(例えばKH、RRM)の同定が、その天然のRNA標的を同定して改変する試みへとつながった(Beuth B、Pennell S、Arnvig KB、Martin SR他、2005年「結核菌NusA-RNA複合体の構造」EMBO J第2A巻:3576~3587ページ;Braddock DT、Louis JM、Baber JL、Levens D他、2002年「一本鎖DNA に結合したFBPからのKHドメインの構造とダイナミクス」Nature第415巻:1051~1156ページ;Laird-Offringa IA、Belasco JG 1995年「インビトロ遺伝子選択によるRNA結合タンパク質の分析:U1Aを対応するRNA標的にロックするのに重要なアミノ酸残基の同定」Proc Natl Acad Sci USA 第92巻:11859~11863ページ)。これらのドメインは、4~5個の連続したヌクレオチドのグループとなってRNAに結合する。その結果、5塩基RNA配列をすべて認識するには1000を超えるタンパク質ドメインのライブラリが必要とされる。逆に、PUFタンパク質は、個々の単一のRNAヌクレオチドを認識する反復ドメインを含有しているため、可能なあらゆるRNA配列を認識するのに原則として4個の反復しか必要でない。天然のPUFタンパク質の結晶構造は、2001年に初めて報告され(Wang X、Zamore PD、Hall TM 2001年「Pumilio相同ドメインの結晶構造」Mol Cell 第7巻:855~865ページ)、特定のRNA塩基の認識が、骨格ではなくてアミノ酸側鎖によってほぼ決まることが明らかになった。彼らの最初の発見以来、PUFタンパク質のRNA特異性が解明されてきており(Filipovska A、Razif MF、Nygard KK、Rackham O 2011年「PUFタンパク質によるRNA認識のための普遍的コード」Nat Chem Biol第7巻:425~427ページ)、多彩なRNA標的に対するPUFが設計されてきた(Wang Y、Cheong CG、Hall TM、Wang Z. 2009年「設計された特異性を持つようにスプライシング因子を操作する」Nat Methods第6巻:825~830ページ)。さらに、疾患関連RNAを標的として破壊するため、PUFを核溶解ドメインに融合させることに成功している(Zhang W、Wang Y、Dong S、Choudhury R他、2014年「(CUG)(n)反復を標的とする部位特異的RNAエンドヌクレアーゼを操作することによる1型筋ジストロフィーの治療」Molecular therapy: J Am Soc Gene Ther第22巻:312~320ページ)。しかしPUFタンパク質は連続した8個の塩基しか認識することができず、局所的二次構造がRNA親和性に大きな影響を与える可能性があるため、その有用性は限定される(Zhang W、Wang Y、Dong S、Choudhury R他、2014年「(CUG)(n)反復を標的とする部位特異的RNAエンドヌクレアーゼを操作することによる1型筋ジストロフィーの治療」Molecular therapy: J Am Soc Gene Ther第22巻:312~320ページ)。
【0114】
RNA誘導型核酸認識のためのCas9
【0115】
PUFタンパク質、KHタンパク質、RRMタンパク質は、RNAを認識するのにタンパク質-RNA相互作用に頼っているのに対し、核酸塩基対合は、より簡単なRNA認識を提供する。CRISPR-Cas細菌免疫系は、DNAを認識するのにRNAが関与する塩基対合を利用しており、哺乳動物細胞内のDNAを標的とすることへと目的変更して成功している(Mali P、Yang LH、Esvelt KM、Aach J他、2013年「Cas9を通じた、RNAに誘導されたヒトゲノム操作」Science 第339巻:823~826ページ;Cho SW、Kim S、Kim JM、Kim JS. 2013年「Cas9 RNAに誘導されたエンドヌクレアーゼを用いた、ヒト細胞における標的ゲノム操作」Nat Biotechnol 第31巻:230~232ページ;Hwang WY、Fu YF、Reyon D、Maeder ML他、2013年「CRISPR-Cas系を用いたゼブラフィッシュにおける効率的なゲノム編集」Nat Biotechnol 第31巻:227~229ページ;Jinek M、East A、Cheng A、Lin S他、2013年「ヒト細胞におけるRNAプログラム型ゲノム編集」eLife 第2巻:e00471ページ)。細菌と古細菌では、CRISPR-Casが、典型的には、トランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)とCRISPR RNA(crRNA)と呼ばれる一対のRNAに会合したヌクレアーゼからなる適応免疫系の機能的コアを形成している。tracrRNAとcrRNAは、塩基対合することによってCRISPRヌクレアーゼをガイドしてプラスミドDNAまたはバクテリオファージDNAに侵入させ、そのヌクレアーゼによる開裂を起こさせる(図1A)。最近、tracrRNAとcrRNAの人工的組み合わせ(シングルガイドRNA(sgRNA)と呼ばれる)を作製することによりS. pyogenesからのII型CRISPR-Cas系が目的変更されて哺乳動物DNAが標的にされた(Mali P、Yang LH、Esvelt KM、Aach J他、2013年「Cas9を通じた、RNAに誘導されたヒトゲノム操作」Science第339巻:823~826ページ;Cong L、Ran FA、Cox D、Lin S他、2013年「CRISPR/Cas系を用いた多重ゲノム操作」Science 第339巻:819~823ページ)。sgRNA配列によってDNAターゲティングが容易になったため、RNAプログラム型Cas9は、ゲノム編集と転写改変に関する評価の高い手段であることが急速に判明しつつある。RNAターゲティングへのCas9の最近の応用は、操作された結合タンパク質からRNAプログラミングに基づいたプログラム可能なRNA認識への同様のシフトをサポートすることができる。
【0116】
RNAを標的とするCas9(RCas9)はDoudna研究室からの最近の研究の主題であり、その研究では、インビトロにおいて、Cas9がsgRNAに強力かつ特異的に結合し、その後sgRNAを開裂させることが示されている。図1では、Cas9によるRNA認識へのこの新しいアプローチをDNA認識と比較してある。Cas9によるDNAターゲティングは、2つの特徴を必要とする。すなわち、プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)と呼ばれるNGG配列と、PAMに隣接したアンチセンス配列を持つsgRNAである(図1A)。これら2つの特徴は、Cas9によるRNAターゲティングでも必要とされるが、PAMモチーフは、ハイブリダイズしたアンチセンスオリゴヌクレオチド(PAMmer)によって提供される。このPAMmerは、標的RNAにハイブリダイズした後にsgRNAアンチセンス配列に隣接する(図1B)。
【0117】
O'ConnellとOakesらも、PAMmerのPAMモチーフを超えた5'延長部が、sgRNAによってプログラムされた特異的RNA認識を生じさせるのに必要であることを示した。この延長部を欠いたより短いPAMmerは、sgRNA配列とは独立なCas9:sgRNA結合を促進するが、sgRNAによってプログラムされたRNA認識の配列特異性は、PAMmerの延長部によって再現される。この効果は、Cas9が関与してPAMmer RNA標的二本鎖構造がほどけることのエネルギーコスト(そのエネルギーは、sgRNAが標的とハイブリダイズするときにだけ回収される)に起因する可能性がある。sgRNAはコードすることが可能で小さい(約100塩基)ため、特定の遺伝子ネットワークを標的とするための、またはトランスクリプトームをスクリーニングするためのsgRNAの大きなライブラリを作る力がある。逆に、操作されたRNA認識タンパク質のサイズは、大規模スクリーニングを簡単にサポートすることはない。修飾されたオリゴヌクレオチドPAMmerの大きなライブラリを作製して配布することに伴うコストはこのスケールでうまくいく上での1つの障害となるだろうが、将来の発展によって修飾が最小限のオリゴヌクレオチドを利用できるようになると、低コストでハイスループットのオリゴヌクレオチド合成技術に影響が及ぶ可能性がある。
【0118】
上記の研究は、インビトロでだけ実施され、生きた細胞または生物におけるRNAを標的とするCas9(RCas9)の強度と特異性はまだわかっていない。ゲノムDNAに関するCRISPR-Cas標的外活性の最近の測定(Cencic R、Miura H、Malina A、Robert F他、2014年「プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)-遠位配列がCRISPR Cas9 DNA標的開裂に関与する」PLoS One 第9巻:el 09213ページ;Kuscu C、Arslan S、Singh R、Thorpe J他、2014年「ゲノムワイドな分析により、Cas9 エンドヌクレアーゼが結合する標的外部位の特徴が明らかになる」Nat Biotechnol 第32巻:677~683ページ)と同様、RNAでプログラム可能な細胞内RNA結合タンパク質の潜在力を評価するには、RCas9結合特異性の大規模な検証が必要になろう。S. pyogenes CRISPR-Cas系が核酸を標的とする包括的な能力は、DNAを標的とする周知の能力とともに、今や確立されつつある。情報ボックスに、RCas9を生体内に適用できるよういするために克服すべき主な課題を記載する。
【0119】
情報ボックス:RCas9の生体内応用
【0120】
生きた生物内でRCas9がRNAを標的とする潜在力の評価は、当然、ゲノム編集に関して報告されているCas9の生体内応用を調べることから始まる。Cas9とコグネイトsgRNAの送達は、さまざまな手段によって実現されてきており、その中には、Cas9とsgRNAをコードするウイルスの利用(Swiech L、Heidenreich M、Banerjee A、Habib N他、2015年「CRISPR-Cas9を用いた哺乳動物の脳での遺伝子機能の生体内点検」Nature Biotechnol 第33巻:102~106ページ;Maddalo D、Manchado E、Concepcion CP、Bonetti C他、2014年「CRISPR/Cas9系を用いた発がん性染色体再構成の生体内操作」Nature 第516巻:423~427ページ)、薬で誘導できるCas9の発現を可能にするトランスジェニック動物の利用(Dow LE、Fisher J、O'Rourke KP、Muley A他、2015年「CRISPR-Cas9を用いて誘導可能な生体内ゲノム編集」Nature Biotechnol doi:10.1038/nbt.3155)、アニオン性融合タンパク質とカチオン性脂質によるCas9タンパク質とsgRNAの送達(Zuris JA、Thompson DB、Shu Y、Guilinger JP他、2015年「カチオン性脂質を媒介としたタンパク質送達によりインビトロと生体内でタンパク質に基づく効率的なゲノム編集が可能になる」Nature Biotechnol 第33巻:73~80ページ)が含まれる。例えばCas9に融合したスプレー因子を興味あるプレmRNAに向けることを通じてRCas9によりRNAスプライシングを改変することは、適切な血清型のアデノウイルスを用いて中枢神経系で実現することができよう。他の組織でのスプライシングの改変は、Cas9とそれに対応するsgRNAの薬税誘導発現と組織特異的発現を利用して実現することができよう。しかしどの場合でも、RCas9 PAMmerを適切な組織に送達する効率的な手段を突き止めねばならない。Cas9またはsgRNAの発現、または興味ある組織へのCas9またはsgRNAの送達を制限し、PAMmerを全身投与することにより、組織特異的なRCas9活性を実現できる可能性がある。非常に安定な修飾されたオリゴヌクレオチド(例えば2'-O-(2-メトキシメチル)- RNA)は、アンチセンスRNAの生体内への効率的な送達と生体内ターゲティングをサポートしてきており(Meng L、Ward AJ、Chun S、Bennett CF他、2015年「長い非コードRNAを標的とすることによるアンジェルマン症候群の治療に向けて」Nature 第518巻:409~412ページ;Hua Y、Sahashi、Hung G、Rigo F他、2010年「CNS におけるSMN2スプライシングをアンチセンスで補正することが、III型SMAマウスモデルにおける壊死を救う」Genes Dev 第24巻:1634~1644ページ;Passini MA、Bu J、Richards AM、Kinnecom C他、2011年「マウスCNSに送達されたアンチセンスオリゴヌクレオチドが重症脊髄性筋萎縮症の症状を改善する」Science Transl Med 第3巻:72ra18ページ)、RCas9系でも有用であることが証明される可能性がある。したがってこれらのアプローチならびにそれと同様のアプローチを利用して生体内にRCas9系の1つまたは2つの構成要素を送達するのに用いられてきたが、どの組み合わせが3つの構成要素すべての効果的な再現を可能にするのかを調べることが残されている。RNA-DNAハイブリッドにおいてRNAを分解する細胞酵素であるRNアーゼHによる認識に起因する標的RNAの破壊を阻止するには、PAMmerのさらなる改変が必要とされよう。RNAiマシナリーのリクルートを回避しつつターゲティングの特異性を維持するには、PAMmerの長さと改変を注意深く調節することが重要になろう。RCas9はインビトロでDNAを開裂させるように見えないが、不注意によるDNAターゲティングが生体内で起こる可能性がある場合にはそれが見られる状態になる。結局のところ、生体内でのRCas9の成功は、最終的にRCas9の特異性と、RCas9が標的RNAを不安定にするかどうかや、その翻訳に干渉するかどうかに依存している。
