(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081528
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ビタミンD治療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/593 20060101AFI20220524BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220524BHJP
A61P 5/18 20060101ALI20220524BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220524BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A61K31/593
A61P13/12
A61P5/18
A61P3/02 102
A61K9/48
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022027071
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2018550792の分割
【原出願日】2017-03-28
(31)【優先権主張番号】62/314,359
(32)【優先日】2016-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515256888
【氏名又は名称】オプコ アイルランド グローバル ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】メルニック ジョエル ゼット
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ チャールズ ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ペトコヴィッチ ピー マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ストラグネル スティーブン エイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】慢性腎疾患を有する患者においてビタミンD不足及び二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法の提供。
【解決手段】反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを投与することを含む、CKDを有する患者においてビタミンD不足及び二次性副甲状腺機能亢進症を治療するための方法が開示される。本方法は、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを90ng/mlを超えて安全に上昇させるのに有効、かつ/または25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDの患者の血清比を20未満に制御するのに有効な量の25-ヒドロキシビタミンDを投与することを含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性腎疾患ステージ3または4を有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法であって、前記患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを90ng/mlを超えて上昇させるのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満に制御するのに有効な量の前記反復用量を、投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
慢性腎疾患ステージ3または4を有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法であって、前記患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを90ng/mlを超えて上昇させるのに有効な、かつ前記患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満に制御するのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項4】
慢性腎疾患ステージ3または4を有する患者におけるビタミンD不足を治療する方法であって、前記患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満に制御するのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項5】
前記反復投与が、少なくとも3ヶ月間投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反復投与量が、前記患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを100ng/mlを超えて上昇させるのに有効である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記量が、前記患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を15未満に制御するのに有効である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記用量の25-ヒドロキシビタミンDが、制御放出経口投薬として投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
慢性腎疾患ステージ3または4を有する前記患者がまた、30ng/ml未満の血清総25-ヒドロキシビタミンD濃度も有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
慢性腎疾患ステージ3またはステージ4及び30ng/mL未満の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法であって、カルシフェジオールの経口延長放出製剤を投与することを含む、方法。
【請求項11】
約30mcgの25-ヒドロキシビタミンD3、ワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形、またはその使用であって、前記剤形が、CKDステージ3またはステージ4を有する患者に投与されるとき、反復投薬後に25-ヒドロキシビタミンD3についての以下のベースライン調整された薬物動態パラメーター:(1)約10ng/mL~約45ng/mLのCmax、及び(2)約300ng・d/mL~約1300ng・d/mLのAUC0~6週のうちの1つ以上を有し、任意選択で、約8日~約45日のTmaxをさらに有する、延長放出剤形、またはその使用。
【請求項12】
約60mcgの25-ヒドロキシビタミンD3、ワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形、またはその使用であって、前記剤形が、CKDステージ3またはステージ4を有する患者に投与されるとき、反復投薬後に25-ヒドロキシビタミンD3についての以下のベースライン調整された薬物動態パラメーター:(1)約30ng/mL~約90ng/mLのCmax、及び(2)約700ng・d/mL~約2300ng・d/mLのAUC0~6週のうちの1つ以上を有し、任意選択で、約29日~約45日のTmaxをさらに有する、延長放出剤形、またはその使用。
【請求項13】
約30mcgの25-ヒドロキシビタミンD3、ワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形、またはその使用であって、前記剤形が、CKDステージ3またはステージ4を有する患者に投与されるとき、反復投薬後に1,25-ジヒドロキシビタミンDについての以下のベースライン調整された薬物動態パラメーター:(1)約1pg/mL~約21pg/mLのCmax、及び(2)約1g・d/mL~約460g・d/mLのAUC0~6週のうちの1つ以上を有し、任意選択で、約1日~約44日のTmaxをさらに有する、延長放出剤形、またはその使用。
【請求項14】
約60mcgの25-ヒドロキシビタミンD3、ワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形、またはその使用であって、前記剤形が、CKDステージ3またはステージ4を有する患者に投与されるとき、反復投薬後に1,25-ジヒドロキシビタミンDについての以下のベースライン調整された薬物動態パラメーター:(1)約7pg/mL~約30pg/mLのCmax、及び(2)約1g・d/mL~約570g・d/mLのAUC0~6週のうちの1つ以上を有し、任意選択で、約8日~約44日のTmaxをさらに有する、延長放出剤形、またはその使用。
【請求項15】
約10mcg~約90mcgの25-ヒドロキシビタミンD3、ワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形をCKDステージ3またはステージ4を有する患者に投与する方法であって、25-ヒドロキシビタミンD3についての以下のベースライン調整された薬物動態学的パラメーター:(1)約5ng/mL~約150ng/mLのCmax、(2)約5日~約60日のTmax、(3)約100ng・d/mL~約3300ng・d/mLのAUC0~6週のうちの1つ以上を達成するのに有効な反復投与量の前記延長放出経口剤形を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項16】
任意にワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む、約10mcg~約90mcgの25-ヒドロキシビタミンD3を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形の投与を、任意でCKDステージ3またはステージ4を有する、前記投与を必要とする患者に施す方法であって、1,25-ジヒドロキシビタミンDについての以下のベースライン調整された薬物動態学的パラメーター:(1)約0.1pg/mL~約50pg/mLのCmax、(2)約1日~約44日のTmax、(3)約1g・d/mL~約1300g・d/mLのAUC0~6週のうちの1つ以上を達成するのに有効な反復投与量の前記延長放出経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項17】
任意にワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む、約30mcgの25-ヒドロキシビタミンD3を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形の投与を、任意でCKDステージ3またはステージ4を有する、前記投与を必要とする患者に施す方法であって、以下:(1)約1ng/mL/週~約7ng/mL/週の平均血清25-ヒドロキシビタミンDの増加、(2)約1~約10pg/mL/週の平均血清1,25-ジヒドロキシビタミンDの増加、(3)約50ng/mL~約55ng/mLの平均定常状態血清25-ヒドロキシビタミンDレベルのうちの1つ以上達成するのに有効な反復投与量の前記延長放出経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項18】
任意にワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む、約30mcg~約60mcgの25-ヒドロキシビタミンD3を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形の投与を、任意でCKDステージ3またはステージ4を有する、前記投与を必要とする患者に施す方法であって、以下:(1)約30pg/mL~約80pg/mLのベースラインからの血漿無傷PTHの減少、(2)約50ng/mL超~約100ng/mLの定常状態血清25-ヒドロキシビタミンDレベル、(3)少なくとも約10pg/mLのベースラインからの血清1,25-ジヒドロキシビタミンDの増加、(4)0~約0.3mg/dLのベースラインからの血清カルシウムの増加、(5)0~約0.3mg/dLのベースラインからの血清リンの増加、(6)少なくとも約10U/Lのベースラインからの血清BSAPの減少、(7)少なくとも約100pg/mLのベースラインからの血清CTX-1の減少、(8)少なくとも約30ng/mLのベースラインからの血清P1NPの減少のうちの1つ以上を達成するのに有効な反復投与量の前記延長放出経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記反復用量が、ベースラインと比較して、前記患者の血漿PTHレベルを少なくとも15%、任意には少なくとも30%低下させるのに有効である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項20】
前記反復用量が、1日当たり1回分の用量の頻度で投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項21】
前記反復用量が、少なくとも1ヶ月間、任意に少なくとも6ヶ月間の延長された期間投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項22】
患者のビタミンD応答性疾患を治療する方法であって、高カルシウム血症を誘発することなく、前記患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを100ng/ml~500ng/mlの範囲に上昇させるのに有効であり、同時に前記患者の血清1,25-ジヒドロキシビタミンDレベルを50pg/ml~350pg/mlの範囲に上昇させるのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを前記患者に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2016年3月28日に出願された米国仮特許出願第62/314,359号の利益が、米国特許法第119条の下で本明細書で主張され、その開示が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3(「25-ヒドロキシビタミンD」と総称される)として知られるビタミンD代謝物は、血流中のビタミンDホルモン、カルシウム及びリンの適切なレベルの維持に寄与する脂溶性のステロイドプロホルモンである。プロホルモン25-ヒドロキシビタミンD2は、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)から生成され、25-ヒドロキシビタミンD3(カルシフェジオール)は、主に肝臓に位置する1つ以上の酵素によってビタミンD3(コレカルシフェロール)から生成される。これら2つのプロホルモンはまた、肝臓で見られる酵素と同一または類似の酵素を含有する腸細胞などの特定の細胞で、ビタミンD2及びビタミンD3(「ビタミンD」と総称される)から肝臓の外で産生され得る。
【0003】
ビタミンDプロホルモンは、1αヒドロキシラーゼ酵素CYP27B1によって腎臓でさらに代謝されて、強力なホルモンになる。プロホルモン25-ヒドロキシビタミンD2は、代謝されて、1α、25-ジヒドロキシビタミンD2(エルカルシトリオール)として知られるホルモンになり、同様に、25-ヒドロキシビタミンD3は代謝されて、1α、25-ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)になる。プロホルモンからのこれらのホルモンの産生はまた、必要な酵素(複数可)を含有する細胞において腎臓の外でも起こり得る。ビタミンDホルモンの急速な上昇または過剰な細胞内レベルは、ビタミンD受容体(VDR)を含有する細胞における24-ヒドロキシラーゼ酵素CYP24A1の発現を刺激する。CYP24A1は25-ヒドロキシビタミンDを異化して、主要な異化代謝物として24,25-ジヒドロキシビタミンDを形成する。
【0004】
ビタミンDホルモンは、細胞内のビタミンD受容体(VDR)によって媒介されるヒトの健康に不可欠な役割を担っている。ビタミンDホルモンは、細胞の分化及び成長、副甲状腺による副甲状腺ホルモン(PTH)分泌、ならびに正常な骨形成及び代謝の調節に関与する。具体的には、ビタミンDホルモンは、小腸による食事性カルシウム及びリンの吸収、ならびに腎臓によるカルシウムの再吸収を制御することによって、血中カルシウムレベルを調節する。正常な状態では、食事性カルシウムが血清カルシウムの主要な供給源であるように、腸のカルシウム吸収の刺激に対するビタミンDの作用が優勢である。しかしながら、食事性カルシウムまたはビタミンDが不十分であると、副甲状腺はPTHの分泌を高め、骨からのカルシウム動員を増強して血清カルシウムレベルを維持する。過剰なビタミンDホルモンレベルは、一過性か長期かにかかわらず、異常に上昇した尿中カルシウム(高カルシウム尿症)、血中カルシウム(高カルシウム血症)、血中リン(高リン酸血症)、及び無形成骨疾患を含む副作用をもたらす可能性がある。ビタミンDホルモンはまた、筋骨格系、免疫系及びレニン-アンジオテンシン系の正常な機能にも必要である。ビタミンDホルモンの他の多くの役割は、ほぼ全てのヒト組織における細胞内VDRの存在を証明することに基づいて仮定され、解明されている。
