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特開2022-81657インビボで血管形成能を有する中胚葉細胞および/または血管内皮コロニー形成細胞様細胞を作製する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081657
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】インビボで血管形成能を有する中胚葉細胞および/または血管内皮コロニー形成細胞様細胞を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/073 20100101AFI20220524BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20220524BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20220524BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220524BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20220524BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20220524BHJP
【FI】
C12N5/073
C12Q1/04
A61P9/00
A61P43/00 105
A61K35/545
A61K35/44
A61L27/38 100
C12N5/10
C12N5/071
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044157
(22)【出願日】2022-03-18
(62)【分割の表示】P 2019507218の分割
【原出願日】2017-08-04
(31)【優先権主張番号】62/372,907
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507277642
【氏名又は名称】インディアナ ユニバーシティー リサーチ アンド テクノロジー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INDIANA UNIVERSITY RESEARCH AND TECHNOLOGY CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ヨーダー,マーヴィン シー.
(72)【発明者】
【氏名】プラセン,ヌータン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】血管修復に利用することができるECFCやその他の種類の細胞を得ることが可能な方法を提供する。
【解決手段】インビトロにおいてKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞および/またはSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞へと多能性幹細胞を分化誘導する方法を提供する。本願で開示される中胚葉細胞は、インビボで血管を形成するために使用してもよく、かつ/またはインビトロでさらに分化させて血管内皮コロニー形成細胞様細胞(ECFC様細胞)を作製してもよい。また、精製されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団および精製されたヒトECFC様細胞集団を提供する。さらに、本開示の細胞集団を使用した試験薬剤のスクリーニング方法および治療方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団であって、該単離されたKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞が、哺乳動物に移植された場合に血管形成能を示すこと、および該単離されたKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞が、インビトロにおいてヒト多能性幹細胞(PSC)から誘導されたものであることを特徴とする、単離された集団。
【請求項2】
前記KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞がSSEA5-である、請求項1に記載の単離された集団。
【請求項3】
前記KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞における1つ以上の側板/胚体外中胚葉マーカーの発現がPSCと比較して増加しており、該側板/胚体外中胚葉マーカーが、BMP4、WNT5A、NKX2-5およびHAND1から選択される、請求項1または2に記載の単離された集団。
【請求項4】
前記KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞における中軸中胚葉マーカー、沿軸中胚葉マーカーおよび/または中間中胚葉マーカーのうちの1つ以上の発現が、PSCと比較して増加しておらず、該中軸中胚葉マーカーがCHIRDおよびSHHから選択され、該沿軸中胚葉マーカーがPAX1、MEOX1およびTCF15から選択され、該中間中胚葉マーカーがGOSR1、PAX2およびPAX8から選択される、請求項3に記載の単離された集団。
【請求項5】
単離されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団であって、
(a)多能性幹細胞(PSC)を提供する工程;
(b)i)アクチビンA、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地中で前記多能性幹細胞を24時間培養すること、および
ii)その後、72時間にわたって24~48時間ごとに、工程i)の培地を、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地に置換すること
を含む、前記多能性幹細胞を中胚葉へと分化誘導する工程;ならびに
(c)iii)中胚葉細胞をソーティングしてKDR+NCAM+APLNR+細胞を選択すること
を含む、前記分化誘導された細胞から前記中胚葉細胞を単離する工程
を含む作製方法によって得られる、単離された集団。
【請求項6】
単離されたヒトNRP-1+CD31+血管内皮コロニー形成細胞様細胞(ECFC様細胞)集団であって、
(a)多能性幹細胞(PSC)を提供する工程;
(b)i)アクチビンA、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地中で前記多能性幹細胞を24時間培養すること、および
ii)その後、72時間にわたって24~48時間ごとに、工程i)の培地を、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地に置換すること
を含む、前記多能性幹細胞を中胚葉へと分化誘導する工程;ならびに
(c)iii)中胚葉細胞をソーティングしてKDR+NCAM+APLNR+細胞を選択すること
を含む、前記分化誘導された細胞から前記中胚葉細胞を単離する工程
を含む作製方法で単離されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団を作製し、
前記中胚葉細胞集団を内皮へと分化誘導する工程をさらに含み、該工程が、
(d)BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む内皮分化培地中で6~8日間培養すること、ならびに
(e)内皮へ分化誘導された前記細胞から、敷石状の形態を示すCD31+NRP-1+血管内皮コロニー形成細胞様(ECFC様)細胞を単離すること
を含む、ECFC様細胞の作製方法によって得られる、単離されたヒトNRP-1+CD31+血管内皮コロニー形成細胞様細胞(ECFC様細胞)集団。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞を含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の血管内皮コロニー形成細胞様細胞(ECFC様細胞)を含む医薬組成物。
【請求項9】
細胞活動を修飾する能力について試験薬剤を試験する方法であって、
(a)請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞集団中の少なくとも1個の細胞を試験薬剤に曝露させること;ならびに
(b)細胞増殖および細胞生存率のうちの1つ以上に対する前記試験薬剤の効果を観察すること
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願の相互参照
本出願は、2016年8月10日に出願された米国仮特許出願第62/372,907号に基づく利益を主張するものであり、この出願は本明細書の一部を構成するものとして参照によりその全体が援用される。
【0002】
本開示は細胞組織生物学分野に関する。より具体的には、本開示は、インビボで血管を形成することができる中胚葉細胞および/または血管内皮コロニー形成細胞様細胞(ECFC様細胞)への多能性幹細胞の系統特異的分化誘導に関する。
【背景技術】
【0003】
血管内皮コロニー形成細胞(ECFC)は、稀な循環内皮細胞であり、臍帯血中に特に豊富に存在し、クローン増殖能を持つとともに、インビボでの血管形成能を本質的に備えている(Yoder, M.C. et al. Blood 109, 1801-1809 (2007); Ingram, D.A. et al. Blood 105, 2783-2786 (2005); Ingram, D.A. et al. Blood 104, 2752-2760 (2004); Critser, P.J. et al. Microvasc Res 80, 23-30 (2010); Au, P. et al. Blood 111, 1302-1305 (2008); Melero-Martin, J.M. et al. Circ Res 103, 194-202 (2008))。臍帯血またはドナー骨髄中のどの種類の細胞がECFCを生じるのかは解明されていない。培養した初代ECFCをげっ歯類の血管損傷モデルに静脈内注射すると、ECFCは血管損傷部位または組織虚血部位に動員され、血管形成反応の開始を制御する(Moubarik, C. et al. Stem Cell Rev 7, 208-220 (2011); Schwarz, T.M. et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol 32, e13-21 (2012); Saif, J. et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol 30, 1897-1904 (2010))。ヒトECFCは、心筋梗塞(Dubois, C. et al. J Am Coll Cardiol 55, 2232-2243 (2010); Schuh, A. et al. Basic Res Cardiol 103, 69-77 (2008))、脳卒中(Moubarik, C. et al. 2011)、虚血性網膜症(Stitt, A.W. et al. Prog Retin Eye Res 30, 149-166 (2011); Medina, R.J. et al. Invest Ophthalmol Vis Sci 51, 5906-5913 (2010))または虚血性四肢損傷(Schwartz et al. 2012; Saif et al. 2010; Bouvard, C. et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol 30, 1569-1575 (2010); Lee, J.H. et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol (2013))を発症した後の血管修復を促進して血流を改善することや、内皮が除去された血管セグメントまたは移植された移植片に生着して内皮を再形成すること(Stroncek, J.D. et al. Acta Biomater 8, 201-208 (2012))が報告されている。末梢動脈疾患(PAD)や重篤な肢虚血(CLI)を患う対象では、循環ECFCまたは組織局在ECFCが複製老化を起こしやすく(すなわちECFCの増殖能が失われることがあり)、自己血管に対する修復能が失われることがある。少なくともこのような理由から、血管修復に利用することができるECFCやその他の種類の細胞を得ることが可能な別の供給源を見出すことが望まれている。
【0004】
ヒト多能性幹細胞(hPSC)は、実質的に無限の自己複製能と、あらゆる種類の動物細胞への分化能を示す(Robbins, R.D. et al. Curr Opin Organ Transplant 15, 61-67 (2010); Broxmeyer, H.E. et al. Blood 117, 4773-4777 (2011); Lee, M.R. et al. Stem Cells 31, 666-681 (2013))。本発明者らは、インビトロにおいてhPSCからECFC様細胞を分化誘導する方法を過去に確立しており、この方法により得られたECFC様細胞は、インビボにおいて血管を形成することができる(PCT/US2015/020008)。
【0005】
前記欠点の1つ以上を緩和し、かつ/または排除することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概括すると、本開示は、hPSCから特定の系統の中胚葉細胞および/または血管内皮コロニー形成細胞様細胞(ECFC様細胞)を作製する方法に関する。また、本開示は、インビボで血管形成能を有する特定の系統の中胚葉細胞集団および/またはECFC様細胞集団へとhPSCを分化誘導するための再現可能なプロトコルを提供する。
【0007】
一態様において、本開示は、単離されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団をヒト多能性幹細胞から作製する方法を提供する。該方法は、
多能性幹細胞(PSC)を提供する工程;
i)アクチビンA、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地中で前記多能性幹細胞を約24時間培養すること、および
ii)その後、約72時間にわたって約24~48時間ごとに、工程i)の培地を、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地に置換すること
を含む、前記多能性幹細胞を中胚葉へと分化誘導する工程;ならびに
iii)中胚葉細胞をソーティングしてKDR+NCAM+APLNR+細胞を選択すること
を含む、前記分化誘導された細胞から前記中胚葉細胞を単離する工程
を含む。
【0008】