【0121】
転写後遺伝子発現の調節
【0122】
本明細書に例示したRCas9ポリペプチドは、Cas9に固有のエンドヌクレアーゼ活性を利用した特定の転写産物の開裂を通じて遺伝子発現を弱めている(図2A)。RNA干渉(RNAi)はRNAの効果的な認識と開裂をサポートしているが、RCas9に基づく遺伝子ノックダウンは、RNAiマシナリーが存在していないか活性でない区画または細胞器官で有用である可能性がある。可能な実施態様では、RNAに対するRCas9の大きな親和性と、sgRNAとPAMmerの両方による二重認識により、siRNAやアンチセンスオリゴヌクレオチドよりも特異的RNA欠乏を多くすることが可能になる。表1では、RCas9のこの応用および他の応用を現在の方法と比較し、表2では、RNAノックダウンに関してRCas9をRNAiとより詳しく比較してある。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
遺伝子発現を低下させるのではなく増大させる効果的な方法はこれまで明確でなかった。可能な実施態様では、成熟メッセンジャーRNAを安定にする因子にCas9を融合させることにより、本明細書に提示した組成物と方法は、特定の転写産物からのタンパク質産生を増大させる(図2B)。可能な実施態様では、CRISPR 干渉(CRISPRi)と呼ばれるCRISPR-Cas系の別の置換は、(特定のゲノム遺伝子座に結合することによって遺伝子発現を増大させるか抑制することのできる)ヌクレアーゼ-ヌルCas9(dCas9)に融合した転写調節因子に頼っている(Gilbert LA、Larson MH、Morsut L、Liu Z他、2013年「真核細胞におけるCRISPRを媒介としたモジュール型RNA誘導式転写調節」Cell 第154巻:442~451ページ;Qi LS、Larson MH、Gilbert LA、Doudna JA他、2013年「遺伝子発現の配列特異的制御のためのRNA誘導式プラットフォームとしてのCRISPRの目的変更」Cell 第152巻:1173~1183ページ)。このアプローチは、遺伝子発現に強い影響を及ぼすことができるが、RNAとタンパク質遺伝子産物の効果を分離することができない。Cas9を翻訳増大因子に融合させることにより、RCas9は、RNAの量を変えることなく特定の遺伝子のタンパク質発現を増加させて、タンパク質遺伝子産物に特有の重要性を測定することができる。
【0126】
細胞が遺伝子産物の活性を制御する別の手段は、RNAの局在化を通じてである。ニューロンでは、細胞体がシナプスから数センチメートル以上離れる可能性がある。これは、シナプスタンパク質を十分な濃度で蓄積させる上で問題である。シナプスの構造と活性(例えばシナプス後密度タンパク質95(PSD-95))に関与するmRNA(Muddashetty RS、Nalavadi VC、Gross C、Yao X他、2011年「miR-125a、FMRPリン酸化、mGluRシグナル伝達によるPSD-95 mRNA翻訳の可逆的抑制」Mol Cell 第42巻:673~688ページ)は、核から出た後、樹状細胞を通じ、作用部位の近くの翻訳される場所に輸送される(図2C)。Cas9を輸送因子に融合させることにより、RCas9系を細胞の選択された領域(例えばシナプス前末端またはシナプス後末端)に強制的に輸送するのに用いることができよう。損傷後にニューロンプロセスを再生させる場合、細胞骨格要素をコードするRNAの局在化が軸索の再成長にとって極めて重要であるいくらかの証拠がある(Shestakova EA、Singer RH、Condeelis J. 2001年「細胞の極性と有方向運動性の決定におけるβ-アクチンmRNA局在化の生理学的意味」Proc Natl Acad Sci USA 第98巻:7045~7050ページ;Donnelly CJ、Willis DE、Xu M、Tep C他、2011年「ZBP1の利用が限られていることで軸索mRNA局在化と神経再生能力が制限される」EMBO J 第30巻:4665~4677ページ)。この文脈でRNA局在化を操作する能力は、再生療法の重要な一部となる可能性がある。
【0127】
可能な実施態様では、RCas9を用いてRNAの組成を変化させる。プレmRNAスプライシングはmRNA生物発生における重要な工程であり、スプライシング因子をプレmRNAに束縛することで、配列が包含されるか排除されるかが変化することが示されている(Graveley BR、Maniatis T 1998年「SRタンパク質のアルギニン/セリンが豊富なドメインは、プレmRNAスライシングのアクチベータとして機能できる」Mol Cell 第1巻:765~771ページ)。例えばスプライシング因子RBFOX2は、選択される可能性のあるエキソンの上流に結合するか下流に結合するかに応じ、どのエキソンが含まれるかに影響を与えることが示されている(Lovci MT、Ghanem D、Marr H、Arnold J他、2013年「Rbfoxタンパク質は、進化的に保存されたRNA架橋を通じて選択的mRNAスプライシングを調節している」Nat Struct Mol Biol 第20巻:1434~1442ページ;Weyn-Vanhentenryck SM、Mele A、Yan Q、Sun S他、2014年「HITS-CLIPと統合モデリングが、脳の発達と自閉症に関係するRbfoxスプライシング調節ネットワークを規定する」Cell Rep 第6巻:1139~1152ページ;Yeo GW、Coufal NG、Liang TY、Peng GE他、2009年「幹細胞内のRNA-タンパク質相互作用のマッピングによってFOX2スプライシング調節因子のRNAコードが明らかになった」Nat Struct Mol Biol 第16巻:130~137ページ)。可能な実施態様では、スプライシング因子を注意深く選択してそれをCas9に融合させることによってデザイナースプライシング因子を作り出せる可能性があり、スプライス部位選択に対するそのデザイナースプライシング因子の影響は、RCas9配列の結合によって明らかにすることができる。例えば脊髄性筋萎縮症は遺伝子SMN1の欠失によって起こり、その結果としてニューロンが死ぬが、SMN1欠失細胞においてSMN2のスプライシングを強制的に変化させると、SMN1の活性を再現するSMN2アイソフォームを産生させることができる(Hua Y、Vickers TA、Okunola HL、Bennett CF他、2008年「hnRNP A1/A2 イントロン性スプライシングサイレンサーのアンチセンスマスキングがトランスジェニックマウスでSMN2のスプライシングを正しくする」Am J Hum Genet 第82巻:834~848ページ)。可能な実施態様では、このタイプの狙いを定めたスプライシング改変を本明細書に提示した組成物と方法で利用し、異常なスプライシングによって起こる多彩な疾患を治療する(Nissim-Rafinia M、Kerem B. 2002年「潜在的な遺伝子改変因子としてのスプライシング調節」Trends Genet 第18巻:123~127ページ)。
【0128】
これらは、本明細書に例示したRCas9を用いて細胞RNAの組成と細胞の挙動を変化させるほんのいくつかの例である。可能な実施態様では、普遍的核酸認識タンパク質として、本明細書に提示したCasタンパク質により特定のRNAをゲノム遺伝子座に向かわせることができる。例えば長い非コードRNA(lncRNA)は、特定のゲノム遺伝子座を認識して、関連するクロマチン修飾因子がゲノム組織に劇的な効果を及ぼすよう誘導する(Geisler S、Coller J. 2013年「予想外の場所にあるRNA:長い非コードRNAが多彩な細胞の文脈で機能する」Nat Rev Mol Cell Biol 第14巻:699~712ページ)。可能な実施態様では、RCas9を、直交したsgRNAを使用している別のCasタンパク質に融合させて用いると、同様にゲノム組織を変化させることができよう。標的となるRNAを選択した遺伝子座の近くに来させることにより、DNAとRNAに結合するこのCas融合体は、ゲノムのあらゆる文脈で、lncRNAの機能の研究をサポートすることができる。可能な実施態様では、直交するsgRNAを有する多数のCasタンパク質、例えばヌクレアーゼ-ヌルかつ活性なCasタンパク質を用いることにより、多数のRNAを同時かつ別々に改変することもできる。しかし他のCasタンパク質がRNAを認識できるかどうかは現在のところ明確でないため、RCas9が多数のRNAを同時に標的とすることができるかどうかを調べることが残されている(Esvelt KM、Mali P、Braff JL、Moosburner M他、2013年「RNAに誘導された遺伝子の調節と編集のための直交 Cas9タンパク質」Nat Methods 第10巻:1116~1121ページ)。
【0129】
イメージングへの応用
【0130】
最近開発されたいくつかのRNA認識ツールにより生きた細胞内の特定のRNA種のイメージングが可能になっているが、そのツールにはいくつかの欠点がある(優れた概説として、Rath AK、Rentmeister A 2014年「生きた細胞内のRNAイメージングのための遺伝的にコードされたツール」Curr Opin Biotechnol 第31C巻:42~49ページを参照されたい)。蛍光タンパク質との融合を通じてタンパク質を可視化するのと同様、RNAに基づいていて興味あるRNAに配列タグを組み込むことに頼る一群の系により、RNAの可視化が可能になる。それらタグは、そのRNAタグに強力かつ特異的に結合するタンパク質部分によって特異的に認識される。1つの人気あるアプローチは、蛍光タンパク質に融合されたバクテリオファージMS2コートタンパク質(MCP)を利用して(Bertrand E、Chartrand P、Schaefer M、Shenoy SM他、1998年「生きた酵母内のASH1 mRNA粒子の局在化」Mol Cell第2巻:437~445ページ)短いRNA構造モチーフ(いわゆる「ヘアピン」)を認識するというものである。結合しなかったプローブからのバックグラウンドの蛍光に起因する小さな信号対雑音比は、タンデム反復認識エレメントの長いアレイを組み込むことによって改善できる。このアプローチによって生きた細胞内に非常に豊富なRNAの効果的なイメージングが可能になった(Park HY、Lim H、Yoon YJ、Follenzi A他、2014年「生きたマウス内の標識された個々の内在性mRNAのダイナミクスの可視化」Science 第343巻:422~424ページ)が、そのように大きなタグはRNAの典型的な挙動を顕著に乱す可能性があるという懸念がある。別のアプローチは、外来性小分子蛍光体が結合した人工RNA配列タグを組み込むというものである(Paige JS、Wu KY、Jaffrey SR. 2011年「緑色蛍光タンパク質のRNA模倣体」Science 第333巻:642~646ページ;Strack RL、Disney MD、Jaffrey SR. 2013年「超折り畳みSpinach2 が、3ヌクレオチド反復含有RNAの動的な性質を明らかにする」Nat Methods 第10巻:1219~1224ページ)。このアプタマータグの中に蛍光体を固定化した後、量子収率を大きくすることによって、または蛍光体-クエンチャペアを分離することによって、またはFRETによって蛍光シグナルを発生させることができる(Paige JS、Wu KY、Jaffrey SR. 2011年「緑色蛍光タンパク質のRNA模倣体」Science 第333巻:642~646ページ;Strack RL、Disney MD、Jaffrey SR. 2013年「超折り畳みSpinach2が、3ヌクレオチド反復含有RNAの動的な性質を明らかにする」Nat Methods 第10巻:1219~1224ページ;Sunbul M、Jaschke A 2013年「蛍光体結合アプタマーを用いて細菌でRNAイメージングをするための、接触を媒介としたクエンチング」Angew Chem Int Ed Engl 第52巻:13401~13404ページ;Shin I、Ray J、Gupta V、Ilgu M他、2014年「RNA IMAGEタグレポータを用いて遺伝子発現をモニタするための、生きた細胞でのPol IIプロモータ活性のイメージング」Nucleic Acids Res 第42巻:e90ページ)。バックグラウンドの蛍光を抑制するための第3のアプローチは、天然または人工のRNA結合タンパク質を利用してRNA標的へとリクルートされるときに1つの機能的蛍光タンパク質を復元する2つのポリペプチドの発現である(Rackham O、Brown CM. 2004年「生きた細胞内のRNA-タンパク質相互作用の可視化: FMRPとIMP1がmRNA上で相互作用する」EMBO J 第23巻:3346~3355ページ)。これら3つの方法はすべて非常に有用であり、RNAの輸送と局在化のダイナミクスを研究するのに広く利用されているが、興味あるRNAのタグ付きバージョンが必要とされ、内在性遺伝子座の遺伝子を改変したり、RNAの外来性タグ付きバージョンを強制的に発現させたりする。例示すると、β-アクチン遺伝子の3'非翻訳領域(UTR)内に24個のMS2ヘアピンを有するノックインマウスに由来する細胞により、改変されたアレルからの転写をリアルタイムで可視化すること(血清刺激時の転写バーストの観察を含む)が可能になった(Lionnet T、Czaplinski、Darzacq X、Shav-Tal Y他、2011年「標識された内在性 mRNAを生体内で検出するためのトランスジェニックマウス」Nature Methods 第8巻:165~170ページ)。しかしMCP-GFP融合タンパク質を細胞に外部から送達する必要があるため、この系は高発現のRNAに限定される。さらに、MS2ヘアピンの占領が不完全であることで局所的シグナルが低下し、結合しないプローブに起因する大きなバックグラウンドノイズが発生する。(Fusco D、Accornero N、Lavoie B、Shenoy SM他、2003年「個々のmRNA分子が生きた哺乳動物細胞の中で確率的運動を示す」Curr Biol:第13巻:161~167ページ)。別の技術である分子ビーコンにより、改変されていない転写産物のイメージングが可能になるが、大きなノイズと厄介な送達という問題がある(Tyagi S、Kramer FR. 1996年「分子ビーコン:ハイブリダイズしたときに蛍光を出すプローブ」Nat Biotechnol 第14: 303~308ページ)。RCas9は、タグなしRNAを大きな特異性かつ小さなノイズで直接認識できるようにすることで、これらの課題を回避することができる。
