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特開2022-81654低粘度の抗原結合タンパク質およびそれらの作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081654
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】低粘度の抗原結合タンパク質およびそれらの作製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20220524BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220524BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C07K16/40
A61P3/06
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61K39/395 P
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022043944
(22)【出願日】2022-03-18
(62)【分割の表示】P 2019516945の分割
【原出願日】2017-09-28
(31)【優先権主張番号】62/401,770
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/430,773
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/546,469
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュン フ
(72)【発明者】
【氏名】リキ スティーブンソン
(72)【発明者】
【氏名】パベル ボンダレンコ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ニコルス
(72)【発明者】
【氏名】ダ レン
(72)【発明者】
【氏名】ニーラジ ジャグディシュ アグラワル
(72)【発明者】
【氏名】リチャード スミス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低粘度の抗原結合タンパク質およびそれらの作製方法を提供する。
【解決手段】本発明は、高粘度に関連することが示されているフレームワーク領域および/またはFcドメイン中の配列を改変することによって、抗原結合タンパク質の粘度を低下させる方法に関する。本発明は、粘度を低下させるために変異させた抗原結合タンパク質、特に抗体を提供する。本発明による好ましい抗原結合タンパク質には、VH1|1-18生殖系列サブファミリー置換;VH3|3-33生殖系列サブファミリー置換;VK3|L16生殖系列サブファミリー置換;VK3|L6生殖系列サブファミリー置換;または、Fc置換の1つ以上、好ましくは全てを有する抗体が含まれる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2017年8月16日に出願された米国仮特許出願第62/546,469号、2016年12月06日に出願された米国仮特許出願第62/430,773号、および2016年9月29日に出願された米国仮特許出願第62/401,770号の優先権を主張するものであり、これらは各々、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明はバイオ医薬品、特に治療用抗原結合タンパク質、その使用方法、その医薬組成物、およびそれらの製造方法に関する。特に、本発明は、粘度を低下させるために変異させた抗原結合タンパク質、特に抗体に関する。
【0003】
配列表の簡単な説明
配列番号1~配列番号383を含む「A-2063-US-PSP3_SeqList_ST25.txt」という表題の配列表は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、それには本明細書に開示の核酸配列および/またはアミノ酸配列が含まれる。配列表は本明細書ではEFSを介してASCIIテキスト形式で提出されており、したがって、紙およびコンピュータに読み込み可能な形式の両方を構成する。配列表は、PatentInを用いて2017年8月16日に最初に作成され、サイズは4.32MBである。
【背景技術】
【0004】
現在、モノクローナル抗体(mAb)は、市場の、および開発中の最新の治療用タンパク質のなかで最も一般的な治療法である。抗体間の差異は、主に抗原結合ドメインまたは相補性決定領域(CDR)にある。CDRにおけるこれらの差異は、バルク溶液粘度として現れる一過性タンパク質-タンパク質相互作用傾向に差異を生じさせると考えられる。いくつかのグループが、粘性抗体溶液中の抗体の可逆的クラスター(主に二量体)の存在を記載している。バルク溶液粘度挙動のメカニズムとして、これらのクラスタの相互作用を説明するために、ポリマー粘度のいくつかの理論的記述が提案されている。
【0005】
抗体は、通常、アンタゴニストとして作用し、したがって、望ましくない相互作用を遮断するために、大量(しばしば、一用量あたり100mgを超える)が必要とされる。患者の快適さのために、1mL体積の単回皮下注射が、最も好ましい投与様式である。比較的小さい体積で大量のmAbを投与する必要性は、100mg/ml以上の高濃度製剤を必要とした。抗体は約150kDaの分子量を有する大きな生体高分子であり、それらの高濃度は、濾過の間および注射針を通過する間の、ならびに皮下空間における、タンパク質-タンパク質およびタンパク質-壁の相互作用に起因して、高い剪断応力および高い粘度をもたらす。高粘度は、治療用抗原結合タンパク質の製造、およびそれらの患者への投与における課題、例えば、注射デバイスの機能不全、手動投与の困難性、バイオアベイラビリティの低下、および患者の不快に繋がる注射時の極めて高い背圧などの課題を提示する。
【0006】
高濃度の治療用モノクローナル抗体溶液の開発および使用は、バイオ医薬品製造のコストが低下するにつれて加速されてきた。場合によっては、これらの抗体溶液は、製造および意図する用量の投与を困難にし得る粘性溶液特性を有する。抗体が「粘性」であるか、または「非粘性」であるかを決定すると思われるCDRの差異は、おそらくタンパク質-タンパク質相互作用を駆動するCDRの傾向に関連しているであろう。
【0007】
高粘度をもたらす相互作用の性質を理解し、高粘度抗体製剤の粘度を低下させるために、産業界では多大な努力が続けられている。抗体製剤の粘度に影響を及ぼす最も重要なパラメータには、以下のものが含まれる。
・タンパク質のpIおよび溶液のpHによって規定される分子間相互作用。Cheng et al.(2013),“Linking the solution viscosity of an IgG2 monoclonal antibody to its structure as a function of pH and temperature”,J.Pharm Sci.102:4291-4304。
・電荷相互作用。Yadav et al.(2012),“Viscosity behavior of high-concentration monoclonal antibody solutions:correlation with interaction parameter and electroviscous effects”,J.Pharm Sci.101:998-1011;Yadav et al.(2012),”The influence of charge distribution on self-association and viscosity behavior of monoclonal antibody solutions”.Mol Pharm 9(4):791-802;Singh et al.(2014),“Dipole-Dipole Interaction in Antibody Solutions:Correlation with Viscosity Behavior at High Concentration”,Pharm Res.31(9):2549-2558;Chaudhri et al.(2013),“The role of amino acid sequence in the self-association of therapeutic monoclonal antibodies:insights from coarse-grained modeling”,J.Phys.Chem.B 117:1269-1279。
・疎水性相互作用。Guo et al.(2012),“Structure-activity relationship for hydrophobic salts as viscosity-lowering excipients for concentrated solutions of monoclonal antibodies”,Pharm Res 29:3102-3109。
【0008】
最も高い溶液粘度は、最も負の拡散相互作用パラメータkD、最も高い見掛け半径および最も低い実効電荷の条件下で観察された。Neergaard et al.(2013),“Viscosity of high concentration protein formulations of monoclonal antibodies of the IgG1 and IgG4 subclass-prediction of viscosity through protein-protein interaction measurements”,Eur.J.Pharm Sci.49:400-410。浸透圧第2ビリアル係数(B(2))の成分である拡散相互作用パラメータ(kD)は濃縮mAb溶液の粘度とよく相関した(R>0.9)が、mAb実効電荷は弱く相関し(R<0.6)、弱い分子間相互作用が濃縮mAb溶液の粘弾性挙動の支配に重要であることを示した。Connolly,et al.(2012),“Weak interactions govern the viscosity of concentrated antibody solutions:high-throughput analysis using the diffusion interaction parameter”,Biophys.J.103:69-78。本明細書で報告される研究では、3D構造に連結された一次配列が利用された。Honegger et al.(2001),“Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool”,J.Mol.Biol.309:657-670を参照されたい。いくつかのmAb分子の粘度値を測定し、機械学習アルゴリズムを用いてmAbの粘度予測モデルを開発した。構造位置、電荷および疎水性が、モデルに利用されるアミノ酸の主要なパラメータであった。
【0009】
モノクローナル抗体の粘度は、以下の論文の分子情報を用いて評価した:Li,L.et al.(2014),“Concentration dependent viscosity of monoclonal antibody solutions:explaining experimental behavior in terms of molecular properties”,Pharm.Res.31:3161-3178;およびSharma et al.(2014),“In silico selection of therapeutic antibodies for development:viscosity,clearance,and chemical stability”,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 111:18601-6。
【0010】
抗体間の相互作用の最終結果は、粘性溶液を生じる相互作用の一過性ネットワーク(浸透ネットワーク)の延長か、または溶液レオロジーに何らかの影響を及ぼすより大きなオリゴマーをより大きな構造として形成するかのいずれかである。本明細書で報告する研究では、粘性抗体溶液に繋がる可能性のある特異的タンパク質-タンパク質相互作用を推定する試みにおいて、少数の粘性抗体を生化学的および生物物理学的分析の対象として使用した。
過去には、Ahoナンバリングアプローチが、安定性および他の生物物理学的特性を改善するために利用された。Ewert et al.(2003),“Structure-based improvement of the biophysical properties of immunoglobulin VH domains with a generalizable approach”,Biochemistry 42:1517-1528;Ewert et al.(2003),“Biophysical properties of human antibody variable domains”,J.Mol.Biol.325:531-553;Ewert et al.(2004),“Stability improvement of antibodies for extracellular and intracellular applications:CDR grafting to stable frameworks and structure-based framework engineering”,Methods 34:184-199;およびRothlisberger et al.(2005),“Domain interactions in the Fab fragment:a comparative evaluation of the single-chain Fv and Fab format engineered with variable domains of different stability”,J Mol.Biol.347:773-789。Ahoナンバリングシステムはまた、過去において、凝集の傾向を低減するために利用された。Borras et al.(2013),米国特許第8,545,849号明細書。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Cheng et al.(2013),“Linking the solution viscosity of an IgG2 monoclonal antibody to its structure as a function of pH and temperature”,J.Pharm Sci.102:4291-4304
【非特許文献2】Yadav et al.(2012),“Viscosity behavior of high-concentration monoclonal antibody solutions:correlation with interaction parameter and electroviscous effects”,J.Pharm Sci.101:998-1011
【非特許文献3】Yadav et al.(2012),”The influence of charge distribution on self-association and viscosity behavior of monoclonal antibody solutions”.Mol Pharm 9(4):791-802
【非特許文献4】Singh et al.(2014),“Dipole-Dipole Interaction in Antibody Solutions:Correlation with Viscosity Behavior at High Concentration”,Pharm Res.31(9):2549-2558
【非特許文献5】Chaudhri et al.(2013),“The role of amino acid sequence in the self-association of therapeutic monoclonal antibodies:insights from coarse-grained modeling”,J.Phys.Chem.B 117:1269-1279
【非特許文献6】Guo et al.(2012),“Structure-activity relationship for hydrophobic salts as viscosity-lowering excipients for concentrated solutions of monoclonal antibodies”,Pharm Res 29:3102-3109
【非特許文献7】Neergaard et al.(2013),“Viscosity of high concentration protein formulations of monoclonal antibodies of the IgG1 and IgG4 subclass-prediction of viscosity through protein-protein interaction measurements”,Eur.J.Pharm Sci.49:400-410
【非特許文献8】Connolly,et al.(2012),“Weak interactions govern the viscosity of concentrated antibody solutions:high-throughput analysis using the diffusion interaction parameter”,Biophys.J.103:69-78
【非特許文献9】Honegger et al.(2001),“Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool”,J.Mol.Biol.309:657-670
【非特許文献10】Li,L.et al.(2014),“Concentration dependent viscosity of monoclonal antibody solutions:explaining experimental behavior in terms of molecular properties”,Pharm.Res.31:3161-3178
【非特許文献11】Sharma et al.(2014),“In silico selection of therapeutic antibodies for development:viscosity,clearance,and chemical stability”,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 111:18601-6
【非特許文献12】Ewert et al.(2003),“Structure-based improvement of the biophysical properties of immunoglobulin VH domains with a generalizable approach”,Biochemistry 42:1517-1528
【非特許文献13】Ewert et al.(2003),“Biophysical properties of human antibody variable domains”,J.Mol.Biol.325:531-553
【非特許文献14】Ewert et al.(2004),“Stability improvement of antibodies for extracellular and intracellular applications:CDR grafting to stable frameworks and structure-based framework engineering”,Methods 34:184-199
【非特許文献15】Rothlisberger et al.(2005),“Domain interactions in the Fab fragment:a comparative evaluation of the single-chain Fv and Fab format engineered with variable domains of different stability”,J Mol.Biol.347:773-789
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、高粘度に関連することが示されているフレームワーク領域および/またはFcドメイン中の配列を改変することによって、抗原結合タンパク質の粘度を低下させる方法に関する。
【0013】
以下のプロセスの詳細において、全ての可変領域アミノ酸はAhoナンバリングによって特定され、保存領域の全てのアミノ酸はEUナンバリングによって特定される。Ahoナンバリングは、他の主要なナンバリングスキーム、例えば、EU(Edelman et al.(1969),“The covalent structure of an entire gamma immunoglobulin molecule,” Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A.63,78-85)、Kabat(Kabat et al.(1991),Sequences of proteins of immunological interest, Fifth Edition. NIH Publication No.91-3242)、Chothia(Chothia et al.,(1992),“Structural repertoire of the human VH segments”,J.Mol.Biol.227:799-817);(Tomlinson et al.,(1995),“The structural repertoire of the human V kappa domain”,EMBO J 14:4628-4638)などとアラインし、相関する。4つのナンバリングシステムのいずれも、本明細書に記載の好ましいアミノ酸置換を特定するために互換的に使用することができる。
【0014】
抗原結合タンパク質がVH1|1-18生殖系列サブファミリーを含む場合、この方法は、VH1配列を、82X、94Xおよび95Xから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む(ここで、Xは塩基性残基(R、KまたはH)であり、Xは極性無電荷残基(S、T、NまたはQ)であり、Xは塩基性残基(R、KまたはH)である)。全ての残基は、Ahoナンバリングシステムによって特定される。VH1|1-18生殖系列サブファミリーの好ましい変異は、82R、94Sおよび95Rである。VH1|1-18生殖系列サブファミリーに適用されるこの方法は、置換59X20(ここで、X20は塩基性残基(R、KまたはH)である)、好ましくは変異59Kをさらに含み得る。
