(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081549
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】多発性硬化症のためのAAV系遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20220524BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220524BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220524BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220524BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220524BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20220524BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61K48/00
A61P25/00
C12N15/12 ZNA
C12N5/071
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022031064
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2019235107の分割
【原出願日】2015-04-24
(31)【優先権主張番号】61/983,924
(32)【優先日】2014-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507371168
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド・イー・ホフマン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】完全長タンパク質、例えば神経タンパク質やその機能的断片の肝指向性発現を可能とするとともにそれに最適である新規AAV核酸ベクターを提供する。
【解決手段】哺乳動物の肝臓の1以上の細胞において核酸セグメントを発現することができるプロモーターに作動可能に結合した第1の自己免疫疾患治療用分子をコードする核酸セグメントを含有するポリヌクレオチドを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)核酸ベクターを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の肝臓の1以上の細胞において核酸セグメントを発現することができるプロモーターに作動可能に結合した第1の自己免疫疾患治療用分子をコードする核酸セグメントを含むポリヌクレオチドを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)核酸ベクター。
【請求項2】
核酸セグメントが、哺乳動物のミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)またはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)をコードする、請求項1記載のrAAV核酸ベクター。
【請求項3】
核酸セグメントが、ヒトのミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)またはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)をコードする、請求項1記載のrAAV核酸ベクター。
【請求項4】
核酸セグメントが、配列番号:1、2、3、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33または35に記載する少なくとも20アミノ酸の連続した配列を含む、生物学的に活性なミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)またはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)をコードする、請求項2または3記載のrAAV核酸ベクター。
【請求項5】
核酸セグメントが、配列番号:1、2、3、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33または35の配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、生物学的に活性なミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)またはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)をコードする、請求項4記載のrAAV核酸ベクター。
【請求項6】
核酸セグメントが、各々、配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3に記載の少なくとも20アミノ酸の連続した配列を含む、生物学的に活性なミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)またはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)をコードする、請求項2記載のrAAV核酸ベクター。
【請求項7】
核酸セグメントが、配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3の配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、生物学的に活性なミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)またはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)をコードする、請求項6記載のrAAV核酸ベクター。
【請求項8】
核酸セグメントが、さらに、治療用分子をコードする核酸セグメントに作動可能に連結したエンハンサー、転写後調節配列、ポリアデニル化シグナルまたはそれらのいずれかの組合せを含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のrAAV核酸ベクター。
【請求項9】
プロモーターが、哺乳動物の細胞-特異的または哺乳動物の組織-特異的プロモーターである、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のrAAV核酸ベクター。
【請求項10】
核酸セグメントが、さらに、ポリペプチド、ペプチド、リボザイム、ペプチド核酸、siRNA、RNAi、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、アンチセンス・ポリヌクレオチド、抗体、抗原結合フラグメントまたはそれらのいずれかの組合せをコードするまたは発現する、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のrAAV核酸ベクター。
【請求項11】
核酸セグメントが、さらに、哺乳動物における自己免疫疾患の1以上の症状を治療または改善することにおいて有効である第2の異なる治療用分子をさらにコードする、請求項10記載のrAAV核酸ベクター。
【請求項12】
自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項11記載のrAAV核酸ベクター。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載のrAAV核酸ベクターを含むrAAV粒子。
【請求項14】
治療上有効量の選択した治療剤を必要とする哺乳動物に提供する方法であって、一定量の請求項1ないし12のいずれか1項に記載のrAAV核酸ベクターまたは請求項13記載のrAAV粒子を;治療上有効量のコードされた治療用分子を哺乳動物に提供するのに有効な時間、哺乳動物に全身投与することを含む、該方法。
【請求項15】
哺乳動物における炎症性疾患の1以上の症状を治療または改善する方法であって、哺乳動物における自己免疫疾患の1以上の症状を治療するまたは改善するのに十分な量および時間、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のrAAV核酸ベクターまたは請求項13記載のrAAV粒子を哺乳動物に全身投与することを含む、該方法。
【請求項16】
哺乳動物が少なくとも最初の自己免疫異常を有することが疑われるか、進展しているリスクがあるか、または診断されている、請求項14記載の方法。
【請求項17】
自己免疫疾患が、多発性硬化症、多発硬化または散在性脳脊髄炎である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物が、新生児動物、幼齢動物、未熟動物または若年成体動物である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
哺乳動物における治療用分子の産生が、CNS炎症を軽減し、脱髄を阻害し、1以上のニューロタンパク質に対する免疫寛容を再構築し、内在性抗原-特異的調節性T細胞の産生を刺激し、またはそれらのいずれかの組合せである、請求項14ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
rAAVベクターが、アゴニスト、アンタゴニスト、抗-アポトーシス因子、インヒビター、受容体、サイトカイン、細胞毒素、赤血球産生剤、糖タンパク質、成長因子、成長因子受容体、ホルモン、ホルモン受容体、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、神経成長因子、神経活性ペプチド、神経活性ペプチド受容体、プロテアーゼ、プロテアーゼ・インヒビター、タンパク質デカルボキシラーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質キナーゼインヒビター、酵素、受容体結合タンパク質、輸送タンパク質またはそれらのインヒビター、セロトニン受容体またはその取込みインヒビター、セルピン、セルピン受容体、腫瘍抑制因子、化学療法剤またはそれらのいずれかの組合せよりなる群から選択される第2の異なる治療用分子をコードする、請求項14ないし18のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年4月24日に出願された米国仮出願番号61/983,924の米国特許法第119条(e)の下での利益を主張するものであり、その内容は参照によってその全てが本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して分子生物学およびウイルス学の分野に関し、特に、自己免疫疾患、例えば多発性硬化症(MS)などを治療するための遺伝子療法ベクターおよび方法の開発に関する。
【背景技術】
【0003】
多発性硬化症(MS)。MSは、遺伝的に罹患しやすい個体において自己抗原に対する自己免疫応答によってもたらされる進行性神経変性を伴う多巣性脱髄疾患である。CNSのどこで損傷が起こるかに応じて筋肉制御、バランス、視力または言語の障害が症候に含まれ得る。米国には250,000~350,000人存在する。MSは、(一部分において)自己免疫寛容を維持し潜在的に病原性の自己反応性リンパ球を制御する中枢性および末梢性の免疫寛容機構(特にTreg)の不全によって発症する自己免疫疾患である2,3。それは、慢性的なリンパ球浸潤、および脱髄をもたらすCNSの炎症によって特徴付けられる。
【0004】
遺伝子療法。遺伝子療法の分野の主要な進歩は、治療遺伝子材料を送達するウイルスを用いることによって達成されてきた。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、その低い免疫原性、および非分裂細胞に効果的に形質導入する能力ゆえに、遺伝子療法に非常に効果的なウイルスベクターとして大きな注目を集めてきた。AAVは、様々な種類の細胞および組織に感染することが示されており、このウイルスシステムをヒト遺伝子療法での使用に適応させる著しい進歩が過去十年間に亘ってなされてきた。
【0005】
AAV DNAは、その標準的な「野生型」形態では、長さ約4600ヌクレオチド(nt)の一本鎖分子としてウイルスカプシド内にパッケージングされる。ウイルスによる細胞の感染後に、細胞の分子機構は一本鎖DNAを二本鎖形態へと変換する。この二本鎖DNA形態のみが細胞酵素によってRNAへと転写されることができ、それは後にさらなる細胞経路によってポリペプチドへと翻訳される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術には、例えばMSを含めた自己免疫疾患の1以上の症候を治療および/または改善するためのウイルスベクターに基づく遺伝子療法方法が明確に欠けている。そのようなベクターおよびそれらを含む組成物の開発は、医学、特に遺伝子療法に基づくMSの治療様式の開発において大きな前進をもたらすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一部において、完全長タンパク質、例えば(限定はしないがMOG、PLPおよびMBPを含めた)神経タンパク質やその機能的断片の肝指向性発現ができるとともにそれに最適である新規AAV核酸ベクターを提供することによって、従来技術に固有のこれらおよびその他の限界を克服し、そうして抗原特異的Tregの誘導に必要とされるHLA-MHC特異的エピトープを同定する必要性を無くす。いくつかの実施形態において本発明は、治療を受けている各患者が彼/彼女自身の独自の抗原特異的Tregを生成することを可能にし、それは治療を既存技術に比べてより普遍的に適用可能でより臨床的に実現可能なものにする。
【0008】
世界中で2百万人の人がMSを抱えて暮らしている。一般には20~40歳で診断されるが、2歳という若さの幼児におけるMSの文書化された症例が報告されている。シルダー病は、通常幼児期に始まる希な進行性脱髄障害である。現在のところMSに対する治療法は無いが、数多くの研究には重篤度および再発頻度の低下ならびに疾患進行の遅延を示した様々なMS治療選択肢がある。主として免疫調節特性を有する療法としては、例えばベータ型インターフェロンやグラチラマー酢酸塩が挙げられる。主として免疫抑制特性を有する療法としては、例えばナタリズマブ、フィンゴリモドおよびミトキサントロンが挙げられる。自己免疫疾患の治療では、Treg数および/またはそれらの機能を刺激する手順の開発に大いに焦点が当てられてきた。実際、FDAによって現在承認されMSの治療に使用される免疫調節剤の有益な効果の多くは、Treg恒常性の回復に関連している2,4,5。
【0009】
AAV遺伝子療法は、網膜遺伝子導入によるレーバー先天性黒内障患者の視力回復、および肝臓遺伝子療法による血友病Bの回復を含めた広範な疾患の治療のための強力な新ツールであることが分かっている6,7。本発明の態様によれば、AAVベクターを用いる肝臓での遺伝子療法導入は、後に他の器官で抗原が免疫原性の高い様式で発現する場合であってさえも様々なタンパク質に対して頑健な抗原特異的免疫寛容を実験動物において確実に誘導できる、ということが実証された。まとめてこれらの結果は、肝臓指向性遺伝子療法が潜在的な細胞毒性CD8+T細胞応答を無くさせることができる、ということを実証する1,8-13。重要なことに、この手順によって既存の抗体さえ除去され得る、ということも示された1。この知見は極めて重要である、というのもB細胞と自己抗体とが脱髄疾患において病原的な役割を果たしているかもしれないことの証拠が相次いでいるからである14,15。ミエリン塩基性タンパク質を発現しているプラスミドまたはAdベクターによる遺伝子導入マウスまたは一時的遺伝子導入によってマウスのEAE疾患の発病を予防できたことが、他者によって示されている16,17。抑制は肝臓遺伝子発現に依存しており、Ag特異的なTregの誘導によって媒介された。それに対して本発明の態様は、1以上の宿主タンパク質をコードする核酸の肝臓へのAAV送達を利用した、特定の自己免疫症状(例えばMS)の治療に関する。
【0010】
肝細胞制限下での最適化AAVベクターからの導入遺伝子発現は、様々な治療タンパク質に対する免疫寛容を(例えばAg特異的なCD4+CD25+FoxP3+Tregによって媒介されて)確実に誘導することができる。当該プロセスは、導入遺伝子産物に対する抗体形成および細胞毒性CD8+T細胞応答を抑制する。肝臓での導入遺伝子発現は、後に他の器官で抗原が免疫原性の高い様式で発現した場合であってさえも維持される。当該プロセスは既存の高い抗体力価を効率的かつ迅速に逆転させるものであり、マウス血友病Bモデルでは止血の改善が長期的にもたらされた。重要なことに、当該方法は、分泌されるタンパク質が機能的なものであることを必要としない。
【0011】
有益なことに、いくつかの実施形態において、本明細書に開示される新規rAAV核酸ベクター、発現構築物、ならびにそれらを含む感染性ビリオンおよびウイルス粒子は、好ましくは、1以上の哺乳動物肝細胞に形質導入して1以上の対象遺伝子の持続的発現をもたらす向上した効率を有する。
【0012】
本明細書において提供される改良型rAAV核酸ベクターは、好ましくは、十分な形質導入効率で哺乳動物細胞に形質導入して患者のMS関連の免疫応答を抑制し、それにより、CNS炎症やMS患者に起こる免疫介在性の損傷を無くす。現行の療法とは異なり、この遺伝子療法に基づくアプローチは、MS患者が経験する臨床的障害を軽減する持続的な長期的治療に相当する。
【0013】
いくつかの実施形態において本発明は、当該技術分野において公知の1以上の血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11およびAAV12から成る群より選択されるものを含む)に由来するものを含む改良型rAAV粒子を提供する。
【0014】
また、本発明は、rAAV核酸ベクターであって、選択された対象ポリヌクレオチドをコードする核酸部分に対して作動可能に連結されたプロモーター、エンハンサー、転写後調節配列、ポリアデニル化シグナル、またはそれらの任意の組み合わせがさらに核酸部分に含まれたrAAV核酸ベクターに関する。
【0015】
特定の実施形態において、本発明に記載される新規rAAV発現ベクターの中にクローニングされた核酸部分は、1以上のポリペプチド、ペプチド、リボザイム、ペプチド核酸、siRNAのもの、RNAiのもの、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、抗体、抗原結合断片、またはそれらの任意の組み合わせを発現またはコードするものである。
【0016】