【0131】
本明細書に例示したRCas9の別の応用により、1つ以上の内在性RNAの量および/または局在化を同時に可視化することが可能になる。ヌクレアーゼ-ヌルCas9を蛍光タンパク質に融合させることにより、特定のRNAまたはRNAスプライスバリアントの局在を可視化することができよう。可能な実施態様では、一対のCasタンパク質を分割された蛍光タンパク質(例えばVenus)の半片に融合させ(Ozawa T、Natori Y、Sato M、Umezawa Y 2007年「個々の生きた細胞内の内在性ミトコンドリアRNAのイメージングダイナミクス」Nat Methods 第4巻:413~419ページ)、RNA上の隣接した部位に向かわせる(図2E)。こうすることで、RNAの局在を完全な蛍光タンパク質よりも低いバックグラウンドで可視化すること、または個々の細胞のRNA含量を測定することが可能になろう。可能な実施態様では、この分割されたタンパク質というアプローチを利用して、スプライシングが異なる転写産物内の隣接したエキソンを標的とすることで、特定のRNAスプライスアイソフォームを発現する個々の細胞を同定して単離することが可能になる。可能な実施態様では、直交するsgRNAを有するCasタンパク質の同定により、多数の転写産物を標的として局在化と量の測定を同時に実現することが可能になるため、個々の細胞のRNAダイナミクスを生きた細胞で多重化測定することができる。
【0132】
可能な実施態様では、生きた細胞内での内在性RNAの局在化と量の測定への組成物と方法の応用が提供される。例えば体性幹細胞の特徴づけが難しい状態が続いている。なぜなら、稀なこれらの細胞をセルソーティングに基づいて同定して精製するための表面マーカーはほとんど存在しないからである。遺伝子発現プロファイリングが、稀なタイプの細胞を同定するための最も効果的な方法であり続けているが、可能な実施態様では、本明細書に提示したRCas9によってこのタイプの非破壊的測定が可能になるため、稀な細胞を確保し、増殖させ、単離して研究することができる。
【0133】
可能な実施態様では、RNA局在化のための組成物と方法が提供される。RNA局在化は、傷害に対する細胞の反応、ストレスに対する細胞の反応、細胞極性を促進するいくつかの挙動(例えば神経突起の伸長)に対する細胞の反応において重要である。ストレス顆粒は、RNAとタンパク質の一種のクラスターであり、そこにはmRNAとタンパク質が封鎖されていて、典型的には酸化ストレス、熱、ウイルス感染、低酸素血に反応して形成される(Kedersha N、Anderson P 2007年「哺乳動物のストレス顆粒とプロセシングボディ」Methods Enzymol 第431巻:61~81ページ)。RNA顆粒の異常な形成が多くの疾患に関与しているが、これら構造体のRNA要素は報告され始めたばかりである。可能な実施態様では、本明細書に提示した組成物と方法は、ストレス顆粒への内在性RNAの輸送のイメージングを可能にし、健康と疾患におけるストレス顆粒の役割の研究をサポートすることができる。疾患におけるRNA顆粒の重要性を理解するため、ストレスや疾患に反応した顆粒形成の時間分解測定や、薬のスクリーニングにRCas9を用いることができる。そこではRNAの局在化が、疾患の進行や損傷した組織の再生においてある役割を果たしている可能性がある。
【0134】
合成生物学への応用
【0135】
本明細書では、工業的に有用な方法と組成物、臨床で有用な方法と組成物、他の技術的有用性のある方法と組成物が提供される。工学指向のあらゆる分野と同様、本明細書では、多彩な用途に適合させることのできる柔軟なモジュール式プラットフォームが提供される。本明細書に例示したRCas9系は、高度にモジュール化されていてプログラム可能であるという性質があるため、合成生物学においてプラットフォーム技術として使用できる。例えば可能な実施態様では、Cas9タンパク質に分割された酵素を融合させると、標的RNAに結合(例えば、がんに関係するRNAの検出後、死を誘導する分割されたタンパク質が合体)したときその酵素の活性が再現される(図2G)。可能な実施態様では、次々に続くタンパク質/タンパク質相互作用が関与する経路を、本明細書に例示したCas9融合タンパク質間の相互作用の足場となるRNAを用いることによって再構築する。可能な実施態様では、本明細書に提示した足場タンパク質はキナーゼとその基質に結合してシグナル伝達経路の出力に強い影響を与えることができるため、RCas9ポリペプチドをタンパク質/タンパク質相互作用の足場形成に用い、シグナル伝達を遺伝子発現に依存して制御する。酵素の束縛に用いる別のグループは、薬前駆体であるメバロン酸塩の産生に関与することで、この小分子の産生を増やす(Dueber JE、Wu GC、Malmirchegini GR、Moon TS他、2009年「合成タンパク質足場が、代謝流量のモジュール式制御を提供する」Nat Biotechnol 第27巻:753~759ページ)。原則として、標的RNAにCas9融合タンパク質も強力に結合することで、次々に続くタンパク質相互作用または代謝産物のシャトリングに対して新たなレベルの制御がなされる。
【0136】
結論、一般的な懸念事項、可能なアプローチ
【0137】
RNAターゲティング法の進歩は、初期から、すなわちRBPドメインがRCas9にとって配列特異的決定基として役立つように改造され、RCas9の標的が単純な核酸ハイブリダイゼーションによって認識されるようになったときから、DNAターゲティング技術の発展と密に並行している。本明細書では、ジンクフィンガーヌクレアーゼとTALエフェクタヌクレアーゼが、最近、Cas9が結合したsgRNAによるDNA認識に取って代わられた。DNAターゲティングの用途では、Cas9とそのsgRNAは哺乳動物細胞の中で十分に安定かつ非毒性だが、RCas9系の3つの構成要素のすべて(Cas9、sgRNA、PAMmer)を効率的に送達できるかどうかと、それが可能だとして、協働して標的RNAにうまく結合するかどうかはまだ明確ではない。RNAプログラム型RNA認識という別のアプローチが目前にある。III-B型CRISPR-Cas系は、細菌の免疫における通常の活性の一部として、RNAを標的として開裂させることが知られている。Thermus thermophilus(Staals RH、Zhu Y、Taylor DW、Kornfeld JE他、2014年「Thermus thermophilusの III-A型CRISPR-Cas Csm複合体によるRNAターゲティング」Mol Cell 第56巻:518~530ページ)とPyrococcus furiosus(Yeo GW、Coufal NG、Liang TY、Peng GE他、2009年「幹細胞内のRNA-タンパク質相互作用のマッピングによって明らかにされた、FOX2スプライシング調節因子のためのRNAコード」Nat Struct Mol Biol 第16巻:130~137ページ)からのこれらCRISPR系のエフェクタ複合体は詳細に特徴づけられており、その核溶解活性がインビトロで再現されている。これら複合体がRNAを認識する天然の能力は魅力的だが、それぞれの複合体は、異なる6種類のタンパク質の1~4個のコピーからなる。そのため生体内で再構成するのは難しい可能性がある。Francisella novicidaからのCas9は、RNAによって誘導されてこの生物の特定の内在性RNAを標的とするが、選択されたRNAを標的とすることに関するこの系の柔軟性はまだ明確になっていない(Sampson TR、Saroj SD、Llewellyn AC、Tzeng YL他、2013年「CRISPR/Cas系は、細菌の自然免疫回避と毒性に関与する」Nature 第497巻:254~257ページ)。
【0138】
可能な実施態様では、RCas9ポリペプチドは、単純な塩基対合を通じてタグなしの内在性RNAを認識する。これは、RNAターゲティングにおける大きな利点であり、診断または治療の用途で特に重要である。可能な実施態様では、本明細書に例示したRCas9ポリペプチドとRCas9系は、細胞に効率的に送達され、協働してRNAを認識し、標的RNAの望まない不安定化や変化は最少であると同時に、ゲノムDNAと標的外転写産物を標的とすることも回避されるため、基礎生物学、応用生物学、医学におけるRCas9の新たな用途が提供される。
【0139】
本明細書に提示したデータは、本明細書に例示したRCas9ポリペプチドとRCas9系が、核酸プログラム型認識と、CRISPR/Casによる生きた細胞内のタグなしmRNA局在化の追跡にとって有効であることを示している。
【0140】
まとめ
【0141】
可能な実施態様では、本明細書において、Streptococcus pyogenesからのCRISPR/Casを用いたRNAプログラム型ゲノム編集のためのRCas9ポリペプチドとRCas9系が提供されることで、多彩な生物のゲノム遺伝子座の迅速かつ手軽な改変が可能になった。可能な実施態様では、CRISPR/Casに基づくゲノムツールと同様、RNAを標的として内在性RNA転写産物の改変とイメージングを可能にする柔軟な手段が提供されるが、たいていのRNA追跡法は、外来性タグの組み込みに頼っている。本明細書では、核酸をプログラムするやり方でヌクレアーゼ不活性なS. pyogenes CRISPR/Cas9がRNAに結合できて、生きた細胞の中での内在性RNAの追跡が可能になることを示す。核に局在化したRNAを標的とするCas9(RCas9)は、mRNA を標的とするsgRNAの存在下でだけ細胞質に輸送され、分布が蛍光インサイチュハイブリダイゼーションイメージングとよく相関することを示す。ストレス顆粒に輸送されるβ-アクチンmRNAの時間分解測定も示す。われわれの結果により、生きた細胞内において本明細書に例示したRCas9をRNAに結合させてRNAを追跡することが、プログラム可能なやり方で、遺伝的にコードされたタグを必要とせずに可能であることが確立される。
【0142】
はじめに
【0143】
クラスター化されて規則的な間隔で配置された短い回文反復(CRISPR)は、CRISPR 関連(Cas)ヌクレアーゼが遺伝材料に侵入するのをガイドするCRISPR RNAをコードすることにより、細菌と古細菌において適応免疫系の基礎を形成する(Wiedenheft, B.、Sternberg, S.H.、Doudna, J.A.(2012年)「細菌と古細菌におけるRNA誘導型遺伝子サイレンシング系」Nature第482巻:331~338ページ)。S. pyogenesのII型CRISPR系からのCas9は、真核生物でのゲノム操作のために目的変更され(Hwang, W.Y.、Fu, Y.、Reyon, D.、Maeder, M.L.、Tsai, S.Q.、Sander, J.D.、Peterson, R.T.、Yeh, J.R.、Joung, J.(2013年)「CRISPR-Cas系を用いたゼブラフィッシュにおける効率的なゲノム編集」Nat Biotechnol第31巻:227~229ページ;Li, D.、Qiu, Z.、Shao, Y.、Chen, Y.、Guan, Y.、Liu, M.、Li, Y.、Gao, N.、Wang, L.、Lu, X.他、(2013年a)「CRISPR-Cas系を用いたマウスとラットにおける遺伝性遺伝子ターゲティング」Nat Biotechnol第31巻:681~683ページ;Nakayama, T.、Fish, M.B.、Fisher, M.、Oomen-Hajagos, J.、Thomsen, G.H.、Grainger, R.M.(2013年)「Xenopus tropicalisにおけるCRISPR/Cas9を媒介とした単純かつ効率的な標的突然変異誘発」Genesis第51巻:835~843ページ;Sander, J.D.、Joung, J.K.(2014年)「ゲノムの編集、調節、ターゲティングのためのCRISPR-Cas系」Nat Biotechnol第32巻:347~355ページ;Yang, D.、Xu, J.、Zhu, T.、Fan, J.、Lai, L.、Zhang, J.、Chen, Y.E.(2014年)「RNA誘導型Cas9ヌクレアーゼを用いたウサギにおける効果的な遺伝子ターゲティング」J Mol Cell Biol第6巻:97~99ページ)、他の用途、例えば遺伝子発現改変(Qi, L.S.、Larson, M.H.、Gilbert, L.A.、Doudna, J.A.、Weissman, J.S.、Arkin, A. P.、Lim, W.A.(2013年)「遺伝子発現を配列特異的に制御するためのRNA誘導型プラットフォームとしてのCRISPRの目的変更」Cell第152巻:1173- 1183ページ)やイメージング(Chen, B.、Gilbert, L.A.、Cimini, B.A.、Schnitzbauer, J.、Zhang, W.、Li, G.W.、Park, J.、Blackburn, E.H.、Weissman, J.S.、Qi, L.S.他、(2013年)「最適化されたCRISPR/Cas系による生きたヒト細胞内のゲノム遺伝子座の動的イメージング」Cell第155巻:1479~1491ページ))のためのDNAターゲティングの効率的な手段であることが急速に証明されつつある。Cas9とそれに関連するシングルガイドRNA(sgRNA)は、DNAを標的とするのに2つの極めて重要な特徴を必要とする。すなわち、プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)として知られる5'-NGG-3'の形の短いDNA配列(ただし「N」は任意のヌクレオチドである)と、sgRNAに対してアンチセンスである、反対側のDNA鎖上の隣接配列である。CRISPR/Cas9は、sgRNAの中の短いスペーサ配列によって全面的に決まる特異性でのDNA認識をサポートすることにより、比類なく柔軟で手軽なゲノム操作法を提供する。逆に、細胞のRNA含量の操作は問題があるままに留まっている。RNA干渉とアンチセンスオリゴヌクレオチドを通じて遺伝子発現を低下させるロバストな手段は存在しているが、翻訳後の遺伝子発現の調節に関する他の重要な側面(例えば選択的スプライシング、細胞内輸送、時空間的に制限された翻訳)はほとんどが扱いにくい。
