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特開2022-81639細胞挙動調節用3次元微小環境構造物、細胞挙動調節用3次元表面、アレイ及び3次元微小環境構造物の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081639
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】細胞挙動調節用3次元微小環境構造物、細胞挙動調節用3次元表面、アレイ及び3次元微小環境構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20220524BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220524BHJP
   C12N 5/07 20100101ALN20220524BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N15/12 ZNA
C12N5/07
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041936
(22)【出願日】2022-03-16
(62)【分割の表示】P 2019531304の分割
【原出願日】2016-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】517202249
【氏名又は名称】アモライフサイエンス カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519205958
【氏名又は名称】コロディス バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,チャン
(72)【発明者】
【氏名】ペク,キュ-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ク,フイ-カン
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン-ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ボン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】クー,ソン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】セオ,イン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スン-フン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ-ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,スン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】セオ,ドン-シク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞付着、移動、成長及び分化等の細胞挙動を正確に調節可能な3次元微小環境構造物、細胞挙動調節用表面、アレイ及び3次元微小環境構造物の製造方法を提供する。
【解決手段】ナノ繊維メンブレン;及びP1(第1ペプチド)及びP2(第2ペプチド)の2個以上のペプチドモチーフを含む細胞挙動調節用3次元微小環境構造物であって、前記P1及びP2のペプチドモチーフは、細胞上の2個以上の互いに異なる受容体に結合して、細胞の挙動を制御するシグナルを発生させ、前記P1モチーフは、インテグリンα5β1と結合するモチーフを含み、前記P2モチーフは、前記インテグリンα5β1の共受容体に結合するモチーフとして、インテグリンα5β1の共受容体の活性を制御して、細胞挙動を制御する信号を発生させる、3次元微小環境構造物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ繊維メンブレン;及びP1(第1ペプチド)及びP2(第2ペプチド)の2個以上のペプチドモチーフを含む細胞挙動調節用3次元微小環境構造物であって、
前記ナノ繊維メンブレンは、平均分子量100kDa以上のPVDF、PAN、PES及びPLAのうち一つ以上を含み、
前記P1及びP2のペプチドモチーフは、細胞上の2個以上の互いに異なる受容体に結合して、細胞の挙動を制御するシグナルを発生させ、
前記P1(第1ペプチド)モチーフは、インテグリン(integrin)α5β1と結合するモチーフ(integrin binding motif)として、PHSRN-RGDSP(配列番号17)のアミノ酸配列を含み、
前記P2(第2ペプチド)モチーフは、前記インテグリンα5β1の共受容体に結合するモチーフ(co-receptor binding motif)として、インテグリンα5β1の共受容体の活性を制御して、細胞挙動を制御する信号を発生させ、
前記インテグリンα5β1の共受容体は、Frizzled受容体、LIF受容体、FGF受容体及びTGF受容体のうち一つ以上である、3次元微小環境構造物。
【請求項2】
前記細胞の挙動は、細胞付着、移動、成長、増殖、形態形成(morphogenesis)、分化及び死滅からなる群より選択される一つ以上である、請求項1に記載の3次元微小環境構造物。
【請求項3】
前記ペプチドモチーフは、0.001mg/ml~10mg/mlの密度で導入されるものである、請求項1に記載の3次元微小環境構造物。
【請求項4】
前記ペプチドモチーフは、接着タンパク質に付着しているものである、請求項1に記載の3次元微小環境構造物。
【請求項5】
前記接着タンパク質は、イガイ接着タンパク質である、請求項4に記載の3次元微小環境構造物。
【請求項6】
細胞受容体に結合するP1(第1ペプチド)モチーフ及びP2(第2ペプチド)モチーフで表記される2個以上のペプチドモチーフを含む細胞挙動調節用表面であって、
前記P1及びP2ペプチドモチーフは、細胞上の2個以上の互いに異なる受容体に結合して、細胞の挙動を制御するシグナルを発生させ、
前記P1(第1ペプチド)モチーフは、インテグリン(integrin)α5β1と結合するモチーフ(integrin binding motif)として、PHSRN-RGDSP(配列番号17)のアミノ酸配列を含み、
前記P2(第2ペプチド)モチーフは、前記インテグリンα5β1の共受容体に結合するモチーフ(co-receptor binding motif)として、インテグリンα5β1の共受容体の活性を制御して、細胞挙動を制御する信号を発生させ、
前記インテグリンα5β1の共受容体は、Frizzled受容体、LIF受容体、FGF受容体及びTGF受容体のうち一つ以上である、表面。
【請求項7】
前記表面は、多孔性、非多孔性の表面あるいはその組み合わせである、請求項6に記載の表面。
【請求項8】
前記表面は、ナノ繊維、ハイドロゲル及びパーティクルのうち一つ以上の表面である、請求項6に記載の表面。
【請求項9】
前記細胞の挙動は、細胞付着、移動、成長、増殖、分化、形態形成あるいは死滅からなる群より選択される一つ以上である、請求項6に記載の表面。
【請求項10】
1)PVDF、PAN、PES及びPLAのうち一つ以上の高分子物質を含む組成物を製造するステップ;
2)P1(第1ペプチド)モチーフ及びP2(第2ペプチド)モチーフで表記される2個以上のペプチドモチーフを含む組成物を製造するステップ;及び
3)前記1)及び2)の組成物を混合して電界紡糸するステップを含む、細胞挙動調節用3次元微小環境構造物の製造方法であって、
前記P1(第1ペプチド)モチーフは、インテグリン(integrin)α5β1と結合するモチーフ(integrin binding motif)として、PHSRN-RGDSP(配列番号17)のアミノ酸配列を含み、
前記P2(第2ペプチド)モチーフは、前記インテグリンα5β1の共受容体に結合するモチーフ(co-receptor binding motif)として、インテグリンα5β1の共受容体の活性を制御して、細胞挙動を制御する信号を発生させ、
前記インテグリンα5β1の共受容体は、Frizzled受容体、LIF受容体、FGF受容体及びTGF受容体のうち一つ以上である、細胞挙動調節用3次元微小環境構造物の製造方法。
【請求項11】
1)PVDF、PAN、PES及びPLAのうち一つ以上の高分子物質を含む組成物を電界紡糸して3次元構造物を製造するステップ;及び
2)前記3次元構造物にP1(第1ペプチド)モチーフ及びP2(第2ペプチド)モチーフで表記される2個以上のペプチドモチーフを含む組成物をコーティングするステップを含む、細胞挙動調節用3次元微小環境構造物の製造方法であって、
前記P1(第1ペプチド)モチーフは、インテグリン(integrin)α5β1と結合するモチーフ(integrin binding motif)として、PHSRN-RGDSP(配列番号17)のアミノ酸配列を含み、
前記P2(第2ペプチド)モチーフは、前記インテグリンα5β1の共受容体に結合するモチーフ(co-receptor binding motif)として、インテグリンα5β1の共受容体の活性を制御して、細胞挙動を制御する信号を発生させ、
前記インテグリンα5β1の共受容体は、Frizzled受容体、LIF受容体、FGF受容体及びTGF受容体のうち一つ以上である、細胞挙動調節用3次元微小環境構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多能性幹細胞のような幹細胞を含む細胞の挙動を調節するための3次元微小環境構造物、細胞挙動調節用表面、アレイ及び3次元微小環境構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学的シグナルと物理的シグナルによって定義される細胞の微小環境は、細胞付着、成長、分化及び細胞特異的機能の発現を含む細胞の広範囲な挙動を決定する要素である。細胞は、一般的に、細胞を取り囲む微小環境と相互作用して生存及び生物学的機能を発揮するか、又は細胞の分化方向を決定することがよく知られている。
【0003】
組織内の大部分の細胞は、すべての方向で細胞の機能を導くのに決定的な役割をする細胞外基質タンパク質複合体セットによって取り囲まれている。細胞はインテグリン(integrin)受容体のような細胞表面受容体を通じて細胞外基質に結合し、その結合は、細胞の機能に直接的な影響を及ぼし得る生化学的シグナルとして作用する。また、細胞外基質は、組織内で生化学的及び機械的刺激のモジュレーター(modulator)として作用する。例えば、細胞外基質タンパク質は、成長因子を隔離及び分泌し、営養分の供給速度を調節するだけでなく、細胞の形態を調節し、機械的シグナルを細胞の表面に伝達することができる。細胞外基質の機械的コンプライアンス(compliance)も、細胞の機能を調節する重要な要素である。したがって、細胞が成長、分化、移動、自殺(apoptosis)、又は他の特定の機能を遂行する等の細胞の窮極の運命は、このような細胞外基質微小環境のエフェクター(effector)間の分子的水準の相互作用に対する調節された反応だとみることができる。
【0004】
細胞付着リガンドを生体素材に結合させて合成3次元微小環境を作るための多くの試みがなされてきた。生物由来又は合成素材は、その素材及びその素材が誘導する細胞の挙動を調節するための細胞外基質微小環境用素材として活用可能性が探索されて来た。一例としては、RGDペプチドモチーフ(motif)を有する架橋結合が可能なヒアルロン酸、アルギネート、ポリエチレングリコール系ハイドロゲル(hydrogel)がポリマー骨格(backbone)に移植されたものがある。
【0005】
