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特開2022-81520ヒト人工多能性幹細胞を作製する為のリン酸化されたTベータ4及び他の因子の使用
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  • 特開-ヒト人工多能性幹細胞を作製する為のリン酸化されたTベータ4及び他の因子の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081520
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ヒト人工多能性幹細胞を作製する為のリン酸化されたTベータ4及び他の因子の使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20220524BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20220524BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N5/074
C07K7/08 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022026413
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2020532852の分割
【原出願日】2018-08-22
(31)【優先権主張番号】62/550,337
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/044,142
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520061778
【氏名又は名称】ソー ヤング ライフ サイエンシズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SO YOUNG LIFE SCIENCES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】セス,アビナッシュ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4を用いて非胚性及び/又は体細胞に多能性を誘導する為の組成物及び方法を提供する。
【解決手段】人工多能性幹細胞は真猿類又はネズミ類であり得る。外来性のTβ4はリン酸化され得る。外来性のTβ4、外来性のSox2、及び、外来性のOct4の少なくとも1つは細胞膜透過部分、及び/又は、核標的化部分とカップリングされ得、其れ等が核に到達する事を許す。加えて、人工多能性幹細胞は少なくとも100継代に渡って多能性を維持する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外来性のTβ4と、
外来性のSox2と、
外来性のOct4と、
を含む人工多能性幹細胞。
【請求項2】
人工多能性幹細胞が真猿類人工多能性幹細胞を含む、請求項1に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項3】
人工多能性幹細胞がヒト人工多能性幹細胞を含む、請求項2に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項4】
真猿類人工多能性幹細胞がネズミ類人工多能性幹細胞を含む、請求項1に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項5】
齧歯類人工多能性幹細胞がマウス人工多能性幹細胞を含む、請求項4に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項6】
外来性のTβ4がリン酸化される、請求項1に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項7】
外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも1つが細胞膜透過部分とカップリングされる、請求項1に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項8】
細胞膜透過部分がカチオン性ペプチドを含む、請求項7に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項9】
カチオン性ペプチドが本質的にRRRRRRRRRKKKKKKKKKから成る配列を有する、請求項8に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項10】
外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも1つが核標的化部分とカップリングされる、請求項1に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項11】
核標的化部分がグルタチオン-S-トランスフェラーゼを含む、請求項10に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項12】
人工多能性幹細胞が少なくとも100継代に渡って多能性を維持する、請求項1に記載の人工多能性幹細胞。
【請求項13】
外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4を含む、非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
【請求項14】
