(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081640
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】尿毒症性掻痒の治療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/485 20060101AFI20220524BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220524BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20220524BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220524BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220524BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220524BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220524BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220524BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220524BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220524BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A61K31/485
A61P17/04
A61P13/02
A61P13/12
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/04
A61K47/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042056
(22)【出願日】2022-03-17
(62)【分割の表示】P 2018549563の分割
【原出願日】2017-03-21
(31)【優先権主張番号】62/311,134
(32)【優先日】2016-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/412,584
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515138610
【氏名又は名称】トレビ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シャーシャ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グッド ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】ハウィ アマーレ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗掻痒組成物で尿毒症性掻痒を治療するための方法を提供する。
【解決手段】塩酸ナルブフィン、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、ローカストビーンガム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、およびステアリン酸マグネシウムを含む延長放出経口剤形を投与する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿毒症性掻痒を治療する方法であって、該治療を必要とする患者に、少なくとも約120mgの抗掻痒剤の1日用量を少なくとも1週間投与する工程を含み、前記抗掻痒剤が、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルであり、前記治療の後に前記患者が、前記治療の前と比較して痒みの実質的な減少を経験する、前記方法。
【請求項2】
約60mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルが1日2回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
約120mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルが1日1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
約120mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルが1日2回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
約240mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルが1日1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記投与が、約8週間、10週間、12週間、24週間または50週間である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、中等度または重度の尿毒症性掻痒を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、慢性腎臓疾患を有する患者である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が、血液透析患者である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記投与の前に少なくとも1週間、前記抗掻痒剤の前記用量を薬量調整する(titrating)ことを更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記投与の前に約2週間、前記抗掻痒剤の前記用量を薬量調整することを更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記投与の前に約7~30日間、前記抗掻痒剤の前記用量を薬量調整することを更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記投与の前に約12~20日間、前記抗掻痒剤の前記用量を薬量調整することを更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記薬量調整が、定常状態が前記患者において達成されるまで、前記抗掻痒剤の漸増用量を投与することを含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記薬量調整が、60mgまたは120mgの有効量が前記患者において達成されるまで、前記抗掻痒剤の漸増用量を投与することを含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記薬量調整が、約15mgの初期用量を1日1回または2回投与することを更に含む、請求項10~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記薬量調整が、約30mgの初期用量を1日1回または2回投与することを含む、請求項10~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記薬量調整が、約15mg~約30mgの範囲の増分で前記抗掻痒剤を投与することを含む、請求項10~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記1日2回の投与が、AM投薬量およびPM投薬量を用い、該PM投薬量が該AM投薬量より多いかまたは同じである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記薬量調整後の有害事象の割合が、同じ期間のプラセボ投与後の有害事象の割合と実質的に同じである、請求項10~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記治療の前に中等度または重度のベースラインの痒みを有する患者が、前記治療の後に軽度の痒みを経験する、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記治療の後、前記患者が、最悪痒み強度数値評定尺度(NRS)値で少なくとも約30%の低下によって特徴付けられる痒みの減少を経験する、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記痒みの減少が、NRS値の少なくとも約40%の低下である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記痒みの減少が、NRS値の少なくとも約50%の低下である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記治療の後、前記患者が、Skindex-10総合または下位尺度領域スコアで少なくとも約10%の改善によって特徴付けられる痒みの減少を経験する、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記痒みの減少が、Skindex-10総合または下位尺度領域スコアの少なくとも約20%の改善である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記痒みの減少が、Skindex-10総合または下位尺度領域スコアの少なくとも約30%の改善である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記治療の後、前記患者が、痒み医学成果研究(MOS)睡眠尺度で少なくとも約20%の改善によって特徴付けられる痒みの減少を経験する、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記痒みの減少が、痒みMOS睡眠尺度で少なくとも約30%の改善である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記痒みの減少が、痒みMOS睡眠尺度で少なくとも約40%の改善である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記治療後の前記患者の感染の割合が、前記治療前の前記患者の感染の割合よりも低い、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1種の追加的な抗掻痒薬を投与することを更に含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1種の追加的な抗掻痒薬が、抗ヒスタミン剤およびコルチコステロイドからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗掻痒剤が、延長放出経口剤形の形態にある、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記抗掻痒剤が、塩酸ナルブフィン、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、ローカストビーンガム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、およびステアリン酸マグネシウムを含む製剤で投与される、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの前記1日用量が、前記投与の間、実質的に同じである、請求項10~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記投与が、約12週間、24週間または50週間である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの前記1日用量が、前記投与の間、約240mgである、請求項36および37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記投与が、約20~80ng/mLの定常状態の血漿濃度を提供する、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記定常状態の血漿濃度が、30~70ng/mLである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの前記1日用量が、約240mgである、請求項39および40のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月21日に出願された米国仮出願第62/311,134号および2016年10月25日に出願された米国仮出願第62/412,584号に対する優先権の利益を主張し、その内容は、それらの全体が本明細書によって参照により組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、ナルブフィン組成物を使用する患者における尿毒症性掻痒を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
掻痒、または痒みは、引っ掻きに対する欲求または反射を刺激する感覚であり、全身性または局所性のいずれかであり得る。掻痒の原因は十分に理解されていない。掻痒の病因の提案された誘因には、貧血またはエリスロポエチン欠乏の他の兆候、皮膚肥満細胞からのヒスタミン放出、皮膚乾燥、二次性副甲状腺機能亢進症、皮膚におけるリン酸カルシウム沈着の増加を伴う高リン血症、およびオピオイドμレセプターの過剰発現を伴う内因性オピオイド系の変化が含まれ得る。
【0004】
掻痒は、頻繁に同定される尿毒症の徴候および症状(「尿毒症性掻痒」(UP))であり、それ故、血液透析を受けている患者における共通の症状である。UPのための治療選択肢に関しては、議論されている様々な医療的介入があり、有効な治療が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、とりわけ、掻痒を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に有効量の抗掻痒剤を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗掻痒剤は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルである。
【0006】
いくつかの実施形態では、掻痒の治療を必要とする患者は、尿毒症性掻痒を有する患者である。特定の実施形態では、患者は、中等度または重度の尿毒症性掻痒を有する。一実施形態では、治療を必要とする患者は、腎機能障害を有する患者である。更に別の実施形態では、治療を必要とする患者は、慢性腎臓疾患を有する患者である。更に別の実施形態では、治療を必要とする患者は、治療を必要とする患者は、血液透析患者である。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によれば、尿毒症性掻痒を治療する方法は、治療を必要とする患者に、少なくとも約120mgの1日用量のナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを少なくとも1週間投与することを含む。いくつかの実施形態では、尿毒症性掻痒を治療する方法は、治療を必要とする患者に、少なくとも約240mgの1日用量のナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを少なくとも1週間投与することを含む。いくつかの実施形態では、約60mgの抗掻痒剤が1日2回投与される。いくつかの実施形態では、約120mgの抗掻痒剤が1日1回投与される。いくつかの実施形態では、約120mgの抗掻痒剤が1日2回投与される。いくつかの実施形態では、約180mgの抗掻痒剤が1日2回投与される。いくつかの実施形態では、約240mgの抗掻痒剤が1日1回投与される。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗掻痒剤は8週間投与される。いくつかの実施形態では、抗掻痒剤は12週間投与される。いくつかの実施形態では、抗掻痒剤は24週間投与される。
【0009】
いくつかの実施形態では、治療後に、患者は、治療前と比較して痒みの実質的な減少を経験する。
【0010】
いくつかの実施形態では、掻痒を治療する方法は、投与の前に少なくとも1週間の抗掻痒剤の用量を薬量調整する(titrating)工程を更に含む。一実施形態では、薬量調整は、投与前に約2週間行われる。別の実施形態では、薬量調整は、投与前に約7日間~約30日間行われる。別の実施形態では、薬量調整は、投与前に約12日間~約20日間行われる。
【0011】
特定の実施形態では、患者において定常状態が達成されるまで、抗掻痒剤の漸増用量が薬量調整中に投与される。特定の実施形態では、患者において60mgまたは120mgの有効量が達成されるまで、抗掻痒剤の漸増用量が薬量調整中に投与される。
【0012】
一実施形態では、薬量調整は、約15mgの用量を1日1回または2回で開始される。別の実施形態では、薬量調整は、約30mgの用量を1日1回または2回で開始される。特定の実施形態では、薬量調整は、約15mg~約30mgの範囲の増分で抗掻痒剤を投与することを含む。特定の実施形態では、1日2回の薬量調整は、AM投薬量およびPM投薬量を用い、PM投薬量はAM投薬量よりも多いかまたは同じである。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗掻痒剤での治療後の有害事象の割合は、同じ期間のプラセボ投与後の有害事象の割合と実質的に同じである。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、臨床研究は、抗掻痒剤で治療された対象が、プラセボで治療された対象と比較して痒みの統計的に有意な減少を経験することを示している。いくつかの実施形態では、痒みの統計的に有意な減少は、約0.05以下のp値によって示される。いくつかの実施形態では、治療前の中等度または重度のベースラインの痒みを有する患者は、治療後に軽度の痒みを経験する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、治療後、患者は、最悪痒み強度数値評定尺度(NRS)値で少なくとも約30%、40%、または50%の低下によって特徴付けられる痒みの減少を経験する。いくつかの実施形態では、治療後、患者は、平均痒み強度数値評定尺度(NRS)値で少なくとも約30%、40%、または50%の低下によって特徴付けられる痒みの減少を経験する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、治療後、患者は、総合Skindex-10スコアで少なくとも約10%、20%、または30%の改善によって特徴付けられる痒みの減少を経験する。いくつかの実施形態によれば、治療後、患者は、Skindex-10疾患領域スコアで少なくとも約10%、20%、または30%の改善によって特徴付けられる痒みの減少を経験する。いくつかの実施形態によれば、治療後、患者は、Skindex-10気分/感情的苦痛領域スコアで少なくとも約10%、20%、または30%の改善によって特徴付けられる痒みの減少を経験する。いくつかの実施形態によれば、治療後、患者は、Skindex-10社会的機能領域スコアで少なくとも約10%、20%、または30%の改善によって特徴付けられる痒みの減少を経験する。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、治療後、患者は、痒み医学成果研究(MOS)睡眠尺度で少なくとも約20%、30%、または40%の改善によって特徴付けられる痒みの減少を経験する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、掻痒を治療する方法は、実質的な水利尿効果を生じない。本発明のいくつかの実施形態によれば、治療後、患者の感染の割合は、治療前の患者の割合よりも低い。本発明のいくつかの実施形態によれば、治療後、患者の筋骨格病状の割合は、治療前の患者の割合よりも低い。
【0019】
いくつかの実施形態では、掻痒を治療する方法は、少なくとも1種の追加的な抗掻痒薬を投与することを更に含む。特定の実施形態では、少なくとも1種の追加的な抗掻痒薬は、抗ヒスタミン剤およびコルチコステロイドからなる群から選択される。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗掻痒剤は、延長放出経口剤形の形態にある。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗掻痒剤は、塩酸ナルブフィン、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、ローカストビーンガム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、およびステアリン酸マグネシウムを含む製剤で投与される。
【0022】
[本発明1001]
尿毒症性掻痒を治療する方法であって、該治療を必要とする患者に、少なくとも約120mgの抗掻痒剤の1日用量を少なくとも1週間投与する工程を含み、前記抗掻痒剤が、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルであり、前記治療の後に前記患者が、前記治療の前と比較して痒みの実質的な減少を経験する、前記方法。
[本発明1002]
約60mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルが1日2回投与される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
約120mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルが1日1回投与される、本発明1001の方法。
[本発明1004]
約120mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルが1日2回投与される、本発明1001の方法。
[本発明1005]