【0144】
特定のDNA配列を認識するためのジンクフィンガーヌクレアーゼ集合体(Urnov, F.D.、Rebar, E.J.、Holmes, M.C.、Zhang, H.S.、Gregory, P.D.(2010年)「操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼを用いたゲノム編集」Nat Rev Genet第11巻:636~646ページ)および転写アクチベータ様エフェクタヌクレアーゼ(TALEN)と同様、特定のRNA配列を認識するための努力の焦点はRNA結合ドメインの操作であった。例えばPumilioとFBF相同(PUF)タンパク質は、個々の塩基を認識することのできる明確なモジュールを有する。しかし各モジュールはRNA標的ごとに設計し直して確認せねばならず、多くて8個の連続した塩基しか認識することができないため、トランスクリプトームの中でだけRNA基質を認識することの有用性は限定される。タンパク質を特定のRNA基質にリクルートするための別のアプローチは、RNAアプタマーを標的RNAに導入し、コグネイトアプタマー結合タンパク質(例えばMS2コートタンパク質)が特異的かつ強力に会合できるようにすることである。(Fouts, D.E.、True, H.L.、Celander, D.W.(1997年)「翻訳リプレッサであるR17/MS2コートタンパク質による断片化されたオペレータ部位の機能的認識」Nucleic Acids Res第25巻:4464~4473ページ)。このアプローチにより、生きた細胞内のRNA局在化を高感度で時間を追って追跡することが可能になった(Buxbaum, A.R.、Wu, B.、Singer, R.H.(2014年)「ニューロンでの単一のβ-アクチンmRNAの検出により、その翻訳可能性を調節する機構が明らかになる」Science第343巻:419~422ページ)が、このアプローチは、細胞内での標的RNAの厄介な遺伝子操作に頼っているため、任意のRNA配列を認識するのには適していない。CRISPR/Cas9に基づくDNA認識と同様、核酸特異性だけに基づいていて遺伝子操作やRNA結合タンパク質のライブラリを必要としないプログラム可能なRNA認識ができれば、研究者の能力が大きく拡張されることで、哺乳動物のトランスクリプトームを改変することや、トランスクリプトームを操作することが可能になろう。
【0145】
CRISPR/Cas9系は二本鎖DNAを認識するように進化してきたが、インビトロでの最近の研究から、標的RNAにハイブリダイズする外来性付加オリゴヌクレオチド(PAMmer)の一部としてPAMを提供することにより、Cas9を用いたRNAのプログラム可能なターゲティングが可能であることが示された(O'Connell, M.R.、Oakes, B.L.、Sternberg, S.H.、East-Seletsky, A.、Kaplan, M.、Doudna, J.A.(2014年)「CRISPR/Cas9によるプログラム可能なRNA認識と開裂」Nature第516巻:263~266ページ)。PAM配列に頼るCas9標的探索機構(Sternberg, S.H.、Redding, S.、Jinek, M.、Greene, E.C.、Doudna, J.A.(2014年)「RNA誘導型のCRISPR関連エンドヌクレアーゼCas9によるDNA の点検」Nature第507巻:62~67ページ)を利用すると、PAMmer/RNAハイブリッド内のミスマッチPAM配列が、コードDNAではなくRNAだけを標的とすることが可能になる。無細胞抽出液の中でCas9が大きな親和性と特異性でRNAを認識することと、Cas9を用いたゲノムターゲティングが成功したことは、CRISPR/Cas9が生きた細胞内でプログラム可能なRNAターゲティングをサポートする潜在力を持つことを示している。
【0146】
CRISPR/Cas9が生きた細胞の中でプログラム可能なRNA結合タンパク質として作用する可能性を評価するため、核局在化シグナルをタグとして付けたヌクレアーゼ欠損Cas9-GFP融合体の核外輸送の程度を測定した。Cas9融合体の核外輸送を促進するのにsgRNAだけで十分であり、標的となるmRNAの量、または標的となるmRNAによってコードされるタンパク質の量には影響を与えないことを明らかにする。RNA を標的とするCas9(RCas9)のシグナルパターンが、確立されたタグなしRNA標識法に対応するかどうかを評価するため、RCas9の分布と、β-アクチンmRNAを標的とする蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)の分布を比較した。FISHとRCas9の共局在化の間には大きな相関があり、それはPAMmerの存在に依存していることを観察した。これは、効率的なRNAターゲティングにはPAMが重要であることを示している。確立されたタグなしRNA局在化測定(例えばFISH)とは異なり、RCas9は、RNA局在化の時間分解測定をサポートする。われわれは、酸化ストレスによって誘導されるRNA/タンパク質蓄積物(ストレス顆粒と呼ばれる)へのβ-アクチンの局在化を追跡することにより、この能力を明らかにする。この研究により、RCas9が生きた細胞内のRNAに結合する能力を持つことが確立され、ゲノムに加えてトランスクリプトームをCRISPR/Cas9によって操作するための基礎が築かれる。
【実施例0147】
実施例1: GAPDH mRNAを標的とするsgRNAの存在下での、RNAを標的とするCas9の核外輸送
【0148】
RCas9がヒト細胞内の特定のmRNA基質を認識する能力を最初に評価するため、強化型GFP(EGFP)をタグとして有する核局在化シグナル含有Cas9をmRNAとともに核外輸送することができるかどうかを、そのmRNAを認識するように設計したコグネイトsgRNAとPAMmerの存在下で調べた(図3A)。ヌクレアーゼ-ヌルCas9(dCas9)をN末端の1つのSV40核局在化シグナル配列とC末端の2つのSV40核局在化シグナル配列の間に挟み、EGFPのコード配列を融合させ、クローニングして哺乳動物発現ベクター(NLS-dCas9-2xNLS-EGFP、dCas9-GFPと略記する)に入れた。別の発現ベクターでは、Cas9との会合を改善する拡張されたステム-ループ構造と、部分的転写終止配列を排除する変異(Chen, B.、Gilbert, L.A.、Cimini, B.A.、Schnitzbauer, J.、Zhang, W.、Li, G.W.、Park, J.、Blackburn, E.H.、Weissman, J.S.、Qi, L.S.他(2013年)「最適化されたCRISPR/Cas系による生きたヒト細胞内のゲノム遺伝子座の動的イメージング」Cell第155巻:1479~1491ページ)を有する改変されたsgRNA足場をU6 snRNAポリメラーゼIIIプロモータによって制御した。混合されたDNAと2'-O-メチル(2'OMe)RNAオリゴヌクレオチドとしてのPAMmerを標準的なホスホロアミダイト化学を利用して合成し、HPLCを利用して精製した(標的、sgRNA、PAMmerの配列に関しては表3と表4を参照されたい)。この考え方を証明するため、GAPDH mRNAの3'非翻訳領域(3'UTR)を標的とするsgRNA-PAMmerペアを設計した(図3B)。陰性対照として、ヒト細胞には存在しないλバクテリオファージを標的とするsgRNA-PAMmerペアを設計した(「N/A」sgRNAとPAMmer)。陰性対照であるsgRNAおよびPAMmerとともに一過性にトランスフェクトされたdCas9- GFPは、ほとんど核にだけ存在し、細胞質にGFPシグナルを含む細胞は3%であることが観察された(図3B図3C)。陰性対照であるPAMmerを、GAPDH を標的とするPAMmerで置き換えると、結果は同じである。しかしGAPDH を標的とするsgRNAプラスミドを同時にトランスフェクトすると、GAPDH を標的とするPAMmerありとなしでは、細胞質の中にGFPシグナルを持つ細胞がそれぞれ24%と17%であることがわかった(図3B図3C)。どちらの場合にも、GAPDHを標的とするsgRNAによって細胞質にGFPシグナルを持つ細胞の割合は、GAPDHを標的としないsgRNAと比べて有意に増加する。sgRNA種配列にわずか4塩基のミスマッチがあるだけで核外輸送がなくなることも観察した(図6参照)。結局のところ、これらの結果は、RNAへのCas9:sgRNAの結合はPAMmerとは独立だがPAMmerによって強化されることを示すインビトロでの以前のRNAプル-ダウン実験と整合している(O'Connell他、2014年)。したがってわれわれは、sgRNA-PAMmerが生きた細胞内の特定の豊富なmRNAを認識するようにプログラムすることで、RCas9を細胞質に再局在化させうることを明らかにしている。
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
実施例2:RNAを標的とするCas9を用いたmRNAの認識は、RNAの翻訳または安定性を変化させない
【0152】
RCas9と標的mRNAの間の相互作用をさらに特徴づけるため、RCas9を、RNA追跡のために一般に用いられているMS2バクテリオファージからのRNAタグ(Fouts, D.E.、True, H.L.、Celander, D.W.(1997年)「翻訳リプレッサであるR17/MS2コートタンパク質による断片化されたオペレータ部位の機能的認識」Nucleic Acids Res第25巻:4464~4473ページ)と、以前に確認されているsgRNA:PAMmerペアが標的とする配列(O'Connell, M.R.、Oakes, B.L.、Sternberg, S.H.、East-Seletsky, A.、Kaplan, M.、Doudna, J.A.(2014年)「CRISPR/Cas9によるプログラム可能なRNA認識と開裂」Nature第516巻:263~266ページ)を有するウミシイタケルシフェラーゼの3'非翻訳領域(UTR)に向かわせた(図3D)。EGFPを認識する抗体を用いたRNA免疫沈降により、コグネイトsgRNAとPAMmerの存在下ではdCas9-EGFPへのルシフェラーゼmRNAの会合が、非ターゲティングsgRNA、またはスクランブルドPAMmer、または単独のEGFPタンパク質と比べて4倍になることが明らかになった(図3E)。次に、ルシフェラーゼmRNAの量に対するRCas9ターゲティングの効果を定量RT-PCRによって測定した。ターゲティングRCas9系、または非ターゲティングRCas9系、または単独のEGFPの存在下で、MS2タグを付けたルシフェラーゼmRNAの量に有意な差は観察されなかった。逆に、MS2アプタマーを認識するMS2コートタンパク質(MCP)に融合させたEGFPの共発現は顕著な安定化効果を持っており、それはMS2系によるRNAの分解抑制に起因する可能性がある(Garcia, J.F.、Parker, R.(2015年)「酵母mRNAに結合したMS2コートタンパク質が5' から3'への分解を阻止し、mRNA分解産物を捕捉する:MS2-MCP系によるmRNAの局在化にとっての意味」RNA第21巻:1393~1395ページ)(図3F)。翻訳に対するRCas9ターゲティングの潜在的な効果(図3G)も検討し、ターゲティングsgRNAとPAMmerの存在は、非ターゲティングCas9と比べてタンパク質のレベルに有意な変化を起こさないことを観察した。われわれの結果は、sgRNAとPAMmerを有するRCas9でRNAを認識すると、MCPタグを付けたGFPを通じたターゲティングに伴うRNAレベルとタンパク質レベルの擾乱が回避されることを明らかにしている。
【0153】
実施例3: RNAを標的とするCas9シグナルの分布は、確立されたタグなしRNA局在化測定法と相関している
【0154】
