(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081521
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】膀胱内注入用の生物製剤の処方
(51)【国際特許分類】
A61K 35/74 20150101AFI20220524BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220524BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220524BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A61K35/74 D
A61K47/34
A61K47/10
A61P13/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022026483
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2019161442の分割
【原出願日】2015-07-30
(31)【優先権主張番号】62/031,302
(32)【優先日】2014-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TWEEN
3.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】フォッセン エリック エイ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ パトリック エム
(72)【発明者】
【氏名】ラップ デイヴィッド シー
(57)【要約】
【課題】膀胱壁を横断する供給を増大しうる医薬製剤の提供。
【解決手段】クロストリジウム誘導体及び透過化剤を含む、膀胱内注入用の医薬製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のクロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化剤を含む医薬組成物であって、前記少なくとも1つの透過化剤が、前記クロストリジウム誘導体に対する膀胱壁の透過性を実質的にかつ可逆的に増加させるのに有効な量で存在する、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記クロストリジウム誘導体がボツリヌス毒素であり、前記少なくとも1つの透過化剤が、界面活性剤及び粘膜接着剤を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が非イオン界面活性剤であり、前記粘膜接着剤がカチオンポリマーである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が非イオン界面活性剤を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤がアルキルアルリル(alryl)ポリエーテルを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記粘膜接着剤が、キトサン、キトサン類似体、キトサン誘導体、またはそれらの組合せを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、約0.01%から約0.5%(w/v)の範囲の量で存在する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記粘膜接着剤が、約0.01%から約5%(w/v)の範囲の量で存在する、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記クロストリジウム誘導体がボツリヌス毒素である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤がオクトキシノール-9を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記界面活性剤がノノキシノール-9を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤が、約0.1%(w/v)の量で存在する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤が、約0.1%(w/v)の量で存在する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
神経因性膀胱機能障害の患者の治療方法であって、前記患者の膀胱壁に、医薬組成物を膀胱内注入することを含み、前記医薬組成物が、治療有効量のクロストリジウム誘導体及び、ボツリヌス神経毒素に対する前記膀胱壁の透過性を治療上有効な速度で実質的に増加させるのに有効な量で存在する少なくとも1つの透過化剤を含むものである、前記方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの透過化剤が、界面活性剤及び粘膜接着剤を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記界面活性剤が非イオン界面活性剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記粘膜接着剤が、キトサン、キトサン類似体、キトサン誘導体、またはそれらの組合せを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記非イオン界面活性剤がアルキルアルリル(alryl)ポリエーテルを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記粘膜接着剤が、高分子ポリフェノールを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記粘膜接着剤が、高分子ポリチオールを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照することによって全体が本明細書に組み込まれる2014年7月31日に出願された米国仮出願第62/031,302号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、クロストリジウム誘導体を含む医薬製剤及びその使用方法に関する。特に、本開示は、膀胱内注入用のクロストリジウム誘導体を含む医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
神経毒療法、とりわけボツリヌス毒素は、過活動膀胱(OAB)及び排尿筋過活動等の泌尿器疾患を含めた様々な医学的状態の治療に用いられている。
【0004】
過活動膀胱(OAB)、神経学的疾患に関連した排尿筋過活動等の膀胱障害を治療するためのボツリヌス毒素療法は、通常、膀胱壁を横切る注射によって、膀胱周囲の衰弱した筋肉組織内に投与される。この方法は、
図1に示すように、膀胱壁を通した約30~40回の注射投与を要する。注射による薬剤投与は、局所的な痛みを引き起こすとともに、患者を血液によって感染する病気にさらす可能性がある。代替的な投与経路のうち、膀胱内注入は、膀胱内への薬剤の直接の供給を、膀胱壁の横断によって可能にする。
【0005】
膀胱壁は、ほとんどの物質に対して不透過性である。
図2に示すように、層状尿路上皮は、3つの細胞層、すなわちアンブレラ細胞、中間細胞、及び基底細胞からなる。基底細胞は胚細胞であって、細胞分裂を介して、部分的に分化した中間細胞にとって代わる。高度に分化し、極性化されたアンブレラ細胞は、膀胱の内腔に位置し、血液と尿の間の物質の移動に対する主要な物理的障壁である。アンブレラ細胞の頂端膜は、ウロプラキンと呼ばれるタンパク質からなるプラークで覆われ、頂端膜に厚い外観を与える。アンブレラ細胞はまた、上皮を介した尿及びより大きな分子の傍細胞移動を制限する密着結合も含む。
【0006】
したがって、非経口投与の代わりに膀胱壁を横断する供給を増大しうる医薬製剤の必要性が残る。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの態様において、本開示は、クロストリジウム誘導体及び、患者の膀胱壁を透過し、クロストリジウム誘導体の生物活性を保持して所望の治療効果をもたらしうる、少なくとも1つの透過化剤を含む、膀胱内(膀胱)投与用の医薬製剤を提供する。
【0008】
1つの態様において、本開示は、治療有効量のクロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化剤を含む医薬組成物であって、少なくとも1つの透過化剤が、クロストリジウム誘導体に対する膀胱壁の透過性を実質的にかつ可逆的に増加させるのに有効な量で存在する医薬組成物を提供する。
【0009】
別の態様において、本開示は、膀胱内膀胱投与に適した医薬製剤の作製方法であって、少なくとも1つの透過化剤を含む溶液を準備し;クロストリジウム誘導体を含む組成物にその溶液を添加することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、約50mlから約100mlの溶液をクロストリジウム誘導体に添加することを含む。いくつかの実施形態では、クロストリジウム誘導体はボツリヌス毒素である。1つの実施形態では、本方法は、キトサン、類似体、または誘導体約1%(w/v)及びTriton(商標)X-100、類似体、または誘導体約0.1%(w/v)を含む水溶液約50mlから約100mlを、ボツリヌス毒素A型に添加することを含む。1つの実施形態では、本方法は、キトサンを1%(w/v)及びTriton(商標)X-100を0.1%(w/v)含む水溶液50mlを、凍結乾燥ボツリヌス毒素A型を約100単位または200単位含むバイアルに添加し;穏やかに混合して凍結乾燥ボツリヌス毒素A型を再水和することを含む。
【0010】
別の態様において、本医薬製剤は、カテーテル、供給装置表面(シリンジ、パッチ、極微針、工学的注射器(Biojet等)、チューブ、及び容器へのクロストリジウム誘導体の吸着を防止または最小化することによって、クロストリジウム誘導体の生体利用効率を最大化する。
【0011】
別の態様によれば、本開示は、患者の医学的障害の治療方法であって、本開示にしたがって提供される医薬組成物を投与し、それによって、医学的障害を治療する段階を含む方法を提供する。1つの実施形態では、本方法は、医学的障害の1つ以上の症状を緩和する。1つの実施形態では、医学的障害は、神経因性特発性膀胱機能障害、または膀胱痛を含む。いくつかの態様において、神経因性または特発性膀胱機能障害、膀胱痛を有する患者の治療方法であって、治療有効量のクロストリジウム誘導体及び、クロストリジウム誘導体に対する膀胱壁の透過性を治療上有効な速度で実質的に増加させるのに有効な量で存在する少なくとも1つの透過化剤を含む医薬組成物を、患者の膀胱の中に膀胱内注入することを含む方法を提供する。
【0012】
上で要約した本医薬製剤及び方法の他の態様及び変形もまた企図され、以下の開示に関連して考慮された場合、さらに十分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来技術の膀胱壁へのボツリヌス毒素の嚢内注射(intracystinal injection)を示す。
【
図2A】
図2A~2Cは、尿路上皮の概略図であって:A)尿路上皮は3つの細胞層、すなわち基底細胞、中間細胞、及び表面アンブレラ細胞からなる。B)アンブレラ細胞は、その頂端膜上にプラーク、並びに、平滑基底膜上に、密着結合で結合された原線維を含む小胞の細胞質ネットワーク及びデスモソームを呈する。C)内腔に対して見た尿路上皮の頂端膜はプラーク及びヒンジ領域を示す。
【
図2B】
図2A~2Cは、尿路上皮の概略図であって:A)尿路上皮は3つの細胞層、すなわち基底細胞、中間細胞、及び表面アンブレラ細胞からなる。B)アンブレラ細胞は、その頂端膜上にプラーク、並びに、平滑基底膜上に、密着結合で結合された原線維を含む小胞の細胞質ネットワーク及びデスモソームを呈する。C)内腔に対して見た尿路上皮の頂端膜はプラーク及びヒンジ領域を示す。
【
図2C】
図2A~2Cは、尿路上皮の概略図であって:A)尿路上皮は3つの細胞層、すなわち基底細胞、中間細胞、及び表面アンブレラ細胞からなる。B)アンブレラ細胞は、その頂端膜上にプラーク、並びに、平滑基底膜上に、密着結合で結合された原線維を含む小胞の細胞質ネットワーク及びデスモソームを呈する。C)内腔に対して見た尿路上皮の頂端膜はプラーク及びヒンジ領域を示す。
【
