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▶ モンサント テクノロジー エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081655
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】植物調節エレメント及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/82 20060101AFI20220524BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20220524BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20220524BHJP
   A01H 6/46 20180101ALI20220524BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C12N15/82 Z ZNA
C12N15/82 154Z
A01H1/00 A
A01H5/00 A
A01H6/46
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022043965
(22)【出願日】2022-03-18
(62)【分割の表示】P 2018561728の分割
【原出願日】2017-05-22
(31)【優先権主張番号】62/340,656
(32)【優先日】2016-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャイシュリー・エム・チットゥール
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラフ・フラシンスキー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】植物における遺伝子発現の調節に有用な組換えDNA分子及び構築物、ならびにそれらのヌクレオチド配列等を提供する。
【解決手段】ブルーグラマグラス(Bouteloua gracilis)由来推定ユビキチン遺伝子由来3′非翻訳領域(UTR)に由来する特定のヌクレオチド配列を有する組換えDNA分子、並びに、前記DNA分子を含むトランスジェニック植物、植物細胞、植物部分及び種子を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号5と少なくとも85%の配列同一性を有する配列;
b)配列番号5を含む配列;及び
c)遺伝子調節活性を有する、配列番号5の断片;
からなる群から選択されるDNA配列を含む組換えDNA分子であって、
前記配列が、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結している、前記組換えDNA分子。
【請求項2】
前記配列が、配列番号5のDNA配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項3】
前記配列が、配列番号5のDNA配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項4】
前記配列が、配列番号5のDNA配列を含む、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項5】
前記DNA配列が遺伝子調節活性を含む、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項6】
前記異種の転写可能なDNA分子が、農学的関心対象遺伝子を含む、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項7】
前記農学的関心対象遺伝子が、植物における除草剤耐性を付与する、請求項6に記載の組換えDNA分子。
【請求項8】
前記農学的関心対象遺伝子が、植物における害虫抵抗性を付与する、請求項6に記載の組換えDNA分子。
【請求項9】
a)配列番号5と少なくとも85%の配列同一性を有する配列;
b)配列番号5を含む配列;及び
c)遺伝子調節活性を有する、配列番号5の断片;
からなる群から選択される配列を含む組換えDNA分子を含むトランスジェニック植物細胞であって、
前記配列が、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結している、前記トランスジェニック植物細胞。
【請求項10】
前記トランスジェニック植物細胞が単子葉植物細胞である、請求項9に記載のトランスジェニック植物細胞。
【請求項11】
前記トランスジェニック植物細胞が双子葉植物細胞である、請求項9に記載のトランスジェニック植物細胞。
【請求項12】
請求項1に記載の組換えDNA分子を含む、トランスジェニック植物またはその部分。
【請求項13】
子孫植物またはその部分が前記組換えDNA分子を含む、請求項12に記載のトランスジェニック植物の子孫植物またはその部分。
【請求項14】
種子が、請求項1に記載の組換えDNA分子を含む、トランスジェニック種子。
【請求項15】
コモディティ製品の製造方法であって、請求項12に記載のトランスジェニック植物またはその部分を取得し、そこから前記コモディティ製品を製造することを含む、前記方法。
【請求項16】
前記コモディティ製品が、タンパク質濃縮物、タンパク質単離物、穀物、デンプン、種子、ミール、小麦粉、バイオマス、または種子油である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項12に記載のトランスジェニック植物を取得し、植物を栽培することを含み、転写可能なDNAを発現させる、転写可能なDNA分子の発現方法。
【請求項18】
請求項1に記載の組換えDNA分子を植物細胞に導入することを含む、トランスジェニック植物細胞の製造方法。
【請求項19】
前記組換えDNA分子を前記植物細胞に導入することが、形質転換を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記植物細胞からトランスジェニック植物を再生することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組換えDNA分子を前記植物細胞に導入することが、請求項12に記載のトランスジェニック植物を別の植物と交雑して、前記植物細胞を含む子孫植物を産生することを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2016年5月24日に出願された米国仮出願第62/340,656号の利益を主張し、前記文献はその全体を参照として本明細書に援用する。
【0002】
配列表の援用
「MONS419WO-sequence_listing.txt」という名称の、2017年5月22日に作成された14.1KB(Microsoft Windows(登録商標)での測定による)のファイルに含まれる配列表を、電子提出によりファイル化し、参照として本明細書に援用する。
【0003】
本発明は、植物分子生物学及び植物遺伝子工学の分野に関する。より具体的には、本発明は、植物における遺伝子発現の調節に有用なDNA分子に関する。
【背景技術】
【0004】
調節エレメントとは、作動可能に連結する転写可能なDNA分子の転写を調節することによって遺伝子活性を調節する遺伝要素である。そのような要素として、プロモーター、リーダー、イントロン、及び3′非翻訳領域が挙げられ、植物分子生物学及び植物遺伝子工学の分野において有用である。
【0005】
発明の概要
本発明は、植物において使用するための新規遺伝子調節エレメントを提供する。本発明はまた、調節エレメントを含むDNA構築物を提供する。本発明はまた、調節エレメントを含むトランスジェニック植物細胞、植物、及び種子を提供する。一実施形態では、調節エレメントを、転写可能なDNA分子に作動可能に連結させる。特定の実施形態では、転写可能なDNA分子は、調節配列に関して異種であってもよい。したがって、本発明によって提供する調節エレメント配列は、特定の実施形態では、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結されていると定義され得る。本発明はまた、調節エレメントを作製及び使用する方法、調節エレメントを含むDNA構築物、ならびに転写可能なDNA分子に作動可能に連結した調節エレメントを保有するトランスジェニック植物細胞、植物、及び種子を提供する。
【0006】
したがって、一態様では、本発明は:(a)配列番号1~5または7のいずれかに対し、少なくとも約85%の配列同一性を有する配列;(b)配列番号1~5または7のいずれかを有する配列;及び(c)配列番号1~5または7のいずれかの断片であって、遺伝子調節活性を有する断片からなる群から選択されるDNA配列を有する組換えDNA分子を提供し;配列は、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結している。「異種の転写可能なDNA分子」とは、転写可能なDNA分子が、それが機能的に連結しているポリヌクレオチド配列に対して異種であることを意味する。特定の実施形態では、組換えDNA分子は、配列番号1~5のいずれかのDNA配列に対し、少なくとも約90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するDNA配列を有する。特定の実施形態では、DNA配列は調節エレメントを含む。いくつかの実施形態では、調節エレメントはプロモーターを含む。さらに他の実施形態では、異種の転写可能なDNA分子は、農学的関心対象遺伝子、例えば、植物に除草剤耐性を付与することができる遺伝子、または植物に植物病虫害抵抗性を付与することができる遺伝子を含む。さらに他の実施形態では、本発明は、本明細書において提供する組換えDNA分子を含む構築物を提供する。
【0007】
別の態様では、本明細書において:(a)配列番号1~5または7のいずれかに対し、少なくとも約85%の配列同一性を有する配列;(b)配列番号1~5または7のいずれかを有する配列;及び(c)配列番号1~5または7のいずれかの断片であって、遺伝子調節活性を有する断片からなる群から選択されるDNA配列を有する組換えDNA分子を提供し;DNA配列は、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結している。特定の実施形態では、トランスジェニック植物細胞は単子葉植物細胞である。他の実施形態では、トランスジェニック植物細胞は、単子葉植物細胞または双子葉植物細胞である。
【0008】
