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特開2022-81634プロテアーゼで切断可能なリンカーを有するペプチド構築体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081634
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】プロテアーゼで切断可能なリンカーを有するペプチド構築体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20220524BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220524BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220524BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20220524BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220524BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20220524BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220524BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220524BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220524BHJP
   A61K 47/65 20170101ALN20220524BHJP
【FI】
A61K47/68
C07K16/46 ZNA
C12P21/08
C07K16/24
C07K16/28
C07K16/40
C07K16/18
C07K16/12
A61P1/04
A61K39/395 D
A61K39/395 U
A61K39/395 N
A61K39/395 Q
C12N15/11 Z
A61K47/65
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041021
(22)【出願日】2022-03-16
(62)【分割の表示】P 2018502329の分割
【原出願日】2016-03-31
(31)【優先権主張番号】15162114.1
(32)【優先日】2015-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15162115.8
(32)【優先日】2015-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15162112.5
(32)【優先日】2015-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16152320.4
(32)【優先日】2016-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.BRIJ
3.TRITON
4.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】521555823
【氏名又は名称】ソリッソ ファーマシューティカルズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】スコット クロエ
(72)【発明者】
【氏名】マイク ウエスト
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ロバーツ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腸管疾患の治療において、経口投与後に腸管の特定部位において活性成分が放出される性質を有する、2以上のポリペプチドを含む新規構築体を提供する。
【解決手段】第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む構築体を有効成分として含む、経口投与による腸管の疾患の治療のための医薬組成物であって、前記構築体を構成する第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインは特定の不安定ペプチドリンカーによって接続され、各々がトリプシンに対して実質的に抵抗性である、医薬組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを用いる
経口投与による腸管の疾患の治療のための医薬組成物であって、不安定ペプチドリンカー
によって接続された該第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び該第2の免疫グロブリン鎖
可変ドメインを含む構築体を含み:
該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインは、トリプシンに対して実質的に抵抗性
であり、
該不安定ペプチドリンカーが、配列番号:2~5の配列からなる群から選択されるポリペ
プチド配列、又は以下の形式:
[-(GaS)x-B-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり;
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列、又は
以下の形式:
-B-(GaS)x-B’-
(式中、
aは、1~10であり;
xは、1~10であり;
Bは、K又はRであり、かつ
B’は、K又はRである)
のポリペプチド配列を含み、かつ
該第1の免疫グロブリン鎖可変ドメインがVHH及びVHからなる群から選択され、かつ該第
2の免疫グロブリン鎖可変ドメインがVHH及びVHからなる群から選択される、前記医薬組成
物。
【請求項2】
不安定ペプチドリンカーによって接続された第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び
第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む、経口投与に適した構築体を作製する方法で
あって:
該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインは、トリプシンに対して実質的に抵抗性
であり;
酵母内で該構築体を産生させる工程を含み、
該不安定ペプチドリンカーが、配列番号:2~5の配列からなる群から選択されるポリペ
プチド配列、又は以下の形式:
[-(GaS)x-B-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり;
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列、又は
以下の形式:
-B-(GaS)x-B’-
(式中、
aは、1~10であり;
xは、1~10であり;
Bは、K又はRであり、かつ
B’は、K又はRである)
のポリペプチド配列を含み、かつ
該第1の免疫グロブリン鎖可変ドメインがVHH及びVHからなる群から選択され、かつ該第
2の免疫グロブリン鎖可変ドメインがVHH及びVHからなる群から選択される、前記方法。
【請求項3】
第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む構
築体であって、
該構築体は、不安定ペプチドリンカーによって接続された該第1の免疫グロブリン鎖可
変ドメイン及び該第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含み、
該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインは、トリプシンに対して実質的に抵抗性
であり、
該不安定ペプチドリンカーは、配列番号:2の配列からなり、かつ
該第1の免疫グロブリン鎖可変ドメインがVHH及びVHからなる群から選択され、かつ該第
2の免疫グロブリン鎖可変ドメインがVHH及びVHからなる群から選択される、前記構築体。
【請求項4】
前記不安定ペプチドリンカーが、40残基以下の長さを有する、請求項1記載の医薬組成
物。
【請求項5】
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-B-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり;
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列からなる、請求項1又は4記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
-B-(GaS)x-B’-
(式中、
aは、1~10であり;
xは、1~10であり;
Bは、K又はRであり、かつ
B’は、K又はRである)
のポリペプチド配列からなる、請求項1又は4記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記第1の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、腸管経由で到達可能な第1の標的に結合し
、任意に、該第1の標的が、腸管常在性病原性微生物由来の第1の有害薬剤である、請求項
1及び4~6のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記第1の標的が:インターロイキン、インターロイキン受容体、転写因子、サイトカイ
ン、膜貫通型タンパク質、表面糖タンパク質、可溶性タンパク質、インテグリン、接着分
子、ケモカイン、ケモカイン受容体、阻害タンパク質、キナーゼ、G蛋白質共役受容体、
又は毒素からなる群から選択される、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記不安定ペプチドリンカーが、配列番号:2~5の配列からなる群から選択される配列
を含むか、又はそれからなる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記酵母が、出芽酵母である、請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記酵母が、P.パストリスである、請求項2記載の方法。
【請求項12】
前記不安定ペプチドリンカーが、40残基以下の長さを有する、請求項2、10及び11のい
ずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-B-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり;
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列からなる、請求項2及び10~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
-B-(GaS)x-B’-
(式中、
aは、1~10であり;
xは、1~10であり;
Bは、K又はRであり、かつ
B’は、K又はRである)
のポリペプチド配列からなる、請求項2及び10~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記第1の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、腸管経由で到達可能な第1の標的に結合し
、任意に、該第1の標的が、腸管常在性病原性微生物由来の第1の有害薬剤である、請求項
2及び10~14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記第1の標的が:インターロイキン、インターロイキン受容体、転写因子、サイトカイ
ン、膜貫通型タンパク質、表面糖タンパク質、可溶性タンパク質、インテグリン、接着分
子、ケモカイン、ケモカイン受容体、阻害タンパク質、キナーゼ、G蛋白質共役受容体、
又は毒素からなる群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記不安定ペプチドリンカーが、配列番号:2の配列を含む、請求項2記載の方法。
【請求項18】
aは4であり;
bは4であり;
xは2であり;
yは2であり;
zは1であり、かつ
BはKである、請求項2記載の方法。
【請求項19】
前記不安定ペプチドリンカーが、配列番号:2の配列を含む、請求項1記載の医薬組成物
【請求項20】
aは4であり;
bは4であり;
xは2であり;
yは2であり;
zは1であり、かつ
BはKである、請求項1記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、不安定ペプチドリンカーによって接続されたポリペプチドを含む経口投与に
適した構築体、及びそのような構築体を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、そのよ
うな構築体を調製するための方法、そのような構築体の不安定性をアッセイする方法、そ
のような構築体を利用する方法、そのような構築体をコードする核酸、そのような構築体
をコードする核酸を含むcDNA及びベクター、そのような構築体を発現している又は発現す
る能力のある宿主細胞、並びにそのような構築体又は医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
2つ以上のポリペプチドを含む構築体は、多機能的性質を有する生体分子のクラスの1つ
である。2つ以上のポリペプチド同士を遺伝学的に融合させることによって、結果として
得られる構築体は、各構成ポリペプチドに由来する多くの別個の機能を得ることがある。
そのような構築体は、多くの目的、例えば、タンパク質精製及びイメージングのために、
生物学的研究において利用されている。そのような構築体はまた、バイオ医薬品の重要な
カテゴリーとなってきている。効果的な構築体は、適当なリンカーを必要とする。リンカ
ーを用いないポリペプチドの直接的な融合は、融合したポリペプチドのミスフォールディ
ング、ポリペプチド生成の低収率、又は低下した生理活性を含む多くの望ましくない結果
に繋がり得る。従って、ポリペプチドを連結するリンカーの選択又は合理的設計は、組換
えポリペプチド技術における重要な分野である。
【0003】
多くの構築体に、インビボ送達又は組換え製造を目的として、比較的安定であるリンカ
ーが組み込まれている。安定なリンカーは、インビボ又は組換え製造プロセスの間ずっと
1つの分子として作用するように複数の機能ドメイン同士を共有結合的に連結する。ポリ
ペプチド間の安定な連結は、延長された血漿半減期及び宿主生物プロテアーゼによる切断
への耐性などの多くの利点を提供し得る。しかしながら、安定なリンカーはまた、ポリペ
プチド間の立体障害、減少した生理活性、及び変化した生体内分布を含むいくつかの欠点
を有する可能性がある(Chenらの文献2013 Adv Drug Deliv Rev. 65(10):1357-1369)。従
って、インビボで構築体から遊離のポリペプチドを放出し、それにより、立体障害を減少
するか、生理活性を向上させるか、又は個々のポリペプチドの独立した機能を達成し得る
可能性があることは有利であろう。
【0004】
腸管における作用を有するポリペプチドの文脈で、そのような放出は、理想的には経口
投与の後に腸管において起こるものである。そのような放出が、腸管内の1又はいくつか
の特定の部位でのみ起こることが好ましい可能性がある。
【0005】
少なくともいくつかの実施態様において、本発明の構築体は、従来技術の物質と比較し
て以下の利点:
(i)経口投与に対する増加した適合性;
(ii)経口投与後の腸管への局所送達に対する増加した適合性;
(iii)腸管の1以上の特定の領域に対する標的化(すなわち、構築体を構成ポリペプチドへ
と切断する)能力;
(iv)2つ以上の分離可能なポリペプチドを1つの組換え産物に組み込む際の増加した利便性
;
(v)胃腸管感染症又は自己免疫性及び/もしくは炎症性疾患の向上した治療及び/又は予防;
(vi)異種宿主、例えば細菌(例えば、大腸菌(Escherichia coli))、及び/又は哺乳動物細
胞、及び/又は酵母もしくはカビ(例えば、アスペルギルス属(Aspergillus)、サッカロマ
イセス属(Saccharomyces)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、ハンゼヌラ属(Hansenu
la)、又はピキア属(Pichia)に属するもの、例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae
)もしくはピキア・パストリス(Pichia pastoris))における発現に対する増加した適合性;
(vii)製造中のプロテアーゼ分解に対する増加した安定性(例えば、酵母、カビ、又は哺乳
動物細胞プロテアーゼへの耐性);
(viii)ポリペプチドの向上したフォールディング;
(ix)組換え製造中の向上した収率;
(x)向上した生理活性及び/又は生体内分布;
(xi)医薬における使用に対する適合性及び該使用のための向上した性質;
(xii)機能性食品における使用に対する適合性及び該使用のための向上した性質
のうちの1つ以上を有する。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本発明者らは、経口投与に適した、不安定ペプチドリンカーによって接続された第1の
ポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む驚くべき有利な構築体を製造した。これらの
構築体は、それらの製造の利便性及びそれらの腸管内で遊離の構成ポリペプチドを放出す
る能力のために特に有利である。一実施態様において、該遊離の構成ポリペプチドは、腸
管内の1以上の特定の領域において放出され得る。
【0007】
これらの構築体が、GITの疾患、例えば、自己免疫性及び/又は炎症性疾患、例えば、炎
症性腸疾患の予防又は治療においてか、又は腸管常在性病原性微生物による感染症の予防
又は治療において特定の有用性を有することが期待される。
【0008】
本発明は、不安定ペプチドリンカーによって接続された第1のポリペプチド及び第2のポ
リペプチドを含む経口投与に適した構築体であって、該不安定ペプチドリンカーが、腸管
に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定であり、かつ該第1及び第2のポリペプチ
ドが、該1以上のプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である、前記構築体を提供する。
また、該発明の構築体に関する関連組成物、方法、及び核酸も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
(図面の説明)
図1図1―トリプシンプロテアーゼアッセイを用いたID3Aの非不安定性を実証する染色されたPAGEゲル
図2図2―トリプシンプロテアーゼアッセイを用いたID25A及びID26Aの不安定性を実証する染色されたPAGEゲル
図3図3―トリプシンプロテアーゼアッセイを用いたID27A及びID28Aの不安定性を実証する染色されたPAGEゲル
図4図4―糞便プロテアーゼアッセイを用いたID3A、ID25A、ID26A、ID27A、及びID28Aの不安定性を実証する染色されたPAGEゲル
図5図5―糞便プロテアーゼアッセイを用いたID55F、ID56F、ID57F、ID58F、ID59F、及びID60Fの不安定性を実証する染色されたPAGEゲル
図6図6―ID3A及びID25Aの貯蔵安定性を実証する染色されたPAGEゲル
図7図7―ID26A、ID27A、及びID28Aの貯蔵安定性を実証する染色されたPAGEゲル
図8図8―ID4Aの貯蔵安定性を実証する染色されたPAGEゲル
【0010】
(配列の説明)
配列番号:1―構築体ID3A及びID55Fにおいて用いられるリンカーのポリペプチド配列
配列番号:2―構築体ID25A及びID57Fにおいて用いられるリンカーのポリペプチド配列
配列番号:3―構築体ID26A及びID58Fにおいて用いられるリンカーのポリペプチド配列
配列番号:4―構築体ID27A及びID59Fにおいて用いられるリンカーのポリペプチド配列
配列番号:5―構築体ID28A及びID60Fにおいて用いられるリンカーのポリペプチド配列
配列番号:6―構築体ID56Fにおいて用いられるリンカーのポリペプチド配列
配列番号:7―ID3A構築体のポリペプチド配列
配列番号:8―ID25A構築体のポリペプチド配列
配列番号:9―ID26A構築体のポリペプチド配列
配列番号:10―ID27A構築体のポリペプチド配列
配列番号:11―ID28A構築体のポリペプチド配列
配列番号:12―ID55F構築体のポリペプチド配列
配列番号:13―ID57F構築体のポリペプチド配列
配列番号:14―ID58F構築体のポリペプチド配列
配列番号:15―ID59F構築体のポリペプチド配列
配列番号:16―ID60F構築体のポリペプチド配列
配列番号:17―ID56F構築体のポリペプチド配列
配列番号:18―ID1A ICVDのポリペプチド配列
配列番号:19―ID5F ICVDのポリペプチド配列
配列番号:20―ID3A構築体をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号:21―ID25A構築体をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号:22―ID26A構築体をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号:23―ID27A構築体をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号:24―ID28A構築体をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号:25―ID55F構築体をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号:26―ID57F構築体をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号:27―ID58F構築体をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号:28―ID59F構築体をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号:29―ID60F構築体をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号:30―ID56F構築体をコードするポリヌクレオチド配列
配列番号:31―構築体ID3A及びID55Fにおいて用いられるリンカーをコードするであろう例
示的なポリヌクレオチド配列
配列番号:32―構築体ID25A及びID57Fにおいて用いられるリンカーをコードするであろう
例示的なポリヌクレオチド配列
配列番号:33―構築体ID26A及びID58Fにおいて用いられるリンカーをコードするであろう
例示的なポリヌクレオチド配列
配列番号:34―構築体ID27A及びID59Fにおいて用いられるリンカーをコードするであろう
例示的なポリヌクレオチド配列
配列番号:35―構築体ID28A及びID60Fにおいて用いられるリンカーをコードするであろう
例示的なポリヌクレオチド配列
配列番号:36―構築体ID56Fにおいて用いられるリンカーをコードするであろう例示的なポ
リヌクレオチド配列
配列番号:37―提案されたキモトリプシンに不安定なリンカー
配列番号:38―ID4A構築体のポリペプチド配列
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
(不安定ペプチドリンカー)
本発明の構築体は、第1及び第2のポリペプチドを接続する不安定ペプチドリンカーを含
む。本発明の一実施態様において、該不安定ペプチドリンカーは、それが、所望の程度ま
でプロテアーゼによる切断に抵抗し、かつ/又はそれが、腸管の特定のエリアに曝露され
たときにのみ切断されるように操作することができる。例えば、構築体が、宿主、例えば
、酵母において組換えにより製造される場合、該酵母によって産生されるトリプシン様プ
ロテアーゼが、該組換え構築体産物を切断する可能性がある。このことにより、精製にお
ける難点が生じる可能性があり、規制的、臨床的、及び商業的な問題が引き起こされ得る
。同様に、例えば、前記第1のポリペプチドが、毒素である場合、前記構築体の第2のポリ
ペプチドは、それが適当な標的部位で放出されるまで該毒素の作用を「クエンチ」するよ
うに作用し得る。
【0012】
このことは、本発明の一実施態様によって、不安定な部位(複数可)に隣接する不安定ペ
プチドリンカーにシールディング残基を組み込むことで達成できる。シールディング残基
は、不安定ペプチドリンカーの不安定な部位(複数可)に隣接しており、その不安定性を減
少させる。切断抵抗性はまた、不安定な部位(複数可)を該不安定ペプチドリンカーにより
接近させて、又はその周辺部に位置させることによって増加させることができる。この概
念は、「シールドされた不安定部位」と呼ばれ、制御された不安定性を提供する。
【0013】
