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特開2022-81548エチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット、前記ペレットの製造方法及びそれから成る押出成型フィルム
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  • 特開-エチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット、前記ペレットの製造方法及びそれから成る押出成型フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081548
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】エチレン-ビニルアルコール共重合体ペレット、前記ペレットの製造方法及びそれから成る押出成型フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220524BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C08J3/12 Z
C08J5/18 CEX
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031009
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2019123367の分割
【原出願日】2019-07-02
(31)【優先権主張番号】16/029,063
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】張 鴻銘
(72)【発明者】
【氏名】林 文星
(72)【発明者】
【氏名】梁 志傑
(72)【発明者】
【氏名】許 嘉豪
(57)【要約】
【課題】ブリッジングが起こらないエチレン-ビニルアルコ-ル共重合体ペレットを提供する。
【解決手段】本発明のエチレン-ビニルアルコ-ル共重合体(EVOH)を含む押出フィルムは、実質上ブロ-ホ-ル(blow holes)または薄膜化(film-thinning)を有していない。前記押出フィルムはペレットを押出機に投入することで形成される。前記ペレットの90~100重量%が5メッシュ(ASTM E11規格)を通り、前記ペレットの0~10重量%が10メッシュより小さい。これによりペレットが均一に投入されブリッジングが起こらない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-ビニルアルコ-ル共重合体(EVOH)ペレットであって、粒子の大きさの分布が、前記ペレットの90~100重量%が5~10メッシュ(ASTM E11規格)に分布しており、前記ペレットの0~10重量%が10メッシュ(ASTM E11規格)より小さく、エチレンの含有量が24~48モル%であり、前記エチレン-ビニルアルコ-ル共重合体は少なくとも95モル%のケン化度を有し、20度以上30度未満の安息角を有し、少なくとも0.7g/mlのかさ密度を有することを特徴とするエチレン-ビニルアルコ-ル共重合体(EVOH)ペレット。
【請求項2】
少なくとも0.7458g/mlのかさ密度を有することを特徴とする請求項1に記載のEVOHペレット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたEVOHペレットにより形成されたEVOHフィルムであって、前記EVOHフィルムは、0.08~3.2ml×20μm/m2×day×atmの酸素透過率を示す、請求項1又は2に記載のEVOHペレット。
【請求項4】
前記EVOHフィルムは、ポリエチレン、ポリエチレン-グラフト-無水マレイン酸、ナイロン、ポリプロピレン及びバインダ-樹脂からなる群から選ばれる、前記EVOHフィルムと共に押出成形される層を少なくとも一層含むことを特徴とする請求項3に記載のEVOHペレット。
【請求項5】
前記EVOHフィルムは、ブロ-ホ-ル(blow holes)を有していないことを特徴とする請求項3又は4に記載のEVOHペレット。
【請求項6】