本明細書に記すように、本発明において有用な治療剤は、1以上の作動薬、拮抗薬、抗アポトーシス因子、阻害剤、受容体、サイトカイン、細胞毒、赤血球形成剤、糖タンパク質、成長因子、成長因子受容体、ホルモン、ホルモン受容体、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、神経成長因子、神経活性ペプチド、神経活性ペプチド受容体、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質脱炭酸酵素、タンパク質キナーゼ、タンパク質キナーゼ阻害剤、酵素、受容体結合性タンパク質、輸送タンパク質もしくは1以上のその阻害剤、セロトニン受容体もしくは1以上のその取込み阻害剤、セルピン、セルピン受容体、腫瘍抑制剤、診断分子、化学療法剤、細胞毒、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0017】
本発明のrAAV核酸ベクターは、AAV血清型1(AAV1)、AAV血清型2(AAV2)、AAV血清型3(AAV3)、AAV血清型4(AAV4)、AAV血清型5(AAV5)、AAV血清型6(AAV6)、AAV血清型7(AAV7)、AAV血清型8(AAV8)、AAV血清型9(AAV9)、AAV血清型10(AAV10)、AAV血清型11(AAV11)もしくはAAV血清型12(AAV12)またはウイルス分野で当業者に知られているその他のあらゆる血清型から成る群より選択される血清型を有するビリオンまたはウイルス粒子の中に含まれ得る。
【0018】
関係する実施形態において本発明はさらに、自己免疫疾患治療剤をコードする1以上の核酸部分を含む、rAAV核酸ベクター、ビリオン、感染性ウイルス粒子、または宿主細胞集団および複数のrAAV核酸ベクター、ビリオン、感染性ウイルス粒子、または宿主細胞を提供する。
【0019】
本発明はさらに、本発明の1以上のタンパク質、核酸部分、ウイルスベクター、宿主細胞またはウイルス粒子と一緒に1以上の薬学的に許容可能な緩衝剤、希釈剤または賦形剤を含む、組成物および製剤を提供する。そのような組成物は、哺乳動物の自己免疫疾患などの炎症性疾患の1以上の症候を診断、予防、治療または改善するために、特にヒトのMSを治療するための治療剤を送達するために、1以上の診断キットまたは治療キットに含まれていてもよい。
【0020】
本発明はさらに、診断上または治療上有効な量の選択された治療剤を、それを必要とする哺乳動物に提供する方法を含み、当該方法は、ある量の1以上の開示されたrAAV核酸ベクターを、それを必要とする哺乳動物の細胞、組織または器官へ、当該哺乳動物へ診断上または治療上有効な量の選択された治療剤を提供するのに有効な時間の間、投与することを含む。
【0021】
本発明はさらに、哺乳動物の疾患、障害、機能不全、損傷、異常状態または外傷の少なくとも1以上の症候を診断、予防、治療または改善するための方法を提供する。全体的および一般的な意味において当該方法は、1以上の開示されたrAAV核酸ベクターを、それを必要とする哺乳動物へ、当該哺乳動物の疾患、障害、機能不全、損傷、異常状態または外傷の1以上の症候の診断、予防、治療または改善に十分な量および時間で投与するステップを、少なくとも含む。
【0022】
本発明はまた、哺乳動物細胞の集団に形質導入する方法を提供する。全体的および一般的な意味において当該方法は、有効量の本明細書に開示される1以上のrAAV核酸ベクターを含む組成物を当該集団の1以上の細胞に導入するステップを、少なくとも含む。
【0023】
いくつかの実施形態において本発明はまた、本明細書に記載される1以上のrAAVベクターに基づく遺伝子療法構築物をコードする単離された核酸部分を提供し、本明細書に記載される1以上のrAAV核酸ベクターを含む組換えベクター、ウイルス粒子、感染性ビリオンおよび単離された宿主細胞を提供する。
【0024】
さらに本発明は、1以上の開示されたAAV核酸ベクターまたはAAV粒子の組成物が、1以上の追加成分と共に調合されて含まれるかまたは1以上のその使用説明と共に準備されて含まれる、組成物ならびに治療キットおよび/または診断キットを提供する。
【0025】
一態様において本発明は、1以上の有益な、または治療用の産物(複数可)がコードされている遺伝子材料を哺乳動物の細胞および組織へ送達する方法において有用な、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)核酸ベクター、ビリオン、ウイルス粒子を含む組成物、ならびにその医薬製剤を提供する。いくつかの実施形態において本発明の組成物および方法は、MSなどのような自己免疫疾患を含めた1以上の哺乳動物炎症性疾患の症候の治療、予防および/または改善にそれらを使用することにより、当該技術分野に著しい進歩をもたらす。
【0026】
いくつかの実施形態において本発明は、哺乳動物の疾患、機能不全、損傷および/または障害の1以上の症候の治療、予防および/または改善に用いるための1以上の哺乳動物治療剤(複数可)(限定はしないが例えば、タンパク質(複数可)、ポリペプチド(複数可)、ペプチド(複数可)、酵素(複数可)、抗体、抗原結合断片、ならびにその変異体および/または活性断片を含む)をコードするrAAVに基づく発現構築物を提供する。
【0027】
また、rAAVベクター内へ1以上の選択された遺伝子エレメント、対象遺伝子または治療用もしくは診断用の構築物を当該ベクター内の選択された部位において挿入(クローニング)することを容易にするために、本発明の改良型核酸ベクターおよび発現システムは、場合によってはさらに、1以上のポリリンカー、制限部位および/または多重クローニング領域(複数可)が含まれるか、それらから本質的に成るか、またはそれらから成る、ポリヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0028】
本発明のさらなる態様において、本明細書に開示されるrAAV核酸ベクターによって適切な宿主細胞内へ送達され得る外来ポリヌクレオチド(複数可)は、哺乳動物由来のものであることが好ましく、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ、エピン(epine)、ヤギまたはオオカミに由来する1以上のポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチドが特に好ましい。
【0029】
特定の実施形態では、開示されたウイルス核酸ベクターによって宿主細胞内へ送達され得る外来ポリヌクレオチド(複数可)は、1以上のタンパク質、1以上のポリペプチド、1以上のペプチド、1以上の酵素、または1以上の抗体(またはその抗原結合断片)をコードしていてもよく、あるいは、1以上のsiRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、PNA分子、またはそれらの任意の組み合わせを発現してもよい。組み合わせの遺伝子療法が望まれる場合には、異なる2以上の分子を単一のrAAV発現システムから産生させてもよく、あるいは、2以上の独特のrAAV発現システムであってその各々が治療剤をコードする1以上の別個のポリヌクレオチドを含み得るrAAV発現システムを、選択された宿主細胞に遺伝子導入してもよい。
【0030】
また、その他の実施形態において本発明は、感染性アデノ随伴ウイルス粒子またはビリオンの中に含まれるrAAV核酸ベクター、および複数のそのようなビリオンまたは感染性粒子を提供する。そのようなベクター、粒子およびビリオンは、1以上の希釈剤、緩衝剤、生理学的溶液または薬学的ビヒクルの中に含まれていてもよく、または、1以上の診断上、治療上および/または予防上の投与計画において哺乳動物に投与するために調合されてもよい。また、本発明のベクター、ウイルス粒子、ビリオン、およびそれらの複数のものは、選択された家畜(livestock)、珍しい(exotic)動物、飼育動物、および伴侶動物(ペットなどを含む)、ならびに非ヒト霊長類、動物標本かそうでなければ捕獲標本などへ獣医学的に投与することが許容可能である賦形剤製剤の中に提供されてもよい。
【0031】
また、本発明は、開示されたrAAV核酸発現ベクターのうちの少なくとも1、またはそのような発現ベクターを含む1以上のウイルス粒子もしくはビリオンを含む、宿主細胞に関する。そのような宿主細胞は、特に哺乳動物の宿主細胞であり、特にヒト肝細胞が非常に好ましく、細胞培養または組織培養のいずれかにおいて単離され得る。遺伝的に改変された動物モデルの場合、形質転換された宿主細胞は、非ヒト動物自体の体内にさえ含まれてもよい。
【0032】
また、1以上の開示されたrAAV核酸ベクター、発現システム、感染性rAAV粒子または宿主細胞を含む組成物、特に、治療での使用、および哺乳動物の1以上の炎症性疾患、障害、機能不全または外傷を治療するための医薬製造での使用のために少なくとも第1の薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含むそのような組成物は、本発明の一部を構成する。そのような医薬組成物は、場合によってはさらに、1以上の希釈剤、緩衝剤、リポソーム、脂質、脂質複合体を含む。あるいは、本発明のrAAV核酸ベクターまたはrAAV粒子は、複数の微小球体、ナノ粒子、リポソームまたはそれらの任意の組み合わせの中に含まれていてもよい。
【0033】
1以上の開示されたrAAV核酸ベクター(および1以上のビリオン、ウイルス粒子、形質転換宿主細胞または、そのようなベクター、ビリオン、粒子もしくは宿主細胞を含む医薬組成物)を含むキット;ならびに1以上の治療上、診断上および/または予防上の臨床的実施形態におけるそのようなキットの使用説明も、本発明によって提供される。そのようなキットはさらに、1以上の試薬、制限酵素、ペプチド、治療剤、医薬化合物または、宿主細胞や動物への組成物(複数可)の送達手段(例えばシリンジや注射剤など)を含んでいてもよい。代表的なキットには、疾患、欠乏、機能不全および/または損傷の症候を治療、予防または改善するためのものが挙げられ、商業的な販売、または他者(例えばウイルス学者や医療従事者などを含む)による使用などのためにウイルスベクター自体を大規模生産するための構成部分を含んでいてもよい。
【0034】
本発明の別の重要な態様は、動物の疾患、機能不全、障害、異常状態、欠乏、損傷または外傷、特にヒトの1以上の自己免疫疾患の少なくとも1以上の症候を診断、予防、治療または改善するための医薬の調剤において、本明細書に記載される開示されたrAAV核酸ベクター、ビリオン、発現システム、組成物および宿主細胞を使用する方法に関する。
【0035】
また、1以上の開示されたrAAV核酸ベクター、発現システム、感染性rAAV粒子および宿主細胞を含む組成物、特に、医薬製造ならびにそのようなrAAV核酸ベクター、rAAV粒子および宿主細胞の治療上の投与に関係する方法において使用するために少なくとも第1の薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含むそのような組成物も、本発明の一部を構成する。
【0036】
本発明の別の重要な態様は、本明細書に記載される開示された核酸ベクター、ビリオン、発現システム、組成物および宿主細胞を、哺乳動物のMSなどの様々な自己免疫疾患、特にヒトの1以上のそのような疾患の症候を治療または改善するための医薬の調剤において使用する方法に関する。
【0037】
提供される方法のいずれか1についてのいくつかの実施形態において、当該方法は、さらに、mTOR阻害剤、例えばラパマイシンを投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
これより、本発明の原理についての理解をさらに深めるために、図に示す実施形態または実施例を参照することにし、その説明には特殊な用語を用いることにする。しかしながら、本発明の範囲をそれによって限定することが意図されないことは、理解されるであろう。記載される実施形態のいかなる変化およびさらなる変更、ならびに本明細書に記載する本発明の原理の任意のさらなる応用も、本発明の関係する技術分野における当業者によって普通に考案されるであろうことが予期される。
【0039】
以下の図面は、本明細書の一部を構成し、本発明の特定の態様を実証するために含まれる。本発明は、添付の図面と併せて以下の記載を参照することによってよりよく理解され得、参照番号のようなものは要素のようなものを識別する。
【0040】
【
図1】
図1は、本発明の研究でMSの動物モデルとして使用された実験的自己免疫性脳脊髄炎マウスモデルの態様を説明するものである。
【0041】
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、EAE研究のためのマウスモデルおよび平均臨床スコア基準を示す。
【0042】
【
図3】
図3は、本発明の代表的な方法と従来技術の細胞に基づく送達方法との比較を示す。
【0043】
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、MOGのAAV8発現を示す。
図4Aは、肝臓から抽出したタンパク質のウェスタンブロット分析を示し、その一方で
図4Bは、リアルタイムRT-PCRを用いた転写レベルの分析を示す。
【0044】
【
図5】
図5Aは、EAEマウスの平均臨床スコアを示す。5匹の雌のマウスにAg/CFAエマルジョンを皮下注射した。12日目から平均臨床スコア(±SEM)の記録を開始した。
【0045】
図5Bは、EAEマウスの平均臨床スコアを示す。5匹の雌のC57BL/6マウスにMOG/CFAエマルジョンを皮下注射した。平均臨床スコア(±SEM)を記録した。
【0046】
【
図6】
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、AAV8-MOGがC57BL/6マウスのEAEの発症を防いだことを示す。C57BL/6マウス(n=5)にAAV8-MOGまたは対照を注射した。EAEは2週間後に誘導された。
図6Aは平均臨床スコアであり、
図6Bは抗MOG IgG1であり、
図6Cは抗MOG IgG2cである。
【0047】
【
図7】
図7A、
図7Bおよび
図7Cは、AAV8ベクターによる遺伝子療法がMSの動物モデルのEAEの発病を予防することを示す。
【0048】
【
図8】
図8は、AAV8-MOGがMSの動物モデルの疾患を改善したことを示す。
【0049】
【
図9】
図9は、PLP誘導EAEナイーブ対照群を示し、疾患の進行を実証する。
【0050】
【
図10】
図10は、AAV8ベクターによるMOG治療を用いる既存疾患の効果的な抑制を示す。
【0051】
【
図11】
図11は、MOGの肝臓での導入遺伝子発現を示す。AAV8-MOGを注射したMOG誘導EAEマウスの肝臓から抽出されたタンパク質のウェスタンブロット分析である。
【0052】
【
図12】
図12は、EAEを誘導された(A)かまたは誘導されなかった(B)、AAV8-GFPを受けたマウスの脊髄のルクソールファーストブルー(LFB)染色を示す。
【0053】
【
図13】
図13Aは、AAV8-MOGまたは対照ベクターを受けたEAE誘導C57BL/6マウスの、約0.3の平均臨床スコア(MCS)に達した後でのMCSを示す。棒グラフは、最終スコアとピーク対最終スコアとの間での統計学的有意性を示す。
【0054】
図13Bは、AAV8-MOGまたは対照ベクターを受けたEAE誘導C57BL/6マウスの、約0.8の平均臨床スコア(MCS)に達した後でのMCSを示す。棒グラフは、最終スコアとピーク対最終スコアとの間での統計学的有意性を示す。
【0055】
図13Cは、AAV8-MOGまたは対照ベクターを受けたEAE誘導C57BL/6マウスの、約1.3の平均臨床スコア(MCS)に達した後でのMCSを示す。棒グラフは、最終スコアとピーク対最終スコアとの間での統計学的有意性を示す。
【0056】
【
図14】
図14Aおよび14Bは、対照ベクターを受けてから約35日後の雌のEAE誘導マウスの脊髄の連続切片を示す(MCS=4.0)。
図14Aは、高度の炎症性浸潤の領域を示しているヘマトキシリンおよびエオシンによる染色である。
図14Bは、脱髄の領域を示しているルクソールファーストブルー染色である。丸で囲んだ領域は、炎症とミエリン喪失との共局在化を強調している。
【0057】
【
図15】
図15Aおよび15Bは、AAV-MOGベクターを受けてから約35日後の雌のEAE誘導マウスの脊髄の連続切片を示す(MCS=1.25)。
図15Aは、浸潤の減少を示しているヘマトキシリンおよびエオシンによる染色である。
図15Bは、炎症抑制の結果として切片の脱髄の領域が少ないことを示していると見受けられるルクソールファーストブルー染色である。
【0058】
【
図16】
図16Aおよび16Bは、AAV-MOG処理マウスの脾臓から単離されたTregが機能的に抑制性であることを示す。
【0059】
【
図17】
図17A、17B、17Cおよび17Dは、AAV-MOGベクターが抗原特異的なTregを誘導することを示す。AAV-MOGベクターを8週間前に注射されたマウスの脾臓細胞は、対照テトラマー陽性のCD+(
図17B)およびTreg+(
図17D)に比べてI-Ab MOG
35-55テトラマー陽性のCD4+(
図17A)およびTreg+(
図17C)の度数の増加を示した。
【0060】
【
図18】
図18は、PLP誘導再発寛解型EAEのマウスにおいて臨床的重篤度がAAV8-PLPによって低減されることを示す。
【0061】
【
図19】
図19Aは、AAV-MBPを注射されたマウスの肝臓から抽出されたタンパク質のウェスタンブロット分析である。
【0062】
図19Bは、AAV-MBPまたは対照で処理されたマウスの肝臓から得たRNAの転写レベルのリアルタイムRT-PCRによる分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明の詳細な説明
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、ヒトの疾患の数多くの臨床前動物モデルにおけるin vivoでの遺伝子導入のためにうまく用いられ、多種多様な治療遺伝子の長期的発現のためにうまく用いられてきた(DayaおよびBerns、2008;Niemeyerら、2009;Owenら、2002;Keen-Rhinehartら、2005;Scallanら、2003;Songら、2004)。また、AAVベクターは、例えばレーバー先天性黒内障のための眼内送達など、免疫特権部位を標的とした場合に長期的な臨床上の恩恵をヒトにもたらしてきた(Bainbridgeら、2008;Maguireら、2008;Cideciyanら,2008)。このベクターの主要な長所はその比較的低い免疫プロファイルであり、限定された炎症性応答のみを引き出し、いくつかの症例では免疫寛容を導入遺伝子産物へ向けさえする(LoDucaら,2009)。それにも拘らず、非免疫特権器官を標的とした場合には、動物モデルでは導入遺伝子産物に対する適応応答も報告されている一方で、ヒトではウイルスカプシドに対する抗体およびCD8+T細胞応答のために治療効果が限定されてきた(Mannoら,2006;Mingozziら,2007;Muruveら,2008;VandenbergheおよびWilson、2007;MingozziおよびHigh、2007)。