さらに別の態様では、本明細書において:(a)配列番号1~5または7のいずれかに対し、少なくとも約85%の配列同一性を有する配列;(b)配列番号1~5または7のいずれかを有する配列;及び(c)配列番号1~5または7のいずれかの断片であって、遺伝子調節活性を有する断片からなる群から選択されるDNA配列を有する組換えDNA分子を保有するトランスジェニック植物またはその一部をさらに提供し;配列は、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結している。特定の実施形態では、トランスジェニック植物は、組換えDNA分子を保有する任意の世代の子孫植物である。生育した場合にそのようなトランスジェニック植物を産生する、組換えDNA分子を保有するトランスジェニック種子も、本明細書において提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、本発明の組換えDNA分子を保有するトランスジェニック植物またはその一部を取得し、そこからコモディティ製品を産生することを含む、コモディティ製品の産生方法を提供する。一実施形態では、コモディティ製品は、加工した種子、穀類、植物部分、油及びミールである。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の組換えDNA分子を用いて植物細胞を形質転換し、形質転換植物細胞を産生し、形質転換植物細胞からトランスジェニック植物を再生することを含む、本発明の組換えDNA分子を保有するトランスジェニック植物の産生方法を提供する。
【0011】
特定の態様では、本発明は、本明細書において提供する組換えDNA分子を植物細胞に導入することを含む、トランスジェニック植物細胞の産生方法を提供する。特定の実施形態では、前記組換えDNA分子の前記植物細胞への導入は、形質転換、または前記植物細胞からトランスジェニック植物を再生することを含む。さらなる実施形態では、前記組換えDNA分子の前記植物細胞への導入は、本明細書において提供するトランスジェニック植物を別の植物と交雑して、前記植物細胞を含む子孫植物を産生することを含む。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、本明細書において提供する組換えDNA分子で植物細胞を形質転換することを含む、トランスジェニック植物の産生方法を提供する。ある実施形態では、本発明の方法は、本明細書において提供するDNA分子で形質転換した植物細胞からトランスジェニック植物を再生することをさらに含む。
【0013】
配列の簡単な説明
配列番号1は、その天然の第一のイントロンの5′に作動可能に連結する天然のリーダーの5′に作動可能に連結するブルーグラマグラス(Bouteloua gracilis)推定ユビキチン遺伝子由来プロモーターを含む調節発現エレメント群(EXP)のDNA配列である。
【0014】
配列番号2は、ブルーグラマグラス(Bouteloua gracilis)由来推定ユビキチン遺伝子由来プロモーター配列である。
【0015】
配列番号3は、ブルーグラマグラス(Bouteloua gracilis)由来推定ユビキチン遺伝子由来リーダー配列である。
【0016】
配列番号4は、ブルーグラマグラス(Bouteloua gracilis)由来推定ユビキチン遺伝子由来イントロン配列である。
【0017】
配列番号5は、ブルーグラマグラス(Bouteloua gracilis)由来推定ユビキチン遺伝子由来3′非翻訳領域(UTR)である。
【0018】
配列番号6は、植物細胞における発現用に設計されたβ-グルクロニダーゼをコードする合成コード配列である。
【0019】
配列番号7は、Bouteloua gracilis推定ユビキチン遺伝子プロモーター由来エンハンサーである。
【0020】
配列番号8は、Oryza sativa脂質輸送タンパク質様遺伝子(LTP)由来3′非翻訳領域(UTR)である。
【0021】
配列番号9は、カリフラワーモザイクウイルス由来の促進プロモーター及び天然のリーダー配列である。
【0022】
配列番号10は、Agrobacterium tumefaciensのノパリン合成酵素遺伝子由来3′非翻訳領域(UTR)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、植物において遺伝子調節活性を有するDNA分子を提供する。これらのDNA分子のヌクレオチド配列を、配列番号1~5または7として提供する。これらのDNA分子は、作動可能に連結する転写可能なDNA分子の植物組織における発現に影響を及ぼすことができ、したがって、作動可能に連結する導入遺伝子のトランスジェニック植物における遺伝子発現を調節することができる。本発明はまた、その修飾、産生、及び使用方法を提供する。本発明はまた、本発明の組換えDNA分子を含有するトランスジェニック植物細胞、植物、植物部分、及び種子を含む組成物、ならびにその製造及び使用方法を提供する。
【0024】
以下の定義及び方法は、本発明をより良く定義し、本発明の実施において当業者への指針とするために提供する。特記しない限り、用語は、当業者による従来の使用法に従って理解されるべきである。
【0025】
DNA分子
本明細書中で使用する場合、用語「DNA」または「DNA分子」とは、5′(上流)末端から3′(下流)末端に向けて読み取られる、ゲノムまたは合成由来の二本鎖DNA分子、すなわち、デオキシリボヌクレオチド塩基のポリマーまたはDNA分子を指す。本明細書中で使用する場合、用語「DNA配列」とは、DNA分子のヌクレオチド配列を指す。本明細書中で使用する命名法は、米国連邦規則集§1.822のTitle 37の名称に対応し、WIPO標準ST.25(1998)、付録2の表、すなわち表1及び3に記載されている。
【0026】
本明細書中で使用する場合、「組換えDNA分子」とは、人間の介在なしに自然界において一緒には生じることがないであろうDNA分子の組み合わせを含むDNA分子である。例えば、組換えDNA分子は、互いに異種である少なくとも2つのDNA分子からなるDNA分子、天然に存在するDNA配列から逸脱するDNA配列を有するDNA分子、または遺伝的形質転換または遺伝子編集によって宿主細胞のDNAに組み込まれているDNA分子であり得る。
【0027】
本出願において、「単離されたDNA分子」、または同等の用語または語句の言及は、そのDNA分子が単独でまたは他の組成物と組み合わせて存在するが、その自然環境内には存在しない分子であることを意味することを意図している。例えば、生物のゲノムのDNA内に天然に見出される核酸エレメント、例えば、コード配列、イントロン配列、非翻訳リーダー配列、プロモーター配列、転写終結配列などは、そのエレメントが生物のゲノム内に存在し、それが天然に見出されるゲノム内の位置に存在する限り、「単離された」とはみなされない。しかしながら、これらの要素及びこれらの要素の下位部分のそれぞれは、そのエレメントが生物のゲノム内に存在せず、それが天然に見出されるゲノム内の位置に存在しない限り、本開示の範囲内で「単離」されているであろう。同様に、殺虫性タンパク質またはそのタンパク質の任意の天然に存在する殺虫性変異体をコードするヌクレオチド配列は、そのヌクレオチド配列が、そのタンパク質コード配列を天然に保有する細菌のDNA内に存在しない限り、単離されたヌクレオチド配列であるだろう。天然の殺虫性タンパク質のアミノ酸配列をコードする合成ヌクレオチド配列は、本開示の目的のために単離されたとみなされるであろう。本開示の目的のために、任意のトランスジェニックヌクレオチド配列、すなわち、植物または細菌の細胞のゲノムに挿入するか、または染色体外ベクター内に存在するDNAのヌクレオチド配列は、植物もしくは細菌のゲノム内で細胞を形質転換するために使用するプラスミドもしくは同様の構造内に存在するか、または植物もしくは細菌に由来する組織、子孫、生物学的試料またはコモディティ製品に検出可能な量で存在するかどうかに関わらず、単離されたヌクレオチド配列であるとみなされるであろう。
【0028】
本明細書中で使用する場合、用語「配列同一性」とは、最適にアラインメントした2つのポリヌクレオチド配列または最適にアラインメントした2つのポリペプチド配列の同一性の程度を指す。最適な配列アラインメントは、2つの配列、例えば参照配列と別の配列とを手動でアラインメントし、適切な内部ヌクレオチド挿入、欠失、またはギャップを有する配列アラインメントにおいて、ヌクレオチドのマッチ数を最大化することによって生成される。本明細書中で使用する場合、用語「参照配列」とは、配列番号1~5または7として提供されるDNA配列を指す。
【0029】
本明細書中で使用する場合、用語「パーセント配列同一性」または「パーセント同一性」または「%同一性」とは、同一性の分数を100倍化したものである。最適にアラインメントした配列と参照配列との「同一性の分数」とは、最適アラインメントのヌクレオチドマッチ数を、参照配列中のヌクレオチドの総数、例えば、参照配列全体の全長におけるヌクレオチド総数で割り算したものである。したがって、本発明の一実施形態は、配列番号1~5及び7として本明細書で提供する参照配列に対して最適にアラインメントした場合に、参照配列に対して、少なくとも約85%の同一性、少なくとも約86%の同一性、少なくとも約87%の同一性、少なくとも約88%の同一性、少なくとも約89%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約91%の同一性、少なくとも約92%の同一性、少なくとも約93%の同一性、少なくとも約94%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、または少なくとも約100%の同一性を有する配列を有するDNA分子を提供する。特定の実施形態では、配列番号1~5または7のいずれか1つに対して%同一性を有し、全長配列の活性を有する配列を、本明細書において提供する。
【0030】
調節エレメント
プロモーター、リーダー(5′UTRとしても知られる)、エンハンサー、イントロン、及び転写終結領域(3′UTRとしても知られる)などの調節エレメントは、生細胞における遺伝子の全体的な発現に不可欠な要素である。本明細書中で使用する場合、用語「調節エレメント」とは、遺伝子調節活性を有するDNA分子を指す。本明細書中で使用する場合、用語「遺伝子調節活性」とは、例えば作動可能に連結する転写可能なDNA分子の転写及び/または翻訳に影響を及ぼすことによって、作動可能に連結する転写可能なDNA分子の発現に影響を及ぼす能力を指す。したがって、植物において機能するプロモーター、リーダー、エンハンサー、イントロン及び3′UTRなどの調節エレメントは、遺伝子改変を介した植物の表現型の改変に有用である。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「調節発現エレメント群」または「EXP」配列とは、エンハンサー、プロモーター、リーダー、及びイントロンなどの作動可能に連結した調節エレメントの群を指す場合がある。したがって、調節発現エレメント群は、例えば、リーダー配列の5′に作動可能に連結したプロモーターを含み得る。本発明の実施に有用なEXPを配列番号1として示す。
【0032】