RCas9シグナルの分布が、RNA局在化を測定するための直交法と相関しているかどうかを評価するため、β-アクチンの3'UTRを標的とし(「+」sgRNAと「+」PAMmer)、dCas9-2xNLS-mCherryシグナルをβ-アクチンmRNAについてのRNA蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)(図4A)および非ターゲティングsgRNA+PAMmer(λバクテリオファージに対応する配列を有する「-」sgRNAと「-」PAMmer)と比較した。FISHとRCas9の間で画素ごとの重複を記述するマンダーの重複係数(Manders, E.M.、Stap, J.、Brakenhoff, G.J.、van Driel, R.、Aten, J.A.(1992年)「DNAの二重標識化と共焦点顕微鏡法によって分析した、S期の間の三次元複製パターンのダイナミクス」J Cell Sci第103巻(Pt 3):857~862ページ)を比較することにより(図4B)、sgRNAが主にFISHとRCas9の間の共局在を説明し、重複が最大になるのはβ-アクチンmRNAを標的とするsgRNAとPAMmerが両方とも存在しているときであることを明らかにした。非ターゲティングPAMmerは重複が有意に少ない結果となり(図4B)(p=0.035、マン-ホイットニー検定)、細胞質の中にRCas9シグナルが広がったパターンを生み出していて、FISHによって明らかになった高度に局在したパターンとは対照的である(図4A)。この結果は、無細胞系でRCas9が非ターゲティングPAMmerとより弱く結合することが観察されたことと整合している(O'Connell, M.R.、Oakes, B.L.、Sternberg, S.H.、East-Seletsky, A.、Kaplan, M.、Doudna, J.A.(2014年)「CRISPR/Cas9によるプログラム可能なRNA認識と開裂」Nature第516巻:263~266ページ)。非ターゲティングsgRNAではRCas9シグナルが主に核に保持されることになるため、細胞質RCas9シグナルとFISHの間の相関は小さい(図4A図4B)。FISHとRCas9シグナルのシグナル分布の間の重複を最大にするには、コグネイトsgRNAとPAMmer両方の存在が必要であると結論される。
【0155】
実施例4:ストレス顆粒に輸送されるRNAの時間変化の追跡
【0156】
局所的翻訳の促進に加え、mRNAの輸送もタンパク質産生の時間的プログラミングに影響を与えることができる(Buchan, J.R.、Parker, R.(2009年)「真核生物ストレス顆粒:翻訳の詳細」Mol Cell第36巻:932~941ページ)。そのため、RCas9を用いてmRNAがストレス顆粒として知られるタンパク質-RNA凝集体に至るまでを追跡できるかどうか調べた。ストレス顆粒は、異常に形成される可能性のある翻訳に影響しないタンパク質とRNAの蓄積であり、神経系での疾患の進行に影響を与える可能性がある(Li, Y.R.、King, O.D.、Shorter, J.、Gitler, A.D.(2013年b)「ALS 発症のるつぼとしてのストレス顆粒」J Cell Biol第201巻:361~372ページ)が、生きた細胞内で内在性RNAがこれら構造体に向かう運動を追跡できる手段は限られている(Bertrand, E.、Chartrand, P.、Schaefer, M.、Shenoy, S.M.、Singer, R.H.、Long, R.M.(1998年)「生きた酵母内のASH 1 mRNA粒子の局在化」Mol Cell第2巻:437~445ページ)。β-アクチンmRNAは、酸化ストレスを受けている間はストレス顆粒に局在することが知られている(Unsworth, H.、Raguz, S.、Edwards, H.J.、Higgins, C.F.、Yague, E.(2010年)「mRNAのストレス顆粒封鎖からの逃亡は、小胞体への局在化によって指示される」FASEB J 第24巻:3370~3380ページ)ため、RCas9と、ストレス顆粒のためのよくわかっているマーカーであるRas GTPアーゼ活性化タンパク質結合タンパク質1(G3BP1)(Tourriere, H.、Chebli, K.、Zekri, L.、Courselaud, B.、Blanchard, J.M.、Bertrand, E.、Tazi, J.(2003年)「RasGAP関連エンドヌクレアーゼG3BPがストレス顆粒を集合させる」J Cell Biol第160巻:823~831ページ)に融合させたmCherryを用い、β-アクチンmRNAを同時に追跡した。亜ヒ酸ナトリウムを適用して細胞ストレスを誘導すると、非ターゲティングsgRNAと非ターゲティングPAMmerの存在下ではなく、β-アクチンを標的とするRCas9系の存在下でだけ、G3BP1陽性凝集体へのRCas9シグナルの蓄積が観察された(図5A)。RCas9凝集体とG3BP1凝集体の間の重複の程度を定量し、ストレス顆粒の大半がRCas9凝集体と重複することを明らかにした(図5B)。次に、生きた細胞内で、ストレスを受けた細胞内のRCas9シグナルの時間変化を追跡した(図5C)。RCas9シグナルは、β-アクチンmRNAを標的とするsgRNAとPAMmerの存在に依存してG3BP1陽性凝集体に蓄積することが観察された(図5C)。ストレス顆粒の中にRCas9シグナルが蓄積する速度と程度は、ストレッサーである亜ヒ酸ナトリウムの用量に依存することも観察された(図5D)。これらの結果は、時間分解定量的RNA局在化の測定をするための手段としてのRCas9の潜在力を示している。
【0157】
考察
【0158】
この研究により、われわれの知る限り、RCas9を生きた細胞の中で用い、簡単にプログラムされたsgRNAとPAMmerによって全面的に決まる特異性で標的RNA(例えばmRNA)に結合させることができるという原理の最初の証明が与えられる。可能な実施態様では、トランスクリプトームの中で一意的に識別するのに十分な長さのRNA配列を認識することをサポートするRCas9ポリペプチドとRCas9系(複合体)が提供される。これは、RNA認識配列の短さという問題と、それぞれのRNA標的ごとにタンパク質を設計し、組み立て、確認する必要がある操作されたRNA結合タンパク質(例えばPUFタンパク質)(Cheong, C.G.、Hall, T.M.(2006年)「Pumilio反復のRNA配列特異性を操作する」Proc Natl Acad Sci USA 第103巻:13635~13639ページ;Wang, X.、McLachlan, J.、Zamore, P.D.、Hall, T.M.(2002年)「ヒトpumilio相同ドメインによるRNAのモジュール式認識」Cell第110巻:501~512ページ)とは対照的である。他のCRISPR/Cas系が、細菌(Hale, C.R.、Zhao, P.、Olson, S.、Duff, M.O.、Graveley, B.R.、Wells, L.、Terns, R.M.、Terns, M.P.(2009年)「CRISPR RNA-Casタンパク質複合体によるRNA誘導型RNA開裂」Cell 第139巻:945~956ページ;Sampson, T.R.、Saroj, S.D.、Llewellyn, A.C.、Tzeng, Y.L.、Weiss, D.S.(2013年)「CRISPR/Cas系は、細菌の自然免疫回避と毒性に関与する」Nature第497巻:254~257ページ)または真核生物(Price, A.A.、Sampson, T.R.、Ratner, H.、Grakoui, A.、Weiss, D.S.(2015年)「真核細胞におけるCas9を媒介としたウイルスRNAのターゲティング」Proc Natl Acad Sci USA第112巻:6164~6169ページ)でRNAと結合することが明らかにされているが、これらの系は、RNA標的をDNA標的と区別することができないか、まだ明らかになっていないRNAターゲティング規則を特徴とするか、哺乳動物細胞の中で再構成することが難しい可能性のある大きなタンパク質複合体に頼っている。最適なRCas9パラメータを決めるには、sgRNAスペーサの長さ(Fu, Y.、Sander, J.D.、Reyon, D.、Cascio, V.M.、Joung, J.(2014年)「短縮されたガイドRNAを用いたCRISPR-Casヌクレアーゼ特異性の改善」Nat Biotechnol第32巻:279~284ページ)、PAMmerの長さ、化学的修飾を変えたさらなる研究が必要になろう。
【0159】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示した核タンパク質複合体は、PAMmerオリゴヌクレオチドを含んでいない。「一本鎖標的核酸を修飾するための方法と組成物」(WO 2015089277 Al)に記載されているRCas9系は、PAMmerオリゴヌクレオチドを利用している。RNAを標的とするRCas9ポリペプチドとシングルガイドRNAを含むがPAMmerオリゴヌクレオチドは含まない独自の核タンパク質複合体を用いることにより、PAMmerの不在下でこの系が標的RNAを認識して改変することを明らかにした。PAMmerの不在にもかかわらず、この系に関するわれわれの結果は、(1)標的となるRNAが非常に効果的に改変されることと、(2)生きた真核細胞の中でRNAが認識されることを示している。この2構成要素系は完全にコード可能であるという性質を有するため、DNAの送達をサポートするウイルスベクター、またはナノ粒子、または他の賦形剤を用いてわれわれの系を治療の文脈で展開することができる。PAMmerは、安定化させて細胞溶解活性から保護するため化学的修飾を必要とすることが理由でDNAの中にコードすることができないため、PAMmerを必要とする初期の系は完全にコード可能ではなかった。
【0160】
本明細書に例示したRCas9の別の応用は、選択的スプライシングを受けるエキソンに隣接する分割された蛍光タンパク質またはスプライシング因子を通じてRNAのスプライシングを測定すること、または変化させることである。可能な実施態様では、本明細書に例示したRCas9は核酸でプログラムすることができるという性質があるため、RNAの多重化ターゲティング(Cong, L.、Ran, F.A.、Cox, D.、Lin, S.、Barretto, R.、Habib, N.、Hsu, P.D.、Wu, X.、Jiang, W.、Marraffini, L.A.他(2013年)「CRISPR/Cas系を用いた多重化ゲノム操作」Science第339巻:819~823ページ)と、直交sgRNA(Esvelt, K.M.、Mali, P.、Braff, J.L.、Moosburner, M.、Yaung, S.J.、Church, G.M.(2013年)「RNAに誘導された遺伝子の調節と編集のための直交 Cas9タンパク質」Nat Methods第10巻:1116~1121ページ)に結合するCas9タンパク質の利用が可能になる。そのため多数の標的RNAに対する別々の活性を同時にサポートすることができる。可能な実施態様では、本明細書に例示したRCas9によるRNAターゲティングは、特定の健康関連遺伝子または疾患関連遺伝子の発現パターンを認識し、遺伝子発現の変化または標的RNAへの酵素の連結を通じて細胞の挙動を再プログラムするためのセンサーの発達をサポートする(Delebecque, C.J.、Lindner, A.B.、Silver, P.A.、Aldaye, F.A.(2011年)「合理的に設計したRNA組立体を用いた細胞内反応の組織化」Science第333巻:470~474ページ;Sachdeva, G.、Garg, A.、Godding, D.、Way, J.C.、Silver, P. A.(2014年)「RNA足場での酵素の生体内共局在化が、幾何学的なやり方で代謝産生を増加させる」Nucleic Acids Res第42巻:9493~9503ページ)。可能な実施態様では、Cas9を生体内送達することが試みられている(Dow, L.E.、Fisher, J.、O'Rourke, K.P.、Muley, A.、Kastenhuber, E.R.、Livshits, G.、Tschaharganeh, D.F.、Socci, N.D.、Lowe, S.W.(2015年)「CRISPR-Cas9を用いた、誘導可能な生体内ゲノム編集」Nat Biotechnol第33巻:390~394ページ;Swiech, L.、Heidenreich, M.、Banerjee, A.、Habib, N.、Li, Y.、Trombetta, J.、Sur, M.、Zhang, F.(2015年))。可能な実施態様では、CRISPR-Cas9を用いた哺乳動物の脳内での遺伝子機能の生体内検査に本明細書に提示したRCas9を用いることができる。Nat Biotechnol第33巻:102~106ページ;Zuris, J. A.、Thompson, D.B.、Shu, Y.、Guilinger, J. P.、Bessen, J.L.、Hu, J.H.、Maeder, M.L.、Joung, J.、Chen, Z.Y.、Liu, D.R.(2015年)。可能な実施態様では、カチオン性脂質が関与する本明細書に例示したRCas9の送達が提供され、インビトロと生体内で、タンパク質に基づく効率的なゲノム編集が可能になる(Nat Biotechnol第33巻:73~80ページ)。こうした努力は、既存のオリゴヌクレオチド化学(Bennett, C.F.、Swayze, E.E.(2010年)「RNAを標的とする治療薬:治療プラットフォームとしてのアンチセンスオリゴヌクレオチドの分子機構」Annu Rev Pharmacol Toxicol第50巻:259~293ページ)と組み合わされることで、本明細書に提示したRCas9系を生体内送達して生きた生物の中でRNAプロセシングの多くの側面を標的として改変することをサポートできると考えられる。