外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも2つがリンカーに依ってカップリングされる、請求項13に記載の非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
【請求項15】
細胞膜透過部分が外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも1つにカップリングされる、請求項13に記載の非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
【請求項16】
細胞膜透過部分がカチオン性ペプチドを含む、請求項15に記載の非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
【請求項17】
核標的化部分が外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも1つにカップリングされる、請求項13に記載の非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
【請求項18】
核標的化部分がグルタチオン-S-トランスフェラーゼを含む、請求項17に記載の非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
【請求項19】
(1)体細胞にTβ4、Sox2、及びOct4蛋白質を導入することと、
(2)体細胞に脱分化を誘導する条件下でステップ(1)からの体細胞を培養し、人工多能性幹細胞が得られることと、
を含む、体細胞に多能性を誘導する方法。
【請求項20】
更に、人工多能性幹細胞が100継代後に多能性を維持する様な条件下で人工多能性幹細胞を培養するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年8月25日出願の係属中の仮特許出願Ser.No.62/550,337及び「ヒト人工多能性幹細胞を作製する為のリン酸化されたTベータ4他の因子の使用(Use Of Phosphorylated TBeta4 Other Factors To Generate Human Induced Pluripotent Stem Cells)」と題する2018年7月24日出願の係属中の実用特許出願Ser.No.16/044,142の利益及び優先権を主張し、此れは此処に参照に依って本願に完全に組み込まれる。
【0002】
本願に於いて論じられる此れ等及び全ての他の外部資料は其れ等の全体が参照に依って組み込まれる。組み込まれた参照に依る或る用語の定義又は使用が本願に於いて提供される其の用語の定義と不整合又は反対である所では、本願に於いて提供される其の用語の定義が適用され、参照に依る其の用語の定義は適用されない。
【0003】
本発明の分野は、ヒト人工多能性幹細胞を産生する組成物及び方法である。
【背景技術】
【0004】
次の背景の議論は、本発明を理解する上で有用であり得る情報を包含する。其れは、本願に於いて提供される情報の何れかが先行技術であるか若しくは請求される本発明に関連すると言う事、又は具体的に若しくは暗黙的に参照される何れかの公開物が先行技術であると言う事の承認ではない。
【0005】
変性疾患のための根治療法の必要があり、胚性幹細胞インプラントは幾らかの希望を示している(非特許文献1)。然し乍ら、胚性幹細胞の使用には論争がある。2006年に、山中等は4つの転写因子Oct3/4、Sox2、c-Myc、及びKlf4を用いてマウス胚性線維芽細胞からの人工多能性幹細胞の作製を報告した(非特許文献2)。2007年に、此れ等の転写因子はヒト線維芽細胞から多能性幹細胞を誘導する為に使用された(非特許文献3)。
【0006】
人工多能性幹細胞は胚性幹細胞に類似の特性を有し、変性疾患治療へと開発され得る。加えて、疾患の進行を研究する為に、iPSCs(人工多能性幹細胞)は健康人及び病人の体細胞をリプログラミングする事に依って作製され得る。其れから、iPSCsは疾患を引き起こす事が疑われる変異を導入又は修正する事に依って遺伝子改変され得る。其れから、iPSCsは目当ての細胞型へと分化させられる(非特許文献4)。
【0007】
然し乍ら、幾つもの問題がiPSCsが治療に幅広く用いられる事を妨げている。1つの問題は腫瘍の形成である。何故ならば、山中転写因子は腫瘍発生を促進し、其の結果、インプラントされた細胞は正常に挙動しないからである。加えて、我々はウイルスベクターの使用に依る永久的なゲノム改変が原因の影響を予測し得ない。
【0008】
本願に於いて特定される全ての公開物は、各個々の公開物又は特許出願が参照に依って組み込まれる事を具体的に且つ個々に指示されている場合と同じ度合い迄、参照に依って組み込まれる。組み込まれた参照に依る或る用語の定義又は使用が本願に於いて提供される其の用語の定義と不整合又は反対である所では、本願に於いて提供される其の用語の定義が適用され、参照に依る其の用語の定義は適用されない。
【0009】
幾つかの実施形態では、本発明の何らかの実施形態を記載及び請求する為に用いられる成分、特性、例えば濃度、反応条件等の数量を表現する数は、幾つかの場合には用語「約」に依って修飾されていると理解されるべきである。従って、幾つかの実施形態では、記述要件及び付属の請求項に於いて提示される数的パラメータは概算であり、此れ等は、特定の実施形態に依って得られる事を求められる所望の特性に依存して変わり得る。幾つかの実施形態では、数的パラメータは、報告されている有効数字の数に照らして、一般的な丸め技術を適用する事に依って解釈されるべきである。本発明の幾つかの実施形態の広い範囲を提示する数的範囲及びパラメータが概算であるにもかかわらず、具体的な例に於いて提示される数値は実施可能な程度に正確に報告されている。本発明の幾つかの実施形態に於いて提出される数値は、其れ等の夫々の検査測定に於いて見出される標準偏差から必然的に齎される何らかの誤差を含有し得る。