本発明のさらなる実施態様において、前記不安定ペプチドリンカーは、それが、腸管プ
ロテアーゼによる切断に対して高度に不安定であり、それにより、経口投与の後に前記構
築体の前記構成要素である第1及び第2のポリペプチドを迅速に放出するように操作するこ
とができる。このことは、前記不安定ペプチドリンカーに、1以上の不安定部位を、該不
安定部位が、タンパク質分解のために露出されるように組み込むことによって、例えば、
該不安定な部位(複数可)を、該不安定ペプチドリンカーにおいて実質的に中心に配置する
ことによって、かつ/又は隣接残基によって実質的にシールドされていない不安定部位に
よって達成される。この概念は、「シールドされていない不安定部位」と呼ばれる。
【0014】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、少なくとも3残基、例えば、少なくとも4残
基、例えば、少なくとも5残基、例えば、少なくとも6残基、例えば、少なくとも7残基、
例えば、少なくとも8残基、例えば、少なくとも9残基、例えば、少なくとも10残基の長さ
を有する。好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、40残基以下、例えば、35残基以下
、例えば、30残基以下、例えば、25残基以下、例えば、20残基以下、例えば、15残基以下
の長さを有する。
【0015】
本発明の構築体の前記不安定ペプチドリンカーへP残基を組み込むと、該不安定ペプチ
ドリンカーの切断が実質的に阻止されることが予想される。好適には、前記不安定ペプチ
ドリンカーは、P残基を含まない。
【0016】
(トリプシン不安定部位)
(シールドされたトリプシン不安定部位)
好適には、本発明の構築体の不安定ペプチドリンカーは、トリプシン又はトリプシン様
プロテアーゼの切断部位を含む。好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、少なくとも
1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、例えば
、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個、例えば、少なくとも7個、例えば、少なくと
も8個、例えば、少なくとも9個、例えば、少なくとも10個のK残基を含む。好適には、前
記不安定ペプチドリンカーは、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なく
とも3個、例えば、少なくとも4個、例えば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個、例
えば、少なくとも7個、例えば、少なくとも8個、例えば、少なくとも9個、例えば、少な
くとも10個のR残基を含む。好ましくは、前記切断部位は、1個以上のK残基である。
【0017】
トリプシン又はトリプシン様プロテアーゼ不安定部位の場合のシールディング残基は、
D又はEとしてもよい。好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、D又はEからなるリスト
から選択される1以上のシールディング残基を含む。
【0018】
好適には、前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのN
末端側に、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、
少なくとも4個、例えば、少なくとも5個のシールディング残基を有し、該シールディング
残基が、D及びEからなるリストから選択される。好適には、前記不安定ペプチドリンカー
内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのN末端側に、1~5、1~4、1~3、1~2、2~5
、2~4、2~3、3~5、3~4、4~5個のシールディング残基を有し、該シールディング残基
が、D及びEからなるリストから選択される。
【0019】
好適には、前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのC
末端側に、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、
少なくとも4個、例えば、少なくとも5個のシールディング残基を有し、該シールディング
残基が、D及びEからなるリストから選択される。好適には、前記不安定ペプチドリンカー
内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのC末端側に、1~5、1~4、1~3、1~2、2~5
、2~4、2~3、3~5、3~4、4~5個のシールディング残基を有し、該シールディング残基
が、D及びEからなるリストから選択される。
【0020】
好適には、K及びR残基の全てが、それらに隣接する少なくとも1個のシールディング残
基を有しており、好適には、1以上のさらなる連続したシールディング残基がそれに続く
。好適には、該シールディング残基は、前記K又はR残基のうちの1つ以上の片側又は両側
に存在する。
【0021】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、以下の形式:
[-(GaS)x-Uc-B-U’d-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
Uは、D又はEであり;
U’は、D又はEであり;
cは、0~7であり;
dは、0~7であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる。
【0022】
好適には、aは2~5であり、より好適には、aは4である。好適には、bは2~5であり、よ
り好適には、bは4である。好適には、xは1~5であり、より好適には、xは1である。好適
には、yは1~5であり、より好適には、yは1である。好適には、zは1~3であり、より好適
には、zは1である。好適には、Bは、Kである。好適には、Uが存在する場合、それはDであ
る。好適には、U’が存在する場合、それはDである。一実施態様において、cは1であり、
かつdは1である。別の実施態様において、cは0であり、かつdは0である。さらなる実施態
様において、cは、4であり、かつdは、0である。好適には、U及びU’の双方は、それぞれ
独立してDであり、かつc及びdは、双方とも1である。
【0023】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、以下の形式:
-B-(GaS)x-B’-
(式中、
aは、1~10であり;
xは、1~10であり;
Bは、K又はRであり、かつ
B’は、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる。
【0024】
一実施態様において、aは2~5であり、より好適にはaは4である。さらなる実施態様に
おいて、xは1~5である。より好適には、xは2である。好適には、BはKである。好適には
、B’はKである。
【0025】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、以下の形式:
-B-(GaS)x-B’-(GbS)y-B’’-
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり;
Bは、K又はRであり
B’は、K又はRであり、かつ
B’’は、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる。
【0026】
一実施態様において、aは2~5であり、より好適には、aは4である。一実施態様におい
て、bは2~5であり、より好適にはbは4である。さらなる実施態様において、xは1~5であ
る。より好適には、xは2である。さらなる実施態様において、yは1~5である。より好適
には、yは2である。好適には、BはKである。好適には、B’はKである。好適には、B’’
はKである。
【0027】
(シールドされていないトリプシン不安定部位)
好適には、本発明の構築体の不安定ペプチドリンカーは、トリプシン又はトリプシン様
プロテアーゼの切断部位を含む。好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、少なくとも
1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、例えば
、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個、例えば、少なくとも7個、例えば、少なくと
も8個、例えば、少なくとも9個、例えば、少なくとも10個のK残基を含む。好適には、前
記不安定ペプチドリンカーは、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なく
とも3個、例えば、少なくとも4個、例えば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個、例
えば、少なくとも7個、例えば、少なくとも8個、例えば、少なくとも9個、例えば、少な
くとも10個のR残基を含む。好ましくは、前記切断部位は、1個以上のK残基である。
【0028】
好適には、前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのN
末端側に、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、
少なくとも4個、例えば、少なくとも5個の非シールディング残基を有し、該非シールディ
ング残基が:C、A、S、N、G、L、I、V、T、M、F、Y、H、W、及びQ;より好適には、A、G、L
、I、V、M、S、及びT;より好適には、A、G、L、I、V、及びS;より好適には、G及びSから
なるリストから選択される。好適には、前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR
残基の全てが、それらのN末端側に、1~5、1~4、1~3、1~2、2~5、2~4、2~3、3~5
、3~4、4~5個の非シールディング残基を有し、該シールディング残基が:C、A、S、N、G
、L、I、V、T、M、F、Y、H、W、及びQ;より好適には、A、G、L、I、V、M、S、及びT;より
好適には、A、G、L、I、V、及びS;より好適には、G及びSからなるリストから選択される
【0029】
好適には、前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのC
末端側に、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、
少なくとも4個、例えば、少なくとも5個の非シールディング残基を有し、該非シールディ
ング残基が:C、A、S、N、G、L、I、V、T、M、F、Y、H、W、及びQ;より好適には、A、G、L
、I、V、M、S、及びT;より好適には、A、G、L、I、V、及びS;より好適には、G及びSから
なるリストから選択される。好適には、前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR
残基の全てが、それらのC末端側に、1~5、1~4、1~3、1~2、2~5、2~4、2~3、3~5
、3~4、4~5個の非シールディング残基を有しており、該シールディング残基が:C、A、S
、N、G、L、I、V、T、M、F、Y、H、W、及びQ;より好適には、A、G、L、I、V、M、S、及び
T;より好適には、A、G、L、I、V、及びS;より好適には、G及びSからなるリストから選択
される。
【0030】
好適には、K及びR残基の全てが、それらに隣接する少なくとも1個の非シールディング
残基を有しており、好適には、1以上のさらなる連続する非シールディング残基がそれに
続く。好適には、該非シールディング残基は、前記K又はR残基のうちの1つ以上の片側又
は両側に存在する。
【0031】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、D及びE残基を含まない。好適には、前記不
安定ペプチドリンカーは、C、A、S、N、G、L、I、V、T、M、F、Y、H、K、R、W、及びQ;よ
り好適には、A、G、L、I、V、M、S、T、K、及びR残基;より好適には、S、G、K、及びR残
基からなるリストから選択される残基からなる。
【0032】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、以下の形式:
[-(GaS)x-B-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる。
【0033】
好適には、aは2~5であり、より好適には、aは4である。好適には、bは2~5であり、よ
り好適には、bは4である。好適には、xは1~5であり、より好適には、xは1である。好適
には、yは1~5であり、より好適には、yは1である。好適には、zは1~3であり、より好適
には、zは1である。好適には、BはKである。
【0034】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、以下の形式:
[-(G4S)x-B-(G4S)y-]z
(式中、
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる。
【0035】
好適には、xは1~5であり、より好適には、xは1である。好適には、yは1~5であり、よ
り好適には、yは1である。好適には、zは1~3であり、より好適には、zは1である。好適
には、BはKである。
【0036】
(キモトリプシン不安定部位)
(シールドされていないキモトリプシン不安定部位)
代替として、又はトリプシン不安定部位に加えて、本発明の構築体の不安定ペプチドリ
ンカーは、キモトリプシン又はキモトリプシン様プロテアーゼの切断部位を含む。好適に
は、前記不安定ペプチドリンカーは、W、F、Y、L、及びM;より好適にはW、F、及びYから
なるリストから選択される少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも
3個、例えば、少なくとも4個、例えば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個、例えば
、少なくとも7個、例えば、少なくとも8個、例えば、少なくとも9個、例えば、少なくと
も10個の残基を含む。好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、S、G、W、F、Y、L、及
びM;例えば、S、G、W、F、及びYからなるリストから選択される残基からなる。
【0037】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、以下の形式:
[-(GaS)x-J-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Jは、W、F、Y、L、又はM;例えば、W、F、又はYである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる。
【0038】
一実施態様において、aは2~5であり、さらなる実施態様において、bは2~5であり、さ
らなる実施態様において、xは1~5であり、さらなる実施態様において、yは1~5であり、
さらなる実施態様において、zは1~3である。好適には、xは1であり、yは1であり、かつz
は1である。
【0039】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、以下の形式:
[-(G4S)x-J-(G4S)y-]z
(式中、
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Jは、W、F、Y、L、又はM;例えば、W、F、又はYである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる。
【0040】
一実施態様において、xは1~5であり、さらなる実施態様において、yは1~5であり、さ
らなる実施態様において、zは1~3である。好適には、xは1であり、yは1であり、かつzは
1である。
【0041】
(MMP不安定部位)
一実施態様において、本発明の構築体の不安定ペプチドリンカーは、MMP3、MMP10、又
はMMP12の切断部位を含む。
【0042】
(不安定性)
構築体の不安定性、及び、従って、制御された不安定性又は高度に不安定な構築体とし
ての構築体の有用性は、実施例1~3において定義される糞便プロテアーゼアッセイ、トリ
プシンプロテアーゼアッセイ、及び/又はキモトリプシンプロテアーゼアッセイを用いて
アッセイすることができる。
【0043】
好適には、糞便プロテアーゼアッセイ、及び/又はトリプシンプロテアーゼアッセイ、
及び/又はキモトリプシンプロテアーゼアッセイにおける混合の後の少なくとも10分、例
えば、少なくとも20分、例えば、少なくとも30分、例えば、少なくとも40分、例えば、少
なくとも50分、例えば、少なくとも60分、例えば、少なくとも70分、例えば、少なくとも
80分、例えば、少なくとも90分、例えば、少なくとも100分、例えば、少なくとも110分、
例えば、少なくとも120分、例えば、少なくとも130分、例えば、少なくとも140分、例え
ば、少なくとも150分、例えば、少なくとも160分後に、前記構築体の少なくとも20%、例
えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも80%、例えば、少
なくとも90%、例えば、少なくとも100質量%が切断されないまま残る。
【0044】
あるいは、糞便プロテアーゼアッセイ、及び/又はトリプシンプロテアーゼアッセイ、
及び/又はキモトリプシンプロテアーゼアッセイにおける混合の後の、5分以内、例えば、
4分以内、例えば、3分以内、例えば、2分以内、例えば、1分以内に、前記構築体の少なく
とも60%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも100
%が切断される。
【0045】
本発明の一態様において、本発明の構築体の不安定性をアッセイする方法であって:(a)
トリプシンを含む溶液、キモトリプシンを含む溶液、糞便上清、小腸液、又はエンテロペ
プチダーゼを含む溶液中で該構築体を(例えば、トリプシンプロテアーゼアッセイ、キモ
トリプシンプロテアーゼアッセイ、又は糞便プロテアーゼアッセイを行うことによって)
インキュベートする工程、その後、(b)インキュベーションの1以上の期間の後に、切断さ
れた構築体の比率を確認する工程を含む、前記方法が提供される。
【0046】
本発明のさらなる態様において、単量体抗体又はその単量体抗原結合性断片を、腸管の
標的領域へ送達する方法であって、(a)上述の構築体不安定性をアッセイする方法を行う
工程、(b)腸管の該標的領域に対する適切なレベルの不安定性を有する構築体を選択する
工程、(c)腸溶性コーティングされたパッケージングを伴う該選択された構築体を製造す
る工程、その後、(d)該パッケージングされた選択された構築体を対象に投与する工程を
含む、前記方法が提供される。
【0047】
本発明のさらなる態様において、選択された本発明の構築体を含む製品を調製する方法
であって、該選択された構築体を該製品中に添加することを含み、該選択された構築体が
:(a)上述の構築体不安定性をアッセイする方法を行う工程、その後、(b)腸管の該標的領
域に対する適切なレベルの不安定性を有する構築体を選択する工程を含む方法によって選
択されかつ製造される、前記方法が提供される。
【0048】
(安定性)
種々の生物を用いて、組換えポリペプチドを発現させ得る。よく使用される発現生物と
しては、酵母、カビ、及び哺乳動物細胞が挙げられる。しかしながら、これらの発現生物
の多くも、発現された組換えポリペプチドを切断し得るプロテアーゼ、例えば、トリプシ
ン様プロテアーゼを産生する。発現されたポリペプチドが、腸管に存在する1以上のプロ
テアーゼに対して不安定であるペプチドリンカーを組み込んでいる場合、望ましくないこ
とに、該ペプチドリンカーは、発現生物によって産生されるプロテアーゼに対して不安定
でもある可能性があり、従って、インタクトなポリペプチドの効果的な発現を妨げる。
【0049】
前記不安定ペプチドリンカーが、前記構築体の製造に用いられる組換え宿主によって産
生される酵素に対して実質的に不安定ではないことが有利である。好適には、前記不安定
ペプチドリンカーは、組換え宿主、例えば、細菌、例えば、大腸菌(E. coli)、又は、例
えば、アスペルギルス属、サッカロマイセス属、クリベロマイセス属、ハンゼヌラ属、又
はピキア属に属する酵母もしくはカビ;例えば、出芽酵母もしくはピキア・パストリスに
よって産生されるプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である。好適には、前記組換え宿
主は、酵母である。好適には、前記組換え宿主は、カビである。好適には、前記酵母は、
サッカロマイセス属、クリベロマイセス属、ハンゼヌラ属、又はピキア属に属する。酵母
のさらなる例は、カンジダ(Candida)属及びトルロプシス(Torulopsis)属に属するもので
ある。好適には、前記カビは、アスペルギルス属に属する。カビのさらなる例は、アクレ
モニウム(Acremonium)属、アルテルナリア(Alternaria)属、クリソスポリウム(Chrysospo
rium)属、クラドスポリウム(Cladosporium)属、タマホコリカビ(Dictyostelium)属、フザ
リウム(Fusarium)属、ケカビ(Mucor)属、アオカビ(Penicillium)属、クモノスカビ(Rhizo
pus)属、スタキボトリス(Stachybotrys)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、及び白癬菌(
Trichophyton)属に属するものである。好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、4℃で
の少なくとも2日間、例えば、少なくとも4日間、例えば、少なくとも9日間、例えば、少
なくとも14日間、例えば、少なくとも60日間の保管に関して、組換え宿主によって産生さ
れるプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である。
【0050】
(経口投与のための酵母産生構築体)
本発明の一態様において、第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び第2の免疫グロブリ
ン鎖可変ドメインを用いる経口投与による腸管の疾患の治療における使用のための構築体
であって、該構築体は、不安定ペプチドリンカーによって接続された該第1の免疫グロブ
リン鎖可変ドメイン及び該第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含み:
(i)該不安定ペプチドリンカーが、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定で
あり、
(ii)該不安定ペプチドリンカーが、酵母プロテアーゼに対して安定であり、かつ
(iii)該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、該1以上のプロテアーゼに対して
実質的に抵抗性であり、かつ
該構築体が酵母内で産生される、前記構築体が提供される。
【0051】
本発明のさらなる態様において、構築体由来の第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及
び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを用いて経口投与により腸管の疾患を治療する方
法であって、該構築体が、不安定ペプチドリンカーによって接続された該第1の免疫グロ
ブリン鎖可変ドメイン及び該第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含み:
(i)該不安定ペプチドリンカーが、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定で
あり、
(ii)該不安定ペプチドリンカーが、酵母プロテアーゼに対して安定であり、かつ
(iii)該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、該1以上のプロテアーゼに対して
実質的に抵抗性であり;
該構築体が、酵母内で産生される、前記方法が提供される。
【0052】
本発明のさらなる態様において、第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び第2の免疫グ
ロブリン鎖可変ドメインを、腸管へ送達する方法であって、不安定ペプチドリンカーによ
って接続された該第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び該第2の免疫グロブリン鎖可変
ドメインを含む構築体を酵母内で産生させ、その後経口投与することを含み:
(i)該不安定ペプチドリンカーが、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定で
あり、
(ii)該不安定ペプチドリンカーが、酵母プロテアーゼに対して安定であり、かつ