複雑な構造的な組成、純度、免疫原性と病原体の伝達を含む自然型細胞外基質タンパク質に係る複合性によって、合成生体素材は、自然型細胞外基質と細胞外基質に結合された成長因子の調節的特徴を模倣するために、2次元又は3次元細胞外基質の微小環境模倣体用素材として積極的に開発されて来た。
【0006】
細胞外基質と成長因子が起こすシグナル環境は、細胞の運命を調節する重要なメカニズムである。このような微小環境的刺激は、複合的なシグナル伝逹経路を通じて処理される。このようなシグナル伝逹経路間の相互作用は、細胞の運命を決めるのに決定的である。例えば、線維芽細胞が筋線維芽細胞に増殖及び分化することと、増加したコラーゲン合成は、正常な傷の回復における核心的な事件であり、線維芽細胞の増殖と分化は、複合的なシグナル伝逹経路によって調節される(非特許文献1)。しかしながら、従来の技術は、物理的又は生化学的シグナルの欠如のため、少なくとも互いに異なる2種の細胞表面受容体を同時に活性化させて複合的なシグナル伝逹経路を誘導する微小環境を生成できていない。本発明者は、細胞付着、移動、成長及び分化等の細胞挙動を微細に調節可能な技術を研究した結果、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国公開特許公報第2006-0134050号
【発明の概要】
【0008】
本発明は、細胞付着、移動、成長及び分化等の細胞挙動を正確に調節可能な3次元微小環境構造物、細胞挙動調節用表面、アレイ及び3次元微小環境構造物の製造方法に関する。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、細胞付着、移動、成長及び分化等の細胞挙動を正確に調節可能な3次元微小環境構造物、細胞挙動調節用表面、アレイ及び3次元微小環境構造物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ナノ繊維メンブレン;及びP1(第1ペプチド)及びP2(第2ペプチド)の2個以上のペプチドモチーフを含む細胞挙動調節用3次元微小環境構造物を提供する。
【0011】
本発明において、上記2個以上のペプチドモチーフは、細胞上の2個以上の互いに異なる受容体に結合して、細胞の挙動を制御するシグナルを発生させるものであってもよい。
【0012】
本発明において、上記細胞の挙動は、細胞付着、移動、成長、増殖、形態形成(morphogenesis)、分化及び死滅からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0013】
本発明において、上記細胞の挙動は、細胞の成長であってもよい。
【0014】
本発明において、ナノ繊維メンブレンは、PVDF、PAN、PES、PU及びPLAのうち一つ以上を含むものであってもよい。
【0015】
本発明において、上記ペプチドモチーフにおいて上記P1(第1ペプチド)モチーフは、受容体インテグリン(integrin)の活性を制御し、上記P2(第2ペプチド)モチーフは、インテグリン(integrin)の共受容体(co-receptor)活性を制御し、細胞挙動を調節するシグナルを発生させるものであってもよい。
【0016】
本発明において、上記共受容体は、FGF受容体、frizzled受容体、TGF受容体、EGF受容体、LIF受容体、BMP受容体、カドヘリン(cadherin)、シンデカン(syndecan)及びインターロイキン(interleukin)受容体のうち一つ以上であってもよい。
【0017】
本発明において、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、受容体integrin α3β1、α5β1、α6β1、α9β1、αvβ3、αvβ5及びヘパリン(heparin)のうち一つ以上の受容体を活性化するものであってもよい。
【0018】
本発明において、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、受容体integrin α5β1を活性化するものであってもよい。
【0019】
本発明において、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、RGD、PHSRN-RGDSP、GRGDSP、KLDAPT、SPPRRARVT、及びKNNQKSEPLIGRKKTから選択されるものであってもよい。本発明において、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、PHSRN-RGDSPであってもよい。
【0020】
本発明において、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、受容体integrin α6β1を活性化するものであってもよい。
【0021】
本発明において、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、ラミニン(Laminin)α5のLGドメインに由来するものであってもよい。
【0022】
本発明において、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、GKNTGDHFVLYM、VVSLYNFEQTFML、RFDQELRLVSYN、RLVSYSGVLFFLK、ASKAIQVFLLGG、VLVRVERATVFS、TVFSVDQDNMLE、RLRGPQRVFDLH、FDLHQNMGSVN、QQNLGSVNVSTG及びSRATAQKVSRRSから選択されるものであってもよい。
【0023】
本発明において、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、VVSLYNFEQTFMLであってもよい。
【0024】
本発明において、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、integrin α5β1及びα6β1をそれぞれ活性化するものであってもよい。
【0025】
本発明において、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、integrin α5β1活性化モチーフとしてPHSRN-RGDSP、又はintegrin α5β1活性化モチーフとしてVVSLYNFEQTFMLであってもよい。
【0026】
本発明において、上記共受容体は、Frizzled受容体、LIF受容体、FGF受容体及びTGF受容体を含むものであってもよい。
【0027】
本発明において、上記共受容体は、Frizzled受容体、LIF受容体、FGF受容体及びTGF受容体から選択される3個の共受容体であってもよい。
【0028】
本発明において、上記共受容体は、Frizzled受容体、LIF受容体、FGF受容体及びTGF受容体から選択される2個の共受容体であってもよい。
【0029】
本発明において、上記共受容体は、Frizzled受容体及びTGF受容体であってもよい。
【0030】
本発明において、上記共受容体は、Frizzled受容体であってもよい。
【0031】
本発明において、上記ペプチドモチーフにおいて、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、TGF受容体の活性を制御し、上記P1(第1ペプチド)モチーフは、TGF受容体の共受容体(co-receptor)の活性を制御するものであってもよい。
【0032】
本発明において、上記共受容体は、Frizzled受容体、FGF受容体、EGF受容体、カドヘリン(cadherin)、シンデカン(syndecan)及びインターロイキン(interleukin)受容体のうち一つ以上のものであってもよい。
【0033】
本発明において、上記共受容体は、FGF受容体及びfrizzled受容体であってもよい。本発明において、Frizzled受容体を活性化するモチーフは、LCCGRGHRTRTQRVTERCNC及びLGTQGRLCNKTSEGMDGCELから選択される一つ以上であってもよい。
【0034】
本発明において、TGF受容体を活性化するモチーフは、MHRMPSFLPTTLあるいはLTGKNFPMFHRNLから選択されるものであってもよい。
【0035】
本発明において、FGF受容体を活性化するモチーフは、FLPMSAKS、HFKDPKRLYCK、ANRYLAMKEDGRLLAS、KTGPGQKAあるいはWYVALKRTGQYKLGから選択されるものであってもよい。
【0036】
本発明において、P2(第2ペプチド)モチーフは、LIF受容体を活性化するモチーフとしてIVPLLLLVLH、及びYTAQGEPFPNNVEKLCAPから選択されるものであってもよい。
【0037】
本発明において、上記ペプチドモチーフは、0.001mg/ml~10mg/mlの密度で導入されるものであってもよい。
【0038】
本発明において、上記ペプチドモチーフは、接着タンパク質に付着しているものであってもよい。
【0039】
本発明において、上記接着タンパク質は、イガイ接着タンパク質であってもよい。
【0040】
本発明は、細胞受容体に結合するP1(第1ペプチド)モチーフ及びP2(第2ペプチド)モチーフで表記される2個以上のペプチドモチーフを含む細胞挙動調節用表面であって、上記ペプチドモチーフは、細胞上の2個以上の互いに異なる受容体に結合して、細胞の挙動を制御するシグナルを発生させることを提供する。
【0041】
上記表面は、多孔性、非多孔性の表面あるいはその組み合わせであってもよい。
【0042】
上記表面は、ナノ繊維、ハイドロゲル及びパーティクルのうち一つ以上の表面であってもよい。
【0043】
本発明において、上記細胞の挙動は、細胞付着、移動、成長、増殖、分化、形態形成あるいは死滅からなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0044】
本発明において、上記2個以上の互いに異なる受容体は、インテグリン受容体及びインテグリンの共受容体(coreceptor)であってもよい。
【0045】
本発明において、共受容体は、FGF受容体、frizzled受容体、TGF受容体、EGF受容体、LIF受容体、BMP受容体、カドヘリン(cadherin)、シンデカン(syndecan)及びインターロイキン(interleukin)受容体の中から選択される一つ以上であってもよい。
【0046】
本発明において、共受容体は、FGF受容体、frizzled受容体、TGF受容体、EGF受容体、LIF受容体、BMP受容体、カドヘリン(cadherin)、シンデカン(syndecan)及びインターロイキン(interleukin)受容体のうち一つ以上であってもよい。
【0047】
本発明において、共受容体は、FGF受容体、BMP受容体、EGF受容体、及びfrizzled受容体の中から選択される一つ以上であってもよい。
【0048】
本発明において、共受容体は、frizzled受容体であってもよい。
【0049】
本発明において、共受容体は、FGF受容体であってもよい。
【0050】
本発明において、上記2個以上の互いに異なる受容体は、integrin-frizzled受容体、integrin-LIF受容体、integrin-BMP受容体、integrin-FGF受容体、及びintegrin-EGF受容体のうちいずれか一つであってもよい。
【0051】
本発明において、2個以上のペプチドモチーフは、インテグリンと結合するモチーフ(integrin binding motif)及びインテグリンの共受容体と結合するモチーフ(coreceptor binding motif)であってもよい。
【0052】
本発明において、インテグリンと結合するモチーフ(integrin binding motif)は、integrin a3b1、a5b1、a6b1、a9b1、及びavb3のうち一つ以上のintegrinに結合するものであってもよい。
【0053】