約240mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルが1日1回投与される、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記投与が、約8週間、10週間、12週間、24週間または50週間である、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
前記患者が、中等度または重度の尿毒症性掻痒を有する、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記患者が、慢性腎臓疾患を有する患者である、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
前記患者が、血液透析患者である、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記投与の前に少なくとも1週間、前記抗掻痒剤の前記用量を薬量調整する(titrating)ことを更に含む、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
前記投与の前に約2週間、前記抗掻痒剤の前記用量を薬量調整することを更に含む、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記投与の前に約7~30日間、前記抗掻痒剤の前記用量を薬量調整することを更に含む、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1013]
前記投与の前に約12~20日間、前記抗掻痒剤の前記用量を薬量調整することを更に含む、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1014]
前記薬量調整が、定常状態が前記患者において達成されるまで、前記抗掻痒剤の漸増用量を投与することを含む、本発明1010~1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
前記薬量調整が、60mgまたは120mgの有効量が前記患者において達成されるまで、前記抗掻痒剤の漸増用量を投与することを含む、本発明1010~1013のいずれかの方法。
[本発明1016]
前記薬量調整が、約15mgの初期用量を1日1回または2回投与することを更に含む、本発明1010~1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
前記薬量調整が、約30mgの初期用量を1日1回または2回投与することを含む、本発明1010~1015のいずれかの方法。
[本発明1018]
前記薬量調整が、約15mg~約30mgの範囲の増分で前記抗掻痒剤を投与することを含む、本発明1010~1017のいずれかの方法。
[本発明1019]
前記1日2回の投与が、AM投薬量およびPM投薬量を用い、該PM投薬量が該AM投薬量より多いかまたは同じである、本発明1016または1017の方法。
[本発明1020]
前記薬量調整後の有害事象の割合が、同じ期間のプラセボ投与後の有害事象の割合と実質的に同じである、本発明1010~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
前記治療の前に中等度または重度のベースラインの痒みを有する患者が、前記治療の後に軽度の痒みを経験する、本発明1001~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
前記治療の後、前記患者が、最悪痒み強度数値評定尺度(NRS)値で少なくとも約30%の低下によって特徴付けられる痒みの減少を経験する、本発明1001~1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
前記痒みの減少が、NRS値の少なくとも約40%の低下である、本発明1022の方法。
[本発明1024]
前記痒みの減少が、NRS値の少なくとも約50%の低下である、本発明1022の方法。
[本発明1025]
前記治療の後、前記患者が、Skindex-10総合または下位尺度領域スコアで少なくとも約10%の改善によって特徴付けられる痒みの減少を経験する、本発明1001~1021のいずれかの方法。
[本発明1026]
前記痒みの減少が、Skindex-10総合または下位尺度領域スコアの少なくとも約20%の改善である、本発明1025の方法。
[本発明1027]
前記痒みの減少が、Skindex-10総合または下位尺度領域スコアの少なくとも約30%の改善である、本発明1025の方法。
[本発明1028]
前記治療の後、前記患者が、痒み医学成果研究(MOS)睡眠尺度で少なくとも約20%の改善によって特徴付けられる痒みの減少を経験する、本発明1001~1021のいずれかの方法。
[本発明1029]
前記痒みの減少が、痒みMOS睡眠尺度で少なくとも約30%の改善である、本発明1028の方法。
[本発明1030]
前記痒みの減少が、痒みMOS睡眠尺度で少なくとも約40%の改善である、本発明1028の方法。
[本発明1031]
前記治療後の前記患者の感染の割合が、前記治療前の前記患者の感染の割合よりも低い、本発明1001~1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
少なくとも1種の追加的な抗掻痒薬を投与することを更に含む、本発明1001~1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
前記少なくとも1種の追加的な抗掻痒薬が、抗ヒスタミン剤およびコルチコステロイドからなる群から選択される、本発明1032の方法。
[本発明1034]
前記抗掻痒剤が、延長放出経口剤形の形態にある、本発明1001~1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
前記抗掻痒剤が、塩酸ナルブフィン、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、ローカストビーンガム、キサンタンガム、硫酸カルシウム二水和物、およびステアリン酸マグネシウムを含む製剤で投与される、本発明1001~1034のいずれかの方法。
[本発明1036]
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの前記1日用量が、前記投与の間、実質的に同じである、本発明1010~1035のいずれかの方法。
[本発明1037]
前記投与が、約12週間、24週間または50週間である、本発明1036の方法。
[本発明1038]
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの前記1日用量が、前記投与の間、約240mgである、本発明1036および1037のいずれかの方法。
[本発明1039]
前記投与が、約20~80ng/mLの定常状態の血漿濃度を提供する、本発明1001~1038のいずれかの方法。
[本発明1040]
前記定常状態の血漿濃度が、30~70ng/mLである、本発明1039の方法。
[本発明1041]
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの前記1日用量が、約240mgである、本発明1039および1040のいずれかの方法。
本方法、およびその利点は、以下の非限定的な詳細な説明および実施例によって更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】主要有効性評価項目-最悪痒み数値評定尺度(範囲、0~10;0「痒みなし」;4~6「中等度の痒み」;および10「最悪の可能性の痒み」でのアンカー)におけるベースラインから評価期間(最後の2週間の治療)までの変化のグラフ表示である。NAL120=ナルブフィンER錠120mgBID;NAL60=ナルブフィンER錠60mgBID;
*p=0.017対プラセボ。提示されたデータはLS平均およびSEMである。
【
図2】研究週毎の最悪痒み強度数値評定尺度の変化のグラフ表示である。数値評定尺度の範囲は、0「痒みなし」;4~6「中等度の痒み」;および10「最悪の可能性の痒み」でのアンカーでの0~10である)。図示されたデータは平均(SEM)である。NAL120=ナルブフィンER錠120mgBID;NAL60=ナルブフィンER錠60mgBID;
*p=<0.05対プラセボ。
【
図3】時間に対する抗掻痒薬を摂取している患者の割合のグラフ表示である。NAL120=ナルブフィンER錠120mgBID;NAL60=ナルブフィンER錠60mgBID。
【
図4】実施例3に記載されたフェーズ2/3延長研究の全体図である。
【
図5】実施例3に記載されたフェーズ2/3延長研究における、(1)全ての患者;(2)ゼロから4未満のベースライン痒みNRSを有する患者;(3)4以上であるが7未満のベースライン痒みNRSを有する患者;および(4)7以上のベースライン痒みNRSを有する患者についての週毎の最悪痒みNRSスコアにおけるベースラインからの平均変化のグラフ表示である。
【
図6】実施例3に記載されたフェーズ2/3延長研究における、(1)全ての患者;(2)ゼロから4未満のベースライン痒みNRSを有する患者;(3)4以上であるが7未満のベースライン痒みNRSを有する患者;および(4)7以上のベースライン痒みNRSを有する患者についての週毎の総合Skindex-10スコアにおけるベースラインからの平均変化のグラフ表示である。
【0024】
定義
数値の直前の「約」という用語は、その値のプラスまたはマイナス10%の範囲を意味し、例えば、「約50」は45~55を意味し、「約25,000」は22,500~27,500などを意味するが、但し、それは開示の文脈が別段示していない限り、またはそのような解釈と矛盾しない限りのことである。例えば、「約49、約50、約55、...」などの数値のリストにおいて、「約50」は、先行値と後続値との間の間隔(複数可)の半分未満に広がる範囲、例えば、49.5を超え52.5未満を意味する。更に、「約」値「未満」または「約」値「を超える」という句は、本明細書で提供される「約」という用語の定義を考慮して理解されるべきである。
【0025】
本開示を通じて、様々な特許、特許出願および刊行物が参照される。これらの特許、特許出願および刊行物の開示は、それらの全体が、本開示の日付時点のその当業者に知られている最先端技術をより十分に記載するために、参照により本開示に組み込まれる。本開示は、引用された特許、特許出願および刊行物と本開示との間に任意の矛盾がある場合に優先する。
【0026】
便宜上、明細書、実施例および特許請求の範囲で用いられる特定の用語がここに集められている。別段定義されない限り、本開示において使用される全ての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0027】
本明細書で使用される「投与する」、「投与すること」または「投与」という用語は、化合物もしくはその化合物の薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、または化合物もしくはその化合物の薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む組成物のいずれかを患者に直接投与することを指す。
【0028】
本明細書で使用される「有害事象」(AE)という用語は、最初のスクリーニング日以降に報告された臨床調査患者における任意の不適切な医学的出来事として定義される。AEは必ずしも治療と因果関係を有する必要はない。そのため、AEは、任意の望ましくないかつ意図しない徴候(異常な検査所見を含む)、薬学的(調査的)製品に関連するかどうかにかかわらない症状、または薬学的(調査的)製品の使用に一時的に関連する疾患であり得る。典型的な有害事象には、吐き気、嘔吐、眠気、めまいおよび幻覚が含まれる。本発明によれば、治療後の有害事象の割合は、同じ期間のプラセボ投与後の有害事象の割合と実質的に同じである。
【0029】
本明細書で使用される「担体」という用語は、医薬品を身体の1つの組織または部分から身体の別の組織または部分に運搬または輸送することに関与する液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料などの材料、組成物またはビヒクルを意味する担体、賦形剤、および希釈剤を包含する。
【0030】
「障害」という用語は、別段指示されない限り、本開示では、疾患、状態、または病気という用語を意味するために使用され、それらと交換可能に使用される。
【0031】
「有効量」および「治療的有効量」という用語は、本開示では交換可能に使用され、患者に投与されたときに意図された結果を果たすことができる化合物、またはその塩、溶媒和物もしくはエステルの量を指す。例えば、抗掻痒剤の有効量は、患者における掻痒の少なくとも1つの症状を減少させるのに必要とされる量、例えば、患者における痒み感覚を減少させるのに必要とされる量である。「有効量」または「治療的有効量」を含む実際の量は、障害の重篤度、患者の大きさおよび健康、ならびに投与経路を含むがこれらに限定されない多数の状態に依存して変化する。熟練した医師は、医学分野で知られている方法を使用して適切な量を容易に決定することができる。
【0032】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な」という句は、正当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに好適な合理的な利益/リスク比に見合うそれらの化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0033】
本明細書で使用される「塩」という用語は、遊離酸のアルカリ金属塩を形成し、遊離塩基の付加塩を形成するために一般的に使用される薬学的に許容可能な塩を包含する。塩の性質は、それが薬学的に許容可能である限り、重要ではない。「塩」という用語にはまた、水和物などの付加塩の溶媒和物、および付加塩の多形体が含まれる。好適な薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製され得る。そのような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、およびリン酸である。適切な有機酸は、脂肪族、環状脂肪族、芳香族、芳香脂肪族、およびヘテロ環含有カルボン酸およびスルホン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、ステアリン酸、サリチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルギン酸、3-ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸およびガラクツロン酸から選択され得る。
【0034】
患者に関して本明細書で使用される「治療する」という用語は、患者の障害の少なくとも1つの症状を改善することを指す。治療は、障害を治癒、改善、または少なくとも部分的に軽減し得る。
【0035】
本明細書で使用される「治療効果」という用語は、方法および/または組成物によって提供される所望または有益な効果を指す。例えば、掻痒を治療するための方法は、その方法が患者における掻痒の少なくとも1つの症状、例えば、痒み感覚を減少させる場合に治療効果を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
詳細な説明
本発明によれば、掻痒は、任意の痒みまたは掻痒状態、例えば、引っ掻くことに対する欲求または反射を引き起こす感覚を含む。掻痒は、尿毒症状態の悩ましい特徴である。現代の透析管理にもかかわらず、透析患者の60%が痒みを経験し、およそ30~45%が中等度または重度/極度の掻痒を経験する。12か国および20,000人を超える血液透析患者から導かれた透析実践パターン研究からのデータは、中等度から重度の掻痒を有する患者は、消耗したと感じ、睡眠の質が悪く、医師が診断した鬱病を有し、掻痒がないか軽度の患者よりも生活の質が低い可能性が高かったことを示している。米国の70,000人を超える透析患者の群の中で、掻痒の重篤度は、IV抗菌剤のより多くの使用、より高いESAおよびIV鉄用量と関連していた。全原因死亡率および感染に関連した死亡率は、中等度または重度の掻痒を有する患者では、軽度の掻痒を有する患者と比較して高いことも報告されている。
【0037】
痒みの感覚と引っ掻きの動作は、それらが密接に関連するものとして見られ得るが、2つの異なる現象である。痒みは意識的な感覚であり、場合によっては引っ掻きによって軽減または改善され得る。しかしながら、尿毒症性掻痒に罹患している患者は、彼らが意識的に痒みの感覚を経験することができないときに、彼らの睡眠中にしばしば引っ掻く(おそらく反射から)。尿毒症性掻痒に罹患している患者における睡眠期間中のこの引っ掻きは、睡眠中断または睡眠不足を非常に重度なものにし得、それは死亡率の有意な増加に関連する。本発明の方法は、例えば、本明細書に開示されている研究に記載されているように、尿毒症性掻痒患者の睡眠不足を実質的に減少させることができる(または代替的に述べると、睡眠を改善する)。更に、本発明の方法は、尿毒症性掻痒患者において痒みの知覚および引っ掻き行動の両方を減少させるのに有効である。
【0038】
一態様では、本発明は、掻痒を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に有効量の抗掻痒剤を少なくとも1週間投与することを含み、抗掻痒剤がナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルである、方法を提供する。本発明のいくつかの実施形態によれば、抗掻痒剤は、少なくとも約60mgまたは120mgの抗掻痒剤で投与される。いくつかの実施形態では、約60mgの抗掻痒剤が1日2回投与される。いくつかの実施形態では、約120mgの抗掻痒剤が1日1回投与される。いくつかの実施形態では、約120mgの抗掻痒剤が1日2回投与される。いくつかの実施形態では、約240mgの抗掻痒剤が1日1回投与される。いくつかの他の実施形態では、約180mgの抗掻痒剤が1日2回投与される。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、尿毒症性掻痒の治療のために使用される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、腎不全、血液透析、および/または腹膜透析からなる群から選択される掻痒状態に罹患している患者の治療のために使用される。一実施形態では、尿毒症性掻痒の治療を必要とする患者は、腎機能障害を有する患者である。更に別の実施形態では、尿毒症性掻痒の治療を必要とする患者は、慢性腎臓疾患を有する患者である。更に別の実施形態では、尿毒症性掻痒の治療を必要とする患者は、血液透析患者である。特定の実施形態では、ナルブフィンHClは、中等度から重度の尿毒症性掻痒を有する血液透析を受けている末期腎疾患を有する成人患者において、痒みの治療のために使用または適応される。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、その方法は、実質的な有害事象を生じずに治療効果を提供する。いくつかの実施形態では、抗掻痒剤での治療後の有害事象の割合は、同じ期間のプラセボ投与後の有害事象の割合と実質的に同じである。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、掻痒を治療する方法は、実質的な水利尿効果を生じない。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、治療後、おそらく皮膚の引っ掻きから身体に入る細菌によって引き起こされる患者の感染の割合は、治療前の患者の割合よりも低い。
【0043】
ナルブフィン
本方法に用いられるナルブフィンは、ナルブフィン、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを、薬学的に許容可能な担体と組み合わせることによって薬学的組成物の一部を形成し得る。また、組成物は、アジュバント、賦形剤、希釈剤、放出改変剤および安定剤からなる群から選択される添加剤を含み得る。組成物は、即時放出製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤または延長放出製剤であり得る。
【0044】
ナルブフィンHCl(17-(シクロブチルメチル)-4,5α-エポキシモルフィニアン-3,6α,14-トリオール、塩酸塩)は合成オピオイドである。構造的には、ナルブフィンは14-ヒドロキシモルフィンの誘導体である。
【0045】
ナルブフィンHClは現在、注射可能な形態のジェネリック薬としてのみ入手可能である。ナルブフィンの注射可能な形態は、1978年から承認された薬物製剤として利用可能である。Nubain(登録商標)は、現在販売されているジェネリックの生物学的同等注射可能製剤の基礎となるイノベーターブランドのナルブフィンの注射可能な形態であった。注射可能な製剤は、中等度から重度の疼痛の緩和、バランスのとれた麻酔に対する補充のための使用、術前および術後の鎮痛ならびに陣痛および分娩中の産科鎮痛に現在承認されている。
【0046】
本発明はまた、抗掻痒剤の薬学的に許容可能なエステルを含む。「エステル」という用語は、エステル形態が患者に投与されたときに薬剤を放出することができる(本明細書に記載されるような)エステル官能基を含有する薬剤の誘導体を示す。活性成分の放出はインビボで生じる。薬学的に許容可能なエステルは、当業者に知られている技術によって調製され得る。これらの技術は一般に、所与の化合物中の適切な官能基を修飾する。しかしながら、これらの修飾された官能基は、インビボで化合物の代謝によって元の官能基を再生する。エステルには、ヒドロキシ、カルボキシル、または類似の基が修飾されている化合物が含まれる。
【0047】
ヒドロキシル基に関して好適な薬学的に許容可能なエステルには、エステルのインビボ加水分解の結果として、親ヒドロキシ基を提供するリン酸エステルおよびα-アシルオキシアルキルエーテルならびに関連する化合物などの無機エステルが含まれる。ヒドロキシのためのインビボ加水分解性エステル形成基には、アルカノイル(例えば、C1~10直鎖、分岐または環状アルキル)、ベンゾイル、フェニルアセチルおよび置換ベンゾイルおよびフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(アルキルカルボネートエステルを与える)、ジアルキルカルバモイルおよびN-(N,N-ジアルキルアミノエチル)-N-アルキルカルバモイル(カルバメートを与える)、N,N-ジアルキルアミノアセチルおよびカルボキシアセチルが含まれる。
【0048】
製剤