一実施形態において、前記ソーティングは、SSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞を選択することをさらに含む。
【0009】
一実施形態において、前記中胚葉への分化誘導は、中胚葉へ分化誘導中の前記細胞をFc-NRP-1と接触させることをさらに含む。一実施形態において、工程ii)の中胚葉分化培地に添加する。
【0010】
一実施形態において、前記中胚葉への分化誘導は、中胚葉へ分化誘導中の前記細胞を1種以上のmiRNA阻害剤と接触させることをさらに含み、該1種以上のmiRNA阻害剤によって、PSCと比較してSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞において低発現しているmiRNAが抑制される。一実施形態において、前記miRNA阻害剤によって、miR-221-3p、miR-1271-5p、miR-559、miR-543、miR-361-3p、miR-30d-5p、miR-124-3pおよびmiR-185-5pからなる群から選択されるmiRNAが抑制される。一実施形態において、中胚葉へ分化誘導中の前記細胞を、miR-221-3p阻害剤、miR-1271-5p阻害剤およびmiR-559阻害剤のうちの1種以上のmiRNA阻害剤、好ましくはmiR-221-3p阻害剤と接触させる。
【0011】
一実施形態において、前記中胚葉への分化誘導は、中胚葉へ分化誘導中の前記細胞を1種以上のmiRNAミミックと接触させることをさらに含み、該1種以上のmiRNAミミックは、PSCと比較してSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞において高発現しているmiRNAを模倣する。一実施形態において、前記miRNAミミックは、miR-330-5p、miR-145-5p、miR-214-3pおよびmiR-497-5pからなる群から選択されるmiRNAを模倣する。一実施形態において、中胚葉へ分化誘導中の前記細胞を、miR-330-5pミミック、miR-145-5pミミックおよびmiR-214-3pミミックのうちの1種以上のmiRNAミミック、好ましくはmiR-330-5pミミックの共存下で培養する。一実施形態において、前記中胚葉への分化誘導は、中胚葉へ分化誘導中の前記細胞をmiR-214ミミックと接触させることをさらに含む。
【0012】
一実施形態において、前記単離された中胚葉細胞は、哺乳動物に移植された場合に血管形成能を示す。
【0013】
一実施形態において、前記方法は、前記単離された中胚葉細胞を内皮へと分化誘導する工程をさらに含み、該工程は、前記単離された中胚葉細胞を、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む内皮分化培地中で約6~8日間培養すること、ならびに内皮へ分化誘導された前記細胞から、敷石状の形態を示すCD31+NRP-1+血管内皮コロニー形成細胞様(ECFC様)細胞を単離することを含む。
【0014】
一実施形態において、前記単離されたECFC様細胞は、CD144+、KDR+およびα-SMA-のうちの1つ以上の発現をさらなる特徴とする。
【0015】
一実施形態において、前記内皮への分化誘導工程は、共培養細胞、胚様体の形成および外因性TGF-βの抑制のうちの1つ以上が存在しない条件で行う。
【0016】
一実施形態において、前記単離されたECFC様細胞は、共移植細胞の非存在下で哺乳動物に移植された場合に血管形成能を示す。
【0017】
一態様において、単離されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団を提供する。該単離されたKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞は、哺乳動物に移植された場合に血管形成能を示すこと、およびインビトロにおいてヒト多能性幹細胞(PSC)から誘導されたものであることを特徴とする。
【0018】
一実施形態において、前記KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞はSSEA5-である。一実施形態において、前記KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞における1つ以上の側板/胚体外中胚葉マーカーの発現はPSCと比較して増加しており、該側板/胚体外中胚葉マーカーは、BMP4、WNT5A、NKX2-5およびHAND1から選択される。一実施形態において、前記KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞における中軸中胚葉マーカー、沿軸中胚葉マーカーおよび/または中間中胚葉マーカーのうちの1つ以上の発現は、PSCと比較して増加しておらず、該中軸中胚葉マーカーはCHIRDおよびSHHから選択され、該沿軸中胚葉マーカーはPAX1、MEOX1およびTCF15から選択され、該中間中胚葉マーカーはGOSR1、PAX2およびPAX8から選択される。
【0019】
一態様において、本明細書で提供される方法によって得られる、単離されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団を提供する。
【0020】
一態様において、本明細書で提供される方法によって得られる、単離されたヒトNRP-1+CD31+血管内皮コロニー形成細胞様細胞(ECFC様細胞)集団を提供する。
【0021】
一態様において、本明細書で提供されるKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0022】
一態様において、本明細書で提供される血管内皮コロニー形成細胞様細胞(ECFC様細胞)を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
本開示の別の一態様において、移植を必要とする対象に移植を行う方法であって、本明細書に記載の単離された細胞集団を前記対象に提供することを含む方法を提供する。
【0024】
本開示の別の一態様において、上皮の修復を必要とする対象を治療する方法であって、本明細書に記載の細胞集団の治療有効量を前記対象に提供することを含む方法を提供する。
【0025】
本開示の別の一態様において、本明細書に記載の方法によって得られる中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
本開示の別の一態様において、細胞活動を修飾する能力について試験薬剤を試験する方法であって、
本明細書に記載の細胞集団中の少なくとも1個の細胞を試験薬剤に曝露させること;ならびに
細胞増殖および細胞生存率のうちの1つ以上に対する前記試験薬剤の効果を観察すること
を含む方法を提供する。
【0027】
本願の特許明細書または出願書類は少なくとも1つのカラー図面を含む。カラー図面が添付された本願の特許明細書または出願書類の公開公報のコピーは、要望があれば所定の費用を支払うことによって米国特許庁から入手することができる。
【0028】
本明細書で開示された前記特徴を、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明においてさらに詳しく述べる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1A~1Gは、4日目(D4)のKDR+中胚葉細胞(KNA+中胚葉)に含まれるNCAMおよびAPLNRを共発現する細胞から、ECFCの能力を持ったNRP-1+CD31+内皮細胞が生じることを示す。
【0030】
図1A】無血清フィーダーフリー条件下のワンステップ2D培養による中胚葉系への分化誘導プロトコルの概略を示す。
【0031】
図1B】分化誘導4日目のhiPSCのソーティング戦略を示す。
【0032】
図1C】KDR+NCAM+APLNR+(K+N+A+)細胞、KDR+NCAM+APLNR-(K+N+A-)細胞およびKDR+NCAM-APLNR-(K+N-A-)細胞をソーティングし、さらに分化させ、NRP-1+CD31+ECFC様細胞の発生を調査するための戦略を示す。
【0033】
図1D】ソーティングにより得られたK+N+A+細胞、K+N+A-細胞およびK+N-A-細胞の各中胚葉サブセットを、さらに9日間(3日間+9日間で計12日間)かけてECFC様細胞系へとさらに分化させ、分化誘導の8日目、10日目および12日目にNRP-1+CD31+細胞の発生を調査した結果を示す(左側の3枚のパネル)。12日目の単層の形態学的特徴(左から4枚目のパネル)とα-SMAの発現(左から5枚目のパネル)を示し;内皮マーカーであるCD31およびCD144の発現(右側のパネル)を示す。
【0034】
図1E】hiPSC-ECFC様細胞、およびK+N+A+中胚葉、K+N+A-中胚葉またはK+N-A-中胚葉に由来するNRP-1+CD31+細胞のクローン増殖能が異なることを示す棒グラフである。
【0035】
図1F】hiPSC-ECFC様細胞、およびK+N+A+中胚葉、K+N+A-中胚葉またはK+N-A-中胚葉に由来するNRP-1+CD31+細胞からインビボで形成されたヒト血管の質を様々な点から評価した写真を示す。
【0036】
図1G】hiPSC-ECFC様細胞、K+N+A+ECFC様細胞、K+N+A-ECおよびK+N-A-ECからhCD31+機能性血管が様々な量で形成されることを示す棒グラフである。
【0037】
図2図2A~2Cは、本明細書に記載のプロトコルを使用してヒトiPS細胞を3~5日間分化誘導すると、中胚葉マーカーを発現し、典型的な内皮表面マーカーの発現を欠く細胞が発生することを示す。
【0038】
図2A】APLNR+細胞が、KDR+NCAM+中胚葉サブセットで見出され、KDR-NCAM-サブセットでは見出されなかったことを示す。
【0039】
図2B】分化3日目、4日目および5日目のKDR+細胞の数を示す。
【0040】
図2C】4日目の分化細胞における内皮マーカー(CD31、NRP-1およびCD144)の発現量を示す。
【0041】
図3図3A~3Bは、SSEA5+細胞を除去せずに単離したD4のKNA+中胚葉細胞をインビボで直接分化させると、堅牢なヒト血管が形成され、内胚葉由来細胞様の誘導細胞が発生したことを示す。
【0042】
図3A】分化誘導4日目のhiPSCのソーティング戦略を示す。
【0043】
図3B】ソーティングにより得られたAPLNR-中胚葉細胞をインビボで移植したところ、2ヶ月後にテラトーマが形成されたが(左パネル)、APLNR+中胚葉細胞は、宿主マウスの赤血球で満たされた堅牢なヒト血管をインビボで形成し(右パネル;青色の開いた矢印)、内胚葉由来細胞様の誘導細胞も形成した(右パネル;ピンク色の塗りつぶし矢印)ことを示す。
【0044】
図4図4A~4Dは、SSEA5+細胞を除去したD4のKNA+中胚葉細胞をインビボで直接分化させると、テラトーマや内胚葉由来細胞様の誘導細胞を生じることなく、堅牢なヒト血管が形成されたことを示す。
【0045】
図4A】分化誘導4日目のhiPSCのソーティング戦略を示す。
【0046】
図4B】インビボにおいてSSEA5-KNA+細胞から堅牢な機能性血管が形成されたが(青色の矢印、左パネル)、SSEA5-KNA-細胞からはインビボにおいて堅牢な機能性血管が形成されなかったことを示す(白色の矢印、右パネル)。
【0047】
図4C】インビボにおけるSSEA5-KNA+細胞およびSSEA5-KNA-細胞からの機能性血管の形成を示す棒グラフである。
【0048】
図4D】SSEA5-KNA+細胞の移植8日後にインビボで形成されたNRP-1+CD31+血管像を示す。
【0049】
図5図5A~5Cは、SSEA5発現細胞を除去したD4のKNA+中胚葉細胞が、側板/胚体外中胚葉細胞において通常、高い発現が見られる転写産物を産生し、このSSEA5-KNA+細胞をインビトロでECFC系へと分化誘導すると、ECFCの能力を持ったNRP-1+CD31+細胞の形成が増加することを示す。
【0050】
図5A】SSEA5-KNA+細胞およびhiPSCにおける、側板/胚体外中胚葉マーカー、中軸中胚葉マーカー、沿軸中胚葉マーカーおよび中間中胚葉マーカーの遺伝子発現解析を示す。
【0051】
図5B】ソーティングにより得られたSSEA5-KNA+細胞をECFC系へとさらに8日間(4日間+8日間で計12日間)かけてさらに分化させたこと;12日目において、SSEA5-KNA+細胞から産生されたNRP-1+CD31+細胞の数は、(4日目にソーティング工程を行っていない)hiPSCからNRP-1+CD31+細胞を産生させた場合の3倍以上となったこと(左の棒グラフ);SSEA5-KNA+中胚葉細胞から誘導されたNRP1+CD31+細胞は、単層の形態を示し、α-SMAの発現は全く認められなかったこと(中央パネル);ならびにSSEA5-KNA+中胚葉細胞から誘導されたNRP1+CD31+細胞は、内皮マーカーであるCD31およびCD144の均一な共発現を示すこと(右パネル)を示す。
【0052】
図5C】hiPSC-ECFC様細胞、SSEA5-KNA+中胚葉由来NRP-1+CD31+細胞およびSSEA5-KNA-中胚葉由来NRP-1+CD31+細胞のクローン増殖能を示す棒グラフである。
【0053】
図6図6A~6Gは、Fc-NRP-1がp130Cas/Pyk2の活性化を介してVEGF-KDRのシグナル伝達を媒介し、hiPSCからのSSEA5-KNA+中胚葉細胞の形成を促進することを示す。
【0054】
図6A】内皮細胞におけるNRP-1、KDR、Fc-NRP-1、NRP-1-BおよびVEGF165の機能を示す概略図である。
【0055】
図6B】KDRのリン酸化を示すウエスタンブロット像である。KDRのリン酸化は、VEGFで刺激した群において観察され、Fc-NRP-1二量体で処理すると、コントロール処理細胞と比べてKDRのリン酸化が増加した。NRP-1-Bで処理した細胞では、リン酸化の減少が観察された。
【0056】
図6C】p130Cas/Pyk2のリン酸化を示すウエスタンブロット像である。Fc-NRP-1二量体で処理した細胞では、NRP-1-Bで処理した細胞と比べてp130Cas/Pyk2のリン酸化の増加が観察された。
【0057】
図6D】様々なVEGF-Aアイソフォームの発現をhiPSCとSSEA5-KNA+中胚葉細胞とで比較した遺伝子発現解析を示す。
【0058】
図6E】培地中に添加したVEGF165の存在下または非存在下において分化誘導した2日目および4日目のhiPSCおよびSSEA5-KNA+中胚葉細胞からのVEGFの産生を示す棒グラフである。
【0059】
図6F】Fc-NRP-1二量体の存在下における中胚葉系への分化誘導プロトコルの概略を示す。
【0060】
図6G】分化誘導中のhiPSCをFc-NRP-1二量体で処理すると、SSEA5-KNA+中胚葉細胞の産生がFc-NRP-1非処理細胞の2倍を超えて増加したことを示す棒グラフである。
【0061】
図7図7A~7Eは、miRNA特異的ミミックおよびmiRNA特異的阻害剤によって、hiPSCからのSSEA5-KNA+中胚葉の発生を促進することができることを示す。
【0062】