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるrAAV核酸ベクターは、末端逆位配列(ITR)、例えば、AAV2ゲノムなどの野生型AAVゲノムに由来するものなどを含む。いくつかの実施形態において、rAAV核酸ベクターはさらに、プロモーターおよび場合によってその他の調節エレメントに作動可能に連結された導入遺伝子(異種核酸分子とも呼ぶ)を含む核酸部分を含み、ITRは当該核酸部分に隣接している。
【0065】
いくつかの実施形態においてプロモーターは、哺乳動物細胞特異的または哺乳動物組織特異的なプロモーターである。いくつかの実施形態においてプロモーターは、哺乳動物の肝臓の1以上の細胞、例えば肝細胞などにおいて当該核酸部分を発現できるプロモーターである。代表的な肝細胞特異的なプロモーターおよびエンハンサーエレメントとしては、例えば、アルブミン、ヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)、トランスサイレチン(TTR)およびアポリポタンパク質E(apoE)のプロモーターまたはエンハンサーエレメントが挙げられる。
【0066】
いくつかの実施形態において導入遺伝子は、対象の自己免疫疾患治療分子、例えば哺乳動物のミエリン塩基性(basis)タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)またはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)などをコードする。本明細書において用いられる自己免疫治療分子には、自己免疫疾患の開始および/または進行に寄与するあらゆる抗原(タンパク質、その断片、またはペプチドなど)が含まれる。代表的な自己免疫治療分子としては、ミエリン塩基性タンパク質(MBP、例えば多発性硬化症のために)、プロテオリピドタンパク質(PLP、例えば多発性硬化症のために)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG、例えば多発性硬化症のために)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG、例えば抗MAG末梢神経障害のために)、インスリン(例えば1型糖尿病のために)、膵島特異的グルコース6ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP、例えば1型糖尿病のために)、プリプロインスリン(例えば1型糖尿病のために)、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD、例えば1型糖尿病のために)、チロシンホスファターゼ様自己抗原(例えば1型糖尿病のために)、インスリノーマ抗原2(例えば1型糖尿病のために)、膵島細胞抗原(例えば1型糖尿病のために)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体(例えばグレーブス病のために)、サイロトロピン受容体(例えばグレーブス病のために)、アグリカン(例えば関節リウマチのために)、CD4+T細胞エピトープ(GRVRVNSAY(配列番号:36)、例えばプロテオグリカン誘導性関節炎(PGIA)または関節リウマチのために)、またはアセチルコリン受容体(例えば重症筋無力症のために)が挙げられる。いくつかの実施形態において、対象の自己免疫疾患治療分子は、ヒトタンパク質、例えば、ヒトミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ヒトプロテオリピドタンパク質(PLP)、またはヒトミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)などである。
【0067】
導入遺伝子にコードされていてもよい代表的な導入遺伝子配列(例えばcDNA配列)およびタンパク質配列を以下に提供する。いくつかの実施形態において導入遺伝子は、以下に提供するcDNA配列(配列番号:8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32または34)のうちのいずれか1に少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である配列を含む。いくつかの実施形態において導入遺伝子は、以下に提供するcDNA配列(配列番号:8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32または34)のうちのいずれか1である配列を含む。いくつかの実施形態において導入遺伝子は、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化されている。いくつかの実施形態において導入遺伝子は、本明細書において提供されるタンパク質配列のうちのいずれか1(例えば、配列番号1、2、3、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33または35のうちのいずれか1)の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240個またはそれ以上の近接した(contiguous)アミノ酸をコードするヌクレオチド配列を含有する。いくつかの実施形態において導入遺伝子は、本明細書において提供されるタンパク質配列のうちのいずれか1(例えば、配列番号1、2、3、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33または35のうちのいずれか1)に少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有する。いくつかの実施形態において導入遺伝子は、本明細書に提供されるタンパク質配列のうちのいずれか1(例えば、配列番号1、2、3、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33または35のうちのいずれか1)をコードするヌクレオチド配列を含有する。
【0068】
代表的なハツカネズミミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)cDNA
1 atggcctgtt tgtggagctt ctctttgccc agctgcttcc tctcccttct cctcctcctt
61 ctcctccagt tgtcatgcag ctatgcagga caattcagag tgataggacc agggtatccc
121 atccgggctt tagttgggga tgaagcagag ctgccgtgcc gcatctctcc tgggaaaaat
181 gccacgggca tggaggtggg ttggtaccgt tctcccttct caagagtggt tcacctctac
241 cgaaatggca aggaccaaga tgcagagcaa gcacctgaat accggggacg cacagagctt
301 ctgaaagaga ctatcagtga gggaaaggtt acccttagga ttcagaacgt gagattctca
361 gatgaaggag gctacacctg cttcttcaga gaccactctt accaagaaga ggcagcaatg
421 gagttgaaag tggaagatcc cttctattgg gtcaaccccg gtgtgctgac tctcatcgca
481 cttgtgccta cgatcctcct gcaggtctct gtaggccttg tattcctctt cctgcagcac
541 agactgagag gaaaacttcg tgcagaagta gagaatctcc atcggacttt tgatcctcac
601 ttcctgaggg tgccctgctg gaagataaca ctgtttgtta ttgtgcctgt tcttggaccc
661 ctggttgcct tgatcatctg ctacaactgg ctgcaccgaa gactggcagg acagtttctt
721 gaagagctaa gaaaccccct ttga (配列番号:8)
【0069】
代表的なハツカネズミミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)タンパク質
1 maclwsfswp scflslllll llqlscsyag qfrvigpgyp iralvgdeae lpcrispgkn
61 atgmevgwyr spfsrvvhly rngkdqdaeq apeyrgrtel lketisegkv tlriqnvrfs
121 deggytcffr dhsyqeeaam elkvedpfyw vnpgvltlia lvptillqvs vglvflflqh
181 rlrgklraev enlhrtfdph flrvpcwkit lfvivpvlgp lvaliicynw lhrrlagqfl
241 eelrnpf (配列番号:9)
【0070】
代表的なハツカネズミプロテオリピドタンパク質1(PLP)cDNA
ATGGGCTTGTTAGAGTGTTGTGCTAGATGTCTGGTAGGGGCCCCCTTTGCTTCCCTGGTGGCCACTGGAT TGTGTTTCTTTGGAGTGGCACTGTTCTGTGGATGTGGACATGAAGCTCTCACTGGTACAGAAAAGCTAAT TGAGACCTATTTCTCCAAAAACTACCAGGACTATGAGTATCTCATTAATGTGATTCATGCTTTCCAGTAT GTCATCTATGGAACTGCCTCTTTCTTCTTCCTTTATGGGGCCCTCCTGCTGGCTGAGGGCTTCTACACCA CCGGCGCTGTCAGGCAGATCTTTGGCGACTACAAGACCACCATCTGCGGCAAGGGCCTGAGCGCAACGGT AACAGGGGGCCAGAAGGGGAGGGGTTCCAGAGGCCAACATCAAGCTCATTCTTTGGAGCGGGTGTGTCAT TGTTTGGGAAAATGGCTAGGACATCCCGACAAGTTTGTGGGCATCACCTATGCCCTGACTGTTGTATGGC TCCTGGTGTTTGCCTGCTCGGCTGTACCTGTGTACATTTACTTCAATACCTGGACCACCTGTCAGTCTAT TGCCTTCCCTAGCAAGACCTCTGCCAGTATAGGCAGTCTCTGCGCTGATGCCAGAATGTATGGTGTTCTC CCATGGAATGCTTTCCCTGGCAAGGTTTGTGGCTCCAACCTTCTGTCCATCTGCAAAACAGCTGAGTTCC AAATGACCTTCCACCTGTTTATTGCTGCGTTTGTGGGTGCTGCGGCCACACTAGTTTCCCTGCTCACCTT CATGATTGCTGCCACTTACAACTTCGCCGTCCTTAAACTCATGGGCCGAGGCACCAAGTTCTGA (配列番号:10)
【0071】
代表的なハツカネズミプロテオリピドタンパク質1(PLP)タンパク質
1 mglleccarc lvgapfaslv atglcffgva lfcgcgheal tgtekliety fsknyqdyey
61 linvihafqy viygtasfff lygalllaeg fyttgavrqi fgdyktticg kglsatvtgg
121 qkgrgsrgqh qahslervch clgkwlghpd kfvgityalt vvwllvfacs avpvyiyfnt
181 wttcqsiafp sktsasigsl cadarmygvl pwnafpgkvc gsnllsickt aefqmtfhlf
241 iaafvgaaat lvslltfmia atynfavlkl mgrgtkf (配列番号:11)
【0072】
代表的なハツカネズミミエリン塩基性タンパク質(MBP)cDNA
ATGGGAAACCACTCTGGAAAGAGAGAATTATCTGCTGAGAAGGCCAGTAAGGATGGAGAGATTCACCGAG GAGAGGCTGGAAAGAAGAGAAGCGTGGGCAAGCTTTCTCAGACGGCCTCAGAGGACAGTGATGTGTTTGG GGAGGCAGATGCGATCCAGAACAATGGGACCTCGGCTGAGGACACGGCGGTGACAGACTCCAAGCACACA GCAGACCCAAAGAATAACTGGCAAGGCGCCCACCCAGCTGACCCAGGGAACCGCCCCCACTTGATCCGCC TCTTTTCCCGAGATGCCCCGGGAAGGGAGGACAACACCTTCAAAGACAGGCCCTCAGAGTCCGACGAGCT TCAGACCATCCAAGAAGACCCCACAGCAGCTTCCGGAGGCCTGGATGTGATGGCATCACAGAAGAGACCC TCACAGCGATCCAAGTACCTGGCCACAGCAAGTACCATGGACCATGCCAGGCATGGCTTCCTCCCAAGGC ACAGAGACACGGGCATCCTTGACTCCATCGGGCGCTTCTTTAGCGGTGACAGGGGTGCGCCCAAGCGGGG CTCTGGCAAGGTGAGCTCCGAGCCGTAG (配列番号:12)
【0073】
代表的なハツカネズミミエリン塩基性タンパク質(MBP)タンパク質
1 mgnhsgkrel saekaskdge ihrgeagkkr svgklsqtas edsdvfgead aiqnngtsae
61 dtavtdskht adpknnwqga hpadpgnrph lirlfsrdap gredntfkdr psesdelqti
121 qedptaasgg ldvmasqkrp sqrskylata stmdharhgf lprhrdtgil dsigrffsgd
181 rgapkrgsgk vssep (配列番号:13)
【0074】
代表的なホモサピエンスミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)cDNA
1 atggcaagct tatcgagacc ctctctgccc agctgcctct gctccttcct cctcctcctc
61 ctcctccaag tgtcttccag ctatgcaggg cagttcagag tgataggacc aagacaccct
121 atccgggctc tggtcgggga tgaagtggaa ttgccatgtc gcatatctcc tgggaagaac
181 gctacaggca tggaggtggg gtggtaccgc ccccccttct ctagggtggt tcatctctac
241 agaaatggca aggaccaaga tggagaccag gcacctgaat atcggggccg gacagagctg
301 ctgaaagatg ctattggtga gggaaaggtg actctcagga tccggaatgt aaggttctca
361 gatgaaggag gtttcacctg cttcttccga gatcattctt accaagagga ggcagcaatg
421 gaattgaaag tagaagatcc tttctactgg gtgagccctg gagtgctggt tctcctcgcg
481 gtgctgcctg tgctcctcct gcagatcact gttggcctcg tcttcctctg cctgcagtac
541 agactgagag gaaaacttcg agcagagata gagaatctcc accggacttt tgatccccac
601 tttctgaggg tgccctgctg gaagataacc ctgtttgtaa ttgtgccggt tcttggaccc
661 ttggttgcct tgatcatctg ctacaactgg ctacatcgaa gactagcagg gcaattcctt
721 gaagagctac gaaatccctt ctga (配列番号:14)
【0075】
代表的なホモサピエンスミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)タンパク質
1 maslsrpslp sclcsfllll llqvsssyag qfrvigprhp iralvgdeve lpcrispgkn
61 atgmevgwyr ppfsrvvhly rngkdqdgdq apeyrgrtel lkdaigegkv tlrirnvrfs
121 deggftcffr dhsyqeeaam elkvedpfyw vspgvlvlla vlpvlllqit vglvflclqy
181 rlrgklraei enlhrtfdph flrvpcwkit lfvivpvlgp lvaliicynw lhrrlagqfl
241 eelrnpf (配列番号:15)
【0076】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体7、cDNA
ATGGGAAACCACGCAGGCAAACGAGAATTAAATGCCGAGAAGGCCAGTACGAATAGTGAAACTAACAGAG GAGAATCTGAAAAAAAGAGAAACCTGGGTGAACTTTCACGGACAACCTCAGAGGACAACGAAGTGTTCGG AGAGGCAGATGCGAACCAGAACAATGGGACCTCCTCTCAGGACACAGCGGTGACTGACTCCAAGCGCACA GCGGACCCGAAGAATGCCTGGCAGGATGCCCACCCAGCTGACCCAGGGAGCCGCCCCCACTTGATCCGCC TCTTTTCCCGAGATGCCCCGGGGAGGGAGGACAACACCTTCAAAGACAGGCCCTCTGAGTCCGACGAGCT CCAGACCATCCAAGAAGACAGTGCAGCCACCTCCGAGAGCCTGGATGTGATGGCGTCACAGAAGAGACCC TCCCAGAGGCACGGATCCAAGTACCTGGCCACAGCAAGTACCATGGACCATGCCAGGCATGGCTTCCTCC CAAGGCACAGAGACACGGGCATCCTTGACTCCATCGGGCGCTTCTTTGGCGGTGACAGGGGTGCGCCCAA GCGGGGCTCTGGCAAGGACTCACACCACCCGGCAAGAACTGCTCACTACGGCTCCCTGCCCCAGAAGTCA CACGGCCGGACCCAAGATGAAAACCCCGTAGTCCACTTCTTCAAGAACATTGTGACGCCTCGCACACCAC CCCCGTCGCAGGGAAAGGGGAGAGGACTGTCCCTGAGCAGATTTAGCTGGGGGGCCGAAGGCCAGAGACC AGGATTTGGCTACGGAGGCAGAGCGTCCGACTATAAATCGGCTCACAAGGGATTCAAGGGAGTCGATGCC CAGGGCACGCTTTCCAAAATTTTTAAGCTGGGAGGAAGAGATAGTCGCTCTGGATCACCCATGGCTAGAC