調節エレメントは、それらの遺伝子発現パターン、例えば、構成的発現または時間的、空間的、発生的、組織的、環境的、生理学的、病理学的、細胞周期、及び/または化学的応答発現、及びそれらの任意の組み合わせなどの陽性及び/または陰性の影響によって、ならびに定量的または定性的指標によって特徴付けられ得る。本明細書中で使用する場合、「遺伝子発現パターン」とは、作動可能に連結するDNA分子から転写されるRNA分子への任意の転写パターンである。転写されるRNA分子は、タンパク質分子を産生するために翻訳されてもよく、または二本鎖RNA(dsRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、マイクロRNA(miRNA)などのアンチセンスまたは他の調節RNA分子機能を提供してもよい。
【0033】
本明細書中で使用する場合、「タンパク質発現」とは、転写されたRNA分子からタンパク質分子への任意のパターンの翻訳である。タンパク質発現は、その時間的、空間的、発生的、または形態学的性質、ならびに定量的または定性的指標によって特徴付けられ得る。
【0034】
プロモーターは、作動可能に連結した転写可能なDNA分子の発現を調節するための調節エレメントとして有用である。本明細書中で使用する場合、用語「プロモーター」とは、一般的に、RNAポリメラーゼII及び転写を開始するための他のタンパク質、例えばトランス作用性転写因子などの認識及び結合に関与するDNA分子を指す。プロモーターは、遺伝子のゲノムコピーの5′非翻訳領域(5′UTR)から最初に単離され得る。あるいは、プロモーターは、合成により作製または操作されたDNA分子であってもよい。プロモーターはキメラであってもよい。キメラプロモーターは、2つ以上の異種DNA分子の融合によって産生される。本発明の実施に有用なプロモーターは、配列番号2に含まれるプロモーターエレメント、またはその断片もしくは変異体を含む。本発明の特定の実施形態では、本明細書に記載の請求範囲のDNA分子及びその任意の変異体または誘導体は、プロモーター活性を含むものとして、すなわち、トランスジェニック植物などの宿主細胞においてプロモーターとして作用することができるものとしてさらに定義される。さらに特定の実施形態では、断片は、それが由来する出発プロモーター分子が有するプロモーター活性を示すものとして定義され得るか、または断片は、転写の基礎レベルを提供する「最小プロモーター」を含み得、TATAボックス、他の公知の転写因子結合部位モチーフ、または転写を開始するためのRNAポリメラーゼII複合体の認識及び結合のための均等なDNA配列である。
【0035】
一実施形態では、本明細書において開示するプロモーター配列の断片を提供する。プロモーター断片は、上記のようなプロモーター活性を有していてもよく、単独で、または他のプロモーター及びプロモーター断片との組み合わせにおいて、例えばキメラプロモーターの構築において、すなわち他の発現エレメント及び発現エレメントの断片との組み合わせにおいて有用であり得る。特定の実施形態では、本明細書に開示するプロモーター活性を有する、少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175、少なくとも約200、少なくとも約225、少なくとも約250、少なくとも約275、少なくとも約300、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約750、少なくとも約800、少なくとも約900、または少なくとも約1000個の連続ヌクレオチド、またはそれ以上を有するDNA分子を含むプロモーター断片を提供する。特定の実施形態では、全長配列の活性を有する配列番号1~5及び7のいずれか1つの断片を本明細書において提供する。出発プロモーター分子からのそのような断片の生成方法は、当該技術分野において周知である。
【0036】
発現にプラスまたはマイナスの影響を与えるエレメントを除去し;発現にプラスまたはマイナスの影響を与えるエレメントを複製し;及び/または発現に組織特異的影響または細胞特異的影響を与えるエレメントを複製または除去することを含む、当該分野で公知の方法を用いて、例えば内部または5′欠失などの、配列番号2に含まれるプロモーターエレメントのいずれかに由来する組成物を作製し、発現を改善または改変することができる。TATAボックスエレメントまたはその均等配列及び下流配列を除去した3′欠失からなる配列番号2に含まれるプロモーターエレメントのいずれかに由来する組成物を使用して、例えばエンハンサーエレメントを作製することができる。さらなる削除を行って、発現に、プラスまたはマイナスの;組織特異的な;細胞特異的な;または時間(例えば、限定されないが、概日リズム)特異的な影響を与えるエレメントを除去することができる。配列番号2に含まれるプロモーターエレメント及びその断片またはエンハンサーのいずれかを用いて、キメラ転写調節エレメント組成物を作製することができる。
【0037】
本発明に従って、公知のプロモーターエレメント、例えば、TATAボックス及び他の公知の転写因子結合部位モチーフなどの存在について、すなわちDNA配列特性について、プロモーターまたはプロモーター断片を分析してもよい。当業者は、そのような公知のプロモーターエレメントの同定を用いて、元のプロモーターと同様の発現パターンを有するプロモーターの変異体を設計してもよい。
【0038】
本明細書中で使用する場合、用語「リーダー」とは、遺伝子の非翻訳5′領域(5′UTR)から単離され、一般的に転写開始部位(TSS)とタンパク質コード配列開始部位との間のヌクレオチドセグメントとして定義されるDNA分子を指す。あるいは、リーダーは、合成により作製または操作されたDNAエレメントであってもよい。リーダーは、作動可能に連結した転写可能なDNA分子の発現を調節するための5′調節エレメントとして使用することができる。リーダー分子は、異種プロモーターまたはそれらの天然のプロモーターとともに使用してもよい。本発明の実施に有用なリーダーは、配列番号3、もしくは配列番号3に含まれるリーダーエレメントのいずれか、またはその断片もしくは変異体として示される。特定の実施形態では、そのようなDNA配列は、例えば、トランスジェニック植物細胞を含む宿主細胞のリーダーとして作用することができるものとして定義され得る。一実施形態では、そのような配列はリーダー活性を有するものとして解読される。
【0039】
配列番号3、または配列番号3に含まれるリーダーエレメントのいずれかとして示されるリーダー配列(5′UTRとも呼ばれる)は、作動可能に連結した転写可能なDNA分子の転写または翻訳に影響を与えることができる、調節エレメントからなり得るかまたは二次構造を取り得る。配列番号3、または配列番号3に含まれるリーダーエレメントのいずれかとして示されるリーダー配列を、本発明に従って使用し、作動可能に連結した転写可能なDNA分子の転写または翻訳に影響を与えるキメラ調節エレメントを作製することができる。
【0040】
本明細書中で使用する場合、用語「イントロン」とは、遺伝子から単離または同定され得るDNA分子を指し、翻訳前にメッセンジャーRNA(mRNA)プロセシング中にスプライシングされる領域として一般的に定義され得る。あるいは、イントロンは、合成により作製または操作されたDNAエレメントであってもよい。イントロンは、作動可能に連結した遺伝子の転写に影響を及ぼすエンハンサーエレメントを含み得る。イントロンは、作動可能に連結した転写可能なDNA分子の発現を調節するための調節エレメントとして使用される場合がある。構築物はイントロンを含んでもよく、イントロンは転写可能なDNA分子に関して異種であってもなくてもよい。当該技術分野におけるイントロンの例として、イネアクチンイントロン及びトウモロコシHSP70イントロンが挙げられる。
【0041】
植物において、遺伝子構築物中にいくつかのイントロンを含めると、イントロンを欠く構築物に比べて、mRNA及びタンパク質の蓄積が増加する。この効果は遺伝子発現の「イントロン媒介性増強(IME)」と呼ばれている。植物における発現を刺激することが知られているイントロンは、トウモロコシ遺伝子(例えば、tubA1、Adh1、Sh1、及びUbi1)、イネ遺伝子(例えばtpi)、ならびにペチュニア(例えばrbcS)、ジャガイモ(例えば、st-ls1)、及びArabidopsis thaliana(例えば、ubq3及びpat1)由来遺伝子などの双子葉植物遺伝子から同定されている。イントロンのスプライス部位内の欠失または突然変異は遺伝子発現を減少させるが、このことはIMEにスプライシングが必要であることを示している可能性がある。しかしながら、双子葉植物におけるIMEは、A.thaliana由来pat1遺伝子のスプライス部位内の点突然変異によって示されている。1つの植物において同じイントロンを複数回使用することは、不利益を示すことが示されている。そのような場合、適切な組換えDNAエレメントを構築するために、基礎的な制御エレメントの集合を有することが必要である。
【0042】
本発明の実施に有用なイントロンを、配列番号4として示す。配列番号4として示すイントロンに由来する組成物は、シス調節エレメントの内部欠失または重複からなり得る。さらに、イントロン/エクソンスプライス接合部を含む5′及び3′配列の改変を用いて、プロモーター+リーダーまたはキメラプロモーター+リーダー及びコード配列に作動可能に連結した場合の発現または発現の特異性を向上させることができる。イントロン/エクソン境界配列を改変する場合、スプライス部位(GT)の5′末端直前のヌクレオチド配列ATまたはヌクレオチドA、及びスプライス部位(AG)の3′末端直後のヌクレオチドGまたはヌクレオチド配列TGの使用を避けて、メッセンジャーRNAの最終転写産物へのプロセッシング中に望ましくない開始コドンが形成される可能性を排除することが有効であり得る。このような方法で、イントロンの5′または3′末端スプライス接合部位周辺のDNA配列を改変することができる。本明細書において記載するように、及び当該分野で公知の方法を介して改変したイントロン及びイントロン変異体を、実施例に記載するように経験的な方法で試験して、作動可能に連結したDNA分子の発現に対するイントロンの影響を判定することができる。イントロン/エクソンスプライス接合部を含む5′及び3′領域の改変を行い、メッセンジャーRNAのプロセシング及びスプライシング後に得られる転写産物中に生成する誤った開始コドン及び停止コドンの導入の可能性を低減することもできる。イントロンを、実施例に記載されているような経験的な方法で試験して、導入遺伝子の発現に対するイントロンの影響を判定することができる。
【0043】
一実施形態では、本明細書に開示するイントロン配列の断片を提供する。イントロン断片は、全長イントロン配列の活性を有する場合があり、単独で、または他のイントロンまたは調節エレメントもしくは発現エレメントの断片との組み合わせにおいて有用であり得る。特定の実施形態では、本明細書に開示するイントロン活性を有する、少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175、少なくとも約200、少なくとも約225、少なくとも約250、少なくとも約275、少なくとも約300、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約750、少なくとも約800、少なくとも約900、または少なくとも約1000個の連続ヌクレオチド、またはそれ以上を有するDNA分子を含むイントロン断片を提供する。特定の実施形態では、全長配列の活性を有する配列番号4の断片を本明細書において提供する。開始イントロン分子からのそのような断片の生成方法は、当該技術分野において周知である。