【0015】
抗原結合タンパク質がVH3|3-33生殖系列サブファミリーを含む場合、この方法は、VH3配列を、1X、17Xおよび85Xから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む(ここで、Xは負電荷残基(DまたはE)であり、Xは小さい疎水性残基(G、A、V、I、LまたはM)であり、Xは小さい疎水性残基(G、A、V、I、LまたはM)である)。全ての残基は、Ahoナンバリングシステムによって特定される。VH3|3-33生殖系列サブファミリーの好ましい変異は、1E、17Gおよび85Aである。
【0016】
抗原結合タンパク質がVK3|L16生殖系列サブファミリーを含む場合、この方法は、VK3配列を、4X10、13X11、76X12、78F、95X13、97X14および98Pから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む(ここで、X10はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X11はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X12はDおよびEから選択され、X13はR、KおよびHから選択され、X14はDおよびEから選択される)。全ての残基は、Ahoナンバリングシステムによって特定される。VK3|L16生殖系列サブファミリーの好ましい変異は、4L、13L、76D、95R、97Eおよび98Pである。
【0017】
抗原結合タンパク質がVK3|L6生殖系列サブファミリーを含む場合、この方法は、VK3配列を、76X12および95X13から選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む。VK3|L6生殖系列サブファミリーの好ましい変異は、76Dおよび95Rである。
【0018】
本発明の方法はさらに、Fcドメインを、253X15、440X16および439X17から選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む(ここで、X15は小さい疎水性残基(G、A、V、I、LまたはM)であり、X16は塩基性残基(R、KまたはH)であり、X17は負電荷残基(DまたはE)であり、Fcドメイン配列は440X16および439X17の1つのみを含む)。全ての残基は、EUナンバリングシステムによって特定される。Fcドメインの好ましい変異は、253A、440Kおよび439Eである。
【0019】
本発明の方法はさらに、Fcドメイン配列のC末端を、X1819を含むように改変することを含む(ここで、X18はDおよびE、またはH、KおよびRから選択される1~4のアミノ酸であり、X19はP、M、G、A、V、I、L、S、T、N、Q、F、YおよびWから選択され、かつX18がDまたはEを含むとき存在せず、X18がそのC末端にKまたはRを含むとき存在し、X18がそのC末端にHを含むとき存在するかまたは存在しない)。好ましいFc C末端の改変は、C末端にKP、KKP、KKKP(配列番号380)、EまたはEEを含む。
【0020】
前述の方法は、以下の図1Aおよび1Bに示す高粘度抗体に適用することが好ましい。VH1|1-18配列を含む方法の一部は、好ましくは、図1Bの抗体AF、AK、AL、ANおよびAOに適用される。VH3|3-33配列を含む方法の一部は、好ましくは、図1Bの抗体AQ、AM、AIおよびAGに適用される。VK3|L16配列を含む方法の一部は、好ましくは、図1Bの抗体AFおよびAQに適用される。VK3|L6配列を含む方法の一部は、好ましくは、抗体AJに適用される。
【0021】
本発明の方法はさらに、抗原結合タンパク質および親抗体が同じ濃度で投与された場合、親抗体よりも速く最大血清濃度に達する抗原結合タンパク質を調製する方法を含み、この方法は、親抗体に配列改変440X16(ここで、X16はR、KおよびHから選択される)を導入することを含む。好ましい方法では、配列改変抗原結合タンパク質は、皮下注射後、親抗体の少なくとも2倍の速さで最大血清濃度に達する。皮下注射により抗原結合タンパク質および親抗体が同じ濃度で投与された場合、親抗体よりも高い最大血清濃度に達する抗原結合タンパク質を調製する方法もまた本発明の範囲内であり、この方法は、親抗体に配列改変440X16(ここで、X16はR、KおよびHから選択される)を導入することを含む。好ましい方法では、配列改変抗原結合タンパク質は、親抗体より少なくとも約25%高い最大血清濃度に達する。これらの各方法では、好ましいX16はKであり、好ましい親抗体はPCSK9ポリペプチドである(抗体AKが最も好ましい)。
【0022】
本発明はさらに、以下から選択される1つ以上の配列を含む変異抗原結合タンパク質に関する。
a.82X、94X、および95Xから選択される1つ以上の置換を含むVH1|1-18生殖系列サブファミリー配列(ここで、XはR、KおよびHから選択され、XはS、T、NおよびQから選択され、XはR、KおよびHから選択される);
b.1X、17Xおよび85Xから選択される1つ以上の置換を含むVH3|3-33生殖系列サブファミリー配列(ここで、XはDおよびEから選択され、XはG、A、V、I、LおよびMから選択され、XはG.A、V、I、LおよびMから選択される);
c.4X10、13X11、76X12、78F、95X13、97X14および98Pから選択される1つ以上の置換を含むVK3|L16生殖系列サブファミリー(ここで、X10はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X11はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X12はDおよびEから選択され、X13はR、KおよびHから選択され、X14はDおよびEから選択され、変異抗原結合タンパク質は置換78Fのみを含むことはない)。
d.76X12および95X13から選択される1つ以上の置換を含むVK3|IL6生殖系列サブファミリー;
e.253X10、440X11および439X12から選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列(ここで、X10はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X11はR、KおよびHから選択され、X12はDおよびEから選択され、X16がKで、かつX17がEであるとき、抗原結合タンパク質は、253X15、またはサブパラグラフa、b、c、dおよびfから選択される改変の少なくとも1つを含み、また、抗原結合タンパク質はCD20に特異的に結合する);ならびに
f.C末端にX1819を含むFcドメイン配列(ここで、X18はDおよびE、またはH、KおよびRから選択される1~4のアミノ酸であり、X19はP、M、G、A、V、I、L、S、T、N、Q、F、YおよびWから選択され、かつX18がDまたはEを含むとき存在せず、X18がそのC末端にKまたはRを含むとき存在し、X18がそのC末端にHを含むとき存在するかまたは存在せず、C末端にPGKP(配列番号381)、PGKKP(配列番号382)、PGKKKP(配列番号383)またはPGEが現れたとき、抗原結合タンパク質は、253X15、またはサブパラグラフa~eから選択される置換の少なくとも1つを含み、また、抗原結合タンパク質はCD20またはCD38に特異的に結合する)。好ましいFc C末端の改変は、C末端にKP、KKP、KKKP(配列番号380)、EまたはEEを含む。
ここで、可変領域アミノ酸はAhoナンバリングシステムにより番号付けされており、Fcを含む保存領域のアミノ酸はEUナンバリングにより番号付けされている。
【0023】
本発明による好ましい抗原結合タンパク質は、前述の改変が以下の図1Aおよび1Bの抗体に適用されているものである。以下の抗原結合タンパク質もまた好ましい:
【0024】
VH1|1-18生殖系列サブファミリー配列は、82R、94Sおよび95Rから選択される1つ以上の置換を含み、このような置換の全てを有する抗原結合タンパク質が最も好ましい;
【0025】
VH3|3-33生殖系列サブファミリー配列は、1E、17Gおよび85Aから選択される1つ以上の置換を含み、このような置換の全てを有する抗原結合タンパク質が最も好ましい;
【0026】
VK3|L16生殖系列サブファミリー配列は、4L、13L、76D、95R、97Eおよび98Pから選択される1つ以上の置換を含み、このような置換の全てを有する抗原結合タンパク質が最も好ましい;
【0027】
VK3|L6生殖系列サブファミリー配列は、76Dおよび95Rから選択される1つ以上の置換を含み、このような置換の全てを有する抗原結合タンパク質が最も好ましい;
【0028】
Fcドメイン配列は、253A、440Kおよび439Eから選択される1つ以上の置換を含み、このような置換の全てを有する抗原結合タンパク質が最も好ましい;そして
【0029】
FcドメインのC末端は、KP、KKP、KKKP(配列番号380)およびEから選択される配列を含む。
【0030】
可変領域における上記の好ましいアミノ酸置換は全て、Ahoナンバリングシステムによって特定される。Fcを含む保存領域における残基は全て、EUナンバリングシステムによって特定される。
【0031】
本発明による好ましい抗原結合タンパク質には、上記のVH1|1-18生殖系列サブファミリー置換の1つ以上、最も好ましくは全てを有する、図1Bに記載の抗体AF、AK、AL、ANおよびAO;VH3|3-33生殖系列サブファミリー置換の1つ以上、最も好ましくは全てを有する、図1Bに記載の抗体AQ、AM、AIおよびAG;VK3|L16生殖系列サブファミリー置換の1つ以上、最も好ましくは全てを有する、抗体AFおよびAQ;VK3|L6生殖系列サブファミリー置換の1つ以上、最も好ましくは全てを有する、図1Bに記載の抗体AJ;および上記のFc置換の1つ以上、好ましくは全てを有する、図1Bに記載の抗体BA、AHおよびANが含まれる。
【0032】
上記の配列改変により、本発明はさらに、配列番号352、353、354、366および368から選択される重鎖配列を含み、好ましくは配列番号351の軽鎖配列も含む、PCSK9に特異的に結合する抗原結合タンパク質に関する。
【0033】
上記の配列改変により、本発明はまた、配列番号356、357および358から選択される重鎖配列を含み、好ましくは配列番号355の軽鎖配列をさらに含む、c-fmsに特異的に結合する抗原結合タンパク質に関する。
【0034】
上記の配列改変により、本発明はまた、配列番号359、361、362、364および368から選択される重鎖配列を含み、好ましくは配列番号360、363、365および367から選択される軽鎖配列をさらに含む、GIPRに特異的に結合する抗原結合タンパク質に関する。
【0035】
全ての改変抗原結合タンパク質は、未改変の抗体について以前に記載されたものと同じ兆候に有用である。
【0036】
変異した重鎖を有する図1Aおよび1Bからの各抗原結合タンパク質は、図1Aおよび1Bの未改変の親抗体に記載されるような軽鎖配列をさらに含むことが好ましい。変異した軽鎖を有する前述の各抗原結合タンパク質は、上記のような、または図1Aおよび1Bの未改変の親抗体に見られるような重鎖配列をさらに含むことが好ましい。
【0037】
本発明は、改善された薬物動態学的特性を有する、上記の抗原結合タンパク質をさらに含む。本発明は、上記の配列改変のいずれかを任意選択的に有する抗原結合タンパク質であって、
a.440X16配列改変を欠く親抗体に対して配列改変440X16を含み、
b.皮下注射により抗原結合タンパク質および親抗体が同じ濃度で投与された場合に、親抗体よりも速く最大血清濃度に達し、かつ
c.皮下注射により抗原結合タンパク質および親抗体が同じ濃度で投与された場合に、親抗体よりも高い最大血清濃度に達する
抗原結合タンパク質を含む。
このような抗原結合タンパク質の好ましい親抗体は、PCSK9結合ポリペプチドであり、抗体AKが最も好ましい。このような抗原結合タンパク質における好ましい置換基X16はKである。さらに、このような抗原結合タンパク質で高コレステロール血症を治療する方法も、本発明の範囲内である。
【0038】
本発明はまた、本発明の抗原結合タンパク質をコードする単離された核酸、ならびに核酸を含むベクター、ベクターを含む宿主細胞、および抗原結合タンパク質を作製し、使用する方法に関する。
【0039】
他の実施形態では、本発明は、抗原結合タンパク質を含む組成物、および抗原結合タンパク質を含むキット、ならびに抗原結合タンパク質を含む製品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A図1Aおよび1Bは、pH5.2の20mM酢酸塩および9%スクロースを含む製剤緩衝液(ポリソルベートなし)中、150mg/mLで製剤化されたIgG1およびIgG2モノクローナル抗体について測定された粘度値の表を示す。図1Aおよび1Bは、試験された抗体の標的、ならびにそれらの軽鎖および重鎖のタイプ、生殖系列サブファミリー、濃度、pIおよび粘度を示す。図1Aおよび1B中の各抗体は、図および配列表に示すアミノ酸配列を有する。重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は、配列表においてそれらの直前の配列番号を有する核酸によってコードされる。
図1B図1Aおよび1Bは、pH5.2の20mM酢酸塩および9%スクロースを含む製剤緩衝液(ポリソルベートなし)中、150mg/mLで製剤化されたIgG1およびIgG2モノクローナル抗体について測定された粘度値の表を示す。図1Aおよび1Bは、試験された抗体の標的、ならびにそれらの軽鎖および重鎖のタイプ、生殖系列サブファミリー、濃度、pIおよび粘度を示す。図1Aおよび1B中の各抗体は、図および配列表に示すアミノ酸配列を有する。重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は、配列表においてそれらの直前の配列番号を有する核酸によってコードされる。
図1C図1Cおよび1Dは、図1Aおよび1Bの抗体のフレームワーク領域およびFc領域の配列識別番号(配列番号)を示す。図1Dはまた、抗体BAを示し、これは、図17において説明する。
図1D図1Cおよび1Dは、図1Aおよび1Bの抗体のフレームワーク領域およびFc領域の配列識別番号(配列番号)を示す。図1Dはまた、抗体BAを示し、これは、図17において説明する。
図2図2は、本明細書において確認された高粘度および低粘度サブタイプ対を示す。
図3図3は、力価、最終生細胞密度(VCD)、および細胞培養7日後の採取時の生存率の相対値を含む、AKおよびAO抗体分子ならびにそれらの変異体の発現結果を示す。AK値が100%である。
図4図4は、AK親抗体(AK対照、AK)およびそれらの変異体の効力を示す。
図5図5は、親AK抗体および親AO抗体に対する変異体の粘度を示す。43個の抗体のセットからの高粘度VH1|1-18および低粘度VH1|1-02の平均粘度値も比較のために示す。
図6図6は、高粘度VH1|1-18サブタイプおよび低粘度VH1|1-02サブタイプのmAbの測定粘度値対計算による全分子pI値を示す。AK抗体およびAO抗体の低粘度変異体も示す。
図7図7は、高粘度VH3|3-33サブタイプおよび低粘度VH3|3-07サブタイプのmAbの測定による粘度値対計算による全分子pI値を示す。低粘度変異体AQ(1、17、85)も示す。
図8図8は、高粘度VK3|L16およびVK3|L6サブファミリーならびに低粘度VK3|A27サブファミリーを有するmAbの測定による粘度値対計算による全分子pI値を示す。低粘度変異体AQ(4 13 76 95 97 98)も示す。
図9図9は、mAbの高粘度VH1|1-18サブタイプおよび低粘度VH1|1-02サブタイプ(生殖系列)のグローバル配列パラメータを示す表である。図9のmAbは、粘度によって分類されている。表は、それらのmAb記号、測定された粘度値、計算されたpI値、ならびにVLおよびVH生殖系列を含む。VH生殖系列については、より高い粘度のVH1|1-18は太字で示され、かつ下線を引いてある。重鎖フレームワーク3の配列を示す。高粘度と相関する残基は太字で示され、かつ下線を引いてある。VH1|1-18およびVH1|1-02生殖系列サブファミリーについて、異なる残基がサブファミリーの典型的な残基であることを示すために、比較のためのVベース配列が追加されている。
図10図10は、AKおよびAO抗体が生成されかつ特徴付けされた変異体を示す表である。
図11図11は、VH3重鎖を有する13個のmAbのグローバル配列パラメータを示す表である。図11は、mAb記号、測定された粘度値、計算されたpI値、HCおよびLCタイプ、ならびにVLおよびVHサブタイプ(生殖系列)を含む。より高い粘度のVH3|3-33サブファミリーは、太字で示され、かつ下線を引いてある。高粘度と相関する残基は太字で示され、かつ下線を引いてある。VH3|3-33およびVH3|3-07生殖系列サブファミリーについて、異なる残基がそれらのサブファミリーの典型的なものであることを示すために、比較のためのVベース配列が追加されている。
図12図12は、VH3軽鎖を有する14個のmAbのグローバル配列パラメータを示す表である。図12のmAbは、粘度によって分類されており、mAb記号、測定された粘度値、計算されたpI値、HCおよびLCタイプ、ならびにVLおよびVHサブタイプ(生殖系列)を含む。より高い粘度のVK3|L16およびVK3|L6サブファミリーは太字で示され、かつ下線を引いてある。VK3|A27サブファミリーと比較して、VK3|L16とVK3|L6サブファミリーとの間で一貫して異なっている軽鎖残基を右側に示す。VK3|L16およびVK3|L6サブファミリーの高粘度と関連する残基は太字で示され、かつ下線を引いてある。VK3|L16およびVK3|A27生殖系列サブファミリーについては、異なる残基がサブファミリーの典型的な残基であることを示すために、比較のためのVベース配列が追加されている。
図13図13Aおよび13Bは、特定の重鎖および軽鎖生殖系列ファミリーならびにVH1、VH3およびVK3の生殖系列サブファミリーを含む無傷の抗体分子についての、測定された粘度および計算されたpI値の平均値を示す。X軸は、ファミリー、および各ファミリーおよびサブファミリーのメンバーの数を含む。
図14A図14Aは、Fc-Fc相互作用表面における変異が溶液粘度を低下させ得ることを示す。抗体AKおよび抗体AK変異体I253AおよびS440Kの濃度の粘度を示す。
図14B図14Bは、野生型補体活性を回復させる二重変異体が野生型粘度も回復させることを示す。図は、抗体AK、抗体AK変異体I253A、抗体AK変異体S440K、および抗体AK二重変異体K439E/S440Kの濃度の粘度を示す。この図はまた、抗体AK変異体K439E、抗体AK変異体H433A、および抗体AK変異体N434Aの粘度を示し、これらは抗体AK親と比較して粘度を低下させない。
図15図15は、親抗体AKおよび種々の変異体の絶対粘度値および相対粘度値を示す表である。親抗体AKおよび変異体は、抗体AKおよび低粘度変異体の薬物動態および薬力学の非ヒト霊長類研究に使用される。
図16図16は、EDC化学架橋の模式図である(実施例2を参照)。
図17図17は、低粘度変異体に対するFc変異のために選択されたタンパク質の粘度を示す表である。
図18図18は、抗体AHのEDC化学架橋による抗体系オリゴマーの濃度依存性生成を示す。
図19図19Aは、Fc領域におけるS440K変異が抗体AQにおける粘度を低下させることを示す。(変異体の濃度は実際には150mg/mLであることに留意されたい。)図19Bは、指数関数的当てはめをした同じデータの散布図である。図19Bの菱形は、示した濃度での未改変抗体AQを示し、四角は150mg/mLでのS440K変異体を示す。
図20図20Aは、測定された濃度および粘度を含む、抗体AQが産生され、特徴付けられた変異体を示す表である。図20Bは、GIPによって活性化され、抗GIPR抗体によってブロックされたヒトGIP受容体を発現する293/huGIPR細胞のcAMP応答を示す。インビトロcAMP活性は、粘度変異によっても同様に影響を受けなかった。効力は、アッセイの許容誤差内で同じであった。
図21図21は、以下の実施例においてさらに詳細に記載される、雄カニクイザルにおける単回投与皮下ボーラス薬物動態試験のための実験計画の概要を示す。
図22図22は、雄カニクイザル(N=4匹の雄)に10mg/kgを皮下投与した後の抗体AKまたは低粘度変異体ホモログの平均薬物動態パラメータ推定値を示す。粘度を低下させるFc領域における変異の導入は、Tmaxを低下させ、Cmaxを増加させる。
図23図23は、予備試験(Day CLAB)と比較したLDL-Cのパーセンテージを示す。*変化率は、投与後の個々の動物の値を1日目の予備試験値で除したもので表す。4個の抗体(親抗体AK、AK Fc変異体、AK Fab変異体、およびAK Fc/Fab二重変異体)はいずれもLDL-Cの低下を誘発する。
図24図24Aおよび24Bは、血漿中の薬物動態プロファイル(μg/mL)を、対応する低密度リポタンパク質(LDL)濃度(mg/dL)プロファイルとともに示す。LDL濃度および試験品の血清濃度は、4匹の動物の平均値で示す。実線を有する黒丸は、親抗体AKの血清濃度を示す。破線を有する白四角は、Fab変異を有する抗体の血清濃度を示す。実線を有する黒三角は、Fc変異を有する抗体の血清濃度を示す。破線を有する白菱形は、FabおよびFcの両変異を有する抗体の血清濃度を示す。これらのデータは、抗体製剤の粘度を低下させるFc領域における変異の存在がTmaxまでの時間の短縮およびより高いCmaxをもたらすことを示す。親抗体の全ての変異体形態は、血清LDL-Cを低下させる能力を保持している(下パネル)。
【発明を実施するための形態】
【0041】
用語の定義
以下の記載においては、多くの用語が広く用いられている。本発明の理解を容易にするために、以下の定義を提供する。
【0042】
特に明記しない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および「少なくとも1つ」は、互換的に使用され、1つまたは2つ以上を意味する。
【0043】
「抗原結合タンパク質」は、それが結合する別の分子(抗原)に対して強い親和性を有する抗原結合領域または抗原結合部分を含むタンパク質またはポリペプチドを指す。抗原結合タンパク質は、抗体、ペプチボディ(peptibody)、抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単一ドメイン抗体)、抗体誘導体、抗体アナログ、融合タンパク質、およびキメラ抗原受容体(CAR)を含む抗原受容体を包含する。
