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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081708
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/30 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
B60N2/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019066232
(22)【出願日】2019-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】貴嶋 義和
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 聡
(72)【発明者】
【氏名】安田 豊
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087CA16
(57)【要約】
【課題】シートを回転させる際の操作力を低減させつつ、シートを安全に回転させることができる車両用シートを提供すること。
【解決手段】使用位置から鉛直位置までのシートの回転時には、ロータリーダンパー40のトルクが非伝達とされるので、使用位置からシートを回転させる際にロータリーダンパー40のトルクが反力として作用しない。シートの重心Gが回転軸4の鉛直方向上側から収納位置に位置するまでの回転では、ロータリーダンパー40のトルクがシートに伝達されるので、収納位置に向けてシートを安全に回転させることができる。収納位置から使用位置に位置するまでの回転では、ロータリーダンパー40のトルクが非伝達とされるので、収納位置からシートを回転させる際にロータリーダンパー40のトルクが反力として作用しない。よって、シートを回転させる際の操作力を低減させつつ、シートを安全に回転させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、そのシートクッションに回転可能に軸支されるシートバックと、それらシートクッション及びシートバックを左右方向に沿う軸周りに回転可能に軸支する回転軸と、その回転軸周りのトルクを前記シートクッション及び前記シートバックに付与するロータリーダンパーと、を備え、
前記シートクッション側に前記シートバックが折り畳まれた状態で、前記回転軸よりも前方側の使用位置と、前記回転軸よりも後方側の収納位置との間で前記回転軸周りに回転可能に構成される車両用シートにおいて、
前記使用位置から、前記シートクッション及び前記シートバックの重心が前記回転軸の鉛直方向上側に位置する鉛直位置までの回転領域の始端から少なくとも途中までにおいて、前記収納位置に向けた回転を減速させるトルクが前記ロータリーダンパーから前記シートクッション及び前記シートバックに非伝達とされ、
前記鉛直位置から前記収納位置までの回転領域の少なくとも途中から終端までにおいて、前記収納位置に向けた回転を減速させるトルクが前記ロータリーダンパーから前記シートクッション及び前記シートバックに伝達され、
前記収納位置から前記使用位置までの回転領域において、前記使用位置に向けた回転を減速させるトルクが前記ロータリーダンパーから前記シートクッション及び前記シートバックに非伝達とされることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記使用位置から少なくとも前記鉛直位置までの回転領域において、前記収納位置に向けた回転方向の弾性力を前記シートクッション及び前記シートバックに付与する弾性部材を備えることを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記使用位置から前記鉛直位置までの回転領域において、前記収納位置に向けた回転を減速させるトルクが前記ロータリーダンパーから前記シートクッション及び前記シートバックに非伝達とされ、
前記使用位置から前記鉛直位置までの回転領域の途中から終端側にかけて、前記シートクッション及び前記シートバックの自重による前記使用位置に向けた回転方向のトルクよりも、前記弾性部材の弾性力による前記収納位置に向けた回転方向のトルクが大きくなることを特徴とする請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記回転軸の左右方向両端側が挿通される一対の支持部材を備え、
一対の前記支持部材の対向間側における前記支持部材の内面、又は、前記内面とは反対側の外面に配設される前記ロータリーダンパーに前記回転軸が挿通されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項5】
前記回転軸の左右方向両端側が挿通される一対の支持部材を備え、
前記支持部材は、一対の前記支持部材の対向間側に配設される第1支持板と、一対の前記支持部材の対向間側とは反対側で前記第1支持板に対向配置される第2支持板と、を備え、
前記第1支持板および前記第2支持板の対向間に配設される前記ロータリーダンパーに前記回転軸が挿通されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項6】
前記回転軸および前記第1支持板に係合され、前記回転軸周りの回転方向の弾性力を前記シートクッション及び前記シートバックに付与する弾性部材を備え、
前記第1支持板は、一対の前記支持部材の対向間側の内面に凹設され前記弾性部材が配設される凹部を備えることを特徴とする請求項5記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に、シートを回転させる際の操作力を低減させつつ、シートを安全に回転させることができる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートバック及びシートクッションを折り畳んだ状態のシートを一体的に回転可能に軸支し、その回転軸よりも前方側の使用位置と、後方側の収納位置との間で折り畳み状態のシートを回転させることができる車両用シートが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、収納位置に向けた回転時には、一方向クラッチを噛み合わせることでダンパーのトルクをシートに伝達させ、使用位置に向けた回転時には、一方向クラッチを噛み合わせずにダンパーのトルクをシートに非伝達とする車両用シートが記載されている。