本発明の方法は、好適な量の抗掻痒剤、例えば、ナルブフィン、またはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含有する錠剤、カプセル、丸剤、散剤、顆粒剤、滅菌非経口溶液または懸濁液、および経口溶液または懸濁液、ならびに油-水エマルションなどの単位剤形での患者、例えば、ヒトおよび動物への投与のための様々な製剤を用いることができる。
【0049】
経口薬学的剤形は、固体または液体のいずれかであり得る。固体剤形は、錠剤、カプセル、顆粒、およびバルク散剤であり得る。経口錠剤の種類には、腸溶性コーティング、糖コーティングまたはフィルムコーティングされ得る圧縮された咀嚼可能なトローチ剤および錠剤が含まれる。カプセルは、硬質または軟質ゼラチンカプセルであり得る一方で、顆粒および散剤は、当業者に知られている他の成分と組み合わせて非発泡性または発泡性の形態で提供され得る。他の実施形態では、経口剤形は、浸透圧制御放出経口デリバリーシステム(OROS)であり得る。他の実施形態では、経口剤形には、マトリックス埋め込み剤形または関連するデバイスが含まれ得る。いくつかの実施形態では、本経口剤形は、経口崩壊錠剤を含み得る。
【0050】
錠剤に利用される薬学的に許容可能な担体には、結合剤、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、着香剤、および湿潤剤が含まれる。
【0051】
液体経口剤形には、水溶液、エマルション、懸濁液、溶液および/または非発泡性顆粒から再構成された懸濁液ならびに発泡性顆粒から再構成された発泡性調製物が含まれる。
【0052】
水溶液には、例えば、エリキシル剤およびシロップ剤が含まれる。エマルションは、水中油または油中水のいずれかであり得る。エリキシル剤は、透明で甘くした水アルコール調製物である。エリキシル剤に使用される薬学的に許容可能な担体には、溶媒が含まれる。シロップ剤は、糖、例えば、スクロースの濃縮水溶液であり得、防腐剤を含有し得る。エマルションは、1つの液体が別の液体全体に小さな小球の形態で分散されている二相系である。エマルションに使用される薬学的に許容可能な担体は、非水性液体、乳化剤および防腐剤である。懸濁液は、薬学的に許容可能な懸濁剤および防腐剤を使用し得る。液体経口剤形に再構成される、非発泡性顆粒に使用される薬学的に許容可能な物質には、希釈剤、甘味剤および湿潤剤が含まれる。液体経口剤形に再構成される、発泡性顆粒に使用される薬学的に許容可能な物質には、有機酸および二酸化炭素源が含まれ得る。着色剤および着香剤は、上記の剤形の全てに使用され得る。
【0053】
本発明の製剤の非経口投与には、即時、持続(例えば、デポ)、延長、および/または改変放出製剤(例えば、本明細書に記載されている)の静脈内、皮下および筋肉内投与が含まれる。非経口投与のための調製物には、注射のために準備された滅菌溶液、使用直前に溶媒と組み合わされる準備がされた滅菌乾燥可溶性製品(皮下錠剤を含む)、注射のために準備された滅菌懸濁液、使用直前にビヒクルと組み合わされる準備がされた滅菌乾燥不溶性製品および滅菌エマルションが含まれる。溶液は水性または非水性のいずれかであり得る。非経口調製物に使用される薬学的に許容可能な担体には、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、酸化防止剤、局所麻酔剤、懸濁剤および分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤ならびに他の薬学的に許容可能な物質が含まれる。
【0054】
薬学的に活性な化合物の濃度は、注射が所望の薬理学的効果を生じるのに有効な量を提供するように調節され得る。正確な用量は、当該技術分野で知られているように、患者または動物の年齢、体重および状態に依存する。単位用量の非経口調製物は、アンプルまたは針付きシリンジに包装される。非経口投与用の全ての調製物は、当該技術分野において知られ、実施されているように無菌でなければならない。例示的には、抗掻痒剤を含有する滅菌水溶液の静脈内または動脈内注入は、有効な投与様式である。
【0055】
直腸投与用の薬学的剤形は、直腸坐剤、カプセル剤および全身効果用の錠剤であり得る。本明細書で使用される直腸坐剤は、体温で溶融または軟化して本発明の組成物に含有される薬理学的および/または治療的に活性な成分を放出する、直腸への挿入のための固形物を意味する。直腸坐剤において利用される薬学的に許容可能な物質は、基剤またはビヒクルおよび融点を上昇させる薬剤である。基剤の例には、カカオバター(テオブロマ油)、グリセリン-ゼラチン、カーボワックス、ポリオキシエチレングリコールおよび脂肪酸のモノ-、ジ-およびトリグリセリドの混合物が含まれる。様々な基剤の組み合わせが使用され得る。坐剤の融点を上昇させる薬剤には、鯨ろうおよびワックスが含まれる。直腸坐剤は、圧縮法によってまたは成形によって調製され得る。直腸坐剤の典型的な重量は約2~3gmである。直腸投与用の錠剤およびカプセルは、同じ薬学的に許容可能な物質を使用して、経口投与用の製剤と同じ方法によって製造され得る。
【0056】
組成物は、より可溶性の活性生成物を生成するために、微粉化または他の好適な形態で懸濁され得るか、または誘導体化され得る。得られる組成物の形態は、意図される投与様式および選択される担体またはビヒクル中の抗掻痒剤の溶解性を含む多数の要因に依存する。有効濃度は、掻痒を治療または緩和するのに十分であり、経験的に決定され得る。濃度は一般に、化合物の全身投与のための濃度よりも高い。
【0057】
得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルションなどであり得、クリーム、ゲル、軟膏、エマルション、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ、ペースト、フォーム、エアロゾル、潅注、スプレー、坐剤、包帯、または局所的または局部的投与に好適な任意の他の製剤として製剤化され得る。投与様式には、皮膚、頭皮、目、および/または鼻腔、口腔もしくは舌下の粘膜への局所適用が含まれ得る。
【0058】
組成物の投与に好適な医薬および化粧品の担体またはビヒクルは、特定の投与様式に好適であることが当業者に知られている任意のそのような担体を含む。抗掻痒剤は、治療される個人に重大な毒性作用を伴わずに治療的に有用な効果を発揮するのに十分な量で担体に含まれ得る。
【0059】
これらの組成物を製剤化するために、抗掻痒剤の重量画分は、掻痒状態が緩和または改善されるような有効濃度で、選択されたビヒクルに溶解、懸濁、分散または別の方法で混合される。一般に、皮膚を水和するのを助ける皮膚軟化剤または潤滑ビヒクルは、皮膚を乾燥させるエタノールなどの揮発性ビヒクルよりも好ましい。ヒトの皮膚で使用するための組成物を調製するのに好適な基剤またはビヒクルの例は、ペトロラタム、揮発性シリコーンを加えたペトロラタム、ラノリン、コールドクリーム(USP)、および親水性軟膏(USP)である。
【0060】
本方法で用いられる組成物は、皮膚に適用されたときに掻痒を緩和することができる。組成物は、必要に応じて、罹患領域に局所的に最大で1日8回投与されて痒みの減少および緩和を提供し得る。緩和は一時的または永続的であり得、組成物の単回投薬後でさえ明らかであり得る。組成物が局所調製物以外の形態で投与される場合、それはFDAによって確立された安全性ガイドラインの範囲内である掻痒からの緩和を提供するのに十分な量で投与されるべきである。患者に投与する適切な量を決定することは、本発明によって提供される教示に関連して当業者の技術の範囲内である。
【0061】
局所投与が意図される本発明の組成物の溶液は、典型的には約0.01%w/w~約5%w/wの濃度で抗掻痒量を送達するのに有効な量の組成物を含有する。溶液の残りは、水、好適な有機溶媒または他の好適な溶媒または緩衝剤である。溶液または懸濁液として製剤化されるこれらの組成物は、皮膚に適用され得、またはエアロゾルまたはフォームとして製剤化され得、スプレー式として皮膚に適用され得る。エアロゾル組成物は典型的には、25%~80%w/w、好ましくは30%~50%w/wの好適な噴射剤を含有する。ゲル組成物は、溶液または懸濁液に好適な増粘剤を単に混合することによって製剤化され得る。
【0062】
溶液および懸濁液はまた、眼および粘膜に局所的に適用され得る。溶液、特に眼用途が意図されるものは、0.01%~10%w/wの等張溶液、pH約5~7、適切な塩を有し、好ましくは本明細書の組成物の1種以上を約0.1%w/w、最大で約5%w/w以上の濃度で含有するものとして製剤化され得る。好適な点眼液は当該技術分野で知られている。
【0063】
局所適用が意図される固体形態の組成物は、唇または身体の他の部分への適用が意図されたスティック型組成物として製剤化され得る。そのような組成物は、有効量の抗掻痒剤、例えば、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを含有する。存在する抗掻痒剤の量は、典型的には約0.01%w/w~約5%w/wである。固体はまた、約40%~98%w/w、好ましくは約50%~90%w/wの皮膚軟化剤を含有する。この組成物は、1%~20%w/w、好ましくは5%~15%w/wの好適な増粘剤、および、所望の場合または必要な場合には、乳化剤および水または緩衝剤を更に含有し得る。
【0064】
また、組成物、および組成物を含有する調製物はまた、包帯上にコーティングされ得るか、生体接着剤と混合され得るか、または包帯剤に含まれ得る。それ故、包帯、生体接着剤、包帯剤および他のそのような材料ならびに本明細書に記載のように製剤化された組成物の組み合わせが提供される。
【0065】
持続放出
本方法で用いられ得るナルブフィン製剤には、米国仮特許出願番号60/772,466、60/710,772、および62/011,936;米国特許出願番号11/509,347(US2007/0048376として公開)、12/154,496(US2009/0030026として公開)、および14/738,550;ならびにPCT出願番号PCT/US2015/035650に記載されている経口持続放出ナルブフィン製剤が含まれ、これらの各々は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
「持続放出」または「延長放出」は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの治療的に有益な血液レベル(但し毒性レベル未満)が長期間にわたって維持されるように制御された速度でナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルが製剤から放出されることを意味する。あるいは、「持続放出」または「延長放出」は、所望の薬理学的効果が長期間にわたって維持されることを意味する。
【0067】
ナルブフィン注射可能製剤(すなわち、IVまたはIMまたはSC)の半減期は、比較的短く、わずか約2~3時間であることが報告されている。いくつかの実施形態では、本方法は、抗掻痒有効量のナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを含むナルブフィンの経口持続放出製剤を用いることができる。経口持続放出製剤は、ボーラス注射または即時放出経口製剤について観察されるものよりも長い期間(例えば、少なくとも約8~12時間、透析患者では、最大で14時間または22時間)にわたって抗掻痒剤の制御された放出およびより低いCmaxを提供し得る。投薬の頻度を減少させることは、患者の便宜の向上および本方法の順守の可能性を提供する。より少ない投薬頻度はまた、患者が経時的により低いピーク濃度の薬剤に曝され得るため、副作用の減少を提供する潜在性を有する。
【0068】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、予想されるより長い抗掻痒効果の持続時間は、ナルブフィンの腸肝再循環に起因する。ナルブフィンは、UDP-グルクロン酸トランスフェラーゼなどの酵素系との酵素反応を介してインビボでグルクロン酸または他のタイプのコンジュゲート代謝産物を形成する。胆汁中の親薬物が胆嚢から腸に放出され再吸収される場合に腸肝再循環がまた生じる可能性もある。一旦形成されると、コンジュゲートナルブフィン生成物は、胆汁分泌を介して胃腸管に輸送されると考えられ、これにより薬物コンジュゲートが開裂してナルブフィンを遊離し、これは腸から再吸収され得る。持続放出製剤は、ナルブフィンをインビボ系によりゆっくりと放出し、より多くの薬物をコンジュゲートさせ、そのため、再循環およびその後の腸からの再吸収に利用できるようにすることによって抗掻痒効果の持続時間を改善することができる。
【0069】
本方法は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルおよび持続放出デリバリーシステムを含む組成物を用いることができる。持続放出デリバリーシステムは、(i)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、および少なくとも1種の薬学的希釈剤;(ii)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、少なくとも1種の薬学的希釈剤、および第1の架橋剤とは異なる少なくとも1種のカチオン性架橋剤;または(iii)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種のカチオン性架橋化合物、および少なくとも1種の薬学的希釈剤を含む。あるいは、他の実施形態では、本方法は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルおよび持続放出デリバリーシステム(持続放出システムでは疎水性化合物を用いることができる)を含む組成物を用いることができる。
【0070】
ナルブフィンは、持続放出デリバリーシステム中に均一に分散され得る。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約1mg~約240mg;約1mg~約150mg;約1mg~約125mg;または約1mg~約100mgの量で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約5mg~約80mg;約10mg~約70mg;約15mg~約60mg;約40mg~約80mg;約50mg~約70mg;または約45mg~約60mgの量で組成物中に存在する。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、または約240mgの量で組成物中に存在する。別の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩は、約15mg、約30mg、約45mg、約60mg、約90mg、約120mg、または約180mgの量で組成物中に存在する。
【0071】
更に別の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、例えば、HCLは、約15mg、約30mg、約60mg、約90mg、約120mg、または約180mgの量で組成物中に存在する。
【0072】
いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約10mg~約420mg;約25mg~約225mg;約21mg~約198mg;または約80mg~約200mg;約80mg~約220mg;約90mg~約210mg;約100mg~約200mg;約110mg~約190mg;約120mg~約180mg;約130mg~約170mg;約140mg~約160mg;約30mg~約60mg;約60mg~約180mg;約30mg~約180mg、約75mg~約150mg、約80mg~約160mg、約90mg~約150mg、約100mg~約140mg、約110mg~約130mg、約100mg~約300mg、約200mg~約300mgまたは約200mg~約250mgの量で組成物中に存在する。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約75mg~約150mgの量で組成物中に存在する。
【0073】
いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約30mg、約60mg、約75mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約112mg、約115mg、約117mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約225mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約300mg、約320mg、約340mg、約360mg、約380mg、約400mgまたは約420mgの量で組成物中に存在する。別の実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約112mgの量で組成物中に存在する。
【0074】
組成物中のナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:持続放出デリバリーシステムの比は一般に約4:1~約1:25である。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:持続放出デリバリーシステムの比は一般に約2.5:1~約1:4である。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:持続放出デリバリーシステムの比は一般に、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、約2:1~約1:2、約1:1~約1:5、約1:1~約1:4、約1:1~約1:3、約1:1~約1.2、および約1:2~約1:3である。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:持続放出デリバリーシステムの比は、約1:1、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:4、または約1:5である。
【0075】
一実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約5重量%~約80重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の架橋剤は、約0.5重量%~約80重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約20重量%~約80重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。別の実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約8重量%~約31重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の架橋剤は、約12重量%~約47重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約20重量%~約78重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。別の実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約10重量%~約20重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の架橋剤は、約15重量%~約25重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約50重量%~約85重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約22重量%、約24重量%、約26重量%、約28重量%、約30重量%、約32重量%、約34重量%、または約36重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の架橋剤は、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約22重量%、約24重量%、約26重量%、約28重量%、約30重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、または約35重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約80重量%、または約85重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。
【0076】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、または約20重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の架橋剤は、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、または約22重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約80重量%、または約85重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。一実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約8重量%、約12重量%、または約20重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の架橋剤は、約12重量%、約18重量%、または約30重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約40重量%、約60重量%、または約70重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。
【0077】
一実施形態では、ナルブフィンは、当該技術分野で知られている任意の薬学的に許容可能な塩の形態にある。例示的な薬学的に許容可能な塩には、限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、パモ酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリル硫酸、ナフタレンスルホン酸、リノール酸、リノレン酸などが含まれる。一実施形態は、ナルブフィンの塩酸塩を含む。