(iii)該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、該1以上のプロテアーゼに対して
実質的に抵抗性である、前記方法が提供される。
【0053】
本発明のさらなる態様において、不安定ペプチドリンカーによって接続された第1の免
疫グロブリン鎖可変ドメイン及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む構築体を作
製する方法であって:
(i)該不安定ペプチドリンカーが、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定で
あり、
(ii)該不安定ペプチドリンカーが、酵母プロテアーゼに対して安定であり、かつ
(iii)該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、該1以上のプロテアーゼに対して
実質的に抵抗性であり;
酵母内で該構築体を産生させる工程を含む、前記方法が提供される。
【0054】
好適には、前記酵母内で該構築体を産生させる工程は、ベクターで形質転換された場合
に、本発明の構築体を発現する能力がある宿主酵母細胞を提供することによって行われ、
ここで、該ベクターは、本発明の構築体をコードするポリヌクレオチドを含み、かつ該宿
主酵母細胞は、本発明の構築体の発現に適した条件に曝される。
【0055】
好適には、前記第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び前記第2の免疫グロブリン鎖可
変ドメインは、酵母プロテアーゼに対して実質的に抵抗性である。
【0056】
好適には、上記で概要を説明した方法は、前記構築体を精製する工程をさらに含む。好
適には、前記不安定ペプチドリンカーは、腸管において、腸管に存在する1以上のプロテ
アーゼによって切断される。本発明のさらなる態様において、上記の方法のいずれかによ
って得られる構築体が提供される。
【0057】
上述の使用のための構築体及び方法は、酵母における構築体の製造に関する。しかしな
がら、これらの使用のための構築体及び方法は、ペプチドリンカーを切断し得るプロテア
ーゼを産生する任意の発現生物、例えば、哺乳動物細胞又はカビ(例えば、アクレモニウ
ム属、アルテルナリア属、アスペルギルス属、クリソスポリウム属、クラドスポリウム属
、タマホコリカビ属、フザリウム属、ケカビ属、アオカビ属、クモノスカビ属、スタキボ
トリス属、トリコデルマ属、及び白癬菌属のうちの任意の1つ以上のカビ)における構築体
の製造にも同様に適用可能である。
【0058】
本発明のこれらの実施態様の特定の特性を、以下でさらに述べる。
【0059】
(1.腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定である不安定ペプチドリンカー)
後述の実施例5及び6は、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定である不
安定ペプチドリンカーを含む本発明の特定の構築体についての詳細を提供する。好適には
、前記不安定ペプチドリンカーは、前記構築体の50質量%超、例えば、60質量%超、例え
ば、70質量%超、例えば、80質量%超、例えば、85質量%超、例えば、90質量%超が、ト
リプシンプロテアーゼアッセイにおける混合の後の160分後、より好適には105分後、より
好適には60分後、より好適には25分後、より好適には10分後に、第1及び第2の免疫グロブ
リン鎖可変ドメインへと切断されるように、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対し
て不安定である。
【0060】
(2.酵母プロテアーゼに対して安定である不安定ペプチドリンカー)
後述の実施例7は、酵母プロテアーゼに対して安定である不安定ペプチドリンカーを含
む本発明の特定の構築体の詳細を提供する。後述の実施例9は、酵母プロテアーゼに対し
て安定ではない特定の構築体(ID4A)の詳細を提供する。
【0061】
リンカーの酵母プロテアーゼに対する安定性は、以下に概要を示す酵母発現プロトコー
ルを用いて評価し得る。
【0062】
酵母発現プロトコール:
以下のプロトコールは、適当な増殖培地中での誘導がポリペプチドの発現及びその細胞
外上清への分泌をもたらすような、ポリペプチド(例えば、ICVDを含む構築体又は単量体I
CVD)の、出芽酵母の染色体へのクローニングのための方法の概要を示す。
【0063】
以下の説明の出芽酵母(S. cerevisiae)株が、本プロセスのために使用される:ポリペプ
チドの発現及び生産のために使用される産生株は、EUROSCARF(機能解析のための欧州出芽
酵母アーカイブ(EUROpean Saccharomyces Cerevisiae ARchive for Functional analysis
))コレクションからのCEN.PKシリーズの派生株である。該CEN.PK株の遺伝子型は:MATa/MA
Tα ura3-52/ura3-52; trp1-289/trp1-289; leu2-3,112/leu2-3,112; his3Δ 1/his3Δ 1
; MAL2-8C/MAL2-8C; SUC2/SUC2である。その後、該株をさらに修飾して、ガラクトキナー
ゼ遺伝子(gal1::URA3)の欠失によってガラクトースで増殖する能力を抑制する。これが、
前記ポリペプチド発現構築体による形質転換のために使用される最終的な株である。
【0064】
ポリペプチド(例えば、ICVDを含む構築体又は単量体ICVD)がタンパク質リンカーによっ
て連結された単量体又は多量体DNA構築体が、適当なマルチコピー染色体の組込み型ベク
ター(Lopesらの文献1991. Gene. 105, 83-90)にクローニングされ、組込み型カセットを
生じる。該組込み型カセットは、誘導性プロモーター(例えば、pGal7, Nogi & Fukasawa
の文献(1983). Nucleic Acids Res. 11(24):8555-68)、ポリペプチドコード化領域、該ポ
リペプチドコード領域における第1のアミノ酸の直ぐ上流で融合された、酵母における細
胞外上清への分泌をコードするシグナル配列(Hashimotoらの文献1998. Protein Engineer
ing.11 (75-77))、栄養要求性選択マーカー、及び染色体への組換えに寄与するDNA配列を
含み得る。前記組込み型カセットをコードする直鎖状DNAでのコンピテントな酵母細胞の
形質転換、及びそれに続く適当な栄養要求性培地(例えば、ロイシン生合成遺伝子が選択
マーカーである場合のロイシンの除外)での選択は、前記発現構築体の100~200個のコピ
ーが該細胞中に存在し得るような、rDNA遺伝子座での組込み及び増幅をもたらす。選択圧
の除去後、前記発現構築体は、染色体に安定に組み込まれたままである。あるいは、ポリ
ペプチド製造は、類似の発現カセットを用いて、染色体への組込みを必要とすることなく
酵母2μMプラスミドに基づいてマルチコピーエピソームのベクターから達成してもよい。
【0065】
ポリペプチド発現を誘導するために、結果として生じた酵母株のコロニーを、2%グル
コースを追加した5mLの酵母ソイトンブロスに接種し、30℃(150~200rpm)で1晩増殖させ
る。翌日、500mL三角フラスコ中の、2%グルコース及び0.5%ガラクトース(誘導のため)
を含有する50mLの酵母ソイトンブロスに、1晩培養液の5mL全部を接種する。得られた誘導
培養液を、30℃、200rpmで、3日間インキュベートする。その後、培養液を、スイングロ
ーター遠心機中で、4200rpmで20分間スピンダウンして、酵母細胞を取り除く。その後、
上清を、0.45μm及び0.2μmのフィルターで連続して濾過する。
【0066】
前記酵母発現プロトコールを実施した後に、前記ポリペプチドは、その後、任意に、無
菌条件下、酵母上清中、4℃での保存期間を経てもよい。
好適には、本発明の構築体は、前記構築体を前記酵母発現プロトコールを用いて製造し
(すなわち、その後の保存期間無し)、その後、任意に、2日間、より好適には4日間、又は
より好適には9日間保存した後に、前記構築体の10%以下、より好適には5%以下、より好
適には1質量%以下が、第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインへと切断されるよう
に、酵母プロテアーゼに対して安定である。本明細書で使用される「0日間の保管」は、
その後の保存期間が無いことを指す。
【0067】
酵母産生ポリペプチドは、酵母産生ポリペプチドが翻訳後修飾、例えば、グリコシル化
を含み得るという点で、代替の発現生物、例えば、細菌を用いて製造されたものと異なり
得る。
【0068】
(3.腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である第1及び第2の免疫
グロブリン鎖可変ドメイン)
後述の実施例5及び6は、第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む本発明の特
定の構築体であって、該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、腸管に存在する
1以上のプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である、前記構築体の詳細を提供する。
【0069】
好適には、前記第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び前記第2の免疫グロブリン鎖可
変ドメインは、トリプシンプロテアーゼアッセイにおける混合の後の、10分後、より好適
には25分後、より好適には60分後、より好適には105分後、より好適には160分後に、該第
1の免疫グロブリン鎖可変ドメインの少なくとも70質量%、例えば、少なくとも80質量%
、例えば、少なくとも90質量%、例えば、少なくとも95質量%、例えば、少なくとも99質
量%、例えば、約100質量%、及び該第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインの少なくとも70
質量%、例えば、少なくとも80質量%、例えば、少なくとも90質量%、例えば、少なくと
も95質量%、例えば、少なくとも99質量%、例えば、約100質量%が、切断されないまま
残るように、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である。
【0070】
(4.酵母プロテアーゼに対して実質的に抵抗性である第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変
ドメイン)
以下の実施例7は、免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む本発明の特定の構築体であっ
て、該免疫グロブリン鎖可変ドメインが酵母プロテアーゼに対して安定である、前記構築
体の詳細を提供する。
【0071】
好適には、前記第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び前記第2の免疫グロブリン鎖可
変ドメインは、前記第1又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを酵母発現プロトコール
を用いて産生させ、その後、任意に2日間、より好適には4日、又はより好適には9日間保
存した後に、該第1又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインの10質量%以下、より好適に
は5質量%以下、より好適には1質量%以下が切断されるように、酵母プロテアーゼに対し
て実質的に抵抗性である。
【0072】
(上記の点1~4における安定性及び不安定性の評価)
好適には、前記構築体の切断された質量、及び/又は前記第1及び第2の免疫グロブリン
鎖可変ドメインの切断されていない質量、及び/又は前記第1及び第2の免疫グロブリン鎖
可変ドメインの切断された質量が、ゲル電気泳動とそれに続くゲルの目視での精査によっ
て評価される。より好適には、評価は、定量的ゲル電気泳動によるものである。あるいは
、評価は、ゲル電気泳動及びそれに続く質量分析によるものである。
【0073】
切断された構築体及び切断されていない免疫グロブリン鎖可変ドメインに対応するゲル
上のバンドを、分子量マーカーと比較することによって、構築体のおおよそ半分の質量(
すなわち、一方の構成免疫グロブリン鎖可変ドメインの質量)を有するバンドとして同定
し得る。切断された免疫グロブリン鎖可変ドメインに対応するゲル上のバンドは、分子量
マーカーバンドとの比較によって、構成免疫グロブリン鎖可変ドメイン全体の分子量未満
の分子量を有することで同定可能である。
【0074】
一実施態様において、本発明の構築体の不安定ペプチドリンカーは、WO2009/021754に
開示されているポリペプチドを含まない。より詳細には、一実施態様において、本発明の
構築体の不安定ペプチドリンカーは、配列
【化1】
を含まない。
【0075】
(免疫グロブリン鎖可変ドメイン(ICVD)、例えば、VH及びVHHを含むポリペプチド、抗原結
合性ポリペプチド、抗体、及び抗体断片)
ポリペプチドは、1本の鎖において一緒に結合したいくつかのアミノ酸残基からなる有
機ポリマーである。本明細書で使用される「ポリペプチド」は、「タンパク質」及び「ペ
プチド」と互換的に使用される。ポリペプチドは、それらが、ある親和性(好適には、本
明細書でさらに記載されるようにKd値、Ka値、kon速度、及び/又はkoff速度として表され
る)をもって標的抗原上のエピトープに結合する能力がある抗原結合性部位を形成するア
ミノ酸残基の1以上の区間を含有する場合に、抗原結合性であると言われる。抗原結合性
ポリペプチドとしては、ポリペプチド、例えば、抗体、抗体断片、及び抗原結合性断片が
挙げられる。ポリペプチドは、高親和性(好適には、本明細書でさらに記載されるようにK
d値、Ka値、kon速度、及び/又はkoff速度として表される)で標的に結合する能力がある領
域を含み得る。そのようなポリペプチドとしては、DARPins(Binzらの文献Journal of Mol
ecular Biology 332(2):489-503)、Affimers(商標)、Fynomers(商標)、Centyrins、Nanof
itins(登録商標)、及び環状ペプチドが挙げられる。
【0076】
従来の抗体又は免疫グロブリン(Ig)は、4本のポリペプチド鎖:2本の重(H)鎖及び2本の
軽(L)鎖を含むタンパク質である。各々の鎖は、定常領域及び可変ドメインに分けられる
。重鎖可変ドメインは、本明細書において、VHCと略記され、軽(L)鎖可変ドメインは、本
明細書において、VLCと略記される。これらのドメイン、これらに関連するドメイン、及
びこれらから誘導されるドメインは、本明細書において、免疫グロブリン鎖可変ドメイン
と称される。VHC及びVLCドメインを、「相補性決定領域」(「CDR」)と名付けられた超可
変性の領域にさらに細分することができ、これらには、「フレームワーク領域」(「FR」)
と名付けられたより保存された領域が散在する。フレームワーク領域及び相補性決定領域
が、厳密に定義されている(その全体が引用により本明細書に組み込まれているKabatらの
文献1991「免疫学的対象となるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunologi
cal Interest)第5版)」、米国保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Servi
ces)、NIH文書番号(Publication Number)91-3242)。従来の抗体においては、VHC及びVLC
の各々は、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、
CDR3、FR4で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される。2本の免疫グロブリン重鎖
及び2本の免疫グロブリン軽鎖の従来の抗体四量体は、該免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が
、例えば、ジスルフィド結合によって相互接続され、かつ該重鎖が同様に接続されて形成
される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。軽鎖定常領域は、
1つのドメインCLから構成される。重鎖の可変ドメイン及び軽鎖の可変ドメインは、抗原
と相互作用する結合性ドメインである。抗体の定常領域は、通常、免疫系の種々の細胞(
例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む宿主の組織又は因
子への抗体の結合を媒介する。抗体という用語は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgMタイプ(並び
にそれらのサブタイプ)の免疫グロブリンを含み、ここで、該免疫グロブリンの軽鎖は、
カッパ又はラムダ型であり得る。2つの同一の重(H)鎖ポリペプチド及び2つの同一の軽(L)
鎖ポリペプチドから組み立てられる免疫グロブリン-ガンマ(IgG)抗体の全体構造は、よく
確立されており、哺乳動物において高度に保存されている(Padlanの文献1994 Mol Immuno
l 31:169-217)。
【0077】
従来の抗体構造の例外が、ラクダ科動物の血清中にみられる。従来の抗体に加えて、こ
れらの血清は、特別なIgG抗体を有する。これらのIgG抗体は、重鎖抗体(HCAb)として知ら
れ、L鎖ポリペプチドを欠き、第1定常ドメイン(CH1)を欠く。そのN-末端領域では、ホモ
二量体タンパク質のH鎖は、その同族抗原と会合するのに役立ち、VHHと呼ばれる専用の免
疫グロブリン鎖可変ドメインを含む(それらの全体が本明細書に引用により組み込まれる
、Muyldermansの文献2013 Annu Rev Biochem 82:775-797、Hamers-Castermanらの文献199
3 Nature 363(6428):446-448、Muyldermansらの文献1994 Protein Eng 7(9):1129-1135)
【0078】
本明細書で使用される抗原結合性断片(又は「抗体断片」もしくは「免疫グロブリン断
片」)は、標的に特異的に結合する抗体の一部(例えば、分子中の1以上の免疫グロブリン
鎖が完全長ではないが、標的に特異的に結合する前記分子)を指す。抗原結合性断片とい
う用語に包含される結合性断片の例としては:
(i)Fab断片(VLC、VHC、CL、及びCH1ドメインからなる一価の断片);
(ii)F(ab')2断片(ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片
を含む二価の断片);
(iii)Fd断片(VHC及びCH1ドメインからなる);
(iv)Fv断片(抗体の単一のアームのVLC及びVHCドメインからなる);
(v)scFv断片(VLC及びVHCドメインであって、それらを、VLC及びVHC領域が対を成し一価の
分子を形成している単一のタンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーに
よって、組換え法を用いて連結された、前記VLC及びVHCドメインからなる);
(vi)VH(VHCドメインからなる免疫グロブリン鎖可変ドメイン(Wardらの文献Nature 1989 3
41:544-546);
(vii)VL(VLCドメインからなる免疫グロブリン鎖可変ドメイン);
(viii)V-NAR(軟骨魚綱IgNAR由来のVHCドメインからなる免疫グロブリン鎖可変ドメイン(
その全体が本明細書に引用により組み込まれるRouxらの文献1998 Proc Natl Acad Sci US
A 95:11804-11809及びGriffithsらの文献2013 Antibodies 2:66-81))
(ix)VHH
が挙げられる。
【0079】
VHH又はVHにおけるアミノ酸残基の総数は、110~130の範囲としてもよく、好適には、1
12~120であり、最も好適には、115である。
【0080】
ポリペプチド及び不安定ペプチドリンカーを含む本発明の構築体は、例えば、(本明細
書において更に詳細に記載されるように)核酸合成のための技術を用いて2つ以上のポリペ
プチド及び不安定ペプチドリンカーをコードする核酸を調製し、それに続き、そのように
して得られた核酸を発現させることによって得られる。特定の実施態様によれば、本発明
による構築体は、天然に存在するポリペプチドのアミノ酸配列と全く同じ(すなわち、そ
れと100%の配列同一性を共有する)アミノ酸配列を有しない。
【0081】
好適には、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチドは、抗原結合性ポリペプ
チドであり、より好適には、前記第1及び/又は第2の抗原結合性ポリペプチドは、免疫グ
ロブリン鎖可変ドメイン、抗体、又はその抗原結合性断片である。より好適には、前記抗
原結合性断片は:VL、V-NAR、scFv、Fab断片、F(ab')2断片、又は免疫グロブリン鎖可変ド
メイン、例えば、VHH及びVHからなる群から選択される。
【0082】
(特異性、親和性、及びアビディティー)
特異性とは、特定の抗原結合性ポリペプチドが結合することができる異なる種類の抗原
又は抗原決定基の数を指す。抗原結合性ポリペプチドの特異性は、該抗原結合性ポリペプ
チドが特定の抗原をユニークな分子実体として認識し、それを別のものと区別する能力で
ある。
【0083】
抗原の抗原結合性ポリペプチドとの解離平衡定数(Kd)によって表される親和性は、抗原
決定基と抗原結合性ポリペプチド上の抗原結合性部位との間の結合強度の尺度である:Kd
の値が小さいほど、抗原決定基と該抗原結合性ポリペプチドとの間の結合強度は強い(あ
るいは、親和性を、1/Kdである親和性定数(Ka)としても表すことができる)。親和性は、
対象となる特異的抗原次第で決まる公知の方法によって決定することができる。
【0084】
アビディティーは、抗原結合性ポリペプチドと関連抗原との間の結合の強度の尺度であ
る。アビディティーは、抗原決定基とその抗原結合性ポリペプチド上の抗原結合性部位と
の間の親和性及び該抗原結合性ポリペプチド上に存在する関連結合部位の数の双方に関係
する。
【0085】
好適には、抗原結合性ポリペプチドは、10-6~10-12M、より好適には10-7~10-12M、よ
り好適には10-8~10-12M、及びより好適には10-9~10-12Mの解離定数(Kd)で結合する。
【0086】
10-6未満の任意のKd値を、結合を示すものとみなす。抗原結合性ポリペプチドの抗原又
は抗原決定基への特異的結合は、例えば、スキャッチャード分析及び/又は競合的結合ア
ッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、エンザイムイムノアッセイ(EIA)、及びサ
ンドイッチ競争アッセイ、並びに当技術分野において公知のこれらの様々な変法を含む任
意の適当な公知の様式で決定することができる。
【0087】
(ポリペプチド及びポリヌクレオチド配列)
本発明の構築体、該構築体内に含まれる不安定ペプチドリンカー並びに第1及び第2のポ
リペプチドは全て、アミノ酸残基を含む。好適には、前記第1及び第2のポリペプチドはそ
れぞれ、配列番号:18及び配列番号:19からなる群から選択される配列を含むか、又はより
好適にはそれからなる。
【0088】
好適には、前記構築体は、配列番号:7~17からなる群から選択される配列を含むか、又
はより好適にはそれからなる。好適には、前記構築体は、配列番号:8~11及び13~16から
なる群から選択される配列を含むか、又はより好適にはそれからなる。
【0089】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、配列番号:1~6からなる群から選択される
配列を含むか、又はより好適にはそれからなる。好適には、前記不安定ペプチドリンカー
は、配列番号:2~5からなる群から選択される配列を含むか、又はより好適にはそれから
なる。
【0090】
前記構築体の前記不安定ペプチドリンカー以外の領域におけるアミノ酸残基を、類似の
化学構造であり、かつ前記ポリペプチドの機能、活性、又は他の生物学的性質に対しほと
んど影響を与えないと期待される別のアミノ酸残基と置き換えることができる。そのよう
な置換は、「保存的な」置換である。そのような保存的な置換は、好適には、以下の群の
1つのアミノ酸が、同じ群の別のアミノ酸残基によって置換されている置換である:
【0091】
【表1】
【0092】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーを除き、前記構築体は、1以上の保存的な置換
を含み得る。
【0093】
本発明の一態様において、前記本発明の構築体をコードする核酸が提供される。
【0094】
疑念を避けるために、1文字アミノ酸コードは、以下の通りである:
【0095】
G―グリシン(Gly)、P―プロリン(Pro)、A―アラニン(Ala)、V―バリン(Val)、L―ロイ
シン(Leu)、I―イソロイシン(Ile)、M―メチオニン(Met)、C―システイン(Cys)、F―フェ
ニルアラニン(Phe)、Y―チロシン(Tyr)、W―トリプトファン(Trp)、H―ヒスチジン(His)
