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  • 特開-多色固形化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081659
(43)【公開日】2022-05-31
(54)【発明の名称】多色固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/29 20060101AFI20220524BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A61K8/29
A61Q1/02
A61K8/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044865
(22)【出願日】2022-03-22
(62)【分割の表示】P 2017194594の分割
【原出願日】2017-10-04
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PHOTOSHOP
2.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 昌枝
(72)【発明者】
【氏名】宗吉 裕樹
(57)【要約】
【課題】良好な奥行き感を付与できる多色固形化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】複数の着色固形組成物が、規則性を有し又はアトランダムに配置されてなる、多色固形化粧料であって、前記複数の着色固形組成物は、進出色を少なくとも1色と後退色を少なくとも1色とを含み、前記複数の着色固形組成物の配置面において、着色固形組成物数が20超100未満であり、前記複数の着色固形組成物の最小面積が、0.04cm以上3cm以下である、多色固形化粧料により課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の着色固形組成物が、規則性を有し又はアトランダムに配置されてなる、多色固形化粧料であって、
前記複数の着色固形組成物は、進出色を少なくとも1色と後退色を少なくとも1色とを含み、
前記複数の着色固形組成物の配置面において、着色固形組成物数が20超100未満であり、
前記複数の着色固形組成物の最小面積が、0.04cm以上3cm以下である、多色固形化粧料。
【請求項2】
前記進出色は、マンセルの表色系における赤色、赤黄色、及び黄色に分類される色から選択され、前記後退色は、マンセルの表色系における緑色、青緑色、及び青色に分類される色から選択される、請求項1に記載の多色固形化粧料。
【請求項3】
前記進出色の着色固形組成物は黒色粉体を該組成物全量に対し0.8質量%以下含有し、及び/又は
前記後退色の着色固形組成物は黒色粉体を該組成物全量に対し0.05質量%以上含有する、請求項1または2に記載の多色固形化粧料。
【請求項4】
前記複数の着色固形組成物の配置面において、着色固形組成物数が30以上95以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の多色固形化粧料。
【請求項5】
前記複数の着色固形組成物が、10色未満からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の多色固形化粧料。
【請求項6】
前記複数の着色固形組成物がマーブル状に配置されてなる箇所を少なくともその一部に有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の多色固形化粧料。
【請求項7】
肌に塗布した際に、肌色を呈するファンデーションである、請求項1~6のいずれか1項に記載の多色固形化粧料。
【請求項8】
多色固形化粧料全量に対し、顔料酸化チタンを1質量%以上、40質量%以下含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の多色固形化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションはベースメークアップ化粧料として肌を美しく見せる働きがあり、主として肌色を呈する化粧料である。ファンデーションとしては粉末固形ファンデーション、乳化型ファンデーション、油性固形ファンデーションなどの剤型が存在する。
【0003】
化粧料自体の外観を魅力的なものとするため、多色充填により固形ファンデーションを形成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
また、特にファンデーションでは塗布色の選択は非常に重要であることから、主要部分の外観色と予想される塗布色が概ね同一となる多色充填ファンデーションが提案されており、複数の充填組成物の外観色の色度差を一定以下とするファンデーションが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2に記載されたように、ファンデーションでは塗布色の選択は非常に重要である。そのため、上記提案はあるものの、依然として肌色を呈するファンデーションが主流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-154930号公報