本発明において、インテグリンの共受容体と結合するモチーフ(co-receptor binding motif)は、 integrin-frizzled受容体、integrin-LIF受容体、integrin-BMP受容体、integrin-FGF受容体、及びintegrin-EGF受容体のうち一つ以上の受容体と結合するモチーフであってもよい。
【0054】
本発明において、2個以上のペプチドモチーフは、PHSRN-RGDSPであってもよい。
【0055】
本発明は、請求項1に記載の構造物;及び請求項32に記載の表面から選択された2以上を含む、細胞挙動調節用アレイを提供する。
【0056】
本発明は、1)PVDF、PAN、PES及びPLAのうち一つ以上の高分子物質を含む組成物を製造するステップ;2)ペプチドモチーフを含む組成物を製造するステップ;及び3)上記1)及び2)の組成物を混合して電界紡糸するステップを含む、細胞挙動調節用3次元微小環境構造物の製造方法を提供する。
【0057】
本発明は、1)PVDF、PAN、PES及びPLAのうち一つ以上の高分子物質を含む組成物を電界紡糸して3次元構造物を製造するステップ;及び2)上記3次元構造物にペプチドモチーフを含む組成物をコーティングするステップを含む、細胞挙動調節用3次元微小環境構造物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0058】
本発明の3次元微小環境構造物、表面、アレイ及び3次元微小環境構造物の製造方法は、細胞の付着、移動、成長及び分化等の細胞挙動を正確に調節できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】細胞外基質模倣体の機能を有するペプチドモチーフ(peptide motif)がナノ繊維の表面に位置することを銀染色法(Silver staining))で確認した結果である。
図2a】繊維直径が200、500nm、800nmのナノ繊維を観察した写真である。
図2b】繊維直径が600nm、1000nmのナノ繊維を観察した写真である。
図3】ナノ繊維の表面に細胞外基質模倣体を導入したとき、粒子サイズが500nmで5μmである粒子が得られることを確認した図である。
図4】本発明のアレイレイアウト(array layout)の一例である。
図5】ペプチドモチーフ(peptide motif)が表面に位置したメンブレンを概要的に表現したものである。
図6a】本発明の構造体の一例である。
図6b】ナノ繊維のメンブレン表面にペプチドモチーフ(peptide motif)が存在することを蛍光染色法で確認した結果である。
図6c】タンパク質混合紡糸及びモチーフが細胞(mESC)の付着性に及ぼす影響を示す図である。
図7】本発明によってペプチド20種をコーティングして評価するためのアレイを示す図である。
図8図8図10は、PHSRN-RGDSP等フィブロネクチン、(PHSRN-RGDSP)、ラミニン(RNIAEIKDI等)、カドヘリン(ADTPPV等)由来のペプチドが幹細胞の付着とコロニーの形成に効果があることを確認した図である。
図9図8図10は、PHSRN-RGDSP等フィブロネクチン、(PHSRN-RGDSP)、ラミニン(RNIAEIKDI等)、カドヘリン(ADTPPV等)由来のペプチドが幹細胞の付着とコロニーの形成に効果があることを確認した図である。
図10a図8図10は、PHSRN-RGDSP等フィブロネクチン、(PHSRN-RGDSP)、ラミニン(RNIAEIKDI等)、カドヘリン(ADTPPV等)由来のペプチドが幹細胞の付着とコロニーの形成に効果があることを確認した図である。
図10b図8図10は、PHSRN-RGDSP等フィブロネクチン、(PHSRN-RGDSP)、ラミニン(RNIAEIKDI等)、カドヘリン(ADTPPV等)由来のペプチドが幹細胞の付着とコロニーの形成に効果があることを確認した図である。
図11】各モチーフ別に胚性幹細胞の自己増殖有無及びコロニーサイズ(colony size)に及ぼす効果をAP染色で確認した結果を示す図である。
図12】タンパク質コーティング時、コーティング方法による効果(2Dプレートコーティング)を示す図である。
図13図13及び図14は、2個の核心受容体の活性を同時に制御したとき、幹細胞の自己増殖及びコロニーサイズに及ぼす効果をAP染色法を通じて確認した結果である。
図14a図13及び図14は、2個の核心受容体の活性を同時に制御したとき、幹細胞の自己増殖及びコロニーサイズに及ぼす効果をAP染色法を通じて確認した結果である。
図14b図13及び図14は、2個の核心受容体の活性を同時に制御したとき、幹細胞の自己増殖及びコロニーサイズに及ぼす効果をAP染色法を通じて確認した結果である。
図15】hIPSCでタンパク質モチーフの効果を確認(2D)した結果である。
図16】hIPSCでタンパク質モチーフの効果を確認(2D)したものである。
図17】AP染色の結果である。
図18】mESCでPHSRN-RGDSPモチーフの密度効果を確認した結果である。
図19】タンパク質コーティング濃度がhIPSC培養に及ぼす影響(2Dプレート)を示す図である。
図20】PVDFメンブレンの厚さ調節を示す図である。
図21】個別モチーフのみから構成された微小環境アレイ(microenvironment array)である。
図22】各ペプチドモチーフ(peptide motif)が細胞の移動性に及ぼす影響を示す図表である。
図23a】スクラッチテスト(scratch test)の代表的な結果である。
図23b】スクラッチテスト(scratch test)の代表的な結果である。
図24】本発明の実施例12の実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明は、細胞付着、移動、成長及び分化等の細胞挙動を正確に調節可能な3次元微小環境構造物、細胞挙動調節用表面、アレイ及び3次元微小環境構造物の製造方法に関する。
【0061】
本発明の「3次元構造物」は、細胞の付着、移動、成長及び分化を目的に使用される一切の立体構造物を含む意味である。また、本発明の「微小環境」は、自然型細胞外基質を細胞外で具現するための一切の生物学的、化学的、物理的要素である。
【0062】
本発明の細胞挙動調節用3次元微小環境構造物は、ナノ繊維メンブレン及びペプチドモチーフを含む。
【0063】
本発明は、ナノ繊維メンブレン;及びP1(第1ペプチド)及びP2(第2ペプチド)の2個以上のペプチドモチーフを含む細胞挙動調節用3次元微小環境構造物を提供する。
【0064】
本発明において、上記細胞の挙動は細胞付着、移動、成長及び分化からなる群より選択される一つ以上であってもよく、特に、細胞の成長を示すことが好ましい。
【0065】
本発明のナノ繊維メンブレンは、高分子物質を含むか、これからなるナノ繊維を含むことができ、上記高分子物質は、電界紡糸可能なポリマーであってもよく、その例として、ポリビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリラクチドグリコール酸(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリアルキレンオキシド等が挙げられるが、これに限定されない。特に、本発明のナノ繊維メンブレンは、PVDF、PAN、PES及びPLAのうち一つ以上を含むことが好ましい。
【0066】
本発明の上記高分子物質は、最小100000から数百万ダルトンの分子量を有する範囲から選択されることができ、300000から500000の分子量を有することが好ましい。本発明のペプチドモチーフは、細胞上の受容体に結合して細胞の挙動を制御するシグナルを発生させるものであってもよく、2個以上のペプチドモチーフが同時に含まれることが好ましいが、これによって、細胞上の2個以上の互いに異なる受容体に結合して細胞の挙動を制御するシグナルを発生させるものであってもよい。
【0067】
本発明において、上記ペプチドモチーフにおいて上記P1(第1ペプチド)モチーフは、受容体インテグリン(integrin)の活性を制御し、上記P2(第2ペプチド)モチーフは、インテグリン(integrin)の共受容体(co-receptor)の活性を制御して、細胞挙動を調節するシグナルを発生させるものであってもよい。
【0068】
本発明のペプチドモチーフは、インテグリンと結合するモチーフ(integrin binding motif) 及びインテグリン(integrin)の共受容体(co-receptor)と結合するモチーフ(co-receptor binding motif)を含むことが好ましく、上記インテグリンと結合するモチーフ(integrin binding motif)は、integrin a3b1、a5b1、a6b1、a9b1、及びavb3のうち一つ以上のintegrinに結合するモチーフであり、上記インテグリン(integrin)の共受容体(co-receptor)と結合するモチーフ(co-receptor binding motif)は、integrin-frizzled受容体、integrin-LIF受容体、integrin-BMP受容体、integrin-FGF受容体、及びintegrin-EGF受容体のうち一つ以上の受容体と結合するモチーフであってもよい。
【0069】
具体的に、本発明のペプチドモチーフは、integrin-frizzled受容体、integrin-LIF受容体、integrin-BMP受容体、integrin-FGF受容体、及びintegrin-EGF受容体のうち一つ以上の活性を制御するものであってもよい。
【0070】
特に、本発明においては、2種の互いに異なる受容体を対象にした実験である人工多能性幹細胞の培養実験で、細胞受容体Integrin-frizzed受容体>integrin-LIF受容体>Integrin-FGF受容体の順に自己増殖と成長/増殖の効果に優れることを実験的に確認し、4種の互いに異なる受容体を対象にした実験である人工多能性幹細胞の培養細胞受容体活性化の組み合わせの影響で、frizzled又はTGFβ受容体等の4種の組み合わせが、コロニーサイズ、自己増殖及び分化能維持の効果に優れることを確認した。
【0071】
本発明のペプチドモチーフは、RGD、PHSRN-RGDSP、SPPRRARVT、TWYKIAF、RKRLQVQLSIRT、NRWHSIYITRFG、GIIFFL、RYVVLPR、RNIAEIKDI、WQPPRARI、KNNQKSEPLLIGRKKT、KKQRFRHRNRKGYRSG、LCCGRGHRTRTQRVTERCNC、LGTQGRLCNKTSEGMDGCEL、IVPLLLLVLH、YTAQGEPFPNNVEKLCAP、LFSHAVSSNG、ADTPPV、DQNDN、及びLRAHAVDINGのうち一つ以上を含むことが好ましく、PHSRN-RGDSPを必ず含むことが好ましい。
【0072】
上記ペプチドモチーフは、3次元微小環境構造物又はその表面上に、0.001mg/ml~10mg/mlの密度で導入されることが好ましく、0.01mg/ml~1mg/mlの密度が最も好ましい。より好ましくは、本発明のペプチドモチーフは、イガイ接着タンパク質に付着しているものであってもよい。上記イガイ接着タンパク質は、市販の素材であるか、合成あるいは自然型供給源から得ることができる。市販のイガイ接着タンパク質の例としては、米国サウスカロリナ州ノースオーガスタ所在のコロディスバイオサイエンス社によって市販されているMAPTrixTM ECMがあるが、これに限定されるものではない。MAPTrixTMECMは、コロディスバイオサイエンス社が開発した素材であって、イガイ接着タンパク質基盤の細胞外基質模倣体素材である。
【0073】