【0010】
文脈が明瞭に別様に述べていない限り、本明細書の記載及び次の請求項に於いて用いられる「a」、「an」、及び「the」の意味は、複数の参照を包含する。文脈が明瞭に別様に述べていない限り、本願の記載に用いられる「in」の意味も又「in」及び「on」を包含する。
【0011】
本願に於ける値の範囲の記載は、単に、範囲内に属する各別個の値を個々に参照する簡略な方法としての用を成す事を意図される。本願に於いて別様に指示されていない限り、或る範囲の各個々の値は、其れが本願に個々に記載されている場合の様に本明細書に組み込まれる。本願に於いて別様に指示されないか又は然もなければ文脈に依って明瞭に否定されない限り、本願に記載される全ての方法は何れかの好適な順序で行われ得る。本願の何らかの実施形態について提供される何れか及び全ての例、又は例示的な文言(例えば「等の」)の使用は、単に本発明をより良く説明する事を意図されており、別様に請求される本発明の範囲に限定を課さない。本明細書の如何なる文言も、本発明の実施に必須な何れかの請求されない要素を指示しているとして解釈されるべきではない。
【0012】
本願に於いて開示される本発明の代替的な要素又は実施形態の群分けは、限定として解釈されるべきではない。各群構成員は、個々に、又は群の他の構成員若しくは本願に見出される他の要素との何れかの組み合わせで、参照及び請求され得る。或る群の1つ以上の構成員は、便宜及び/又は特許性の理由で或る群に包含され得るか又は其れから削除され得る。何れかの斯かる包含又は削除が起こる時には、本願に於いて、本明細書は改変された群を含有すると判断され、其れ故に、添付の請求項に用いられる全てのマーカッシュ群の記述要件を満たす。
【0013】
其れ故に、永久的なゲノム改変を欠き、患者にインプラントされる時に腫瘍を形成しない人工多能性幹細胞の必要が尚ある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】オーレ・リンドバル(Olle Lindvall)及びザール・コカイア(Zaal Kokaia)著,「神経疾患の処置の為の幹細胞(Stem cells for the treatment of neurological disorders)」,第441巻,ネイチャー(NATURE),p.1094-96,2006年
【非特許文献2】高橋和利及び山中伸弥著,「明確な因子に依る培養マウス胚性及び成体線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導(Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors)」,第126巻,セル(CELL),p.663-76,2006年
【非特許文献3】高橋和利等著,「明確な因子に依る成体ヒト線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導(Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors)」,第131巻,セル(CELL),p.861-72,2007年
【非特許文献4】ユーフェン・サマンサ・シー(Yu Fen Samantha Seah)等著,「疾患モデリングに於ける人工多能性と遺伝子編集:展望と課題(Induced Pluripotency and Gene Editing in Disease Modelling: Perspectives and Challenges)」,第16巻,インターナショナル・ジャーナル・オブ・モレキュラー・サイエンシズ(International Journal of Molecular Sciences),p.28614-34,2015年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の主題は、外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4を用いて非胚性及び/又は体細胞に多能性を誘導する為の組成物及び方法を提供する。人工多能性幹細胞は非胚性又は体細胞に由来し得る。企図される人工多能性幹細胞は真猿類(例えばヒト人工多能性幹細胞)又はネズミ類(例えばマウス人工多能性幹細胞)であり得る。更に、本発明者は、多能性が家畜に由来する細胞に於いて誘導され得ると言う事を企図する。本願の何らかの実施形態について提供される何れか及び全ての例、又は例示的な文言(例えば「等の」)の使用は、単に本発明をより良く説明する事を意図されており、別様に請求される本発明の範囲に限定を課さない。
【0016】
好ましくは、外来性のTβ4はリン酸化される。リン酸化されたTβ4は、p53経路を活性化する事とRas発癌遺伝子及びJAK-STAT経路を抑制する事とに依って多能性を促進する。
【0017】
トランスフェクション効率を増大させる為に、細胞膜透過部分が外来性のTβ4、外来性のSox2、及び/又は外来性のOct4とカップリングされ得る。本願に於いて用いられる用語「とカップリングされる」は、共有結合される、静電的、アビジン/ストレプトアビジン等を意味する。カップリングはリンカー及び/又はスペーサーを包含する。文脈が別様に述べていない限り、本願に於いて用いられる用語「にカップリングされる」は直接的カップリング(此れに於いては、互いにカップリングされている2つの要素が互いに接触する)及び間接的カップリング(此れに於いては、少なくとも1つの追加の要素が2つの要素間に置かれる)両方を包含する事を意図される。故に、用語「にカップリングされる」及び「とカップリングされる」は同義で用いられる。
【0018】
