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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081550
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】フェイスシート用器具
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/12 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
A45D44/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031080
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2020202625の分割
【原出願日】2018-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2017251964
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596149051
【氏名又は名称】株式会社 菊星
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹鼻 実樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被施術者の目の周りや顔面を覆うためのフェイスシート用の器具であるフェイスシート用器具であり、静電気を帯電させることで被施術者に配置した後にずれたり飛んでしまったりすることが防止され、当該被施術者の目の周りや顔面上に安定して保持されるフェイスシート用の器具であるフェイスシート用器具を提供する。
【解決手段】フェイスシートを挟み込むことができる挟持用部材11、12と、この挟持用部材の、フェイスシートを挟み込む側の面のそれぞれ、又は一方の面に、フェイスシートに接して当該フェイスシートに静電気を帯電させるための摩擦部20と、フェイスシートを引き抜く際に摩擦部をフェイスシートに押し付ける方向の外力を加える付勢部材と、ロール状のフェイスシートを回転可能に保持する保持部と、を備え、摩擦部から引き抜いたフェイスシートに静電気を生じさせて帯電させることができる、フェイスシート用器具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェイスシートを挟み込むことができる挟持用部材と、
前記挟持用部材の、前記フェイスシートを挟み込む側の面のそれぞれ、又は一方の面に、前記フェイスシートに接して当該フェイスシートに静電気を帯電させるための摩擦部と、
前記フェイスシートを引き抜く際に前記摩擦部を前記フェイスシートに押し付ける方向の外力を加える付勢部材と、
ロール状の前記フェイスシートを回転可能に保持する保持部と、を備え、
前記摩擦部から引き抜いた前記フェイスシートに静電気を生じさせて帯電させることができる、フェイスシート用器具。
【請求項2】
前記フェイスシートを送り出すためのシート送り部が形成されている、請求項1に記載のフェイスシート用器具。
【請求項3】
前記摩擦部が、繊維の束からなるものである、請求項1または2に記載のフェイスシート用器具。
【請求項4】
前記ロール状のフェイスシートの中心部に孔部が形成されており、前記保持部が、前記孔部に挿入される部分を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のフェイスシート用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャンプー、リンス、ヘアカラー、パーマ等の施術を行う際に、施術を受ける者である被施術者の目の周り、顔面等を覆うフェイスシート用の器具であるフェイスシート用器具に関する。特に、本発明は、後ろに寝る姿勢で髪の毛に施術を行う際に、被施術者の目の周り、顔面等を覆うフェイスシート用の器具であるフェイスシート用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、理美容店やヘアサロンで、シャンプーを行う際に、シャンプーなどの施術を受ける者(以下、適宜、「被施術者」という。)が前かがみの姿勢となって施術を行う方法と、被施術者が後ろに寝る姿勢となって施術を行う方法とがある。そして、理美容・サロン業界では、被施術者が後ろに寝る姿勢となってシャンプーなどを行う方法は、「バックシャンプー」と呼ばれている。なお、最近では、理美容店やヘアサロンに限らず、マッサージやエステを行う店舗においても被施術者の目の周り、顔面等をフェイスシートで覆い、各施術を行う場合がある。
【0003】
上記バックシャンプーをするメリットとしては、一般的に、施術時の水が被施術者の顔にかかるのを予防できることが挙げられ、有効なシャンプーの施術方法である。一方で、バックシャンプーは、前述の通り、被施術者が後ろに寝る姿勢となるため、被施術者と施術者の距離が近く、被施術者は施術者と目が合ってしまい、不快な思いをすることもある。そのため、被施術者に不快な思いをさせない配慮から、バックシャンプーを行う場合には、被施術者の目や、目の周り、目を含めた顔全体(顔面全体)を覆い隠すためのシート(以下、適宜、「フェイスシート」という。)を被施術者の顔に乗せて施術が行われる場合が多い。
【0004】
さらに、近年では、シャンプーの施術を受ける際に限らず、リンス、ヘアカラー、パーマ等の施術を行う際にも、上記後ろに寝る姿勢で施術が行われることも多く、このような施術が行われる際に、上記フェイスシートが用いられている。
【0005】
ところで、このようなバックシャンプー等の施術を行う際に用いられるフェイスシートの素材(材料)は、人体に無害で肌触りが良く、更には、顔に乗せた際の圧迫感等を感じ難い軽量なものが用いられている。一般的には、ガーゼや不織布等が用いられている。なお、ガーゼや不織布以外にも、化学繊維製のもの、紙製のもの、布製のもの、樹脂製のものなど様々な素材のものが使用される場合がある。
【0006】
このフェイスシートは、衛生上の観点から、たとえば使い捨て可能な不織布製のものなどが増える傾向にあるが、新たな問題が生じている。たとえば、使い捨て可能な不織布などのフェイスシートは、素材自体が軽すぎてしまう。そのため、被施術者の傍を施術者側が通ることで生じる空気の流れ、被施術者の鼻息、室内の空調による風など様々な要因で、目の周りや顔を覆った後に、フェイスシートがずれたり、飛んだりしてしまうということが問題となっている。なお、不織布製以外の素材からなるフェイスシートについても、被施術者が圧迫感を感じることを回避するなどの理由から素材を軽くする傾向があり、同様の問題が生じている。
【0007】
ここで、フェイスシートがずれたりした場合、施術者が直ぐに直すことができれば良いが、シャンプー等の施術中にフェイスシートがずれたり飛んだりしてしまった場合には、施術者は、手に泡が付いていたり水で濡れていたりするため、すぐに直せないことが多い。また、被施術者は、服に水などがかからないようにするための布(シャンプー等の施術用の布)で体を覆われており、被施術者が自分自身でフェイスシートの位置を直せない場合も多い。