図3】試験製剤の膀胱内への浸透の程度を評価する基準を確立する絵図;ここで、切断されたSNAP25は、シナプス末端でのBOTOX(登録商標)活性のバイオマーカーとして使用し、シナプトフィジン発現を用いてシナプス末端を特定し、切断されたSNAP25の局在の特異性を確実にした。浸透の程度は、SNAP25-197染色の程度に相関性があった。
【
図4】IHCスコア「4」及び「0」の2種の膀胱からの典型的な免疫組織化学の結果を示す絵図であって;ここで、切断されたSNAP25は、シナプス末端でのBOTOX(登録商標)活性のバイオマーカーとして使用し、シナプトフィジン発現を用いてシナプス末端を特定し、切断されたSNAP25の局在の特異性を確実にした。
【
図5A】
図5A~5Dは、注入後の異なる状態の膀胱組織を示す例示的な顕微鏡写真である。
【
図5B】
図5A~5Dは、注入後の異なる状態の膀胱組織を示す例示的な顕微鏡写真である。
【
図5C】
図5A~5Dは、注入後の異なる状態の膀胱組織を示す例示的な顕微鏡写真である。
【
図5D】
図5A~5Dは、注入後の異なる状態の膀胱組織を示す例示的な顕微鏡写真である。
【
図6】本開示の態様に従ういくつかの典型的な処方の免疫組織化学(IHC)スコアを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ボツリヌス神経毒素(BoNT)、例えば、BoNT/A、BoNT/B等は、神経伝達物質を含む神経分泌物質の放出を遮断することにより、神経系に作用する。BoNTの作用は、細胞表面の受容体分子に結合することによって開始される。得られた毒素-受容体複合体は、次にエンドサイトーシスを受ける。一旦細胞内に入ると、BoNTは、神経伝達物質の結合に関与するエキソサイトーシス特異的タンパク質を切断し、SNAREタンパク質(可溶性N‐エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体)として知られる細胞から放出する。得られた過渡化学的除神経は、神経筋接合部での運動の神経伝達を遮断するために医学的に利用されており、様々な治療用途につながっている。
【0015】
本開示の態様は、1つには、膀胱内膀胱供給に適した、クロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化を含む医薬製剤を提供する。
【0016】
1つの態様において、本開示は、1つには、治療有効量のクロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化剤を含む医薬組成物であって、少なくとも1つの透過化剤が、クロストリジウム誘導体に対する膀胱壁の透過性を実質的にかつ可逆的に増加させるのに有効な量で存在する医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、クロストリジウム誘導体はボツリヌス毒素である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの透過化剤は、界面活性剤及び粘膜接着剤を含む。
【0017】
定義
本明細書で用いられる、以下に記載の単語または用語は、次の定義を有する:
【0018】
本明細書で用いられる「約」または「およそ」は、当業者によって決定される特定の値についての許容誤差範囲内を意味し、これは1つには、値がどのように測定または決定されるかによる(すなわち、測定システムの限界)。例えば、「約」は、当技術分野の実践当たり1または1以上の標準偏差内を意味しうる。本出願及び特許請求の範囲に特定の値が記載される場合、特に明記しない限り、用語「約」は、特定の値についての許容誤差範囲内を意味する。
【0019】
「活性医薬成分」(API)とは、対象または患者への投与時または投与後に効果を発揮する成分を意味する。APIとしては、例えば、天然または組み換えクロストリジウム神経毒素、例えば、ボツリヌス毒素、組み換え改変毒素、それらのフラグメント、TEM、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0020】
「投与(「administration」または「to administer」)」とは、対象、または医薬組成物を受ける対象に、医薬組成物を与える(すなわち、投与する)段階を意味する。本明細書に開示の医薬組成物は、様々な方法で局所的に投与されうる。例えば、筋肉内、皮内、皮下投与、髄腔内投与、腹腔内投与、局所(経皮)、注入、及び移植(例えば、ポリマーインプラントまたはミニ浸透圧ポンプ等の徐放装置の)はすべて適切な投与経路でありうる。
【0021】
「緩和」とは、痛み、頭痛、過活動筋肉、または疾患もしくは障害の任意の症状もしくは原因の発生の減少を意味する。ゆえに、緩和は、いくらかの減少、かなりの減少、ほぼ完全な減少、及び完全な減少を含む。
【0022】
「動物タンパク質を含まない」とは、血液由来、血液保存、及び他の動物由来の産物または化合物がないことを意味する。「動物」とは、哺乳類(ヒト等)、鳥類、爬虫類、魚類、昆虫、クモ、または他の動物種を意味する。「動物」は、微生物、例えば、細菌を除外する。ゆえに、動物タンパク質を含まない医薬組成物は、ボツリヌス神経毒素、組み換え改変毒素、またはTEMを含むことができる。例えば、「動物タンパク質を含まない」医薬組成物とは、血清由来アルブミン、ゼラチン、及び他の動物由来タンパク質、例えば免疫グロブリンを、実質的に含まない、本質的に含まない、または完全に含まない医薬組成物を意味する。動物タンパク質を含まない医薬組成物の例は、ボツリヌス毒素、TEM、もしくは組み換え改変毒素(活性成分として)、及び、安定剤もしくは賦形剤として適切な多糖を含む、またはそれらからなる医薬組成物である。
【0023】
「生物活性」は、薬剤の生命体への有益または有害な影響を表す。薬剤が複合化学薬品混合物の場合、この活性は、その物質の活性成分によって発揮されるが、他の構成成分によって改変されうる。生物活性は、インビボLD50もしくはED50アッセイによる効力または毒性として、または、インビトロアッセイ、例えば、各々が参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、米国公開第20100203559号、第20100233802号、第20100233741号、及び米国特許第8,198,034号に記載の細胞ベースの効力アッセイ等を通して評価されうる。
【0024】
「ボツリヌス毒素」は、Clostridium botulinumによって産生される神経毒素、及び組み換え技術で非クロストリジウム種によって作製されるボツリヌス毒素(またはその軽鎖もしくは重鎖)を意味する。本明細書で用いられる「ボツリヌス毒素」という表現は、ボツリヌス毒素の血清型A、B、C、D、E、F、及びG、それらの亜型、及びそれらの亜型の任意の他の型、または、前述のいずれかの各場合における、任意の再操作されたタンパク質、類似体、誘導体、同族体、部分、下位部分、変異体、もしくは型を包含する。本明細書で用いられる「ボツリヌス毒素」はまた、「改変ボツリヌス毒素」も包含する。さらに、本明細書で用いられる「ボツリヌス毒素」はまた、ボツリヌス毒素複合体(例えば、300、500、及び900kDa複合体)、及び、複合タンパク質と会合していないボツリヌス毒素(150kDa)の神経毒素成分も包含する。
【0025】
「クロストリジウム誘導体」とは、クロストリジウム毒素の任意の部分を含む分子を指す。本明細書で用いられる「クロストリジウム誘導体」という用語は、天然もしくは組み換え神経毒素、組み換え改変毒素、それらのフラグメント、標的小胞エキソサイトーシスモジュレーター(TEM)、またはそれらの組合せを包含する。
【0026】
「クロストリジウム毒素」とは、クロストリジウム毒素が細胞を中毒させ、低または高親和性クロストリジウム毒素受容体へのクロストリジウム毒素の結合、毒素/受容体複合体の内在化、クロストリジウム毒素軽鎖の細胞質内への転位、及びクロストリジウム毒素基質の酵素修飾を包含する、全体的な細胞機構を実行することができるクロストリジウム毒素株によって産生される任意の毒素を指す。非限定的なクロストリジウム毒素の例としては、ボツリヌス毒素、例えば、BoNT/A、BoNT/B、BoNT/C1、BoNT/D、BoNT/E、BoNT/F、BoNT/G、破傷風毒素(TeNT)、Baratii毒素(BaNT)、及びButyricum毒素(BuNT)が挙げられる。神経毒素ではないBoNT/C2細胞毒素及びBoNT/C3細胞毒素は、「クロストリジウム毒素」という用語からは除外される。本明細書に開示のクロストリジウム毒素としては、限定されないが、天然に存在するクロストリジウム毒素変異体、例えば、クロストリジウム毒素イソ型及びクロストリジウム毒素亜型等;天然に存在しないクロストリジウム毒素変異体、例えば、保存的クロストリジウム毒素変異体、非保存的クロストリジウム毒素変異体、クロストリジウム毒素キメラ変異体、及びそれらの活性クロストリジウム毒素フラグメント、またはそれらの任意の組合せ等が挙げられる。本明細書に開示のクロストリジウム毒素はまた、クロストリジウム毒素複合体も含む。本明細書で用いられる「クロストリジウム毒素複合体」という用語とは、クロストリジウム毒素及び非毒素関連タンパク質(NAP)を含む複合体、例えば、ボツリヌス毒素複合体、破傷風毒素複合体、Baratii毒素複合体、及びButyricum毒素複合体等を指す。非限定的なクロストリジウム毒素複合体の例としては、Clostridium botulinumによって産生されるもの、例えば、900kDaのBoNT/A複合体、500kDaのBoNT/A複合体、300kDaのBoNT/A複合体、500kDaのBoNT/B複合体、500kDaのBoNT/C1複合体、500kDaのBoNT/D複合体、300kDaのBoNT/D複合体、300kDaのBoNT/E複合体、及び300kDaのBoNT/F複合体等が挙げられる。
【0027】
生物学的に活性な成分に適用される「有効量」とは、対象において所望の変化を誘導するのに一般的に十分な成分の量を意味する。例えば、所望の効果が自己免疫疾患の症状の減少である場合、成分の有効量とは、自己免疫疾患の症状の少なくとも実質的な減少を、有意な毒性をもたらすことなく引き起こす量である。
【0028】
医薬組成物の非活性成分の構成要素(ボツリヌス毒素と混合するために用いられる安定剤等)に適用される「有効量」とは、個体への投与時に、活性成分の放出及び/または活性に良い影響を与えるのに十分な非活性成分の構成要素の量を指す。この「有効量」は、本明細書の開示及び当技術分野における一般的知識を基に決定されうる。
【0029】
「完全に含まない(すなわち、「~から成る」用語)とは、使用される機器または方法の検出範囲内で、物質が検出できないか、またはその存在が確認できないことを意味する。
【0030】
「本質的に含まない」(または「本質的に~から成る」)とは、物質が微量のみ検出できることを意味する。
【0031】
「軽鎖」とは、クロストリジウム神経毒素の軽鎖を意味する。これは、分子量約50kDaを有し、L鎖、L、または、ボツリヌス神経毒素のタンパク質分解ドメイン(アミノ酸配列)と呼ばれうる。
【0032】
「重鎖」とは、ボツリヌス神経毒素の重鎖を意味する。これは、分子量約100kDaを有し、H鎖またはHと呼ばれうる。
【0033】
HCとは、ボツリヌス神経毒素のH鎖由来のフラグメント(約50kDa)であって、H鎖のカルボキシル末端セグメントとほぼ同等のフラグメント、または、無傷のH鎖におけるそのフラグメントに対応する部分を意味する。これは、運動ニューロンへの高親和性のシナプス前結合に関与する天然または野生型ボツリヌス神経毒素の部分を含むと考えられている。
【0034】
HNとは、ボツリヌス神経毒素のH鎖由来のフラグメント(約50kDa)であって、H鎖のアミノ末端セグメントとほぼ同等のフラグメント、または、そのフラグメントに対応する部分を意味する。これは、細胞内エンドソーム膜を横切るL鎖の転位に関与する天然または野生型ボツリヌス神経毒素の部分を含むと考えられている。
【0035】
LHNまたはL-HNとは、クロストリジウム神経毒素由来であって、L鎖を含むフラグメント、または、HNドメインに結合したその機能性フラグメントを意味する。これは、HCドメインを除去または改変するためのタンパク質分解によって、無傷のクロストリジウム神経毒素から得ることができる。
【0036】
「インプラント」とは、制御放出(例えば、拍動もしくは連続)組成物または薬物送達システムを意味する。インプラントは、例えば、人体に注入、挿入、または移植されうる。
【0037】
「膀胱内投与」とは、尿道カテーテルを介した膀胱への所与の物質の直接の注入を指す。
【0038】