【0004】
この車両用シートによれば、収納位置に向けたシートの回転時に、その回転速度をダンパーのトルクで減速させることができる。これにより、収納位置に向けた回転時にシートの重心が回転軸の鉛直方向上側を越えても、収納位置に向けてシートが自重によって回転(落下)することを抑制できるので、シートを収納位置に向けて安全に回転させることができる。一方、使用位置に向けたシートの回転時、即ち、収納位置からシートを持ち上げる場合には、ダンパーのトルクが反力として作用することを抑制できるので、使用位置に向けてシートを回転させる際の操作力を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-142196号公報(例えば、段落0021~0023、図1~5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、シートを使用位置から持ち上げる際にもダンパーのトルクが反力として作用するため、収納位置に向けてシートを回転させる際の操作力が増大するという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、シートを回転させる際の操作力を低減させつつ、シートを安全に回転させることができる車両用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の車両用シートは、シートクッションと、そのシートクッションに回転可能に軸支されるシートバックと、それらシートクッション及びシートバックを左右方向に沿う軸周りに回転可能に軸支する回転軸と、その回転軸周りのトルクを前記シートクッション及び前記シートバックに付与するロータリーダンパーと、を備え、前記シートクッション側に前記シートバックが折り畳まれた状態で、前記回転軸よりも前方側の使用位置と、前記回転軸よりも後方側の収納位置との間で前記回転軸周りに回転可能に構成されるものであり、前記使用位置から、前記シートクッション及び前記シートバックの重心が前記回転軸の鉛直方向上側に位置する鉛直位置までの回転領域の始端から少なくとも途中までにおいて、前記収納位置に向けた回転を減速させるトルクが前記ロータリーダンパーから前記シートクッション及び前記シートバックに非伝達とされ、前記鉛直位置から前記収納位置までの回転領域の少なくとも途中から終端までにおいて、前記収納位置に向けた回転を減速させるトルクが前記ロータリーダンパーから前記シートクッション及び前記シートバックに伝達され、前記収納位置から前記使用位置までの回転領域において、前記使用位置に向けた回転を減速させるトルクが前記ロータリーダンパーから前記シートクッション及び前記シートバックに非伝達とされる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の車両用シートによれば、次の効果を奏する。使用位置から、シートクッション及びシートバックの重心が回転軸の鉛直方向上側に位置する鉛直位置までの回転領域の始端から少なくとも途中までにおいて、収納位置に向けた回転を減速させるトルクがロータリーダンパーからシートクッション及びシートバックに非伝達とされる。これにより、使用位置から収納位置に向けてシート(シートクッション及びシートバック)を回転させる(持ち上げる)際に、ロータリーダンパーのトルクが反力として作用することを抑制できる。
【0010】
一方、鉛直位置から収納位置までの回転領域の少なくとも途中から終端までにおいては、収納位置に向けた回転を減速させるトルクがロータリーダンパーからシートに伝達されるので、収納位置に向けてシートを安全に回転させることができる。
【0011】
また、収納位置から使用位置までの回転領域においては、使用位置に向けた回転を減速させるトルクがロータリーダンパーからシートに非伝達とされるので、収納位置から使用位置に向けてシートを回転させる(持ち上げる)際に、ロータリーダンパーのトルクが反力として作用することを抑制できる。
【0012】
このように、請求項1の車両用シートによれば、収納位置や使用位置に向けてシートを回転させる際の操作力を低減させつつ、シートを安全に回転させることができるという効果がある。
【0013】
請求項2記載の車両用シートによれば、請求項1記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。使用位置から少なくとも鉛直位置までの回転領域において、収納位置に向けた回転方向の弾性力をシートクッション及びシートバックに付与する弾性部材を備えるので、シートを使用位置から鉛直位置まで持ち上げる操作を弾性体の弾性力によって補助することができる。よって、収納位置に向けてシートを回転させる際の操作力を低減できるという効果がある。
【0014】
請求項3記載の車両用シートによれば、請求項2記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。使用位置から鉛直位置までの回転領域の途中から終端側にかけて、シートクッション及びシートバックの自重による使用位置に向けた回転方向のトルクよりも、弾性部材の弾性力による収納位置に向けた回転方向のトルクが大きくなるので、弾性部材の弾性力によって生じるトルクにより、シートが収納位置に向けて自ずと回転しようとする。
【0015】
使用位置から鉛直位置までの回転領域では、ロータリーダンパーのトルクがシートに非伝達とされるので、トーションスプリングの弾性力によるトルクを利用してシートを鉛直位置まで回転させることができる。その回転によりシートが鉛直位置を越えてからは、少なくともシートの自重によるトルクが作用してシートが収納位置に向けて回転しようとするが、その回転速度をロータリーダンパーのトルクによって減速させることができる。即ち、使用位置からシートを所定の高さまで(弾性部材の弾性力によるトルクがシートの自重によるトルクを上回るまで)持ち上げれば、それ以降はシートを操作することなく、シートを収納位置に向けて安全に回転させることができるという効果がある。
【0016】