【0044】
本明細書中で使用する場合、用語「3′転写終結分子」、「3′非翻訳領域」または「3′UTR」とは、mRNA分子の3′部分の非翻訳領域の転写中に使用されるDNA分子を指す。mRNA分子の3′非翻訳領域は、ポリAテールとしても知られ、特異的切断と3′ポリアデニル化によって生成され得る。3′UTRは、転写可能なDNA分子に作動可能に連結し、転写可能なDNA分子の下流に位置し、ポリアデニル化シグナル、及び転写、mRNAプロセシング、または遺伝子発現に影響を及ぼすことができる他の調節シグナルを含み得る。ポリAテールは、mRNAの安定化において、及び翻訳の開始において作用すると考えられている。当該技術分野における3′転写終結分子の例は、ノパリン合成酵素3′領域、コムギhsp17 3′領域、エンドウマメルビスコ小サブユニット3′領域、ワタE6 3′領域、及びコキシン3′UTRである。
【0045】
3′UTRは、通常、特定のDNA分子の組換え発現に有効に利用できる。弱い3′UTRは、リードスルーを生成する可能性があり、これは隣接する発現カセットに位置するDNA分子の発現に影響を与え得る。転写終結の適切な制御は、下流に局在化するDNA配列(例えば、他の発現カセット)へのリードスルーを防止することができ、さらにはRNAポリメラーゼの効率的な再利用を可能にして遺伝子発現を向上させることができる。転写の効率的な終結(DNAからのRNAポリメラーゼIIの遊離)は、転写の再開の前提条件であり、それによって全体の転写レベルに直接影響を及ぼす。転写終結に続いて、成熟mRNAが合成部位から遊離し、細胞質に輸送される。真核生物のmRNAは、in vivoにおいてポリ(A)形態で蓄積するため、従来の方法では転写終結部位を検出することが困難である。さらに、有効な3′UTRの予測が容易な保存DNA配列が存在しないため、バイオインフォマティクス法による機能的かつ効率的な3′UTRの予測は困難である。
【0046】
実用的な観点からは、発現カセットで使用する3′UTRが以下の特徴を有することが一般的に有益である。第一に、3′UTRは、導入遺伝子の転写を効率的かつ効果的に終結させ、1つの転移DNA(T-DNA)に存在する複数の発現カセット、またはT-DNAが挿入された隣接染色体DNAの場合のように別の発現カセットからなり得る隣接DNA配列への転写産物のリードスルーを防止することができるべきである。第二に、3′UTRは、DNA分子の発現を促進するために用いるプロモーター、リーダー、エンハンサー、及びイントロンによって付与される転写活性を低下させるべきではない。最後に、植物バイオテクノロジーにおいて、3′UTRは、形質転換した植物から抽出した逆転写RNAの増幅反応のプライミングにしばしば用いられ:(1)一旦植物染色体に組み込まれた発現カセットの転写活性または発現を評価し;(2)植物DNA内の挿入のコピー数を評価し;及び(3)育種後に得られる種子の接合状態を評価するために用いられる。3′UTRはまた、挿入されたカセットの完全性を特徴付けるための、形質転換植物から抽出したDNAの増幅反応にも用いられる。本発明の実施に有用な例示的な3′UTRを、配列番号5として示す。
【0047】
一実施形態では、本明細書に開示する3′UTRの断片を提供する。3′UTR断片は、完全長3′UTR配列の活性を有する場合があり、単独で、または他の調節エレメントもしくは発現エレメントの断片との組み合わせにおいて有用であり得る。特定の実施形態では、本明細書に開示する3′UTR活性を有する、少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175、少なくとも約200、少なくとも約225、少なくとも約250、少なくとも約275、少なくとも約300、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約750、少なくとも約800、少なくとも約900、または少なくとも約1000個の連続ヌクレオチド、またはそれ以上を有するDNA分子を含む3′UTRの断片を提供する。特定の実施形態では、全長配列の活性を有する配列番号5の断片を本明細書において提供する。出発3′UTR分子からのそのような断片の生成方法は、当該技術分野において周知である。
【0048】
本明細書中で使用する場合、用語「エンハンサー」または「エンハンサーエレメント」とは、シス作用性調節エレメント、別名シスエレメントを指し、このエレメントは、全体的な発現パターンの態様を与えるが、通常、作動可能に連結した転写可能なDNA分子の転写を単独で促進するには不十分である。プロモーターとは異なり、エンハンサーエレメントは、通常、転写開始部位(TSS)、TATAボックスまたは同等のDNA配列を含まない。プロモーターまたはプロモーター断片は、作動可能に連結したDNA配列の転写に影響を及ぼす1つ以上のエンハンサーエレメントを天然状態で含む場合がある。エンハンサーエレメントをプロモーターに融合し、遺伝子発現の全体的調節の態様を与えるキメラプロモーターシスエレメントを生成してもよい。本発明の実施に有用なBouteloua gracilis推定ユビキチン遺伝子プロモーター由来エンハンサーエレメントの例を、配列番号7として示す。
【0049】
多くのプロモーターエンハンサーエレメントは、DNA結合タンパク質に結合し、及び/またはDNAトポロジーに影響を与え、RNAポリメラーゼのDNA鋳型へのアクセスを選択的に可能にするかもしくは制限する、または転写開始部位での二重らせんの選択的開放を促進する局所コンフォメーションを生成すると考えられている。エンハンサーエレメントは、転写を調節する転写因子に結合するように機能し得る。いくつかのエンハンサーエレメントは2つ以上の転写因子に結合し、転写因子は1つより多くのエンハンサードメインと異なるアフィニティーで相互作用し得る。エンハンサーエレメントは、欠失分析、すなわち、プロモーターの5′末端または内部からの1つ以上のヌクレオチドの削除、DNase Iフットプリンティングを用いるDNA結合タンパク質分析、メチル化干渉法、電気泳動移動度シフトアッセイ、ligation-mediatedポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるin vivoゲノムフットプリンティング、及び他の従来のアッセイを含む多くの技術によって、またはBLASTなどの従来のDNA配列比較法とともに、標的配列または標的モチーフとしての公知のシスエレメントモチーフまたはエンハンサーエレメントを用いるDNA配列相同性分析によって、同定することができる。1つ以上のヌクレオチドの突然変異誘発(または置換)によって、または当該分野で公知の他の従来の方法によって、エンハンサードメインの微細構造をさらに試験することができる。エンハンサーエレメントは、化学合成によって、またはそのようなエレメントを含む調節エレメントからの単離によって得ることができ、有用な制限酵素部位を含む追加の隣接ヌクレオチドを用いて合成し、サブシーケンス操作を容易にすることができる。作動可能に連結した転写可能なDNA分子の発現を調節するためのエンハンサーエレメントの設計、構築、及び使用は、本発明に包含される。
【0050】
本明細書中で使用する用語「キメラ」とは、第一のDNA分子を第二のDNA分子に融合させることによって生成する単一のDNA分子を指し、この場合、第一及び第二のDNA分子は、いずれもその構成、すなわち他方への融合が通常見出されない。したがって、キメラDNA分子は、自然界では通常認められない新規DNA分子である。本明細書中で使用する場合、用語「キメラプロモーター」とは、DNA分子のそのような操作を介して生成するプロモーターを指す。キメラプロモーターは、2つ以上のDNA断片を組み合わせてもよく;例えば、プロモーターとエンハンサーエレメントとの融合体であってもよい。作動可能に連結した転写可能なDNA分子の発現を調節するためのキメラプロモーターの設計、構築、及び使用は、本発明に包含される。
【0051】
キメラ調節エレメントは、当該分野で公知の様々な方法、例えば、制限酵素消化及びライゲーション、ライゲーション非依存的クローニング、増幅中のPCR産物のモジュラーアセンブリ、または調節エレメントの直接化学合成、及び当該分野で公知の他の方法によって、作動可能に連結し得る様々な構成エレメントを含むように設計することができる。得られる様々なキメラ調節エレメントは、同一の構成エレメント、または同一の構成エレメントの変異体からなることができるが、DNA配列、または連結DNA配列を含むDNA配列、または構成部分が作動可能に連結することを可能にする配列において異なる。本発明では、配列番号1~5または7として提供するDNA配列は、調節エレメント参照配列を提供してもよく、参照配列を含む構成エレメントを、当該分野で公知の方法によって連結してもよく、1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、及び/または挿入、または細菌及び植物細胞の形質転換において天然に生じる突然変異を含み得る。
【0052】
本明細書中で使用する場合、用語「変異体」とは、第一のDNA分子に類似しているが同一ではない組成の第二のDNA分子、例えば調節エレメントを指し、その場合、それでもなお、第二のDNA分子は、例えば、第一のDNA分子とほぼ等価な転写活性を介して、一般的な機能、すなわち、同じまたは類似の発現パターンを維持している。変異体は、異なる制限酵素部位、または内部欠失、置換、もしくは挿入を有するもののような、第一のDNA分子の短縮型もしくは切断型、または第一のDNA分子の配列の改変型であってもよい。「変異体」はまた、参照配列の1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、または挿入を含むヌクレオチド配列を有する調節エレメントを包含することができ、その誘導調節エレメントは、対応する親調節分子とほぼ同等の転写または翻訳活性を有する。調節エレメント「変異体」はまた、細菌及び植物細胞の形質転換において天然に生じる突然変異から生じる変異体も包含する。本発明において、配列番号1~5または7として提供するポリヌクレオチド配列は、元の調節エレメントのDNA配列と組成は類似しているが同一ではなく、その一方で、元の調節エレメントの一般的な機能性、すなわち、同じまたは類似の発現パターンを維持している変異体を作製するために使用され得る。本発明のそのような変異体の製造は、本開示に照らして十分に当業者の範囲内であり、本発明の範囲内に包含される。
【0053】
特定の導入遺伝子の所望の発現態様に対する本明細書に記載の改変、重複、または欠失の有効性を、安定かつ一過性の植物アッセイ、例えば、本明細書の実施例に記載するアッセイにおいて、経験的な方法で試験し、その結果を評価してもよく、結果は、開始DNA分子に対して為す変化及び変化の目標に応じて様々に異なり得る。
【0054】
構築物