図7A】4日目のSSEA5-KNA+中胚葉細胞における様々なmiRNAの発現量を、hiPSCにおける発現量(Y軸上の0で示す)に対するfold changeとして示す。
【0063】
図7B】miRNA特異的ミミック、miRNA特異的阻害剤、miRNA特異的ミミックとmiRNA特異的阻害剤の組み合わせ(3m3i)またはmiRNAミミック/miRNA阻害剤コントロールに中胚葉へ分化誘導中の細胞を接触させることを含む、中胚葉系への分化誘導プロトコルの概略を示す。
【0064】
図7C図7Bに示したプロトコルを使用して得られた4日目のSSEA5-KNA+中胚葉細胞の頻度を示す棒グラフである。
【0065】
図7D図7Bに示したプロトコルを使用して得られた4日目のSSEA5-KNA+中胚葉細胞における様々なmiRNA(X軸)の相対発現量(Y軸)を示す棒グラフである。
【0066】
図7E図7Bに示したプロトコルを使用して得られた4日目のSSEA5-KNA+中胚葉細胞における様々なmiRNA(X軸)の相対発現量(Y軸)を示す棒グラフである。
【0067】
図8図8A~8Dは、miR-214-3pが、分化誘導中のhiPSCにおいてCLDN6を標的とし、SSEA5-KNA+中胚葉細胞の形成を促進することができることを示す。
【0068】
図8A】hiPSCおよびSSEA5-KNA+中胚葉細胞におけるmiR-214(左)およびその推定上の標的であるCLDN6(右)の相対発現量(Y軸)を示す棒グラフである。
【0069】
図8B】中胚葉へ分化誘導中の細胞においてmiR-214を過剰発現させ、SSEA5-KNA+中胚葉細胞の発生(Y軸)をGFPレポーターコントロールベクターと比較した棒グラフである。
【0070】
図8C】ルシフェラーゼレポーターアッセイを行ったところ、miR-214が野生型(WT)CLND6の発現を直接制御することが確認されたことを示す。
【0071】
図8D】hiPSCとSSEA5-KNA+中胚葉細胞の間の差次的遺伝子発現解析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本開示は概して、インビトロにおいて、たとえばヒト胚性幹細胞(hESC)や人工多能性幹細胞(iPSC)(集合的にヒト多能性幹細胞(hPSC)と呼ぶ)などの多能性細胞から特定の系統の中胚葉細胞を分化誘導する方法であって、必要に応じて、分化誘導された特定の系統の中胚葉細胞を血管内皮コロニー形成細胞様細胞(ECFC様細胞)へとさらに分化誘導する方法に関する。驚くべきことに、本発明者らは、本明細書で提供される方法によって作製され、次いで単離された中胚葉細胞が、インビボにおいて血管を形成できることを見出した。本明細書で提供される方法の様々な実施形態において、得られたECFC様細胞を、共培養細胞および/または共移植細胞の非存在下においてインビボで血管へとさらに成長させてもよい。
【0073】
I:用語の定義
本明細書において使用される特定の用語の定義を以下に示す。別段の記載がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はいずれも、概して、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
【0074】
本明細書において「多能性細胞」は、あらゆる種類の細胞、たとえば3種の胚葉すなわち内胚葉、中胚葉または外胚葉のいずれか1種の細胞に分化する能力を有する細胞を指す。
【0075】
本明細書において「胚性幹細胞」すなわち「ES細胞」あるいは「ESC」は、初期胚に由来する多能性幹細胞を指す。
【0076】
本明細書において「人工多能性幹細胞」すなわち「iPS細胞」あるいは「iPSC」は、たとえば成体体細胞や最終分化細胞(たとえば線維芽細胞、造血細胞、筋細胞、神経細胞、表皮細胞など)などの非多能性細胞に1つ以上の再プログラム化因子を導入または接触させることによって作製された多能性幹細胞の一種を指す。
【0077】
本明細書において「中胚葉分化培地」は、多能性細胞の中胚葉系細胞への分化を補助および/または促進する任意の栄養培地を指す。
【0078】
本明細書において「中胚葉」は、初期胚に見られる3種の一次胚葉の中層を指す(他の二層はそれぞれ外胚葉および内胚葉と呼ばれる)。中胚葉はさらに、4つの構成要素、すなわち、中軸中胚葉、沿軸中胚葉、中間中胚葉および側板/胚体外中胚葉の4種に分類される。中胚葉は「中胚葉細胞」を含む(本明細書において“mesoderm cell”と呼び、“mesodermal cells”とも呼ぶ)。
【0079】
本明細書において「miRNAミミック」は、天然/内因性のmiRNAの活性を「模倣する」ように設計された二本鎖のRNAオリゴヌクレオチドを指す。miRNAミミックは、内因性のマイクロRNAの活性を補充することによって各マイクロRNAの機能的役割を解析するために使用される。
【0080】
本明細書において「miRNA阻害剤」は、天然/内因性のmiRNAの活性を「抑制する」ように設計された一本鎖RNAオリゴヌクレオチドを指す。miRNA阻害剤は、内因性のmiRNAの機能の抑制、標的遺伝子の発現の上昇、および表現型の提示の低下に使用される。
【0081】
本明細書において「内皮分化培地」は、多能性細胞の内皮系細胞への分化を補助および/または促進する任意の栄養培地を指す。
【0082】
本明細書において「内皮増殖培地」は、内皮系細胞の維持に適した任意の培地を指す。
【0083】
本明細書において「血管内皮コロニー形成細胞」あるいは「ECFC」は、単一の細胞から増殖して内皮コロニーを形成する能力を有し、共移植細胞または共培養細胞が存在しないインビボ条件で血管を形成することが可能な、血液中に見出される初代内皮細胞を指す。
【0084】
本明細書において「臍帯血ECFC」あるいは「CB-ECFC」は、臍帯血に由来する初代ECFCを指す。
【0085】
本明細書において「血管内皮コロニー形成細胞様細胞」あるいは「ECFC様細胞」は、ヒト多能性幹細胞(hPSC)からインビトロで作製された非初代内皮細胞を指す。ECFC様細胞は様々なECFC特性を有し、少なくとも、単一の細胞から増殖して内皮コロニーを形成する能力を有し、共移植細胞または共培養細胞が存在しないインビボ条件で血管を形成する能力を有する。
【0086】
本明細書において「増殖能(“proliferation potential”および“proliferative potential”)」は、適切な増殖促進シグナルが与えられた場合に細胞分裂を起こす能力を指す。
【0087】
本明細書において「高増殖能(“high proliferation potential”および“high proliferative potential”)」あるいは「HPP」は、単一の細胞が14日間の細胞培養で約2000個を超える数の細胞に分裂する能力を指す。高増殖能(HPP)を有する細胞は自己複製能を有することが好ましい。たとえば、本明細書で提供される高増殖能を有するECFC様細胞(HPP-ECFC様細胞)は自己複製能を有し、これは、インビトロで再播種した場合に、2代目のHPP-ECFC様コロニーにおいて、単一のHPP-ECFC様細胞から1個以上のHPP-ECFC様細胞を生じることができることを意味する。いくつかの実施形態において、HPP-ECFC様細胞は、インビトロで再播種した場合に、2代目のHPP-ECFC様コロニーにおいて、低増殖能を有するECFC様細胞(LPP-ECFC様細胞)およびECFC様細胞小塊のうちの1つ以上を生じる能力をさらに有していてもよい。
【0088】
本明細書において「低増殖能(“low proliferation potential”および“low proliferative potential”)」あるいは「LPP」は、単一の細胞が14日間の細胞培養で約51~2000個の細胞に分裂する能力を指す。いくつかの実施形態において、低増殖能を有するECFC様細胞(LPP-ECFC様細胞)は、ECFC様細胞小塊を生じる能力をさらに有していてもよい。しかしながら、LPP-ECFC様細胞は、2代目のLPP-ECFC様細胞やHPP-ECFC様細胞を生じる能力は持たない。
【0089】
II:多能性細胞を中胚葉細胞へと分化誘導する方法
一態様において、本明細書で提供される前記方法は、少なくとも3つの工程、すなわち、
A.多能性幹細胞(PSC)を提供する工程;
B.i)アクチビンA、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地中で前記多能性幹細胞を約24時間培養すること、およびii)その後、約72時間にわたって約24~48時間ごとに、工程i)の培地を、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地に置換することを含む、前記多能性幹細胞を中胚葉へと分化誘導する工程;ならびに
C.i)中胚葉細胞をソーティングしてKDR+NCAM+APLNR+細胞を選択することを含む、前記分化誘導された細胞から前記中胚葉細胞を単離する工程
を含む。
【0090】
様々な実施形態において、前記方法は、
D.前記中胚葉細胞をソーティングしてSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞を選択する工程;
E.中胚葉へ分化誘導中の前記細胞をFc-NRP-1の共存下で培養する工程;
F.中胚葉へ分化誘導中の前記細胞を、1種以上のmiRNA阻害剤、1種以上のmiRNAミミックまたはその組み合わせの共存下で培養する工程;
G.単離された前記中胚葉細胞を内皮系細胞へと分化誘導する工程;および
H.分化誘導された内皮系細胞からECFC様細胞を単離する工程
のうちの1つ以上の工程をさらに含む。
【0091】
前記方法の各工程を以下で詳細に説明する。
【0092】
A.多能性幹細胞の培養
一態様において、インビトロにおいて、単離された中胚葉細胞集団および/またはECFC様細胞集団を多能性細胞から作製する方法を提供する。本開示の方法での使用に適した多能性細胞は、様々な供給源から得ることができる。たとえば、好適な多能性細胞の一種として、胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚性幹(ES)細胞が挙げられる。マウス、アカゲザル、コモンマーモセット、ヒトなどの様々な種類のES細胞を得る方法がよく知られている。本発明の方法において使用されるES細胞の供給源は、たとえば、1種以上の樹立ES細胞株であってもよい。様々なES細胞株が知られており、これらの培養条件および増殖条件は既に確立されている。本明細書に開示される方法において、実質的にあらゆる種類のES細胞またはES細胞株を使用することができるものとする。一実施形態において、前記多能性細胞は、体細胞の再プログラム化によって得られる人工多能性幹(iPS)細胞である。人工多能性幹細胞は様々な公知の方法によって得られている。本明細書に開示される方法において、実質的にあらゆる種類のiPS細胞またはiPS細胞株を使用することができるものとする。別の実施形態において、前記多能性細胞は、紡錘体を除去した卵母細胞にドナー細胞の核を移入することによって行われる体細胞核移植によって得られた胚性幹細胞である。核移植によって幹細胞を作製する様々な方法が知られている。本明細書に開示される方法において、体細胞核移植によって得られる実質的にあらゆる種類のES細胞またはES細胞株を使用することができるものとする。
【0093】
一実施形態において、多能性細胞を未分化な状態で維持するのに適した条件で多能性細胞を培養する。インビトロで多能性細胞を維持する方法、すなわち多能性細胞を未分化な状態で維持する方法はよく知られている。一実施形態において、多能性細胞を未分化な状態で維持するのに適した条件で多能性細胞を約2日間培養する。たとえば後述の実施例では、マトリゲル(登録商標)でコーティングした10cm2の組織培養ディッシュに入れたmTeSR1完全培地中において、hES細胞またはhiPS細胞を5%CO下、37℃で約2日間維持した。
【0094】
多能性細胞を培養および/または維持するためのさらなる方法および/または別の方法を使用してもよい。たとえば、基礎培地として、TeSR、mTeSR1、αMEM、BME、BGJb、CMRL 1066、DMEM、イーグルMEM、Fischerの培地、グラスゴーMEM、Ham、IMDM、Improved MEM Zinc Option、199培地、RPMI 1640のいずれか、またはこれらの組み合わせを使用して多能性細胞を培養および/または維持してもよい。
【0095】
使用する多能性細胞培養培地は、血清を含んでいてもよく、無血清であってもよい。「無血清」とは、未処理血清も未精製血清も含んでいない培地を指す。無血清培地は、たとえば、成長因子などの精製された血液由来成分または動物組織由来成分を含んでいてもよい。使用する多能性細胞培地は、たとえば、KnockOut Serum Replacement(KSR)、chemically-defined lipid concentrated(Gibco)、glutamax(Gibco)などの1種以上の血清代替品を含んでいてもよい。
【0096】
多能性細胞を継代する方法はよく知られている。たとえば後述の実施例では、多能性細胞を播種した後、2日目、3日目および4日目に培地を交換し、5日目に細胞を継代した。通常、培養容器が細胞で完全に覆われてから(すなわち70~100%コンフルエントに達してから)、細胞の分散に適した任意の方法によって培養容器中の細胞集団を細胞凝集塊または単一細胞に分散し、得られた細胞凝集塊または単一細胞を新しい培養容器に移して継代を行う。細胞の「継代(“passaging”あるいは“splitting”)」は、インビトロで細胞を長期間にわたって生存させ、増殖させる方法として公知の技術である。
【0097】
B.多能性細胞から中胚葉細胞への分化誘導
本明細書に開示された方法の一態様において、インビトロにおいて多能性細胞を中胚葉へと分化誘導する。この工程を「中胚葉へと分化誘導する」工程とも呼ぶ。多能性細胞を中胚葉系細胞へと分化誘導する様々な方法(培養条件を含む)が当技術分野で公知である。本明細書で提供されるプロトコルでは、化学的組成の明らかな培地中で多能性細胞を分化誘導することが好ましい。たとえば、Stemline II無血清造血細胞増殖培地を、中胚葉分化誘導用の基礎培地として使用することができる。また、本明細書で提供されるプロトコルでは、様々な成長因子を使用して多能性細胞の中胚葉系細胞への分化を促進している。たとえば、化学的組成の明らかな分化培地に、アクチビンA、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)および骨形成タンパク質4(BMP-4)を添加し、多能性細胞を中胚葉系細胞へと分化誘導する。
【0098】