請求項4記載の車両用シートによれば、請求項1から3のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。回転軸の左右方向両端側が挿通される一対の支持部材を備え、それら一対の支持部材の対向間側における支持部材の内面、又は、その内面とは反対側の外面に配設されるロータリーダンパーに回転軸が挿通される。これにより、ロータリーダンパーに挿通させた状態の回転軸に支持部材を組み付けることや、支持部材に挿通させた状態の回転軸にロータリーダンパーを組み付けることができる。よって、回転軸に対するロータリーダンパーや支持部材の組み付け作業を容易にできるという効果がある。
【0017】
請求項5記載の車両用シートによれば、請求項1から3のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。回転軸の左右方向両端側が挿通される一対の支持部材を備え、その支持部材は、一対の支持部材の対向間側に配設される第1支持板と、一対の支持部材の対向間側とは反対側で第1支持板に対向配置される第2支持板とを備えるので、左右に所定間隔を隔てる第1支持板および第2支持板によって回転軸を安定して支持することができる。
【0018】
一方、第1支持板および第2支持板が左右に対向配置されることにより、左右方向における第1支持板および第2支持板の配設スペースが増大するものの、それら第1支持板および第2支持板の対向間に配設されるロータリーダンパーに回転軸が挿通される。これにより、かかる対向間におけるデッドスペースを利用してロータリーダンパーを配設することができるので、支持部材およびロータリーダンパーの配設スペースが左右方向で増大することを抑制できるという効果がある。
【0019】
請求項6記載の車両用シートによれば、請求項5記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。回転軸および第1支持板に係合され、回転軸周りの回転方向の弾性力をシートクッション及びシートバックに付与する弾性部材を備え、第1支持板は、一対の支持部材の対向間側の内面に凹設され弾性部材が配設される凹部を備える。これにより、凹部が非形成とされる領域での第1支持板および第2支持板の対向間隔を確保して回転軸を安定して支持しつつ、第1支持板の内面側に弾性部材を配設することができる。
【0020】
回転軸や第1支持板に弾性部材を組み付ける際には、回転軸や第1支持板に弾性部材を係合させる必要があるが、第1支持板の内面(第1支持板および第2支持板の対向間の外側)に弾性部材を配設することにより、弾性部材の組み付け作業を容易にできる。更に、第1支持板の内面に形成される凹部に弾性部材が配設されるので、第1支持板の内面に弾性部材を配設した場合であっても、弾性部材の配設スペースが左右方向で増大することを抑制できる。
【0021】
即ち、弾性部材に比べて回転軸への組み付け作業が比較的容易なロータリーダンパーを第1支持板および第2支持板の対向間に配設し、比較的組み付け作業が煩雑となる弾性部材を第1支持板の内面の凹部に配設することにより、ロータリーダンパー及び弾性部材の組み付け作業が煩雑になることを抑制しつつ、それらロータリーダンパー及び弾性部材の配設スペースが左右方向で増大することを抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態における車両用シートの正面斜視図である。
図2】(a)は、使用位置でシートを折り畳んだ状態を示す車両用シートの正面斜視図であり、(b)は、図2(a)の状態からシートを収納位置に回転させた状態を示す車両用シートの正面斜視図である。
図3】(a)は、使用位置でシートを折り畳んだ状態を示す車両用シートの側面図であり、(b)は、図3(a)の状態からシートを鉛直位置に向けて所定量回転させた状態を示す車両用シートの側面図である。
図4】(a)は、図3(b)の状態から鉛直位置を越えるまでシートを回転させた状態を示す車両用シートの側面図であり、(b)は、図4(a)の状態からシートを収納位置まで回転させた状態を示す車両用シートの側面図である。
図5】(a)は、図4(b)の状態(収納位置)からシートを鉛直位置に向けて所定量回転させた状態を示す車両用シートの側面図であり、(b)は、図5(a)の状態から鉛直位置を越えるまでシートを回転させた状態を示す車両用シートの側面図である。
図6】使用位置から収納位置までシートを回転させる際のトルクの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、車両用シート1の全体構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態における車両用シート1の正面斜視図である。図2(a)は、使用位置でシートを折り畳んだ状態を示す車両用シート1の正面斜視図であり、図2(b)は、図2(a)の状態からシートを収納位置に回転させた状態を示す車両用シート1の正面斜視図である。
【0024】
なお、図1及び図2の矢印U方向、矢印D方向、矢印F方向、矢印B方向、矢印L方向、矢印R方向は、それぞれ車両用シート1の上方向、下方向、前方向、後方向、左方向、右方向を示しており、図3以降においても同様とする。また、車両用シート1の上下方向(矢印U-D方向)は、鉛直方向に相当する。
【0025】
図1及び図2に示すように、車両用シート1は、車両(例えば、自動車)に搭載されるシートである。車両用シート1は、座面を構成するシートクッション2と、そのシートクッション2に軸支され、背もたれを構成するシートバック3と、それらシートクッション2及びシートバック3を回転可能に軸支するための回転軸4と、その回転軸4周りのシートクッション2及びシートバック3の回転にトルクを付与する支持機構10と、を備える。
【0026】
なお、以下の説明において、「シートクッション2及びシートバック3」をまとめて記載する場合には、単に「シート」と記載して説明する。
【0027】
シートクッション2は、クッションフレーム(図示せず)に軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成されるクッションパッド(図示せず)を支持させ、そのクッションパッドを表皮材で覆って構成される。シートバック3も同様に、バックフレーム(図示せず)に軟質ポリウレタンフォーム等の発泡体から構成されるバックパッド(図示せず)を支持させ、そのバックパッドを表皮材(図示せず)で覆って構成される。
【0028】