好ましくは、細胞膜透過部分はカチオン性ペプチドを含む。カチオン性ペプチドは、アルギニン及びリジン、好ましくは、本質的にR9-K9(RRRRRRRRRKKKKKKKKK)から成る配列を包含する。カチオン性ペプチドは1つ以上のグリシンスペーサーを含み得る。任意に、フレキシブルなリンカーがカチオン性ペプチドをTβ4、Sox2、及び/又はOc4にリンクし得る。此の議論は本発明の主題の多くの例の実施形態を提供する。各実施形態は本発明の要素の単一の組み合わせを表しているが、本発明の主題は開示される要素の全ての可能な組み合わせを包含すると見做される。其れ故に、1つの実施形態が要素A、B、及びCを含み、第2の実施形態が要素B及びDを含む場合には、明示的に開示されない場合であっても、本発明の主題はA、B、C、又はDの他の残りの組み合わせをも又包含すると見做される。
【0019】
外来性のTβ4、外来性のSox2、及び/又は外来性のOct4を核標的化部分にカップリングする事は、標的遺伝子の発現を増大させる事が蓋然的である。好ましい核標的化部分はグルタチオン-S-トランスフェラーゼである。
【0020】
本発明者は、本発明の主題に従う人工多能性幹細胞が少なくとも100継代に渡って多能性を維持するであろう事を企図する。
【0021】
本発明の主題は、非胚性/体細胞に多能性を誘導し得る外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4を含む組成物をも又包含する。企図される組成物では、外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも2つがリンカーに依ってカップリングされる。換言すると、リンカーがTβ4及びSox2、Tβ4及びOct4、又はSox2及びOct4をカップリングする。リンカーはTβ4、Sox2、及びOct4をカップリングする為にも又用いられ得る。
【0022】
細胞膜透過部分(例えばカチオン性ペプチド)及び/又は核標的化部分(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ)は、外来性のTβ4、外来性のSox2、及び/又は外来性のOct4にカップリングされ得る。任意に、核標的化部分が外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも1つにカップリングされ得る。
【0023】
更に、本発明の主題は、体細胞に多能性を誘導する方法を包含し、(1)体細胞にTβ4、Sox2、及びOct4蛋白質を導入するステップと、(2)体細胞に脱分化を誘導する条件下でステップ(1)からの体細胞を培養し、人工多能性幹細胞が得られるステップとを含む。更に、本発明の方法は、人工多能性幹細胞が100継代後に多能性を維持する様な条件下で人工多能性幹細胞を培養するステップを包含し得る。
【0024】
本発明の主題の種々の目的、特徴、態様、及び利点は、付随する図面の図と併せて、好ましい実施形態の次の詳細な記載から、より明らかになるであろう。其の中で、同類の数字は同類のコンポーネントを表している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の主題に従う方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
人工多能性幹細胞(iPSCs)は糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、心血管疾患、及び筋萎縮性側索硬化症等の疾患を処置するポテンシャルを有する。iPSCsは成体体細胞から作製されるので、iPSCsは自家細胞置換治療及び臓器移植にも又用いられ得る。本発明者は、本発明のiPSCsがSSEA1、SSEA3、Sox2、Oct3/Oct4、Nanog、Klf4、c-Myc、及びLin28を包含する細胞表面マーカーを発現するであろうと言う仮説を立てる。更に、本発明者は、本発明の主題に従うiPSCsが元の細胞のDNAメチル化パターン及び他のエピジェネティックな特徴を見せる事を予想する。
【0027】
本発明の主題は、外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4を用いて非胚性及び/又は体細胞に多能性を誘導する為の組成物及び方法を提供する。外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4は、成体体細胞を包含する非胚性幹細胞をリプログラミングする為に用いられる組換え蛋白質である。人工多能性幹細胞が得られた後で、其れ等は例えば心筋細胞、脂肪細胞、ドーパミン作動性ニューロン、神経細胞、運動ニューロン、膵β細胞、及び造血前駆細胞へと分化させられ得る。斯かる人工多能性幹細胞は疾患モデリング、ドラッグスクリーニング、再生医療、及び細胞治療への見込みある適用を有する。
【0028】
人工多能性幹細胞は、偶蹄目、食肉目、鯨目、翼手目、皮翼目、貧歯目、イワダヌキ目、食虫目、ウサギ目、有袋目、単孔目、奇蹄目、鱗甲目(Pholidata)、鰭脚下目、霊長目、長鼻目、齧歯目、海牛目、及び管歯目の何れかの目からの哺乳動物からの非胚性又は体細胞に由来し得る。企図される人工多能性幹細胞は真猿類(例えば、ヒト人工多能性幹細胞)又はネズミ類(例えば、マウス人工多能性幹細胞)であり得る。更に、本発明者は、多能性(pluripotentcy)が、山羊、牛、馬、及び羊等の家畜に由来する細胞に於いて誘導され得ると言う事を企図する。
【0029】