本明細書で提供されるプロトコルの一実施形態において、多能性細胞を基礎培地(たとえばmTeSR1)中で2日間(-D2)培養した後、有効量のアクチビンA、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む内皮分化培地に多能性細胞を24時間接触させて、多能性細胞を中胚葉系細胞へと分化誘導した。24時間の分化誘導後、この中胚葉分化培地を、有効量のBMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地に置換することによって、アクチビンAを培養から取り除いた。「有効量」とは、多能性細胞の中胚葉系細胞への分化を促進するのに効果的な量を意味する。さらに、有効量のBMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地との培地置換を、約3日間にわたって(すなわちD4まで)1~2日ごとに行ってもよい。
【0099】
アクチビンAは、複数の経路を介して細胞の分化を活性化することが知られているTGF-βスーパーファミリーのメンバーである。アクチビンAは、中胚葉系細胞への分化の活性化を助けるが、内皮系細胞への分化およびこれに続く内皮の増殖には重要ではない。一実施形態において、前記中胚葉分化培地は、約5~25ng/mLのアクチビンAを含む。好ましい一実施形態において、前記中胚葉分化培地は、約10ng/mLのアクチビンAを含む。
【0100】
骨形成タンパク質4(BMP-4)は、成人骨髄(BM)中で発現される腹側中胚葉誘導物質であり、造血前駆細胞の増殖能および分化能の調節に関与する。さらに、BMP-4は、ヒト胎児、ヒト新生児およびヒト成人の造血前駆細胞の初期発生を調節することができる。一実施形態において、前記中胚葉分化培地は、約5~25ng/mLのBMP-4を含む。好ましい一実施形態において、前記中胚葉分化培地は、約10ng/mLのBMP-4を含む。
【0101】
血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、胎児の循環系の形成および血管新生に関与するシグナル伝達タンパク質である。VEGFは、インビトロにおいて、内皮細胞の有糸分裂誘発および細胞遊走を刺激することができる。一実施形態において、前記中胚葉分化培地は、約5~50ng/mLのVEGFを含む。好ましい一実施形態において、前記中胚葉分化培地は、約10ng/mLのVEGFを含む。特に好ましい一実施形態において、前記中胚葉分化培地は、約10ng/mLのVEGF165を含む。
【0102】
塩基性線維芽細胞増殖因子は、bFGFまたはFGF-2とも呼ばれ、四肢および神経系の発生、創傷治癒、腫瘍の増殖などの多彩な生物学的プロセスとの関連性が指摘されている。bFGFは、ヒト胚性幹細胞のフィーダー非依存性増殖の補助に使用されている。一実施形態において、前記中胚葉分化培地は、約5~25ng/mLのFGF-2を含む。好ましい一実施形態において、前記中胚葉分化培地は、約10ng/mLのFGF-2を含む。
【0103】
本明細書に開示された方法は、たとえばOP9間質細胞などの支持細胞との共培養を必要とせず、胚様体(EB)の形成を必要とせず、外因性TGF-βの抑制を必要しない。
【0104】
C.KDR + NCAM + APLNR + (KNA + )中胚葉細胞の単離
一態様において、中胚葉へ分化誘導された細胞集団からKDR+NCAM+APLNR+細胞を選択して単離する。1種以上の特定の分子マーカーを有する細胞を選択する方法は当技術分野で公知である。たとえば、蛍光活性化セルソーティングや磁気活性化セルソーティングなどのフローサイトメトリー技術を使用して、様々な転写産物の発現に基づき細胞を選択してもよい。
【0105】
一実施形態において、本明細書で述べているように、中胚葉へ分化誘導中の分化4日目の細胞集団からKDR+NCAM+APLNR+細胞を選択する。好ましい一実施形態において、中胚葉へ分化誘導中の細胞集団からKDR+細胞を選択し、次いで選択したKDR+細胞からNCAM+APLNR+細胞を選択することによって、KDR+NCAM+APLNR+細胞集団を得る。
【0106】
後述の実施例において、分化4日目に中胚葉細胞を回収して単一細胞懸濁液を調製した。細胞をカウントし、抗体染色を行うために前処理し、抗ヒトKDR抗体、抗ヒトNCAM抗体および抗ヒトAPLNR抗体を使用して染色を行った。フローサイトメトリーを使用して、KDR+NCAM+APLNR+細胞をゲーティング/選択し、ソーティングした。
【0107】
本発明の方法によって特定された中胚葉サブセットは、ヒト中胚葉の公知のサブセットと一致する遺伝子産物を産生する。これらの特定の中胚葉サブセットからヒトECFCが発生することは過去に報告されていない。
【0108】
一実施形態において、前記選択された細胞は、インビボにおいて血管形成能を有する。この結果は予想外のものであった。特定の種類の中胚葉はヒトの初期発生において発生し、血管芽細胞を生じる中胚葉細胞(最初に生じる中胚葉由来細胞がさらに分化して内皮細胞が発生する)は、胚体外/側板中胚葉に由来すると予測される。したがって、当業者であれば、中胚葉細胞は特定の場所において特定の時点で分化することによって、脈管形成により最初の血管を形成すると予測するであろう。一方、当業者であれば、成体マウス体内には中胚葉細胞が存在しない(中胚葉細胞の分化における運命は胚形成中に既に決定されており、成体では中胚葉系の子孫細胞しか見出されない)ことに少なくとも基づいて、中胚葉細胞が、ECFCを発生して免疫不全の成体マウスにおいてヒト血管を形成する能力を示すとは予測しないであろう。
【0109】
D.SSEA5 - KDR + NCAM + APLNR + 細胞の選択
一実施形態において、本明細書で述べているように、中胚葉へ分化誘導中の分化4日目の細胞集団からSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞を選択する。好ましい一実施形態において、中胚葉へ分化誘導中の細胞集団からSSEA5-KDR+細胞を選択し、次いで選択したSSEA5-KDR+細胞からNCAM+APLNR+細胞を選択することによって、SSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞集団を得る。
【0110】
本発明者らは、SSEA5抗体を使用して4日目の分化細胞のネガティブセレクションを行うことによって、4日目の分化細胞から未分化hiPSCまたは部分的に分化したhiPSCの混合物を特定し除去することができることを見出した。これは、SSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞および(ネガティブセレクションによりSSEA5+細胞を除去していない)KDR+NCAM+APLNR+細胞を同じ動物にインビボ移植することによって確認することができた。腹部の片側にSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞を移植し、同じ動物の腹部の反対側にKDR+NCAM+APLNR+細胞を移植した。移植したKDR+NCAM+APLNR+細胞からは血管および内胚葉由来細胞が形成されたのに対して、移植したSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞からは血管が形成され、内胚葉および/またはテラトーマは形成されなかった。したがって、本明細書で提供されるSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞の利点の1つとして、内胚葉由来の細胞を生じさせることなく、インビボで選択的にECFC由来の血管を形成させるために使用することができることが挙げられる。
【0111】
E.Fc-NRP-1を使用した中胚葉の誘導
本発明者らは、中胚葉へ分化誘導中の細胞においてKDRのシグナル伝達を刺激することによって、中胚葉の形成が増加する可能性があると考えた。本明細書で提供されるプロトコルの一実施形態において、アクチビンA含有培地中で24時間分化誘導後、この中胚葉分化培地を、有効量のFc-NRP-1、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地に置換した。「有効量」とは、多能性細胞の中胚葉系細胞への分化を促進するのに効果的な量を意味する。さらに、有効量のFc-NRP-1、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地との培地置換を、たとえば約3日間にわたって(すなわちD4まで)1~2日ごとに行ってもよい。本発明者らは、本発明の中胚葉誘導プロトコルにFc-NRP-1を加えることによって、中胚葉の形成が向上することを見出した。少なくとも、NRP-1(Fc-NRP-1はNRP-1の代替として作用する)およびVEGF165(Fc-NRP1または内因性のNRP-1に結合するリガンド)は中胚葉へ分化誘導中の細胞において発現されないことから、この結果は驚くべきものである。VEGF165およびNRP-1は、KDRのシグナル伝達を活性化する分子であることが知られている。しかし、本発明者らの研究では、これらの分子はいずれも、中胚葉への分化誘導中の4日目の細胞において内因性に発現されないことが示された。本発明者らは、KDRのシグナル伝達を活性化することができる可溶性分子(培地添加物として使用することが可能であった)を特定し、これを利用して中胚葉の形成を増強させた。この可溶性分子を使用することによって、ECFC中胚葉細胞の産生を有利に増強することができる。
【0112】
F.miRNA阻害剤および/またはmiRNAミミックを使用した中胚葉の誘導
本明細書で提供されるプロトコルの一実施形態において、中胚葉へ分化誘導中の細胞を、1種以上のmiRNA阻害剤、1種以上のmiRNAミミックまたはその組み合わせに曝露させる。本発明者らは、SSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞においてダウンレギュレートされる一連のmiRNA群(miR-221-3p、miR-1271-5p、miR-559、miR-543、miR-361-3p、miR-30d-5p、miR-124-3pおよびmiR-185-5p)と、SSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞においてアップレギュレートされる一連のmiRNA群(miR-330-5p、miR-145-5p、miR-214-3pおよびmiR-497-5p)を特定した。本発明者らは、SSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞においてアップレギュレートされる特定のmiRNAを模倣する1種以上の薬剤を、中胚葉へ分化誘導中の細胞にトランスフェクトすると、PSCから発生するSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞の頻度が増加することを見出した。また、本発明者らは、SSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞においてダウンレギュレートされることが特定された特定のmiRNAを抑制する1種以上の薬剤を、中胚葉へ分化誘導中の細胞にトランスフェクトすると、PSCから発生するSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞の頻度が増加することを見出した。さらに、本発明者らは、miRNA特異的ミミックとmiRNA特異的阻害剤の組み合わせを、中胚葉へ分化誘導中の細胞にトランスフェクトすると、PSCから発生するSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞の頻度が増加することを見出した。
【0113】
本明細書で提供されるプロトコルの一実施形態において、多能性細胞を基礎培地中で2日間(-D2)培養した後、有効量のアクチビンA、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む内皮分化培地に多能性細胞を24時間接触させて、多能性細胞を中胚葉系細胞へと分化誘導した。この最初の24時間(すなわちD0)の培養において、i)3種のmiRNAミミック;ii)3種のmiRNA阻害剤;iii)3種のmiRNAミミックおよび3種のmiRNA阻害剤;またはiv)コントロールの4種の処理のうちの1つで前記多能性細胞をトランスフェクトした。24時間の分化誘導後、中胚葉分化培地を、有効量のBMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地に置換することによって、アクチビンAを培養から取り除いた。中胚葉への分化誘導の2日目に同じ処理で細胞を再度トランスフェクトした。さらに、有効量のBMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地との培地置換を、約3日間にわたって(すなわちD4まで)1~2日ごとに行ってもよい。4日目に前記と同様にして細胞をソーティングして単離した。
【0114】
G.単離された中胚葉細胞から内皮系細胞への分化誘導
本明細書に開示された方法の一態様において、前記単離された中胚葉細胞を内皮へと分化誘導する。中胚葉細胞を内皮系細胞へと分化誘導する様々な方法(培養条件を含む)は当技術分野で公知である。本明細書で提供されるECFC様細胞プロトコルでは、化学的組成の明らかな培地中で内皮細胞へと分化誘導することが好ましい。たとえば、Stemline II無血清造血細胞増殖培地を内皮分化誘導用の基礎培地として使用することができる。また、本明細書で提供されるECFC様細胞プロトコルでは、様々な成長因子を使用して、多能性細胞の内皮系細胞(ECFC様細胞を含む)への分化を促進する。たとえば、化学的組成の明らかな分化培地にVEGF、FGF-2およびBMP-4を添加し、単離された中胚葉細胞を内皮系細胞(ECFC様細胞を含む)へと分化誘導する。
【0115】
本明細書で提供されるECFC様細胞プロトコルの一実施形態において、単離された中胚葉細胞を、有効量のBMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む内皮分化培地中で培養する。「有効量」とは、単離された中胚葉細胞の内皮系細胞(ECFC様細胞を含む)への分化を促進するのに効果的な量を意味する。さらに、有効量のBMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む内皮分化培地との培地置換を1~2日ごとに行ってもよい。
【0116】
本明細書に開示された方法は、たとえばOP9間質細胞などの支持細胞との共培養を必要とせず、胚様体(EB)の形成を必要とせず、外因性TGF-βの抑制を必要しない。
【0117】
H.分化誘導した内皮細胞からのECFC様細胞の単離
本明細書に開示された方法の一実施形態において、内皮へ分化誘導中の細胞集団からCD31+NRP-1+細胞を選択して単離する。たとえば、一実施形態において、本明細書で述べているように、内皮へ分化誘導中の分化10日目、11日目または12日目の細胞集団からCD31+NRP-1+細胞を選択する。好ましい一実施形態において、内皮へ分化誘導中の分化12日目の細胞集団からCD31+NRP-1+細胞を選択する。本発明者らは、内皮へ分化誘導中の12日目の細胞集団に含まれるNRP-1+細胞の割合(%)が、分化誘導のその他の日の細胞集団と比べて高いことを見出した。
【0118】