、K―リジン(Lys)、R―アルギニン(Arg)、Q―グルタミン(Gln)、N―アスパラギン(Asn)、
E―グルタミン酸(Glu)、D―アスパラギン酸(Asp)、S―セリン(Ser)、T―トレオニン(Thr)
【0096】
(多量体)
本発明による構築体は、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む。従って、該
発明の構築体は、多量体のものであり、好適には多価のものであり得る。そのような構築
体は、同一である第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含み得る。2つの同一ポリ
ペプチドからなる構築体は、「ホモバイヘッド(homobihead)」である。本発明の一態様に
おいて、2つの同一ポリペプチドを含む構築体が提供される。あるいは、構築体は、互い
に異なる第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドからなっていてもよい(「ヘテロバイ
ヘッド(heterobihead)」)。
【0097】
構築体は、多価かつ/又は多重特異性とすることができる。多価構築体(例えば、二価構
築体)は、2つ以上の結合性ポリペプチドを含み、従って、好適には前記不安定ペプチドリ
ンカーの切断の前又は後に抗原への付着が起こり得る2つ以上の部位を提供する。多価構
築体の例は、ホモバイヘッド又はヘテロバイヘッドであり得る。多重特異性構築体、例え
ば、二重特異性構築体は、好適には、前記不安定ペプチドリンカーの切断の前又は後に、
(a)2つの異なる抗原への付着が起こり得るか、又は(b)同じ抗原上の2つの異なるエピトー
プへの付着が起こり得るかのいずれかの2つの部位を呈する2つの異なる結合性ポリペプチ
ドを含む。多重特異性構築体の例は、ヘテロバイヘッドであり得る。多重特異性構築体は
、多価のものである。
【0098】
本発明の構築体は、(ペプチドリンカーによって前記第1のポリペプチドに接続された)
追加の第3のポリペプチドを含み得るとともに、(ペプチドリンカーによって前記第2のポ
リペプチドに接続された)追加の第4のポリペプチドも含み得るか、又はそれからなり得る
。ここで、該第3及び第4のポリペプチドは、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対し
て実質的に抵抗性であり、かつ本明細書において前記第1及び第2のポリペプチドに関して
定義したとおりである。4つのポリペプチドからなる本発明の構築体は、『クアドラヘッ
ド』として知られている。好適には、前記ペプチドリンカーは、腸管に存在する1以上の
プロテアーゼに対して実質的に抵抗性であるか、又は前記ペプチドリンカーは、本明細書
において定義されるような不安定ペプチドリンカーである。
【0099】
好適には、前記第1、第2、第3、及び/又は第4のポリペプチドは、300kDa以下、例えば
、250kDa以下、例えば、200kDa以下、例えば、180kDa以下、例えば、160kDa以下、例えば
、140kDa以下、例えば、120kDa以下、例えば、100kDa以下、例えば、80kDa以下、例えば
、60kDa以下の分子量を有する。
【0100】
(胃腸管及び消化酵素)
胃腸管(GIT)は、食糧の消費及び消化、栄養素の吸収、及び廃棄物の排出を担う器官系
である。ヒト及び他の哺乳動物において、GITは、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、及び
回腸)、並びに大腸(盲腸、結腸、直腸、及び肛門管)からなる。GITの異なるエリアにおい
て、種々の病原体がコロニー形成する可能性があり、種々の疾患が顕在化する可能性があ
る。腸管は(胃腸管とは対照的に)、小腸及び大腸からなる。
【0101】
胃腸管の様々な部分はそれぞれ、複雑な消化酵素の混合物を含有する。これらの消化酵
素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、及びヌクレアーゼが挙げられる。プ
ロテアーゼとしては、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテ
アーゼ、アスパルテートプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、及びメタロプロテア
ーゼが挙げられる。プロテアーゼは、アミノ酸残基を連結しているペプチド結合を分裂さ
せることによるポリペプチド鎖のより短い断片への消化(タンパク質分解)に関与する。あ
るものは末端アミノ酸をタンパク質鎖から取り外し(エキソペプチダーゼ)、別のものはタ
ンパク質の内部ペプチド結合を攻撃する(エンドペプチダーゼ)。
【0102】
タンパク質分解は、高度に無差別的であり、その結果広範なタンパク質基質が加水分解
される。これは、腸管の多様な摂取されたポリペプチドをより小さいポリペプチド断片へ
と切断するプロテアーゼの場合にあてはまる。
【0103】
多くのプロテアーゼが、通常、基質上の単一のアミノ酸(不安定部位)に結合し、従って
、該残基への特異性を有するのみである。腸管に存在するプロテアーゼとしては、トリプ
シン、トリプシン様プロテアーゼ、キモトリプシン、キモトリプシン様プロテアーゼ、カ
ルボキシペプチダーゼ、エラスターゼ、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、
及びエンテロペプチダーゼが挙げられる。トリプシン様プロテアーゼは、リジン又はアル
ギニン残基に続くペプチド結合を切断する。キモトリプシン様プロテアーゼは、疎水性残
基、例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ロイシン、及びメチオニン
に続くペプチド結合を切断する。特に、チロシン、フェニルアラニン、及びトリプトファ
ンである。
【0104】
好適には、前記不安定ペプチドリンカーは、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対
して不安定であり、かつ前記第1及び第2のポリペプチドは、該1以上のプロテアーゼに対
して実質的に抵抗性であり、該1以上のプロテアーゼは、小腸又は大腸内、より好適には
、空腸、回腸、及び/又は盲腸内に存在する。好適には、前記1以上のプロテアーゼは、セ
リンプロテアーゼである。好適には、前記1以上のプロテアーゼは、エンテロペプチダー
ゼ、トリプシン、トリプシン様プロテアーゼ、キモトリプシン、及びキモトリプシン様プ
ロテアーゼからなる群から選択される。
【0105】
好適には、本発明の構築体の第1及び第2のポリペプチドは、腸管に存在する全てのプロ
テアーゼに対して実質的に抵抗性である。そのようなプロテアーゼとしては、胃腸管共生
ミクロフローラ又は病原性細菌から供給されるプロテアーゼが挙げられ、例えば、ここで
、該プロテアーゼは、細胞膜結合型プロテアーゼ、分泌型プロテアーゼ、及び細胞溶解で
放出されたプロテアーゼである。好適には、前記腸管は、哺乳動物の腸管、例えば、ヒト
、サル、マウス、ウシ、ヒツジ、又はブタの腸管である。
【0106】
(GITの疾患)
GITの疾患とは、胃腸管、すなわち、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、及び回腸)、並
びに大腸(盲腸、結腸、直腸、及び肛門管)に関連する疾患を指す。本発明の構築体を、そ
のような疾患の治療又は予防において用いてもよい。例示的なGITの疾患を、以下に記載
する。
【0107】
(GITの自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患)
自己免疫疾患は、免疫系が、正常な身体組織に有害に反応した場合に発生する。自己免
疫障害は、身体組織への損傷、異常な器官成長、及び/又は器官機能の変化をもたらし得
る。該障害は、器官又は組織の1種のみに影響を及ぼすこともあり、複数の器官及び組織
に影響を及ぼすこともある。自己免疫障害によってよく影響を受ける器官及び組織として
は、血液成分、例えば、赤血球、血管、結合組織、内分泌腺、例えば、甲状腺又は膵臓、
筋肉、関節、及び皮膚が挙げられる。炎症性疾患は、炎症を特徴とする疾患である。多く
の炎症性疾患が、自己免疫疾患であり、逆もまた同様である。
【0108】
小児及び成人の双方を苦しめる慢性炎症性腸疾患(IBD)クローン病及び潰瘍性大腸炎は
、GITの自己免疫性及び炎症性疾患の例である(その全体が引用により本明細書に組み込ま
れているHendricksonらの文献2002 Clin Microbiol Rev 15(1):79-94)。潰瘍性大腸炎は
、炎症反応及び形態変化が、結腸に限局されたままである状態と定義される。患者の95%
で、直腸が関係している。炎症は、粘膜にほとんど限定されており、かつ結腸の長さに沿
った、変化する重症度での潰瘍、浮腫、及び出血の連続的な病変からなる(その全体が引
用により本明細書に組み込まれているHendricksonらの文献2002 Clin. Microbiol Rev 15
(1):79-94)。潰瘍性大腸炎は、通常、腸管運動の通過の間で最も重篤なものである下腹部
のけいれんと共に、大便と混合した血液及び粘液の存在によって顕在化する。臨床的には
、潰瘍性大腸炎は、血液及び粘液を伴う下痢の存在によって、血液が存在しない過敏性腸
症候群から区別される。潰瘍性大腸炎とは異なり、クローン病の症状は、通常、微妙なも
のであり、これが診断の遅れに繋がる。部位、程度、及び病変の重症度などの因子が、胃
腸症状の程度を決定する。回腸結腸の病変を有する患者は、通常、右下腹部における圧痛
及び時折みられる炎症性腫瘤を伴う食後の腹痛を有する。
【0109】
好適には、本発明の医薬組成物又は構築体は、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症
候群、II型糖尿病、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、シェーグレン症候群、セリアック病、
及び薬物又は放射線誘発性粘膜炎からなるリストから選択されるGITの自己免疫性及び/又
は炎症性疾患(最も好適には、クローン病)の治療における使用のためのものである。
【0110】
(GITの感染症)
ウイルス性、細菌性、寄生生物性、及び他の病原性感染症が、GITで生じ得る。これら
は、GITに限局することもあり、GITで始まりその後身体の他の部分に広がることもある。
本発明の構築体は、大腸菌、サルモネラ(Salmonella)、カンピロバクター(Campylobacter
)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、シゲラ(Shigella)、ウェルシュ菌(Clostridium perfrin
gens)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、バチルス・セレウス
(Bacillus cereus)、腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)、エルシニア・エンロコ
リチカ(Yersinia enerocolitica)を含む一般的な細菌性GIT病原体による感染症を含む細
菌感染症の治療又は予防のために用い得る。本発明の構築体は、ロタウイルス、ノロウイ
ルス、及び小型球形ウイルスを含む一般的なウイルス性のGIT病原体を含むウイルス感染
症の治療又は予防のために用い得る。好適には、本発明の構築体は、院内感染症の治療又
は予防における使用のためのものである。好適には、本発明の構築体は、C.ディフィシル
感染症の治療又は予防における使用のためのものである。
【0111】
好適には、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチドは、腸管経由で到達可能
な標的、例えば、腸管内の標的に結合する。好適には、前記標的は、腸管常在性病原性微
生物由来の有害薬剤である。好適には、前記標的は:インターロイキン(例えば、IL-1、IL
-1ra、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-
17、IL-18、及びIL-23)、インターロイキン受容体(例えば、IL-6R及びIL-7R)、転写因子(
例えば、NF-kB)、サイトカイン(例えば、TNF-アルファ、IFN-ガンマ、TGF-ベータ、及びT
SLP)、膜貫通型タンパク質(例えば、gp130及びCD3)、表面糖タンパク質(例えば、CD4、CD
20、CD40),可溶性タンパク質(例えば、CD40L)、インテグリン(例えば、a4b7及びアルファ
Eベータ7)、接着分子(例えば、MAdCAM)、ケモカイン(例えば、IP10及びCCL20)、ケモカイ
ン受容体(例えば、CCR2及びCCR9)、阻害タンパク質(SMAD7)、キナーゼ(例えば、JAK3)、G
蛋白質共役受容体(例えば、スフィンゴシン-1-P受容体)、及び毒素(例えば、C.ディフィ
シル毒素A及びC.ディフィシル毒素B)からなる群から選択され;より好適には、前記標的は
:TNF-アルファ、C.ディフィシル毒素A、C.ディフィシル毒素B、CD3、及びIL-6Rからなる
群から選択され;より好適には、TNF-アルファ又はC.ディフィシル毒素Aである。好適には
、前記第1及び第2のポリペプチドの標的は、同一又は異なるものである。
【0112】
一実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば、前記
第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、インターロイキン(例えば、IL-1
、IL-1ra、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15
、IL-17、IL-18、及びIL-23)に結合しない。
【0113】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、インターロイキン受容体(
例えば、IL-6R及びIL-7R)に結合しない。
【0114】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、転写因子(例えば、NF-kB)
に結合しない。
【0115】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、サイトカイン(例えば、TNF
-アルファ、IFN-ガンマ、TGF-ベータ、及びTSLP)に結合しない。
【0116】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、膜貫通型タンパク質(例え
ば、gp130及びCD3)に結合しない。
【0117】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、表面糖タンパク質(例えば
、CD4、CD20、及びCD40)に結合しない。
【0118】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、可溶性タンパク質(例えば
、CD40L)に結合しない。
【0119】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、インテグリン(例えば、a4b
7及びアルファEベータ7)に結合しない。
【0120】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、接着分子(例えば、MAdCAM)
に結合しない。
【0121】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、ケモカイン(例えば、IP10
及びCCL20)に結合しない。
【0122】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、ケモカイン受容体(例えば
、CCR2及びCCR9)に結合しない。
【0123】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、阻害タンパク質(SMAD7)に
結合しない。
【0124】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、キナーゼ(例えば、JAK3)に
結合しない。
【0125】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、G蛋白質共役受容体(例えば
、スフィンゴシン-1-P受容体)に結合しない。
【0126】
さらなる実施態様において、本発明の構築体の第1及び/又は第2のポリペプチド(例えば
、前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン)は、毒素(例えば、C.ディフィ
シル毒素A及びC.ディフィシル毒素B)に結合しない。
【0127】
(治療的使用及び送達)
好適には、本発明の構築体又は組成物は、薬物としての使用のためのものであり、好適
には、経口投与により投与され、好適には、GITの疾患(内部を参照されたい)の治療又は
予防における使用のためのものである。本発明の構築体又は組成物はまた、経口投与によ
る他の医学的状態、例えば、代謝障害、例えば、肥満症の治療又は予防においても用い得
る。一実施態様において、本発明の構築体又は組成物は、腸管における局所作用を有する
ことが意図される。一実施態様において、本発明の構築体又は組成物は、治療上効果的な
量での循環中への送達による疾患の治療又は予防における使用のためのものではない。
【0128】
本発明の一態様において、自己免疫疾患又はC.ディフィシル感染症を治療する方法であ
って、それを必要としている人に、治療的有効量の本発明の構築体又は組成物を投与する
ことを含む、前記方法が提供される。
【0129】
本発明の構築体の治療的有効量は、対象への1回又は複数回の投与量の投与の際に、対
象において、選択された標的の生物学的作用を有意な程度まで中和させるのに効果的な量
である。治療的有効量は、個体の疾患の状態、年齢、性別、及び体重、並びに前記構築体
の該個体において所望の反応を誘発する能力などの因子によって変化し得る。治療的有効
量はまた、治療上有益な作用が、構築体のいかなる有毒又は有害な作用をも上回る量でも
ある。本発明の構築体は、対象への経口投与に適した医薬組成物に組み込むことができる
。本発明の構築体は、医薬として許容し得る塩の形態とすることができる。
【0130】
本発明の一態様において、対象に本発明の構築体を投与することを含む、単量体抗体又
はその単量体抗原結合性断片で疾患を治療する方法が提供される。また、対象に本発明の
構築体を投与することを含む、2つ以上の単量体抗体又はそれらの単量体抗原結合性断片
で疾患を治療する方法も提供される。
【0131】
本発明の医薬組成物は、経口での送達用に製剤化される。本発明の医薬組成物は、様々
な形態とすることができる。形態としては、例えば、液体、半固体、及び固体剤形、例え
ば、液体の溶液、分散液、又は懸濁液、錠剤、丸剤、及び散剤が挙げられる。固体剤形が
好ましい。該医薬組成物は、医薬として許容し得る賦形剤を含み得、好適には、摂取可能
な錠剤(ingestible tablet)、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸
濁剤、シロップ剤、オブラート剤(wafer)などの形態で用いてもよい。
【0132】
典型的には、前記医薬組成物は、本発明の構築体及び医薬として許容し得る賦形剤、例
えば、担体を含む。医薬として許容し得る担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩
衝生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、及びエタノールなど、並びにそれらの組合せの
うちの1つ以上が挙げられる。医薬として許容し得る担体は、本発明のポリペプチド又は
構築体の有効期間又は有効性を強化する少量の補助物質、例えば、湿潤もしくは乳化剤、
防腐剤、又は緩衝剤をさらに含んでいてもよい。医薬組成物は、付着防止剤(antiadheren
t)、結合剤、コーティング、崩壊剤、香料、着色料、滑沢剤、吸着剤、防腐剤、甘味料、
凍結乾燥賦形剤(凍結乾燥保護剤を含む)、又は圧縮助剤(compression aid)を含み得る。
好適には、本発明の構築体は、医薬組成物に組み込まれる前に凍結乾燥される。
【0133】
好適には、前記構築体の第1及び第2のポリペプチドは、前記ポリペプチド又は構築体そ
れ自体の固有の性質のために、腸管に存在する全てのプロテアーゼに対して実質的に抵抗
性である。
【0134】
本発明のポリペプチドはまた、腸溶性コーティングを備えていてもよい。腸溶性コーテ
ィングは、胃の低いpHから前記ポリペプチドを保護する、経口薬物上に適用されたポリマ
ー障壁である。腸溶性コーティングのために使用される材料としては、脂肪酸、ワックス
、セラック、プラスチック、及び植物繊維が挙げられる。適当な腸溶性コーティング成分
としては、アクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、セルロースアセテートスクシネー
ト、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロ
ースアセテートスクシネート(ヒプロメロースアセテートスクシネート)、ポリビニルアセ
テートフタレート(PVAP)、メチルメタクリレート-メタクリル酸共重合体、アルギン酸ナ
トリウム、及びステアリン酸が挙げられる。適当な腸溶性コーティングとしては、pH依存
性放出ポリマーが挙げられる。これは、胃でみられる高度に酸性のpHでは不溶であるが、
それよりも酸性度が低いpHで急速に溶解するポリマーである。従って、好適には、前記腸
溶性コーティングは、酸性の胃液(pH~3)には溶解しないが、小腸(pH6超)内又は結腸(pH7
.0超)内に存在するより高いpH環境では溶解する。該pH依存性放出ポリマーは、本発明の
構築体が、投薬が腸管の標的領域に到着するころに放出されるように選択される。
【0135】
本発明の医薬組成物又は構築体を、該組成物のpHを安定化するために、5~50、又はよ
り好適には15~40、又はより好適には25~30g/リットルの濃度で緩衝液中に製剤化し得る
。適当な緩衝液成分の例としては、生理学的な塩、例えば、クエン酸ナトリウム及び/又
はクエン酸が挙げられる。好適には、緩衝液は、100~200、より好適には125~175mMの生
理学的な塩、例えば、塩化ナトリウムを含有する。好適には、前記緩衝液は、前記組成物
のpH又は患者の生理的なpHに近いpKaを有するように選択される。
【0136】
医薬組成物中の例示的な構築体濃度は、約1mg/mL~約200mg/ml、又は約50mg/mL~約200
mg/mL、又は約150mg/mL~約200mg/mLの範囲にわたり得る。本発明の構築体又は医薬組成
物の水性製剤は、pH緩衝溶液中で、例えば、約4.0~約7.0もしくは約5.0~約6.0の範囲の
pHで、又は約5.5で調製し得る。適当な緩衝液の例としては、リン酸、ヒスチジン、クエ
ン酸、コハク酸、酢酸緩衝液、及び他の有機酸緩衝液が挙げられる。緩衝剤濃度は、例え
ば、緩衝液及び製剤の所望の浸透圧に応じて、約1mM~約100mM、又は約5mM~約50mMとす
ることができる。
【0137】
前記医薬組成物の浸透圧は、浸透圧調整剤を含ませることによって変化させ得る。その
ような浸透圧調整剤は、電荷を有する又は有しない化学種であり得る。典型的な無電荷の
浸透圧調整剤としては、糖類もしくは糖アルコール又は他のポリオール、好ましくは、ト
レハロース、スクロース、マンニトール、グリセロール、1,2-プロパンジオール、ラフィ
ノース、ソルビトール、又はラクチトール(特に、トレハロース、マンニトール、グリセ
ロール、又は1,2-プロパンジオール)が挙げられる。典型的な電荷を有する浸透圧調整剤
としては、塩、例えば、ナトリウム、カリウム、又はカルシウムイオンと、塩化物、硫酸
、炭酸、亜硫酸、硝酸、乳酸、コハク酸、酢酸、又はマレイン酸イオンとの組合せ(特に
、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウム);又はアミノ酸、例えば、アルギニンもしくはヒス
チジンが挙げられる。好適には、前記水性製剤は、等張のものであるが、高張性又は低張
性の溶液も適当であり得る。用語「等張の」とは、それと比較される何らかの他の溶液、
例えば、生理的な塩溶液又は血清と等しい浸透圧を有する溶液を意味する。等張化剤を、
約5mM~約350mMの量、例えば、1mM~500nMの量で用いてもよい。好適には、少なくとも1
つの等張化剤が、前記組成物中に含まれる。
【0138】
界面活性剤もまた、製剤化された構築体の凝集を減少させる、かつ/又は製剤中の微粒
子の形成を最小化する、かつ/又は吸着を減少させるために、前記医薬組成物に添加し得
る。例示的な界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween
)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレン
エーテル(Triton-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体(ポロクサマー
、Pluronic)、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられる。適当なポリオキシエチレ