上記素材は、細胞外基質に由来する多様なペプチドを遺伝子組み換え的に機能化したイガイ接着タンパク質であって、自然的に存在する細胞外基質の生体活性を模倣したものであり、自然型あるいは組み換え細胞外基質タンパク質と比べると、1次細胞培養で自然型細胞外基質タンパク質と類似する生体活性を有することが実験的に証明された。このようにあらかじめデザインされた細胞外基質模倣体であるMAPTrixTM ECMは、合成3次元細胞外基質微小環境構造物の製造時に大きな長所を有する。例えば、細胞特異的又は使用者定義によって調整される合成3次元微小環境構造物を提供して、生化学的シグナルの側面で自然型微小環境が提供する生化学的シグナルと類似するように精密に模倣することができる。
【0074】
上記MAPTrixTM ECMは、生体活性ペプチドと遺伝子組み換え的に機能化されたイガイ接着タンパク質である。本発明において、上記イガイ接着タンパク質は、それ自体で使用するか、配列番号8~10に記載のfoot protein 5(FP-5)又は配列番号5又は6に記載のfoot protein(FP-3)の炭素末端やアミン末端、あるいは両方に該当する第1ペプチドとイガイ接着タンパク質FP-1(配列番号1、2、3)又は各タンパク質の切片からなる群より選択される少なくとも一つの第2ペプチドとが融合された融合タンパク質として使用されることができる。
【0075】
本発明において、生体活性ペプチドは、自然型細胞外基質の微小環境構造を模倣するために必要である。また、例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)又は物質P等の成長因子といった追加の成分が含まれて、細胞及び組織培養、医療用装置及び治療、又は他の関連する適用分野において、細胞外基質類似体の有利な効果をさらに向上することができる。
【0076】
上記生体活性ペプチドは、遺伝子組み換え技術でイガイ接着タンパク質の炭素末端や、アミン末端、あるいは両方に付加されることができる。融合されたイガイ接着タンパク質は、炭素末端、アミン末端はもちろん、融合タンパク質の間に付加されることができる。例えば、融合タンパク質FP-151の場合、FP-1とFP-5との間に細胞外基質又は成長因子由来のペプチドを付加することができる。また、生体活性ペプチドは、両末端や融合タンパク質の間に互いに異なる細胞外基質由来のペプチドや成長因子由来のペプチドであってもよい。
【0077】
生体活性ペプチドは、細胞外基質タンパク質に由来し、自然型細胞外基質の生化学的又は生物理学的シグナルを模倣する自然型又は合成ペプチドである。上記細胞外基質タンパク質は、コラーゲン(collagen)、フィブロネクチン(fibronectin)、ラミニン(laminin)、ビトロネクチン(vitronectin)等のような繊維状タンパク質であってもよい。細胞外基質タンパク質は、インテグリンのような細胞表面受容体の活性に影響を及ぼすことができ、インテグリンは再び多価の(polyvalent)細胞外基質タンパク質と結合した後、焦点接着複合体(focal adhesion complex)内でキナアーゼ(kinase)及びアダプター(adaptor)タンパク質との同時クラスタリング(co-clustering)によってシグナル伝逹経路を活性化させることができる。例えば、フィブロネクチン、ラミニン又はビトロネクチン由来のRGD含有ペプチド断片(segment)は、インテグリンの活性を調節することができる。
【0078】
本発明は、細胞挙動調節用表面を提供し、これは微小環境的に定義された3D表面、微小環境表面又は 3次元の微小環境表面であってもよい。本発明の表面は、細胞受容体に結合するP1(第1ペプチド)モチーフ及びP2(第2ペプチド)モチーフで表記される2個以上のペプチドモチーフを含む細胞挙動調節用表面であって、上記ペプチドモチーフは、細胞上の2個以上の互いに異なる受容体に結合して細胞の挙動を制御するシグナルを発生させるものであってもよい。
【0079】
本発明の上記表面は、ナノ繊維、ハイドロゲル、パーティクル、セルロース、ガラス繊維等の細胞培養用構造物そのものを意味するか、その表面であってもよく、特にポリビニリデン(PVDF)を含む多様な物質で構成されたパターン又は多孔性ナノ繊維そのもの又はその表面であってもよい。
【0080】
本発明の上記表面は、細胞受容体に結合する2個以上のペプチドモチーフを含む細胞挙動調節用表面であって、ペプチドモチーフは、細胞上の2個以上の互いに異なる受容体に結合して細胞の挙動を制御するシグナルを発生させるものであってもよい。本発明において、上記細胞の挙動は、細胞付着、移動、成長及び分化からなる群より選択される一つ以上であってもよく、上記2個以上の互いに異なる受容体は、インテグリン受容体及びインテグリン外受容体(integrin-coreceptor)であってもよく、上記2個以上の互いに異なる受容体は、integrin-frizzled受容体、integrin-LIF受容体、integrin-BMP受容体、integrin-FGF受容体、及びintegrin-EGF受容体のうちいずれか一つであってもよい。
【0081】
一方、本発明の表面における、ペプチドモチーフ及び/又は受容体を含む一切の事項に、上記細胞挙動調節用3次元微小環境構造物に関連する記載内容が等しく適用される。
【0082】
本発明の一例において、上記表面は、ピブロネクチンドメインIIIに由来するヘパリンやモチーフを活性化するα5β1インテグリンが存在する基質タンパク質を含む。モチーフと結合したヘパリン又は活性化に適したα5β1インテグリンは、RGD(配列番号15)、GRGDSP(配列番号16)、PHSRN-RGDSP(配列番号17)、SPPRRARVT(配列番号18)、WQPPRARI(配列番号19)、KNNQKSEPLIGRKKT(配列番号20)、又はモチーフを活性化するα5β1インテグリンとモチーフと結合したヘパリンの結合の中から選別される。
【0083】
他の例において、本発明の表面は、幹細胞の自己再生と多能性を助けるラミニンα5 LGドメインやラミニンα1に由来するモチーフを活性化するα6β1インテグリンが存在する基質タンパク質を提供する。モチーフを活性化するのに好適なα6β1インテグリンは、GKNTGDHFVLYM(配列番号22)、VVSLYNFEQTFML(配列番号23)、RFDQELRLVSYN(配列番号24)、RLVSYSGVLFFLK(配列番号25)、ASKAIQVFLLGG(配列番号26)、VLVRVERATVFS(配列番号27)、TVFSVDQDNMLE(配列番号28)、RLRGPQRVFDLH(配列番号29)、FDLHQNMGSVN(配列番号30)、QQNLGSVNVSTG(配列番号31)、SRATAQKVSRRS(配列番号32)、TWYKIAFQRNRK(配列番号45)、NRWHSIYITRFG(配列番号46)の中から選択される。
【0084】
他の例において、本発明の表面は、幹細胞の多能性と自己再生を助けるために同時にモチーフと結合したα6β1とモチーフを活性化するα5β1インテグリンとの結合的モチーフが存在する基質タンパク質を含む。好適な結合的モチーフは、幹細胞の自己再生と多能性を助けるPHSRN-RGDSP(配列番号17)とNRWHSIYITRFG(配列番号46)との組み合わせである。
【0085】
本発明は、カノピンドメインやヘキサピンドメインに由来するFGFのペプチドモチーフとともに機能する組み換えられたイガイ接着タンパク質を構成するFGF類似体を提供する。FGFペプチドモチーフ類似体は、HFKDPKRLYCK(配列番号34)、FLPMSAKS(配列番号35)、KTGPGQKAIL(配列番号36)に由来するカノピンドメインやANRYLAMKEDGRLLAS(配列番号33)に由来するヘキサピンドメインの中から選定されるとみることが好ましい。本発明は、上記3次元微小環境構造物;及び上記表面から選択された2以上を含む、細胞挙動調節用アレイを提供する。
【0086】
本発明の細胞挙動調節用アレイの一具現例を、実施例4及び図7に示す。
【0087】
本発明のアレイにおける、ペプチドモチーフ及び/又は受容体を含む一切の事項に、上記細胞挙動調節用3次元微小環境構造物及び/又は上記表面に関連する記載内容が等しく適用される。
【0088】
本発明は、細胞挙動調節用3次元微小環境構造物の製造方法を提供し、具体的に、1)PVDF、PAN、PES及びPLAのうち一つ以上の高分子物質を含む組成物を製造するステップ;2)ペプチドモチーフを含む組成物を製造するステップ;及び3)上記1)及び2)の組成物を混合して電界紡糸するステップを含むことができる。
【0089】
また、本発明の細胞挙動調節用3次元微小環境構造物の製造方法は、1)PVDF、PAN、PES及びPLAのうち一つ以上の高分子物質を含む組成物を電界紡糸して、3次元構造物を製造するステップ;及び2)上記3次元構造物にペプチドモチーフを含む組成物をコーティングするステップを含むことができる。
【0090】
本発明の細胞挙動調節用3次元微小環境構造物の製造方法における一切の事項に、上記細胞挙動調節用 3次元微小環境構造物及び/又は上記表面及び/又は上記アレイに関連する記載内容が等しく適用される。
【実施例0091】
以下、下記実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
【0092】
実施例1 電界紡糸を用いてナノ繊維の表面にペプチドモチーフ(peptide motif)を導入
【0093】
実験方法
1)電界紡糸溶液の準備: それぞれの合成高分子PVDF(SigmaAldrich(St.Louis, USA)の200kDaの平均分子量)、PAN(200kDaの平均分子量)、PES、PLA(SigmaAldrich(St. Louis, USA)から購買、200kDaの平均分子量)の4種を溶媒DMAcに12~18wt%の濃度で準備した後、
2)細胞外基質模倣体であるMAPTrixTM(Kollodis BioSciences (North Augusta, SC, USA)から購買)を水/DMAc混合溶媒に溶かした後、1)の合成高分子溶液に添加して、濃度が15、18wt%の電界紡糸溶液を準備した。
【0094】
この際に使用される溶媒(solvent)は、DMAcとTHFを使用し、繊維径を調節するために溶媒の混合比を調節する。
【0095】
例えば、200nmの繊維径を有する繊維を作製する場合、紡糸溶液の濃度は15wt%とし、溶媒混合比(DMAc/THF(7/3))として電界紡糸を実施し、5,600nmの繊維径を有する繊維は、紡糸溶液の濃度を18wt%とし、溶媒混合比(DMAc/THF(7/3))として電界紡糸を実施した。
【0096】
また、800~1000nmの繊維径を有する繊維を作製するためには、紡糸溶液の濃度を18wt%とし、溶媒混合比(DMAc/THF(5/5))として電界紡糸を実施した。
【0097】
電界紡糸の条件として、電圧21kV、噴出速度は0.1mL/minで全ての紡糸溶液において一定であるが、ノズルとコレクター(collector)間距離は、各溶液別にナノ繊維がよく形成されるように10から11cmに調整した。チャンバ内の恒温/湿を30/60%で一定の温/湿度を維持しながら電界紡糸を実施した(繊維径調節のために恒温恒湿を紡糸性及び繊維径の分布によって温/湿度を調節した)。
【0098】
各電界紡糸溶液の組成比及び電界紡糸条件は、下記表1及び表2に記載する。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
E溶液は、上記説明された方法によって準備した電界紡糸可能な生体機能的構成物である。
【0102】
実験結果
細胞外基質模倣体の機能を有するペプチドモチーフ(peptide motif)がナノ繊維の表面に位置したナノ繊維メンブレンが形成されたことを電子顕微鏡で確認し、ナノ繊維の表面にペプチドモチーフ(peptide motif)が存在することを染色試験(staining testを)通じて確認した。すなわち、純粋PVDF(PVDF Control)はタンパク質のアミン基(-NH2)が存在しないから染色されず、色相に変わりがないが、各タンパク質(MAP、Combo、RGD)が添加されたナノ繊維の表面はNH2基が存在して染色が可能である。
【0103】