後述の実施例において、分化12日目以降に、接着した状態の内皮細胞(EC)を回収して単一細胞懸濁液を調製した。細胞をカウントし、抗体染色を行うために前処理し、抗ヒトCD31抗体、抗ヒトCD144抗体および抗ヒトNRP-1抗体を使用して染色を行った。フローサイトメトリーを使用して、CD31+CD144+NRP-1+細胞をソーティングして選択した。
【0119】
一実施形態において、前記選択された細胞は、EC(ECFCを含む)に典型的な敷石状の形態を示す。
【0120】
一実施形態において、前記選択された細胞は、ECFCに典型的に見られるように、共培養細胞および/または共移植細胞の非存在下のインビボ条件で血管形成能を有する。
【0121】
III.単離された細胞集団
単離された中胚葉細胞集団
一実施形態において、単離されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団を提供する。一実施形態において、本明細書で提供される精製されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団は、インビトロにおいてhPSCから中胚葉細胞を作製する本発明の方法を使用して作製される。前記集団中に含まれる単離されたKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞は、ECFC産生能と、インビボでの血管形成能を有する。一実施形態において、前記集団中に含まれるKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞は、PSCと比較して1つ以上の側板/胚体外中胚葉マーカー(たとえばBMP4、WNT5A、NKX2-5および/またはHAND1)の発現が増加していることをさらなる特徴とする。一実施形態において、前記集団中に含まれるKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞は、PSCと比較して、中軸中胚葉マーカー(たとえばCHIRDおよび/またはSHH)、沿軸中胚葉マーカー(たとえばPAX1、MEOX1およびTCF15)および/または中間中胚葉マーカー(たとえばGOSR1、PAX2およびPAX8)の1つ以上の発現の増加が見られないことをさらなる特徴とする。
【0122】
一実施形態において、単離されたヒトSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団を提供する。一実施形態において、本明細書で提供される精製されたヒトSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団は、インビトロにおいてhPSCから中胚葉細胞を作製する本発明の方法を使用して作製される。前記集団中に含まれる単離されたSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞は、ECFC産生能と、インビボでの血管形成能を有する。一実施形態において、前記集団中に含まれるSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞は、PSCと比較して1つ以上の側板/胚体外中胚葉マーカー(たとえばBMP4、WNT5A、NKX2-5および/またはHAND1)の発現が増加していることをさらなる特徴とする。一実施形態において、前記集団中に含まれるSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞は、PSCと比較して、中軸中胚葉マーカー(たとえばCHIRDおよび/またはSHH)、沿軸中胚葉マーカー(たとえばPAX1、MEOX1およびTCF15)および/または中間中胚葉マーカー(たとえばGOSR1、PAX2およびPAX8)の1つ以上の発現の増加が見られないことをさらなる特徴とする。
【0123】
好ましい一実施形態において、前記単離された中胚葉細胞集団は実質的に純粋なものである。一実施形態において、中胚葉への分化誘導の4日目において、KDR+NCAM+APLNR+細胞は生細胞全体の28%を占める。一実施形態において、中胚葉への分化誘導の4日目において、SSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞は生細胞全体の18%を占める。
【0124】
単離されたECFC様細胞集団
一実施形態において、単離されたヒトNRP-1+/CD31+ECFC様細胞集団を提供する。一実施形態において、本明細書で提供される精製されたヒトNRP-1+/CD31+ECFC様細胞集団は、インビトロにおいてhPSCからECFC様細胞を作製する本発明の方法を使用して作製される。
【0125】
後述の実施例では、本明細書に開示された方法を使用して、単離された中胚葉細胞サブセットから精製されたヒトNRP-1+CD31+ECFC様細胞集団を作製している。前記集団中に含まれる単離されたECFC様細胞は、敷石状の形態を示し、共培養細胞および/または共移植細胞の非存在下のインビボ条件で血管形成能を有する。一実施形態において、前記集団中に含まれるECFC様細胞は、CD144+、KDR+およびα-SMA-の1つ以上をさらなる特徴とする。
【0126】
一実施形態において、前記単離された中胚葉細胞から作製された集団中に含まれる前記ECFC様細胞の少なくともいくつかは、本発明者らが過去に報告しているhPSC-ECFC様細胞プロトコルを使用してインビトロで作製されたECFCと同様の高い増殖能を有している。
【0127】
好ましい一実施形態において、前記単離されたECFC様細胞集団は実質的に純粋なものである。
【0128】
本明細書に記載の実施例において、本明細書に開示された中胚葉細胞から作製されたECFC様細胞集団中に含まれる細胞を哺乳動物にインビボ移植すると、たとえ支持細胞が存在しなくても、血管を形成することができる。
【0129】
インビボにおける血管形成を測定するための様々な技術が公知であり、このような技術を使用することができる。
【0130】
外来性の支持細胞の非存在下のインビボ条件で血管形成能を有することは、本明細書に開示された方法を使用して作製された細胞がECFCであることを示す指標の1つである。
【0131】
IV.本明細書で開示された中胚葉細胞および/またはECFC様細胞の使用
公知の中胚葉細胞株や過去に報告されているその他の公知の単離された中胚葉細胞とは異なり、後述するように、本明細書に開示された方法を使用して作製された中胚葉細胞はインビトロで作製することができ、インビボでの血管組織の形成に使用して様々に臨床応用することができる。
【0132】
初代細胞であるECFCとは異なり、後述するように、本明細書に開示された方法を使用して作製されたECFC様細胞は、様々な臨床応用に有用でありうる量でインビトロにおいて作製することができる。
【0133】
A.治療法
本明細書の一態様において、細胞移植、細胞補充および/または細胞置換もしくは組織置換に適した方法、細胞および組成物を提供する。この方法は、本明細書で提供される方法によって誘導された中胚葉細胞および/またはECFC様細胞の治療有効量を、前記治療を必要とする対象に提供することを含んでいてもよく、中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を提供することによって該対象の治療が行われる。「治療有効量」とは、上皮の修復を必要とする対象の治療に効果的な量を意味する。好ましい一実施形態において、前記上皮の修復は血管上皮の修復である。本明細書で提供される細胞および/または組成物は、中胚葉細胞および/またはECFC様細胞が目的の組織部位に移植または遊走することが可能となり、かつ、たとえば血管などの機能欠損部位を再構築または再生することが可能となるような方法で対象に投与してもよい。
【0134】
本明細書で提供される中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を使用した治療法の実施に適した対象としては、様々な種類の内皮機能不全および/または内皮損傷を有する対象が挙げられる。本開示の中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を使用した治療法の実施に適した対象は、たとえば心血管疾患、心筋梗塞、心臓発作または末梢動脈疾患(PAD)を有する対象であってもよい。本開示の中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を使用した治療法の実施に適した対象は、肺疾患もしくは肺損傷または腎疾患もしくは腎損傷を有する対象であってもよい。好ましい実施形態において、本開示の中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を使用した治療法の実施に適した対象は、重篤な肢虚血(CLI)を発症しているPAD患者であってもよい。
【0135】
一実施形態において、前記中胚葉細胞および/またはECFC様細胞は、ヒトへの投与に適した医薬組成物の形態で対象に提供することができる。たとえば、この組成物は、1種以上の薬学的に許容される担体、緩衝剤または賦形剤を含んでいてもよい。前記組成物は、中胚葉細胞および/またはECFC様細胞の生着を促す1種以上の成分をさらに含んでいてもよく、このような成分とともに対象に提供してもよい。たとえば、移植細胞の生存および/または生着を促進し、血管新生を促進し、細胞外マトリックスまたは間質マトリックスの組成を調節し、かつ/または移植部位へその他の種類の細胞を動員する1種以上の成長因子またはサイトカイン(たとえば血管新生サイトカイン)が前記医薬組成物にさらに含まれていてもよく、このような成分とともに対象に提供してもよい。
【0136】
一実施形態において、適切な無菌性および安定性が得られる標準的な方法によって、前記医薬組成物を製剤化し、製造し、保存してもよい。
【0137】
たとえば、一実施形態において、本明細書で提供される中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を、十分な血流がない(と医師によって判断された)組織に直接注射してもよい。一実施形態において、本明細書で提供される中胚葉細胞および/またはECFC様細胞は、コラーゲン、フィブロネクチンまたは合成素材で構成されたマトリックス中に懸濁してもよく、前記中胚葉細胞および/またはECFC様細胞が懸濁されたこのゼラチン状の懸濁液を、十分な血流がない組織に直接注射してもよい。前記組織に注射される中胚葉細胞および/またはECFC様細胞の濃度は、たとえば、送達媒体または送達マトリックス材料1μLあたり約10,000個~約100,000個であってもよい。特定の組織では、十分な血流を回復させるために細胞を単回送達してもよく、別の組織では、十分な血流を回復させるために時間を追って複数回の注射および連続注射が必要とされてもよい。
【0138】
前記中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を前記対象に投与した後、所望であれば、この治療法の効果を評価してもよく、必要であればこの治療を繰り返してもよい。治療の有効性は、当技術分野で公知の、臨床的に容認されている基準によって確認することができ、このような基準として、たとえば、瘢痕組織が占める面積の減少、瘢痕組織の血管再生、狭心症の頻度および重症度;ならびに発生圧、収縮期圧、拡張終期圧、対象の移動能力および/または生活の質における改善などが挙げられる。
【0139】
ECFC細胞は、眼の低酸素状態および新血管新生を回復させることができる。したがって、本発明は、本明細書で提供される中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を使用して、低酸素症および新血管新生を起こす様々な眼疾患、たとえば末熟児網膜症、糖尿病性網膜症、中心静脈閉塞症、黄斑変性などを治療することも包含する。
【0140】
さらに、本発明は、本明細書で提供される中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を使用して、血管内ステントの内壁の少なくとも一部をコーティングし、かつ必要であれば、ステントを留置する際に内皮細胞が剥がれた血管の任意の部位に塗布してもよいことも包含する。この場合、静脈注射された中胚葉細胞および/またはECFC様細胞が損傷部位に結合して、血管内皮を再形成し、ステントが留置された血管部位における血栓形成および/または再狭窄を予防することができると考えられる。
【0141】
狭窄部位および血流阻害部位を有する患者の動脈内にヒト静脈(伏在静脈または臍静脈)を移植片として留置すると、狭窄および血流阻害が高い確率で発生することが知られている。これは、インビボにおける血管リモデリングの初期において、血管内皮細胞が失われることと関連する。本明細書で提供される中胚葉細胞および/またはECFC様細胞をそのような患者の血管に静脈内注射することによって、移植された移植片において内皮を再形成し、かつ患者の血管の機能を維持することができると考えられる。
【0142】
B.試験薬剤のスクリーニング
本明細書に開示された中胚葉細胞および/またはECFC様細胞は、中胚葉細胞および/またはECFC様細胞の特性およびこれらの細胞から発生する任意の組織の特性に影響を与える因子(溶媒、低分子薬物、ペプチド、オリゴヌクレオチドなど)や環境条件(培養条件、培養操作など)のスクリーニングに使用することができる。一実施形態において、本開示の中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を使用して、たとえば医薬化合物などの試験薬剤をスクリーニングし、内皮の健常性および/または修復に対する試験薬剤の効果を評価することができる。たとえば、スクリーニングは、化合物が内皮細胞に薬理効果をもたらすように設計されていることを理由に行ってもよく、その他の部位に効果をもたらすように設計された化合物が内皮細胞に意図しない副作用を起こす可能性があることを理由に行ってもよい。様々な実施形態において、本明細書に開示された中胚葉細胞および/またはECFC様細胞は、少なくとも、培養された多能性細胞とインビトロで識別できることから、試験薬剤のスクリーニングに特に有用である。これに対して、臍帯血(CB)ECFCは患者の血液から得られる初代細胞であり、以前から公知の単離された中胚葉細胞はインビボにおいて血管形成能を持たない。試験薬剤化合物をスクリーニングするための様々な方法が当技術分野で公知であり、本明細書に開示された中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を使用してこのようなスクリーニング方法を実施することができる。
【0143】
たとえば、試験薬剤の活性のスクリーニングには、
i)本明細書に開示された中胚葉細胞および/またはECFC様細胞に試験薬剤を単独で、またはさらに別の薬剤を併用して組み合わせること;
ii)非処理細胞またはコントロール薬剤で処理した細胞と比較することによって、前記試験薬剤に起因すると認められる前記中胚葉細胞および/またはECFC様細胞の形態学的変化、分子表現型の変化および/または機能活性の変化を測定すること;ならびに
iii)前記試験薬剤の効果を観察された変化と関連付けること
が含まれていてもよい。