【0005】
放置すると、不適切なビタミンD供給は、くる病や骨軟化症などの重篤な骨障害を引き起こす可能性があり、骨粗鬆症、脊椎と腰との非外傷性骨折、肥満、糖尿病、筋肉衰弱、免疫不全、高血圧、乾癬、及び様々な癌が含まれる、多くの他の疾患の発症に寄与し得る。
【0006】
米国国立科学アカデミーの医学研究所(IOM)は、健康な個人のビタミンDの適正摂取量(AI)が、個人の年齢や性別に応じて1日当たり200~600IUの範囲であると結論付けている(Standing Committee on the Scientific Evaluation of Dietary Reference Intakes,Dietary reference intakes:calcium, phosphorus,magnesium,vitamin D,and fluoride.Washington,DC:National Academy Press (1997)、参照により組み込まれる)。ビタミンDのAIは、主に、ビタミンD欠乏性くる病または骨軟化症を予防するために十分な血清25-ヒドロキシビタミンDレベル(または11ng/mL以上)に基づいて定義された。IOMはまた、より高い用量が心臓不整脈、発作を含む、高カルシウム尿症、高カルシウム血症、及び全身血管ならびに他の軟組織の石灰化を含む、高カルシウム尿症、高カルシウム血症及び関連の後遺症のリスクの増大に関連しているという証拠に基づいて、一日当たり2,000IUのビタミンDのための許容上限摂取量(UL)を確立した。健康な対象における血清25-ヒドロキシビタミンDの許容される上限は、約100ng/mLまたは250nmol/Lである(例えば、Jones,G,Am.J.Clin.Nutr.88(suppl):582S-6S,2008;Holick,MF,Ann.Epidemiol.19(2):73-78,2009を参照されたい)。
【0007】
しかしながら、一般的に、特に慢性腎疾患(CKD)を有する対象におけるビタミンD不足(VDI)の定義は議論の余地がある。IOMはVDIを20ng/mL未満以下の総25-ヒドロキシビタミンDと定義しているが、Kidney Disease Outcomes Quality Initiative(KDOQI)、Kidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)、及び内分泌学診療ガイドラインはVDIを30ng/mL未満の25-ヒドロキシビタミンDと定義している(National Kidney Foundation KDOQI Guidelines,2003;National Kidney Foundation KDIGO Guidelines,2009;Holick et al.,J Clin Endocrinol Metab 96(7):1911-30,2011)。25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D3)異化代謝物、24,25-ジヒドロキシビタミンD(24,25(OH)2D)の出現は、20を超える25(OH)D3:24,25(OH)2D3の比によって定義されるVDIを用いて、充足度の有用性の尺度となり得る(Kaufmann et al.,J Clin Endocrinol Metab 99(7):2567-2574,2014)。25-ヒドロキシビタミンD及び24,25-ジヒドロキシビタミンDの血清レベルは、血清25-ヒドロキシビタミンDが正常(すなわち非CKD)集団において上昇するにつれて、25-ヒドロキシビタミンDに対する24,25-ジヒドロキシビタミンDへの異化作用が増加することと強く相関している(Berg et al.,Clin Chem 61(6):877-884,2015;Wagner at al.,J Ster Biochem Mol Bio 126:72-22,2011)。CYP24は、VDIを有する正常な対象では典型的に減少するが、CKDを有する対象では、上昇したレベルのCYP24が観察されている(Helvig et al.,Kidney Int 78(5):463-72,2010;国際特許出願第PCT/US2009/39355号)。
【0008】
VDIがどのように定義されているかに関わらず、従来の経口ビタミンDサプリメントは、最適な血中25-ヒドロキシビタミンDレベルを達成し、かつ維持するためには理想から懸け離れている。これらの調製物は、典型的には400IU~5,000IUのビタミンD3または50,000IUのビタミンD2を含有し、胃腸管内で迅速または即時放出のために処方される。慢性的に高用量で投与される場合、CKDにおけるビタミンD補充にしばしば必要とされるように、これらの製品は、重大な、そしてしばしば厳しい制限を有する。さらに、カルシフェジオールの即時放出製剤の以前の使用は、CKDのステージ3またはステージ4の患者で行われた臨床研究において、上昇したPTHを抑制するのに有効であることは証明されていない。
【0009】
25-ヒドロキシビタミンD2及び/または25-ヒドロキシビタミンD3の制御放出経口製剤及び徐々に投与される非経口(例えば、スロープッシュIV)製剤は、25-ヒドロキシビタミンDの管腔内、細胞内及び血中レベルにおける超生理学的急増ならびにそれらの影響なく、投与された25-ヒドロキシビタミンDの実質的に増加した異化作用を引き起こすことなく、そして、ビタミンD補給に関連する深刻な副作用を引き起こすことなく、25-ヒドロキシビタミンD不足及び欠乏症を治療するために投与され得る。制御放出及び徐々に投与される製剤は、血清カルシウム及び血清リンの望ましくない増加なしにPTHレベルを効果的に低下させ、したがって例えばCKD患者における二次性副甲状腺機能亢進症の治療に有用である。国際特許出願第PCT/US2007/061521号、同第PCT/US2008/061579号、同第PCT/US2014/028132、及び同第PCT/EP2015/068219号が参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
制御放出組成物は、ビタミンD結合タンパク質(DBP)上の輸送を介した25-ヒドロキシビタミンDの吸収を実質的に増加させ、カイロミクロン中の輸送による吸収を減少させる。この組成物はまた、投与後24時間の間、25-ヒドロキシビタミンDの実質的に一定の血中レベルの維持を提供する。25-ヒドロキシビタミンD2/25-ヒドロキシビタミンD3を徐々に、持続的かつ直接的に放出し、循環DBP(カイロミクロンよりもむしろ)に優先的に吸収することにより、血液、管腔内及び細胞内25-ヒドロキシビタミンD濃度スパイク、すなわち超生理学的レベル及び関連する望ましくない異化作用を緩和または排除することができる。さらに、徐放性及び持続放出性を提供することにより、25-ヒドロキシビタミンDの血清レベルを、即時放出製剤の投与よりも予測可能に増加させ、維持することができ、一貫した投与が可能となり、頻繁な患者監視の必要性が低減または排除される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、高カルシウム血症を誘発することなく、25-ヒドロキシビタミンD(例えば、血清総25-ヒドロキシビタミンD、またはカルシフェジオールとして)を高レベルに上昇させ、同時に1,25-ジヒドロキシビタミンD(例えば、血清総1,25-ジヒドロキシビタミンD、またはカルシトリオールとして)を高レベルに上昇させることによって、ビタミンD応答性疾患を治療する方法に関する。
【0012】
本開示はまた、CKDを有する患者においてビタミンD不足及び二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法に関する。一態様では、CKDを有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法は、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを90ng/mlを超えて上昇させるのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを患者に投与することを含む。別の態様では、CKDを有する患者におけるビタミンD不足を治療する方法は、患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満に制御するのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを患者に投与することを含む。さらに別の態様では、CKDを有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法は、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを90ng/mlを超えて上昇させるのに有効な、かつ患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満に制御するのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを患者に投与することを含む。
【0013】
本開示はまた、任意にワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む、25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形の投与を、投与を必要とする患者に施す方法に関し、本方法は、下記のうちの1つ以上を達成するのに有効な反復用量の延長放出経口剤形を対象に投与することを含む:(1)約5ng/mL~約150ng/mLの25-ヒドロキシビタミンD3についてのベースライン調整Cmax、(2)約5日~約60日の25-ヒドロキシビタミンD3のベースライン調整Tmax、(3)約100ng・d/mL~約3300ng・d/mLの25-ヒドロキシビタミンD3のベースライン調整AUC0~6週、(4)約0.1pg/mL~約50pg/mLの1,25-ジヒドロキシビタミンDのベースライン調整Cmax、(5)約1日~約44日の1,25-ジヒドロキシビタミンDのベースライン調整Tmax、(6)約1g・d/mL~約1300g・d/mLの1,25-ジヒドロキシビタミンDのベースライン調整AUC0~6週、(7)約1ng/mL/週~約7ng/mL/週の平均血清25-ヒドロキシビタミンDの増加、(8)約1~約10pg/mL/週の平均血清1,25-ジヒドロキシビタミンDの増加、(9)約50ng/mL~約55ng/mLの平均定常状態血清25-ヒドロキシビタミンDレベル、(10)約30pg/mL~約80pg/mLのベースラインからの完全な血漿無傷PTHの減少、(12)約50ng/mL~約100ng/mLより高い定常状態血清25-ヒドロキシビタミンDレベル、(13)少なくとも約10pg/mLのベースラインからの血清1,25-ジヒドロキシビタミンDの増加、(14)0~約0.3mg/dLのベースラインからの血清カルシウムの増加、(15)0~約0.3mg/dLのベースラインからの血清リンの増加、(16)少なくとも約10U/Lのベースラインからの血清BSAPの減少、(17)少なくとも約100pg/mLのベースラインからの血清CTX-1の減少、(18)少なくとも約30ng/mLのベースラインからの血清P1NPの減少、及び(19)約15%~約40%のベースラインからの血漿iPTHの減少。
【0014】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、患者は、CKDステージ1、2、3、4、または5を任意に有する。種々の実施形態では、本方法は、高カルシウム血症、高リン酸血症、及び/または高カルシウム尿症を引き起こすことなく、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを100ng/mL超、125ng/mL超、150ng/mL超、175ng/mL超、または200ng/mL超まで増加させるのに有効な量の反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを投与することを含む。本方法は、例えばステージ5のCKDの透析患者において、約120ng/mL~約200ng/mL、または約120ng/mL~約160ng/mL、または約150ng/mL~約200ng/mLの範囲の血清25-Dレベルを達成するために、反復投与量を含むことができる。任意に、本開示の方法は、患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満、19未満、18未満、17未満、16未満、15未満、14未満、13未満、12未満、11未満、または10未満に制御するのに有効な量の反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを投与することを含む。
【0015】
本明細書に記載の方法に関して、構成成分、これらの組成範囲、代替物、条件、及びステップを含むがこれらに限定されない任意の特徴は、本明細書に提供される様々な態様、実施形態、及び例から選択されることが企図される。さらなる態様及び利点が、図面と併せて以下の詳細な説明の調査から当業者には明らかになるであろう。本方法は、様々な形態での実施形態が可能な一方で、以下の説明は、本開示が例示的であるという理解のもと特定の実施形態を含み、本発明を本明細書に記載の特定の実施形態に限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】プラセボ(白丸)または25-ヒドロキシビタミンD
3延長放出製剤(黒丸)を26週間投与した対象における血漿iPTHにおけるベースラインからの平均(±SE)変化を示す。
【
図1B】最長62週までプラセボを投与したCKDステージ3の対象(白丸)、25-ヒドロキシビタミンD
3延長放出製剤を投与したCKDステージ3の対象(白い四角)、プラセボを投与したCKDステージ4の対象(黒丸)、及び25-ヒドロキシビタミンD
3延長放出製剤(黒い四角)を投与したCKDステージ4の対象における血漿iPTHにおけるベースラインからの平均(±SE)変化を示す。
【
図1C】CKDステージ3またはステージ4(上段グラフ)、CKDステージ3(中段グラフ)またはCKDステージ4(下段グラフ)を有する対象における血清総25-ヒドロキシビタミンDレベル(ng/mL)と比較した平均(±SE)血漿iPTHレベル(pg/mL)を示す。アスタリスクは、0~20ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する群からの統計的有意性を意味する。
【
図2A】プラセボ(四角)または25-ヒドロキシビタミンD
3(菱形)の延長放出製剤を26週間投与した対象における平均(±SE)血清カルシフェジオール(ng/mL)を示す。3つのアスタリスク(***)は、プラセボとの有意差を意味し、p<0.0001である。
【
図2B】CKDステージ3もしくはステージ4(上段グラフ)、CKDステージ3(中段グラフ)またはCKDステージ4(下段グラフ)を有する対象における血清総25-ヒドロキシビタミンDレベル(ng/mL)と比較した平均(±SE)血清総1,25-ジヒドロキシビタミンDレベル(pg/mL)を示す。アスタリスクは、0~20ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する群からの統計的有意性を意味する。
【
図3A】プラセボ(四角)または25-ヒドロキシビタミンD
3(菱形)の延長放出製剤を26週間投与した対象における平均(±SE)血清24,25-ジヒドロキシビタミンD
3(ng/mL)を示す。3つのアスタリスク(***)は、プラセボとの有意差を意味し、p<0.0001である。
【
図3B】プラセボ(四角)または25-ヒドロキシビタミンD
3(菱形)の延長放出製剤を26週間投与した対象における血清カルシフェジオール(25-ヒドロキシビタミンD
3)の血清24,25-ヒドロキシビタミンD
3に対する比を示す。アスタリスクはプラセボからの有意差を意味する(*=p<0.05、**=p<0.001、***=p<0.0001)。
【
図3C】プラセボを26週間投与したCKDステージ3及びステージ4の患者について、ベースライン時での血清カルシフェジオールと比較したカルシフェジオールの24,25-ジヒドロキシビタミンD
3に対する比を示す。
【
図3D】プラセボを26週間投与したCKDステージ3及びステージ4の患者について、有効性評価期間(EAP)終了時での血清カルシフェジオールと比較したカルシフェジオールの24,25-ジヒドロキシビタミンD
3に対する比を示す。
【
図3E】25-ジヒドロキシビタミンD
3の延長放出製剤を26週間投与したCKDステージ3及びステージ4の患者について、ベースライン時での血清カルシフェジオールと比較したカルシフェジオールの24,25-ジヒドロキシビタミンD
3に対する比を示す。