実験結果を図1に示す。図1は、細胞外基質模倣体機能を有するペプチドモチーフ(peptide motif)がナノ繊維の表面に位置することを銀染色法(Silver staining)で確認した結果である。
【0104】
先行技術は、ナノ繊維の表面にペプチドモチーフ(peptide motif)を導入する機能化は、ペプチドモチーフ(peptide motif)を化学的に固定する表面処理工程等追加の工程が要求されるが、本発明は、熱力学的原理を用いて既存の電界紡糸工程を追加あるいは補完する必要性がなくて、経済的且つ単純であるという長所を有する。
【0105】
実施例2 繊維直径が調節されたナノ繊維メンブレン
【0106】
実験方法
1)ナノ繊維直径を調節するためにPVDFを代表的に選定し、PVDFと混和性のあるPVDF共重合体で混合物を製造した。PVDF共重合体は、分子量が40万、60万及び65万であるPVDF共重合体を用いて、 様々な繊維直径の ナノ繊維メンブレンを追加作製した。
2)上記PVDF及びPVDF共重合体の混合比率を、それぞれ1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9へと異ならせながら、PVDF共重合体の分子量と混合比による直径調節効果を観察した。
【0107】
電界紡糸手順と条件は実施例1と同一である。
【0108】
実験結果
実験結果を図2に示す。図2aは、繊維直径が200、500nm、800nmのナノ繊維を観察した写真であり、図2bは、繊維直径が600nm、1000nmのナノ繊維を観察した写真である。実験結果、PVDF/PVDF共重合体の混合比とPVDF分子量を最適化して、繊維直径が200、500nm、800nmのナノ繊維メンブレンが作製されることを確認した。
【0109】
ナノ繊維の直径は、細胞の付着と成長に影響を及ぼす重要な要素の一つである。本発明において、細胞外基質によって形成された生化学的環境を一定でありながらもナノ繊維直径を変化させた膜基質(membrane substrate)を具現した。従来の技術である化学的固定方法は、ペプチドモチーフとナノ繊維表面間の化学反応がランダム反応(random reaction)であるので、常に一定の密度や方向(orientation)が具現されないが、本発明は、常に一定の密度や方向になると共に、ナノ繊維直径を精密に制御したメンブレンが作製可能である。
【0110】
実施例3.粒子が含まれたナノ繊維の製造
【0111】
実験方法
1)ナノ繊維の表面に細胞外基質模倣体で構成された粒子を導入するために1mLの水に重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)を溶かし、10Mm濃度のPh6.5のバッファー溶液を得て、 上記バッファー溶液にEDC(l-Ethyl-3-[3-Dimethylaminopropyl]carbodiimide hydrochloride)10mg及びS-NHS 5mgを溶かして水溶液を準備した後、
2)フィブロネクチン(fibronectin))模倣体であるPHSRN-RGDSPペプチドモチーフを有するイガイタンパク質0.1mgを水1mLに溶かして反応溶液を準備して、
3)ナノ繊維メンブレンがコーティングされたマイクロウェルプレート(micro well plate)にEDC/S-NHS溶液を入れて、ナノ繊維メンブレンの表面に存在するMAPTrixの-COOH基が活性化するように30分間培養(incubation)した。
【0112】
その後、上記2)の反応溶液をナノ繊維の表面に加えて、ナノ繊維上の-COOHと反応して粒子が形成されるようにした。
【0113】
実験結果
実験結果を図3に示す。図3は、ナノ繊維の表面に細胞外基質模倣体を導入したとき、粒子サイズが500nmで5μmである粒子が得られることを確認した図である。ナノ繊維の表面の形態(topograph)は、細胞の微小環境を構成する重要な要素の一つで、粒子の表面にペプチドモチーフ(peptide motif)が存在して、表面形態とペプチドモチーフ(peptide motif)との組み合わせで、細胞の挙動をより精密に制御できるメンブレンが作製可能であることを確認した。
【0114】
実施例4.微小環境アレイ(array)の作製
【0115】
実施例4-1 ナノ繊維メンブレンの表面にペプチドモチーフ(peptide motif)を付着
【0116】
実験方法
1)12個のフィブロネクチン由来のペプチドモチーフ(peptide motif)が表面に存在するナノ繊維メンブレンを、実施例1によって作製した後(図4のレイアウト参照)、
2)各ペプチドモチーフ(peptide motif)を含むメンブレンを12ウェルプレートにコーティングし、図4にアレイレイアウトを表示した。
3)このとき、ペプチドモチーフ(peptide motif)の配列(sequence)は、配列番号15-20、43番で、10個を明細書に代表的に表記した。
【0117】
実験結果
図5は、繊維直径がそれぞれ200、500及び800のメンブレンの電子顕微鏡写真であり、図5は、ペプチドモチーフ(peptide motif)が表面に位置したメンブレンを概要的に表現したものであり、図6bは、ナノ繊維メンブレンの表面にペプチドモチーフ(peptide motif)が存在することを蛍光染色法で確認した結果である。
【0118】
上記実験結果を通じて、ナノ繊維の表面にペプチドモチーフ(peptide motif)が存在し、直径が200、500及び800nmのメンブレンを作製して、微小環境が精密に制御された細胞培養用表面を作製可能であることを確認した。
【0119】
また、図6cは、タンパク質混合紡糸及びモチーフが細胞(mESC)の付着性に及ぼす影響を示す図であり、それぞれ次を示す。
-PVDF:PVDFのみ紡糸したサンプル
-PVDF-MAP:PVDFの紡糸時にMAP(イガイ接着タンパク質)を混合紡糸
-PVDF-Combo:PVDFの紡糸時にCombo(MAP-Combo(フィブロネクチンモチーフ:PHSRN + GRGDSP))を混合紡糸
【0120】
実験結果、PVDFのみ紡糸時にはmESCがほとんど付かないが、タンパク質を混合紡糸すれば、細胞が多く付き、モチーフ(Combo)が入ったときにより多くの細胞が付くことを確認し、細胞の付着性は、PVDF<PVDF-MAP<PVDF-Comboの順であった。また、タンパク質混合紡糸の効果があり、モチーフの効果があることを確認した。
【0121】
実施例4-2 幹細胞の付着とコロニーの形成に効果があるペプチドモチーフ(peptide motif)の選定
【0122】
実験方法
1)実施例1によって作製されたCombo混合紡糸600nmのナノ繊維メンブレンに、 フィブロネクチン、ラミニン、WNT、LIF、カドヘリン類似ペプチド等20種をコーティングしてアレイを準備し(図7は、本発明によってペプチド20種をコーティングして評価するためのアレイを示す図である。)
2)単独で又は結合的に多様な微小環境を具現するために、インテグリン、LIF、Frizzled受容体に結合する、RGD(SEQ ID NO: 15)、GRGDSP(SEQ ID NO: 16)、PHSRN-RGDSP(SEQ ID NO: 17)、KLDAPT(SEQ ID NO: 43)のようなモチーフと結合したインテグリンと、SPPRRARVT(SEQ ID NO: 18)、WQPPRARI(SEQ ID NO: 19)、KNNQKSEPLIGRKKT(SEQ ID NO: 20)、ATETTITIS、YEKPGSPPREVVPRPRPGVのようなモチーフと結合したヘパリンを含むMAPTrixTMは、それぞれのウェルに細胞外的微小環境表面を作るために使用される。
【0123】
20個のペプチドモチーフ(peptide motif)の配列は、RGD、PHSRN-RGDSP、SPPRRARVT、TWYKIAF、RKRLQVQLSIRT、NRWHSIYITRFG、GIIFFL、RYVVLPR、RNIAEIKDI、WQPPRARI、KNNQKSEPLLIGRKKT、KKQRFRHRNRKGYRSG、LCCGRGHRTRTQRVTERCNC、LGTQGRLCNKTSEGMDGCEL、IVPLLLLVLH、YTAQGEPFPNNVEKLCAP、LFSHAVSSNG、ADTPPV、DQNDN、LRAHAVDING等である。
【0124】
実験結果
実験結果を図8図10に示す。
【0125】
図8~10は、PHSRN-RGDSP等フィブロネクチン、(PHSRN-RGDSP)、ラミニン(RNIAEIKDI等)、カドヘリン(ADTPPV等)由来のペプチドが幹細胞の付着とコロニーの形成に効果があることを確認した図である。
【0126】
上記図から確認されるように、PHSRN-RGDSP等フィブロネクチン、(PHSRN-RGDSP)、ラミニン(RNIAEIKDI等)、カドヘリン(ADTPPV等)由来のペプチドが、幹細胞の付着とコロニーの形成に効果があることが確認できる。しかし、PHSRN-RGDSPはMatrigel水準の細胞付着とコロニーサイズを形成して、その後の実験はPHSRN-RGDSPを使用した。
【0127】
実施例5.幹細胞の培養に対するペプチドモチーフ(peptide motif)の効果
【0128】
実験方法
1)実施例4で作製したアレイを使用して胚性幹細胞の自己増殖と成長に優れた微小環境を探索するために、細胞培養試験を行った。
2)serum replacement media及びLIF等が含まれた細胞培養液を各ウェルに分注し、マウス由来の胚性幹細胞を96時間培養した後、AP染色を通じて各微小環境が胚性幹細胞の自己増殖とコロニーサイズに及ぼす影響を調査した。ペプチドモチーフ(peptide motif)の効果を検証するために、比較対象としてペプチドモチーフ(peptide motif)のないナノ繊維及びPDLコーティング表面を使用して比較試験を行った。
【0129】
実験結果
実験結果を図11及び図12に示す。
【0130】
図11は、各モチーフ別に胚性幹細胞の自己増殖有無及びコロニーサイズに及ぼす効果をAP染色で確認した結果を示す図である。
【0131】
図11の結果を通じて、各モチーフ別に胚性幹細胞の自己増殖有無及びコロニーサイズに及ぼす効果をAP染色で確認した結果、PHSRN-RGDSPモチーフが存在するナノ繊維において、自己増殖効果に優れ、コロニーサイズが最も大きいことを確認した。
【0132】
図12は、タンパク質のコーティング時、コーティング方法による効果(2Dプレートコーティング)を示す図であり、実験結果は次の通りである。
コーティングタンパク質:0.5mg/ml Combo
(A):NHS/EDC処理溶液にタンパク質溶液をすぐ添加コーティング
(R):NHS/EDC処理溶液を除去後、タンパク質溶液を処理コーティング
【0133】
実験結果、(A)ではタンパク質が粒子として観察されるが、(R)では、粒子が観察されなかった。また、(A)でmESCの培養時にstemness(幹細胞性)がよく維持されたコロニー模様を維持するが、 (R)では、stemnessが維持されていない分化した形態の細胞が多く、これを通じて、コーティング方法によってコーティングされるタンパク質の形態が変わり、粒子が形成される時にmESCの培養により良い影響を与えることを確認した。
【0134】
本実験を通じて、ナノ繊維の表面にペプチドモチーフ(peptide motif)タイプと細胞が培養される表面の形態(topograph)を最適化する場合、自己増殖とコロニーサイズを大きく改善できることを確認した。
【0135】
実施例6.人工多能性幹細胞の培養で細胞受容体活性化の組み合わせの影響(1)
【0136】
実験方法