【0144】
一実施形態において、本明細書で提供される中胚葉細胞および/またはECFC様細胞に対する試験薬剤の細胞傷害性は、該中胚葉細胞および/またはECFC様細胞の生存能力、生存率、形態学的特徴ならびに分子表現型および/または受容体の1つ以上に対する該試験薬剤の効果に基づいて評価することができる。
【0145】
一実施形態において、中胚葉細胞および/またはECFC様細胞の機能は、標準的なアッセイを使用して中胚葉細胞および/またはECFC様細胞の表現型または活性を観察することによって評価することができる。たとえば、本明細書に開示された中胚葉細胞および/またはECFC様細胞を使用して、細胞培養またはインビボにおける分子の発現および受容体結合の1つ以上を評価してもよい。
【0146】
C.キット
一実施形態において、本明細書に開示された方法および細胞を使用するためのキットを提供する。一実施形態において、キットは、1つ以上の密封バイアル中に、本明細書に記載の分化培地および/または増殖培地を含んでいてもよい。一実施形態において、前記キットは、多能性細胞、中胚葉細胞および/またはECFC様細胞などの、本明細書に開示された1種以上の細胞を含んでいてもよい。一実施形態において、前記キットは、1種以上のmiRNAミミック、1種以上のmiRNA阻害剤またはその組み合わせを含んでいてもよい。一実施形態において、前記キットは、Fc-NRP-1を含んでいてもよい。一実施形態において、前記キットは、多能性細胞から中胚葉細胞を作製することに関する説明書を含んでいてもよい。一実施形態において、前記キットは、多能性細胞からECFC様細胞を作製することに関する説明書を含んでいてもよい。一実施形態において、前記キットは、適切な容器および包装材料中に、本発明に使用するための様々な試薬を含んでいてもよい。一実施形態において、前記キットは、適切な容器および包装材料中に、本発明に使用するための1種以上のコントロールを含んでいてもよい。
【0147】
以下の実施例を参照することによって、本開示をより深く理解することができるが、本開示は以下の実施例によって限定されるものではない。
【実施例0148】
実施例1:材料と方法
hPSCの培養:
ヒト胚性幹細胞(hES)細胞株H9(Thomson et al., 1998 Science; 282:1145-1147)および線維芽細胞由来ヒトiPS細胞株(DF19-9-11T)(Yu et al. 2009 Science 324:797-801)は、WiCell Research institute(ウィスコンシン州マディソン)から購入した。hESおよびhiPSCは、マトリゲルでコーティングした10cm2の組織培養ディッシュに入れたmTeSR1完全培地(Stem Cell Technologies)中において5%CO下、37℃で維持した。細胞播種後、2日目、3日目および4日目に培地を交換した。5日目に細胞を継代した。培地を吸引除去し、ディスパーゼ(2mg/mL、Gibco)含有培地4~5mLをプレートに加え、3~5分間またはプレートの縁のコロニーが剥がれてくるまで37℃でインキュベートした。ディスパーゼ含有培地をプレートから吸引除去し、DMEM-F12(Gibco)で細胞を穏やかに3回洗浄して、残存酵素を除去した。次いで新鮮培地を加え、5mLの使い捨てピペットを使用して、泡を立てないように注意しながら強く洗浄し、かつ掻き取ることによってプレートからコロニーを回収した。回収したコロニーを300×gで5分間遠心分離した。上清を吸引除去し、ペレットをmTeSR1完全培地に再懸濁した。継代前に、10cm2の組織培養ディッシュを30分間かけてマトリゲルでコーティングした。組織培養ディッシュに結合しなかったマトリゲルを除去し、mTeSR1完全培地7mLをディッシュに加えた。mTeSR1培地中に均一に分散させたコロニーを各プレートに加えた。培地が渦を巻かないように注意しながら、ディッシュを数回左右に揺らして細胞をディッシュ内に均一に分散させた。増殖の質および形態学的特徴を評価するとともに、過去の報告(Broxmeyer et al., 2011 Blood; 117:4773-4777)に従ってテラトーマ形成アッセイを実施することによって培養を確認した。
【0149】
hPSCから中胚葉細胞への分化誘導:
mTeSR1培地中で2日間培養後(-D2)、FGF-2、VEGF165およびBMP4(各10ng/mL)の存在下でアクチビンA(10ng/mL)を添加して24時間培養することによってhPSCを中胚葉系細胞に分化誘導した。翌日(D1)、アクチビンA含有培地を除去し、FGF-2(Stemgent)、VEGF165(R&D)およびBMP4(R&D)を含むStemline II完全培地(シグマ)8mLに置換した。3日目に、培地を新鮮なStemline II分化培地8mLに置換した。4日目に、細胞を回収し、フローサイトメトリーでソーティングして、KNA+中胚葉細胞またはSSEA5-KNA+中胚葉細胞を得た。
【0150】
KNA + 中胚葉細胞またはSSEA5 - KNA + 中胚葉細胞からEC系(ECFC様細胞を含む)への分化誘導:
4日目にソーティングを行って得られた中胚葉細胞(KDR+NCAM+APLNR+またはSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+)を、FGF-2(Stemgent)、VEGF165(R&D)およびBMP4(R&D)を含むStemline II完全培地(シグマ)8mLでさらに培養し、6日目、8日目、10日目および12日目に培地を交換した。10日目以降は培地をStemline II分化培地10mLに交換した。
【0151】
フローサイトメトリー:
分化誘導後12日目に、TrypLEを使用して接着細胞を回収し、EGM-2培地に懸濁して単一細胞懸濁液とした。細胞をカウントし、抗体染色を行うために細胞懸濁液の一部を前処理した。抗体の非特異的結合を阻止するため、FcRブロッキング試薬(ミルテニーバイオテク)を加えた。抗ヒトCD31抗体(CD31-FITC、BD Pharmingen社から入手したクローンWM59)、抗ヒトCD144抗体(CD144-PE、eBioscience社から入手したクローン16B1)および抗ヒトNRP-1抗体(NRP-1-APC、ミルテニーバイオテク社から入手したクローンAD5-176)を、使用前に滴定により決定した濃度で使用した。ヨウ化プロピジウム(PI、シグマ)を細胞懸濁液に加え、死細胞を染色した。LSR II(ベクトン・ディッキンソン)を使用してフローサイトメトリーによる細胞表面抗原の検出を行い、FACSAria(ベクトン・ディッキンソン)を使用して細胞のソーティングを行った。蛍光補正(コンペンセーション)は、臍帯血由来ECFCを使用した単一陽性コントロールを使用して設定した。標的細胞集団のゲーティングは、各蛍光色のfluorescent minus one(FMO)コントロールに基づいて行った。
【0152】
ソーティングにより得られた細胞の細胞培養:
CD31+、CD144+またはKDR+およびNRP-1+に基づきソーティングした細胞を300×gで5分間遠心分離し、EGM-2培地とStemline II分化用完全培地を50%:50%の割合で混合した培地中に再懸濁した。ソーティングにより得られたこの細胞集団からECFCを作製するため、ラット尾由来I型コラーゲンをコーティングした12ウェルプレートに1ウェルあたり2500個の密度で播種した。2日後に培地を吸引除去し、EGM-2培地と分化培地を3:1の比率で混合した培地を培養に加えた。7日目に、強固に接着している細胞としてECFCコロニーが発生し、敷石状の形態を示した。場合に応じて、クローニングシリンダーを使用して不均一な細胞集団からECFCコロニーを単離した。過去の報告(Yoder et al., 2007; Ingram et al., 2005)に従って、内皮細胞小塊のクローニングを行い、増殖性の高い純粋な内皮細胞集団を単離した。過去の報告(Yoder et al., 2007; Ingram et al., 2005)に従って、コンフルエントに達したECFCを1cm2あたり10,000個の播種密度で播種して継代し、内皮細胞増殖用完全培地(コラーゲンコーティングプレートおよびcEGM-2培地)中でECFCを維持し、1日おきに培地を交換した。
【0153】
免疫化学分析:
ECFCを4%(w/v)パラホルムアルデヒドで30分間固定し、0.1%(v/v)TritonX-100含有PBSで細胞膜透過処理を5分間行った。10%(v/v)ヤギ血清で30分間ブロッキング後、抗CD31抗体(Santa Cruz)、抗CD144抗体(eBioscience)、抗NRP-1抗体(Santa Cruz)および抗α-SMA抗体(Chemicon)を一次抗体として加え、4℃で一晩インキュベートした。PBSで細胞を洗浄後、Alexa-488またはAlexa-565(Molecular Probe)で標識した二次抗体を加えてインキュベートし、2g/ml DAPI(シグマ アルドリッチ)で対比染色した後、共焦点顕微鏡で可視化した。共焦点画像は、オリンパス社製uplanSApo対物レンズ(60×W/1.2NA/eus)を備えたオリンパス社製FV1000 mpE共焦点顕微鏡を使用して撮影した。画像はいずれも室温においてそれぞれ厚さ10μmのZスタック画像として取得し、FV10-ASW 3.0 Viewerを使用して分析した。
【0154】
マウス:
動物実験はいずれも、実験動物の管理と使用に関する指針に従って実施し、インディアナ大学医学部の動物実験委員会(IACUC)によって承認されたものであった(IACUCプロトコル#10850)。いずれの動物実験においても、6~12週齢の雄性および雌性のNOD/SCIDマウス(T細胞およびB細胞が欠損しており、補体系に異常を示すマウス)を使用した。このNOD-SCIDマウスは、インディアナ大学のLaboratory Animal Resource Center(LARC)において特定病原体不在条件で飼育した。過去の研究では、統計学的に有意な結果を得るために最低限必要な動物の数を決定するために、この動物モデルが使用された(Yoderら、2007)。過去の研究では、移植した10個のマトリックス(1匹のマウスにつき2個のマトリックスを移植)のうち、8個のマトリックスが宿主の血管と接合したこと、統計学的有意差を得るには、機能性血管を備えた8個のマトリックス(4匹のマウス)が各群に必要であることが示されている(Yoderら、2007)。各実験群に試料およびマウスを割り当てる際、無作為化は行わなかった。さらに、実験中およびアウトカムの評価において、各群への割り当ての際に盲検化は行わなかった。
【0155】
インビボ移植/血管形成アッセイ(機能アッセイを含む):
過去の報告(Critserら、2010)に従って、ブタ皮膚I型コラーゲンを使用して、細胞が播種された三次元(3D)コラーゲンマトリックスを作製した。簡潔に説明すると、氷冷ブタ皮膚コラーゲン溶液と10%v/vヒト血小板溶解物の0.01N HCl溶液とを混合してI型コラーゲンゲル混合物を調製し、リン酸緩衝生理食塩水と0.1N NaOHで中和してpHを中性(7.4)とした。中和したゲル混合物(約1.5mg/mL)を氷冷し、5%CO下37℃で加温して重合反応を誘導した。最終濃度がコラーゲン1mLあたり400万個となるように、KNA+中胚葉細胞またはSSEA-KNA+中胚葉細胞またはSSEA-KNA+由来NRP-1+CD31+ECFCをコラーゲン混合物に加えた。細胞懸濁液を含むコラーゲン混合物(250μL)を48ウェル組織培養ディッシュに加え、COインキュベーター内において37℃で30分間インキュベートすることによって重合させ、ゲルを形成させた。次いで、得られたゲルを500μLの培地に載せ、5%CO下37℃で30分間培養した。エクスビボでの3D培養を1時間行った後、過去の報告(Yoder、2007#71)に従って、細胞が播種されたゲルを6~12週齢のNOD/SCIDマウスの脇腹(宿主の血管に隣接した前腹壁を鈍的に切開した皮下ポケット)に移植した。コラーゲンゲルを移植するためのこの外科手術は、麻酔下で一定量の酸素を供給しながら行った。切開を縫合し、マウスの回復を観察した。移植後の様々な時点(経過日数)において、承認されたIACUCプロトコルに従って人道的に屠殺したマウスから移植片を切除し、ゲルを回収した。過去の報告に従い、H&E染色ならびに抗ヒトCD31(およびNRP-1)染色を使用して、共焦点蛍光イメージングおよび免疫組織化学分析を行うことによりゲルを観察し、マウス赤血球で満たされ、かつヒト内皮細胞で覆われた血管の有無を確認した。Spot-KEデジタルカメラ(Diagnostic Instruments)を取り付けたライカDM 4000B顕微鏡(ライカマイクロシステムズ)を使用して、各外植片のhCD31+血管のイメージングを行った。少なくとも1個のマウス赤血球を含んでいた血管のみを機能性血管としてカウントした。オリンパス社製FV-1000 MPE倒立共焦点/2Pシステムを使用してNRP-1+CD31+血管を観察した。
【0156】
遺伝子発現解析およびmiRNA発現解析:
逆転写酵素(RT)反応はGeneAmp PCR 9700サーマルサイクラー(アプライドバイオシステムズ)を使用して行った。mRNAのRT反応はTranscriptor Universal cDNA Master(ロシュ)を使用して行った。目的とする特定のmiRNAは、特異的なmiRNAプライマーを使用してcDNAを作製した。テンプレートやプライマーを使用せずに行ったRT反応をコントロールとして使用した。遺伝子発現量およびmiRNA発現量はABI 7300 RT-PCRシステム(アプライドバイオシステムズ)を使用して定量した。mRNAの定量PCRはFastStart Universal SYBR green master (Rox)(ロシュ)を使用して行った。リアルタイムPCRによる比較定量法は、miRNAまたはmRNAに特異的なプライマーを使用して、あるいはこれらを使用せずに三連で行った。mRNAの定量では、95℃で10分間の反応後、95℃15秒、60℃1分間を40サイクルで反応を行った。miRNAの定量では、95℃15秒、60℃1分間を40サイクルで反応を行った。相対発現量は比較Ct法(Leeら、2013)を使用して算出した。
【0157】
ECFCの単一細胞増殖アッセイ:
KNA+またはSSEA5-KNA+の中胚葉細胞に由来するECFCの単一細胞アッセイを行い、クローン増殖能を評価した。簡潔に説明すると、内皮細胞をTrypLE Express(インビトロジェン)で処理して単一細胞懸濁液を得た。細胞数をカウントし、段階希釈を行って、96ウェル培養プレートの各ウェルに1ウェルあたり0.68個の細胞が含まれるように濃度を調整した。細胞を播種した翌日にウェルを観察し、1ウェルに1個の細胞が入っていることを確認した。4日目、8日目および12日目に培地を交換した。培養の14日目に、Sytox試薬(インビトロジェン)で細胞を染色し、蛍光顕微鏡観察して各ウェルの細胞数を計測した。10倍のCP-ACHROMAT(0.12NA)対物レンズを備えたツァイス社製Axiovert 25 CFL倒立顕微鏡を使用して10倍で蛍光顕微鏡観察し、2個以上の細胞を含むウェルを増殖陽性として特定した。過去の報告(Yoder et al., 2007; Ingram et al., 2005)に従って、ウェル中に2~50個の内皮細胞を含んでいたものを内皮細胞小塊(ECC)として分類し、ウェル中に51~500個の内皮細胞を含んでいたものを低増殖能ECFC(LPP)として分類し、ウェル中に501~2000個または2001個以上の内皮細胞を含んでいたものを高増殖能ECFC(HPP)として分類した。