【
図3F】25-ジヒドロキシビタミンD
3の延長放出製剤を26週間投与したCKDステージ3及びステージ4の患者について、有効性評価期間(EAP)終了時での血清カルシフェジオールと比較したカルシフェジオールの24,25-ジヒドロキシビタミンD
3に対する比を示す。
【
図4A】25-ジヒドロキシビタミンD
3の延長放出製剤を26週間投与したCKDステージ3の患者について、6回目の来院/57日目での血清カルシフェジオールと比較した、カルシフェジオールの24,25-ジヒドロキシビタミンD
3に対する比を示す。
【
図4B】25-ジヒドロキシビタミンD
3の延長放出製剤を26週間投与したCKDステージ3の患者について、10回目の来院/141日目での血清カルシフェジオールと比較した、カルシフェジオールの24,25-ジヒドロキシビタミンD
3に対する比を示す。
【
図4C】25-ジヒドロキシビタミンD
3の延長放出製剤を26週間投与したCKDステージ3の患者について、13回目の来院/183日目での血清カルシフェジオールと比較した、カルシフェジオールの24,25-ジヒドロキシビタミンD
3に対する比を示す。
【
図5A】25-ジヒドロキシビタミンD
3の延長放出製剤を26週間投与したCKDステージ4の患者について、6回目の来院/57日目での血清カルシフェジオールと比較した、カルシフェジオールの24,25-ジヒドロキシビタミンD
3に対する比を示す。
【
図5B】25-ジヒドロキシビタミンD
3の延長放出製剤を26週間投与したCKDステージ4の患者について、10回目の来院/141日目での血清カルシフェジオールと比較した、カルシフェジオールの24,25-ジヒドロキシビタミンD
3に対する比を示す。
【
図5C】25-ジヒドロキシビタミンD
3の延長放出製剤を26週間投与したCKDステージ4の患者について、13回目の来院/183日目での血清カルシフェジオールと比較した、カルシフェジオールの24,25-ジヒドロキシビタミンD
3に対する比を示す。
【
図6A】プラセボ(四角)または25-ヒドロキシビタミンD
3(菱形)の延長放出製剤を26週間投与した対象における平均(±SE)血清カルシウム(目標<9.8mg/dL)及び血清リン(目標<5.5mg/dL)を示す。
【
図6B】血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルと比較した、平均(±SE)血清カルシウム(mg/dL)を示す。
【
図6C】血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルと比較した、平均(±SE)血清リンを示す。
【
図6D-6E】25-ヒドロキシビタミンD
3の延長放出製剤を26週間投与したCKDステージ3及びステージ4の患者について、血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルと比較した、平均(±SE)尿カルシウム/クレアチニン比(Ca/Cr)(
図6D)及びリン酸(TRP)の平均尿細管再吸収(
図6E)を示す。
【
図7A】CKDステージ3もしくはステージ4(上段グラフ)、CKDステージ3(中段グラフ)またはCKDステージ4(下段グラフ)を有する対象における血清総25-ヒドロキシビタミンDレベル(ng/mL)と比較した平均(±SE)血清骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)(U/L)を示す。
【
図7B-7C】CKDステージ3またはステージ4を有する対象における血清総25-ヒドロキシビタミンDレベル(ng/mL)と比較した、平均(±SE)血清コラーゲン1型架橋C-テロペプチド(CTX-1)(pg/mL)(上段グラフ)を示し(
図7B)、平均(±SE)血清型1プロコラーゲンN末端(P1NP)(ng/mL)(下段グラフ)を示す(
図7C)。アスタリスクは、0~20ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDを有する群と比較した統計的有意性を意味する。
【
図8】最長1年の期間にわたる延長放出経口カルシフェジオールの用量を増加させての対象への投与から生じる血清カルシフェジオール、血清カルシトリオール、血清カルシウム、血清リン及び血清24,25-ジヒドロキシビタミンD
3値を示す。
【
図9】最長1年の期間にわたる延長放出経口カルシフェジオールの用量を増加させての対象への投与から生じる血清カルシフェジオール、血清カルシトリオール、血清カルシウム、血清リン及び血清24,25-ジヒドロキシビタミンD
3値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、ビタミンD化合物を投与する方法、及びビタミンD応答性疾患を治療する方法に関する。
【0018】
本開示はまた、慢性腎疾患(CKD)を有する患者においてビタミンD不足及び二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法に関する。様々な実施形態では、本方法は、CKDステージ1、ステージ2、ステージ3、ステージ4、またはステージ5を有する患者、または前述のいずれかの組み合わせを有する混合患者集団を治療するために使用される。一態様では、本開示の方法は、CKDステージ3またはステージ4を有する患者を治療するために使用される。別の態様では、本開示の方法は、CKDステージ5を有する患者、例えば、血液透析患者を治療するために使用される。任意に、CKDを有する患者は、30ng/mL未満の血清総25-ヒドロキシビタミンD濃度を有する。
【0019】
以下の定義は、当業者が本開示を理解する際に有用となるだろう。本明細中で別途定義しない限り、本開示にて用いられる科学的及び技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、指定されたものに加えて、他の薬剤、要素、ステップ、または特徴の潜在的な包含を示す。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「25-ヒドロキシビタミンD」は、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3(カルシフェジオール、カルシジオール、及び25-ヒドロキシコレカルシフェロールとしても知られる)、25-ヒドロキシビタミンD4、25-ヒドロキシビタミンD5、25-ヒドロキシビタミンD7、前述の類似体、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上を指す。本明細書に記載する任意の実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDは、25-ヒドロキシビタミンD3、25-ヒドロキシビタミンD2、または25-ヒドロキシビタミンD3及び25-ヒドロキシビタミンD2の組合せを含むことができることが具体的に企図される。例えば、本明細書に記載の任意の実施形態において、25-ヒドロキシビタミンDは、25-ヒドロキシビタミンD3を含み得ることが具体的に企図される。血清25-ヒドロキシビタミンD及び血清総25-ヒドロキシビタミンDは、特定の25-ヒドロキシビタミンD型が参照されない限り、実験室アッセイによって血清中で測定された25-ヒドロキシビタミンD2及び25-ヒドロキシビタミンD3の合計を指し、例えば、25-ヒドロキシビタミンD3。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「1,25-ジヒドロキシビタミンD」は、1,25-ジヒドロキシビタミンD2、1,25-ジヒドロキシビタミンD3、1,25-ジヒドロキシビタミンD4、1,25-ジヒドロキシビタミンD5、1,25-ジヒドロキシビタミンD7、前述の類似体、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上を指す。例えば、1,25-ジヒドロキシビタミンDは、1,25-ジヒドロキシビタミンD2、1,25-ジヒドロキシビタミンD3、または1,25-ジヒドロキシビタミンD2及び1,25-ジヒドロキシビタミンD3の組合せを含むことができる。血清1,25-ジヒドロキシビタミンD及び血清総1,25-ジヒドロキシビタミンDは、特定の1,25-ジヒドロキシビタミンD型に言及されない限り、実験室アッセイによって血清中で測定された1,25-ジヒドロキシビタミンD2及び1,25-ジヒドロキシビタミンD3の合計を指すと理解されるであろう。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「ビタミンD補充療法」とは、ビタミンDプレホルモン(例えば、コレカルシフェロールまたはエルゴカルシフェロール)もしくはその類似体、またはビタミンDプロホルモン(例えば、25-ヒドロキシビタミンD2または25-ヒドロキシビタミンD3)もしくはその類似体のうちの1つ以上の患者への投与を指す。ビタミンD補充療法における使用に適した化合物の例としては、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、25-ヒドロキシビタミンD2、及び25-ヒドロキシビタミンD3が挙げられる。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「ビタミンDホルモン補充療法」は、活性ビタミンDホルモン代謝物を含む活性ビタミンDホルモン及び1α-ヒドロキシル化ビタミンD化合物を含める活性ビタミンDホルモン類似体のうちの1つ以上の有効量を患者に投与することを指す。ビタミンDホルモン補充療法で使用するために好適な化合物の例としては、ビタミンDホルモン1,25-ジヒドロキシビタミンD2,1,25-ジヒドロキシビタミンD3、1,25-ジヒドロキシビタミンD4、及びドキセルカルシフェロールならびにパリカルシトールを含むその類似体が挙げられる。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「共投与」とは、2つ以上の化合物、例えば、ビタミンD補充療法のための1つ以上の化合物、またはビタミンD補充療法のための化合物及びビタミンDホルモン補充療法のための化合物の同じ患者への投与を指す。例えば、共投与は、(a)第1及び第2の化合物の同時投与ならびに(b)第1の化合物の投与、続いて第2の化合物の投与を包含する。例えば、第1及び第2の化合物は、互いに24時間、8時間、4時間、2時間、または1時間以内に投与することができる。他の実施形態では、第1の化合物と第2の化合物の投与の間の異なる時間を適用することができる。
【0026】
本明細書で使用される「制御放出」、「調節放出」、「持続放出」、及び「延長放出」という用語は、投与された25-ヒドロキシビタミンD化合物の、即時放出から逸脱するような組成物からの放出を指す。例えば、経口延長放出製剤は、25-ヒドロキシビタミンD化合物を長期放出製剤設計(USP24<1151>を参照)による摂取後の長期間にわたって利用可能にする。上記の用語は、遅延放出特性を任意に含み、経口製剤からの25-ヒドロキシビタミンDの放出は、カプセルが胃を通過するまで遅延されるUSP24<1151>を参照)。
【0027】
本明細書で使用される場合、「高カルシウム血症」という用語は、患者が治療経過(例えば、1ヶ月または2週間以内に)において、2回の連続した約10.3mg/dLを超える血清カルシウム測定値を有する状態を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「高リン酸血症」という用語は、患者が治療経過(例えば、1ヶ月または2週間以内に)において、2回の連続した約5.5mg/dLを超える血清リン測定値を有する状態を指す。
【0029】
本明細書で使用する「高カルシウム尿症」という用語は、患者が>0.2の尿クレアチニンに対する尿カルシウムの比(Ca/Cr)を有する状態を指す。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「生物学的同等物」という用語は、同等の方法(同等の用量及び絶食状態を含む)で試験したとき、生物学的同等製剤と参照製剤との間のCmaxとAUC(0~無限大)との比の90%信頼区間(90%CI)が両方とも80%~125%(0.8~1.25)の範囲にある場合、本明細書に記載の製剤とインビボでの生物学的等価性を有する製剤を指す。
【0031】
本明細書に列挙された任意の数値が、下限値から上限値までの全ての値を含むこと、すなわち、列挙された最低値と最高値との間の数値の可能な全ての組み合わせが、本出願において明示的に述べられていると考えられるべきであると具体的に理解される。例えば、濃度範囲または有益な効果範囲が1%~50%と記載されている場合、2%~40%、10%~30%、または1%~3%などの値が、本明細書においては明示的に列挙されることが意図される。別の例として、約20%の記載された濃度は、19.5%から20.5%までの値を含むことが意図される。これらは、具体的に意図されているものの例に過ぎない。
【0032】
人体で実施される方法の特許取得を禁じている管轄区域では、組成物をヒト対象に「投与する」という意味は、ヒト対象が任意の技術(例えば、経口、吸入、局所適用、注射、挿入など)によって自己投与する制御された物質を処方すること、及び本明細書に記載の方法で使用するための医薬品の製造に制限されねばならない。特許可能な主題を定義する法律または規則に合致する、最も広く合理的な解釈が意図される。人体で実施される方法の特許取得を禁じていない管轄区域において、「投与」組成物は、人体上で実施される方法及び前述の活動の両方を含む。
【0033】
本発明の組成物及び方法は、ビタミンD応答性疾患、すなわち、ビタミンD、25-ヒドロキシビタミンD、または活性ビタミンD(例えば、1,25-ジヒドロキシビタミンD)が疾患の発症もしくは進行を予防するか、または疾患の兆候若しくは症状を軽減する疾患の予防的または治療的処置に有用である。そのようなビタミンD応答性疾患には、癌(例えば、乳癌、肺癌、皮膚癌、メラノーマ、結腸癌、大腸癌、直腸癌、前立腺癌及び骨癌)が挙げられる。1,25-ジヒドロキシビタミンDは、細胞分化を誘導すること、及び/または多数の細胞についてインビトロで細胞増殖を阻害することが観察されている。ビタミンD応答性疾患にはまた、自己免疫疾患、例えばI型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、線維症、グレーブス病、橋本病、急性または慢性移植拒絶、急性または慢性移植片対宿主病、炎症性腸疾患、クローン病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、湿疹及び乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎及び/または慢性皮膚炎を含む皮膚炎が挙げられるが、これらに限定されない。ビタミンD応答性疾患にはまた、他の炎症性疾患、例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患、多発性嚢胞腎症、多嚢胞性卵巣症候群、膵炎、腎炎、肝炎、及び/または感染症も挙げられる。ビタミンD応答性疾患には、高血圧及び心血管疾患が含まれることも報告されている。したがって、本発明は、心臓血管疾患のリスクがあるか、または罹患している対象、例えばアテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠状動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、心筋梗塞、心筋虚血、脳虚血、脳卒中、うっ血性心、心筋症、肥満症または他の体重障害、脂質障害(例えば、高脂血症、関連する糖尿病性脂質異常症ならびに混合脂質異常症性低アルファリポタンパク血症を含む脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、及び低HDL(高密度リポタンパク質))、代謝障害(例えば、メタボリックシンドローム、II型真性糖尿病、I型真性糖尿病、高インスリン血症、耐糖能異常、インスリン抵抗性、神経障害、腎症、網膜症、糖尿病性足部潰瘍及び白内障を含む糖尿病合併症)、及び/または血栓症を有する対象の予防的または治療的処置を企図する。
【0034】
ビタミンD化合物のレベルの調節の恩恵を受けることができる疾患には、(i)副甲状腺における--副甲状腺機能低下症、偽副甲状腺機能低下症、二次性副甲状腺機能亢進症、(ii)膵臓における--糖尿病、(iii)甲状腺における--髄様癌、(iv)皮膚における--乾癬、創傷治癒;(v)肺における--サルコイドーシス及び結核、(vi)腎臓における--慢性腎疾患、低リン血症VDRR、ビタミンD依存性くる病、(vii)骨における--抗痙攣薬治療、線維形成骨形成不全、嚢胞性線維性骨炎、骨軟化症、骨粗鬆症、骨減少症、骨硬化症、腎性骨異栄養症、くる病、(viii)腸内における--グルココルチコイド拮抗作用、特発性高カルシウム血症、吸収不良症候群、脂肪便、熱帯性スプルー、及び(ix)自己免疫障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の実施形態では、ビタミンD化合物のレベルの調節から恩恵を受ける疾患は、癌、皮膚疾患(例えば乾癬)、副甲状腺障害(例えば副甲状腺機能亢進症及び二次性副甲状腺機能亢進症)、骨障害(例えば骨粗鬆症)及び自己免疫障害から選択される。