【特許文献2】特開2014-005262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、塗布色の選択の観点からは肌色を呈するファンデーションが有利であるが、本発明者らが検討したところ、肌色を呈するファンデーションは色素顔料が本来有する鮮やかさを失っており、そのために奥行き感が得られにくいという課題が存在することに想到した。
本発明は、良好な奥行き感を付与できる多色固形化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究をすすめ、奥行き感を呈するためには進出色と後退色を組み合わせることが有効との知見を得た。しかしながら、進出色と後退色を組み合わせた場合であっても、固形化粧料を構成する各着色固形組成物の配置面において、それぞれの着色固形組成物が大きなスポットとして存在する場合には、肌に塗布した際に色ムラとして認識され、また小さなスポットで存在する場合には十分な奥行き感が得られなかった。そこで、多色固形化粧料の着色固形組成物配置面において適度なスポット数とすることで、良好な奥行き感が得られることに想到し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、複数の着色固形組成物が、規則性を有し又はアトランダムに配置されてなる、多色固形化粧料であって、
前記複数の着色固形組成物は、進出色を少なくとも1色と後退色を少なくとも1色とを含み、
前記複数の着色固形組成物の配置面において、着色固形組成物数が20超100未満である、多色固形化粧料である。
【0009】
本発明において、前記進出色は、マンセルの表色系における赤色、赤黄色、及び黄色に分類される色から選択され、前記後退色は、マンセルの表色系における緑色、青緑色、及び青色に分類される色から選択されることが好ましい。
また、前記複数の着色固形組成物の配置面において、着色固形組成物数が30以上95以下であることが好ましい。
また、前記複数の着色固形組成物が、10色未満からなることが好ましい。
また、前記複数の着色固形組成物がマーブル状に配置されてなる箇所を少なくともその一部に有することが好ましい。
また、肌に塗布した際に、肌色を呈するファンデーションであることが好ましい。
また、多色固形化粧料全量に対し、顔料酸化チタンを1質量%以上、40質量%以下含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、良好な奥行き感を呈することができ、かつ、いきいきとした肌の見え、及び透明感を有する肌の見え、を達成できる、多色固形化粧料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で調製した化粧料の略形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。
本実施形態に係る多色固形化粧料は、複数の着色固形組成物が、規則性を有し又はアトランダムに配置され、多色固形化粧料を形成する。本明細書において、複数の着色固形組成物の配置方向は、媒体を介して、又は直接的に、肌に塗布する方向である。具体的には、固形ファンデーションであれば、化粧料をパフ上に転写するためパフを摺動する平面方向に、スティックファンデーションであれば、肌に塗布する塗布平面方向に、複数の着色固形組成物が配置される。
【0013】
多色固形化粧料は2色以上の着色固形組成物からなる限り特段限定されず、2色であってよく、3色であってよく、4色であってよく、5色以上であってよい。場合によっては10以上の色を用いてもよいが、化粧料が良好な奥行き感を呈する観点から、10色未満であることが好ましい。また、本実施形態の多色固形化粧料は、肌に塗布した際に、肌色を呈する化粧料である。
【0014】
本実施形態に係る多色固形化粧料は、良好な奥行き感を呈する化粧料である。このことは、次に示す実験により明らかとなった。以下、後述する実施例1、比較例1及び比較例2のパウダーファンデーションを用いて、奥行き感の差を解明すべく行った実験を示す。なお、実施例1のパウダーファンデーションは、肌に塗布することで、肌に奥行き感を感じると評価されたファンデーションであり、比較例1及び比較例2は、奥行き感を感じないと評価されたファンデーションである。
【0015】
<実験1:ミクロベースでの顔料の偏在について>
後述する実施例1及び比較例1のパウダーファンデーションを準備した。
ポリジョイントJN(大成ファインケミカル株式会社製)を用いて、0.5ミルのドクターブレードにより均一に製膜した。その上に実施例1及び比較例1のパウダーファンデーションを均一塗布し、これを試験サンプルとした。各試験サンプルから無作為に4か所画像撮影を行い、顔料の偏在度合を解析した。なお、画像解析は、ビデオマイクロスコープ(キーエンス HVX1000)を用いた。
600倍画像を目視した結果、実施例1のファンデーションを塗布した試験サンプルは
、顔料が偏在して存在することが確認できた。一方で、比較例1のファンデーションは顔料の偏在が確認できなかった。
また、試験サンプルでの、顔料の含有面積比率(一定面積中に顔料が占める割合)(%)を、赤色顔料と黄色顔料について算出し、含有面積比率の標準偏差を比較した。結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1より、実施例1のファンデーションは、顔料のバラツキが大きい、すなわち塗布時に顔料が偏在することが確認された。
【0018】
<実験2:塗布時の単色画像ヒストグラムについて>
後述する実施例1、比較例1及び比較例2のパウダーファンデーションを準備した。