ンソルビタン-脂肪酸エステルの例は、ポリソルベート20、及びポリソルベート80である
。界面活性剤の例示的な濃度は、約0.001%~約10%w/vの範囲にわたり得る。
【0139】
凍結乾燥保護剤もまた、凍結乾燥プロセスの間の不安定化する条件に対して本発明の構
築体を保護するために添加し得る。例えば、公知の凍結乾燥保護剤としては、糖類(グル
コース、スクロース、マンノース、及びトレハロースを含む);ポリオール(マンニトール
、ソルビトール、及びグリセロールを含む);並びにアミノ酸(アラニン、グリシン、及び
グルタミン酸を含む)が挙げられる。凍結乾燥保護剤を、約10mM~500mMの量で含むことが
できる。
【0140】
本発明の医薬組成物又は構築体の投与のための投薬量範囲は、所望の治療効果を生じさ
せるものである。必要とされる投薬量範囲は、前記医薬組成物又は構築体の厳密な性質、
腸管内の標的領域、製剤の性質、患者の年齢、患者の状態の性質、程度、又は重症度、も
しあるならば禁忌症、及び担当医師の判断次第である。これらの投与量レベルの変動は、
最適化のための標準的な経験的ルーチンを用いて調整することができる。
【0141】
適当な本発明の医薬組成物又は構築体の1日投与量は、体重1 kgあたり50ng~50mg、例
えば、50ug~40mg、例えば、5~30mgの範囲である。単位投与量は、100mg未満から変化し
得るが、典型的には、1投与あたり250~2000mgの範囲であり、これは、毎日又はより頻繁
に、例えば、1日あたり2、3、もしくは4回、又はより低頻度で、例えば、1日おきに、も
しくは1週間に1回投与し得る。
【0142】
疾患の治療はまた、その増悪の治療も包含し、疾患症状の再発を予防するための、疾患
症状からの寛解中の患者の治療も包含する。
【0143】
(組合せ療法)
本発明の医薬組成物はまた、1以上の活性薬剤(例えば、本明細書において言及されたも
のなどの疾患を治療するのに適した活性薬剤)も含み得る。前記本発明の医薬組成物を、
細菌性、自己免疫性、及び/又は炎症性疾患の治療において通常用いられる他の確立され
た療法の補助として、又はそれと併用して、細菌感染症、自己免疫性及び/又は炎症性疾
患の治療のための治療方法において使用することは本発明の範囲内である。
【0144】
過敏性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)の治療のために考えられる組合せ
としては、例えば:5-アミノサリチル酸、又はそのプロドラッグ(例えば、スルファサラジ
ン、オルサラジン、又はビサラジド(bisalazide));コルチコステロイド(例えば、プレド
ニゾロン、メチルプレドニゾロン、又はブデソニド);免疫抑制剤(例えば、シクロスポリ
ン、タクロリムス、メトトレキサート、アザチオプリン、又は6-メルカプトプリン);抗TN
F-アルファ抗体(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、又
はゴリムマブ);抗IL12/IL23抗体(例えば、ウステキヌマブ);抗IL6R抗体、又は小分子IL12
/IL23阻害剤(例えば、アピリモド);抗アルファ-4-ベータ-7抗体(例えば、ベドリズマブ);
MAdCAM-1ブロッカー(例えば、PF-00547659);細胞接着分子アルファ-4-インテグリンに対
する抗体(例えば、ナタリズマブ);IL2受容体アルファサブユニットに対する抗体(例えば
、ダクリズマブ又はバシリキシマブ);JAK3阻害剤(例えば、トファシチニブ又はR348);Syk
阻害剤およびそれらのプロドラッグ(例えば、ホスタマチニブ(fostamatinib)及びR-406);
ホスホジエステラーゼ-4阻害剤(例えば、テトミラスト);HMPL-004;プロバイオティクス;
デルサラジン(Dersalazine);セマピモド(semapimod)/CPSI-2364;並びにタンパク質キナー
ゼC阻害剤(例えば、AEB-071)を含むリストから選択される1以上の活性薬剤との組合せが
挙げられる。最も適当な組合せ薬剤は、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマ
ブペゴル、又はゴリムマブである。
【0145】
細菌感染症、例えば、クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療のために考えられ
る組合せとしては、例えば、C.ディフィシルトキソイドワクチン、アンピシリン、アモキ
シシリン、バンコマイシン、メトロニダゾール、フィダキソマイシン、リネゾリド、ニタ
ゾキサニド、リファキシミン、ラモプラニン、ディフィミシン(difimicin)、クリンダマ
イシン、セファロスポリン(例えば、第2及び第3世代セファロスポリン)、フルオロキノロ
ン(例えば、ガチフロキサシン又はモキシフロキサシン)、マクロライド(例えば、エリス
ロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン)、ペニシリン、アミノグリコシド
、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、クロラムフェニコール、テトラサイクリン
、イミペネム、メロペネム、抗菌剤、殺菌剤、又は静菌剤を含むリストから選択される1
以上の活性薬剤との組合せが挙げられる。考えられる組合せとしては、プロバイオティク
スである1以上の活性薬剤、例えば、サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boul
ardii)又はラクトバチルス・ラムノサスGG(Lactobacillus rhamnosus GG)との組合せも挙
げられる。
【0146】
従って、本発明の別の態様は、1以上のさらなる活性薬剤、例えば、上述の1以上の活性
薬剤と組み合わせた本発明の医薬組成物を提供する。本発明のさらなる態様において、前
記医薬組成物又は構築体は、上記リストから選択される少なくとも1つの活性薬剤と順次
に、同時に、又は別々に投与される。
【0147】
同様に、本発明の別の態様は:
(A)本発明の医薬組成物又は構築体;及び
(B)1以上の他の活性薬剤、
を含む組合せ製品を提供し、ここで、成分(A)及び(B)はそれぞれ、医薬として許容し得る
アジュバント、希釈剤、又は担体との混合物中に製剤化されている。本発明のこの態様に
おいて、前記組合せ製品は、単一の(組合せ)製剤又はパーツのキットのいずれであっても
よい。従って、本発明のこの態様は、本発明の医薬組成物又は構築体及び別の治療薬剤を
、医薬として許容し得るアジュバント、希釈剤、又は担体との混合物中に含む組合せ製剤
を包含する。
【0148】
本発明はまた、以下の成分:
(i)医薬として許容し得るアジュバント、希釈剤、又は担体との混合物中の本発明の医薬
組成物又は構築体;及び
(ii)医薬として許容し得るアジュバント、希釈剤、又は担体との混合物中に1以上の他の
活性薬剤を含む製剤、を含むパーツのキットであって、該成分(i)及び(ii)のそれぞれが
、他方との併用投与に適した形態で提供される、前記キットを包含する。
【0149】
前記パーツのキットの成分(i)は、従って、医薬として許容し得るアジュバント、希釈
剤、又は担体との混合物中の上記成分(A)である。同様に、成分(ii)は、医薬として許容
し得るアジュバント、希釈剤、又は担体との混合物中の上記成分(B)である。該1以上の他
の活性薬剤(すなわち上記成分(B))は、例えば、細菌感染症、例えば、クロストリジウム
・ディフィシル感染症、自己免疫性及び/又は炎症性疾患、例えばIBD(例えば、クローン
病及び/又は潰瘍性大腸炎)の治療に関連して上で言及した薬剤のうちのいずれかであり得
る。成分(B)が、2つ以上のさらなる活性薬剤である場合、これらのさらなる活性薬剤を、
互いに製剤化することができるし、成分(A)と製剤化することもできるし、これらを別々
に製剤化してもよい。一実施態様において、成分(B)は、他の治療薬剤1つである。別の実
施態様において、成分(B)は、他の治療薬剤2つである。本発明のこの態様の組合せ製品(
組み合わされた調製物又はパーツのキットのいずれか)を、自己免疫疾患(例えば、本明細
書において言及された自己免疫疾患)の治療又は予防において用いてもよい。
【0150】
(ベクター及び宿主)
本明細書で使用される用語「ベクター」は、それが連結された別の核酸を輸送する能力
がある核酸分子を指すことが意図される。ベクターの1種としては、プラスミドが挙げら
れ、これは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループを指す
。別の種類のベクターのとしては、ウイルスベクターが挙げられ、ここでは、追加のDNA
セグメントが、ウイルスゲノムにライゲーションされ得る。あるベクターは、それらが導
入された宿主細胞において自律複製する能力がある(例えば、細菌の複製起点を有する細
菌ベクター、並びに哺乳動物及び酵母のエピソーマルベクター)。他のベクター(例えば、
哺乳動物の非エピソーマルベクター)を、宿主細胞への導入の際に、宿主細胞のゲノムに
組み込むことができ、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、あるベクタ
ーは、それらが機能的に有効に連結された遺伝子の発現を導く能力がある。そのようなベ
クターを、本明細書では、「組換え発現ベクター」(又は、単に「発現ベクター」)と称す
る。一般的に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミド
の形態である。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、互換的に使用さ
れることがあり、これは、プラスミドが、最もよく使用されるベクターの形態であるため
である。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たす他の形態の発現ベクター、例えば
、ウイルスベクター(例えば、複製欠損性レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ
随伴ウイルス)、並びにバクテリオファージ及びファージミド系も含むことが意図される
。本発明はまた、本発明の構築体をコードするヌクレオチド配列に関する。本明細書で使
用される用語「組換え宿主細胞」(又は、単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導
入されている細胞を指すことが意図される。そのような用語は、特定の対象細胞だけでな
く、そのような細胞の子孫も指すことが意図される。
【0151】
本発明の一態様において、本発明の構築体をコードするポリヌクレオチド又は該ポリヌ
クレオチドを含むcDNAを含むベクターが提供される。本発明のさらなる態様において、本
発明の構築体を発現する能力がある、前記ベクターで形質転換された宿主細胞が提供され
る。好適には、該宿主細胞は、酵母、例えば、アスペルギルス属、サッカロマイセス属、
クリベロマイセス属、ハンゼヌラ属、又はピキア属に属する酵母、例えば、出芽酵母、大
腸菌(Escherchia coli)、又はピキア・パストリスである。
【0152】
前記不安定ペプチドリンカーが、腸管に存在するプロテアーゼによって切断されるが、
該不安定ペプチドリンカーがまた、前記構築体が産生される宿主生物のプロテアーゼに対
して実質的に抵抗性であることは、製造及び利便性の目的のために特に有利である。故に
、本発明の一実施態様において、前記不安定ペプチドリンカーは、前記構築体が産生され
る宿主生物のプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である。
【0153】
(調製方法)
本発明の構築体は、例えば、Green及びSambrookの文献、2012モレキュラークローニン
グ:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第4版、Cold Spring
Harbour Laboratory Pressに開示された技術を用いて得ること及び操作することができる
【0154】
特に、人工遺伝子合成を用いて、本発明による構築体を製造してもよい(それらの全体
が本明細書に引用により組み込まれる、Nambiarらの文献1984 Science 223:1299-1301、S
akamar及びKhoranaの文献1988 Nucl. Acids Res 14:6361-6372、Wellsらの文献1985 Gene
34:315-323、及びGrundstromらの文献1985 Nucl. Acids Res 13:3305-3316)。本発明の
構築体をコードする遺伝子は、例えば、固相DNA合成によって合成的に製造することがで
きる。遺伝子全体を、前駆体テンプレートDNAを必要とすることなく新規に合成し得る。
所望のオリゴヌクレオチドを得るために、ビルディングブロックを、生成物の配列により
必要とされる順番で順次、成長するオリゴヌクレオチド鎖にカップリングする。鎖の組み
立てが完了すると、生成物は、固相から溶液へと放出され、脱保護され、回収される。生
成物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって単離して、所望のオリゴヌクレオチ
ドを高純度で得ることができる(Verma及びEcksteinの文献、1998、Annu Rev Biochem 67:
99-134)。
【0155】
本発明の構築体を、DNAレベルで遺伝的に融合してもよい(すなわち、1以上のポリペプ
チド、例えば、抗原結合性ポリペプチドを含む完全なポリペプチド構築体をコードするポ
リヌクレオチド構築体)。複数のポリペプチドを遺伝学的なルートを介して連結する1つの
方法は、ポリペプチドコード配列を不安定ペプチドリンカーコード配列を介して連結する
ことによるものである。例えば、第1のポリペプチドのカルボキシ末端を、次のポリペプ
チドのアミノ末端に、不安定ペプチドリンカーコード配列を介して連結してもよい。この
連結様式を、トリ、テトラなどの機能的構築体の構築のためのポリペプチドを連結するた
めに拡張することができる。多価の(例えば、二価の)VHHポリペプチド構築体を製造する
ための方法は、WO96/34103(その全体が引用により本明細書に組み込まれている)に開示さ
れている。
【0156】
前記ポリペプチドのアミノ酸配列に関しては無変化であるが、特定の宿主における翻訳
に好ましいコドンを提供する構築体をコードするDNA又はcDNAに、変異を導入することが
できる。例えば、大腸菌及び出芽酵母における核酸の翻訳に好ましいコドンは公知である
【0157】
構築体の変異は、例えば、該構築体をコードする核酸に対する置換、付加、又は欠失に
よって達成することができる。該構築体をコードする核酸に対する置換、付加、又は欠失
は、例えば、エラープローンPCR、シャフリング、オリゴヌクレオチド指定突然変異(olig
onucleotide-directed mutagenesis)、アセンブリPCR、PCR変異誘発、インビボ変異誘発
、カセット変異誘発、反復アンサンブル変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)、指
数関数的アンサンブル変異誘発(exponential ensemble mutagenesis)、部位特異的変異誘
発(その全体が引用により本明細書に組み込まれているLingらの文献1997 Anal Biochem 2
54(2):157-178)、遺伝子リアセンブリ、遺伝子部位飽和変異誘発(GSSM)、合成的ライゲー
ションリアセンブリ(SLR)、又はこれらの方法の組合せを含む多くの方法で導入すること
ができる。核酸に対する改変、付加、又は欠失もまた、組換え、繰り返し配列組換え(rec
ursive sequence recombination)、ホスホチオエート修飾DNA変異誘発、ウラシル含有テ
ンプレート変異誘発、ギャップド・デュプレックス突然変異誘発(gapped duplex mutagen
esis)、ポイントミスマッチ修復変異誘発(point mismatch repair mutagenesis)、修復欠
損宿主株変異誘発(repair-deficient host strain mutagenesis)、化学的変異誘発、放射
線誘発性変異誘発、欠失変異誘発、制限部位選択変異誘発(restriction-selection mutag
enesis)、制限精製変異誘発(restriction-purification mutagenesis)、アンサンブル変
異誘発、キメラ核酸マルチマー作製(chimeric nucleic acid multimer creation)、又は
これらの組み合わせを含む方法で導入することができる。
【0158】
免疫グロブリン鎖可変ドメイン、例えば、VH及びVHHを含む構築体の発現は、適当な発
現ベクター、例えば、原核生物細胞、例えば、細菌、例えば、大腸菌を用いて達成するこ
とができる(例えば、引用により本明細書中に組み込まれているWO94/04678及びWO96/3410
3に開示されているプロトコールによる)。免疫グロブリン鎖可変ドメイン、例えば、VH及
びVHHの発現も、真核細胞、例えば、昆虫細胞、CHO細胞、Vero細胞、又は好適には、酵母
細胞、例えば、アスペルギルス属、サッカロマイセス属、クリベロマイセス属、ハンゼヌ
ラ属、又はピキア属に属する酵母を用いて達成することができる。好適には、出芽酵母が
用いられる(例えば、引用により本明細書中に組み込まれているWO94/025591に開示されて
いるプロトコールによる)。
【0159】
好適には、本発明の構築体は、WO02/48382に開示されている方法により、真菌、例えば
、酵母(例えば、出芽酵母)内で製造することができ、炭素源を含む培地上での該真菌の増
殖を含み、ここで、該炭素源の50~100wt%は、エタノールである。
【0160】
本発明の一態様において、本発明の構築体の調製のためのプロセスであって、以下の工
程:
i)ベクター、例えば、プラスミドに、本発明のポリヌクレオチドをクローニングする工程
ii)該構築体の産生を可能とする条件において、本発明の構築体を産生する能力がある細
胞、例えば、細菌細胞又は酵母細胞を、該ベクターで形質転換する工程
iii)該構築体を、例えば、アフィニティークロマトグラフィーによって回収する工程
を含む、前記プロセスが提供される。
【0161】
(項目)
本発明及びその好ましい態様を定義する一組の項目は、以下の通りである:
1.不安定ペプチドリンカーによって接続された第1のポリペプチド及び第2のポリペプチド
を含む経口投与に適した構築体であって、該不安定ペプチドリンカーが、腸管に存在する
1以上のプロテアーゼに対して不安定であり、かつ該第1及び第2のポリペプチドが、該1以
上のプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である、前記構築体。
2.前記第1のポリペプチドが、抗原結合性ポリペプチドである、項目1記載の構築体。
3.前記抗原結合性ポリペプチドが、抗体又はその抗原結合性断片である、項目2記載の構
築体。
4.前記第2のポリペプチドが、抗原結合性ポリペプチドである、項目1~3のいずれか1項記
載の構築体。
5.前記第2の抗原結合性ポリペプチドが、抗体又はその抗原結合性断片である、項目4記載
の構築体。
6.前記第1及び第2のポリペプチドが、腸管に存在する全てのプロテアーゼに対して実質的
に抵抗性である、項目1~5のいずれか1項記載の構築体。
7.前記腸管が、哺乳動物の腸管、例えば、ヒト、サル、マウス、ウシ、ヒツジ、又はブタ
の腸管である、項目1~6のいずれか1項記載の構築体。
8.前記1以上のプロテアーゼが、小腸又は大腸内に存在する、項目1~7のいずれか1項記載
の構築体。
9.前記1以上のプロテアーゼが、空腸、回腸、及び/又は盲腸内に存在する、項目8記載の
構築体。
10.前記1以上のプロテアーゼが、セリンプロテアーゼである、項目8又は9いずれか記載の
構築体。
11.前記不安定ペプチドリンカーが、前記構築体が産生される宿主生物のプロテアーゼに
対して実質的に抵抗性である、項目1~10のいずれか1項記載の構築体。
12.前記不安定ペプチドリンカーが、トリプシン又はトリプシン様プロテアーゼの切断部
位を含む、項目1~11のいずれか1項記載の構築体。
13.前記不安定ペプチドリンカーが、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、
少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、例えば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6
個、例えば、少なくとも7個、例えば、少なくとも8個、例えば、少なくとも9個、例えば
、少なくとも10個のK残基を含む、項目12記載の構築体。
14.前記不安定ペプチドリンカーが、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、
少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、例えば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6
個、例えば、少なくとも7個、例えば、少なくとも8個、例えば、少なくとも9個、例えば
、少なくとも10個のR残基を含む、項目1~13のいずれか1項記載の構築体。
15.前記不安定ペプチドリンカーが、P残基を含まない、項目1~14のいずれか1項記載の構
築体。
16.前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのN末端側に、
少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4
個、例えば、少なくとも5個のシールディング残基を有し、該シールディング残基が、D及
びEからなるリストから選択される、項目1~15のいずれか1項記載の構築体。
17.前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのC末端側に、
少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4
個、例えば、少なくとも5個のシールディング残基を有し、該シールディング残基が、D及
びEからなるリストから選択される、項目1~16のいずれか1項記載の構築体。
18.K及びR残基の全てが、それらに隣接する少なくとも1個のシールディング残基を有する
、項目16又は17いずれか記載の構築体。
19.前記不安定ペプチドリンカーが、D及びE残基を含まない、項目1~18のいずれか1項記
載の構築体。
20.前記不安定ペプチドリンカーが、C、A、S、N、G、L、I、V、T、M、F、Y、H、K、R、W
、及びQからなるリストから選択される残基からなる、項目1~18のいずれか1項記載の構
築体。
21.前記不安定ペプチドリンカーが、A、G、L、I、V、M、S、T、K、及びR残基からなるリ
ストから選択される残基からなる、項目20記載の構築体。
22.前記不安定ペプチドリンカーが、S、G、K、及びRからなるリストから選択される残基
からなる、項目21記載の構築体。
23.前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのN末端側に、
少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4
個、例えば、少なくとも5個の非シールディング残基を有し、該非シールディング残基が:
C、A、S、N、G、L、I、V、T、M、F、Y、H、W、及びQからなるリストから選択される、項
目1~15のいずれか1項記載の構築体。
24.前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのC末端側に、
少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4
個、例えば、少なくとも5個の非シールディング残基を有し、該非シールディング残基が:
C、A、S、N、G、L、I、V、T、M、F、Y、H、W、及びQからなるリストから選択される、項
目1~15及び23のいずれか1項記載の構築体。
25.K及びR残基の全てが、それらに隣接する少なくとも1個の非シールディング残基を有す
る、項目23又は24いずれか記載の構築体。
26.前記非シールディング残基が:A、G、L、I、V、M、S、及びTからなるリストから選択さ
れる、項目23~25のいずれか1項記載の構築体。
27.前記非シールディング残基が:A、G、L、I、V、及びSからなるリストから選択される、
項目26記載の構築体。
28.前記非シールディング残基が:G及びSからなるリストから選択される、項目27記載の構
築体。
29.前記不安定ペプチドリンカーが、キモトリプシン又はキモトリプシン様プロテアーゼ
の切断部位を含む、項目1~11のいずれか1項記載の構築体。
30.前記不安定ペプチドリンカーが、W、F、Y、L、及びMからなるリストから選択される少
なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4個
、例えば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個、例えば、少なくとも7個、例えば、
少なくとも8個、例えば、少なくとも9個、例えば、少なくとも10個の残基を含む、項目29