【0161】
実験手続き
【0162】
プラスミドの構成、PAMmerの合成、標的部位の選択
【0163】
dCas9-2xNLS配列を、N末端に1つのSC40核局在化シグナル(NLS)のタグが付いていて、pcDNA 3.1(Invitrogen社、カールズバッド、カリフォルニア州)の中でギブソン・アセンブリを用いてEGFPまたはmCherryに融合されたpHR-SFFV-dCas9-BFP-KRAB(Stanley QiとJonathan Weissmanからの寄贈、Addgeneプラスミド#46911)から増幅した。N末端にNLSが欠けているバージョンも構成した。sgRNA足場コンストラクトを構成するため、改変されたsgRNA足場を有するヒトU6ポリメラーゼIIIプロモータ(Chen他、2013年)を、sgRNA足場の5'末端にBbsI制限部位を有するgBlockとしてIDT社から購入し(図6の配列参照)、ギブソン・アセンブリを用いてpBlueScript II SK (+) (Agilent社、サンタ・クララ、カリフォルニア州)の多重クローニング部位にクローニングした。sgRNA配列をコードするリン酸化されたオリゴヌクレオチドを、BbsIで消化させたsgRNA足場コンストラクトに連結して組み込み、GAPDH mRNA、β-アクチンmRNA、ウミシイタケルシフェラーゼmRNAの3'UTRを標的とするsgRNAを作製した(図6参照)。プルダウン実験と量の実験のためのルシフェラーゼ-PESTコンストラクトは、プラスミドxyz(Jens Lykke-Anderson、UCSDからの寄贈)から改変した。pCMV-ウミシイタケルシフェラーゼは、同じコンストラクトでMS2標的部位とRCas9標的部位が欠けている1つのバージョンである。
【0164】
IDTアンチセンスオリゴヌクレオチド設計ツールとマイクロアレイプローブ設計ツールPicky(Chou他、2004年)とOligoWiz(WernerssonとNielsen、2005年)の組み合わせを用いてRCas9標的部位を選択した。PAM配列を超えて5'末端に8塩基を持つ高信頼性部位に対するPAMmerを設計した。PAMmerを、混合された2'OMe RNA塩基とDNA塩基で構成し、HPLCによって精製した(Integrated DNA Technologies社、コラルヴィル、アイオワ州)。
【0165】
細胞系
【0166】
U2OS細胞とHEK293T細胞を、10%ウシ胎仔血清、グルタマックス、非必須アミノ酸(Invitrogen社)を補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の中で増殖させた。標準的な方法を用いて細胞をTrypLE EXPRESS(Invitrogen社)とともに3~4日ごとに継代培養し、37℃、5%CO2の湿潤なインキュベータの中に維持した。
【0167】
RCas9を用いたGAPDH mRNAとβ-アクチンmRNAのターゲティング
【0168】
上記のようにして培養したU2OS細胞を継代培養して約80%の集密度にした。ガラス底96ウエルプレートまたはチェンバースライドを、20μl/mgのフィブロネクチンを含むPBSで37℃にて2時間かけて被覆した後、フィブロネクチン溶液を吸引し、20,000個の細胞を各ウエルに播種した。16時間後、リポフェクタミン3000(Invitrogen社)を製造者の指示に従って用いて細胞にsgRNAプラスミドとdCas9-2xNLS-EGFPプラスミドをトランスフェクトした。これらの実験では、トランスフェクトされた全タンパク質負荷がさまざまな用量のsgRNAとdCas9の間で同じになるようにするため、pCMV-ウミシイタケルシフェラーゼも同時にトランスフェクトした。sgRNAプラスミドと(N末端NLSを有する)dCas9-EGFPプラスミドの重量比は、それぞれ5:1~2.5:1の範囲であった。ただしdCas9-EGFPの量は、トランスフェクトした全材料の10%に固定した。プラスミドをトランスフェクトした直後、リポフェクタミンRNAiMax(Invitrogen社)を製造者の指示に従って用いてPAMmerをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞をPBSで洗浄し、3.7%パラホルムアルデヒドを含むPBSで固定し、4℃の70%エタノールで1時間かけて透過性にし、DAPIを含むProlong Gold Antifade封入剤(Invitrogen社)を用いて取り付けた。Olympus FV1000共焦点顕微鏡を用いて共焦点顕微鏡法を実施した。
【0169】
個々の細胞の核と細胞質における平均シグナルを測定することにより、GAPDHの3'UTRを標的とするsgRNAとPAMmerの存在下でのRCas9の核輸送を分析した。細胞質シグナルの平均値が核シグナルの平均値よりも10%超大きい細胞は、細胞質シグナルを持つと見なした。
【0170】
RNA免疫沈降
【0171】
上記のようにして培養したHEK293T細胞を継代培養して約80%の集密度にし、600,000個の細胞を、ポリ-L-リシンで被覆した6ウエル組織培養プレートの各ウエルに播種した。16時間後、細胞に、上記のRCas9系(2×内部NLSタグを有するdCas9-GFP)か、MS2-EGFPまたはEGFPをコードするプラスミドを、CMVプロモータによって制御されるモデルウミシイタケルシフェラーゼmRNAをコードするプラスミドとともにトランスフェクトした。30時間後、増殖培地を吸引し、細胞をPBSで洗浄した。1%パラホルムアルデヒドを含むPBSを細胞に適用し、室温で10分間インキュベートした後、溶液を吸引し、細胞を冷たいPBSで2回洗浄した。次に、細胞を冷たいPBSの中で壁から掻き取り、細胞懸濁液を800×gで4分間遠心分離して細胞をペレットにした。細胞をさらに1回洗浄した後、RIPA緩衝液の中にプロテアーゼ阻害剤(Roche社)とともに再懸濁させ、BIORUPTOR(商標)超音波処理装置の中で5分間超音波処理した(50%デューティサイクル、1分間の期間)。高速遠心分離の後に不溶性材料をペレットにし、上清を、マウス抗GFP抗体(Roche社)で覆われたプロテインG DYNABEADS(商標)(Invitrogen社)に適用した。4℃で一晩インキュベートした後、ビーズ上清を残し、ビーズを、0.02%トゥイーン20を含有するRIPA緩衝液で3回洗浄し、DNアーゼ緩衝液(350 mMトリス-HC1、pH 6.5;50mM MgCl2;5 mM DTT)で1回洗浄した。ビーズをDNアーゼ緩衝液の中に再懸濁させ、TURBO (商標)DNアーゼ(Invitrogen社)を添加して0.08単位/μlにした。ビーズを37℃で30分間インキュベートした後、プロテイナーゼK(NEB社)を添加して0.1 U/μlにし、振盪させながら37℃で30分間インキュベートした。次に、尿素を添加して2.5 Mにし、ビーズを振盪させながら37℃で30分間インキュベートした。ビーズ上清を回収し、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)抽出を2回続けて実施した後、クロロホルム抽出を3回実施した。RNAを沈降させ、ランダム六量体プライマーを用いてSuperscript III(商標)(Invitrogen社)で逆転写し、qPCRを利用してビーズ上のウミシイタケルシフェラーゼRNAの相対量を上清と比較した(プライマーの配列に関しては表5を参照されたい)。
【0172】
【表5】
【0173】
RCas9がRNAの安定性と翻訳に及ぼす影響の測定
【0174】
HEK293T細胞を上記のようにして培養し、継代培養し、96ウエルまたは12ウエルの培養プレートに播種し、24時間後にその細胞に、RCas9系(2×内部NLSタグを有するdCas9-GFP)と、3'UTRにMS2結合部位とRCas9結合部位を有するウミシイタケルシフェラーゼコンストラクトを同時にトランスフェクトした。タンパク質の量の測定において、CMVによって制御される少量のホタルルシフェラーゼベクター(トランスフェクトする全プラスミドの5%)をトランスフェクション対照として同時にトランスフェクトした。RNA安定性測定では、トランスフェクションの24時間後にRNAを単離し、DNアーゼで処理し、dT(20)プライマーを製造者の指示に従って用いてSuperscript III(商標)(Invitrogen社)で逆転写した。次に、GAPDHに対するウミシイタケルシフェラーゼcDNAの量をqPCRで測定した。翻訳研究では、Dual Luciferase Kit(Promega社)を製造者の指示に従って用いてウミシイタケとホタルのルシフェラーゼタンパク質を測定した。
【0175】
β-アクチンmRNAの蛍光インサイチュハイブリダイゼーション
【0176】
β-アクチンmRNAを標的とするRCas9系をトランスフェクトした24時間後に、Quasar 670(商標)(VSMF-2003-5、Biosearch Technologies, Inc.社、ペタルマ、カリフォルニア州)で標識されていてヒトβ-アクチンmRNAを認識するStellaris FISHプローブを細胞にハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションは製造者の指示に従って実施した。Olympus FV1000共焦点顕微鏡を用いて共焦点顕微鏡法を実施した。
【0177】
蛍光インサイチュハイブリダイゼーションとRCas9のための重複分析
【0178】
画像分析ソフトウエアFIJI(商標)(Schindelin, J.、Arganda-Carreras, I.、Frise, E.、Kaynig, V.、Longair, M.、Pietzsch, T.、Preibisch, S.、Rueden, C.、Saalfeld, S.、Schmid, B.他、(2012年)「Fiji:生物学における画像分析のためのオープンソースプラットフォーム」Nat Methods 第9巻:676~682ページ)からのColoc 2プラグインを用い、FISHと、β-アクチンmRNAを標的とするRCas9(2×内部NLSタグを有するdCas9-GFP)の間の共局在化分析を実施した。トランスフェクトしたdCas9-EGFPが同レベルである個々の細胞の細胞質を選択し、デフォルトパラメータを用いてColoc 2分析を実施した。各条件における60個超の細胞について、FISHシグナルとRCas9の重複の程度を記述するマンダーの重複係数を両側マン-ホイットニーU検定で計算した。
【0179】
ストレス顆粒に輸送されるβ-アクチンmRNAの追跡
【0180】
CRISPR/Cas9を用いてRas GTPアーゼ活性化タンパク質結合タンパク質1(G3BP1)のC末端に融合させたmCherryを使用してHEK293T細胞系を遺伝子操作した。簡単に述べると、mCherry ORFと、ピューロマイシン選択カセットと、G3BP1遺伝子座に向かう隣接した1.5 kbの相同アームからなるドナープラスミドを構成した。G3BP1のC末端を標的とするsgRNA配列をpSpCas9(BB)-2A-GFP(pX458)(Feng Zhangからの寄贈、Addgeneプラスミド#48138)にクローニングし、Fugene HD(Roche社)を製造者の指示に従って用いてドナープラスミドを同時にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、1μg/mlのピューロマイシンを含む増殖培地を用いて細胞を14日間選択し、mCherry陽性クローンを選択し、PCRによってスクリーニングした。
【0181】
上記のようにして、少なくとも1つの改変されたアレルを有するクローンを、フィブロネクチンで被覆したガラスチェンバースライドに播種し、β-アクチンmRNAの3'UTRを標的とするRCas9をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、ステージインキュベータを備えるZeiss LSM 810(商標)共焦点顕微鏡を用いて細胞を撮影し、亜ヒ酸ナトリウムを50~200μMの範囲の濃度で細胞に適用した。細胞を湿潤雰囲気中で37℃、5%CO2に維持し、一定の間隔で撮影した。
【0182】
ストレス顆粒に輸送されるβ-アクチンmRNAの分析
【0183】
G3BPl-mCherry凝集体が重複している領域のRCas9チャネル内の平均シグナル強度を各時点で記録した。G3BPl-mCherry凝集体を取り囲むRCas9チャネル内の平均シグナル強度をバックグラウンドとして記録して以前の値から差し引くことにより、ストレス顆粒におけるバックグラウンド調製済みのRCas9シグナルを得た。
【0184】
実施例5:RCas9を用いたRNA反復の追跡と操作
【0185】
プラスミドの構成、PAMmerの合成、トランスフェクション
【0186】