【0036】
1つのタイプの実施形態では、患者は骨粗鬆症を有する。患者は閉経後の骨粗鬆症を患う可能性がある。患者は老人性骨粗鬆症を患う可能性がある。
【0037】
1つのタイプの実施形態では、患者は、ビスホスホネートで以前に治療された患者である。例えば、ビスホスホネートは、エチドロネート、パミドロネート、アレンドロネート、リセドロネート、ゾレンドロネート、またはイバンドロネートであり得る。ビスホスホネートは、骨において長い半減期、例えば少なくとも3年、または少なくとも5年を有するものであり得る。
【0038】
一態様では、本開示は、本明細書に記載されるように、患者の血清中25-ヒドロキシビタミンDのレベルを上昇させて、同時に患者の血清1,25-ジヒドロキシビタミンDのレベルを本明細書に記載の高レベルまで上昇させることによって、高カルシウム血症を引き起こすことなく、ビタミンD反応性疾患を治療する方法を提供する。例えば、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルは、25-ヒドロキシビタミンD3、25-ヒドロキシビタミンD2、または25-ヒドロキシビタミンD3及び25-ヒドロキシビタミン2の組み合わせを含有する延長放出経口剤形を用いて上昇させることができる。
【0039】
25-ヒドロキシビタミンDの反復投与は、例えば、毎日、隔日、週に2回もしくは3回、毎週、隔週、または毎月与えることができる。任意に、反復用量の25-ヒドロキシビタミンDは、例えば、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも1年またはそれ以上の延長された期間にわたって投与される。反復用量が、第1の期間に第1のスケジュールで投与され、次いで第2の期間に同じスケジュールでより高い用量で投与される、漸増する投与スケジュールが実施され得ることが企図される。例えば、用量は、1ヶ月間は毎日の初回用量であり、次いで、第2の月は毎日の増加した用量、次いで、第3の月は毎日のさらに増加した用量であり得る。別の実施形態では、用量は、1ヶ月間は週3回の初回用量、次いで、第2の月は週3回の増加した用量、次いで、第3の月は週3回のさらに増加した用量とすることができる。
【0040】
1つのタイプの実施形態では、25-ヒドロキシビタミンD(例えば、カルシフェジオール)は、絶食状態で投与することができる。1つのタイプの実施形態では、25-ヒドロキシビタミンD(例えば、カルシフェジオール)は、就寝時に投与する。
【0041】
一態様では、25-ヒドロキシビタミンDは、患者の総食事性カルシウム摂取量(食物源とサプリメントとの両方を組み合わせたものからの)を1000mg/日、1000mg/日未満、または900mg/日未満、または800mg/日未満、または700mg/日未満、または600mg/日未満、または500mg/日未満、例えば、400~1000mg/日、または400~900mg/日、または400~800mg/日、または400~700mg/日、または400~600mg/日、または500~700mg/日の範囲に制御しながら投与することができる。
【0042】
本開示の方法は、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDを以前は危険であると考えられているレベルにまで上昇させるのに有効であるが、ビタミンDの毒性に関連する1つ以上の副作用を引き起こすことはない。最近のデータは、40~50ng/mLのCKD患者における血清25-ヒドロキシビタミンDをPTHレベルまで低下させるための治療目標を示唆している(Ennis et al.,J Nephrol 29(1):63-70,2015)。100ng/mLの血清25-ヒドロキシビタミンDレベルが正常の許容される上限と考えられてきたが、本開示の方法は、例えば、高カルシウム血症、高リン酸血症、高カルシウム尿症、及び無形成骨症のうちの1つ以上を引き起こすことなく、血清25-ヒドロキシビタミンDを有意に高いレベルに上昇させるために使用することができる。一態様では、本方法は、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを約100ng/mLを超えて、例えば、約110ng/mL超、約120ng/mL超、約130ng/mL超、約140ng/mL超、約150ng/mL超、約160ng/mL超、約170ng/mL超、約180ng/mL超、約190ng/mL超、約200ng/mL超、約210ng/mL超、約220ng/mL超、約230ng/mL超、約240ng/mL超、約250ng/mL超、約300ng/mL超、または約350ng/mL超まで上昇させるのに有効である。別の態様では、本方法は、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを、例えば、最高500ng/mLに、最高450ng/mLに、最高400ng/mLに、最高350ng/mLに、最高300ng/mLに、最高250ng/mLに、または最高240ng/mLに、または最高230ng/mLに、または最高220ng/mLに、または最高210ng/mLに、または最高200ng/mLに、または最高190ng/mLに、または最高180ng/mLに上昇させるのに有効である。任意に、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルは、約90ng/mL~約120ng/mLの範囲、または約100ng/mL~約150ng/mLの範囲、または約120ng/mL~約160ng/mLの範囲、または約140ng/mL~約180ng/mLの範囲、または約150ng/mL~約200ng/mLの範囲、または約180ng/mL~約200ng/mLの範囲、または約190ng/mL~約220ng/mLの範囲、または約150ng/mL~約350ng/mLの範囲、または約200ng/mL~約300ng/mLの範囲、または約250ng/mL~約300ng/mLの範囲、または約150ng/mL~約300ng/mLの範囲の値にまで上昇させる。
【0043】
ビタミンDプロホルモン25-ヒドロキシビタミンD3及び25-ヒドロキシビタミンD2は、主として腎臓において1α-ヒドロキシラーゼ酵素CYP27B1によって強力な活性ホルモンに代謝される(25-ヒドロキシビタミンD2は、1α,25-ジヒドロキシビタミンD2に代謝され、25-ヒドロキシビタミンD3は、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3に代謝される)。ステージ3及び4のCKD患者における延長放出経口25-ヒドロキシビタミンD3の反復投与によって、30mcg/日の用量は、血清1,25-ジヒドロキシビタミンDを上昇させたが、60mcg/日の用量は、30mcg/日とほぼ等しい血清1,25-ジヒドロキシビタミンDのレベルを提供し、さらに90mcg/日の用量は、血清1,25-ジヒドロキシビタミンDをさらには上昇させないことが観察された。低用量では、1,25-ジヒドロキシビタミンDは主に腎臓1-ヒドロキシラーゼに起因するが、血清1,25-ジヒドロキシビタミンDレベルが上昇すると、腎臓1-ヒドロキシラーゼが抑制されると考えられている。延長放出経口25-ヒドロキシビタミンD3(例えば、90mcg/日)の投与量の増加と共に、1,25-ジヒドロキシビタミンDの腎臓外産生が血清1,25-ジヒドロキシビタミンDレベルにより有意な程度まで寄与していたと考えられる。
【0044】
また、反復用量の延長放出経口25-ヒドロキシビタミンD3を増やすと、高カルシウム血症を誘発することなく、血清1,25-ジヒドロキシビタミンDレベルを非常に高レベルに上昇させることができることも観察されている。血清25-ヒドロキシビタミンDにおける徐々の上昇、及び血清1,25-ジヒドロキシビタミンDにおける徐々の上昇は、血清25-ヒドロキシビタミンD及び/または血清1,25-ジヒドロキシビタミンDをより迅速に上昇させる方法と比較して、腸のカルシウム吸収が誘導されないか、または有意に少ない程度で誘導される生理学的適応を可能にすると考えられる。
【0045】
別の態様では、本開示は、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを90ng/mlを超えて上昇させるのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを患者に投与することを含む、CKDを有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法を提供する。別の態様では、本開示は、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを90ng/mlを超えて上昇させるのに有効な、かつ患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満または15未満に制御するのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを患者に投与することを含む、CKDを有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法を提供する。
【0046】
別の態様では、本開示の方法は、25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する患者の血清比を、20未満、18未満、または16未満、または15未満、または14未満、または12未満、または10未満に制御するのに有効な量の反復用量のビタミンD補充療法用の化合物、例えば、25-ヒドロキシビタミンD及び/またはエルゴカルシフェロールもしくはコレカルシフェロールを投与することを含む。例えば、一態様では、本開示は、患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満に制御するのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを患者に投与することを含む、CKDを有する患者におけるビタミンD不足を治療する方法を提供する。別の態様では、本開示は、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを約100ng/mlを超えて上昇させるのに有効な、かつ患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満に制御するのに有効な量の反復用量のビタミンD補充療法用の化合物、例えば25-ヒドロキシビタミンD及び/またはエルゴカルシフェロールもしくはコレカルシフェロールを、患者に投与することを含む、CKDを有する患者におけるビタミンD不足を治療する方法を提供する。正常な対象では、25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比(25(OH)D3:24,25(OH)2D3)対血清25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D3)のプロットは、(25(OH)D3:24,25(OH)2D3)が20未満であるとき、ビタミンDの充足度を示唆する平坦部に達した(Kaufmann et al.,上記)。CKD患者では、血清25-ヒドロキシビタミンD値が100ng/mLに近づき、それを超えた場合でさえも、25未満の25(OH)D3:24,25(OH)2D3の比は達成されず(
図3F)、CKD患者におけるビタミンDの充足度に相当する25(OH)D3:24,25(OH)2D3の比が、CKD患者のビタミンD充足度が有意に20未満であり得ることを決定するための血清25-ヒドロキシビタミンDのより高い濃度で達成されることを示している。任意に、25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する患者の血清比は、20未満、15未満、または10未満の比に低下されるか前記比で維持され、例えば、25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する比は、約25、約24、約23、約22、約21、約20、約19、約18、約17、約16、約15、約14、約13、約12、約11、約10、約9、約8、約7、約6、または約5である。25-ヒドロキシビタミンD及び24,25-ジヒドロキシビタミンDの定量は、好適なアッセイを用いて行うことができる。好適なアッセイは、当該技術分野において既知であり、例えば、ラジオイムノアッセイ、質量分析法、HPLC、及びLC-MS/MS、例えば上記のKaufmann etal.、上記のWagner e al.、及び上記のBerg et al.に記載されているようなものである。
【0047】
ビタミンDホルモン補充療法のための化合物の単独の投与は、CYP24Aによる異化作用を増加させながら血清25-ヒドロキシビタミンDを低減することができ、それにより、血清24,25-ジヒドロキシビタミンDを増加させて、25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDの血清比の減少をもたらすが、ビタミンDの充足度を達成することはない。ビタミンDホルモン補充療法のための化合物の単独投与は、20以下になる25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比をもたらす可能性がある。したがって、本明細書に記載の方法の実施形態の1つのカテゴリでは、患者が、患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する比を20未満に制御するために治療を受けようとし、同時に少なくとも30ng/mlの25-ヒドロキシビタミンDの血清レベルを有するであろうことが企図される。本明細書に記載の方法の実施形態の別のカテゴリでは、患者は、患者の20未満の25-ジヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する比を制御するために治療され、ビタミンD補充療法を受けるであろう。任意に、患者は、ビタミンDホルモン補充療法のための化合物の投与の非存在下で治療することができる。1つのタイプの実施形態では、慢性腎疾患を有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症及びビタミンD不全を治療する方法は、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを90ng/mlを超えて上昇させるのに有効な、かつ25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ヒドロキシビタミンDに対する患者の血清比を20未満に制御するのに有効な、反復用量のビタミンD補充療法用の化合物を患者に投与することを含み、この患者はビタミンDホルモン補充療法を受けていない。別のタイプの実施形態では、慢性腎疾患を有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症及びビタミンD不全を治療する方法は、患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを30ng/mlを超えるまで上昇させるのに有効な、かつ25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ヒドロキシビタミンDに対する患者の血清比を20未満に制御するのに有効な、反復用量のビタミンD補充療法用の化合物を患者に投与することを含み、この患者はビタミンDホルモン補充療法を受けていない。
【0048】
別の態様では、本開示は、患者の血清1,25-ジヒドロキシビタミンDレベルを約40pg/mLを超えて上昇させるのに有効な、任意にまた、25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンSに対する患者の血清比を20未満に制御するのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを患者に投与することを含む、CKDを有する患者におけるビタミンD不足を治療する方法を提供する。必要に応じて、患者の血清1,25-ジヒドロキシビタミンDレベルは、40pg/mL超、45pg/mL超、50pg/mL超、55pg/mL超、60pg/mL超、65pg/mL超、70pg/mL超、75pg/mL超、80pg/mL超、90pg/mL超、100pg/mL超、110pg/mL超、120pg/mL超、130pg/mL超、140pg/mL超、150pg/mL超、160pg/mL超、170pg/mL超、180pg/mL超、190pg/mL超、200pg/mL超、210pg/mL超、220pg/mL超、230pg/mL超、240pg/mL超、250pg/mL超、260pg/mL超、270pg/mL超、280pg/mL超、290pg/mL超、または300pg/mL超に上昇される。必要に応じて、患者の血清1,25-ジヒドロキシビタミンDレベルは、例えば、150pg/mL~350pg/mL、または150pg/mL~300pg/mL、または200pg/mL~300pg/mLの範囲内の値まで増加される。必要に応じて、患者の血清1,25-ジヒドロキシビタミンDレベルは、ベースラインから少なくとも25pg/mL、少なくとも50pg/mL、少なくとも75pg/mL、少なくとも100pg/mL、少なくとも125pg/mL、少なくとも150pg/mL、少なくとも175pg/mL、または少なくとも200pg/mLまで増加される。