「局所投与(local administration)」とは、動物体上または動物体内の、薬剤の生物学的効果が望まれる部位またはその近傍への薬剤の、例えば、筋肉内もしくは皮内もしくは皮下注射または局所的投与(topical administration)等による直接投与を意味する。局所投与は、全身投与経路、例えば、静脈内または経口投与を除外する。局所的投与(topical administration)は、局所投与の一種で、薬剤は患者の皮膚に適用される。
【0039】
「改変ボツリヌス毒素」は、天然のボツリヌス毒素と比較してそのアミノ酸の少なくとも1つが欠損、修飾、または置換されたボツリヌス毒素を意味する。さらに、改変ボツリヌス毒素は、組み換え技術によって産生された神経毒素、または、組み換え技術によって作製された神経毒素の誘導体もしくはフラグメントでありうる。改変ボツリヌス毒素は、天然のボツリヌス毒素の生物活性の少なくとも1つ、例えば、ボツリヌス毒素受容体に対する結合能、または、ニューロンからの神経伝達物質放出の阻害能を保っている。改変ボツリヌス毒素の一例は、1つのボツリヌス毒素血清型(血清型A等)由来の軽鎖、及び異なるボツリヌス毒素血清型(血清型B等)由来の重鎖を有するボツリヌス毒素である。改変ボツリヌス毒素の別の例は、サブスタンスP等の神経伝達物質に結合されたボツリヌス毒素である。
【0040】
「変異」とは、天然に存在するタンパク質または核酸配列の構造変化を意味する。例えば、核酸の変異の場合、変異は、DNA配列の1つ以上のヌクレオチドの欠損、付加、または置換の場合がある。タンパク質配列の変異の場合、変異は、タンパク質配列の1つ以上のアミノ酸の欠損、付加、または置換であり得る。例えば、タンパク質配列を構成する特定のアミノ酸が別のアミノ酸、例えば、アミノ酸のアラニン、アスパラギン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、チロシン、または他の天然に存在する、もしくは天然に存在しないアミノ酸もしくは化学修飾されたアミノ酸を含む群から選択されるアミノ酸で置換されうる。タンパク質配列の変異は、転写され、得られたmRNAが翻訳された場合に変異タンパク質配列を産生するDNA配列の変異の結果でありうる。タンパク質配列の変異はまた、所望の変異を含むペプチド配列を所望のタンパク質配列へ融合することによっても作られうる。
【0041】
「患者」とは、医療または獣医医療を受けるヒトまたは非ヒト対象を意味する。したがって、本明細書に開示される組成物及び方法は、任意の動物、例えば、哺乳類等の治療に用いることができる。
【0042】
「末梢投与(「peripherally administering」または「peripheral administration」)」とは、皮下(subdermal)、皮内、経皮、または皮下(subcutaneous)投与を意味するが、筋肉内投与は除外する。「末梢」は、皮下に関する(subdermal)位置を意味し、内臓部を除外する。
【0043】
「透過化剤」とは、限定されないが、皮膚、膀胱壁等を含めた表面の、選択された化合物、例えば、API(活性医薬成分)に対する透過性を高める能力を有する任意の天然に存在する、もしくは合成の化合物、物質、または分子を指す。
【0044】
「透過有効量」とは、治療上有効な速度で、治療薬に対する表面の透過性を実質的に増加させるのに有効な量を指す。膀胱内膀胱供給については、透過有効量は、所望の時間間隔の間、膀胱壁を不可逆的に損傷することなく、クロストリジウム誘導体に対する膀胱壁の透過性を実質的に増加させるのに十分な量を指し、その時間の後、膀胱壁の元の選択的不透過性が回復されうる。
【0045】
「医薬組成物」とは、活性医薬成分、例えば、ボツリヌス毒素等、及び少なくとも1つの追加成分、例えば、安定剤または賦形剤等を含む組成物を意味する。医薬組成物はしたがって、ヒト患者等の対象への診断的または治療的投与に適した製剤である。医薬組成物は、例えば、凍結乾燥もしくは真空乾燥の状態、凍結乾燥もしくは真空乾燥医薬組成物の再構成後に形成される溶液、または再構成を必要としない溶液もしくは固体としての場合がある。
【0046】
医薬組成物の構成成分は、単一の組成物に含まれる(すなわち、任意の必要な再構成液を除いたすべての構成成分が、医薬組成物の最初の配合時に存在する)場合も、2成分系として、例えば、医薬組成物の最初の配合時に存在しない成分を例えば含みうる再構成媒体で再構成される真空乾燥組成物としての場合もある。2成分系は、長期保存の間、2成分系の第一の成分と十分に適合しない成分の組み込みを可能にすることを含む、いくつかの利点をもたらすことができる。例えば、再構成媒体は防腐剤を含むことがあり、これは、使用期間、例えば、1週間の冷蔵貯蔵の間、微生物の増殖を十分に予防するが、それが毒素を分解する可能性がある2年間の冷凍保存期間中には存在しない。長期間ボツリヌス毒素または他の成分と適合しない可能性のある他の成分は、この方法で、すなわち、ほぼ使用時に第二の媒体(例えば、再構成媒体)に添加して組み込むことができる。医薬組成物はまた、防腐剤、例えば、ベンジルアルコール、安息香酸、フェノール、パラベン、及びソルビン酸を含むこともできる。医薬組成物は、例えば、賦形剤、例えば、界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒及び崩壊剤;結合剤;滑沢剤;防腐剤;ゼラチン等の生理学的に分解可能な組成物;水性媒体及び溶媒;油性媒体及び溶媒;懸濁剤;分散もしくは湿潤剤;乳化剤、粘滑剤;緩衝剤;塩;増粘剤;充填剤;酸化防止剤;安定剤;及び医薬的に許容されるポリマーもしくは疎水性材料、並びに当技術分野で公知であって、例えば、参照することによって本明細書に組み込まれるGenaro, ed., 1985, Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa.に記載の他の成分を含むことができる。
【0047】
「組み換え改変毒素」とは、ボツリヌス毒素とドメインの一部またはほとんどを共有するが、天然のボツリヌス神経毒素と同じ細胞を標的としてもしなくてもよい組み換え毒素を意味する。
【0048】
「安定化(「stabilizing」、「stabilizes」、または「stabilization」)」とは、再構成された活性医薬成分(「API」)の生物活性の、再構成前のAPIと比較した場合の少なくとも約20%の保持を意味する。例えば、(1)バルク溶液または原液からの連続希釈の調製時、または(2)6か月から4年間約-2℃以下で貯蔵された医薬組成物を含む凍結乾燥もしくは真空乾燥ボツリヌス毒素の再構成時、または(3)6か月から4年間約2℃から約8℃で貯蔵された医薬組成物を含む水溶液のボツリヌス毒素について、再構成された、または水溶液の医薬組成物に存在するボツリヌス毒素は(APIに対して、安定化している、安定化する、もしくは安定化をもたらす化合物の存在下)、生物学的に活性なボツリヌス毒素が医薬組成物に組み込まれる前に有した効力または毒性の約20%より大きく、最大約100%を有する。
【0049】
「安定剤(「stabilizing agent」、「stabilization agent」、または「stabilizer」)」とは、安定化されていない組成物と比較して、医薬組成物の効力が増加するように、APIを安定化するように作用する物質を意味する。
【0050】
「安定剤」は、賦形剤を含み得、また、タンパク質及び非タンパク質分子を含み得る。
【0051】
「実質的に含まない」とは、医薬組成物の1重量%未満のレベルで存在することを意味する。
【0052】
本明細書で用いられる「TEM」は、「標的エキソサイトーシスモジュレーター」または「再標的化エンドペプチダーゼ」と同義である。その多くの特徴のため、「TEM」は、「定義」節の最後にさらに詳細に開示される。
【0053】
「治療製剤」とは、製剤が治療に用いることができ、それによって、障害または疾患、例えば、末梢筋肉の活動亢進(すなわち痙攣)によって特徴づけられる障害または疾患等を緩和することができることを意味する。
【0054】
「治療有効量」とは、所望の治療効果を達成するのに十分な量を指す。
【0055】
「局所的投与(topical administration)」は、神経毒素の全身投与を除外する。換言すれば、従来の治療の経皮方法とは異なり、ボツリヌス毒素の局所的投与は、有意な量、例えば大部分の神経毒素が患者の循環系に入る結果とはならない。
【0056】
「治療」とは、疾患または障害、例えば、一時的または永続的なしわ、痙攣、うつ病、痛み(例えば、頭痛の痛み等)、膀胱の過活動等の少なくとも1つの症状を緩和すること(または取り除くこと)を意味する。
【0057】
「変異体」とは、標的細胞によって認識され、標的細胞に内在化され、標的細胞のSNARE(SNAP(可溶性NSF付着タンパク質)受容体)を触媒的に切断する野生型のボツリヌス毒素と比較して少なくとも1つのアミノ酸の置換、修飾、付加、または欠損によって改変されたクロストリジウム神経毒素、例えば、野生型ボツリヌス毒素の血清型A、B、C、D、E、F、またはGを意味する。
【0058】
変異型神経毒素成分の例は、1つ以上のアミノ酸が置換、修飾、欠損、及び/または付加されたボツリヌス毒素の変異型軽鎖を含むことができる。この変異型軽鎖は、エキソサイトーシス、例えば、神経伝達物質小胞の放出を防ぐ能力が同等またはより良好でありうる。さらに、変異体の生物学的効果は、親化学物質と比較して減少されうる。例えば、除去されたアミノ酸配列を有するボツリヌス毒素A型の変異型軽鎖は、親(または天然)ボツリヌス毒素A型軽鎖より生物学的持続性が短いことがある。
【0059】
「媒体」または「再構成媒体」とは、固体のボツリヌス製剤を液体のボツリヌス医薬組成物に再構成するために用いることができる液体組成物を意味する。
【0060】
「野生型神経結合部分」とは、神経毒素に元々備わっている神経毒素の部分であって、ニューロン上の受容体に対する特異的結合親和性を示す部分を意味する。したがって、野生型または天然の神経結合部分は、神経毒素に元々備わっていない結合部分を除外する。
【0061】
TEM
一般に、TEMは、クロストリジウム毒素軽鎖由来の酵素ドメイン、クロストリジウム毒素重鎖由来の転位ドメイン、及び標的化ドメインを含む。TEMの標的化ドメインは、その分子を、天然に存在するクロストリジウム毒素によって利用される天然のクロストリジウム毒素受容体以外の受容体へと標的化する改変された細胞標的化機能を与える。この再標的化機能は、天然に存在するクロストリジウム毒素の結合ドメインを、非クロストリジウム毒素受容体に対して結合活性を有する標的化ドメインで置換することによって達成される。非クロストリジウム毒素受容体に結合はするが、TEMは、細胞質へのTEM/受容体複合体の内在化、小胞膜及び二本鎖分子の孔形成、細胞質内への酵素ドメインの転位、及び標的細胞のSNARE複合体の成分にタンパク質分解効果を発揮することを含めた中毒過程の他の段階のすべてを経る。
【0062】
本明細書で用いられる「クロストリジウム毒素の酵素ドメイン」という用語は、中毒過程の酵素的標的改変段階を実行するクロストリジウム毒素の軽鎖に位置するクロストリジウム毒素ポリペプチドを指す。クロストリジウム毒素の酵素ドメインは、神経伝達物質放出装置のコア成分を特異的に標的とする亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性を含むメタロプロテアーゼ領域を含む。したがって、クロストリジウム毒素の酵素ドメインは、クロストリジウム毒素の基質、例えば、SNAREタンパク質、例えば、SNAP-25基質、VAMP基質、及びシンタキシン基質等を特異的に標的とし、タンパク質分解的に切断する。
【0063】
クロストリジウム毒素の酵素ドメインとしては、限定されないが、天然に存在するクロストリジウム毒素の酵素ドメイン変異体、例えば、クロストリジウム毒素の酵素ドメインイソ型及びクロストリジウム毒素の酵素ドメイン亜型等;天然に存在しないクロストリジウム毒素の酵素ドメイン変異体、例えば、保存的クロストリジウム毒素の酵素ドメイン変異体、非保存的クロストリジウム毒素の酵素ドメイン変異体、クロストリジウム毒素の酵素ドメインキメラ、それらの活性なクロストリジウム毒素の酵素ドメインフラグメント、またはそれらの任意の組合せ等が挙げられる。非限定的なクロストリジウム毒素の酵素ドメインの例としては、例えば、BoNT/Aの酵素ドメイン、BoNT/Bの酵素ドメイン、BoNT/C1の酵素ドメイン、BoNT/Dの酵素ドメイン、BoNT/Eの酵素ドメイン、BoNT/Fの酵素ドメイン、BoNT/Gの酵素ドメイン、TeNTの酵素ドメイン、BaNTの酵素ドメイン、及びBuNTの酵素ドメインが挙げられる。
【0064】