本発明の主題の好ましい実施形態では、体/非胚性細胞は、線維芽細胞、臍帯血細胞(好ましくはCD34陽性)、線維芽細胞様滑膜細胞、肝細胞、胃上皮細胞、Bリンパ球、膵ベータ細胞、ケラチノサイト、歯幹細胞、間葉系間質細胞、末梢血単核細胞(好ましくはCD34陽性)、及び/又は何れかの他の好適な細胞を含む。例えば7:50(https://doi.org/10.1186/s13045-014-0050-z)のジュン・リー(Jun Li)、ウェイ・ソング(Wei Song)、及びジュン・ジョー(Jun Zhou)著,「人工多能性幹細胞の作製に用いられる細胞型及びアプローチの理解の進展(Advances in understanding the cell types and approaches used for generating induced pluripotent stem cells)」,ジャーナル・オブ・ヘマトロジー・アンド・オンコロジー(Journal of Hematology & Oncology),(2014年)を見よ。
【0030】
特定の仮説に依って拘束される事を願う事無しに、本発明者は、外来性のチモシンβ4(「Tβ4」)が取り分け外来性のSox2及びOct4との組み合わせで非胚性及び/又は体細胞に多能性を誘導し乍ら、腫瘍発生をも又抑制する事を予想する。Tβ4は全ての細胞型(赤血球を例外とする)に存在する43アミノ酸の4.9kDa蛋白質である。Tβ4に依って演じられる多くの生物学的役割は、G-アクチンへの結合とF-アクチンからG-アクチンへの脱重合とを包含し、此れは細胞の増殖、分化、及び遊走にリンクされている。角膜では、Tβ4は抗炎症性の特性を有し、アポトーシスを抑制し、細胞遊走及び創傷治癒を促進する(ガブリエル・ソンス(Gabriel Sonse),ピン・キウ(Ping Qiu),ミシェル・クルパクス・ホイーター(Michelle Kurpakus-Wheater)著,「チモシンベータ4:新規の角膜創傷治癒及び抗炎症物質(Thymosin beta 4: A novel corneal wound healing and anti-inflammatory agent)」,第1巻(第3号),クリニカル・オフサルモロジー(CLINICAL OPHTHALMOLOGY),p.201-07(2007年))。Tβ4はオリゴデンドロサイト発生を媒介し、脱髄を処置するので、Tβ4は神経損傷の為の見込みある処置としても又特定されている(マノランジャン・サントラ(Manoranjan Santra)等著,「チモシンベータ4はp38MAPKを上方制御する事に依ってオリゴデンドロサイト分化を媒介する(Thymosin beta 4 mediates oligodendrocyte differentiation by upregulating p38 MAPK)」,第60巻(第12号),グリア(GLIA),p.1826-38(2012年))。
【0031】
Tβ4が多能性を誘導する事に役割を演ずる前例がある。Tβ4は成体心外膜由来前駆細胞から其れ等の胚性表現型への復帰を誘導する事が示されている(ポール(Paul)R.ライリー(Riley)及びニコラ・スマート(Nicola Smart)著,「チモシンβ4は成体心臓に於ける心外膜由来新生血管形成を誘導する(Thymosin β4 induces epicardium-derived neovascularization in the adult heart)」,第37巻(第6号),バイオケミカル・ソサエティ・トランザクションズ(Biochemical Society Transactions),p.1218-20(2009年))。ライリー(Riley)及びスマート(Smart)は、合成Tβ4が多能性を回復させる能力が、急性虚血性傷害後の心筋再生及び新生血管形成を助け得る事を示唆した。Tβ4が心外膜由来細胞に多能性を誘導した後に、齎された心外膜由来人工多能性細胞は上皮間葉移行を経て、心外膜から遊走し、成体の心臓の新生血管形成に寄与し得る血管前駆体へと分化した。Tβ4がT細胞及び内皮細胞分化に役割を演ずると言う報告に鑑みて、Tβ4が多能性を誘導する能力は予測不可能である。
【0032】
Tβ4は腫瘍抑制性及び腫瘍発生性の特性両方を有する事も又示されている。ジョー・カールス(Jo Caers)等はTβ4が多発性骨髄腫に於いて腫瘍抑制性の効果を有する事を報告した(ジョー・カールス(Jo Caers)等著,「チモシンβ4は腫瘍抑制性の効果を有し、其の減少した発現は多発性骨髄腫の不良な予後及び減少した生存を齎す(Thymosin β4 has tumor suppressive effects and its decreased expression results in poor prognosis and decreased survival in multiple myeloma)」,第95巻(第1号),ヘマトロジカ(HAEMATOLOGICA),p.163-67(2010年))。具体的には、Tβ4発現は多発性骨髄腫細胞に於いて下方制御されており、此れはマウスに於けるより短い生存時間と相関した。Tβ4発現をブーストする事は生存時間を増大させた。対照的に、Tβ4の過剰発現は、固形腫瘍(例えば結腸癌)のインビトロに於ける増大した成長、移動性、及び浸潤、並びにインビボに於ける増大した腫瘍負荷にリンクされている。
【0033】
好ましくは、外来性のTβ4は発癌経路を抑制する為にリン酸化される。例示的なTβ4アミノ酸配列はUniProtデータベースアクセッション番号P62328(一次配列)及び其の保存的に改変されたバリアントを包含する。
【0034】