【0008】
このような問題に対して、これまでは、フェイスシートの形状そのものを工夫したり、フェイスシートにのり状のものをつけたりしたものも散見されるが、いずれにおいてもコストや操作性等の問題があり、いずれも十分なものではなかった。
【0009】
ここで、従来、被施術者の目及び目の周りを、施術者による洗髪時の灌ぎ水等の飛沫から保護するアイマスクに関する特許文献1がある。このアイマスクは、引っ張ることでその引っ張り方向に変形して顔面の凹凸形状に対応するものである。
【0010】
また、仰向けの姿勢でシャンプーなどをするときに顔面を覆うために使用する洗髪用フェイスマスクに関する特許文献2がある。この洗髪用フェイスマスクは、その中央に折り畳み用の線が形成されるとともに、口の位置から鼻の位置にかけて折り畳み線を中心に左右対称の第一の切り欠きが形成されて、中央の折り畳み線を鼻の中央に合せて被せるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2016-152901号公報
【特許文献2】実用新案登録第3186866号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1のアイマスクでは、引っ張り方向に変形し、その形状が固定される素材を使用することから、製造単価が高くなり、施術者または被施術者のコスト負担を増大させる。また、特許文献1のアイマスクでは、被施術者の目の周りや顔面に直接触れる、アイマスクの箇所を、施術者が引っ張ることから、衛生上の問題や作業効率性が低減することなど不具合がある。さらに、特許文献1のアイマスクでは、顔面の凹凸形状に対応する部分を変形させるとしても、人の目の周りや顔面の凹凸形状は様々であり、被施術者の目の周りや顔面の形状に必ずしもフィットするものではなく、アイマスクがずれたりすることを十分には防止できない。
【0013】
また、特許文献2のフェイスマスクについても、その中央に折り畳み用の線を形成したり、左右対称の第一の切り欠きを設けたり、することから、製造単価が割り増しとなり、施術者または被施術者のコスト負担を増大させる。さらに、特許文献2のフェイスマスクに形成される、折り畳み線や切欠きでは、顔面の前後にズレたり、飛んだりすることを防ぐことが難しい。そのため、特許文献2のフェイスマスクであっても、安定して保持することは難い。
【0014】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、静電気を帯電させることで被施術者に配置した後にずれたり飛んでしまったりすることが防止され、当該被施術者の目の周りや顔面上に安定して保持されるフェイスシート用の器具であるフェイスシート用器具を提供することにある。特に、低コストで、施術者の負担軽減や、及び被施術者の不快感を解消できるフェイスシート用の器具であるフェイスシート用器具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、以下に示す、フェイスシート用器具が提供される。
【0016】
[1] フェイスシートを挟み込むことができる挟持用部材と、
前記挟持用部材の、前記フェイスシートを挟み込む側の面のそれぞれ、又は一方の面に、前記フェイスシートに接して当該フェイスシートに静電気を帯電させるための摩擦部と、
前記フェイスシートを引き抜く際に前記摩擦部を前記フェイスシートに押し付ける方向の外力を加える付勢部材と、
ロール状の前記フェイスシートを回転可能に保持する保持部と、を備え、
前記摩擦部から引き抜いた前記フェイスシートに静電気を生じさせて帯電させることができる、フェイスシート用器具。
【0017】
[2] 前記フェイスシートを送り出すためのシート送り部が形成されている、前記[1]に記載のフェイスシート用器具。
【0018】
[3] 前記摩擦部が、繊維の束からなるものである、前記[1]または[2]に記載のフェイスシート用器具。
【0019】
[4] 前記ロール状のフェイスシートの中心部に孔部が形成されており、前記保持部が、前記孔部に挿入される部分を有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載のフェイスシート用器具。
【発明の効果】
【0020】
本発明のフェイスシート用器具を用いると、静電気を帯電させることでフェイスシートを被施術者に配置した後に、このフェイスシートがずれたり飛んでしまったりすることが防止され、被施術者の目の周りや顔面上に安定して保持される。特に、本発明は、低コストであって、施術者の負担を軽減でき、さらに、被施術者の不快感を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のフェイスシート用器具の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明のフェイスシート用器具の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明のフェイスシート用器具の更に他の実施形態における使用状態を模式的に示す斜視図である。
図4】本発明のフェイスシート用器具の更に他の実施形態における装着状態を模式的に示す斜視図である。
図5】本発明のフェイスシート収納箱の実施形態における使用状態を模式的に示す斜視図である。
図6図5に示すフェイスシート収納箱の摩擦部を上方から見た模式図である。
図7図5に示すフェイスシート収納箱の摩擦部を側方から見た模式図である。
図8】本発明のフェイスシート収納箱の他の実施形態における使用状態を模式的に示す斜視図である。
図9図8に示すフェイスシート収納箱におけるフェイスシート用器具の摩擦部を取出口側から見た模式図である。
図10図8に示すフェイスシート収納箱におけるフェイスシート用器具の摩擦部の他の形態を上方から見た模式図である。
図11図8に示すフェイスシート収納箱におけるフェイスシート用器具の摩擦部の他の形態を上方から見た模式図である。
図12図8に示すフェイスシート収納箱におけるフェイスシート用器具の摩擦部の他の形態を上方から見た模式図である。
図13】本発明のフェイスシート用器具の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図14】本発明のフェイスシート用器具の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図15図14に示す付勢部材を模式的に示す平面図である。
図16】本発明のフェイスシート用器具の更に他の実施形態における付勢部材を模式的に示す平面図である。
図17】実施例1における帯電量の測定結果を示すグラフである。
図18】本発明のフェイスシート用器具の更に他の実施形態における使用状態を模式的に示す斜視図である。
図19図18に示すフェイスシート用器具の使用に際してロール状のフェイスシートを装着する状態を模式的に示す説明図である。
図20】本発明のフェイスシート用器具の更に他の実施形態における使用状態を模式的に示す斜視図である。
図21図20に示す板状部材を裏面側から見た状態を模式的に示す斜視図である。