本明細書中で使用する場合、用語「構築物」とは、少なくとも1つのDNA分子が別のDNA分子に機能的に作動的な様式で連結している、すなわち作動可能に連結したDNA分子を含む、ゲノム組み込みまたは自律複製が可能な任意の供給源に由来する任意の組換えDNA分子、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、または線状もしくは環状DNAもしくはRNA分子などを意味する。本明細書中で使用する場合、用語「ベクター」とは、形質転換、すなわち、異種DNAまたはRNAの宿主細胞への導入のために使用し得る任意の構築物を意味する。構築物は、通常、1つ以上の発現カセットを含む。本明細書中で使用する場合、「発現カセット」とは、1つ以上の調節エレメント、一般的には少なくともプロモーター及び3′UTRに作動可能に連結した少なくとも転写可能なDNA分子を含むDNA分子を指す。
【0055】
本明細書中で使用する場合、用語「作動可能に連結した」とは、第二のDNA分子に結合した第一のDNA分子を指し、その場合、第一及び第二のDNA分子は、第一のDNA分子が第二のDNA分子の機能に影響を及ぼすように配置される。2つのDNA分子は、単一の連続DNA分子の一部であってもなくてもよく、隣接していてもいなくてもよい。例えば、プロモーターが細胞内の目的の転写可能なDNA分子の転写を調節する場合、プロモーターは転写可能なDNA分子に作動可能に連結している。リーダーは、例えば、DNA配列の転写または翻訳に影響を及ぼすことができる場合、DNA配列に作動可能に連結している。
【0056】
本発明の構築物は、一実施形態では、T-DNAを含むAgrobacterium tumefaciensから単離されたTiプラスミドの右境界(RBまたはAGRtu.RB)及び左境界(LBまたはAGRtu.LB)領域を有する二重腫瘍誘導性(Ti)プラスミド境界構築物として提供される場合があり、これは、A.tumefaciens細胞によって提供されるトランスファー分子と共に、植物細胞のゲノム中へのT-DNAの組み込みを可能にする(例えば、米国特許第6,603,061号参照)。構築物はまた、細菌細胞において複製機能及び抗生物質選択を提供するプラスミド骨格DNAセグメント、例えば、ori322などの大腸菌複製起点、oriVまたはoriRiなどの広範な宿主範囲の複製起点、及び選択可能なマーカー、例えば、スペクチノマイシンもしくはストレプトマイシンに対する耐性を付与するTn7アミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼ(aadA)をコードするSpec/Strpなどの選択可能なマーカー、またはゲンタマイシン(Gm、Gent)選択マーカー遺伝子のコード領域を含有する場合がある。植物形質転換については、宿主細菌株はしばしばA.tumefaciens ABI、C58、またはLBA4404である;しかしながら、植物形質転換の当業者に公知の他の菌株も本発明において機能し得る。
【0057】
転写可能なDNA分子を機能的mRNA分子に転写し、翻訳してタンパク質として発現させるような方法で、細胞に構築物を組み立てて導入する方法は、当該技術分野で公知である。本発明の実施のために、構築物及び宿主細胞を調製及び使用するための従来の組成物及び方法は、当業者に周知である。高等植物における核酸の発現に有用な一般的なベクターは、当該技術分野で周知であり、Agrobacterium tumefaciensのTiプラスミド由来ベクター及びpCaMVCN導入制御ベクターが挙げられる。
【0058】
本明細書において提供するいずれかのものを含む、様々な調節エレメントが構築物に含まれ得る。そのような調節エレメントを、他の調節エレメントと組み合わせて提供してもよい。そのような組み合わせは、望ましい調節機能を生じるように設計または改変することができる。一実施形態では、本発明の構築物は、3′UTRに作動可能に連結した転写可能なDNA分子に作動可能に連結した少なくとも1つの調節エレメントを含む。
【0059】
本発明の構築物は、本明細書に提供されるか、または当該技術分野で公知の任意のプロモーターまたはリーダーを含む場合がある。例えば、本発明のプロモーターを、熱ショックタンパク質遺伝子由来のリーダーのような異種非翻訳5′リーダーに作動可能に連結させてもよい。あるいは、本発明のリーダーを、カリフラワーモザイクウイルス35S転写プロモーターのような異種プロモーターに作動可能に連結させてもよい。
【0060】
発現カセットはまた、機能的に連結したタンパク質、特に、葉緑体、ロイコプラスト、もしくは他の色素体小器官;ミトコンドリア;ペルオキシソーム;液胞;または細胞外の位置の細胞内標的化に有用なペプチドをコードする輸送ペプチドコード配列を含む場合がある。多くの葉緑体に局在するタンパク質は、前駆体として核遺伝子から発現し、葉緑体輸送ペプチド(CTP)によって葉緑体に標的化される。そのような単離された葉緑体タンパク質の例として、リブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(SSU)に関連するもの、フェレドキシン、フェレドキシンオキシドレダクターゼ、光収穫複合体タンパク質I及びタンパク質II、チオレドキシンF、及びエノールピルビルシキミ酸リン酸シンターゼ(EPSPS)が挙げられるが、これらに限定されない。葉緑体輸送ペプチドは、例えば、米国特許第7,193,133号に記載されている。非葉緑体タンパク質をコードする導入遺伝子に作動可能に連結した異種CTPを発現させることにより、非葉緑体タンパク質を葉緑体に標的化し得ることが実証されている。
【0061】
転写可能なDNA分子
本明細書中で使用する場合、用語「転写可能なDNA分子」とは、タンパク質コード配列を有するもの及び遺伝子の抑制に有用な配列を有するRNA分子を産生するものを含むがこれらに限定されない、RNA分子に転写可能な任意のDNA分子を指す。DNA分子のタイプは、同じ植物由来のDNA分子、別の植物由来のDNA分子、異なる生物由来のDNA分子、または合成DNA分子、例えば、遺伝子のアンチセンスメッセージを有するDNA分子、または導入遺伝子の人工的、合成的、もしくは別の方法で修飾されたバージョンをコードするDNA分子を含み得るが、これらに限定されない。本発明の構築物に組み込むための例示的な転写可能なDNA分子として、例えば、DNA分子を組み込む種以外の種由来のDNA分子もしくは遺伝子、または同じ種に由来もしくは存在するが、古典的な育種技術ではなく遺伝子工学的手法によりレシピエント細胞に組み込む遺伝子が挙げられる。
【0062】
「導入遺伝子」とは、少なくとも宿主細胞ゲノム中のその位置に関して宿主細胞に対して異種である転写可能なDNA分子、または現在の世代もしくは任意の前世代の宿主細胞の宿主細胞ゲノムに人工的に組み込まれる転写可能なDNA分子を指す。
【0063】
本発明のプロモーターのような調節エレメントを、調節エレメントに関して異種である転写可能なDNA分子に作動可能に連結してもよい。本明細書中で使用する場合、用語「異種」とは、そのような組み合わせが通常天然には見出されない場合の2つ以上のDNA分子の組み合わせを指す。例えば、2つのDNA分子は異なる種に由来してもよく、または2つのDNA分子は異なる遺伝子、例えば同じ種由来の異なる遺伝子もしくは異なる種由来の同じ遺伝子由来であってもよい。このようにして、そのような組み合わせが自然界に通常見出されない場合、すなわち、転写可能なDNA分子が調節エレメントに作動可能に連結していない場合、調節エレメントは、作動可能に連結した転写可能なDNA分子に関して異種である。
【0064】
転写可能なDNA分子は、一般的に、転写産物の発現が所望される任意のDNA分子であってよい。そのような転写産物の発現は、結果として生じるmRNA分子の翻訳、ひいてはタンパク質発現をもたらし得る。あるいは、例えば、転写可能なDNA分子は、最終的に特定の遺伝子またはタンパク質の発現の低下を引き起こすように設計してもよい。一実施形態では、アンチセンス方向に配向した転写可能なDNA分子を使用することによって、これを達成してもよい。当業者であれば、そのようなアンチセンス技術の使用に精通している。このような方法で任意の遺伝子を負に調節してもよく、一実施形態では、転写可能なDNA分子を、dsRNA、siRNA、またはmiRNA分子の発現を介した特定の遺伝子の抑制のために設計してもよい。
【0065】
したがって、本発明の一実施形態は、構築物がトランスジェニック植物細胞のゲノムに組み込まれる場合に所望のレベルまたは所望のパターンで転写可能なDNA分子の転写を調節するための、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結した、配列番号1~5または7として提供されるような、本発明の調節エレメントを含む組換えDNA分子である。一実施形態では、転写可能なDNA分子は、遺伝子のタンパク質コード領域を含み、別の実施形態では、転写可能なDNA分子は、遺伝子のアンチセンス領域を含む。
【0066】
農学的関心対象遺伝子
転写可能なDNA分子は、農学的関心対象遺伝子であってもよい。本明細書中で使用する場合、用語「農学的関心対象遺伝子」とは、特定の植物組織、細胞、または細胞型で発現する場合に、所望の特性を付与する転写可能なDNA分子を指す。農学的関心対象遺伝子の産物は、植物の形態、生理、生長、発生、収量、穀物組成、栄養特性、病害もしくは害虫抵抗性、環境耐性もしくは化学耐性に影響を及ぼすために植物内で作用し得るか、または植物に与える肥料中の害虫の殺虫剤として作用し得る。本発明の一実施形態では、本発明の調節エレメントを、調節エレメントが、農学的関心対象遺伝子である転写可能なDNA分子に作動可能に連結するように、構築物に組み込む。そのような構築物を含むトランスジェニック植物では、農学的関心対象遺伝子の発現は有益な農業形質を付与することができる。有益な農業形質は、例えば、除草剤耐性、昆虫防除、収量の改変、病害抵抗性、病原体耐性、植物生長及び植物発生の改変、デンプン含量の改変、油含量の改変、脂肪酸含量の改変、タンパク質含量の改変、果実成熟の改質、動物及びヒトの栄養向上、バイオポリマー製品、環境ストレス耐性、ペプチド医薬品、加工品質の改良、風味の改良、ハイブリッド種子生産の有用性、繊維生産の向上、及び望ましいバイオ燃料生産が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