エチレン-ビニルアルコ-ル共重合体(EVOH)ペレットであって、粒子の大きさの分布が、前記ペレットの90~100重量%が5~10メッシュ(ASTM E11規格)に分布しており、前記ペレットの0~10重量%が10メッシュ(ASTM E11規格)より小さいもので構成されており、エチレンの含有量が24~48モル%であり、前記エチレン-ビニルアルコ-ル共重合体は少なくとも95モル%のケン化度を有し、前記EVOHペレットは安息角が20度以上30度未満であり、かさ密度が0.7~0.8g/mlであることを特徴とするエチレン-ビニルアルコ-ル共重合体(EVOH)ペレット。
【請求項7】
請求項1又は2に記載されたEVOHペレットを押出機に移送し前記EVOHペレットを押し出す前に溶融し前記押出機から押し出す方法であって、前記方法は前記EVOHペレットを前記押出機に投入することを含み、前記ペレットはその粒子の大きさの分布が、前記ペレットの90~100重量%が5~10メッシュ(ASTM E11規格)に分布しており、前記ペレットの0~10重量%が10メッシュ(ASTM E11規格)より小さいことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記ペレットは、EVOHを含む溶液を移送しチョッパ羽根が接触することで形成され、前記チョッパ羽根の回転速度は1,500~3,000rpmであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液の固体含有量は少なくとも38重量%であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法はさらに、前記溶液を移送しチョッパ羽根が接触することで形成されるEVOHペレットを、100重量%の前記EVOHペレットがASTM E11規格5メッシュを通り、少なくとも90重量%がASTM E11規格10メッシュを維持し、0~10重量%がASTM E11規格10メッシュを通るようふるいにかける工程を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法はさらに、前記EVOHペレットの安息角を制御し、前記EVOHペレットの安息角を30度より小さくする工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法はさらに、前記EVOHペレットのかさ密度を制御し、前記EVOHペレットのかさ密度を少なくとも0.7g/mlにする工程を含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記EVOHを含む溶液を移送しチョッパ羽根が接触する工程は、水没した状態で行われることを特徴とする請求項8~12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)ペレットに関する。本発明のエチレン-ビニルアルコール共重合体ペレットは押出機のような様々な設備の中における移送効率を改善することができる。本発明の開示するペレット(または粒子)は、ペレットが一般的な押出機のホッパーとシリンダの間で発生するブリッジングを防ぐことができ、ひいては押出口の移送の安定性を高めることができる。本発明の開示する実施例のペレットは、押出時にブローホール(blow holes)や薄膜化(film-thinning)といった問題が発生しない優れたフィルムを生産することができる。前記改良されたフィルムは酸素バリア性に優れている。本発明の開示する実施例のペレットは共押出の実施例にも応用することができる。本発明の開示するペレットの製造方法は、従来技術のように2つの生産ラインを使用する必要がなく、さらにEVOHペレットは水中で切断するため、ホットカッティング方式のように熱履歴の異なるペレットが生産されるようなことがない。前記EVOHペレットを水中で切断するメリットは、前記ペレットに他の添加剤を添加しやすいことにある。
【背景技術】
【0002】
エチレン-ビニルアルコール共重合体はよく知られた重合体であり、次に示すとおり、重合とケン化の2つの工程で生産される。式中、mは24~48、nは52~76である。
【化1】
【0003】
この重合とケン化の2つの工程によりペレット状の重合体が生産されるが、それらペレットのサイズは均等なものではない。従来の技術では、EVOHペレットを利用しEVOHフィルムを製造する際、押出機に材料を投入するときに効率が低下する問題があり、材料を入れる効率が悪く安定していないときにモーターがスクリューを動かすことにより電流が安定せず、肉眼または検査機で生産物を検査するとブローホールや薄膜化、不規則に半透明なものが発見されたりする。本発明において「薄膜化」とは、ブローによりEVOHフィルムを製造する際、フィルムの厚みが均一でなく一部が薄くなってしまう現象をいう。ブロー時に引き伸ばされることによって薄膜化した部分がさらに引き伸ばされ、ブローホールが発生する場合もある。よって、本発明において「ブローホール」とは、薄膜化が重大であることを表す。エチレン-ビニルアルコール共重合体はエチレンとビニルアルコールの半結晶性ランダムコポリマーであり、優れた透明度を有するため、腐りやすい食品を包装するためのものとして広く利用されている。しかし、このような包装用品に最も必要な性能は、優れた酸素バリア性である。よって、EVOHフィルムに不規則に半透明なもの、薄膜化またはブローホールがあると、酸素バリア性が低下し、適合性に欠けるフィルムになってしまう。
