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特開2022-81546筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療する組成物および方法
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  • 特開-筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療する組成物および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081546
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20220524BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220524BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20220524BHJP
   C12N 5/079 20100101ALN20220524BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20220524BHJP
   A61K 31/713 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61P43/00 111
A61P21/00
A61P25/02
A61K48/00
A61K35/76
C12N15/864 100Z
C12N5/079
C12N5/071
A61K31/713
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022030717
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2017525847の分割
【原出願日】2015-11-13
(31)【優先権主張番号】62/079,588
(32)【優先日】2014-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/211,992
(32)【優先日】2015-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/234,466
(32)【優先日】2015-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517157204
【氏名又は名称】ボイジャー セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VOYAGER THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】サー、ディナー ウェン-イー
(72)【発明者】
【氏名】ホウ、ジンジャオ
(72)【発明者】
【氏名】ノンネンマッチャー、マシュー イー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ、ペンチェン
(72)【発明者】
【氏名】ホスバッハ、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】デッカート、ヨヘン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子を標的とする低分子干渉RNA(siRNA)分子を提供する。
【解決手段】SOD1の発現を阻害するためのsiRNA二本鎖であって、特定のヌクレオチド配列を有するセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を含む、siRNA二本鎖を提供する。いくつかの実施形態において、siRNA分子をコードする核酸配列は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに挿入される。神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS))を有する対象におけるSOD1遺伝子発現を阻害するためのsiRNA分子の使用方法も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を含む、細胞中のSOD1の発現を阻害または抑制するための2つの逆方向末端反復(ITR)の間に位置する核酸配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、前記センス鎖配列は、表3、表11または表14に列挙された配列のヌクレオチド配列と3ヌクレオチド以下で異なる少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含み、前記アンチセンス鎖配列は、表3、表11または表14に列挙された配列のヌクレオチド配列と3ヌクレオチド以下で異なる少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含み、前記センス鎖配列およびアンチセンス鎖配列は少なくとも4ヌクレオチド長の相補性領域を共有する、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項2】
前記核酸配列が、siRNA二本鎖のセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を含む、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項3】
前記siRNA二本鎖が、siRNA二本鎖ID番号D-2741~ID番号D-2985からなる群から選択される、請求項2に記載のAAVベクター。
【請求項4】
前記siRNA二本鎖が、siRNA ID:D-2757、D-2806、D-2860、D-2861、D-2875、D-2871、D-2758、D-2759、D-2866、D-2870、D-2823、およびD-2858の核酸配列からなる群から選択される、請求項2に記載のAAVベクター。
【請求項5】
前記相補性領域が少なくとも17ヌクレオチドの長さである、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項6】
前記相補性領域が19から21ヌクレオチドの長さである、請求項5に記載のAAVベクター。
【請求項7】
前記相補性領域が19ヌクレオチドの長さである、請求項6に記載のAAVベクター。
【請求項8】
前記センス鎖配列およびアンチセンス鎖配列が、独立して、30ヌクレオチド以下である、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項9】
前記センス鎖配列およびアンチセンス鎖配列の少なくとも1つが、少なくとも1ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項10】
前記センス鎖配列およびアンチセンス鎖配列の少なくとも1つが、少なくとも2ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む、請求項9に記載のAAVベクター。
【請求項11】
前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ8およびAAV-DJおよびそれらの変異体からなる群から選択されるキャプシド血清型を含む、請求項1に記載のAAVベクター。
【請求項12】
細胞中のSOD1遺伝子の発現を阻害する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載のAAVベクターを含む組成物を前記細胞に投与することを含む方法。
【請求項13】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳類細胞が運動ニューロンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳類細胞が星状細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
治療を必要とする対象における筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療および改善の少なくとも一方を行う方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載のAAVベクターを含む組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項17】
前記SOD1の発現が阻害または抑制される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記SOD1が野生型SOD1、少なくとも1つの突然変異を有する突然変異SOD1、または野生型SOD1および少なくとも1つの突然変異を有する突然変異SOD1である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記SOD1の発現が、約20%~約100%阻害または抑制される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ALSが、同定されたSOD1遺伝子突然変異を有する家族性ALSである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ALSが散発性ALSである、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
SOD1遺伝子が細胞内で機能効果をもたらす変異を含む細胞におけるSOD1遺伝子の発現を抑制する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載のAAVベクターを含む組成物を前記細胞に投与することを含む方法。
【請求項23】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物細胞が運動ニューロンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記哺乳類細胞が星状細胞である、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2014年11月14日に出願されたSOD-1を標的とするsiRNAを用いた筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療と題された米国仮特許出願第62/079,588号、2015年8月31日に出願された筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療する組成物および方法と題された米国仮特許出願第62/211,992号、2015年9月29日に出願された筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療する組成物および方法と題された米国仮特許出願第62/234,466号の権利を主張しており、その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本出願は、電子フォーマットの配列表と共に提出されている。配列表は、2015年11月12日に作成された126,873バイトのサイズである1011PCTSL.txtという名前のファイルとして提供されている。配列表の電子フォーマットでの情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本発明は、調節性ポリヌクレオチド、例えばスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子を標的とする低分子干渉RNA(siRNA)分子の設計、調製、製造、使用および/または製剤のための組成物、方法およびプロセスに関する。本明細書中で使用される「調節ポリヌクレオチド」は、標的遺伝子、例えばmRNAのレベルまたは量、またはタンパク質レベルを調節(上昇または低下のいずれか)するように機能する任意の核酸配列である。SOD1遺伝子の標的化は、SOD1遺伝子発現およびSOD1酵素産生を妨害し得る。いくつかの実施形態において、siRNA分子をコードする核酸配列は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに挿入される。神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS))を有する対象におけるSOD1遺伝子発現を阻害するためのsiRNA分子の使用方法も開示される。
【背景技術】
【0004】
ルーゲーリック病としても知られる筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、最も致命的な進行性の神経変性疾患であり、一次運動野、脳幹、および脊髄における運動ニューロン(MN)の支配的な喪失を特徴とする。運動ニューロンの喪失は、呼吸などの基本的な基礎運動を崩壊させ、典型的には診断後2~5年以内に患者に死に至らせる。患者の運動機能の進行性悪化は、呼吸能力をひどく低下させるため、患者の生存のために何らかの形の呼吸補助が必要となる。他の症状には、手、腕、脚または嚥下筋肉の筋力低下も含まれる。一部の患者(例えば、FTD-ALS)はまた、前頭側頭型認知症を発症し得る。
【0005】
ALS協会によると、米国では毎年約5,600人がALSと診断されている。ALSの発生率は10万人あたり2人であり、常に3万人というアメリカ人がこの疾患に罹患していると推定されている。
【0006】
ALSには2つの形態が示されている:1つは散発性ALS(sALS)で米国で最も一般的なALS型であり、診断されるすべての症例の90~95%を占める。もう1つは家族性ALS(fALS)であり、これは主に家族間遺伝で、米国内の全症例の約5~10%にすぎない。またsALSとfALSは臨床的に区別できない。
【0007】
病理学的研究では、疾患の発症後にいくつかの細胞プロセスに障害が起きることが見出されており、たとえば、特に運動ニューロン(MN)における、ERストレスの増加、フリーラジカル(すなわち、活性酸素種(ROS))の生成、ミトコンドリア機能障害、タンパク質凝集、アポトーシス、炎症およびグルタミン酸興奮毒性を含む。
【0008】
ALSの原因は複雑で異質である。一般に、ALSは、環境曝露と相まって複数の遺伝子が組み合わさり、その人に疾患が起こりやすくなる、複雑な遺伝的疾患であると考えられている。ALSに関連するものとして、SOD-1(Cu2+/Zn2+スーパーオキシドジスムターゼ)、TDP-43(TARDBP、TAR DNA結合タンパク質-43)、FUS(肉腫において融合・転座する)、ANG(アンギオゲニン)、ATXN2(アタキシン-2)、バロシン含有タンパク質(VCP)、OPTN(オプチニューリン)、染色体9における非コード化GGGGCCヘキサヌクレオチド反復の拡大、オープンリーディングフレーム72(C9ORF72)を含む、十数種以上の遺伝子が発見されている。しかし、運動ニューロン変性の正確なメカニズムはまだ分かっていない。
【0009】
現在、ALSの治癒的治療法はない。唯一のFDA承認薬はリルゾールであり、これはALSの疾患進行を抑えるためにグルタミン酸応答に拮抗するものである。しかし、早期段階にあるALS患者においての約3ヶ月の寿命延長のみが報告されており、後期段階のALS患者の治療上の利点は認められず、患者の治療選択肢の欠如を示している(非特許文献1)。したがって、疾患の進行を効果的に予防することができる新しい治療戦略が依然として求められている。
【0010】
散発性および家族性ALSの両方の潜在的治療法については多くの異なる戦略が研究されている。1つの戦略は、インスリン様成長因子I(IGF-I)、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、血管内皮成長因子(VEGF)、コリベリンおよび活性依存性神経栄養因子(ADNF)由来ペプチドなどの、ニューロン生存を促進することができる神経栄養因子の神経保護および/または再生効果に基づくものである。いくつかの研究は、神経栄養因子が運動ニューロン機能を保存し、それによってSOD1トランスジェニックマウスにおいて運動能力が改善し得ることを示した。しかしながら、そのような治療は、しばしばSOD1マウスの生存を延長させることができず、神経栄養因子がニューロンの生存を延長するのに十分ではないことを示唆している(非特許文献2による評価を参照)。
【0011】
ALS治療のもう一つの戦略は、幹細胞に基づく療法に焦点を当てている。幹細胞は運動ニューロンを生成する可能性があり、それによって、ALSにおける退行運動ニューロン、すなわち一次運動皮質、脳幹および脊髄などの罹患したCNSを置換する。人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉系間質細胞(MSC)(例えば、骨髄間葉間質細胞(BMSC)と脂肪細胞幹細胞(ASC))及び神経組織起源の神経幹細胞(例えば、胎児脊髄神経幹細胞(NSC)、多分化能神経前駆細胞(NPC))など複数の源から由来する幹細胞が調査されている(例えば、Kim Cらによって評価された非特許文献3)。
【0012】
スーパーオキシドジスムターゼI型遺伝子の突然変異(SOD1;Cu2+/Zn2+スーパーオキシドジスムターゼI型)は、fALSの最も一般的な原因で、すべてのfALS症例の約20~30%を占めている。最近の報告では、SOD1突然変異はまた、すべてのsALS症例の約4%に関連している可能性が示されている(非特許文献4)。SOD1関連fALSは、通常のSOD1活性の喪失によって引き起こされるのではなく、むしろ毒性機能の増加によって引き起こされる可能性が最も高い。突然変異型SOD1関連fALS毒性の仮説の1つは、異常型SOD1酵素が、ペルオキシ亜硝酸または過酸化水素などの小分子に有害なフリーラジカルを生成させる原因となっていると述べている。突然変異SOD1神経毒性の他の仮説には、プロテアソーム活性の阻害、ミトコンドリア損傷、RNAプロセシングの破壊および細胞内凝集物の形成が含まれる。ALSにおける突然変異型SOD1変異体および/または野生型SOD1の異常な蓄積は、病理学的封入体として同定される不溶性原線維凝集体を形成する。凝集したSOD1タンパク質は、細胞、特に運動ニューロンに対し、ミトコンドリアストレス(非特許文献5)及び他の毒性を誘発し得る。
【0013】
これらの知見は、SOD1が家族性および散発性の両方のALSの潜在的な治療標的であることを示している。ALS患者の中枢神経系において産生されるSOD1タンパク質を減少させることができる療法は、運動ニューロン変性、筋肉衰弱および萎縮といったALS患者の症状を改善し得る。野生型および/または変異型SOD1タンパク質凝集の形成を防止することを目的とする薬剤および方法は、疾患の進行を予防し、ALS症状の改善を可能にし得る。RNA干渉(RNAi)媒介遺伝子サイレンシングは、近年研究者の関心を呼んでいる。SOD1遺伝子を標的とする小さな二本鎖RNA(低分子干渉RNA)分子は、ALSの治療におけるそれらの可能性について当該分野で教示されている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照。その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,632,938号明細書
【特許文献2】米国特許公開第20060229268号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Bensimon Gら,J Neurol)。2002,249,609-615
【非特許文献2】YacilaおよびSari,Curr Med Chem.,2014,21(31),3583-3593
【非特許文献3】Kim Cら,Exp.Neurobiol.,2014,23(3),207-214
【非特許文献4】RobberechtおよびPhilip,Nat.Rev.Neurosci.,2013,14,248-264
【非特許文献5】Vehvilainen Pら,Front Cell Neurosci.,2014,8,126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、疾患の治療のためのALS患者におけるSOD1の発現を阻害または防止するための、RNA干渉に基づくアプローチを開発する。
本発明は、新規の二本鎖RNA(dsRNA)構築物およびsiRNA構築物ならびにそれらの設計方法を提供する。さらに、これらの新規のsiRNA構築物は、合成分子であってもよく、または細胞への投与のために発現ベクター(一方または両方の鎖)にコードされてもよい。そのようなベクターは、例えばAAV血清型のいずれかのベクターゲノムなどのアデノ関連ウイルスベクター、またはレンチウイルスなどの他のウイルス投与ビヒクルを含むが、これに限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、遺伝子発現およびタンパク質産生を伴うRNA分子媒介遺伝子特異的干渉に関する。筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン変性疾患を治療するための方法も、本発明に含まれる。本明細書で扱っている組成物に含まれるsiRNAは、SOD1遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部と実質的に相補的である、30ヌクレオチド以下、概して19-24ヌクレオチドの長さの領域を有するアンチセンス鎖(アンチセンス鎖)を有するdsRNAを包含する。
【0018】
本発明は、SOD1発現および/またはSOD1タンパク質産生を妨げるためにSOD1 mRNAを標的とする、低分子干渉RNA(siRNA)二本鎖のような短鎖二本鎖RNA分子を提供する。本発明のsiRNA二本鎖は、SOD1遺伝子のいずれかの特定の突然変異にかかわらずSOD1遺伝子の両方の対立遺伝子を阻害し得、特にALS疾患に見られるものと相互作用し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、そのようなsiRNA分子、またはsiRNA分子の一本鎖は、アデノ随伴ウイルスベクターに挿入され、細胞、特に運動ニューロンおよび/または中枢神経系の他の周囲細胞内に入れる。
【0020】
本発明のsiRNA二本鎖は、二本鎖構造を形成するようにハイブリダイズしたアンチセンス鎖およびセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は標的SOD1遺伝子の核酸配列に相補的であり、センス鎖は核酸に対して相同である標的SOD1遺伝子の配列である。いくつかの態様では、アンチセンス鎖の5’末端は5’ホスフェート基を有し、センス鎖の3’末端は3’ヒドロキシル基を含む。他の態様において、各鎖の3’末端には、ヌクレオチドオーバーハングは存在しないか、1つまたは2つ存在する。
【0021】
本発明によれば、SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖の各鎖は、長さが約19-25ヌクレオチド、好ましくは約19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、または25ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、siRNAは非修飾RNA分子であってもよい。
【0022】
他の態様では、siRNAは、塩基、糖または主鎖修飾のような少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドを含み得る。
一実施形態では、siRNAまたはdsRNAは、互いに相補的である少なくとも2つの配列を含む。dsRNAは、第1の配列を有するセンス鎖および第2の配列を有するアンチセンス鎖を含む。アンチセンス鎖は、SOD1をコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含み、その相補性領域は30ヌクレオチド以下、且つ少なくとも15ヌクレオチドの長さである。一般的に、dsRNAは19~24ヌクレオチド、例えば19~21ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、dsRNAは長さが約15~約25ヌクレオチドであり、他の実施形態ではdsRNAは長さが約25から30ヌクレオチドである。
【0023】
dsRNAは、SOD1を発現する細胞と接触するか、またはSOD1を発現する細胞内で転写すると、例えば本明細書に記載の方法によってアッセイした場合に、SOD1遺伝子の発現を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%または少なくとも40%またはそれ以上を阻害または抑制する。
【0024】
本発明によれば、SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖、siRNA二本鎖の一本鎖、またはdsRNAをコードする核酸を含むAAVベクターが産生され、そのAAVベクター血清型はAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ8および/またはAAV-DJ、およびそのバリアントである。
【0025】
本発明によれば、ALSにおけるSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはdsRNAは、表3,11または13に列挙されるsiRNA二本鎖から選択される。好ましくは、ALSにおけるSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはdsRNAは、以下のsiRNA二本鎖から成る群:D-2757、D-2806、D-2860、D-2861、D-2875、D-2871、D-2758、D-2759、D-2866、D-2870、D-2823及びD-2858から選択される。
【0026】
本発明はまた、SOD1遺伝子を標的とする少なくとも1つのsiRNA二本鎖および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの態様において、siRNA二本鎖をコードする核酸配列は、AAVベクターに挿入される。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明は、細胞におけるSOD1遺伝子発現を阻害/サイレンシングするための方法を提供する。したがって、siRNA二本鎖またはdsRNAを使用して、細胞、特に運動ニューロンにおけるSOD1遺伝子発現を実質的に阻害することができる。いくつかの態様では、SOD1遺伝子発現の阻害は、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%および100%の阻害である。したがって、標的遺伝子のタンパク質産物は、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、および100%阻害され得る。SOD1遺伝子は、野生型遺伝子または少なくとも1つの変異を有する変異型SOD1遺伝子のいずれであっても良い。したがって、SOD1タンパク質は、野生型タンパク質または少なくとも1つの変異を有する突然変異ポリペプチドのいずれかである。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療を必要とする対象に、異常SOD1遺伝子および/またはSOD1タンパク質に関連する筋萎縮性側索硬化症を治療または改善する方法を提供するものであり、当該方法は、SOD1遺伝子を標的とする少なくとも1つのsiRNA二本鎖の薬学的に有効な量を対象に投与すること、前記siRNA二本鎖を標的細胞に送達すること、SOD1遺伝子発現およびタンパク質産生を阻害すること、対象におけるALSの症状を改善することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、SOD1遺伝子を標的とする少なくとも1つのsiRNA二本鎖をコードする核酸配列を含むAAVベクターは、ALSを治療および/または改善する必要がある対象に投与される。AAVベクターの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10およびAAV-DJおよびその変異体からなる群から選択され得る。
【0030】
いくつかの態様において、ALSはSOD1突然変異に関連する家族性ALSである。他の態様において、ALSは、必ずしも遺伝的突然変異の結果としてではないが、SOD1タンパク質の異常な凝集またはSOD1タンパク質の機能または局在の破壊によって特徴付けられる散発性ALSである。本方法によって改善されるALSの症状には、運動ニューロンの変性、筋肉の衰弱、筋肉の硬直、痙攣発作および/または呼吸困難が含まれる。
【0031】
いくつかの実施形態では、SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはdsRNAまたはそのようなsiRNAコード分子を含むAAVベクターは、例えば頭蓋内注射によって、対象の中枢神経系に直接導入することができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、単独療法として使用される。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は併用療法に使用される。併用療法は、運動ニューロン変性に対する神経保護効果について試験された小分子化合物、成長因子およびホルモンなどの1つまたは複数の神経保護剤と組み合わせてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載する、治療上有効な量のプラスミドまたはAAVベクターを、それを必要とする対象に投与することによって筋萎縮性側索硬化症を治療または改善する方法を提供する。ALSは、家族性ALSまたは散発性ALSであり得る。
【0034】
本発明の前述及び他の目的、特徴および利点は、添付の図面に示されるように、本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかにする。添付の図面では、記載されている類似の参照符号が、異なる視点を通して同じ部分を表している。図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の様々な実施形態の原理を例示することに重点を置いている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】AAVベクターにコードされた構築物の活性を示すヒストグラムである。
図2】HEK293T細胞におけるAAVベクターにコードされた調節ポリヌクレオチドのガイド鎖の活性を示すヒストグラムである。
図3】HEK293T細胞におけるAAVベクターにコードされた調節ポリヌクレオチドのパッセンジャー鎖の活性を示すヒストグラムである。
図4】HeLa細胞におけるAAVベクターにコードされた調節ポリヌクレオチドのガイド鎖の活性を示すヒストグラムである。
図5】HeLa細胞におけるAAVベクターにコードされた調節ポリヌクレオチドのパッセンジャー鎖の活性を示すヒストグラムである。
図6】細胞内AAV DNAのヒストグラムである。
図7】ヒト運動ニューロンにおけるAAVベクターにコードされた構築物の活性を示すヒストグラムである。
図8】U251MG細胞におけるSOD1の用量依存的サイレンシングを示すチャートである。
図9】ヒト星状細胞におけるSOD1の用量依存的サイレンシングを示すチャートである。
図10】U251MG細胞におけるSOD1のサイレンシングの経時変化を示すチャートである。
図11A】構築物の用量依存性効果を示すチャートであって、相対SOD1発現を示す。
図11B】構築物の用量依存性効果を示すチャートであって、ガイド鎖のパーセントを示す。
図11C】構築物の用量依存性効果を示すチャートであって、パッセンジャー鎖のパーセントを示す。
図12】ITR、イントロン(I)及びポリA(P)に対する調節ポリヌクレオチド(MP)の位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、調節ポリヌクレオチド、例えば、治療剤としてのRNAまたはDNA分子に関する。RNA干渉媒介遺伝子サイレンシングは、標的とする遺伝子の発現を特異的に阻害することができる。次いで、本発明は、SOD1遺伝子を標的とする小さな二本鎖RNA(dsRNA)分子(低分子干渉RNA、siRNA)、そのようなsiRNAを含む医薬組成物、およびそれらの設計方法を提供する。本発明はまた、神経変性疾患、特に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するためのSOD1遺伝子発現およびタンパク質産生を阻害するためのそれらの使用方法を提供する。
【0037】
本発明は、SOD1 mRNA発現および/またはSOD1タンパク質産生を妨げるために、SOD1 mRNAを標的とする低分子干渉RNA(siRNA)二本鎖(およびそれらをコードする調節ポリヌクレオチド)を提供する。本発明のsiRNA二本鎖は、SOD1遺伝子のいずれかの特定の突然変異にかかわらずSOD1遺伝子の両方の対立遺伝子を阻害し得、特にALS疾患に見られるものと相互作用し得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、そのようなsiRNA分子またはsiRNA分子の一本鎖をコードする核酸配列をアデノ随伴ウイルスベクターに挿入し、細胞、特に運動ニューロンおよび/または中枢神経系の他の周辺細胞に導入する。
【0039】
本発明の、コードされたsiRNA二本鎖は、二本鎖構造を形成するように互いにハイブリダイズしたアンチセンス鎖およびセンス鎖を含み、アンチセンス鎖が標的SOD1遺伝子の核酸配列に相補的であり、またセンス鎖が標的SOD1遺伝子の核酸配列と相同である。いくつかの態様では、アンチセンス鎖の5’末端は5’ホスフェート基を有し、センス鎖の3’末端は3’ヒドロキシル基を含む。他の態様において、各鎖の3’末端には、ヌクレオチドオーバーハングは存在しないか、1つまたは2つ存在する。
【0040】
本発明によれば、SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖の各鎖は、長さが約19-25、19-24または19-21ヌクレオチド、好ましくは約19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、または25ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、siRNAは非修飾RNA分子であってもよい。
【0041】
他の態様では、siRNAは、塩基、糖または主鎖修飾のような少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドを含み得る。
一実施形態では、siRNAまたはdsRNAは、互いに相補的である少なくとも2つの配列を含む。dsRNAは、第1の配列を有するセンス鎖および第2の配列を有するアンチセンス鎖を含む。アンチセンス鎖は、SOD1をコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含み、その相補性領域は30ヌクレオチド以下、また少なくとも15ヌクレオチドの長さである。一般的に、dsRNAは、19~25、19~24または19~21ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、dsRNAは長さが約15~約25ヌクレオチドであり、他の実施形態ではdsRNAは長さが約25から30ヌクレオチドである。
【0042】
本明細書に記載の方法でアッセイした場合に、dsRNAは、直接投与された場合であっても、発現ベクター内にコードされている場合であっても、SOD1を発現している細胞と接触すると、SOD1の発現の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、または40%以上を阻害する。
【0043】
本明細書で扱っている組成物に含まれるsiRNA分子は、30ヌクレオチド以下、一般的には19-25、19-24または19-21ヌクレオチドの長さを有するアンチセンス鎖(当該アンチセンス鎖)を有するdsRNAを含み、これは、SOD1遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的である。
【0044】
本発明によれば、SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖の核酸、siRNA二本鎖の一本鎖またはdsRNAを含むAAVベクターが産生され、そのAAVベクター血清型はAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV9、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ8およびAAV-DJ、およびそれらの変異体であり得る。
【0045】
本発明によれば、ALSにおけるSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、表3に列挙されるsiRNA二本鎖から選択される。いくつかの実施形態では、ALSにおけるSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはdsRNAは、以下のようなsiRNA二本鎖から成る群:D-2757、D-2806、D-2860、D-2861、D-2875、D-2871、D-2758、D-2759、D-2866、D-2870、D-2823及びD-2858から選択される。
【0046】
本発明はまた、SOD1遺伝子を標的とする少なくとも1つのsiRNA二本鎖および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの態様においては、siRNA二本鎖はAAVベクターによってコードされる。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明は、細胞におけるSOD1遺伝子発現を阻害/サイレンシングするための方法を提供する。このようにして、siRNA二本鎖またはコードされたdsRNAを用いて、細胞、特に運動ニューロンにおけるSOD1遺伝子発現を実質的に阻害することができる。いくつかの態様では、SOD1遺伝子発現の阻害とは、少なくとも約20%、例えば少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%および100%、または少なくとも20~30%、20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~80%、20~90%、20~95%、20~100%、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%、30~95%、30~100%、40~50%、40~60%、40~70%、40~80%、40~90%、40~95%、40~100%、50~60%、50~70%、50~80%、50~90%、50~95%、50~100%、60~70%、60~80%、60~90%、60~95%、60~100%、70~80%、70~90%、70~95%、70~100%、80~90%、80~95%、80~100%、90~95%、90~100%または95~100%の阻害を意味する。したがって、標的遺伝子のタンパク質産物は、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%および100%、または少なくとも20~30%、20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~80%、20~90%、20~95%、20~100%、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%、30~95%、30~100%、40~50%、40~60%、40~70%、40~80%、40~90%、40~95%、40~100%、50~60%、50~70%、50~80%、50~90%、50~95%、50~100%、60~70%、60~80%、60~90%、60~95%、60~100%、70~80%、70~90%、70~95%、70~100%、80~90%、80~95%、80~100%、90~95%、90~100%または95~100%で阻害される。SOD1遺伝子は、野生型遺伝子または少なくとも1つの変異を有する変異型SOD1遺伝子のどちらかであってよい。したがって、SOD1タンパク質は、野生型タンパク質または少なくとも1つの変異を有する突然変異ポリペプチドのいずれかである。
【0048】
一実施形態では、siRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、SOD1タンパク質の発現を少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%および100%、または少なくとも20~30%、20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~80%、20~90%、20~95%、20~100%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%、30~95%、30~100%、40~50%、40~60%、40~70%、40~80%、40~90%、40~95%、40~100%、50~60%、50~70%、50~80%、50~90%、50~95%、50~100%、60~70%、60~80%、60~90%、60~95%、60~100%、70~80%、70~90%、70~95%、70~100%、80~90%、80~95%、80~100%、90~95%、90~100%または95~100%減少させるために使用される。非限定的な例として、SOD1タンパク質発現の発現を50~90%低下させることができる。
【0049】
一実施形態では、siRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、SOD1 mRNAの発現を少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%および100%、または少なくとも20~30%、20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~80%、20~90%、20~95%、20~100%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%、30~95%、30~100%、40~50%、40~60% 40~70%、40~80%、40~90%、40~95%、40~100%、50~60%、50~70%、50~80%、50~90%、50~95%、50~100%、60~70%、60~80%、60~90%、60~95%、60~100%、70~80%、70~90%、70~95%、70~100%、80~90%、80~95%、80~100%、90~95%、90~100%または95~100%減少させるために使用される。非限定的な例として、SOD1 mRNA発現の発現を、50~90%低下させることができる。
【0050】
一実施形態では、siRNA二本鎖またはコードされたdsRNAを使用して、CNSの少なくとも1つの領域、例えば、脊髄、前脳、中脳、または後脳のSOD1タンパク質および/またはmRNAの発現を低下させることができる。SOD1タンパク質および/またはmRNAの発現は、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%および100%、20~30%、20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~80%、20~90%、20~95%、20~100%、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%、30~95%、30~100%、40~50%、40~60%、40~70%、40~80%、40~90%、40~95%、40~100%、50~60%、50~70%、50~80%、50~90%、50~95%、50~100% 60~70%、60%~80%、60%~90%、60%~95%、60%~100%、70%~80%、70%~90%、70~95%、70%~100%、80~90%、80~95%、80~100%、90~95%、90~100%または95~100%のCNS範囲で減少させることができる。非限定的な例として、脊髄におけるSOD1タンパク質およびmRNAの発現は、50~90%減少する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療を必要とする対象における異常SOD1遺伝子および/またはSOD1タンパク質に関連する筋萎縮性側索硬化症を治療または改善する方法を提供しており、SOD1遺伝子を標的とする少なくとも1つのsiRNA二本鎖またはsiRNA二本鎖をコードする核酸の薬学的有効量を対象に投与し、前記siRNA二本鎖(またはコードされた二本鎖)を標的細胞に送達し、SOD1遺伝子発現およびタンパク質産生を阻害し、対象におけるALSの症状を改善する。
【0052】
いくつかの実施形態において、SOD1遺伝子を標的とする少なくとも1つのsiRNA二本鎖の核酸配列を含むAAVベクターは、ALSを治療および/または改善する必要がある対象に投与される。AAVベクターの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV -DJ8(AAVDJ8)およびAAV-DJ(AAVDJ)、およびその変異体から成る群から選択される。一実施形態では、AAVベクター血清型はAAV2である。別の実施形態では、AAVベクターはAAVDJである。さらに別の実施形態では、AAVベクター血清型はAAVDJ8である。
【0053】
一実施形態において、本発明において有用であり得る血清型は、AAV-DJ8であり得る。AAV-DJ8のアミノ酸配列は、ヘパリン結合ドメイン(HBD)を除去するために、2つまたはそれ以上の突然変異を含んでいてよい。非限定的な例として、その全体が参照により本発明に組み込まれている内容である、米国特許第7,588,772号で配列番号1として記載されるAAV-DJには、以下の2つの突然変異が含まれる:(1)アミノ酸587のアルギニン(R;arg)がグルタミン(Q;Gln)に変化したR587Qと、(2)アミノ酸590のアルギニン(R;Arg)がスレオニン(T;Thr)に変化したR590T。別の非限定的な一例として、当該AAV-DJ配列は、以下に示す3つの突然変異を含んでよい:(1)アミノ酸406のリシン(K;Lys)がアルギニン(R;Arg)に変化したK406R、(2)アミノ酸587のアルギニン(R;Arg)がグルタミン(Q;Gln)に変化したR587Q、(3)アミノ酸590のアルギニン(R;Arg)がスレオニン(T;Thr)に変化したR590T。
【0054】
いくつかの態様において、ALSはSOD1突然変異に関連する家族性ALSである。他の態様において、ALSは、SOD1タンパク質の異常凝集またはSOD1タンパク質機能および局在における異常を特徴とする散発性ALSである。本方法によって改善されるALSの症状は、運動ニューロンの変性、筋力低下、筋肉の硬直、不明瞭な発語および/または呼吸困難を含み得るが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施形態では、SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAまたはそのようなsiRNA分子を含むAAVベクターは、例えば頭蓋内注射によって、対象の中枢神経系に直接導入することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、単独療法として使用される。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は併用療法に使用される。併用療法は、運動ニューロン変性に対する神経保護効果について試験された小分子化合物、成長因子およびホルモンなどの1つまたは複数の神経保護剤と組み合わせてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載する、治療上有効な量のプラスミドまたはAAVベクターを、それを必要とする対象に投与することによって筋萎縮性側索硬化症を治療または改善する方法を提供する。ALSは、家族性ALSまたは散発性ALSであり得る。
【0058】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の添付の説明に記載する。本明細書に記載しているものと類似または同等の任意の材料および方法を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい材料および方法を以下に記載する。本発明の他の特徴、目的及び利点は、明細書から明らかになる。本明細書において、単数形はまた、文脈が明確に別途指示しない限り、複数形も含む。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合には、本説明が制御する。
【0059】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
成人発症の神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動皮質、脳幹および脊髄における運動ニューロンの選択的死によって特徴付けられる進行性および致命的な疾患である。ALSの発生率は、100,000人に約1.9人である。ALSと診断された患者は、痙性、反射亢進または反射減弱、線維束性収縮、筋萎縮および麻痺によって特徴付けられる進行性の筋肉表現型を発現する。これらの運動障害は、運動ニューロンの喪失による筋肉の衰弱によって引き起こされる。ALSの主要な病理学的特徴には、皮質脊髄路の変性および下位運動ニューロン(LMN)または前角細胞の広範な喪失(GhatakJ Neuropathol Exp Neurol1986,45,385-395)、一次運動野におけるベッツ(Betz)細胞および他の錐体細胞の変性および消失(UdakaActa Neuropathol1986,70,289-295、MaekawaBrain2004,127,1237-1251)、運動皮質および脊髄における反応性神経膠症(KawamataAm J Pathol 1992,140,691-707;およびSchifferJ Neurol Sci. 1996,139,27-33)が含まれる。ALSは、呼吸障害および/または炎症のため、通常は診断後3~5年以内に致死的である(Rowland LPおよびShneibder NA、N Engl.J.Med.,2001,344,1688-1700)。
【0060】
ALSの細胞の特徴は、変性運動ニューロンおよび周囲の細胞(例えば、星状細胞)内のタンパク質性のユビキチン化された細胞質封入体の存在である。ユビキチン化封入体(すなわち、レヴィー体様封入体またはスケイン(Skein)様封入体)は、ALSにおける最も一般的かつ特定の種類の封入体であり、脊髄および脳幹のLMNおよび皮質脊髄の上位運動ニューロン(UMN)に見出される(Matsumoto、J Neurol
Sci、1993、115、208-213;およびSasakおよびMaruyama、Acta Neuropathol、1994、87、578-585)。いくつかのタンパク質は、ユビキチン、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、ペリフェリンおよびドルフィンを含む、封入体の成分であることが確認されている。ニューロフィラメント封入体は、ALSの脊髄運動ニューロンにおける硝子体積塊(HCI)および軸索の「スフェロイド」においてしばしば見出される。他の種類およびあまり特異的でない封入体には、皮質の上層におけるブニナ小体(Bunina body)(シスタチンC含有封入体)および三日月形封入体(SCI)が挙げられる。ALSに見られる他の神経病理学的特徴としては、ゴルジ装置の断片化、ミトコンドリア空胞化およびシナプス末端の超微細構造異常が挙げられる(Fujita et al.,Acta Neuropathol.2002,103,243-247)。
【0061】
加えて、前頭側頭型認知症では、FTD-ALS患者において認知障害を引き起こす可能性のあるALS(FTD-ALS)皮質萎縮(前頭葉および側頭葉を含む)も観察される。
【0062】
ALSは複雑で多因子性の疾患であり、ALSの病因に関与すると仮定された複数のメカニズムには、タンパク質分解障害、グルタミン酸興奮毒性、ミトコンドリア機能障害、アポトーシス、酸化ストレス、炎症、タンパク質ミスフォールディングおよび凝集、異常なRNA代謝、および変化した遺伝子発現が含まれるがこれらに限定されない。
【0063】
ALS症例の約10%~15%がこの疾患の家族歴を有しており、これらの患者は家族性ALS(fALS)または遺伝性の患者と呼ばれ、一般にメンデルの支配的な遺伝様式および高い浸透度を有する。報告されている家族歴に関連していない残りの患者(約85%~95%)は散発性ALS(sALS)として分類されるが、その代わりに、環境因子、遺伝子多型、体細胞突然変異、およびおそらくは遺伝子-環境相互作用を含むがそれらに限定されない他の危険因子に起因すると考えられる。ほとんどの場合、家族性(または遺伝性)ALSは常染色体優性疾患として遺伝するが、常染色体劣性およびX連鎖遺伝および不完全浸透性の家系が存在する。散発性および家族性の形態は臨床的に区別できず、共通の病因を示唆している。ALSにおける運動ニューロンの選択的死の正確な原因は依然として分かっていない。fALSにおける遺伝的要因の理解の進歩が、この疾患の両方の形態を明らかにする可能性がある。
【0064】
近年、ALSの遺伝的原因の爆発は、fALSを引き起こすことが知られている10以上の異なる遺伝子において突然変異を発見した。最も一般的なものは、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ1をコードする遺伝子(SOD1;約20%)(Rosen DR et al.,Nature,1993,362,59-62)、肉腫に融合/脂肪肉腫に転換される(FUS/TLS;1-5%)とTDP-43(TARDBP;1-5%)である。近年、C9orF72遺伝子におけるヘキサヌクレオチド反復の拡大が(GGGGCC)n、西洋人口におけるfALS(約40%)の最も頻繁な原因として特定された(Renton et al.,Nat.によるレビュー、Neurosci.,2014,17,17-23)。LSで変異した他の遺伝子には、アルシン(ALS2)、セナタキシン(SETX)、小胞関連膜タンパク質(VAPB)およびアンギオゲニン(ANG)が含まれる。fALS遺伝子は異なる細胞機構を制御し、ALSの病因が複雑であり、運動ニューロン変性に最終的には至るいくつかの異なるプロセスに関連している可能性があることを示唆している。
【0065】
SOD1は、哺乳動物において同定され特徴付けられた以下の3つのヒトスーパーオキシドジスムターゼの1つである:銅-亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(Cu/ZnSODまたはSOD1)、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSODまたはSOD2)、および細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(ECSODまたはSOD3)。SOD1は、ヒト染色体21上のSOD1遺伝子によってコードされるサブユニット当たり1つの銅結合部位および1つの亜鉛結合部位を有する153残基ポリペプチドの32kDaホモダイマーである(GeneBank アクセスNo.:NM_000454.4)(表2を参照)。SOD1は、スーパーオキサイドアニオン(O2-)と分子酸素(O)と過酸化水素(H)の反応を触媒する。SOD1の細胞内濃度は高く(10~100μMの範囲)、中枢神経系(CNS)中の全タンパク質含量の1%を占める。このタンパク質は、細胞質だけでなく、真核細胞の核、リソソーム、ペルオキシソームおよびミトコンドリアの膜間隙に局在する(Lindenau J et al.,Glia,2000,29,25-34)。
【0066】
SOD1遺伝子の突然変異は、fALS患者の15~20%およびすべてのALS症例の1~2%に保持される。現在、153アミノ酸SOD1ポリペプチド全体に分布する少なくとも170の異なる突然変異がALSを引き起こすことが判明しており、ALSオンライン遺伝データベースで更新リストがある(ALSOD)(Wroe R et al.,Amyotroph Lateral Scler.,2008,9,249-250)。表1は、ALSにおけるSOD1の変異のいくつかの例を列挙する。これらの突然変異は、欠失、挿入およびC末端切断も起こるが、主として単一のアミノ酸置換(すなわちミスセンス突然変異)である。異なるSOD1突然変異は、異なる地理的分布パターンを示す。例えば、SOD1遺伝子突然変異によって引き起こされるALSを有するすべてのアメリカ人の40~50%は、特定の突然変異Ala4Val(またはA4V)を有する。A4V突然変異は、典型的にはより重篤な徴候および症状と関連し、余命期間は通常2~3年である。I113T突然変異は、イギリスで最も一般的な突然変異である。ヨーロッパで最も一般的な突然変異はD90A置換であり、生存期間は通常10年以上である。
【0067】
【表1】