【0044】
「抗体」(Ab)および「免疫グロブリン」(Ig)は、同じ構造特性を有する糖タンパク質である。抗体は特異的抗原に対し結合特異性を示すが、免疫グロブリンは抗体および抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によっては低いレベルで、また骨髄腫によっては高いレベルで産生される。したがって、本明細書中で使用される場合、用語「抗体」または「抗体ペプチド」は無傷な抗体、本明細書中に開示される抗体と特異的結合を競合する抗体、または、無傷な抗体と特異的結合を競合するその抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単一ドメイン抗体)を指し、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、および二重特異性抗体を含む。特定の実施形態では、抗原結合フラグメントは、例えば、組換えDNA技術によって作製される。さらなる実施形態では、抗原結合フラグメントは、無傷の抗体の酵素的または化学的切断によって作製される。抗原結合フラグメントには、Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’)、Fv、および一本鎖抗体が含まれるが、これらに限定されない。本発明での使用に好適な例には、限定されないが、図1Aおよび1Bに挙げた抗体、ならびにアバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アラシズマブペゴール、ALD518、アレムツズマブ、アリロクマブ、アレムツズマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトクス、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アチヌマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、トシリズマブ、バピヌズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビバツズマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、CC49、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、クレネズマブ、CR6261、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダラツムマブ、デミシズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュピルマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エナバツズマブ、エンリモマブペゴール、エノキズマブ、エノキズマブ、エノチクマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エレヌマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エボロクマブ、エキシビビルマブ、エキシビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、GS6624、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リゲリズマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パジバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピジリズマブ、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポネズマブ、プレザルマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、PRO140、クイリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラァフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチデ、セクキヌマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、テゼペルマブ、TGN1412、トレメリムマブ、チシリムマブ、チルドラキズマブ、チガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビシリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマフォドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、およびゾリモマブアリトクスが含まれる。
【0045】
用語「単離された抗体」は、本明細書中で使用される場合、その天然環境の成分から識別され、分離および/または回収された抗体を指す。その天然環境の汚染成分は、抗体の診断用途または治療用途を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。好ましい実施形態では、抗体は、(1)ローリー法による決定で抗体が95重量%を超えるまで、最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用によってN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を十分に得られる程度まで、あるいは(3)クマシーブルー、または好ましくは銀染色を用い、還元条件下または非還元条件下でSDS-PAGEによって均質になるまで、精製される。単離された抗体には、その抗体の天然環境の少なくとも1つの成分は存在しないので、組換え細胞内にインサイチュで存在する抗体が含まれる。しかし、通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0046】
抗原または他のポリペプチドの「結合する(している)」という用語は、本発明のリガンドポリペプチドの受容体への結合;本発明の受容体ポリペプチドのリガンドへの結合;本発明の抗体の抗原またはエピトープへの結合;本発明の抗原またはエピトープの抗体への結合;本発明の抗原の抗イディオタイプ抗体への結合;本発明の抗イディオタイプ抗体のリガンドへの結合;本発明の抗イディオタイプ抗体の受容体への結合、本発明の抗抗イディオタイプ抗体のリガンド、受容体または抗体への結合などを含むが、これらに限定されない。
【0047】
用語「免疫グロブリン」は、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質を指す。免疫グロブリンの1つの形態が、抗体の基本的構造単位を構成する。この形態は四量体であり、各々1本の軽鎖と1本の重鎖を持つ2つの同一の免疫グロブリン鎖対からなる。各々の対では、軽鎖および重鎖の可変領域が一緒に、抗原への結合を担い、定常領域は抗体エフェクター機能を担う。
【0048】
完全長免疫グロブリンの「軽鎖」(約25Kdまたは約214アミノ酸)は、NH末端の可変領域遺伝子(約110アミノ酸)、およびCOOH末端のカッパまたはラムダ定常領域遺伝子によってコードされる。完全長免疫グロブリンの「重鎖」(約50Kdまたは約446アミノ酸)は、同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)および他の前述の定常領域遺伝子(約330アミノ酸)の1つによってコードされる。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4など)、IgM、IgA、IgD、およびIgEとして定義する。軽鎖および重鎖において、可変領域および定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約10以上のアミノ酸からなる「D」領域を含む。(一般に、Fundamental Immunology(Paul,W.,ed.,2nd Edition,Raven Press,NY(1989))、Chapter7を参照されたい(全ての目的のためにその全体が参照により組み込まれる)。
【0049】
免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の可変ドメインまたは領域は、「相補性決定領域」(CDR)によって中断される「フレームワーク領域」(FR)を含む。Kabat et al.(1991),Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Edition,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Chothia et al.(1987),J.Mol.Biol.196:901-917(これらはいずれも参照により本明細書に組み込まれる)。FR残基は、本明細書で定義されるCDR領域残基以外の可変ドメイン残基である。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。したがって、「ヒトフレームワーク領域」は、天然に存在するヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域と実質的に同一(約85%以上、通常90~95%以上)のフレームワーク領域である。抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成軽鎖および重鎖の組み合わされたフレームワーク領域は、CDRを配置し、整列させる機能を有する。CDRは、主として抗原のエピトープへの結合に関与している。したがって、「ヒト化」免疫グロブリンという用語は、ヒトフレームワーク領域と、非ヒト(通常、マウスまたはラット)免疫グロブリン由来の1つ以上のCDRとを含む免疫グロブリンを指す。CDRを提供する非ヒト免疫グロブリンは「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト免疫グロブリンは「アクセプター」と呼ばれる。定常領域は存在する必要はないが、存在する場合、それらはヒト免疫グロブリン定常領域と実質的に同一、すなわち少なくとも約85~90%、好ましくは約95%以上同一でなければならない。したがって、ヒト化免疫グロブリンの全ての部分は、おそらくCDRを除いて、天然ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。さらに、最適な抗原結合親和性および特異性を保持するために、ヒトフレームワーク領域中の1つ以上の残基を親配列に逆変異させてもよい。このようにして、非ヒト親抗体由来のいくつかのフレームワーク残基は、その免疫原性を最小限に抑えながら親抗体の結合特性を保持するために、ヒト化抗体中に保持される。用語「ヒトフレームワーク領域」は、本明細書で使用される場合、そのような逆変異を有する領域を含む。「ヒト化抗体」は、ヒト化軽鎖およびヒト化重鎖の免疫グロブリンを含む抗体である。例えば、ヒト化抗体は、例えば、キメラ抗体の可変領域全体が非ヒトであるため、以下に定義されるような典型的なキメラ抗体を包含しない。
【0050】
本発明のモノクローナル抗体および抗体コンストラクトは、特に、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種に由来するか、または特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、一方、鎖の残りは、所望の生物学的活性を示す限り、別の種に由来するか、または別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含む(米国特許第4,816,567号明細書;Morrison et al.(1984),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855)。本明細書において興味深いキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界サル、Apeなど)に由来する可変ドメイン抗原結合配列およびヒト定常領域配列を含む「原始化(primitized)」抗体が含まれる。キメラ抗体を作製するための様々な方法が記載されている。例えば、Morrison et al.(1985),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851;Takeda et al.(1985),Nature 314:452、Cabilly et al.,米国特許第4,816,567号明細書;Boss et al.,米国特許第4,816,397号明細書;Tanaguchi et al.,欧州特許第0171496号明細書;欧州特許第0173494号明細書;および英国特許第2177096号明細書を参照されたい。
【0051】
「ヒト抗体」および「完全ヒト抗体」という用語はそれぞれ、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、または1つ以上のヒト免疫グロブリン遺伝子を導入した動物から単離された抗体を含む、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有し、内因性免疫グロブリンを発現しない抗体、例えば、Xenomouse(登録商標)抗体、およびKucherlapati et al.によって米国特許第5,939,598号明細書に記載されているような抗体を指す。
【0052】
用語「遺伝子改変抗体」は、アミノ酸配列が天然の抗体の配列から改変された抗体を意味する。抗体の生成における組換えDNA技術の関連性のために、天然の抗体に見出されるアミノ酸の配列に限定される必要はなく、抗体は、所望の特性を得るために再設計することができる。多くの可能なバリエーションがあり、その範囲は、たった1個または数個のアミノ酸への変化から、例えば可変領域および/または定常領域の完全な再設計にまで及ぶ。定常領域の変化は、一般に、補体の結合、膜との相互作用、および他のエフェクター機能、ならびに製造性および粘度などの特性を改善または変更するために行われる。可変領域における変更は、抗原結合特性を改善するために行われる。
【0053】
「Fabフラグメント」は、1本の軽鎖と、1本の重鎖のCH1および可変領域とからなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0054】
「Fab’フラグメント」は、1本の軽鎖と、2本の重鎖間に鎖間ジスルフィド結合が形成されてF(ab’)分子を形成し得るように、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域のより多くを含む1本の重鎖とを含む。
【0055】
「F(ab’)フラグメント」は、2本の軽鎖と、2本の重鎖間に鎖間ジスルフィド結合が形成されるように、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域の一部を含む2本の重鎖とを含む。
【0056】
用語「Fvフラグメント」および「一本鎖抗体」は、重鎖および軽鎖の両方の抗体可変領域を含むが、定常領域は欠くポリペプチドを指す。抗体全体と同様に、それは特異的抗原に選択的に結合することができる。わずか約25kDaの分子量のFvフラグメントは、2本の重タンパク質鎖および2本の軽鎖から構成される通常の抗体(150~160kD)よりもはるかに小さく、Fabフラグメント(約50kDa、1本の軽鎖および半分の重鎖)よりもさらに小さい。
【0057】
「単一ドメイン抗体」は、単一ドメインFv単位、例えば、VまたはVからなる抗体フラグメントである。抗体全体と同様に、それは特異的抗原に選択的に結合することができる。わずか12~15kDaの分子量の単一ドメイン抗体は、2本の重タンパク質鎖および2本の軽鎖から構成される通常の抗体(150~160kDa)よりもはるかに小さく、Fabフラグメント(約50kDa、1本の軽鎖および半分の重鎖)および一本鎖可変フラグメント(約25kDa、2つの可変ドメイン、軽鎖由来の1つおよび重鎖由来の1つ)よりもさらに小さい。第1の単一ドメイン抗体を、ラクダ科の動物に見出される重鎖抗体から遺伝子工学により操作した。単一ドメイン抗体に関する研究のほとんどは、現在、重鎖可変ドメインに基づいているが、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖に由来するナノボディもまた、標的エピトープに特異的に結合することが示されている。
【0058】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、ハイブリドーマ技術によって生成された抗体に限らない。用語「モノクローナル抗体」は、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体を指し、それを生成する方法を指すものではない。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、それが由来する抗体のヒト抗原を選択的に阻害する。例えば、本明細書に記載のように置換された抗体AFの配列を有する抗原結合タンパク質は、抗体AFの図1Bの抗原を選択的に阻害する。抗体またはその機能的フラグメントは、特異的受容体の阻害アッセイにおける抗体のIC50が別の「参照」リガンドまたは受容体の阻害アッセイにおけるIC50よりも少なくとも50倍低い場合、他の受容体またはリガンドと比較してその特異的受容体またはリガンドを「選択的に阻害」する。「IC50」は、生物学的または生化学的機能の50%阻害を達成するのに必要な用量/濃度である。放射性リガンドの場合、IC50は、放射性リガンドの特異的結合の50%を置換する競合リガンドの濃度である。任意の特定の物質またはアンタゴニストのIC50は、用量反応曲線を構築し、特定の機能アッセイにおけるアゴニスト活性の逆転に対する異なる濃度の薬物またはアンタゴニストの効果を試験することによって決定され得る。アゴニストの最大の生物学的応答の半分を阻害するのに必要な濃度を決定することにより、IC50値を所与のアンタゴニストまたは物質について算出することができる。したがって、例えば、抗PCSK9抗体またはその機能的フラグメントのIC50値は、機能的アッセイにおいてヒトPCSK9受容体の活性化におけるPCSK9の最大生物学的応答の半分を阻害するのに必要な抗体またはフラグメントの濃度を決定することによって算出することができる。特定のリガンドまたは受容体を選択的に阻害する抗体またはその機能的フラグメントは、そのリガンドまたは受容体に関する中和抗体または中和フラグメントであると理解される。したがって、いくつかの実施形態では、抗PCSK9抗体または機能的フラグメントは、ヒトPCSK9の中和抗体または中和フラグメントである。
【0060】
本発明の置換抗原結合タンパク質は、それらが由来する非置換抗体を交差ブロックすることができる。用語「交差ブロック(する)」、「交差ブロック(された)」、および「交差ブロック(すること)」は、本明細書において互換的に使用され、他の抗原結合タンパク質(例えば、抗体または結合フラグメント)の標的(例えば、ヒトPCSK9)への結合を妨害する抗原結合タンパク質の能力を意味する。抗体または結合フラグメントが標的への別の結合を妨害することができる程度、したがって、それが交差ブロックすると言うことができるか否かは、競合結合アッセイによって決定することができる。いくつかの実施形態では、本発明の交差ブロック性抗原結合タンパク質は、標的抗原に対する参照抗体の結合を、約40%~100%、例えば約60%~約100%、特に好ましくは約70%~100%、より好ましくは約80%~100%低減する。交差ブロックを検出するための特に好適な定量アッセイは、表面プラズモン共鳴技術を用いて相互作用の程度を測定するBiacore機を用いる。別の好適な交差ブロック定量アッセイは、FACSベースのアプローチを使用して、標的抗原に対する抗体の結合に関して抗体間の競合を測定する。
【0061】
用語「核酸」または「核酸分子」は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成されたフラグメント、ならびにライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用、およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成されたフラグメントなどのポリヌクレオチドを指す。核酸分子は、天然に存在するヌクレオチドの単量体(DNAおよびRNAなど)、もしくは天然ヌクレオチドのアナログ(例えば、天然に存在するヌクレオチドのアルファ-エナンチオマ型)、または両者の組み合わせから構成され得る。修飾ヌクレオチドは、糖部分および/またはピリミジンまたはプリン塩基部分に変化を有し得る。糖修飾には、例えば、ハロゲン、アルキル基、アミン、およびアジド基による1つもしくは複数のヒドロキシル基の置換が含まれ、または糖は、エーテルもしくはエステルとして官能基が付加され得る。さらに、糖部分全体を、アザ糖および炭素環式糖アナログなどの、立体的および電子的に類似の構造体で置換することができる。塩基部分の修飾の例には、アルキル化プリンおよびピリミジン、アシル化プリンもしくはピリミジン、またはその他のよく知られた複素環式置換体が含まれる。核酸単量体は、ホスホジエステル結合、またはそのような結合の類似結合によって結合され得る。ホスホジエステル結合の類似結合には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニリダート(phosphoranilidate)、ホスホロアミダート(phosphoramidate)などが含まれる。「核酸分子」という用語には、ポリアミド骨格に結合した天然に存在する、または修飾した核酸塩基を含む、いわゆる「ペプチド核酸」もまた含まれる。核酸は一本鎖または二本鎖であり得る。
【0062】
「核酸分子の相補体」という用語は、参照ヌクレオチド配列に対して逆方向の相補的ヌクレオチド配列を有する核酸分子を指す。
【0063】
「縮重ヌクレオチド配列」という用語は、ポリペプチドをコードする参照核酸分子と比較して1つまたは複数の縮重コドンを含むヌクレオチドの配列を意味する。縮重コドンはヌクレオチドの異なるトリプレットを含むが、同じアミノ酸残基をコードする(すなわち、GAUおよびGACトリプレットはそれぞれAspをコードする)。
【0064】
「単離された核酸分子」とは、生物のゲノムDNA中に組み込まれていない状態の核酸分子である。例えば、細胞のゲノムDNAから分離された抗体の重鎖をコードするDNA分子は、単離されたDNA分子である。単離された核酸分子の別の例は、生物のゲノムに組み込まれていない、化学的に合成された核酸分子である。特定の種から単離された核酸分子は、その種の染色体の完全なDNA分子よりも小さい。