【0004】
これらの現象を観察した結果、発明者は品質の悪いEVOHフィルムが生産される原因が、押出機スクリューに供給され、及び/または押出機スクリューによって移送されるペレットの塊が起こすブリッジングにあるとわかった。ペレットの塊同士のブリッジングとは、ペレットを下流に素早く移送する際にペレットが不均一または消失する現象を指す。ブリッジングはまた、モーターが押出機スクリューを動かす際に発生する不安定な動作電流の原因の一つでもある。押出機を通る際のペレットの大きさが正確に計量されていない場合、移送の不均一を招き、ペレットの塊同士のブリッジングを引き起こし、製品にブローホールや薄膜化が発生する原因となる。
【0005】
先行技術ではブリッジングの問題の解決が試みられている。例えば、台湾特許公開番号TW201531489Aには、(A1)円形や楕円形の断面を有するペレットと(A2)円柱状のペレットが、A1:A2が99:1から20:80の割合になるよう混合する方法が開示されている。この方法の問題点は、2つの生産ラインで異なる形状のペレットを形成せねばならず、さらに特定の比率で2つの形状のペレットを混合する工程が必要になる。中国特許番号CN1262595Cには、EVOH樹脂を押出機に投入し、樹脂を溶解する温度を70~170度に維持した上で給水または排水により水量を調節し、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を押出機に加えることで含水量を調節することを含むEVOH樹脂の押出方法が開示されている。しかし、エチレン-ビニルアルコール共重合体は親水性材料であるため、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂は押出工程の前に乾燥させる必要がある。この方法による工程はコストが高く、押出機の添加物と含水量が製品の耐熱性及びその他の特性を損ねる可能性がある。
【0006】
よって、ブローホール、薄膜化や不規則に半透明な現象が起こっておらず、酸素バリア性に優れた高品質のフィルムを生産するための、EVOHペレットを押出機に移送する安定性を改善する方法は今のところない。
【発明の概要】
【0007】
発明者のたゆまぬ努力により、EVOHフィルムの性能が悪くなる原因となる問題の一部を発見した。EVOHペレットを押出機に投入しフィルムを生産するときのブリッジングは、大量のペレットの中に比較的小さいペレットが混ざっていることにより移送の安定性が低下することを原因として発生する。EVOHペレットの大きさの分布とその他のペレットの性質の特徴を注意深く制御することによって、発明者はペレットのブリッジングを克服し、押出機の材料移送を改善することができた。
【0008】
実施例においては、本発明のEVOHペレットの粒子の大きさの分布は、前記ペレットの90~100重量%が5~10メッシュ(ASTM E11規格)に分布しており、前記ペレットの0~10重量%が10メッシュ(ASTM E11規格)より小さい。本発明及び請求の範囲に記載のふるいの大きさはASTM E11規格を基準にしているが、ペレットを他のふるいにかけて測定した場合でも本発明の開示するASTM E11規格で測定したものと同様の粒子の大きさと粒子分布であるときは、本発明のペレットと同じ性質を持つことは理解する必要がある。
【0009】
他の実施例においては、本発明は、30度未満、好ましくは20~30度、より好ましくは20~27度の範囲の安息角を有するEVOHペレットを提供する。一部の実施例においては、安息角は20.275度、21.305度、21.52度、21.61度、22.3度、23.5度、25.5度及び26.5度を例にする。
【0010】
さらなる実施例においては、本発明は、エチレンの含有量が24~48モル%であるEVOHペレットを提供する。
【0011】
他の実施例においては、前記EVOHペレットは少なくとも95モル%、より好ましくは99.5モル%以上のケン化度を有する。