GCTGA (配列番号:16)
【0077】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体7、タンパク質
1 mgnhagkrel naekastnse tnrgesekkr nlgelsrtts ednevfgead anqnngtssq
61 dtavtdskrt adpknawqda hpadpgsrph lirlfsrdap gredntfkdr psesdelqti
121 qedsaatses ldvmasqkrp sqrhgskyla tastmdharh gflprhrdtg ildsigrffg
181 gdrgapkrgs gkdshhpart ahygslpqks hgrtqdenpv vhffknivtp rtpppsqgkg
241 rglslsrfsw gaegqrpgfg yggrasdyks ahkgfkgvda qgtlskifkl ggrdsrsgsp
301 marr (配列番号:17)
【0078】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体1、cDNA
ATGGCGTCACAGAAGAGACCCTCCCAGAGGCACGGATCCAAGTACCTGGCCACAGCAAGTACCATGGACC
ATGCCAGGCATGGCTTCCTCCCAAGGCACAGAGACACGGGCATCCTTGACTCCATCGGGCGCTTCTTTGG
CGGTGACAGGGGTGCGCCCAAGCGGGGCTCTGGCAAGGTACCCTGGCTAAAGCCGGGCCGGAGCCCTCTG
CCCTCTCATGCCCGCAGCCAGCCTGGGCTGTGCAACATGTACAAGGACTCACACCACCCGGCAAGAACTG
CTCACTACGGCTCCCTGCCCCAGAAGTCACACGGCCGGACCCAAGATGAAAACCCCGTAGTCCACTTCTT
CAAGAACATTGTGACGCCTCGCACACCACCCCCGTCGCAGGGAAAGGGGAGAGGACTGTCCCTGAGCAGA
TTTAGCTGGGGGGCCGAAGGCCAGAGACCAGGATTTGGCTACGGAGGCAGAGCGTCCGACTATAAATCGG
CTCACAAGGGATTCAAGGGAGTCGATGCCCAGGGCACGCTTTCCAAAATTTTTAAGCTGGGAGGAAGAGA
TAGTCGCTCTGGATCACCCATGGCTAGACGCTGA (配列番号:18)
【0079】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体1、タンパク質
1 masqkrpsqr hgskylatas tmdharhgfl prhrdtgild sigrffggdr gapkrgsgkv
61 pwlkpgrspl psharsqpgl cnmykdshhp artahygslp qkshgrtqde npvvhffkni
121 vtprtpppsq gkgrglslsr fswgaegqrp gfgyggrasd yksahkgfkg vdaqgtlski
181 fklggrdsrs gspmarr (配列番号:19)
【0080】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体2、cDNA
ATGGCGTCACAGAAGAGACCCTCCCAGAGGCACGGATCCAAGTACCTGGCCACAGCAAGTACCATGGACC ATGCCAGGCATGGCTTCCTCCCAAGGCACAGAGACACGGGCATCCTTGACTCCATCGGGCGCTTCTTTGG CGGTGACAGGGGTGCGCCCAAGCGGGGCTCTGGCAAGGTACCCTGGCTAAAGCCGGGCCGGAGCCCTCTG CCCTCTCATGCCCGCAGCCAGCCTGGGCTGTGCAACATGTACAAGGACTCACACCACCCGGCAAGAACTG CTCACTACGGCTCCCTGCCCCAGAAGTCACACGGCCGGACCCAAGATGAAAACCCCGTAGTCCACTTCTT CAAGAACATTGTGACGCCTCGCACACCACCCCCGTCGCAGGGAAAGGGGGCCGAAGGCCAGAGACCAGGA TTTGGCTACGGAGGCAGAGCGTCCGACTATAAATCGGCTCACAAGGGATTCAAGGGAGTCGATGCCCAGG GCACGCTTTCCAAAATTTTTAAGCTGGGAGGAAGAGATAGTCGCTCTGGATCACCCATGGCTAGACGCTG
A (配列番号:20)
【0081】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体2、タンパク質
1 masqkrpsqr hgskylatas tmdharhgfl prhrdtgild sigrffggdr gapkrgsgkv
61 pwlkpgrspl psharsqpgl cnmykdshhp artahygslp qkshgrtqde npvvhffkni
121 vtprtpppsq gkgaegqrpg fgyggrasdy ksahkgfkgv daqgtlskif klggrdsrsg
181 spmarr (配列番号:21)
【0082】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体3、cDNA
ATGGCGTCACAGAAGAGACCCTCCCAGAGGCACGGATCCAAGTACCTGGCCACAGCAAGTACCATGGACC ATGCCAGGCATGGCTTCCTCCCAAGGCACAGAGACACGGGCATCCTTGACTCCATCGGGCGCTTCTTTGG CGGTGACAGGGGTGCGCCCAAGCGGGGCTCTGGCAAGGACTCACACCACCCGGCAAGAACTGCTCACTAC GGCTCCCTGCCCCAGAAGTCACACGGCCGGACCCAAGATGAAAACCCCGTAGTCCACTTCTTCAAGAACA TTGTGACGCCTCGCACACCACCCCCGTCGCAGGGAAAGGGGAGAGGACTGTCCCTGAGCAGATTTAGCTG GGGGGCCGAAGGCCAGAGACCAGGATTTGGCTACGGAGGCAGAGCGTCCGACTATAAATCGGCTCACAAG GGATTCAAGGGAGTCGATGCCCAGGGCACGCTTTCCAAAATTTTTAAGCTGGGAGGAAGAGATAGTCGCT CTGGATCACCCATGGCTAGACGCTGA (配列番号:22)
【0083】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体3、タンパク質
1 masqkrpsqr hgskylatas tmdharhgfl prhrdtgild sigrffggdr gapkrgsgkd
61 shhpartahy gslpqkshgr tqdenpvvhf fknivtprtp ppsqgkgrgl slsrfswgae
121 gqrpgfgygg rasdyksahk gfkgvdaqgt lskifklggr dsrsgspmar r (配列番号:23)
【0084】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体4、cDNA
ATGGCGTCACAGAAGAGACCCTCCCAGAGGCACGGATCCAAGTACCTGGCCACAGCAAGTACCATGGACC ATGCCAGGCATGGCTTCCTCCCAAGGCACAGAGACACGGGCATCCTTGACTCCATCGGGCGCTTCTTTGG CGGTGACAGGGGTGCGCCCAAGCGGGGCTCTGGCAAGGACTCACACCACCCGGCAAGAACTGCTCACTAC GGCTCCCTGCCCCAGAAGTCACACGGCCGGACCCAAGATGAAAACCCCGTAGTCCACTTCTTCAAGAACA TTGTGACGCCTCGCACACCACCCCCGTCGCAGGGAAAGGGGGCCGAAGGCCAGAGACCAGGATTTGGCTA CGGAGGCAGAGCGTCCGACTATAAATCGGCTCACAAGGGATTCAAGGGAGTCGATGCCCAGGGCACGCTT TCCAAAATTTTTAAGCTGGGAGGAAGAGATAGTCGCTCTGGATCACCCATGGCTAGACGCTGA (配列番号:24)
【0085】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体4、タンパク質
1 masqkrpsqr hgskylatas tmdharhgfl prhrdtgild sigrffggdr gapkrgsgkd
61 shhpartahy gslpqkshgr tqdenpvvhf fknivtprtp ppsqgkgaeg qrpgfgyggr
121 asdyksahkg fkgvdaqgtl skifklggrd srsgspmarr (配列番号:25)
【0086】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体8、cDNA
ATGGGAAACCACGCAGGCAAACGAGAATTAAATGCCGAGAAGGCCAGTACGAATAGTGAAACTAACAGAG GAGAATCTGAAAAAAAGAGAAACCTGGGTGAACTTTCACGGACAACCTCAGAGGACAACGAAGTGTTCGG AGAGGCAGATGCGAACCAGAACAATGGGACCTCCTCTCAGGACACAGCGGTGACTGACTCCAAGCGCACA GCGGACCCGAAGAATGCCTGGCAGGATGCCCACCCAGCTGACCCAGGGAGCCGCCCCCACTTGATCCGCC TCTTTTCCCGAGATGCCCCGGGGAGGGAGGACAACACCTTCAAAGACAGGCCCTCTGAGTCCGACGAGCT CCAGACCATCCAAGAAGACAGTGCAGCCACCTCCGAGAGCCTGGATGTGATGGCGTCACAGAAGAGACCC TCCCAGAGGCACGGATCCAAGTACCTGGCCACAGCAAGTACCATGGACCATGCCAGGCATGGCTTCCTCC CAAGGCACAGAGACACGGGCATCCTTGACTCCATCGGGCGCTTCTTTGGCGGTGACAGGGGTGCGCCCAA GCGGGGCTCTGGCAAGGTGAGCTCTGAGGAGTAG (配列番号:26)
【0087】
代表的なホモサピエンスミエリン塩基性タンパク質(MBP)、転写変異体8、タンパク質
1 mgnhagkrel naekastnse tnrgesekkr nlgelsrtts ednevfgead anqnngtssq
61 dtavtdskrt adpknawqda hpadpgsrph lirlfsrdap gredntfkdr psesdelqti
121 qedsaatses ldvmasqkrp sqrhgskyla tastmdharh gflprhrdtg ildsigrffg
181 gdrgapkrgs gkvssee (配列番号:27)
【0088】
代表的なホモサピエンスプロテオリピドタンパク質1(PLP1)、転写変異体1、cDNA
ATGGGCTTGTTAGAGTGCTGTGCAAGATGTCTGGTAGGGGCCCCCTTTGCTTCCCTGGTGGCCACTGGAT TGTGTTTCTTTGGGGTGGCACTGTTCTGTGGCTGTGGACATGAAGCCCTCACTGGCACAGAAAAGCTAAT TGAGACCTATTTCTCCAAAAACTACCAAGACTATGAGTATCTCATCAATGTGATCCATGCCTTCCAGTAT GTCATCTATGGAACTGCCTCTTTCTTCTTCCTTTATGGGGCCCTCCTGCTGGCTGAGGGCTTCTACACCA CCGGCGCAGTCAGGCAGATCTTTGGCGACTACAAGACCACCATCTGCGGCAAGGGCCTGAGCGCAACGGT AACAGGGGGCCAGAAGGGGAGGGGTTCCAGAGGCCAACATCAAGCTCATTCTTTGGAGCGGGTGTGTCAT TGTTTGGGAAAATGGCTAGGACATCCCGACAAGTTTGTGGGCATCACCTATGCCCTGACCGTTGTGTGGC TCCTGGTGTTTGCCTGCTCTGCTGTGCCTGTGTACATTTACTTCAACACCTGGACCACCTGCCAGTCTAT TGCCTTCCCCAGCAAGACCTCTGCCAGTATAGGCAGTCTCTGTGCTGATGCCAGAATGTATGGTGTTCTC CCATGGAATGCTTTCCCTGGCAAGGTTTGTGGCTCCAACCTTCTGTCCATCTGCAAAACAGCTGAGTTCC AAATGACCTTCCACCTGTTTATTGCTGCATTTGTGGGGGCTGCAGCTACACTGGTTTCCCTGCTCACCTT CATGATTGCTGCCACTTACAACTTTGCCGTCCTTAAACTCATGGGCCGAGGCACCAAGTTCTGA (配列番号:28)
【0089】
代表的なホモサピエンスプロテオリピドタンパク質1(PLP1)、転写変異体1、タンパク質
1 mglleccarc lvgapfaslv atglcffgva lfcgcgheal tgtekliety fsknyqdyey
61 linvihafqy viygtasfff lygalllaeg fyttgavrqi fgdyktticg kglsatvtgg
121 qkgrgsrgqh qahslervch clgkwlghpd kfvgityalt vvwllvfacs avpvyiyfnt
181 wttcqsiafp sktsasigsl cadarmygvl pwnafpgkvc gsnllsickt aefqmtfhlf
241 iaafvgaaat lvslltfmia atynfavlkl mgrgtkf (配列番号:29)
【0090】
代表的なホモサピエンスプロテオリピドタンパク質1(PLP1)、転写変異体2、cDNA
ATGGGCTTGTTAGAGTGCTGTGCAAGATGTCTGGTAGGGGCCCCCTTTGCTTCCCTGGTGGCCACTGGAT TGTGTTTCTTTGGGGTGGCACTGTTCTGTGGCTGTGGACATGAAGCCCTCACTGGCACAGAAAAGCTAAT TGAGACCTATTTCTCCAAAAACTACCAAGACTATGAGTATCTCATCAATGTGATCCATGCCTTCCAGTAT GTCATCTATGGAACTGCCTCTTTCTTCTTCCTTTATGGGGCCCTCCTGCTGGCTGAGGGCTTCTACACCA CCGGCGCAGTCAGGCAGATCTTTGGCGACTACAAGACCACCATCTGCGGCAAGGGCCTGAGCGCAACGTT TGTGGGCATCACCTATGCCCTGACCGTTGTGTGGCTCCTGGTGTTTGCCTGCTCTGCTGTGCCTGTGTAC ATTTACTTCAACACCTGGACCACCTGCCAGTCTATTGCCTTCCCCAGCAAGACCTCTGCCAGTATAGGCA GTCTCTGTGCTGATGCCAGAATGTATGGTGTTCTCCCATGGAATGCTTTCCCTGGCAAGGTTTGTGGCTC CAACCTTCTGTCCATCTGCAAAACAGCTGAGTTCCAAATGACCTTCCACCTGTTTATTGCTGCATTTGTG GGGGCTGCAGCTACACTGGTTTCCCTGCTCACCTTCATGATTGCTGCCACTTACAACTTTGCCGTCCTTA AACTCATGGGCCGAGGCACCAAGTTCTGA (配列番号:30)
【0091】
代表的なホモサピエンスプロテオリピドタンパク質1(PLP1)、転写変異体2、タンパク質
1 mglleccarc lvgapfaslv atglcffgva lfcgcgheal tgtekliety fsknyqdyey
61 linvihafqy viygtasfff lygalllaeg fyttgavrqi fgdyktticg kglsatfvgi
121 tyaltvvwll vfacsavpvy iyfntwttcq siafpsktsa sigslcadar mygvlpwnaf
181 pgkvcgsnll sicktaefqm tfhlfiaafv gaaatlvsll tfmiaatynf avlklmgrgt
241 kf (配列番号:31)
【0092】
代表的なホモサピエンスプロテオリピドタンパク質1(PLP1)、転写変異体3、cDNA
ATGGGCTTGTTAGAGTGCTGTGCAAGATGTCTGGTAGGGGCCCCCTTTGCTTCCCTGGTGGCCACTGGAT TGTGTTTCTTTGGGGTGGCACTGTTCTGTGGCTGTGGACATGAAGCCCTCACTGGCACAGAAAAGCTAAT TGAGACCTATTTCTCCAAAAACTACCAAGACTATGAGTATCTCATCAATGTGATCCATGCCTTCCAGTAT GTCATCTATGGAACTGCCTCTTTCTTCTTCCTTTATGGGGCCCTCCTGCTGGCTGAGGGCTTCTACACCA CCGGCGCAGTCAGGCAGATCTTTGGCGACTACAAGACCACCATCTGCGGCAAGGGCCTGAGCGCAACGGT AACAGGGGGCCAGAAGGGGAGGGGTTCCAGAGGCCAACATCAAGCTCATTCTTTGGAGCGGGTGTGTCAT TGTTTGGGAAAATGGCTAGGACATCCCGACAAGTTTGTGGGCATCACCTATGCCCTGACCGTTGTGTGGC TCCTGGTGTTTGCCTGCTCTGCTGTGCCTGTGTACATTTACTTCAACACCTGGACCACCTGCCAGTCTAT TGCCTTCCCCAGCAAGACCTCTGCCAGTATAGGCAGTCTCTGTGCTGATGCCAGAATGTATGGTGTTCTC CCATGGAATGCTTTCCCTGGCAAGGTTTGTGGCTCCAACCTTCTGTCCATCTGCAAAACAGCTGAGTTCC AAATGACCTTCCACCTGTTTATTGCTGCATTTGTGGGGGCTGCAGCTACACTGGTTTCCCTGCTCACCTT CATGATTGCTGCCACTTACAACTTTGCCGTCCTTAAACTCATGGGCCGAGGCACCAAGTTCTGA (配列番号:32)