実施例1及び2によってナノ繊維直径が200nmに制御されたメンブレンを作製し、このとき、ナノメンブレンの表面は幹細胞の挙動を決定する核心受容体7種のうち、実施例5で核心受容体の活性制御を通じて幹細胞培養効果のあるモチーフの中で互いに異なる受容体を同時に制御できるペプチド組み合わせ間の上昇効果を確認するために、3種のintegrin-FGF受容体、integrin-frizzled受容体、及びintegrin-LIF受容体の活性を同時に制御するペプチドモチーフ(peptide motif)が存在するように準備した。3個の微小環境を有するメンブレンを準備して、6ウェルプレートにコーティングした。人工多能性幹細胞(human induced pluripotent stem cell)の培養は実施例5と同一に行い、各微小環境が幹細胞の挙動に及ぼす影響を調査した。
【0137】
実験結果
実験結果を図13及び図14に示す。図13及び14は、2個の核心受容体の活性を同時に制御したとき、幹細胞の自己増殖及びコロニーサイズに及ぼす効果をAP染色法を通じて確認した結果である。具体的に、図13は、プレートにPHSRN-RGDSPとFGFタンパク質をコーティングして、Integrin-FGF受容体を同時に制御可能であるかと、タンパク質コーティング濃度の影響を確認したものである。
【0138】
実験結果、PHSRN-RGDSPのみコーティングした時と、PHSRN-RGDSPとFGFタンパク質とを同時にコーティングした時との、細胞の模様とコロニーのサイズが異なることが確認できる。FGF1とFGF4よりもFGF3タンパク質を同時にコーティングした時、幹細胞の模様が良く、コロニーのサイズが大きくなることが分かる。 また、コーティングするタンパク質の量が増加するほど、コロニーのサイズは小さくなるが、幹細胞の模様が良くなることが確認できる。これを通じて、PHSRN-RGDSPのみコーティングした時よりもFGF3タンパク質を同時にコーティングした時、人工多能性幹細胞の培養により良い影響を与えることを確認した。
【0139】
また、図14a~図14cを通じて、Integrin-FGF受容体を同時に制御すれば、integrin受容体の制御に比べて一層良い自己増殖結果を得ることができ、細胞の模様とコロニーサイズもpositive controlであるMatrigelに近接した効果があることが確認できる。Integrin-frizzed受容体及びintegrin-LIF受容体は、integrin-FGF受容体よりも、よい良い効果があることを細胞の模様とコロニーサイズの比較を通じて確認した。幹細胞の模様とコロニーサイズを比較した結果、Integrin-frizzed受容体>integrin-LIF受容体>Integrin-FGF受容体の順に自己増殖と成長/増殖の効果に優れることが分かった。特に、Integrin-frizzed受容体の組み合わせは、幹細胞分化能の維持でMatrigel水準以上であり、iMatrixと類似の効果を発揮した。
【0140】
上記実験を通じて、幹細胞の挙動を決定する7個の核心受容体は、幹細胞分化能の維持/自己増殖に及ぼす寄与度が異なることが本実施例から確認でき、2個の受容体を同時に制御する場合、integrin-frizzled受容体の組み合わせは、生体内微小環境に最も近い模倣体であることが分かる。
【0141】
実施例7.人工多能性幹細胞の培養で細胞受容体活性化の組み合わせの影響(2)
【0142】
実験方法
実施例6によって、プレートの表面にペプチドモチーフが存在するプレートを作製した。このとき、プレートの表面には7個の核心受容体のうち4個の受容体活性を同時に制御するように各受容体に結合するペプチドモチーフ(peptide motif)が存在する。実施例5及び6と同一の手順によって、各微小環境が人工多能性幹細胞の培養に及ぼす効果を確認した。
【0143】
各ウェルプレートにコーティングされた表面を通じて制御される組み合わせ受容体は、Integrin- frizzed-FGF-TGFβ受容体、Integrin-LIF-FGF-TGFβ、Integrin-frizzled-LIF-TGFβ、Integrin- frizzled-LIF-FGF受容体である。
【0144】
実験結果
実験結果を図15及び図16に示す。図15は、hIPSCでタンパク質モチーフの効果を確認(2D)した結果であり、次を示す。
2Dプレートにタンパク質をコーティング後、hIPSC培養
Control: Matrigel
コーティングタンパク質:Combo、FGF3、TGFb1、Wnt5a、LIF1の5つのタンパク質を全部混合コーティング(All、それぞれ0.1mg/mlで混合)、-表示は混合溶液から除いたタンパク質を示す(ex:-FGF3は5つの混合溶液でFGFのみ除かれたもの)。
*-はComboのみコーティングしたものであり、MAPは0.1mg/ml Combo+0.4mg/ml MAPコーティングしたものである。
【0145】
実験結果、Comboのみコーティング時にはhIPSCがいずれも分化した形態で育ったし、MAPを混ぜる場合、hIPSCが育つことはあるが、コロニーの形態が小さくなった。また、FGF3がないとき、コロニーのサイズが小さくなったし、TGFb1とWnt5aがなければ、コロニーのサイズは大きくなるが、分化した形態と見えた。LIF1がないとき、コロニーの模様が良くなったし、コーティングしたタンパク質モチーフによる効果に差があり、タンパク質モチーフの混合によってhIPSCのコロニーの模様が変わった。
【0146】
また、図16は、hIPSCでタンパク質モチーフの効果を確認(2D)したものであり、具体的に2Dプレートにタンパク質をコーティング後、hIPSC培養後、stemnessマーカー(marker)の発現を確認した結果であり、 次を示す:
Control: Matrigel
コーティングタンパク質:Combo、FGF3、TGFb1、Wnt5a、LIF1の5つのタンパク質を全部混合コーティング(All、それぞれ0.1mg/mlで混合)、-表示は混合溶液から除いたタンパク質を示す(ex:-FGF3は5つの混合溶液でFGFのみ除かれたもの)。
*-はComboのみコーティングしたものであり、MAPは0.1mg/ml Combo+0.4mg/ml MAPコーティングしたものである。
hIPSCのstemnessマーカーであるOct4とSox2の発現を確認した図であり、それぞれ次を示す。
【0147】
実験結果、Comboのみコーティング時、matrigel水準ほど細胞が付くが、stemnessマーカーの発現が弱く、Comboとmotifとの混合コーティング時、matrigelよりもstemnessマーカーの発現が強く、FGF3がなければhIPSCのコロニー形態が小さくなり、stemnessマーカーの発現が弱くなることが分かる。
【0148】
また、TGFb1とWnt5aがなければ、stemnessマーカーの発現が弱くなり、モチーフ混合コーティングがhIPSCのstemnessの維持に良く、使用するモチーフによって細胞の模様とstemnessマーカーの発現に異なる影響を与えることを確認した。
【0149】
実施例6で言及したとおり、7種の受容体の幹細胞自己増殖寄与度は異なり、2種の組み合わせに比べて本実施例の4種の組み合わせの結果を比較すると、2種の組み合わせよりも4種の組み合わせの方がより優れた結果を示すことが分かる。
【0150】
各個別受容体別の寄与度をみると、LIF受容体の寄与度が最も底いことが分かり、FGF受容体はLIF受容体より優れるが、frizzled又はTGFβ受容体より低い。特にfrizzled又はTGFβ受容体が含まれた組み合わせは、Matrigelより自己増殖効果により優れており、iMatrix水準の効果があることが分かる。
【0151】
実施例8.人工多能性幹細胞の培養で互いに異なる物理的環境の影響(3)
【0152】
実験方法
実施例1及び2によってナノ繊維直径が200nm(Combo-A type)、600nm(Combo-B type)及び1000nm(Combo-C type)のメンブレンを作製し、このとき、メンブレンの表面にはintegrin bindingペプチドモチーフ(peptide motif)であるPHSRN-RGDSPが存在する。
【0153】
実施例6及び7と同一の手順によって、各微小環境が人工多能性幹細胞の培養に及ぼす効果を確認した。
【0154】
実験結果
実験結果を図17に示す。
【0155】
まず、ナノ繊維直径が幹細胞培養に及ぼす効果を確認するために、図17のAP染色の結果を分析したところ、直径が増加するほど幹細胞の付着とコロニーサイズが増加した。同一の直径でPHSRN-RGDSPの密度が増加するほど、付着した細胞とコロニーサイズが増加することが分かる。具体的に、図17は、それぞれ次を示す。
PVDF メンブレン繊維径の調節
混合紡糸タンパク質:10mg/ml Combo
PVDF(タンパク質なし)
Combo混合紡糸A type:繊維径200nm
Combo混合紡糸B type:繊維径600nm
Combo混合紡糸C type:繊維径1000nm
【0156】
実験結果、A、B、C type Comboモチーフが含まれたとき、細胞の付着性が増加することが確認でき、繊維径によって細胞の付着性に差が生じた。また、付着性の程度は A=B<Cを示した。(図17で、Combo混合紡糸A、B、C typeメンブレン)
【0157】
図17を参考にすれば、Combo混合紡糸メンブレンでmESCを培養時、繊維径が増加するほどより多くの細胞が付いて育ち、Controlとして使用したPDLに比べてCombo混合紡糸でmESCのコロニー模様が良いことが確認でき、結論として、mESCのstemnessがよく維持されることが分かる。
【0158】
ナノ繊維直径が大きいほど幹細胞の自己増殖と分化能の維持に有利であることが分かる。
【0159】
実施例9.Integrin bindingモチーフの密度の影響(i)
【0160】
実験方法
ナノ繊維の表面にintegrin bindingモチーフであるPHSRN-RGDSPの密度に応じた幹細胞培養の効果を確認するために、実施例1によってナノ繊維を作製時、細胞外基質模倣体であるMAPTrixTM PHSRN-RGDSPをそれぞれ10mg及び20mgを使用して、ナノ繊維の表面でPHSRN-RGDSPの密度を異ならせて、幹細胞の自己増殖とコロニーサイズに及ぼす影響を確認した。
【0161】
実験結果
実験結果は図18に記載する。図18は、mESCでPHSRN-RGDSPモチーフの密度の効果を確認した結果である。具体的な実験条件と結果は次の通りである:
【0162】
実施例1及び2によってCombo混合紡糸B typeメンブレンの作製時に、タンパク質の混合量を10mg、20mgで作製後、mESC培養して、mESCのコロニーサイズ及び形態を確認した。
Control: PDL
混合紡糸タンパク質モチーフ:PHSRN-RGDSP 10mg、PHSRN-RGDSP 20mg
【0163】
図18から確認できるように、PHSRN-RGDSPの表面密度が増加すれば、幹細胞の付着量とともにコロニーサイズも同時に増加することが分かる。すなわち、PHSRN-RGDSPの表面密度は、幹細胞の自己増殖と成長に重要な役割をする。しかし、PDLでの自己増殖と比べると、依然低い水準にあることが分かる。PDL水準の表面密度を確認するために、追加の実験を行い、その内容は、次の実施例10.Integrin bindingモチーフの密度の影響(ii)で扱う。
【0164】
一般的な幹細胞培養用素材であるPDLに比べて低い自己増殖を見せたが、PHSRN-RGDSPの密度を増加する場合、自己増殖効果の改善可能性を確認することができる。
【0165】
実施例10.Integrin bindingモチーフの密度の影響(ii)
【0166】
実験方法
integrin bindingモチーフであるPHSRN-RGDSPの密度に応じた幹細胞培養の効果を追加で確認するために、2Dプレートの表面にEDC/NHS触媒を用いてPHSRN-RGDSP模倣体をコーティングして、濃度、すなわちPHSRN-RGDSPの表面密度に応じた幹細胞挙動の効果を実施例6及び7に記述された手順によって確認した。コーティング溶液のPHSRN-RGDSPの濃度はそれぞれ0.01mg/ml、0.06mg/ml、0.1mg/ml、0.5mg/ml、1mg/mlである。