【0012】
さらなる実施例においては、前記EVOHペレットのかさ密度は少なくとも0.7g/ml、好ましくは0.70~0.80g/mlである。一部の実施例においては、かさ密度は0.7105、0.7325、0.7458、0.7562、0.7851、0.7862、0.7899及び0.7921を例にする。
【0013】
本発明の実施例では、EVOHを含み、実質上ブローホールまたは薄膜化が発生していない押出フィルムを開示する。
【0014】
さらなる実施例においては、好ましい押出成形EVOHフィルムは、0.08~3.2ml×20μm/m2×day×atmの酸素透過率(oxygen transmis
sion rate,OTR)を有する。酸素透過率はフィルムの均一性を評価するために使用される。フィルムが異なる部分で均一に酸素を透過するとすれば、これらの部分の酸素透過率はほぼ同じである。よって、このフィルムの厚みは均一であると認定することができる。逆に、実施例のフィルムの酸素透過率の差異が非常に大きい場合、このフィルムは均一性を有さない(比較例に示す)ことを指している。
【0015】
さらなる実施例においては、上述のペレットが形成する押出成形EVOHフィルムと1以上の他のポリマーフィルムを共に押し出すことで、多層押出フィルムを生産することができる。前記多層押出フィルムは、一般的なインフレートフィルム技術によって一軸または二軸延伸することができる。EVOHフィルムとともに押出成形するのに適している前記他のポリマーフィルムは、低密度ポリエチレン、ポリエチレン-グラフト-無水マレイン酸、ポリプロピレン(PP)、ナイロン、バインダー樹脂及びポリ塩化ビニリデンなどの異なる形態のポリエチレン(PE)があるが、以上は例示であり本実施例の形態を限定するものではない。典型的な多層押出成形フィルムは順にポリエチレン、バインダー樹脂、EVOH、バインダー樹脂、ポリエチレンの五層のフィルムを有するEVOHフィルムである。典型的な多層押出成形フィルムは順にポリエチレン、バインダー樹脂、ナイロン、EVOH、ナイロン、バインダー樹脂、ポリエチレンの七層のフィルムを有するEVOHフィルムである。
【0016】
他の実施例は押出機のEVOHペレットの移送の改善及びEVOHペレットが押出機の異なるエリアを通過する際に発生するブリッジングを制御する方法を含む。前記押出機の異なるエリアは、例えばこれに限定しないが、一軸、二軸または多軸押出機のホッパー、計量エリア、移送エリア及び/またはミキシングエリアである。
【0017】
本発明が開示する上述及びその他の実施例について、対応する図面と併せて説明する。以下は本発明の詳細な説明及び好ましい実施例である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】EVOHペレットを重合、ケン化及び生産する単一ラインの製造工程を示す説明図である。
図2】一軸押出機の構成を示す説明図である。
図3】EVOHフィルムの比較例の顕微鏡画像である。透明フィルムの他の部分にブローホール/薄膜化及び不透明部分がある。
図4】フィルムにブローホール及び薄膜化がないか検査するための方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に実施例を用いて、本発明の実施形態について説明する。ここから述べる実施例は説明のためのものであり、請求の範囲の実施形態を限定するものではない。図1に示すとおり、工程10は第一反応器12の中にメタノール(MeoH)と開始剤がある状況下で、エチレン(C24)と酢酸ビニル(VAM)を重合してエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVAc)を製造する。前記開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’-アゾビス(2-メチル
ブチロニトリル)などのアゾ系開始剤である。前記開始剤は、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムのような過酸化物開始剤、または過酸化ベンゾイル、ジ-tert-ブチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソブチリルペルオキシド、tert-アミルペルオキシネオデカノエ-ト、酢酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、tert-ブチルペルオキシドアセテ-ト、tert-アミルペルオキシピバレ-ト、ビス-ブチルペルオキシジカ-ボネ-ト、ジ-n-プロピルペルオキシジカ-ボネ-トなどのような有機過酸化物である。