シートバック3は、座席用の枕を構成するヘッドレスト3aと、シートクッション2に対するシートバック3(リクライニング)の固定状態を解除するための帯状の操作部材3bと、を備えている。ヘッドレスト3aは、左右方向(矢印L-R方向)に所定間隔を隔てて一対に設けられており、それら一対のヘッドレスト3aの対向間におけるシートバック3の上端部分に操作部材3bが設けられる。
【0029】
シートクッション2の後端側(図1の矢印B側の端部)にブラケットを介してシートバック3が軸支され、そのシートバック3の上端側(図1の矢印U側の端部)にヘッドレスト3aが回転可能に軸支されている。即ち、ヘッドレスト3aは、シートバック3の前面(矢印F側の面)に向けて折り畳み可能に構成され、シートバック3は、シートクッション2の上面(図1の矢印U側の面)に向けて折り畳み可能に構成されている。
【0030】
よって、ヘッドレスト3aをシートバック3側に折り畳んだ状態で操作部材3bを牽引し、シートクッション2に対するシートバック3(リクライニング)の固定状態を解除することにより、シートクッション2側にシートバック3を折り畳むことができる(図2(a)参照)。
【0031】
また、シートクッション2の側面からは回転軸4が左右方向外方側に向けて突出しており、この回転軸4が支持機構10に回転可能に軸支されることにより、シートクッション2、シートバック3、及び、回転軸4が一体的に支持機構10に対して回転可能に構成される。よって、使用位置でシートを折り畳んだ状態(図2(a)の状態)で、回転軸4の後方側に向けてシートを回転させることにより、折り畳み状態のシートを収納位置に配置することができる(図2(b)参照)。
【0032】
なお、「使用位置」とは、乗員が着座可能となる角度にシートクッション2が配置される位置(本実施形態では、シートの重心G(図3参照)と回転軸4とを結ぶ直線の水平方向に対する角度が16°になる位置)である。また、「収納位置」とは、シートを「使用位置」から回転軸4周りに所定の角度(本実施形態では、172°)で回転させ、回転軸4の後方側の収納部(図示せず)にシートが収納される位置である。
【0033】
収納位置にシートが配置された状態において(図2(b)参照)、シートクッション2の後端側の上面には操作部2aが設けられている。操作部2aは、収納状態からシートを持ち上げるための取っ手として構成されており、操作部2aを持ってシートを回転軸4の前方側に向けて回転させることにより、シートを使用位置(図2(a)の位置)に配置することができる。
【0034】
使用位置に配置される折り畳み状態(図2(a)の状態)のシートを使用状態(図1の状態)にする場合には、操作部材3bを牽引することでシートの折り畳み状態を解除して、シートバック3をシートクッション2から引き起こす。
【0035】
このようなシートの収納状態と使用状態との切り替え(収納位置と使用位置との間のシートの回転)の操作を、乗員がシートの前方側(図2の矢印F側)で行う場合がある。この場合、シートを収納位置から持ち上げるための操作部2aと、シートの折り畳み状態を解除するための操作部材3bとのそれぞれがシートの左右方向略中央部分(一対のヘッドレスト3aの間)に配置されているため、シートを収納状態から使用状態に容易に切り替えることができる。
【0036】
即ち、操作部2aの左右方向における配設位置と、操作部材3bの左右方向における配設位置とが略一致しているため、折り畳み状態のシートが使用位置に配置されると(図2(a)参照)、上面視(図2(a)の矢印D方向視)において操作部2aと操作部材3bとが重なる位置に配置される。よって、操作部2aを持ってシートを収納位置から使用位置に回転させた後、その操作部2aの上方に位置する操作部材3bを牽引することができる。
【0037】
これにより、例えば、操作部2a及び操作部材3bの配設位置が左右に離れている場合に比べ、操作部2aを持ってシートを使用位置側に回転させる(図2(b)の状態から図2(a)の状態にする)操作と、操作部材3bを牽引してシートの折り畳み状態を解除する操作とを円滑に行うことができる(シートを使用位置側に回転させた後に、左右に手を伸ばして操作部材3bを操作する必要がない)。
【0038】
このように、折り畳み状態のシートを回転軸4周りに回転させることにより、使用位置と収納位置との間でシートを回転させることができるが、そのシートの回転を安全に行うためのトルク(反力)が支持機構10によって付与される。
【0039】
支持機構10は、シートクッション2から左右に突出する回転軸4のそれぞれに組み付けられており、それら一対の支持機構10は左右対称に配置されている。支持機構10は、トーションスプリング20と(図1参照)、そのトーションスプリング20の左右方向外方側に配設される支持部材30と、その支持部材30の内部に配設されるロータリーダンパー40と、を備える。
【0040】
トーションスプリング20は、その一端側が回転軸4に引っ掛けられ(トーションスプリング20の内周側に回転軸4が挿通され)、他端が支持部材30の突起31bに引っ掛けられる。
【0041】
シートが使用位置に配置される状態(図2(a)の状態)では、トーションスプリング20には所定のねじりが付与されており、このねじりによるトーションスプリング20の弾性力は、収納位置に向けてシートを回転させる方向に作用している。
【0042】
支持部材30は、シートを車両に対して回転可能に固定するためのブラケットである。支持部材30は、左右方向に所定間隔を隔てて対向配置される一対の第1支持板31及び第2支持板32を備えている。
【0043】
第1支持板31及び第2支持板32は、それぞれ金属製の板状体から構成され、第1支持板31が支持部材30の左右方向内方側の部位を構成し、第2支持板32が支持部材30の左右方向外方側の部位を構成している。第1支持板31及び第2支持板32の下端部分は互いの対向間側に向けて屈曲しており、その屈曲部分どうしが一体的に(例えば、溶接によって)連結される。
【0044】
第1支持板31及び第2支持板32のそれぞれには、左右で対向する高さに貫通孔が形成される。それら第1支持板31及び第2支持板32の貫通孔に回転軸4が挿通されることにより、回転軸4が第1支持板31及び第2支持板32に回転可能に支持される。
【0045】
第1支持板31は、その左右方向内方側の内面(シート側の面)に形成される凹部31aと、その凹部31aから左右方向内方に向けて突出する突起31bと、を備えている。凹部31aは、第1支持板31の内面から左右方向外方側に向けて凹設され、その凹部31aの凹設底面(内面)から突起31bが突出している。