【0093】
代表的なホモサピエンスプロテオリピドタンパク質1(PLP1)、転写変異体3、タンパク質
1 mglleccarc lvgapfaslv atglcffgva lfcgcgheal tgtekliety fsknyqdyey
61 linvihafqy viygtasfff lygalllaeg fyttgavrqi fgdyktticg kglsatvtgg
121 qkgrgsrgqh qahslervch clgkwlghpd kfvgityalt vvwllvfacs avpvyiyfnt
181 wttcqsiafp sktsasigsl cadarmygvl pwnafpgkvc gsnllsickt aefqmtfhlf
241 iaafvgaaat lvslltfmia atynfavlkl mgrgtkf (配列番号:33)
【0094】
代表的なホモサピエンスプロテオリピドタンパク質1(PLP1)、転写変異体4、cDNA
ATGGACTATGAGTATCTCATCAATGTGATCCATGCCTTCCAGTATGTCATCTATGGAACTGCCTCTTTCT TCTTCCTTTATGGGGCCCTCCTGCTGGCTGAGGGCTTCTACACCACCGGCGCAGTCAGGCAGATCTTTGG CGACTACAAGACCACCATCTGCGGCAAGGGCCTGAGCGCAACGGTAACAGGGGGCCAGAAGGGGAGGGGT TCCAGAGGCCAACATCAAGCTCATTCTTTGGAGCGGGTGTGTCATTGTTTGGGAAAATGGCTAGGACATC CCGACAAGTTTGTGGGCATCACCTATGCCCTGACCGTTGTGTGGCTCCTGGTGTTTGCCTGCTCTGCTGT GCCTGTGTACATTTACTTCAACACCTGGACCACCTGCCAGTCTATTGCCTTCCCCAGCAAGACCTCTGCC AGTATAGGCAGTCTCTGTGCTGATGCCAGAATGTATGGTGTTCTCCCATGGAATGCTTTCCCTGGCAAGG TTTGTGGCTCCAACCTTCTGTCCATCTGCAAAACAGCTGAGTTCCAAATGACCTTCCACCTGTTTATTGC TGCATTTGTGGGGGCTGCAGCTACACTGGTTTCCCTGCTCACCTTCATGATTGCTGCCACTTACAACTTT GCCGTCCTTAAACTCATGGGCCGAGGCACCAAGTTCTGA (配列番号:34)
【0095】
代表的なホモサピエンスプロテオリピドタンパク質1(PLP1)、転写変異体4、タンパク質
1 mdyeylinvi hafqyviygt asffflygal llaegfyttg avrqifgdyk tticgkglsa
61 tvtggqkgrg srgqhqahsl ervchclgkw lghpdkfvgi tyaltvvwll vfacsavpvy
121 iyfntwttcq siafpsktsa sigslcadar mygvlpwnaf pgkvcgsnll sicktaefqm
181 tfhlfiaafv gaaatlvsll tfmiaatynf avlklmgrgt kf (配列番号:35)
【0096】
いくつかの実施形態においてrAAV核酸ベクターは、本明細書に記載されるrAAV粒子によってカプシド化される。rAAV粒子は、あらゆる派生体(血清型の非自然発生変異体を含む)または偽型を含めたあらゆるAAV血清型(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)のものであり得る。いくつかの実施形態においてrAAV粒子はAAV8粒子であり、それはAAV2 ITRを用いて偽型化されてもよい。派生体および偽型の非限定的な例としては、AAV2-AAV3ハイブリッド、AAVrh.10、AAVhu.14、AAV3a/3b、AAVrh32.33、AAV-HSC15、AAV-HSC17、AAVhu.37、AAVrh.8、CHt-P6、AAV2.5、AAV6.2、AAV2i8、AAV-HSC15/17、AAVM41、AAV9.45、AAV6(Y445F/Y731F)、AAV2.5T、AAV-HAE1/2、AAVクローン32/83、AAVShH10、AAV2(Y->F)、AAV8(Y733F)、AAV2.15、AAV2.4、AAVM41、およびAAVr3.45が挙げられる。そのようなAAV血清型および派生体/偽型、ならびにそのような派生体/偽型を作製する方法は、当該技術分野において公知のである(例えば、Mol Ther. 2012 Apr;20(4):699-708. doi:10.1038/mt.2011.287. Epub 2012 Jan 24、The AAV vector toolkit:poised at the clinical crossroads. Asokan A1、Schaffer DV、Samulski RJを参照)。いくつかの実施形態においてrAAV粒子は、(a)1の血清型(例えばAAV2)由来のITRを含む核酸ベクターと、(b)別の血清型(例えばAAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9またはAAV10)に由来するカプシドタンパク質から成るカプシドとを含む偽型rAAV粒子である。偽型rAAVベクターを作製および使用する方法は、当該技術分野において公知のである(例えば、Duanら、J. Virol.、75:7662-7671、2001;Halbertら,J. Virol.、74:1524-1532、2000;Zolotukhinら,Methods、28:158-167、2002;およびAuricchioら,Hum. Molec. Genet.、10:3075-3081、2001を参照)。
【0097】
本開示に従って有用である代表的なrAAV核酸ベクターとしては、一本鎖(ss)または自己相補型(sc)のAAV核酸ベクター、例えば一本鎖または自己相補型の組換えウイルスゲノムなどが挙げられる。
【0098】
rAAV粒子および核酸ベクターを作製する方法もまた当該技術分野において公知のであり、市販されている(例えば、Zolotukhinら,Production and purification of serotype 1, 2, and 5 recombinant adeno-associated viral vectors. Methods 28(2002)158-167;ならびに米国特許公開番号US20070015238およびUS20120322861を参照、それらは参照によって本明細書に組み込まれる;プラスミドおよびキットはATCC and Cell Biolabs, Inc.から入手可能)。例えば、核酸ベクター配列を含有するプラスミドを、例えばrep遺伝子(例えばRep78、Rep68、Rep52およびRep40をコードするもの)とcap遺伝子(本明細書に記載される改変VP3領域を含め、VP1、VP2およびVP3をコードするもの)とを含有する1以上のヘルパープラスミドと組み合わせて、rAAV粒子のパッケージングおよびその後の精製ができるようにプロデューサー細胞株に遺伝子導入してもよい。
【0099】
いくつかの実施形態において1以上のヘルパープラスミドは、rep遺伝子およびcap遺伝子を含む第1ヘルパープラスミドと、E1a遺伝子、E1b遺伝子、E4遺伝子、E2a遺伝子およびVA遺伝子を含む第2ヘルパープラスミドとを含む。いくつかの実施形態において、rep遺伝子は、AAV2に由来するrep遺伝子であり、cap遺伝子は、AAV2に由来し、本明細書に記載される改変カプシドタンパク質を産生するために遺伝子への改変を含む。ヘルパープラスミドおよびそのようなプラスミドを作製する方法は、当該技術分野において公知のであり、市販されている(例えば、ドイツ、ビーレフェルトのPlasmidFactoryからのpDM、pDG、pDP1rs、pDP2rs、pDP3rs、pDP4rs、pDP5rs、pDP6rs、pDG(R484E/R585E)、およびpDP8.apeプラスミド;その他の製品およびサービスは、ペンシルバニア州フィラデルフィアのVector Biolabs;カリフォルニア州サンディエゴのCellbiolabs;カリフォルニア州サンタクララのAgilent Technologies;およびマサチューセッツ州ケンブリッジのAddgeneから入手可能;pxx6;Grimmら(1998)、Novel Tools for Production and Purification of Recombinant Adenoassociated Virus Vectors、Human Gene Therapy、Vol. 9、2745-2760;Kern, A.ら(2003)、Identification of a Heparin-Binding Motif on Adeno-Associated Virus Type 2 Capsids、Journal of Virology、Vol. 77、11072-11081;Grimmら(2003)、Helper Virus-Free, Optically Controllable, and Two-Plasmid-Based Production of Adeno-associated Virus Vectors of Serotypes 1 to 6、Molecular Therapy、Vol. 7、839-850;Kronenbergら(2005)、A Conformational Change in the Adeno-Associated Virus Type 2 Capsid Leads to the Exposure of Hidden VP1 N Termini、Journal of Virology、Vol. 79、5296-5303;ならびにMoullier, P.およびSnyder, R.O.(2008)、International efforts for recombinant adeno-associated viral vector reference standards、Molecular Therapy、Vol. 16、1185-1188を参照)。
【0100】
代表的で非限定的なrAAV粒子作製方法を次に説明する。所望のAAV血清型のためのrepおよびcapのORFと、生来のプロモーターの転写制御下にあるアデノウイルスのVA、E2A(DBP)およびE4遺伝子とを含む1以上のヘルパープラスミドを作製または取得する。また、cap ORFは、本明細書に記載される改変カプシドタンパク質を産生するために1以上の改変を含んでいてもよい。CaPO4媒介遺伝子導入、脂質、またはポリマー分子、例えばポリエチレンイミン(PEI)などを介して、HEK293細胞(ATCC(登録商標)から入手可能)にヘルパープラスミド(複数可)と本明細書に記載される核酸ベクターを含有するプラスミドとを遺伝子導入する。その後、HEK293細胞を少なくとも60時間インキュベートしてrAAV粒子を産生させる。あるいは別の例では、Sf9系プロデューサー安定細胞株に、核酸ベクターを含有する単一の組換えバキュロウイルスを感染させる。さらなる代替案として、別の例では、核酸ベクターを含有するHSVを、本明細書に記載のrepおよびcapのORFと、生来のプロモーターの転写制御下にあるアデノウイルスのVA、E2A(DBP)およびE4遺伝子とを含有する、任意選択の1以上のヘルパーHSVとともに、HEK293細胞株またはBHK細胞株へ感染させる。その後、HEK293、BHKまたはSf9細胞を少なくとも60時間インキュベートしてrAAV粒子を産生させる。その後、当該技術分野において公知のであるかまたは本明細書に記載される任意の方法を用いて、例えば、イオジキサノールステップ勾配、CsCl勾配、クロマトグラフィーまたはポリエチレングリコール(PEG)沈殿によって、rAAV粒子を精製することができる。
【0101】
本明細書で用いられる用語「遺伝子操作」細胞、および「組換え」細胞は、外来ポリヌクレオチド部分(生物活性分子の転写をもたらすDNA部分など)が中に導入された細胞を指すことを意図する。したがって、遺伝子操作細胞は、組換えで導入された外来DNA部分を含有しない天然起源の細胞とは区別される。したがって、遺伝子操作細胞は、人為的に導入された少なくとも1以上の異種ポリヌクレオチド部分を含む細胞である。
【0102】
本発明に従って治療剤を発現させるには、1以上のプロモーターの制御下にある治療剤をコードした核酸部分を含む発現ベクターを含有するチロシンカプシド改変型rAAV粒子を作製してもよい。配列をプロモーターの「制御下」とするためには、選択されたプロモーターの概して約1~約50ヌクレオチド「下流側」(すなわち3'側)に転写リーディングフレームの転写開始部位の5'末端を配置する。「上流側」のプロモーターはDNAの転写を刺激し、コードされたポリペプチドの発現を促進する。これが、この文脈における「組換え発現」の意味である。特に好ましい組換え核酸ベクター構築物は、対象の治療遺伝子が、1以上の選択された哺乳動物細胞において当該遺伝子を発現できる1以上のプロモーターに作動可能に連結されて含まれた、rAAV核酸ベクターを含むものである。そのような核酸ベクターを本明細書において詳しく説明する。
【0103】
本発明の遺伝学的構築物は、様々な組成で調剤され得、また、ヒトまたは動物の被験体への投与のために適切な薬学的ビヒクル中に調合され得る。本発明のrAAV分子およびそれらを含む組成物は、哺乳動物の神経系の様々な障害、疾患、損傷および/または機能不全の症候を治療、制御および改善するために、特にMSの治療または改善において、新しく有用な療法を提供する。
【0104】
いくつかの実施形態において、被験体に投与されるrAAV粒子の数は106~1014粒子/mlまたは103~1015粒子/mlの範囲のオーダー、またはいずれかの範囲に対するその間のいかなる値、例えば約106、107、108、109、1010、1011、1012、1013もしくは1014粒子/mlなどであってもよい。一実施形態では1013粒子/mlを上回るrAAV粒子が投与され得る。いくつかの実施形態において、被験体に投与されるrAAV粒子の数は106~1014ベクターゲノム(vg)/mlまたは103~1015vg/mlの範囲のオーダー、またはその間のいかなる値、例えば約106、107、108、109、1010、1011、1012、1013もしくは1014vg/mlなどであってもよい。一実施形態では1013vg/mlを上回るrAAV粒子が投与される。rAAV粒子は、単回用量として投与され得るか、または治療される特定の疾患または障害の治療を成し遂げるための必要性に応じて2回以上に分割して投与され得る。いくつかの実施形態では、0.0001ml~10ml、例えば0.001ml、0.01ml、0.1ml、1ml、2ml、5mlまたは10 mlを被験体に送達する。いくつかの実施形態において、被験体に投与されるrAAV粒子の数は、106~1014vg/kgの範囲のオーダー、またはその間のいかなる値、例えば約106、107、108、109、1010、1011、1012、1013もしくは1014vg/mgなどであってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、単独か、または1以上の他の治療様式と組み合わせてかのいずれかで、細胞または動物に投与するための、特にヒトの細胞、組織、およびヒトを侵す疾患を治療するための、薬学的に許容可能な溶液中の本明細書に開示の1以上のウイルス系組成物の製剤が、本開示によって提供される。
【0106】
望ましい場合には、本明細書に記載のrAAV粒子を、他の薬剤、例えばタンパク質やポリペプチドや様々な薬理活性剤など(治療ポリペプチド、生物活性断片またはその変異体の1回以上の全身投与または局所投与を含む)と組み合わせて投与してもよい。実際上、その付加的な薬剤が標的細胞または宿主組織との接触に際して著しい悪影響をもたらさないのであれば、含まれていてもよい他成分は実質的に限定されない。したがって、rAAV粒子は、特定の例における必要性に応じて他の様々な薬剤と一緒に送達されてもよい。そのような組成物は、宿主細胞またはその他の生物源から精製してもよく、あるいは本明細書に記載されているように化学的に合成してもよい。
【0107】
薬学的に許容可能な賦形剤および担体溶液の製剤設計は、本明細書に記載の特定の組成物を様々な処理レジメンで用いるための適切な投与計画および処理レジメンの開発のように、例えば経口、非経口、硝子体内、眼内、静脈内、鼻腔内、関節内および筋肉内の投与および製剤設計を含めて当業者によく知られている。
【0108】
典型的にはこれらの製剤は少なくとも約0.1%以上の治療剤(例えばrAAV粒子)を含有し得るが、もちろん活性成分(複数可)の割合を変化させてもよく、好都合には、製剤全体の重量または体積の約1か2%~約70%か80%、またはそれ以上であり得る。当然ながら,治療上有用な各々の組成物中の治療剤(複数可)の量は、化合物のいかなる所定単位用量においても適切な用量が得られるように調製され得る。そのような医薬製剤を調製する当業者であれば溶解度、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製品貯蔵寿命などの要因、およびその他の薬理学的検討事項を熟慮するであろうし、そのようにして様々な投与計画および処理レジメンが望ましいものとなり得る。
【0109】
特定の状況において、本明細書に開示される適切に調合された医薬組成物中のrAAV粒子は、皮下、眼内、硝子体内、非経口、皮下、静脈内、脳室内、筋肉内、クモ膜下腔内、経口、腹腔内の送達、経口吸入もしくは鼻腔吸入による送達、または直接注射による1以上の細胞、組織もしくは器官への直接注射による送達のいずれかで送達されることが望ましいであろう。注射可能な使用に適する組成物の医薬品形態としては、無菌の水性の溶液や分散剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、当該形態は無菌であり、シリンジ操作が容易となる程度に流動性である。いくつかの実施形態では、当該形態は製造および貯蔵の条件下で安定であり、細菌や真菌などの微生物の汚染作用から保護される。担体は、例えば、水、生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および/または植物油を含有する、溶媒または分散媒体であり得る。例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散剤の場合での所要粒子径の維持、および界面活性剤の使用によって、適度な流動性が維持され得る。
【0110】