メタノ-ルと抑制剤がある状況下で、前記共重合体を反応器14に移す。前記抑制剤は、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-t-ブチル-1,3-ブタジエン、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3-エチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、1-メトキシ-1,3-ブタジエン、2-メトキシ-1,3-ブタジエン、1-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-ニトロ-1,3-ブタジエン、クロロプレン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、1-ブロモ-1,3-ブタジエン、2-ブロモ-1,3-ブタジエン、フルベン、トロポン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブラン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸、ケイ皮酸またはケイ皮酸塩などの共役ポリエンである。減圧下で未反応のエチレンを回収し、戻り管15を通って重合反応工程のエチレンの初期材料として回収する。反応器14の排出液を脱モノマ-処理装置16に移し、脱モノマ-処理装置16の中で未反応の酢酸ビニルモノマ-とメタノ-ルを回収し、戻り管17を通って酢酸ビニルモノマ-とメタノ-ルの初期材料として回収する。前述の工程で得たエチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化反応装置18に移し、アルカリ触媒のような適した触媒により、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体からエチレン-ビニルアルコ-ル共重合体(EVOH)と副産物である酢酸メチルを得ることができる。前記酢酸メチルは副産物管19によりケン化反応装置18から除去される。アルカリ触媒は、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属アルコキシドから選択する。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシドなどがあるが、 水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。残ったEVOH
はメタノ-ル水溶液に溶解し、EVOHを含むメタノ-ル水溶液を生産する。前記溶液は造粒機20で造粒工程を行う。好ましくは、前記溶液の固体含有量は少なくとも38重量%で、一部の実施例においては、前記固体含有量は38重量%、39重量%、41重量%及び42重量%を例にしている。造粒機20は、異なる直径のペレットを生産するために、異なる直径の供給管を有する。好ましくは、前記供給管の直径は1.6~2.8mmの範囲である。造粒機20はチョッパ羽根を有し、羽根の回転速度を変えることで異なる大きさのペレットを製造することができる。好ましくは、前記チョッパ羽根の速度は1500~3000rpmである。好ましくは、前記チョッパ羽根は水中に浸かった状態で前記EVOHを有する液体流に対し切断造粒を行う。水中で切断し造粒することで熱履歴に影響を与えることがない。従来の技術のホットカッティングでは、与える熱が形成されたペレットの熱履歴に影響を与え、ペレットやペレットから成るフィルムなどの産物の性質を劣化させる影響が出てくる。造粒後、前記EVOHペレットの温度を下げ、離心し、水洗装置22で水洗後、pH調整剤を有する反応槽24の中に沈める。前記pH調整剤は、有機酸、無機酸またはそれらの塩類、例えば酢酸、酢酸塩、ギ酸、ギ酸塩、マロン酸、マロン酸塩、プロピオン酸、プロピオン酸塩、コハク酸、コハク酸塩、ホウ酸、ホウ酸塩、クエン酸、クエン酸塩、リン酸、リン酸塩、メタリン酸またはメタリン酸塩などである。反応槽24のpH値は、約3~6であり、約4~5が好ましい。次いで、前記ペレットを乾燥器26で乾燥し、工程28で包装する。この段階では、包装後の前記ペレットは粒子の大きさが広い範囲に分布しており、その範囲は5~20メッシュであり、粒子の形状も異なる。乾燥または包装工程中または包装工程後、前記ペレットをふるいにかけ粒子の大きさの分布を調整する。前記ふるいにかけたペレットをかさ密度測定器に5回かけ、かさ密度の平均を記録する。安息角測定器で安息角を測定する。