図22】本発明のフェイスシート用器具の更に他の実施形態における使用状態を模式的に示す斜視図である。
図23】本発明のフェイスシート用器具の更に他の実施形態における使用状態を模式的に示す斜視図である。
図24図22に示すフェイスシート用器具の使用状態を模式的に示す斜視図である。
図25】本発明のフェイスシート収納箱の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図26図25に示すフェイスシート収納箱のA-A断面を模式的に示す断面図である。
図27図25に示すフェイスシート収納箱の使用状態を模式的に示すA-A断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0023】
[1]フェイスシート:
フェイスシートは、施術を受ける者の、少なくとも目の周りを覆うためのフェイスシートであって、施術を受ける者の目の周りに保持可能なように、静電気を帯電させたフェイスシートである。
【0024】
このようなフェイスシートは、施術中にずれたり飛んだりすることが防止され、被施術者の目の周りや顔面上に安定して保持される。そのため、施術者の負担を軽減することができ、さらに、被施術者の不快感を解消できる。そして、このフェイスシートは、安定的に安全に利用することができ、さらに静電気(無料の電力)を用いることから低コストである。
【0025】
「施術を受ける者」とは、理美容店・サロン等で、シャンプー、トリートメント、ヘアカラー、パーマ等の施術を受ける者(被施術者)を意味する。また、「施術する者」とは、当該被施術者に当該シャンプー、トリートメント、ヘアカラー、パーマ等の施術を行う者をいう。なお、施術内容は、上記に特に限定されないが、通常、理美容店・サロン等で、目隠し等の意味合いでシート状の部材を用いる施術を行う場合には、当該施術が含まれる。
【0026】
また、「少なくとも目の周り」とは、被施術者の目を含めた目の周りを意味する。すなわち、被施術者の目を含めた目の周りを少なくともフェイスシートで隠す(覆う)ことができれば、被施術者の周囲の視界を遮ることができ、シャンプー等の施術を行った際に水等が飛び跳ねて目に入ることを防止でき、被施術者の不安感や不快感等を解消させることができるからである。好ましくは、顔全体に保持可能な大きさである。すなわち、フェイスシートが顔全体を隠す(覆う)ことができる大きさであることが好ましい。シャンプー等の施術を行った際に、水等が飛び跳ねて顔に付着することを防止でき、施術者の不安感や不快感等をより解消させることができるからである。
【0027】
ここで、帯電させる「静電気」は、「施術を受ける者の目の周りに保持可能なように、静電気を帯電させた」ものである。施術を受ける者の目の周りに付着しない程度の静電気では、施術中にフェイスシートがずれたり飛んだりしてしまい、目の周りや顔面に安定して保持されない。
【0028】
また、静電気の大きさは特に限定されるものではないが、「施術を受ける者の目の周りに保持可能なように、静電気を帯電させた」ものであるため、被施術者の目の周りや、顔面全体にフェイスシートが付着し(電気的に吸着し)、安定して保持される程度の大きさであることが求められる。ただし、静電気の大きさは、放電による痛みを伴わない程度の大きさであればよい。痛みをともなう程度の大きさであると、実際に使用し難くなる。さらに、このような静電気の大きさは、季節、温度、湿度等の条件に加え、個々の被施術者の肌の乾燥度等によってもある程度異なってくることが推測されるため、痛みを伴わない程度の大きさであって、さらに、被施術者の目の周りや顔面全体に付着し、安定して保持される程度の大きさであることが求められる。
【0029】
「保持可能」とは、被施術者の目の周りや顔面上に配置された際に、フェイスシートが、ずれたり飛んでしまったりすることが防止されていることを意味する。
【0030】
(帯電量)
帯電量は特に限定されるものではないが、痛みを伴わない程度の帯電量であって、且つ、被施術者の目の周りや、顔面全体に付着し、安定して保持される程度の量であることが求められる。このような静電気の帯電量は、季節、温度、湿度等の条件に加え、個々の被施術者の肌の乾燥の程度等によっても異なってくることが推測される。ここで、日常生活においても文房具の下敷は、数kVから数十kVの帯電量があり、事務用チェアを離席する時でも数百V以上が帯電し、歩行時にも数十kV帯電する場合がある。しかし、これらの場合、エネルギーが少ないので感電などの事故に至らないことが知られている。また、人間の個体差や、各個人のコンディション、身に着ける衣料や靴の素材によってもリーク(放電)の状態は著しく異なる。また、上記のように温度や湿度によってもリークの状態は異なる。
【0031】
このようなことから、痛みを伴わない程度であって、且つ、被施術者の目の周りや、顔面全体に付着し、安定して保持される程度の帯電量は適宜異なるが、たとえば、0.01~100kV程度とすることができ、0.05~100kV程度とすることでもよく、更には0.1~100kV程度とすることがよい。帯電量が上記範囲であると、被施術者の目の周りや、顔面全体に付着し、安定して保持されやすく、被施術者に載置する際にも痛みを生じさせにくい。なお、特に仰向けの姿勢でシャンプーなどの施術をする場合には、フェイスシートは顔面上に載置されているため、顔面から落下し難い状況にある。そのため、仰向けの姿勢の場合には、フェイスシートの自重による落下を防止する程の強い吸着力を要しない。つまり、上記下限値付近のように小さな帯電量でも十分に本発明の効果が発揮される。
【0032】
(帯電時間)
上記帯電量で静電気がフェイスシートに帯電している時間(帯電時間)は、特に限定されるものではない。たとえば、5分程度であることが好ましく、10分程度であればよい。つまり、1回の施術は、5分程度で行われるものが一般的であり、たとえば、シャンプーの施術時間は5分程度である。また、パーマの施術を行う場合や、ヘアカラーの施術を行う場合には、その施術全体としての時間は、シャンプーに比して長くなるものの、実際に被施術者の目の周りや顔面全体にフェイスシートを覆う必要がある時間は、5分程度である。また、ヘッドスパなどのその他の比較的施術時間が長い施術では30分程度の帯電時間とすることがよい。一方、30分を大きく超える時間の間、安定して保持されるようにするためには、帯電量を大きくすることが必要な場合があり、被施術者の目や顔面に、帯電させたフェイスシートを置いた際に痛み等を与える場合もあり得るため、好ましくない。
【0033】
当該フェイスシートに静電気を帯電させる方法は、特に限定されるものではなく、後述するフェイスシート用器具、フェイスシート収納箱、フェイスシートに静電気を帯電させる方法によって、静電気を帯電させる方法を挙げることができる。
【0034】
なお、フェイスシートは、通例、自然発生的に帯電した静電気を有している場合もあるが、本発明の静電気を帯電させたフェイスシートは、人為的に(意図的に)静電気を発生させて、施術を受ける者の目の周りに保持可能な程度に静電気を帯電させたフェイスシートが対象となる。ここで、フェイスシートが自然発生的に微量な静電気を有している場合においても、静電気を発生させた結果、施術を受ける者の目の周りに保持可能な程度に、静電気が帯電している場合には、人為的に静電気を帯電させたフェイスシートに該当する。