【0065】
「核酸分子コンストラクト」は、天然には存在しない配置で組み合わされ、並置された核酸の断片を含むように、ヒトの介入によって改変されている、一本鎖または二本鎖の核酸分子である。
【0066】
「相補的DNA(cDNA)」は、酵素逆転写酵素によってmRNA鋳型から形成される一本鎖DNA分子である。一般に、mRNAの一部と相補的なプライマーが、逆転写の開始に用いられる。当業者はまた、そのような一本鎖DNA分子とその相補的DNA鎖とからなる二本鎖DNA分子を指して、「cDNA」という用語を使用する。「cDNA」という用語はまた、RNA鋳型から合成されたcDNA分子のクローンを指す。
【0067】
「プロモーター」は、構造遺伝子の転写を指示するヌクレオチド配列である。一般に、プロモーターは、構造遺伝子の転写開始部位に近い、遺伝子の5’非コード領域に位置する。転写の開始において機能するプロモーター内の配列エレメントは、コンセンサスヌクレオチド配列によって特徴づけられる場合が多い。これらのプロモーターエレメントには、RNAポリメラーゼ結合部位、TATA配列、CAAT配列、分化特異的エレメント(DSE;McGehee et al.(1993),Mol.Endocrinol.,7:551)、環状AMP反応エレメント(CRE)、血清反応エレメント(SRE;Treisman(1990)、Seminars in Cancer Biol.,1:47)、グルココルチコイド反応エレメント(GRE)、および他の転写因子の結合部位、例えば、CRE/ATF(O’Reilly et al.(1992),J.Biol.Chem.,267:19938)、AP2(Ye et al.(1994),J.Biol.Chem.,269:25728),SP1,cAMP反応エレメント結合タンパク質(CREB;Loeken(1993),Gene Expr.,3:253)および八量体因子(一般に、Watson et al.(1987),eds.,Molecular Biology of the Gene,4th Edition,The Benjamin/Cummings Publishing Company,Inc.,and Lemaigre et al.(1994),Biochem.J.,303:1を参照)。プロモーターが誘導性プロモーターである場合には、転写速度は誘導物質に応じて増大する。対照的に、プロモーターが構成的プロモーターである場合には、転写速度は誘導物質による調節を受けない。抑制プロモーターもまた知られている。
【0068】
「調節エレメント」は、コアプロモーターの活性を調節するヌクレオチド配列である。例えば、調節エレメントは、特定の細胞、組織、または細胞小器官において独占的にまたは優先的に転写を可能にする細胞因子と結合する核酸配列を含み得る。このような種類の調節エレメントは、通常、「細胞特異的」、「組織特異的」、または「細胞小器官特異的」方法で発現する遺伝子と関連している。
【0069】
「エンハンサー」は、転写開始部位に対するエンハンサーの距離または方向にかかわらず、転写効率を増大させることができる調節エレメントの一種である。
【0070】
「異種DNA」は、所与の宿主細胞内に天然では存在しないDNA分子またはDNA分子の集団を指す。特定の宿主細胞に対して異種であるDNA分子は、宿主DNAが非宿主DNA(すなわち、外因性DNA)と結合している限り、宿主細胞種に由来するDNA(内因性DNA)を含み得る。例えば、転写プロモーターを含む宿主DNA断片に作動可能に連結したポリペプチドをコードする非宿主DNA断片を含むDNA分子は、異種DNA分子であると見なされる。逆に、異種DNA分子は、外因性プロモーターと作動可能に連結した内因性遺伝子を含み得る。別の説明として、野生型細胞に由来する遺伝子を含むDNA分子は、そのDNA分子が野生型遺伝子を欠く変異細胞に導入される場合、異種DNAと見なされる。
【0071】
「発現ベクター」は、宿主細胞において発現する遺伝子をコードする核酸分子である。通常、発現ベクターは、転写プロモーター、遺伝子、および転写ターミネーターを含む。遺伝子発現は、通常、プロモーターの制御下に置かれ、そして、このような遺伝子はプロモーター「に作動可能に連結されている」と言われる。同様に、調節エレメントおよびコアプロモーターは、調節エレメントがコアプロモーターの活性を調節する場合、作動可能に連結されている。
【0072】
「組換え宿主」は、クローニングベクターまたは発現ベクターなどの異種核酸分子を含む細胞である。本文脈において、組換え宿主の例は、発現ベクターから本発明のアンタゴニストを産生する細胞である。対照的に、このようなアンタゴニストは前記アンタゴニストの「天然源」であり、発現ベクターを欠く細胞によって産生され得る。
【0073】
「アミノ末端」および「カルボキシル末端」という用語は、本明細書においては、ポリペプチド内の位置を示すために用いられる。その状況が可能である場合、これらの用語は、近接していることまたは相対位置を示すために、ポリペプチドの特定の配列または部分に関して用いられる。例えば、ポリペプチド内の参照配列に対してカルボキシル末端側に位置する特定の配列は、参照配列のカルボキシル末端に近接して位置するが、必ずしも完全なポリペプチドのカルボキシル末端に位置するとは限らない。
【0074】
「融合タンパク質」は、少なくとも2つの遺伝子のヌクレオチド配列を含む核酸分子によって発現するハイブリッドタンパク質である。例えば、融合タンパク質は、親和性マトリックスまたは目的の別の標的に結合するポリペプチドと融合した抗体重鎖の少なくとも一部を含み得る。
【0075】
用語「受容体」は、「リガンド」と呼ばれる生物活性分子に結合する細胞関連タンパク質を意味する。この相互作用は、細胞に対するリガンドの効果を媒介する。受容体は、膜結合型、細胞質ゾル型または核型;単量体(例えば、甲状腺刺激ホルモン受容体、ベータアドレナリン受容体)または多量体(例えば、PDGF受容体、成長ホルモン受容体、IL-3受容体、GM-CSF受容体、G-CSF受容体、エリスロポエチン受容体およびIL-6受容体)であり得る。膜結合受容体は、細胞外リガンド結合ドメインと、通常、シグナル伝達に関与する細胞内エフェクタードメインとを含むマルチドメイン構造を特徴とする。特定の膜結合受容体において、細胞外リガンド結合ドメインおよび細胞内エフェクタードメインは、完全な機能的受容体を含む別々のポリペプチドに位置する。一般に、リガンドの受容体への結合は、エフェクタードメインと細胞中の他の分子との間の相互作用を引き起こす受容体の構造変化をもたらし、これは次に、細胞の代謝の変化をもたらす。受容体-リガンド相互作用にしばしば関連する代謝事象には、遺伝子転写、リン酸化、脱リン酸化、環状AMP産生の増加、細胞カルシウムの動員、膜脂質の動員、細胞接着、イノシトール脂質の加水分解、およびリン脂質の加水分解が含まれる。
【0076】
「発現」という用語は、遺伝子産物の生合成を指す。例えば、構造遺伝子の場合、発現は、構造遺伝子のmRNAへの転写、およびmRNAから1つまたは複数のポリペプチドへの翻訳を含む。
【0077】
「補体/抗補体対」という用語は、適切な条件下で非共有結合した安定な対を形成する異なる部分を示す。例えば、ビオチンおよびアビジン(またはストレプトアビジン)は、補体/抗補体対の原型的なメンバーである。他の例示的な補体/抗補体対には、受容体/リガンド対、抗体/抗原(またはハプテンまたはエピトープ)対、センス/アンチセンスポリヌクレオチド対などが含まれる。補体/抗補体対のその後の解離が望ましい場合、補体/抗補体対は、10-1未満の結合親和性を有することが好ましい。
【0078】
「検出可能な標識」とは、抗体部分と結合して診断に有用な分子を生じる分子または原子である。検出可能な標識の例には、キレート剤、光活性剤、放射性同位体、蛍光剤、常磁性イオン、またはその他のマーカー部分が含まれる。
【0079】
「親和性タグ」という用語は、本明細書においては、第2ポリペプチドの精製もしくは検出を提供するか、または基質に対して第2ポリペプチドを付着させるための部位を提供する目的で、第2ポリペプチドに結合し得るポリペプチド断片を示すために用いられる。原理的には、抗体またはその他の特異的な結合剤が利用できる任意のペプチドまたはタンパク質を、親和性タグとして使用することができる。親和性タグには、ポリヒスチジントラクト、プロテインA(Nilsson et al.(1985),EMBO J.4:1075;Nilsson et al.(1991)、Methods Enzymol.,198:3)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(Smith et al.(1988),Gene,67:31,Glu-Glu親和性タグ(Grussenmeyer et al(1985).,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:7952)、サブスタンスP、FLAG(登録商標)ペプチド(Hopp et al.(1988),Biotechnology6:1204)、ストレプトアビジン結合ペプチド、または他の抗原性エピトープもしくは結合ドメインが含まれる。一般的には、Ford et al.(1991),Protein Expression and Purification,2:95を参照されたい。親和性タグをコードするDNA分子は、商業的供給業者(例えば、Pharmacia Biotech、Piscataway、N.J.)から入手可能である。
【0080】
用語「酸性残基」および「負電荷残基」は、酸性基を含む側鎖を有するアミノ酸残基を指す。例示的な酸性または負電荷残基には、DおよびEが含まれる。
【0081】
用語「アミド残基」は、酸性基のアミド誘導体を含む側鎖を有するアミノ酸を指す。例示的なアミド残基には、NおよびQが含まれる。
【0082】
用語「芳香族残基」は、芳香族基を含む側鎖を有するアミノ酸残基を指す。例示的な芳香族残基には、F、YおよびWが含まれる。
【0083】
用語「塩基性残基」および「正電荷残基」は、塩基性基を含む側鎖を有するアミノ酸残基を指す。例示的な塩基性または正電荷残基には、H、KおよびRが含まれる。
【0084】
用語「親水性残基」および「極性無電荷残基」は、極性基を含む側鎖を有するアミノ酸残基を指す。例示的な親水性または極性無電荷残基には、C、S、T、NおよびQが含まれる。
【0085】
用語「非官能性残基」および「小さい疎水性残基」は、酸性、塩基性、または芳香族基のない側鎖を有するアミノ酸残基を指す。例示的な非官能性の小さな疎水性残基には、M、G、A、V、I、Lおよびノルロイシン(Nle)が含まれる。
【0086】
本発明の一態様は、PCSK9結合ポリペプチドに関する。「PCSK9結合ポリペプチド」は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)タンパク質に結合するポリペプチドを意味する。場合によっては、PCSK9結合ポリペプチドは、低密度脂質受容体(LDLR)へのPCSK9の結合を遮断する。このような遮断性PCSK9結合ポリペプチドは、モノクローナル抗体(mAb)であり得、そして以下の1つであり得る:
a.配列番号136のアミノ酸配列を有する重鎖ポリペプチド、および配列番号134のアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチドを含むmAb(抗体AK、エボロクマブ)、またはその抗原結合フラグメント;
b.PCSK9との結合に関してエボロクマブと競合するmAb;
c.
i.次の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖ポリペプチド:配列番号376または378のCDR1である重鎖CDR1;配列番号376または378のCDR2である重鎖CDR2;配列番号376または378のCDR3である重鎖CDR3、および
ii.次の相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖ポリペプチド:配列番号377または379のCDR1である軽鎖CDR1;配列番号377または379のCDR2である軽鎖CDR2;配列番号377または379のCDR3である軽鎖CDR3
を含むmAb;
d.PCSK9の次の残基の少なくとも1つに結合するmAbであって、PCSK9は配列番号369のアミノ酸配列を含むmAb:S153、D188、I189、Q190、S191、D192、R194、E197、G198、R199、V200、D224、R237、およびD238、K243、S373、D374、S376、T377、F379、I154、T1897、H193、E195、I196、M201、V202、C223、T228、S235、G236、A239、G244、M247、I369、S372、C375、C378、R237、およびD238;
e.以下を含む抗体によって結合されるエピトープと重なるPCSK9のエピトープでPCSK9に結合するmAbであって:
i.配列番号136のアミノ酸配列の重鎖可変領域;および
ii.配列番号134のアミノ酸配列の軽鎖可変領域、
iii.mAbのエピトープは、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質の上皮成長因子様反復A(EGF-A)ドメインが結合する部位とさらに重なる(Horton,Cohen,&Hobbs(2007),Trends Biochem Sci,32(2),71-77.doi:10.1016/j.tibs.2006.12.008;Seidah&Prat(2007)、J Mol Med(Berl),85(7),685~696)mAb;
f.以下の相補性決定領域(CDR)を含む重鎖ポリペプチドを含むmAb:
i.それぞれ配列番号373、374、および375のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3;ならびに
ii.それぞれ配列番号369、370、および371のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3;または
g.配列番号378の重鎖変異領域配列および配列番号379の軽鎖変異領域配列を含むmAb。
【0087】
好ましい実施形態
グローバル配列特徴と粘度との相関
本明細書の実施例1で報告された研究の主な目的は、高濃度モノクローナル抗体製剤の粘度を低下させる目的で、粘度と、IgGモノクローナル抗体のアミノ酸配列、またはグローバル配列特徴との間の関連を明らかにすることであった。そのために、43の異なるモノクローナル抗体の粘度値を150mg/mlで測定し、5~33cPの広範囲の値を得た(図1Aおよび1B)。軽鎖および重鎖の型、それらのサブタイプ(生殖系列)、およびpIなどのモノクローナル抗体の主要なグローバル配列特徴を計算し、粘度と相関させたが、直ちに有意な相関は明らかにしなかった(図1Aおよび1B)。IgGアイソタイプ内の多型(アロタイプとして知られる)は、ヒト由来の血清学的試薬を用いて記載され(Ropartz,C.,Schanfield,M.S.,and Steinberg,A.G.(1976),“Review of the notation for the allotypic and related markers of human immunoglobulins,”WHO meeting on human immunoglobulin allotypic markers,held 16-19 July 1974,Rouen,France;report amended June 1976,J Immunogenet.3,357-362)、重鎖および軽鎖の保存領域におけるいくつかの特定の位置における特定のアミノ酸残基と相関した(Jefferis and Lefranc (2009)Human immunoglobulin allotypes:possible implications for immunogenicity, mAbs 1,332-338.)(Vidarsson, G.,Dekkers,G.,and Rispens,T.(2014)IgG subclasses and allotypes:from structure to effector functions,Front Immunol.5,1-17)。アロタイプは軽鎖および重鎖の他の保存領域に、いくつかの異なる残基(以下に記載される)を導入する。本研究で使用した全てのカッパ軽鎖は、同じ(3)アロタイプ(EUナンバリングで残基A153、V191を特徴とする)であった。全てのIgG2重鎖は、同じ(n-)アロタイプ(P189を特徴とする)であった。4つのIgG1重鎖アロタイプが記載された(EUナンバリングで次の関連残基を含む):f(R214);z(K214);a(D356、L358)およびx(G431)(Jefferis&Lefranc,2009)(Vidarsson et al.,2014)。E356、M358およびA431位に代替残基を有するIgG1重鎖は、これらのアミノ酸残基が他のIgGサブクラスに存在するので、アロタイプを構成しない。IgG1アロタイプ(x)は、本研究では存在せず、全てのIgG1重鎖はA431を有した。IgG1重鎖アロタイプ(f)、(z)、(a)および関連残基を図1Aおよび1Bに示す。
【0088】
図1Aおよび1Bの抗体は、粘度によって分類されている。図1Aおよび図1Bの表は、モノクローナル抗体名、測定濃度、測定粘度値、およびタイプ、サブタイプ、および計算されたpIを含むグローバル配列パラメータを含む。IgG1型、ラムダ軽鎖およびVH1重鎖サブタイプは、太字で示されている。
【0089】
IgG1およびIgG2重鎖ならびにカッパおよびラムダ軽鎖は、粘度範囲にわたってかなり均一に分布していた。サブタイプの配列評価は、以下のいくつかの高粘度および低粘度サブタイプ対を明らかにした:VH1|1-18およびVH1|1-02;VH3|3-33およびVH3|3-07;VK3|L16およびVK3|A27で、それぞれ0.0002;0.076および0.031のランダム相関確率を有し、粘度残基と相関している(図2)。この研究ではDおよびJ領域配列に対する粘度の相関を探したが、有意な相関は見出されなかった。
【0090】
図2は、粘度に対するランダム相関確率を示すp値を示す。図2はまた、高粘度サブタイプにおける残基、Ahoナンバリングにおける位置、および低粘度サブタイプにおける残基を示す。
【0091】
VH1サブタイプの14のIgG分子のうち、高粘度はVH1 1-18サブタイプと強く関連し、低粘度はVH1 1-01サブタイプと強く関連し、これがランダムな一致である可能性は非常に低かった(図9)。
【0092】
2つのサブタイプと粘度との間の相関を評価するために、スチューデントt検定による同じ母集団平均の確率を、VH1|1-02対VH1|1-18、VH3|3-33対VH3|3-07、およびVK3|L16対VK3|A27について、両側分布を有するt検定2標本等分散を用いて計算した。
【0093】
高粘度の軽鎖VK3|L16と低粘度のVK3|A27との関連(t検定、p=0.031)を検出した(図2図12、左側)。VK3|L16対VK3|A27およびVH3|3-33対VH3|3-07については、本明細書でさらに論じる。粘度との強い相関のために、VH1|1-18およびVH1|1-02を以下のようにさらに評価した。次の工程として、43の抗体鎖配列をアラインし、以下のように評価した。
【0094】
配列アラインメントおよびナンバリングシステム
以下を含むいくつかのIgGナンバリングシステムが存在する:
・EU--Edelman et al.(1969),“The covalent structure of an entire gamma immunoglobulin molecule,”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.63,78-85;
・Kabat--Kabat et al.(1991),Sequences of proteins of immunological interest,Fifth Edition.NIH Publication No.91-3242;
・Chothia--Chothia et al.(1992),“Structural repertoire of the human VH segments”,J.Mol.Biol.227:799-817;Tomlinson et al.,(1995),“The structural repertoire of the human V kappa domain.EMBO J.14:4628-4638;
・Aho--Hoenegger et al.(2001),“Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool,”J.Mol.Biol.309,657-670;
など。VH1サブタイプの重鎖のフレーム領域3について、上記の4つのナンバリングシステムを全て、図9の右側に示す。Ahoスキームは、異なる抗体の可変ドメインの400を超える結晶構造に由来するアミノ酸残基の空間位置を利用することによって構築された。3D構造をベースとしたナンバリングシステムであるため、A.Honegger(上記参照)によって定義されたAhoナンバリングシステムを、本研究では使用した。これは、特にCDR中の残基について有意性がある:同じ数の残基は類似の空間領域に位置し、異なるIgG配列にわたって同等である。Ahoナンバリングスキームにおける残基の位置は三次構造に関連するので、それらは生物物理学的および生化学的特性、そしておそらく粘度に、より関連しているはずである。本明細書のいくつかの表に示されるように、Ahoナンバリングは他の主要なナンバリングスキームとアラインし、相関関係がある。4つのナンバリングシステムのいずれも、好ましいアミノ酸置換を特定するために互換的に使用することができる。重鎖可変領域は、異なるナンバリングシステムで以下の残基で終わる:149 Aho、117 EU、113 Kabat、113 Chothia。軽鎖可変領域は、149 Aho、107 EU、107 Kabat、107 Chothiaで終わる。Ahoナンバリングは、KabatおよびChothia(例えば、KabatおよびChothiaでは82b)のように、CDR残基に文字を使用する代わりに、CDR領域により多くの数を割り当てる。その結果、同じ残基に対するAhoの数は、多くの場合、より大きくなる。各可変領域は、3つの相補性決定領域(CDR)および4つのフレームワーク領域(FR)を、以下の配列で含む:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。CDRは抗原に結合する目的で大きな配列多様性を提供するが(CDR3領域が最も高頻度で結合する)、FR配列はより保存され、わずかな差異のみを含み、そのうちのいくつかはサブタイプ特異的である。