【0020】
図2に示すとおり、一般的な一軸スクリュ-押出機30は、いくつかの場所でペレットを移送する際にブリッジングを起こす可能性がある。そのうちの一つは、前記押出機のホッパ-32である。そこにブリッジングが起きた場合、スクリュ-34の部分にペレットが入らない。すると、均一な電流で電動モ-タ-36がギヤボックス37を介してスクリュ-34を回転させると過回転が起こる。本発明では一軸スクリュ-を例にしているが、ブリッジングは異なる形式の押出機の異なるエリアでも起こり得る。例えば、一軸スクリュ-、二軸スクリュ-または多軸スクリュ-押出機のホッパ-、これら押出機の計量エリア、移送エリア及び/またはミキシングエリアである。
【0021】
ブリッジングが起こり得る2つ目の場所はスクリュ-34の運搬部である。ホッパ-32の下流でペレットがブリッジングを起こした場合、溶融エリア40の手前、スクリュ-34のフライト38及び39の1以上の場所でペレットの異常、減少または消失の問題が起こる。これらペレットの異常、減少または消失の状況は電動モ-タ-36がスクリュ-34を動かす際の電流の変化をも引き起こす。
【0022】
よって、ブリッジングが起こる可能性を減少させるため、造粒機が生産するペレットを水洗及び乾燥工程後に再度ふるいにかける必要がある。発明者は、ふるいにかけた後の重合体ペレットの粒子の大きさの分布が、前記ペレットの90~100重量%が5~10メッシュ(ASTM E11規格)に分布しており、前記ペレットの0~10重量%が10メッシュ(ASTM E11規格)より小さい場合、ブリッジングが起こる可能性及びペレットが不均等に押出機へ投入される状況が減少することを発見した。
【0023】
思いがけず発明者は、この状態で押し出して得られたEVOHフィルム製品が、半透明部分が無く、ブロ-ホ-ルや薄膜化も起こっていないことを発見した。
【0024】
前記EVOHペレットを適した粒子の大きさ分布、安息角及びかさ密度にコントロ-ルし、特にかさ密度を少なくとも0.7g/mL、具体的には約0.7g/ml~0.8g/mLにすることで、押出機のペレット分布及び移送を改善することができ、均一な厚みを有し、半透明部分が無く、ブロ-ホ-ルや薄膜化も起こっておらず、高い透明度及び酸素バリア性を持つ優れたEVOHを含む押出フィルムを得ることができる。前記押出成形EVOHフィルムと他の重合体フィルム、特にエチレン及びエチレン-グラフト-無水マレイン酸を同時に押し出しても、これらの性質を維持することができる。前述の前記押出ポリエチレンのほかに、バインダ-樹脂もまたEVOHフィルム層と他の押出フィルム層の間に使用することができる。よく知られているバインダ-樹脂は異なる重合体を繋げることができ、主に多層共押出構造において使用される。アメリカで市販のバインダ-樹脂には、LyondellBasell社製のPLEXARやDOW Chemical社製のAMPLIFYTM TY Functional Polymersなどがある。
【0025】
以下、実施例及び比較例により、本発明のEVOHペレット及びそれからなる押出製品の性質を説明する。
【実施例0026】
(実施例1)
1.図1に示す一般的な製造方法によりエチレンの含有量が32モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVAc)を製造する。前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVAc)をエチレン-ビニルアルコ-ル(EVOH)にケン化した後、前記EVOHをメタノ-ル(MeOH)/水(比率70:30)の溶液に溶解し、EVOH/メタノ-ル/水の溶液(前記溶液の固体含有量は41重量%)に混合し、前記溶液を60度で保存した後造粒工程を行う。
2.上述のEVOH溶液を120L/minの流速で入口管にポンプ輸送し、前記EVOH溶液を直径2.8mmの供給管に通し、1,500rpmのチョッパ羽根で切断し、同時にペレットを5度に冷却しEVOHペレットを形成する。
3.上述で得られたペレットをEVOH粒子に離心分離し、前記EVOH粒子を水洗及び乾燥後、EVOHペレットの最終産物を得る。
4.ASTM E11規格8メッシュのふるいで前記EVOHペレットをふるいにかけ、EVOHペレットのサンプルを得る。
5.前記EVOHペレットを次の試験方法で分析する:
1)JIS K 6726:1994の方法で粒度の分布を分析する。ただし、ASTM