先に、メング(Meng)等は、発現を増大させる為にウッドチャック転写後制御エレメント及び強い脾フォーカス形成性ウイルスがベクターに包含される時に、臍帯血由来CD34細胞が、Oct4及びSox2を発現するレンチウイルスベクター単独を用いてリプログラミングされ得ると言う事を実証した(シャンメイ・メング(Xianmei Meng)等著,「OCT4及びSOX2単独に依るヒト臍帯血CD34細胞から人工多能性幹細胞への効率的なリプログラミング(Efficient Reprogramming of Human Cord Blood CD34+ Cells Into Induced Pluripotent Stem Cells With OCT4 and SOX2 Alone)」,第20巻(第2号),モレキュラー・セラピー(MOLECULAR THERAPY),p.408-16(2012年))。著者は、線維芽細胞が、線維芽細胞に依るトランスジーン発現を増大させるプロモーター、例えばEF1を用いてリプログラミングされ得ると言う事を示唆している。リプログラミングは、KLF4及びMycをコードするベクターとの組み合わせでOct4及びSox2発現のより弱いプロモーターを用いても又達成され得る。然し乍ら、先に指摘された通り、Mycは発癌性である。
【0035】
リプログラミング効率が発現レベルに依って限定される問題は、蛋白質Oct4及びSox2に依って細胞を直接的にリプログラミングする事に依って取り除かれ得る。リプログラミングは、Tβ4、好ましくはリン酸化されたTβ4に依って更に向上させられる事が予想される。Sox2の例示的なアミノ酸配列はUniProtデータベースアクセッション番号P48431(一次配列)及び其の保存的に改変されたバリアントを包含する。Oct4の例示的なアミノ酸配列はUniProtデータベースアクセッション番号Q01860(一次配列)及び其の保存的に改変されたバリアントを包含する。
【0036】
本発明の主題に従う組成物及び方法を用いると、トランスフェクション効率は1%、2%、5%、及び10%よりも多大であると見積もられる。トランスフェクション効率、其れ故にリプログラミング効率を更に増大させる為に、細胞膜透過部分が外来性のTβ4、外来性のSox2、及び/又は外来性のOct4とカップリングされ得る。文脈が別様に述べていない限り、本願に於いて用いられる用語「カップリングされる」は直接的カップリング(此れに於いては、互いにカップリングされている2つの要素が互いに接触する)及び間接的カップリング(此れに於いては、少なくとも1つの追加の要素が2つの要素間に置かれる)両方を包含する事を意図される。故に、用語「にカップリングされる」及び「とカップリングされる」は同義で用いられる。例えば、外来性の蛋白質及びペプチドは、ペプチド結合に依って共有結合、静電相互作用に依ってカップリング、親和性に依ってカップリング(例えば、アビジン又はストレプトアビジンとビオチン)等され得る。カップリングは、リンカー及び/又はスペーサー、例えばG4S、ポリエチレングリコール、又は他の好適なリンカーを包含する。プロテオケム(ProteoChem)TMは幾つもの好適なヘテロ二官能性架橋剤をオファーしており、ANB-NOS、BMPS、EMCS、GMBS、LC-SPDP、MBS、PDPH、SBA、SIA、スルホ-SIA、SMPH、SPDP、スルホ-LC-SPDP、スルホ-MBS、スルホ-SANPAH、及び/又はスルホ-MSCCを包含する(www.proteochem.com/proteincrosslinkersheterobifunctionalcrosslinkers-c-1_7.html?gclid=CIWr7pS42tUCFUtNfgodO_sB3A)。
【0037】
好ましくは、細胞膜透過部分はカチオン性ペプチドを含む。カチオン性ペプチドは、4及び20個の間のアルギニン及び/又はリジン残基、好ましくは9つのアルギニン及び9つのリジン残基を包含する。リポソーム又はハイドロゲル製剤等の他の送達方法も又企図される。斯かる製剤では、細胞膜透過部分は、外来性のTβ4、Sox2、及び/又はOct4にではなく寧ろ(或いは其れに加えて)リポソーム又はハイドロゲルにカップリングされ得る。此の議論は本発明の主題の多くの例の実施形態を提供する。各実施形態は本発明の要素の単一の組み合わせを表しているが、本発明の主題は開示される要素の全ての可能な組み合わせを包含すると見做される。其れ故に、1つの実施形態が要素A、B、及びCを含み、第2の実施形態が要素B及びDを含む場合には、明示的に開示されない場合であっても、本発明の主題はA、B、C、又はDの他の残りの組み合わせをも又包含すると見做される。
【0038】
外来性のTβ4、外来性のSox2、及び/又は外来性のOct4を核標的化部分にカップリングする事は、体/非胚性細胞をリプログラミングして多能性状態に復帰させる事を担う標的遺伝子(例えばOct3/4、Rex1、Nanog、Gata6、Msx2、Pax6、Hand1)の発現を増大させる事が蓋然的である。好ましい核標的化部分はグルタチオン-S-トランスフェラーゼである(例えばUniProtデータベースアクセッション番号P28161)。斯かるリポソーム及び/又はハイドロゲル製剤では、核標的化部分は、外来性のTβ4、Sox2、及び/又はOct4にではなく寧ろ(或いは其れに加えて)リポソーム又はハイドロゲルにカップリングされ得る。
【0039】
外来性の蛋白質は当分野に於いて公知の組換え技術を用いて産生され得る。本発明者は、Tβ4、Sox2、及びOct4が単一の発現配列から翻訳され得る事を企図する。代替的には、発現配列は、Tβ4及びSox2、Tβ4及びOct4、Sox2及びOct4、Tβ4、Sox2、Oct4、並びに其れ等の何れかの組み合わせを含み得る。外来性の蛋白質の産生は、原核(例えば大腸菌)、酵母(例えば出芽酵母、ピチア、クルイウェロマイセス、ハンゼヌラ、及びヤロウィア)、又は真核細胞(例えばHEK293及びCHO)を用いて達成され得る。昆虫細胞及び無細胞法も又企図される。
【0040】
本発明者は、本発明の主題に従う人工多能性幹細胞が少なくとも5継代、少なくとも10継代、少なくとも20継代、少なくとも50継代、好ましくは少なくとも100継代に渡って多能性を維持するであろう事を企図する。
【0041】