【0095】
粘度に対する配列の相関
グローバル配列特徴を評価することに加えて、可変領域の配列をアラインして、粘度差の原因となる残基を明らかにした。視覚的観察に加えて、ソフトウェア機械学習アルゴリズムが開発され、粘度に最も影響を及ぼす残基を特定し、それらの配列から抗体の粘度値を予測するために適用された。予測モデルを、Ahoアライン位置の残基の電荷および疎水性を用いて構築した。
【0096】
重鎖VH1配列アラインメントならびに高粘度VH1 1-18サブタイプの5つの配列および低粘度VH1 1-02サブタイプ分子の5つの配列の評価は、フレームにおいて、2つのサブタイプ間でわずかに4つの残基のみが異なり、4つ全てがフレームワーク3に位置することを明らかにした(図9、右側)。CDRではより多くの配列の相違が観察されたが、CDRはしばしば抗原への結合に関与し、粘度を低下させる目的でCDRを操作する(残基を変異させる)ことは効力を失う危険性が大きいので、これらは研究の範囲外とした。サブタイプに関連した粘度とFR3の残基の差異は、Ahoナンバリングで以下のアミノ酸置換が粘度を潜在的に低下させ得ることを示した:T82R、T86I、R94SおよびS95R。ソフトウェアアルゴリズムは4つの置換を支持し、また、以下の2つの置換が粘度の低下と相関することを示唆した:軽鎖のFR1におけるG13V/Lおよび重鎖のCDR2の端からのS59R/K(後者の相間は、VH3サブタイプにおいて観察された)(図9、右側)。
【0097】
示唆されるアミノ酸置換のインシリコによる評価
VH T82R。R82はVH1-02で高頻度で生じる。IgG構造モデリングは、重鎖Aho位置82がグロブリンフォールドの上部コアの一部であり、通常、抗原と接触しないが、Ewertet al.(2003),“Biophysical properties of human antibody variable domains”,J.Mol.Biol.325:531-553によればCDR骨格と直接接触し得ることを示した。HC82は、CDR1およびCDR2骨格アミドとの非常に保存された主鎖-側鎖H結合相互作用を有する(Honegger et al.,supra)。R82はまた、CDR2ループの骨格酸素原子を調整し得る。
【0098】
VH R94SおよびS95R。S94およびR95は、VH1-02において高頻度で生じる。これらの位置は、抗原結合ドメインから離れた表面に位置し、下部コアの一部と考えられる。
【0099】
T86I。I86はVH1-02で高頻度で生じる。データは、表面の親水性残基(T)の疎水性残基(I)による置換を示唆し、これは潜在的に凝集をもたらし得る。
【0100】
VH S59R/K-VH1およびVH3では、親水性の59位がより低い粘度と関連する。VH S59R/K位は、高い構造および配列の変動性を有し、相当に溶媒に曝露され、残基58と60との間に直接存在し、これらは上部コアの一部であり、結合に影響を及ぼし得る。構造は、残基58および60(特に、それが埋め込まれている場合には58)の違いに直接依存する可能性が高い。R/K59の出現頻度は低く(2%未満)、アミノ酸残基頻度分析によると、VH1では観察されなかった。全てのR/K59は、1つ(VH4)を除いて、VH3データセット内にある。
【0101】
VL G13V/L-この位置は構造的に埋め込まれており、上記のEwert et al.によれば、可変ドメインの下部コアの一部である。この観点から、より疎水性の高い残基へのG13V変異は、コアをより強くするはずである。
【0102】
要約すると、インシリコによる配列分析は、提案された変異が、さらなるグリコシル化部位、または生理的もしくは穏やかな酸性製剤化条件(NG、NS、NT、DG、DH)下で急速な分解を受けやすい部位を導入しないことを示した。VH T82R、T86I、R94SおよびS95R変異は、フレーム領域3においてサブタイプVH1-18からVH1-02へのスイッチを提供し、したがって、それらは、いかなる普通ではない、もしくは稀なモチーフを導入することはない。VH S59RおよびVL G13V変異の追加は、VH1以外のVH3サブタイプからのソフトウェアによって示唆された。HC CDR2の端にあるS59Rを除いて、変異部位のどれも結合領域の近くに位置せず、したがって、効力/結合を妨げるリスクは低い。アルギニンは、59位において非常に低い頻度の残基(R59)であるので、その影響の予測は困難である。T86Iは、凝集のリスクが高いと確認され、変異のリストから除去した。
【0103】
生成された変異体およびそれらの発現、効力、化学修飾、グリコシル化および粘度。
上記の考察を考慮して、いくつかの変異体を、効力を維持しながら粘度を低下させることを目的として、高粘度VH1-18サブタイプの2つのIgG2抗体AKおよびAOについて生成した(図9B)。図9Bは、モノクローナル抗体変異体記号ならびに重鎖および軽鎖上の関連する変異を含む。
【0104】
S59R置換を含む2つのAK変異体では、非常に低い発現レベルが観察された(図3に*で印を付した)。生存率および生細胞密度もまた、それらの1つ、AK(59 82 94 95 13)では低かった。一方、S59R置換を含む抗体AO変異体は、AO親分子の力価に匹敵する力価を生じた。統計は重鎖59位について一般的な結論を下すのに十分ではなかったが、この例は、単一のアミノ酸置換が発現を劇的に変化させ得ることを示唆した。酸化、脱アミド化、異性化およびグリコシル化パターンを含む化学修飾は、ペプチドマッピングLC-MS分析によって測定されるように、2つの親およびそれらの変異体の間で類似していた。
【0105】
親AK抗体および2つの十分に発現した変異体の効力値は、PCSK9への結合によって測定され、類似していた(図4)。最後に、AKおよびAO変異体の粘度の測定値は、予測されたように、親よりも有意に低かった(図5)。例えば、AK(82 94 95)変異体は、親の粘度のわずか39%であった。S59R置換を含む2つのAO変異体の粘度は、親の粘度の約28%で、さらに低かった(図5)。S59R変異体は、AK抗体では十分に発現せず、粘度を測定することはできなかった。比較のために、VH1|1-18およびVH1|1-02生殖系列サブファミリーの平均粘度値を加えた。VH1|1-18サブファミリーとVH1|1-02サブファミリーとの間で、CDRの8およびフレーム領域の4を含む、合計12の一貫した配列差異が確認された(図9)。高粘度VH1|1-18から低粘度VH1|1-02へのアミノ酸置換のために、3つの部位(全てフレーム領域3にある)を選択した。フレーム中の3点の変異を、VH1|1-18サブファミリーの2つのmAb(AKおよびAO)に導入して、これらの残基のみをVH1|1-02に存在する残基に変換した。可能な2倍の粘度低下を達成する機会は理論的に低い(3/12)が、これらの置換はむしろ予想外に望ましい結果をもたらし、わずか3つの置換で、両方の抗体分子において、粘度は約2倍低下した。
【0106】
粘度対pI
pIに対する粘度の依存性が43mAbの全セットからは明らかではなかったが、VH1サブセットは、mAbのpI値が、pH5.2の製剤中、pI8.5からpI6.5に低下すると、粘度が着実に増加することを明らかに示した(図6)。高粘度VH1|1-18 mAbと低粘度VH1|1-02 mAbとの間のシフトも見られる。予測されたように、AKおよびAO抗体のT82R、R94SおよびS95R変異体は、プロット上のVH1|1-18領域からVH1|1-02領域まで粘度スケールに沿って約2倍下方に移動した(図6)。変異体AO(59 82 94 95)およびAO(59 82 94 95 13)はさらに低い粘度およびわずかに高いpIに移動し、これは、VH1群外から採用されたS59R置換が粘度をさらに低下させるのに有効であったことを示している。残念ながら、R59を含むAK変異体は十分に発現されず、59位の低頻度アルギニン残基の出現が発現に影響を及ぼし得ることを示唆した。
【0107】
pH<pIの製剤(例えば、この研究で使用される穏やかな酸性製剤)における抗体のpIの増加は、一般的には粘度の減少をもたらす。この結果は、正に荷電した抗体分子のコロンビウムの反発力によって説明することができる。抗体などのタンパク質は低い溶解性および高い沈殿性を示し、これは高濃度で粘度に影響を及ぼすことが知られている。フレーム領域3におけるVH1|1-18からVH1|1-02への置換が粘度の2倍の減少および抗体pI値のわずかな増加をもたらしたことは興味深く、電荷の増加ではなく、むしろいくつかの構造的変化が、粘度の劇的な減少の原因であり得ることを示唆している。
【0108】
数百のFabドメインの結晶構造を重ね合わせた後、全てのVHおよびVL位置について水素結合相互作用を確認した(Honegger et al.(2001)、“Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool”,J.Mol.Biol.309:657-670)。データは、確認された位置が主鎖および側鎖水素結合相互作用(III型AKおよびAO抗体分子について)によって他の残基に結合し得ることを示す。例えば、いくつかのVH III型免疫グロブリン構造では94が77に結合し、95が18に、59が67、66、65、61、60に、VL13が146、148に結合した。したがって、これらの位置での残基置換は、相互作用および免疫グロブリンフォールドを変化させ得る。AK抗体の結晶構造(Jackson et al.,2007),“The Crystal Structure of PCSK9:a Regulator of Plasma LDL-Cholesterol”、Structure15:545-52)は、3つの位置82、94および95の全てがFab領域のまさに周辺にあり、溶媒および他の抗体分子に曝露されていることを示唆する。VH3(図11)およびVK3(図12)のFR3の位置における変化もまた粘度と相関する。粘度におけるそれらの役割の1つの説明は、FR3におけるこれらの位置が分子の周辺にあり、注入針内の運動と粘度測定に関連する剪断応力の間の分子間相互作用に積極的に関与することである。
【0109】
より低い粘度VK3|A27およびより高い粘度VK3|L16抗体は、粘度とpIとの間の逆相関を示した(図8図12)。
【0110】
pIはあまり強くないが、場合によっては粘度の有用な予測因子であることに言及する必要がある。一般に、粘度はpIの増加と共に減少し、pIは考慮されるべきである。例えば、VH3|3-33の粘度値はより低くなり、より高いpI抗体分子では、VH3|3-07と同様になる(図7)。したがって、VH3|3-33の粘度を予測する場合、pIを考慮すべきである。
【0111】
VH3およびVK3の生殖系列ファミリーのために提案された粘度低下
高粘度VH3|3-33および低粘度VH3|3-07抗体は平均すると、粘度に大きな差があるが、類似のpI範囲を占める(図7)。予想外に、平均すると、VH3|3-07はより低い粘度を有し、またより低いpIを有し、これは、文献に報告された一般的な挙動と矛盾する。以下のVH3|3-33分子の粘度値は、変異によって低下させることができる:AQ、AM、AI、AG。
【0112】
高粘度VK3|L16および低粘度VK3|A27軽鎖を有するモノクローナル抗体もまた、大きな粘度差を示したが、pI値は比較的小さな差を示し、これもまた、サブファミリー間の構造的差異を示唆した(図8)。以下のVK3|L16分子の粘度値は、図11に記載の変異によって低下させることができる:抗体AQおよびAF。
【0113】
グローバル配列特徴の分析は、以下の高/低粘度対を明らかにした:VH1|1-18/VH1|1-02;VK3|L16/VK3|A27;およびVH3|3-33/VH3|3-07で、それぞれ0.0002;0.031および0.076の相関のp値を有する(図2)。粘度差に相関する配列位置および残基を特定し、粘度低下点変異の候補とみなすことができる(図2)。粘度に対するVHおよびVLファミリーの上記で実施された相関は、理論的には以下のVHおよびVLの組み合わせを有する抗体が最低の粘度を有することを示す(図13AおよびB):VHではVH2、VH3|3-07、VH1|1-02、およびVLではVK3、VL1、VK3|A27。VH1|1-02およびVK3|A27の構造の3つの抗体が実際に、本発明者らのセットにおいて生じ、そしてそれらは、実際、低い粘度値を示した:B(5.6cP)、J(8.2cP)、Y(12.1cP)。
【0114】
化学架橋の研究
高タンパク質濃度での化学架橋を用いて、粘性抗体溶液中の潜在的なタンパク質-タンパク質相互作用の広範な調査を試みた。化学架橋は、タンパク質の特定の部分が互いに相互作用することを実証するために使用される古典的な生化学的技術である。本明細書では、高濃度粘性抗体溶液中の潜在的なタンパク質‐タンパク質相互作用を明らかにするためのゼロレングス化学架橋試薬の使用について記載する。粘性および非粘性抗体の化学架橋結果を用いて、溶液中の潜在的なタンパク質-タンパク質相互作用のモデルを構築する。
【0115】
EDCによる化学架橋は、共通の化学的に架橋可能なオリゴマー分布の存在を明らかにする。オリゴマーパターンを生じる化学架橋は驚くべきことに、分子間ではなく、むしろ分子内架橋である。Fcの頂部とFabの底部との間の分子内架橋は、Fc-Fc媒介抗体オリゴマーの形成に有利であり得る抗体の立体構造を生じる。1HZH抗体結晶構造は、IgG1六量体を形成するのに重要なFc-Fc相互作用を促進するために、Fcドメインに対してピン止めされた1つのFabアームを有する不斉単位中に抗体六量体を含有する。この立体構造の外観がタンパク質結晶中の六量体の形成に重要であるかどうかはわからない。Fab-Fc分子内化学架橋が存在すると、溶液中で六量体を形成する傾向が増大することは、Fcにピン止めされたFabアームによってFc-Fcベースの抗体オリゴマーを形成する傾向が増大し得ることを示唆する。
【0116】
Fc-Fc相互作用の低下が溶液粘度を低下させ得る
科学文献には、Clq1およびCDC活性との相互作用に関連する抗体の六量体形成に関する研究が含まれる。Diebolderらは、K439EおよびS440Kを含む特定のFc点変異を有する抗CD20抗体がCDC活性を阻害するが、関連するK439E/S440K二重変異体がCDC活性を回復させることを見出した。また、I253A変異はCDC活性を低下させた。Diebolder et al.(2014),“Complement is Activated by IgG Hexamers Assembled at the Cell Surface”,Science 343:1260-3。Diebolderらは、それらが開示する変異体を抗体粘度に対する効果と関連させなかった。同様に、van den Bremerら(2015)は、抗体のC末端の荷電残基が、IgG六量体構造を形成する能力の低下により、Clq1相互作用を低下させ得ることを見出した。著者らは、IgGのC末端に荷電残基が存在することを抗体溶液の粘度に影響することに関連付けなかった。
【0117】
粘性抗体溶液中の抗体の六量体の観察は、抗体六量体結晶構造中に存在するFc-Fc相互作用、およびClq1(補体)の補充前に形成されると考えられる構造が化学架橋剤EDCの非存在下で粘性抗体溶液中に存在するであろうことを示唆した。Fc-Fc相互作用が溶液粘度に寄与し得るかどうかを試験するために、Diebolderらによって行われた研究に基づくFc変異体をAmgenで作製した。次いで、これらの材料を、コーンプレートレオロジーによって抗PCSK9製剤緩衝液中で評価した。親抗PCSK9抗体AKおよびFc変異抗PCSK9抗体の比較は、Fcに対するFcの親和性の低下が抗体の溶液粘度を低下させることを示した。点変異体はFcRn結合能を保持し、生物活性に変化はなかった。野生型補体活性を回復させた二重変異体の野生型粘度に戻る能力は、Fc-Fc相互作用の能力が野生型レベルに回復する場合、粘度の減少が逆転し得ることを示す。溶液粘度を増加させるFc-Fc媒介オリゴマー種の観察と合わせて、抗体溶液粘度に寄与する共通のFc媒介タンパク質-タンパク質相互作用が存在する。DiebolderらによってCDC活性を低下させるものとして確認され、この研究において粘度について試験された5つの変異、S440K、I253A、K439E、H433A、N434Aのうち、最初の2つのみが高濃度抗PCSK9製剤において粘度の低下を示したが、K439E、H433AおよびN343Aは高濃度抗PCSK9製剤において粘度を低下させず、直接相関が存在せず、当業者がDiebolderらによって提供される情報からより低い粘度を正確には予測できないことを示すことに留意する必要がある。K439E変異体はまた、高タンパク質濃度スクロース製剤において評価され、同じ濃度で親抗PCSK9変異体よりも粘性が低いことが見出された。抗PCSK9製剤中のアルギニンの存在は、Fc-Fc相互作用を減少させるためにK439E変異体に導入された負の電荷の有効性を減少させ得る電荷スクリーニングに寄与した可能性がある。H433AおよびN434A変異体は、K439E変異体のような明白な電荷スクリーニング感受性を有さない。
【0118】
Fc-Fc相互作用は、2つの潜在的な方法で可能な潜在的相互作用の数を増加させることによって、溶液粘度に影響を及ぼし得る。それは、1抗体当たりの相互作用の数を、1抗体当たり2つのCDR媒介相互作用から、1抗体当たり、2つのCDR媒介相互作用+2つのFc媒介相互作用へと増加させることができる、または溶液中に存在するオリゴマー中で利用可能な遊離CDR末端の数を変化させることができる。IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4抗体のFcドメインが非常に類似しているという事実を考慮すると、Fc-Fc媒介相互作用が全ての抗体に存在する可能性が高い。非粘性抗体の分析は、Fc-Fc相互作用の存在を示す分子内架橋が、同じ濃度の粘性抗体とは対照的に、存在しないことを示す。これはFc-Fc相互作用が、理論的には可能であるが、非粘性抗体には存在しないことを示唆する。CDRの次の最も近い隣接相互作用は、Fc-Fc相互作用を増強するために、Fc間の相対距離および相対配向に影響を及ぼし得る。これは、粘性抗体が室温でFc-Fc相互作用を有する一方、非粘性抗体は有さない理由を説明し得る。
【0119】
Fc-Fc相互作用の存在はまた、抗体のオリゴマー(二量体、三量体、四量体など)が最大数の遊離CDR末端を含む可能性を高める。遊離CDR末端の数が多いほど、CDRの次の最も近い隣接相互作用の数が増加する。これは、次に、より効率的な「パーコレーション」の結果として、ネットワーク形成傾向を増大させ、溶液粘度を上昇させ得る。
【0120】
粘度を低下させるC末端修飾
抗体C末端の特定の修飾は、C1q結合および補体依存性細胞障害(CDC)を妨害する。Van den Bremer et al.(2015),“Human IgG is produced in a pro-form that requires clipping of C-terminal lysines for maximal complement activation”,mAbs 7(4):672-80。著者らは、C末端リシンおよびC末端グルタミン酸がClq1と最も効率的に相互作用することができる抗体の六量体をもたらすFc-Fc相互作用の傾向を低下させる可能性があることを見出した。著者らは、C末端にPGKP(配列番号381)、PGKKP(配列番号382)、PGKKKP(配列番号383)、およびPGEを有するCD20抗体およびCD38抗体の変異体を構築した。彼らは、これらの変異体がCDC活性を有意に低下させたか、または完全に失ったことを見出した。したがって、著者らが以前にCDC活性と相関したとした六量体化を変異が遮断したと結論付けることができる。六量体化と粘度との現在の相関を考慮すると、このような変異はまた、抗原結合タンパク質の粘度を低下させるはずである。したがって、C末端に正電荷アミノ酸または負電荷アミノ酸を配置することは、それが存在するC末端アミノ酸の付加であろうと置換であろうと、抗原結合タンパク質の粘度を低下させると結論付けることは妥当である。
【0121】
薬物動態パラメータを改善する配列改変
本発明はまた、粘度を低下させ得る変異を有する抗原結合タンパク質の薬物動態学的特性の改善の発見を含む。特に、S440K変異が、Tmax(最大濃度が観察された投与後の時間)およびCmax(投与後に測定された最大観察濃度)の両方を改善することが見出された。任意選択的に他の変異を有する、S440Kを有する抗体AKの変異体は、変異体および親抗体を同じ濃度で皮下注射した後、Tmaxが親抗体AKの半分超減少したことが見出された。このような変異体はまた、変異体および親抗体の皮下注射後、28%または42%高いCmaxを有することが見出された。図22を参照されたい。
【0122】
核酸、ベクター、宿主細胞
本発明はまた、例えば、本明細書中に開示される二重特異性抗体の、軽鎖、軽鎖可変領域、軽鎖定常領域、重鎖、重鎖可変領域、重鎖定常領域、リンカー、ならびにこれらのいくつかおよび全ての成分、および組み合わせを含む、本発明の二重特異性抗体をコードする単離された核酸を含む。本発明の核酸には、本発明の核酸に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%の相同性を有する核酸が含まれる。特定の配列を指す場合、用語「類似性パーセント」、「同一性パーセント」および「相同性パーセント」は、University of Wisconsin GCG(登録商標)ソフトウェアプログラムに記載されるように使用される。本発明の核酸はまた、相補的核酸を含む。いくつかの例では、配列は、アラインすると、完全に相補的(ミスマッチなし)である。他の例では、配列中に約20%までのミスマッチが存在し得る。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の抗体の重鎖および軽鎖の両方をコードする核酸が提供される。
【0123】
本発明の核酸はベクター、例えば、プラスミド、コスミド、バクミド、ファージ、人工染色体(BAC、YAC)またはウイルスにクローニングすることができ、このベクターには、別の遺伝子配列またはエレメント(DNAまたはRNA)を、結合した配列またはエレメントの複製をもたらすように挿入することができる。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、構成的に活性なプロモーター断片(以下に限定されないが、CMV、SV40、伸長因子またはLTR配列など)、またはステロイド誘導性pINDベクター(Invitrogen)などの誘導性プロモーター配列を含有し、この核酸の発現は調節することができる。本発明の発現ベクターは、調節配列、例えば、内部リボソーム侵入部位をさらに含み得る。発現ベクターは、例えばトランスフェクションによって細胞に導入することができる。