【0078】
持続放出デリバリーシステムは、少なくとも1種の親水性化合物を含む。親水性化合物は好ましくは、液体に曝露されると持続的な速度でナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを放出するゲルマトリックスを形成する。ゲルマトリックスからのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの放出速度は、ゲルマトリックスの成分と胃腸管内の水相との間の薬物の分配係数に依存する。ナルブフィン:親水性化合物の重量比は一般に、約10:1~約1:10、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、および約2:1~約1:2の範囲内である。いくつかの実施形態では、ナルブフィン:親水性化合物の重量比は、約10:1~約1:1、約10:1~約2:1、約9:1~約1:1、約8:1~約1:1、約7:1~約1:1、約6:1~約1:1、約5:1~約1:1、約4:1~約1:1、約3:1~約1:1、および約2:1~約1:1の範囲内である。いくつかの実施形態では、ナルブフィン:親水性化合物の重量比は、約6:1~約1:1、約5:1~約2:1、約4:1~約3:1、約4:1~約2:1、および約5:1~約2:1の範囲内である。いくつかの実施形態では、ナルブフィン:親水性化合物の重量比は、約1:5、約1:4.5、約1:4.4、約1:4、約1:3.5、約1:3.3、約1:3、約1:2.5、約1:2、約1:1、および約1:1.5である。
【0079】
持続放出デリバリーシステムは一般に、約5重量%~約80重量%の量で親水性化合物を含む。いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは一般に、約5重量%~約30重量%、約8重量%~約31重量%、約10重量%~約20重量%、約20重量%~約60重量%、または約40重量%~約60重量%の量で親水性化合物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約8重量%~約31重量%の量で親水性化合物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約10重量%~約20重量%の量で親水性化合物を含む。いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、または約20重量%の量で親水性化合物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約12重量%の量で親水性化合物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約8重量%の量で親水性化合物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約20重量%の量で親水性化合物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約28重量%の量で親水性化合物を含む。
【0080】
親水性化合物は、当該技術分野で親水性であることが知られている任意の化合物である。例示的な親水性化合物には、限定されないが、ガム、セルロースエーテル、ポリビニルピロリドン、タンパク質由来化合物、およびそれらの混合物が含まれる。例示的なガムには、限定されないが、ヘテロ多糖ガムおよびホモ多糖ガム、例えばキサンタン、トラガカント、ペクチン、アカシア、カラヤ、アルギネート、寒天、グアー、ヒドロキシプロピルグアー、カラギーナン、ローカストビーンガム、およびジェランガムが含まれる。例示的なセルロースエーテルには、限定されないが、ヒドロキシアルキルセルロースおよびカルボキシアルキルセルロースが含まれる。いくつかの実施形態では、セルロースエーテルには、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態では、親水性化合物はガムである。他の実施形態では、親水性化合物はヘテロ多糖ガムである。更なる実施形態では、親水性化合物はキサンタンガムまたはその誘導体である。キサンタンガムの誘導体には、限定されないが、例えば、脱アシル化キサンタンガム、キサンタンガムのカルボキシメチルエステル、およびキサンタンガムのプロピレングリコールエステルが含まれる。
【0081】
別の態様では、持続放出デリバリーシステムは、少なくとも1種の架橋剤を更に含む。一実施形態では、架橋剤は、液体の存在下で親水性化合物を架橋してゲルマトリックスを形成することが可能な化合物である。本明細書で使用される場合、「液体」には、例えば、胃腸液および水溶液、例えばインビトロ溶解試験に使用されるものが含まれる。持続放出デリバリーシステムは一般に、約0.5重量%~約80重量%の量で架橋剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは一般に、約12重量%~約47重量%の量で架橋剤を含む。別の実施形態では、持続放出デリバリーシステムは一般に、約20重量%~約30重量%の量で架橋剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは一般に、約15重量%~約25重量%の量で架橋剤を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の架橋剤は、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、または約25重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約18重量%の量で架橋剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約12重量%の量で架橋剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約30重量%の量で架橋剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約42重量%の量で架橋剤を含む。
【0082】
例示的な架橋剤には、ホモ多糖が含まれる。例示的なホモ多糖には、限定されないが、ガラクトマンナンガム、例えばグアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、およびローカストビーンガムが含まれる。いくつかの実施形態では、架橋剤はローカストビーンガムまたはグアーガムである。他の実施形態では、架橋剤はアルギン酸誘導体または親水コロイドである。
【0083】
いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムが少なくとも1種の親水性化合物および少なくとも1種の架橋剤を含む場合、親水性化合物:架橋剤の重量比は、約1:9~約9:1、約1:8~約8:1、約1:7~約7:1、約1:6~約6:1、約1:5~約5:1、約1:4~約4:1、約1:3~約3:1、または約1:2~約2:1である。いくつかの実施形態では、親水性化合物:架橋剤の重量比は、約1:5、約1:4.5、約1:4、約1:3.5、約1:3、約1:2.5、約1:2、約1:1.5、および約1:1である。
【0084】
持続放出デリバリーシステムが少なくとも1種の親水性化合物および少なくとも1種の架橋剤を含む場合、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:少なくとも1種の親水性化合物と少なくとも1種の架橋剤との合計の重量比は、約10:1~約1:10、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、または約2:1~約1:2である。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:少なくとも1種の親水性化合物と少なくとも1種の架橋剤との合計の重量比は、約4:1~約1:1、約4:1~約1:1.5、約3:1~約1:1、または約2:1~約1:1である。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:少なくとも1種の親水性化合物と少なくとも1種の架橋剤との合計の比は、約5:1、約4:1(すなわち、1:0.25)、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1(すなわち、1:0.5)、約1.9:1、約1.8:1、約1.7:1、約1.6:1、約1.5:1、約1.4:1、約1.3:1、約1.2:1、約1.1:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:3、約1:4、および約1:5である。
【0085】
持続放出デリバリーシステムは、当該技術分野で知られている1種以上の薬学的希釈剤を更に含む。例示的な薬学的希釈剤には、限定されないが、単糖類、二糖類、多価アルコールおよびそれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的希釈剤には、例えば、デンプン、マンニトール、ラクトース、デキストロース、スクロース、微晶質セルロース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、およびそれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態では、薬学的希釈剤は水溶性である。水溶性薬学的希釈剤の非限定的な例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、またはそれらの混合物が含まれる。薬学的希釈剤:親水性化合物の重量比は一般に、約1:9~約9:1、約1:8~約8:1、約1:7~約7:1、約1:6~約6:1、約1:5~約5:1、約1:4~約4:1、約1:3~約3:1、または約1:2~約2:1である。いくつかの実施形態では、薬学的希釈剤:親水性化合物の重量比は一般に約9:1~約1:1.5である。いくつかの実施形態では、薬学的希釈剤:親水性化合物の重量比は、約9:1、約8.75:1、約8.5:1、約8.25:1、約8:1、約7.5:1、約7:1、約6.5:1、約6:1、約5.5:1、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.5:1、または約1:1である。
【0086】
持続放出デリバリーシステムは一般に、約20%~約80%、約30%~約70%、約40%~約70%、または約40%~約60%の量で1種以上の薬学的希釈剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約20重量%~約70重量%の量で1種以上の薬学的希釈剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約50重量%~約85重量%の量で1種以上の薬学的希釈剤を含む。いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約80重量%、または約85重量%の量で1種以上の薬学的希釈剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約20重量%の量で1種以上の薬学的希釈剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約30重量%の量で1種以上の薬学的希釈剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約40重量%の量で1種以上の薬学的希釈剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約50重量%の量で1種以上の薬学的希釈剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約60重量%の量で1種以上の薬学的希釈剤を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約70重量%の量で1種以上の薬学的希釈剤を含む。
【0087】
更なる態様では、持続放出デリバリーシステムは、1種以上のカチオン性架橋化合物を含む。いくつかの実施形態では、架橋剤の代わりに1種以上のカチオン性架橋化合物が使用される。いくつかの実施形態では、架橋剤に加えて1種以上のカチオン性架橋化合物が使用される。一実施形態では、1種以上のカチオン性架橋化合物は、液体の存在下で親水性化合物を架橋してゲルマトリックスを形成するのに十分な量で使用される。いくつかの実施形態では、1種以上のカチオン性架橋化合物は、約0.5重量%~約30重量%、約0.5重量%~約25重量%、約0.5重量%~約20重量%、約0.5重量%~約15重量%、約0.5重量%~約10重量%、または約0.5重量%~約5重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。いくつかの実施形態では、1種以上のカチオン性架橋化合物は、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、約6重量%~約14重量%、約7重量%~約13重量%、約8重量%~約12重量%、または約9重量%~約11重量%量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。いくつかの実施形態では、1種以上のカチオン性架橋化合物は、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、または約15重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。一実施形態では、カチオン性架橋化合物は、約10重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。
【0088】
例示的なカチオン性架橋化合物には、限定されないが、一価金属カチオン、多価金属カチオン、ならびにアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属硫酸塩、塩化物、ホウ酸塩、臭化物、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、およびそれらの混合物を含む無機塩が含まれる。例えば、カチオン性架橋化合物には、限定されないが、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、塩化リチウム、リン酸三カリウム、ホウ酸ナトリウム、臭化カリウム、フッ化カリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウム、フッ化ナトリウム、またはそれらの混合物のうちの1種以上が含まれる。
【0089】
持続放出デリバリーシステムが少なくとも1種の親水性化合物および少なくとも1種のカチオン性架橋化合物を含む場合、親水性化合物:カチオン性架橋化合物の重量比は、約1:9~約9:1、約1:8~約8:1、約1:7~約7:1、約1:6~約6:1、約1:5~約5:1、約1:4~約4:1、約1:3~約3:1、または約1:2~約2:1の範囲である。一実施形態では、親水性化合物:カチオン性架橋化合物の重量比は約1:3~約3:1の範囲である。いくつかの実施形態では、親水性化合物:カチオン性架橋化合物の重量比は、約3:1、約2.75:1、約2.5:1、約2.25:1、約2:1、約1.8:1、約1.6:1、約1.4:1、約1.2:1、約1:1、約1:1.25、約1:1.5、または約1:2である。一実施形態では、親水性化合物:カチオン性架橋化合物の重量比は約1:1.25である。一実施形態では、親水性化合物:カチオン性架橋化合物の重量比は約1.2:1である。一実施形態では、親水性化合物:カチオン性架橋化合物の重量比は約2:1である。一実施形態では、親水性化合物:カチオン性架橋化合物の重量比は約2.8:1である。
【0090】
一実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約5重量%~約80重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種のカチオン性架橋剤は、約0.5重量%~約30重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約20重量%~約80重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。別の実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約8重量%~約30重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種のカチオン性架橋剤は、約10重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約20重量%~約70重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。別の実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約5重量%~約30重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種のカチオン性架橋剤は、約5重量%~約20重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約20重量%~約85重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。別の実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約10重量%~約20重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種のカチオン性架橋剤は、約5重量%~約15重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約50重量%~約85重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。
【0091】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約22重量%、約24重量%、約26重量%、約28重量%、または約30重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種のカチオン性架橋剤は、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、または約20重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約40重量%、約45重量%、約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約80重量%、または約85重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。一実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、または約20重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種のカチオン性架橋剤は、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%、約80重量%、または約85重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。一実施形態では、少なくとも1種の親水性化合物は、約8重量%、約12重量%、または約20重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種のカチオン性架橋剤は、約10重量%、約12重量%、または約14重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在し;少なくとも1種の薬学的希釈剤は、約40重量%、約60重量%、または約70重量%の量で持続放出デリバリーシステム中に存在する。
【0092】
一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約0.5%~約80%のローカストビーンガム、約5%~約80%のキサンタンガム、約20%~約80%のマンニトールおよび約0.5%~80%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約12%~約47%のローカストビーンガム、約8%~約31%のキサンタンガム、約20%~約78%のマンニトールおよび約0.5%~25%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約15%~約25%のローカストビーンガム、約10%~約20%のキサンタンガム、約50%~約85%のマンニトールおよび約5%~15%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約18%のローカストビーンガム、約12%のキサンタンガム、約60%のマンニトールおよび約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約12%のローカストビーンガム、約8%のキサンタンガム、約70%のマンニトールおよび約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約20%のローカストビーンガム、約30%のキサンタンガム、約40%のマンニトールおよび約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約30%のローカストビーンガム、約20%のキサンタンガム、約40%のマンニトールおよび約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約42%のローカストビーンガム、約28%のキサンタンガム、約20%のマンニトールおよび約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0093】