SOD1遺伝子欠損に関連するニューロン死のメカニズムを調べるために、ミスセンス変異、小さな欠失または挿入を含む異なる変異を有するヒトSOD1遺伝子を発現するSOD1関連ALSのいくつかのげっ歯動物モデルが当該分野で開発された。ALSマウスモデルの非限定的な例には、SOD1G93A、SOD1A4V、SOD1G37R、SOD1G85R、SOD1D90A、SOD1L84V、SOD1I113T、SOD1H36R/H48Q、SOD1G127X、SOD1L126XおよびSOD1L126delTTが含まれる。2つの異なるヒトSOD1突然変異を有する、以下の2つのトランスジェニックラットモデルが存在する:SOD1H46RおよびSOD1G93R。これらのげっ歯動物ALSモデルは、ヒトALS患者に類似した筋力低下と、ヒト疾患のいくつかの特徴、特に脊髄運動ニューロンの選択的死、運動ニューロンにおけるタンパク質封入体の凝集およびミクログリア活性化、を反映する他の病原性特徴とを発症し得る。トランスジェニックげっ歯動物は、ヒトSOD1関連ALS疾患の良いモデルであり、疾患病因の研究および疾患治療の開発のためのモデルを提供することが当技術分野でよく知られている。
【0068】
動物および細胞モデルにおける研究は、SOD1病原性変異体が機能獲得によってALSを引き起こすことを示した。すなわち、スーパーオキシドジスムターゼ酵素は、SOD1突然変異によって改変された場合、新規であるが有害な特性を得る。例えば、ALS中のいくつかのSOD1突然変異体は、酸化還元サイクルを破壊することによって、酸化ストレスを増加させる(例えば、毒性スーパーオキシドラジカルの蓄積の増加)。他の研究はまた、ALSにおけるいくつかのSOD1突然変異体が、正常な生理機能とは無関係の毒性特性を得る可能性があることも示している(ミスフォールドSOD1変異体の異常凝集など)。異常なレドックス化学モデルでは、突然変異体SOD1は不安定であり、異常な化学反応により、非活性基質と相互作用し、活性酸素種(ROS)の過剰産生を引き起こす。タンパク質毒性モデルでは、不安定でミスフォールドされたSOD1が細胞質封入体に凝集し、細胞プロセスにとって重要なタンパク質を封鎖する。これらの2つの仮説は互いに排他的ではない。活性部位の金属に結合する選択されたヒスチジン残基の酸化がSOD1凝集を媒介することが示されている。
【0069】
凝集した変異型SOD1タンパク質はまた、ミトコンドリア機能不全(Vehvilainen P et al.,Front Cell Neurosci.,2014,8,126)、軸索輸送の障害、異常なRNA代謝、グリア細胞病理およびグルタミン酸興奮毒性を誘発し得る。いくつかの散発性ALS症例では、ミスフォールドされた野生型SOD1タンパク質は、家族性ALS結合SOD1変異体で見られるものと同様の「毒性コンフォメーション」を形成する病的運動ニューロンに見出されている(Rotunno
MS and Bosco DA, Front Cell Neurosci.,2013,16,7,253)。このような証拠は、ALSが、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの他の神経変性疾患に類似したタンパク質折りたたみ疾患であることを示唆している。
【0070】
現在、ALSに罹患している患者に治癒的治療法はない。グルタミン酸放出の阻害薬であるFDA認可リルゾール(Riluzole)のみがALSに対して中等度の効果を示しており、18ヶ月間の服用で2~3カ月のみ生存期間が延長される。残念なことに、リルゾールを服用している患者に、疾患の進行を遅らせるまたは筋肉機能が改善することはない。したがって、リルゾールは治癒的、または効果的な治療法ではない。研究者はより良い治療薬を探し続けている。
【0071】
SOD1凝集を予防または改善し得る治療アプローチは過去に試験されている。例えば、ヒドロキシルアミン誘導体であるアリモクロモールは、これらの凝集体に対する細胞の防御機構である熱ショックタンパク質を標的とする薬である。研究は、SOD1マウスモデルにおいて、アルモクロモールによる治療が筋肉機能を改善することを実証した。ALSにみられる1つまたは複数の細胞性障害を標的とする他の薬剤には、運動ニューロンに対するグルタミン酸誘発興奮毒性を低下させる可能性のある、タルパパネルなどのAMPAアンタゴニスト、β-ラクタム系抗生物質;酸化的に誘発される運動ニューロン死を阻害し得るブロモクリプチン(例えば、米国特許公開第20110105517号;その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる);SOD1遺伝子発現を低下させる1,3-ジフェニル尿素誘導体またはマルチキナーゼ阻害剤(例えば、米国特許公報第20130225642号;その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる);ミトコンドリアにおける酸化反応を改善することができるドーパミンアゴニストプラミペキソールおよびその鏡像異性体デクスプラミペキソール;シクロオキシゲナーゼ酵素を阻害するニメスリド(例えば、米国特許公開第20060041022号;その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる);フリーラジカルスカベンジャーとして作用する薬剤(例えば、米国特許第6,933,310号およびPCT特許公開番号:WO2006075434;これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)が含まれる。
【0072】
異常なSOD1タンパク質凝集を阻害するための別のアプローチは、ALSにおけるSOD1遺伝子発現をサイレンシング/阻害することである。突然変異した対立遺伝子の特定の遺伝子サイレンシングのための低分子干渉RNAは、fALSの治療に治療的に有益であることが報告されている(例えばRalgh GS et al.,Nat.Medicine,2005,11(4),429-433;およびRaoul C et al.,Nat.Medicine,2005,11(4),423-428;およびMaxwell MM et al.,PNAS,2004,101(9),3178-3183;and Ding H et al.,Chinese Medical J.,2011,124(1),106-110;およびScharz DS et al.,Plos Genet.,2006,2(9),e140;これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0073】
SOD1遺伝子を標的とし、ALSにおけるSOD1発現を調節する多くの他のRNA治療剤は、当技術分野で教示されている。このようなRNAに基づく薬剤には、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび二本鎖低分子干渉RNAが含まれる。例えば、Wang H et al.,J Biol.Chem.,2008,283(23),15845-15852);米国特許第7,498,316;第7,632,938;第7,678,895;第7,951,784;第7,977,314;第8,183,219;第8,309,533;及び第8,586,554号明細書;並びに米国特許公開第2006/0229268号および米国特許公開第2011/0263680号を参照;これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
本発明は、調節性ポリヌクレオチド、例えばSOD1遺伝子を標的とするsiRNA分子、およびそれらの設計および製造方法を提供する。特に、本発明は、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクターを使用する。本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むAAVベクターは、運動ニューロンへの活性剤の投与を増加させることができる。SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードするdsRNAは、細胞内のSOD1遺伝子発現(例えば、mRNAレベル)を有意に阻害することができる;したがって、タンパク質の凝集および封入体の形成、フリーラジカルの増加、ミトコンドリアの機能不全およびRNA代謝のような細胞内のSOD1発現誘導性ストレスを改善する。
【0075】
このようなsiRNA媒介性SOD1発現阻害は、ALSの治療に使用することができる。本発明によれば、患者におけるALSを治療および/または改善する方法は、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むAAVベクターの有効量を細胞内に投与することを含む。このような核酸配列のAAVベクターの投与は、SOD1遺伝子発現の阻害/サイレンシングを引き起こすsiRNA分子をコードする。
【0076】
一実施形態では、調節ポリヌクレオチドをコードするベクター、例えばAAVは、対象における変異体SOD1の発現を低下させる。突然変異体SOD1の減少は、酸化ストレス、ミトコンドリア機能不全、軸索輸送の障害、異常なRNA代謝、グリア細胞病理および/またはグルタミン酸興奮毒性などを含むがこれら限定されない毒性の機構を引き起こす可能性がある毒性凝集体の形成を減少させることもできる。
【0077】
一実施形態では、ベクター、例えばAAVベクターは、それを必要とする対象におけるSOD1の量を減少させ、したがって、本明細書に記載の治療上の利点を提供する。
本発明の組成物
siRNA分子
本発明は、神経変性疾患を治療するための遺伝子発現のRNA干渉(RNAi)誘発阻害に関する。本明細書において、SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAが提供される(本明細書では集合的に「siRNA分子」と呼ぶ)。このようなsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、例えば運動ニューロンなどの細胞内のSOD1遺伝子発現を減少またはサイレンシングさせることができ、それによって運動ニューロン死および筋肉萎縮などのALSの症状を改善する。
【0078】
RNAi(転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、クエリング、または共抑制としても知られている)は、RNA分子が配列特異的様式で、典型的には特定のmRNA分子の破壊を引き起こすことによって遺伝子発現を阻害する転写後遺伝子サイレンシングプロセスである。RNAiの活性成分は、典型的には15~30ヌクレオチドを含む低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる短い/小さい二本鎖RNA(dsRNA)(例えば、19から25、19から24または19-21ヌクレオチド)および2ヌクレオチド3’オーバーハングであり、標的遺伝子の核酸配列と一致する。これらの短いRNA種は、より大きなdsRNAのダイサー仲介切断によってin vivoで自然に産生され得、哺乳動物細胞において機能的である。
【0079】
マイクロRNA(miRNA)と名付けられた自然に発現した小さなRNA分子は、mRNAの発現を調節することによって遺伝子サイレンシングを誘発する。RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を含むmiRNAは、シード領域と呼ばれるmiRNAの5’領域のヌクレオチド2-7および他の塩基対とその3’領域で完全な配列相補性を示すmRNAを標的とする。miRNAが媒介する遺伝子発現のダウンレギュレーションは、標的mRNAの切断、標的mRNAの翻訳阻害、またはmRNA崩壊によって引き起こされ得る。miRNA標的配列は、通常、標的mRNAの3’-UTRに位置する。単一のmiRNAは、様々な遺伝子からの100を超える転写物を標的とすることができ、1つのmRNAは、異なるmiRNAによって標的とされ得る。
【0080】
特定のmRNAを標的とするsiRNA二本鎖またはdsRNAをin vitroで設計および合成し、RNAiプロセスを活性化するために細胞に導入することができる。Elbashirらは、21ヌクレオチドのsiRNA二本鎖(低分子干渉RNAと呼ばれる)が、哺乳動物細胞において免疫応答を誘導することなく、強力かつ特異的な遺伝子ノックダウンを行うことができることを実証した(Elbashir SM et al.,Nature,2001,411,494-498)。この最初の報告以来、siRNAによる転写後遺伝子サイレンシングは、哺乳類細胞における遺伝子解析のための強力なツールとして急速に登場し、新規治療法を生み出す可能性を秘めている。
【0081】
In vitro合成siRNA分子は、RNAiを活性化するために細胞に導入することができる。内在性dsRNAと同様に、外因性siRNA二本鎖を細胞に導入すると、siRNA二本鎖の2つの鎖の1つ(すなわち、アンチセンス鎖)に相補的なRNA配列のゲノムを介した検索を容易にする多ユニット複合体であるRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成することができる。このプロセス中、siRNAのセンス鎖(またはパッセンジャー鎖)は複合体から失われ、siRNAのアンチセンス鎖(またはガイド鎖)はその相補的RNAと一致する。特に、RISC複合体を含むsiRNAの標的は、完全な配列相補性を示すmRNAである。次に、siRNA媒介遺伝子サイレンシングが起こり、標的を切断し、放出し、分解する。
【0082】
標的mRNAに相同なセンス鎖および標的mRNAに相補的なアンチセンス鎖からなるsiRNA二本鎖は、一本鎖(ss)-siRNA(例えば、アンチセンス鎖RNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド)の使用と比較して、標的RNA破壊の効率の面ではるかに有利である。多くの場合、対応する二本鎖の効果的な遺伝子サイレンシング効力を達成するためには、より高い濃度のss-siRNAが要求される。
【0083】
前述の分子のいずれかは、AAVベクターまたはベクターゲノムによってコードされ得る。
SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖の設計と配列
siRNAを設計するためのいくつかのガイドラインが当該分野で提案されている。これらのガイドラインは、一般に、サイレンシングされる遺伝子中の領域を標的とする19ヌクレオチド二本鎖領域、対称2-3ヌクレオチド3’オーバーハング、5-リン酸および3-ヒドロキシル基の生成を推奨している。siRNA配列選択を支配し得る他の規則には、以下に限定されないがこれらが含まれる。(i)アンチセンス鎖の5’末端のA/U、(ii)センス鎖の5’末端のG/C、(iii)アンチセンス鎖の3分の1における5’末端の少なくとも5個のA/U残基、および(iv)長さが9ヌクレオチドを超えるGCストレッチが存在しないこと。このような考察によれば、標的遺伝子の特定の配列と合わせて、哺乳類の標的遺伝子発現を抑制するために必須である、非常に有効なsiRNA分子を容易に設計することができる。
【0084】
本発明によれば、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA分子(例えば、siRNA二本鎖またはコードされたdsRNA)が設計される。このようなsiRNA分子は、SOD1遺伝子発現およびタンパク質産生を特異的に抑制することができる。いくつかの態様において、siRNA分子は、細胞、すなわちALS疾患を有する患者において同定された突然変異SOD1転写物(例えば、表1の突然変異)におけるSOD1遺伝子変異体を選択的に「ノックアウトする」ために設計および使用される。いくつかの態様において、siRNA分子は、細胞中のSOD1遺伝子変異体を選択的に「ノックダウン」するように設計され、使用される。他の態様では、siRNA分子は、SOD1遺伝子の任意の特定の突然変異とは無関係に、SOD1遺伝子の野生型および突然変異対立遺伝子の両方を阻害または抑制することができる。
【0085】
一実施形態では、本発明のsiRNA分子は、センス鎖および相補的なアンチセンス鎖を含み、ここで両方の鎖がハイブリダイズして二本鎖構造を形成する。アンチセンス鎖は、標的特異的RNAiを誘導するためにSOD1のmRNA配列に対して十分な相補性を有する。すなわち、siRNA分子は、RNAiの機構またはプロセスによって標的mRNAの破壊を引き起こすのに十分な配列を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖および標的mRNA配列は100%相補的である。アンチセンス鎖は、標的mRNA配列の任意の部分に相補的であり得る。
他の実施形態では、アンチセンス鎖および標的mRNA配列は、少なくとも1つのミスマッチを含む。非限定的な例として、アンチセンス鎖および標的mRNA配列は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85% 、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%または少なくとも20~30% 20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~80%、20~90%、20~95%、20~99%、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%、30~95%、30~99%、40~50%、40~60%、40~70%、40~80%、40~90%、40~95%、40~99%、50~60%、50~70%、50~80%、50~90%、50~95%、50~99%、60~70% 60~80%、60~90%、60~95%、60~99%、70~80%、70~90%、70~95%、70~99%、80~90%、80~95%、80~99%、90~95%、90~99%または95~99%相補的である。
【0087】
本発明によれば、siRNA分子は、約10~50またはそれ以上のヌクレオチド、すなわち各鎖が10~50ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含む長さを有する。好ましくは、siRNA分子は、約15~30、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドの長さを有し、各鎖は、標的領域に対して十分に相補的である。一実施形態では、siRNA分子は、約19~25、19~24または19~21ヌクレオチドの長さを有する。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明のsiRNA分子は、約19ヌクレオチド~約25ヌクレオチドおよび3’末端に2つのオーバーハングヌクレオチドを含む合成RNA二本鎖であり得る。いくつかの態様では、siRNA分子は未修飾RNA分子であってよい。他の態様では、siRNA分子は、塩基修飾、糖修飾、または骨格修飾などの少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むことができる。
【0089】
他の実施形態では、本発明のsiRNA分子は、プラスミドベクター、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター)、ゲノムまたは細胞への投与のための他の核酸発現ベクターでコードされ得る。
【0090】
DNA発現プラスミドを使用して、本発明のsiRNA二本鎖またはdsRNAを細胞中で安定に発現させ、標的遺伝子の長期阻害を達成することができる。ひとつの態様では、siRNA二本鎖のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、典型的には短いスペーサー配列によって連結され、短いヘアピンRNA(shRNA)と呼ばれるステム-ループ構造の発現を導く。ヘアピンはダイサー(Dicer)によって認識、切断され、成熟siRNA分子を生成する。
【0091】
本発明によれば、SOD1 mRNAを標的とするsiRNA分子をコードする核酸を含むAAVベクターが産生され、そのAAVベクター血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ8およびAAV-DJ、およびそれらの変異体であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明のsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、標的mRNA(すなわち、SOD1)を抑制する(または分解する)。したがって、siRNA二本鎖またはコードされたdsRNAを使用して、細胞、例えば運動ニューロンにおけるSOD1遺伝子発現を実質的に阻害することができる。いくつかの態様では、SOD1遺伝子発現の阻害は、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90% 95%および100%、または少なくとも20~30%、20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~80%、20~90%、20~95%、20 100%、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%、30~95%、30~100%、40~50%、40~60%、40~70%、40~80%、40~90%、40~95%、40~100%、50~60%、50~70%、50~80%、50~90%、50~95%、50~100%、60~70%、60~80%、60~90%、60~95%、60~100%、70~80%、70~90%、70~95%、70~100%、80~90%、80~95%、80~100%、90~95%、90~100%または95~100%である。したがって、標的遺伝子のタンパク質産物は、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%および100%、または少なくとも20~30%、20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~80%、20~90%、20~95%、20~100%、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%、30~95%、30~100%、40~50%、40~60% 40~70%、40~80%、40~90%、40~95%、40~100%、50~60%、50~70%、50~80%、50~90%、50~95%、50~100%、60~70%、60~80%、60~90%、60~95%、60~100%、70~80%、70~90%、70~95%、70~100%、80~90%、80~95%、80~100%、90~95%、90~100%または95~100%で阻害される。SOD1遺伝子は、野生型遺伝子または少なくとも1つの変異を有する変異型SOD1遺伝子のどちらであってもよい。したがって、タンパク質は、野生型タンパク質または少なくとも1つの変異を有する変異ポリペプチドのいずれかである。
【0093】
本発明によれば、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAを設計し、培養細胞におけるSOD1 mRNAレベルを低下させる能力について試験した。このようなsiRNA二本鎖には、表3に列挙されたものが含まれる。非限定的な例として、siRNA二本鎖は、siRNA二本鎖ID:D-2757、D-2806、D-2860、D-2861、D-2875、D-2871、D-2758、D-2759、D-2866、D-2870、D-2823及びD-2858であってよい。
【0094】
一実施形態では、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAの3’ステムアームは、ガイド鎖の3’末端の下流に11ヌクレオチドを有し、5’末端ステムのパッセンジャー鎖の5’末端の上流にある13ヌクレオチドのうちの11ヌクレオチドと相補性を有する。
【0095】
一実施形態では、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、調節ポリヌクレオチドの3’末端アームの3’末端の6ヌクレオチド下流にあるシステインを有し得る。
【0096】
一実施形態では、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、ガイド鎖のmiRNAシードマッチを含む。別の実施形態では、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、パッセンジャー鎖のmiRNAシードマッチを含む。さらに別の実施形態において、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、ガイドまたはパッセンジャー鎖のシードマッチを含まない。
【0097】
一実施形態では、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、ガイド鎖について、有意な全長のオフターゲットをほとんど有さない。別の実施形態では、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、パッセンジャー鎖について、有意な全長のオフターゲットをほとんど有さない。ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、パッセンジャー鎖について、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%未満、1~5%、2~6%、3~7%、4~8%、5~9%、5~10%、6~10%の全長オフターゲットを有する。さらに別の実施形態では、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、ガイド鎖またはパッセンジャー鎖について、有意な全長のオフターゲットをほとんど有さない。ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、ガイド鎖またはパッセンジャー鎖について、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%未満、1~5%、2~6%、3~7%、4~8%、5~9%、5~10%、6~10%の全長オフターゲットを有する。
【0098】
一実施形態では、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAはin vitroで高い活性を有する。別の実施形態では、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、in vitroで低活性を有し得る。さらに別の実施形態において、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはdsRNAは、in vitroで高いガイド鎖活性および低いパッセンジャー鎖活性を有し得る。
【0099】
一実施形態では、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、in vitroで高いガイド鎖活性および低いパッセンジャー鎖活性を有する。ガイド鎖による標的ノックダウン(KD)は、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.5%または100%であり得る。ガイド鎖による標的ノックダウンは、60-65%、60-70%、60-75%、60-80%、60-85%、60-90%、60-95%、60-99% 、60-99.5%、60-100%、65-70%、65-75%、65-80%、65-85%、65-90%、65-95%、65-99%、65-99.5%、65-100%、70-75%、70-80%、70-85%、70-90%、70-95%、70-99%、70-99.5%、70-100%、75-80% 、75-85%、75-90%、75-95%、75-99%、75-99.5%、75-100%、80-85%、80-90%、80-95%、80-99%、80-99.5%、80-100%、85-90%、85-95%、85-99%、85-99.5%、85-100%、90-95%、90-99%、90-99.5% 、90-100%、95-99%、95-99.5%、95-100%、99-99.5%、99-100%、または99.5-100%であり得る。非限定的な例として、ガイド鎖による標的ノックダウン(KD)は70%より大きい。
【0100】
一実施形態では、最も近いオフターゲットについてのパッセンジャー鎖のIC50は、ターゲットについてのガイド鎖のIC50を100倍したものより大きい。非限定的な例として、最も近いオフターゲットについてのパッセンジャー鎖のIC50が、ターゲットについてのガイド鎖のIC50を100倍したものを超える場合、ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAは、in vitroで高いガイド鎖活性および低いパッセンジャー鎖活性を有すると言われる。
【0101】
一実施形態では、ガイド鎖の5’プロセシングは、in vitroまたはin vivoにおいて、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%の割合で、5’末端での正確な開始(n)を有する。非限定的な例として、ガイド鎖の5’プロセシングは正確であり、in vitroにおいて、少なくとも99%の割合で5’末端での正確な開始(n)を有する。非限定的な例として、ガイド鎖の5’プロセシングは正確であり、in vivoにおいて、少なくとも99%の割合で、5’末端における正確な開始(n)を有する。
【0102】
一実施形態において、in vitroまたはin vivoにおいて、発現されるガイド鎖対パッセンジャー鎖(G:P)比は、1:99、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5または99:1である。非限定的な例として、in vitroにおいて、ガイド鎖とパッセンジャー鎖の比は、80:20である。非限定的な例として、in vivoにおいて、ガイド鎖とパッセンジャー鎖の比は、80:20である。
【0103】
一実施形態では、dsRNAをコードするベクターゲノムの完全性は、構造体の完全長の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または99%である。
【0104】
siRNA修飾
いくつかの実施形態では、本発明のsiRNA分子は、前駆体またはDNAとして送達されない場合、in vivoにおけるsiRNAの安定性の増加などを含むがこれに限定されないRNA分子のいくつかの特徴を調節するために、化学的に修飾することができる。化学的に修飾されたsiRNA分子は、ヒトへの治療用途に使用することができ、siRNA分子のRNAi活性を損なうことなく改善される。非限定的な例として、siRNA分子は、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方の3’末端および5’末端の両方で修飾されている。
【0105】
いくつかの態様において、本発明のsiRNA二本鎖は、糖修飾ヌクレオチド、核酸塩基修飾および/または骨格修飾を含むがこれらに限定されない、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、siRNA分子は、組み合わされた修飾、例えば、組み合わされた核酸塩基および骨格修飾を含み得る。
【0106】
一実施形態では、修飾ヌクレオチドは、糖-修飾ヌクレオチドであり得る。糖修飾ヌクレオチドは、2’-フルオロ、2’-アミノおよび2’-チオ修飾リボヌクレオチド、例えば、2’-フルオロ修飾リボヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。修飾されたヌクレオチドは、糖部分上で修飾されてよく、ならびにリボシルではない糖または類似体を有するヌクレオチドもまた修飾されてもよい。例えば、糖部分は、マンノース、アラビノース、グルコピラノース、ガラクトピラノース、4’-チオリボース、および他の糖、複素環、または炭素環であってよく、またはそれらに基づくものであってよい。
【0107】
一実施形態では、修飾ヌクレオチドは核酸塩基修飾ヌクレオチドであってよい。
一実施形態では、修飾ヌクレオチドは、骨格修飾ヌクレオチドであってよい。いくつかの実施形態では、本発明のsiRNA二本鎖は、主鎖上に他の修飾をさらに含み得る。本明細書で使用される通常の「骨格」は、DNA分子またはRNA分子中の交互に繰り返される糖-リン酸配列を指す。デオキシリボース/リボース糖は、「ホスホジエステル」結合/リンカー(PO結合)としても知られているエステル結合で、3’-ヒドロキシル基および5’-ヒドロキシル基の両方においてリン酸基に結合する。PO骨格は、「ホスホロチオエート骨格(PS結合)」として修飾することができる。いくつかの場合において、天然のホスホジエステル結合はアミド結合によって置換され得るが、2つの糖単位間の4つの原子は維持される。そのようなアミド修飾は、オリゴヌクレオチドの固相合成を促進し、siRNA相補体で形成される二本鎖の熱力学的安定性を増加させることができる。例えば、Mesmaeker et al.,Pure&Appl.Chem.,1997,3,437-440;を参照せよ。その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
修飾塩基は、1つ以上の原子または基の置換または付加によって修飾された、例えばアデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、キサンチン、イノシンおよびクエオシンなどのヌクレオチド塩基を指す。核酸塩基部分の修飾のいくつかの例には、アルキル化、ハロゲン化、チオール化、アミノ化、アミド化またはアセチル化塩基が個々にまたは組み合わせて含まれるが、これらに限定されない。より具体的には、5-プロピニルウリジン、5-プロピニルシチジン、6-メチルアデニン、6-メチルグアニン、N、N’-ジメチルアデニン、2-プロピルアデニン、2-プロピルグアニン、2-アミノアデニン、1-メチルイノシン、3-メチルウリジン、5-メチルシチジン、5-メチルウリジン、および5位に修飾を有する他のヌクレオチド、5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ハロシチジン、5-ハロウリジン、4-アセチルシチジン、1-メチルアデノシン、2-メチルアデノシン、3-メチルシチジン、6-メチルウリジン、2-メチルグアノシン、7-メチルグアノシン、2,2-ジメチルグアノシン、5-メチルアミノエチルウリジン、5-メチルオキシウリジン、例えば7-デアザ-アデノシンのようなデアザヌクレオチド、6-アゾウリジン、6-アゾシチジン、6-アゾチミジン、5-メチル-2-チオウリジン、例えば2-チオウリジンおよび4-チオウリジンおよび2-チオシチジンのような他のチオ塩基、ジヒドロウリジン、シュードウリジン、クオシン、アルゲオシン、ナフチルおよび置換ナフチル基、任意のO-およびN-アルキル化プリンおよびピリミジン、例えばN6-メチルアデノシン、5-メチルカルボニルメチルウリジン、ウリジン5-オキシ酢酸、ピリジン-4-オン、ピリジン-2-オン、フェニルおよびアミノフェノールまたは2,4,6-トリメトキシベンゼンなどの修飾フェニル基、G-クランプヌクレオチドとして作用する修飾シトシン、8-置換アデニンおよびグアニン、5-置換ウラシルおよびチミン、アザピリミジン、カルボキシヒドロキシアルキルヌクレオチド、カルボキシアルキルアミノアルキルヌクレオチド、およびアルキルカルボニルアルキル化ヌクレオチドが挙げられる。
【0109】
一実施形態では、修飾ヌクレオチドは、センス鎖上にのみ存在し得る。
別の実施形態において、修飾ヌクレオチドは、アンチセンス鎖上にのみ存在し得る。
いくつかの実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方に存在し得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、化学的に修飾されたヌクレオチドは、SOD1 mRNA配列のような標的mRNA配列と対合するアンチセンス鎖の能力に影響を与えない。
ベクター
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるsiRNA分子は、プラスミドまたはウイルスベクターのようなベクターによってコードされ得る。一実施形態では、siRNA分子は、ウイルスベクターによってコードされる。ウイルスベクターは、ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどであり得るが、これらに限定されない。いくつかの特定の実施形態では、ウイルスベクターはAAVベクターである。
【0111】
レトロウイルスベクター
いくつかの実施形態において、SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖は、レトロウイルスベクターによってコードされ得る(例えば、米国特許第5,399,346号;第5,124,263号;第4,650,764号および第4,980,289号明細書を参照;これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0112】