記載の構築体。
31.前記不安定ペプチドリンカーが、W、F、及びYからなるリストから選択される少なくと
も1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、例え
ば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個、例えば、少なくとも7個、例えば、少なく
とも8個、例えば、少なくとも9個、例えば、少なくとも10個の残基を含む、項目30記載の
構築体。
32.前記不安定ペプチドリンカーが、S、G、W、F、Y、L、及びM;例えば、S、G、W、F、及
びYからなるリストから選択される残基からなる、項目29~31のいずれか1項記載の構築体

33.前記不安定ペプチドリンカーが、少なくとも3残基、例えば、少なくとも5残基、例え
ば、少なくとも10残基の長さを有する、項目1~32のいずれか1項記載の構築体。
34.前記不安定ペプチドリンカーが、40残基以下、例えば、25残基以下、例えば、15残基
以下の長さを有する、項目1~33のいずれか1項記載の構築体。
35.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-Uc-B-U’d-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
Uは、D又はEであり;
U’は、D又はEであり;
cは、0~7であり;
dは、0~7であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、項目1記載の構築体。
36.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-B-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、項目35記載の構築体。
37.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(G4S)x-B-(G4S)y-]z
(式中、
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、項目36記載の構築体。
38.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
-B-(GaS)x-B’-
(式中、
aは、1~10であり;
xは、1~10であり;
Bは、K又はRであり、かつ
B’は、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、項目1記載の構築体。
39.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
-B-(GaS)x-B’-(GbS)y-B’’-
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり;
Bは、K又はRであり
B’は、K又はRであり、かつ
B’’は、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、項目1記載の構築体。
40.aが、2~5である、項目35~39のいずれか1項記載の構築体。
41.aが、4である、項目40記載の構築体。
42.bが、2~5である、項目35~41のいずれか1項記載の構築体。
43.bが、4である、項目42記載の構築体。
44.xが、1~5である、項目35~43のいずれか1項記載の構築体。
45.xが、2である、項目44記載の構築体。
46.xが、1である、項目44記載の構築体。
47.yが、1~5である、項目35~46のいずれか1項記載の構築体。
48.yが、1である、項目47記載の構築体。
49.yが、2である、項目47記載の構築体。
50.zが、1~3である、項目35~49のいずれか1項記載の構築体。
51.zが、1である、項目50記載の構築体。
52.Bが、Kである、項目35~51のいずれか1項記載の構築体。
53.Uが、Dである、項目35~52のいずれか1項記載の構築体。
54.U’が、Dである、項目35~53のいずれか1項記載の構築体。
55.cが、1である、項目35~54のいずれか1項記載の構築体。
56.dが、1である、項目35~55のいずれか1項記載の構築体。
57.cが、0である、項目35~54のいずれか1項記載の構築体。
58.dが、0である、項目35~55又は57のいずれか1項記載の構築体。
59.cが4であり、かつdが0である、項目35~54のいずれか1項記載の構築体。
60.B’が、Kである、項目35~59のいずれか1項記載の構築体。
61.B’’が、Kである、項目35~60のいずれか1項記載の構築体。
62.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-J-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Jは、W、F、Y、L、又はMである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、項目1記載の構築体。
63.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(G4S)x-J-(G4S)y-]z
(式中、
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Jは、W、F、Y、L、又はMである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、項目62記載の構築体。
64.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
-J-(GaS)x-J’-
(式中、
aは、1~10であり;
xは、1~10であり;
Jは、W、F、Y、L、又はMであり、かつ
J’は、W、F、Y、L、又はMである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、項目1記載の構築体。
65.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
-J-(GaS)x-J’-(GbS)y-J’’-
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり;
Jは、W、F、Y、L、又はMであり
J’は、W、F、Y、L、又はMであり、かつ
J’’は、W、F、Y、L、又はMである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、項目1記載の構築体。
66.aが、2~5である、項目62~65のいずれか1項記載の構築体。
67.aが、4である、項目66記載の構築体。
68.bが、2~5である、項目62~67のいずれか1項記載の構築体。
69.bが、4である、項目68記載の構築体。
70.xが、1~5である、項目62~69のいずれか1項記載の構築体。
71.xが、2である、項目70記載の構築体。
72.xが、1である、項目70記載の構築体。
73.yが、1~5である、項目62~72のいずれか1項記載の構築体。
74.yが、1である、項目73記載の構築体。
75.yが、2である、項目73記載の構築体。
76.zが、1~3である、項目62~75のいずれか1項記載の構築体。
77.zが、1である、項目76記載の構築体。
78.Jが、W、F、又はYである、項目62~77のいずれか1項記載の構築体。
79.J’が、W、F、又はYである、項目62~78のいずれか1項記載の構築体。
80.J’’が、W、F、又はYである、項目62~79のいずれか1項記載の構築体。
81.前記第1の抗体又はその抗原結合性断片が、腸管経由で到達可能な第1の標的、例えば
、腸管内の標的に結合する、項目1~80のいずれか1項記載の構築体。
82.前記第1の標的が、腸管常在性病原性微生物由来の第1の有害薬剤である、項目81記載
の構築体。
83.前記第1の標的が:TNF-アルファ、C.ディフィシル毒素A、C.ディフィシル毒素B、CD3、
又はIL-6Rからなる群から選択される、項目81記載の構築体。
84.前記第1の標的が:TNF-アルファ又はC.ディフィシル毒素Aからなる群から選択される、
項目83記載の構築体。
85.前記第2の抗体又はその抗原結合性断片が、腸管経由で到達可能な第2の標的、例えば
、腸管内の標的に結合する、項目81記載の構築体。
86.第2の標的が、腸管常在性病原性微生物由来の第2の有害薬剤である、項目85記載の構
築体。
87.前記第2の標的が:TNF-アルファ、C.ディフィシル毒素A、C.ディフィシル毒素B、CD3、
又はIL-6Rからなる群から選択される、項目85記載の構築体。
88.前記第2の標的が:TNF-アルファ又はC.ディフィシル毒素Aからなる群から選択される、
項目87記載の構築体。
89.前記第1及び第2の標的が、同一である、項目81~88のいずれか1項記載の構築体。
90.前記第1及び第2の標的が、異なっている、項目81~88のいずれか1項記載の構築体。
91.前記抗原結合性断片が:VL、V-NAR、scFv、Fab断片、F(ab')2断片、又は免疫グロブリ
ン鎖可変ドメイン、例えば、VHH及びVHからなる群から選択される、項目1~90のいずれか
1項記載の構築体。
92.前記抗原結合性断片が、VHHである、項目91記載の構築体。
93.前記抗原結合性断片が、VHである、項目91記載の構築体。
94.糞便プロテアーゼアッセイ、及び/又はトリプシンプロテアーゼアッセイ、及び/又は
キモトリプシンプロテアーゼアッセイにおける混合の後の、少なくとも10分後、例えば、
少なくとも20分後、例えば、少なくとも30分後に、前記構築体の少なくとも20質量%、例
えば、少なくとも40質量%、例えば、少なくとも60質量%、例えば、少なくとも80質量%
、例えば、少なくとも90質量%、例えば、少なくとも100質量%が切断されないまま残る
、項目1~93のいずれか1項記載の構築体。
95.前記第1及び第2のポリペプチドがそれぞれ、配列番号:18及び配列番号:19からなる群
から選択される配列を含む、項目1記載の構築体。
96.前記第1及び第2のポリペプチドがそれぞれ、配列番号:18及び配列番号:19からなる群
から選択される配列からなる、項目95記載の構築体。
97.前記構築体が、配列番号:7~17からなる群から選択される配列を含む、項目1記載の構
築体。
98.前記構築体が、配列番号:7~17からなる群から選択される配列からなる、項目97記載
の構築体。
99.前記不安定ペプチドリンカーが、配列番号:1~6からなる群から選択される配列を含む
、項目1記載の構築体。
100.前記不安定ペプチドリンカーが、配列番号:1~6からなる群から選択される配列から
なる、項目99記載の構築体。
101.前記構築体が、ペプチドリンカーによって前記第1のポリペプチドに接続された追加
の第3のポリペプチドを含み、該第3のポリペプチドが、腸管に存在する1以上のプロテア
ーゼに対して実質的に抵抗性である、項目1~94のいずれか1項記載の構築体。
102.前記構築体が、ペプチドリンカーによって前記第2のポリペプチドに接続された追加
の第4のポリペプチドを含むか又はこれからなり、該第4のポリペプチドが、腸管に存在す
る1以上のプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である、項目101記載の構築体。
103.前記ペプチドリンカーが、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して実質的に抵
抗性である、項目101又は102記載の構築体。
104.前記ペプチドリンカーが、不安定ペプチドリンカーである、項目101又は102記載の構
築体。
105.前記構築体が、腸溶性コーティングされている、項目1~104のいずれか1項記載の構
築体。
106.項目1~105のいずれか1項記載の構築体、及び医薬として許容し得る賦形剤を含む医
薬組成物。
107.薬物としての使用のための、項目1~106のいずれか1項記載の構築体又は組成物。
108.前記薬物が、経口投与により投与される、項目107記載の構築体又は組成物。
109.GITの疾患の治療における使用のための、項目108記載の構築体又は組成物。
110.自己免疫性及び/又は炎症性疾患の治療における使用のための、項目109記載の構築体
又は組成物。
111.炎症性腸疾患、例えば、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の治療における使用のた
めの、項目110記載の構築体又は組成物。
112.細菌感染症、例えば、C.ディフィシル感染症の治療における使用のための、項目109
記載の構築体又は組成物。
113.項目1~104のいずれか1項記載の構築体をコードする配列を含む核酸。
114.自己免疫疾患を治療する方法であって、それを必要としている人に、治療的有効量の
項目1~106のいずれか1項記載の構築体又は組成物を投与することを含む、前記方法。
115.細菌感染症、例えば、C.ディフィシル感染症を治療する方法であって、それを必要と
している人に、治療的有効量の項目1~106のいずれか1項記載の構築体又は組成物を投与
することを含む、前記方法。
116.対象に、項目1~106のいずれか1項記載の構築体又は組成物を投与することを含む、
疾患を単量体ポリペプチドで治療する方法。
117.対象に、項目1~106のいずれか1項記載の構築体又は組成物を投与することを含む、2
つ以上の単量体ポリペプチドで疾患を治療する方法。
118.対象に、項目1~106のいずれか1項記載の構築体又は組成物を投与することを含む、2
つ以上の疾患を、2つ以上の単量体ポリペプチドで治療する方法。
119.前記疾患が、自己免疫疾患及び/もしくは炎症性疾患、又はGIT感染症である、項目11
4~118のいずれか1項記載の方法。
120.項目1~104のいずれか1項記載の構築体の不安定性をアッセイする方法であって:(a)
該構築体を、トリプシンを含む溶液、キモトリプシンを含む溶液、糞便上清、小腸液、又
はエンテロペプチダーゼを含む溶液中で、例えば、実施例1のトリプシンプロテアーゼア
ッセイ、実施例2のキモトリプシンプロテアーゼアッセイ、又は実施例3の糞便プロテアー
ゼアッセイを行うことでインキュベートする工程、その後、(b)インキュベーションの1以
上の期間の後に、切断された構築体の比率を確認する工程、を含む前記方法。
121.不安定性のレベルが、実施例1のトリプシンプロテアーゼアッセイ、実施例2のキモト
リプシンプロテアーゼアッセイ、又は実施例3の糞便プロテアーゼアッセイにおける混合
の後の少なくとも10分後、例えば、少なくとも20分後、例えば、少なくとも30分後に切断
されないまま残る構築体の百分率である、項目120記載の方法。
122.単量体抗体又はその単量体抗原結合性断片を、腸管の標的領域に送達する方法であっ
て:(a)項目120又は121いずれか記載の方法を行う工程、その後(b)腸管の該標的領域に対
する適切なレベルの不安定性を有する構築体を選択する工程、(c)腸溶性コーティングさ
れたパッケージングを伴う該選択された構築体を製造する工程、その後(d)該パッケージ
ングされた選択された構築体を対象に投与する工程、を含む前記方法。
123.対象に、項目1~106のいずれか1項記載の構築体又は組成物を投与することを含む、
単量体ポリペプチドを腸管に送達する方法。
124.前記対象が、哺乳動物、例えば、ヒトである、項目116~119又は122~123のいずれか
1項記載の方法。
125.選択された項目1~104のいずれか1項記載の構築体を含む製品を調製する方法であっ
て、該選択された構築体を該製品中に添加することを含み、該選択された構築体が:(a)項
目120又は121いずれか記載の方法を行う工程、その後(b)腸管の該標的領域に対する適切
なレベルの不安定性を有する構築体を選択する工程を含む方法によって選択されかつ製造
される、前記方法。
126.配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6を含む
ポリペプチド。
127.配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25
、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、
配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36を含むポリヌクレ
オチド。
【0162】
(さらなる項目)
本発明及びその好ましい態様を定義する一組のさらなる項目は、以下の通りである:
1.不安定ペプチドリンカーによって接続された第1のポリペプチド及び第2のポリペプチド
を含む経口投与に適した構築体であって、該不安定ペプチドリンカーが、腸管に存在する
1以上のプロテアーゼに対して不安定であり、かつ該第1及び第2のポリペプチドが、該1以
上のプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である、前記構築体。
2.前記第1のポリペプチドが、抗原結合性ポリペプチドであり、かつ前記第2のポリペプチ
ドが、抗原結合性ポリペプチドである、項目1記載の構築体。
3.前記第1及び第2のポリペプチドが、腸管に存在する全てのプロテアーゼに対して実質的
に抵抗性である、項目1又は2いずれか記載の構築体。
4.前記不安定ペプチドリンカーが、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少
なくとも3個、例えば、少なくとも4個、例えば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個
、例えば、少なくとも7個、例えば、少なくとも8個、例えば、少なくとも9個、例えば、
少なくとも10個のK及び/又はR残基を含む、項目1~3のいずれか1項記載の構築体。
5.前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのN-末端及び/
又はC-末端側に、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例
えば、少なくとも4個、例えば、少なくとも5個のシールディング残基を有し、該シールデ
ィング残基が、D及びEからなるリストから選択される、項目1~4のいずれか1項記載の構
築体。
6.前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのN-末端及び/
又はC-末端側に、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例
えば、少なくとも4個、例えば、少なくとも5個の非シールディング残基を有し、該非シー
ルディング残基が:C、A、S、N、G、L、I、V、T、M、F、Y、H、W、及びQからなるリストか
ら選択される、項目1~4のいずれか1項記載の構築体。
7.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-Uc-B-U’d-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
Uは、D又はEであり;
U’は、D又はEであり;
cは、0~7であり;
dは、0~7であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列を含む、項目1記載の構築体。
8.c及びdがともに0である、項目7記載の構築体。
9.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
-B-(GaS)x-B’-
(式中、
aは、1~10であり;
xは、1~10であり;
Bは、K又はRであり、かつ
B’は、K又はRである)
のポリペプチド配列を含む、項目1記載の構築体。
10.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
-B-(GaS)x-B’-(GbS)y-B’’-
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり;
Bは、K又はRであり;
B’は、K又はRであり、かつ
B’’は、K又はRである)
のポリペプチド配列を含む、項目1記載の構築体。
11.前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-J-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Jは、W、F、Y、L、又はM;例えば、W、F、又はYである)
のポリペプチド配列を含む、項目1記載の構築体。
12.aが、4であり、bが、4であり、かつzが、1である、項目7~11のいずれか1項記載の構
築体。
13.前記抗原結合性断片が:VL、V-NAR、scFv、Fab断片、F(ab')2断片、又は免疫グロブリ
ン鎖可変ドメイン、例えば、VHH及びVHからなる群から選択される、項目1~12のいずれか
1項記載の構築体。
14.経口投与により投与される、GITの疾患の治療のための薬物としての使用のための、項
目1~13のいずれか1項記載の構築体を含む医薬組成物。
15.配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、又は配列番号:6を
含むポリペプチド。
【0163】
ここで、本発明を、以下の非限定的な実施例を用いてさらに説明する。
【実施例0164】
(実施例)
(実施例1:トリプシンプロテアーゼアッセイ)
不安定ペプチドリンカーの不安定性を試験するために、トリプシンプロテアーゼアッセ
イを開発した。本アッセイは、以下のように行われる。
【0165】
L-1-トシルアミド-2-フェニルエチルクロロメチルケトン(TPCK)で処理したトリプシン-
アガロースビーズ(ウシ膵臓由来のトリプシン; T4019; Sigma Aldrich)の緩衝(10mM酢酸
、pH3.2、0.01%チメロサールを含有)水性懸濁液を、本アッセイのために使用する。該ビ
ーズを、水で3回洗浄し(250μlビーズ+1.25ml水)、それに続きトリプシン緩衝液(TRYP緩
衝液;1mMトリス-HCl、20mM CaCl2 [pH8.0])で5回洗浄する。最後に、該樹脂を、50%(v/v
)懸濁液としてTRYP緩衝液中に再懸濁する。
【0166】
100μLの2mg/ml構築体溶液を、225μlのTRYP緩衝液中50%(v/v)の固定化TPCK処理トリ
プシンと混合する。振盪機中37℃でのインキュベーションの0、10、15、30、45、及び60
分などの時間間隔の後に、試料を以下のように採取する:樹脂を、500×gで1分の遠心分離
工程によってペレット化し、40μlの試料を上清から採取し、2×サンプルローディングバ
ッファー(例えば、Laemmliバッファー)と混合する。残りの懸濁液を再び混合し、37℃で
振盪機中に戻す。
【0167】
分析のために、15μLの各試料を、5μlの4×ローディング色素(loading dye)と混合し
、10分間煮沸し、ポリアクリルアミドゲル(例えば、NuPAGE 10%アクリルアミドビス-ト
リスゲル)上の1レーンあたり15μlをロードする。ゲルを、SDS-MES緩衝液中、200Vで、35
分間泳動させる。ゲルを、40%メタノール、7%酢酸中で30分間固定し、コロイド状クー
マシーブリリアントブルーステイン中で1晩染色する。ゲルを、イメージング(例えば、7
秒間の露出でImageQuant LAS4000を用いる)の前に水中で脱染する。切断された構成ポリ
ペプチドと比較したインタクトな構築体の量を、各時点のレーンにおける対応するバンド
を比較することによって評価することができる。
【0168】
(実施例2:キモトリプシンプロテアーゼアッセイ)
トリプシンビーズを、キモトリプシンビーズと置き換えたトリプシンプロテアーゼアッ
セイプロトコールを使用し得る。
【0169】
(実施例3:糞便抽出物プロテアーゼアッセイ)
不安定ペプチドリンカーの不安定性を試験するために、糞便抽出物プロテアーゼアッセ
イを開発した。糞便抽出物は、特に、大腸を標的とするポリペプチドに生理学的に関連性
のあるマトリックスである。本アッセイは、以下のように行われる。
【0170】
複数個体由来のヒト糞便試料を、糞便1グラムあたり1、2、又は3mLの1×PBSの比率で1
×PBSを添加してスラリーとする。その後、該スラリーを、プールし(1つのプールが、複
数個体の糞便由来の組み合わせプロテアーゼ産物を代表するように行う)、遠心分離し、
上清を取り除き、分割し、-70℃で保管する。このプロセスにより、全ての細胞物質を含
めた糞便のマトリックスが取り除かれる。消化のために、構築体を、160.16μg/mlの濃度
で、37℃で、プールしたヒト糞便上清中60分間、BSAキャリアの非存在下でインキュベー
トする。0、10、30、及び60分などの時間間隔の後に一部を採取し、Protease Stop Solut
ion(1×PBS+2×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)+1%PMSF)中1:1で混合し、直ちに-
80℃で凍結する。
【0171】
分析のために、試料を解凍し、15μLの各試料を、5μlの4×ローディング色素と混合し
、10分間煮沸し、ポリアクリルアミドゲル(例えば、NuPAGE 10%アクリルアミドビス-ト
リスゲル)上の1レーンあたり15μlをロードする。ゲルを、SDS-MES緩衝液中、200Vで、35