【0035】
なお、人体はプラス(+)に帯電することが知られているので、フェイスシート用器具を用いることの他に、摩擦などによってフェイスシートにマイナス(-)の電荷を帯電させ、目の周りや顔に所定期間付着するように(すなわち、安定して保持されるように)してもよい。ここで、マイナスを帯電させて目の周りや顔に付着させたフェイスシートは、その後、人体を通して自然放電され、電気的な付着力が弱まっていくことになるが、バックシャンプー等の施術は、被施術者が仰向けの姿勢で行われるものであるため、フェイスシートに帯電した静電気量が小さくなっても容易にずれたりせずに安定して保持される。
【0036】
さらに、フェイスシートの材料は、帯電可能な材料であれば特に制限はなく、たとえば、不織布製、合成繊維製、天然繊維製、紙製、布製、または、樹脂製であることが好ましい。このような材料でフェイスシートを作製することにより、静電気を確実に帯電させ、維持させることができる。なお、合成繊維は、化学繊維からなるもの、化学繊維とコットンなどの天然繊維との組み合わせからなるものの両方を包含するものである。
【0037】
本発明のフェイスシートは、シャンプー等の施術を行う際に、水等が飛び跳ねて顔に付着することを防止したり、施術者の不安感や不快感等を解消させたりすることを目的として使用されるものであり、このフェイスシートは、理美容店やサロンに限らず、マッサージ店やエステサロンなどの店舗でも使用される。
【0038】
[2]本発明のフェイスシート用器具:
本発明のフェイスシート用器具は、静電気が帯電される前のフェイスシートの静電気量を増加させ且つ帯電させ、そのフェイスシートが、施術を受ける者の目の周り等に保持されるように処理する器具である。具体的には、このフェイスシート用器具は、摩擦部を備えており、この摩擦部は、上記フェイスシートに接触させる前よりも上記フェイスシートに接触させた後に、施術を受ける者の目の周りに保持可能なように、前記静電気量を増加させ且つ帯電させるためのものである。
【0039】
このようなフェイスシート用器具を用いることにより、フェイスシートが施術中にずれたり飛んだりすることが防止され、被施術者の目の周りや顔面上に安定して保持される。そのため、施術者の負担を軽減することができ、さらに、被施術者の不快感を解消できる。そして、このフェイスシート用器具は、安定的に安全に利用することができるものであり、さらに静電気(無料の電力)を用いることから低コストである。
【0040】
本発明のフェイスシート用器具は、フェイスシートに静電気を帯電させるものであるため、本発明のフェイスシート用器具で処理するフェイスシートは、静電気を帯電させる前のフェイスシートである。つまり、人為的に静電気を帯電させる前のフェイスシートということができる。そして、この「人為的に静電気を帯電させる前のフェイスシート」とは、フェイスシート用器具で処理する前のフェイスシートのことを意味しており、フェイスシート用器具で処理する前においても、フェイスシートには、微量ではあるものの静電気を有している場合があり、この場合を除外するものである。
【0041】
つまり、本発明のフェイスシート用器具を用いると、当該フェイスシート用器具で処理する前のフェイスシートに比べて、当該フェイスシート用器具で処理した後のフェイスシートは、静電気量が増加する。なお、本発明のフェイスシート用器具によって帯電させたフェイスシートは、これまで説明した本発明のフェイスシートとなる。
【0042】
本発明のフェイスシート用器具によってフェイスシートに帯電させる静電気量(帯電量)は、これまで説明した本発明のフェイスシートと同様であり、具体的には、施術を受ける者の目の周り等に保持可能な程度の帯電量である。また、同様に、帯電時間は、これまで説明した本発明のフェイスシートと同様であり、限定されるものではなく、シャンプーなどでは、たとえば5分程度あればよく、10分程度であれば十分である。なお、ヘッドスパなどのその他の比較的施術時間が長い施術では30分程度とすることでもよい。
【0043】
[2-1]摩擦部:
本発明のフェイスシート用器具は、フェイスシートに上記静電気を帯電させるための摩擦部を備えている。当該摩擦部は、フェイスシートと接触し、フェイスシートと摩擦部との摩擦によって、フェイスシートに静電気を帯電させることができる。
【0044】
摩擦部の材料は、フェイスシートと擦れることによってフェイスシートに帯電可能な材料であれば特に制限はなく、たとえば、樹脂製、合成繊維製、天然繊維製、または、ゴム製であることがよい。このような材料で摩擦部を形成することにより、フェイスシートとの摩擦によって静電気が生じ易くなる。なお、「樹脂製」には、合成樹脂製、天然樹脂製などが含まれる。また、合成繊維は、化学繊維からなるもの、化学繊維とコットンなどの天然繊維との組み合わせからなるものの両方を包含するものである。
【0045】
摩擦部は、フェイスシートと接触し、フェイスシートとの摩擦によって、フェイスシートに静電気を帯電させることができるものであれば特に制限はない。具体的には、ブロック状のものでもよいし、シート状のものであってもよい。
【0046】
ブロック状の摩擦部としては、たとえば、繊維の束からなるもの(線状部材(たとえば図1参照))などを挙げることができる。シート状の摩擦部としては、たとえば、繊維製の織物シート40(たとえば、図9参照)、一方の表面に複数の突起部を有する突起形成シート42(たとえば、図11参照)、一方の表面に凹凸が形成された凹凸シート43(たとえば、図12参照)などを挙げることができる。繊維製の織物シートは、少なくとも縦糸部と緯糸部が交差するようにして織られたシートである。また、シート状の摩擦部は、たとえば、図10に示すように表面が平滑である平滑シート41であってもよい。シート状の摩擦部は、突起部または凹凸が形成されていると、フェイスシートと摩擦部とが接触した際にフェイスシートに静電気が発生し易くなる。
【0047】
さらに、摩擦部は、フェイスシートの表面及び裏面の少なくとも一方の面に接触できるものであってもよい。フェイスシートの表面及び裏面の少なくとも一方の面に摩擦部が接触すれば、静電気を発生させて帯電させることができ、フェイスシートがずれたり飛んだりすることを防止できるためである。なお、フェイスシートの両面に静電気を発生させて帯電できるように、フェイスシート用器具がフェイスシートの両方の面に接触するものの方がよい。フェイスシート用器具の摩擦部を確実にフェイスシートに接触させやすく、静電気を発生させやすいためである。
【0048】
本発明のフェイスシート用器具としては、具体的には、図1に示されるようなフェイスシート用器具100を挙げることができる。このフェイスシート用器具100は、フェイスシートを挟み込むことができる挟持用部材11,12を有し、当該挟持用部材11,12の根本が持ち手部分15となっている。さらに、挟持用部材11,12の、フェイスシートを挟み込む側の面のそれぞれ、又は一方の面に摩擦部20を有している。そして、上記挟持用部材11,12にフェイスシートの上下左右の一端を挟み込み、当該上下左右に対抗する側の他端側へ引き抜くことで、当該引き抜いたフェイスシートに静電気を生じさせて帯電させることができる。摩擦部20は、繊維の束からなる線状部材21からなる。線状部材21は、持ち手部分15側の一端が固定され、他端が自由な複数の繊維からなるものである。なお、線状部材は、ブロック状ではなく、シート状のように薄いものであってもよい。