【0124】
別の実施形態では、本発明は、以下の作動可能に連結されたエレメント;転写プロモーター;本発明の二重特異性抗原結合タンパク質、抗体または抗原結合フラグメントの重鎖をコードする第1の核酸分子;本発明の二重特異性抗原結合タンパク質、抗体または抗原結合フラグメントの軽鎖をコードする第2の核酸分子;および転写ターミネーターを含む発現ベクターを提供する。別の実施形態では、本発明は、以下の作動可能に連結されたエレメント;第1の転写プロモーター;本発明の二重特異性抗原結合タンパク質、抗体または抗原結合フラグメントの重鎖をコードする第1の核酸分子;第1の転写ターミネーター;第2の転写プロモーター;本発明の二重特異性抗原結合タンパク質、抗体または抗原結合フラグメントの軽鎖をコードする第2の核酸分子;および第2の転写ターミネーターを含む発現ベクターを提供する。
【0125】
目的のコード配列に作動可能に連結された分泌シグナルペプチド配列もまた、任意選択的に、発現ベクターによってコードされ得、その結果、所望するなら細胞から目的ポリペプチドがより容易に単離されるように、組換え宿主細胞に発現ポリペプチドを分泌させることができる。
【0126】
このようなベクターを含み、重鎖および軽鎖を発現する組換え宿主細胞もまた提供される。
【0127】
精製
抗体の精製方法は当該技術分野で知られており、本発明の抗体および二重特異性抗体の生成と共に使用され得る。本発明のいくつかの実施形態では、抗体精製の方法に、濾過、アフィニティカラムクロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、および濃縮が含まれる。濾過工程は、好ましくは限外濾過、より好ましくは限外濾過および透析濾過を含む。濾過は、好ましくは少なくとも約5~50回、より好ましくは10~30回、最も好ましくは14~27回行われる。アフィニティカラムクロマトグラフィは、例えば、PROSEP(登録商標)アフィニティクロマトグラフィ(Millipore、Billerica、MA)を用いて行うことができる。好ましい実施形態では、アフィニティクロマトグラフィ工程は、PROSEP(登録商標)-vAカラムクロマトグラフィを含む。溶出液は、溶媒洗剤中で洗浄することができる。陽イオン交換クロマトグラフィには、例えば、SP-セファロース陽イオン交換クロマトグラフィが含まれ得る。陰イオン交換クロマトグラフィには、例えば、Q-セファロースファストフロー陰イオン交換が含まれ得るが、これに限定されない。陰イオン交換工程は好ましくは非結合であり、これによりDNAおよびBSAを含む汚染物質を除去することができる。抗体産物は、好ましくは、例えば、Pall DV 20ナノフィルターを用いてナノ濾過される。抗体産物は、例えば、限外濾過および透析濾過によって濃縮することができる。この方法は、凝集体を除去するために、サイズ排除クロマトグラフィの工程をさらに含むことができる。精製のさらなるパラメータは、以下の実施例に記載されている。
【0128】
二重特異性抗体、抗体または抗原結合フラグメントはまた、当該技術分野で知られている他の方法、例えば、抗体および抗体フラグメントの化学的結合によって生成し得る。
【0129】
本明細書に引用される各原稿、研究論文、総説、要約、特許出願、特許または他の刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0130】
本発明を以下の実施例によってさらに明らかにするが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0131】
実施例1
Fab変異
材料
異なる標的および異なる配列を有する43個のヒトおよびヒト化組換えモノクローナル抗体分子のセットを、標準的な手順に従って作製し、精製した(図1Aおよび1B)。サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)により>98%の同等の純度を有するセットを回収した。試料を、Amicon Ultrafiltration Stirred Cell Model 8003(Millipore、Billerica、MA)を用いて、2~8℃、30±10psiの最大圧力で、3mLの最大圧力で濃縮した。それらを、20mM酢酸塩、9%スクロース(ポリソルベートなし)を含有するpH5.2の製剤緩衝液中で、おおよその体積減少に従って150mg/mLまで濃縮し、280nmでのタンパク質の吸光度(0.1~1吸光度単位(AU)以内になるまで希釈した後)およびタンパク質特異的吸光係数を用いて最終濃度を決定した(±10%)。
【0132】
同様の標準手順に従って、2つのmAbのいくつかの低粘度変異体を作製し、精製し、製剤化した。それらには、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型に対する抗体(PCSK9、抗体AK)およびマクロファージコロニー刺激因子に対する抗体(M-CSF、AO)が含まれた。
【0133】
粘度測定
粘度分析を、CP-40スピンドルおよび試料カップを使用して、Brookfield LV-DVIIIコーンプレート機器(Brookfield Engineering、Middleboro、MA、USA)で行った。測定は全て25℃で行い、試料カップに取り付けた水浴によって制御した。スピンドルのRPMを増加させることによって、規定のトルク範囲(10~90%)内で手作業により、多数の粘度測定値を収集した。得られた比較チャートの簡略化のため、1試料当たり1つの粘度値を報告するために測定値を平均した。
【0134】
配列アラインメント
構造に基づく配列アラインメントを、Zuerich UniversityのDepartment of BiochemistryからダウンロードしたExcel Macroを用いて開発したAb Initioソフトウェアツールによって行った。
【0135】
実施例2
Fc変異
変異体の発現および精製
材料および方法
・抗C-キット抗体(抗体BA、配列番号174および176、それぞれ配列番号173および175の核酸によってコードされる)、抗スクレロスチン抗体AH、および抗PCSK9抗体AK
・抗ストレプトアビジンIgG1およびIgG2。
・1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)
・n-メチル-2-ピロリドンによる可溶化
・光散乱(LS)によるサイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SE-HPLC)
・還元およびアルキル化逆相高速液体クロマトグラフィ(RA RP-HPLC)
・エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)によるトリプシンペプチドマップ
・コーンプレート型粘度計
【0136】
結果
高濃度モノクローナル抗体溶液のEDC架橋のSE‐HPLCは、オリゴマーを形成する傾向を示す
化合物1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いて、抗体中の酸性残基を抗体中の第一級アミン(N末端および/またはLys残基)に化学架橋し、タンパク質-タンパク質相互作用の領域を決定するために他の研究で用いられている。カルボキシル基の第一級アミンへの近接は、アミド結合が2つの基の間に形成されるので重要である(図16)。形成される架橋は、おそらく溶液中に存在する塩橋である。Carraway and Koshland,Jr.(1972).”Carbodiimide modification of proteins”.Methods Enzymol 25:616-623。抗体パネルを、同一の溶液条件下、EDCで化学架橋した。過去のレオロジー研究では、パネル中の抗体のいくつかは粘性であり、いくつかは粘性でないことがわかった(図17)。非粘性抗体は二量体含量がわずかに増加したが、より高次のものを大量には含まなかった。対照的に、粘性抗体は、大量の二量体ならびにより高次のオリゴマーを含有した。図17に概要を示す。粘性であると確認された抗体は全て、二量体よりも大きいと思われるEDC架橋種を含有した。より大きなオリゴマー種の出現は、濃度に依存する(抗体AHを一例として図18に示す)。さらなる分析を容易にするために、化学架橋条件を変更して、架橋反応を完了させた。200mg/mLで化学架橋した後、溶液は固体になった。固体を緩衝液または緩衝3%NMP溶液で再可溶化した。両試料のSE-HPLC分析は、試料が類似していることを示した。緩衝3%NMP溶液は、より多くの物質が溶液になるにつれて、タンパク質を有意により速く可溶化した。抗体AHを再可溶化し、実施例としてさらに分析した。
【0137】
オンラインLSを用いたSE-HPLCによるサイズ分析
架橋した抗体の溶液を、オンライン光散乱を用いたSE-HPLCによって分析して、溶出種のサイズを決定した。SE-HPLCは、EDC化学架橋および3%NMPでの再可溶化の後、抗体AHのオンライン光散乱分析を用いて行った。SE-HPLCは、UVおよびRIに存在する3つのピークを示した。第1のピークは、840.5kDの質量を有する種として特定された。これは、873.2kDの抗体AHの六量体について予想される質量に近い。別の種は494.6kDの質量を有し、これは、抗体AHの三量体について予測された436.6kDの質量に近い。第3の種は139.9kDの質量を有し、これは、抗体AHの単量体について予測された145.5kDの質量に近い。
【0138】
EDC架橋抗体AHの還元およびアルキル化逆相HPLC
架橋抗体溶液を、還元およびアルキル化逆相高速液体クロマトグラフィによって分析した。軽鎖(LC)および重鎖(HC)の両方の大部分の回収は、HCまたはLCが互いに架橋されて、SEC分析によって観察された架橋オリゴマーを反映する非天然LC-HCペプチドまたは非天然LC-LCまたはHC-HCペプチドを形成すると推定されたので、予想外であった。抗体AHの場合、LCは、非架橋抗体AH LCと全く同じ質量で同じ場所に溶出した。抗体AH中のHCには濃度依存性の変化があった。確認された質量が100kDの少量のHC-HC架橋物質(約33分で溶出、図21)が存在する。150mg/mLおよび200mg/mLでは、HC種の分布は類似している。より低いタンパク質濃度では、分布が約28.5分で溶出するより多くの種を含む。HC種の分布は、最大量の六量体を含有する200mg/mLサンプルおよび非常に少ないオリゴマーを含有する10mg/mLサンプルを用いてSECによって分析されるように、各サンプル中に存在するオリゴマーの量と相関する。このパターンは、他の粘性抗体溶液において観察された。
【0139】
実施例3
抗PCSK9親抗体AKおよび低粘度変異体の薬物動態および薬力学(PKPD)の非ヒト霊長類による研究
材料:抗体AKおよびその変異体。重鎖中の全ての変異。
【0140】
Fab変異体:T82(72)R、R94(84)S、S95(85)R;Ahoナンバリング(実際のナンバリング)
【0141】
Fc変異体S(434)K(EUナンバリングではS440K):
【0142】
二重変異体:T82(72)R、R94(84)S、S95(85)R;S(434)K:
【0143】
4匹の雄カニクイザルの4群を本研究に使用した。各群は、以下のように、10mg/kgの1回の皮下(SC)投与を受けた。第1群は親抗体AK(140mg/ml)を受け;第2群はFab変異体(210mg/ml)を受け;第3群はFc変異体(210mg/ml)を受け;第4群はFab/Fc変異体(210mg/ml)を受けた。第1群および第2群はまた、希釈剤対照のSC投与を有した。Fab変異体は、次の位置での置換、T82(72)R、R94(84)S、S95(85)Rを含んだ。Fc変異体は、S(434)Kの位置での置換を含んだ。
【0144】
210mg/mlでの粘度を測定するために、親および全ての変異体を、10mMの酢酸塩、155mMのN-アセチルアルギニン(NAR)、70mMのArgHCl、pH5.4、0.01%のポリソルベート80中に210mg/mlで配合した。粘度は、ARG2コーン/プレートを用いて1000秒-1および25Cで測定した。図15を参照されたい。
【0145】
試験デザインの概要:
4匹の雄カニクイザルの4群
・各群は、以下のような1回のSC投与(10mg/kg)を受けた:
第1群:親抗体AK(140mg/ml)
第2群:Fab変異体(210mg/ml)
第3群:Fc変異体(210mg/ml)
第4群:Fab/Fc変異体(210mg/ml)
・第1群および第2群はまた、希釈剤対照のSC投与を有した
・投与3日後に注射部位の皮膚生検を実施
・病理組織学的分析の実施
・血漿LDL、HDL、総コレステロールおよびPKを投与後6週間追跡
【0146】
試験の結論
4つのホモログは全て、顕著なLDL低下を生じた
・投与2週間後、最大の減少:親での以前の観察より1週間遅い
・効果の底はFab/Fc変異体でさほど深くなかった(約78%対約90%)
・ベースラインへの戻りは、Fc変異体でわずかにより加速されているようである
・PK:平均暴露量(CmaxおよびAUClastに基づく)は全ての処置群間で同程度であった(1.4倍以内)。
・抗PCSK9抗体AKにおけるFabおよび/またはFcの変異は、非ヒト霊長類(NHP)(カニクイザル)の注射部位反応(ISR)または薬物動態および薬力学(PKPD)プロファイルに有意な影響を及ぼさなかった。
Fab変異体:T82(72)R、R94(84)S、S95(85)R;Ahoナンバリング(実際のナンバリング)。
Fc変異体:S(434)K(EUナンバリングではS440K)。
【0147】
実施例4
GIPR(2G10.006)抗体AQの低粘度変異体の作製と特徴付け
抗体AQの低粘度変異体のクローニング、発現、精製および高濃度製剤
GIPR(2G10.006)AQ親は、米国仮特許出願第62/387,486号明細書に、2G10_LC1.006(引用特許出願の配列番号74)として記載されている。前述の米国特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。変異部位Q1(1)E、R17(16)G、S85(75)Aを有する重鎖変異体AQ(HC 1、17、85)、および変異部位M4(4)L、V13(13)L、A76(60)D、S95(77)R、Q97(79)E、S98(80)Pを有する軽鎖変異体AQ(LC 4 13 76 95 97 98)を以下のように作製した。GIPR(2G10.006)(抗体AQ)低粘度変異体の合成遺伝子を作製し、消化し、プラスミド発現ベクターにライゲートした。コンストラクトをDNAシークエンシングによって確認した。安定な細胞プールを、クローンCHO宿主細胞株のエレクトロポレーションによって作製した。プールを、生存率が85%を超えるまで選択下で培養した。プールを流加生産培養に10日間播種し、遠心分離した培地を回収した。
【0148】
回収した上清を滅菌濾過し、先に記載した方法と同様の、プロテインA、陽イオン交換、および陰イオン交換からなる3カラムクロマトグラフィによって精製した(Shukla et al.(2007),“Downstream processing of monoclonal antibodies―Application of platform approaches”,J.Chrom.B 848:28-39)。得られた精製プールを、20mM酢酸塩および9%スクロースを含有するpH5.2の製剤緩衝液(ポリソルベートなし)中に透析し、約5.2の最終pHを達成し、遠心限外濾過によって30kDaカットオフフィルター上で約150mg/mLに濃縮した(図20A)。
【0149】
効力の測定
グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド受容体(GIPR)を発現する哺乳動物細胞293/huGIPRを利用するアッセイによって、効力を測定した。抗GIPR親AQおよび低粘度変異体の濃度の増加は、アッセイ中にモニターしたcAMP変化を誘導するGIPとGIPRとの相互作用を遮断した。アッセイの適用は、Tseng C.C.et al.(1996),“Postprandial stimulation of insulin release by glucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP).Effect of a specific glucose-dependent insulinotropic polypeptide receptor antagonist in the rat”,J.Clin..Invest.98:2440-2445に先に記載された。
【0150】
粘度の測定
AQおよび2つの低粘度変異体の粘度分析を、CP25-1/TGスピンドルを用いてAnton Paarレオメーターで行った。測定は全て25℃で行い、試料カップに取り付けた水浴によって制御した。粘度の測定を、0から2000rpmへ剪断速度を増加させながら手動で収集した。剪断速度1000 1/sでの10個の粘度測定結果および剪断速度2000 1/sでの10個の粘度測定結果を各試料について収集し、平均して、1試料当たり1つの粘度値を報告した。
【0151】
粘度測定は、粘度計の状態、室内の温度、および測定時の他のいくつかの小さいパラメータなどのいくつかのパラメータのわずかな変化にも敏感であるので、粘度測定の精度が正確度よりはるかに良好であることに留意する必要がある。したがって、1つの設定で全ての目的の試料を測定すること、または目的の試料を2つの設定で測定する場合、2つの設定で同じ参照標準を有することが重要である。
【0152】
結果
抗GIPR(2G10.006)抗体AQは、重鎖VH3|3-33および軽鎖VK3|L16の高粘度生殖系列サブファミリーに属する。図11および12に由来するいくつかの変異を、AQの粘度を低下させるためにインフレームで作製した。1つの粘度計設定で測定した親AQおよび2つの変異体の粘度は、以下の値を示した:AQ-19.1cP、AQ(HC 1、17、85)-15.8cP、AQ(LC 4 13 76 95 97 98)-12.7cP(図20)。親AQに対して、重鎖変異体AQ(HC 1、17、85)変異体は83%であり、軽鎖変異体AQ(LC 4 13 76 95 97 98)は67%であった。図7および8は、VH3およびVK3ファミリーメンバーについての粘度対pIプロット上の変異体の位置を示す。インビトロcAMP活性は、粘度変異によっても同様に影響を受けなかった。効力は、インビトロ細胞ベースのアッセイの許容誤差内で同じままであった(図20Bを参照されたい)。要約すると、導入された変異は、効力を失うことなく粘度を低下させた。
【0153】
実施例5
GIPR低粘度変異軽鎖V78F(AhoナンバリングではLC V78F、リニアナンバリングではLC V62F)
GIPR(2G10.006)抗体AQは、A52Su製剤中150mg/mLで23cPの高粘度を示した。この抗体は、カッパ軽鎖における、低頻度残基V78(Ahoナンバリングで)(リニアナンバリングでV62)を特徴とした(LC V78 Aho)。カッパ生殖系列に関連する軽鎖配列では、V78の発生頻度は<1%であるが、F78は>98%である。残基LC V78は、共分散から逸脱しているため注目を集めた。共分散分析は、抗体の可変領域における残基の生理化学的特性に基づいて、ペアワイズ保存残基位置を確立することを可能にし、不正確に配置された残基(多くの場合、非生殖系列残基である)を特定する。共分散分析はさらに、分子動力学シミュレーションによって明らかにされた大きな立体構造の変化をもたらす、より一般的な生殖系列配列で、逸脱した位置のアミノ酸を置換することを示唆し得る(Kannan G.,”Method of correlated mutational analysis to improve therapeutic antibodies”、米国特許出願第61/451929号明細書、国際出願PCT/US2012/028596号明細書、国際公開第2012/125495号パンフレット)。共分散逸脱を排除し、ヒト配列の割合を増加させるために、LC V78F変異をGIPR(2G10.006)抗体AQに導入した。
【0154】
予期しなかったことに、変異体の粘度は25%低下したが、cAMP(細胞ベース)アッセイでの測定で、同様のヒトGIPRに対する効力を維持した。GIPR(2G10.006)AQ親およびそのLC V78F変異体の両方の配列が、米国仮特許出願第62/387,486号明細書に、それぞれ2G10_LC1.006(引用された出願の配列番号74)および2G10_LC1.003(引用された出願の配列番号71)として記載されている。この米国特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明において新たに発見されたのは、LC V78F変異によるこのような置換が粘度の約25%の低下をもたらしたことである。GIPR_2G10.006AQおよびそのV78F変異体の粘度分析を、20mMの酢酸塩、9%のスクロース、0.01%のポリソルベート80を含有するpH5.2の製剤中、1000の剪断速度および25Cで、TA Instruments-Waters LLC製のAR-G2磁気ベアリングコーンプレート型レオメーターを用いて150mg/mlで行った。コーンプレートサイズは、直径20mm、コーン角1.988°であり、スチール-990918ペルチェプレートを備え、フロースイープ手順を使用して操作した。測定された粘度値は、GIPR_2G10.006が21cP、GIPR(2G10.003)LC V78F変異体が15.3cPであり、これは粘度の25%減少である。
【0155】
前の例で述べたように、粘度測定の精度は、正確度よりもはるかに良好である。0.01%のポリソルベートを含む150mg/mLでの粘度は、通常、ポリソルベートを含まない場合よりも10%低く、これはGIPR(2G10.006)の場合に観察された。その粘度は、ポリソルベートなしでは23cPであり(43抗体全てについて)、ポリソルベートを含む場合は21cPであった。
【0156】
実施例6
カニクイザルによる試験
AKと称する抗体(対照、AMG145およびエボロクマブとしても知られる)、ならびに実施例3に示したFab変異体、Fc変異体、および二重変異体を、実施例1および2に開示される方法論を使用して生成した。これらの抗体の薬物動態特性を、雄カニクイザルへの単回皮下ボーラス注射によってインビボで試験した。
【0157】
試験デザイン
雄カニクイザルを用いて試験を行った。動物は2.7~3.8歳であり、2.9~3.8kgの体重であった。投与開始前7日間、動物を実験室での生活に順応させた。選択基準には、処置前のコレステロールレベル(LDLおよびHDLを含む)レベルからの許容可能な結果が含まれた。投与開始前に、全ての動物を無作為化し、コンピュータに基づく無作為化手順を用いて群に割り当てた。