本明細書で用いられる「クロストリジウム毒素の転位ドメイン」という用語は、中毒過程の転位段階を実行するクロストリジウム毒素重鎖のアミノ末端半内に位置するクロストリジウム毒素ポリペプチドを指す。転位段階は、細胞内の小胞内pHの低下によって引き起こされる転位ドメインのアロステリックな配座変化を含むと思われる。この配座変化は、小胞内から細胞質への軽鎖の移動を可能にする小胞膜の孔形成をもたらす。ゆえに、クロストリジウム毒素の転位ドメインは、クロストリジウム毒素軽鎖が、細胞内小胞の膜を横切って細胞の細胞質へ移動するのを容易にする。
【0065】
クロストリジウム毒素の転位ドメインとしては、限定されないが、天然に存在するクロストリジウム毒素の転位ドメイン変異体、例えば、クロストリジウム毒素の転位ドメインイソ型及びクロストリジウム毒素の転位ドメイン亜型等;天然に存在しないクロストリジウム毒素転位ドメイン変異体、例えば、保存的クロストリジウム毒素の転位ドメイン変異体、非保存的クロストリジウム毒素の転位ドメイン変異体、クロストリジウム毒素の転位ドメインキメラ、それらの活性なクロストリジウム毒素の転位ドメインフラグメント、またはそれらの任意の組合せ等が挙げられる。非限定的なクロストリジウム毒素の転位ドメインの例としては、例えば、BoNT/Aの転位ドメイン、BoNT/Bの転位ドメイン、BoNT/C1の転位ドメイン、BoNT/Dの転位ドメイン、BoNT/Eの転位ドメイン、BoNT/Fの転位ドメイン、BoNT/Gの転位ドメイン、TeNTの転位ドメイン、BaNTの転位ドメイン、及びBuNTの転位ドメインが挙げられる。
【0066】
本明細書で用いられる「標的化ドメイン」という用語は、「結合ドメイン」または「標的化部分」と同義であって、結合ドメインが、クロストリジウム毒素重鎖のカルボキシル末端半内に見られるクロストリジウム毒素結合ドメインと同一でないという条件で、中毒過程の受容体結合及び/または複合体内在化段階を実行するペプチドまたはポリペプチドを指す。標的化ドメインは、その同族受容体に対する標的化ドメインの結合活性及び/または特異性を与える受容体結合領域を含む。本明細書で用いられる「同族受容体」という用語は、生理的条件下、または生理的条件を実質的に近似するインビトロ条件下、標的化ドメインが優先的に相互作用するための受容体を指す。本明細書で用いられる「優先的に相互作用する」という用語は、「優先的に結合する」と同義であって、対照と比較して統計的に有意に大きな程度である相互作用を指す。本明細書に開示の標的ドメインを参照すると、標的化ドメインは、その同族受容体に、非同族受容体と比較して統計的に有意に大きな程度まで結合する。換言すれば、標的化ドメインの、その同族受容体への非同族受容体と比較した差別的結合がある。したがって、標的化ドメインは、標的細胞の原形質膜表面上に位置するTEM特異的受容体への結合を導く。
【0067】
本明細書に開示の標的化ドメインは、感覚ニューロン上に位置する受容体と優先的に相互作用するものでありうる。別の実施形態では、本明細書に開示の標的化ドメインは、交感神経ニューロンまたは副交感神経ニューロン上に位置する受容体と優先的に相互作用するものでありうる。
【0068】
別の実施形態では、本明細書に開示の標的化ドメインは、オピオイドペプチド標的化ドメイン、ガラニンペプチド標的化ドメイン、PARペプチド標的化ドメイン、ソマトスタチンペプチド標的化ドメイン、ニューロテンシンペプチド標的化ドメイン、SLURPペプチド標的化ドメイン、アンジオテンシンペプチド標的化ドメイン、タキキニンペプチド標的化ドメイン、ニューロペプチドY関連ペプチド標的化ドメイン、キニンペプチド標的化ドメイン、メラノコルチンペプチド標的化ドメイン、またはグラニンペプチド標的化ドメイン、グルカゴン様ホルモンペプチド標的化ドメイン、セクレチンペプチド標的化ドメイン、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)ペプチド標的化ドメイン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)ペプチド標的化ドメイン、血管作動性腸管ペプチド(VIP)ペプチド標的化ドメイン、胃抑制ペプチド(GIP)ペプチド標的化ドメイン、カルシトニンペプチド標的化ドメイン、内臓消化管ペプチド標的化ドメイン、ニューロトロフィンペプチド標的化ドメイン、ヘッドアクチベーター(HA)ペプチド、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)ファミリーリガンド(GFL)ペプチド標的化ドメイン、RFアミド関連ペプチド(RFRP)ペプチド標的化ドメイン、神経ホルモンペプチド標的化ドメイン、または神経調節サイトカインペプチド標的化ドメイン、インターロイキン(IL)標的化ドメイン、血管内皮増殖因子(VEGF)標的化ドメイン、インスリン様成長因子(IGF)標的化ドメイン、上皮成長因子(EGF)標的化ドメイン、形質転換増殖因子β(TGFβ)標的化ドメイン、骨形成タンパク質(BMP)標的化ドメイン、成長及び分化因子(GDF)標的化ドメイン、アクチビン標的化ドメイン、または線維芽細胞増殖因子(FGF)標的化ドメイン、または血小板由来増殖因子(PDGF)標的化ドメインである。
【0069】
オピオイドペプチド標的化ドメインとしては、エンケファリンペプチド、ウシ副腎髄質-22(BAM22)ペプチド、エンドモルフィンペプチド、エンドルフィンペプチド、ダイノルフィンペプチド、ノシセプチンペプチド、またはヘモルフィンペプチドを挙げてもよい。
【0070】
したがって、TEMは、TEMが中毒過程を行うことができるという条件のもと、ありとあらゆる位置における標的化ドメインを含むことができる。非限定的な例としては、TEMのアミノ末端での標的化ドメインの配置;TEMのクロストリジウム毒素の酵素ドメインとクロストリジウム毒素の転位ドメイン間での標的化ドメインの配置;及びTEMのカルボキシル末端での標的化ドメインの配置が挙げられる。他の非限定的な例としては、TEMのクロストリジウム毒素の酵素ドメインとクロストリジウム毒素の転位ドメイン間での標的化ドメインの配置が挙げられる。天然に存在するクロストリジウム毒素の酵素ドメインは、天然の開始メチオニンを含む。したがって、酵素ドメインがアミノ末端位置にない場合のドメイン構成では、開始メチオニンを含むアミノ酸配列が、該アミノ末端ドメインの前に置かれなければならない。同様に、標的化ドメインがアミノ末端位置にある場合、開始メチオニン及びプロテアーゼ切断部位を含むアミノ酸配列は、標的化ドメインが遊離のアミノ末端を必要とする状況で作動可能に連結されうる。例えば、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれるShengwen Li et al.,Degradable Clostridial Toxins、米国特許出願第11/572,512号(2007年1月23日)を参照されたい。さらに、当技術分野では、開始メチオニンを含む別のポリペプチドのアミノ末端に作動可能に連結されるポリペプチドを添加する場合、元のメチオニン残基は削除されうることが知られている。
【0071】
本明細書に開示のTEMは、TEMの一本鎖ポリペプチド形態を、そのより活性な二本鎖形態に変換させるために外因性プロテアーゼを使用することを可能にする外因性プロテアーゼ切断部位を任意に含んでよい。本明細書で用いられる「外因性プロテアーゼ切断部位」という用語は、「天然に存在しないプロテアーゼ切断部位」または「非天然プロテアーゼ切断部位」と同義であって、天然に存在するクロストリジウム毒素由来の二本鎖ループ領域に自然に見られないプロテアーゼ切断部位を意味する。
【0072】
TEMは、それらの全体的な分子量は様々であるが、標的化ドメインのサイズ、活性化過程、及び外因性切断部位へのその依存は本質的に組み換え産生されたクロストリジウム毒素のものと同じである。例えば、各々が参照することによって本明細書に組み込まれる、Steward, et al., Activatable Clostridial Toxins, US 2009/0081730; Steward, et al., Modified Clostridial Toxins with Enhanced Translocation Capabilities and Altered Targeting Activity For Non-Clostridial Toxin Target Cells,米国特許出願第11/776,075号; Steward, et al., Modified Clostridial Toxins with Enhanced Translocation Capabilities and Altered Targeting Activity for Clostridial Toxin Target Cells, US 2008/0241881; Steward, et al., Degradable Clostridial Toxins, US 2011/0287517を参照されたい。一般に、外因性プロテアーゼを用いて一本鎖ポリペプチドをその二本鎖形態に変換する活性化過程は、アミノ提示、中央提示、またはカルボキシル提示配置に構成された標的化ドメインを有するTEMを加工するために使用できる。これは、ほとんどの標的化ドメインについては、その部分のアミノ末端が受容体結合に関与しないからである。したがって、広い範囲のプロテアーゼ切断部位が、TEMの活性二本鎖形態の産生に使用できる。しかしながら、受容体結合のために遊離のアミノ末端を必要とする標的化ドメインは、切断可能な結合がカルボキシル末端に位置するプロテアーゼ切断部位を必要とする。TEMの設計におけるプロテアーゼ切断部位の使用は、例えば、各々が参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、Steward, et al., Activatable Clostridial toxins, US 2009/0069238; Ghanshani, et al., Modified Clostridial Toxins Comprising an Integrated Protease Cleavage Site-Binding Domain, US 2011/0189162;及びGhanshani, et al., Methods of Intracellular Conversion of Single-Chain Proteins into their Di-chain Form,国際特許出願第PCT/US2011/22272号に記載されている。
【0073】
医薬組成物
本開示の態様は、1つには、膀胱内膀胱供給に適した、クロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化剤を含む医薬組成物を提供する。
【0074】
クロストリジウム誘導体:
本明細書で定義されるクロストリジウム誘導体は、天然もしくは組み換え神経毒素、組み換え改変毒素、それらのフラグメント、標的小胞エキソサイトーシスモジュレーター(TEM)、またはそれらの組合せを包含する。いくつかの実施形態では、クロストリジウム誘導体は、天然または改変ボツリヌス毒素である。1つの実施形態では、クロストリジウム誘導体はボツリヌス毒素A型である。いくつかの実施形態では、クロストリジウム誘導体は、ボツリヌスのB、C1、D、E、またはF型である。別の実施形態では、クロストリジウム誘導体はTEMを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、治療有効量のクロストリジウム誘導体を含む。治療有効量とは、一つの状況で個体に投与されるクロストリジウム誘導体の合計量を指す。したがって、クロストリジウム誘導体及び/またはTEMの有効量は、部位ごとの投与量を指すものではない。例えば、個体に投与されるボツリヌス毒素等のクロストリジウム毒素の有効量が10Uであり得る一方、部位ごとの毒素の投与量は、2U、すなわち、異なる5部位で2Uであり得る。いくつかの実施形態では、ボツリヌス毒素の治療有効量は、10Uから1000U、より好ましくは、約50Uから約500Uの範囲である。
【0076】
クロストリジウム毒素及びTEMを含む併用療法を参照すると、クロストリジウム毒素の有効量は、TEMとの併用でクロストリジウム毒素量が所望の治療効果を達成するものであるが、単独で投与されるかかる量は効果がない。例えば、通常約75~125UのBOTOX(登録商標)(Allergan,Inc.、カリフォルニア州アーバイン)、すなわち、BoNT/Aが、頸部ジストニアを治療するため、ジストニア痙攣を起こしている筋肉当たり筋肉内注射によって投与される。併用療法では、BoNT/AがTEMとの併用療法で使用される場合、かかる毒素の準最適有効量が投与され、頸部ジストニアを治療する。
【0077】
透過化剤