用語「担体」は、rAAV粒子と共に投与される希釈剤、補助薬、賦形剤またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、無菌液体、例えば水や油など(鉱油などの石油系油、ピーナッツ油や大豆油やゴマ油などの植物油、動物油、または合成起源の油のものを含む)であり得る。生理食塩溶液や水性デキストロースやグリセロール溶液もまた液体担体として使用することができる。その他の代表的な担体としては、リン酸緩衝生理食塩水、HEPES緩衝生理食塩水、および注射用水が挙げられ、そのいずれかを場合によって塩化カルシウム二水和物、無水リン酸二ナトリウム、塩化マグネシウム六水和物、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウムまたはスクロースのうちの1以上と組み合わせてもよい。
【0111】
本開示の組成物は、治療される被験体に標準的経路によって投与され得、当該標準的経路としては、限定はしないが、肺、鼻腔内、経口、吸入、静脈内などの非経口、局所、経皮、皮内、経粘膜、腹腔内、筋肉内、関節包内、眼窩内、硝子体内、心臓内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内への注射が挙げられる。いくつかの実施形態において組成物は、肝動脈点滴、門脈注射または脾臓内注射によって静脈内に投与される。いくつかの実施形態において組成物は、本明細書に記載されるrAAV核酸ベクターを含むAAV8 rAAV粒子を含み、組成物は静脈内に投与される。
【0112】
例えば注射可能な水溶液を投与するためには、溶液は必要に応じて適切に緩衝され得、液体希釈剤は最初に十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされ得る。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、硝子体内、皮下および腹腔内への投与に特に適する。これに関連して、使用できる無菌水性媒体は、本開示に鑑みて当業者に公知のとなるであろう。例えば、1回分用量を1mlの等張NaCl溶液に溶解させてもよく、それを1000mlの皮下注入流体に添加するかあるいは提案される点滴部位に注射してもよい(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」15th Edition、1035-1038および1570-1580頁を参照)。治療される被験体の症状に応じて用量をいくらか変化させてもよい。いずれにせよ、投与責任者であれば、個々の被験体に適切な用量を判断するであろう。さらに、ヒトへの投与のためには、調剤薬は、無菌状態、発熱原性、ならびに例えばFDA生物製剤基準局が要求する一般的安全性および純度の基準を満足のいくものとしなければならない。
【0113】
注射可能な無菌溶液は、必要量のrAAV粒子を、上記に列挙した他成分のうちのいくつかを必要に応じて含む適切な溶媒中に組み込み、その後に無菌濾過を行うことによって、調製され得る。一般には、様々な無菌化活性成分を、基本分散媒体と上記に列挙したもののうちの必要な他成分とを含有する無菌ビヒクルに組み込むことによって、分散液を調製する。注射可能な無菌溶液を調製するための無菌パウダーの場合、代表的な調製方法は、活性成分とあらゆる所望の付加的成分とのパウダーを、前もって無菌濾過されたそれらの溶液から生産する、真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。
【0114】
rAAV粒子組成物の量およびそのような組成物の投与時間は、本教示内容によって利益を得る当業者の検討範囲内にあるであろう。しかしながら、治療上有効な量の開示された組成物の投与は、そのような治療を受けている患者に治療上の恩恵をもたらすために、例えば十分な数のウイルス粒子の単回注射などの単回投与によって達成され得ると思われる。あるいは、いくつかの状況では、そのような組成物の投与を監督する医師の判断に応じて、比較的短い期間または比較的長い期間のいずれかに亘って組成物の多数回投与または連続投与を提供することが望ましくあり得る。
【0115】
組成物は、rAAV粒子または核酸ベクターを、単独で、または1以上の付加的活性成分と組み合わせてのいずれかで含み得、当該付加的活性成分は、天然源もしくは組換え型源から得てもよく、または化学的に合成してもよい。
【0116】
本発明によれば、ポリヌクレオチド、核酸部分、核酸配列などには、限定はしないが、DNA(限定されることなくゲノムDNAやゲノム外DNAを含む)、遺伝子、ペプチド核酸(PNA)、RNA(限定はしないがrRNA、mRNAおよびtRNAを含む)、ヌクレオシド、および天然源、化学的に合成、修飾されるかあるいはそうでなければ人為的に全体的または部分的に調製または合成されるかのいずれかから得られる適切な核酸部分が挙げられる。
【0117】
別段の定義がなされない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的な用語は、本発明の属する技術分野における当業者が普通に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似するかまたは等価であるいかなる方法および組成物も本発明の実行または試験において用いることができるが、本明細書には好ましい方法および組成物を記載する。本発明の目的のために、次の用語を以下の通り定義する。
【0118】
本明細書において用いられる用語「被験体」は、本発明による組成物を用いた治療が提供され得る霊長類などの哺乳動物を含めた生物を表す。開示される治療方法により恩恵を受けることのできる哺乳動物種としては、限定はしないが、ヒト;類人猿;チンパンジー;オランウータン;猿;イヌやネコなどの飼育動物;馬、ウシ、豚、ヒツジ、ヤギおよび鶏などの家畜;ならびにその他の動物、例えばマウス、ラット、モルモットおよびハムスターなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、被験体は、多発性硬化症、散在性硬化症(disseminated sclerosis)または散在性脳脊髄炎(encephalomyelitis disseminata)などの自己免疫性の疾患または障害を有するか、その疑いがあるか、それを発症する危険性があるか、それを診断されている。いくつかの実施形態において、被験体は、多発性硬化症、散在性硬化症または散在性脳脊髄炎などの自己免疫性の疾患または障害を有する。その他の代表的な自己免疫疾患としては、1型糖尿病、グレーブス病、関節炎(例えば関節リウマチやPGIA)、自己免疫性ぶどう膜炎、末梢神経障害、重症筋無力症、狼瘡およびクローン病が挙げられる。いくつかの実施形態において、自己免疫性の疾患または障害は、感染(例えば細菌感染やウイルス感染)に関連する。
【0119】
本明細書において用いられる用語「治療」またはそのあらゆる文法上の変形(例えば、治療する、治療すること、および治療など)は、限定はしないが、疾患もしくは症状の症候を緩和すること;ならびに/または疾患もしくは症状の進行、重篤度および/もしくは範囲を軽減、抑制、阻止、低減、改善すること、もしくはそれに影響を与えることを含む。
【0120】
本明細書において用いられる用語「有効量」は、疾患または症状を治療または改善できるかあるいはそうでなければ意図する治療効果を生み出すことができる量を指す。
【0121】
本明細書において用いられる用語「プロモーター」は、転写を調節する核酸配列の1以上の領域を指す。
【0122】
本明細書において用いられる用語「調節エレメント」は、転写を調節する核酸配列の1以上の領域を指す。代表的な調節エレメントとしては、限定はしないが例えば、エンハンサー、転写後エレメント、転写制御配列などが挙げられる。
【0123】
本明細書において用いられる用語「ベクター」は、宿主細胞内で複製でき、かつ/または取付けられた部分の複製を起こすように別の核酸部分と機能上有効に連結されることのできる、核酸分子(典型的にはDNAから成る)を指す。代表的なベクターは、プラスミド、コスミドまたはウイルスである。
【0124】
本明細書において用いられる用語「実質的に対応する」、「実質的に相同的な」または「実質的な同一性」は、選択された核酸またはアミノ酸配列が選択された基準核酸またはアミノ酸配列と比較して少なくとも約70または約75パーセントの配列同一性を有する、核酸またはアミノ酸配列の特徴を意味する。より典型的には、選択された配列および基準配列は、少なくとも約76、77、78、79、80、81、82、83、84、さらには85パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも約86、87、88、89、90、91、92、93、94または95パーセントの配列同一性を有するであろう。よりいっそう好ましくは、高度に相同的な配列は、大抵、選択された配列とその比較対象であった基準配列とが少なくとも約96、97、98または99パーセントを上回る配列同一性を共有している。
【0125】
配列同一性の割合は、比較される配列の全長に亘って計算してもよく、または合計が選択された基準配列の約25パーセント程度を下回るわずかな欠失分または付加分を除外して計算してもよい。基準配列は、遺伝子の一部や隣接配列などの大きな配列のサブセット、または染色体の繰り返し部分であり得る。しかしながら、2以上のポリヌクレオチド配列の配列相同性の場合、基準配列は、典型的には少なくとも約18~25ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約26~35ヌクレオチド、よりいっそう典型的には少なくとも約40、50、60、70、80、90、さらには100程度のヌクレオチドを含むであろう。
【0126】
高度に相同的な断片が望まれる場合、当業者によく知られた1以上の配列比較アルゴリズム、例えばPearsonおよびLipman(1988)によって示されたFASTAプログラム解析などによって速やかに決定される、2つの配列間の同一性パーセントの度合いは、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは約90%または95%以上となるであろう。
【0127】
本明細書において用いられる用語「作動可能に連結された」は、連結される核酸配列が、概して近接しているかまたは実質的に近接しており、2のタンパク質コード領域を繋ぐ必要がある場合においては、近接しておりかつリーディングフレーム内にある、ということを指す。しかしながら、エンハンサーは一般にプロモーターから数キロ塩基離れている場合に機能し、イントロン配列は様々な長さを有し得るため、いくつかのポリヌクレオチドエレメントは作動可能に連結されるが、近接していなくてもよい。
【0128】
本明細書において用いられる用語「生物活性」は、以下の実施例1、実施例2、実施例3または実施例4に記載するようなマウスモデルのEAEの臨床的重篤度の低減や制御性T細胞の誘導などといった活性が、本明細書に記載される核酸またはタンパク質と実質的に同じである(例えば、本明細書に記載されるMOG、PLPまたはMBPの核酸またはタンパク質と実質的に同じであるかまたは同じ活性である)変異体核酸またはタンパク質を指す。
【0129】
実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を説明するために含めている。当業者であれば、これら実施例に開示する技術が本発明を実施することにおいて良好に機能する本発明者によって見出された代表的な技術をカバーすることを理解し、したがってその実施の好ましい様式を構成することは考慮し得る。しかしながら、当業者であれば、本明細書の開示に鑑みて、開示する具体的な実施形態に多くの変化をなし得ることを理解し、本発明の意図および範囲から逸脱することなしに、類似または同様の結果をいまだ得ることができることは理解される。
【0130】
実施例1-AAV遺伝子療法によるニューロ抗原に対する免疫寛容の再構築
本発明者らは、AAV-送達したニューロ抗原の肝細胞-制限発現がマウスにおけるEAEを防ぐまたは逆転できる抗原-特異的Tregによって媒介される持続性の免疫寛容を構築することを示した。本実施例は、イン・ビボ(in vivo)でTregを持続的に誘導し、MSの齧歯類モデルにおける疾患発達を防ぐプロトコールの開発を記載する。本実施例は、寛容が前から存在するEAE疾患の緩解を誘導でき、その後に臨床的および組織関連の病理を軽減できるかも判定する。
【0131】
多発性硬化症(MS)のような神経変性疾患は、ニューロ抗原を認識する病原性自己反応性リンパ球によるCNSの慢性的浸潤によって特徴付けられる。ミエリンタンパク質ペプチドを認識するT細胞と結合した免疫寛容を維持するために必要な中枢および/または末梢機構の不全につながる内在性の制御性T細胞の(Treg)における機能的欠陥が疾患の病理に関係がある。C57BL/6マウスにおいて、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)によって誘導した実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)は、MSの適切なモデルとして作用するCD4 T細胞-媒介炎症性CNS疾患を作り出している(
図1ならびに
図2Aおよび2B)。
【0132】
肝臓特異的プロモーターを含むAAVベクターを用いた肝臓遺伝子移入は、安定なトランスジーン発現を生じることができ、種々な治療用タンパク質に対する強固な抗原-特異的免疫寛容を誘導した。誘導したTregはトランスジーン生成物に対する細胞性免疫反応を抑制するのみならず、体液性応答も抑制できることが報告されている。重要なことに、肝臓における抗原発現によって確立された免疫寛容は、抗原が骨格筋のような他の器官においてまたは静脈内で高い免疫原性の様式でその後に発現された場合でさえも維持されることが示されている。
【0133】
Treg数の増加および/またはその機能の増大を刺激するプロトコールの開発は、自己免疫疾患を治療することに焦点が当てられてきている。MSの治療に使用された現在認可されている免疫メデュレーターの有利な効果の多くは、Tregホメオスタシスを回復することに関連している。本実施例は、肝臓指向型のAAV遺伝子療法が疾患発症時の正常なTreg機能を回復することによって疾患の進行を停止するための新規なアプローチを表すことを示す。
【0134】
最初に、AAV8-MOGベクターを作製し、マウスにおけるトランスジーンの肝臓発現をウェスタンブロットおよびqPCR分析によって確認した(
図4)。次に、MOGの肝臓発現がEAEの発達に対する保護を提供できるかを判定するために、マウスにAAV8-MOGまたは-GFPベクターのいずれかを注射した。2週間後に、EAEが誘導され、マウスをモニターし、EAEの臨床徴候用の古典的スケールに従ってスコアリングした。EAE後0、7および14日にまたはEAE後0、11、19、26および35日に、血漿を得た。結果は、AAV8-MOGを受けたマウスがEAEの発症から明らかに保護されたことを明らかにした。さらに、これらのマウスは抗-MOG IgG1またはIgG2c自己抗体も生成しなかった。それに対して、対照ベクターを受けたマウスは、高い抗体価の重篤なEAEを発症した(
図7および8)。
【0135】
実施例2-MSのAAV-ベース遺伝子療法用の治療用分子
本実施例は、ニューロ-抗原を発現するAAVベクターを用いた肝臓指向型の遺伝子移入がCNSにおける炎症を抑制し、EAEを防ぐことができることを示す。重要なことは、完全長のニューロ-タンパク質を発現するAAVを用いれば、MS-関連HLAハプロタイプにまたがる大きな適応が可能となる。進行中の計画は、前から存在するEAEの反転を評価することならびにエフェクター(Th1/Th17)細胞およびTregの相互作用の機能分析である。
【0136】
完全長タンパク質の配列を用いて、HLA/MHC制限を回避する
【0137】
ベクター中のMBP配列:
MGNHSGKRELSAEKASKDGEIHRGEAGKKRSVGKLSQTASEDSDVFGEADAIQNNGTSAEDTAVTDSKHTADPKNNWQGAHPADPGNRPHLIRLFSRDAPGREDNTFKDRPSESDELQTIQEDPTAASGGLDVMASQKRPSQRSKYLATASTMDHARHGFLPRHRDTGILDSIGRFFSGDRGAPKRGSGKVSSEP*(配列番号:1)
【0138】
ベクター中のPLP配列:
MGLLECCARCLVGAPFASLVATGLCFFGVALFCGCGHEALTGTEKLIETYFSKNYQDYEYLINVIHAFQYVIYGTASFFFLYGALLLAEGFYTTGAVRQIFGDYKTTICGKGLSATVTGGQKGRGSRGQHQAHSLERVCHCLGKWLGHPDKFVGITYALTVVWLLVFACSAVPVYIYFNTWTTCQSIAFPSKTSASIGSLCADARMYGVLPWNAFPGKVCGSNLLSICKTAEFQMTFHLFIAAFVGAA(配列番号:2)
【0139】
ベクター中のMOG配列:
MACLWSFSLPSCFLSLLLLLLLQLSCSYAGQFRVIGPGYPIRALVGDEAELPCRISPGKN ATGMEVGWYRSPFSRVVHLYRNGKDQDAEQAPEYRGRTELLKETISEGKVTLRIQNVRFS DEGGYTCFFRDHSYQEEAAMELKVEDPFYWVNPGVLTLIALVPTILLQVSVGLVFLFLQH RLRGKLRAEVENLHRTFDPHFLRVPCWKITLFVIVPVLGPLVALIICYNWLHRRLAGQFL EELRNPL(配列番号:3)
【0140】
SJLマウス中のEAE誘導ペプチド
PLP139-151 HCLGKWLGHPDKF(配列番号:4)
【0141】
C57BLマウス中のEAE誘導ペプチド
NTWTCQSIAFP(配列番号:5)またはPLP178-191 NTWTTCQSIAFPSK(配列番号:37)
【0142】
C57BL:MOG35-55 MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK(配列番号:6)
【0143】
SJL:MOG92-106 DEGGYTCFFRDHSYQ(配列番号:7)
【0144】
実施例3-MSの遺伝子療法用のRAAV8ベクター
AAV8ベクターは、肝細胞においてニューロ-タンパク質を安定して発現することができる。AAV8-MOGはEAEの発症を防ぐことができ、AAV8-MOGは確立したEAEの臨床症状を抑制することができる。
【0145】
本実施例は、抗原-特異的T細胞の誘導および拡大を生じるウイルス遺伝子トランスファーを用い、多発性硬化症の治療としての免疫寛容を再構築する(前)臨床的に適当な療法の開発を記載する。このアプローチは、完全長のミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)タンパク質を用い、したがって抗原特異的Tregを誘導するHLA/MHC特異的エピトープを同定する必要がなくなるため広い適応を有する。本明細書に示す作業から得た知識は、MSを有する患者に対して新しいラインの治療プロトコールを作り出す潜在性を有し、ならびにMSおよび遺伝子療法の両方の分野に対する研究を進める。
【0146】