この持続放出システムの成分(例えば、少なくとも1種の親水性化合物および少なくとも1種の架橋剤;または少なくとも1種の親水性化合物および少なくとも1種のカチオン性架橋化合物)の2つの特性は、それが液体に曝露されたときにゲルマトリックスを形成し、化合物/薬剤の迅速に水和および高いゲル強度を有するゲルマトリックスを形成する能力である。遅延放出ゲルマトリックスを達成するために必要とされるこれらの2つの特性は、化合物の特定の組み合わせ(例えば、少なくとも1種の親水性化合物および少なくとも1種の架橋剤;または少なくとも1種の親水性化合物および少なくとも1種のカチオン性架橋化合物)によって最大化される。例えば、親水性化合物(例えば、キサンタンガム)は、迅速な水和を提供する優れた水を逃がす特性を有する。親水性化合物と、親水性化合物の剛性螺旋秩序構造を架橋することができる材料(例えば、架橋剤および/またはカチオン性架橋化合物)との組み合わせは、それによって相乗的に作用して、ゲルマトリックスの予想よりも高い粘度(すなわち、高いゲル強度)を提供する。
【0094】
いくつかの実施形態では、持続放出組成物は、1種以上の湿潤剤(例えば、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリエトキシル化水素化ヒマシ油、ヒマシ油からのポリエトキシル化脂肪酸、水素化ヒマシ油からのポリエトキシル化脂肪酸)、1種以上の滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムなど)、1種以上の緩衝剤、1種以上の着色剤、および/または他の慣用の成分と更に混合される。
【0095】
いくつかの実施形態では、本方法で用いられる組成物は、追加的な薬学的賦形剤を含有し得る。例えば、特定の実施形態では、フマル酸が本明細書に記載の製剤に添加され得る。
【0096】
他の実施形態では、非機能性コーティング、例えば、Opadry(登録商標)が本明細書に記載の組成物に添加され得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、第2の親水性化合物を更に含む。いくつかの実施形態では、第2の親水性化合物はセルロースエーテルである。いくつかの実施形態では、第2の親水性化合物はヒドロキシアルキルセルロースまたはカルボキシアルキルセルロースである。いくつかの実施形態では、第2の親水性化合物は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、第2の親水性物質は、エチルセルロースまたはワックス(例えば、限定されないが、セチルアルコール、ステアリルアルコール、白ろう、またはカルナバワックスを含む)である。第2の親水性化合物は、約5重量%~約45重量%、約5重量%~約25重量%、約10重量%~約20重量%、または12重量%~約18重量%の範囲の量で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、第2の親水性化合物は、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約30%、約35%、約40%、または約45%の量で製剤中に存在する。
【0098】
いくつかの実施形態では、第2の親水性化合物:ナルブフィンまたは薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの重量比は、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、約2:1~約1:2、約1:1~約1:3、または約1:1~約1:2の範囲である。いくつかの実施形態では、第2の親水性化合物:ナルブフィンまたは薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの重量比は、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、または約1:5である。
【0099】
いくつかの実施形態では、第2の親水性化合物:持続放出デリバリーシステムの重量比は、約10:1~約1:10、約8:1~約1:8、約6:1~約1:6、約4:1~約1:4、約2:1~約1:3、約1:1~約1:10、約1:1~約1:6、または約1:2~約1:6の範囲である。いくつかの実施形態では、第2の親水性化合物:持続放出デリバリーシステムの重量比は、約10:1、約8:1、約6:1、約4:1、約2:1、約1:1、約1:1.5、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9または約1:10である。
【0100】
いくつかの実施形態では、約1mg~200mgの塩酸ナルブフィンおよび約10mg~約420mgの持続放出デリバリーシステムを含む経口持続放出固体投薬製剤。これらの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約12%~約42%のローカストビーンガム;約8.0%~約28%のキサンタンガム;約20%~約70%のマンニトール;および約5%~約20%の硫酸カルシウム二水和物を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、約5mg~約80mgの塩酸ナルブフィンおよび約80mg~約360mgの持続放出デリバリーシステムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いることができる。いくつかの実施形態では、本方法は、約50mg~約150mgの塩酸ナルブフィンおよび約100mg~約300mgの持続放出デリバリーシステムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いることができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、本方法は、約15mgの塩酸ナルブフィン、および約25mg~約225mg、例えば約195mgの持続放出デリバリーシステムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。これらの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約14%のローカストビーンガム;約9%のキサンタンガム;約47%のマンニトール;および約8%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、本方法は、約30mgの塩酸ナルブフィン、および約25mg~約225mg、例えば約180mgの持続放出デリバリーシステムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。これらの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約18%のローカストビーンガム;約12%のキサンタンガム;約60%のマンニトール;および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、本方法は、約60mgの塩酸ナルブフィン、および約25mg~約225mg、例えば約120mgの持続放出デリバリーシステムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。これらの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約10%のローカストビーンガム;約12%のキサンタンガム;約60%のマンニトール;および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、約5mg~約80mgの塩酸ナルブフィンおよび約80mg~約360mgの持続放出デリバリーシステムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。
【0104】
いくつかの実施形態では、本方法は、約120mgの塩酸ナルブフィン、および約25mg~約250mg、例えば約240mgの持続放出デリバリーシステムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。これらの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約18%のローカストビーンガム;約12%のキサンタンガム;約60%のマンニトール;および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、本方法は、約30mgの塩酸ナルブフィン、および約25mg~約350mg、例えば約270mgまたは約360mgの持続放出デリバリーシステムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。これらの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約18%のローカストビーンガム;約12%のキサンタンガム;約60%のマンニトール;および約10%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、本方法は、約45~約60mgの塩酸ナルブフィンおよび約100mg~約200mgの持続放出デリバリーシステムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。これらの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約15%~約25%のローカストビーンガム;約10%~約20%のキサンタンガム;約50%~約85%のマンニトール;および約5%~約15%の硫酸カルシウム二水和物を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、本方法は、約30mgの塩酸ナルブフィン、約32.4mgのローカストビーンガム;約21.6mgのキサンタンガム;約108mgのマンニトール;約18mgの硫酸カルシウム二水和物、約35mgのヒドロキシプロピルセルロース、および約1.9mgのステアリン酸マグネシウムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。
【0108】
いくつかの実施形態では、本方法は、約60mgの塩酸ナルブフィン、約21.6mgのローカストビーンガム;約14.4mgのキサンタンガム;約72mgのマンニトール;約12mgの硫酸カルシウム二水和物、約30mgのヒドロキシプロピルセルロース、および約1.6mgのステアリン酸マグネシウムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。
【0109】
いくつかの実施形態では、本方法は、約90mgの塩酸ナルブフィン、約32.4mgのローカストビーンガム;約21.6mgのキサンタンガム;約108mgのマンニトール;約18mgの硫酸カルシウム二水和物、約45mgのヒドロキシプロピルセルロース、および約2.4mgのステアリン酸マグネシウムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。
【0110】
いくつかの実施形態では、本方法は、約120mgの塩酸ナルブフィン、約43.2mgのローカストビーンガム;約28.8mgのキサンタンガム;約144mgのマンニトール;約24mgの硫酸カルシウム二水和物、約60mgのヒドロキシプロピルセルロース、および約3.2mgのステアリン酸マグネシウムを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。
【0111】
いくつかの実施形態では、本方法は、約180mgの塩酸ナルブフィン、約64.8mgのローカストビーンガム;約43.2mgのキサンタンガム;約216mgのマンニトール;約36mgの硫酸カルシウム二水和物、約90mgのヒドロキシプロピルセルロース、約5mgのステアリン酸マグネシウム、および約25mgのフマル酸を含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。
【0112】
いくつかの実施形態では、本方法は、約180mgの塩酸ナルブフィン、約48.6mgのローカストビーンガム;約32.4mgのキサンタンガム;約162mgのマンニトール;約27mgの硫酸カルシウム二水和物、約60mgのヒドロキシプロピルセルロース、約4mgのステアリン酸マグネシウム、および約25mgのフマル酸を含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。
【0113】
いくつかの実施形態では、本方法は、約30mgの塩酸ナルブフィン、約32.4mgのローカストビーンガム;約21.6mgのキサンタンガム;約108mgのマンニトール;約18mgの硫酸カルシウム二水和物、約35mgのヒドロキシプロピルセルロース、約1.9mgのステアリン酸マグネシウム、および約7.4mgのOpadry II Whiteを含む経口持続放出固体投薬製剤を用いる。
【0114】
ナルブフィンの持続放出製剤は、経口的に投与可能な固体投薬製剤である。経口固体投薬製剤の非限定的な例には、錠剤、複数の顆粒を含むカプセル、舌下錠、散剤、顆粒、シロップ、および口腔剤形またはデバイス(例えば、口腔パッチ、錠剤など)が含まれる。いくつかの実施形態では、錠剤は、腸溶性コーティングまたは親水性コーティングを有する。
【0115】
持続放出デリバリーシステムは、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルが添加される前に、乾式造粒または湿式造粒によって調製されるが、成分は凝集技術によって一緒に保持されて許容可能な生成物を生成し得る。湿式造粒技術では、成分(例えば、親水性化合物、架橋剤、薬学的希釈剤、カチオン性架橋化合物、疎水性ポリマーなど)を一緒に混合し、次いで1種以上の液体(例えば、水、プロピレングリコール、グリセロール、アルコール)で湿らせて、後に乾燥される湿った塊を生成する。次いで、乾燥した塊を慣用の機器で粉砕して持続放出デリバリーシステムの顆粒とする。その後、持続放出デリバリーシステムは、所望の量で、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル、および、任意に、1種以上の湿潤剤、1種以上の滑沢剤、1種以上の緩衝剤、1種以上着色剤、1種以上の第2の親水性化合物、または他の慣用の成分と混合されて顆粒化した組成物を生成する。持続放出デリバリーシステムおよびナルブフィンは、例えば、高せん断ミキサーでブレンドされ得る。ナルブフィンは、好ましくは、持続放出デリバリーシステム中に細かく均一に分散される。顆粒化組成物は、錠剤の均一なバッチを作製するのに十分な量で、典型的な圧縮圧力、すなわち、約2,000~16,000psiで慣用の製造スケール打錠機における錠剤化に供される。いくつかの実施形態では、混合物は、液体への曝露での水和が後に困難となる点まで圧縮されるべきではない。
【0116】
いくつかの実施形態では、ナルブフィン製剤は、乾式造粒または湿式造粒によって調製される。持続放出デリバリーシステムの成分は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルと一緒に添加される。あるいは、成分の全てが凝集技術によって一緒に保持されて許容可能な生成物を生成し得る。湿式造粒技術では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルおよび成分(例えば、親水性化合物、架橋剤、薬学的希釈剤、カチオン性架橋化合物、疎水性ポリマーなど)を一緒に混合し、次いで1種以上の液体(例えば、水、プロピレングリコール、グリセロール、アルコール)で湿らせて、後に乾燥される湿った塊を生成する。次いで、乾燥した塊を慣用の機器で粉砕して顆粒とする。任意に、1種以上の湿潤剤、1種以上の滑沢剤、1種以上の緩衝剤、1種以上の着色剤、1種以上の第2の親水性化合物、または他の慣用の成分も造粒に添加される。顆粒化組成物は、錠剤の均一なバッチを作製するのに十分な量で、典型的な圧縮圧力、すなわち、約2,000~16,000psiで慣用の製造スケール打錠機における錠剤化に供される。いくつかの実施形態では、混合物は、液体への曝露での水和が後に困難となる点まで圧縮されるべきではない。
【0117】
顆粒化組成物の平均粒子サイズは、重量で約50μm~約400gmである。いくつかの実施形態では、重量平均粒子サイズは、約185μm~約265μmである。顆粒化組成物の平均密度は、約0.3g/mL~約0.8g/mLである。いくつかの実施形態では、平均密度は、約0.5g/mL~約0.7g/mLである。造粒から形成された錠剤は一般に、約4Kp~約22Kpの硬度である。造粒の平均流速は約25~約40g/秒である。
【0118】
いくつかの実施形態では、本方法は、異なる速度で塩酸ナルブフィンを放出するように層が製剤化された多層固体剤形を用いることができる。例えば、一実施形態では、第2の層は延長放出層であり、その層は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル、およびナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを、治療的に有益な血液レベルが長期間(例えば、約8~約12時間)にわたって維持されるように制御された速度で放出するように設計された持続放出デリバリーシステムを含む。第1の層は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを、即時の期間(例えば、約1~約2時間)に治療的に有益な血液レベルを達成するために第2の層の速度よりも速い速度で放出するように設計されたナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの製剤を含む即時放出層である。いくつかの実施形態では、第1の層は持続放出デリバリーシステムを含む。いくつかの実施形態では、第1の層は持続放出デリバリーシステムを含まない。
【0119】
いくつかの実施形態では、第2の層:第1の層の重量比は、約10:1~約1:10、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、および約2:1~約1:2である。一実施形態では、第2の層:第1の層の重量比は約5:1~約1:5である。更なる実施形態では、第2の層:第1の層の重量比は約1:1~約1:2である。いくつかの実施形態では、第2の層:第1の層の重量比は、約1:1、約1:1.2、約1:1.4、約1:1.6、約1:1.8、または約1:2である。一実施形態では、第2の層:第1の層の重量比は約1:2である。一実施形態では、第2の層:第1の層の重量比は約1:1.4である。いくつかの実施形態では、第2の層:第1の層の重量比は、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.5:1である。一実施形態では、第2の層:第1の層の重量比は約2.5:1である。
【0120】
多層剤形の持続放出デリバリーシステムは、(i)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、および少なくとも1種の薬学的希釈剤;(ii)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種の架橋剤、少なくとも1種の薬学的希釈剤、および第1の架橋剤とは異なる少なくとも1種のカチオン性架橋剤;または(iii)少なくとも1種の親水性化合物、少なくとも1種のカチオン性架橋化合物、および少なくとも1種の薬学的希釈剤を含む。いくつかの実施形態では、第1の層が持続放出デリバリーシステムを含む場合、第1の層の持続放出デリバリーシステムは、第2の層の持続放出デリバリーシステムと同じ成分を含む(例えば、第1および第2の層の両方が上記で列挙した実施形態(i)~(iii)のうちの1つである)。他の実施形態では、第1の層の持続放出デリバリーシステムは、第2の層の持続放出デリバリーシステムとは異なる成分を含む(例えば、第1の層は上記で列挙した実施形態(i)である一方で、第2の層は上記で列挙した実施形態(iii)である)。いずれかの層の持続放出デリバリーシステムは、上記で列挙した実施形態(i)~(iii)のうちの1つであり得ることが認識される。その上、いくつかの実施形態では、第1の層は持続放出デリバリーシステムを含まないことが認識される。
【0121】
持続放出デリバリーシステムは一般に、約10mg~約420mgの範囲の量で第2の層(例えば、延長放出層)中に存在する。いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約110mg~約200mgの範囲の量で第2の層中に存在する。いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約110mg~約150mgの範囲の量で第2の層中に存在する。いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約90mg~約150mgの範囲の量で第2の層中に存在する。いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、または約200mgの量で第2の層中に存在する。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約123mgの量で第2の層中に存在する。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約101mgの量で第2の層中に存在する。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約92mgの量で第2の層中に存在する。別の実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約112.5mgの量で第2の層中に存在する。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約135mgの量で第2の層中に存在する。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約150mgの量で第2の層中に存在する。
【0122】
ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは一般に、約15mg~約60mgの範囲の量で第2の層中に存在する。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約30mg~約60mgの範囲の量で第2の層中に存在する。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約45mg~約60mgの範囲の量で第2の層中に存在する。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約15mgの量で第2の層中に存在する。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約30mgの量で第2の層中に存在する。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約45mgの量で第2の層中に存在する。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約15mg、約30mg、約60mg、約90mg、約120mg、または約180mgの量で第2の層中に存在する。