当該技術分野で公知の農学的関心対象遺伝子の例として、除草剤耐性(例えば、米国特許第6,803,501号;第6,448,476号;第6,248,876号;第6,225,114号;第6,107,549号;第5,866,775号;第5,804,425号;第5,633,435号;及び第5,463,175号)、収量の増加(例えば、米国特許第USRE38,446号;第6,716,474;6,663,906号;第6,476,295号;第6,441,277号;第6,423,828号;第6,399,330号;第6,372,211号;第6,235,971号;第6,222,098号;及び第5,716,837号)、害虫防除(例えば、米国特許第6,809,078号;第6,713,063号;第6,686,452号;第6,657,046号;第6,645,497号;第6,642,030号;第6,639,054号;第6,620,988号;第6,593,293号;第6,555,655号;第6,538,109号;第6,537,756号;第6,521,442号;第6,501,009号;第6,468,523号;第6,326,351号;第6,313,378号;第6,284,949号;第6,281,016号;第6,248,536号;第6,242,241号;第6,221,649号;第6,177,615号;第6,156,573号;第6,153,814号;第6,110,464号;第6,093,695号;第6,063,756号;第6,063,597号;第6,023,013号;第5,959,091号;第5,942,664号;第5,942,658号,第5,880,275号;第5,763,245号;及び第5,763,241号)、真菌病耐性(例えば、米国特許第6,653,280号;第6,573,361号;第6,506,962号;第6,316,407号;第6,215,048号;第5,516,671号;第5,773,696号;第6,121,436号;第6,316,407号;及び第6,506,962号)、ウイルス抵抗性(例えば、米国特許第6,617,496号;第6,608,241号;第6,015,940号;第6,013,864号;第5,850,023号;及び第5,304,730号)、植物病害抵抗性(例えば、米国特許第6,228,992号)、細菌病抵抗性(例えば、米国特許第5,516,671号)、植物生長及び発生(例えば、米国特許第6,723,897号及び第6,518,488号)、デンプンの産生(例えば、米国特許第6,538,181号;第6,538,179号;第6,538,178号;第5,750,876号;第6,476,295号)、改質油生産(例えば、米国特許第6,444,876号;第6,426,447号;及び第6,380,462号)、高油生産(例えば、米国特許第6,495,739号;第5,608,149号;第6,483,008号;及び第6,476,295号)、脂肪酸含量の改変(例えば、米国特許第6,828,475号;第6,822,141号;第6,770,465号;第6,706,950号;第6,660,849号;第6,596,538号;第6,589,767号;第6,537,750号;第6,489,461号;及び第6,459,018号)、高タンパク質生産(例えば、米国特許第6,380,466号)、果実成熟(例えば、米国特許第5,512,466号)、動物及びヒトの栄養向上(例えば、米国特許第6,723,837号;第6,653,530号;第6,5412,59号;第5,985,605号;及び第6,171,640号)、バイオポリマー(例えば、米国特許第USRE37,543号、第6,228,623号;及び第5,958,745号、ならびに第6,946,588号)、環境ストレス耐性(例えば、米国特許第6,072,103号)、ペプチド医薬品及び分泌性ペプチド(例えば、米国特許第6,812,379号;第6,774,283号;第6,140,075号;及び第6,080,560号)、プロセシング特性の向上(例えば、米国特許第6,476,295号)、消化率の向上(例えば、米国特許第6,531,648号)、低ラフィノース(例えば、米国特許第6,166,292号)、工業的酵素生産(例えば、米国特許第5,543,576号)、風味の向上(例えば、米国特許第6,011,199号)、窒素固定(例えば、米国特許第5,229,114号)、ハイブリッド種子生産(例えば、米国特許第5,689,041号)、繊維生産(例えば、米国特許第6,576,818号;第6,271,443号;第5,981,834号;及び第5,869,720号)及びバイオ燃料製造(例えば、米国特許第5,998,700号)が挙げられる。
【0068】
あるいは、農学的関心対象遺伝子は、例えばアンチセンス(例えば、米国特許第5,107,065号参照);阻害性RNA(例えば、特許出願公開U.S.2006/0200878、及びU.S.2008/0066206、ならびに米国特許出願11/974,469号に記載されているような、miRNA、siRNA、トランス作用性siRNA、及び段階的sRNAを介した機構による遺伝子発現の調節を含む「RNAi」);またはコサプレッションを介した機構によって、内在性遺伝子の遺伝子発現の標的化された調節を引き起こすRNA分子をコードすることにより、上記の植物の特徴または表現型に影響を及ぼすことができる。RNAはまた、所望の内在性mRNA産物を切断するように改変された触媒性RNA分子(例えば、リボザイムまたはリボスイッチ;例えば、U.S.2006/0200878参照)であり得る。転写可能なDNA分子が遺伝子抑制を引き起こすことができる分子に転写されるように構築物を構築して細胞に導入する方法は、当該分野で公知である。
【0069】
選択マーカー
選択可能なマーカー導入遺伝子もまた、本発明の調節エレメントとともに使用してもよい。本明細書中で使用する場合、用語「選択可能なマーカー導入遺伝子」とは、トランスジェニック植物、組織または細胞における発現、またはその欠如を何らかの方法でスクリーニングまたはスコア評価できる任意の転写可能なDNA分子を指す。本発明の実施に使用するための選択マーカー遺伝子及びそれらに関連する選択及びスクリーニング技術は、当該技術分野で公知であり、β-グルクロニダーゼ(GUS)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、抗生物質耐性を付与するタンパク質、及び除草剤耐性を付与するタンパク質をコードする転写可能なDNA分子が挙げられるが、これらに限定されない。選択可能なマーカー導入遺伝子の例を、配列番号6として提供する。
【0070】
細胞の形質変換
本発明はまた、転写可能なDNA分子に作動可能に連結した1つ以上の調節エレメントを含む形質転換細胞及び植物の製造方法に関する。
【0071】
用語「形質転換」とは、レシピエント宿主へのDNA分子の導入を指す。本明細書中で使用する場合、用語「宿主」とは、細菌、真菌、または植物の任意の細胞、組織、器官、または子孫を含む、細菌、真菌、または植物を指す。植物組織及び特定の関心対象の細胞として、プロトプラスト、カルス、根、塊茎、種子、茎、葉、苗、胚、及び花粉が挙げられる。
【0072】
本明細書中で使用する場合、用語「形質転換した」とは、構築物などの外来DNA分子を導入した細胞、組織、器官、または生物を指す。導入するDNA分子は、導入するDNA分子がその後の子孫へ遺伝するように、レシピエント細胞、組織、器官、または生物のゲノムDNAに組み込んでもよい。「トランスジェニック」または「形質転換した」細胞または生物は、細胞または生物の子孫、及びそのようなトランスジェニック生物を交配において親として用い、外来のDNA分子の存在に起因する変化した表現型を示す育種プログラムから生成した子孫も含み得る。導入するDNA分子は、導入するDNA分子がその後の子孫によって受け継がれないように、レシピエント細胞に一過的に導入してもよい。用語「トランスジェニック」とは、1つ以上の異種DNA分子を保有する細菌、真菌、または植物を指す。
【0073】
植物細胞にDNA分子を導入する多くの方法が当業者に周知である。そのプロセスは、一般的に、適切な宿主細胞を選択し、宿主細胞をベクターで形質転換し、形質転換された宿主細胞を得る工程を含む。本発明の実施において植物ゲノムに植物構築物を導入することによって植物細胞を形質転換するための方法及び材料は、周知の方法及び示す方法のいずれかを含み得る。適切な方法として、細菌感染(例えば、Agrobacterium)、バイナリーBACベクター、DNAの直接送達(例えば、PEGを介した形質転換、乾燥/阻害を介したDNA取り込み、電気穿孔法、炭化ケイ素繊維による攪拌、DNAコーティング粒子加速)、遺伝子編集(例えば、CRISPR-Cas系)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
宿主細胞は、植物細胞、藻類細胞、藻類、真菌細胞、菌類、細菌細胞、または昆虫細胞などの任意の細胞または生物であってもよい。特定の実施形態では、宿主細胞及び形質転換細胞は、作物植物由来の細胞を含む場合がある。
【0075】
続いて、トランスジェニック植物を、本発明のトランスジェニック植物細胞から再生してもよい。従来の育種技術または自家受粉を用いて、このトランスジェニック植物から種子を生産してもよい。そのような種子、及びそのような種子から生長させて得られる子孫植物は、本発明の組換えDNA分子を保有し、したがってトランスジェニックである。
【0076】
本発明のトランスジェニック植物(組換えDNA分子に関してホモ接合性)は、自家受粉して本発明のホモ接合型トランスジェニック植物の種子を提供するか、または非トランスジェニック植物または異なるトランスジェニック植物と交雑させて、本発明のヘテロ接合型トランスジェニック植物(組換えDNA分子に関してヘテロ接合性)を提供することができる。そのようなホモ接合型及びヘテロ接合型トランスジェニック植物の両方を、本明細書では「子孫植物」と呼ぶ。子孫植物は、元のトランスジェニック植物に由来し、本発明の組換えDNA分子を含むトランスジェニック植物である。本発明のトランスジェニック植物を使用して生産した種子を収穫し、これを使用してトランスジェニック植物の世代、すなわち、本発明の構築物を含み、農学的関心対象遺伝子を発現する本発明の子孫植物を生長させることができる。様々な作物に一般的に使用されている育種方法の説明は、いくつかの参考文献のうちの1つに見出すことができ、例えば、Allard,Principles of Plant Breeding,John Wiley & Sons,NY,U.of CA,Davis,CA,50-98(1960);Simmonds,Principles of Crop Improvement,Longman,Inc.,NY,369-399(1979);Sneep and Hendriksen,Plant breeding Perspectives,Wageningen(ed),Center for Agricultural Publishing and Documentation(1979);Fehr,Soybeans:Improvement,Production and Uses,2nd Edition,Monograph,16:249(1987);Fehr,Principles of Variety Development,Theory and Technique,(Vol.1)and Crop Species Soybean(Vol.2),Iowa State Univ.,Macmillan Pub.Co.,NY,360-376(1987)参照。
【0077】
形質転換した植物を、関心対象の遺伝子または遺伝子群の存在ならびに本発明の調節エレメントによって付与される発現レベル及び特性について分析してもよい。当業者であれば、形質転換植物の分析に利用可能な多数の方法を認識している。例えば、植物分析のための方法として、サザンブロットまたはノーザンブロット、PCRに基づくアプローチ、生化学的分析、表現型スクリーニング法、野外評価、及び免疫診断アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。転写可能なDNA分子の発現は、TaqMan(登録商標)(Applied Biosystems、Foster City、CA)試薬及び製造業者によって記載される方法ならびにTaqMan(登録商標)Testing Matrixを使用して決定されるPCRサイクル時間を用いて測定することができる。あるいは、製造業者が記載するInvader(登録商標)(Third Wave Technologies、Madison、WI)試薬及び方法を用いて導入遺伝子発現を評価することができる。