【0049】
[2-2]付勢部材:
本発明のフェイスシート用器具は、フェイスシートを引き抜く際に摩擦部をフェイスシートに押し付ける方向の外力を加える付勢部材を更に備えていてもよい。このような付勢部材を設けることによってフェイスシートに効率的に静電気を発生させることができる。つまり、付勢部材を設けることによって、フェイスシートと摩擦部がより確実に擦れることになり、フェイスシートに効率的に静電気を発生させて帯電させることができる。
【0050】
付勢部材としては、フェイスシートを引き抜く際に摩擦部をフェイスシートに押し付ける方向の外力を加えることができるものである限り特に制限はない。たとえば、一対の磁石、磁石とこれに対をなす磁性体(たとえば、鉄など)、挟持力を有するクリップなどを挙げることができる。
【0051】
図13には、付勢部材としての一対の磁石53を更に備えるフェイスシート用器具104を示している。このフェイスシート用器具104は、一対のブロック状の線状部材21(摩擦部20)と、それぞれの線状部材21の外側に複数配置された磁石53と、を備えて、更に、両端部に上記線状部材21が配設された1枚の帯状の外装帯50を備えている。フェイスシート用器具104は、複数枚の積層されたフェイスシートの束が収納されたフェイスシート収納箱(たとえば、図4に示すフェイスシート収納箱300)を、外装帯50上に配置し、外装帯50でフェイスシート収納箱を包み込むようにして各線状部材21を合わせる(図13参照)。このとき、線状部材21に配置された磁石53によって、線状部材21が互いに引き付けられ(摩擦部20をフェイスシートに押し付ける方向の外力が生じ)、一対の摩擦部20の間からフェイスシートを引き抜く際に、摩擦部20がフェイスシートに押し付けられる状態となる。このようなことから、フェイスシート用器具104は、フェイスシートに効率的に静電気を発生させて帯電させることができる。なお、外装帯50の材質は、特に制限はなく、たとえば、布、紙、樹脂(ゴムを含む)、木、金属などを採用することができる。
【0052】
図14には、付勢部材としてのクリップ55を更に備えるフェイスシート用器具105を示している。このフェイスシート用器具105は、付勢部材としての一対の磁石53に代えてクリップ55を用いたこと以外は、図13に示すフェイスシート用器具104と同様の構成を有している。フェイスシート用器具105についても、図13に示すフェイスシート用器具104と同様にして使用することができる。なお、フェイスシート用器具105では、外装帯50でフェイスシート収納箱を包み込むようにして各線状部材21を合わせた後、合わせた線状部材21の端部をクリップ55によって挟むことによって、一対の摩擦部20の間からフェイスシートを引き抜く際に、摩擦部20がフェイスシートに押し付けられる状態となる。
【0053】
図15は、図14に示すクリップ55を上方から見た状態を示している。このクリップ55は、摩擦部20に外力を加える一対の付勢腕55a,55bを備えている。クリップ55は、その付勢腕55a,55bにおける互いの距離が離れると、元に戻ろうとする力が生じるものである。
【0054】
図16は、付勢部材としてのクリップ55の別の形態を示している。この別の形態のクリップ55は、摩擦部20に外力を加える一対の付勢腕55a,55bと、一対の付勢腕55a,55bの両方を貫通し、付勢部材による外力の程度を調整するための調整ネジ56と、を備えている。調整ネジ56を締め込むと、一対の付勢腕55a,55bが互いに近づき、摩擦部20に加わる外力が大きくなり、調整ネジ56を緩めると、摩擦部20に加わる外力が小さくなる。このように、別の形態のクリップ55を用いると、摩擦部20に加わる外力を適宜調整することができる。
【0055】
なお、フェイスシート用器具は、上記の例に限定されるものではない。例えば、以下で、その他のフェイスシート用器具を説明する。
【0056】
(その他のフェイスシート用器具)
図2のフェイスシート用器具101は、取出口25と、この取出口25の周囲に摩擦部20を有する平板状部材27を有している。さらに、平板状部材27を支持する脚部29を有するとともに、脚部29内に、積層されたフェイスシートの束を収納できるようになっている。さらには、脚部29内に、フェイスシート入り収納箱を収納できるようになっていてもよい。
【0057】
さらに、図3のフェイスシート用器具102は、収縮可能な環状のバンド31と、このバンド31の内側の少なくとも一部に配設された摩擦部20と、を備えている。このフェイスシート用器具102は、フェイスシートの束201の最も上にあるフェイスシート200をフェイスシート用器具102から引き抜くことによって、フェイスシート200と摩擦部20とが擦れて、引き抜いたフェイスシート200に静電気を生じさせて帯電させることができる。この摩擦部20は、繊維の束からなる線状部材21(図1参照)でもよいし、繊維製の織物シート40(図9参照)でもよい。
【0058】
さらに、図4に示されるように、フェイスシート収納箱300のシート取出口(フェイスシート取り出し口)33上に、取り付けできるフェイスシート用器具103であってもよい。図4のフェイスシート用器具103では、シート取出口33上に、摩擦部20を有するフェイスシート用器具103の取出口25が取り付けられるように、フェイスシート用器具103の周囲に帯体35が備えられており、帯体35には、面ファスナが更に取り付けられている。そのため、帯体35を、フェイスシート収納箱300の外周に巻き付けて、面ファスナで取り付けし、シート取出口33と連通する取出口25から、フェイスシート収納箱300内のフェイスシートを取り出すことができる。そして、取出口25から取出した際に、フェイスシートは摩擦部20に接触するため、取り出したフェイスシートに静電気を発生させて帯電させることができる。
【0059】
図18には、更に、ロール状のフェイスシート202(図19参照)を保持する保持部60を備えるフェイスシート用器具110を示している。図18に示すフェイスシート用器具110は、湾曲した板状部材62の一方の面側の少なくとも一部に摩擦部20が配設されている。そして、板状部材62は、一方の端部が回転可能に固定台64に固定されている。この固定台64には、中心部に孔部202aが形成されているロール状のフェイスシート202の孔部202aに挿入するための棒状部65を有する保持部60が配設されている(図19参照)。図19は、フェイスシート用器具110の棒状部65を、ロール状のフェイスシート202の孔部202aに挿入する状態を示している。
【0060】
このようなフェイスシート用器具110は、ロール状のフェイスシート202の使用に対応可能である。図5に示すような「積層されたフェイスシートの束」の場合、ポップアップした部分は、次に使用されるまでの間に、帯電した静電気が放電してしまい、引き出したフェイスシートの全面が帯電した状態とすることが難しくなる。一方、ロール状のフェイスシート202であると、このような問題がないという利点がある。
【0061】