【0123】
いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第2の層における持続放出デリバリーシステムの重量比は、約10:1~約1:10、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、または約2:1~約1:2である。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第2の層における持続放出デリバリーシステムの重量比は、約1:2~約1:4である。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第2の層における持続放出デリバリーシステムの重量比は、約1:1~約1:5である。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第2の層における持続放出デリバリーシステムの重量比は、約1:1、約1:1.2、約1:1.4、約1:1.6、約1:1.8、約1:2、約1:2.5、約1:3、または約1:3.5である。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第2の層における持続放出デリバリーシステムの重量比は、約1:2.5である。別の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第2の層における持続放出デリバリーシステムの重量比は、約1:3.3である。更なる実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第2の層における持続放出デリバリーシステムの重量比は、約1:3である。更に別の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第2の層における持続放出デリバリーシステムの比は、約1:2である。
【0124】
持続放出デリバリーシステムが第1の層(例えば、即時放出層)中に存在する場合、それは一般に、約0mg~約50mgの範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約5mg~約25mgまたは約5mg~約15mgの範囲の量で第1の層中に存在する。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約3mg~約9mgの量で第1の層中に存在する。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約4mg~約6mgの量で第1の層中に存在する。いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約2mg、約4mg、約6mg、約8mg、約10mg、約12mg、約14mg、約15mg、約16mg、約18mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mgまたは約50mgの量で第1の層中に存在する。一実施形態では、持続放出デリバリーシステムは、約6mgの量で第1の層中に存在する。
【0125】
いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは一般に、約5mg~約180mgの範囲の量で第1の層(例えば、即時放出層)中に存在する。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約5mg~約25mgまたは約10mg~約20mgの範囲の量で第1の層中に存在する。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約5mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mgまたは約50mgの量で第1の層中に存在する。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、約15mg、約30mg、約60mg、約90mg、約120mg、または約180mgの量で第1の層中に存在する。
【0126】
いくつかの実施形態では、第1の層が持続放出デリバリーシステムを含む場合、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第1の層における持続放出デリバリーシステムの比は、約10:1~約1:10、約9:1~約1:9、約8:1~約1:8、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、約2:1~約1:2である。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第1の層における持続放出デリバリーシステムの比は、約2:1~約4:1である。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第1の層における持続放出デリバリーシステムの比は、約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.5:1、または約1:1である。一実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第1の層における持続放出デリバリーシステムの比は、約2.5:1である。別の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル:第1の層における持続放出デリバリーシステムの比は、約3:1である。
【0127】
いくつかの実施形態では、多層剤形は薬学的崩壊剤を更に含む。崩壊剤は、即時放出層からのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの溶解および吸収を促進する。薬学的崩壊剤の非限定的な例には、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコレート、クロスポビドン、および非修飾デンプンが含まれる。一実施形態では、崩壊剤は、剤形の第1の層(すなわち、即時放出層)にある。崩壊剤は一般に、約1.5mg~約4.5mgの量で層中に存在する。一実施形態では、崩壊剤は、約3mgの量で存在する。一実施形態では、崩壊剤は、約2~10重量%の量で層中に存在する。一実施形態では、崩壊剤は、約5重量%の量で層中に存在する。層が持続放出デリバリーシステムを含有する場合、持続放出デリバリーシステム:崩壊剤の重量比は、約5:1~約1:5の範囲である。いくつかの実施形態では、持続放出デリバリーシステム:崩壊剤の比は、約1:1~約3:1の範囲である。他の実施形態では、持続放出デリバリーシステム:崩壊剤の比は、約2:1の範囲である。
【0128】
いくつかの実施形態では、多層錠剤は、最初に即時放出層および延長放出層ブレンドを別々に調製することによって調製される。延長放出層は上述したように調製される。次いで、延長放出層の湿式造粒を乾燥させ、適切なサイズに粉砕する。ステアリン酸マグネシウムを添加し、粉砕された造粒物と混合する。即時放出層は、最初にナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを1種以上の希釈剤(例えば、微晶質セルロース)と混合することによって調製される。次いで、この混合物は1種以上の崩壊剤と任意に混合される。ブレンドはステアリン酸マグネシウムと混合される。最後に、即時放出層ブレンドおよび延長放出層ブレンドは多層(例えば、2層)錠剤に圧縮される。
【0129】
特定の実施形態では、親水性化合物(例えば、キサンタンガム)などの製剤の成分の特定の化学的性質は、その成分がナルブフィンの溶解性に実質的に非感受性である自己緩衝剤とみなされ、pHは胃腸管の長さに沿って変化するようなものである。更に、その成分の化学的性質は、ポリカルボフィルなどの特定の既知の粘膜接着性物質と類似していると考えられる。粘膜接着特性は、口腔デリバリーシステムにとって望ましい。それ故、持続放出製剤は、胃腸管内でムチンと緩やかに相互作用し得、それによってナルブフィンの一定速度の送達が達成される別の様式を提供し得る。
【0130】
上記で考察した2つの現象(回復性(buoyancy)および粘膜接着特性)は、持続放出製剤が胃腸管のムチンおよび液体と相互作用して、ナルブフィンの一定速度の送達を提供し得るメカニズムである。
【0131】
USP Procedure Drug Release General Chapter<711>Dissolution(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって測定される場合、本方法で用いられる持続放出製剤は一般に、1時間後に約15重量%~約50重量%のナルブフィン、4時間後に約45~約80重量%のナルブフィン、または10時間後に少なくとも約80重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を示す。いくつかの実施形態では、持続放出製剤のインビトロおよびインビボ放出特性は、1種以上の異なる水不溶性および/または水溶性化合物の混合物を使用して、異なる可塑剤を使用して、持続放出フィルムの厚さを変えて、コーティング中に放出改変化合物を提供することを含めて、および/またはコーティングを通る通路を提供することによって改変される。いくつかの実施形態では、溶解速度は、pH6.8、37℃および15dpmで装置USPタイプIII/250mLを使用して決定される。いくつかの実施形態では、溶解速度は、37℃および15dpmでpH変化(0~1時間pH1.2、1時間後pH4.5、2時間後pH6.8)で実施される装置USPタイプIII/250mLを使用して決定される。
【0132】
いくつかの実施形態では、持続放出製剤は、約6時間後に約50重量%~約100重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、持続放出製剤は、約6時間後に約75重量%~約100重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。他の実施形態では、持続放出製剤は、約6時間~約8時間で約75重量%~約100重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。更なる実施形態では、持続放出製剤は、約12時間後に約80重量%~約100重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。また他の実施形態では、持続放出製剤は、約12時間~約24時間で約80重量%~約100重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、持続放出製剤は、約8時間~約12時間後に約80%~約100%のインビトロ溶解を有する。更に他の実施形態では、持続放出製剤は、約1時間後に約15重量%~約75重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。また更なる実施形態では、持続放出製剤は、約1時間後に約50重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、持続放出製剤は、約1時間後に約50重量%のナルブフィンおよび約6時間~約8時間で約75重量%~約100重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、持続放出製剤は、約1時間後に約50重量%のナルブフィンおよび約8時間~約12時間で約75重量%~約100重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、持続放出製剤は、約1時間後に約50重量%のナルブフィンおよび約12時間~約24時間で約75重量%~約100重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、持続放出製剤は、約1時間後に約50重量%のナルブフィンおよび約12時間後に約80重量%~約100重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。
【0133】
錠剤が、第1の延長放出層および第2の即時放出層を有する多層剤形である場合、持続放出製剤は、約1時間後に約25重量%~約75重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、多層剤形は、約1時間後に約25重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、多層剤形は、約1時間後に約50重量%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、多層剤形は、約6~8時間後に約75%~約100%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、多層剤形は、約8~12時間後に約75%~約100%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、多層剤形は、約12~24時間後に約75%~約100%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。いくつかの実施形態では、多層剤形は、約12時間後に約75%~約100%のナルブフィンのインビトロ溶解を有する。
【0134】
いくつかの実施形態では、正常または障害(例えば、低下した)のいずれかの腎臓機能を有する患者に経口投与される場合、本明細書に記載の持続放出製剤は、以下のインビトロ特性を示す:(a)ナルブフィンのピーク血漿レベルは、投与後に、例えば、尿毒症性掻痒または腎障害を有する患者の場合、約4時間~約6時間以内、または、例えば、腎障害のない患者の場合、約3時間~約5時間以内に起こる;(b)投薬の約30分から投薬の約6時間以内までのナルブフィンの抗掻痒効果の発現;(c)ナルブフィンの抗掻痒効果の持続時間は約2~約24時間である;(d)相対的ナルブフィンバイオアベイラビリティは、経口投与されるナルブフィンの水溶液と比較して、約0.5、約1、約1.5または約0.5~約1.5である。抗掻痒効果の発現の時間は、少なくとも投薬および掻痒症状の重篤度に依存し得る。いくつかの実施形態では、ナルブフィンの抗掻痒効果の持続時間は少なくとも約8時間である。いくつかの実施形態では、ナルブフィンの抗掻痒効果の持続時間は少なくとも約9時間である。いくつかの実施形態では、ナルブフィンの抗掻痒効果の持続時間は少なくとも約10時間である。いくつかの実施形態では、ナルブフィンの抗掻痒効果の持続時間は少なくとも約11時間である。いくつかの実施形態では、ナルブフィンの抗掻痒効果の持続時間は少なくとも約12時間である。いくつかの実施形態では、ナルブフィンの抗掻痒効果の持続時間は、約6時間、8時間、10時間、12時間、15時間、または18時間である。いくつかの実施形態では、相対的ナルブフィンバイオアベイラビリティは、経口投与されるナルブフィンの水溶液と比較して約0.94である。いくつかの実施形態では、相対的ナルブフィンバイオアベイラビリティは、経口投与されるナルブフィンの水溶液と比較して約1.35である。
【0135】
いくつかの実施形態では、持続放出ナルブフィン製剤は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを含む経口単位剤形を提供する。経口剤形は、少なくとも約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間または約24時間の期間にわたって抗掻痒効果を提供する。いくつかの実施形態では、経口剤形は、約6~18時間、約8~16時間、約8~12時間、約8~約24時間、約12~約24時間、約18~約24時間、または約8~10時間の期間にわたって抗掻痒効果を提供する。経口剤形は、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間または約24時間の期間にわたって抗掻痒効果を提供する。
【0136】
一実施形態では、経口剤形は、抗掻痒効果だけでなく、サイクル効果を壊すこと(例えば、特定の治療期間後に痒み感覚が戻らない)も提供する。
【0137】
いくつかの実施形態では、経口剤形は、プラトー領域が後に続く1つ以上のピークによって特徴付けられるナルブフィンの血漿レベルを提供する。プラトー領域は、ナルブフィンの比較的一貫した血漿レベルを有するものとして特徴付けられる(例えば、ナルブフィンの血漿レベルが時点から時点まで一貫して増加または減少しない)。いくつかの実施形態では、プラトー領域は、ナルブフィンの一貫した平均血漿レベルを有するものとして特徴付けられる。プラトー領域はプラトー領域に続く領域と対比され、ナルブフィンの血漿レベルは一般に1つの時点から次まで減少する。いくつかの実施形態では、プラトー領域は、少なくとも約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間または約12時間の持続時間を有する。いくつかの実施形態では、プラトー領域は、約1時間~約12時間、約2時間~約10時間、約2時間~約8時間、約2時間~約7時間または約4時間~約10時間、約4時間~約8時間、または約4時間~約6時間の持続時間を有する。いくつかの実施形態では、プラトー領域における各時点でのナルブフィンの血漿レベルは、プラトー領域における平均血漿レベルの約75%~約125%の範囲である。いくつかの実施形態では、プラトー領域における各時点でのナルブフィンの血漿レベルは、プラトー領域における平均血漿レベルの約80%~約120%の範囲である。いくつかの実施形態では、プラトー領域における各時点でのナルブフィンの血漿レベルは、プラトー領域における平均血漿レベルの約85%~約115%の範囲である。いくつかの実施形態では、プラトー領域における各時点でのナルブフィンの血漿レベルは、プラトー領域における平均血漿レベルの約90%~約110%の範囲である。
【0138】
いくつかの実施形態では、プラトー領域の間に観察されるナルブフィンの最低血漿レベルは、プラトー領域における全ての時点についての平均血漿レベルより約25%以下低い。いくつかの実施形態では、プラトー領域の間に観察されるナルブフィンの最低血漿レベルは、プラトー領域における平均血漿レベルより約20%以下低い。いくつかの実施形態では、プラトー領域の間に観察されるナルブフィンの最低血漿レベルは、プラトー領域における平均血漿レベルより約15%以下低い。いくつかの実施形態では、プラトー領域の間に観察されるナルブフィンの最低血漿レベルは、プラトー領域における平均血漿レベルの約75%~約100%の範囲である。いくつかの実施形態では、プラトー領域の間に観察されるナルブフィンの最低血漿レベルは、プラトー領域における平均血漿レベルの約80%~約100%の範囲である。いくつかの実施形態では、プラトー領域の間に観察されるナルブフィンの最低血漿レベルは、プラトー領域における平均血漿レベルの約85%~約100%の範囲である。いくつかの実施形態では、プラトー領域の間に観察されるナルブフィンの最低血漿レベルは、プラトー領域における平均血漿レベルの約80%~約95%の範囲である。
【0139】
共療法
本組成物は、本明細書に記載の方法において単独の活性薬学的成分または単独の活性抗掻痒成分として投与され得るが、他の実施形態では、それらはまた、掻痒に対して治療的に有効であるおよび/または抗掻痒成分の効果を補うものとして知られている1種以上の成分と組み合わせて使用され得る。
【0140】
例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを1種以上の抗掻痒剤と共に用いることができる。いくつかの実施形態では、抗掻痒剤、例えば、ナルブフィン、またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルと組み合わせられる追加的な化合物には、抗ヒスタミン剤、抗炎症性コルチコステロイド、局所抗感染剤および抗真菌剤、抗菌剤、および抗ウイルス剤、細胞毒性剤、ならびに逆刺激剤/鎮痛剤が含まれる。他の抗掻痒剤には、抗鬱剤、ビタミンD、カッパアゴニスト、コールタール誘導体およびソラーレンなどの刺激剤、オンダンセトロンなどの5-HT3アンタゴニスト、シメチジンなどのH2受容体アンタゴニスト、セチリジンなどのH1受容体アンタゴニスト、タクロリムスなどの免疫調節剤、シクロスポリンAなどの免疫抑制剤、μ-アンタゴニスト、カプサイシン、カンナビノイド、アマゾンジャングルで発見される様々なクロトン種からのラテックス抽出物(例えば、Zangrado(登録商標))、またはNk1アンタゴニストなどが含まれる。いくつかの実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、第2の抗掻痒剤と組み合わせて投与されず、例えば、共製剤化されず、または別々に投与されない。
【0141】
投薬
本発明は、有効量の抗掻痒剤、すなわち、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを、それを必要とする患者に投与することによって掻痒を治療するための方法を提供する。有効量は、掻痒症状を排除するかもしくは有意に減少させるか、またはそれらの症状を緩和する(例えば、治療前に存在する症状と比較して痒みなどの症状を減少させる)のに十分な量である。本方法で用いられる製剤は、製剤が掻痒の治療のためのナルブフィンの治療的に有効な血漿レベルを提供するように、持続放出製剤に抗掻痒剤を組み込むことができる。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の方法は、尿毒症性掻痒を治療するためのナルブフィンの治療的に有効な血漿レベルを提供する。ナルブフィンの血漿レベルは、定常状態の血漿レベル、AUC、CmaxおよびCminなどの当業者に知られている薬物動態パラメータを使用して表され得る。いくつかの実施形態では、本方法は、1つ以上の統計的に有意な治療効果と相関するナルブフィンの定常状態の血漿レベルを提供する。特定の実施形態では、本発明の方法によって提供されるナルブフィンの治療的に有効な定常状態の血漿レベルは、約20ng/mL、約25ng/mL、約30ng/mL、約35ng/mL、約40ng/mL、約45ng/mL、約50ng/mL、約55ng/mL、約60ng/mL、約65ng/mL、約70ng/mL、約75ng/mLおよび約80ng/mLを含む約20ng/mL~約80ng/mL(それらの間の全ての範囲を含む)の範囲である。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルの投与は、統計的に有意な治療効果を提供する。一実施形態では、統計的に有意な治療効果は、米国における1つ以上の規制機関、例えば、FDAまたは他の国によって提供される1つ以上の標準または基準に基づいて決定される。別の実施形態では、統計的に有意な治療効果は、規制機関が承認した臨床試験のセットアップおよび/または手順から得られる結果に基づいて決定される。