【0046】
凹部31aは、トーションスプリング20の外形形状に対応した(トーションスプリング20を収容可能な)凹みとして形成され、この凹部31aによって形成される空間内にトーションスプリング20が収容される。トーションスプリング20は、凹部31aに収容された状態で回転軸4及び突起31bに係合される。
【0047】
ロータリーダンパー40は、回転軸4周りのトルクをシートに付与する一方向性のオイルダンパーである。ロータリーダンパー40の中心には貫通孔が形成され、その貫通孔に回転軸4が係合する態様で挿通される。ロータリーダンパー40は、支持部材30(第1支持板31又は第2支持板32の少なくとも一方)に固定される。
【0048】
回転軸4(シート)が支持部材30に対して相対回転すると、トーションスプリング20のねじり量(弾性力)が変化することや、ロータリーダンパー40に対する回転軸4の回転角が変化することにより、回転軸4(シート)の回転にトーションスプリング20やロータリーダンパー40のトルクが付与される。
【0049】
ここで、回転軸4を安定して支持するためには、支持部材30の一対の第1支持板31及び第2支持板32の左右方向の対向間隔を広く確保することが好ましい一方で、その対向間隔を広くすると、第1支持板31及び第2支持板32の左右方向での配設スペースが増大する。
【0050】
これに対して本実施形態では、第1支持板31及び第2支持板32の対向間に配設されるロータリーダンパー40に回転軸4が挿通されるので、左右方向における第1支持板31及び第2支持板32の対向間隔を比較的広く確保しつつ、その対向間におけるデッドスペースを利用してロータリーダンパー40を配設することができる。よって、第1支持板31及び第2支持板32によって回転軸4を安定して支持しつつ、第1支持板31、第2支持板32、及び、ロータリーダンパー40の配設スペースが左右方向で増大することを抑制できる。
【0051】
この場合、単に第1支持板31及び第2支持板32の対向間のデッドスペースを利用することを目的とするのであれば、例えば、かかる対向間にトーションスプリング20を配設する構成を採用することも可能である。しかしながら、そのような構成では、トーションスプリング20の組み付け作業が煩雑化する。
【0052】
具体的には、トーションスプリング20の組み付けは、トーションスプリング20の一端側を回転軸4に引っ掛ける(トーションスプリング20の内周側に回転軸4を挿通させる)と共に、他端側を第1支持板31の突起31bに引っ掛ける必要がある。よって、第1支持板31及び第2支持板32の対向間にトーションスプリング20を設けると、第1支持板31や第2支持板32にトーションスプリング20を引っ掛ける作業が煩雑になる。
【0053】
これに対して本実施形態では、第1支持板31の内面(第1支持板31及び第2支持板32の対向間の外側)にトーションスプリング20が配設され、第1支持板31及び第2支持板32の対向間にロータリーダンパー40が配設される。
【0054】
これにより、第1支持板31の突起31bや回転軸4にトーションスプリング20を係合させる作業を、第1支持板31及び第2支持板32の対向間の外側で行うことができる。よって、回転軸4や第1支持板31に対するトーションスプリング20の組み付け作業を容易に行うことができる。
【0055】
一方、第1支持板31及び第2支持板32へのロータリーダンパー40の組み付けは、トーションスプリング20のように突起31bに引っ掛けるような作業が不要である。よって、第1支持板31及び第2支持板32の対向間にトーションスプリング20を配設するよりも、かかる対向間にロータリーダンパー40を配設した場合の方が、第1支持板31及び第2支持板32に対する組み付け作業を比較的容易に行うことができる。
【0056】
即ち、回転軸4や支持部材30に対する組み付けが比較的容易なロータリーダンパー40を第1支持板31及び第2支持板32の対向間に配設し、その対向間の外側にトーションスプリング20を配設することにより、第1支持板31及び第2支持板32の対向間のデッドスペースを有効に利用しつつ、ロータリーダンパー40やトーションスプリング20の組み付け作業が煩雑になることを抑制できる。
【0057】
このように、トーションスプリング20の組み付け作業を容易にするためには、第1支持板31の内面(第1支持板31及び第2支持板32の対向間の外側)にトーションスプリング20を配設することが好ましい。
【0058】
しかしながら、単に第1支持板31の内面にトーションスプリング20を設ける構成であると、第1支持板31、第2支持板32、及び、トーションスプリング20の左右方向での配設スペースが増大する。この配設スペースの増大を抑制するために第1支持板31及び第2支持板32の対向間隔を狭めると、回転軸4を安定して支持することができない。
【0059】
これに対して本実施形態では、第1支持板31の内面に凹部31aが凹設され、その凹部31aにトーションスプリング20が配設される。また、第1支持板31の外面と第2支持板32の内面との左右の対向間隔は、凹部31aが形成される領域に比べ、凹部31aが非形成とされる領域(第1支持板31及び第2支持板32の下端側の領域)において広くなっている。
【0060】
これにより、凹部31aが非形成とされる領域(第1支持板31及び第2支持板32の下端側の領域)での第1支持板31および第2支持板32の対向間隔を確保できるので、回転軸4を安定して支持することができる。更に、第1支持板31の内面に凹設される凹部31aにトーションスプリング20が配設されるため、第1支持板31の内面にトーションスプリング20を配設した場合であっても、第1支持板31、第2支持板32、及び、トーションスプリング20の配設スペースが左右方向で増大することを抑制できる。
【0061】
次いで、図3から図6を参照して、シートの回転動作について説明する。図3(a)は、使用位置でシートを折り畳んだ状態を示す車両用シート1の側面図であり、図3(b)は、図3(a)の状態からシートを鉛直位置に向けて所定量回転させた状態を示す車両用シート1の側面図である。図4(a)は、図3(b)の状態から鉛直位置を越えるまでシートを回転させた状態を示す車両用シート1の側面図であり、図4(b)は、図4(a)の状態からシートを収納位置まで回転させた状態を示す車両用シート1の側面図である。