透過化剤の例としては、限定されないが、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、グリコール、キレート剤、カチオンポリマー、粘膜接着剤、ポリペプチド、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態では、透過化剤は、ボツリヌス毒素等のクロストリジウム誘導体に選択的に結合し、複合体を形成する。別の実施形態では、透過化剤は、ボツリヌス毒素に結合しない。別の実施形態では、透過化剤は、ファンデルワールス相互作用によって、クロストリジウム誘導体と相互作用する。
【0079】
ある特定の実施形態では、透過化剤はアニオン界面活性剤でありうる。本処方に適するアニオン界面活性剤の例としては、限定されないが、SDS、ラウリル硫酸ナトリウム、それらの類似体、誘導体、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0080】
特定の実施形態では、透過化剤はカチオン界面活性剤でありうる。本処方に適するカチオン界面活性剤の例としては、限定されないが、硫酸プロタミン、ベンザルコニウムブロミド、四級アンモニウム塩、例えば、ポリ(ジメチルイミノ)‐2‐ブテン‐1,4‐ジイルクロリド、一般に、ONYX社からポリクオタニウム1(登録商標)として入手可能なα‐[4‐トリス(2‐ヒドロキシエチル)アンモニウム‐2‐ブテニル‐ω‐トリス(2‐ヒドロキシエチル)アンモニウム]ジクロリド(化学品登録番号75345-27-6)、ベンザルコニウムハライド、及びビグアニド、例えば、アレキシジンの塩、アレキシジンの遊離塩基、クロルヘキシジンの塩、ヘキサメチレンビグアニド、並びにそれらのポリマー、類似体、及び誘導体が挙げられる。これらアレキシジン及びクロルヘキシジンの塩は、有機でも無機でもよく、通常は、硝酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ハライド等、またはそれらの任意の組合せ等である。
【0081】
特定の実施形態では、透過化剤は他のカチオン剤であることができ、限定されないが、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、オレイルアミン、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、及びジオレイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、それらの類似体、誘導体、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0082】
ある特定の実施形態では、透過化剤は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレンオキシド(PEO)を含みうる。PEGは、例えば、モル当たり約200グラム(g/m)からモル当たり約20,000グラム(g/m)に及ぶ分子量のPEGを含みうる。1つの実施形態では、透過化剤はポリエチレングリコール3350を含む。
【0083】
特定の実施形態では、透過化剤はポロキサマーを含みうる。ポロキサマーは、例えば、P80、P124、P188、P237、P338、及びP407、それらの類似体、誘導体、またはそれらの組合せを含みうる。特定の実施形態では、透過化剤はポビドン(PVP)を含みうる。PVPは、例えば、PVPポリマー、及び類似体または誘導体を含みうる。
【0084】
ある特定の実施形態では、透過化剤は、分子量約1000から100000ダルトンの範囲のLまたはDポリペプチドを含みうる。1つの実施形態では、透過化剤はポリ‐L‐リジンである。別の実施形態では、透過化剤は細胞浸透性ペプチドを含む。
【0085】
特定の実施形態では、透過化剤は、ベンジルアルコール等、ポリヘキサメチレンビグアニド(高及び/または低分子量)等、限定されないが、天然または組み換えヒト血清アルブミンを含めたタンパク質、ポリミキシンB等、またはそれらの混合物を含みうる。
【0086】
特定の実施形態では、透過化剤は非イオン界面活性剤を含む。本処方に適切な非イオン界面活性剤の例としては、限定されないが、アルキルアルリル(alryl)ポリエーテル及び類似体、それらの誘導体(例えば、TX-100、類似体、または誘導体)、ポロキサマー、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、Brijファミリー)、Tween、Big CHAPS、デオキシBig CHAPS、チロキサポール、ソルビタンモノオレエート(SPAN)20、40、60、クレモフォールEL、アルファ‐トコフェロールTPGS、ポリオキシルステアレート40、類似体及び誘導体、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0087】
いくつかの実施形態では、透過化剤は、アルキルアルリル(alryl)ポリエーテル、類似体、または誘導体を含む。1つの実施形態では、透過化剤は、オクチルフェノールエトキシレート、類似体、または誘導体を含む。オクチルフェノールエトキシレートはまた、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、4-オクチルフェノールポリエトキシレート、Mono 30、TX-100、t‐オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、オクトキシノール-9、またはより一般的に知られている商品名Triton(商標)X-100としても知られる。別の実施形態では、該透過化剤は、ノノキシノール9、類似体、または誘導体を含む。
【0088】
ある特定の実施形態では、透過化剤はカチオンポリマーを含む。いくつかの実施形態では、カチオンポリマーは粘膜接着剤である。いくつかの実施形態では、カチオンポリマーとしては、キトサン、コンドロイチン、キトサン類似体、コンドロイチン類似体、キトサン誘導体、またはコンドロイチン誘導体が挙げられる。
【0089】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、クロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化剤を含む。1つの実施形態では、クロストリジウム誘導体はボツリヌス毒素である。1つの実施形態では、クロストリジウム誘導体はボツリヌス毒素を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの透過化剤は、キトサン、キトサン類似体またはキトサン誘導体、及びTX-100、TX-100類似体またはTX-100誘導体を含む。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、ボツリヌス毒素、キトサン、キトサン類似体またはキトサン誘導体、及びノノキシノール-9、ノノキシノール-9類似体またはノノキシノール-9誘導体を含む。別の実施形態では、クロストリジウム誘導体はTEMである。別の実施形態では、製剤はボツリヌス毒素及びTEMを含む。
【0090】
特定の実施形態では、透過化剤は、限定されないが、EDTA、EGTA(エチレングリコール四酢酸)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,2‐ジアミノシクロヘキサン四酢酸、及びヘキサメタリン酸を含めたキレート剤を含みうる。これらの薬剤は、好ましくは塩として、通常はナトリウム塩、例えば、EDTA二ナトリウム、HEDTA三ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、またはそれらの任意の組合せ等として使用される。
【0091】
したがって、1つの態様において、本医薬組成物は、クロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化剤を含み、この医薬製剤は膀胱内膀胱供給に適する。いくつかの実施形態では、クロストリジウム誘導体はボツリヌス毒素を含み、透過化剤は、粘膜接着剤及び界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、粘膜接着剤としては、キトサン、キトサン類似体、キトサン誘導体、コンドロイチン、コンドロイチン類似体、及びコンドロイチン誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、界面活性剤は非イオン界面活性剤を含む。1つの実施形態では、本医薬組成物は、ボツリヌス毒素A型、キトサン、キトサン類似体またはキトサン誘導体、及びTX-100、TX-100類似体またはTX-100誘導体を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はノノキシノール-9、ノノキシノール-9類似体、またはノノキシノール-9誘導体を含む。別の実施形態では、クロストリジウム誘導体はTEMである。
【0092】
いくつかの実施形態では、透過化剤は、透過有効量で存在する。1つの実施形態では、透過有効量とは、膀胱の完全性に対する損傷がわずかで、膀胱壁表面の透過性を実質的に増加させるのに有効な量を指す。1つの実施形態では、透過有効量は、治療有効量のボツリヌス神経毒素の膀胱壁の透過を治療上有効な速度で可能にするのに有効な量を指す。1つの実施形態では、透過有効量は、所望の時間間隔の間、膀胱壁を不可逆的に損傷することなく、治療上有効な速度で、治療有効量の毒素に対する膀胱壁表面の透過性を実質的に増加させるの有効な量を指す。いくつかの実施形態では、所望の時間間隔の後、増加した透過性は元に戻すことができ、その後、膀胱壁は元の不透過性または選択的透過性を完全に、または部分的に回復しうる。いくつかの実施形態では、膀胱壁は、膀胱内注入後約1時間から約24時間の範囲の時間間隔の後、元の不透過性または選択的透過性を回復する。いくつかの実施形態では、時間間隔は約3時間から約18時間の範囲である。いくつかの実施形態では、時間間隔は約4時間から約12時間の範囲である。膀胱壁が元の選択的透過性または不透過性を回復する回復率は、選択された透過化剤の特性、量、透過表面の特性、暴露時間、及び該透過表面の周囲の環境によって影響を受けうる。1つの実施形態では、本医薬組成物の投与後の膀胱の完全性は、免疫応答の程度、例えば、特異的免疫細胞の存在によって評価されうる。
【0093】
透過有効量は、限定されないが、クロストリジウム誘導体の特性、透過表面(例えば、膀胱壁)の特性、透過化剤の種類、及び該透過表面の周囲の環境を含めたいくつかの要因に応じて変化する。
【0094】
いくつかの実施形態では、透過化剤の透過有効量は、約0.005%から約10%(w/v)、より好ましくは約0.025%から約5%(w/v)、及び最も好ましくは約0.05%から約0.5%(w/v)の範囲である。いくつかの実施形態では、本医薬製剤は、0.005%から約10%(w/v)、より好ましくは約0.025%から約5%(w/v)、及び最も好ましくは約0.1%から約0.5%(w/v)である透過有効量のTriton(商標)X-100、Triton(商標)X-100類似体または誘導体を含む。1つの特定の実施形態では、Triton(商標)X-100の透過有効量は約0.1%(w/v)である。
【0095】