【0167】
実験結果
実験結果を図19に示す。図19は、タンパク質コーティング濃度がhIPSC培養に及ぼす影響(2Dプレート)を示す図で、それぞれ次のような条件で実験された。
Control:Matrigel
コーティングタンパク質:MAP、Combo
コーティング濃度:0.01mg/ml、0.06mg/ml、0.1mg/ml、0.5mg/ml、1mg/ml
【0168】
図19を参照すれば、MAPコーティング時にはhIPSCがほとんど付かず、0.5mg/mlコーティング時に付いて育つが、正常なコロニーを形成できず、Comboコーティング時にhIPSが付いて育ち、濃度が高くなるほど、より多くの細胞が付いて育ち、Matrigelと類似に育つことが分かる。また、タンパク質のコーティング濃度がhIPSCの培養に影響を与え、モチーフ(Combo)の効果があることが分かる。
【0169】
コーティング濃度、すなわち表面でPHSRN-RGDSPの密度が増加するほど、細胞の付着性能の改善とともにコロニーサイズも増加した結果を得た。図19のAP染色分析結果から観察されるように、PHSRN-RGDSPのコーティング濃度0.1mg/ml以上でMatrigel水準の細胞付着性能とコロニーサイズを得ることが確認できた。
【0170】
Matrigel水準の自己増殖及び成長効果を得るための最小濃度を確認して、この結果はintegrin-核心受容体の活性を同時制御するための最小濃度を決定できる指標として使用することができる。
【0171】
実施例11.ナノメンブレンの厚さが幹細胞の自己増殖に及ぼす効果の測定(厚さのみ変わり、既存の条件は同一)
【0172】
実験方法
実施例1及び2によってナノ繊維直径が600nm及び1000nmであるメンブレンを作製時、メンブレンの厚さを調節した。600nmはメンブレン厚さを1.5um、2.8um、5.5umに作製し、1000nmは3um、5um、7umに作製した。このとき、メンブレンにはPHSRN-RGDSPを共に混合紡糸した。
【0173】
メンブレンの厚さによる幹細胞の挙動を、実施例5に記述された手順によって確認した。
【0174】
実験結果
実験結果を図20に示す。図20は、PVDFメンブレンの厚さ調節を示す図で、実験条件及び結果は次の通りである:
混合紡糸タンパク質:10mg/ml Combo
Combo混合紡糸B type: 繊維径600nm
Combo混合紡糸C type:繊維径1um
【0175】
上記結果によって、B、C type Comboモチーフが含まれたとき、細胞の付着性が増加し、メンブレンの厚さによって細胞の付着性に差が生ずることが分かる。また、付着性の程度はB<Cであり、このときメンブレンの厚さが幹細胞の挙動に及ぼす効果をAP染色結果を通じて確認した。
【0176】
すなわち、上記実験結果を通じて、ナノ繊維直径が600nm及び1000nmのメンブレンはいずれも、メンブレンの厚さによって自己増殖の効率が異なり、メンブレンの厚さが厚くなるほど幹細胞の数が増加したことが確認できる。
【0177】
また、上記実験を通じて、メンブレンの厚さが厚いほど、幹細胞培養の効果が優れることを確認した。
【0178】
実施例12.細胞遊走アッセイ(Cell migration assay)
【0179】
実験方法
実施例1、2によって直径が200nmのナノ繊維メンブレンを作製し、肌組織をなす上皮細胞である HaCaT(角化細胞)及びHS27(線維芽細胞)細胞の成長と移動性に適した微小環境を探索するために、laminin-derivedペプチドモチーフ(peptide motif)4種及びcollagen-derivedペプチドモチーフ(peptide motif)4種、そしてそれぞれのモチーフがコーティングされた表面に成長因子であるbasic FGF及びFGF mimetic peptideが添加された微小環境16個を準備した。図21は、個別モチーフのみから構成された微小環境アレイ(microenvironment array)であり、このアレイを用いてHaCaT及びHS27細胞を分注して、細胞の成長と移動に効果的な微小環境を探索した。
【0180】
スクラッチテスト(scratch test)を通じて、各微小環境が上皮細胞の移動性に及ぼす影響を確認した。
【0181】
実験結果
実験結果を図22~24に示す。図22は、各ペプチドモチーフ(peptide motif)が細胞の移動性に及ぼす影響を示す図表であって、コラーゲン(collagen)よりlaminin-derivedモチーフの効果がより優れることが確認できる。
【0182】
また、各モチーフ別に移動性が最大になる最適濃度があることが分かる。
【0183】
しかし、図24から確認できるように、成長因子が含まれた微小環境は全般的に細胞の移動性を促進する結果をもたらした。また、成長因子FGFが含まれた微小環境では、collagen-あるいはlaminin-derived ペプチドモチーフ(peptide motif)の効果の差が相殺されることが分かる。
【0184】
図23は、スクラッチテストの代表的な結果であり、時間が経つにつれて細胞の移動程度を確認することができる。図23aにおいて、collagen-derivedモチーフであるGLPGERは、細胞移動性の効果が低いという結果を示す。これに対し、図23bにおいて、laminin-derivedモチーフであるIKVAVは細胞移動性の効果が高いという結果を示す。
【0185】
傷回復の過程は、上皮細胞の移動が必須であり、細胞別に移動性が最適化された環境を具現する場合、傷回復の時間を短縮でき、本発明は、各細胞別の移動性が最適化された微小環境を提供することができるため、創傷被覆剤の開発等に使用されることができる。
【0186】
配列表 Free Text
配列番号1
model peptide of the tandem repeat decapeptide derived from foot protein 1 (FP-1,
Mytilus edulis)
:Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys
配列番号2
2 times repeated sequence derived from foot protein 1 (FP-1, Mytilus edulis)
:Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys
配列番号3
6 times repeated sequence derived from foot protein 1 (FP-1, Mytilus edulis)
:Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser TyrPro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys
配列番号4
partial sequence of foot protein type 2 (FP-2, Mytilus californianus)
:Glu Val His Ala Cys Lys Pro Asn Pro Cys Lys Asn Asn Gly ArgCys Tyr Pro Asp Gly
Lys Thr Gly Tyr Lys Cys Lys Cys Val Gly Gly Tyr Ser Gly Pro Thr Cys Ala Cys
配列番号5
Foot protein type 3 (FP-3, Mytilus edulis)
: Ala Asp Tyr Tyr Gly Pro Lys Tyr Gly Pro Pro Arg Arg Tyr Gly Gly Gly Asn Tyr Asn
Arg Tyr Gly Gly Ser Arg Arg Tyr Gly Gly Tyr Lys Gly Trp Asn Asn Gly Trp Lys Arg
Gly Arg Trp Gly Arg Lys Tyr Tyr Glu Phe Glu Phe
配列番号6
Foot protein type 3 (FP-3, Mytilus galloprovincialis : mgfp-3A)
Ala Asp Tyr Tyr Gly Pro Lys Tyr Gly Pro Pro Arg Arg Tyr Gly Gly Gly Asn Tyr Asn
Arg Tyr Gly Arg Arg Tyr Gly Gly Tyr Lys Gly Trp Asn Asn Gly Trp Lys Arg Gly Arg
Trp Gly Arg Lys Tyr Tyr
配列番号7
partial sequence from foot protein type 4 (Mytilus californianus)
: Gly His Val His Arg His Arg Val Leu His Lys His Val His Asn His Arg Val Leu His
Lys His Leu His Lys His Gln Val Leu His Gly His Val His Arg His Gln Val Leu His
Lys His Val His Asn His Arg Val Leu His Lys His Leu His Lys His Gln Val Leu His
配列番号8
Foot protein type5 (FP-5, Mytilus edulis)
: Ser Ser Glu Glu Tyr Lys Gly Gly Tyr Tyr Pro Gly Asn Ala Tyr His Tyr His Ser Gly
Gly Ser Tyr His Gly Ser Gly Tyr His Gly Gly Tyr Lys Gly Lys Tyr Tyr Gly Lys Ala
Lys Lys Tyr Tyr Tyr Lys Tyr Lys Asn Ser Gly Lys Tyr Lys Tyr Leu Lys Lys Ala Arg
Lys Tyr His Arg Lys Gly Tyr Lys Lys Tyr Tyr Gly Gly Ser Ser
配列番号9
Foot protein 5 (FP-5, Mytilus edulis)
Ser Ser Glu Glu Tyr Lys Gly Gly Tyr Tyr Pro Gly Asn Thr Tyr His Tyr His Ser Gly
Gly Ser Tyr His Gly Ser Gly Tyr His Gly Gly Tyr Lys Gly Lys Tyr Tyr Gly Lys Ala
Lys Lys Tyr Tyr Tyr Lys Tyr Lys Asn Ser Gly Lys Tyr Lys Tyr Leu Lys Lys Ala Arg
Lys Tyr His Arg Lys Gly Tyr Lys Lys Tyr Tyr Gly Gly Gly Ser Ser
配列番号10
Foot protein 5 (FP-5, Mytilus coruscus)
: Tyr Asp Asp Tyr Ser Asp Gly Tyr Tyr Pro Gly Ser Ala Tyr Asn Tyr Pro Ser Gly Ser
His Trp His Gly His Gly Tyr Lys Gly Lys Tyr Tyr Gly Lys Gly Lys Lys Tyr Tyr Tyr
Lys Phe Lys Arg Thr Gly Lys Tyr Lys Tyr Leu Lys Lys Ala Arg Lys Tyr His Arg Lys
Gly Tyr Lys Lys His Tyr Gly Gly Ser Ser Ser
配列番号11
mussel adhesive protein foot protein type5 from (Mytilus galloprovincialis)