【0158】
試験品および対照品を、1日目に1回、適切な動物の背側中央領域に皮下投与した。注射部位を投与前に剃毛し、消えないインクでマークした。動物は、用量投与のために一時的に拘束し、鎮静剤の投与は行わなかった。各動物の用量体積は、最新の体重測定に基づいた。第1群および第2群には、用量溶液を、各動物の背中に2回皮下注射により投与した(試験物質を1回、希釈剤を1回)。注射部位は、少なくとも5~6cm離した。試験物質を、各動物の脊柱の右側に投与した。希釈剤は、各動物の脊柱の左側に与えた。第3群および第4群には、用量溶液を、各動物の背中に単回皮下注射により投与した。各群の用量レベルおよび用量体積を図21に要約する。
【0159】
血液試料を、この試験の生存期間(43日)の種々の時点で、カリウム(K2)EDTAを含有するチューブに静脈穿刺によって採取した。動物は、血清化学血液採取の前に絶食させなかった。
【0160】
試料を、血液採取後に冷却し、そして血清または血漿の調製のために分割した。試料を静かに混合し、遠心分離した。血液試料を、採取直後、約4℃で遠心分離(1500~2000×gで約10分間)するまで、氷上に維持した。得られた血漿または血清を分離し、2アリコート(一次およびバックアップ)に分割し、適切に標識したポリプロピレンチューブに移し、分析まで-80℃に維持するように設定したフリーザーに保存した。血漿サンプルを用いて、薬物動態学的評価のための試験品濃度を決定し、血清試料をコレステロール、HDL、およびLDLについて分析した。
【0161】
薬物動態学的評価
血漿サンプルを、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いて、各試験抗体(抗体AK、AK Fab変異体、AK S440K Fc変異体、およびAK Fab/S440K二重変異体)の濃度について分析した。アッセイは、捕捉試薬として組換えヒトPCSK9を、検出試薬としてヒトIgG1に対する西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗体を使用する。標準および品質管理サンプル(QC)を、抗体AKまたは低粘度ホモログを100%カニクイザルK2-EDTAプールにスパイクすることによって調製する。Costar96ウェルマイクロプレートウェル(Corning Incorporated)を、組換えヒトPCSK9でコーティングする。ブロッキング工程の後、TBS(Thermo Scientific)中のBlocker(商標)BLOTTO中で100の希釈係数で前処理した後、標準、マトリックスブランク(NSB)、QC(QC)および試験試料をマイクロプレートウェルにロードする。試料中の抗体AKは、マイクロプレート上にコーティングされた固定化組換えヒトPCSK9に捕捉される。マイクロプレートウェルを洗浄することによって、結合していない物質を除去する。洗浄後、マウス抗ヒトIgG、Ab35、HRP結合検出抗体をマイクロプレートウェルに添加して、捕捉された抗体AKを結合させる。マイクロプレートウェルを洗浄することによって、結合していない検出抗体を除去する。結合したマウス抗ヒトIgG Ab35 HRP複合体の検出のために、1成分TMB溶液をマイクロプレートウェルに添加する。TMB基質溶液は過酸化物と反応し、HRPの存在下で、捕捉試薬によって結合した抗体AKまたは低粘度変異体ホモログの量に比例する比色シグナルを生成する。2N硫酸を用いて発色を停止し、色の強度(光学濃度またはOD)を450nmマイナス650nmで測定する。データを、1の重み付け係数を有する4パラメータ(Marquardt)回帰モデルを用いるWatsonバージョン7.4 SP3(またはそれ以降)データ縮小パッケージを使用して縮小する。
【0162】
WinNonlin薬物動態ソフトウェアを用いて薬物動態パラメータを推定した。皮下投与経路と一致する非コンパートメントアプローチを、パラメータ推定のために使用した。全てのパラメータは、1日目からの血漿中の個々の濃度から生成した。以下のパラメータを決定した:
Tmax(最大観察濃度が観察された投与後の時間)、
Cmax(投与後に測定された最大観察濃度)、
AUC(0-t)(線形または線形/対数台形法を用いて、投与開始から最後に観察された定量可能濃度の投与後の時間までの濃度対時間曲線下の面積)、
AUC(0-t)/D(AUC(0-t)を投与用量で除したもの)、および
RAUC(定常状態におけるT1からT2までの曲線下の面積を、最初の投与間隔中のT1からT2までの曲線下の面積で除したもの)。
【0163】
結果および考察
時間に対してプロットした試験品濃度を図24Aおよび24Bに示す(各試験品の平均濃度、各時点でn=4)。4つの試験品の薬物動態パラメータを図22に要約する。Fc変異S440K(抗体AK(Fc変異体)および抗体AK(FcおよびFab二重変異体)の両方)を含む抗体は、抗体AK(対照)と比較して、Tmaxの減少(それぞれ0.81日および1日対2.5日)およびCmaxの増加(それぞれ125μg/mLおよび112μg/mL対87.8μg/mL)を示し、抗体AK(Fab変異体)は、粘度を低下させるFc変異を含む抗体が、皮下注射後に血液循環に急速に分布することを示す。
【0164】
抗体AKの全ての低粘度ホモログの投与は、ベースライン(-6日目)と比較して総コレステロール濃度の減少と関連する低密度リポタンパク質(LDL)の予想される薬理学的な軽度から中等度の減少をもたらした。AK Fab変異体およびAK S440K Fc変異体の投与後の総リポタンパク質コレステロールおよび低密度リポタンパク質コレステロールの減少の大きさは、25日目のAK S440K Fc変異体ならびに29日目のAK(対照)およびAK Fab変異体のベースラインへの回復傾向を有する対照動物と一般に類似していた。AK Fab/S440K二重変異体の総リポタンパク質コレステロールおよび低密度リポタンパク質コレステロールの減少の大きさは、一般に、対照(10mg/kgでの抗体AK)と比較してさほど顕著ではなかった。どのAK低粘度ホモログにおいても、高密度リポタンパク質に変化はなかった。ベースラインに対するLDL-Cの変化率を図23で表にし、図24Aおよび24Bにおいて、時間に対してプロットする。
【0165】
略語
本明細書を通して使用される略語は、以下のように定義される。
AEI アレル発現不均衡
ANOVA 分散分析
AUC 曲線下面積
BSA ウシ血清アルブミン
DMEM ダルベッコ改変イーグル培地
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC 1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ELISA 酵素結合免疫吸着検定法
eQTL 発現量的形質遺伝子座
ESI-TOF エレクトロスプレーイオン化飛行時間
FACS 蛍光標識細胞分取
FBS ウシ胎仔血清
FPLC 高速タンパク質液体クロマトグラフィ
FVB フレンド白血病ウイルス1b(Fv1b)アレルで同系交配されたマウス株
H&E ヘマトキキシリン-エオジン
HA ヒポキサンチン
HIC 疎水性相互作用クロマトグラフィ
HPLC 高速液体クロマトグラフィ
HRP 西洋わさびペルオキシダーゼ
HUVEC ヒト臍帯静脈上皮細胞
IBD 炎症性腸疾患
IDMEM グルタミンを含まないDMEM
IFN インターフェロン
IL インターロイキン
MCP 単球走化性タンパク質
MSD 高分子構造データベース
PBMC 末梢血単核細胞
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PEG ポリエチレングリコール
PEI ポリエチレンイミン
QTL 量的形質遺伝子座
RPMI Roswell Park Memorial Instituteで開発された培地
SNP 単一ヌクレオチド多型
TFA トリフルオロ酢酸
TMB 3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン
【0166】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
抗原結合タンパク質の粘度を減少させる方法であって、
a.前記抗原結合タンパク質がVH1|1-18生殖系列サブファミリーを含む場合、前記VH1配列を、82X、94X、および95Xから選択される1つ以上の置換を含むように改変すること(ここで、XはR、K、およびHから選択され、XはS、T、N、およびQから選択され、XはR、K、およびHから選択される);
b.前記抗原結合タンパク質がVH3|3-33生殖系列サブファミリーを含む場合、前記VH3配列を、1X、17X、および85Xから選択される1つ以上の置換を含むように改変すること(ここで、XはDおよびEから選択され、XはG、A、V、I、L、およびMおよびWから選択され、XはG、A、V、I、L、およびMから選択される);
c.前記抗原結合タンパク質がVK3|L16生殖系列サブファミリーを含む場合、前記VK3配列を、4X10、13X11、76X12、78F、95X13、97X14、および98Pから選択される1つ以上の置換を含むように改変すること(ここで、X10はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X11はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X12はDおよびEから選択され、X13はR、KおよびHから選択され、X14はDおよびEから選択される);
d.前記抗原結合タンパク質が前記VK3|L6生殖系列サブファミリーを含む場合、前記VK3配列を、76X12および95X13から選択される1つ以上の置換を含むように改変すること;
e.Fcドメイン配列を253X15、440X16、および439X17から選択される1つ以上の置換を含むように改変すること(ここで、X15はG、A、V、I、L、およびMから選択され、X16はR、K、およびHから選択され、X17はDおよびEから選択され、前記Fcドメイン配列は440X16および439X17の1つのみを含む);ならびに
f.前記Fcドメイン配列のC末端を、X1819を含むように改変すること(ここで、X18はDおよびE、またはH、KおよびRから選択される1~4のアミノ酸であり、X19はP、M、G、A、V、I、L、S、T、N、Q、F、YおよびWから選択され、X18がDまたはEを含むとき存在せず、X18がそのC末端にKまたはRを含むとき存在し、X18がそのC末端にHを含むとき存在するかまたは存在しない)
から選択される、前記抗原結合タンパク質の配列に1つ以上の改変を作ることを含み、
サブパラグラフa、b、c、およびdにおけるアミノ酸はAhoナンバリングシステムにより番号付けされており、サブパラグラフeのアミノ酸はEUナンバリングシステムにより番号付けされている方法。
(項目2)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Aおよび1Bから選択される抗体の配列(配列番号166および168;2および4;178および180;170および172;6および8;10および12;14および16;18および20;22および24;26および28;30および32;34および36;38および40;43および44;46および48;50および52;54および56;58および60;62および64;66および68;70および72;74および76;78および80;82および84;86および88;90および92;94および96;98および100;102および104;106および108;110および112;114および116;118および120;122および124;126および128;130および132;134および136;158および160;138および140;142および144;146および148;150および152;ならびに154および156)を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリーを含む抗原結合タンパク質の前記VH1配列を、82R、94S、および95Rから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリーを含む抗原結合タンパク質の前記VH1配列を、82R、94S、および95Rの置換を含むように改変することを含む、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリーを含む抗原結合タンパク質の前記VH1配列を、59X20(ここで、X20はR、KおよびHから選択される)の置換を含むように改変することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリーを含む抗原結合タンパク質の前記VH1配列を、59Kの置換を含むように改変することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリーを含む抗原結合タンパク質の前記VH1配列を、59Kの置換を含むように改変することをさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目8)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AF、AK、AL、ANおよびAOから選択される抗体の配列(配列番号114および116;134および136;138および140;146および148;ならびに150および152)を含む、項目3に記載の方法。
(項目9)
前記VH3|3-33生殖系列サブファミリーを含む抗原結合タンパク質の前記VH3配列を、1E、17G、および85Aから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記VH3|3-33生殖系列サブファミリーを含む抗原結合タンパク質の前記VH3配列を、1E、17G、および85Aの置換を含むように改変することを含む、項目2に記載の方法。
(項目11)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AQ、AM、AI、およびAGから選択される抗体の配列(配列番号158および160;142および144;126および128;ならびに118および120)を含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
抗原結合タンパク質の前記VK3|L16配列を、4L、13L、76D、78F、95R、97E、および98Pから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む、項目1に記載の方法。
(項目13)
抗原結合タンパク質の前記VK3|L16配列を、4L、13L、76D、78F、95R、97E、および98Pの置換を含むように改変することを含む、項目2に記載の方法。
(項目14)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AFおよびAQから選択される抗体の配列(配列番号114および116;ならびに158および160)を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
抗原結合タンパク質の前記VK3|L6配列を、76Dおよび95Rから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
抗原結合タンパク質のVK3|L6配列を、76Dおよび95Rの置換を含むように改変することを含む、項目2に記載の方法。
(項目17)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AJの配列(配列番号130および132)を含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記Fcドメイン配列を、253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記Fcドメイン配列を、253A、440K、および439Eの置換を含むように改変することを含む、項目2に記載の方法。
(項目20)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、抗体BA、AH、およびANから選択される抗体の配列(配列番号174および176;122および124;ならびに146および148)を含む、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記FcドメインのC末端を、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含むように改変することを含む、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記FcドメインのC末端を、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含むように改変することを含む、項目2に記載の方法。
(項目23)
前記FcドメインのC末端を、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含むように改変することを含む、項目18に記載の方法。
(項目24)
a.82X、94X、および95Xから選択される1つ以上の置換を含むVH1|1-18生殖系列サブファミリー配列(ここで、XはR、KおよびHから選択され、XはS、T、NおよびQから選択され、XはR、KおよびHから選択される);
b.1X、17X、および85Xから選択される1つ以上の置換を含むVH3|3-33生殖系列サブファミリー配列(ここで、XはDおよびEから選択され、XはG、A、V、I、LおよびMから選択され、XはG.A、V、I、LおよびMから選択される);
c.4X10、13X11、76X12、95X13、97X14、および98Pから選択される1つ以上の置換を含むVK3|L16生殖系列サブファミリー配列(ここで、X10はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X11はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X12はDおよびEから選択され、X13はR、KおよびHから選択され、X14はDおよびEから選択され、前記抗原結合タンパク質は置換78Fのみを含むことはない);
d.76X12および95X13から選択される1つ以上の置換を含むVK3|L6生殖系列サブファミリー配列;
e.253X15、440X16、および439X17から選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列(ここで、X15はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X16はR、KおよびHから選択され、X17はDおよびEから選択され、前記Fcドメイン配列は440X16および439X17の1つのみを含み、X16がKであるか、X17がEであるとき、前記抗原結合タンパク質は、253X15、またはサブパラグラフa、b、c、dおよびfから選択される改変の少なくとも1つを含み、また、前記抗原結合タンパク質はCD20に特異的に結合する);ならびに
f.そのC末端にX1819を含むFcドメイン配列(ここで、X18はDおよびE、またはH、KおよびRから選択される1~4のアミノ酸であり、X19はP、M、G、A、V、I、L、S、T、N、Q、F、YおよびWから選択され、かつX18がDまたはEを含むとき存在せず、X18がそのC末端にKまたはRを含むとき存在し、X18がそのC末端にHを含むとき存在するかまたは存在せず、前記FcドメインのC末端にPGKP(配列番号381)、PGKKP(配列番号382)、PGKKKP(配列番号383)またはPGEが現れたとき、前記抗原結合タンパク質は、253X15、またはサブパラグラフa~eから選択される置換の少なくとも1つを含み、また、前記抗原結合タンパク質はCD20またはCD38に特異的に結合する)
から選択される1つ以上の配列改変を含む抗原結合タンパク質であって、
サブパラグラフa、b、c、およびdにおけるアミノ酸はAhoナンバリングシステムにより番号付けされており、サブパラグラフeのアミノ酸はEUナンバリングシステムにより番号付けされている抗原結合タンパク質。
(項目25)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Aおよび1Bから選択される抗体の配列(配列番号166および168;2および4;178および180;170および172;6および8;10および12;14および16;18および20;22および24;26および28;30および32;34および36;38および40;43および44;46および48;50および52;54および56;58および60;62および64;66および68;70および72;74および76;78および80;82および84;86および88;90および92;94および96;98および100;102および104;106および108;110および112;114および116;118および120;122および124;126および128;130および132;134および136;158および160;138および140;142および144;146および148;150および152;ならびに154および156)を含む、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目26)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリー配列は、82R、94S、および95Rから選択される1つ以上の置換を含む、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目27)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリー配列は、82R、94S、および95Rの置換を含む、項目25に記載の抗原結合タンパク質。
(項目28)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリー配列は、59X20(ここで、X20はR、KおよびHから選択される)の置換を含む、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目29)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリー配列は、59Kの置換を含む、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目30)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリー配列は、59Kの置換を含む、項目25に記載の抗原結合タンパク質。