アデノウイルスベクター
アデノウイルスは、in vivoで様々な細胞タイプに核酸を効率的に送達するように改変することができ、遺伝子を神経細胞に標的化することを含む遺伝子治療プロトコルに広く使用されている真核生物DNAウイルスである。種々の複製欠損アデノウイルスおよび最小アデノウイルスベクターが核酸治療について記載されている(例えば、PCT特許公開番号WO199426914号、WO199502697号、WO199428152号、WO199412649号、WO199502697号およびWO199622378号参照;これらの各々の内容は、その全体が参照により組み込まれる)。そのようなアデノウイルスベクターはまた、本発明のsiRNA分子を細胞に送達するために使用され得る。
【0113】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、依存性パルボウイルス(他のパルボウイルスのように)であり、約5000ヌクレオチドの長さのゲノムを有する一本鎖非エンベロープDNAウイルスであるとともに、複製を担うタンパク質(Rep)とキャプシド(Cap)の構造タンパク質とをコードする2つのオープンリーディングフレームを含む。オープンリーディングフレームには、ウイルスゲノムの複製起点として機能する2つの逆方向末端反復(ITR)配列が隣接している。さらに、AAVゲノムはパッケージング配列を含み、ウイルスゲノムのAAVキャプシドへのパッケージングを可能にする。AAVベクターは、感染細胞において生産的感染を受けるために、コヘルパー(例えばアデノウイルス)を必要とする。そのようなヘルパー機能がない場合、AAVビリオンは本質的に宿主細胞に入り、細胞のゲノムに組み込まれる。
【0114】
AAVベクターはいくつかの独特な特徴のために、そのsiRNA投与について研究されている。特徴の非限定的な例には、(i)分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染する能力;(ii)ヒト細胞を含む感染性の広範な宿主範囲;(iii)いずれの疾患とも関連しておらず、感染細胞において複製することが示されていない野生型AAV;(iv)ベクターに対する細胞媒介免疫応答の欠如および(v)長期発現の可能性を減少させる、宿主染色体における非組み込み性の性質が含まれる。さらに、AAVベクターによる感染は、細胞遺伝子発現のパターンの変化に最小の影響しか及ぼさない(Stilwell および Samulski et al.,Biotechniques,2003,34,148)。
【0115】
典型的には、siRNA送達のためのAAVベクターは、それらがウイルスゲノム内の機能的RepおよびCapタンパク質をコードする配列を欠いているため、複製欠損である組換えウイルスベクターであり得る。場合によっては、欠損したAAVベクターは、大部分または全てのコード配列を欠いている可能性があり、本質的に1つまたは2つのAAV ITR配列およびパッケージング配列のみを含有する。
【0116】
AAVベクターはまた、自己相補的AAVベクター(scAAV)からなっていてよい。scAAVベクターは、双方のDNA鎖を含み、それらが共にアニーリングし、二本鎖DNAを形成する。第二鎖合成をスキップすることにより、scAAVは細胞内での迅速な発現を可能にする。
【0117】
一実施形態では、本発明で使用されるAAVベクターはscAAVである。
一実施形態では、本発明で使用されるAAVベクターはssAAVである。
AAVベクターを産生および/または改変する方法は、偽型AAVベクターのような当技術分野で開示されている(PCT特許公開番号WO200028004号;WO200123001号;WO2004112727号;WO2005005610号およびWO2005072364号、これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0118】
siRNA分子の核酸配列を含むAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ8およびAAV-DJを含むがこれらに限定されないAAVの様々な血清型から調製または誘導することができる。ある場合には、異なる血清型のAAVを一緒にまたは他のタイプのウイルスと混合して、キメラAAVベクターを産生することができる。
【0119】
一実施形態では、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むAAVベクターを哺乳動物細胞に導入することができる。
AAVベクターは、送達効率を高めるために修飾することができる。本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むそのような改変AAVベクターは、効率的にパッケージングされ、標的細胞を高い頻度で最小限の毒性でうまく感染させるために使用することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むAAVベクターは、ヒト血清型AAVベクターであり得る。そのようなヒトAAVベクターは、任意の既知の血清型、例えば血清型AAV1-AAV11のいずれか1つに由来し得る。非限定的な例として、AAVベクターは、AAV1由来のキャプシドにAAV1由来のゲノムを含むベクター、AAV2由来ゲノム中にAAV2由来ゲノムを含むベクター、AAV4由来のキャプシドにAAV4由来のゲノムを含むベクター、AAV6由来のキャプシドにAAV6由来のゲノムを含むベクター、またはAAV9由来のキャプシドにAAV9由来のゲノムを含むベクターであってよい。
【0121】
他の実施形態では、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むAAVベクターは、少なくとも2つの異なるAAV血清型に由来する配列および/または成分を含む偽型(pseudotyped)ハイブリッドまたはキメラAAVベクターであり得る。偽型AAVベクターは、1つのAAV血清型に由来するAAVゲノムおよび異なるAAV血清型に少なくとも部分的に由来するキャプシドタンパク質を含むベクターであり得る。非限定的な例として、このような偽型AAVベクターは、AAV1由来のキャプシドにAAV2由来のゲノムを含むベクター、またはAAV2由来のゲノムをAAV6由来のキャプシドに含むベクター、またはAAV4由来のキャプシドにAAV2由来のゲノムを含むベクター、またはAAV9由来のキャプシドにAAV2由来のゲノムを含むベクターであってよい。同様の様式で、本発明は任意のハイブリッドまたはキメラAAVベクターを意図する。
【0122】
他の実施形態では、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むAAVベクターを使用して、siRNA分子を中枢神経系に送達することができる(例えば、米国特許第6,180,613号;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0123】
いくつかの態様において、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むAAVベクターは、非ウイルス由来のペプチドを含む修飾されたキャプシドをさらに含み得る。他の態様では、AAVベクターは、コードされたsiRNA二本鎖の脳および脊髄への送達を促進するためのCNS特異的キメラキャプシドを含み得る。例えば、CNS指向性を示すAAV変異体由来のキャップヌクレオチド配列の整列を、可変領域(VR)配列および構造を同定するために構築することができる。
【0124】
一実施形態では、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むAAVベクターは、ポリシストロン分子であるsiRNA分子をコードし得る。siRNA分子は、siRNA分子の領域間に1つ以上のリンカーをさらに含んでいてもよい。
【0125】
一実施形態では、コードされたsiRNA分子は、CMV、U6、CBAまたはSV40イントロンを有するCBAプロモーターを含むがこれらに限定されない発現ベクター中のプロモーターの下流に位置し得る。さらに、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のポリアデニル化配列の上流に位置し得る。非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクターにおいて、プロモーターの下流および/またはポリアデニル化配列の上流の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または30超のヌクレオチド内に位置し得る。別の非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクターにおいて、プロモーターの下流および/またはポリアデニル化配列の上流の1~5、1~10、1~15、1~20、1~25、1~30、5~10、5~15、5~20、5~25、5~30、10~15、10~20、10~25、10~30、15~20、15~25、15~30、20~25、20~30または25~30のヌクレオチド内に位置し得る。非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクターにおいて、プロモーターの下流および/またはポリアデニル化配列の上流の最初の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、または25%超のヌクレオチド内に位置し得る。別の非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクターにおいて、プロモーターの上流および/またはポリアデニル化配列の上流の最初の1~5%、1~10%、1~15%、1~20%、1~25%、5~10%、5~15%、5~20%、5~25%、10~15%、10~20%、10~25%、15~20%、15~25%、または20~25%内に位置し得る。
【0126】
一実施形態では、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のポリアデニル化配列の上流に位置し得る。さらに、コードされたsiRNA分子は、発現ベクターにおいて、CMV、U6、CBAまたはSV40イントロンを有するCBAプロモーターを含むがこれに限定されないプロモーターの下流に位置し得る。非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクターにおいて、プロモーターの下流および/またはポリアデニル化配列の上流の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または30超のヌクレオチド内に位置し得る。別の非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクターにおいて、プロモーターの下流および/またはポリアデニル化配列の上流の1~5、1~10、1~15、1~20、1~25、1~30、5~10、5~15、5~20、5~25、5~30、10~15、10~20、10~25、10~30、15~20、15~25、15~30、20~25、20~30または25~30ヌクレオチド内に位置し得る。非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクターにおいて、プロモーター下流および/又はポリアデニル化配列の上流の最初の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、または25%超のヌクレオチド内に位置し得る。別の非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクターにおいて、プロモーターの下流および/またはポリアデニル化配列の上流の最初の1~5%、1~10%、1~15%、1~20%、1~25%、5~10%、5~15%、5~20%、5~25%、10~15%、10~20%、10~25%、15~20%、15~25%、または20~25%内に位置し得る。
【0127】
一実施形態では、コードされたsiRNA分子は、scAAVに位置し得る。
一実施形態では、コードされたsiRNA分子は、ssAAVに位置し得る。
一実施形態では、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のフリップITRの5’末端近くに位置し得る。別の実施形態では、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のフリップITRの3’末端近くに位置し得る。さらに別の実施形態では、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のフロップITRの5’末端近くに位置し得る。さらに別の実施形態では、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のフロップITRの3’末端近くに位置し得る。一実施形態では、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のフリップITRの5’末端とフロップITRの3’末端との間に位置し得る。一実施形態では、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター内の、フリップITRの3’末端およびフリップITRの5’末端の間(例えば、フリップITRの5’末端とフロップITRの3’末端またはフロップITRの3’末端とフリップITRの5’末端の間の途中)に位置し得る。非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のITRの5’または3’末端(例えば、フリップまたはフロップITR)から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30内または30ヌクレオチドを超える下流に位置し得る。非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のITRの5’または3’末端(例えば、フリップまたはフロップITR)から、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30内、または30ヌクレオチドを超える上流に位置し得る。別の非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のITRの5’または3’末端(例えば、フリップまたはフロップITR)から1~5、1~10、1~15、1~20、1~25、1~30、5~10、5~15、5~20、5~25、5~25、5~25、5~30、10~15、10~20、10~25、10~30、15~20、15~25、15~30、20~25、20~30または25~30ヌクレオチド内の下流に位置し得る。別の非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のITRの5’または3’末端(例えば、フリップまたはフロップITR)から1~5、1~10、1~15、1~20、1~25、1~30、5~10、5~15、5~20、5~25、5~25、5~25、5~30、10~15、10~20、10~25、10~30、15~20、15~25、15~30、20~25、20~30または25~30上流に位置し得る。非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のITRの5’または3’末端(例えば、フリップまたはフロップITR)から最初の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%内または25%のヌクレオチドを超える上流に位置し得る。別の非限定的な例として、コードされたsiRNA分子は、発現ベクター中のITRの5’または3’末端(例えば、フリップまたはフロップITR)から最初の1~5%、1~10%、1~15%、1~20%、1~25%、5~10%、5~15%、5%~20%、5%~25%、10%~15%、10%~20%、10%~25%、15%~20%、15~25%、または20~25%下流に位置し得る。
【0128】
発現ベクター
一実施形態では、発現ベクター(例えば、AAVベクター)は、本明細書に記載の発現ベクターの少なくとも1つを含む調節性ポリヌクレオチドの少なくとも1つを含み得る。
【0129】
一実施形態では、発現ベクターは、ITRからITRへ、列挙される5’から3’へ、ITR、プロモーター、イントロン、調節ポリヌクレオチド、ポリA配列およびITRを含み得る。
【0130】
ゲノムサイズ
一実施形態では、本明細書に記載の調節性ポリヌクレオチドをコードする核酸配列を含むベクターゲノムは、一本鎖または二本鎖ベクターゲノムであり得る。ベクターゲノムのサイズは、小、中、大または最大であり得る。さらに、ベクターゲノムは、プロモーターおよびポリAテールを含み得る。
【0131】
一実施形態では、本明細書に記載の調節性ポリヌクレオチドをコードする核酸配列を含むベクターゲノムは、小さな一本鎖ベクターゲノムであり得る。小さな一本鎖ベクターゲノムは、約2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4および3.5kbのサイズなどの、2.7から3.5kbのサイズであり得る。非限定的な例として、小さな一本鎖ベクターゲノムは、3.2kbのサイズであり得る。さらに、ベクターゲノムは、プロモーターおよびポリAテールを含み得る。
【0132】
一実施形態では、本明細書に記載の調節性ポリヌクレオチドをコードする核酸配列を含むベクターゲノムは、小さな二本鎖ベクターゲノムであり得る。小さな二本鎖ベクターゲノムは、約1.3、1.4、1.5、1.6、1.7kbのサイズなどの、1.3から1.7kbのサイズであり得る。非限定的な例として、小さな二本鎖ベクターゲノムは、1.6kbのサイズであり得る。さらに、ベクターゲノムは、プロモーターおよびポリAテールを含み得る。
【0133】
一実施形態では、本明細書に記載の調節性ポリヌクレオチドをコードする核酸配列、例えばsiRNAまたはdsRNAを含むベクターゲノムは、中程度の一本鎖ベクターゲノムであってもよい。中程度の一本鎖ベクターゲノムは、約3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2および4.3kbのサイズなどの、3.6から4.3kbのサイズであり得る。非限定的な例として、中程度の一本鎖ベクターゲノムは、4.0kbのサイズであり得る。さらに、ベクターゲノムは、プロモーターおよびポリAテールを含み得る。
【0134】
一実施形態では、本明細書に記載の調節性ポリヌクレオチドをコードする核酸配列を含むベクターゲノムは、中程度の二本鎖ベクターゲノムであり得る。中程度の二本鎖ベクターゲノムは、約1.8、1.9、2.0および2.1kbのサイズなどの、1.8から2.1kbのサイズであり得る。非限定的な例として、中程度の二本鎖ベクターゲノムは、2.0kbのサイズであり得る。さらに、ベクターゲノムは、プロモーターおよびポリAテールを含み得る。
【0135】
一実施形態では、本明細書に記載の調節性ポリヌクレオチドをコードする核酸配列を含むベクターゲノムは、大きな一本鎖ベクターゲノムであり得る。大きな一本鎖ベクターゲノムは、約4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9および6.0kbのサイズなどの、4.4から6.0kbのサイズであり得る。非限定的な例として、大きな一本鎖ベクターゲノムは、4.7kbのサイズであり得る。別の非限定的な例として、大きな一本鎖ベクターゲノムは、4.8kbのサイズであり得る。さらに別の非限定的な例として、大きな一本鎖ベクターゲノムは、サイズが6.0kbであってもよい。さらに、ベクターゲノムは、プロモーターおよびポリAテールを含み得る。
【0136】
一実施形態では、本明細書に記載の調節性ポリヌクレオチドをコードする核酸配列を含むベクターゲノムは、大きな二本鎖ベクターゲノムであり得る。大きな二本鎖ベクターゲノムは、約2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9および3.0kbのサイズなどの、2.2から3.0kbのサイズであり得る。非限定的な例として、大きな二本鎖ベクターゲノムは、2.4kbのサイズであり得る。さらに、ベクターゲノムは、プロモーターおよびポリAテールを含み得る。
【0137】
プロモーター
当業者は、標的細胞が、種特異的、誘導性、組織特異的または細胞周期特異的なプロモーターを含むがこれらに限定されるものではない特異的なプロモーターを必要とすることを認識するであろう(Parr et al.,Nat Med.3:1145-9(1997);この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0138】
一実施形態では、プロモーターは、調節ポリヌクレオチドの発現を効率的に駆動すると考えられるプロモーターである。
一実施形態では、プロモーターは、標的とされる細胞の向性を有するプロモーターである。
【0139】
一実施形態では、プロモーターは、限定されるものではないが、神経系組織などの標的組織中の一定期間、ペイロード、例えば調節ポリヌクレオチド、例えばsiRNAまたはdsRNAの発現を提供する弱いプロモーターである。発現は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、15時間後、16時間後、17時間後、18時間後、19時間後、20時間後、21時間後、22時間後、23時間後、1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、10日、11日、12日、13日、2週間、15日、16日、17日、18日、19日、20日、3週間、22日、23日、24日、27日、28日、29日、30日、31日、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、11ヶ月、1年、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、2年、3年、4年、6年、7年、8年、9年、10年、または10年以上の期間、持続する。発現は、1~5時間、1~12時間、1~2日、1~5日、1~2週間、1~3週間、1~4週間、1~2ヶ月、1~4ヶ月、1~6ヶ月、3~6ヶ月、3~9ヶ月、4~8ヶ月、6~12ヶ月、1~2年、1~5年、2~5年、3~6年、3~8、4~8年、または5~10年の期間、持続する。非限定的な一例として、プロモーターは、神経組織におけるペイロードの持続的発現のための弱いプロモーターである。
【0140】
一実施形態では、プロモーターは、1kb未満のプロモーターであってよい。プロモーターは、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、あるいは800以上の長さであってよい。プロモーターは、200~300,200~400,200~500,200~600,200~700,200~800,300~400,300~500,300~600,300~700,300~800、400~500,400~600,400~700,400~800,500~600,500~700,600~800,600~700,600~800,700~800の長さであってよい。
【0141】
一実施形態では、プロモーターは、CMVおよびCBAを含むがこれらに限定されない2つあるいはそれ以上の構成要素の組み合わせであってよい。各構成要素は、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800または800以上の長さであってよい。各構成要素は、200~300、200~400、200~500、200~600、200~700、200~800、300~400、300~500、300~600、300~700、300~800、400~500、400~600、400~700、400~800、500~600、500~700、500~800、600~700、600~800、700~800の長さを有することができる。非限定的な一例として、プロモーターは、382ヌクレオチドのCMVエンハンサー配列と260ヌクレオチドのCBAプロモーター配列との組み合わせである。
【0142】
一実施形態において、ベクターゲノムは、標的特異性および発現を増強するための少なくとも1つのエレメントを含む。(例えば、Powell et al.Viral Expression Cassette Elements to Enhance Transgene Target Specificity and Expression in Gene Therapy,2015を参照せよ;この内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)参照導入遺伝子標的特異性および発現を増強するエレメントの非限定的な例には、プロモーター、内在性miRNA、転写後調節エレメント(PRE)、ポリアデニル化(PolyA)シグナル配列および上流エンハンサー(USE)、CMVエンハンサーおよびイントロンがある。
【0143】
一実施形態において、ベクターゲノムは、プロモーターのような、標的特異性および発現を増強するための少なくとも1つのエレメントを含む。(例えば、Powell et
al.Viral Expression Cassette Elements to Enhance Transgene Target Specificity and Expression in Gene Therapy,2015を参照せよ;この内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0144】
ほとんどの組織において発現を促進するプロモーターは、ヒト伸長因子1α-サブユニット(EF1α)、前初期サイトメガロウイルス(CMV)、ニワトリβ-アクチン(CBA)およびその誘導体CAG、βグルクロニダーゼ(GUSB)、またはユビキチンC(UBC)を含むがこれに限定されない。組織特異的発現要素を使用して、発現をある細胞型に制限することができ、たとえば、ニューロン、星状細胞、または希突起膠細胞に制限するために使用することができる神経系プロモーターを含むがこれに限定されない。ニューロンに対する組織特異的発現エレメントの非限定的な例には、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来成長因子B鎖(PDGF-β)、シナプシン(Syn)、メチル-CpG結合タンパク質2(MeCP2)、CaMKII、mGluR2、NFL、NFH、nβ2、PPE、EnkおよびEAAT2プロモーターが挙げられる。星状細胞に対する組織特異的発現エレメントの非限定的な例には、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)およびEAAT2プロモーターが挙げられる。希突起膠細胞に対する組織特異的発現エレメントの非限定的な例には、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)プロモーターが挙げられる。
【0145】
一実施形態では、ベクターゲノムはユビキタスプロモーターを含む。ユビキタスプロモーターの非限定的な例には、CMV、CBA(誘導体CAG、CBhなどを含む)、EF-1α、PGK、UBC、GUSB(hGBp)、およびUCOE(HNRPA2B1-CBX3のプロモーター)が挙げられる。Yuら(Molecular Pain 2011,7:63;この内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、レンチウイルスベクターを用いて、ラットDRG細胞および一次DRG細胞におけるCAG、EFIα、PGKおよびUBCプロモーター下でのeGFPの発現を評価し、UBCが他の3つのプロモーターよりも弱い発現しか示さず、すべてのプロモーターについて見られたグリア発現がわずか10~12%であったことを見いだした。Soderblomら(E.Neuro 2015;この内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、運動皮質に注入後のAAV8におけるCMVおよびUBCプロモーターによるeGFPの発現、およびCMVプロモーターによるAAV2におけるeGFPの発現を評価した。UBCまたはEFIαプロモーターを含むプラスミドの鼻腔内投与は、CMVプロモーターによる発現よりも長く持続した気道発現を示した(例えば、Gill et al.,Gene Therapy 2001,Vol.8,1539-1546を参照せよ;この内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。Husainら(Gene Therapy 2009;この内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、hGUSBプロモーター、HSV-1LATプロモーター、およびNSEプロモーターを用いてHβH構築物を評価し、HβH構築物がマウスの脳におけるNSEよりも弱い発現を示したことを見いだした。PassiniおよびWolfe(J. Virol.2001,12382-12392;この内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、新生児マウスにおける脳室内注射後のHβHベクターの長期効果を評価し、持続的発現が少なくとも1年間あったことを見いだした。Xuら(Gene Therapy 2001,8,1323-1332;この内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、CMV-lacZ、CMV-luc、EF、GFAP、hENK、nAChR、PPE、PPE + wpre、NSE(0.3kb)、NSE(1.8kb)、およびNSE(1.8kb + wpre)に比較して、NF-LおよびNF-Hプロモーターを使用した場合に、すべての脳領域において発現が低いことを見いだした。Xuらは、プロモーター活性の降順が、NSE(1.8kb)、EF、NSE(0.3kb)、GFAP、CMV、hENK、PPE、NFLおよびNFHであることを見出した。NFLは650ヌクレオチドのプロモーターであり、NFHは920ヌクレオチドのプロモーターであり、いずれも肝臓には存在しないが、NFHは感覚固有受容体ニューロン、脳および脊髄に豊富であり、NFHは心臓に存在する。Scn8aは、DRG、脊髄および脳全体を通して、海馬ニューロンおよび小脳プルキンエ細胞、皮質、視床および視床下部に見られる特に高い発現を有する470ヌクレオチドのプロモーターである(例えば、Drews et al.2007およびRaymond et al.2004を参照せよ;この内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0146】
一実施形態では、ベクターゲノムはUBCプロモーターを含む。UBCプロモーターは、300~350ヌクレオチドのサイズを有し得る。非限定的な一例として、UBCプロモーターは332ヌクレオチドの長さである。
【0147】
一実施形態では、ベクターゲノムはGUSBプロモーターを含む。GUSBプロモーターは、350~400ヌクレオチドのサイズを有し得る。非限定的な例として、GUSBプロモーターは378ヌクレオチドの長さである。非限定的な一例として、構築物は、AAV-プロモーター-CMV/グロビンイントロンhFXN-RBGであってよく、この構築物では、AAVが自己相補的であってよく、AAVがDJ血清型であってよい。
【0148】
一実施形態では、ベクターゲノムはNFLプロモーターを含む。NFLプロモーターは、600~700ヌクレオチドのサイズを有し得る。非限定的な一例として、NFLプロモーターは650ヌクレオチドの長さである。非限定的な一例として、構築物は、AAV-プロモーター-CMV/グロビンイントロンhFXN-RBGであってよく、この構築物では、AAVが自己相補的であってよく、AAVがDJ血清型であってよい。
【0149】
一実施形態では、ベクターゲノムはNFHプロモーターを含む。前記NFHプロモーターは、900~950ヌクレオチドのサイズを有し得る。非限定的な一例として、NFHプロモーターは920ヌクレオチドの長さである。非限定的な一例として、構築物は、AAV-プロモーター-CMV/グロビンイントロンhFXN-RBGであってよく、この構築物では、AAVが自己相補的であってよく、AAVがDJ血清型であってよい。
【0150】
一実施形態では、ベクターゲノムはscn8aプロモーターを含む。scn8aプロモーターは、450~500ヌクレオチドのサイズを有し得る。非限定的な一例として、scn8aプロモーターは470ヌクレオチドの長さである。非限定的な一例として、構築物は、AAV-プロモーター-CMV/グロビンイントロンhFXN-RBGであってよく、この構築物では、AAVが自己相補的であってよく、AAVがDJ血清型であってよい。
【0151】
一実施形態では、ベクターゲノムはFXNプロモーターを含む。
一実施形態では、ベクターゲノムはPGKプロモーターを含む。
一実施形態では、ベクターゲノムはCBAプロモーターを含む。
【0152】
一実施形態では、ベクターゲノムはCMVプロモーターを含む。
一実施形態では、ベクターゲノムは、肝臓または骨格筋プロモーターを含む。肝臓プロモーターの非限定的な例には、hAATおよびTBGが挙げられる。骨格筋プロモーターの非限定的な例には、Desmin、MCKおよびC5-12が挙げられる。
【0153】
一実施形態では、AAVベクターは、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび/または5’UTRイントロンを含む。エンハンサーはCMVエンハンサーであってよいが、これに限定されず;プロモーターはCMV、CBA、UBC、GUSB、NSE、サナプシン、MeCP2、およびGFAPプロモーターであってよいが、これに限定されず;また5’UTR/イントロンは、SV40およびCBA-MVMであってよいが、これらに限定されない。非限定的な例として、組み合わせて使用されるエンハンサー、プロモーターおよび/またはイントロンには以下が挙げられる:(1)CMVエンハンサー、CMVプロモーター、SV40 5’UTRイントロン;(2)CMVエンハンサー、CBAプロモーター、SV40 5’UTRイントロン;(3)CMVエンハンサー、CBAプロモーター、CBA-MVM 5’UTRイントロン;(4)UBCプロモーター;(5)GUSBプロモーター;(6)NSEプロモーター;(7)シノプシンプロモーター;(8)MeCP2プロモーターおよび(9)GFAPプロモーター。
【0154】
一実施形態では、AAVベクターは、操作されたプロモーターを有する。
イントロン
一実施形態では、ベクターゲノムは、イントロンなどの、導入遺伝子標的特異性および発現を増強するための少なくとも1つのエレメントを含む(例えば、Powell et
al.Viral Expression Cassette Elements to Enhance Transgene Target Specificity and Expression in Gene Therapy,2015を参照せよ;この内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。イントロンの非限定的な例には、MVM(67~97bps)、F.IX短縮イントロン1(300bps)、βグロビンSD/免疫グロブリン重鎖スプライスアクセプター(250bps)、アデノウイルススプライスドナー/免疫グロブリンスプライスアクセプター(500bps)、SV40晩期スプライスドナー/スプライスアクセプター(19S/16S)(180bps)、およびハイブリッドアデノウイルススプライスドナー/IgGスプライスアクセプター(230bps)が挙げられる。
【0155】
一実施形態では、イントロンは100~500ヌクレオチドの長さを有し得る。イントロンは、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490または500の長さを有し得る。プロモーターは、80-100、80-120、80-140、80-160、80-180、80-200、80-250、80-300、80-350、80-400、80-450、80-500、200-300、200-400、200-500、300-400、300-500または400-500の長さを有し得る。
【0156】
一実施形態では、AAVベクターゲノムは、CMVまたはU6などのプロモーターを含み得るが、これに限定されない。非限定的な例として、本発明のsiRNA分子の核酸配列を含むAAVのプロモーターは、CMVプロモーターである。別の非限定的な例として、本発明のsiRNA分子の核酸配列を含むAAVのプロモーターは、U6プロモーターである。
【0157】
一実施形態では、AAVベクターはCMVおよびU6プロモーターを含み得る。
一実施形態では、AAVベクターはCBAプロモーターを含み得る。
細胞への導入-合成dsRNA
siRNA分子(例えば、siRNA二本鎖およびdsRNA)の化学的および生物学的安定性を確実にするために、siRNA分子を標的細胞の内部に送達することが重要である。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物起源の細胞、ヒト起源の細胞、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、神経幹細胞、および神経前駆細胞を含み得るが、これらに限定されない。