いくつかの実施形態では、透過化剤は、粘膜接着剤と併用される。いくつかの実施形態では、粘膜接着剤はカチオンポリマーである。いくつかの実施形態では、粘膜接着剤は、キトサン、キトサン類似体、キトサン誘導体、コンドロイチン、コンドロイチン類似体、またはコンドロイチン誘導体を含む。いくつかの実施形態では、粘膜接着剤の透過有効量は、約0.005%から10%(w/v)、より好ましくは約0.02%から約5%(w/v)、及び最も好ましくは約0.05%から約2%(w/v)の範囲である。1つの実施形態では、キトサン、キトサン類似体、またはキトサン誘導体の透過有効量は約1%(w/v)である。いくつかの実施形態では、製剤は、(1)ボツリヌス毒素、(2)Triton(商標)X-100、Triton(商標)X-100類似体、Triton(商標)X-100誘導体、またはそれらの混合物、及び(3)キトサン、キトサン類似体、キトサン誘導体、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、(1)ボツリヌス毒素A型、(2)Triton(商標)X-100、Triton(商標)X-100類似体、Triton(商標)X-100誘導体、またはそれらの混合物、及び(3)キトサン、キトサン類似体、キトサン誘導体、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、ボツリヌス毒素A型を約20単位から約300単位、キトサン、キトサン類似体、誘導体、またはそれらの混合物を約0.5%から約2%(w/v)、及びTriton(商標)X-100、類似体、誘導体、またはそれらの混合物を約0.05%から約1%(w/v)含む。1つの実施形態では、製剤は、ボツリヌス毒素A型を約100または200単位、キトサンを約1%、及びTriton(商標)X-100を約0.1%(w/v)含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、透過化剤はノノキシノール9である。いくつかの実施形態では、ノノキシノール9の透過有効量は、約0.005%から約10%(w/v)、より好ましくは約0.025%から約5%(w/v)、及び最も好ましくは約0.05%から約0.5%(w/v)の範囲である。1つの特定の実施形態では、本医薬製剤は、約0.1%(w/v)である透過有効量のノノキシノール9を含む。1つの特定の実施形態では、本医薬製剤は、約0.5%(w/v)である透過有効量のノノキシノール9を含む。いくつかの実施形態では、ノノキシノール9は粘膜接着剤と併用される。いくつかの実施形態では、粘膜接着剤は、キトサン、キトサン類似体、キトサン誘導体、コンドロイチン、コンドロイチン類似体、またはコンドロイチン誘導体を含む。いくつかの実施形態では、粘膜接着剤の透過有効量は、約0.005%から10%(w/v)、より好ましくは約0.02%から約5%(w/v)、及び最も好ましくは約0.1%から約2%(w/v)の範囲である。いくつかの実施形態では、キトサンまたはキトサン誘導体の透過有効量は、約0.005%から10%(w/v)、より好ましくは約0.02%から約5%(w/v)、及び最も好ましくは約0.1%から約2%(w/v)の範囲である。1つの実施形態では、キトサンまたはキトサン誘導体の透過有効量は、約1%(w/v)である。
【0097】
いくつかの実施形態では、透過化剤は、組み換えまたは天然のヒト血清アルブミンを含みうる。
【0098】
いくつかの実施形態では、本組成物は、いかなる動物由来タンパク質も含まない。1つの実施形態では、本組成物は、ボツリヌス毒素、TEM、もしくは組み換え改変毒素(活性成分として)、及び適切な多糖、または、安定剤もしくは賦形剤としての非タンパク質賦形剤を含む。
【0099】
このように、本開示の態様は、クロストリジウム誘導体及び1つ以上の透過化剤を含む医薬組成物を提供し、本明細書に開示の通り、この医薬組成物は、膀胱内膀胱供給に適し、1つ以上の透過化剤は、透過有効量で存在する。本組成物の実施形態は、クロストリジウム誘導体の薬理作用を引き起こすか、もしくは増強することになる治療薬及び/または賦形剤を含む。
【0100】
賦形剤を添加し、直後(例:カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプルピルセルロース(HPMC)、アルギネート)に、または温度環境の変化(例:ポロキサマー407)、pH環境の変化(Carbopol P-934、P940)、及び/もしくはイオン環境の変化(例:Gelriteジェランガム、アルギネート)時に起こる粘弾性の増加によって、処方の安定性を増すこと、透過化剤(例えば、EDTAもしくは他のキレート剤)の作用を高めること、または製剤の維持力を増すこともできる。
【0101】
賦形剤を添加し、尿と皮膚の張性及び/またはpHを調節し、製剤の供給、安定性、生体利用効率、及び/または治療活性を高めることもできる。
【0102】
別の態様において、本開示は、膀胱内膀胱投与に適した医薬製剤の作製法であって、本明細書に開示の少なくとも1つの透過化剤を含む溶液を準備し;本明細書に開示のクロストリジウム誘導体を含む組成物に溶液を添加することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、約50mlから約100mlの溶液を、クロストリジウム誘導体を含む組成物に添加することを含む。いくつかの実施形態では、クロストリジウム誘導体はボツリヌス毒素である。1つの実施形態では、本方法は、キトサン、類似体、または誘導体約1%(w/v)及びTriton(商標)X-100、類似体、または誘導体約0.1%(w/v)を含む水溶液約50mlから約100mlを、ボツリヌス毒素A型に添加することを含む。1つの実施形態では、本方法は、キトサンを約1%(w/v)及びTriton(商標)X-100を約0.1%(w/v)含む水溶液50mlを、凍結乾燥ボツリヌス毒素A型を約100単位または200単位含むバイアルに添加し;穏やかに混合して凍結乾燥ボツリヌス毒素A型を再水和することを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、賦形剤を添加して該クロストリジウム誘導体の担体としての機能を果たすこともできる。1つの実施形態では、ポリ‐L‐リジンが担体として添加される。
【0104】
本明細書に開示の組成物は、通常、医薬的に許容される組成物として投与される。本明細書で用いられる「医薬的に許容される」という用語は、個体への投与時、副作用、アレルギー反応、または他の有害反応もしくは望ましくない反応を生じない任意の分子的実体または組成物を意味する。本明細書で用いられる「医薬的に許容される組成物」という用語は、「医薬組成物」と同義であって、治療上有効な濃度の活性成分、例えば、本明細書に開示のクロストリジウム毒素及び/またはTEMのいずれか等を意味する。本明細書に開示の医薬組成物は、医学的及び獣医学的用途に有用である。医薬組成物は、個体に対して単独で投与されても、または他の補助的な活性成分、薬剤、薬物、もしくはホルモンと併せて投与されてもよい。医薬組成物は、限定されないが、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、封入、及び凍結乾燥を含めた様々な方法のいずれかを用いて製造されうる。医薬組成物は、限定されないが、滅菌溶液、懸濁液、乳剤、凍結乾燥物、錠剤、丸薬、ペレット、カプセル、粉末、シロップ、エリキシル剤、または投与に適した任意の他の剤形を含めた様々な形態のいずれかをとることができる。
【0105】
本医薬組成物は、活性成分を医薬的に許容される組成物に加工するのを容易にする医薬的に許容される担体を任意に含んでよい。本明細書で用いられる「薬理学的に許容される担体」という用語は、「薬理学的担体」と同義であって、投与された場合に長期的または永続的な有害作用を実質的に有さない任意の担体を意味し、また、「薬理学的に許容される媒体、安定剤、希釈剤、添加剤、助剤、または賦形剤」等の用語を包含する。かかる担体は、通常、活性化合物と混合されるか、または、活性化合物を希釈もしくは封入してもよく、また、固体、半固体、または液体剤でありうる。活性成分は、所望の担体もしくは希釈剤に可溶であるか、または、該所望の担体もしくは希釈剤の懸濁液として供給されうると理解される。様々な医薬的に許容される担体のいずれもが使用でき、限定されないが、水性媒体、例えば、水、生理食塩水、グリシン、ヒアルロン酸等;固体担体、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等;溶媒;分散媒;コーティング;抗細菌及び抗真菌剤;等張及び吸収遅延剤;または任意の他の不活性成分が挙げられる。薬理学的に許容される担体の選択は、投与方法に依存しうる。任意の薬理学的に許容される担体が活性成分と非適合である場合を除き、医薬的に許容される組成物におけるその使用が企図される。かかる医薬担体の特定の用途の非限定的な例は、PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS (Howard C. Ansel et al., eds., Lippincott Williams & Wilkins Publishers, 7th ed. 1999); REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY (Alfonso R. Gennaro ed., Lippincott, Williams & Wilkins, 20th ed. 2000); GOODMAN & GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS (Joel G. Hardman et al., eds., McGraw-Hill Professional, 10th ed. 2001);及びHANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS (Raymond C. Rowe et al., APhA Publications, 4th edition 2003)に見出すことができる。これらのプロトコルは、通常の手順であり、任意の変更は、当業者の、及び本明細書の開示からの十分範囲内である。
【0106】
本明細書に開示の医薬組成物は、限定されないが、他の医薬的に許容される成分(または医薬成分)であって、限定されないが、緩衝剤、防腐剤、張性調整剤、塩、酸化防止剤、浸透圧調整剤、生理的物質、薬理学的物質、増量剤、乳化剤、湿潤剤、甘味または香味剤等を含めた成分を任意に含みうる。得られる調製物が医薬的に許容されるという条件で、様々な緩衝剤及びpH調整手段が、本明細書に開示の医薬組成物を調製するために使用できる。かかる緩衝剤としては、限定されないが、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、及びホウ酸緩衝液が挙げられる。酸または塩基は、必要に応じて組成物のpHを調整するために使用できることが理解される。医薬的に許容される酸化防止剤としては、限定されないが、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、及びブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられる。有用な防腐剤としては、限定されないが、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安定化オキシクロロ組成物、及びキレート剤、例えば、DTPAまたはDTPAビスアミド、DTPAカルシウム、及びCaNaDTPAビスアミド等が挙げられる。医薬組成物で有用な張性調整剤としては、限定されないが、塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールまたはグリセリン、及び他の医薬的に許容される張性調整剤等が挙げられる。医薬組成物は、塩として提供されてよく、限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等を含めた多くの酸で形成されうる。塩は、対応する遊離塩基の形態より、水性または他のプロトン性溶媒に溶けやすい。これらの、及び薬理学の分野で公知の他の物質が医薬組成物に含まれうることが理解される。クロストリジウム毒素及びTEMを含む例示的医薬組成物は、Hunt, et al., Animal Protein-Free Pharmaceutical Compositions,米国シリアル番号第12/331,816号;及びDasari, et al., Clostridial Toxin Pharmaceutical Compositions, WO/2010/090677に記載されており、これらの各々は、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0107】
適切な医薬的に許容される担体の選択は、所望の特定の製剤の性質、例えば、本組成物が液体溶液、使用時に再構成される凍結乾燥粉体、懸濁溶液、ナノ粒子、リポソーム、またはマイクロエマルションに処方されるかどうかに依存する。
【0108】
適切な医薬的に許容される担体の選択はまた、投与経路にも依存する。好ましくは、担体は、選択された投与経路に適するように処方される。本医薬製剤の投与方法としては、限定されないが、注射、無針注射(例えば、Biojet、JetTouch)、電動、経皮供給、または膀胱内注入が挙げられる。1つの特定の実施形態では、製剤は、膀胱内注入用の医薬的に許容される担体を含む。1つの実施形態では、医薬担体は、ポリリジンを含む。
【0109】
治療方法
本開示の態様は、1つには、クロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化剤を含む医薬組成物を用いた医学的状態の治療方法であって、本医薬組成物の投与で、治療される医学的状態に関連した症状が予防または低減される方法を提供する。いくつかの実施形態では、投与は注射による。別の実施形態では、投与は、経皮、皮下、または局所的である。さらに別の実施形態では、投与は、膀胱内送達である。