分間泳動させる。ゲルを、40%メタノール、7%酢酸中で30分間固定し、コロイド状クー
マシーブリリアントブルーステイン中で1晩染色する。ゲルを、イメージング(例えば、7
秒間の露出でImageQuant LAS4000を用いる)の前に水中で脱染した。切断された構成ポリ
ペプチドと比較したインタクトな構築体の量を、各時点のレーンにおける対応するより高
い及びより低い分子量のバンドを比較することによって評価することができる。
【0172】
(実施例4:構築体の製造)
(a)2つの抗TcdA(クロストリジウム・ディフィシル毒素A)ICVDを連結する一連の異なる
リンカー配列を含有するホモバイヘッド構築体を出芽酵母で発現させ、(b)2つの抗TNF-ア
ルファICVDを連結する一連の異なるリンカー配列を含有するホモバイヘッド構築体を設計
して大腸菌で発現させた。該抗TcdA構築体は、異なるリンカーによって分離されたICVD I
D1Aのホモバイヘッドであった。該抗TNF-アルファ構築体は、Flag-6Hisタグも含んでいた
ポリヌクレオチドによってコードされる、ICVD ID5Fのホモバイヘッドであった。
【0173】
(抗TcdA構築体)
ホモバイヘッド構築体ID3A、ID4A、及びID25A~ID28Aを、出芽酵母から発現させた。こ
れらの構築体は、いずれの末端にもタンパク質タグを有しない。不安定ペプチドリンカー
を含有するID25A~ID28Aは、DNAをコードするID1Aをテンプレートとして用いるオーバー
ラップPCRによって生じさせ、大腸菌及び出芽酵母において複製する能力があるシャトル
ベクターpUR4547(BAC)のSacI/HindIII部位にクローニングした。出芽酵母からの発現、及
び上清への完全な分泌は、ガラクトース誘導を介して前記シャトルベクターから達成され
た。最後に、構築体を、Capto Sカチオン交換樹脂(GE)を用いて精製し、1×PBSへと透析
した。
【0174】
出芽酵母における発現及びその後の保管は、上で詳細に記載した酵母発現プロトコール
に従い行った。
【0175】
(抗TNF-アルファ構築体)
ID55F~ID60Fは、ベクターpMEK222(QVQ)のSfiI/BsteII部位に直接クローニングした。I
D55F~ID60Fは、C-末端のFlag-6Hisタグを有する。結果として得られたプラスミドを、発
現及びペリプラズムへの輸送のために大腸菌BL21 DE3(Novagen)中に形質転換した。オー
トインダクション培地テリフィックブロス(Formedium)中で1晩増殖させた後に、細胞をペ
レット化し、-80℃で凍結させ、元の体積の1/10の1×PBS中に再懸濁して外膜を破壊した
。ID55F~ID60Fを、Hisタグを結合させるNi-NTAカラムを用いるAKTA Prime FPLC、それに
続くイミダゾール溶出、及び1×PBSへの透析によって上清から精製した。
【0176】
リンカーの配列を、以下の表1に記載する。
【0177】
表1
【表2】
【0178】
(実施例5:トリプシンプロテアーゼアッセイを用いた抗TcdA構築体の不安定性のアッセイ)
TcdAを標的とする実施例4の構築体の不安定性を、実施例1に記載のトリプシンプロテア
ーゼアッセイを用いてアッセイした。該アッセイの結果を、図1~3中のSDS-PAGEゲル中に
示す。図中、M=分子量マーカー;レーン1=トリプシンビーズの添加前のICVD、レーン2=
トリプシンビーズで0分消化、レーン3=10分消化、レーン4=25分消化、レーン5=60分消
化、レーン6=105分消化、及びレーン7=160分消化である。
【0179】
ID3Aが、試験した全ての期間にわたって実質的にインタクトなままであったことが分か
る(図1)。ID25A(図2)は、インキュベーションの0~10分後に、非常に速く完全に切断され
た。ID26A(図2)におけるシールディングD残基は、0~10分から105分後の完全な切断まで
リンカーのゆっくりした切断をもたらした。ID28Aリンカー(図3)のいずれかの末端に位置
している不安定な残基及びID27A(図3)における追加のN側シールディングD残基は双方とも
、よりゆっくりとした切断をもたらし、インキュベーションの160分後でもなお進行中で
あった。最も不安定ではないものから最も不安定であるものの順序で並べた構築体は、ID
3A>ID28A>ID27A>ID26A>ID25Aであった。
【0180】
約35kDaの分子量に泳動した切断されなかった構築体は、早い時点に対応するレーンで
みられる(図2及び3)。切断された構築体(すなわち、構成モノマーICVD)は、より遅い時点
に対応するレーンでみられ、約18kDaの分子量に泳動する。従って、これらのゲルの目視
での精査から、50質量%超の構築体ID25A、ID26A、ID27A、及びID28Aが、トリプシンプロ
テアーゼアッセイにおける混合の後の160分後に(又はいくつかの例ではそれよりも早く)
第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインへと切断されたことが明らかである(レーン7
)。これらは、不安定ペプチドリンカーを含む本発明の構築体である。
【0181】
図1のゲルの目視での精査から、観察される顕著なバンドは、インタクトなID3A構築体
に対応するもののみである(約37kDaの分子量に泳動)ことも明らかである。故に、ID3Aは
、トリプシンプロテアーゼアッセイにおける混合の後の160分後を含む全ての時点で、第1
及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインに切断されなかった(レーン7)。ID3Aは、不安定
ペプチドリンカーを含まず、本発明による構築体ではない。
【0182】
更に、図2及び3のゲルの目視での精査から、これらの構築体における第1の免疫グロブ
リン鎖可変ドメイン及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインは、それ自体が、腸管に存
在する1以上のプロテアーゼに対して実質的に抵抗性であることが明らかである。ICVDモ
ノマー(約18kDaの分子量に泳動するインタクトなモノマー)の断片に対応する顕著なバン
ドが観察されないこと、及び、従って、少なくとも70質量%の免疫グロブリン鎖可変ドメ
インが、トリプシンプロテアーゼアッセイにおける混合の後の、160分を含む試験した全
ての時点の後に明らかに切断されないまま残ることが分かる。
【0183】
(実施例6:糞便プロテアーゼアッセイを用いた抗TcdA及び抗TNF-アルファ構築体の不安定
性のアッセイ)
TcdAを標的とする、及びTNF-アルファを標的とする実施例4の構築体の不安定性を、ア
ッセイした。実施例3に記載の糞便プロテアーゼアッセイを用いた。該アッセイの結果を
図4(抗TcdA構築体)及び図5(抗TNF-アルファ構築体)のSDS-PAGEゲル中に示す。レーンは
、試験した構築体、及び分で表示したインキュベーションの期間によりラベルする。「X
」は、ICVDを含有しないレーンを示す(糞便抽出物のみ)。図5において、「B」は、バイヘ
ッドを示し、「M」は、切断されたモノマーを示す。
【0184】
(抗TcdA構築体)
図4から、ID3Aが、試験した全ての期間にわたって実質的にインタクトなままであった
ことが分かる。ID25Aは、インキュベーションの0~10分後に、非常に速く完全に切断され
た。ID26AにおけるシールディングD残基、ID27Aにおける追加のN側シールディングD残基
、及びID28Aリンカーのいずれかの末端に位置している不安定な残基は全て、ID25Aと比較
してよりゆっくりとした切断をもたらした。ID26A、ID27A、及びID28Aの消化は、インキ
ュベーションの30分後においてもいまだ進行中であった。
【0185】
(抗TNF-アルファ構築体)
図5から、ID55Fが、試験した全ての期間にわたって実質的にインタクトなままであった
ことが分かる。ID56Fは、即座に完全に切断された。ID57Fは、インキュベーションの0~1
0分後に、非常に速く完全に切断された。ID58FのシールディングD残基、ID60Fリンカーの
いずれかの末端に位置している不安定な残基、及びID59Fの追加のN側シールディングD残
基は全て、ID57Fと比較してよりゆっくりとした切断をもたらした。ID58F、ID59F、及びI
D60Fの消化は、インキュベーションの60分後においてもいまだ進行中であった。
【0186】
(糞便プロテアーゼアッセイのまとめ)
不安定ペプチドリンカーの中央の領域(ではあるが周辺の領域ではない)におけるリジン
残基が、糞便のプロテアーゼに対する不安定性を増加させることが明らかである。不安定
性は、該リジン残基を、隣接のアスパラギン酸残基を用いてシールディングすることによ
って減少させる。糞便プロテアーゼアッセイにおいて試験した構築体の不安定性を、以下
の表2及び3にまとめた。
【0187】
表2
【表3】
【0188】
表3
【表4】
【0189】
(実施例7:保管中の抗TcdA構築体の安定性)
抗TcdA構築体(ID3A、ID25A、ID25A、ID27A及びID28A)を、保管中のそれらの安定性につ
いて経時的に試験した。試料を、4℃での、0、2、4、又は9日間の冷蔵の後に採取した(図
6及び7)。SDS-PAGEゲルが、切断されていないバイヘッド構築体に対応するバンドを含み
、切断されたモノマーのバンドを含まないことが分かる。従って、該構築体は、これらの
条件下少なくとも9日間安定である。
【0190】
これらの切断されていない構築体は、約35kDaの分子量で泳動し、構成モノマーは、約1
8kDaの分子量を有することが期待された。図6及び7のゲルの目視での精査から、インタク
トな構築体それ自体に対応する35kDaのバンドよりも低い分子量の顕著なバンドがみられ
ず、従って、明らかに、酵母発現プロトコールを用いて該構築体を製造した後(0日間の保
管で)、及び2、4、又は9日間の保存期間の後に、これらの構築体の10質量%以下が、第1
及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインへと切断されることが明らかである。
【0191】
更に、図6又は7において単一のICVDモノマーの分子量(約18kDaに泳動)よりも低い分子
量に泳動する顕著なバンドがみられないために、構成免疫グロブリン鎖可変ドメインは、
酵母プロテアーゼに対して実質的に抵抗性であることが明らかである。従って、前記第1
又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを酵母発現プロトコールを用いて産生させた後
に(0日間の保管で)、及び2、4、又は9日間の保存期間の後に、10質量%以下の前記第1又
は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが切断されることが明らかである。
【0192】
(実施例8:キモトリプシンに不安定なリンカーを組み込んだ構築体の製造)
キモトリプシンに不安定部位(W、F、Y、L、又はM;特に、W、F、又はY)を含有する一連
の異なるリンカー配列を含有するホモバイヘッド又はヘテロバイヘッド構築体を、上記実
施例4において詳述した方法に類似の方法を用いて、適当な宿主、例えば、出芽酵母にお
いて設計し、かつ発現させ得る。適当な構築体を、表4に示す。
【0193】
表4
【表5】
【0194】
その後、そのような構築体の不安定性を、キモトリプシンプロテアーゼアッセイ及び糞
便プロテアーゼアッセイを用いてアッセイした。
【0195】
(実施例9:製造及び保管中のID4Aの安定性の試験)
抗TcdA構築体ID4Aを、前記酵母発現プロトコールを用いて出芽酵母で発現させた。ID4A
は、ICVD ID1Aのホモバイヘッドであり、いずれの末端にもタンパク質タグを何ら有しな
いない。リンカーの配列を、上記表1に示した。
【0196】
ID4Aを、製造及び保管中のその安定性について経時的に試験した。試料を、4℃での、0
、2、4、又は9日間の冷蔵の後に採取した(図8)。SDS-PAGEゲルの各レーンが、すべてが約
10kDaの分子量に泳動される切断されたモノマーに対応するバンドを含み、明らかに、切
断されていないバイヘッドに対応するバンドを含むレーンが存在しないことが分かる。ID
4Aにおいて用いられるリンカーが、製造中に酵母プロテアーゼによって切断されたようで
ある。
【0197】
従って、図8のゲルの目視での精査から、該構築体を、酵母発現プロトコールを用いて
製造した後に(0日間の保管で)、10質量%超(実際には100質量%)のID4Aが、第1及び第2の
免疫グロブリン鎖可変ドメインへと切断されることが明らかである。本発明の構築体は、
酵母プロテアーゼに対して安定であり、従って、ID4Aは、本発明の構築体ではない。
【0198】
明細書及び以下の請求項全体にわたり、文脈上そうでないことが必要とされない限り、
「含む(comprise)」という語、及び「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」など
の変形は、記載された整数、工程、整数の群、又は工程の群の含有を意味するが、いかな
る他の整数、工程、整数の群、又は工程の群の排除をも意味しないものと理解される。本
発明の明細書全体で言及された特許及び特許出願は全て、その全体が引用により本明細書
に組み込まれる。本発明は、好ましい及びより好ましい群、及び適当な及びより適当な群
、並びに上述の群の実施態様の全ての組合せを包含する。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを用いる
経口投与による腸管の疾患の治療における使用のための構築体であって、
該構築体は、不安定ペプチドリンカーによって接続された該第1の免疫グロブリン鎖可変
ドメイン及び該第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含み:
(i)該不安定ペプチドリンカーが、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定で
あり、
(ii)該不安定ペプチドリンカーが、酵母プロテアーゼに対して安定であり、かつ
(iii)該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、該1以上のプロテアーゼに対して
実質的に抵抗性であり、かつ
該構築体が、酵母内で産生される、前記構築体。
(構成2)
構築体由来の第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメ
インを用いて経口投与により腸管の疾患を治療する方法であって、
該構築体が、不安定ペプチドリンカーによって接続された該第1の免疫グロブリン鎖可変
ドメイン及び該第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含み:
(i)該不安定ペプチドリンカーが、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定で
あり、
(ii)該不安定ペプチドリンカーが、酵母プロテアーゼに対して安定であり、かつ
(iii)該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、該1以上のプロテアーゼに対して
実質的に抵抗性であり;
該構築体が、酵母内で産生される、前記方法。
(構成3)
第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを、腸管
へ送達する方法であって、不安定ペプチドリンカーによって接続された該第1の免疫グロ
ブリン鎖可変ドメイン及び該第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む構築体を酵母内
で産生させ、その後経口投与することを含み:
(i)該不安定ペプチドリンカーが、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定で
あり、
(ii)該不安定ペプチドリンカーが、酵母プロテアーゼに対して安定であり、かつ
(iii)該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、該1以上のプロテアーゼに対して
実質的に抵抗性である、前記方法。
(構成4)
不安定ペプチドリンカーによって接続された第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び
第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを含む構築体を作製する方法であって:
(i)該不安定ペプチドリンカーが、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定で
あり、
(ii)該不安定ペプチドリンカーが、酵母プロテアーゼに対して安定であり、かつ
(iii)該第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、該1以上のプロテアーゼに対して
実質的に抵抗性であり;
酵母内で該構築体を産生させる工程を含む、前記方法。
(構成5)
前記構築体を精製する工程をさらに含む、構成4記載の方法。
(構成6)
構成4又は5のいずれか記載の方法によって得られる構築体。
(構成7)
前記酵母が、出芽酵母である、構成1~6のいずれか1項記載の構築体、使用のための構
築体、又は方法。
(構成8)
50質量%超の前記構築体が、トリプシンプロテアーゼアッセイにおける混合の後160分
後に、第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインへと切断されるように、前記不安定ペ
プチドリンカーが腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して不安定である、構成1~7
のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成9)
酵母発現プロトコールを用いて前記構築体を産生させた後に、10質量%以下の該構築体
が第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインへと切断されるように、前記不安定ペプチ
ドリンカーが酵母プロテアーゼに対して安定である、構成1~8のいずれか1項記載の構築
体、使用のための構築体、又は方法。
(構成10)
前記構築体の切断された質量が、ゲル電気泳動によって評価される、構成8又は9のいず
れか記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成11)
少なくとも70質量%の前記第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び少なくとも70質量
%の前記第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、トリプシンプロテアーゼアッセイにお
ける混合の後10分後に切断されないまま残るように、該第1の免疫グロブリン鎖可変ドメ
イン及び該第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが腸管に存在する1以上のプロテアーゼに
対して実質的に抵抗性である、構成1~10のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築
体、又は方法。
(構成12)
前記第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインの切断されていない質量が、ゲル電気
泳動によって評価される、構成11記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成13)
前記第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び前記第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイン
が、酵母プロテアーゼに対して実質的に抵抗性である、構成1~12のいずれか1項記載の構
築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成14)
前記第1又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインを酵母発現プロトコールを用いて産生
させた後に、10質量%以下の該第1又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが切断される
ように、該第1の免疫グロブリン鎖可変ドメイン及び該第2の免疫グロブリン鎖可変ドメイ
ンが酵母プロテアーゼに対して実質的に抵抗性である、構成1~13のいずれか1項記載の構
築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成15)
前記第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインの切断された質量が、ゲル電気泳動に
よって評価される、構成14記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成16)
前記ゲル電気泳動が、定量的ゲル電気泳動である、構成10、12、又は15のいずれか1項
記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成17)
前記第1及び第2のポリペプチドが、腸管に存在する全てのプロテアーゼに対して実質的
に抵抗性である、構成1~16のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方法

(構成18)
前記腸管が、哺乳動物の腸管、例えば、ヒト、サル、マウス、ウシ、ヒツジ、又はブタ
の腸管である、構成1~17のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成19)
前記1以上のプロテアーゼが、小腸又は大腸内に存在する、構成1~18のいずれか1項記
載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成20)
前記1以上のプロテアーゼが、空腸、回腸、及び/又は盲腸内に存在する、構成19記載の
構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成21)
前記1以上のプロテアーゼが、セリンプロテアーゼである、構成1~20のいずれか1項記
載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成22)
前記不安定ペプチドリンカーが、トリプシン又はトリプシン様プロテアーゼの切断部位
を含む、構成1~21のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成23)
前記不安定ペプチドリンカーが、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少
なくとも3個、例えば、少なくとも4個、例えば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個
、例えば、少なくとも7個、例えば、少なくとも8個、例えば、少なくとも9個、例えば、
少なくとも10個のK残基を含む、構成22記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成24)
前記不安定ペプチドリンカーが、少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少
なくとも3個、例えば、少なくとも4個、例えば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個
、例えば、少なくとも7個、例えば、少なくとも8個、例えば、少なくとも9個、例えば、
少なくとも10個のR残基を含む、構成22又は23のいずれか記載の構築体、使用のための構
築体、又は方法。
(構成25)
前記不安定ペプチドリンカーが、P残基を含まない、構成1~24のいずれか1項記載の構
築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成26)
前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのN末端側に、
少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4
個、例えば、少なくとも5個のシールディング残基を有し、該シールディング残基が、D及
びEからなるリストから選択される、構成1~25のいずれか1項記載の構築体、使用のため
の構築体、又は方法。
(構成27)
前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのC末端側に、
少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4
個、例えば、少なくとも5個のシールディング残基を有し、該シールディング残基が、D及
びEからなるリストから選択される、構成1~26のいずれか1項記載の構築体、使用のため
の構築体、又は方法。
(構成28)
K及びR残基の全てが、それらに隣接する少なくとも1個のシールディング残基を有する
、構成26又は27のいずれか記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成29)