【0158】
siRNAを含む核酸は、正常な生理学的条件下で糖-リン酸骨格上に正味の負電荷を有する。細胞に入るためには、siRNA分子は細胞膜の脂質二重層と接触しなければならないが、そのヘッドグループもまた負に帯電している。
【0159】
siRNA二本鎖は、siRNAの細胞取り込みを促進するためにパッケージ粒子のように細胞膜を横切ることを可能にする担体と複合化することができる。パッケージ粒子は、リポソーム、ナノ粒子、カチオン性脂質、ポリエチレンイミン誘導体、デンドリマー、カーボンナノチューブ、およびカーボンナノ粒子とデンドリマーとの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。脂質は、カチオン性脂質および/または中性脂質であり得る。siRNA分子とカチオン性キャリアとの間に確立された親油性複合体に加えて、siRNA分子は、コレステロールなどの疎水性部分にコンジュゲートすることができる(例えば、米国特許公開第20110110937号;その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。この送達方法は、siRNA分子のin vitro細胞取り込みおよびin vivo薬理学的特性を改善する可能性を秘めている。本発明のsiRNA分子は、MPG、トランスポータンまたはペネトラチンのような特定のカチオン性細胞浸透性ペプチド(CPP)と共有結合または非共有結合されていてもよい(例えば、米国特許公開第20110086425号;その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0160】
細胞への導入-AAVベクター
本発明のsiRNA分子(例えば、siRNA二本鎖)は、ウイルスベクター(例えば、AAVベクター)などを含むがこれに限定されない様々なアプローチのいずれかを用いて細胞に導入することができる。これらのウイルスベクターは、容易にトランスフェクションすることができない細胞へのsiRNA分子の進入を容易にするように操作され最適化される。また、いくつかの合成ウイルスベクターは、shRNAを細胞ゲノムに組み込み、安定したsiRNA発現および標的遺伝子の長期ノックダウンをもたらす能力を有する。このようにして、ウイルスベクターは特異的投与のための媒体として設計され、そのようなウイルスベクターは野生型ウイルスに見られる有害な複製および/または組み込みの特徴を欠いている。
【0161】
いくつかの実施形態では、本発明のsiRNA分子は、親油性担体と、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAVVベクターとを含む組成物に細胞を接触させることによって、細胞に導入される。他の実施形態では、siRNA分子は、細胞内で転写されるとsiRNA分子を産生することができる核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターで細胞をトランスフェクトするかまたは感染させることによって細胞に導入される。いくつかの実施形態では、siRNA分子は、細胞内で転写されるとsiRNA分子を産生することができる核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターを細胞に注入することによって細胞に導入される。
【0162】
いくつかの実施形態では、トランスフェクションの前に、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターを細胞にトランスフェクトすることができる。
【0163】
他の実施形態では、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターは、エレクトロポレーションによって細胞に送達され得る(例えば、米国特許公開第20050014264号;その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0164】
本明細書に記載のsiRNA分子の核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターを導入するための他の方法は、米国特許公開第20120264807号に記載されているような光化学的インターナリゼーションを含むことができる;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0165】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、本明細書に記載のsiRNA分子をコードする核酸配列を含む少なくとも1つのベクター、例えばAAVベクターを含むことができる。一実施形態では、siRNA分子は、1つの標的部位でSOD1遺伝子を標的とすることができる。別の実施形態では、製剤は、複数のベクター、例えばAAVベクターを含み、各ベクターは異なる標的部位でSOD1遺伝子を標的とするsiRNA分子をコードする核酸配列を含む。SOD1は、2、3、4、5または5以上の部位で標的とされ得る。
【0166】
一実施形態では、以下に限定されるものではないが、ヒト、イヌ、マウス、ラットまたはサルなどの任意の関連種に由来するベクター、例えばAAVベクターを細胞に導入することができる。
【0167】
一実施形態において、ベクター、例えばAAVベクターは、治療される疾患に関連する細胞に導入され得る。非限定的な例として、その疾患はALSであり、標的細胞は運動ニューロンおよび星状細胞である。
【0168】
一実施形態では、ベクター、例えばAAVベクターは、標的配列の高レベルの内因性発現を有する細胞に導入することができる。
別の実施形態では、ベクター、例えばAAVベクターは、標的配列の低レベルの内在性発現を有する細胞に導入することができる。
【0169】
一実施形態では、その細胞は、AAV形質導入の高い効率を有するものであってよい。
医薬組成物および製剤
医薬組成物(siRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクター)に加えて、本明細書はヒトへの投与に適した医薬組成物を提供しており、そのような組成物が一般に他の動物、例えばヒト以外の動物、例えば非ヒト哺乳動物、への投与に適していることは、当業者には理解されよう。医薬組成物を種々の動物への投与に適したものにするために、ヒトへの投与に適した医薬組成物の改変はよく理解されており、通常の熟練した獣医学の薬理学者は、もし実験を行なうとすれば、単に通常の実験でこのような改変を設計および/または実施することができる。当該医薬組成物の投与が企図される対象には、ヒトおよび/または他の霊長類;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウスおよび/またはラットのような商業的に関連する哺乳動物を含む哺乳類;および/または家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/またはシチメンチョウのような商業的に関連する鳥類を含むが、それらに限定されない。
【0170】
いくつかの実施形態では、組成物は、ヒト、ヒトの患者、または対象に投与される。本開示の目的のために、語句「活性成分」は、一般に、合成siRNA二本鎖、siRNA二本鎖をコードするベクター(例えばAAVベクター)、または、本明細書に記載のベクターによって送達されるsiRNA分子のいずれかを指す。
【0171】
本明細書に記載された医薬組成物の製剤は、薬理学の分野において既知または今後開発される任意の方法によって調製することができる。一般に、そのような調製方法は、活性成分を賦形剤および/または1つまたはそれ以上の他の補助成分と会合させる工程を包含し、必要であればおよび/または望ましい場合には、産物を所望の単回投与単位または複数回投与単位に、分割し、成形し、および/または包装する工程をも包含する。
【0172】
本発明による医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤および/または任意の追加の成分の相対量は、処置される対象の同一性、サイズおよび/または状態に依存して変化し、さらに、組成物が投与されるルートに依存して変化する。
【0173】
本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターは、以下を行うために、1種以上の賦形剤を用いて製剤化することができる:(1)安定性を高める;(2)細胞トランスフェクションまたは形質導入を増加させる;(3)持続放出または遅延放出を可能にする;または(4)生体内分布を変える(例えば、ウイルスベクターを特定の組織または脳および運動ニューロンなどの細胞型に標的化する)。
【0174】
本発明の製剤には、限定することなく、生理食塩水、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コア-シェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ウイルスベクターでトランスフェクションした細胞(例えば、対象への移植のための細胞)、ナノ粒子模倣物、およびそれらの組み合わせを含めてよい。さらに、本発明のウイルスベクターは、自己組織化核酸ナノ粒子を用いて製剤化してよい。
【0175】
本明細書に記載された医薬組成物の製剤は、薬理学の分野において既知または今後開発される任意の方法によって調製することができる。一般に、そのような調製方法は、有効成分を賦形剤および/または1つまたはそれ以上の他の補助成分と会合させる工程を含む。
【0176】
本開示による医薬組成物は、バルクで、単一の単位用量として、および/または複数の単一単位用量として調製、包装および/または販売されてよい。本明細書では、「単位用量」という語は、所定量の活性成分からなる医薬組成物の個別の量を指す。活性成分の量は、一般的に、対象に投与されるであろう活性成分の用量および/またはこのような用量の特定のニーズを満たす一部分(例えば、そのような用量の半分または三分の一)に等しい。
【0177】
本開示による医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤および/または任意の追加の成分の相対量は、処置される対象の同一性、サイズおよび/または状態に依存して変化し、さらに組成物が投与されるルートに依存して変化する。例えば、組成物は、0.1%~99%(w/w)の有効成分からなっていてよい。一例として、組成物は、0.1%~100%(例えば、0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w))の活性成分からなっていてよい。
【0178】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%純粋であってよい。いくつかの実施形態において、賦形剤は、ヒトおよび獣医学のための使用が承認されている。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認されている。いくつかの実施形態において、賦形剤は、医薬グレードのものである。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方および/または国際薬局方の基準を満たす。
【0179】
本明細書では、賦形剤は、所望の特定の剤形に適したものである限り、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤などを含むが、これらに限定されない。医薬組成物を調製するための様々な賦形剤および組成物を調製するための技術は、当該分野で公知である(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro,Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,MD,2006を参照せよ;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。任意の従来の賦形剤媒体が、任意の望ましくない生物学的効果を生じさせることによって、あるいは医薬組成物の他の成分(群)と有害に相互作用することによって、ある物質またはその誘導体と不適合でない限りにおいては、従来の賦形剤媒体の使用は、本開示の範囲内で考えられてよい。
【0180】
希釈剤の例には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム乳糖、ショ糖、セルロース、微晶質セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉末糖等、および/またはそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0181】
いくつかの実施形態において、製剤は、少なくとも1つの不活性成分を含み得る。本明細書中では、「不活性成分」という語は、製剤に含まれる1つ以上の不活性薬剤を指す。いくつかの実施形態では、本発明の製剤において使用され得る不活性成分の全てまたは一部は、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されているか、あるいは承認されていない。
【0182】
本発明のsiRNA分子の核酸配列を含むベクターの製剤は、カチオンまたはアニオンを含むことができる。一実施形態では、製剤は、限定されないが、Zn2+、Ca2+、Cu2+、Mg+およびそれらの組み合わせなどの金属カチオンを含む。
【0183】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物が既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することによって修飾される開示化合物の誘導体を指す(例えば、遊離塩基基を適切な有機酸と反応させる)。薬学的に許容される塩の例としては、アミンのような塩基性残基の無機または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩;等が含まれるが、それらに限定されるものではない。代表的な酸付加塩の例としては、酢酸塩、酢酸、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩の例には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、ならびに非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオンがあり、それらの例には、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の薬学的に許容される塩には、例えば非毒性無機または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩が含まれる。本開示の薬学的に許容される塩は、塩基性または酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的方法によって合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、適切な塩基または酸の化学量論量と、水中または有機溶媒中で、またはその2種の混合物中で反応させることによって調製することができる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。適切な塩のリストは、次を参照のこと。Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418,Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,P.H.Stahl and C.G.Wermuth(eds.),Wiley-VCH,2008,and Berge et al.,Journal of Pharmaceutical Science,66,1-19(1977);これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0184】
本明細書で使用する用語「薬学的に許容される溶媒和物」は、適切な溶媒の分子が結晶格子に組み込まれている本発明の化合物を意味する。適切な溶媒は、投与される投与量で生理学的に許容される。例えば、溶媒和物は、有機溶媒、水、またはそれらの混合物を含む溶液からの結晶化、再結晶化、または沈殿によって調製することができる。適切な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一水和物、二水和物および三水和物)、Nメチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、安息香酸ベンジル等が挙げられる。水が溶媒である場合、溶媒和物は「水和物」と呼ばれる。
【0185】
本発明によれば、本発明のsiRNA分子の核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターは、CNS送達のために製剤化することができる。脳血液関門を通過する薬剤を使用することができる。例えば、脳血液関門内皮にsiRNA分子を標的とすることができるいくつかの細胞浸透性ペプチドを用いて、SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖を製剤化することができる(例えば、Mathupala, Expert Opin
Ther Pat.,2009,19,137-140;その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0186】
投与
本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターは、治療上有効な結果をもたらす任意の経路によって投与することができる。これらの経路には、腸内(腸内に)、胃腸内、硬膜外(硬膜内に)、経口(口を介して)、経皮、経皮、大脳内(大脳内)、脳室内(脳室に入る)、皮膚上への塗布(皮膚への塗布)、皮内(皮膚自体の中)、皮下(皮膚の下)、経鼻投与(鼻を通して)、静脈内(静脈内に)、静脈内ボーラス、静脈点滴(静脈内に)、動脈(動脈内)、筋肉内(筋肉内に)、心臓内(心臓内に)、骨髄内注入(骨髄内に)、くも膜下腔内(脊柱管内)、腹腔内、(腹腔への輸液または注射)、膀胱内注入、硝子体内、(眼を通して)、海綿内注入(病的腔に)、腔内(陰茎の基部に)、膣内投与、子宮内、追加の羊水投与、経皮(全身分布のために無傷の皮膚を通した拡散)、経粘膜(粘膜を通した拡散)、経膣、吹送(吸入)、舌下、唇下、浣腸、点眼(結膜上)、耳下腺内、耳介(耳の中または耳を介して)、口腔(頬に向かって)、結膜、皮膚、歯(1つの歯または複数)、電気浸透、子宮頸部、内皮内、気管内、体外、血液透析、浸潤、間質性、腹腔内、羊水内、関節内、胆道内、気管支内、気管内、軟骨内(軟骨内)、仙骨内(仙骨内)、大槽内(大槽内の小脳髄腔内)、角膜内(角膜内)、歯内膜内、冠状動脈(冠動脈内)、海綿体内(陰茎の海綿体の膨張可能な空間内)、椎間板内(椎間板内)、導管内(腺管内)、十二指腸内(十二指腸内)、硬膜内(硬膜内またはその下)、表皮内(表皮内に)、食道内(食道に)、胃内(胃の内部に)、歯内組織内(歯肉内)、腹腔内(小腸の遠位部分内)、病巣内(局所の病変内または直接の導入)、管腔内(管の内腔内)、胸腔内(リンパ内)、髄内(骨の骨髄腔内)、髄膜内(髄膜内)、眼内(眼内)、卵巣内(卵巣内)、心膜内(心膜内)、胸膜内(胸膜内)、前立腺内(前立腺内)、肺内(肺または気管支内)、内腔(鼻腔または眼窩洞内)、脊髄内(脊柱内)、滑膜内(関節の滑膜腔内)、肩甲骨内(腱内)、精巣内(睾丸内)、髄腔内(脳脊髄軸の任意のレベルの脳脊髄液内)、胸腔内(胸腔内)、管腔内(器官の細管内)、腫瘍内(腫瘍内)、中耳内(オーロス媒体内)、血管内(血管または血管内)、心室内(心室内)、イオントフォレシス(可溶性塩のイオンが身体の組織に移動する電流)、灌漑(開いた創傷または体腔を浸したり洗い流す)、喉頭(喉頭に直接)、経鼻胃(鼻から胃の中に)、閉塞性包帯技術(局所経路投与後その領域を閉塞する包帯によって覆われる)、眼科(外眼に)、口腔咽頭(口および咽頭に直接)、非経口、経皮、関節周囲、硬膜外、回神経、歯周病、直腸、呼吸器(局所的または全身的効果のために経口または鼻吸入によって気道内に)、眼球後ろ(眼窩の後ろ、または眼球の後ろ)軟組織、くも膜下腔、結膜下、粘膜下層、局所、経胎盤(胎盤を通してまたは胎盤を横切って)、経気管(気管の壁を通して)、胸腔鏡(横隔膜腔を横切って、またはそれを通って)、尿管(尿管内)、尿道(尿道内)、膣、尾骨ブロック、診断、神経ブロック、胆道灌流、心臓灌流、フォトフェレーシスまたは脊髄が含まれるがこれらに限定されない。
【0187】
特定の実施形態では、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターなどのベクター組成物は、ベクターまたはsiRNA分子が中枢神経系に入り、運動ニューロンに浸透するように投与され得る。
【0188】
いくつかの実施形態では、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターは、筋肉注射によって投与することができる。Rizvanovらは、変異型ヒトSOD1 mRNAを標的とするsiRNA分子が、SOD1G93AトランスジェニックALSマウスにおいて、坐骨神経によって取り込まれ、逆行的に運動ニューロンの周辺核に輸送され、且つ変異型SOD1 mRNAを阻害することを初めて実証した(Rizvanov AA et al.,Exp.Brain Res.,2009,195(1),1-4;その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。もう一つの研究はまた、変異体型SOD1遺伝子に対する小ヘアピンRNA(shRNA)を発現するAAVの筋肉伝達が、筋肉および神経支配する運動ニューロンにおいて、有意な変異型SOD1ノックダウンの結果をもたらすことを実証した(Towne C et al., Mol Ther.,2011;19(2):274-283;その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0189】
いくつかの実施形態では、本発明のsiRNA二本鎖を発現するAAVベクターは、末梢注射および/または鼻腔内投与によって対象に投与することができる。siRNA二本鎖のためのAAVベクターの末梢投与が中枢神経系、例えば運動ニューロンに輸送され得ることが当該分野で開示された(例えば、米国特許出願公開第20100240739号;および第20100130594号;これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0190】
他の実施形態では、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含む少なくとも1つのベクター、例えばAAVベクターを含む組成物は、頭蓋内投与によって対象に投与され得る(例えば、米国特許第8,119,611号参照;その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0191】
本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターは、液体溶液または懸濁液として、溶液または溶液中に混濁に適した個体形態として、任意の適切な形態で投与することができる。siRNA二本鎖は、任意の適切な薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化され得る。
【0192】
本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターは、「治療的に有効な」量、すなわち、関連する少なくとも1つの症状を緩和および/または予防するために、または疾患の状態の改善を提供するために十分な量で投与することができる。
【0193】
一実施形態では、ALSを有する対象の機能および/または生存を改善するために、ベクター、例えばAAVベクターを治療有効量でCNSに投与することができる。非限定的な例として、ベクターは、くも膜下腔内に投与され得る。
【0194】
一実施形態では、例えば、AAVベクターなどのベクターを、siRNA二本鎖またはdsRNAが脊髄および/または脳幹内の運動ニューロンおよび星状細胞を標的とするために、治療上有効な量で、対象(例えば、髄腔内投与によって対象のCNS)に投与し得る。非限定的な例として、siRNA二本鎖またはdsRNAは、SOD1タンパク質またはmRNAの発現を減少させることができる。別の非限定的な例として、siRNA二本鎖またはdsRNAは、SOD1を抑制し、SOD1媒介毒性を減少させることができる。SOD1タンパク質および/またはmRNAならびにSOD1媒介性毒性の低下は、ほとんど炎症が増強されずに達成され得る。
【0195】
一実施形態では、ベクター、例えばAAVベクターは、対象の機能低下を遅らせるために治療有効量で対象(例えば、対象のCNS)に投与され得る(例えば、ALS機能評価尺度(ALSFRS)などの既知の評価方法を使用して決定される)および/または対象の人工呼吸器非依存生存期間を延長する(例えば、死亡率の減少または呼吸支援の必要性)。非限定的な例として、ベクターは、くも膜下腔内に投与され得る。
【0196】
一実施形態では、ベクター、例えばAAVベクターは、脊髄運動ニューロンおよび/または星状細胞を形質導入するために、治療有効量を大槽に投与され得る。非限定的な例として、ベクターは、くも膜下腔内に投与され得る。
【0197】
一実施形態において、ベクター、例えばAAVベクターは、脊髄運動ニューロンおよび/または星状細胞を形質導入するために、治療有効量を、髄腔内注入を用いて投与され得る。非限定的な例として、ベクターは、くも膜下腔内に投与され得る。
【0198】
一実施形態では、調節ポリヌクレオチドを含むベクター、例えばAAVベクターを製剤化することができる。非限定的な例として、製剤の塩基性および/または浸透圧は、中枢神経系または中枢神経系の領域または成分における最適な薬物分布を確実にするように最適化され得る。
【0199】
一実施形態では、調節ポリヌクレオチドを含むベクター、例えばAAVベクターは、単一の経路投与によって対象に投与され得る。
一実施形態では、調節ポリヌクレオチドを含むベクター、例えばAAVベクターは、多部位投与経路を介して対象に投与され得る。対象は、2、3、4、5またはそれ以上の部位に調節ポリヌクレオチドを含むベクター、例えばAAVベクターを投与され得る。
【0200】
一実施形態では、対象に、ボーラス注入を用いて本発明に記載の調節ポリヌクレオチドを含むベクター、例えばAAVベクターを投与することができる。
一実施形態では、対象は、数分、数時間または数日間にわたる持続的投与を用いて本発明に記載の調節ポリヌクレオチドを含むベクター、例えばAAVベクターを投与され得る。注入速度は、対象、分布、製剤または別の送達パラメータに応じて変化され得る。
【0201】
一実施形態では、複数部位への投与のために、カテーテルを脊椎の2つ以上の部位に配置され得る。調節ポリヌクレオチドを含むベクター、例えばAAVベクターは、連続および/またはボーラス注入で投与され得る。投与の各部位は異なる投薬レジメンであってもよく、または同じ投薬レジメンを投与部位ごとに使用してよい。非限定的な例として、投与部位は、頚部および腰部領域にあり得る。別の非限定的な例として、投与部位は子宮頸部領域にあり得る。別の非限定的な例として、投与部位は、腰部領域にあり得る。
【0202】
一実施形態では、対象は、本明細書に記載の調節ポリヌクレオチドを含むベクター、例えばAAVベクターの投与前に、脊髄の解剖学的構造および病理について分析され得る。非限定的な例として、脊柱側弯症を有する対象は、脊柱側弯症を伴わない対象と比較して、異なる投薬レジメンおよび/またはカテーテルの位置を有し得る。
【0203】
一実施形態では、調節ポリヌクレオチドを含むベクター、例えばAAVベクターの投与中の対象の脊椎の向きは、地面に対して垂直であり得る。
別の実施形態では、調節ポリヌクレオチドを含むベクター、例えばAAVベクターの投与中の対象の脊椎の向きは、地面に対して水平であり得る。
【0204】
一実施形態では、対象の脊椎は、調節ポリヌクレオチドを含むベクター、例えばAAVベクターの投与の間に地面と比較してある角度であり得る。地面と比較し、対象の脊椎の角度は少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150または180度であり得る。
【0205】
一実施形態において、投与方法および持続時間は、脊髄における広範な形質導入を提供するように選択される。非限定的な例として、髄腔内投与は、脊髄の吻側-尾側の長さに沿って広い形質導入を提供するために使用される。別の非限定的な例として、複数部位注入は、脊髄の吻側-尾側の長さに沿ってより均一な形質導入を提供する。さらに別の非限定的な例として、長期の注入により、脊髄の吻側-尾側の長さに沿ってより均一な形質導入を提供する。
【0206】
投薬(Dosing)
本発明の医薬組成物は、SOD1関連障害の低減、予防および/または治療に有効な任意の量を用いて対象に投与することができる(例えば、ALS)。正確な必要量は、対象の動物種、年齢、および全体的な状態、疾患の重篤度、特定の組成物、その投与様式、その活性様式などに依存して、対象によって異なるであろう。
【0207】
本発明の組成物は、典型的には、投与の容易さおよび投与量の均一性のために、単位剤形で製剤化される。しかし、本発明の組成物の1日総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが理解されるであろう。任意の特定の患者に対する特異的治療有効性は、治療される障害および障害の重症度を含む様々な要因に依存する;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;投与時間、投与経路、および使用されるsiRNA二本鎖の排泄速度;治療の持続時間;使用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;および医学分野でよく知られている同様の要因を含む。
【0208】
一実施形態では、対象の年齢および性別を用いて、本発明の組成物の用量を決定することができる。非限定的な例として、高齢対象は、若年対象と比較して組成物のより多くの投与を受け得る(例えば、5-10%、10-20%、15-30%、20-50%、25-50%または少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%以上)。別の非限定的な例として、若年対象は、高齢対象と比較して組成物のより多くの投与量を受け得る(例えば、5~10%、10~20%、15~30%、20~50%、25~50%または少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%以上)。さらに別の非限定的な例として、女性対象は、男性対象と比較してより多い用量の組成物を受け得る(例えば、5~10%、10~20%、15~30%、20~50%、25~50%または少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%以上)。さらに別の非限定的な例として、男性対象は、女性対象と比較してより多い用量の組成物を受け得る(例えば、5~10%、10~20%、15~30%、20~50%、25~50%または少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%以上)。
【0209】
いくつかの特定の実施形態では、本発明のsiRNA二本鎖を投与するためのAAVベクターの用量は、疾患状態、対象および治療戦略に応じて適合させることができる。
一実施形態では、本発明による組成物の細胞への投与は、VGをウイルスゲノム、VG/mLを組成物濃度、mL/時間を延長された投与の速度とするとき、[VG/時間=mL/時間*VG/mL]によって定義される送達速度から成る。
【0210】
一実施形態では、本発明による組成物の細胞への送達は、対象あたりの総濃度が約1x10VGから約1x1016VGの間であり得る。いくつかの実施形態では、送達は、約1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x1010、2x1010、3x1010、4x1010、5x1010、6x1010、7x1010、8x1010、9x1010、1x1011、2x1011、2.1x1011、2.2x1011、2.3x1011、2.4x1011、2.5x1011、2.6x1011、2.7x1011、2.8x1011、2.9x1011、3x1011、4x1011、5x1011、6x1011、7x1011、7.1x1011、7.2x1011、7.3x1011、7.4x1011、7.5x1011、7.6x1011、7.7x1011、7.8x1011、7.9x1011、8x1011、9x1011、1x1012、1.1x1012、1.2x1012、1.3x1012、1.4x1012、1.5x1012、1.6x1012、1.7x1012、1.8x1012、1.9x1012、2x1012、3x1012、4x1012、4.1x1012、4.2x1012、4.3x1012、4.4x1012、4.5x1012、4.6x1012、4.7x1012、4.8x1012、4.9x1012、5x1012、6x1012、7x1012、8x1012、8.1x1012、8.2x1012、8.3x1012、8.4x1012、8.5x1012、8.6x1012、8.7x1012、8.8 x1012、8.9x1012、9x1012、1x1013、2x1013、3x1013、4x1013、5x1013、6x1013、6.7x1013、7x1013、8x1013、9x1013、1x1014、2x1014、3x1014、4x1014、5x1014、6x1014、7x1014、8x1014、9x1014、1x1015、2x1015、3x1015、4x1015、5x1015、6x1015、7x1015、8x1015、9x1015、または1x1016VG/対象の組成物濃度であり得る。
【0211】
一実施形態では、本発明による組成物の細胞への送達は、対象あたりの総濃度が約1x10VG/kgから1x1016VG/kgの間である。いくつかの実施形態では、投与は、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x1010、2x1010、3x1010、4x1010、5x1010、6x1010、7x1010、8x1010、9x1010、1x1011、2x1011、2.1x1011、2.2x1011、2.3x1011、2.4x1011、2.5x1011、2.6x1011、2.7x1011、2.8x1011、2.9x1011、3x1011、4x1011、5x1011、6x1011、7x1011、7.1x1011、7.2x1011、7.3x1011、7.4x1011、7.5x1011、7.6x1011、7.7x1011、7.8x1011、7.9x1011、8x1011、9x1011、1x1012、1.1x1012、1.2x1012、1.3x1012、1.4x1012、1.5x1012、1.6x1012、1.7x1012、1.8x1012、1.9x1012、2x1012、3x1012、4x1012、4.1x1012、4.2x1012、4.3x1012、4.4x1012、4.5x1012、4.6x1012、4.7x1012、4.8x1012、4.9x1012、5x1012、6x1012、7x1012、8x1012、8.1x1012、8.2x1012、8.3x1012、8.4x1012、8.5x1012、8.6x1012、8.7x1012、8.8 x1012、8.9x1012、9x1012、1x1013、2x1013、3x1013、4x1013、5x1013、6x1013、6.7x1013、7x1013、8x1013、9x1013、1x1014、2x1014、3x1014、4x1014、5x1014、6x1014、7x1014、8x1014、9x1014、1x1015、2x1015、3x1015、4x1015、5x1015、6x1015、7x1015、8x1015、9x1015または1x1016VG/kgの組成物濃度であり得る。
【0212】
一実施形態では、1用量あたり約10から10ウイルスゲノム(単位)を投与することができる。