実験1と同様の方法で準備した試験サンプルを撮像し、得られたデジタル画像をPhotoshop CS6を用いて、画像を構成するピクセルの色分布をRGB画像に変換し、一定面積(200×200ピクセル)を対象としてヒストグラム解析を実施した。なお、R画像及びG画像と比較して、B画像が最も標準偏差が大きく出るため、B画像を用いてヒストグラム解析を行い、色のバラツキを評価した。結果を表2に示す。
【0019】
【表2】
【0020】
表2より、比較例1のパウダーファンデーションは、色のバラツキが小さく、比較例2のパウダーファンデーションは色のバラツキが大きいことが理解できる。一方で、実施例1は、色のバラツキが適度に大きいことが理解できる。
【0021】
<実験3:化粧料が転写されたパフの観察>
後述する実施例1、比較例1及び比較例2のパウダーファンデーションを準備した。
それぞれのファンデーションを4cm×5cmのパフに転写させ、ファンデーション転写後のパフを撮像し、デジタル画像から実験2と同様に、一定面積におけるB画像を用いてヒストグラム解析を行い、色のバラツキを評価した。結果を表3に示す。
【0022】
【表3】
【0023】
表3より、パフに転写させたファンデーションの色のバラツキを大きくすることで、良好な奥行き感を呈するファンデーションが得られることが示唆された。これらの示唆に基づき、パフに転写させた際のスポット数、即ち、固形化粧料においてパフを摺動させる平面における着色固形組成物の数を多くすることで、良好な奥行き感が得られるとの知見を得た。
【0024】
<実験4:スポット数による奥行き感の変化>
上記実験1~3を受け、パフに転写されたファンデーションのスポット数と、スポットの色の数と、を変化させることで、奥行き感がどのように変化するかを実験した。スポットを構成する色は以下のとおり。なお、各スポットには、少なくとも1種の進出色と、少なくとも1種の後退色を含ませた。
2色:オレンジ、緑
3色:赤、黄、青
4色:赤、黄、青、緑
8色:赤、オレンジ、黄色、黄緑、青、緑、グレー、白
10色:赤、ピンク、オレンジ、黄色、黄緑、青、緑、青紫、白、グレー
【0025】
パフに転写された各ファンデーションを被験者に塗布し、奥行き感を評価した。評価は、10名のパネラーにより行い、評価基準は以下のとおり。結果を表4に示す。
×××:単一色で平面的に感じる。
××:色ムラと認識する。
×:やや色ムラと認識する。
△:若干奥行きを感じる。
○:奥行きを感じる。
◎:とても奥行きを感じる。
【0026】
【表4】
【0027】
表4より、スポット数が20超であり100未満であることで、良好な奥行き感を呈するファンデーションとなることが理解できる。スポット数が20以下であると、色ムラと認識される結果となった。また、色数が多すぎると逆に奥行き感が失われ、単一色で平面的であると認識される結果となった。また、色の数は10よりも少ないことが好ましいことが理解できる。
このような結果となった理由としては、肌の色は一定ではなく、場所によって明度、色相がばらついているところ、化粧料においても異なる色の集合体で、適度に色を分散させて肌色を表現したことで、良好な奥行き感が得られたと本発明者らは考察する。
【0028】
以上より、本実施形態の多色固形化粧料は、複数の着色固形組成物に進出色を少なくとも1色と後退色を少なくとも1色とを含み、複数の着色固形組成物の配置面において、着色固形組成物数が20超100未満である多色固形化粧料である。
【0029】
進出色とは、背景になる色から浮き出して近くになるように見える色の総称であり、通常マンセルの表色系における、赤紫、赤色、赤黄色、黄色、黄緑に分類される色から選択される。一般に、明度が高く、彩度も高い色である。具体的には、赤色、橙色、黄色などがその代表色としてあげられる。
後退色とは、背景になる色から奥に引っ込んで見える色の総称であり、通常マンセルの表色系における、緑色、青緑色、青色、青紫色、紫色に分類される色から選択される。一般に明度が低く、彩度も低い色である。具体的には、緑色、青緑色、青色、青紫色、紫色などがその代表色としてあげられる。
【0030】
多色固形化粧料中の着色固形組成物数は、25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、35以上であることが更に好ましく、40以上であることが特に好ましい。また95以下であることが好ましく、90以下であることがより好ましい。
それぞれの着色固形組成物の大きさ(面積)は特段限定されないが、最小面積の着色固形組成物に対する最大面積の着色固形組成物の面積比が5以下であってよく、4以下であってよく、3以下であってよく、2以下であってよく、それぞれの着色固形組成物の大きさが略同一であることが好ましい。また、最小の着色固形組成物の面積は、良好な奥行きの観点から0.04cm以上であってよく、0.25cm以上であってよく、また3cm以下であってよく、1.5cm以下であってよい。
【0031】
多色固形化粧料が肌上で肌色を呈するためには黒色粉体を含むことが好ましいが、赤色、赤黄色、及び/又は黄色を含む着色固形組成物に黒色粉体を配合すると、外観がくすむ傾向にある。そのため、進出色を含む着色固形組成物には、黒色粉体を実質的に配合しないことが好ましい。なお「実質的に配合しない」とは、進出色を含む着色固形組成物が有する鮮やかさ がくすむ程度に配合しないことを意図しており、例えば着色固形組成物全量中に黒色粉体が0.8質量%以下であってよく、0.5質量%以下であってよく、0.3質量%以下であってよく、0.1質量%以下であってよく、0.05質量%以下であってよく、0.01質量%以下であってよい。