dCas9-2xNLS配列を、C末端に2つのSC40核局在化シグナル(NLS)のタグが付いていて、pcDNA 3.1(Invitrogen社、カールズバッド、カリフォルニア州)の中でギブソン・アセンブリを用いてEGFPまたはmCherryに融合されたpHR-SFFV-dCas9-BFP-KRAB(Stanley QiとJonathan Weissmanからの寄贈、Addgeneプラスミド#46911)から増幅した。sgRNA足場コンストラクトを構成するため、改変されたsgRNA足場を有するヒトU6ポリメラーゼIIIプロモータ(Chen他、2013年)を、sgRNA足場の5'末端に2つのBbsI制限部位を有するgBlockとしてIDT社から購入し(表1参照)、ギブソン・アセンブリを用いてpBlueScript II SK (+)(商標)(Agilent社、サンタ・クララ、カリフォルニア州)の多重クローニング部位にクローニングした。sgRNA配列をコードするリン酸化されたオリゴヌクレオチド(RNAのアンチセンス鎖上に5'CACCオーバーハング、センス鎖上に5'AAACオーバーハングを有する)を、BbsIで消化させたsgRNA足場コンストラクトに連結して組み込み、特定の転写産物を標的とするsgRNAを得た(表1参照)。SMAミニ遺伝子は、Adrian Krainer研究室からの寄贈であった。哺乳動物細胞系で発現させるため、DM1に関係する120回のCTG反復が、pcDNA 3.1プラスミド骨格内のCMVプロモータの下流に存在していた。SMG6遺伝子に由来するヒトcDNAからのPINドメインの増幅を通じてpCDNA3.1 PIN-XTEN-dCas9-2XNLSを構成した。XTENリンカーは、隣接するタンパク質ドメインを単離するのに使用される可撓性リンカーである。Open Biosystem Human ORFeome(商標)からのFOX2の増幅を通じてpCDNA 3.1 FOX2-dCas9-2xNLSを構成し、ギブソン・アセンブリを用いてdCas9-2XNLSとともに組み立てた。
【0187】
すべての実験で、リポフェクタミン3000(Life Technologies社、カールズバッド、カリフォルニア州)を製造者の指示に従って用いた。96ウエル形式でトランスフェクトした100 ngの全プラスミドにつき、5 ngのCas9プラスミドと、25 ngのsgRNAプラスミドをトランスフェクトした。イメージング実験では、Cas9のGFPタグ付きバージョンを、20 ngのCAGまたはGGGGCC(配列ID番号19)反復プラスミドとともに用いた。開裂実験では、Cas9のPINタグ付きバージョンを反復プラスミドと同じ量で使用した。RNAスプライシング実験では、96ウエル形式でさまざまな量のpCDNA 3.1 FOX2-dCas9-2xNLS をウエル1つにつき1~25 ngの範囲でトランスフェクトした。図7B図7C図7F図7Gは、COS-7細胞で実施した実験から作成し、図7D図7Eは、HEK293T細胞で実施した。
【0188】
MBNL1再分布実験(図7F)では、リポフェクタミン3000を製造者の指示に従って用い、pcDNA 3.1 MBNL1-EGFPだけを、またはpcDNA 3.1 MBNL1-EGFPとpCDNA 3.1 CTG 105とRCas9-PINを、またはpcDNA 3.1 MBNL1-EGFPとpCDNA 3.1 CTG 105とsgRNAとRCas9-PINをCosM6細胞にトランスフェクトした。細胞をPBSで洗浄し、4%PFAで10分間固定し、4℃の冷たい70%エタノールを一晩用いて透過状態にした。CAG10-Cy3プローブを以前に報告されているようにして用いて細胞でRNA FISHを実施した。Zeiss蛍光顕微鏡を20倍と60倍の倍率で用いてEGFPとCy3の蛍光を可視化した。
【0189】
PAMmerを、混合された2'OMe RNA塩基とDNA塩基で構成し、HPLC(Integrated DNA Technologies社、コラルヴィル、アイオワ州)によって精製した。
【0190】
細胞系
【0191】
HEK293T細胞とCOS-7細胞を、10%ウシ胎仔血清、グルタマックス、ペニシリン/ストレプトマイシン、非必須アミノ酸(Invitrogen社)を補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の中で増殖させた。標準的な方法を用いて細胞をTrypLE EXPRESS(Invitrogen社)とともに3~4日ごとに継代培養し、37℃、5%CO2の湿潤なインキュベータの中に維持した。
【0192】
RT-PCR
【0193】
SMN2ミニ遺伝子スプライシング実験では、Qiagen RNAeasy(商標)カラムを用いてRNAを抽出し、DNアーゼで処理し、逆転写(Superscript III(商標)、Life Technologies社)し、PCR(Phusionポリメラーゼ、Life Technologies社)を製造者の指示に従って実施した。PCR産物をアガロースゲル上で走らせ、Sybr Safeゲル染色(Life Technologies社)を利用してUVイメージャで画像を取得した。
【0194】
RNA FISH
【0195】
培地を細胞培養スライドから取り出し、細胞をPBS(pH 7.4)でやさしく洗浄した。細胞を室温で4%PFAを用いて10分間固定した後、室温でPBSを用いて3分間ずつ5回洗浄した。スライドをあらかじめ冷やしておいた70%エタノールの中で4℃にて一晩インキュベートした。エタノールをデカントし、スライドを、40%ホルムアミドを含む2×SSC(20 mlの脱イオン化ホルムアミド、5 mlの20×SSC、25 mlの超純粋/DEPC水)の中で室温にて10分間再度水和した。インキュベーションの進行中に、凍結乾燥させたDNAプローブ(CAG10-cy3(配列ID番号23)またはGGGGCC-cy3(配列ID番号19))を水の中で復元して500 ng/μlの濃度にした。必要な体積のプローブをピペットでPCR管に入れ、10分間99℃に加熱し、その直後に氷の上で10分間冷やした。prehybのため、細胞を必要な体積のプレハイブリダイゼーション緩衝液(下記のレシピ参照)とともに湿潤にしたチェンバーまたはインキュベータの中で37℃にて15分間インキュベートした。プローブをハイブリダイゼーション用緩衝液(下記のレシピ参照)に添加した。湿潤にしたチェンバーまたはインキュベータの中で、細胞を、プレハイブリダイゼーション緩衝液(ハイブリダイゼーション緩衝液=プレハイブリダイゼーション緩衝液+プローブ)の中で作製したDNAプローブと37℃にて2時間ハイブリダイズさせた。細胞を37℃にて40%ホルムアミド/2×SSCで3回、30分間ずつ洗浄した。切片を室温にてPBSで5分間洗浄した後、DAPIを含む封入剤VECTASHIELD(商標)(vector labs H-1200)を用いて取り付けた。
【0196】
ノーザンドットブロット
【0197】
材料:Bio-Rad Bio-Dot(商標)装置(1706545)、HYBOND+ナイロン膜(GE HealthCare社)、Whatman紙
【0198】
溶液:10 mM EDTA、20×SSC(Lonza 51205)、10×SSC(20×SSCから無RNアーゼ水で希釈)、37%ホルムアルデヒド、dH2O
【0199】
Tri試薬(Sigma Aldrich社)を製造者のプロトコルに従って用いてRNAを抽出した。レーンごとに5μgのRNAを用いた。RNAは必要になるまで-80℃で6ヶ月保管することができる。
【0200】
サンプルを調製するため、無RNアーゼ水に再懸濁させた(各サンプルにつき)5μgのRNAを無RNアーゼ水で希釈して50μlにした。30μlの20×SSCと20μlの37%ホルムアルデヒドを各サンプルに添加した。サンプルを60℃で30分間インキュベートした後、必要になるまで氷の上で保管した。
【0201】
Bio-Rad Bio-Dot(商標)装置(1706545)を製造者のプロトコルに従って組み立て、ウエルにエタノールを通すことによってエタノールで洗浄し、乾燥させた。その後、装置を分解した。Hybond+(商標)ナイロン膜と3枚のWhatman紙をBio-Dotのサイズに合わせて切断した。Hybond+膜を無RNアーゼ水に5分間浸した後、10×SSC緩衝液に移して5分間浸した。次にBio-Dot装置を以下のようにして組み立てた:上から下に向かって、Hybond+ナイロン膜、3×Whatman(商標)紙、ガスケット、ガスケット支持板、真空マニホールドを組み立てた後、この装置をきつくネジ止めし、実験室の真空系に接続した。真空をオンにし、静かな密封状態を優れた密封状態の印であると見なした。使用するウエルを濡らし、真空をオンにしたまま200μlの10×SSCを2回通過させることによって検査した。真空によってサンプルが膜を通過した後、ウエルを200μlの10×SSCで2回洗浄した。真空をオフにし、Bio-Dot 組立体を分解し、膜の架橋を、UV STRATALINKER(商標)の中で、サンプルの側を上にして1200 mJに等しい「自動架橋」設定にして実施した。この時点で膜を乾燥させ、室温で1ヶ月後まで保管することができる。
【0202】
プロービングのため、膜を10×SSCで濡らし、1×SSC(20×SSCから無RNアーゼ水で希釈)で洗浄した。ハイブリダイゼーション炉(Thermo Scientific社 6240TS)の中に入れたホウケイ酸塩製ハイブリダイゼーション管(Thermo Scientific社 ELED-110113)の中で、500μl のl mg/ml酵母tRNA(Thermo Fisher Scientific社 15401-029)を含む10 mlのExpress-Hyb(商標)ハイブリダイゼーション溶液(Clonetech社 636831)と膜のプレハイブリダイゼーションを50℃で2時間にわたって実施した。
【0203】
プレハイブリダイゼーション工程の間に、以下の反応物:
20μlの500 ng/μl CAG10プローブ
10μlの10×PNK緩衝液(NEB社)
5μlのT4 PNK(NEB社)
5μlのγ-P32 ATP(Perkin Elmer社)
60μlの水
の中のT4 PNKを用い、CAG 10(CAG CAG CAG CAG CAG CAG CAG CAG CAG CAG)(配列ID番号23)DNAプローブの末端にγ-P32 ATP(Perkin Elmer社 BLU502Z)を標識した
【0204】
この反応物を37℃で30分間インキュベートした。GE Lifesciences G-50カラム(28-9034-08)を製造者のプロトコルに従って用いてプローブをクリーンにした。プローブを100℃で5分間煮沸した後、使用するまで氷の上に保管した。(プレハイブリダイゼーションの2時間後に)プローブをプレハイブリダイゼーション緩衝液に直接添加し、ハイブリダイゼーションを45℃で一晩(12~16時間)実施した。ハイブリダイゼーションの後、express-hyb緩衝液をデカントし、膜を取り出して小さなガラス製の正方形の焼成皿/リザーバに入れ、0.1%SDSを含有する1×SSCを用いて室温で10分間洗浄した。さらに3枚の皿を、0.1%SDSを含有する0.5×SSCを用いて室温で10分間処理した。次にKimWipes(商標)(KimTech社)を用いて膜をブロットし、サランラップで包んだ。増感スクリーン(GE Healthcare社)を備えた放射能写真撮影カセット(GE Healthcare社)の中で-80℃にて膜を放射能写真撮影フィルム(Thermo Fisher Scientific社)に4時間曝露した。
【0205】
【表6】
【0206】
緩衝液のレシピ
【0207】
【表7】
【0208】
【表8】
【0209】
【表9】
【0210】
硫酸デキストランが溶けるまで激しくボルテックスする。溶液はネバネバした状態になるであろう。あるいは200 mMバナジルアデノシン複合体を硫酸バナジルの代わりに用いることができる。バナジル複合体は、製造するか、NEB社(カタログ番号S1402S)から購入することのできるRNアーゼ阻害剤である。あるいはRNAsinを用いることができる。
【0211】
【表10】
【0212】
最初はプローブなしで準備する。硫酸デキストランが溶けるまで激しくボルテックスする。溶液はネバネバした状態になるであろう。変性したプローブをあらかじめ冷やしておいた緩衝液に添加する。
【0213】
実施例6: ヒトおよび/または動物モデルにおいてRNAを標的とするCas9系を用い、疾患を起こすRNAを標的として破壊する
【0214】
RNAマイクロサテライト反復伸長によって起こる疾患(例えば筋ジストロフィー、C9orf72関連ALS、ハンチントン病を引き起こすマイクロサテライト反復伸長RNA)に苦しむヒト患者を、RNAを標的とするCas9系を用いて治療する。可能な実施態様では、本明細書に提示したRNAを標的とするCas9系または核タンパク質複合体は、2つの構成要素を含んでいる。すなわち、1)場合によってはエフェクタポリペプチドおよび/または検出可能な部分に融合されたヌクレアーゼ不活性なCas9ポリペプチドと、2)反復含有配列を標的とするシングルガイドRNA(sgRNA)である。
【0215】
エフェクタポリペプチドの非限定的な例として、以下のタンパク質、すなわちPINドメイン含有タンパク質などのRNA開裂ドメイン(エンドヌクレアーゼ);蛍光タンパク質;RBFOX2ドメイン含有タンパク質や、RNAスプライシングに影響を与えることが知られているタンパク質などのRNAスプライシングドメイン(スプライシング因子)のうちの1つ以上が可能である。
【0216】
シングルガイドRNAの非限定的な例として、筋ジストロフィーを引き起こすCTG反復含有RNAを標的とするsgRNA;C9orf72関連ALSを引き起こすGGGGCC反復含有RNAを標的とするsgRNA;ハンチントン病を引き起こすCAG反復含有RNAを標的とするsgRNA;反復含有RNAによって起こる他の疾患(マイクロサテライト反復伸長疾患である脆弱X症候群、脊髄小脳失調症、脆弱X関連振戦/失調症候群、球脊髄性筋萎縮症、眼咽頭型筋ジストロフィーなど)を標的とするsgRNAのうちの1つ以上が可能である。
【0217】