まとめると、多因子である治療アプローチに対する明らかな合理性が存在する。本発明は、CD4+ T細胞を減少することに焦点が当てられるのみならず、CD8+ T細胞、B細胞、および免疫系のB細胞派生コンポーネントの効果を標的とすることもできる新規な療法を提供する。以前のデータは、AAVによって送達された肝臓内のニューロ-抗原の提示がMSおよび他の自己免疫疾患に対する治療的介入として重要な臨床的妥当性を有することを示唆している。遺伝子療法のこの適用は、MSに対して新たなかつ革新的な治療の選択肢を表す。
【0147】
実験方法
EAEの予防:C57Bl/6マウスに肝細胞-特異的発現用のAAV8-MOGまたは対照ベクターを注射する。遺伝子移入から4週間後にEAEの導入を開始する。マウスを毎日モニターし、神経学的障害を詳細な臨床スケールで記録する。毎週、血液/血清を収集し、フローサイトメトリー分析、およびELISAを介したα-MOG抗体の形成によって活性化CD4、CD8およびTregの頻度について分析した。終了時に、収集した組織の組織学を、トランスジーン発現(肝臓)、炎症細胞の浸潤の程度および表現型、脱髄、および白質損傷(CNS)について評価する。臨床スコア(特に対照マウスにおける)に対する組織学のベースライン較正を確立することは、その後の目的における成功を同定するために必須であろう。
【0148】
EAEの逆転:本実験では、マウスにおけるEAEの誘導をまず行う。EAEの最初の兆候の際に、マウスをランダムに選択して、AAV8-MOGまたは対照ベクターを用いて肝臓遺伝子移入を受けさせる。詳細な臨床評価を毎日記録する。様々な時点に血液/血清を収集し、前記と同様に分析する。殺す際に肝臓およびCNS組織を収集し、病理的および組織学的分析のために保存する。
【0149】
免疫寛容原性Tregのエクス・ビボ(ex vivo)機能分析:AAV8-MOG誘導型Tg-特異的Tregが免疫抑制であるかを判定するために、4週間早くベクターを受けたトランスジェニックマウス(「Foxp3EGFP」 B6.Cg-Foxp3tm2Tch/J)からFACSによって単離したGFP+Tregを、MOGペプチド存在下で、2D2-TCRマウス(MOG特異的TCR)から得たアロジェネイックな脾臓細胞と同時培養する。細胞および培養上清を、活性化、特定のアッセイを介してアポトーシス、Th1/Th2/Th17サイトカインまたはCTL活性について分析する。
【0150】
Tregのイン・ビボ(in vivo)養子移入:Tg-特異的Tregの免疫抑制機能が疾患の進行を減じることができるかを試験するために、前記したように単離したGFP+Tregを、(a)24時間後にEAE誘導に付した無処理マウス、および(b)MOG誘導したEAEを受けているマウスに養子移入する。これらの条件は、目的1.1予防および1.2逆転からの事象を写す。様々な時点で血液/血清を収集し;肝臓およびCNS組織を採取し、前記したように分析した。
【0151】
本発明の全体テーマは、自己免疫疾患、例えば、多発性硬化症(MS)に対する新規の治療ストラテジーとしての、肝臓指向型アデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子療法を用いた内在性抗原(Ag)-特異的調節性T-細胞(Treg)のイン・ビボ(in vivo)誘導方法に基づく遺伝子療法の開発である。
【0152】
前記したように、MSは、病因がよく理解されていない中枢神経系(CNS)の自己免疫神経変性疾患である。自己侵襲的なCD4+ T細胞は中心的役割を担っているが、生来のミエリン-特異的T細胞の活性化を許容する免疫寛容機構の崩壊はMSの発病における最初の段階と考えられる。齧歯類モデルにおける多数の重要な実験は、Ag-特異的Tregが自己免疫CNS疾患を調節することに重要な役割を有し、MSを治療することにおいて極めて有効である得ることを実証している1-5。その結果として、Tregの数およびそれらの機能を刺激するプロトコールを開発することに主要な焦点が存在している。残念ながら、Tregの首尾よい治療的使用は、翻訳に好適である単離および拡張のための安全かつ有効なAg-特異的プロトコールを欠くことによって制限されている。
【0153】
AAV遺伝子移入プラットフォームを用いて、最適化されたAAVベクターからの肝細胞-制限トランスジーン発現が、数ある中でも凝固因子IX(F.IX)、α-1-アンチトリプシン、エリスロポイエチン、およびリソソーム貯蔵酵素を含む種々の治療用タンパク質に対する免疫寛容を確実に誘導することができることが明確に示されている6。肝臓遺伝子移入後の寛容誘導には、機構の組合せが含まれる。重要なことに、AAV誘導寛容はAg-特異的CD4+CD25+FoxP3+ Tregによって媒介され、それは十分な肝細胞-制限トランスジーン発現を達成および維持することに決定的に依存する7-9。また、トランスジーン産物に対する抗体形成および細胞傷害性CD8+ T細胞応答を能動的に抑制することができることも実証されている7,10,11。寛容化した動物は、アジュバント中に処方化したタンパク質と一緒に免疫注射するその後の試行の後でも、トランスジーンに対する抗体を形成することができない10-12。効率的な肝臓遺伝子移入は、非常に免疫原性の様式で他の組織に抗原を後に導入した場合でさえも維持されるAg-特異的免疫寛容の優勢な状態を供与するTGF-β依存性CD4+CD25+FoxP3+ Treg応答を誘導する7,12。エフェクターT細胞のプログラム細胞死の誘導は、さらにバランスを寛容に向けて傾け、それは誘導したTregによって有効に強化される13,14。発表されたデータは、肝臓AAV寛容が、血友病Bマウスモデルにおいて、F.IXに対する前から存在する免疫応答も逆転できることを実証している15。これらの現在ではよく確立された概念は、他の研究所からの結果によってさらに裏付けられており、遺伝病に対する幾つかの免疫寛容の開発につながった16-37。
【0154】
米国においては400,000人を超える人がMSを患いながら暮らしており、毎年10,000人が新たな症例として診断されている。疾患を発症する1:600-800の障害リスクをもって、MSは18歳から45歳までの若年層成人における神経障害の最も一般的な原因となっている。この人口統計学は、米国における成人労働人口の大部分を示し;したがって、この人口の健康維持にかかる直接的および間接的費用は、現在、毎年$120億と見積もられる38。
【0155】
多発性硬化症(MS)は、CNSの長引く、免疫媒介の疾患である。MSは神経炎症性の自己免疫疾患であり、T細胞駆動型の炎症が脱髄および軸索の損傷につながる。MSの正確な病因はわかっていないが、ミエリン-特異的CD4+ T細胞がCNS炎症を開始および編成することに中心的な役割を担っていると考えられている。自己免疫寛容を維持し、潜在的に病原性の自己反応性リンパ球を制御するための中枢および末梢の機構(特にTreg)の機能不全は、MSの進展および発病の鍵となる事象と考えられている4,39-41。イン・ビトロ(in vitro)抑制アッセイを用いたいくつかの実験は、患者からのTregの機能障害を報告している42,43。ミエリン-特異的TregまたはTreg枯渇の養子移入を用いたマウスにおける実験では、Tregが実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の進展および重篤度を制御し、回復の間にCNS内に蓄積する事実も提供している44。また、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)を発現するトランスジェニックマウスがTreg依存的プロセスでマウスにおけるEAE疾患の発病を防ぐことができることも示されている45,46。事実、MSの治療に使用されている現在認可済みの免疫メデュレータ-の幾つかの作用機作は、Tregホメオスタシスを回復することと関連している39,47,48。
【0156】
累積的に、文献はTreg細胞が疾患の感受性および進行に影響するという概念を明白に支持している。最近の進歩は、Ag-特異的TregがMSの細胞療法の理想的な形態を表すという認識につながっている。しかしながら、Tregは未だに最小限しか理解されていないT細胞サブセットの中に入り、その結果、治療適用に使用するためには最も困難である。
【0157】
AAVベクターを用いる遺伝子療法は抗原-特異的免疫寛容を誘導する。遺伝子療法は、いまだ広範なスペクトルの疾患の治療に対する証明された強力で新たなツールであり続けている49。AAVベクターは特に種々な標的組織に対するin vivo遺伝子移入で大きな成功を有してきている12。例えば、網膜上皮細胞へのAAV遺伝子移入は、レーバー先天性黒内障(LCA)および全脈絡膜萎縮を患う子供に視力を回復している50,51。リポタンパク質リパーゼ欠損症治療用のAAVベクターは、西側諸国で認可された最初の遺伝子療法薬である(“グリベラ(Glybera)”)52。肝臓AAV投与による遺伝子療法は、血友病B患者において正常の>5%のレベルで第IX因子(F.IX)の持続的発現を引き起こし、その出血表現型を重篤から軽度に変化させた48。肝臓AAV遺伝子移入は、トランスジーン産物-特異的Tregの誘導を介した寛容、MSの治療のために開発することができる現象を促進する6,21,34,35,49,53。
【0158】
確立されたEAEの有効な療法は、複数の内在性ミエリンエピトープにわたる(epitope spreading)抗原(Ag)-特異的CD4+CD25+FoxP3+Tregの誘導を含む、複数の直接および間接の(交差免疫寛容)調節機構の誘導を考慮する必要がある。刊行物は、TregがEAEの潜在的なサプレッサーであり、疾患軽減を確立するために必須であるという考えを裏付けている。しかしながら、信頼でき翻訳可能であるかかるAg-特異的Tregをどのように生成するのかを取り扱っている研究はほとんど存在しない。以前の研究に基づいて、完全長のミエリン-関連タンパク質を発現するためのAAV8ベクターを用いた肝臓遺伝子移入は、安全で、実行可能でかつ長時間持続することが示されている様式で、複数の内在性エピトープにわたってAg-特異的Tregを誘導する。本実験は、幾つかの点:(i)これは、臨床的に証明されたAAVベクター技術を用いて自己免疫疾患という面において免疫寛容を再確立する初めてのことであり;(ii)例示的なAAV8ベクターは、完全長ニューロ-タンパク質(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)またはプロテオリピドタンパク質(PLP))を発現するよう設計されており、したがってHLA/MHC特異的エピトープを同定し、成功の可能性を高める必要がなく;(iii)公開されたデータに基づいて、FDAが認可したmTORインヒビター、ラパマイシンを用いた一時的な免疫調節の導入が、イン・ビボ(in vivo)においてTeffからTregへのバランスをさらに傾けることによってニューロ抗原に対する寛容誘導を促進する相互作用を提供する54-56、において革新的である。
【0159】
本発明者らは、神経タンパク質(PLPおよびMOG)のAAV8肝臓遺伝子移入が、免疫寛容を再確立し、MSの齧歯類モデルのCNSにおける疾患の進展を止めるのに十分なAg-特異的Tregの活性化を誘導することを意図する。
【0160】
本提案の基礎は、適切な知見が以下のように示された先のおよび最近公開された実験に見出される:
【0161】
AAVベクターを用いた肝臓遺伝子移入は、実験動物において種々な治療用タンパク質に対して強固な抗原-特異的免疫寛容をより確実に誘導することができる7,9,13,54,57。ここで、寛容とは、アジュバント中のタンパク質でのその後の攻撃後でもトランスジーン産物に対する抗体形成、ヘルパーT細胞応答またはCTL応答の欠如によって特徴付けられる。T細胞受容体についてトランスジェニックなマウスを用いて、トランスジーン産物-特異的CD4 T細胞の免疫不応答および欠失の事実が見出された。
【0162】
肝臓トランスジーン発現によって確立されたその免疫寛容は、抗原を骨格筋のような他の器官で非常に免疫原性の様式で発現させた後または静脈内で送達した場合でさえも維持される7。これらの結果は、肝臓指向型の遺伝子療法が潜在的な細胞傷害性CD8 T細胞応答を中止し得ることを明らかにし、肝臓遺伝子移入によって始めて達成された抗原発現のレベルを超えて免疫寛容の範囲が拡大することを示した。
【0163】
肝臓AAV遺伝子移入は、前から存在する高い抗体価を効率的かつ迅速に逆転し、齧歯類血友病Bモデルにおける止血の長期間の訂正を提供した15,56。高レベルのトランスジーンタンパク質はメモリーB細胞を抑制し、Treg誘導を増大し、インヒビター形成の抑制の直接的および間接的な機構を示している。この知見は、脱髄性疾患における病因の役割を担っているかもしれないという証拠の増大する本体が存在するため、極めて重要である58,59。
【0164】
肝臓AAV遺伝子移入による免疫寛容はタンパク質が分泌されることを必要としない。肝臓発現は寛容誘導に重要であるが、トランスジーン産物を全身送達するための肝細胞からの分泌は必要でない。肝細胞の3%ほど低いネオ-抗原の細胞質の発現でも、Treg誘導し、炎症反応の長期間の抑制を提供するのに十分である57。
【0165】
結果
EAE誘導の複数のモデルを首尾よく確立すること:EAEは、中枢神経系抗原で免疫化することによって感受性の動物に誘導した多発性硬化症の広く認められている実験マウスモデルである。EAEは、ミエリン鞘の成分に対して反応性であるCD4+ Tヘルパー1(TH1)細胞およびインターロイキン-17産生TH17細胞によって媒介される自己免疫疾患である。その細胞は神経柔組織に浸潤し、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインを放出し、白血球浸潤を促進し、脱髄に貢献する。
【0166】
EAEは、フロイント完全アジュバント(CFA)に乳化した異なるニューロ-タンパク質を用いて、種々の系統のマウスにおいて誘導することができる。疾患の進行および病理は、各組合せを用いて異なって顕在化する。例えば、EAEは、(i)MOGがC57BL/6マウスにおいて脳炎惹起性T-細胞および脱髄性自己抗体を生成すること、によって誘導される。生じる疾患は、脊髄における軸索の脱髄および白質病変によって特徴付けられる慢性の進行性疾患であり、一般的に、ヒト免疫媒介脱髄性疾患の適切なモデルであると考えられている60。EAEは、主要な脳炎惹起性(ii)PLPペプチド(PLP139-151)を用いてSJL(H-2s)マウスに誘導することもできる。ここに、この疾患は、麻痺の再発性緩解型の工程によって特徴付けられ、これにより、再発性疾患の設計における種々の免疫調節ストラテジーの効力の評価が可能になる。
【0167】
これらの実験において、本発明者らは、2の異なるマウス系統におけるEAE疾患の首尾よい誘導のためのタイムラインおよび臨床スコアリングを示した。1の実験において、8-週齢雌性マウスに、4mg/mlのマイコバクテリウム・チューベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)を含むCFA中に乳化した200μgのミエリンペプチドを皮下注射した。EAEの臨床徴候は12日後に始まり、その時点でマウスを毎日2回評価した。マウスは臨床徴候の重篤度によってスコアリングした(
図5A)。同様の実験において、EAEを慢性の進行性EAE疾患を発達させるためにMOGを用いてC57BL/6マウス(n=5)に誘導した(
図5B)。
【0168】
新規なAAV8ベクターはマウス肝細胞を効率的に形質導入し、送達された神経タンパク質を発現する:AAVはほぼ4.7kbのゲノムサイズを有する非病原性の一本鎖DNAパルボウイルスである。異なる組織向性を有する血清型が、ヒトを含む複数の脊椎動物種から単離されている。AAVから誘導されたウイルスベクターはウイルス遺伝子を欠いており、代わりに~5kb長に限定された目的の遺伝子の発現カセットを含む。これらの実験において、AAV8血清型ベクターを選択した。末梢静脈投与後の肝細胞に対して強力な天然の向性を有し、侵襲的な工程をする必要がないためである。さらに、それは専門的な抗原提示細胞(APC)を形質導入しない。設計したベクター構築物には、強力かつ非常に肝細胞-特異的なプロモーターが含まれる10。
【0169】
新たに合成したベクターを形質導入効率について評価した。効果的に示すために、本発明者らは、マウス肝細胞が尾部静脈注射後にニューロ-タンパク質トランスジーンを形質導入および発現できるかを評価した。一群のマウスに1x10
11のベクター粒子のAAV8-ApoE/hAAT-MOGを注射した。2週間後に、肝臓ライゼートを用いて、MOGの肝臓発現の証拠をウェスタンブロットおよびqPCR分析の療法によって証明した。結果は、肝臓遺伝子移入後の神経-抗原の肝臓発現を安定して生じるこの新規なベクターの能力を明らかに示している(
図4Aおよび
図4B)。
【0170】
AAV8-MOGはEAEの確立を防ぐことができる肝臓トランスジーン発現を生じる:以前、他の研究グループが、種々の一時的方法を用いて、ミエリン-関連タンパク質の異所的発現がEAEに対する抵抗性を促進したことを示している18,28,45,61。残念ながら、これらの従前のアプローチは、ヒト自己免疫疾患の実際的な療法を開発していない。本発明以前に、自己免疫疾患の抗原特異的な抑制を誘導するAAV肝臓遺伝子移入の能力は、科学コミュニティーによって試されていなかった。
【0171】
本発明をさらに裏付けるために、試験的実験を行った。少数のマウス(n=5)に、AAV8-MOGまたはAAV8-GFP(対照)ベクターのいずれかを尾部静脈を介して10
11ベクター粒子を静脈内注射した。2週間後に、以前に行ったようにCFA中のMOGを用いてEAEを誘導した。EAE誘導後0、7および14日またはEAE誘導後0、11、19、26および35日に血漿試料を得た。AAV8-MOGを受けたマウスは、EAEの発症から実質的に保護された(
図6A、
図6Bおよび
図6C)。それに対して、対照ベクターを受けたマウスは、高くなった抗体価で重篤なEAEを発症した。このデータは、本明細書に記載するベクターが肝臓において発現するのみならず、免疫調節効果を有することも示している。
【0172】
Tregによる有効な抑制は、イン・ビボ(in vivo)において自己-反応性T細胞の制御および末梢寛容の誘導の鍵となる役割を演じている。特に、器官-特異的自己免疫に対する抵抗性を付与することおよび自己免疫組織損傷を制限することにおけるAg-特異的Tregの重要性は、MSを含む多くの疾患モデルにおいて記録されている44。しかしながら、内在性Tregを持続的に拡張させる安全かつ臨床上実行可能な方法は、未だに同定されていない41,44,60,63。肝臓指向型AAV遺伝子療法に基づく治療プロトコールは、Ag-特異的寛容を恒久的に誘導することができ、したがって、MSに存在する病原性自己免疫反応をブロックし、疾患お活性を阻害する可能性を有する;多くの一般的に用いられた免疫療法に関連する重篤な副作用を回避しながら。これらのおよび関連する研究に基づいて、AAV8-肝臓遺伝子移入は、イン・ビボ(in vivo)でAg-特異的Tregを誘導することによって、MOGおよびPLPのようなミエリン-鞘抗原に対する免疫寛容を回復することができる。