【0032】
一方で、後退色を含む着色固形組成物に黒色粉体を配合しても、外観の華やかさは失われにくい。そのため、後退色を含む着色固形組成物に黒色粉体を配合することは好ましい。この場合、青色、青緑色、及び/又は緑色を含む着色固形組成物に配合する黒色粉体の含有量は、着色固形組成物全量に対し通常0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また通常2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。
【0033】
複数の着色固形組成物の配置面方向における形状は特段限定されず、丸型、矩形型、多角形型、不定形、マーブル形状など、いずれであってもよい。マーブル形状に配置される箇所を少なくとも一部に有することが、意匠性の観点から好ましい。また、これらが規則的に配置されていてもアトランダムに配置されていてもよい。パフにより擦り取る化粧料の色度を一定に保つ観点からは、略同形状の複数の着色固形組成物が規則的に配置されていてもよい。
【0034】
本実施形態に係る多色固形化粧料の形状は、パウダーファンデーションである場合には、コンパクトに収納することを考慮すると、通常丸型又は略矩形であるが、これに限られるものではない。ここで略矩形とは、矩形の形状に近い形状であるが、4つの角が丸みを帯びているものを含むことを意味する。なお、丸型とすることで、固形化粧料を最後まで均一に使いきれるというメリットが存在する。また、パウダーファンデーションとする場合の厚みも特段限定されず、通常0.1cm以上であってよく、0.2cm以上であってよく、また通常2.5cm以下であってよく、好ましくは1.0cm以下程度であってよい。
一方で、スティックファンデーションの場合には、通常スティック状であり、その長さ、径は、適宜設定される。
以下、本実施形態に係る多色固形化粧料に用いる原料について、説明する。
【0035】
1)粉体
本実施態様で使用し得る粉体は、水、油脂、界面活性剤、アルコール類、シリコーン類などの化粧料原料には溶解しない、有機或いは無機の固形物の総称を意味する。
粉体の具体例としては、カオリン、タルク、マイカ、セリサイト、チタンマイカ、積層樹脂小片(グリッター)、ホウケイ酸Ca/Al、チタンセリサイト、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、群青、紺青、赤色102号、赤色226号、黄色4号アルミニウムレーキ、シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、メチルシロキサン網状重合体、架橋型メチルポリシロキサン樹脂、アクリル酸アルキル樹脂類、ナイロン、シルク、セルロース或いはこれらの複合材料などが例示できる。
粉体の形状は、球状、不定形、多孔質状、中空状、繊維状、板状或いは塊状であってもよい。更に、その表面は、シリコーン被覆処理、金属石けん被覆処理、アシルアミノ酸塩被覆処理など、通常知られている表面処理が為されていてもよい。
【0036】
本実施形態において多色固形化粧料を構成する各着色固形組成物は、少なくとも色素顔料を含有することが好ましい。色素顔料の種類、配合量を調整することで、所望の着色固
形組成物が得られる。一方で、多色固形化粧料を肌に塗布した際に肌色を呈させるためには、黒色粉体が必要となる。黒色粉体の例としては、黒酸化鉄、カーボンブラック、チタンブラック等があげられる。その他の色は適宜調整されるが、通常マンセルの表色系における赤、赤黄色、黄色、青、青緑、緑、などの色から選択されることが一般的である。
【0037】
黒色粉体はそれ単独で着色固形組成物として調製されてもよいが、外観の鮮やかさからは、黒色固形組成物を存在させないことが好ましい。通常、黒色粉体を他の色の固形組成物、とりわけマンセルの表色系における青、青緑、緑の固形組成物に混合することで、減法混色が生じにくい。
【0038】
粉体は、各着色固形組成物において、1種のみ配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
本実施態様において粉体は、パウダーファンデーションの場合には、多色固形化粧料中、及び/又は着色固形組成物中通常65質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましく75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。また、通常95質量%以下であり、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。
オイルゲルタイプのスティックファンデーションの場合には、多色固形化粧料中、及び/又は着色固形組成物中通常30質量%以上であり、40質量%以上であることが好ましい。また、通常70質量%以下であり、60質量%以下であることが好ましい。
粉体のうち、顔料酸化チタンを配合させることが好ましく、多色固形化粧料全量に対し通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、また通常40質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。なお、顔料酸化チタンとは、酸化チタンのうち一次粒子径が0.1μm以上の酸化チタンを意味する。