本発明の主題は、非胚性/体細胞に多能性を誘導し得る外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4を含む組成物をも又包含する。企図される組成物では、外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも2つがリンカーに依ってカップリングされる。換言すると、リンカーがTβ4及びSox2、Tβ4及びOct4、又はSox2及びOct4をカップリングする。リンカーはTβ4、Sox2、及びOct4をカップリングする為にも又用いられ得る。
【0042】
細胞膜透過部分(例えばカチオン性ペプチド)及び/又は核標的化部分(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ)は、外来性のTβ4、外来性のSox2、及び/又は外来性のOct4にカップリングされ得る。任意に、核標的化部分は外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも1つにカップリングされる。
【0043】
図1は、体(非胚性)細胞に多能性を誘導する方法のフローチャートを示している。ステップ(1)では、Tβ4、Sox2、及びOct4蛋白質が体細胞に導入される。ステップ(2)では、ステップ(1)からの体細胞が、体細胞に脱分化を誘導する条件下で培養されて、人工多能性幹細胞を得る。任意のステップ(3)では、人工多能性幹細胞は、人工多能性幹細胞が10、20、50、又は100継代後に多能性を維持する様な条件下で培養される。
【実施例0044】
例1
線維芽細胞又は脂肪細胞を28日に渡って12時間毎に12mg/mlのタグ付き組換え蛋白質に依ってトランスフェクションして、細胞をリプログラミングする。EM培地、好ましくは馴化EM培地でフィーダー細胞上で培養する。iPSコロニーを拾い、拡大培養する。例えばケジン・ホー(Kejin Hu)著,「全ての道は人工多能性幹細胞に通ずる:iPSC作製のテクノロジー(All Roads Lead to Induced Pluripotent Stem Cells: The Technologies of iPSC Generation)」,第23巻(第12号),ステムセルズ・アンド・デベロップメント(STEM CELLS AND DEVELOPMENT),p.1285-1300(2014年)、シャオユウ・デング(Xiao-Yue Deng)等著,「インテグレーション無しの人工多能性幹細胞を作製する為の非ウイルス的方法(Non-Viral Methods For Generating Integration-Free, Induced Pluripotent Stem Cells)」,第10巻,カレント・ステムセル・リサーチ・アンド・セラピー(CURRENT STEM CELL RESEARCH & THERAPY),p.153-58(2015年)を見よ。
【0045】
形質転換されたiPSCsは、SSEA-1、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、TRA-2-49/6E、及び/又はNanog等の多能性幹細胞マーカーの発現を検出する為にアルカリホスファターゼに依って染色されるであろう。
【0046】
リプログラミングは胚様体及び/又はテラトーマの形成について検査する事に依って検査され得る(高橋和利等著,「明確な因子に依る成体ヒト線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導(Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors)」,第131巻,セル(CELL),p.861-72(2007年))。多能性(pluripotentcy)の誘導はキメラマウスを作製する事に依ってもまた確認され得る(シーラ・ネメス(Csilla Nemes)等著,「蛋白質トランスダクションに依るマウス人工多能性幹細胞の作製(Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells by Protein Transduction),第20巻(第5号),ティッシュー・エンジニアリング(TISSUE ENGINEERING)パートC,p.383-392(2014年))。
【0047】
本願に於ける本発明の概念から逸脱する事無しに、既に記載された物以外にずっと多くの改変が可能であると言う事は当業者には明らかな筈である。故に、本発明の主題は添付の請求項の範囲内を例外として制限されない。更に其の上、明細書及び請求項両方を解釈する上で、全ての用語は文脈と整合する最も広い可能な様式で解釈されるべきである。特に、用語「含む」及び「含む事」は、要素、コンポーネント、又はステップを非排他的な様式で参照していると解釈されるべきであり、参照される要素、コンポーネント、又はステップが、はっきりと参照されていない他の要素、コンポーネント、又はステップと共に存在するか、利用されるか、又は組み合わせられ得ると言う事を指示している。明細書や請求項が、A、B、C…及びNから成る群から選択される何かの少なくとも1つを参照している所では、文章は、AプラスN、又はBプラスN等ではなく群からの1つの要素のみを要求すると解釈されるべきである。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト身体の外部で体細胞に多能性を誘導するインビトロ方法であって、
(1)前記体細胞にTβ4、Sox2、及びOct4蛋白質を接触させることと、