【0078】
本発明はまた、本発明の植物の部分を提供する。植物部分には、葉、茎、根、塊茎、種子、胚乳、胚珠、及び花粉が含まれるが、これらに限定されない。本発明の植物部分は、生存可能、生存不可能、再生可能、及び再生不可能であってもよい。本発明はまた、本発明のDNA分子を保有する形質転換植物細胞を含み、提供する。本発明の形質転換またはトランスジェニック植物細胞は、再生可能及び再生不可能な植物細胞を含む。
【0079】
本発明はまた、本発明の組換えDNA分子を保有するトランスジェニック植物またはその一部から産生されるコモディティ製品を提供する。本発明のコモディティ製品は、配列番号1~5または7からなる群から選択されるDNA配列を有する検出可能な量のDNAを含む。本明細書中で使用する場合、「コモディティ製品」とは、本発明の組換えDNA分子を保有するトランスジェニック植物、種子、植物細胞、または植物部分に由来する材料である。コモディティ製品には、処理した種子、穀物、植物部分、及びミールが含まれるが、これらに限定されない。本発明のコモディティ製品は、本発明の組換えDNA分子に対応する検出可能な量のDNAを含有する。試料中のこのDNAの1つ以上の検出を、コモディティ製品の含有量または供給源を決定するために使用してもよい。本明細書に開示する検出方法を含む、DNA分子の検出の標準的な方法を使用してもよい。
【0080】
本発明は、説明のために提供する以下の実施例を参照することによって、より容易に理解され得、特に断りのない限り、本発明を限定することを意図するものではない。以下の実施例に開示する技術が、本発明の実施において良好に機能するために本発明者らが発見した技術を表すことは、当業者には理解されるべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示する特定の実施形態において多くの変更を行い、それでもなお、類似または同様の結果を得ることができ、したがって、示されているすべての事項は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈すべきではないことを認識すべきである。
【実施例0081】
実施例1
調節エレメントの同定及びクローニング
新規転写調節エレメント及び調節発現エレメント群(EXP)を同定し、単子葉植物Bouteloua gracilisのゲノムDNAからクローニングした。
【0082】
同定した配列を用いて、バイオインフォマティクス分析を実施し、増幅したDNA内の調節エレメントを同定した。例えば、バイオインフォマティクス分析を実施し、転写開始部位(TSS)及び任意の双方向性、イントロン、または配列中に存在する上流コード配列を同定した。この分析の結果を用いて、DNA配列内に調節エレメントを定義し、調節エレメントを増幅するようにプライマーを設計した。ユニークな制限酵素部位を含むプライマー及びBouteloua gracilisから単離されたゲノムDNAを用い、標準的なポリメラーゼ連鎖反応条件を用いて、調節エレメントに対応するDNA分子を増幅した。得られたDNA断片を、適合する制限酵素部位の標準的制限酵素消化及びDNAライゲーション法を用いて、ベースとなる植物発現ベクターに連結した。
【0083】
形質転換植物組織を用いて、調節エレメントTSS及びイントロン/エクソンスプライス接合部の分析を行うことができる。簡潔には、異種の転写可能なDNA分子に作動可能に連結したクローニングしたDNA断片を含む植物発現ベクターで植物を形質転換する。次に、cDNA末端の迅速増幅用の5′RACEシステム、バージョン2.0(Invitrogen、Carlsbad、California92008)を使用して、産生されるmRNA転写産物のDNA配列を分析することによって、調節エレメントTSS及びイントロン/エクソンスプライス接合部を確認する。
【0084】
イントロンエレメントに作動可能に連結したリーダーエレメントに作動可能に連結したプロモーターエレメントを含む推定ユビキチン遺伝子に由来するBouteloua gracilis転写調節発現エレメント群またはEXP配列をコードするDNA配列を、対応するプロモーター、リーダー、及びイントロンとともに、表1に示し、Bouteloua gracilis推定ユビキチン遺伝子に対応する3′UTRも表1に示す。
表1:Bouteloua gracilisから単離した転写調節発現エレメント群、プロモーター、リーダー、イントロン、及び3′UTR。
【表1】
【0085】
実施例2
安定的に形質転換したトウモロコシ植物におけるGUS発現を駆動する調節エレメントの分析
トウモロコシ植物を、ベクター、具体的には、β-グルクロニダーゼ(GUS)導入遺伝子の発現を駆動する試験調節エレメントを含む植物発現ベクターで形質転換した。得られた植物をGUSタンパク質発現について分析し、選択した調節エレメントの発現に対する効果を評価した。
【0086】
トウモロコシ植物を植物GUS発現構築物で形質転換した。当該技術分野で公知の標準的な方法を用いて、調節エレメントをベースとなる植物発現ベクターにクローニングした。得られた植物発現ベクターは、除草剤グリホサートに対する耐性を付与する、形質転換植物細胞の選択に使用される第一の導入遺伝子選択カセットであるAgrobacterium tumefaciens(B-AGRtu.left border)由来の左境界領域;3′終結領域であるT-BOUgr.Ubq:1(配列番号5)の5′に作動可能に連結したジャガイモ光誘導性組織特異的ST-LS1遺伝子(Genbank受託番号:X04753)由来のプロセシング可能なイントロンを含むβ-グルクロニダーゼ(GUS、GOI-Ec.uidA+St.LS1.nno:1、配列番号6)をコードする植物細胞における発現のために設計した合成コード配列の5′に作動可能に連結したEXP-BOUgr.Ubq:2(配列番号1)を含む調節エレメントの活性を評価するための第二の導入遺伝子カセット;及びAgrobacterium tumefaciens(B-AGRtu.right border)由来の右境界領域を含む。
【0087】
当該技術分野で周知のように、上記のバイナリー形質転換ベクター構築物を用いて、Agrobacteriumを介した形質転換によってトウモロコシ植物細胞を形質転換した。得られた形質転換植物細胞を誘導してトウモロコシ植物全体を形成させた。
【0088】
組織化学的GUS分析を、形質転換植物の定性的及び定量的発現分析に使用した。全組織切片をGUS染色溶液X-Gluc(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-b-グルクロニド)(1mg/ml)と共に適切な時間インキュベートし、すすぎ、青色着色を目視検査した。選択した植物器官及び組織を用いた直接目視検査または顕微鏡下での検査によって、GUS活性を定性的に決定した。
【0089】
GUS発現の定量分析のために、形質転換トウモロコシ植物の選択した組織から全タンパク質を抽出した。1μgの全タンパク質を、50μlの全反応容量で、蛍光発生基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニド(MUG)とともに使用した。反応産物4-メチルウンベリフェロン(4-MU)は、ヒドロキシル基がイオン化される高pHにおいて最大限の蛍光を発する。炭酸ナトリウムの塩基性溶液の添加により、アッセイを停止させ、同時に、蛍光産物を定量するためのpHを調整する。365nmでの励起、445nmでの発光、励起2nm及び発光3nmでのスリット幅の設定を有するMicromax Readerを備えたFluoromax-3を用いて蛍光を測定した。値を、nmol GUS/時間/mg全タンパク質の単位で提供する。
【0090】
世代におけるGUS発現に関して、以下の組織をサンプリングした:V4期の葉及び根;V7期の葉と根;VT期の花/葯、葉、及び根;R1期の穂軸と絹;受粉21日後のR3期(DAP)種子胚及び胚乳。以下の表2は、EXP-BOUgr.Ubq:2(配列番号1)及びT-BOUgr.Ubq:1(配列番号5)を含む調節エレメント導入遺伝子カセットによって駆動されるサンプリング組織のそれぞれについての平均定量的GUS発現を示す。
表2.Bouteloua gracilis由来の調節エレメントによって駆動される安定形質転換トウモロコシ植物における平均定量的GUS発現。
【表2】
【0091】
表2に認められるように、調節エレメントによって付与された最も高レベルの発現が、R3,受粉21日後の種子胚及び胚乳において観察された。VT期の花、葯、及び葉においても高い発現が観察された。葉での発現は、V4期からV7期にかけて葉において増加するようであった。根での発現は、V4期からV7期にかけて低下し、その後、V7期からVT期にかけては同様のままであった。
【0092】
実施例3
調節エレメントに由来するエンハンサーエレメント
エンハンサーは、配列番号2として示すプロモーターエレメントに由来する。エンハンサーエレメントは、プロモーターエレメントの5′もしくは3′に作動可能に連結するか、またはプロモーターに作動可能に連結するさらなるエンハンサーエレメントの5′または3′に作動可能に連結する場合に、転写可能なDNA分子の発現レベルを増強または調節するか、あるいは特定の細胞型または植物器官または発生もしくは概日リズムの特定の時点での転写可能なDNA分子の発現を提供することができる1つ以上のシス調節エレメントからなり得る。エンハンサーは、TATAボックスまたは機能的に類似のエレメント及び配列番号2またはその断片として示されるプロモーターからの転写を開始させることを可能にする、プロモーターからの下流の配列を除去することによって作製される。
【0093】
植物プロモーターにおけるTATAボックスは、いくつかの他の真核生物のように高度には保存されていない。したがって、エンハンサーとしての断片を定義するためには、まず、遺伝子の転写開始部位(TSS)を同定しなければならず、その場合、5′UTRが最初に転写される。例えば、転写調節エレメントEXP-BOUgr.Ubq:2(配列番号1)は、イントロンエレメントI-BOUgr.Ubq:1(配列番号4)に作動可能に連結した5′UTRまたはリーダーエレメントL-BOUgr.Ubq:1(配列番号3)に作動可能に連結したプロモーターエレメントP-BOUgr.Ubq:2(配列番号2)からなる。1095bpのプロモーターエレメントであるP-BOUgr.Ubq:2(配列番号2)内のヌクレオチド1046~1053内に、推定コアTATA様エレメントが見出される。P-BOUgr.Ubq:2由来のエンハンサー断片は、配列番号7(E-BOUgr.Ubq)として示す配列をもたらす配列番号2のヌクレオチド1~1045を含み得る。プロモーターP-BOUgr.Ubq:2(配列番号2)に由来するエンハンサーは、E-BOUgr.Ubq(配列番号7)のより小さい断片をさらに含み得る。プロモーターP-BOUgr.Ubq:2に由来するエンハンサーエレメントの有効性は、プロモーターP-BOUgr.Ubq:2に由来するエンハンサーを含むキメラ転写調節エレメントを構築することによって経験的に決定され、エンハンサーはプロモーター及びリーダーに作動可能に連結し、安定または一過性の植物アッセイにおいてGUSなどの転写可能なDNA分子の発現を駆動するために使用される。