図20には、更に、フェイスシート202を保持する保持部60を備えるフェイスシート用器具111を示している。この図20に示すフェイスシート用器具111は、図18に示すフェイスシート用器具110とは異なり、板状部材62が固定台64に固定されていないものである。即ち、固定台64には、上方に延びる複数(2本)の固定棒66が配設されており、板状部材62に形成された貫通孔67に挿入される。このとき、板状部材62は、上下方向には自由に移動できる。即ち、板状部材62は、ロール状のフェイスシート202の外径が小さくなるに従って自重によって下方に移動する。なお、図21は、図20に示す板状部材62を裏面側から見た状態を模式的に示す斜視図である。
【0062】
このような構成とすることで、ロール状のフェイスシート202が使用され、その外径が小さくなったときにも、板状部材62の摩擦部20がロール状のフェイスシート202に十分に接することになる。その結果、フェイスシートに静電気を良好に発生させて帯電させることができる。即ち、図18に示すフェイスシート用器具110は、ロール状のフェイスシート202の外径が小さくなったときに、フェイスシート202と摩擦部20の接触面積が小さくなるおそれがあるが、図20に示すフェイスシート用器具111であればそのような問題は生じ難くなる。なお、固定棒66の数は、2本(複数)に限らず、1本であってもよい。
【0063】
図22には、2つの板状部材62(摩擦部20が互いに接触するように配置されているもの)が積層され、これらの板状部材62によってフェイスシート202が挟まれる態様のフェイスシート用器具112を示している。このフェイスシート用器具112は、積層された上記板状部材62を備えていること以外は、図18に示すフェイスシート用器具110と同じ構成である。このようなフェイスシート用器具112は、フェイスシート202の両面に摩擦部20が接触可能であり、より確実にフェイスシートに静電気を発生させて帯電させることができる。
【0064】
ここで、2つの板状部材62は、分離不能に機械的に固定されてもよいし、着脱可能に固定する構造であってもよい。着脱可能な構造であると、メンテナンスが容易になる。なお、2つの板状部材62を着脱可能に固定する方法としては、磁力を用いる方法、固定具を用いる方法などを挙げることができる。磁力を用いる方法としては、2つの板状部材62のそれぞれに磁石を配置し、互いに引き付け合う力を利用する方法などが挙げられる。なお、2つの板状部材62のそれぞれに磁石を配置する代わりに、一方を磁石とし、他方を磁力によって引き付けられる金属などであってもよい。固定具としては、例えば、積層された2つの板状部材62を側方から挟み込むものなどを挙げることができる。
【0065】
図23には、図22で示されるフェイスシート用器具112の板状部材62のうち上方のものにフェイスシート202のシート送り用の孔(シート送り用孔68)が形成されているフェイスシート用器具113が示されている。このフェイスシート用器具113は、シート送り用孔68が形成されていることで、フェイスシート202が途中で詰まったりした際にもシート送り用孔68から指などでシートを押し出してシートの詰まりを容易に解消することができる。このシート送り用孔68の位置や大きさは特に制限はなく適宜決定することができる。
【0066】
図24には、図22で示されるフェイスシート用器具112の使用状態を示している。フェイスシート用器具112の棒状部65(保持部60)にロール状のフェイスシート202が挿入され、このフェイスシート202の一方の端部202bが2つの上記板状部材62の間を通って外側に出ている。使用者は、2つの上記板状部材62の間から外側に出ているフェイスシート202の端部202bを引っ張り、所望の長さまでフェイスシート202を引き出した後、切断する。このとき、引き出されたフェイスシートには静電気が発生されて帯電することになる。
【0067】
[3]本発明のフェイスシート収納箱:
本発明のフェイスシート収納箱は、これまで説明したフェイスシート用器具を有するフェイスシート収納箱であって、フェイスシートを収納できる底部と、フェイスシートを取り出す取出口と、当該取出口の近傍にフェイスシート用器具を備える底部の上蓋と、からなるフェイスシート収納箱である。そして、当該フェイスシート収納箱は、取出口からフェイスシートを取り出した際に、フェイスシートに静電気を発生させて帯電させるものである。
【0068】
このように、本発明のフェイスシート収納箱は、フェイスシートを収納できるとともに、収納したフェイスシートに静電気を発生させて帯電させることができるフェイスシート用器具をその構成の一部に有するものであるため、当該フェイスシート収納箱からフェイスシートを取り出した際に、フェイスシートに静電気を発生させて帯電させることができる。本発明のフェイスシート収納箱を用いると、施術者の作業効率を向上させるだけでなく、衛生面の向上を図ることもできる。
【0069】
本発明のフェイスシート収納箱(以下、適宜、「収納箱」という。)は、上述のように、底部と、上蓋と、が一体となった際に、収納箱を形成するものである。この底部は、その内側に(内底側に)、フェイスシートを収納できる空間を有している。そして、上蓋には、フェイスシートを取り出せる取出口が形成されている。すなわち、上記底部にフェイスシートを収納した後、上蓋を重ねて収納箱が形成されると、当該上蓋を取り外さなくても、上記取出口から収納箱内のフェイスシートを取り出すことができるようになっている。更に、本発明の収納箱は、上記取出口の近傍部分にフェイスシート用器具が取り付けられている。そして、本発明の収納箱は、上記の位置にフェイスシート用器具が取り付けられていることにより、上記取出口から上記フェイスシートを取り出した際に、当該フェイスシートに静電気を発生させて帯電させることができる。
【0070】
なお、フェイスシート用器具は、収納箱の上蓋に当該上蓋と分離不可能に一体化されて設置されても良いし、上蓋と分離可能に一体化されて設置されてもよい。
【0071】
本発明のフェイスシート収納箱は、底部に上蓋を重ねて一体化した後、再び、底部から上蓋を取り外せる構造であってもよいし、底部に上蓋を重ねて一体化した後は、底部から上蓋を取り外せない構造のものであってもよい。
【0072】
たとえば、本発明のフェイスシート収納箱の一の実施形態としては以下のものを挙げることができる。
【0073】
図5に示されるフェイスシート収納箱301は、既に、この収納箱301内にフェイスシート200が収納されているものを示している。ただし、当該フェイスシート200には、目の周りや顔面等に安定して保持させる程度の静電気を帯電させる前のものである。そして、収納箱301の取出口25の縁の周囲には、取出口25の縁から当該取出口25の開口部中央に向かって、繊維の束からなる線状部材21(摩擦部20)が突き出した状態となるように配置されている。さらに、取出口25の対向する縁の両側から開口部中央に向かって線状部材21が配置され、この線状部材21の突き出した状態の先端は、互いに接触している(図6参照)。そのため、収納箱301内からフェイスシート200を取り出す場合には、上記線状部材21とフェイスシート200とが当該取出口25で接触し、フェイスシート200に静電気を発生させ易く、更にフェイスシート200を引き出し易い。