【0062】
図5(a)は、図4(b)の状態(収納位置)からシートを鉛直位置に向けて所定量回転させた状態を示す車両用シート1の側面図であり、図5(b)は、図5(a)の状態から鉛直位置を越えるまでシートを回転させた状態を示す車両用シート1の側面図である。図6は、使用位置から収納位置までシートを回転させる際のトルク(シートの自重によるトルクT1と、トーションスプリング20によるトルクT2)の変化を示すグラフである。なお、図6の縦軸はトルクの大きさを示し、横軸は使用位置からのシートの回転角度を示している。また、図6では、トルクT1,T2が収納位置に向けた回転方向に作用している場合には正の値で示し、使用位置に向けた回転方向に作用している場合には負の値で示している。
【0063】
また、以下の説明において、シートの重心G(図3参照)が回転軸4の鉛直方向(矢印U-D方向)上側に配置される位置を「鉛直位置」と定義して説明する。
【0064】
図3に示すように、使用位置における折り畳み状態のシートの重心Gは、回転軸4よりも上方に位置し、シートの重心Gと回転軸4とを結ぶ直線は水平方向に対して若干(本実施形態では、16°)傾斜している。この使用位置においては、折り畳み状態のシートの重心Gに、シートの自重によるトルクT1(本実施形態では、38.7N・m)、即ち、使用位置に向けた回転方向のトルクT1が作用している。
【0065】
一方、使用位置から収納位置(鉛直位置)に向けた回転方向には、トーションスプリング20(図1参照)の弾性力が付与されている。よって、シートの重心Gには、シートの自重によるトルクT1に加え、シートの自重によるトルクT1とは反対方向に向けたトーションスプリング20のトルクT2(本実施形態では、使用位置において24.8N・m)が作用している。
【0066】
なお、シートの自重によるトルクT1は、シートの重心Gにおけるシートの重量(N)の回転軸4周りの回転方向成分と、回転軸4から重心Gまでの距離(m)とを乗じたものである。また、トーションスプリング20のトルクT2は、シートの重心Gに作用する弾性力(N)の回転軸4周りの回転方向成分と、回転軸4から重心Gまでの距離(m)とを乗じたものである。また、回転方向成分とは、回転軸4及び重心Gを結ぶ直線と直交する方向の成分である。
【0067】
使用位置(図3(a)の状態)において、シートの自重によるトルクT1とは反対方向にトーションスプリング20のトルクT2が作用しているので、使用位置からシートを持ち上げる(鉛直位置に向けてシートを回転させる)際の操作をトーションスプリング20のトルクT2によって補助することができる。よって、シートを使用位置から持ち上げる(収納位置に向けて回転させる)際の操作力を低減することができる。
【0068】
また、使用位置におけるトーションスプリング20のトルクT2は、シートの自重によるトルクT1よりも小さい値に設定されている。よって、使用位置から収納位置(鉛直位置)に向けた回転をロックするロック機構(図示せず)の解除を行っても、シートが上方に跳ね上がるようにして回転することはない。即ち、かかるロック機構の解除後に乗員がシートを持ち上げるまでは、シートは自重によって使用位置に留まった状態となる。
【0069】
シートの自重によるトルクT1や、トーションスプリング20のトルクT2は、シートの回転に伴って変化するが、このトルクの変化について、図6を参照して説明する。なお、図6では、シートの自重によるトルクT1の大きさを2点鎖線、トーションスプリング20のトルクT2の大きさを破線、それらのトルクT1,T2を合成したトルク(T1+T2)の大きさを実線でそれぞれ図示している。
【0070】
図6に示すように、使用位置から鉛直位置までのシートの回転領域においては、シートの自重によるトルクT1と、トーションスプリング20のトルクT2との双方が作用している。よって、それらのトルクT1,T2を合成したトルク(以下、単に「合成トルク(T1+T2)」と記載する)が実質的にシートに作用する(シートの操作に影響する)トルクとなる。よって、図6に示す合成トルク(T1+T2)が負の値の場合には、使用位置に向けた回転方向のトルクがシートに作用しており、正の値の場合には、収納位置に向けた回転方向のトルクがシートに作用していることになる。
【0071】
言い換えると、図6に示す合成トルク(T1+T2)が負の値の場合には、収納位置に向けてシートを回転させる際に、そのトルクに抗してシートを回転させる(持ち上げる)操作が必要ある。一方、合成トルク(T1+T2)が正の値の場合には、収納位置に向けてシートが自ずと(シートを回転させる操作を必要とせずに)回転することを意味している。
【0072】
図6に示すように、使用位置においては、収納位置に向けた回転方向に作用するトーションスプリング20のトルクT2(24.8N・m)と、使用位置に向けた回転方向に作用するシートの自重によるトルクT1(-38.7N・m)とが作用しているため、それらの合成トルク(T1+T2)は、使用位置において負の値(-13.9N・m)となる。よって、使用位置から収納位置(鉛直位置)に向けてシートを回転させるには、その合成トルク(T1+T2)に抗してシートを持ち上げる操作が必要となる。
【0073】
使用位置に向けたシートの自重によるトルクT1は、シートが鉛直位置に近付くほど徐々に(正弦曲線的に)小さくなり、鉛直位置でゼロとなる。一方、収納位置に向けたトーションスプリング20のトルクT2は、シートが鉛直位置に近付くほど徐々に(比例的に)小さくなるものの、鉛直位置においても所定の大きさ(本実施形態では、16N・m)を有している。
【0074】
よって、使用位置からシートを所定の角度(本実施形態では、約44°)だけ回転させると、使用位置に向けたシートの自重によるトルクT1と、収納位置に向けたトーションスプリング20のトルクT2とが同じ大きさとなり、それらの合成トルク(T1+T2)はゼロになる(シートの自重によるトルクT1と、トーションスプリング20のトルクT2とが釣り合う状態となる(図3(b)参照)。
【0075】
この状態から更にシートを収納位置(鉛直位置)に向けて回転させると、使用位置に向けたシートの自重によるトルクT1よりも、収納位置に向けたトーションスプリング20のトルクT2が大きくなる。即ち、図6に示すように、使用位置からのシートの回転角度が44°を越えると、合成トルク(T1+T2)が正の値となるので、シートが収納位置(鉛直位置)に向けて自ずと回転する。よって、使用位置からシートを所定の高さまで持ち上げれば、それ以降はシートを操作することなく、シートを鉛直位置に向けて回転させることができる。