【0173】
分析の実験アプローチおよび方法:この一連の実験では、悪影響を有さない肝臓形質導入および肝臓発現の有効性を証明するために構築物を試験する。(i)C57BL/6または(ii)SJL/Jマウス(7-8週齢)の群に、尾部静脈を介して(i)AAV8-MOGもしくは(ii)AAV8-PLP(それぞれ)または対照(無関係なトランスジーン、GFP)の1011のベクター粒子(vp)(以前に決定したベクターの有効用量)を静脈内注射した。0日に開始して、血液を2週間毎に収集し、T細胞表現型の標準マーカー(CD4、CD8、FoxP3、CD25、CD62L、CD44を含むがそれらに限られない)を用いて種々のT細胞集団の頻度を分析した。液性免疫応答(例えば、α-IgG1、-IgG2a、-IgG2c応答)は、抗原特異的ELISAを介して測定することができる。遺伝子移入後14日に、各群からのマウスの半分を任意に選択し、慈悲深く安楽死させることができる。組織(血液、肝臓、脾臓およびCNS(脳/脊髄))を分析のために採取することができる。肝臓トランスジーン発現レベルは、リアル-タイム定量的PCRを用いてmRNAレベルで測定することができる。トランスジーンの絶対的および相対的な肝臓タンパク質のレベルは、肝臓ライゼートを用いたウェスタンブロットを介しても測定する。注射後90日に、残りのマウスを同様に処理して持続型トランスジーン発現を確立することができる。さらに、数匹のマウスをベクター投与後の種々の時点にEAE誘導に付し、予備データに記載したように疾患の予防について評価する。採取した組織試料のアリコートは、参照材料として記録することができる。
【0174】
AAV8肝臓遺伝子移入によって誘導したAg-特異的Tregのイン・ビトロ(in vitro)機能抑制分析。脾臓Treg(CD4+CD25+)は(i)AAV8-MOGもしくは(ii)AAV8-PLPまたはAAV8-GFP(対照)ベクターを受けたマウスから磁気的にソートし、2D2-TCRマウス(このC57Bl/6マウス系統は、H-2 IAbとの関連においてMOG35-55を認識するTCRを発現する)から得た等級付け(graded)数のCFSE標識細胞または抗-CD3/CD28被覆ビーズ(TeffのAPC非依存的/非-特異的活性化を提供する)の存在下、PLP/アジュバントで以前に免疫注射しているSJLマウスから採取し、標識した脾細胞と同時培養することができる。エフェクター細胞増殖のTreg媒介抑制はフローサイトメトリーによって測定することができる。細胞培養上清は、特異的アッセイを介してTh1/Th2/Th17サイトカインについて分析することができる。結果は、無処理およびEAE誘導マウスからのデータと比較することができる(ここに、多くのCD4+CD25+細胞がTregよりも活性化エフェクターを表す)。まとめると、これらの実験は、対照と比較したベクター誘導TregからのAg-特異的機能抑制を示している。
【0175】
初期のデータおよび公表された研究に基づいて、本発明者らは長時間まったく変化しないままである2週までの最大トランスジーン発現を予想し、肝細胞の安定な形質導入を示す10。ベクター構築物は完全長のMOGまたはPLPを発現する目的で設計されており、強力な肝細胞プロモーターを含むため、AAV8ベクター-媒介発現は肝細胞に限定され、分泌されないことも予想される。トランスジーンを隔離することは、自由に循環するAAV-送達ニューロ抗原の病理学的結果を制限する。最後に、本発明者らは、いずれかの組織における炎症反応を予想せず、肝臓酵素(ALT/AST)の分析は肝毒性を示した。さらに、先駆的な研究に基づき、EAE誘導の前のベクター投与が疾患の進行を防ぐことが予想される。陽性の結果も、抗原特異的抗体応答においては存在しない/顕著に減少している。最後に、Treg抑制アッセイからの結果は、肝臓トランスジーン発現に誘導された抑制がAg-特異的Tregの活性化によって促進されることを示すことを予想している。
【0176】
文献はTregがEAEの潜在的なサプレッサーであり、疾患の進行から緩解に切り代わる駆動力であるという考えを圧倒的に支持しているが、安全かつ有効であるかかるAg-特異的Tregをどのように作製するかを扱った実験は過去にほとんど存在しない64。理論的には、これは2のアプローチによって行うことができる。最初のものは、ポリクローナルTregの全体頻度における増加が疾患の進行に影響し得るという考えで、Tregを単離し、その数をエクス・ビボ(ex vivo)で増殖し、ついで再導入することである。2004年に、1型糖尿病モデルのBluestoneの群が、このアプローチの最初の証明を提供した65。より最近では、他のグループがミエリン-特異的トランスジェニックTCRマウスからの増殖したTregを用いることがより有効であることをさらに示した64。第2のアプローチは、イン・ビボ(in vivo)でTreg数および/または機能の拡大を促進する好適な処理を投与することである。最近の報告は、EAEにおいてTreg機能を高めるための種々の化合物(例えば、ナノ粒子/小分子)の使用を記載しており、Tregを生成するために抗原提示を増加することを試みるものもいる64,66。最後に、Ag-特異的Tregに関連する疾患を誘導するための信頼でき翻訳可能な方法は、現在まで未だ欠いている。本提案は、内在性Ag-特異的Tregの持続したイン・ビボ(in vivo)誘導の恒久的な方法を提供する方法を示す。以前の実験に基づいて、完全長MOGまたはPLPを発現するAAV8ベクターを用いた肝臓遺伝子移入は、安全、実行可能で長続きすることが示されている様式で複数の内在性ミエリンエピトープにわたりAg-特異的Tregを誘導した。
【0177】
実験アプローチおよび分析の方法。ここでは、マウスは(i)MOGまたは(ii)PLPのいずれかを用いてEAEの活性誘導を最初に受ける。MOG誘導した慢性-進行性のマウスにおいてはEAEの最初の臨床徴候時に、またはPLP誘導した再発性-緩解性マウスにおいては疾患のピーク時に、AAV8-MOGもしくはAAV8-PLPベクター(それぞれ)または対照マウスについてはAAV8-GFPを与えることができる。マウスは毎日2×、重量および神経学的欠損により臨床的にスコアリングすることができる。前と同じように、血液を採取し、液性(IgG)応答について分析することができる。~45日に、各群のマウスを灌流し、2の群にランダムに分割することができる。群1は採取した脳、脊髄および肝臓組織を有し、組織病理学的および免疫蛍光分析のために保存する。浸潤性のリンパ球は、(以前に記載されているように67)群2のマウスからの脳および脊髄から単離することができる。種々のT細胞集団の頻度は、T細胞の標準マーカー(限定されるものではないが、CD4、CD8、FoxP3、CD25、CD62L、CD44、CTLA-4、CD103を含む)を用いて分析することができる。肝臓組織は、示すような転写およびタンパク質分析に付すことができる。結果は、対照マウスおよび参照材料と比較することができる。組織の一部分は、将来の研究のために保管することもできる。
【0178】
疾患の発病時またはピーク時におけるAAV8-MOGまたは-PLPベクターの単一の注射を用いた治療処理は臨床上の障害において劇的な緩解を生じることが予想される。対照-ベクター処理マウスと比較して、EAE誘導ペプチドに対する抗体価および/またはB細胞応答の頻度における同時の低下が存在する。CNS炎症はEAEの特徴であり、リンパ球浸潤の程度は疾患の進展と相関する;一方で、EAEの間のCNS中のTregの存在は減少した炎症および臨床的疾患の解決と関連する68。したがって、組織病理学的分析の際に、炎症の顕著な減少がベクター処理マウスのCNSに浸透することが予想される。このことは、CNS損傷の部位に移動した誘導したAg-特異的Tregが保護的であり、エフェクターT細胞によって媒介される損傷を制限できることを示している。さらに、PLP誘導したEAEの天然の再発性-緩解性の性質は、誘導した寛容のピークの効果が比較的活動していない場合(緩解性)に対応するようにAAV8-PLPベクターの注射のタイミングを図ることによって開発することができる。
【0179】
一方、EAE誘導用のMOGを受けたマウスは、~12日後に進行的に高まる神経障害を示し始める。このシナリオにおいては、一定のレベルの炎症が未だ存在している可能性があるが;T細胞集団の表現型分析は、CNSに浸透するT細胞の絶対数がTreg:Teff比が大きくなるにつれて少なくなることを示している。
【0180】
ラパマイシンを用いた一時的免疫抑制。ラパマイシンは容易にBBBを横切り、したがってCNSの中で直接的な効果を発揮する。mTOR経路の活性化を遮断すると、ラパマイシンはIL-2に対するそれらの応答を阻害することによってT細胞の活性化を防ぎ、したがって機能的CD4+CD25+FoxP3+ Tregの増殖を選択的に許容しつつTeffのAg-誘導した増殖を妨げる。EAEにおいて、ラパマイシンは疾患の発病を防ぐのに有効であるが;確立した疾患の抑制は続けて使用した場合にのみ維持される69。さらなる一連の実験において、ベクター処理したマウスは一時的に免疫抑制された。ついで、一群のマウスに、疾患の最初の発病またはピークのいずれかに対応する特定の時点に、AAV8-MOG、-PLP、-GFPまたはPBSを注射した。同時に、マウスにラパマイシン(1 mg/kg)またはPBS(空打ち対照)を毎日14日連続して腹膜内に受けさせた69。前-および後-処理および臨床スコアの顕著な変化に対応する特定の時点に、組織およびリンパ球を無作為に選択したマウスからのCNSおよび脾臓から採取することができる。ついで、組織内の組織病理学的変化を同定することができる。ついで、単離した細胞を表現型決定し、異なる区画からのTregおよびTeffの頻度を決定して対照群と比較して、ラパマイシン同時処理の効力を確認することができる。
【0181】
AAV8投与にかかわらず、ラパマイシン単独での治療はEAEの臨床的提示の急速的減少を一時的に生じることが予想される69。しかしながら、AAV8肝臓遺伝子移入と合わせて用いた場合、ラパマイシン処理はエフェクターT細胞における対応する減少とともにベクター誘導されたAg-特異的FoxP3+ Treg(mTORシグナル阻害に対する感受性が低いため)における増加を生じる相乗効果を有する70。寛容へのシフトはさらに、EAEのCNSにおける抗原-特異的Th1細胞の選択的阻害を媒介することが示されている事実によって、さらに強まる71。
【0182】
データが、Ag-特異的Tregを誘導し、免疫寛容を実施するAAV肝臓遺伝子移入の能力を明らかに支持すること;および、EAEの回復期の間のCNSにおけるTregの蓄積が能動的に誘導したモデルにおける一貫した知見であることを考慮すると、現在の療法が少なくともある程度は臨床的または病理学的な利益を有していない、ようにはみえない3,64,71,72。
【0183】
まとめると、本明細書に示す治療様式は、遺伝子療法アプローチを用いるMSのような疾患に対して有効な治療を提供することによって未だ対処されていない要望を取り扱うものである。完全長タンパク質を送達するために本明細書に記載するAAVベクタープラットフォームを用いることは、他のエクス・ビボ(ex vivo)またはエピトープ制限Treg媒介療法と比較して優れたHLA比依存性のアプローチをAg-特異的Treg誘導に提供する。さらに、AAV遺伝子移入は、トランスジーンの長期間の肝細胞発現のため、連続するTreg世代を生じる73。
【0184】
参考文献
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実施例4-EAEマウスモデルからのさらなるデータおよび他のタンパク質の評価
【0185】
動物をAAV8-apoE/hAAT-MOGの10
11のベクター粒子で尾部静脈を介して静脈内注射した。使用したMOG配列は、齧歯類MOGであった。肝臓からの試料中でMOGタンパク質の量が増加していること(
図11)が明らかになったため、MOGトランスジーンが肝臓で発現していることが示された
【0186】
AAVが他の実施例に記載したマウスモデルにおけるEAEの進展または進行を妨害しなかったことを確認するために、対照AAV8-GFPをマウスに静脈内注射した。2週間後、EAEが誘導されたかまたは誘導されなかった。AAV対照ベクターがEAEの進展または進行を妨害するようには思われなかった(
図12)。
【0187】
他の実験において、EAEをC57BL/6マウスにおいて誘導した。平均臨床スコア(MCS)~0.3、~0.8または~1.3の神経学的欠損の種々の時点に、マウスにAAV8-MOGまたは対照ベクターを与えた。平均臨床スコアを記録した。疾患の病態が増大している場合でも、AAV-MOGベクターは対照ベクター処理マウスと比較して顕著に減少した神経学的欠損を有していた(
図13A-C)。バーのグラフは、最終スコアおよび最終スコアに対するピークの間の有意差を示す。
【0188】
さらなる実験において、対照ベクターを受けて~35日のEAE誘導した雌性マウス(MCS=4.0)から脊髄の一連の切片を採取した。ヘマトキシリンおよびエオシン染色は、高い炎症浸潤の領域を示した(
図14A)。ルクソールファストブルー(Luxol fast blue)染色は脱髄の領域を示した(
図14B)。それに対して、AAV-MOGベクターを受けた後~35日のEAE誘導した雌性マウス(MCS=1.25)からの脊髄の一連の切片は、炎症の抑制を示した。ヘマトキシリンおよびエオシン染色は、小さくなった浸潤を示した(
図15A)。ルクソールファストブルー(Luxol fast blue)染色は、炎症の抑制の結果として脱髄のより小さい領域を有するように思われた(
図15B)。
【0189】
別の実験において、CFDA-SE Cell Tracerによって調節性T細胞(Treg)-媒介抑制を測定した。エフェクターT細胞(Teff)をC57BL/6マウスから単離し、CFDAで標識した。細胞は単独または種々のTreg:Teff比のTreg存在下で培養した。72時間後に、CFDA希釈およびフローサイトメトリー分析によって増殖を測定した。AAV-MOG処理マウスの脾臓から単離したTregは、機能的に抑制的であることが判明した(
図16Aおよび16B)。
【0190】
さらなる実験において、抗原特異的Tregを誘導するAAV-MOGの能力を評価した。8週間前にAAV-MOGベクターを注射したマウスからの脾細胞は、対照テトラマーと比較してI-Ab MOG
35-55テトラマー陽性CD4+およびTreg+の頻度の増加を示し(
図17A-D)、これはAAV-MOGベクターが抗原特異的Tregを誘導したことを示している。
【0191】
次に、PLPベクターを試験した。AAV8-PLPを実験のこのパートに使用した。使用したPLPは齧歯類PLPであった。この概念の証明実験は、PLP/EAEの首尾よい誘導のためのタイムラインおよび臨床スコアリングならびに肝臓遺伝子移入の潜在的な治療上の利益を示した。免疫注射の2週間前に、4mg/mlのマイコバクテリウム・チューベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)を含有するCFAに乳化した200μgのPLPを免疫接種する2週間前に、AAV8-PLPまたは対照で雌性SJLマウスを注射した。EAEの臨床徴候は、マウスを毎日2回評価した時の後~10日に始まった。マウスは、臨床徴候の重篤度(
図2)に従ってスコアリングした。明らかに、AAV8-PLPベクターを受けたマウスは、発病のピークにおける疾患お顕著な減少を有していた(
図18)。全体的にほとんど再発がない再発の間のMCS(26日目)に顕著な減少も存在した(
図18)。これらの結果は、PLP誘導した再発性-緩解性EAEを有するマウスにおいて、AAV8-PLPが臨床上の重篤度を低下したことを示している。増加した減少または完全な防止が、ベクター用量およびタイミングの最適化を用いて期待される。
【0192】
最後に、MBPベクターを試験した。AAV8-MBPを実験のこのパートに使用した。使用したMBPは齧歯類MBPであった。AAV8-MBPを注射したマウスの肝臓から抽出したタンパク質のウェスタンブロット分析は、MBP発現の増大を示し(
図19A)、これはmRNAレベルでの増大と一致した(
図19B)。
【0193】
本明細書に記載する実施例および実施形態が説明目的だけのものであって、それに鑑みた種々の修飾および変更が当業者に示唆され得ること、および本願の趣旨の中に含まれ、本願の範囲および添付する請求項の範囲に含まれることは理解される。本明細書に引用する刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、各々の参考文献が個々におよび具体的に本明細書に出典明示して本明細書の一部とみなすと示している場合には同じ範囲で出典明示して本明細書の一部とみなす。本明細書に記載する値の範囲の引用は、別段指摘しない限り、範囲内に入る個々の別々の値を個別に示している簡略表記として提供することを単に意図しており、各々別々の値はそれらが個々に明細書に引用されているがごとく本明細書に取り込まれる。
【0194】
要素または複数の要素に参照しながら“~を含む”、“~を有する”、“~を含む”または“~を含有する”のような用語を用いる本発明のいずれかの態様または実施形態の本明細書の記載は、別段指摘しない限りまたは文脈に明らかに矛盾しない限り、特定の要素または複数の要素“からなる”、“実質的にからなる”または“実質的に含む”本発明の同様の態様または実施形態の裏付けを提供することを意図している(例えば、特定の要素を含むと本明細書に記載する組成物は、別段しない限りまたは文脈に明らかに矛盾しない限り、その要素からなる組成物も記載すると理解される)。
【0195】
本明細書に記載または特許請求するすべての組成物および方法は、本明細書に鑑みて過度な実験なくしてなすことができ、実施することができる。本発明の組成物および方法を好ましい実施形態に関して記載しているが、それらの組成物および方法に変形を適用し得ること、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく本明細書に記載する工程または一連の工程に適用し得ることは当業者に明らかであろう。より具体的には、化学的および/または生理学的に関連するある種の剤は、同一または類似する結果が達成される限り、本明細書に記載した剤に置換し得ることは明らかである。すべてのかかる同様の置換および修飾は、添付する特許請求の範囲によって規定される発明の趣旨、範囲および概念の中に含まれるとみなされることは当業者に明らかであろう。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の肝臓の1以上の細胞において核酸セグメントを発現することができるプロモーターに作動可能に結合した第1の自己免疫疾患治療用分子をコードする核酸セグメントを含むポリヌクレオチドを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)核酸ベクター。
【外国語明細書】