【0049】
本開示のいずれかの方法において、(a)PTHを低下させること、(b)血清25-ヒドロキシビタミンDを増加させること、(c)血清1,25-ジヒドロキシビタミンDを増加させること、または(d)25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する比を本明細書に記載されるように制御することを含む1つ以上の効果を有するのに有効な量の反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを、任意で対象に投与する。投薬はまた、1つ以上の負の効果を回避するように、例えば(a)血清カルシウムを増加させることなく、(b)血清リンを増加させずに、(c)骨代謝回転のマーカーを増加させずに、(d)高カルシウム血症を誘発させずに、または(e)高リン酸血症を誘発指せずに、実行することができる。一態様では、患者の血液PTHレベル(例えば、血漿無傷PTH)を、その治療前のレベルと比較して、少なくとも約15%、例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、または少なくとも約50%低下させるのに有効な量の反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを、任意に対象に投与する。別の態様では、患者集団の平均血漿無傷PTHレベルを、その治療前のレベルと比較して、少なくとも約15%、例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、または少なくとも約50%低下させるのに有効な量の反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを、任意に対象に投与する。
【0050】
一態様では、約9.0mg/dL~約10.0mg/dLの範囲、例えば約9.0mg/dL~約9.5mg/dLの範囲、約9.2mg/dL~約9.6mg/dLの範囲、または約9.3mg/dL~約9.8mg/dLの範囲の血清カルシウムを維持するのに有効な量の反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを投与する。別の態様では、0~約0.3mg/dLの範囲の量に血清リンを増加させるのに有効な量の反復用量の25-ヒドロキシビタミンを、投与する。一態様では、約3.5mg/dL~約4.5mg/dLの範囲、例えば約3.5mg/dL~約4.0mg/dLの範囲、約3.6mg/dL~約4.2mg/dLの範囲、または約3.7mg/dL~約4.1mg/dLの範囲の血清リンを維持するのに有効な量の反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを、投与する。別の態様では、0~約0.3mg/dLの範囲の量に血清リンを増加させるのに有効な量の反復用量の25-ヒドロキシビタミンを投与する。一態様では、尿Ca/Cr、尿TRP、血清BSAP、血清CTX-1、血清P1NP、及びそれらの組み合わせから選択される骨代謝回転のマーカーを維持または減少させるのに有効な量の反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを、投与する。
【0051】
本開示の方法のいずれかでは、25-ヒドロキシビタミンDは、任意に、放出調節組成物、例えば、25-ヒドロキシビタミンD3を含む延長放出経口剤形で投与される。1つのタイプの実施例では、本発明による経口投与を意図した調節放出組成物は、25-ヒドロキシビタミンD(例えば、25-ヒドロキシビタミンD3、または25-ヒドロキシビタミンD2と25-ヒドロキシビタミンD3との組み合わせ)の単位用量当たり1~1000mcg、または単位用量当たり1~500mcg、または用量当たり1~100mcg、または用量当たり1~50mcg、または用量当たり10~40mcg、例えば、用量当たり30mcg、用量当たり60mcg、用量あたり90mcg、用量当たり150mcg、用量当たり300mcg、用量当たり450mcg、用量当たり600mcg、用量当たり750mcg、または用量当たり900mcgの濃度を含有するように設計され、そして25-ヒドロキシビタミンDの制御された、または実質的に一定の放出を長期間にわたり対象の胃腸管にもたらすような様式で調製される。一実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDは、25-ヒドロキシビタミンD3である。別の実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDは、25-ヒドロキシビタミンの組み合わせであるD3と25-ヒドロキシビタミンD2との組み合わせであり、ビタミンD3及びビタミンD2内分泌系の両方を支援するのに有用である。現在入手可能な経口ビタミンDサプリメント及び25-ヒドロキシビタミンD3の経口製剤は、一方または他方の系のみを支援している。1つのタイプの実施例形態では、放出は、回腸またはそれ以降、例えば結腸で起こり得る。別のタイプの実施形態では、組成物は、DBP上の輸送を介した25-ヒドロキシビタミンDの吸収の実質的な増加をもたらし、カイロミクロン中の輸送を介した吸収の減少をもたらすことができる。25-ヒドロキシビタミンDの調節放出組成物の例は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,207,149号、同第8,361,488号、同第8,426,391号、同第8,778,373号、及び同第8,906,410号ならびに米国特許出願第14/213,285号に記載されている。
【0052】
1つのタイプの実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDは経口投与される。例えば、25-ヒドロキシビタミンDは、経口調節放出製剤で投与することができる。代替案では、25-ヒドロキシビタミンDは、経口調節製剤または持続放出製剤によって達成されるものと同様の血清25-ヒドロキシビタミンDの薬物動態的プロファイルを生成するために、複数回の1日用量で、経口即時放出製剤で投与することができる。
【0053】
経口投与に適した25-ヒドロキシビタミンDの調節放出形態の調製は、多くの異なる技術に従って行うことができる。例えば、1つ以上の25-ヒドロキシビタミンD化合物は、マトリクス内、すなわちマトリクス内で慎重に選択された比率で律速成分と賦形剤との混合物に分散させることができ、必要に応じてコーティング材料で包むことができる。別の代替案では、医薬製剤からの25-ヒドロキシビタミンDの放出速度及び/または放出部位を制御するために、様々なコーティング技術を利用することができる。例えば、コーティングの溶解は、周囲の媒体のpHによって引き起こされてもよく、時間の経過によるコーティングの結果としての徐々の溶解は、マトリックスを局所環境の流体に暴露する。1つのタイプの実施形態では、コーティングが浸透性になった後、25-ヒドロキシビタミンDがマトリックスの外面から拡散する。この表面が消耗するようになるか、または25-ヒドロキシビタミンDが枯渇すると、基礎となる貯蔵物は、崩壊性マトリックスを通って外部溶液に拡散することによって枯渇し始める。実施形態の別のタイプでは、25-ヒドロキシビタミンDの放出は、例えばマトリックスの1つ以上の成分の溶解性を介して及び/または物理的一体性の欠如によって、マトリックスの漸進的崩壊または浸食による。
【0054】
一態様では、本開示による製剤は、例えば、回腸及び/または結腸の内容物にさらされたときに、延長放出のための成分に取り外し可能に結合するマトリックス内に1つ以上の25-ヒドロキシビタミンD化合物を提供する。
【0055】
任意に、25-ヒドロキシビタミンD-含有剤形またはマトリックスは、胃液における崩壊に耐性のあるコーティングで適切に被覆することができる。25-ヒドロキシビタミンDの被覆された調節放出製剤は、次いで、対象、例えば動物またはヒト患者に経口投与される。製剤が小腸の近位部分を通って進むにつれて、腸溶性コーティングは徐々に透過性がますが、好適な実施形態では、これは、25-ヒドロキシビタミンD-含有マトリックスの周囲に持続的な構造骨格を提供する。25-ヒドロキシビタミンD-含有マトリックスは、透過性オーバーコートを介して回腸内腸液に著しくさらされるようになり、25-ヒドロキシビタミンDは、次いで、単純拡散及び/またはマトリックスの遅い崩壊によって徐々に放出される。
【0056】
一度回腸の内腔に放出されると、25-ヒドロキシビタミンDは、リンパ系に、または門脈血流に吸収され、ここで25-ヒドロキシビタミンDは、DBPに結合し、DBPによって輸送される。遅延放出の実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDは、主に十二指腸及び空腸を越えた点で吸収される。小腸のこれらの近位部分は、高腔内レベルの25-ヒドロキシビタミンDに応答することができ、この過程において、25-ヒドロキシビタミンDのかなりの量を異化することができる。実質的に回腸及び/または結腸まで25-ヒドロキシビタミンD放出を遅延させることにより、本明細書に記載の医薬組成物は、実質的に近位腸におけるこれらの潜在的初回通過効果を排除し、望ましくない異化を低減することができる。血流中に吸収される前に投与された25-ヒドロキシビタミンDの顕著な異化作用は、その生物学的利用能を著しくに低下させる。初回通過効果の排除は、ビタミンDの毒性の危険性を低減する。25-ヒドロキシビタミンDの実質的に遅延された放出(すなわち、十二指腸及び空腸を超えての)は、カイロミクロンを介して小腸から取り込まれ、吸収される25-ヒドロキシビタミンDの量を著しく減少させ(カイロミクロン形成及び吸収は主として空腸で生じる)、これに対応して、腸壁を介してリンパ液または門脈血液中を循環するDBPに直接吸収される25-ヒドロキシビタミンDの量が増加する。
【0057】
発明の一実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDの制御放出経口製剤は、一般的に以下の手順で調製される。十分な量の25-ヒドロキシビタミンDは、最小量のUSPグレードの無水エタノール(または他の適切な溶媒)に完全に溶解され、適切な量及び種類の医薬グレードの賦形剤と混合されて、室温及び人体の正常な体温で固体または半固体であるマトリックスを形成する。マトリックスは、完全にまたはほぼ完全に胃及び上部小腸における消化に対して抵抗性であり、下部小腸及び/または結腸で徐々に崩壊する。
【0058】
好適な製剤において、マトリックスは、25-ヒドロキシビタミンD化合物(複数可)に結合し、下部小腸及び/または結腸の内腔の内容物中への単純拡散及び/または徐々の崩壊によって、ゆっくりとした、比較的安定した状態の、例えば実質的に一定の25-ヒドロキシビタミンDの4~8時間またはそれ以上の時間にわたる放出を可能にする。製剤は、任意に、約7.0~8.0のpHを有する水溶液中に部分的に溶解する腸溶コ―ティングをさらに有するか、または25-ヒドロキシビタミンDの重要な放出が、製剤が十二指腸及び空調を通過した後まで遅延されるのに十分にゆっくりと単純に溶解する。
【0059】
25-ヒドロキシビタミンDの制御放出を提供するための手段は、ワックスマトリックスシステムを含む活性成分の既知の制御放出送達システム、及びオイドラギットRS/RLシステム(Rohm Pharma,GmbH,Weiterstadt,Germany)のいずれかを含む任意の好適な制御放出送達システムから選択することができる。
【0060】
ワックスマトリックスシステムは、親油性マトリックスを提供する。ワックスマトリックスシステムは、例えば、天然または合成ワックス、消化性または非消化性ワックス、例えば蜜ろう、白ワックス、カシャロットワックスまたは同様の組成物、もしくはワックスの混合物を利用することができる。1つのタイプの実施形態では、ワックスは非消化性ワックスである。活性成分(複数可)は、腸液中でゆっくりと崩壊して活性成分(複数可)を徐々に放出するワックス結合剤中に分散される。25-ヒドロキシビタミンDで含侵されているワックス結合剤を、例えばソフトゲルカプセルに充填することができる。ソフトゲルカプセルは、1つ以上のゲル形成剤、例えば、ゼラチン、デンプン、カラギーナン、及び/または他の薬学的に許容されるポリマーを含むことができる。一実施形態では、部分的に架橋された軟質ゼラチンカプセルが使用される。別の選択肢として、植物ベースのカプセルを使用することができる。ワックスマトリックスシステムは、体温で軟化するワックス結合剤中に活性成分(複数可)を分散させ、腸液中でゆっくりと崩壊して、活性成分(複数可)を徐々に放出する。このシステムは、体温よりも高いが、軟質もしくは硬質のカプセルのシェル、または植物性カプセルシェルを作製するために使用された選択された配合物、またはシェルケーシングもしくは他のコーティングを作製するために使用された配合物の融点よりも低い融点を達成するために、任意に油を添加したワックスの混合物を適切に含むことができる。
【0061】
1つのタイプの実施形態では、ワックスマトリックスは、制御放出剤、乳化剤、及び吸収促進剤を含む。使用に適した制御放出剤の例としては、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナウバワックス、及び蜜蝋を含むワックス;ポリエトキシル化ひまし油誘導体、硬化植物油、グリセリルモノ-、ジ-またはトリベヘネート;ステアリルアルコール、セチルアルコール、及びポリエチレングリコールなどの長鎖アルコール;ならびに前述のいずれかの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。非消化性ワックス状物質、例えば、硬質パラフィンワックスが特に考慮される。制御放出剤は、製剤の少なくとも5重量%、または製剤の約5重量%を超える量で存在し得る。例えば、使用される制御放出剤に応じて、制御放出剤は、製剤の少なくとも5重量%または製剤の少なくとも10重量%、または製剤の少なくとも15重量%、または製剤の少なくとも20重量%、または製剤の少なくとも25重量%、または製剤の5重量%超、または製剤の10重量%超、または製剤の15重量%超、または製剤の20重量%超、及び/または製剤の25重量%超を構成することができる。制御放出剤は、50重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、または30重量%以下の量で存在することができる。好適な範囲としては、5重量%~40重量%、10重量%~30重量%、及び15重量%~25重量%が挙げられる。例としては、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、及び約25重量%が挙げられる。
【0062】
製剤に使用するのに適した乳化剤の例としては、7未満のHLBを有する親油性剤、例えば、混合脂肪酸モノグリセリド;混合脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸モノ-及びジ-グリセリドの混合物;親油性ポリグリセロールエステル;モノオレイン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、及びジパルミチン酸グリセリルを含むグリセロールエステル;脂肪酸のグリセリル-ラクトエステル;プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールモノステアレート、及びプロピレングリコールモノオレエートを含むプロピレングリコールエステル;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエートを含むソルビタンエステル;ステアリン酸、パルミチン酸、及びオレイン酸を含む脂肪酸及びそれらの石鹸;グリセリルモノオレエート、グリセリルジオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルジステアレート、グリセリルモノパルミテート及びグリセリルジパルミテート、ならびにそれらの混合物;脂肪酸のグリセリル-ラクトエステル;プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールモノステアレート、及びプロピレングリコールモノオレエートを含むプロピレングリコールエステル;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエートなどのソルビタンエステル;ステアリン酸、パルミチン酸、及びオレイン酸を含む脂肪酸及びそれらの石鹸;;ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