(項目31)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AF、AK、AL、ANおよびAOから選択される抗体の配列(配列番号114および116;134および136;138および140;146および148;ならびに150および152)を含む、項目30に記載の抗原結合タンパク質。
(項目32)
前記VH3|3-33生殖系列サブファミリー配列は、1E、17G、および85Aから選択される1つ以上の置換を含む、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目33)
前記VH3|3-33生殖系列サブファミリー配列は、1E、17G、および85Aの置換を含む、項目25に記載の抗原結合タンパク質。
(項目34)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AQ、AM、AI、およびAGから選択される抗体の配列(配列番号158および160;142および144;126および128;ならびに118および120)を含む、項目33に記載の抗原結合タンパク質。
(項目35)
前記VK3|L16配列は、4L、13L、76D、78F、95R、97E、および98Pから選択される1つ以上の置換を含む、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目36)
前記VK3|L16配列は、4L、13L、76D、95R、97E、および98Pの置換を含む、項目25に記載の抗原結合タンパク質。
(項目37)
前記VK3|L16配列は、4L、13L、76D、95R、97E、および98Pから選択される1つ以上の置換を含む、項目26に記載の抗原結合タンパク質。
(項目38)
前記VK3|L16配列は、4L、13L、76D、95R、97E、および98Pから選択される1つ以上の置換を含む、項目29に記載の抗原結合タンパク質。
(項目39)
前記VK3|L16配列は、4L、13L、76D、95R、97E、および98Pから選択される1つ以上の置換を含む、項目32に記載の抗原結合タンパク質。
(項目40)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AFおよびAQから選択される抗体の配列(配列番号114および116;ならびに158および160)を含む、項目36に記載の抗原結合タンパク質。
(項目41)
前記VK3|L6配列は、76Dおよび95Rから選択される1つ以上の置換を含む、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目42)
前記VK3|L6配列は、76Dおよび95Rの置換を含む、項目25に記載の抗原結合タンパク質。
(項目43)
前記VK3|L6配列は、76Dおよび95Rの置換を含む、項目26に記載の抗原結合タンパク質。
(項目44)
前記VK3|L6配列は、76Dおよび95Rの置換を含む、項目29に記載の抗原結合タンパク質。
(項目45)
前記VK3|L6配列は、76Dおよび95Rの置換を含む、項目32に記載の抗原結合タンパク質。
(項目46)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AJの配列(配列番号130および132)を含む、項目39に記載の抗原結合タンパク質。
(項目47)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目48)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目25に記載の抗原結合タンパク質。
(項目49)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、抗体BA、AH、およびANから選択される抗体の配列(配列番号174および176;122および124;ならびに146および148)を含む、項目42に記載の抗原結合タンパク質。
(項目50)
253A、440K、および439Eの置換から選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目51)
253A、440K、および439Eの置換から選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目26に記載の抗原結合タンパク質。
(項目52)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目29に記載の抗原結合タンパク質。
(項目53)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目32に記載の抗原結合タンパク質。
(項目54)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目35に記載の抗原結合タンパク質。
(項目55)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目37に記載の抗原結合タンパク質。
(項目56)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目38に記載の抗原結合タンパク質。
(項目57)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目39に記載の抗原結合タンパク質。
(項目58)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目41に記載の抗原結合タンパク質。
(項目59)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目42に記載の抗原結合タンパク質。
(項目60)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目43に記載の抗原結合タンパク質。
(項目61)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目44に記載の抗原結合タンパク質。
(項目62)
253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むFcドメイン配列を含む、項目45に記載の抗原結合タンパク質。
(項目63)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目64)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目26に記載の抗原結合タンパク質。
(項目65)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目29に記載の抗原結合タンパク質。
(項目66)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目32に記載の抗原結合タンパク質。
(項目67)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目35に記載の抗原結合タンパク質。
(項目68)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目37に記載の抗原結合タンパク質。
(項目69)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目38に記載の抗原結合タンパク質。
(項目70)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目39に記載の抗原結合タンパク質。
(項目71)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目41に記載の抗原結合タンパク質。
(項目72)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目42に記載の抗原結合タンパク質。
(項目73)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目43に記載の抗原結合タンパク質。
(項目74)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目44に記載の抗原結合タンパク質。
(項目75)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目45に記載の抗原結合タンパク質。
(項目76)
前記FcドメインのC末端に、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含む、項目47に記載の抗原結合タンパク質。
(項目77)
図10から選択される一連の置換:
a.重鎖におけるT82R、R94S、およびS95R、
b.重鎖におけるS59K、T82R、R94S、およびS95R、
c.重鎖におけるT82R、R94S、およびS95Rと、軽鎖におけるG13L、ならびに
d.重鎖におけるS59K、T82R、R94S、およびS95Rと、軽鎖におけるG13L
を含むことを除いて、PCSK-9結合ポリペプチドの重鎖および軽鎖配列を含み、
前記アミノ酸はAhoナンバリングシステムによって番号付けされている、
PCSK9に特異的に結合する抗原結合タンパク質。
(項目78)
前記PCSK-9結合ポリペプチドは、図1Bからの抗体AKの重鎖および軽鎖配列(配列番号134および136)を含む、項目77に記載の抗原結合タンパク質。
(項目79)
I253A、S440K、またはK439Eの置換の1つ以上を含むことを除いて、図1Bの抗体AKの重鎖配列(配列番号136)を含み、前記アミノ酸はEUナンバリングシステムによって番号付けされている、PCSK9に特異的に結合する抗原結合タンパク質。
(項目80)
前記重鎖はさらに、I253A、S440K、またはK439Eの置換の1つ以上を含み、前記アミノ酸はEUナンバリングシステムによって番号付けされている、項目77に記載の抗原結合タンパク質。
(項目81)
配列番号352、353、および354から選択されるアミノ酸配列を含む、PCSK9に特異的に結合する抗原結合タンパク質。
(項目82)
配列番号351および367から選択されるアミノ酸配列をさらに含む、項目81に記載の抗原結合タンパク質。
(項目83)
図10から選択される一連の置換:
a.重鎖におけるT82R、R94S、およびS95R、
b.重鎖におけるS59K、T82R、R94S、およびS95R、
c.重鎖におけるT82R、R94S、およびS95Rと、軽鎖におけるV13L、ならびに
d.重鎖におけるS59K、T82R、R94S、およびS95Rと、軽鎖におけるV13L
を含むことを除いて、図1Bの抗体AOの重鎖および軽鎖配列(配列番号150および152)を含み、
前記アミノ酸はAhoナンバリングシステムによって番号付けされている、
c-fmsに特異的に結合する抗原結合タンパク質。
(項目84)
配列番号356、357、および358から選択されるアミノ酸配列を含む、c-fmsに特異的に結合する抗原結合タンパク質。
(項目85)
配列番号355のアミノ酸配列をさらに含む、項目84に記載の抗原結合タンパク質。
(項目86)
配列番号359、361、362、364、および368から選択されるアミノ酸配列を含む、GIPRに特異的に結合する抗原結合タンパク質。
(項目87)
配列番号360、363、365、および367から選択されるアミノ酸配列をさらに含む、項目86に記載の抗原結合タンパク質。
(項目88)
a.前記抗原結合タンパク質は440X16置換を欠く親抗体に対して置換440X16を含み、
b.皮下注射により前記抗原結合タンパク質および前記親抗体が同じ濃度で投与された場合に、前記抗原結合タンパク質は前記親抗体よりも速く最大血清濃度に達し、かつ
c.皮下注射により前記抗原結合タンパク質および前記親抗体が同じ濃度で投与された場合に、前記抗原結合タンパク質は前記親抗体よりも高い最大血清濃度に達する、
項目24に記載の抗原結合タンパク質。
(項目89)
項目88に記載の抗原結合タンパク質は、前記親抗体の少なくとも約2倍の速さで最大血清濃度に達する、項目88に記載の抗原結合タンパク質。
(項目90)
項目88に記載の抗原結合タンパク質は、前記親抗体より少なくとも約25%高い最大血清濃度に達する、項目88に記載の抗原結合タンパク質。
(項目91)
前記親抗体は、PCSK-9結合ポリペプチドである、項目88に記載の抗原結合タンパク質。
(項目92)
前記親抗体は、図1Bからの抗体AK(配列番号134および136)である、項目88に記載の抗原結合タンパク質。
(項目93)
16はKである、項目88に記載の抗原結合タンパク質。
(項目94)
16はKである、項目89に記載の抗原結合タンパク質。
(項目95)
16はKである、項目90に記載の抗原結合タンパク質。
(項目96)
16はKである、項目91に記載の抗原結合タンパク質。
(項目97)
16はKである、項目92に記載の抗原結合タンパク質。
(項目98)
両方が同じ濃度で投与された場合に、親抗体より高い最大血清濃度に達し、親抗体より速く最大血清濃度に達する抗原結合タンパク質の調製方法であって、前記親抗体に配列改変440X16(ここで、X16はR、K、およびHから選択される)を導入することを含む方法。
(項目99)
前記抗原結合タンパク質は、前記親抗体の少なくとも2倍の速さで最大血清濃度に達する、項目98に記載の方法。
(項目100)
16はKである、項目98に記載の方法。
(項目101)
16はKである、項目99に記載の方法。
(項目102)
前記親抗体はPCSK9結合ポリペプチドである、項目98に記載の方法。
(項目103)
前記親抗体はPCSK9結合ポリペプチドである、項目99に記載の方法。
(項目104)
前記親抗体はPCSK9結合ポリペプチドである、項目100に記載の方法。
(項目105)
前記親抗原結合タンパク質は、図1Bからの抗体AK(配列番号134および136)である、項目98に記載の抗原結合タンパク質。
(項目106)
前記親抗原結合タンパク質は、図1Bからの抗体AK(配列番号134および136)である、項目99に記載の抗原結合タンパク質。
(項目107)
前記親抗原結合タンパク質は、図1Bからの抗体AK(配列番号134および136)である、項目100に記載の抗原結合タンパク質。
(項目108)
患者のPCSK9に関連する兆候を治療する方法であって、項目81に記載の抗原結合タンパク質を投与することを含む方法。
(項目109)
前記PCSK9に関連する兆候は高コレステロール血症である、項目108に記載の方法。
(項目110)
患者のPCSK9に関連する兆候を治療する方法であって、項目82に記載の抗原結合タンパク質を投与することを含む方法。
(項目111)
前記PCSK9に関連する兆候は高コレステロール血症である、項目110に記載の方法。
(項目112)
患者のPCSK9に関連する兆候を治療する方法であって、項目88に記載の抗原結合タンパク質を投与することを含む方法。
(項目113)
前記PCSK9に関連する兆候は高コレステロール血症である、項目112に記載の方法。
(項目A1)
抗原結合タンパク質の粘度を減少させる方法であって、
a.前記抗原結合タンパク質がVH1|1-18生殖系列サブファミリーを含む場合、前記VH1配列を、82X 、94X 、および95X から選択される1つ以上の置換を含むように改変すること(ここで、X はR、K、およびHから選択され、X はS、T、N、およびQから選択され、X はR、K、およびHから選択される);
b.前記抗原結合タンパク質がVH3|3-33生殖系列サブファミリーを含む場合、前記VH3配列を、1X 、17X 、および85X から選択される1つ以上の置換を含むように改変すること(ここで、X はDおよびEから選択され、X はG、A、V、I、L、およびMおよびWから選択され、X はG、A、V、I、L、およびMから選択される;
c.前記抗原結合タンパク質がVK3|L16生殖系列サブファミリーを含む場合、前記VK3配列を、4X 10 、13X 11 、76X 12 、78F、95X 13 、97X 14 、および98Pから選択される1つ以上の置換を含むように改変すること(ここで、X 10 はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X 11 はG、A、V、I、LおよびMから選択され、X 12 はDおよびEから選択され、X 13 はR、KおよびHから選択され、X 14 はDおよびEから選択される);
d.前記抗原結合タンパク質が前記VK3|L6生殖系列サブファミリーを含む場合、前記VK3配列を、76X 12 および95X 13 から選択される1つ以上の置換を含むように改変すること;
e.Fcドメイン配列を253X 15 、440X 16 、および439X 17 から選択される1つ以上の置換を含むように改変すること(ここで、X 15 はG、A、V、I、L、およびMから選択され、X 16 はR、K、およびHから選択され、X 17 はDおよびEから選択され、前記Fcドメイン配列は440X 16 および439X 17 の1つのみを含む);ならびに
f.前記Fcドメイン配列のC末端を、X 18 19 を含むように改変すること(ここで、X 18 はDおよびE、またはH、KおよびRから選択される1~4のアミノ酸であり、X 19 はP、M、G、A、V、I、L、S、T、N、Q、F、YおよびWから選択され、X 18 がDまたはEを含むとき存在せず、X 18 がそのC末端にKまたはRを含むとき存在し、X 18 がそのC末端にHを含むとき存在するかまたは存在しない)
から選択される、前記抗原結合タンパク質の配列に1つ以上の改変を作ることを含み、
サブパラグラフa、b、c、およびdにおけるアミノ酸はAhoナンバリングシステムにより番号付けされており、サブパラグラフeのアミノ酸はEUナンバリングシステムにより番号付けされている方法。
(項目A2)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Aおよび1Bから選択される抗体の配列(配列番号166および168;2および4;178および180;170および172;6および8;10および12;14および16;18および20;22および24;26および28;30および32;34および36;38および40;43および44;46および48;50および52;54および56;58および60;62および64;66および68;70および72;74および76;78および80;82および84;86および88;90および92;94および96;98および100;102および104;106および108;110および112;114および116;118および120;122および124;126および128;130および132;134および136;158および160;138および140;142および144;146および148;150および152;ならびに154および156)を含む、項目A1に記載の方法。
(項目A3)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリーを含む抗原結合タンパク質の前記VH1配列を、82R、94S、および95Rから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む、項目A1または2に記載の方法。
(項目A4)
前記VH1|1-18生殖系列サブファミリーを含む抗原結合タンパク質の前記VH1配列を、59X 20 (ここで、X 20 はR、KおよびHから選択される)の置換を含むように改変することをさらに含む、項目A1または2に記載の方法。
(項目A5)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AF、AK、AL、ANおよびAOから選択される抗体の配列(配列番号114および116;134および136;138および140;146および148;ならびに150および152)を含む、項目A3に記載の方法。
(項目A6)
前記VH3|3-33生殖系列サブファミリーを含む抗原結合タンパク質の前記VH3配列を、1E、17G、および85Aから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む、項目A1または2に記載の方法。
(項目A7)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AQ、AM、AI、およびAGから選択される抗体の配列(配列番号158および160;142および144;126および128;ならびに118および120)を含む、項目A6に記載の方法。
(項目A8)
抗原結合タンパク質の前記VK3|L16配列を、4L、13L、76D、78F、95R、97E、および98Pから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む、項目A1または2に記載の方法。
(項目A9)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AFおよびAQから選択される抗体の配列(配列番号114および116;ならびに158および160)を含む、項目A8に記載の方法。
(項目A10)
抗原結合タンパク質の前記VK3|L6配列を、76Dおよび95Rから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む、項目A1または2に記載の方法。
(項目A11)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、図1Bからの抗体AJの配列(配列番号130および132)を含む、項目A10に記載の方法。
(項目A12)
前記Fcドメイン配列を、253A、440K、および439Eから選択される1つ以上の置換を含むように改変することを含む、項目A1または2に記載の方法。
(項目A13)
前記抗原結合タンパク質は、置換を除いて、抗体BA、AH、およびANから選択される抗体の配列(配列番号174および176;122および124;ならびに146および148)を含む、項目A12に記載の方法。
(項目A14)
前記FcドメインのC末端を、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含むように改変することを含む、項目A1または2に記載の方法。
(項目A15)
前記FcドメインのC末端を、KP、KKP、KKKP(配列番号380)、およびEから選択されるアミノ酸配列を含むように改変することを含む、項目A14に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【配列表】
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【外国語明細書】