【0158】
ウエスタンブロット分析:
溶解バッファー(20mM Tris-HCl pH 7.5、150mM NaCl、10%グリセリン、1%TritonX-100、2mM EDTA、1mM Na3VO4、1μg/mlアプロチニンおよび1μg/mlロイペプチン)中に細胞を再懸濁して細胞溶解物を調製し、氷上で20分間インキュベートした。12,000×gで15分間遠心分離して不溶性成分を除去した。タンパク質濃度はタンパク質測定キット(バイオ・ラッド)で測定した。4~20%トリス-グリシンミニゲル上でタンパク質を電気泳動により分離し、イモビロン-FL PVDF膜(ミリポア)に転写した。ブロッキングバッファーを使用して室温で1時間インキュベートして非特異的結合を阻止し、Odysseyブロッキングバッファー中の抗リン酸化PYK2一次抗体(1:1,000;Cell Signaling)および抗リン酸化p130Cas一次抗体(1:1,000;Cell Signaling)を加えて4℃で一晩インキュベートした。0.1%Tween20含有PBSでブロットを洗浄し、抗ウサギ抗体(1:10,000;LI-COR)を加えて室温で1時間インキュベートした。Odyssey Infrared Imager(LI-COR)を使用して免疫反応バンドを検出した。
【0159】
Fc-NRP-1処理アッセイ:
mTeSR1培地中でhiPSC細胞塊を2日間培養後(-D2)、FGF-2、VEGF165およびBMP4(各10ng/mL)の存在下でアクチビンA(10ng/mL)を添加して24時間培養することによってhiPSCを中胚葉系細胞に分化誘導した。翌日(D1)、アクチビンA含有培地を除去し、FGF-2(Stemgent)、VEGF165(R&D)、BMP4(R&D)および500ng/mL Fc-NRP-1(R&D)を含むStemline II完全培地(シグマ)8mLに置換した。3日目に、FGF-2(Stemgent)、VEGF165(R&D)、BMP4(R&D)および500ng/mL Fc-NRP-1(R&D)を含む新鮮なStemline II分化培地8mlに置換した。4日目に、細胞を回収し、フローサイトメトリーでソーティングして、SSEA5-KNA+中胚葉細胞を得た。
【0160】
miRNAマイクロアレイおよびRNA配列解析:
Trizol試薬(インビトロジェン)を使用して試料からトータルRNAを単離し、過去の報告(Ginsberg et al., 2012, Cell 151:559-575)に従ってRNAの質を調査した。miRNAマイクロアレイは、miRNome miRNA PCRアレイプレート、miScript II Reverse Transcription reaction kitおよびmiScript SYBR Green PCR Kit(いずれもキアゲン社から入手)を使用して実施し、miRBase(リリース16)に基づいてアノテーションされたヒトmiRNAゲノム(miRNome)において最も豊富に発現しており、最も特徴が解析されている1008個のmiRNA配列の発現プロファイルを調査した。RNA-seq解析では、過去の報告(Ginsbergら、2012)に従って、高品質トータルRNA1μgを使用してRNA配列ライブラリを作製し、イルミナ社製HiSeq2000シーケンサーを使用してシーケンシングを行った。TopHatをデフォルトパラメータで使用して、得られたリード配列をヒトゲノム(hg18)にマッピングし、CuffLinksを使用してRefSeq(2010年6月)に登録されている転写産物の転写量(FPKM)を定量した。
【0161】
miRNAミミック/阻害剤処理アッセイ:
mTeSR1培地中でhiPSCの単一細胞懸濁液を1日培養後(D1)、6ウェルプレート(GE Dharmacon)の各ウェルにhiPSCを100,000個/ウェルの密度で播種し、1ウェルあたり2.5μgのmiRNAミミックまたはmiRNA阻害剤とFGF-2、VEGF165およびBMP4(各10ng/mL)の存在下でアクチビンA(10ng/mL)を添加して24時間培養することによってhiPSCを中胚葉系細胞に分化誘導した。翌日(D1)、アクチビンAとmiRNAミミックまたはmiRNA阻害剤とを含む培地を除去し、FGF-2(Stemgent)、VEGF165(R&D)およびBMP4(R&D)を含むStemline II完全培地(シグマ)2mLに置換した。2日目に、FGF-2(Stemgent)、VEGF165(R&D)およびBMP4(R&D)ならびにmiRNAミミックまたはmiRNA阻害剤2.5μgを含む新鮮なStemline II分化培地2mlに置換した。3日目に、FGF-2(Stemgent)、VEGF165(R&D)およびBMP4(R&D)を含む新鮮なStemline II分化培地2mlに置換した。4日目に、細胞を回収し、フローサイトメトリーでソーティングして、SSEA5-KNA+中胚葉細胞を得た。
【0162】
統計分析:
実験はすべて三連で3回以上行い、データは平均値±SDで示して統計比較を行った。信頼区間を95%とした検定力分析を使用して、統計学的に有意な結果を得るために必要な標本数を算出した。使用した標本数は正規分布を示した。差の有意性は、スチューデントの両側t検定、または一元配置分散分析後にポストホックテストとしてTukey法を実施した多重比較検定により評価した。
【0163】
実施例2:
4日目(D4)のKDR+中胚葉細胞(KNA+中胚葉)に含まれるNCAMおよびAPLNRを共発現する細胞から、ECFCの能力を持ったNRP-1+CD31+内皮細胞が生じた。図1A~1Gを参照されたい。
【0164】
mTeSR1培地で培養したヒトPSCを、以下のように無血清フィーダーフリー条件下で2D培養して中胚葉細胞に分化誘導した。FGF-2(10ng/mL)、BMP4(20ng/mL)、VEGF165(10ng/mL)およびアクチビンA(10ng/mL)を添加したStemline-II培地中でPSCを24時間(すなわちD0~D1)培養した(図1A)。D1において、細胞培養培地を、FGF-2(10ng/mL)、BMP4(20ng/mL)およびVEGF165(10ng/mL)を添加したStemline-II培地に置換した。この置換培地を使用して、中胚葉へ分化誘導中の細胞を3日間(すなわちD1~D4)培養した。
【0165】
4日目に、中胚葉細胞に分化誘導した細胞を以下のようにソーティングした(図1B)。KDR+細胞からNCAM発現細胞およびAPLNR発現細胞をゲーティングした。KDR+NCAM+APLNR+(K+N+A+;本明細書においてKNA+とも呼ぶ)細胞、KDR+NCAM+APLNR-(K+N+A-)細胞およびKDR+NCAM-APLNR-(K+N-A-)細胞をソーティングし、さらに分化させて、NRP-1+CD31+ECFC様細胞の発生を調査した(図1C)。ソーティングにより得られたK+N+A+細胞、K+N+A-細胞およびK+N-A-細胞の各中胚葉サブセットを、さらに9日間(3日間+9日間で計12日間)かけてECFC系へとさらに分化させ、分化誘導の様々な時点(経過日数)におけるNRP-1+CD31+細胞の発生を調査した(図1D)。12日目に、K+N+A+中胚葉画分からNRP1+CD31+細胞が発生し、この細胞から均質な敷石状の内皮単層が形成され、内皮マーカーであるCD31およびCD144の均一な共発現と、α-SMA発現の完全な喪失とが示されたことから(図1Dの上パネル)、安定なECFC様表現型であることが示唆された。一方、これ以外の2つのサブセット(すなわちK+N+A-図1Dの中央のパネル)およびK+N-A-図1Dの下パネル))から単離された細胞では、NRP-1が十分に発現されず、不均一な細胞単層が形成され、CD144の発現が示されたものの内皮マーカーCD31およびCD144の均一な共発現は認められず、非内皮マーカーであるα-SMAの発現が示されたことから、安定なECFC表現型が全く存在しないことが示唆された。K+N+A+中胚葉に由来するNRP-1+CD31+細胞は高いクローン増殖能を示し、2~50個の細胞小塊から2001個を超えるコロニーに及ぶ範囲でhiPSC-ECFC様細胞とよく似たコロニー階層分布を示した(図1E)。一方、これ以外の2つのサブセット(すなわちK+N+A-およびK+N-A-)から単離された細胞では、高いクローン増殖能は示されなかった。K+N+A+中胚葉由来NRP-1+CD31+細胞は、宿主マウスの赤血球で満たされた堅牢なヒト血管をインビボにおいて形成し(図1F、右上パネル;矢印は血管を示す)、形成された血管は、hiPSC-ECFC様細胞によって形成された血管とよく似ていた(図1F、左上パネル)。一方、これ以外の2つのサブセット(すなわちK+N+A-およびK+N-A-)から単離された細胞では、宿主マウスの赤血球で満たされた堅牢なヒト血管のインビボにおける形成は認められなかった(図1F、左下および右下のパネルにそれぞれ示す;矢印はhCD31+機能性血管を示す)。同様に、K+N+A+中胚葉由来NRP-1+CD31+細胞およびhiPSC-ECFC様細胞からhCD31+機能性血管が形成されたが、K+N+A-中胚葉細胞またはK+N-A-中胚葉細胞からはこのような機能性血管は形成されなかった(図1G)。
【0166】
前記培養プロトコルを使用してヒトiPS細胞を3~5日間分化誘導すると、中胚葉マーカーを発現し、典型的な内皮表面マーカーの発現を欠く細胞が発生する。図2A~2Cを参照されたい。APLNR+細胞はKDR+NCAM+中胚葉サブセットのみで見出され、KDR-NCAM-サブセットには存在しなかった(図2A)。KDR+細胞は、3日目および4日目に最も多く見出され、その後は経時的に減少した(図2B)。4日目の分化細胞では典型的な内皮マーカー(CD31、NRP-1およびCD144)の発現は認められなかった(図2C)。
【0167】
SSEA5+細胞を選択的に除去せずに単離した4日目のKNA+中胚葉細胞をインビボで直接分化させると、堅牢なヒト血管が形成されたが、内胚葉由来細胞様の誘導細胞も発生した。図3A~3Bを参照されたい。
【0168】
KDR+細胞からNCAM発現細胞およびAPLNR発現細胞をゲーティングした。APLNR+中胚葉細胞およびAPLNR-中胚葉細胞をソーティングし、各細胞をインビボで直接移植し、評価を行った(図3A)。ソーティングにより得られたAPLNR-中胚葉細胞をインビボで移植したところ、2ヶ月後にテラトーマが形成された(図3B、左パネル)。APLNR+中胚葉サブセット(図3B、右パネル)は、宿主マウスの赤血球で満たされた堅牢なヒト血管をインビボで形成したが(青色の開いた矢印)、内胚葉由来細胞様の誘導細胞も形成した(ピンク色の塗りつぶし矢印)。
【0169】
SSEA5+細胞を除去したD4のKNA+中胚葉細胞(すなわちSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞;SSEA5-KNA+とも呼ぶ)をインビボで直接分化させると、テラトーマや内胚葉由来細胞様の誘導細胞を生じることなく、堅牢なヒト血管が形成された。図4A~4Dを参照されたい。
【0170】
まず、分化させた4日目のhiPSCからSSEA5発現細胞およびKDR発現細胞をゲーティングした(図4A、左パネル)。次に、SSEA5-KDR+細胞からNCAM発現細胞およびAPLNR発現細胞をゲーティングした(図4A、右パネル)。SSEA5-KDR+NCAM+APLNR+(SSEA5-KNA+)細胞およびSSEA5-KDR+NCAM+APLNR-(SSEA5-KNA-)細胞をソーティングし、さらに分析を行った。SSEA5-KNA+細胞はインビボにおいて堅牢な機能性血管を形成したが(図4B、青色の矢印、左パネル)、SSEA5-KNA-細胞はインビボにおいて堅牢な血管を形成しなかった(図4B、白色の矢印、右パネル)。同様に、SSEA5-KNA+細胞からhCD31+機能性血管が形成されたが、SSEA5-KNA-細胞ではこのような血管は形成されなかった(図4C)。SSEA5-KNA+細胞をインビボで移植したところ、早くも移植の8日後にNRP-1+CD31+ECFC血管が形成された(図4D)。
【0171】
SSEA5発現細胞を除去した4日目のKNA+中胚葉細胞は、側板/胚体外中胚葉細胞において通常、高い発現が見られる転写産物を産生し、このSSEA5-KNA+細胞をインビトロでECFC系へと分化誘導したところ、ECFCの能力を持ったNRP-1+CD31+細胞の形成が増加した。図5A~5Cを参照されたい。
【0172】
遺伝子発現解析を行ったところ、SSEA5-KNA+細胞は、hiPSCと比較して側板/胚体外中胚葉マーカーを過剰発現し、中軸中胚葉マーカー、沿軸中胚葉マーカーおよび中間中胚葉マーカーの発現は認められなかった(図5A)。ソーティングにより得られたSSEA5-KNA+細胞をECFC様細胞系へとさらに8日間(4日間+8日間で計12日間)かけてさらに分化させた。12日目において、SSEA5-KNA+細胞からECFC様細胞系への分化誘導により産生されたNRP-1+CD31+細胞の数は、hiPSCからECFC様細胞系への分化誘導によりNRP-1+CD31+細胞を産生させた場合(すなわち、分化4日目にSSEA5-KNA+中胚葉サブセットを単離することなく12日間分化誘導した場合)の3倍以上となった(図5B;左パネル、棒グラフ)。SSEA5-KNA+中胚葉細胞から誘導されたNRP1+CD31+細胞は、均質な敷石状の内皮単層を形成し(図5B、中央の左パネル)、内皮マーカーであるCD31およびCD144の均一な共発現を示すものの(図5B、右パネル)、α-SMAの発現は全く認められなかったことから(図5B、中央の右パネル)、SSEA5-KNA+中胚葉細胞が安定なECFC様表現型に分化することができたことが示唆された。SSEA5-KNA+中胚葉由来NRP-1+CD31+細胞は高いクローン増殖能を示し、2~50個の細胞小塊から2001個を超えるコロニーに及ぶ範囲でhiPSC-ECFCとよく似たコロニー階層分布を示した(図5C)。一方、SSEA5-KNA-中胚葉サブセットから単離された細胞は、高いクローン増殖能を示さなかった(図5C)。
【0173】
本発明者らは、Fc-NRP-1がp130Cas/Pyk2の活性化を介してVEGF-KDRのシグナル伝達を媒介し、hiPSCからのSSEA5-KNA+中胚葉細胞の形成を促進することを見出した。図6A~6Gを参照されたい。
【0174】
内皮細胞において、NRP-1、KDR、Fc-NRP-1、NRP-1-BおよびVEGF165図6Aに示すように機能する。簡潔に説明すると、NRP-1はVEGF165の補助受容体として機能し、VEGF165をVEGF165受容体(KDR)と会合させる。Fc-NRP-1は、細胞膜上NRP-1の代替として作用し、VEGF165に結合してVEGF165をKDRと会合させる。これに対して、NRP-1-B遮断抗体は、NRP-1のVEGF165結合部位に選択的に結合して、VEGF165のNRP-1への結合を特異的に阻害する。