【0039】
2)油性成分
本実施形態に係る多色粉末固形化粧料は、油性成分を含んでもよい。
油性成分の具体例としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン等の動植物油;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン等の炭化水素油;オレイン酸、イソステアリン酸等の液状脂肪酸;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の液状高級アルコール;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット、グリセリルトリイソステアレート、グリセリルトリイソオクタネート等の合成エステル油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油;が挙げられる。但し、後述する特定の界面活性剤群に属するものは、油性成分として取り扱わないものとする。
【0040】
油性成分は、1種のみ配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
本実施態様において油性成分を配合する場合、パウダーファンデーションの場合には、多色固形化粧料中通常5質量%以上であり、10質量%以上であることが好ましい。また
、通常25質量%以下であり、20質量%以下であることが好ましい。
オイルゲルタイプのスティックファンデーションの場合には、多色固形化粧料中通常30質量%以上であり、40質量%以上であることが好ましい。また、通常70質量%以下であり、60質量%以下であることが好ましい。
【0041】
3)その他成分
本実施態様に係る固形化粧料は、通常固形化粧料に使用される成分を広く配合することが可能である。
【0042】
例えば、有効成分としては、美白成分、抗炎症成分、植物エキス等が挙げられる。
また、界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、
ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、
ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等) 、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコ
ール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等) 、POEアルキル
エーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、等が挙げられる。
【0043】
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等が挙げられる。
【0044】
増粘剤としては、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸,キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等が挙げられる。
【0045】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線
吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類
、等が挙げられる。
【実施例0046】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が例示された実施例のみに限定されることはない。
【0047】
<実施例1、比較例1~2>
下記表5に従って、多色固形ファンデーションを作成した。
まず、各実施例、比較例におけるそれぞれの着色組成物を調製した。成分(A)をヘンシェルミキサで混合し、その後成分(B)を加えて更に混合して混合物を得た。得られた混合物はパルペライザを用いて粉砕し、それぞれの着色組成物を得た。
次に、49等分に隔壁を設けた、一辺5cmの略矩形の金皿に、隔壁で仕切られた区域に、種類の異なる化粧料組成物同士が混合しないように充填し、隔壁をはずして、ハンドプレス20Kgにて加圧成型して実施例1に係る、図1の模式図で概略を示すような49区画に区分された多色固形ファンデーション、及び比較例1に係る単色肌色ファンデーションを得た。また、実施例1と同様の4色の着色組成物を用い、区画を大きくし、区画数を16とした比較例2に係る多色固形ファンデーションを得た。
【0048】
【表5】
【0049】
<化粧料の評価>
得られた実施例1、比較例1及び比較例2に係る固形ファンデーションの評価を行った。
・ファンデーションの官能試験(いきいきとした肌、肌の奥行き感、肌の透明感)
化粧料専門のパネラー10名に、実施例1、比較例1及び比較例2の固形ファンデーションを実際に使用してもらい、「固形ファンデーションを塗布した肌がいきいきとして見えるか否か」、「固形ファンデーションを塗布した肌に奥行き感を感じるか」、及び「固形ファンデーションを塗布した肌に透明感を感じるか否か」の3点について二択評価を行った。結果を表6に示す。なお、評価基準は以下のとおり。
(評価基準)
◎肯定評価が9人以上
○肯定評価が7~8人
△肯定評価が4-6人
×肯定評価が3人以下
【0050】
【表6】
図1