【0074】
なお、図5では、線状部材21は、取出口25の縁の周囲全体に配置されているが、この例に限らず、部分的に配置されているものであっても良い。さらに、線状部材21は、取出口25の縁の一方側のみに配置され、フェイスシート200を引き出すと、当該フェイスシート200と線状部材21とが接触し、フェイスシート200に静電気を発生させる態様であってもよい。
【0075】
図5に示される収納箱301では、フェイスシート200が、所謂ポップアップ方式を採用して収納されていることがよい。ポップアップ方式で収納されると、フェイスシート200を連続的に取り出すことができるため、1枚目の(最も上にある)フェイスシート200を取り出した後は、図7に示すように線状部材21の先端が、取出口25の上側を向くようになる。そのため、フェイスシート200を取り出す際に、フェイスシート200と線状部材21とが確実に接触できることになり、フェイスシート200に静電気を発生させ易くなる。
【0076】
また、図8に示されるフェイスシート収納箱302は、既に、この収納箱302内にフェイスシート200が収納されている。このフェイスシート200は、静電気を帯電させる前の状態のものである。そして、収納箱302の取出口25の縁の両側のそれぞれには、繊維製の織物シートであって平面状に形成された織物シート40(摩擦部20)が配置されている(図9参照)。この織物シート40は、収納箱302に収納されているフェイスシート200を取り出す際に、取出口25の中央において取り出すフェイスシート200の表裏に接触するように配置されている。そのため、収納箱302内からフェイスシート200を取り出す場合には、織物シート40とフェイスシート200とが取出口25で接触し、フェイスシート200に静電気を発生させて帯電させることができる。なお、織物シート40は、取出口25の縁の一方側のみに配置され、フェイスシート200を引き出すと、フェイスシート200と織物シート40とが接触し、フェイスシート200に静電気を発生させる態様であってもよい。
【0077】
また、本発明のフェイスシート収納箱は、これまで説明したフェイスシート用器具を有するフェイスシート収納箱であって、フェイスシート入り箱を覆う「上箱」であってもよい。そして、上箱には、フェイスシートを取り出すための取出口が形成されている。取出口は、フェイスシート入り箱を上箱で覆った際に、フェイスシート入り箱の、取出口と連通している。そして、上箱の取出口の近傍には、フェイスシート用器具が配置されている。本発明のフェイスシート収納箱は、上箱の取出口からフェイスシートを取り出す際に、フェイスシートとフェイスシート用器具とを接触させて、フェイスシートに静電気を発生させて帯電させるものである。
【0078】
このように、本発明のフェイスシート収納箱は、一般に市販されているフェイスシート入り箱(フェイスシートが収納されている公知の箱)に対して、その箱の上から覆い被せように装着するものであってもよい。そして、上箱は、フェイスシートに静電気を発生させて帯電させることができるフェイスシート用器具をその構成の一部に有するものである。このようなフェイスシート収納箱であると、施術者の作業効率を向上させるだけでなく、衛生面の向上を図ることもできる。
【0079】
なお、上箱には、フェイスシート用器具が分離不可能に一体化されても良いし、分離可能に一体化されてもよい。
【0080】
さらに、本発明のフェイスシート収納箱においては、フェイスシート入り箱を内部に収納できる底部を有し、上箱が当該底部の上蓋となるものであってもよい。なお、このような本発明のフェイスシート収納箱は、底部に上箱を重ねて一体化した後、再び、底部から上箱を取り外せるものであってもよいし、底部に上箱を重ねて一体化した後は、底部から上箱を取り外せないものであってもよい。再利用が可能であるという観点からは、底部から上箱を取り外せるものがよい。
【0081】
また、図25図26に示されるフェイスシート収納箱400は、フェイスシート202(図27参照)を保持する保持部(具体的には、フェイスシート202の取出口71が形成された直方体状の箱体70)を備え、更に、当該箱体70の上記取出口71の近傍(外縁)から延びる板状の板状部材62と、当該板状部材62の表面に配設された摩擦部20とを備えている。なお、このフェイスシート収納箱400は、直方体状の箱体70である保持部を備え、更に、当該箱体70の上記取出口71の近傍(外縁)から延びる板状の板状部材62と当該板状部材62の表面に配設された摩擦部20とを備える「フェイスシート用器具」と言うことができる。そして、フェイスシート収納箱400は、直方体状の箱体70の、摩擦部20が接する面には当該摩擦部20と同様の摩擦部20が配設されている。このように、摩擦部20を更に備えること(一対の摩擦部20を備えること)によって、フェイスシート202を一対の摩擦部20,20によって挟むことができ、より確実にフェイスシート202に静電気を発生させて帯電させることができる。勿論、更なる摩擦部20を備えなくてもよい(即ち、摩擦部20は、板状部材62の表面に配設された1つのものだけでもよい)。なお、板状部材62の端部には、フェイスシート202を所望の長さで切るための切断部が形成されていてもよい。
【0082】
図27は、フェイスシート収納箱400内にロール状のフェイスシート202が収納されている状態を示している。フェイスシート202は、フェイスシート収納箱400の箱体70の取出口71から箱体70の外側に延びている。そして、外側に延びたフェイスシート202は、一対の摩擦部20によって挟まれ、引き抜かれる際に静電気が発生し、帯電される。
【0083】
[4]本発明のフェイスシートの使用方法:
本発明のフェイスシートの使用方法は、静電気を帯電させて使用するフェイスシートの使用方法である。すなわち、本発明のフェイスシートの使用方法は、施術を受ける者の少なくとも目の周りを覆うためのフェイスシートを準備する準備ステップと、準備したフェイスシートに、施術を受ける者の少なくとも目の周りに保持可能な静電気を帯電させる帯電ステップと、を有している。さらに、本発明のフェイスシートの使用方法は、帯電ステップ後のフェイスシートを、施術を受ける者の少なくとも目の周りに載置する載置ステップを有している。
【0084】
本発明のフェイスシートの使用方法によれば、静電気を帯電させたフェイスシートを被施術者の目の周りや、顔面に付着させて、当該フェイスシートがずれたり飛んだりすることを防止することができ、フェイスシートを被施術者の目の周りや顔面上に安定して保持させることができる。そして、特に、本発明のフェイスシートの使用方法は、無料の電力である静電気を用いるので低コストであって、施術者の負担を軽減でき、さらに、被施術者の不快感を解消できる。
【0085】
[5]本発明のフェイスシート用器具の使用方法:
本発明のフェイスシート用器具は、以下のように使用することができる。すなわち、フェイスシートの少なくとも一方の面(表面または裏面)に摩擦部を接触させた状態を維持したままで、フェイスシート、フェイスシート用器具、またはこれらの両方を移動させる。具体的には、たとえば図1に示すフェイスシート用器具100を用いる場合、挟持用部材11,12にフェイスシートの上下左右のうちの一端を挟み込み、当該上下左右に対抗する側の他端側へフェイスシートを引き抜く。