一実施形態では、本発明による組成物の細胞への投与は、約1x10VG/mLから1x1016VG/mLである。いくつかの実施形態において、投与は、約1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x10、2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1x1010、2x1010、3x1010、4x1010、5x1010、6x1010、7x1010、8x1010、9x1010、1x1011、2x1011、3x1011、4x1011、5x1011、6x1011、7x1011、8x1011、9x1011、1x1012、1.1x1012、1.2x1012、1.3x1012、1.4x1012、1.5x1012、1.6x1012、1.7x1012、1.8x1012、1.9x1012、2x1012、2.1x1012、2.2x1012、2.3x1012、2.4x1012、2.5x1012、2.6x1012、2.7x1012、2.8x1012、2.9x1012、3x1012、3.1x1012、3.2x1012、3.3x1012、3.4x1012、3.5x1012、3.6x1012、3.7x1012、3.8x1012、3.9x1012、4x1012、4.1x1012、4.2x1012、4.3x1012、4.4x1012、4.5x1012、4.6x1012、4.7x1012、4.8x1012、4.9x1012、5x1012、6x1012、7x1012、8x1012、9x1012、1x1013、2x1013、3x1013、4x1013、5x1013、6x1013、6.7x1013、7x1013、8x1013、9x1013、1x1014、2x1014、3x1014、4x1014、5x1014、6x1014、7x1014、8x1014、9x1014、1x1015、2x1015、3x1015、4x1015、5x1015、6x1015、7x1015、8x1015、9x1015、または1x1016VG/mLの組成物濃度であり得る。
【0213】
特定の実施形態では、所望のsiRNA二本鎖用量は、複数の投与を用いて投与され得る(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14またはそれ以上の投与)。複数の投与を行なう場合、本明細書に記載されているような分割投与計画を使用することができる。本明細書で使用される「分割投与量」は、単回用量または一日総用量の2つ以上の用量への分割、例えば単回用量の2回以上の投与である。本明細書で使用される「単一単位用量」は、1回分用量/一回/1つの経路/1つの接触点で投与される任意の調節ポリヌクレオチド治療剤の用量、すなわち単回投与である。本明細書中で使用される場合、「1日の総投与量」は、24時間に与えられる、または処方される量である。それは単一単位用量として投与することができる。一実施形態では、本発明の調節性ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは、分割用量で対象に投与される。それらは、緩衝液中でのみ、または本明細書に記載の製剤中で製剤化することができる。
【0214】
ALSの治療方法
本発明に示されるのは、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターを細胞に導入する方法であって、該方法は、標的SOD1 mRNAの分解が起こるのに十分な量の該ベクターのいずれかを前記細胞に導入し、それにより細胞内の標的特異的RNAiを活性化することを含む。いくつかの態様において、細胞は、幹細胞、運動ニューロンなどのニューロン、筋細胞、および星状細胞などのグリア細胞であり得る。
【0215】
本発明には、治療を必要とする対象における異常なSOD1機能に関連するALSを治療するための方法が開示される。該方法は、必要に応じて、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含む少なくともベクター、例えばAAVベクターを含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む。非限定的な例として、siRNA分子は、ALSが治療的に処置されるように、SOD1遺伝子発現をサイレンシングさせ、SOD1タンパク質産生を阻害し、対象におけるALSの1つ以上の症状を減少させることができる。
【0216】
いくつかの実施形態において、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターを含む組成物は、対象の中枢神経系に投与される。他の実施形態では、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターを含む組成物は、対象の筋肉に投与される。
【0217】
特に、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターは、運動ニューロン、星状膠細胞および小膠細胞を含むグリア細胞、および/またはT細胞のようなニューロンを囲む他の細胞を含む特定のタイプの標的細胞に投与され得る。ヒトのALS患者および動物のSOD1 ALSモデルにおける研究は、グリア細胞が運動ニューロンの機能不全および死において初期の影響を与えることを暗示している。周囲の保護グリア細胞中の正常なSOD1は、変異SOD1が運動ニューロンに存在するにもかかわらず、運動ニューロンが死ぬのを防ぐことができる(例えば、Philips
and Rothstein, Exp. Neurol., 2014, May 22. pii: S0014-4886(14)00157-5によるレビュー;その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0218】
いくつかの特定の実施形態では、本発明のsiRNA分子をコードする核酸配列を含むベクター、例えばAAVベクターは、ALSの治療法として使用することができる。
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、ALSの治療のための単独療法または併用療法として投与される。
【0219】
SOD1遺伝子を標的とするsiRNA二本鎖をコードするベクター、例えばAAVベクターは、1つ以上の他の治療剤と組み合わせて使用することができる。「~と組み合わせて」とは、薬剤を同時に投与しなければならないこと、および/または共に投与するように製剤化しなければならないことを暗示することを意図するものではない。尤も、これらの投与方法は本開示の範囲内である。組成物は、1つまたはそれ以上の他の所望の治療または医療処置と同時に、その前に、またはその後に投与することができる。一般に、各薬剤は、その薬剤について決定された用量および/または時間スケジュールで投与される。
【0220】
本発明のsiRNA分子の核酸配列をコードするベクター、例えばAAVベクターと組み合わせて使用され得る治療剤は、抗酸化剤、抗炎症剤、抗アポトーシス剤、カルシウム調節剤、抗グルタミン酸作動薬、構造タンパク質阻害剤、および金属イオン調節に関与する化合物の、小分子化合物であり得る。
【0221】
本明細書に記載されるベクターと組み合わせて使用され得る、ALSを治療するために試験される化合物としては、限定されるものではないが、以下が含まれる。抗グルタミン酸作動薬:リルゾール、トピラメート、タラパネル、ラモトリギン、デキストロメトルファン、ガバペンチンおよびAMPA拮抗薬;抗アポトーシス剤:ミノサイクリン、フェニル酪酸ナトリウムおよびアリモクロモール;抗炎症剤:ガングリオシド、セレコキシブ、シクロスポリン、アザチオプリン、シクロホスファミド、プラズマフォレシス、グラチラマー酢酸塩およびサリドマイド;セフトリアキソン(Berry et al.,Plos One,2013,8(4));ベータラクタム抗生物質;プラミペキソール(ドーパミンアゴニスト)(Wang et al.,Amyotrophic Lateral Scler.,2008,9(1),50-58);米国特許公開第20060074991号のニメスリド;米国特許公開第20130143873号に開示されているジアゾキシド);米国特許出願公開第20080161378号で開示されたラゾロン誘導体;酸化ストレス誘発細胞死を阻害するフリーラジカルスカベンジャー、例えばブロモクリプチン(米国特許公開第20110105517号);PCT特許公開第2013100571号で議論されたフェニルカルバメート化合物;例えば、米国特許第6,933,310号および第8,399,514号ならびに米国特許公報第20110237907号および第20140038927号で開示された神経保護化合物;および米国特許公開第20070185012号に教示される糖ペプチド;これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0222】
本発明のsiRNA分子の核酸配列をコードするベクター(例えば、AAVベクター)との併用療法で使用され得る治療剤は、神経細胞喪失を保護することができるホルモンまたは変異体であり得、例えば、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)またはその断片など(米国特許公開第20130259875号);エストロゲン(例えば、米国特許第6,334,998号および第6,592,845号)であり;これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0223】
神経栄養因子は、ALSを治療するための本発明のsiRNA分子の核酸配列をコードするベクター、例えばAAVベクターとの併用療法において使用され得る。一般的に、神経栄養因子は、ニューロンの生存、成長、分化、増殖および/または成熟を促進する物質、またはニューロンの活性の増加を刺激する物質と定義される。いくつかの実施形態では、本方法は、治療を必要とする対象への1つ以上の栄養因子の送達をさらに含む。栄養因子としては、IGF-I、GDNF、BDNF、CTNF、VEGF、コリベリン、サリプロデン、チロトロピン放出ホルモンおよびADNF、ならびにそれらの変異体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0224】
ひとつの態様では、SOD1遺伝子を標的とする少なくとも1つのsiRNA二本鎖の核酸配列をコードするベクター、例えばAAVベクターは、AAV-IGF-Iのような神経栄養因子を発現するAAVベクターやAAV-GDNFと同時投与することができる(Vincent et al.,神経分子医学,2004,6,79-85;その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)および(Wang et al.,J Neurosci.,2002,22,6920-6928;その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0225】
いくつかの実施形態では、ALSを治療するための本発明の組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、くも膜下腔内および/または脳室内で必要な対象に投与され、siRNA分子またはsiRNA分子を含むベクターが、血液脳関門および血液脊髄障壁の一方または両方を通過することを可能にする。いくつかの態様では、この方法は、対象の中枢神経系(CNS)に本発明のsiRNA分子の核酸配列をコードするベクター、例えばAAVベクターを含む組成物を、治療上有効な量を直接(例えば、輸液ポンプおよび/または投与足場を使用して)投与する方法(例えば、脳室内投与および/または髄腔内投与)を含む。このベクターは、ALSが治療的に処置されるように、SOD1遺伝子発現をサイレンシングするかまたは抑制し、および/または対象におけるALSの1つ以上の症状を減少させるために使用され得る。
【0226】
ある態様では、治療された対象において、運動ニューロン変性、筋力低下、筋萎縮、筋肉硬化、呼吸困難、発語の不明瞭化、線維束性攣縮の発症、前頭側頭型認知症および/または早発死を含むがこれらに限定されないALSの症状が改善される。他の態様において、本発明の組成物は、脳および脊髄の一方または両方に適用される。他の態様において、筋肉協調および筋肉機能の一方または両方が改善される。他の態様において、対象の生存が延長される。
【0227】
一実施形態では、ベクター、例えば本発明のsiRNAをコードするAAVベクターを対象に投与することにより、対象のCNS中の変異型SOD1を減少させ得る。別の実施形態では、対象へのベクター、例えばAAVベクターの投与は、対象のCNSにおける野生型SOD1を減少させ得る。さらに別の実施形態では、対象へのベクター、例えばAAVベクターの投与は、対象のCNSにおける変異型SOD1および野生型SOD1の両方を減少させ得る。突然変異体SOD1および/または野生型SOD1は、CNS、CNSの領域、または対象のCNSの特定の細胞において、約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%および100%、または少なくとも20~30%、20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~80%、20~90%、20~95%、20~100%、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~80%、30~90%、30~95%、30~100%、40~50%、40~60%、40~70%、40~80%、40~90%、40~95%、40~100%、50~60%、50~70%、50~80%、50~90%、50~95%、50~100%、60~70%、60~80%、60~90%、60~95%、60~100%、70~80%、70~90%、70~95%、70~100%、80~90%、80~95%、80~100%、90~95%、90~100%または95~100%減少し得る。非限定的な例として、ベクター、例えばAAVベクターは、運動ニューロン(例えば、前角運動ニューロン)および/または星状細胞において、野生型SOD1の発現を少なくとも50%低下させ得る。別の非限定的な例として、ベクター、例えばAAVベクターは、運動ニューロン(例えば、前角運動ニューロン)および/または星状細胞において少なくとも50%変異SOD1の発現を低下させ得る。さらに別の非限定的な例として、ベクター、例えばAAVベクターは、運動ニューロン(例えば、前角運動ニューロン)および/または星状細胞において、野生型SOD1および変異型SOD1の発現を少なくとも50%低下させ得る。
【0228】
一実施形態では、対象へのベクター、例えばAAVベクターの投与は、脊髄における突然変異体および/または野生型SOD1の発現を低下させ、突然変異体および/または野生型SOD1の発現の低下は、対象におけるALSの影響を低減させる。
【0229】
一実施形態では、ベクター、例えばAAVベクターは、ALSの初期段階にある対象に投与することができる。初期段階の症状には、衰弱して軟弱なまたは硬く堅固で痙攣した筋肉、筋肉のけいれんおよび引きつり(線維束性収縮)、筋肉量の喪失(萎縮)、疲労、平衡感覚異常、不明瞭な発語、握力低下、および/または歩行時のつまずきなどが含まれるがこれに限定されない。症状は1つの身体領域に限定されるか、または軽度の症状が複数の領域に現れる場合がある。非限定的な例として、ベクター、例えばAAVベクターの投与は、ALSの症状の重篤度および/または発生を低減し得る。
【0230】
一実施形態において、ベクター、例えばAAVベクターは、ALSの中期段階にある対象に投与され得る。ALSの中期段階は、初期段階と比較してより広範な筋肉症状を含んでおり、ある筋肉には麻痺が出る一方、他の筋肉は衰弱しているか影響されず継続的な筋肉の引きつり(線維束性収縮)があり、使用されない筋肉が、関節が硬く痛みを伴って時には変形するような拘縮を引き起こし、嚥下筋肉の衰弱が、窒息を引き起こしたり、摂食や唾液の対処がより困難になったりし、呼吸筋の衰弱が、特に横になった時に呼吸不全を引き起こし、および/または、制御不能かつ不適切な笑いまたは泣き(情動調節障害)の発作を有し得るが、これらに限定されない。非限定的な例として、ベクター、例えばAAVベクターの投与は、ALSの症状の重篤度および/または発生を低減し得る。
【0231】
一実施形態において、ベクター、例えばAAVベクターは、ALSの後期段階にある対象に投与され得る。ALSの後期段階は、ほとんど麻痺した随意筋を含み、肺の内外への空気の移動を補助する筋肉が著しく損なわれる、可動性が非常に限られる、不十分な呼吸が、疲労、あいまいな思考、頭痛、および、感染症または疾患(例えば、肺炎)に対する易罹患性を引き起こし、発語が困難になり、口での飲食が不可能になり得るが、これらに限定されない。
【0232】
一実施形態では、ベクター、例えばAAVベクターは、C9orf72の突然変異を有するALS患者を治療するために使用され得る。
一実施形態では、ベクター、例えばAAVベクターは、TDP-43の突然変異を有するALS患者を治療するために使用され得る。
【0233】
一実施形態では、ベクター、例えばAAVベクターは、FUS変異を有するALS患者を治療するために使用され得る。
定義
他に記載がない限り、以下の用語およびフレーズは、以下に説明する意味を有する。この定義は本質的に限定することを意味するものではなく、本発明の特定の態様をより明確に理解するのに役立つ。
【0234】
本明細書で使用される「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)またはポリリボヌクレオチド(D-リボースを含む)のいずれか、または、プリンもしくはピリミジン塩基または修飾されたプリンもしくはピリミジン塩基のNグリコシドである他のタイプのポリヌクレオチドからなる任意の核酸ポリマーを指す。「核酸」という語、「ポリヌクレオチド」という語、および「オリゴヌクレオチド」という語の間には、その長さに意図された区別はなく、これらの用語は互換的に使用される。これらの語は、分子の一次構造のみを指す。したがって、これらの語は、二本鎖および一本鎖DNA、ならびに二本鎖および一本鎖RNAを含む。
【0235】
本明細書で使用される「RNA」または「RNA分子」または「リボ核酸分子」という用語は、リボヌクレオチドのポリマーを指す;用語「DNA」または「DNA分子」または「デオキシリボ核酸分子」は、デオキシリボヌクレオチドのポリマーを指す。DNAおよびRNAは、例えば、DNA複製およびDNAの転写によって、それぞれ天然に合成することができ、また化学的に合成することもできる。DNAおよびRNAは、一本鎖(すなわち、それぞれssRNAまたはssDNA)または複数鎖(例えば、二本鎖、すなわちdsRNAおよびdsDNA)であり得る。本明細書で使用されている「mRNA」または「メッセンジャーRNA」という語は、1つまたはそれ以上のポリペプチド鎖のアミノ酸配列をコードする一本鎖RNAを指す。
【0236】
本明細書で使用される「RNA干渉」または「RNAi」という用語は、対応するタンパク質コード遺伝子の発現の阻害または干渉または「サイレンシング」をもたらすRNA分子によって媒介される配列特異的調節機構を指す。RNAiは、植物、動物および真菌を含む多くの種類の生物において観察されている。RNAiは、外来RNA(例えば、ウイルスRNA)を自然に除去するために細胞内で自然発生する。天然RNAiは、他の類似のRNA配列に分解機構を移動させる遊離dsRNAから切断された断片を介して進行する。RNAiは、RNA誘発サイレンシング複合体(RISC)によって制御され、細胞の細胞質内の短鎖/低分子dsRNA分子によって開始され、触媒性RISC成分であるアルゴン酸と相互作用する。dsRNA分子は外因的に細胞に導入することができる。外因性dsRNAは、リボヌクレアーゼタンパク質Dicerを活性化することによってRNAiを開始させ、dsRNAを結合および切断して、各末端に少数の不対オーバーハング塩基を有する21-25塩基対の二本鎖断片を生成する。これらの短い二本鎖断片は、低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれる。
【0237】
本明細書中で使用される場合、用語「短分子干渉RNA」、「低分子干渉RNA」または「siRNA」は、RNAiを案内または仲介することができる約5~60ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含むRNA分子(またはRNA類似体)を指す。好ましくは、siRNA分子は、約15-30ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、約16-25ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)、約18-23ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)、約19-22ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)(例えば、19、20、21または22ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体)、約19-25ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)、および約19-25ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含む。「短い」siRNAという語は、5~23ヌクレオチド、好ましくは21ヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)、例えば19,20,21または22ヌクレオチドを含むsiRNAを指す。「長い」siRNAという語は、24~60ヌクレオチド、好ましくは約24~25ヌクレオチド、例えば23,24,25、または26ヌクレオチドを含むsiRNAを指す。短いsiRNAは、場合によっては、より短いsiRNAがRNAiを媒介する能力を保持するならば、19ヌクレオチド未満(例えば、16,17または18ヌクレオチド、または5ヌクレオチド未満)を含み得る。同様に、より長いsiRNAが、RNAi媒介する能力を保持する限り、または短いsiRNAへのさらなるプロセシング(例えば、酵素プロセシング)を欠く翻訳抑制を保持する限り、長いsiRNAは、いくつかの例では、26を超えるヌクレオチド(例えば、27,28,29,30,35,40,45,50,55、またはさらには60ヌクレオチド)を含み得る。siRNAは、一本鎖RNA分子(ss-siRNA)または二本鎖RNA分子(ds-siRNA)であり得、これらは、siRNA二本鎖と呼ばれる二本鎖構造を形成するようにハイブリダイズされたセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む。
【0238】
本明細書中で使用される場合、siRNA分子の「アンチセンス鎖」または「第1鎖」または「ガイド鎖」という用語は、サイレンシングのために標的とされる遺伝子のmRNAの約10~50ヌクレオチドの部分、例えば、約15-30、16-25、18-23または19-22ヌクレオチド、に対して実質的に相補的な鎖を指す。アンチセンス鎖または第1の鎖は、標的特異的サイレンシングを導くために所望の標的mRNA配列に十分相補的な配列を有し、例えば、RNAiの機構またはプロセスによって所望の標的mRNAの破壊を引き起こすのに十分な相補性を有する。
【0239】
本明細書中で使用される場合、siRNA分子の「センス鎖」または「第2鎖」または「パッセンジャー鎖」という用語は、アンチセンス鎖または第1鎖に相補的な鎖を指す。siRNA分子のアンチセンス鎖およびセンス鎖は、二本鎖構造を形成するようにハイブリダイズされる。本明細書中で使用される場合、「siRNA二本鎖」は、サイレンシングの標的となる遺伝子のmRNAの約10~50ヌクレオチドの部分に十分な相補性を有するsiRNA鎖、およびこのsiRNA鎖と二本鎖を形成するのに十分な相補性を有するsiRNA鎖を含む。
【0240】
本明細書中で使用される場合、用語「相補的」は、互いに塩基対を形成するポリヌクレオチドの能力を指す。塩基対は、典型的には、逆平行ポリヌクレオチド鎖中のヌクレオチド単位間の水素結合によって形成される。相補的ポリヌクレオチド鎖は、ワトソン-クリック様式(例えば、Tに対するA、Uに対するA、Gに対するC)、または二本鎖の形成を可能にする他の任意の様式で塩基対を形成することができる。当業者が認識しているように、DNAでなくRNAを用いる場合、チミンではなくウラシルがアデノシンに相補的であると考えられる塩基である。しかし、Uが本発明の文脈において示される場合、特に断らない限り、Tを置換する能力が示唆されている。完全な相補性または100%相補性は、1つのポリヌクレオチド鎖の各ヌクレオチド単位が第2のポリヌクレオチド鎖のヌクレオチド単位と水素結合を形成し得る状況を指す。完全な相補性よりも低いというのは、2本の鎖のヌクレオチド単位の一部が、すべてではないが互いに水素結合を形成し得る状況を指す。例えば、2つの20量体について、各鎖上の2つの塩基対のみが互いに水素結合を形成し得る場合、ポリヌクレオチド鎖は10%の相補性を示す。同じ例において、各鎖上の18個の塩基対が相互に水素結合を形成することができる場合、ポリヌクレオチド鎖は90%の相補性を示す。
【0241】
本明細書で使用されている「実質的に相補的」という語は、siRNAが、所望の標的mRNAと結合し、標的mRNAのRNAサイレンシングを引き起こすのに十分な配列(例えば、アンチセンス鎖中に)を有することを意味する。
【0242】
本明細書中で使用されている「標的設定」という語は、標的核酸にハイブリダイズし所望の効果を誘導する核酸配列の設計および選択のプロセスを意味する。
「遺伝子発現」という用語は、核酸配列が首尾よく転写されるプロセスを指し、そしてほとんどの場合翻訳されてタンパク質またはペプチドを産生することを指す。分かりやすく言えば、「遺伝子発現」の測定を参照する場合、これは、測定値が転写の核酸産物(例えば、RNAまたはmRNA)由来であるか、あるいは翻訳のアミノ酸産物(例えば、ポリペプチドまたはペプチド)由来であることを意味すると理解されるべきである。RNA、mRNA、ポリペプチドおよびペプチドの量またはレベルを測定する方法は、当技術分野で周知である。
【0243】
本明細書で使用される場合、用語「突然変異」は、遺伝子の構造の任意の変化を指し、その結果、次世代に伝達され得る変異体(「突然変異体」とも呼ばれる)の形態をもたらすことを指す。遺伝子の突然変異は、DNA中の単一塩基の変化、または遺伝子または染色体のより大きな部分の欠失、挿入、または再編成によって引き起こされ得る。
【0244】
本明細書中で使用される場合、用語「ベクター」は、本発明のsiRNA分子のような異種分子を輸送、形質導入またはそうでなければその担体として作用する任意の分子または部分を意味する。「ウイルスベクター」は、目的の分子、例えば導入遺伝子をコードするかまたは含む1つまたは複数のポリヌクレオチド領域を含んでおり、1つのポリペプチドまたは複数のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは低分子干渉RNA(siRNA)のような調節核酸を含むベクターである。ウイルスベクターは、遺伝物質を細胞に投与するために一般に使用される。ウイルスベクターは、特定の用途のためにしばしば改変される。ウイルスベクターの種類には、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターが含まれる。
【0245】
本明細書で使用される「アデノ随伴ウイルス」または「AAV」または「AAVベクター」という用語は、アデノ随伴ベクターの成分を含むかまたはそれから派生し、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞に感染するのに適した任意のベクターを指す。用語AAVベクターは、典型的には、siRNA二本鎖をコードする核酸分子を含むAAV型ウイルス粒子またはビリオンを示す。AAVベクターは、血清型の組み合わせ(すなわち、「偽型」AAV)または種々のゲノム(例えば、一本鎖または自己相補性)を含む種々の血清型に由来し得る。さらに、AAVベクターは複製欠損および/または標的化されていてもよい。
【0246】
本明細書において、「遺伝子の発現を阻害する」という句は、遺伝子の発現産物の量を減少させることを意味する。発現産物は、遺伝子から転写されたRNA分子(例えば、mRNA)またはその遺伝子から転写されたmRNAから翻訳されたポリペプチドである。典型的には、mRNAレベルの低下は、それから翻訳されるポリペプチドのレベルの低下をもたらす。発現レベルは、mRNAまたはタンパク質を測定するための標準的な技術を用いて決定することができる。
【0247】
本明細書中で使用される場合、用語「in vitro」は、例えば、生物の中ではなく試験管または反応容器中、細胞培養中、ペトリ皿中などの人工環境(例えば、動物、植物または微生物)において生じる事象を指す。
【0248】
本明細書で使用される「in vivo」という用語は、生物内(例えば、動物、植物、または微生物、またはそれらの細胞もしくは組織)で起こる事象を指す。
本明細書で使用する「修飾(改変)された」という用語は、本発明の分子の変化した状態または構造を指す。分子は、化学的、構造的、および機能的に多くの態様で修飾することができる。
【0249】
本明細書で使用される場合、用語「合成」は、人間の手によって製造、調製、および/または製造されることを意味する。本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドまたはその他の分子の合成は、化学的または酵素的であってもよい。
【0250】
本明細書中で使用される場合、用語「トランスフェクション」は、外因性核酸を細胞に導入する方法を指す。トランスフェクションの方法には、化学的方法、物理的処理およびカチオン性脂質または混合物が含まれるが、これらに限定されない。細胞にトランスフェクトすることができる薬剤のリストは大きく、siRNA、センスおよび/またはアンチセンス配列、1つまたは複数の遺伝子をコードして発現プラスミドに編成されたDNA、タンパク質、タンパク質断片、その他を含むが、これに限定されない。
【0251】
本明細書中で使用される場合、「オフターゲット」とは、任意の1つ以上の標的、遺伝子または細胞転写産物に対する任意の意図しない効果をいう。
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という語句は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適しているとともに合理的な利益/リスク比に見合った化合物、材料、組成物および/または投薬形態を指す。
【0252】
本明細書中で使用される場合、薬剤の「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果、例えば臨床結果をもたらすのに十分な量であり、したがって「有効量」は、それが適用される状況に依存する。例えば、ALSを治療する薬剤を投与する状況において、薬剤の有効量は、例えば、薬剤の投与なしで得られた応答と比較して、ALSの本明細書で定義されるような治療を達成するのに十分な量のことである。
【0253】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」は、疾患、障害および/または状態に罹患しているかまたは罹患しやすい対象に投与される場合に、感染症、疾患、障害および/または状態を治療し、その症状を改善し、診断し、予防し、および/または、その発症を遅らせるために十分な、投与される薬剤(例えば、核酸、薬物、治療薬、診断薬、予防薬など)の量を意味する。
【0254】
本明細書中で使用される場合、用語「対象」または「患者」は、本発明による組成物が投与され得る任意の生物を指すのであって、例えば、実験的、診断的、予防的および/または治療的目的のためのものである。典型的な対象には、動物および/または植物(例えば、マウス、ラット、ウサギなどの哺乳動物、チンパンジーのような非ヒト霊長類、およびその他の類人猿およびサル種、およびヒト)が含まれる。
【0255】
本明細書中で使用される場合、用語「予防する」または「予防」は、状態または疾患の発症、進行または悪化を、数週間、数ヶ月または数年を含む期間、遅延または防止することを指す。
【0256】
本明細書で使用する「治療」または「治療する」という用語は、疾患の治癒または改善に使用される1つまたは複数の特定の手順の適用を指す。特定の実施形態では、特定の手順は、1つ以上の医薬品の投与である。本発明の文脈において、特定の手順は、SOD1遺伝子を標的とする1つ以上のsiRNA二本鎖またはコードされたdsRNAの投与である。
【0257】
本明細書で使用される場合、用語「改善」または「改善する」は、状態または疾患の、少なくとも1つの指標の重篤度を軽減することを指す。例えば、神経変性障害の文脈において、改善には、ニューロン損失の減少が含まれる。
【0258】
本明細書中で使用される場合、用語「投与する」は、対象に医薬品または組成物を提供することを指す。
本明細書中で使用される場合、用語「神経変性」は、神経細胞死をもたらす病理学的状態を指す。多数の神経学的障害は、共通の病的状態として神経変性を共有する。例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病および筋萎縮性側索硬化症(ALS)はすべて、慢性的な神経変性を引き起こすが、これは数年にわたる遅く進行性の神経細胞死を特徴とし、また急性神経変性は、卒中などの虚血または外傷性脳損傷などの外傷の結果、または脊髄損傷または多発性硬化症によって引き起こされる脱髄または外傷による軸索切断の結果による、神経細胞死の突然の発症を特徴とする。いくつかの神経障害では、主に1種類のニューロン細胞が退行性であり、例えばALSにおける運動ニューロン変性である。
【0259】
同等のものおよび適用範囲
当業者であれば、本明細書に記載された本発明による特定の実施形態について多くの同等のものを認識するか、またはルーチンの実験のみを用いて確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されるように意図されているのではなく、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0260】
特許請求の範囲において、「a」、「an」および「the」などの不定冠詞は、文脈からその逆であることあるいは明らかに示されていない限り、1つまたはそれ以上のものを意味する。ある群の1つまたはそれ以上の構成員の間に「or」を含む請求項または説明は、文脈からその逆であることあるいは明らかに示されていない限り、群の構成員の1つ、1つ以上、またはすべてが所与の製品またはプロセスに存在しているか、使用されているか、または関連している場合に、満たされているとみなされる:本発明は、群の構成員の1つだけが所与の製品またはプロセスに存在しているか、使用されているか、または関連している実施形態を含む。本発明は、2つ以上の、またはグループメンバー全体が、所与の製品またはプロセスに存在し、採用され、または関連する実施形態を含む。
【0261】
「~からなる(comprising)」という語は、開かれていることを意図しており、追加の要素またはステップを含めることを許可するが、追加の要素またはステップを含めることを必要とはしていないことにも留意されたい。「~からなる(comprising)」という語が本明細書で使用される場合、「から構成されている(consisting of)」という語もこのように包含され、明示される。
【0262】
範囲が与えられている場合、エンドポイントが含まれる。さらに、別途示されない限り、あるいは文脈および当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、本発明の多様な実施形態において記載された範囲内の任意の特定の値または部分範囲、当該範囲の下限の単位の10分の1までと想定される(文脈上明確に別途指示されている場合を除く)と理解されるべきである。
【0263】
さらに、先行技術に含まれる本発明の特定の実施形態はすべて、特許請求の範囲のいずれか1つまたはそれ以上から明白に除外され得ることが理解されるべきである。そのような実施形態は、当業者に知られているとみなされるので、除外が明示的に本明細書に記載されていなくても除外されてよい。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の抗生物質、治療または有効成分;任意の製造方法;任意の使用方法など)は、先行技術の存在に関係なく、何らかの理由で、任意の1つ以上の請求項から除外することができる。
【0264】
使用されている語は、限定ではなく説明のための言葉であり、その広い意味で本発明の真の範囲および精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能であることを理解されたい。
【0265】
本発明は、記載された幾つかの実施形態に関して、ある程度の長さで、ある程度の特殊性を以て説明されているが、本発明は、そのような特殊性、実施形態、または任意の特定の実施形態に限定されるように意図されておらず、本発明は、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。その理由は、先行技術を考慮してそのような請求の範囲を可能な限り広く解釈するためであり、また本発明の意図する範囲を効果的に包含するためである。
【0266】
実施例
実施例1:SOD1 siRNAの設計と合成
SOD1 siRNAの設計
ヒトSOD1遺伝子を標的とするsiRNAを同定するためにsiRNA設計を行った。このデザインでは、表2に記載されるように、ヒト((GenebankアクセスNO.NM_000454.4(配列番号:1))について、NCBI Refseqコレクションから(リリース63)(配列番号:2))からのカニクイザル((Genebank アクセスNO.XM_005548833.1)について、および、Ensemblプロジェクトからの(リリース75))アカゲザル(SOD1トランスクリプトENSMMUT00000002415(配列番号:3)についてのSOD1トランスクリプトを使用した。
【0267】
【表2】