【0076】
このように、使用位置から鉛直位置に向けたシートの回転領域の途中で合成トルク(T1+T2)が正の値となる構成であれば、シートを鉛直位置に向けて自ずと回転させることができる。しかしながら、かかる構成であっても、例えば、トーションスプリング20のトルクT2が鉛直位置付近で急激に小さくなる(例えば、ゼロになる)構成であると、シートの回転が鉛直位置付近で止まる可能性がある(摩擦力が作用するため)。
【0077】
これに対して本実施形態では、トーションスプリング20のトルクT2は、鉛直位置においても所定の大きさ(本実施形態では、16N・m)を有している。これにより、乗員が使用位置から所定量(合成トルク(T1+T2)が正の値となるまで)シートを持ち上げてから手を離しても、シートの回転が鉛直位置付近で止まることを抑制できる。
【0078】
図4(a)に示すように、収納位置に向けて回転するシートが鉛直位置を越えてからは、シートの自重によるトルクT1と、トーションスプリング20のトルクT2とがそれぞれ収納位置に向けた回転方向に作用する。よって、そのトルクによってシートが比較的速い回転速度で収納位置に向けて回転しようとするが、本実施形態では、その回転速度を減速させるトルクT3がロータリーダンパー40(図1参照)から付与される。これにより、収納位置に向けてシートを安全に回転させることができる。
【0079】
一方、ロータリーダンパー40のトルクT3(使用位置に向けた回転方向のトルク)は、使用位置から鉛直位置までの回転領域においてはシートに伝達されない構成となっている(図6参照)。これにより、使用位置からシートを持ち上げる際には、ロータリーダンパー40のトルクT3が反力として作用することを抑制できるので、使用位置からシートを持ち上げる際の操作力を低減させることができる。
【0080】
また、トーションスプリング20のトルクT2は、シートが収納位置に近付くにつれて徐々に(比例的に)小さくなるが、本実施形態では、使用位置から収納位置までの回転領域の全域において、トーションスプリング20のトルクT2がシートに作用するように構成されている。これにより、シートに作用するトーションスプリング20のトルクT2を、鉛直位置付近で比較的大きく確保しつつ、収納位置付近で比較的小さくすることができる。よって、鉛直位置付近でのシートの回転速度を速めつつ、収納位置付近でのシートの回転速度を遅くすることができる。
【0081】
即ち、シートの回転速度が速くても比較的安全な回転領域(シートと床面との間で手を挟んだりするような可能性が低い鉛直位置付近)においては、シートの回転速度を比較的速くし、シートの回転速度が速いと危険である回転領域(収納位置付近)においては、シートの回転速度を比較的遅くすることができる。これにより、シートが収納位置まで回転するまでの時間を極力短くしつつ、シートを使用位置に向けて安全に回転させることができる。
【0082】
一方、使用位置から収納位置までの全ての回転領域でトーションスプリング20のトルクT2をシートに作用させる構成の場合、図4(b)に示すように、収納位置においてもトーションスプリング20のトルクT2が収納位置に向けた回転方向に作用してしまう。
【0083】
よって、図5(a)に示すように、収納位置から使用位置に向けてシートを回転させるには、シートの自重によるトルクT1と、トーションスプリング20のトルクT2との双方に抗してシートを持ち上げる必要がある。従って、収納位置でのトーションスプリング20のトルクT2が過剰に大きくなると、収納位置からシートを持ち上げることが困難になる。
【0084】
これに対して本実施形態では、収納位置におけるトーションスプリング20のトルクT2が5N・m以下(本実施形態では、2.2N・m)に設定されているので、シートを収納位置から持ち上げる際に、トーションスプリング20のトルクT2による反力が過剰に大きくなることを抑制できる。よって、シートの回転領域の全域でトーションスプリング20のトルクT2がシートに付与される構成であっても、収納位置からシートを持ち上げる際の操作力が過大となるのを抑制できる。
【0085】
また、収納位置から使用位置に向けたシートの回転時には、その回転領域の全域において、ロータリーダンパー40(図1参照)のトルクがシートに伝達されない構成となっている。これにより、収納位置からシートを持ち上げる際にロータリーダンパー40のトルクが反力として作用することを抑制できるので、収納位置からシートを持ち上げる際の操作力を低減させることができる。
【0086】
また、トーションスプリング20のトルクT2は、収納位置から鉛直位置にかけて徐々(比例的に)に大きくなる構成であるため、収納位置から鉛直位置に向けてシートを持ち上げる際に、トーションスプリング20のトルクT2による反力が急に増大することを抑制できる。よって、収納位置から鉛直位置に向けてシートを円滑に持ち上げることができる。
【0087】
図5(b)に示すように、使用位置に向けて回転するシートが鉛直位置を越えてからは、シートの自重によるトルクT1によってシートが使用位置に向けて回転しようとする。この回転速度は、トーションスプリング20のトルクT2によって減速させることができるので、シートを使用位置に向けて安全に回転させることができる。
【0088】
以上の通り、本実施形態では、鉛直位置から収納位置に向けたシートの自重による回転をロータリーダンパー40のトルクT3によって減速させ、鉛直位置から使用位置に向けたシートの自重による回転をトーションスプリング20のトルクT2によって減速させる構成であるので、シートを収納位置および使用位置の双方に向けて安全に回転させることができる。
【0089】
この一方で、使用位置から収納位置に向けて回転するシートが鉛直位置を越えてからは、シートの自重によるトルクT1とトーションスプリング20のトルクT2とが合成される。よって、その回転速度を減速させる(シートを安全に回転させる)ためにはロータリーダンパー40のトルクT3を比較的大きく設定する必要がある。これに対して本実施形態では、シートを使用位置や収納位置から持ち上げる際に、ロータリーダンパー40のトルクT3が反力として作用しないため、ロータリーダンパー40のトルクT3を比較的大きく設定してシートを安全に回転させることと、シートを持ち上げる(回転させる)際の操作力を低減させることとを両立させることができる。