E11(サイズ:5メッシュ、8メッシュ、10メッシュ、14メッシュ、20メッシュ)で測量する。
2)前記EVOHペレットをかさ密度測定器(KARAMPCHI;分析方法はISO-91-1977)に5回かけ、かさ密度の平均を記録する。ISO-91-1977はペレットを特殊な設計の漏斗に流し込み粉末や粒状材料の見掛け密度、すなわち単位体積当たりの質量を分析するための国際規格である。この試験方法で使う装置は、0.1gまで正確に測ることができる天秤、メスシリンダ-及び漏斗を含む。本文に説明した通りであるが、ISO-60-1977に規定されている装置および試験方法を、引用する形で本明細書に含める。
3)安息角(α):前記EVOHペレットの安息角は粉末測定器(A.B.D 粉末測定器ABD-100,TSUTSUI SCENTIFIC INSTRUMENT Co. Ltd製)で測量した。JIS R 9301-2-2:1999の方法により安息角を分析した。
6.多層フィルム
1)前記EVOHペレット(I)、ポリエチレン(Lotren FD0274)(II)及びポリエチレン-グラフト-無水マレイン酸樹脂(III)(ADMER NF408E,三井化学社製)を三層共押出機に供給した。多層フィルムの各層の厚みは(I)/(III)/(II)=20μm/10μm/100μmである。
2)外観:前記多層フィルムを製造してから24時間後、図4に示すように10×10cmのエリアを5つ(符号51,52,53,54及び55)選んだ。 そして各エリアに
ブロ-ホ-ルや薄膜化、フロ-マ-ク及び半透明の部分がないか肉眼で観察し、以下の基準に従って評価した。
〇:5つのエリア共にブロ-ホ-ルや薄膜化がなく、透明である。
△:5つのエリア共にブロ-ホ-ルや薄膜化はないが、フロ-マ-クがある。
×:5つのエリアにブロ-ホ-ルや薄膜化、フロ-マ-クまたは半透明の部分がある。
図3は従来の技術のフィルム42の一部である。透明な部分にフロ-マ-ク46及びブロ-ホ-ル/薄膜化44がある。
3)酸素透過率(Oxygen Transmission Rate,OTR)分析:5つのサンプルに対し外観の評価を行うため、酸素透過率測定装置(OXTRAN 2/21,Mocon社製)を使用し、ISO-14663-2の分析方法で、温度20度、湿度65%の環境下で分析を行った。
4)均一度:剃刀で多層押出フィルムの断面が平滑になるよう切る。光学顕微鏡で前記多層押出フィルムの断面の厚みを測定する。以下はフィルムの厚みを判断するための基準である:
〇:5つのエリアでフィルムの厚みの差が10%未満
△:5つのエリアでフィルムの厚みの差が10%~20%
×:5つのエリアでフィルムの厚みの差が20%超
【0027】
(実施例2)
実施例1の4つの独立変数を(1)溶液中、前記EVOHの固体含有量を39重量%、(2)供給管の直径を1.6mm、(3)チョッパ羽根の回転速度を2,500rpm、(4)ASTM E11規格10メッシュのふるいで前記EVOHペレットをふるいにかけるよう変更する。その他については実施例1と同様である。
【0028】
(実施例3)
実施例1の4つの独立変数を(1)溶液中、前記EVOHの固体含有量を38重量%、(2)供給管の直径を2.4mm、(3)チョッパ羽根の回転速度を1,800rpm、(4)ASTM E11規格10メッシュのふるいで前記EVOHペレットをふるいにかけるよう変更する。その他については実施例1と同様である。
【0029】
(比較例1)
チョッパ羽根の回転速度を6,000rpmに変更し、ふるいを14メッシュにする。その他は実施例1と同様である。
【0030】
(比較例2)
チョッパ羽根の回転速度を5,000rpmに変更し、ふるいを20メッシュにする。その他は実施例2と同様である。
【0031】
(比較例3)
チョッパ羽根の回転速度を8,000rpmに変更し、ふるいにかけない。その他は実施例3と同様である。
【0032】
(実施例4~6)
制御する変数をエチレン含有量、供給管の直径、温度及び振動ふるいのふるい目サイズにする。
【0033】
(比較例4)
チョッパ羽根の回転速度を6,000rpmに変更し、ふるいを14メッシュにする。その他は実施例4と同様である。
【0034】
(比較例5)
チョッパ羽根の回転速度を6,000rpmに変更し、ふるいを20メッシュにする。その他は実施例5と同様である。
【0035】
(比較例6)
チョッパ羽根の回転速度を6,000rpmに変更し、ふるいにかけない。その他は実施例6と同様である。
【0036】
(実施例7)