siRNA二本鎖は、アンチセンス鎖の2-18位についてヒトSOD1転写物と100%の同一性を有するように設計され、アンチセンス鎖の2-18位について非ヒト霊長類SOD1転写産物と部分的または100%の同一性を有する。全てのsiRNA二本鎖において、アンチセンス鎖の1位はUに操作され、センス鎖の位置19はこの位置で二本鎖を不対合にするようにCに操作された。
【0268】
SOD1 siRNA配列選択
ヒト、カニクイザルおよびアカゲザルSOD1遺伝子に対する予測されたアンチセンス鎖の選択性、およびmiRBase20.0中のアンチセンス鎖の2-7位のシード配列とヒト配列との一致の欠如に基づき、全部で169個のアンチセンスおよび169個のセンスヒトSOD1由来のオリゴヌクレオチドが合成され、二本鎖に形成された(表3)。siRNA二本鎖は、in vitro内因性SOD1遺伝子発現に対する阻害活性について試験された(SOD1 mRNAレベル)。
【0269】
【表3-1】
【0270】
【表3-2】
【0271】
【表3-3】
【0272】
【表3-4】
【0273】
【表3-5】
【0274】
【表3-6】

SOD1 siRNA合成
ホスホラミダイトオリゴマー化化学によって、ABI3900合成機(Applied
Biosystems社)でオリゴリボヌクレオチドを合成した。固体支持体は、2’-デオキシ-チミジン(米国バージニア州スターリングのGlen Research社から購入)を充填したポリスチレンであり、合成スケールが0.2μmolであった。SAFC Proligo社(ハンブルグ、ドイツ)から補助合成試薬、DNAおよびRNAホスホラミダイトを得た。具体的には、5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-3’-O-(2-シアノエチル-N、Nジイソプロピル)ウリジン(U)のホスホラミダイトモノマー、チミジン(dT)、4-N-アセチルシチジン(CAc)、6-N-ベンゾイルアデノシン(Abz)および2’-O-t-ブチルジメチルシリルを有する2-N-イソブチリルグアノシン(GiBu)を用いてオリゴマー配列を構築した。全ホスホラミダイト(アセトニトリル中70mM)のカップリング時間が、活性剤として5-エチルチオ-1H-テトラゾール(ETT)(アセトニトリル中0.5M)を使用して3分であった。合成機で最終的なジメトキシトリチル保護基の除去を実施し、配列を合成した(「DMTオフ」合成)。固相合成の完了時に、オリゴリボヌクレオチドを固体支持体から切断し、水性メチルアミン(40%)とエタノール中メチルアミン(33%)の1:1(v/v)混合物を用いて脱保護した。その溶液を45℃にし、90分後にN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)で希釈し、トリエチルアミン三フッ化水素酸(TEA.HF)を加えた。45℃で2時間インキュベートした後、1M NaOAcおよびアセトンとエタノールとの4:1(v/v)の混合物でオリゴリボヌクレオチドを沈殿させた。ペレットを1M NaCl水溶液に溶解し、サイズ排除クロマトグラフィーにより脱塩した。これは、HiTrap 5mLカラム(GEヘルスケア社)を備えたAKTA精製装置HPLCシステム(GEヘルスケア社、フライブルク、ドイツ)を用いて実施した。MALDI質量分析法またはESI質量分析法によって、オリゴリボヌクレオチドの同一性を確認した。RNA一本鎖からsiRNAを生成するために、等モル量の相補的センス鎖およびアンチセンス鎖を混合し、20mM NaCl、4mMリン酸ナトリウムpH6.8緩衝液中でアニールした。使用するまでsiRNAを凍結保存した。
【0275】
実施例2:ヒトSOD1 mRNA抑制に対するSOD1 siRNAのin vitroスクリーニング
siRNAを標的とするヒトSOD1(表3に記載)を、SOD1 mRNAを定量するためbDNA(分岐DNA)法を用いて、HeLa細胞の内在性SOD1発現の阻害について評価した。用量2種類のアッセイによる結果を用いて、4種の培養細胞での用量反応実験のためのSOD1 dsRNA二本鎖のサブセットを選択し、IC50を算出した。
【0276】
細胞培養およびトランスフェクション
ATCC(ドイツ、ヴェーゼルのLGC Standards社と提携したATCC)からHeLa細胞を入手し、5%CO加湿インキュベーター内、37℃で、ウシ胎仔血清10%(GIBCO/Life Technologies社のUltra-low IgG)およびPen/Strep1%(Biochrom GmbH社、ベルリン、ドイツ)を含むよう補充したHAMのF-12培地(Biochrom GmbH社、ベルリン、ドイツ)で培養した。
【0277】
siRNAによるトランスフェクションのため、96ウェルプレートにHeLa細胞を密度19,000~20,000細胞/ウェルで播種した。製造者の指示に従って、リポフェクタミン2000(Invitrogen/Life Technologies社)を用いてsiRNAのトランスフェクションを行った。2通りの用量投与スクリーニングでは、SOD1 siRNA濃度1nMまたは0.1nMを用いた。用量応答実験では、SOD1 siRNA濃度10、2.5、0.6、0.16、0.039、0.0098、0.0024、0.0006、0.00015および0.000038nMを用いて実施した。対照ウェルに、ルシフェラーゼsiRNA、Aha-1 siRNA、PLGF siRNAまたは関係のないsiRNAの対照混合物をトランスフェクションした。
【0278】
分枝DNAアッセイ-QuantiGene 2.0
siRNAとともに24時間インキュベーションした後、培地を除去し、細胞を150μl溶解混合液(溶解混合液1に対しヌクレアーゼフリー水2)で溶解し、その後53℃で60分間インキュベートした。80μlワーキングプローブセット(Working Probe Set)SOD1(遺伝子標的)、90μlワーキングプローブセットGAPDH(内在性対照)および、20μlまたは10μlの細胞溶解物を捕捉用プレートに添加した。捕捉用プレートを、(SOD1では)55℃、(GAPDHでは)53℃でインキュベートした(約16~20時間)。翌日、その捕捉用プレートを、少なくとも300μlの1×洗浄バッファー(ヌクレアーゼフリー水、緩衝液成分1および洗浄バッファー成分2)を用いて3回洗浄した(最後の洗浄後、プレートを逆さまにし、清潔なペーパータオルで吸い取った)。SOD1捕捉用プレートに100μlの増幅前ワーキング試薬(pre-Amplifier Working Reagent)を加え、アルミニウムホイルでシールし、55℃で1時間インキュベートした。1時間インキュベーションした後、洗浄工程を繰り返し、その後、SOD1およびGAPDH捕捉用プレートいずれにも、100μlの増幅ワーキング試薬(Amplifier Working Reagent)を加えた。55℃(SOD1)または53℃(GAPDH)で1時間インキュベートした後、洗浄および乾燥の工程を繰り返し、100μlの標識プローブ(Label
Probe)を加えた。捕捉用プレートを50℃(SOD1)または53℃(GAPDH)で1時間インキュベートした。その後、プレートを1×洗浄バッファーで洗浄し、乾燥させ、捕捉プレートに基質100μlを加えた。暗所で30分間インキュベートした後、1420発光カウンター(WALLAC VICTOR Light、Perkin Elmer社、ロートガウ-ユーゲスハイム、ドイツ)を用いて発光を読み取った。
【0279】
bDNAデータ解析
各SOD1 siRNAまたは対照siRNAについて、4つのウェルを並行してトランスフェクションし、個々のデータポイントをそれぞれのウェルから収集した。それぞれのウェルについて、SOD1 mRNAレベルをGAPDH mRNAレベルに標準化した。所与のSOD1 siRNAの活性は、対照ウェルの平均SOD1 mRNA濃度(GAPDH mRNAに標準化)に比して、処理された細胞のSOD1 mRNA濃度のパーセント(GAPDH mRNAに標準化)で表された。
【0280】
表3に配列が示されているSOD1 siRNAを1nMまたは0.1nMのいずれかで試験したin vitro HeLaスクリーニングの結果を表4に示している。表4に、それぞれのSOD1 siRNAについて、対照と比較して、処理した細胞中に残存するSOD1 mRNA(GAPDH mRNAに標準化)の平均パーセントおよび標準偏差を示す。1nMでSOD1 siRNAの多数が、HeLa細胞のSOD1 mRNAレベルを80%以上低下させるのに有効であった。さらに、0.1nMでSOD1 siRNAの多数が、HeLa細胞のSOD1 mRNAレベルを80%以上低下させるのに有効であった。
【0281】
【表4-1】
【0282】
【表4-2】
【0283】
【表4-3】
【0284】
【表4-4】
【0285】
【表4-5】