【0090】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0091】
上記実施形態では、弾性部材の一例としてトーションスプリング20を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、収納位置や使用位置に向けた弾性力をシートに付与できるものであれば、弾性部材はコイルスプリング等でも良い。
【0092】
上記実施形態では、左右一対のトーションスプリング20の弾性力によるトルクT2がそれぞれ同一の回転方向に作用され、左右一対のロータリーダンパー40のトルクT3がそれぞれ同一の回転方向に作用される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、左右一対のトーションスプリング20のトルクに差を設け、それぞれ異なる回転方向に作用させる構成や、左右一対のロータリーダンパー40のトルクに差を設け、それぞれ異なる回転方向に作用させる構成でも良い。
【0093】
上記実施形態では、トーションスプリング20の弾性力が収納位置に向けた回転方向に作用される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、トーションスプリング20の弾性力を使用位置に向けた回転方向に作用させる構成でも良く、トーションスプリング20を省略する構成でも良い。
【0094】
上記実施形態では、トーションスプリング20(弾性部材)の弾性力がシートの回転領域の全域にわたって作用される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、シートの回転領域の途中において、弾性部材の弾性力がゼロになる構成や、弾性部材の弾性力によって生じるトルクの方向が逆向きとなる構成でも良い。
【0095】
シートの回転領域の途中で弾性部材の弾性力をゼロにする場合には、収納位置に向けて回転するシートが鉛直位置を越えた位置で、弾性部材の弾性力をゼロにすることが好ましい。これにより、使用位置から鉛直位置までの回転領域において、シートの自重によるトルクよりも弾性部材のトルクが大きくなる領域を形成できる。更に、収納位置において、弾性部材の弾性力によるトルクをゼロにする(若しくは、使用位置に向けた回転方向のトルクを生じさせる)ことができる。これにより、鉛直位置に向けてシートを自ずと回転させることができると共に、収納位置からシートを持ち上げる際の操作力を低減できる。
【0096】
上記実施形態では、支持部材30が第1支持板31及び第2支持板32の2部材から構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、支持部材30を1部材から構成しても良い。
【0097】
上記実施形態では、第1支持板31の内面に凹部31aが形成され、その凹部31aにトーションスプリング20が配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、凹部31aを省略した第1支持板31の内面側にトーションスプリング20を設ける構成でも良い。また、第1支持板31及び第2支持板32の対向間や、第2支持板32の外面側にトーションスプリング20を設けても良い。この場合には、第2支持板32の外面側にトーションスプリング20を設けることが好ましい。これにより、トーションスプリング20の組み付け作業の作業性を確保できる。
【0098】
上記実施形態では、第1支持板31及び第2支持板32の対向間にロータリーダンパー40が設けられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1支持板31の内面側や第2支持板32の外面側(支持部材30の内面側や外面側)にロータリーダンパー40を設ける構成でも良い。
【0099】
上記実施形態では、収納位置に向けたシートの回転領域の一部(使用位置から鉛直位置までの範囲)において、ロータリーダンパー40のトルクをシートに非伝達とする手段の詳細な説明を省略したが、かかる手段は、公知の構成(例えば、特開2007-292172号公報)が採用可能である。
【0100】
上記実施形態では、収納位置に向けたシートの回転時に、使用位置から鉛直位置までの回転領域の全域でロータリーダンパー40のトルクがシートに非伝達とされる(鉛直位置から収納位置までの回転領域の全域でロータリーダンパー40のトルクT3がシートに伝達される)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0101】
例えば、収納位置に向けたシートの回転時に、少なくとも使用位置から鉛直位置までの回転領域の始端から少なくとも途中まで、ロータリーダンパー40のトルクをシートに非伝達とする(それ以降の回転領域ではトルクを伝達する)構成であれば良い。これにより、使用位置からシートを持ち上げる際の操作力を低減できる。
【0102】
また、収納位置に向けたシートの回転時に、使用位置から鉛直位置を越えるまでの回転領域で、ロータリーダンパー40のトルクをシートに非伝達とする(それ以降の回転領域ではトルクを伝達する)構成でも良い。これにより、シートを使用位置から鉛直位置まで持ち上げる際の操作力を低減できると共に、シートの回転が鉛直位置付近で止まることを抑制できる。
【0103】
なお、収納位置に向けたシートの回転時に、使用位置から鉛直位置を越えるまでの回転領域で、ロータリーダンパー40のトルクをシートに非伝達とする場合には、鉛直位置からのシートの回転角度が40~50°に達するまでの回転領域において、ロータリーダンパー40のトルクをシートに非伝達とすることが好ましい。これにより、シートの回転が鉛直位置付近で止まることを抑制しつつ、シートを収納位置に向けて安全に回転させることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 車両用シート
2 シートクッション
3 シートバック
4 回転軸
20 トーションスプリング(弾性部材)
30 支持部材
31 第1支持板
31a 凹部
32 第2支持板
40 ロータリーダンパー
T1 シートの自重によるトルク
T2 トーションスプリング(弾性部材)の弾性力によるトルク
T3 ロータリーダンパーのトルク
図1
図2
図3
図4
図5
図6