前記不安定ペプチドリンカーが、D及びE残基を含まない、構成1~28のいずれか1項記載
の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成30)
前記不安定ペプチドリンカーが、C、A、S、N、G、L、I、V、T、M、F、Y、H、K、R、W、
及びQからなるリストから選択される残基からなる、構成1~28のいずれか1項記載の構築
体、使用のための構築体、又は方法。
(構成31)
前記不安定ペプチドリンカーが、A、G、L、I、V、M、S、T、K、及びR残基からなるリス
トから選択される残基からなる、構成30記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成32)
前記不安定ペプチドリンカーが、S、G、K、及びRからなるリストから選択される残基か
らなる、構成31記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成33)
前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのN末端側に、
少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4
個、例えば、少なくとも5個の非シールディング残基を有し、該非シールディング残基が:
C、A、S、N、G、L、I、V、T、M、F、Y、H、W、及びQからなるリストから選択される、構
成1~25のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成34)
前記不安定ペプチドリンカー内に含まれるK又はR残基の全てが、それらのC末端側に、
少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4
個、例えば、少なくとも5個の非シールディング残基を有し、該非シールディング残基が:
C、A、S、N、G、L、I、V、T、M、F、Y、H、W、及びQからなるリストから選択される、構
成1~25及び33のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成35)
K及びR残基の全てが、それらに隣接する少なくとも1個の非シールディング残基を有す
る、構成33又は34のいずれか記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成36)
前記非シールディング残基が:A、G、L、I、V、M、S、及びTからなるリストから選択さ
れる、構成33~35のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成37)
前記非シールディング残基が:A、G、L、I、V、及びSからなるリストから選択される、
構成36記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成38)
前記非シールディング残基が:G及びSからなるリストから選択される、構成37記載の構
築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成39)
前記不安定ペプチドリンカーが、キモトリプシン又はキモトリプシン様プロテアーゼの
切断部位を含む、構成1~20のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方法

(構成40)
前記不安定ペプチドリンカーが、W、F、Y、L、及びMからなるリストから選択される少
なくとも1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4個
、例えば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個、例えば、少なくとも7個、例えば、
少なくとも8個、例えば、少なくとも9個、例えば、少なくとも10個の残基を含む、構成39
記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成41)
前記不安定ペプチドリンカーが、W、F、及びYからなるリストから選択される少なくと
も1個、例えば、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、例えば、少なくとも4個、例え
ば、少なくとも5個、例えば、少なくとも6個、例えば、少なくとも7個、例えば、少なく
とも8個、例えば、少なくとも9個、例えば、少なくとも10個の残基を含む、構成40記載の
構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成42)
前記不安定ペプチドリンカーが、S、G、W、F、Y、L、及びM;例えば、S、G、W、F、及び
Yからなるリストから選択される残基からなる、構成39~41のいずれか1項記載の構築体、
使用のための構築体、又は方法。
(構成43)
前記不安定ペプチドリンカーが、少なくとも3残基、例えば、少なくとも5残基、例えば
、少なくとも10残基の長さを有する、構成1~42のいずれか1項記載の構築体、使用のため
の構築体、又は方法。
(構成44)
前記不安定ペプチドリンカーが、40残基以下、例えば、25残基以下、例えば、15残基以
下の長さを有する、構成1~43のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方
法。
(構成45)
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-Ae-Uc-B-U’d-Af-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
Uは、D又はEであり;
U’は、D又はEであり;
cは、0~7であり;
dは、0~7であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり;
zは、1~10であり;
Bは、K又はRであり;
eは、0~5であり、かつ
fは、0~5である)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、構成1~22のいずれか1項
記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成46)
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-Uc-B-U’d-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
Uは、D又はEであり;
U’は、D又はEであり;
cは、0~7であり;
dは、0~7であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり;
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、構成45記載の構築体、使
用のための構築体、又は方法。
(構成47)
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-B-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり;
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、構成46記載の構築体、使
用のための構築体、又は方法。
(構成48)
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(G4S)x-B-(G4S)y-]z
(式中、
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Bは、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、構成47記載の構築体、使
用のための構築体、又は方法。
(構成49)
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
-B-Ae-(GaS)x-Af-B’-
(式中、
aは、1~10であり;
xは、1~10であり;
Bは、K又はRであり;
B’は、K又はRであり;
eは、0~5であり、かつ
fは、0~5である)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、構成1~22のいずれか1項
記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成50)
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
-B-(GaS)x-B’-
(式中、
aは、1~10であり;
xは、1~10であり;
Bは、K又はRであり、かつ
B’は、K又はRである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、構成49記載の構築体、使
用のための構築体、又は方法。
(構成51)
aが、2~5である、構成45~50のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成52)
aが、4である、構成51記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成53)
bが、2~5である、構成45~52のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成54)
bが、4である、構成53記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成55)
xが、1~5である、構成45~54のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成56)
xが、2である、構成55記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成57)
xが、1である、構成55記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成58)
yが、1~5である、構成45~57のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成59)
yが、1である、構成58記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成60)
yが、2である、構成58記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成61)
zが、1~3である、構成45~60のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成62)
zが、1である、構成61記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成63)
Bが、Kである、構成45~62のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方
法。
(構成64)
Uが、Dである、構成45~63のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方
法。
(構成65)
U’が、Dである、構成45~64のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成66)
cが、1である、構成45~65のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方
法。
(構成67)
dが、1である、構成45~66のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方
法。
(構成68)
cが、0である、構成45~67のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方
法。
(構成69)
dが、0である、構成45~66又は68のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、
又は方法。
(構成70)
cが4であり、かつdが0である、構成45~65のいずれか1項記載の構築体、使用のための
構築体、又は方法。
(構成71)
B’が、Kである、構成45~70のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成72)
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-Ae-J-Af-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり;
Jは、W、F、Y、L、又はMであり;
eは、0~5であり、かつ
fは、0~5である)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、構成1~21のいずれか1項
記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成73)
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(GaS)x-J-(GbS)y-]z
(式中、
aは、1~10であり;
bは、1~10であり;
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Jは、W、F、Y、L、又はMである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、構成1~21のいずれか1項
記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成74)
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
[-(G4S)x-J-(G4S)y-]z
(式中、
xは、1~10であり;
yは、1~10であり
zは、1~10であり、かつ
Jは、W、F、Y、L、又はMである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、構成73記載の構築体、使
用のための構築体、又は方法。
(構成75)
前記不安定ペプチドリンカーが、以下の形式:
-J-(GaS)x-J’-
(式中、
aは、1~10であり;
xは、1~10であり;
Jは、W、F、Y、L、又はMであり、かつ
J’は、W、F、Y、L、又はMである)
のポリペプチド配列を含むか、又はより好適にはそれからなる、構成1~21のいずれか1項
記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成76)
aが、2~5である、構成72~75のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成77)
aが、4である、構成76記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成78)
bが、2~5である、構成72~77のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成79)
bが、4である、構成78記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成80)
xが、1~5である、構成72~79のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成81)
xが、2である、構成80記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成82)
xが、1である、構成80記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成83)
yが、1~5である、構成72~82のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成84)
yが、1である、構成83記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成85)
yが、2である、構成83記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成86)
zが、1~3である、構成72~85のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は
方法。
(構成87)
zが、1である、構成86記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成88)
Jが、W、F、又はYである、構成72~87のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築
体、又は方法。
(構成89)
J’が、W、F、又はYである、構成72~88のいずれか1項記載の構築体、使用のための構
築体、又は方法。
(構成90)
J及び/又はJ’がYである、構成88又は89のいずれか記載の構築体、使用のための構築体
、又は方法。
(構成91)
前記第1の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、腸管経由で到達可能な第1の標的、例えば
、腸管内の標的に結合する、構成1~90のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体
、又は方法。
(構成92)
前記第1の標的が、腸管常在性病原性微生物由来の第1の有害薬剤である、構成91記載の
構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成93)
前記第1の標的が:インターロイキン、インターロイキン受容体、転写因子、サイトカイ
ン、膜貫通型タンパク質、表面糖タンパク質、可溶性タンパク質、インテグリン、接着分
子、ケモカイン、ケモカイン受容体、阻害タンパク質、キナーゼ、G蛋白質共役受容体、
又は毒素からなる群から選択される、構成91記載の構築体、使用のための構築体、又は方
法。
(構成94)
前記第1の標的が:TNF-アルファ又はC.ディフィシル毒素Aからなる群から選択される、
構成93記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成95)
前記第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、腸管経由で到達可能な第2の標的、例えば
、腸管内の標的に結合する、構成91記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成96)
前記第2の標的が、腸管常在性病原性微生物由来の第2の有害薬剤である、構成95記載の
構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成97)
前記第2の標的が:インターロイキン、インターロイキン受容体、転写因子、サイトカイ
ン、膜貫通型タンパク質、表面糖タンパク質、可溶性タンパク質、インテグリン、接着分
子、ケモカイン、ケモカイン受容体、阻害タンパク質、キナーゼ、G蛋白質共役受容体、
又は毒素からなる群から選択される、構成95記載の構築体、使用のための構築体、又は方
法。
(構成98)
前記第2の標的が:TNF-アルファ又はC.ディフィシル毒素Aからなる群から選択される、
構成97記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成99)
前記第1及び第2の標的が、同一である、構成91~98のいずれか1項記載の構築体、使用
のための構築体、又は方法。
(構成100)
前記第1及び第2の標的が、異なるものである、構成91~98のいずれか1項記載の構築体
、使用のための構築体、又は方法。
(構成101)
前記第1の免疫グロブリン鎖可変ドメインが:VL、VHH、及びVHからなる群から選択され
る、構成1~100のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成102)
前記第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが:VL、VHH、及びVHからなる群から選択され
る、構成101記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成103)
前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、VHHである、構成101又は102
のいずれか記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成104)
前記第1及び/又は第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインが、VHである、構成101又は102
のいずれか記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成105)
前記第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインがそれぞれ、配列番号:18及び配列番
号:19からなる群から選択される配列を含む、構成1記載の構築体、使用のための構築体、
又は方法。
(構成106)
前記第1及び第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインがそれぞれ、配列番号:18及び配列番
号:19からなる群から選択される配列からなる、構成105記載の構築体、使用のための構築
体、又は方法。
(構成107)
前記構築体が、配列番号:8~11及び13~16からなる群から選択される配列を含む、構成
1記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成108)
前記構築体が、配列番号:8~11及び13~16からなる群から選択される配列からなる、構
成107記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成109)
前記不安定ペプチドリンカーが、配列番号:2~5からなる群から選択される配列を含む
、構成1記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成110)
前記不安定ペプチドリンカーが、配列番号:2~5からなる群から選択される配列からな
る、構成109記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成111)
前記構築体が、前記第1の免疫グロブリン鎖可変ドメインにペプチドリンカーによって
接続された追加の第3のポリペプチドを含み、該第3のポリペプチドが、腸管に存在する1
以上のプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である、構成1~110のいずれか1項記載の構
築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成112)
前記構築体が、前記第2の免疫グロブリン鎖可変ドメインにペプチドリンカーによって
接続された追加の第4のポリペプチドを含むか又はこれからなり、該第4のポリペプチドが
、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して実質的に抵抗性である、構成111記載の構
築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成113)
前記ペプチドリンカーが、腸管に存在する1以上のプロテアーゼに対して実質的に抵抗
性である、構成111又は112のいずれか記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成114)
前記ペプチドリンカーが、不安定ペプチドリンカーである、構成111又は112のいずれか
記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成115)
前記構築体が、腸溶性コーティングされている、構成1~114のいずれか1項記載の構築
体、使用のための構築体、又は方法。
(構成116)
自己免疫性及び/又は炎症性疾患の治療における使用のための、構成1~115のいずれか1
項記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成117)
炎症性腸疾患、例えば、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の治療における使用のため
の、構成116記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
(構成118)
細菌感染症、例えば、C.ディフィシル感染症の治療における使用のための、構成1~115
のいずれか1項記載の構築体、使用のための構築体、又は方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2022081634000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に実質的に記載された、新規な物、方法及び製造方法。