: Ser Ser Glu Glu Tyr Lys Gly Gly Tyr Tyr Pro Gly Asn Thr Tyr His Tyr His Ser Gly
Gly Ser Tyr His Gly Ser Gly Tyr His Gly Gly Tyr Lys Gly Lys Tyr Tyr Gly Lys Ala
Lys Lys Tyr Tyr Tyr Lys Tyr Lys Asn Ser Gly Lys Tyr Lys Tyr Leu Lys Lys Ala Arg
Lys Tyr His Arg Lys Gly Tyr Lys Lys Tyr Tyr Gly Gly Gly Ser Ser
配列番号12
mussel adhesive protein foot protein type 6
: Gly Gly Gly Asn Tyr Arg Gly Tyr Cys Ser Asn Lys Gly Cys Arg Ser Gly Tyr Ile Phe
Tyr Asp Asn Arg Gly Phe Cys Lys Tyr Gly Ser Ser Ser Tyr Lys Tyr Asp Cys Gly Asn
Tyr Ala Gly Cys Cys Leu Pro Arg Asn Pro Tyr Gly Arg Val Lys Tyr Tyr Cys Thr Lys
Lys Tyr Ser Cys Pro Asp Asp Phe Tyr Tyr Tyr Asn Asn Lys Gly Tyr Tyr Tyr Tyr Asn
Asp Lys Asp Tyr Phe Asn Cys Gly Ser Tyr Asn Gly Cys Cys Leu Arg Ser Gly Tyr
配列番号13
hybrid mussel adhesive protein (FP-151, MEFP-5 based: Kollodis)
Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys
Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys
Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys
Ser Ser Glu Glu Tyr Lys Gly Gly Tyr Tyr Pro Gly Asn Ala Tyr His Tyr His Ser Gly
Gly Ser Tyr His Gly Ser Gly Tyr His Gly Gly Tyr Lys Gly Lys Tyr Tyr Gly Lys Ala
Lys Lys Tyr Tyr Tyr Lys Tyr Lys Asn Ser Gly Lys Tyr Lys Tyr Leu Lys Lys Ala Arg
Lys Tyr His Arg Lys Gly Tyr Lys Tyr Tyr Gly Gly Ser Ser Ala Lys Pro Ser Tyr Pro
Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro
Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro
Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys
配列番号14
hybrid mussel adhesive protein (FP-151, MGFP-5 based)
Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys
Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys
Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys
Ser Ser Glu Glu Tyr Lys Gly Gly Tyr Tyr Pro Gly Asn Thr Tyr His Tyr His Ser Gly
Gly Ser Tyr His Gly Ser Gly Tyr His Gly Gly Tyr Lys Gly Lys Tyr Tyr Gly Lys Ala
Lys Lys Tyr Tyr Tyr Lys Tyr Lys Asn Ser Gly Lys Tyr Lys Tyr Leu Lys Lys Ala Arg
Lys Tyr His Arg Lys Gly Tyr Lys Lys Tyr Tyr Gly Gly Gly Ser Ser Ala Lys Pro Ser
Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser
Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser
Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys Ala Lys Pro Ser Tyr Pro Pro Thr Tyr Lys
配列番号15
Fibronectin-derived peptide (RGD)
: Arg Gly Asp
配列番号16
Fibronectin-derived peptide (GRGDSP)
: Gly Arg Gly Asp Ser Pro
配列番号17
Fibronectin-derived peptide (PHSRN-RGDSP)
: ProH is Ser Arg Asn Arg Gly Asp Ser Pro
配列番号18
Fibronectin-derived peptide (SPPRRARVT)
: Ser Pro Pro Arg Arg Ala Arg Val Thr
配列番号19
Fibronectin-derived peptide (WQPPRARI)
: Trp Gln Pro Pro Arg Ala Arg Ile
配列番号20
: Fibronectin-derived peptide (KNNQKSEPLIGRKKT)
Lys Asn Asn Gln Lys Ser Glu Pro Leu Ile Gly Arg Lys Lys Thr
配列番号21
Laminin-derived peptide (RKRLQVQLSIRT)
: Arg Lys Arg Leu Gln Val Gln Leu Ser Ile Arg Thr
配列番号22
Laminin-derived peptide (GKNTGDHFVLYM)
: Gly Lys Asn Thr Gly Asp His Phe Val Leu Tyr Met
配列番号23
Laminin-derived peptide (VVSLYNFEQTFML)
: Val Val Ser Leu Tyr Asn Phe Glu Gln Thr Phe Met Leu
配列番号24
Laminin-derived peptide (RFDQELRLVSYN)
: Arg Phe Asp Gln Glu Leu Arg Leu Val Ser Tyr Asn
配列番号25
Laminin-derived peptide (RLVSYSGVLFFLK)
: Arg Leu Val Ser Tyr Ser Gly Val Leu Phe Phe Leu Lys
配列番号26
Laminin-derived peptide (ASKAIQVFLLGG)
: Ala Ser Lys Ala Ile Gln Val Phe Leu Leu Gly Gly
配列番号27
Laminin-derived peptide (VLVRVERATVFS)
: Thr His Arg Pro Pro Met Trp Ser Pro Val Trp Pro
配列番号28
Laminin-derived peptide (TVFSVDQDNMLE)
: Thr Val Phe Ser Val Asp Gln Asp Asn Met Leu Glu
配列番号29
Laminin-derived peptide (RLRGPQRVFDLH)
: Arg Leu Arg Gly Pro Gln Arg Val Phe Asp Leu His
配列番号30
Laminin-derived peptide (FDLHQNMGSVN)
: Phe Asp Leu His Gln Asn Met Gly Ser Val Asn
配列番号31
Laminin-derived peptide (QQNLGSVNVSTG)
: Gln Gln Asn Leu Gly Ser Val Asn Val Ser Thr Gly
配列番号32
Laminin-derived (SRATAQKVSRRS)
: Ser Arg Ala Thr Ala Gln Lys Val Ser Arg Arg Ser
配列番号33
FGF-derived peptide
(ANRYLAMKEDGRLLAS)
: Ala Asn Arg Tyr Leu Ala Met Lys Glu Asp Gly Arg Leu Leu Ala Ser
配列番号34
FGF-derived peptide (HFKDPKRLYCK)
: His Phe Lys Asp Pro Lys Arg Leu Tyr Cys Lys
配列番号35
FGF-derived peptide (FLPMSAKS)
: Phe Leu Pro Met Ser Ala Lys Ser
配列番号36
FGF-derived peptide (KTGPGQKA)
: Lys Thr Gly Pro Gly Gln Lys Ala
配列番号37
TGF-derived peptide (LTGKNFPMFHRN)
: Leu Thr Gly Lys Asn Phe Pro Met Phe His Arg Asn
配列番号38
TGF-derived peptide (MHRMPSFLPTTL)
: Met His Arg Met Pro Ser Phe Leu Pro Thr Thr Leu
配列番号39
WNT-derived peptide (LCCGRGHRTRTQRVTERCNC)
: Leu Cys Cys Gly Arg Gly His Arg Thr Arg Thr Gln Arg Val Thr Glu Arg Cys Asn Cys
配列番号40
WNT-derived peptide (LGTQGRLCNKTSEGMDGCEL)
: Leu Gly Thr Gln Gly Arg Leu Cys Asn Lys Thr Ser Glu Gly Met Asp Gly Cys Glu Leu
配列番号41
LIF-derived peptide (IVPLLLLVLH)
: Ile Val Pro Leu Leu Leu Leu Val Leu His
配列番号42
LIF-derived peptide (YTAQGEPFPNNVEKLCAP)
: Tyr Thr Ala Gln Gly Glu Pro Phe Pro Asn Asn Val Glu Lys Leu Cys Ala Pro
配列番号43
Fibronectin-derived peptide (KLDAPT)
: Lys Leu Asp Ala Pro Thr
配列番号44
Fibronectin-derived peptide (EILDVPSTT)
: Glu Ile Leu Asp Val Pro Ser Thr Thr
配列番号45
Laminin-derived peptide (TWYKIAFQRNRK)
: Thr Trp Tyr Lys Ile Ala Phe Gln Arg Asn Arg Lys
配列番号46
Laminin-derived peptide (NRWHSIYITRFG)
: Asn Arg Trp His Ser Ile Tyr Ile Thr Arg Phe Gly
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23a
図23b
図24
【配列表】
2022081639000001.app