【0110】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の医薬製剤を、必要とする対象に、患者の機能を改善させるのに十分な量で投与する段階を含む、疾患、障害、状態等の治療方法を提供する。ある特定の実施形態では、疾患は、神経筋性のもの、例えば、筋肉及びその神経支配に作用する疾患等、例えば、過活動膀胱等である。ある特定の実施形態は、痛みの治療、例えば、頭痛の痛み、背中の痛み、または筋肉痛などの治療に関する。特定の実施形態では、本発明の方法は、例えば、うつ病、不安神経症等を含めた精神的障害の治療を包含する。
【0111】
泌尿器系障害の治療
いくつかの実施形態では、医学的障害は、泌尿器系膀胱疾患及び状態を含み、限定されないが、過活動膀胱(OAB)、膀胱炎、膀胱がん、神経因性排尿筋過活動(NDO)が挙げられる。実施形態では、本開示はまた、過活動膀胱(OAB)、例えば、神経学的状態に起因するもの(NOAB)、または特発性OAB(IOAB)等を抱える患者の治療方法も提供する。
【0112】
神経因性膀胱機能障害は、排尿に関連する正常な神経路の障害に起因する機能障害である。神経因性膀胱機能障害の一種は、過活動(痙性または過反射的)膀胱である。過活動神経因性膀胱は、膀胱からの尿の無制御な頻回の排出によって特徴づけられる。減少した膀胱容量及び不完全な排尿がある場合がある。痙性膀胱は、合理的な尿量がたまるまで排尿収縮を抑制する膀胱の排尿筋の能力の低下によって引き起こされることがある。多くの場合、膀胱内に少量の尿しかない場合でも、排尿の強い衝動を感じる。患者は、切迫、頻回、夜間頻尿、及び失禁の症状を訴えることがある。別の種類の神経因性膀胱機能障害は、尿道括約筋の弛緩の困難によって特徴づけられる。括約筋は、痙攣性でありうる。これは、膀胱を空にすることを困難にし、それが尿閉及び尿路感染症につながりうる。神経因性膀胱機能障害の別の種類では、排尿筋と尿道括約筋の両方が同時に収縮し、尿閉を生じる。排尿筋と尿道括約筋の両方の同時収縮に関連する機能障害は、排尿筋‐外括約筋筋失調(DESD)と呼ばれる。各々が参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,449,192号;第8,062,807号及び第7,968,104号は、神経因性膀胱機能障害の患者を、治療有効量のボツリヌス毒素を該患者の膀胱壁内に注射することによって治療する方法を開示している。
【0113】
間質性膀胱炎(IC)は、膀胱痛、慢性骨盤痛、刺激性排尿症状、及び無菌尿で特徴づけられる、治療不能で慢性の消耗性膀胱疾患である。ICでは、当該膀胱壁は通常、粘膜潰瘍を伴う炎症性浸潤並びに平滑筋収縮、尿容量減少、血尿、及び頻回の痛みの伴う排尿を引き起こす瘢痕化を示す。
【0114】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬製剤は、膀胱またはその近傍、例えば、排尿筋に投与することができ、製剤の投与が、過活動膀胱に関連する切迫性尿失禁を減少させる。ある特定の実施形態では、その用量は、治療当たり約10単位から約200Uの範囲でありうる。いくつかの実施形態では、本医薬製剤は、膀胱内膀胱供給によって投与されうる。
【0115】
したがって、本開示の態様は、さらに、膀胱疾患の治療を必要とする患者の治療方法であって、クロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化剤を含む本明細書に開示の医薬組成物であって、透過化剤が、クロストリジウム誘導体に対する膀胱壁の透過性を治療上有効な速度で、かつ該膀胱壁を不可逆的に損傷することなく実質的に高めるのに有効な量で存在する医薬組成物を準備し;医薬組成物を膀胱にカテーテルを介して注入し;それによって膀胱疾患を治療することを含む方法を提供する。1つの実施形態では、本方法はさらに、膀胱壁を、注入段階に先立って医薬組成物で前処理することを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、患者の膀胱疾患の治療方法は、透過化剤を含む溶液を準備し;その溶液をクロストリジウム誘導体に添加して治療製剤を形成し、その治療製剤を患者の膀胱にカテーテルを介して注入することを含む。いくつかの実施形態では、クロストリジウム誘導体はボツリヌス毒素である。別の実施形態では、クロストリジウム誘導体はTEMである。1つの実施形態では、クロストリジウム誘導体はボツリヌス毒素A型である。いくつかの実施形態では、透過化剤は界面活性剤である。1つの実施形態では、透過化剤は非イオン界面活性剤である。いくつかの実施形態では、透過化剤はさらにカチオンポリマーを含む。いくつかの実施形態では、カチオンポリマーは、生体接着剤または粘膜接着剤である。いくつかの実施形態では、粘膜接着剤は、キトサン、キトサン類似体または誘導体を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、非イオン界面活性剤及びカチオンポリマーを含む溶液をボツリヌス毒素に混合することを含む。
【0117】
別の態様において、本開示は、患者の間質性膀胱炎(IC)の症状の緩和方法であり、クロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化剤を含む医薬組成物であって、透過化剤が、クロストリジウム誘導体に対する膀胱壁の透過性を治療上有効な速度で、かつ膀胱壁を不可逆的に損傷することなく実質的に高めるのに有効な量で存在する医薬組成物を準備し;その医薬組成物を膀胱にカテーテルを介して注入し;それによって該ICの症状を緩和することを含む方法を提供する。
【0118】
別の態様において、本製剤は、カテーテル、供給装置表面(シリンジ、パッチ、極微針、工学的注射器(Biojet等)、チューブ、及び容器へのクロストリジウム誘導体の吸着を防止または最小化することによって、クロストリジウム誘導体の生体利用効率を最大化する。
【0119】
別の態様において、本処方は、粘膜接着剤の相互作用を通して、皮膚や膀胱壁内面へのクロストリジウム誘導体の滞留を高めることによって、クロストリジウム誘導体の生体利用効率を最大化する。
【0120】
他の医学的障害:
痛みの治療
別の実施形態では、本開示は、本発明の医薬製剤を、痛みを軽減するのに十分な量で、それを必要とする対象に投与する段階を含む痛みの治療方法を提供する。別の実施形態では、患者は、筋筋膜痛、片頭痛の痛み、緊張型頭痛の痛み、神経因性疼痛、顔面痛、腰痛、副鼻洞頭痛の痛み、顎関節疾患に関連する痛み、痙縮または頸部ジストニアに関連する痛み、手術後の傷の痛み、または神経痛を抱える。治療期間は、複数の治療を含むことができる。
【0121】
実施形態では、該患者は顔面痛を抱える。顔面痛を抱える対象は、例えば、治療当たり約4~40Uの本開示の医薬製剤を受ける。治療当たり40Uを超える用量もまた、顔面痛の患者に投与され、治療応答を達成しうる。治療セッションは、複数の治療を含むことができる。
【0122】
実施形態では、患者は筋筋膜痛を抱える。筋筋膜痛を抱える対象は、例えば、治療当たり約5~100Uの本発明の医薬製剤を受ける。治療当たり100Uを超える用量もまた、筋筋膜痛の患者に投与され、治療応答を達成しうる。治療セッションは、複数の治療を含むことができる。
【0123】
実施形態では、該患者は腰痛を抱える。腰痛を抱える対象は、例えば、治療当たり約15~150Uの本発明の医薬製剤を受ける。治療当たり150Uを超える用量もまた、腰痛の患者に投与され、治療応答を達成しうる。治療セッションは、複数の治療を含むことができる。
【0124】
実施形態では、該患者は片頭痛の痛みを抱え、一か月に4時間以上15日以上の片頭痛を抱える患者が含まれる。片頭痛の痛みを抱える対象は、例えば、治療当たり約0.5~200Uの本発明の医薬製剤を受ける。治療セッションは、複数の治療を含むことができる。
【0125】
例えば、治療部位当たり約0.5U、約1.0U、約1.5U、約2.0U、約2.5U、約3.0U、約3.5U、約4.0U、約4.5U、約5.0U、約5.5U、約6.0U、約6.5U、約7.0U、約7.5U、約8.0U、約8.5U、約9.0U、約9.5U、約10.0U、約12U、約15U、約17U、約20U、約22U、約25U、約27U、約30U、約32U、約35U、約37U、約40U、約42U、約45U、約47U、または約50Uが片頭痛の痛みの患者に投与される。患者は、2部位から35部位の範囲の複数の部位で治療されうる。実施形態では、片頭痛を抱える患者は、皺眉筋(各5Uを2回注射)、鼻根筋(5Uを1回注射)、前頭(各5Uを4回注射)、側頭筋(各5Uを8回注射)、後頭(各5Uを6回注射)、頸部傍脊柱(各5Uを4回注射)、及び僧帽筋(各5Uを6回注射)の筋肉を横切る、0.1mLの注射当たり5Uの31回である。正中線で注射されうる鼻根筋を除き、すべての筋肉は、ある特定の実施形態では、注射部位の半分が頭頚部の左側かつ半分が右側の双方に注射されうる。治療当たり200Uを超える用量もまた、片頭痛の痛みの患者に投与され、治療応答を達成しうる。治療セッションは、複数の治療を含むことができる。別の実施形態では、医薬組成物は、経皮的または局所的に投与される。
【0126】
実施形態では、患者は副鼻洞頭痛の痛みを抱える。副鼻洞頭痛の痛みを抱える対象は、例えば、治療当たり約4~40Uの本発明の医薬製剤を受ける。さらなる例では、該対象は、治療当たり約4Uから40Uを受ける。治療当たり40Uを超える用量もまた、副鼻洞頭痛の痛みの患者に投与され、治療応答を達成しうる。治療セッションは、複数の治療を含むことができる。
【0127】
実施形態では、患者は緊張型頭痛の痛みを抱える。緊張型頭痛の痛みを抱える対象は、例えば、治療当たり約5~50Uの本発明の医薬製剤を受ける。実施形態では、緊張型頭痛の痛みを抱える患者は、皺眉筋(各5Uを2回注射)、鼻根筋(5Uを1回注射)、前頭(各5Uを4回注射)、側頭筋(各5Uを8回注射)、後頭(各5Uを6回注射)、頸部傍脊柱(各5Uを4回注射)、及び僧帽筋(各5Uを6回注射)の筋肉を横切る、0.1mLの注射当たり5Uを31回注射される。正中線で注射されうる鼻根筋を除き、すべての筋肉は、ある特定の実施形態では、該注射部位の半分が当該頭頚部の左側かつ半分が右側の双方に注射されうる。治療当たり200Uを超える用量もまた、緊張型頭痛の痛みの患者に投与され、治療応答を達成しうる。治療セッションは、複数の治療を含むことができる。別の実施形態では、医薬製剤は、局所的または経皮的に投与されうる。
【0128】
実施形態では、患者は、急性または再発性慢性副鼻腔炎に伴う副鼻洞頭痛の痛みまたは顔面痛を抱える。例えば、本発明の医薬製剤は、鼻粘膜または副鼻腔を覆う皮下組織に投与することができ、製剤の投与が、急性再発性もしくは慢性副鼻腔炎に伴う頭痛及び/または顔面痛を軽減する。さらなる実施形態では、本発明の医薬製剤のいずれも、鼻粘膜または、篩骨;上顎骨;乳様突起;前頭骨;及び蝶形骨からなる群から選択される1つ以上の副鼻腔の表面等の副鼻腔を覆う皮下組織に投与されうる。別の実施形態では、副鼻腔を覆う皮下組織は、前頭;頬骨;側頭;耳介後部;及び口唇からなる群から選択される1つ以上の領域内にある。実施形態では、各5Uの頻回注射は、急性または再発性慢性副鼻腔炎に関連する副鼻洞頭痛の痛みまたは顔面痛を治療するために投与される。
【0129】
別の実施形態では、急性または再発性慢性副鼻腔炎に関連する副鼻洞頭痛の痛みまたは顔面痛を抱える患者は、本発明の医薬製剤のいずれかを、患者の患部に投与することによって治療される。さらなる実施形態では、本明細書に開示の医薬製剤は、副鼻腔を支配している三叉神経の突起に投与される。
【0130】
急性または再発性慢性副鼻腔炎に関連する副鼻洞頭痛の痛みまたは顔面痛を抱える患者は、多くの場合、鼻炎、洞過剰分泌、及び/または化膿性鼻汁等の症状を呈する。1つの実施形態では、本発明の医薬製剤で治療される患者は、副鼻腔過剰分泌及び化膿性鼻汁の症状を呈する。
【0131】
本開示の実施形態はまた、急性または再発性慢性副鼻腔炎に関連する副鼻洞頭痛の痛みまたは顔面痛を抱える患者の治療方法であって、対象が神経痛を抱えるものである治療方法を提供する。ある特定の実施形態では、神経痛は、三叉神経痛である。別の実施形態では、神経痛は、感覚神経への圧縮力に関連する;内在神経損傷、脱髄疾患、もしくは遺伝性疾患に関連する;代謝異常に関連する;中枢神経性血管疾患に関連する;または外傷に関連する。本開示の別の実施形態では、該痛みは、抜歯または歯の再建に関連する。
【実施例0132】
以下の実施例は本発明の実施形態及び態様を説明するが、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0133】
実施例1