1つのタイプの親油性剤は、グリセリド及びその誘導体から選択される。グリセリドは、例えば、中鎖または長鎖グリセリド、カプリルカプロイルマクロゴールグリセリド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。中鎖グリセリドとしては、中鎖モノグリセリド、中鎖ジグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、モノラウリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、カプリル酸/カプリン酸グリセリド、グリセリルモノカプリレート、グリセリルモノジカプリレート、カプリル酸/カプリン酸リノール酸トリグリセリド、及びカプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。低い融点を有するモノグリセリドは、製剤を製造するために特に企図される。モノグリセリドとしては、モノステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。グリセロールモノステアレート(GMS)が特に企図される。GMSは天然の乳化剤である。これは油溶性であるが、水に難溶性である。GMSは、3.8のHLB値を有する。親油性乳化剤は、例えば、約10重量%~約40重量%、または約20重量%~約25重量%の範囲の量で存在することができる。他の例としては、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、及び約25重量%が挙げられる。
【0064】
適切な吸収増強剤の例には、ポリエチレングリコール化グリセリド(ポリグリコール化グリセリドまたはペグ化グリセリドとしても知られている)などのカプリルカプロイルマクロゴールグリセリドが挙げられるが、これに限定されない。本組成物で使用することができるPEG修飾グリセリドとしては、モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドの混合物、ならびにポリエチレングリコールのモノエステル及びジエステル、ポリエチレングリコシル化アーモンドグリセリド、ポリエチレングリコシル化コーングリセリド、及びポリエチレングリコシル化カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。吸収促進剤は、13~18、または13~15のHLB値を有することができる。吸収促進剤の1つのクラスは、商品名GELUCIRE(Gattefosse Corporation,Paramus,New Jersey,USA)として知られている。GELUCIREは、グリセロールの脂肪酸エステル及びPEGエステルのファミリーであり、ポリグリコール化グリセリドとしても知られている周知の賦形剤である。GELUCIREは、持続放出医薬組成物を調製することを含む様々な用途に使用される。GELUCIRE化合物は、両親媒性であり、様々な溶媒中での融点、HLB、及び溶解度などの様々な物理的特性で利用可能な不活性で半固体のワックス状物質である。これらは本質的に表面活性であり、ミセル、微視的小球または小胞を形成する水性媒体中に分散または可溶化する。これらは融点/HLB値によって特定される。融点は摂氏で表される。GELUCIRE賦形剤の異なるグレードの1つまたは混合物を選択して、融点及び/またはHLB値の所望の特性を達成することができる。GELUCIRE44/14(ラウロイルマクロゴールグリセリド/ラウロイルポリオキシグリセリド)は、44℃の融点及び14のHLBを有し、特に考慮される。吸収促進剤は、例えば、約5重量%~約20重量%、または約8重量%~約15重量%の範囲の量で存在することができる。他の例としては、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、及び約15重量%が挙げられる。
【0065】
本発明の方法での使用に適した他の脂質マトリックスの例としては、グリセリド、脂肪酸ならびにアルコール、及び脂肪酸エステルのうちの1つ以上が挙げられる。
【0066】
一実施形態では、製剤は、25-ヒドロキシビタミンD化合物のための油性ビヒクルを含み得る。任意の薬学的に許容される油を使用することができる。例としては、動物(例えば、魚)、植物(例えば、大豆)、及び鉱油が挙げられる。油は、使用される25-ヒドロキシビタミンD化合物を容易に溶解するように選択することができる。油性ビヒクルは、非消化性油、例えば鉱油、特に液体パラフィン、及びスクアレンを含むことができる。ワックスマトリックスと油性ビヒクルとの間の比は、25-ヒドロキシビタミンD化合物の所望の放出速度を達成するために最適化することができる。したがって、重質油成分を使用する場合には、ワックスマトリックスを比較的少なく使用することができ、軽油成分を使用する場合には、比較的多くのワックスマトリックスを使用することができる。一実施形態では、油性ビヒクルの特定の選択は、製剤が回腸及び/または結腸に到達するまで、25-ヒドロキシビタミンDの吸収が遅延するように制御放出を提供する。
【0067】
一実施形態では、製剤は、セルロース化合物などの安定化剤を含むことができる。セルロース化合物及び安定化剤の例としては、セルロロン酸、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、メチルセルロース、ポリアニオン性セルロース、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ポロキサマー(例えば、ポロキサマー407)、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー(例えば、DowのPOLYOXポリマー)、ポビドン、及びヒュームドシリカ(例えば、AEROSIL 200、Evonik Industries AG,Essen,Germany)の1つ以上も考えられる。安定化剤、例えばセルロース系化合物は、例えば、追加のコーティングまたはシェル(重量%)を除いた製剤の総重量に基づいて、製剤の少なくとも約5%の量で存在することができる。例えば、セルロース系化合物は、製剤の少なくとも5重量%、または製剤の少なくとも10重量%、または製剤の少なくとも15重量%、もしくは製剤の5重量%超、または製剤の10重量%超、または製剤の15重量%超の量で存在することができる。適切な範囲は、5重量%~30重量%、10重量%~20重量%、10重量%~15重量%、5重量%~15重量%、及び7.5重量%~12.5重量%を含む。例としては、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、及び約15重量%が挙げられる。本明細書中で言及される安定化剤は、保存条件、例えば典型的な貯蔵条件の間の経時的な実質的な変化に対して溶解放出プロフィール(したがってインビボ放出プロフィールも)を安定化する薬剤であることが理解されるであろう。活性成分自体の分解を防止するための防腐剤として当技術分野において既知である他の薬剤は、「安定化剤(stabilizing agent)」及び「安定化剤(stabilizer)」という用語に包含されるものではないが、そのような防腐剤も本開示の製剤に使用することが意図される。
【0068】
具体的には、実施形態の1つの適切なタイプにおいて、マトリックス用に選択されたワックスが、任意に約80℃の温度で溶融し、十分に混合される。所望量の油(複数可)、ラウロイルポリオキシルグリセリド、モノ-及びジ-グリセリド、ブチル化ヒドロキシトルエン、及びヒプロメロースを続いて添加し、その後均質化のために十分に混合する。ワックス状混合物を、任意に約50℃から約62℃の範囲の温度に、ちょうどその融点以上の温度まで徐々に冷却する。混合工程は、任意で真空下で行われる。エタノールに溶解した25-ヒドロキシビタミンDの所望の量は、任意に真空下及び/又は約59℃~約62℃の範囲の温度で、溶融マトリックス中に均一に分配される。マトリックスは、任意に真空下及び/または約63℃~約70℃の範囲の温度で、カプセルに、例えば植物ベースまたはゼラチンベースのカプセル中に装填される。
【0069】
充填されたカプセルは、任意に、アセトアルデヒドなどのアルデヒドを含有する溶液で適切な時間処理されて、使用時にカプセルシェル中のポリマー、例えばゼラチンを部分的に架橋する。カプセルシェルは、数週間の期間にわたってますます架橋され、それにより、胃及び上部腸の内容物への溶解に対してより抵抗性になる。適切に構築された場合に、このゼラチンシェルは、経口投与後に徐々に溶解し、それが回腸に到達するまでに(完全に崩壊することなく)十分に多孔性になり、25-ヒドロキシビタミンDがワックスマトリックスから下部小腸及び/または結腸の内容物にゆっくりと拡散することを可能にする。
【0070】
別の好適な制御放出経口薬物送達システムは、活性25-ヒドロキシビタミンD成分が25/30メッシュの寸法を有する顆粒に形成されるオイドラギットRL/RSシステムである。次いで、顆粒を、水不溶性であるがゆっくり水透過性である薄いポリマーラッカーで均一に被覆する。被覆された顆粒は、酸化防止剤、安定化剤、結合剤、滑沢剤、加工助剤などのうちの1つ以上を含む任意の添加剤と混合することができる。混合物は、使用前に硬く乾燥しており、さらにコーティングすることができる錠剤に圧縮されてもよいか、または混合物はカプセルに注入されてもよい。錠剤またはカプセルが飲み込まれて腸液と接触した後、薄いラッカーは膨潤し始め、腸液による浸透をゆっくりと可能にする。腸液がラッカーコーティングをゆっくり浸透するにつれて、含有された25-ヒドロキシビタミンDがゆっくりと放出される。錠剤またはカプセルが小腸を通過するまでに、約4~8時間またはそれ以上の後に、25-ヒドロキシビタミンDはゆっくりだが、完全に解放されるであろう。したがって、摂取された錠剤は、25-ヒドロキシビタミンDの流れ、ならびに任意の他の活性成分を放出するであろう。
【0071】
オイドラギットシステムは、高透過性ラッカー(RL)と低透過性ラッカー(RS)から構成されている。RSは、少ない割合のトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドを有する中性膨潤性メタクリル酸エステルに基づく水不溶性フィルム形成剤であり、四級アンモニウム基の中性エステル基に対するモル比は、約1:40である。RLはまた、少ない割合のトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドを有する中性メタクリル酸エステルに基づく不溶性膨潤性フィルム形成剤であり、四級アンモニウム基の中性エステル基に対するモル比は、約1:20である。コーティングの透過性、したがって薬物放出の時間経過は、RSコーティング材料のRLコーティング材料に対する割合を変化させることによって滴定することができる。オイドラギットRL/RSシステムのさらなる詳細については、参照により本明細書に組み込まれる、Rohm Tech,Inc.195 Canal Street,Maiden,Mass.,02146から入手可能な技術刊行物、及びLehmann et al.,Int.J.Pharm.Tech.& Prod.Mfr.2(r),31-43,1981に記載されている。
【0072】
不溶性ポリマーの他の例としては、ポリビニルエステル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸エステル、ブタジエンスチレンコポリマーなどが挙げられる。
【0073】
一実施形態では、被覆された顆粒が錠剤に形成されるか、またはカプセルに入れられると、錠剤またはカプセルは、7.0~8.0のpHで溶解する腸溶コーティング材料でコーティングされる。そのようなpH依存性の腸溶コーティング材料の1つは、胃液中には溶解するが、胃液中には溶解しないオイドラギットL/Sである。胃液による溶解に対して耐性であるが、腸内エステラーゼの加水分解効果のために容易に崩壊するセルロースアセテートフタレート(CAP)などの他の腸溶コーティング材料が使用されてもよい。
【0074】
一実施形態では、製剤が回腸に到達するまで実質的な放出が遅延されるように、腸溶コーティング材料及び制御放出コーティング材料の特定の選択は、4~8時間以上の時間にわたって制御されかつ実質的に一定の放出を提供する。任意に、本開示による制御放出組成物は、1日1回投与されると、1日1回投与された25-ヒドロキシビタミンの即時放出組成物の同じ用量と比較して、実質的に一定の管腔内、細胞内及び血中25-ヒドロキシビタミンD濃度を適切に提供することができる。
【0075】
剤形はまた、アジュバント、例えば、保存アジュバントも含んでもよい。本発明の製剤はまた、他の治療的に価値のある物質を含有してもよく、または本明細書及び特許請求の範囲において特定される化合物の2つ以上を混合物として含有してもよい。
【0076】
経口25-ヒドロキシビタミンDの代替物として、25-ヒドロキシビタミンDの静脈内投与も企図されている。一実施形態では、25-ヒドロキシビタミンDは、滅菌静脈注射、任意に持続放出プロファイルをもたらす組成物のボーラス注射として投与される。別の実施形態では、患者の血液中のDBPに直接送達する、25-ヒドロキシビタミンDの制御された放出または実質的に一定の放出を達成するために、25-ヒドロキシビタミンDを穏やかな注射/注入によって、例えば1~5時間にわたって投与する。例えば、組成物は、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、または少なくとも約6時間にわたって、及び差異長24時間、注射または注入されてもよい。一実施形態では、本開示による静脈内投与を意図する組成物は、単位用量当たり1~100mcgの25-ヒドロキシビタミンD化合物(複数可)の濃度を含有するように設計される。25-ヒドロキシビタミンDの無菌、等張製剤は、25-ヒドロキシビタミンDを無水エタノール、プロピレングリコールまたは別の好適な溶媒中に溶解させて、得られた溶液を、適切な容量の注射用水中で1つ以上の界面活性剤、塩及び防腐剤と合わせることによって調製することができる。そのような製剤は、例えば、ヘパリンロックを介して注射器からゆっくりと投与することができ、またはより大きい容量の滅菌溶液(例えば、生理食塩水溶液)に添加することによって、経時的に徐々に注入することができる。
【0077】
本開示の方法で使用するための25-ヒドロキシビタミンD3の特定の製剤は、25-ヒドロキシビタミンD(例えば、約30mcg、約60msg、約90msg、約150mcg、約300mcg、約450msg、約600mcg、約750mcg、または約900mcgの25-ヒドロキシビタミンD3)、約2重量%(例えば、2.32重量%)の無水/脱水エタノール、約10重量%(例えば、9.75重量%)のラウロイルポリオキシグリセリド(例えば、GELUCIRE 44/14)、約20重量%(例えば、20.00重量%)の硬質パラフィン、約23重量%(例えば、22.56重量%)のモノ-及びジ-グリセリド(例えば、GMS)、約35重量%(例えば、35.34重量%)の流動パラフィンまたは鉱油、約10重量%のヒプロメロース、及び任意で少量の防腐剤(例えば、0.02重量%のBHT)を含む延長放出経口製剤である。本製剤は、任意に、軟質カプセル、例えば、変性デンプン、カラギーナン(例えば、イオタ及び/またはカッパ)、リン酸ナトリウム、二塩基性、ソルビトールソルビタン溶液、染料(例えば、FD&C Blue#1)、二酸化チタン及び精製水を含むカプセルシェル内に封入される。一態様では、試験製剤と本開示の製剤との間の平均Cmaxの比の90%信頼区間(90%CI))は、80%~125%(0.8~1.25)の範囲内にある。一態様では、試験製剤と本開示の製剤との間の平均AUC(0~無限大)の比の90%信頼区間(90%CI)は、80%~125%(0.8~1.25)の範囲内にある。任意に、試験製剤と本開示の製剤との間のTmaxの比の90%信頼区間(90%CI)は、80%~125%(0.8~1.25)の範囲にある。本明細書に記載の製剤と生物学的に同等である製剤もまた、本開示の方法における使用のために特に企図される。
【0078】
一実施形態では、本開示は、カルシフェジオールの経口延長放出製剤を投与することを含む、慢性腎疾患ステージ3またはステージ4及び30ng/mL未満の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法を提供する。任意に、患者は、9.8mg/dL未満の血清カルシウムレベル及び/または5.5mg/dL未満の血清リンレベルを有する。任意に、本方法は、30mcgのカルシフェジオールを含む25-ヒドロキシビタミンD3の経口延長放出製剤を1日1回、例えば就寝時に投与することを含む。一実施形態では、本方法は、60mcgのカルシフェジオールを投与して、血清総25-ヒドロキシビタミンDを30ng/mL~100ng/mLの範囲に上昇させ、血漿無傷副甲状腺ホルモン(iPTH)を、血漿カルシウムが正常な基準範囲内にあるという条件でiPTHの治療目標まで低下させることを含む。様々な実施形態では、本方法は、毎日約30mcg~約60mcgのカルシフェジオールを投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、毎週約300mcg~約900mcgの範囲の、例えば、毎週600mcgの25-ヒドロキシビタミンDを、任意で毎週2回または3回に分けて、例えば透析処置において毎週3回投与することを含む。
【0079】
一実施形態では、カルシフェジオールは、カルシフェジオール一水和物として合成的に製造される。カルシフェジオール一水和物は白色結晶性粉末であり、計算された分子量は418.65であり、アルコール及び脂肪油に可溶性であるが水には実質的に不溶性である。化学的には、カルシフェジオール1水和物は(3β,5Z,7E)-9,10-セココレスタ-5,7,10(19)-トリエン-3,25-ジオール一水和物であり、その構造式は下記のとおりである。