実施例1の4つの独立変数を(1)溶液中、前記EVOHの固体含有量を39重量%、(2)供給管の直径を1.6mm、(3)チョッパ羽根の回転速度を3,000rpm、(4)ASTM E11規格10メッシュのふるいで前記EVOHペレットをふるいにかけるよう変更する。その他については実施例1と同様である。
【0037】
(実施例8)
実施例1の2つの独立変数を(1)前記エチレン含有量を24モル%、(2)チョッパ羽根の回転速度を2,500rpmに変更する。その他については実施例1と同様である。
【0038】
(実施例9)
実施例1の4つの独立変数を(1)前記エチレン含有量を48モル%、(2)チョッパ羽根の回転速度を1,800rpm、(3)ASTM E11規格10メッシュのふるいで前記EVOHペレットをふるいにかけ、(4)ケン化度を99.5モル%に変更する。その他については実施例1と同様である。
【0039】
実施例と比較例の試験方法の行程は以下のとおりである。
試験工程-粒度の大きさ(JIS K6726 1994を使用し粒度の大きさの分布を分析)
1)方法概要-JIS Z8815(JIS Z8815はJIS K6726 1994から派生した方法)でサンプルをふるいにかけ、試験用ふるいの開口部に残った粒度質量を求める。
2)用具、器具-用具、器具は以下のとおりである。
(a)試験ふるい-JIS Z8815(JIS Z8815はJIS K6726 1994から派生した方法)に規定されているふるい
(b)電動水平バイブレ-タ※:毎分200~300回の振動、振幅5.0cm、毎分150回タップなどの設定をすることができる。
※注:上記以外のバイブレ-タを使用する場合は、異なるバイブレ-タの使用で結果が変わらないよう、振動条件を上述のものと同一に設定する。
3)試験-試験の条件は以下のとおりである。
(A)100gのサンプルを試験用ふるいにかけ、電動水平バイブレ-タ-を毎分200~300振動、振幅5.0cm、毎分150タップの設定で15分間振動させる 。
(b)振動終了後、それぞれの試験用ふるいの開口部に残ったペレットの重さを測定し、質量%で表示する。得られた数値は整数である必要がある。
【0040】
本発明の比較例と実施例の結果は次のとおりである。
【0041】
【表1】

【表2】
【表3】
【0042】
粒子の大きさの分布のうち、粒子の大きさが小さすぎる場合、表面積が増加する。すると、大量の粒子間で大きな摩擦力が発生する。よって、ペレット同士の摩擦力が増加したとき、押出機のホッパ-及び移送エリアでブリッジングが起きるなど、ペレットの投入に問題が生ずる。このようなブリッジング問題は押出機がペレットを移送する際の安定性に問題を生し、ブロ-ホ-ルや薄膜化などの欠陥の原因となる。しかし、本発明はEVOHペレットは90~100重量%の粒子のサイズ分布を5~10メッシュ(ASTM E11規格)、前記ペレットの0~10重量%が10メッシュ(ASTM E11規格)より小さくすることで、予期し得る効果を生み出すことができる。粒子の大きさの分布を特定の範囲内にし、EVOHフィルムを押出成形することで、均一で孔が無くブロ-ホ-ルや薄膜化がない、前記EVOHペレットを含む1層以上のフィルムを形成することができる。また、本発明は詳細に実施例を開示したが、これらは例示のためのものであり、本発明の実施方法の範囲を限定するものではない。当該発明の技術分野において通常の知識を有する者が小さな改変を加えたとしても、本発明及び対応する請求の範囲を超えるものではない。
【0043】
本発明の開示した具体的な方法や物、好ましい実施例、変数、製造工程、押出フィルム、産物その他の方法や物は、実施形態の例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
本発明で使用した用語は特定の実施例を描述するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0045】
10 工程
12 第一反応器
14 反応器
15 戻り管
16 脱モノマ-処理装置
17 戻り管
18 ケン化反応装置
19 副産物管
20 造粒機
22 水洗装置
24 反応槽
26 乾燥器
28 工程
30 一軸スクリュ-押出機30
32 ホッパ-
34 スクリュ-
36 電動モ-タ-
37 ギヤボックス
38 フライト
39 フライト
40 溶融エリア
42 従来の技術のフィルム
44 ブロ-ホ-ル/薄膜化
46 フロ-マ-ク
51 多層フィルム10×10cmのエリア
52 多層フィルム10×10cmのエリア
53 多層フィルム10×10cmのエリア
54 多層フィルム10×10cmのエリア
55 多層フィルム10×10cmのエリア
図1
図2
図3
図4