【0144】
いくつかの実施形態では、統計的に有意な治療効果は、少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000または2000人の患者集団に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、統計的に有意な治療効果は、無作為化かつ二重盲検臨床試験セットアップから得られるデータに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、統計的に有意な治療効果は、約0.05、0.04、0.03、0.02または0.01以下のp値を有するデータに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、統計的に有意な治療効果は、95%、96%、97%、98%または99%以上の信頼区間を有するデータに基づいて決定される。いくつかの実施形態では、統計的に有意な治療効果は、例えば、米国におけるFDAによる、本発明によって提供される方法のフェーズIII臨床試験の承認で決定される。
【0145】
いくつかの実施形態では、統計的に有意な治療効果は、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルで治療された患者の無作為化二重盲検臨床試験によって、任意に標準的ケアと組み合わせて決定される。いくつかの実施形態では、統計的に有意な治療効果は、無作為化臨床試験によって、主要有効性パラメータとして数値評定尺度(NRS)を掻痒評価のための任意の他の一般的に認められている基準と任意に組み合わせて使用して決定される。
【0146】
一般に、統計解析は、規制機関、例えば、米国におけるFDAまたは欧州または任意の他の国によって許可された任意の好適な方法を含み得る。いくつかの実施形態では、統計解析には、非層別解析、ロングランク解析、例えば、Kaplan-Meier、Jacobson-Truax、Gulliken-Lord-Novick、Edwards-Nunnally、Hageman-ArrindelおよびHierarchical Linear Modeling(HLM)からのもの、およびCox回帰解析が含まれる。
【0147】
本発明によれば、抗掻痒剤は、尿毒症性掻痒の症状の有効な緩和を提供するために、1日1回または2回ベースで投与される。いくつかの実施形態では、総1日用量は、約60mg、約90mg、約120mg、約180mg、約240mg、約360mg、または約480mgである。いくつかの実施形態では、抗掻痒剤の総1日用量は、尿毒症性掻痒の治療の場合は1日少なくとも約120mgであり得る。いくつかの実施形態では、抗掻痒剤の総1日用量は、尿毒症性掻痒の治療の場合は1日少なくとも約240mgであり得る。いくつかの実施形態では、抗掻痒剤の総1日用量は、尿毒症性掻痒の治療の場合は1日約120mgであり得る。いくつかの実施形態では、抗掻痒剤の総1日用量は、尿毒症性掻痒の治療の場合は1日約240mgであり得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、尿毒症性掻痒を有する患者について痒みの実質的な減少を提供するために、1日2回の約60mgの抗掻痒剤が選択される。いくつかの実施形態では、尿毒症性掻痒を有する患者について痒みの実質的な減少を提供するために、1日1回の約120mgの抗掻痒剤が選択される。いくつかの実施形態では、尿毒症性掻痒を有する患者について痒みの実質的な減少を提供するために、1日2回の約120mgの抗掻痒剤が選択される。いくつかの実施形態では、尿毒症性掻痒を有する患者について痒みの実質的な減少を提供するために、1日1回の約240mgの抗掻痒剤が選択される。
【0149】
掻痒状態を有する患者における痒みの減少は、様々な方法によって決定され得る。いくつかの実施形態では、投薬レジメンの有効性は、掻痒視覚的アナログ尺度(VAS)試験による評価によって決定され得る。いくつかの実施形態では、投薬レジメンの有効性は、最悪または平均痒み強度数値評定尺度(NRS)による評価によって決定され得る。更にいくつかの他の実施形態では、投薬レジメンの有効性は、最悪または平均痒み強度数値評定尺度(NRS)、痒み医学成果研究(MOS)睡眠尺度、Skindex-10、病院不安および抑うつ尺度(HADS)、グローバル医師指数尺度、患者利益指数-掻痒版(PBI-P)、痒疹活性スコア(PAS)、痒み、灼熱および痛烈口頭評定尺度(VRS)スコア、痒みの生活の質(ItchyQoL)、患者評価疾患重篤度尺度、ItchAppによる患者グローバル評価(PGA)、vPGA、皮膚科学生活の質指数(DLQI)、アクティグラフィを使用する夜間引っ掻き、神経線維密度およびMOR/KOR密度、簡易痒み一覧表、Beck鬱指数、またはそれらの任意の組み合わせによる評価によって決定され得る。また別の実施形態では、投薬レジメンの有効性は、痒み医学成果研究(MOS)睡眠尺度、Skindex-10、病院不安および抑うつ尺度(HADS)、グローバル医師指数尺度、患者利益指数-掻痒版(PBI-P)、痒疹活性スコア(PAS)、痒み、灼熱および痛烈口頭評価尺度(VRS)スコア、ItchyQoL、患者評価疾患重篤度尺度、ItchAppによる患者グローバル評価(PGA)、vPGA、皮膚科学生活の質指数(DLQI)、アクティグラフィを使用する夜間引っ掻き、神経線維密度およびMOR/KOR密度、簡易痒み一覧表、Beck鬱指数またはそれらの任意の組み合わせなどの副次的有効性評価項目に関連して主要有効性評価項目として最悪または平均痒み強度NRSによる評価によって決定され得る。
【0150】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗掻痒剤の投与当たりの投薬頻度および投薬量は、掻痒の治療のための治療効果を提供するように選択される。特定の実施形態では、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、1日1回または1日2回ベースで少なくとも1週間、例えば、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約12週間、約24週間、および約50週間投与される。特定の実施形態では、少なくとも約60mgまたは約60mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、1日1回または1日2回ベースで少なくとも1週間投与される。特定の実施形態では、少なくとも約120mgまたは約120mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、1日1回または1日2回ベースで少なくとも1週間投与される。特定の実施形態では、少なくとも約240mgまたは約240mgのナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルは、1日1回または1日2回ベースで少なくとも1週間投与される。
【0151】
いくつかの実施形態では、治療後、患者は、治療前と比較して最悪または平均痒み強度数値評定尺度(NRS)値の少なくとも約30%の低下によって特徴付けられる痒みの実質的な減少を経験する。いくつかの実施形態では、痒みの減少は、治療前と比較して、約30%~約100%、例えば、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、および約100%の範囲のNRS値の低下によって特徴付けられる。
【0152】
いくつかの実施形態では、治療後、患者は、治療前と比較してSkindex-10の総合スコアおよび/またはSkindex-10の下位尺度スコアの少なくとも約10%の改善によって特徴付けられる痒みの実質的な減少を経験する。いくつかの実施形態では、痒みの減少は、治療前と比較して、約10%~約100%、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、および約100%の範囲のSkindex-10スコアの改善によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、痒みの減少は、治療前と比較して、約10%~約100%、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、および約100%の範囲のSkindex-10疾患領域スコア、Skindex-10気分/感情的苦痛領域スコア、またはSkindex-10社会的機能領域スコアの改善によって特徴付けられる。
【0153】
いくつかの実施形態によれば、治療後、患者は、治療前と比較して、痒み医学成果研究(MOS)睡眠尺度で少なくとも約20%の改善によって特徴付けられる痒みの実質的な減少を経験する。いくつかの実施形態では、痒みの減少は、治療前と比較して、約10%~約100%、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、および約100%の範囲の痒み医学成果研究(MOS)睡眠尺度での改善によって特徴付けられる。
【0154】
いくつかの実施形態では、抗掻痒剤の1日用量は、1日1回または2回用量であり、次いで患者が掻痒状態から満足のいく緩和を経験するまで増量して薬量調整される。1日用量は、約5mg~約240mg(例えば、約15mg、約30mgまたは約60mg)の範囲の増分で薬量調整され得る。1日用量は、1つ以上の段階で薬量調整され得る。1日投薬量は、単回の1日投薬量、または1日2回の投薬レジメンの各用量を増加させることによって薬量調整され得る。投薬の量は段階的であり、複数の薬量調整工程がある場合、同じであり得るか、または異なり得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、薬量調整は、約15mg、約30mgまたは約60mgの抗掻痒剤で1日1回または2回で開始され得る。特定の実施形態では、用量は、1~4日毎に30mgの増分で調節され得る。患者は、約7日~約30日(例えば、約12日~約20日)にわたって、痒みの適切な緩和を提供しかつ有害反応を最小化する用量に達するように自己薬量調整することができる。いくつかの実施形態では、薬量調整は、投与前の少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間または5週間行われる。
【0156】
特定の実施形態では、患者には、最初に15mg、30mg、60mgまたは90mgの錠剤が提供されて、1日1回または2回で最大で約60mg、約90mg、約120mg、約180mg、約240mg、約360mg、または約480mgを達成するように自己薬量調整することができる。一実施形態では、薬量調整用量は、約15mgまたは約30mgで開始され、次いで、例えば、尿毒症性掻痒を有する患者の場合、1日2回約60mgまたは120mgに徐々に増加される。別の実施形態では、薬量調整用量は、約15mgまたは約30mgで開始され、次いで、例えば、尿毒症性掻痒を有する患者の場合、1日1回約120mgまたは240mgに徐々に増加される。
【0157】
オピオイド(ナルブフィンなど)は、急性から重度の疼痛を治療するために一般的に使用される。オピオイドで治療される患者は、通常、鎮痛有効性を維持するために用量増大が必要とされるように、鎮痛効果に対する深刻な耐性を急速に発現することが知られている。対照的に、本開示は、有効量のナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを、それを必要とする患者に投与することによって尿毒症性掻痒を治療するための方法を提供し、治療は、長期間の投与の間(例えば、数ヶ月の投薬期間にわたって)用量増大を必要としない。すなわち、患者は、ナルブフィンの抗掻痒効果に対して耐性を発現しない。
【0158】
いくつかの実施形態では、尿毒症性掻痒を治療する本方法は、それを必要とする患者に、少なくとも約60mgの1日用量のナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルを少なくとも1週間投与することを含み、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルの1日用量は、投与の間、実質的に同じである。更なる実施形態では、その方法は、少なくとも約120mgのナルブフィンの1日用量を投与することを含む。特定の実施形態では、1日用量は、約60mg、約90mg、約120mg、約180mg、約240mg、約360mg、または約480mgである。特定の実施形態では、約120mgの抗掻痒剤が1日2回投与される。更なる実施形態では、投与は約12週間、24週間または50週間である。
【0159】
特定の実施形態では、抗掻痒剤はナルブフィンであり、代謝産物には、グルクロニド(フェノールおよびシクロヘキサン環上である可能性が最も高い)、2つのヒドロキシル化ナルブフィン代謝産物(シクロブタン環上)および3つのケトン(シクロブタン環のヒドロキシル化、それに続くカルボニルへの酸化またはそれに続くシクロブタン環の開環)が含まれる。いくつかの実施形態では、ナルブフィン代謝産物には、ナルブフィン3-グルクロニドまたは6-グルクロニドが含まれる。いくつかの他の実施形態では、ナルブフィン代謝産物には、三重ヒドロキシル化ナルブフィン、モノヒドロキシル化ナルブフィン、またはモノグルクロン酸化ナルブフィンまたはそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、抗掻痒剤の1種以上の代謝産物は、検出可能な抗掻痒活性を有しない。他の実施形態では、抗掻痒剤の代謝産物の1種以上は、抗掻痒活性を示す。
【0160】
抗掻痒剤の1種以上の代謝産物が抗掻痒活性を示す実施形態では、抗掻痒剤の投薬レジメンは、抗掻痒活性を示す1種以上の代謝産物のクリアランス速度に応じて本明細書で上述したように調節および/または薬量調整され得る。抗掻痒剤の投薬量のそのような投薬量調節および/または薬量調整は、抗掻痒剤および/または抗掻痒活性も示し得る1種以上の代謝産物のいずれかの蓄積を防止して、本抗掻痒剤で治療される患者における毒性作用を避けるために実施され得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、抗掻痒剤は完全に代謝される(例えば、約100%代謝される)。他の実施形態では、抗掻痒剤は完全には代謝されない(例えば、約100%未満代謝される)。例えば、いくつかの実施形態では、抗掻痒剤は、約100%代謝され、約95%代謝され、約90%代謝され、約85%代謝され、約80%代謝され、約75%代謝され、約70%代謝され、約65%代謝され、約60%代謝され、約55%代謝され、約50%代謝され、約45%代謝され、約40%代謝され、約35%代謝され、約25%代謝され、約20%代謝され、約15%代謝され、約10%代謝され、約5%代謝され、約1%代謝され、または約0%代謝される。特定の実施形態では、透析可能な薬剤の量は、蓄積のレベル、例えば、抗掻痒剤またはその代謝産物の1種以上の血漿レベルによって測定または監視され得る。
【0162】
以下の非限定的な実施例は、本発明の様々な態様を例示する。
【実施例0163】
実施例1
30mgまたは60mgの延長放出(ER)ナルブフィン錠を以下のように調製した:ナルブフィンHCl、マンニトール、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよび硫酸カルシウム二水和物を高せん断ミキサーに添加し、低速で乾燥混合した。顆粒化溶液(注射用水または精製水)を低速でミキサーに導入した。湿った造粒物を高速で造粒し、流動床処理機で乾燥させた。乾燥した顆粒を粉砕し、慣用のミルを使用してサイズ調整した。粉砕した造粒物を拡散(タンブル)ミキサーに移した。ヒドロキシプロピルセルロースおよび、適用可能な場合には、フマル酸(180mgの製剤のみ)を拡散ミキサーに添加し、ブレンドした。その後、ステアリン酸マグネシウムを拡散ミキサーに添加し、ブレンドした。最終ブレンドを回転式打錠プレス機を使用して圧縮した。錠剤は、非機能性Opadry白色コーティングでコーティングされ得る。
【0164】
【0165】
錠剤を非機能性コートでコーティングした(表2)。
【0166】
(表2)ナルブフィンHCl ER錠、30mgまたは60mgの組成物
【0167】
実施例2
この臨床研究は、中等度または重度の尿毒症性掻痒を有する血液透析を受けている腎障害患者を、120mgBIDまたは60mgBIDの標的用量に対するナルブフィンER錠、または整合するプラセボ錠BIDに1:1:1の比で無作為化した並行二重盲検プラセボ対照試験であった。掻痒の治療のために摂取される薬剤(「抗掻痒薬」)は禁止されていなかったが、それらの使用は研究を通して記録された。皮膚軟化剤の使用も制限されなかった。プラセボ比較手段は、米国または欧州での尿毒症性掻痒のための承認された治療法がないか、または積極的管理として機能し得る確立されたケアの標準がないため選択された。
【0168】
主要な目的は、最悪痒み強度数値評定尺度(NRS、0[痒みなし]-10[最悪の可能性の痒み])を使用する痒み強度ならびに安全性および忍容性に対する効果を評価することであった。研究は、46箇所の米国の調査拠点ならびにルーマニアおよびポーランドの6箇所の調査拠点で行われた。スポンサーは試験の実施を監督し、独立した盲検化データ安全性監視委員会は、試験の実施中に月におよそ1回、安全性データをレビューした。
【0169】
参加者
適格であるためには、患者は≧3ヵ月間の血液透析を受けていなければならず、「B」または「C」の患者評価疾患重篤度(PADS)カテゴリ、および少なくとも2つのスコア≧5.0を伴って11ポイント尺度(0「痒みなし」から10「最悪の可能性の痒み」)でランダム化≧4.5の前の週の間で平均で6の最悪痒み数値評定尺度スコアを有しなければならなかった。
【0170】
患者評価疾患重度(PADS)
これらの患者のうちどれがあなたに最も似ていますか?(1つマークしなさい)
患者A:
私は概して私の皮膚に引っ掻き跡はない。
私は概して痒みが原因の睡眠の問題はない。
私の痒みは概して私を動揺させないし悲しませない。
患者B:
私は時々私の皮膚に引っ掻き跡がある。
私は時々痒みが原因で睡眠に問題がある。
私の痒みは時々私を動揺させるか悲しませる。
患者C:
私はしばしば私の皮膚に出血または感染する場合があるかしない場合がある引っ掻き跡がある。
私はしばしば痒みが原因で睡眠に問題がある。
私の痒みはしばしば私を動揺させるか悲しませる。
【0171】
【0172】
プロファイルBまたはCを選択する患者は、時々またはしばしば、引っ掻き跡、痒みが原因の睡眠の問題、痒みが原因の悲しみ/動揺の感情によって悩まされた人々であった。また、掻痒は、胆汁鬱滞、アトピー性皮膚炎、またはリンパ腫などの、末期腎疾患とは無関係な状態に起因し得なかったであろう。全ての患者は、中央または地方の制度審査委員会または倫理委員会によって承認された同意書を使用して、研究参加のための彼らの書面によるインフォームド・コンセントを行った。完全な適格基準は以下に見出され得る。
【0173】
受け入れ基準
患者は適格であるために以下の基準の全てを満たさなければならない:
1.研究の性質および危険性について適切に知らされており、スクリーニング前に書面によるインフォームド・コンセントを行っている。
2.3ヶ月以上の間、施設血液透析を受けており、現在、週に3回のスケジュールである。
3.スクリーニング時の患者評価疾患重篤度尺度(PADS)で患者タイプBまたはCとして自身を自己分類している。
4.スクリーニングを完了する前の3ヶ月間に、尿素減少率(URR)>65または2シングルプールKt/V>1.2の2つの測定値のいずれかを有する。
5.3回の透析来院からの合計6つの日中および夜間のNRS測定値(3つの日中のNRS測定値および3つの夜間のNRS測定値)の平均に基づいてNRS≧4.5の平均最悪痒みを有する。測定値は週-1の間(来院4、5、および6)に取得される。週-1の間の1回の来院から1つまたは2つのNRS測定値を逃した場合、次いで来院3からの対応する日中または夜間の測定値を使用して平均NRS値を計算し得る。
6.受け入れ基準番号5を満たすために使用される6つの(6)NRS測定値の少なくとも2つで≧5の絶対最小最悪夜間または日中痒みを有する。
7.スクリーニング時に少なくとも18歳の男性または女性である。
8.以下の避妊要件に従うことに同意している:
妊娠の可能性がある女性患者は、1つの他の方法(例えば、少なくとも1ヶ月の適所の子宮内デバイス[IUD]、少なくとも3ヶ月間の安定したホルモン避妊、卵管結紮、Essure処置、または殺精子剤)に加えて、1つのバリヤ法(例えば、コンドーム、子宮頸管キャップ、またはペッサリー)を使用することが必要とされる。殺精子剤に加えてバリヤ法を使用する女性患者の場合、その方法はスクリーニング前の少なくとも14日間使用しなければならない。この研究の目的のため、全ての女性は、彼女らが閉経後(すなわち、最後の月経から少なくとも1年および>50歳)または外科的不妊(すなわち、卵管結紮、子宮摘出および/または両側卵巣摘出)でない限り、妊娠する可能性があるものとみなされる。
【0174】
除外基準
患者が以下の基準のいずれかを満たしている場合、彼または彼女は適格ではない:
1.スクリーニング期間中に透析レジメンの有意な変更(すなわち、フィルタータイプの変更、規定の透析時間における週>1時間の増加または減少、透析アクセスのタイプまたは場所の変更、または規定の血流速度の>100mL/分の変化など)があった。特定の実施形態では、「透析レジメン」は、少なくとも2回の透析治療に使用される透析指示によって定義される。
2.研究中に夜間透析または在宅血液透析治療を受けているか、または受けることが予期されている。