【0086】
このようにすることで、フェイスシートに接触させる前よりもフェイスシートに接触させた後において、フェイスシートの静電気量を増加させ且つ帯電させることができ、このフェイスシートは、施術を受ける者の少なくとも目の周りに載置した場合、ずれたり飛んだりし難いものとなる。
【0087】
なお、フェイスシート用器具の摩擦部は、フェイスシートの全面と接触させなくてもよい。すなわち、摩擦部は、フェイスシートの一方の面の少なくとも一部に接触した状態で擦られることでもよい。たとえば、フェイスシートの一方の面の面積の1/3程度以上が、摩擦部と接触すれば、施術を受ける者の少なくとも目の周りに保持可能なように静電気を帯電させることができる。なお、摩擦部とフェイスシートの接触面積は、上記のように1/3程度以上に限られず、施術を受ける者の少なくとも目の周りに保持可能なように静電気を帯電させることができれば特に制限はない。これは、フェイスシート収納箱を使用する場合にも同様である。
【0088】
[6]本発明のフェイスシート収納箱の使用方法:
本発明のフェイスシート収納箱は、以下のように使用することができる。すなわち、フェイスシートが収納された、底部またはフェイスシート入り箱からフェイスシートを取り出す際に、このフェイスシートを、フェイスシート用器具の摩擦部に接触させながら取り出す。具体的には、たとえば、図5に示すフェイスシート収納箱301を用いる場合、収納箱301内からフェイスシート200を取り出すことで、線状部材21とフェイスシート200とが取出口25で接触し、フェイスシート200に静電気を発生させて帯電させることができる。
【0089】
[7]本発明のフェイスシートに静電気を帯電させる方法:
本発明のフェイスシートは、施術を受ける者の少なくとも目の周りに保持可能なように、静電気が帯電しているものである限り静電気の帯電方法は特に制限はない。たとえば、本発明のフェイスシート用器具や本発明のフェイスシート収納箱を用いても良いし、施術者などが手でフェイスシートを揉むことで静電気を帯電させてもよい。
【実施例0090】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
不織布製のフェイスシートを用意し、図1に示すようなフェイスシート用器具を用いて、フェイスシート(ポリプロピレン製の不織布)に静電気を発生させて帯電させた。このときの帯電量(電荷)を、標準型静電容量測定器(シシド静電気社製、商品名「静電気測定器スタチロン DZ4型」)を用いて測定した。測定は、5人の被験者に対して複数回行った。
【0092】
フェイスシート用器具の摩擦部の素材は、ナイロンであった。なお、フェイスシートの帯電量の測定は、以下の条件で行った。温度20℃、湿度32%であった。また、測定に際しては、フェイスシートの縁部に500gの錘を付けてフェイスシートの一方の端部から他方の端部まで摩擦部と接触させて引き抜いた(引き抜き速度は1秒とした)。その後直ちに、フェイスシートを、正面を向いた被験者の顔面に配置し(フェイスシートは被験者の顔面に電気的に吸着して保持され)、その状態を維持したままで上記測定器によって帯電量を測定した。なお、測定に際しては、上記測定器をフェイスシートから100mm離して行った。帯電量の測定は、フェイスシートを被験者の顔面に配置した直後から20秒間隔で行い、フェイスシートが被験者の顔面から離れたとき(落下したとき)に測定を終了した。測定結果を図17に示す。
【0093】
本実施例において、被験者が正面を向いた状態(すなわち、通常は自重によってフェイスシートが落下してしまうような状態)であっても、図17に示すように、フェイスシートが被験者の顔面に良好に保持されていた。更には、この結果から、シャンプーなどの施術のように、仰向けの姿勢であれば、フェイスシートの帯電量はより少なくてもよいことが考えられる。すなわち、より少ない帯電量であっても、フェイスシートがずれたり飛んでしまうことは十分に防止可能であると考えられる。
【0094】
本実施例において、被験者が正面を向いた状態(すなわち、通常は自重によってフェイスシートが落下してしまうような状態)であっても、フェイスシートが被験者の顔面に良好に保持されていた。更には、この結果から、シャンプーなどの施術のように、仰向けの姿勢であれば、フェイスシートの帯電量はより少なくてもよいこと(電気的な吸着力がより小さくてもよいこと)が考えられる。なお、本実施例では、被験者が正面を向いた状態で測定を行っているが、たとえばシャンプーなどの施術で採られる仰向けの姿勢における顔面の傾斜角は10~30°程度であることが多い。従って、本実施例の場合と比べて、より少ない帯電量であっても、所望の時間中、フェイスシートがずれたり飛んでしまうことが十分に防止可能(施術を受ける者の少なくとも目の周りに保持可能)であると考えられる。
【0095】
なお、フェイスシートの帯電量の測定直後に、フェイスシートに触れたが静電気の放電による痛みは生じなかった。また、フェイスシートを配置された被験者も静電気の放電による痛みを感じなかった。
【0096】
以上のように、本発明のフェイスシート用器具は、施術を受ける者の目の周りに保持可能なように、フェイスシートの静電気量を増加させ且つ帯電させることができることが分かる。そのため、このフェイスシートは、被施術者に配置した後にずれたり飛んでしまったりすることが防止され、被施術者の目の周りや顔面上に安定して保持されると考えらえる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のフェイスシートは、シャンプー、リンス、ヘアカラー、パーマ等の施術を受ける際に、被施術者の目の周り、顔面等を覆うシートとして利用することができる。本発明のフェイスシート用器具及びフェイスシート収納箱は、シャンプー、リンス、ヘアカラー、パーマ等の施術を受ける際に、被施術者の目の周り、顔面等を覆うシートに対して用いる器具として利用することができる。本発明のフェイスシートの使用方法は、シャンプー、リンス、ヘアカラー、パーマ等の施術を受ける際に、被施術者の目の周り、顔面等を覆うシートの使用方法として採用することができる。
【符号の説明】
【0098】
11,12:挟持用部材、15:持ち手部分、20:摩擦部、21:線状部材、25:取出口、27:平板状部材、29:脚部、31:バンド、33:シート取出口、35:帯体、40:織物シート、41:平滑シート、42:突起形成シート、43:凹凸シート、50:外装帯、53:磁石(磁性体)、55:クリップ、55a,55b:付勢腕、56:調整ネジ、60:保持部、62:板状部材、64:固定台、65:棒状部、66:固定棒、67:貫通孔、68:シート送り用孔、70:箱体、71:取出口、100,101,102,103,104,110:フェイスシート用器具、200:フェイスシート、201:フェイスシートの束、202:ロール状のフェイスシート、202a:孔部、202b:フェイスシートの一方の端部、300,301,302,400:フェイスシート収納箱。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27