【0094】
エンハンサーエレメントのさらなる改良が必要とされる場合があり、これを経験的に検証する。さらに、キメラ転写調節エレメント内の他のエレメントに対するエンハンサーエレメントの位置もまた、キメラ転写調節エレメント内の各エレメントの順序が、各エレメントの相対位置に応じて異なる効果を与え得るため、経験的に決定する。いくつかのプロモーターエレメントは、複数のTATAボックスまたはTATAボックス様エレメント、及び潜在的に複数の転写開始部位を有する。そのような状況下では、最初のTSSがどこにあるのかをまず特定し、続いて最初のTSSを用いてエンハンサーの設計を開始し、推定エンハンサーエレメント内で転写の潜在的開始が起こるのを防ぐ必要があり得る。
【0095】
配列番号2として示すプロモーターエレメントに由来するエンハンサーエレメントは、プロモーターエレメントの5′もしくは3′に作動可能に連結するか、またはプロモーターエレメントの5′もしくは3′に作動可能に連結する追加的エンハンサーエレメントの5′もしくは3′に作動可能に連結するように、当該技術分野で公知の方法を用いてクローニングする。あるいは、当該技術分野で公知の方法を用いてエンハンサーエレメントをクローニングし、エンハンサーの2つ以上のコピーからなるより大きなエンハンサーエレメントを提供し、プロモーターエレメントの5′もしくは3′に作動可能に連結するか、またはプロモーターエレメントの5′もしくは3′に作動可能に連結する追加的エンハンサーエレメントの5′もしくは3′に作動可能に連結し、キメラ転写調節エレメントを生成するように、当該技術分野で公知の方法を用いてクローニングすることができる。エンハンサーエレメントはまた、異なる属生物に由来するプロモーターエレメントの5′に作動可能に連結するか、または同一もしくは異なる属の生物のいずれかに由来するプロモーターに作動可能に連結する他の属生物に由来するさらなるエンハンサーエレメントの5′または3′に作動可能に連結し、キメラ転写調節エレメントをもたらすように、当該分野で公知の方法を用いてクローニングすることができる。実施例2に記載する構築物と同様に当業者に公知の方法を用いて、GUS発現植物形質転換ベクターを構築してもよく、得られる植物発現ベクターは、Agrobacterium tumefaciens(B-AGRtu.left border)由来の左境界領域であって、除草剤グリホサートに対する耐性を付与する形質転換植物細胞の選択に使用する第一の導入遺伝子の選択カセット;プロモーターエレメントの5′もしくは3′に作動可能に連結するか、またはさらなるエンハンサーエレメントの5′もしくは3′に作動可能に連結するエンハンサーエレメントであって、Oryza sativa脂質輸送タンパク質様遺伝子(T-Os.LTP:1、配列番号8)由来の3′終結領域に作動可能に連結した、ジャガイモ光誘導性組織特異的ST-LS1遺伝子(Genbank受託番号:X04753)由来のプロセシング可能なイントロンを含むβ-グルクロニダーゼのコード配列(GOI-Ec.uidA+St.LS1.nno:1、配列番号6)に作動可能に連結した、イントロンエレメントの5′に作動可能に連結した、リーダーエレメントの5′に作動可能に連結した、プロモーターに作動可能に連結したエンハンサーエレメントからなるエンハンサーエレメントを試験するための第二の導入遺伝子カセット;及びA.tumefaciens(B-AGRtu.right border)由来の右境界領域を含む。得られるプラスミドを使用して、上記の方法によりトウモロコシ植物または他のモノコット属植物を形質転換する。あるいは、トウモロコシまたは他のモノコット属植物に由来するプロトプラスト細胞を、当該技術分野で公知の方法を用いて形質転換して、一過性アッセイを行う。
【0096】
1つ以上のエンハンサーを含む調節エレメントによって駆動されるGUS発現を安定または一過性の植物アッセイにおいて評価し、転写可能なDNA分子の発現に対するエンハンサーエレメントの効果を判定する。1つ以上のエンハンサーエレメントに対する改変または1つ以上のエンハンサーエレメントの複製を、経験的実験及び各調節エレメント組成物を使用して観察される、結果としての遺伝子発現調節に基づいて実施してもよい。得られる調節またはキメラ調節エレメントの1つ以上のエンハンサーの相対的位置を変更することは、調節またはキメラ調節エレメントの転写活性または特異性に影響を与える場合があり、トウモロコシ植物または他の属の植物内の所望の導入遺伝子発現特性のための最良のエンハンサーを同定するために経験的に決定される。
【0097】
実施例4
植物由来プロトプラストを用いたGUS活性のイントロン増強の解析。
イントロンは、導入遺伝子の最適な発現のために、ベクター転写DNA(T-DNA)エレメント配置内のイントロン及び配置を経験的に選択するための実験及びイントロンレス発現ベクター対照との比較に基づいて選択される。例えば、グリホサートに対する耐性を付与するCP4などの除草剤耐性遺伝子の発現においては、除草剤を適用する際の収量の損失を防ぐために、生殖組織及び栄養組織内に導入遺伝子発現を有することが望ましい。この場合、イントロンを、構成的プロモーターに作動可能に連結する場合、特にトランスジェニック植物の生殖細胞及び組織内で導入遺伝子を付与する除草剤抵抗性の発現を増強するその能力に基づいて選択し、したがって、除草剤を噴霧する場合、植物性及び生殖耐性の両方をトランスジェニック植物に提供するであろう。ほとんどのユビキチン遺伝子において、5′UTRはリーダーからなり、リーダーはその内部に組み込まれたイントロン配列を有する。したがって、そのような遺伝子に由来する調節エレメントは、プロモーター、リーダー、及びイントロンを含む5′UTR全体を用いてアッセイする。異なる発現特性を達成するために、または導入遺伝子発現のレベルを調節するために、そのような調節エレメント由来のイントロンを、除去するか、または異種イントロンで置換してもよい。
【0098】
本明細書において配列番号4として示すイントロンI-BOUgr.Ubq:1は、ゲノムDNAコンティグを用い、ゲノムDNA内のエクソン及びイントロン配列を同定するための発現配列タグクラスターまたはcDNAコンティグと比較して同定する。さらに、遺伝子配列が1つ以上のイントロンによって中断されたリーダー配列をコードする条件下で、5′UTRまたはリーダー配列を使用して1つ以上のイントロンのイントロン/エクソンスプライス接合部を定義する。調節エレメント及びリーダー断片の3′に作動可能に連結し、第二のリーダー断片またはコード配列のいずれかの5′に作動可能に連結するように、当該技術分野で公知の方法を用いてイントロンを植物形質転換ベクターにクローニングする。
【0099】
上記のように、スプライス部位(GT)の5′末端直前のヌクレオチド配列ATまたはヌクレオチドA、及びスプライス部位(AG)の3′末端直後のヌクレオチドGまたはヌクレオチド配列TGをそれぞれ使用することを避け、メッセンジャーRNAの最終転写産物へのプロセシング中に望ましくない開始コドンが形成される可能性を排除することが好ましい場合がある。したがって、イントロンの5′または3′末端スプライス接合部位周辺のDNA配列を改変することができる。
【0100】
形質転換した安定な植物アッセイにおいて発現を増強する能力を介して、増強効果についてイントロンをアッセイする。イントロン増強の一過性アッセイのために、当該技術分野で公知の方法を用いてベースとなる植物ベクターを構築する。イントロンを、A.tumefaciens(T-AGRtu.nos-1:1:13、配列番号10)由来のノパリンシンターゼ3′UTRに作動可能に連結し、プロセシング可能なイントロンを有するGUSのコード配列(GOI-Ec.uidA+St.LS1.nno:1、配列番号6)に作動可能に連結し、試験イントロンエレメント(例えば、配列番号4)の5′に作動可能に連結した構成的プロモーター、例えば、強化カリフラワーモザイクウイルスプロモーター及びリーダーであるP+L-CaMV.35S-enh(配列番号9)からなる発現カセット;及び形質転換した植物細胞を選択するための第二の発現カセットを含む、実施例2に記載のものと同様のベースとなる植物ベクターにクローニングする。トウモロコシ植物細胞を、当該技術分野で周知のように、Agrobacteriumを介した形質転換によって上記のバイナリー形質転換ベクター構築物を用いて形質転換する。得られる形質転換植物細胞を誘導してトウモロコシ植物全体を形成させた。単一コピーまたは低コピー数の形質転換体を、試験ベクターと同一であるが試験イントロンを含まない植物形質転換ベクターで形質転換した単一コピーまたは低コピー数の形質転換植物との比較のために選択して、試験イントロンがイントロンを介した増強効果を提供するかどうかを判定する。
【0101】
本明細書において配列番号4として示すイントロンI-BOUgr.Ubq:1を、イントロン配列内の断片を欠失させるなど、いくつかの方法で改変することができ、これにより、発現を増強し得るイントロンを用いて、断片の発現または複製を低減し得る。さらに、特定の細胞型または組織及び器官のいずれかに対する発現の特異性に影響し得るイントロン内のDNA配列を、複製または変更または削除し、導入遺伝子の発現及び発現パターンに影響を及ぼすことができる。さらに、本明細書において提供するイントロンは、意図しない転写産物が異なる、より長いまたはトランケートされたタンパク質として不適切にスプライシングしたイントロンから発現する可能性のある任意の開始コドン(ATG)を除去するように改変することができる。イントロンを経験的な方法で試験した後、または実験に基づいて変更した後、イントロンが導入遺伝子の増強を提供する限り、イントロンは、任意の属の単子葉植物または双子葉植物であり得る安定に形質転換された植物において、導入遺伝子の発現を増強するために使用される。イントロンは、作動可能に連結した導入遺伝子の発現の増強または減弱または特異性を提供する限り、藻類、真菌、または動物細胞などの他の生物における発現を増強するために使用することもできる。
【0102】
本発明の原理を例示し説明してきたが、当業者であれば、そのような原理から逸脱することなく、本発明を、構成及び詳細において変更することができることは明らかである。本発明者らは、特許請求の範囲の趣旨及び範囲内にあるすべての変更を請求する。本明細書中に引用するすべての刊行物及び公開特許文書は、あたかも個々の刊行物または特許出願を具体的かつ個別に参照として援用するように示すのと同様に、参照として本明細書に援用される。
【配列表】
2022081655000001.app
【外国語明細書】