【化1】
【0080】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例0081】
実施例1
CKDステージ3または4の患者における延長放出25-ヒドロキシビタミンD3の第III相臨床試験
25-ヒドロキシビタミンD3の延長放出製剤(RAYALDEE、Opko Ireland Global Holdings Ltd.)の有効性と安全性を、二次性副甲状腺機能亢進症(iPTH>85pg/mL)、ステージ3または4の慢性腎疾患及び関連した血清総25-ヒドロキシビタミンDレベル≧10ng/mLかつのと≦30ng/mLを有する患者を対象にした2つの同一の多施設、無作為化、プラセボ対照、二重盲検試験において評価した。対象を病期別に層別化し、2:1の比率で無作為化して、RAYALDEE(またはマッチするプラセボ)の経口用量30mcgを1日1回、就寝時に12週間服用させ、続いてさらに14週間、RAYALDEE(またはプラセボ)の30または60mcgのいずれかの1日1回の経口用量で就寝時に処置する。各カプセルには、以下の賦形剤:鉱油、モノグリセリドならびにジグリセリド、パラフィン、ヒプロメロース、ラウロイルポリオキシルグリセリド、脱水アルコール及びブチルヒドロキシトルエンが含まれていた。カプセルシェルには、変性デンプン、カラギーナン、リン酸ナトリウム、二塩基性ソルビトールソルビタン溶液、FD&C Blue#1、二酸化チタン及び精製水が含まれていた。中鎖トリグリセリド(分留ココナッツ)油を製造中に滑沢剤として使用したので、微量が最終配合物中に存在していた可能性がある。
【0082】
合計213人の対象が1つの試験で無作為化され(72人はプラセボ、141人はRAYALDEEを服用した)、216人の対象は他の試験で無作為化された(72人はプラセボ、144人はRAYALDEEを服用した)。対象の平均年齢は66歳(25~85歳)であって、男性は50%、白人は65%、アフリカ系アメリカ人または黒人は32%、その他は3%であった。ベースラインでは、対象は副腎性副甲状腺機能亢進症、ステージ3(52%)またはステージ4(48%)のCKDを有し、微量アルブミン尿症を有さず、かつ30ng/mL未満の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルであった。CKDの最も一般的な原因は糖尿病及び高血圧であり、ベースライン時の平均推定GFRは31mL/分/1.73m2であった。ベースライン時の平均血清無傷PTHは148pg/mLであって、平均血清カルシウムは9.2mg/dLであって、平均血清リンは3.7mg/dLであって、平均血清25-ヒドロキシビタミンDは20ng/mLであった。平均ベースラインiPTHは、ステージ3の疾患を有する対象(n=222)では130pg/mLであって、ステージ4の疾患を有する対象(n=207)では166pg/mLであった。429人の対象のうち354人(83%)が試験を完了し、298人(69%)は非盲検拡大試験中にRAYALDEEを用いてさらに6ヶ月間治療を継続することを選択した。全ての対象は、1日1回就寝時に投与される30mcgの用量で開始し、血漿無傷PTHレベルが70pg/mLを超え、血清25-ヒドロキシビタミンDレベルが65ng/mLであり、かつ血清カルシウムレベルが9.8mg/dLである場合、大部分(210人、74%)が、12週間後に60mcgに増加させた。
【0083】
主な分析では、血漿無傷PTHをベースラインから試験の終了まで少なくとも30%減少させた個体の割合を比較した(20、22、24及び26週の平均)。両試験において、RAYALDEEに無作為化された患者の大部分は、プラセボと比較して、少なくとも30%の血漿無傷PTHの低減を経験した(第1の試験では33%対8%(P<0.001)及び第2の試験では34%対7%(P<0.001))。
【0084】
平均血漿iPTHは、CKDのステージにかかわらず、RAYALDEEによる治療の1年にわたって徐々に正常レベルに近いレベルまで低下したが、プラセボ治療では増加した。26週間の治療終了時に、プールされた平均血漿iPTHは、RAYALDEE治療で22±32%減少したが、プラセボ治療では、9±36%増加し(
図1A)、CKDステージ3及びステージ4で同等の有効性を示した(
図1B)。iPTH抑制は、血清総25-ヒドロキシビタミンDの上昇に正比例し(
図1C)、6ヶ月の拡大試験の間持続した。
【0085】
2つの試験では、血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルは、プラセボ(p<0.001)で処置した対象の3%及び7%と対比して、RAYALDEEで処置した対象の80%及び83%で≧30ng/mLに増加した。第1及び第2の試験では、1日30mcgを服用する対象では平均定常状態レベルが50±20及び56±19ng/mLであったが、1日60mcgを服用した対象では69±22及び67±21ng/mLであった(
図2A)。約185ng/mLという高い血清25-ヒドロキシビタミンDレベルが、有害反応なしに達成された。その結果は、RAYALDEEの30mcgの1日用量が、最大で合計5.8±1.2(SE)ng/mL/週の平均血清25-ヒドロキシビタミンDの漸増及び最大で合計6.7±3.1pg/mL/週の対応する平均血清1,25-ジヒドロキシビタミンDの増加を生じた以前の反復投与臨床試験と同等であった。循環血漿無傷PTHの減少が、RAYALDEE治療の最初の2週間以内に観察された。
【0086】
血漿iPTH及び血清総25-ヒドロキシビタミンD応答率は、ステージ3及びステージ4のCKDにおいて同様であり、血清総25-ヒドロキシビタミンD及び1,25ジヒドロキシビタミンDの増加と同様であった。平均血清総1,25Dは、CKDのステージにかかわらず、処置期間の最後まで有意に増加した(
図2B)。
【0087】
RAYALDEEで治療された285人の対象のうち、179人はベースライン時にLOQ(<0.51ng/mL)を上回る24,25(OH)
2D
3レベルを有していた。RAYALDEE治療の26週間にわたって、平均25(OH)D3及び24,25(OH)2D3は、それぞれベースラインの29から87ng/mLまで及びベースラインの1.0から4.1ng/mL(
図3A)まで有意に増加し(p<0.0001vsプラセボ)、平均iPTHは、プラセボ対象の平均増加に比べて、147から111pg/mLまで有意に減少した(p<0.0001)。25(OH)D3:24,25(OH)2D3比は可変であるが(RSD~30%)、RAYALDEE治療では平均30から25に減少し(
図3B)、26週間後にはプラセボよりも有意に低かった(p<0.0001)。これらの結果は、25(OH)D
3:24,25(OH)
2D
3の比がCKD患者におけるVDIの診断に有用であることを示した。データは、この比を<20に低下させるためには85ng/mLより高い25(OH)D
3レベルを必要とすることをさらに示しており、これは、CKD患者においては、正常な対象と比較して、25(OH)Dの標的が予測されるより高いことを実証している。
【0088】
治療群間で尿カルシウムまたはリンの差異は観察されなかった。延長放出カルシフェジオールで処置した対象の平均血清Ca及びPレベルは、プラセボ処置対象と概ね類似していた(
図6A)が、いくつかの時点でわずかな上昇が認められた。アルブミンについて補正された平均±SD血清カルシウムは、ベースラインの9.2±0.3mg/dLから、プラセボ処置での0.1±0.3mg/dLと比べて、RAYALDEEで0.2±0.3mg/dL増加した。血清リンはRAYALDEEで、プラセボ処置のベースライン3.8±0.5から0.1±0.4mg/dLの増加と比べて、RAYALDEEでベースライン3.7±0.6mg/dLから0.2±0.5mg/dL増加した。投与された25-ヒドロキシビタミンD
3量に基づいて、血清カルシウム(
図6B)または血清リン(
図6C)の暴露-応答関係は観察されなかった。RAYALDEE処置群の合計6人の対象(2%)は、プラセボ群の対象では1人もいなかったが、プロトコルで定義されたアルブミン矯正高カルシウム血症のプロトコルで定義された基準(>10.3mg/dLの連続した2つの血清カルシウム値)を満たした後に、用量の低減を必要とした。これらの対象のうち5人が、処置前に≧9.8mg/dLの血清カルシウムの既往を有しており、6番目の対象は、付随するチアジド治療を受けていた。合計でRAYALDEE対象の4.2%及びプラセボ対象の2.1%は、≧1の正常(10.5mg/dL)の上限を上回る血清カルシウム上昇を経験した。RAYALDEEの対象の0.7%及びプラセボ治療群の1.4%において、「血中カルシウム増加」または「高カルシウム血症」の有害事象が報告された。RAYALDEE処置群の1人の対象(0.4%)は、プラセボ群の対象では1人もいなかったが、高リン酸血症のプロトコルで定義された基準(>5.5mg/dLの治験薬関連の2つの連続した血清リン値)満たした。合計でRAYALDEE対象の45.6%及びプラセボ対象の44.4%は、≧1の正常(4.4mg/dL)の上限を上回る血清リン上昇を経験した。RAYALDEEの対象の1.8%及びプラセボ治療群の2.8%において、「血中リン増加」または「高リン酸血症」の有害事象が報告された。
【0089】
骨代謝回転のマーカーはRAYALDEEによる治療中に減少した。尿カルシウム/クレアチニン比(Ca/Cr)及び尿細管再吸収(TRP)は変化しなかった(
図6D及び6E)。血清総アルカリホスファターゼは、93から87U/Lに減少し、血清骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)は38から27U/Lに減少し(
図7A)、血清C-末端テルペプチド-1(CTX-1)は734から612pg/mLまで減少し(
図7B)、血清プロコラーゲン-1アミノ末端プロペプチド(P1NP)は99からから89ng/mLまでに減少した(
図7C)。プラセボ投与中、これらの骨マーカーは、増加したか、または比較的変化しないままのいずれかであった。
【0090】
健康な対象における450mcgの治療上考えられる最高用量での食物効果試験は、絶食と比べて、RAYALDEEが、高脂肪、高カロリーの食事と共に投与される場合、最大血清カルシフェジオール濃度(Cmax)のおよそ5倍の増加、及びAUC0~tにおける3.5倍の増加を示した。
【0091】
健康な対象において、900mcgの治療上考えられる最高用量での単回投与試験は、絶食状態での投薬後21~32時間の範囲で最大血中カルシフェジオール濃度を産生した。
【0092】
実施例2
薬物動態試験
RAYALDEEの薬物動態を、健康な対象及びCKDステージ3またはステージ4の対象において評価した。二次性副甲状腺機能亢進症、慢性腎疾患及びビタミンD不足の対象に対して、就寝時にRAYALDEEを毎日反復投与した後、カルシフェジオールへの暴露を30~90mcgの用量範囲にわたって比例して増加させた。血清総25-ヒドロキシビタミンDの定常状態レベルには、約3ヶ月後に達した。RAYALDEEを複数回投与した後の血清総25-ヒドロキシビタミンDの平均定常状態濃度は、30mcg及び60mcgの用量群について、それぞれ53ng/mL及び68ng/mLであった。分布に関しては、カルシフェジオールは血漿タンパク質に広く結合している(>98%)。分布の平均の見かけの体積は、RAYALDEEの単回経口投与後の健康な対象で8.8Lであって、繰り返し投与後のステージ3またはステージ4の慢性腎疾患を有する対象において30.1Lであった。排泄に関して、カルシフェジオールの平均排泄半減期は、RAYALDEEの単回投与後の健常者では約11日間であり、1日1回の投与を繰り返した後のステージ3またはステージ4の慢性腎疾患患者では約25日間であった。代謝に関して、カルシフェジオールからのカルシトリオールの産生は、腎臓、副甲状腺、及び他の組織に位置する1α-ヒドロキシラーゼ酵素CYP27B1によって触媒される。全てのビタミンD応答性組織に位置するCYP24A1は、カルシフェジオール及びカルシトリオールの両方を不活性代謝物に異化する。カルシトリオールはCYP27B1を抑制し、CYP24A1をアップレギュレートする。カルシフェジオールの排泄は、主に胆道の糞便経路を通して起こる。CKDステージ3またはステージ4の対象における集団の薬物動態の分析において、定常状態のカルシフェジオール濃度に対するCKDステージの影響は、RAYALDEEの毎日の投与後に明らかではなかった。表1は、処置群によるカルシフェジオールのベースライン調整された薬物動態パラメーターの要約を示す。
【表1】
【0093】
表2は、処置群による1,25-ジヒドロキシビタミンDのベースライン調整された薬物動態パラメーターの要約を示す。
【表2】
【0094】
実施例3
CKDステージ5の患者における延長放出25-ヒドロキシビタミンD3の臨床試験
二次性副甲状腺機能亢進症、ビタミンD不足及び血液透析を1週間に3回受けているCKDステージ5の対象において、血清中の副甲状腺ホルモン(iPTH)の前処置ベースラインからの少なくとも30%の減少における、プラセボに対する25-ヒドロキシビタミンD3の延長放出製剤の3週間の用量の安全性及び有効性を評価するために、多施設無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験を実施する。25-ヒドロキシビタミンD3の延長放出製剤は、RAYALDEEと同じ処方を有するが、150mcgの25-ヒドロキシビタミンD3を含有するカプセルとして提供される。およそ600人の対象をスクリーニングして、SHPTの重症度をバランスさせた約280人の適格対象を1:1:1:1の割合で、以下の処置を52週間受ける4つの並列群にランダム化する:(a)週当たり300mcgでの25-ヒドロキシビタミンD3の延長放出製剤、(b)週当たり600mcgでの25-ヒドロキシビタミンD3の延長放出製剤、(c)週当たり900mcgでの25-ヒドロキシビタミンD3の延長放出製剤、または(d)の釣り合う用量のプラセボ。
【0095】
この試験に登録するには、対象は少なくとも18歳でなければならず、CKDステージ5と診断され、病歴によって確認されるように、前の9ヶ月間に週3回の血液透析が必要でなければならない。スクリーニング来院時に、対象は、カルシトリオールまたは活性ビタミンD類似体を投与される場合は、≧150pg/mLかつ<600pg/mLの血清iPTHレベルを示さねばならないか、またはカルシトリオールまたは活性ビタミンD類似体を投与されない場合は、≧400pg/mLかつ<900pg/mLの血清iPTHレベルを示さなければならない。シナカルセット、エテルカルセチド、カルシトリオールまたは他の1-ヒドロキシル化ビタミンD類似体による処置、または約1,000IU/日の速度でのビタミンD補充を受けた対象は、試験期間中にこれらの薬剤のさらなる投与を見合わせて、52週間の治療期間前の4週間の休薬期間を完了して、≧400pg/mLかつ<900pg/mLの血清iPTH、<9.8mg/dLの血清カルシウム、及び<30ng/mLの血清総25-ヒドロキシビタミンDを達成する。
【0096】
処置前の休薬期間、52週間の処置期間及び6週間の処置後追跡調査期間中に、毎週または隔週の間隔で安全性及び有効性評価のために、全ての対象からの週半ばの透析セッションの開始時に血液サンプルを収集する。600mcgまたは900mcg群において登録された対象は、150mcgの25-ヒドロキシビタミンD3またはプラセボを含有する1または2カプセルを週3回(例えば、月曜日、水曜日、金曜日のスケジュール、または火曜日、木曜日、土曜日のスケジュールで)を52週間服用する。300mcg群の対象は、150mcgの25-ヒドロキシビタミンD3を含む1つのカプセルを週に2回(例えば、月曜日/火曜日及び金曜日/土曜日に)服用する。カプセルは、定期的に予定される血液透析の終了時に透析センターで投与され、総累積週用量を達成する。対象は、試験中に、≦2.5mEq/Lの透析液のカルシウム濃度で血液透析を受ける。最終投与後の血清25-ヒドロキシビタミンD3の薬物動態プロフィールを確立するために、処置後追跡調査期間中に各処置群からの対象のサブセットにおいて追加の血液試料を収集する。
【0097】
対象は、(a)iPTHが処置前のベースラインから少なくとも40%減少しておらず、>300pg/mLのままであり、(b)血清カルシウムが<9.8mg/dLであり、(c)血清リンが<6.0mg/dLであり、及び(d)試験で現在割り当てられている用量が900mcg/週未満であるという条件で、26週の開始時に用量漸増に適格となる。最大用量が900mcg/週を超えないようにするためには、より低い増量が必要でない限り、用量漸増が300mcg/週の増分で生じるであろう。対象は、iPTHが<150pg/mLであることが確認され、血清カルシウムが>10.3mg/dLであることが確認され、血清リンが>6.5mg/dLであることが確認された場合には、週当たり150mcgの用量に低減されるが、但し、治験担当医が、上昇した血清リンが治験薬投与に関連しているとみなし、リン酸塩結合剤療法を開始または調整することによって血清リンを制御するための適切で持続的な行動をとった場合に限る。iPTHが<100pg/mLであることが確認されるか、または血清カルシウムが>11.0mg/dLであることが確認される場合、対象は投与を中断され、iPTHが≧150pg/mLであり、かつ血清カルシウムが≦9.8mg/dLであるとき、週当たり150mcgに低減された用量で再開する。処置前ベースラインからのiPTHの100%超の増加を経験した患者、または2回の連続した来院時に(少なくとも2週間離れている場合)、1,200pg/mLを上回るiPTHを示す対象は、治験薬の投与を中止し、処置後後追跡調査機関に入る。