3.スクリーニングにおいて正常範囲の上限(ULN)の>3倍のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および/またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)濃度を有する。
4.ジルベール病の記録された病歴で説明されない限り、スクリーニング時にULNの>3倍の血清総ビリルビンを有する。
5.末期腎疾患とは無関係な状態(例えば、胆汁鬱滞、アトピー性皮膚炎、リンパ腫)によって引き起こされると考えられる掻痒を有する。副甲状腺機能亢進症、カルシウムおよびホスフェートの異常、貧血、尿毒症性環境、透析療法および膜は、末期腎疾患に関連する状態の例であり、そのため除外されない。
6.スクリーニング前の2週間で、ナルフラフィン、ナルトレキソン、またはナロキソンを受けたか、または研究中にこれらの薬物を受けることが予期されている。
7.確認された悪性腫瘍を有し、全身薬での活性治療を受けている(ホルモン治療は、医療モニターによって承認された場合には研究登録に許容可能であり得る)。
8.治験責任医師の意見で研究の実施を妨げ得る任意の重大な医療条件または他の要素を有する。
9.スクリーニングNRSスコアを収集する前の2週間で、掻痒のために摂取されている薬物または皮膚軟化剤を追加または中止したか;または掻痒のために毎日摂取されている薬物の用量の変化があった。
10.スクリーニングNRSスコアを収集する前の4週間の間に紫外線(UVB)治療を受けた。
11.スクリーニングを完了する前の6ヶ月以内に薬物乱用の前歴を有する。
12.治験薬物投与前の2週間の間に日常的にアヘン剤を摂取している。
13.ナルブフィンまたはビヒクル成分に対する既知の過敏症またはアレルギーを有する。オピオイドに対する既知の薬物アレルギーを有する。
14.治験薬投与の4週間以内に任意の他の調査薬剤を受けた。
15.スクリーニングNRSスコアを収集する前の2週間以内に、臨床的に重大な非選択的医療問題による最近の入院。
16.妊娠中または授乳中の女性である。
【0175】
成果
主要評価項目は、修正治療企図(intent-to-treat)集団におけるベースラインから評価期間(研究第7および8週)までの変化であった。生活の質に関連する副次的評価項目には、痒みに関連する生活の質(Skindex-10を使用)および痒みに関連する睡眠障害(痒み医学成果研究[痒みMOS]、SLP-9を使用)における1日目から評価期間までの変化が含まれていた。不安および抑うつの一般的指標として病院不安および抑うつスコア(HADS)が使用された。全ての患者報告成果指標は、具体的には尿毒症性掻痒患者またはより一般的には透析集団におけるそれらの事前検証に基づいて選択された。
【0176】
統計方法
修正治療企
図MITT集団は、ベースライン計算されたNRSおよび2週間の薬量調整または6週間の安定用量期間中の少なくとも1つのベースライン後NRSを有し、かつ全ての有効性解析について事前に特定された集団である全ての無作為化患者からなっていた。患者は無作為化された群によって解析された。
【0177】
主要および生活の質の副次的評価項目の解析は、治療および部位の主要効果および共変量としてのベースライン最悪痒みNRSスコアを用いて混合モデル反復指標ANCOVAを使用した。そのモデルは、因子変数として時間(すなわち、来院)および反復測定のための非構造化共分散構造を伴う治療*時間(参照カテゴリーとしてのプラセボで)を含んでいた。全てのベースライン後の来院からのデータを使用してモデルに適合させた。主要評価項目の場合、ベースライン値は、プロトコル受け入れ基準#5(3回の透析来院からの合計で3つの日中および3つの夜間の測定値に基づく≧4.5の平均最悪痒みNRS)を満たすために使用された最悪痒み日中および夜間NRSスコアの平均として定義された。副次的評価項目の場合、ベースライン値は、無作為化の前に、研究第1日に取得された測定値に基づいていた。予め規定された段階的低減手順が使用された。最初の比較は、ナルブフィン120mgBID用量対プラセボのものであった。最初の比較がp<0.05のレベルで有意であった場合、次いでナルブフィン60mgBID用量対プラセボの間の比較が行われるであろう。最悪痒みNRSにおいて15%以上の反応を有する患者をCochran-Mantel-Haenszel(CMH)試験を使用して解析した。痒みMOSの解析はSLP-9スコアリングアルゴリズムを利用した。
【0178】
治療介入
治療の最初の2週間で、患者は、彼らの割り付けられた標的用量まで盲検的に強制薬量調整され、実薬群の患者は、第1週後に60mgBID(NAL60)の用量に達し、高用量群の患者の場合、第2週後に120mgBID(NAL120)とした。治験薬は、週の各日についてラベルされた朝および夕方の用量を含有するブリスターカードで施与された。その後、患者は治験薬の安定用量を更に6週間続け、次いで治験薬をウォッシュオフし、痒み強度および安全性について更に2週間追跡した。安定用量期間(第3~8週)中に6回以上連続して投薬し損ねた患者は、医療モニターの承認を得たうえで、元の用量に戻す前に3日間の朝または夕方のみの盲検化再薬量調整で治療を再開することができたが、研究中の漸減は認められなかった。患者は、抗ヒスタミン剤などの彼らの補助的な抗掻痒薬を続けることが認められ、これらの薬の使用および治療の適応を収集した。
【0179】
サンプルサイズ計算
(修正治療企図集団中の)治療群当たり120のサンプルサイズは、2つのサンプルのt検定を使用して、α=0.05レベルでの90%検出力および両側有意検定に基づくものであり、3.5のSDで1.5ポイントの差、または3.0のSDで1.25の差を検出した。
【0180】
無作為化
無作為化は、盲検化治療割り付けを反映する固有のブリスターカード番号を割り付けた双方向のウェブベースの無作為化システム(IWRS)を使用して現場要員によって実施された。無作為化割り当て順序は、契約された研究組織によって作られた。
【0181】
結果
研究のためのスクリーニングは、2014年6月に開始され、患者は2014年6月~2015年3月の期間に無作為化された。スクリーニングにおける患者の数が、計画された無作為化患者の残りの数(およそ360)を生じることが推定されるとスクリーニングは中止された。合計で597人の患者がスクリーニングされ、373人が無作為化され、317人が有効性について評価された。
【0182】
集団の50%が重度の痒み(NRS≧7.0)を有し、痒みの平均期間は3.2(2.9)年であった。糖尿病および虚血性心疾患の治療介入を有する患者の割合は、他の群と比較してNAL60群でより高かったが、人口構成、ベースライン併存症、透析妥当性、アクセスタイプ、およびビンテージ、カルシウム、ホスフェート、ヘモグロビン、および副甲状腺ホルモンレベルは3つの治療群にわたって概してバランスがとれていた(表3)。
【0183】
(表3)ベースライン特性
1透析アクセス関連手順を除く。提示されたデータは平均(SD)または百分率である。
【0184】
主要有効性評価項目を満たした。6.9(1.5)の平均ベースラインNRSから、平均NRSは、NAL120群において(-3.5[2.4]の絶対減少で)低下した。この差は、プラセボと統計的に異なっていた(p=0.017)(表4、
図1)。NAL60対プラセボの間に有意差はなかった。NAL120群とプラセボ群との間の有意な隔たりは、盲検化薬量調整後の週に明らかに始まっており、8週間の治療期間中で耐性の明白な発現はなかった(
図2)。薬物なしのウォッシュアウト期間中にNRSスコアが上昇した。経時的に抗掻痒薬を使用する患者の割合は増加しなかった(
図3)。使用された抗掻痒薬の大多数は抗ヒスタミン剤であった(全対象の21%)。また、掻痒に対して4.6%がコルチコステロイドを受け、0.5%がガバペンチンを受けた。
【0185】
(表4)主要有効性評価項目-最悪痒み強度
P値は対プラセボである。スコアの低下が大きいほど、痒み強度のより大きな減少を反映している。
【0186】
副次的評価項目には、痒みに関連する生活の質の2つの指標ならびに不安および抑うつの一般的な測定が含まれていた。活性群対プラセボのいずれかにおいて総合Skindex-10、痒みMOS、またはHADS手段で統計的に有意な差はなかったが(表5)、より少ない睡眠障害の傾向(p=0.062)およびより少ない痒みの苦悩(Skindex-10疾患領域、p=0.053)がNAL120群とプラセボとを比較する予め特定された解析で認められた。痒みMOSで評価された睡眠潜時(眠るまでの時間)は、ベースラインでは、NAL120、NAL60mg、およびプラセボ群でそれぞれ患者の67.5%、68.7%、および67.5%で、最後の治療週(第8週)の間ではそれぞれ患者の25.0%、35.9%、および53.7%で>30分であった。NRL120、NAL60、およびプラセボ群における患者の84.5%、80.5%、および78.7%において、NRSにおけるベースラインから評価期間まで≧15%の変化が生じた(p=NS)。
【0187】
(表5)生活の質に関連する副次的有効性評価項目
データは平均(SD)であり、p値は対プラセボの値である。スコアの低下は、生活の質の改善を反映している。§p<0.1,
*p<0.05
【0188】
重度の尿毒症性掻痒を有するサブグループ(ベースラインNRS≧7.0、n=179、表6)の事後解析では、NAL120群の平均痒み強度は55%減少し、8.2(0.8)のベースラインから4.5(2.5)の絶対減少であった(p=0.007対プラセボ)。痒みによる睡眠障害はプラセボと比較して有意に改善した(p=0.007)。痒み強度も痒みMOSもNAL60群ではプラセボと比較して有意に改善しなかった。
【0189】
(表6)重度の掻痒を有する患者のサブグループ解析(ベースラインNRS≧7)
データは平均(SD)であり、p値は対プラセボの値である。スコアの低下は、生活の質の改善を反映している。§p<0.1,
*p<0.05;
**p<0.01
【0190】
NAL120、NAL60、およびプラセボ群では、65%、58%、および81%が8週間の治療を完了した。活性群における治療を中止する最も一般的な理由は、強制薬量調整期間中に生じたオピオイド型副作用(例えば、吐き気および嘔吐)によるものであった。1人の死亡があったが、それはプラセボ群で生じた。重大な有害事象の発生率は、NAL120mg、NAL60mg、およびプラセボ群でそれぞれ6.7%、12.7%、および15.4%であった(表7)。陶酔もしくは気分高揚型の有害事象または呼吸抑制の報告はなかった。
【0191】
(表7)有害事象
1任意の群で>2人の患者で発生した中止事象が示されている
【0192】
考察
我々は、尿毒症性掻痒において今までに行われた最大の無作為化対照試験の結果を報告する。試験はその主要な評価項目に適合し、抗ヒスタミン剤およびコルチコステロイドなどの補助的な抗掻痒薬を摂取している中等度および重度の尿毒症性掻痒を有する血液透析患者において、NAL120mg群対プラセボにおける痒み強度の有意かつ持続的減少を実証している。痒み強度の49%の減少は、痒み強度(痒みの苦悩)に最も近い生活の質の測定値および痒みによる睡眠障害の改善傾向を伴う。これらの知見は、NAL120群で観察された痒み強度の観察された減少の臨床的利益を指摘している。慢性掻痒における以前の研究では、患者は、「軽度」、「中等度」、および「重度」として彼らの口頭で報告された痒みの記述の変化に伴い、25~30%の痒み強度の変化を区別した。尿毒症性掻痒の研究では、具体的には、ナルフラフィンでの治療後の100mm尺度で25mmのVASの変化(0~10NRS尺度での2.5の減少と同等)は、安眠の夜および動揺させない痒みの日の数を有意に増加させる結果となった。痒み強度の減少および睡眠障害の改善は、平均ベースラインNRSがおよそ8である重度の掻痒を有する179人の患者のサブグループの間で、質的に類似していたが、より大きな規模および統計的有意性のものであった。重度の掻痒を有する患者が最も大きな疾患負担を有するので、これらの知見は励みになるものであるが、この解析は事前に特定されなかったため、今後の対照試験での確認が必要とされる。睡眠潜時および障害の減少に対するNAL120mgの効果は、一般的な鎮静効果によるものではなく、むしろ痒み強度の効果によるものであると思われる。NRSのベースラインからの変化と痒みMOSの1つの個々の項目を除く全てとの間の統計的に有意な相関関係が観察された。
【0193】
我々はまた、NAL120の有効性が、8週間の治療を通して明らかであり、耐性の明白な発現がないことを実証した-この知見は、ナルブフィンER錠の慢性使用についての有用性を支持している。
【0194】
試験では、皮膚軟化剤および抗掻痒薬の補助的使用が認められた。抗ヒスタミン剤および尿毒症性掻痒のための他の薬物の使用を支持する正確なデータが欠如している一方で、そのような通常のケアの許可は、現実の世界の環境において予想されるように、ナルブフィンER錠がそのようなケアに加えられているときの効果を実証したという点でその試験の強みである。患者の20~25%のみが彼らの重度の掻痒にもかかわらず抗掻痒薬を摂取していたという我々の知見は予想外ではない。Naritaらは、1173人の血液透析患者の彼らの研究において抗掻痒薬の使用の類似する割合を報告しており(Narita)、他の者は、最も重度の掻痒を有する患者はしばしば、「何も作用しない」ため逆説的に非治療であることを認めていた。
【0195】
ナルブフィンER錠は、有害事象報告、Skindex-10気分領域、およびHADSによって測定されるように、気分の効果では中立であるようであった。ナルブフィンER錠の抗鬱、抗不安、または陶酔作用の欠如は、そのミュー-受容体活性に関して、それがμ-オピオイドアゴニストよりもむしろμ-オピオイドアンタゴニストであるという事実と調和している。
【0196】
主観的に報告された症状を伴う試験におけるプラセボ反応はよく知られているが、この反応に寄与する患者および試験の要因は大部分が特定されていない。神経因性疼痛試験のレビューでは、プラセボ効果は11~35%の範囲であり、典型的な試験はおよそ27%のプラセボ反応率を有する。尿毒症性掻痒のような神経因性疼痛は、神経過敏症に起因する慢性的なものであり、同様の患者報告成果指標(すなわち、数値評定尺度または視覚的アナログ尺度で測定される疼痛強度)で評価され、慢性掻痒と比較してこの分野におけるより多くの文献が存在するため、我々はベンチマークとして神経因性疼痛試験の文献を使用した。尿毒症性掻痒の試験におけるプラセボ反応は可変であった。1つのフェーズ3では、欧州で339人の血液透析患者で行われた静脈内ナルフラフィン(TRK-820)の多施設無作為化プラセボ対照試験では、プラセボ反応が60%を超えたのに対して、血液透析患者での経口ナルフラフィンを評価する同様のサイズの日本のフェーズ3の試験では、プラセボ反応率はおよそ20%であった。そのため、この試験におけるプラセボ反応40%は、以前の尿毒症性掻痒の試験の範囲内であったが、神経因性疼痛の試験で典型的に観察されるものよりも高かった。
【0197】
この試験からのナルブフィンER錠の安全性プロファイルは、中枢作用性オピオイドから予想されるもの以外の有害な安全性傾向を示唆しなかった。重大な有害事象の割合が、プラセボ群と比較していずれの実薬群でも高くなかったという知見は、その研究が血液透析患者の複雑で不健康な集団で行われたという事実によって強調される。研究プロトコルには医学的除外基準がほとんどないため、この試験の安全性の知見は、意図される標的集団に一般化されそうである。重大ではない吐き気および嘔吐に関連する、また、より低い程度で眠気、めまい、および幻覚に関連する比較的高い脱落率が存在した。脱落事象は、用量が依然として薬量調整されていた(すなわち、用量が60mgBID未満であった)ときに主に発生した。そのため、これらの事象は用量依存性ではなく、むしろ時間依存性であるようであった。より低い開始用量、より緩やかな薬量調整、患者の期待のより良好な環境、および予想される消化器系有害作用の管理に対するより高い注意は、将来の試験での脱落率を減少させるのを助ける可能性がある。
【0198】
研究の主な限界は比較的高い脱落率であった。これらの早期の脱落は、試験の実薬群、中止の早期時点(すなわち、標的用量に達する前)、および欠損データを処理するための混合モデルの使用において、不均衡でより大きな程度で生じたため、バイアスの方向は活性治療の有効性のより低い実証に向かうと予想される。
【0199】
この多国籍無作為化対照試験において、1日2回120mgの用量で投与されたナルブフィンER錠は、中等度および重度の尿毒症性掻痒を有する血液透析患者における痒み強度を減少させるのに安全かつ有効であった。この研究は、ミュー-アンタゴニスト-カッパ-アゴニストオピオイド薬として分類されるナルブフィンがこの苦痛の状態に有効であることを示唆している。
【0200】
実施例3
この臨床研究は、実施例2に記載された無作為化二重盲検3並行治療群プラセボ対照用量範囲試験のフェーズ2/3の非盲検延長研究であった。無作為化され、次いで実施例2の研究を完了した全ての対象は延長研究に参加する適格性を有していた。
【0201】
主要評価項目は、治療発現AE(TEAE)の全体の発生率および性質の記述であり、副次的評価項目は治療第4~24週の間のTEAEの発生率および性質の記述であった。診査有効性評価項目は、実施例2で評価されたのと同じ手段であるPRO手段(NRS、Skindex-10、痒みMOS睡眠、HADS、PADS)に関する収集データに関するものであった。
【0202】
(計画および解析された)患者数:
実施例2の研究に無作為化された373人の患者のうち、184人の対象はいずれも実施例2の研究を完了し、延長研究に登録された。延長研究に登録した167人の対象は研究の治療期間に入り、ナルブフィンHCl ER錠の投与に曝露され、研究安全性集団解析の基礎であった。延長に登録された17人の対象は決して投薬されず、彼らはスクリーニング不合格として分類され、解析の一部ではなかった。
【0203】
投薬
延長研究における患者は、忍容性および有効性に基づいて30mgQD~120mgBIDの用量範囲にわたって薬量調整された。選択された用量範囲は実施例2の研究に基づいており、これにより患者は30mgQD用量から60mgBIDまたは120mgBIDのいずれかの用量まで薬量調整された。提案された最高用量は120mgBID(240mgの1日用量)であり、現在市販されている製品についての160mgIV(960mgの経口と同等)の最高推奨1日治療よりも大きく下回っていた。
【0204】
研究設計:
各患者の研究期間は最大で26週間であり、治験薬では最大で24週間であった。延長研究は、治療期間(これにウォッシュアウト安全性フォローアップ期間が続いた)および観察期間からなっていた。患者は、最初の来院(来院1a)で報告された彼らのNRSスコアに基づいて、薬物治療期間(NRS>2)に直接入るかまたは薬物なしの観察期間(NRS≦2)に入るかのいずれかであった。最大で12週間の延長スクリーニングの間、薬物なしの観察期間の患者もまた、彼らのNRSがNRS>2に増加した場合、薬物治療期間に移行することができた。治療期間に入った全ての患者は、すぐに研究に入ったか観察期間の期間後であるかにかかわらず、30mgから最大で120mgBID(実施例2で試験された最高用量)の範囲の用量まで薬量調整された。観察期間を完了し、NRSが12週間にわたってNRS>2を超えなかった患者は、スクリーニング不合格とみなされた。
【0205】
任意の個々の患者の全研究期間は最大で26週間であった。治療期間に入る患者については、薬物投与の合計時間は24週間を超えなかった。観察期間から治療期間に入った患者については、組み合わされた2つの研究期間において費やされた合計時間は24週間を超えてはならなかった。薬物投与中の全ての患者は、投薬期間の終わりに2週間のウォッシュアウトおよび安全性フォローアップ期間を有していた。
【0206】
観察期間中の合計時間は12週間を超えなかった。これらの12週間の延長スクリーニングの後、治療期間に適格でない対象は、研究からスクリーニング不合格とされた。
【0207】
3つの延長研究期間を表8に要約する。
【0208】
【0209】
【0210】
結果:
図5は、研究における週毎の安全性集団における平均最悪痒みNRS、および、安全性集団をゼロから4未満(0~<4)のNRS値、4以上7未満(≧4~<7)のNRS値および7以上(≧7)のNRS値の痒みベースライン値で分けた3つのサブグループを示している。平均最悪痒みは、安全性集団においてベースラインから全ての測定時点まで減少した。平均最悪痒みの減少は、≧7のベースラインNRS値を有する患者のサブグループで最も顕著であった。
【0211】
図6は、研究における週毎の安全性集団におけるSkindex-10、および、安全性集団をゼロから4未満(0~<4)のNRS値、4以上7未満(≧4~<7)のNRS値および7以上(≧7)のNRS値の痒みベースライン値で分けた3つのサブグループを示している。平均Skindex-10は、安全性集団においてベースラインからの全ての測定時点まで減少した。平均Skindex-10の減少は、≧7のベースラインNRS値を有する患者のサブグループで最も顕著であった。
【0212】
考察
24週間まで延長した治療期間でナルブフィンHCl ER錠の安全性および忍容性を評価する主要有効性の目的について、安全性の知見は、非経口ナルブフィンパッケージインサートにまとめられたナルブフィンおよびスポンサーによって行われた以前の臨床研究に基づくより短い期間の経口経路により与えられたナルブフィンの既知の安全性プロファイルと一貫していた(例えば、実施例2)。
【0213】
平均最悪痒み強度は、安全性集団において全てのその後の測定時点でベースラインから減少した。
【0214】
経時的に複数のPRO手段を介して実施された有効性解析は、最悪痒みNRSの知見と共に、薬物効果の持続性と一致していた。すなわち、有効性データは、患者がナルブフィンの抗掻痒効果に対する耐性を発現しないという結論と調和している(例えば、それぞれ、
図5および6に示される最悪痒みおよびSkindexスコアのグラフ表示を参照)。
【0215】
本明細書に記載され、前述の実施例によって例示された実施形態は、本発明の例示であると理解されるべきであり、限定的なものと解釈されるべきではない。それどころか、本開示は、添付の特許請求の範囲によって具体化される代替物およびその等価物を包含する。本明細書に開示された各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
尿毒症性掻痒を治療する方法であって、該治療を必要とする患者に、少なくとも約120mgの抗掻痒剤の1日用量を少なくとも1週間投与する工程を含み、前記抗掻痒剤が、ナルブフィンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルであり、前記治療の後に前記患者が、前記治療の前と比較して痒みの実質的な減少を経験する、前記方法。