本試験の目的は、雌のSprague Dawleyラットの膀胱内への注入によって投与された8種の媒体製剤のうちの1種において、BOTOX(登録商標)として知られるボツリヌス毒素A型の効力を評価するためであった。効力は、投与の8日後に調べ、有効性と忍容性は、それぞれ、免疫組織化学(IHC)及び組織病理によって評価した。
【0134】
陽性対照(ポジティブコントロール):4匹のラットに、BOTOX(登録商標)10単位の生理食塩水溶液を、排尿筋への注射によって投与した。
【0135】
陰性対照(ネガティブコントロール):媒体のみを含む製剤(表1に示すBOTOX(登録商標)を添加しないもの)。
【0136】
切断されたSNAP25を、シナプス末端でのBOTOX(登録商標)活性のバイオマーカーとして、また、この送達方法の機能の潜在的な指標として用いた。本試験では、これは、尿路上皮を横切るBOTOX(登録商標)の移動の成功を確認するために用いた。
シナプトフィジンの発現を用いて、シナプス末端を特定し、切断されたSNAP25の局在の特異性を確実にした。組織病理を採用し、この処方の膀胱組織への影響を評価した。
【0137】
体重150~200グラムの雌のラットに、表1にしたがって0.5mlの媒体製剤または媒体製剤+Botox(登録商標)30Uを投与した。
表1:
【0138】
製剤の膀胱内注入は、以下のように行った。ラットをイソフルランで麻酔し、その膀胱を指先の圧力を下腹部に加えることで空にした。麻酔中に、カテーテルを尿道から膀胱に導入した。その後、製剤を、0.5ml+0.1ml(カテーテルによってできたデッドスペースに対応するため)の投与体積を2分間かけてゆっくりと膀胱に投与した。この製剤は、麻酔の回復まで60分間膀胱に滞留させた。これらのラットは注入の1週間後、安楽死させた。
【0139】
膀胱を採取し、10%ホルマリンで固定し、標準的な組織学的技術を用いて処理した。
追加の切片を調製し、切断されたSNAP25及びシナプトフィジン用の蛍光免疫組織化学用に処理した。
【0140】
免疫蛍光:動物ごとに1つの組織ブロックを縦断面にクリオスタット切片化(厚さ14μm)し、スライドに載せた。各スライド上に約140μm離して3つの切片を載せた、3枚のスライドを各ブロックから調製した。2枚のスライドは免疫蛍光用に処理した。組織切片は、最初に、ブロッキング緩衝液(1XPBS+0.1%TX-100+10%正常ロバ血清)中で非特異的シグナルをブロックし、その後、所望の濃度で抗切断SNAP25及び抗シナプトフィジンを含む一次抗体の組合せとともにブロッキング緩衝液中、4℃で一夜インキュベートした。洗浄後、切片を二次抗体(Jackson ImmunoResearch)とともに4℃で2時間インキュベートし、その後再度洗浄した。スライドに載せた切片に、1.5μg/mlのDAPIとともにFluoromount-Gを用いてカバースリップを載せた。3枚目のスライドは、解剖学的評価用にヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。
【0141】
データ分析及び定量:画像を分析し、Image-Pro(登録商標)(MediaCybernectics)、Metamorph(登録商標)(Molecular Devices)、またはZEN(Carl Zeiss)ソフトウェアを用いて、Leica DMLB明視野顕微鏡、ニコンE800蛍光広視野顕微鏡、またはZeiss LSM-710共焦点顕微鏡でとらえた。高解像度の3D定量分析用にImaris(登録商標)(Bitplane)ソフトウェアを用い、神経線維の空間的関係を確立した。神経線維型は、それらの形態及び神経化学を基に特定した。半定量分析用には、各スライドについて、3切片のすべてを顕微鏡下で注意深く観察し、各動物に対して、SNAP25
197染色の程度(
図3及び4に示す)または膀胱の組織の完全性(H&E)(
図5A~Dに示す)のどちらかのスコア(0~4)を付与した。平均スコアを各処理/製剤について計算し、それらの結果を部分的に表2及び
図6に示す。
【0142】
これらの製剤は、以下に基づいて評価した。
1.膀胱壁の組織学的変化;「紡錘細胞浸潤」の診断は、不定起源の紡錘状細胞数の増加が、固有層が浸潤して見られる膀胱に対してなされ(
図5);反応性の変化として、これらは線維症の潜在的前駆体として望ましくないと見なした;及び
2.切断されたSNAP25のスコア。
【0143】
結果の概要:これらの結果を表2にまとめる。
表2:
【0144】
試験製剤:チロキサポール0.1%(w/v)の製剤を除いて、BOTOX(登録商標)の膀胱内注入後のすべての検体で正の免疫組織化学スコアが認められた。
図6はいくつかの典型的な製剤のIHCスコアを示す。
【0145】
実施例2
過活動膀胱の治療
本実施例は、神経因性または特発性膀胱機能障害に起因する過反射的膀胱の患者の治療について説明する。
【0146】
神経因性または特発性膀胱機能障害に起因する過反射的膀胱症状(膀胱感染症、失禁、及び切迫性尿失禁)の数患者を、膀胱注入によって治療する。BOTOX(登録商標)約100単位、Triton(商標)X-100 0.1%(w/v)、及びキトサン1%(w/v)を含む医薬組成物。この医薬組成物を、これら患者の膀胱に軽い鎮静下で注入する。平均最大膀胱容量の有意な増加及び平均最大排尿筋排尿圧の有意な減少が、治療後7日で認められる。
【0147】
実施例3:Triton X-100で誘導された膀胱壁の透過性の増加は可逆的であった
ヒト膀胱尿路上皮細胞(CELLnTEC カタログ番号HBEP.05)を、ポリカーボネート膜インサート上のウェルあたり約150,000生存細胞の濃度で播種した。これらのインサートは、24ウェルの組織培養プレートのウェル内部に配置した。CELLnTEC CnT-58培地(増殖培地)をその後これらウェルに添加し、これら細胞を、細胞が融合するまで37℃(5%CO2)で2日間インキュベートした。インキュベートの終了時、増殖培地を除去し、CELLnTEC CnT-21培地(分化培地)で置換した。細胞をその後7日間分化させ、その後2~3細胞のヒト尿路上皮層が確立された。細胞は、以下の媒体で1時間処理した。0.9%生理食塩水、0.1%Triton X-100の0.9%生理食塩水溶液、及び0.5%Triton X-100の生理食塩水溶液。各媒体は、3連で試験した。細胞は、各媒体の体積0.1mLを、細胞が増殖したこれら膜インサートの表面に適用することによって処理した。暴露後、これらインサートから媒体溶液を除去し、分化培地を各インサートに添加した。細胞をその後インキュベートし、0、24、または48時間回復させた。0.9%生理食塩水(陰性対照)は0時間でのみ試験したことに留意されたい。ゼラチン透過性アッセイをその後実施した。ゼラチン透過性アッセイは、各インサートから培地を除去し、その後、生理食塩水中に調製された0.1mL体積の0.1mg/mLOregon Green488標識ゼラチンを各インサートに添加することによって実施した。インサートは、0.8mL体積のアール平衡塩類溶液を含むウェル内に配置した。1時間の暴露後、フロースルーを回収し、Envision機器を用いて蛍光を測定した。24時間及び48時間の試験結果をその後0時間のデータと比較し、ゼラチン透過性の減少が生じたかどうかを決定した。
【0148】
0.1%Triton X-100で処理されたインビトロ尿路上皮を通して拡散されたゼラチンの量は、24時間及び48時間の回復後は低くなったことがわかった。これらの結果は、インビトロヒト尿路上皮透過性の、0.1%Triton X-100処理後の回復を示唆する。
【0149】
多くの変更及び修正が、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によってなされうる。したがって、記載の実施形態は、例示の目的にのみ記載され、実施形態は、以下の特許請求の範囲を限定するものと解釈されないものとすることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は、したがって、文字通りに記載の要素の組合せのみでなく、実質的に同じ機能を実質的に同じ方法で実行し、実質的に同じ結果を得るための等価要素のすべてを含むように読み取られる。特許請求の範囲は、このように、上述のもの、概念的に等価のもの、及び本開示の考えを組み込むものを含むと理解される。
治療有効量のクロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化剤を含む医薬組成物であって、前記少なくとも1つの透過化剤が、前記クロストリジウム誘導体に対する膀胱壁の透過性を実質的にかつ可逆的に増加させるのに有効な量で存在する、前記医薬組成物。
多くの変更及び修正が、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によってなされうる。したがって、記載の実施形態は、例示の目的にのみ記載され、実施形態は、以下の特許請求の範囲を限定するものと解釈されないものとすることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は、したがって、文字通りに記載の要素の組合せのみでなく、実質的に同じ機能を実質的に同じ方法で実行し、実質的に同じ結果を得るための等価要素のすべてを含むように読み取られる。特許請求の範囲は、このように、上述のもの、概念的に等価のもの、及び本開示の考えを組み込むものを含むと理解される。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕治療有効量のクロストリジウム誘導体及び少なくとも1つの透過化剤を含む医薬組成物であって、前記少なくとも1つの透過化剤が、前記クロストリジウム誘導体に対する膀胱壁の透過性を実質的にかつ可逆的に増加させるのに有効な量で存在する、前記医薬組成物。
〔2〕前記クロストリジウム誘導体がボツリヌス毒素であり、前記少なくとも1つの透過化剤が、界面活性剤及び粘膜接着剤を含む、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔3〕前記界面活性剤が非イオン界面活性剤であり、前記粘膜接着剤がカチオンポリマーである、前記〔2〕に記載の医薬組成物。
〔4〕前記界面活性剤が非イオン界面活性剤を含む、前記〔2〕に記載の医薬組成物。
〔5〕前記界面活性剤がアルキルアルリル(alryl)ポリエーテルを含む、前記〔2〕に記載の医薬組成物。
〔6〕前記粘膜接着剤が、キトサン、キトサン類似体、キトサン誘導体、またはそれらの組合せを含む、前記〔2〕に記載の医薬組成物。
〔7〕前記界面活性剤が、約0.01%から約0.5%(w/v)の範囲の量で存在する、前記〔2〕に記載の医薬組成物。
〔8〕前記粘膜接着剤が、約0.01%から約5%(w/v)の範囲の量で存在する、前記〔5〕に記載の医薬組成物。
〔9〕前記クロストリジウム誘導体がボツリヌス毒素である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔10〕前記界面活性剤がオクトキシノール-9を含む、前記〔2〕に記載の医薬組成物。
〔11〕前記界面活性剤がノノキシノール-9を含む、前記〔2〕に記載の医薬組成物。
〔12〕前記界面活性剤が、約0.1%(w/v)の量で存在する、前記〔10〕に記載の医薬組成物。
〔13〕前記界面活性剤が、約0.1%(w/v)の量で存在する、前記〔11〕に記載の医薬組成物。
〔14〕神経因性膀胱機能障害の患者の治療方法であって、前記患者の膀胱壁に、医薬組成物を膀胱内注入することを含み、前記医薬組成物が、治療有効量のクロストリジウム誘導体及び、ボツリヌス神経毒素に対する前記膀胱壁の透過性を治療上有効な速度で実質的に増加させるのに有効な量で存在する少なくとも1つの透過化剤を含むものである、前記方法。
〔15〕前記少なくとも1つの透過化剤が、界面活性剤及び粘膜接着剤を含む、前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕前記界面活性剤が非イオン界面活性剤を含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕前記粘膜接着剤が、キトサン、キトサン類似体、キトサン誘導体、またはそれらの組合せを含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔18〕前記非イオン界面活性剤がアルキルアルリル(alryl)ポリエーテルを含む、前記〔16〕に記載の方法。
〔19〕前記粘膜接着剤が、高分子ポリフェノールを含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔20〕前記粘膜接着剤が、高分子ポリチオールを含む、前記〔15〕に記載の方法。