可能な実施態様では、RNAを標的とするCas9系は、ベクター(例えばアデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV))によって運ばれるDNAにコードされ、以下に示す方法の1つによって適切な組織に送達することができる。その方法とは、特定の組織親和性を示す特定のAAV血清型(例えばニューロンまたは筋肉を標的とするAAV-9)を使用すること;RCas9系をコードする裸のDNAを組織(例えば筋肉や肝臓)に注入すること;治療用RCas9系をコードするDNAまたはRNAを載せた脂質、またはポリマー、または他の合成または自然の材料からなるナノ粒子を用いること;RCas9系が2つの別々のウイルスまたはDNA分子に分割されていて、一方のウイルスがCas9タンパク質をコードし、他方のウイルスがsgRNAをコードしているか、一方のウイルスがCas9タンパク質の一部をコードし、他方のウイルスがCas9タンパク質の残部とsgRNAをコードしているような上記の任意のものを用いることのいずれかである。Cas9の各部分が別々のベクターにコードされている実施態様では、Cas9のコードされた各部分が互いに相互作用して、機能するCas9タンパク質を形成することができる。例えばいくつかの実施態様では、Cas9の各部分を操作してタンパク質スプライシングまたは相補性を通じて完成形にすることで、機能するCas9タンパク質を作製する(Wright他、「分割されたCas9酵素複合体の合理的な設計」PNAS 第112巻:2984~2989ページ(2015年)を参照されたい。なおその内容の全体が参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0218】
可能な実施態様では、本明細書に例示したRNAを標的とするCas9系をヒト対象または動物の治療に用いるため、RNAを標的とするCas9系をコードするベクター(例えばAVV)を例えば以下の方法によって注入することができる。
【0219】
1.骨格筋組織(筋肉内)の多数の部位に同時に注入する(関係する症状:筋ジストロフィー):1回の注射につき1011~1014個のGC(ゲノムコピー)を主要な筋群(例えば腹筋、上腕二頭筋、三角筋、脊柱起立筋、腓腹筋、ヒラメ筋、臀筋、ハムストリング、広背筋、菱形筋、斜筋、胸筋、四頭筋、僧帽筋、三頭筋)に注入;
【0220】
2.筋肉を標的としてAAV血清型(例えばAAV-9、またはAAV-6、または筋肉を標的とする新規なAAV血清型)を、1回の注射につき1011~1014個のGCの割合で、合計1012~1017個のGCを静脈内送達する(関係する症状:筋ジストロフィー);
【0221】
3.AAV-9、またはAAV-6、またはニューロン親和性を示す別の血清型の1011~1017個のGCを単一用量または多数回用量にして軟膜下脊髄注射で注入する(関係する症状:ALS);
【0222】
4.AAV-9、またはAAV-6、またはニューロン親和性を示す別の血清型の1011~1017個のGCを単一用量または多数回用量にして頭蓋内注射で注入する(関係する症状:ハンチントン病、脊髄小脳失調症、脆弱X症候群)。
【0223】
実施例7:ヒト対象における筋ジストロフィーの治療
【0224】
ヒト対象の筋ジストロフィーを治療するいくつかの実施態様では、改変したRCas9エンドヌクレアーゼ系、核酸、遺伝子コンストラクト、ウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクターまたはAAVベクター)を本分野で知られている方法によって製剤化することができる。それに加え、任意の投与経路を想定することができる。可能な実施態様では、RCas9エンドヌクレアーゼ系、核酸、遺伝子コンストラクト、ウイルスベクター(例えばレンチウイルスベクターまたはAAVベクター)を一般的な任意の投与経路で投与する。投与経路の非限定的な例は、経口、肺、腹腔内(ip)、静脈内(iv)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、口腔内、鼻腔内、舌下、眼内、直腸、膣である。それに加え、神経系への直接投与の非限定的な例には、脳内、心室内、脳室内、髄腔内、嚢内、脊椎内、脊椎周辺(peri-spinal)といった投与経路を含めることができ、ポンプ装置あり、またはポンプ装置なしで、頭蓋内または脊椎内への針またはカテーテルを通じた送達がなされる。本治療法では、本明細書に記載した治療効果をもたらす任意の投与用量または投与頻度にするのが適切である。特別な一実施態様では、対象に、本開示によるRCas9エンドヌクレアーゼ系をコードするウイルスベクターを筋肉内経路で投与する。この実施態様の特別な変形例では、ベクターは、上に規定したAAVベクター、特にAAV9ベクターである。いくつかの実施態様では、ヒト対象にベクターを1回だけ注入することができる。それに加え、標準的な薬学的方法を利用して作用持続期間を制御することができる。それは本分野で周知であり、そこには制御放出調製物の利用が含まれ、その調製物には、適切な巨大分子(例えばポリマー、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレン酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン)を含めることができる。それに加え、医薬組成物は、本開示のRCas9エンドヌクレアーゼ系を含有するナノ粒子を含むことができる。
【0225】
実施例8:マウスモデルにおける筋ジストロフィーの治療と、そのような治療法の効果測定
【0226】
使用できるマウスモデルに含まれるのは、ヒト骨格筋アクチン3'UTRに250回のCUG反復を発現するHSALRトランスジェニックマウス;GGGGCC(G4C2)トランスジェニックマウス:さまざまなヒトHTTトランスジェニックマウスモデルである。
【0227】
成体マウスの腓腹筋または前脛骨筋に、AAVベクター(AAV-6、またはAAV-2、またはAAV-9)を含有する生理学的溶液、またはAAVベクターを含有しない生理学的溶液を30~100μl注射する。各マウスについて、1つの筋肉にはAAV GFP-ACT3を注射し、反対側の筋肉には、任意の導入遺伝子(MCS)またはGFPまたはビヒクルだけ(PBS)を含有する対照AAVを注射する。注射の6週間後、筋肉の等尺性収縮特性を以前に報告されているようにして測定する。その後、マウスを殺し、筋肉を回収し、液体窒素で冷やしたイソペンタンの中で瞬間凍結させ、-80℃で保管する。
【0228】
生理学のレベルで、DM1マウスモデルで観察される筋緊張症は、筋肉特異的塩化物チャネルClc-1エキソン7aの異常なスプライシングの結果であることが確立している。筋緊張症は、持続的放電と遅延した力弛緩につながる筋肉の過興奮を特徴としている。筋強直性ジストロフィーの治療効率を評価する1つの手段は、Clc-1エキソン7aのスプライシングをRNAのシークエンシングまたはRT-PCRによって測定することである。さらに、筋力弛緩に対する治療の効果は、収縮を誘導した後に、対照である反対側の筋肉と比較して明らかにすることができる。筋肉における筋強直性ジストロフィーに関係する電気活性の逆転は、全身麻酔下のマウスの後肢筋(前脛骨筋、腓腹筋、広筋)と前肢筋(遠位前肢の前区画、三頭筋)で30ゲージ同心針電極を用いて筋電計を用いて評価される。それぞれの筋肉に針を少なくとも10回挿入し、ミオトニー放電を4点スケールで評価する(0は、筋緊張症なし;1は、挿入回数の50%未満でミオトニー放電がある;2は、挿入回数の50%超でミオトニー放電がある;3は、ほとんどすべての挿入でミオトニー放電がある)。
【0229】
これまでに説明した実施態様の少なくともいくつかでは、1つの実施態様で用いた1つ以上のエレメントを別の実施態様でも代わりに用いることができるが、そのような置換が技術的に実現不能である場合は別である。当業者には、請求項の主題の範囲から逸脱することなく、上に記載した方法と構造に対する他のさまざまな省略、追加、改変が可能であることがわかるであろう。そのようなあらゆる改変と変更は、添付の請求項に規定されている主題の範囲に入ると考えられる。
【0230】
本明細書の実質的にすべての複数形および/または単数形の用語の使用に関し、当業者は、文脈および/または用途に合わせて複数形から単数形へ、および/または単数形から複数形へと移ることができる。明確にするため、単数/複数のさまざまな入れ替えを本明細書では明示的に表現することができる。
【0231】
当業者には、一般に、本明細書で用いた用語、特に添付の請求項(例えば添付の請求項の本文)で用いた用語は、「開かれた」用語(例えば「含んでいる」という用語は、「を含んでいるが、それには限定されない」と解釈され、「有する」という用語は、「を少なくとも有する」と解釈すべきであり、「含む」という用語は、「を含むが、それに限定されない」と解釈すべきである、など)として一般に理解される。当業者にはさらに、請求項の記述に具体的な数を導入することを意図している場合、そのような意図は、請求項の中に明示的に記述されるのであり、そのような記述の不在は、そのような意図が存在しないことであると理解されよう。例えば理解の一助として、下に添付した請求項は、請求項の記述を導入するための導入句「少なくとも1つの」と「1つ以上の」を含有することができる。しかしそのような句の使用は、ある1つの請求項の記述に不定冠詞「1つの」を導入することで、そのような記述を含有するどれか特定の請求項が、そのような記述を1つだけ含有する実施態様に限定されると推測することは、その同じ請求項の記述に導入句「1つ以上の」または「少なくとも1つの」と、「1つの」などの不定冠詞を含まれるときでさえしてはならない(例えば「1つの」は、「少なくとも1つの」と「1つ以上の」を意味すると解釈されるべきである)。同じことが、請求項の記述に定冠詞を導入する場合にも当てはまる。それに加え、請求項の記述に具体的な数が明示的に導入されている場合でさえ、そのような記述は、少なくとも記載されている数を意味すると解釈すべきであると当業者は認識するであろう(例えば「2つの記述」という、他の修飾句なしの直接的な記述は、少なくとも2つの記述、または2つ以上の記述を意味する)。さらに、「AとBとCなどのうちの少なくとも1つ」と類似した慣例表現を用いる場合には、一般にそのような構成は、当業者がその慣例表現で理解すると考えられる意味を持つ(例えば「AとBとCのうちの少なくとも1つを有する系」の非限定的な例に含まれるのは、Aだけの系、および/またはBだけの系、および/またはCだけの系、および/またはAとBを合わせた系、および/またはAとCを合わせた系、および/またはBとCを合わせた系、および/またはAとBとCを合わせた系であると考えられる)。「AまたはBまたはCなどのうちの少なくとも1つ」と類似した慣例表現を用いる場合には、一般にそのような構成は、当業者がその慣例表現で理解すると考えられる意味を持つ(例えば「AまたはBまたはCのうちの少なくとも1つを有する系」の非限定的な例に含まれるのは、Aだけの系、および/またはBだけの系、および/またはCだけの系、および/またはAとBを合わせた系、および/またはAとCを合わせた系、および/またはBとCを合わせた系、および/またはAとBとCを合わせた系であると考えられる)。さらに、2つ以上の可能な用語を提示する実質的にあらゆる選択命題および/または選択句は、明細書、請求項、図面のどこに記載されていようと、それら用語の1つ、またはどちらかの用語、または両方の用語を含む可能性を想定していると理解すべきであると当業者に理解されるであろう。例えば「AまたはB」という句は、「AまたはB」または「AとB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0232】
それに加え、本開示の特徴または側面がマーカッシュ群の用語で記述されている場合には、当業者は、開示が、マーカッシュ群の任意の個々のメンバー、または一部のメンバーでも記述されていると認識するであろう。
【0233】
当業者であれば理解できるように、(例えば文字での記述に関して)どのような目的であれ、本明細書に開示したすべての範囲は、可能なあらゆる下位範囲と、下位範囲の組み合わせも包含する。掲載されているどの範囲も、その範囲を少なくとも等しい半分ずつ、1/3ずつ、1/4ずつ、1/5ずつ、1/10ずつなどに分割することを十分に記述していると認識すること、そしてそれが可能であると認識することが容易にできる。非限定的な一例として、本明細書に記載した各範囲は、小さい側の1/3、中央の1/3、大きい側の1/3などに分割することが容易にできる。当業者であればやはり理解できるように、「まで」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「よりも小さい」などの表現は、記述されている数を含む範囲を意味し、その範囲はその後、上記のような下位範囲に分割することができる。最後に、当業者であれば理解できるように、ある範囲は、個々のメンバーを含む。したがって例えば1~3個のグループは、1個、または2個、または3個のグループを意味する。同様に、1~5個のグループは、1個、または2個、または3個、または4個、または5個のグループを意味し、以下同様である。
【0234】
本明細書に掲載したあらゆる参考文献は、以下の参考文献を含め、その全体が参照によって本明細書に明示的に組み込まれている。
【0235】
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図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
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【配列表】
2022081503000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の操作された核タンパク質複合体。
【外国語明細書】