(2)前記体細胞に脱分化を誘導する条件下でステップ(1)からの前記体細胞を培養し、人工多能性幹細胞が得られることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記人工多能性幹細胞が100継代後に多能性を維持する様な条件下で前記人工多能性幹細胞を培養するステップを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記Tβ4、Sox2、及びOct4の少なくとも1つが、細胞膜透過部分とカップリングされている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞膜透過部分がカチオン性ペプチドを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カチオン性ペプチドが本質的にRRRRRRRRRKKKKKKKKKから成る配列を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記Tβ4、Sox2、及びOct4の少なくとも1つが、核標的化部分にカップリングされている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記核標的化部分がグルタチオン-S-トランスフェラーゼを含む、請求項6に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
本願に於ける本発明の概念から逸脱する事無しに、既に記載された物以外にずっと多くの改変が可能であると言う事は当業者には明らかな筈である。故に、本発明の主題は添付の請求項の範囲内を例外として制限されない。更に其の上、明細書及び請求項両方を解釈する上で、全ての用語は文脈と整合する最も広い可能な様式で解釈されるべきである。特に、用語「含む」及び「含む事」は、要素、コンポーネント、又はステップを非排他的な様式で参照していると解釈されるべきであり、参照される要素、コンポーネント、又はステップが、はっきりと参照されていない他の要素、コンポーネント、又はステップと共に存在するか、利用されるか、又は組み合わせられ得ると言う事を指示している。明細書や請求項が、A、B、C…及びNから成る群から選択される何かの少なくとも1つを参照している所では、文章は、AプラスN、又はBプラスN等ではなく群からの1つの要素のみを要求すると解釈されるべきである。
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下に記載する。
[項目1]
外来性のTβ4と、
外来性のSox2と、
外来性のOct4と、
を含む人工多能性幹細胞。
[項目2]
人工多能性幹細胞が真猿類人工多能性幹細胞を含む、項目1に記載の人工多能性幹細胞。
[項目3]
人工多能性幹細胞がヒト人工多能性幹細胞を含む、項目2に記載の人工多能性幹細胞。
[項目4]
真猿類人工多能性幹細胞がネズミ類人工多能性幹細胞を含む、項目1に記載の人工多能性幹細胞。
[項目5]
齧歯類人工多能性幹細胞がマウス人工多能性幹細胞を含む、項目4に記載の人工多能性幹細胞。
[項目6]
外来性のTβ4がリン酸化される、項目1に記載の人工多能性幹細胞。
[項目7]
外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも1つが細胞膜透過部分とカップリングされる、項目1に記載の人工多能性幹細胞。
[項目8]
細胞膜透過部分がカチオン性ペプチドを含む、項目7に記載の人工多能性幹細胞。
[項目9]
カチオン性ペプチドが本質的にRRRRRRRRRKKKKKKKKKから成る配列を有する、項目8に記載の人工多能性幹細胞。
[項目10]
外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも1つが核標的化部分とカップリングされる、項目1に記載の人工多能性幹細胞。
[項目11]
核標的化部分がグルタチオン-S-トランスフェラーゼを含む、項目10に記載の人工多能性幹細胞。
[項目12]
人工多能性幹細胞が少なくとも100継代に渡って多能性を維持する、項目1に記載の人工多能性幹細胞。
[項目13]
外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4を含む、非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
[項目14]
外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも2つがリンカーに依ってカップリングされる、項目13に記載の非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
[項目15]
細胞膜透過部分が外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも1つにカップリングされる、項目13に記載の非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
[項目16]
細胞膜透過部分がカチオン性ペプチドを含む、項目15に記載の非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
[項目17]
核標的化部分が外来性のTβ4、外来性のSox2、及び外来性のOct4の少なくとも1つにカップリングされる、項目13に記載の非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
[項目18]
核標的化部分がグルタチオン-S-トランスフェラーゼを含む、項目17に記載の非胚性細胞に多能性を誘導する為の組成物。
[項目19]
(1)体細胞にTβ4、Sox2、及びOct4蛋白質を導入することと、
(2)体細胞に脱分化を誘導する条件下でステップ(1)からの体細胞を培養し、人工多能性幹細胞が得られることと、
を含む、体細胞に多能性を誘導する方法。
[項目20]
更に、人工多能性幹細胞が100継代後に多能性を維持する様な条件下で人工多能性幹細胞を培養するステップを含む、項目19に記載の方法。
【外国語明細書】