HeLa細胞を対象に0.1nMで最も活性の高いSOD1 siRNAのうち12種類を用量応答実験で評価した。表5ではHeLa細胞を対象に、その選択された12種類のSOD1 siRNAについて対照と比較し、SOD1 mRNA50%の抑制をもたらすIC50濃度を示す。この実験的パラダイムでは、その12種類のSOD1 siRNAは特に強力なものであり、IC50値1~8pMを示した。
【0286】
【表5】

以下の表6に、SOD1 siRNAの12種類のIC50を同定するために用いたHeLa細胞に関する用量応答データを詳細に示す。HeLa細胞では、全12種類のsiRNAにpM IC50があることを明らかにした。表5に示すSOD1 siRNAのIC50に関するデータは、以下の表6にまとめたデータの要約である。
【0287】
【表6】

実施例3:SH-SY5Y細胞、U87細胞およびヒト初代星状細胞の内在性SOD1
mRNA発現に対する選択されたSOD1 siRNAのin vitroスクリーニング
ATCC(ドイツ、ヴェーゼルのLGC Standards社と提携したATCC)からSH-SY5Y細胞を入手し、5%CO加湿インキュベーター内、37℃で、FCS 15%(GIBCO/Life Technologies社のUltra-low
IgG)、L-グルタミン1%(Biochrom GmbH社、ベルリン、ドイツ)およびPen/Strep1%(Biochrom GmbH社、ベルリン、ドイツ)を含むように補充したDulbeccoのMEM(Biochrom GmbH社、ベルリン、ドイツ)で培養した。
【0288】
ATCC(ドイツ、ヴェーゼルのLGC Standards社と提携したATCC)からU87MG細胞を入手し、5%CO加湿インキュベーター内、37℃で、FCS10%(GIBCO/Life Technologies社のUltra-low IgG)、およびPen/Strep 1%(Biochrom GmbH社、ベルリン、ドイツ)を含むように補充したATCC配合イーグル最小必須培地(ATCC-formulated Eagle’s Minimum Essential Medium)(ドイツ、ヴェーゼルのLGC Standards社と提携したATCC)で培養した。
【0289】
LONZA(Lonza Sales社、バーゼル、スイス)からヒト初代星状細胞を入手し、5%CO加湿インキュベーター内、37℃で、AGM SingleQuotキット(Lonza Sales社Ltd、バーゼル、スイス)を用いて補充したABM基礎培地(ABM Basal Medium)(Lonza Sales社、バーゼル、スイス)で培養した。
【0290】
SH-SY5Y細胞にリポフェクタミン2000(Invitrogen/Life Technologies社)、U87細胞にRNAiMAX(Invitrogen/Life Technologies社)およびヒト初代星状細胞にリポフェクタミン2000(Invitrogen/Life Technologies社)のトランスフェクション試薬を用いたことを除いて、HeLa細胞について記載したのとほぼ同じ方法で12種類のsiRNA(D-2757、D-2806、D-2860、D-2861、D-2875、D-2871、D-2758、D-2759、D-2866、D-2870、D-2823、D-2858)を用いてSH-SY5Y細胞、U87MG細胞およびヒト初代星状細胞のトランスフェクションのほか、bDNAを用いたSOD1およびGAPDH mRNAレベルの定量を実施した。
【0291】
以下の表7、8、9にそれぞれ、SOD1 siRNAの12種類(D-2757、D-2806、D-2860、D-2861、D-2875、D2871、D-2758、D-2759、D-2866、D-2870、D-2823、D-2858)のIC50を同定するために用いたSH-SY5Y細胞、U87MG細胞およびヒト初代星状細胞に関する用量反応データを詳細に示す。U87細胞では、全12種類のsiRNAにpM IC50があることを明らかにした。
【0292】
表10にIC50値を示す。ヒト初代星状細胞の方が、総じてSH-SY5YやU87MG細胞よりもIC50値が高かった。
【0293】
【表7】
【0294】
【表8】
【0295】
【表9】

表10のSOD1 siRNAのIC50データは、表7、8および9に示すデータの要約である。
【0296】
【表10】

実施例4:SOD1を標的とするsiRNA
有効であることが確認されているSOD1 siRNAのパッセンジャー-ガイド二本鎖を発現ベクター内に遺伝子操作し、中枢神経系または神経細胞系の細胞にトランスフェクションさせる。siRNAノックダウン試験に利用されるオーバーハングはsiRNAの標準的なdTdTであるが、構築物のオーバーハングは、あらゆるジヌクレオチドのオーバーハングを含み得る。
【0297】
使用される細胞は、初代細胞または多能性幹細胞(iPS細胞)に由来するものであってもよい。
次に、SOD1ノックダウンを測定し、ディープシーケンスを実施して、発現ベクターに投与したそれぞれの構築物からプロセシングされた正確なパッセンジャー鎖およびガイド鎖を決定する。
【0298】
ノックダウン、例えばRNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)プロセッシングの有効性を明らかにするため、パッセンジャー鎖に対するガイド鎖比を算出する。
N末端を配列決定して分裂部位を決定し、標的の均質な分裂の割合を算出する。分裂率は90%を上回ることが予想される。
【0299】
並行試験でHeLa細胞を同時にトランスフェクションし、SOD1のin vitroノックダウンを分析する。オフターゲット効果を明らかにするため対照としてルシフェラーゼ構築物を用いる。
【0300】
ディープシーケンスを再度実施する。
実施例5:SOD1を標的とするパッセンジャーおよびガイドの配列
本発明に照らして、SOD1 siRNAを設計した。表11Aおよび11Bにこれを示す。これらの表にパッセンジャー鎖とガイド鎖を記載する。表11Aおよび11Bでは、配列名称の「miR」構成要素は、必ずしもmiRNA遺伝子の配列番号付けに対応しているわけではない(例えば、VOYmiR-101は配列の名称であり、必ずしもmiR-101がその配列の一部であることを意味するものではない)。
【0301】
【表11A-1】
【0302】
【表11A-2】
【0303】
【表11A-3】
【0304】
【表11A-4】
【0305】
【表11A-5】
【0306】
【表11A-6】
【0307】
【表11A-7】
【0308】
【表11B】

実施例6:AAV-miRNAベクター中のSOD1 siRNA構築物
表11にまとめたSOD1 siRNAのパッセンジャー-ガイド二本鎖をAAV-miRNA発現ベクター内に遺伝子操作する。ITRからITRへ、列挙される5’から3’への構築物は、突然変異体ITR、プロモーター(CMV、U6またはCB6プロモーターのいずれかであり、CMVieエンハンサー、CBAプロモーターおよびSV40イントロンを含む)、表11のパッセンジャー鎖およびガイド鎖(パッセンジャー鎖とガイド鎖との間のループ、パッセンジャー鎖の前の5’フランキング領域およびガイド鎖の後の3’フランキング領域を有する)、ウサギグロビンポリAおよび野生型ITRを含む。In vitroおよびin vivo試験を実施し、AAV-miRNA発現ベクターの有効性を検証する。
【0309】
実施例7:HeLa細胞における構築物の活性
実施例6に記載されているSOD1 siRNA構築物7種類(VOYmiR-103、VOYmiR-105、VOYmiR-108、VOYmiR-114、VOYmiR-119、VOYmiR-120およびVOYmiR-127)および二本鎖mCherryの対照を、その構築物の活性を検証するためにHeLaにトランスフェクションした。
【0310】
A.パッセンジャーおよびガイド鎖の活性
SOD1 siRNA構築物7種類と二本鎖mCherryの対照をHeLa細胞にトランスフェクションした。48時間後、内在性mRNA発現を評価した。SOD1 siRNA構築物全7種類では、75~80%のノックダウンを伴うガイド鎖の高い活性と、パッセンジャー鎖の低い活性または活性不存在とが示された。SOD1 siRNA候補ベクターのガイド鎖は、高い活性を示し、75~80%のSOD1のノックダウンをもたらしたが、パッセンジャー鎖では活性がほとんどない、または全くないことが示された。
【0311】
B.SOD1の構築物の活性
SOD1 siRNA構築物7種類および二本鎖mCherry(dsCherry)の対照を1e4vg/細胞、1e3vg/細胞または1e2vg/細胞のMOIでHeLa細胞にトランスフェクションした。72時間後、内在性mRNA発現を評価した。SOD1 siRNA構築物全7種類が、1e3vg/細胞で効率的なノックダウンを示した。図1に示すように、SOD1 siRNA構築物のほとんどで、活性が高い(ノックダウン75~80%)ことが示された。
【0312】
実施例8:HEK細胞における構築物の活性
実施例6に記載されたSOD1 siRNA構築物30種類(VOYmiR-102.860、VOYmiR-102.861、VOYmiR-102.866、VOYmiR-102.870、VOYmiR-102.823、VOYmiR-104.860、VOYmiR-104.861、VOYmiR-104.866、VOYmiR-104.870、VOYmiR-104.823、VOYmiR-109.860、VOYmiR-109.861、VOYmiR-109.866、VOYmiR-109.870、VOYmiR-109.823、VOYmiR-114.860、VOYmiR-114.861、VOYmiR-114.866、VOYmiR-114.870、VOYmiR-114.823、VOYmiR-116.860、VOYmiR-116.861、VOYmiR-116.866、VOYmiR-116.870、VOYmiR-116.823、VOYmiR-127.860、VOYmiR-127.861、VOYmiR-127.866、VOYmiR-127.870、VOYmiR-127.823)、VOYmiR-114の対照および二本鎖mCherryを細胞にトランスフェクションし、構築物の活性を検証した。
【0313】
A.HEK293のパッセンジャーおよびガイド鎖の活性
構築物30種類および対照2つをHEK293T細胞にトランスフェクションした。24時間後、内在性mRNA発現を評価した。構築物のほとんどでは、ガイド鎖の活性が高く(図2)、パッセンジャー鎖の活性が低いか、あるいは活性がみられない(図3)ことが示された。
【0314】
B.HeLaのパッセンジャーおよびガイド鎖の活性
HeLa細胞に構築物30種類および対照2つをトランスフェクションした。48時間後、内在性mRNA発現を評価した。ほとんどの構築物では、ガイド鎖の活性が高く(図4)、パッセンジャー鎖の活性が低いか、あるいは活性がみられない(図5)ことが示された。
【0315】
C.HelAおよびHEK293の相関
構築物30種類のノックダウンは、HeLa細胞とHEK293細胞との間で類似していた。その構築物30種類は、構築物のガイド鎖に対してノックダウンを示した(図2および4を参照せよ)。構築物のガイド鎖のほとんどが、ノックダウン70~90%を示した。
【0316】
D.キャプシドの選択
HeLaとHEK293のトップの構築物をAAVにパッケージングし、HeLa感染を実施する。その構築物をパッケージングする最良のAAVを割り出すため、AAV2またはAAV-DJ8のいずれかにパッケージングされたmCherryをMOI 10vg/細胞、1e2vg/細胞、1e3vg/細胞、1e4vg/細胞または1e5vg/細胞でHeLa細胞に感染させ、40時間後にその発現を評価した。トップの構築物をパッケージングするためキャプシドとしてAAV2を選択した。
【0317】
E.AAV2産生
HeLaおよびHEK293のトップの構築物をAAV2(1.6kb)にパッケージングし、このほか、二本鎖mCherry(dsmCherry)の対照もパッケージングした。分析前にパッケージングした構築物にイオジキサノール精製を実施した。AAV力価を表12に示す。
【0318】
【表12】

HeLa細胞におけるSOD1ノックダウンに対する形質導入の効果を図6に示す。さらに、HeLa細胞において、より大きいMOI(1.0E+05と比較した1.0E+04)では、全ての構築物についてノックダウンの増加を示さなかった。
【0319】
F.ヒト運動ニューロン前駆細胞(HMNP)における構築物の活動
実施例8Eに記載されるような上位18のpri-miRNA構築物およびmCherryの対照を、10E5のMOIでヒト運動ニューロン前駆細胞(HMNP)に感染させた。48時間後、内在性mRNA発現を評価した。約半数の構築物がHMNPのSOD1を50%以上サイレンシングさせ、その内の4つが70%以上サイレンシングさせた(図7)。
【0320】
G.in vivo研究用の構築物の選抜
標的配列に大きな影響を及ぼし、カセットにわずかな影響を及ぼした上位12の構築物が選択される。AAV-rh10キャプシド内にパッケージングされた構築物を注射用に製剤し、構築物が及ぼすin vivoへの影響を研究するため哺乳類に投与した。
【0321】
実施例9:構築物のIn Vitro研究
AAV2にパッケージングされた実施例8Dに記載の18の構築物およびmCherry対照をこの研究に使用した。この研究には、培地(500mlのDMEM/F-12 GLUTAMAX(商標)補充物(Life Technologies、Cat#.10565-018)、50mlのFBS(Life Technologies、Cat#16000-044、lot:1347556)、5mlのMEM非必須アミノ酸溶液(100x)(Cat.#11140-050)、および5mlのHEPES(1M)(Life Technologies、Cat#15630-080))中のHEK293T細胞(Fisher Scientific、Cat.# HCL4517)、培地(500mlのDMEM/F-12 GLUTAMAX(商標)補充物(Life Technologies、Cat#.15630-080)、50mlのFBS(Life
Technologies、Cat#16000-044、lot:1347556)、5mlのMEM非必須アミノ酸溶液(100x)(Cat.# 11140-050)、および5mlのHEPES(1M)(Life Technologies、Cat#15630-080))中のU251MG細胞(P18)(Sigma,Cat#. 09063001-1VL)、または、培地(AGM SingleQuot Kit Suppl&Growth Factor(Lonza、Cat# CC-4123)を補充した500mlのABM基礎培地(Lonza、Cat# CC-3186))中の正常ヒト星状細胞(HA)(Lonza、Cat# CC-2565)を用いて構築物を試験した。HEK293T細胞(96ウェルプレートに5×10E4細胞/ウェル)、U251MG細胞(96ウェルプレートに2×10E4細胞/ウェル)およびHA細胞(96ウェルプレートに2×10E4細胞/ウェル)を播種し、細胞の感染に使用したMOIは1.0 E+05であった。48時間後に細胞を分析したが、その結果を表13に表す。
【0322】
【表13】

ほとんどの構築物について、HEK293T細胞において80%以上のノックダウンが観察された。U251MG細胞およびHA細胞において、構築物の半分以上が80%を超えるノックダウンを示した。
【0323】
実施例10:用量依存性のSOD1の減少
実施例8Eに記載されたトップ18のpri-miRNA構築物4つとmCherryの対照を、1.0E+02、1.0E+03、1.0E+04、1.0E+05または1.0E+06のMOIで、ヒト星状細胞株(U251MG)または初代ヒト星状細胞(HA)にトランスフェクトした。48時間後に内因性mRNA発現を評価したが、その用量依存的サイレンシングを図8(U251MG)と図9(HA)に示す。すべての構築物について、用量の増加はまた、ノックダウンされたSOD1 mRNAの量の増加と相関した。
【0324】
実施例11:SOD1ノックダウンの時間的経過
SOD1 siRNAの陰性対照および陽性対照である2つのpri-miRNA構築物(VOYmiR-120およびVOYmiR-122)を、ヒト星状細胞株(U251MG)にトランスフェクトした。図10に示すように、相対SOD1 mRNAを60時間測定した。hSOD1のノックダウンのうち70~75%は、Nucleofectorトランスフェクション後の両方のpri-miR構築物について見られたが、中でも12~24時間の間に最大のノックダウンを示した。
【0325】
実施例12:SOD1ノックダウンと鎖のパーセント
VOYmiR-104を、50pM、100pMおよび150pMの濃度でHeLa細胞にトランスフェクトし、未処理(UT)細胞と比較した。相対的なSOD1 mRNA、ガイド鎖のパーセントおよびパッセンジャー鎖のパーセントを、図11A-11Cに示すように、36、72、108および144時間で決定した。最も高い濃度(150pM)は発現の最大低下を示したが、3つの用量すべてがSOD1の発現の有意な減少を示した。
【0326】
実施例13:SOD1を標的とする構築物
構築物をイヌSOD1のために設計した。その構築物を表14に示す。イヌSOD1は、本発明で標的とする領域において、ヒトと100%保存されている。パッセンジャー鎖およびガイド鎖の配列は、表に記載されている。表14において、配列の名称の「miR」構成要素は、必ずしもmiRNA遺伝子の配列番号付けに対応するわけではない(例えば、dVOYmiR-102は配列の名称であり、必ずしもmiR-102が配列の一部であることを意味するものではない)。
【0327】
【表14】