【0098】
試験中に定期的な間隔で監視される重要なパラメーターとしては、iPTH、血清カルシウム、血清リン、血清総25-ヒドロキシビタミンD、血清総1,25-ジヒドロキシビタミンD、血清25-ヒドロキシビタミンD3、血清1,25-ジヒドロキシビタミンD3、血清24,25-ジヒドロキシビタミンD3、バイタルサイン(VS)、及び有害事象(AE)が挙げられる。心電図は、ベースライン及び処置の最後の月の間に実施される。線維芽細胞増殖因子23(FGF-23)、血清骨特異的アルカリホスファターゼ(BAP)、1型コラーゲンの血清C末端テロペプチド(CTx)、血清プロコラーゲン1型N末端プロペプチド(P1NP)、T50石灰化傾向スコア、他の骨マーカー、及び免疫機能も監視される。
【0099】
大多数の対象は、処置の最後の6週間(47~52週目)に、処置前ベースラインから30%~50%の血清iPTHの平均減少を示す。12週間の処置後、25-ヒドロキシビタミンD3延長放出製剤で処置された対象は、300mcg/週で処置された群では50ng/mL~約90ng/mLの血清25-ヒドロキシビタミンD3濃度を示し、600mcg/週で処置された群では約120ng/mL~160ng/mLを示し、及び900mcg/週で処置された群では約150ng/mL~200ng/mLを示した状態で、定常状態条件にほぼ達する(定常状態に達するまでの中央値時間は約16週間である)。
【0100】
実施例4
血清1,25-ジヒドロキシビタミンDの超生理的レベルまでの安全な上昇
図8及び
図9は、2名の対象において、最長1年まで延長放出経口カルシフェジオールを投与した対象を伴う試験からの初期の結果を示す。
【0101】
以下のプロトコルを適用した。対象に、延長放出経口カルシフェジオールカプセルを、30マイクログラムの初期の1日用量で4週間、就寝時に投与した。初回用量後、1日の用量は、1日あたり最大で300マイクログラムになるように、4週間間隔で30マイクログラム増分で増加させた。用量漸増の間、2回の連続した来院時に、血清カルシウムが10.3mg/dLを超えたならば、このときは血清カルシウムが10.0mg/dL以下になるまで投与を中止し、その時点で対象は、前の用量よりも低い30マイクログラムの用量で投与を開始し、その投与レベルで12週間維持した。血清カルシウムが10.3mg/dLを3回目に超えた場合、投与を中止した。
【0102】
試験の対象は、骨への転移を伴う進行した乳癌または前立腺癌を有し、デノスマブまたはゾレンドロン酸による継続的な治療を受けていた。対象は、9.8mg/dL未満の初期血清カルシウム及び70pg/mL長の血漿iPTHを有していた。
【0103】
図8及び9は、これら対象における血清カルシフェジオールレベルが約300ng/ml以上に上昇し、一方では血清カルシトリオールレベルが250pg/mLを超えて上昇したことを示している。血清カルシウム及び血清リン酸レベルは、概ね平坦であった。これらの対象における血清24,25-ジヒドロキシビタミンD
3の血清24,25-ヒドロキシビタミンD
3に対する比は20未満であって、一般的には約10:1以下であった。
【0104】
前述の説明は、理解の明確さのためだけに示され、本発明の範囲内の変更形態は当業者には明白であり得るため、不必要な制限が前述の説明から理解されるべきではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、文脈が他を必要としない限り、「含む(comprise)」という語及び「含む(comprises)」ならびに「含んでいる「comprising)」などの変形は、記載された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の包含を意味するが、他の整数またはステップまたは整数またはステップの群の除外を意味するものではないことが理解されよう。
【0105】
組成物が成分または材料を含むものとして記載されている明細書を通して、組成物は、他に記載されていない限り、列挙された成分または材料の任意の組み合わせから本質的になる、またはそれらからなることも企図される。同様に、方法が特定のステップを含むものとして記載されている場合、他の方法で記載されていない限り、これらの方法は列挙されたステップの任意の組み合わせから本質的になる、またはそれらからなることも企図される。本明細書に例示的に開示される発明は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素またはステップの非存在下で好適に実施され得る。
【0106】
本明細書に開示された方法の実施及びその個々の工程は、手作業で、及び/または電子機器を用いて実施することができる。プロセスが特定の実施形態を参照して記載されているが、当業者には、その方法に関連する行為を行う他の方法が使用されてもよいことが容易に理解される。例えば、様々なステップの順序は、別段記載がない限り、その方法の範囲または趣旨から逸脱することなく変更されてもよい。さらに、個々のステップの一部は、組み合わせられ得るか、省略され得るか、または追加のステップへとさらに分割され得る。
【0107】
本明細書に引用される全ての特許、文献、及び参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本開示と組み込まれている特許、文献、及び参考文献との間に矛盾がある場合、本開示が優先されるべきである。
本明細書に引用される全ての特許、文献、及び参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本開示と組み込まれている特許、文献、及び参考文献との間に矛盾がある場合、本開示が優先されるべきである。
次に、本発明の態様を示す。
1.慢性腎疾患ステージ3または4を有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法であって、前記患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを90ng/mlを超えて上昇させるのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを前記患者に投与することを含む、方法。
2.前記患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満に制御するのに有効な量の前記反復用量を、投与することをさらに含む、上記1に記載の方法。
3.慢性腎疾患ステージ3または4を有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法であって、前記患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを90ng/mlを超えて上昇させるのに有効な、かつ前記患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満に制御するのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを前記患者に投与することを含む、方法。
4.慢性腎疾患ステージ3または4を有する患者におけるビタミンD不足を治療する方法であって、前記患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を20未満に制御するのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを前記患者に投与することを含む、方法。
5.前記反復投与が、少なくとも3ヶ月間投与される、上記1~4のいずれか一項に記載の方法。
6.前記反復投与量が、前記患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを100ng/mlを超えて上昇させるのに有効である、上記1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.前記量が、前記患者の25-ヒドロキシビタミンDの24,25-ジヒドロキシビタミンDに対する血清比を15未満に制御するのに有効である、上記1~6のいずれか一項に記載の方法。
8.前記用量の25-ヒドロキシビタミンDが、制御放出経口投薬として投与される、上記1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.慢性腎疾患ステージ3または4を有する前記患者がまた、30ng/ml未満の血清総25-ヒドロキシビタミンD濃度も有する、上記1~8のいずれか一項に記載の方法。
10.慢性腎疾患ステージ3またはステージ4及び30ng/mL未満の血清総25-ヒドロキシビタミンDレベルを有する患者における二次性副甲状腺機能亢進症を治療する方法であって、カルシフェジオールの経口延長放出製剤を投与することを含む、方法。
11.約30mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3
、ワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形、またはその使用であって、前記剤形が、CKDステージ3またはステージ4を有する患者に投与されるとき、反復投薬後に25-ヒドロキシビタミンD
3
についての以下のベースライン調整された薬物動態パラメーター:(1)約10ng/mL~約45ng/mLのCmax、及び(2)約300ng・d/mL~約1300ng・d/mLのAUC
0~6週
のうちの1つ以上を有し、任意選択で、約8日~約45日のTmaxをさらに有する、延長放出剤形、またはその使用。
12.約60mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3
、ワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形、またはその使用であって、前記剤形が、CKDステージ3またはステージ4を有する患者に投与されるとき、反復投薬後に25-ヒドロキシビタミンD
3
についての以下のベースライン調整された薬物動態パラメーター:(1)約30ng/mL~約90ng/mLのCmax、及び(2)約700ng・d/mL~約2300ng・d/mLのAUC
0~6週
のうちの1つ以上を有し、任意選択で、約29日~約45日のTmaxをさらに有する、延長放出剤形、またはその使用。
13.約30mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3
、ワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形、またはその使用であって、前記剤形が、CKDステージ3またはステージ4を有する患者に投与されるとき、反復投薬後に1,25-ジヒドロキシビタミンDについての以下のベースライン調整された薬物動態パラメーター:(1)約1pg/mL~約21pg/mLのCmax、及び(2)約1g・d/mL~約460g・d/mLのAUC
0~6週
のうちの1つ以上を有し、任意選択で、約1日~約44日のTmaxをさらに有する、延長放出剤形、またはその使用。
14.約60mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3
、ワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形、またはその使用であって、前記剤形が、CKDステージ3またはステージ4を有する患者に投与されるとき、反復投薬後に1,25-ジヒドロキシビタミンDについての以下のベースライン調整された薬物動態パラメーター:(1)約7pg/mL~約30pg/mLのCmax、及び(2)約1g・d/mL~約570g・d/mLのAUC
0~6週
のうちの1つ以上を有し、任意選択で、約8日~約44日のTmaxをさらに有する、延長放出剤形、またはその使用。
15.約10mcg~約90mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3
、ワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形をCKDステージ3またはステージ4を有する患者に投与する方法であって、25-ヒドロキシビタミンD
3
についての以下のベースライン調整された薬物動態学的パラメーター:(1)約5ng/mL~約150ng/mLのCmax、(2)約5日~約60日のTmax、(3)約100ng・d/mL~約3300ng・d/mLのAUC
0~6週
のうちの1つ以上を達成するのに有効な反復投与量の前記延長放出経口剤形を前記患者に投与することを含む、方法。
16.任意にワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む、約10mcg~約90mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3
を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形の投与を、任意でCKDステージ3またはステージ4を有する、前記投与を必要とする患者に施す方法であって、1,25-ジヒドロキシビタミンDについての以下のベースライン調整された薬物動態学的パラメーター:(1)約0.1pg/mL~約50pg/mLのCmax、(2)約1日~約44日のTmax、(3)約1g・d/mL~約1300g・d/mLのAUC
0~6週
のうちの1つ以上を達成するのに有効な反復投与量の前記延長放出経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法。
17.任意にワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む、約30mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3
を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形の投与を、任意でCKDステージ3またはステージ4を有する、前記投与を必要とする患者に施す方法であって、以下:(1)約1ng/mL/週~約7ng/mL/週の平均血清25-ヒドロキシビタミンDの増加、(2)約1~約10pg/mL/週の平均血清1,25-ジヒドロキシビタミンDの増加、(3)約50ng/mL~約55ng/mLの平均定常状態血清25-ヒドロキシビタミンDレベルのうちの1つ以上達成するのに有効な反復投与量の前記延長放出経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法。
18.任意にワックス状制御放出剤、乳化剤、吸収促進剤、油性ビヒクル、及び安定化剤を含む、約30mcg~約60mcgの25-ヒドロキシビタミンD
3
を含む25-ヒドロキシビタミンDの延長放出剤形の投与を、任意でCKDステージ3またはステージ4を有する、前記投与を必要とする患者に施す方法であって、以下:(1)約30pg/mL~約80pg/mLのベースラインからの血漿無傷PTHの減少、(2)約50ng/mL超~約100ng/mLの定常状態血清25-ヒドロキシビタミンDレベル、(3)少なくとも約10pg/mLのベースラインからの血清1,25-ジヒドロキシビタミンDの増加、(4)0~約0.3mg/dLのベースラインからの血清カルシウムの増加、(5)0~約0.3mg/dLのベースラインからの血清リンの増加、(6)少なくとも約10U/Lのベースラインからの血清BSAPの減少、(7)少なくとも約100pg/mLのベースラインからの血清CTX-1の減少、(8)少なくとも約30ng/mLのベースラインからの血清P1NPの減少のうちの1つ以上を達成するのに有効な反復投与量の前記延長放出経口剤形を前記対象に投与することを含む、方法。
19.前記反復用量が、ベースラインと比較して、前記患者の血漿PTHレベルを少なくとも15%、任意には少なくとも30%低下させるのに有効である、上記1~18のいずれか一項に記載の方法または使用。
20.前記反復用量が、1日当たり1回分の用量の頻度で投与される、上記1~19のいずれか一項に記載の方法または使用。
21.前記反復用量が、少なくとも1ヶ月間、任意に少なくとも6ヶ月間の延長された期間投与される、上記1~20のいずれか一項に記載の方法または使用。
22.患者のビタミンD応答性疾患を治療する方法であって、高カルシウム血症を誘発することなく、前記患者の血清25-ヒドロキシビタミンDレベルを100ng/ml~500ng/mlの範囲に上昇させるのに有効であり、同時に前記患者の血清1,25-ジヒドロキシビタミンDレベルを50pg/ml~350pg/mlの範囲に上昇させるのに有効な反復用量の25-ヒドロキシビタミンDを前記患者に投与することを含む、方法。