【0175】
KDRのリン酸化およびp130Cas/Pyk2のリン酸化をウエスタンブロットによって調査した(図6Bおよび図6C)。KDRのリン酸化は、VEGFで刺激した群において観察され、Fc-NRP-1二量体で処理すると、コントロール処理細胞と比べてKDRのリン酸化が増加した。一方、NRP-1-Bで処理した細胞では、リン酸化の減少が観察された。同様に、Fc-NRP-1二量体で処理した細胞では、NRP-1-Bで処理した細胞と比べてp130Cas/Pyk2のリン酸化の増加が観察された。
【0176】
hiPSCおよびSSEA5-KNA+中胚葉細胞におけるVEGF-Aアイソフォームの遺伝子発現を調査した。SSEA5-KNA+中胚葉細胞では、hiPSCと比較してVEGF-Aアイソフォームはアップレギュレートされていなかった(図6Dおよび図6E)。
【0177】
中胚葉へ分化誘導中の細胞を、Fc-NRP-1二量体および成長因子の存在下において培養することを含む、中胚葉系への分化誘導プロトコルを図6Fに示す。分化誘導中のhiPSCをFc-NRP-1二量体で処理すると、SSEA5-KNA+中胚葉細胞の産生がFc-NRP-1非処理細胞の2倍を超えて増加した(図6G)。
【0178】
miRNA特異的ミミック、miRNA特異的阻害剤およびその組み合わせによって、hiPSCからのSSEA5-KNA+中胚葉の形成を促進することができる。図7A~7Eを参照されたい。
【0179】
SSEA5-KNA+中胚葉の形成に関与するmiRNAと、これらのmiRNAの推定上の標的である転写因子を特定するため、0日目の未分化hiPSCと4日目のSSEA5-KNA+中胚葉細胞のmiRNAマイクロのアレイとRNA-seq解析を行った(図7A)。miRNAおよびmRNA転写産物の発現を解析したところ、hiPSCからのSSEA5-KNA+中胚葉の形成に関与する転写因子を制御している可能性があると報告され検証されている標的に対する12種のmiR(miR-221-3p、miR-1271-5p、miR-559、miR-543、miR-361-3p、miR-30d-5p、miR-124-3p、miR-185-5p、miR-330-5p、miR-145-5p、miR-214-3pおよびmiR-497-5p)が見出された。これらの12種のmiRNA候補のうち、8種のmiRNA(miR-221-3p、miR-1271-5p、miR-559、miR-543、miR-361-3p、miR-30d-5p、miR-124-3pおよびmiR-185-5p)については、0日目の未分化hiPSCと比較して4日目のSSEA5-KNA+中胚葉細胞において発現量が低いことが見出され、4種のmiRNA(miR-330-5p、miR-145-5p、miR-214-3pおよびmiR-497-5p)については、0日目の未分化hiPSCと比較して4日目のSSEA5-KNA+中胚葉細胞において発現量が高いことが見出された。
【0180】
特定されたmiRNAを模倣および/または抑制することによる中胚葉系分化誘導への効果を評価するため、miRNA特異的ミミック、miRNA特異的阻害剤、miRNA特異的ミミックとmiRNA特異的阻害剤の組み合わせ(3m3i)、またはmiRNAミミック/miRNA阻害剤コントロールの存在下において、hiPSCから中胚葉の形成を誘導するためのプロトコルを構築した(図7B)。3種のmiRNA(miR-330-5p、miR-145-5pおよびmiR-214-3p)をそれぞれ模倣する特異的ミミック、3種のmiRNA(miR-221-3p、miR-1271-5pおよびmiR-559)のそれぞれに対する特異的阻害剤、またはこれらの3種のミミックおよび3種の阻害剤の組み合わせを添加したところ、SSEA5-KNA+中胚葉細胞の発生頻度がコントロールと比較して増加した(図7C)。これらの特異的ミミック、特異的阻害剤または3m3iを添加することによって、(今回のmiRNAアレイ解析において)4日目のSSEA5-KNA+中胚葉細胞において発現量が低いことが特定された大部分のmiRNAの発現が減少した(図7D)。また、これらの特異的ミミック、特異的阻害剤または3m3iを添加することによって、(今回のmiRNAアレイ解析において)4日目のSSEA5-KNA+中胚葉細胞において発現量が高いことが特定されたmiRNAのうちのいくつかの発現が増加した(図7E)。
【0181】
miR-214-3pは、分化誘導中のhiPSCにおいてCLDN6を標的とし、SSEA5-KNA+中胚葉細胞の形成を促進することができる。図8A~8Dを参照されたい。
【0182】
hiPSCおよびSSEA5-KNA+中胚葉細胞において、miR-214の発現およびその推定上の標的であるCLDN6の発現を分析した。miR-214の発現とCLDN6の発現は、hiPSCとSSEA5-KNA+中胚葉細胞とで逆相関することが見出された(図8A)。miR-214は、hiPSCよりもSSEA5-KNA+細胞において高発現しており(図8A、左の棒グラフ)、CLDN6は、hiPSCよりもSSEA5-KNA+細胞において低発現している(図8A、右の棒グラフ)。分化誘導中のhiPSCにおいてmiR-214を過剰発現させると、SSEA5-KNA+中胚葉細胞の発生がGFPレポーターコントロールベクターの2倍を超えて増加した(図8B)。ルシフェラーゼレポーターアッセイを行ったところ、miR-214が野生型(WT)CLND6の発現を直接制御することが確認された(図8C)。また、hiPSCとSSEA5-KNA+中胚葉細胞の間で差次的遺伝子発現解析を行ったところ、現在確認されているmiR-214の標的のうち、12種がSSEA5-KNA+中胚葉において発現が低下することが確認され、その中でも、CLND6は最もダウンレギュレートされる遺伝子の1つであることがわかった(図8D)。たとえば、SSEA5-KNA+中胚葉細胞におけるCLDN6の発現量は、hiPSCにおいて測定された発現量のわずか4%である。
【0183】
特定の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、当業者であれば、添付の請求項で概説されるような本開示の目的および範囲から逸脱することなく、これらの実施形態の様々な変更も可能であることを容易に理解するであろう。本明細書において提供された実施例はいずれも、例示のみを目的として記載されたものであり、本発明をなんら限定するものではない。また、本明細書において提供された図面はいずれも、本発明の様々な態様を例示することのみを目的として記載されたものであり、本発明を規定または限定するために作製されたものでは一切ない。本明細書において引用することにより開示された先行技術は、本明細書の一部を構成するものとしてその全体が援用される。
【0184】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]単離されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団をヒト多能性幹細胞から作製する方法であって、
(a)多能性幹細胞(PSC)を提供する工程;
(b)i)アクチビンA、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地中で前記多能性幹細胞を約24時間培養すること、および
ii)その後、約72時間にわたって約24~48時間ごとに、工程i)の培地を、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む中胚葉分化培地に置換すること
を含む、前記多能性幹細胞を中胚葉へと分化誘導する工程;ならびに
(c)iii)中胚葉細胞をソーティングしてKDR+NCAM+APLNR+細胞を選択すること
を含む、前記分化誘導された細胞から前記中胚葉細胞を単離する工程
を含む方法。
[2]前記ソーティングが、SSEA5-KDR+NCAM+APLNR+細胞を選択することをさらに含む、[1]に記載の方法。
[3]前記中胚葉への分化誘導が、中胚葉へ分化誘導中の前記細胞をFc-NRP-1と接触させることをさらに含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記Fc-NRP-1を工程ii)の中胚葉分化培地に添加する、[3]に記載の方法。
[5]前記中胚葉への分化誘導が、中胚葉へ分化誘導中の前記細胞を1種以上のmiRNA阻害剤と接触させることをさらに含み、該1種以上のmiRNA阻害剤によって、PSCと比較してSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞において低発現しているmiRNAが抑制される、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]前記miRNA阻害剤によって、miR-221-3p、miR-1271-5p、miR-559、miR-543、miR-361-3p、miR-30d-5p、miR-124-3pおよびmiR-185-5pからなる群から選択されるmiRNAが抑制される、[5]に記載の方法。
[7]中胚葉へ分化誘導中の前記細胞を、miR-221-3p阻害剤、miR-1271-5p阻害剤およびmiR-559阻害剤のうちの1種以上のmiRNA阻害剤、好ましくはmiR-221-3p阻害剤と接触させる、[5]に記載の方法。
[8]前記中胚葉への分化誘導が、中胚葉へ分化誘導中の前記細胞を1種以上のmiRNAミミックと接触させることをさらに含み、該1種以上のmiRNAミミックが、PSCと比較してSSEA5-KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞において高発現しているmiRNAを模倣する、[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]前記miRNAミミックが、miR-330-5p、miR-145-5p、miR-214-3pおよびmiR-497-5pからなる群から選択されるmiRNAを模倣する、[8]に記載の方法。
[10]中胚葉へ分化誘導中の前記細胞を、miR-330-5pミミック、miR-145-5pミミックおよびmiR-214-3pミミックのうちの1種以上のmiRNAミミック、好ましくはmiR-330-5pミミックの共存下で培養する、[7]に記載の方法。
[11]前記中胚葉への分化誘導が、中胚葉へ分化誘導中の前記細胞をmiR-214ミミックと接触させることをさらに含む、[1]~[10]のいずれか一項に記載の方法。
[12]前記単離された中胚葉細胞が、哺乳動物に移植された場合に血管形成能を示す、[1]~[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13]前記単離された中胚葉細胞を内皮へと分化誘導する工程をさらに含み、該工程が、
(a)前記単離された中胚葉細胞を、BMP-4、VEGFおよびFGF-2を含む内皮分化培地中で約6~8日間培養すること、ならびに
(b)内皮へ分化誘導された前記細胞から、敷石状の形態を示すCD31+NRP-1+血管内皮コロニー形成細胞様(ECFC様)細胞を単離すること
を含む、[1]~[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14]前記単離されたECFC様細胞が、CD144+、KDR+およびα-SMA-のうちの1つ以上の発現をさらなる特徴とする、[13]に記載の方法。
[15]前記内皮への分化誘導工程を、共培養細胞、胚様体の形成および外因性TGF-βの抑制のうちの1つ以上が存在しない条件で行う、[13]または[14]に記載の方法。
[16]前記単離されたECFC様細胞が、共移植細胞の非存在下で哺乳動物に移植された場合に血管形成能を示す、[13]~[15]のいずれか一項に記載の方法。
[17]単離されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団であって、該単離されたKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞が、哺乳動物に移植された場合に血管形成能を示すこと、および該単離されたKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞が、インビトロにおいてヒト多能性幹細胞(PSC)から誘導されたものであることを特徴とする、単離された集団。
[18]前記KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞がSSEA5-である、[17]に記載の単離された集団。
[19]前記KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞における1つ以上の側板/胚体外中胚葉マーカーの発現がPSCと比較して増加しており、該側板/胚体外中胚葉マーカーが、BMP4、WNT5A、NKX2-5およびHAND1から選択される、[17]または[18]に記載の単離された集団。
[20]前記KDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞における中軸中胚葉マーカー、沿軸中胚葉マーカーおよび/または中間中胚葉マーカーのうちの1つ以上の発現が、PSCと比較して増加しておらず、該中軸中胚葉マーカーがCHIRDおよびSHHから選択され、該沿軸中胚葉マーカーがPAX1、MEOX1およびTCF15から選択され、該中間中胚葉マーカーがGOSR1、PAX2およびPAX8から選択される、[19]に記載の単離された集団。
[21][1]~[12]のいずれか一項に記載の方法によって得られる、単離されたヒトKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞集団。
[22][13]~[16]のいずれか一項に記載の方法によって得られる、単離されたヒトNRP-1+CD31+血管内皮コロニー形成細胞様細胞(ECFC様細胞)集団。
[23][17]~[21]のいずれか一項に記載のKDR+NCAM+APLNR+中胚葉細胞を含む医薬組成物。
[24][22]に記載の血管内皮コロニー形成細胞様細胞(ECFC様細胞)を含む医薬組成物。
[25]細胞活動を修飾する能力について試験薬剤を試験する方法であって、
(a)[17]~[21]のいずれか一項に記載の細胞集団中の少なくとも1個の細胞を試験薬剤に曝露させること;ならびに
(b)細胞増殖および細胞生存率のうちの1つ以上に対する前記試験薬剤の効果を観察すること
を含む方法。
[26]移植を必要とする対象に移植を行う方法であって、
[17]~[22]のいずれか一項に記載の単離された細胞集団を前記対象に提供することを含む方法。
[27]上皮の修復を必要とする対象を治療する方法であって、
[17]~[22]のいずれか一項に記載の細胞集団の治療有効量を前記対象に提供することを含む方法。
図1A-C】
図1D
図1E
図1F-G】
図2A-C】
図3A-B】
図4A-C】
図4D
図5A-C】
図6A-C】
図6D-E】
図6F-G】
図7A
図7B-C】
図7D-E】
図8A-D】