実施例14:調節ポリヌクレオチドの位置が及ぼす影響
A.ウイルス力価への影響
図12に示すように、siRNA分子(VOYmiR-114またはVOYmiR-126)を6つの異なる位置で発現ベクター(ゲノムサイズ2400ヌクレオチド;scAAV)に組み込んだ。図12では、「ITR」は逆方向末端反復であり、「I」はイントロンを表し、「P」はポリAであり、「MP」はsiRNA分子を含む調節ポリヌクレオチドを示す。ウイルス力価を、TaqMan PCRを用いて位置6および対照(調節ポリヌクレオチドなしの構築物;scAAV)について評価し、その結果を表15に示す。
【0328】
【表15】

B.ゲノムの完全性への影響
siRNA分子(VOYmiR-114)を、図12に示すように、6つの異なる位置の発現ベクター(ゲノムサイズ2400ヌクレオチド;scAAV)および調節ポリヌクレオチドなしの対照(scAAV)に組み込んだ。図12では、「ITR」は逆方向末端反復であり、「I」はイントロンを表し、「P」はポリAであり、「MP」はsiRNA分子を含む調節ポリヌクレオチドを示す。精製されたAAV調製物からウイルスゲノムを抽出し、中性アガロースゲル上に流した。短縮型ゲノムはすべての構築物で見られるが、その短縮型ゲノムのおよそのパーセント(合計のパーセント)を表16に示す。
【0329】
【表16】

短縮型ゲノムは位置6が最大値であり位置4および5が最小値だった。
【0330】
C.ノックダウン効率への影響
図12に示すように、6つの異なる位置でsiRNA分子(VOYmiR-114)を発現ベクター(AAV2)(ゲノムサイズ2400ヌクレオチド;scAAV)に組み込んだ。図12では、「ITR」は逆方向末端反復であり、「I」はイントロンを表し、「P」はポリAであり、「MP」はsiRNA分子を含む調節ポリヌクレオチドを示す。1x10vg/細胞,1x10vg/細胞および1x10vg/細胞でHeLa細胞の形質導入を実施した。SOD1 mRNAの発現(対照の%(eGFP)として)を感染の72時間後に測定した結果を表17に示す。
【0331】
【表17】

位置3は最も高いSOD1 mRNA発現を示し(対照の%として)、位置4は最も低いSOD1 mRNA発現を示した(対照の%として)。
【0332】
実施例15:ゲノムサイズの影響
A.ウイルス力価への影響
図12に示すように、siRNA分子(VOYmiR-114)を位置1、2、5および6の発現ベクター(ゲノムサイズ2kb;scAAV)に組み込んだ。図12では、「ITR」は逆方向末端反復であり、「I」はイントロンを表し、「P」はポリAであり、「MP」はsiRNA分子を含む調節ポリヌクレオチドを示す。siRNA分子を含まない二本鎖対照(ゲノムサイズ1.6kb;scAAV ctrl)と、二本鎖発現ベクター(scAAV miR114;ITR(105ヌクレオチド)-プロモーター(~900ヌクレオチド)-siRNA分子(158ヌクレオチド) - ポリA配列(127ヌクレオチド)およびITRを含む調節ポリヌクレオチド、ならびにsiRNA分子を含まない対照(eGFP;scAAV)を比較した。ウイルス力価をTaqMan PCRを用いて測定した結果を表18に示す。
【0333】
【表18】

位置5の構築物で最も低いウイルス力価、位置2の構築物で最も高いウイルス力価が観察された。
【0334】
B.ゲノムの完全性への影響
図12に示すように、siRNA分子(VOYmiR-114)を位置1、2、5および6の発現ベクター(ゲノムサイズ2kb;scAAV)に組み込んだ。図12では、「ITR」は逆方向末端反復であり、「I」はイントロンを表し、「P」はポリAであり、「MP」はsiRNA分子を含む調節ポリヌクレオチドを示す。siRNA分子を含まない二本鎖対照(ゲノムサイズ1.6kb;scAAV ctrl)と、二本鎖発現ベクター(scAAV miR114;ITR(105ヌクレオチド)-プロモーター(~900ヌクレオチド)-siRNA分子(158ヌクレオチド)-ポリA配列(127ヌクレオチド)およびITRを含む調節ポリヌクレオチド、ならびにsiRNA分子を含まない対照(eGFP;scAAV)を比較した。短縮型のゲノムはすべての構築物で見られ、その短縮型ゲノムのおよそのパーセント(全体中のパーセント)を表19に示す。
【0335】
【表19】

全ての構築物はいくつかの短縮型ゲノムを有することが断定された。
【0336】
異なるsiRNA分子の効果を究明するためのさらなる研究を行った。図12に示すように、VOYmiR-114およびVOYmiR-126を、位置3で別個の発現ベクター(ゲノムサイズ1.6kb;scAAV)に挿入した。図12では、「ITR」は逆方向末端反復であり、「I」はイントロンを表し、「P」はポリAであり、「MP」はsiRNA分子を含む調節ポリヌクレオチドを示す。VOYmiR-114構築物の場合、ベクターゲノムの5’末端(1526ヌクレオチド)と調節ポリヌクレオチドの中心(可撓性ループの中央)の間の距離は1115ヌクレオチドである。VOYmiR-126構築物の場合、ベクターゲノムの5’末端(1626ヌクレオチド)と調節ポリヌクレオチドの中心(可撓性ループの中央)との間の距離は1164ヌクレオチドである。
【0337】
VOYmiR-114構築物について、ウイルス力価(15cm培養皿当たりのVG)は約1.1E+11であった。VOYmiR-126構築物について、イントロンプローブウイルス力価(15cm培養皿当たりのVG)は約1.2E+12であった。対照は約2.1E+11(15cm培養皿当たりのVG)であった。VOYmir-114は約20%の短縮型ゲノムを有し、VOYmiR-126は約15%の短縮型ゲノムを有し、対照は約5%の短縮型ゲノムを有した。
【0338】
実施例16:一本鎖構築物の影響
A.ウイルス力価への影響
図12に示すように、位置1、3および5の発現ベクター(ゲノムサイズ4.7kb;ssAAV)にsiRNAポリヌクレオチド(VOYmiR-114)を組み込んだ。またsiRNAポリヌクレオチド(ゲノムサイズ2kb;ssAAV)なしで試験した対照もあった。図12では、「ITR」は逆方向末端反復であり、「I」はイントロンを表し、「P」はポリAであり、「MP」はsiRNA分子を含む調節ポリヌクレオチドを示す。ウイルス力価をTaqMan PCRを用いて評価した結果を表20に示す。
【0339】
【表20】

位置3が最も高いウイルス力価を示し、位置1そして位置5の順で続いた。
【0340】
B.ゲノムの完全性への影響
図12に示すように、位置1、3および5の発現ベクター(ゲノムサイズ4.7kb;ssAAV)にsiRNA分子(VOYmiR-114)を組み込んだ。また調節性ポリヌクレオチドなしで試験した対照もあった(ゲノムサイズ2kb;ssAAV)。図12では、「ITR」は逆方向末端反復であり、「I」はイントロンを表し、「P」はポリAであり、「MP」はsiRNA分子を含む調節ポリヌクレオチドを示す。精製されたAAV調製物からウイルスゲノムを抽出し、中性アガロースゲル上に流した。すべての構築物に短縮型ゲノムが観察され、短縮型ゲノムのおよそのパーセント(全体中のパーセント)を表21に示す。
【0341】
【表21】

短縮型ゲノムは位置5が最大値であり位置3が最小値であった。
【0342】
C.ノックダウン効率への影響
図12に示すように、位置1、3および5の発現ベクター(ゲノムサイズ4.7kb;ssAAV)にsiRNA分子(VOYmiR-114)を組み込んだ。siRNA分子を含まない一本鎖対照(ゲノムサイズ2kb;ssAAV ctrl)、siRNA分子を含まない二本鎖対照(ゲノムサイズ1.6kb;scAAV ctrl)、siRNA分子を含む二本鎖発現ベクター(ゲノムサイズ2.4kb;scAAV miR114)が存在した。図12では、「ITR」は逆方向末端反復であり、「I」はイントロンを表し、「P」はポリAであり、「MP」はsiRNA分子を含む調節ポリヌクレオチドを示す。1x10vg/細胞,1x10vg/細胞および1 x 10vg/細胞でHeLa細胞の形質導入を実施した。SOD1 mRNA発現(対照(eGFP)の%として)を感染の72時間後に測定し、その結果を表22に示す。
【0343】
【表22】

位置3は最も高いSOD1 mRNA発現(対照の%として)を有し、次いで位置1であり、最も低いSOD1 mRNA発現を有する一本鎖構築物(対照の%として)は位置5であった。一本鎖構築物のいずれも、siRNAポリヌクレオチドを用いた二本鎖対照ほど低いノックダウン効率を有さなかった。
【0344】
実施例17:in vivo でのSOD1ノックダウン
pri-miRNAの in vivo生物活性を測定するために、自己相補のpri-miRNA(VOYmiR-114.806、VOYmiR127.806、VOYmiR102.860、VOYmiR109.860、VOYmiR114.860、VOYmiR116.860、VOYmiR127.860、VOYmiR102.861、VOYmiR104.861、VOYmiR109.861、VOYmiR114.861、VOYmiR109.866、VOYmiR116.866、またはVOYmiR127.866)がCBAプロモーターを有するAAV-DJにパッケージングされた。
【0345】
マウスにおいて、これらのパッケージされたpri-miRNAまたはビヒクルのみの対照(5%ソルビトールおよび0.001%F-68を含むリン酸緩衝化生理食塩水)を、10分間の点鼻内注入によって投与した。ヒトSOD1を発現し、体重約20~30gの雌または雄のTg(SOD1)3Cje/Jマウス(Jackson Laboratory、バーハーバー、メイン州)に線条体を標的とする5μLの被験物質の片側注入をする(ブレグマに対し、前後+0.5mm、中外+2mm。頭蓋骨表面に対し、背腹3.8mm)。被験物質を、33ゲージ針を用いて、予め充填されポンプ制御されたハミルトンマイクロシリンジ(1701モデル、10μl)を用いて、毎分0.5uLで注射する(被験物質当たり5匹の動物)。注射後1、2、3、4または6週間で動物を屠殺し、脳を摘出し、1mmの冠状スラブからの注入部位を包含する同側の線条ならびに隣接する1mmの冠状スラブからの線条体組織を解剖し、瞬間凍結させる。マウス組織サンプルを溶解し、ヒトSOD1タンパク質レベル、SOD1およびマウスGAPDH(mGAPDH)mRNAレベルを定量する。SOD1タンパク質レベルを、ELISA(eBioscience(Affymetrix、サンディエゴ、カリフォルニア州))により定量し、全タンパク質レベルをBCA分析(ThermoFisher Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州)によって定量する。各組織サンプルについて、全タンパク質に対して標準化されたSOD1タンパク質のレベルは、2回の測定の平均値で計算される。これら標準化したSOD1タンパク質レベルをビヒクル群に対してさらに標準化し、次に平均して群(治療群)の平均を得る。SOD1およびmGAPDH mRNAレベルをqRT-PCRによって定量する。各組織サンプルについて、SOD1/mGAPDH(標準化したSOD1 mRNAレベル)の比率を、3回の測定の平均値で計算する。次いで、これらの比率を平均して群(治療群)の平均値を得る。これらの群の平均は、ビヒクル群に対してさらに標準化される。
【0346】
ヒト以外の霊長類においては、被験物質(CBAプロモーターを有するAAV-DJにパッケージされたpri-miRNAの1×1013-3x1013vg)またはビヒクルは、髄腔内腰椎ボーラスにより投与される。約2.5~8.5kgの体重のメスのカニクイザル(Macaca fascicularis、CR Research Model Houston、ヒューストン、テキサス州)には、腰椎に位置するカテーテルの先端を有する移植された単一髄腔内カテーテルを受け入れる。被験物質を、約60分間隔で、1mLボーラス注射(毎分1mL)を3回投与する(被験物質当たり4匹の動物)。投与後4~6週間で動物を屠殺し、選択した組織を採取して生物分析および組織学的評価を行う。SOD1タンパク質およびmRNAレベルを、ビヒクル群に対して、CBAプロモーターを有するAAV-DJにパッケージングされたpri-miRNAでの治療後における抑制について評価する。
【0347】
実施例18:VOYmiR-114.806を用いたin vivoでのSOD1ノックダウン
Tg(SOD1)3Cje/Jマウスにおいて、実施例17に記載のように、CBAプロモーターを有するAAVDJ中にVOYmiR-114.806をパッケージングした。マウスに、一方向性線条体投与によって投与した。投与量は3.7x10vgであった。1週間または2週間後、標準化したSOD1タンパク質レベルの有意な減少はなかった。ビヒクル対照群のSOD1タンパク質濃度は、1週間および2週間後にそれぞれ98+11%(標準偏差)および98+10%であった。第3週までに、VOYmiR-114.806は、標準化SOD1タンパク質レベルをビヒクル対照群の84±1%±2%9.0%に減少させたが、これは統計的に有意であった(p <0.05、Dunnettのポストホック分析による一元配置ANOVA)。第4週および第6週までに、VOYmiR-114.806は、正常化SOD1タンパク質レベルをそれぞれビヒクル対照グループの73+7.9%(p<0.0001)および75+7.4%(p<0.0001)減少させた。これらの結果は、CBAプロモーターを有するAAV-DJにパッケージングされたVOYmiR-114.806が、SOD1タンパク質レベルをダウンモジュレーションするのにin vivoで有効であることを実証している。さらに、これらの結果は、CBAプロモーターを有するAAVDJ中にパッケージングされたVOYmiR-114.806の3.7 x10vgの総線条体用量がSOD1タンパク質レベルの有意なダウンモジュレーションをもたらしたことを実証する。
【0348】
本発明は、記載された幾つかの実施形態に関して、ある程度の長さで、ある程度の特殊性を以て説明されているが、本発明は、そのような特殊性、実施形態、または任意の特定の実施形態に限定されるように意図されておらず、本発明は、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。その理由は、先行技術を考慮してそのような請求の範囲を可能な限り広く解釈するためであり、また本発明の意図する範囲を効果的に包含するためである。
【0349】
本明細書で言及された全ての刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。さらに、セクション見出し、材料、方法、および実施例は、例示的なものに過ぎず、限定することを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
【配列表】
2022081546000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SOD1の発現を阻害するためのsiRNA二本鎖であって、
センス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を含み、
前記センス鎖配列が、配列番号385の19ヌクレオチドを含み、
前記アンチセンス鎖配列が、配列番号386の19ヌクレオチドを含む、siRNA二本鎖
【請求項2】
前記センス鎖および/または前記アンチセンス鎖が、少なくとも20、21、または22ヌクレオチドの長さである、請求項1に記載のsiRNA二本鎖。
【請求項3】
前記センス鎖配列および前記アンチセンス鎖配列が、独立して、21ヌクレオチドの長さである、請求項1または2に記載のsiRNA二本鎖。
【請求項4】
前記センス鎖配列および前記アンチセンス鎖配列の少なくとも1つが、少なくとも1または2ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のsiRNA二本鎖
【請求項5】
前記センス鎖配列および前記アンチセンス鎖配列が、相補性領域を含み、
前記相補性領域が、17~20ヌクレオチドの長さである、請求項1~4のいずれか一項に記載のsiRNA二本鎖。
【請求項6】
前記センス鎖配列が、配列番号385の20ヌクレオチドを含み、
前記アンチセンス鎖配列が、配列番号386の20ヌクレオチドを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のsiRNA二本鎖。
【請求項7】
前記アンチセンス鎖配列および標的mRNA配列が、少なくとも1つのミスマッチを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のsiRNA二本鎖。
【請求項8】
SOD1の発現を阻害するための調節性ポリヌクレオチドであって、
請求項1~7のいずれか一項に記載のsiRNA二本鎖を含み、
前記調節性ポリヌクレオチドが、
(i)5’フランキング領域、
(ii)ループ領域、および/または
(iii)3’フランキング領域
をさらに含む、調節性ポリヌクレオチド。
【請求項9】
SOD1の発現を阻害するための調節性ポリヌクレオチドであって、
siRNA二本鎖のセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を含み、
前記センス鎖配列が、20~22ヌクレオチドの長さであるとともに配列番号385の18ヌクレオチドを含み、
前記アンチセンス鎖配列が、21~22ヌクレオチドの長さであるとともに配列番号386の19ヌクレオチドを含み、
前記調節性ポリヌクレオチドが、
(i)5’フランキング領域、
(ii)ループ領域、および/または
(iii)3’フランキング領域
をさらに含む、調節性ポリヌクレオチド。
【請求項10】
2つの逆方向末端反復(ITR)の間に位置する核酸配列を含む、SOD1の発現を阻害するためのAAVベクターゲノムであって、
前記核酸配列が、請求項1~7のいずれか一項に記載のsiRNA二本鎖をコードする、AAVベクターゲノム。
【請求項11】
2つの逆方向末端反復(ITR)の間に位置する核酸配列を含む、SOD1の発現を阻害するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターゲノムであって、
前記核酸配列が、siRNA二本鎖のセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列をコードしており、
前記センス鎖配列が、20~22ヌクレオチドの長さであるとともに配列番号385の18ヌクレオチドを含み、
前記アンチセンス鎖配列が、21~22ヌクレオチドの長さであるとともに配列番号386の19ヌクレオチドを含む、AAVベクターゲノム。
【請求項12】
前記センス鎖配列が、配列番号385の20ヌクレオチドを含み、
前記アンチセンス鎖配列が、配列番号386の21ヌクレオチドを含む、請求項11に記載のAAVベクターゲノム。
【請求項13】
前記センス鎖配列および前記アンチセンス鎖配列が、相補性領域を含み、
前記相補性領域が、17~20ヌクレオチドの長さである、請求項11または12に記載のAAVベクターゲノム。
【請求項14】
前記センス鎖配列および前記アンチセンス鎖配列が、独立して、21ヌクレオチドの長さである、請求項11~13のいずれか一項に記載のAAVベクターゲノム。
【請求項15】
前記センス鎖配列および前記アンチセンス鎖配列の少なくとも1つが、少なくとも1または2ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む、請求項11~14のいずれか一項に記載のAAVベクターゲノム。
【請求項16】
前記AAVベクターゲノムが、前記センス鎖配列および前記アンチセンス鎖配列を含む調節性ポリヌクレオチドの配列をさらにコードしており、
前記調節性ポリヌクレオチドが、
(i)5’フランキング領域、
(ii)ループ領域、および/または
(iii)3’フランキング領域
を含む、請求項11~15のいずれか一項に記載のAAVベクターゲノム。
【請求項17】
前記AAVベクターゲノムが、
(i)プロモーター、
(ii)エンハンサー、
(iii)イントロン、および/または
(iv)ポリA配列
をさらに含む、請求項11~16のいずれか一項に記載のAAVベクターゲノム。
【請求項18】
請求項11~17のいずれか一項に記載のAAVベクターゲノム、およびAAVキャプシドタンパク質を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子。
【請求項19】
前記AAVキャプシドタンパク質が、AAV9キャプシドタンパク質もしくはそのバリアント、AAV5キャプシドタンパク質もしくはそのバリアント、またはAAVrh10キャプシドタンパク質またはそのバリアントである、請求項18に記載のAAV粒子。
【請求項20】
請求項18または19に記載のAAV粒子、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項21】
細胞中のSOD1遺伝子の発現を阻害または抑制するために使用するための医薬組成物であって、有効量の前記医薬組成物前記細胞に投与される、請求項20に記載の医薬組成物
【請求項22】
象における筋萎縮性側索硬化症(ALS)を、前記対象の細胞におけるSOD1遺伝子の発現を阻害または抑制することによって治療および/または改善するために使用するための医薬組成物であって、前記医薬組成物の治療有効量前記対象に投与される、請求項20に記載の医薬組成物
【請求項23】
細胞中のSOD1の発現を阻害または抑制するために使用するための、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記細胞が、
(i)哺乳動物細胞、
(ii)CNS細胞、
(iii)ニューロン、
(iv)運動ニューロン、もしくは前角運動ニューロン、または
(v)星状細胞
である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
SOD1の発現が、CNS細胞および/またはCNS領域において阻害または抑制される、請求項21~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
(i)前記CNS細胞が、運動ニューロンを含む;
(ii)前記CNS領域が、脊髄領域、前脳領域、中脳領域、後脳領域、またはそれらの組合せを含む;および/または、
(iii)前記CNS領域が、脊髄領域を含む、
請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
SOD1の発現が、約50%~約93%阻害または抑制される、請求項23~26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
SOD1が、野生型SOD1、突然変異型SOD1、またはそれらの組合せを含む、請求項23~27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記ALSが、
(i)家族性ALS、
(ii)散発性ALS、
(iii)初期段階ALS、
(iv)中期段階ALS、および/または
(vi)後期段階ALS
である、請求項25~28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
哺乳動物細胞中のSOD1遺伝子の発現を阻害または抑制するための医薬の製造における、請求項18または19に記載のAAV粒子の使用。
【請求項31】
対象における筋萎縮性側索硬化症(ALS)を、前記対象の細胞におけるSOD1遺伝子の発現を阻害または抑制することによって治療および/または改善するための医薬の製造における、請求項18または19に記載のAAV粒子の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0348
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0348】
本発明は、記載された幾つかの実施形態に関して、ある程度の長さで、ある程度の特殊性を以て説明されているが、本発明は、そのような特殊性、実施形態、または任意の特定の実施形態に限定されるように意図されておらず、本発明は、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。その理由は、先行技術を考慮してそのような請求の範囲を可能な限り広く解釈するためであり、また本発明の意図する範囲を効果的に包含するためである。
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、記載する。
[項1]
センス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を含む、細胞中のSOD1の発現を阻害または抑制するための2つの逆方向末端反復(ITR)の間に位置する核酸配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、前記センス鎖配列は、表3、表11または表14に列挙された配列のヌクレオチド配列と3ヌクレオチド以下で異なる少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含み、前記アンチセンス鎖配列は、表3、表11または表14に列挙された配列のヌクレオチド配列と3ヌクレオチド以下で異なる少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含み、前記センス鎖配列およびアンチセンス鎖配列は少なくとも4ヌクレオチド長の相補性領域を共有する、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
[項2]
前記核酸配列が、siRNA二本鎖のセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を含む、項1に記載のAAVベクター。
[項3]
前記siRNA二本鎖が、siRNA二本鎖ID番号D-2741~ID番号D-2985からなる群から選択される、項2に記載のAAVベクター。
[項4]
前記siRNA二本鎖が、siRNA ID:D-2757、D-2806、D-2860、D-2861、D-2875、D-2871、D-2758、D-2759、D-2866、D-2870、D-2823、およびD-2858の核酸配列からなる群から選択される、項2に記載のAAVベクター。
[項5]
前記相補性領域が少なくとも17ヌクレオチドの長さである、項1に記載のAAVベクター。
[項6]
前記相補性領域が19から21ヌクレオチドの長さである、項5に記載のAAVベクター。
[項7]
前記相補性領域が19ヌクレオチドの長さである、項6に記載のAAVベクター。
[項8]
前記センス鎖配列およびアンチセンス鎖配列が、独立して、30ヌクレオチド以下である、項1に記載のAAVベクター。
[項9]
前記センス鎖配列およびアンチセンス鎖配列の少なくとも1つが、少なくとも1ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む、項1に記載のAAVベクター。
[項10]
前記センス鎖配列およびアンチセンス鎖配列の少なくとも1つが、少なくとも2ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む、項9に記載のAAVベクター。
[項11]
前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV9.47、AAV9(hu14)、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ8およびAAV-DJおよびそれらの変異体からなる群から選択されるキャプシド血清型を含む、項1に記載のAAVベクター。
[項12]
細胞中のSOD1遺伝子の発現を阻害する方法であって、項1~11のいずれか一項に記載のAAVベクターを含む組成物を前記細胞に投与することを含む方法。
[項13]
前記細胞が哺乳動物細胞である、項12に記載の方法。
[項14]
前記哺乳類細胞が運動ニューロンである、項13に記載の方法。
[項15]
前記哺乳類細胞が星状細胞である、項13に記載の方法。
[項16]
治療を必要とする対象における筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療および改善の少なくとも一方を行う方法であって、項1~11のいずれか一項に記載のAAVベクターを含む組成物の治療有効量を前記対象に投与することを含む方法。
[項17]
前記SOD1の発現が阻害または抑制される、項16に記載の方法。
[項18]
前記SOD1が野生型SOD1、少なくとも1つの突然変異を有する突然変異SOD1、または野生型SOD1および少なくとも1つの突然変異を有する突然変異SOD1である、項17に記載の方法。
[項19]
前記SOD1の発現が、約20%~約100%阻害または抑制される、項16に記載の方法。
[項20]
前記ALSが、同定されたSOD1遺伝子突然変異を有する家族性ALSである、項16に記載の方法。
[項21]
前記ALSが散発性ALSである、項16に記載の方法。
[項22]
SOD1遺伝子が細胞内で機能効果をもたらす変異を含む細胞におけるSOD1遺伝子の発現を抑制する方法であって、項1~11のいずれか一項に記載のAAVベクターを含む組成物を前記細胞に投与することを含む方法。
[項23]
前記細胞が哺乳動物細胞である、項22に記載の方法。
[項24]
前記哺乳動物細胞が運動ニューロンである、項23に記載の方法。
[項25]
前記哺乳類細胞が星状細胞である、項23に記載の方法。
【外国語明細書】