(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081801
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20220525BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220525BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192974
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 悠太
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 英昭
(72)【発明者】
【氏名】松浦 広幸
(72)【発明者】
【氏名】金 相侖
(72)【発明者】
【氏名】折茂 慎一
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK15
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029HJ02
5H029HJ14
(57)【要約】
【課題】水素化物の結晶構造の変化を低減できる二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】二次電池は、順に正極層、固体電解質層および負極層を含み、正極層、固体電解質層および負極層の少なくとも1つは、イオン伝導性を有する水素化物を含む。二次電池の製造方法は、正極層、固体電解質層および負極層を準備する工程と、正極層、固体電解質層および負極層のうち水素化物を含む層を、100℃以上300℃以下の温度に加熱する工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に正極層、固体電解質層および負極層を含み、前記正極層、前記固体電解質層および前記負極層の少なくとも1つは、イオン伝導性を有する水素化物を含む二次電池の製造方法であって、
前記正極層、前記固体電解質層および前記負極層を準備する準備工程と、
前記正極層、前記固体電解質層および前記負極層のうち前記水素化物を含む層を、100℃以上300℃以下の温度に加熱する第1の加熱工程と、を備える二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記第1の加熱工程の後に、前記正極層、前記固体電解質層および前記負極層を積層する積層工程を備える請求項1記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記第1の加熱工程の後に、前記正極層、前記固体電解質層および前記負極層を容器に封入する封入工程を備える請求項1記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記第1の加熱工程の後に、前記正極層、前記固体電解質層および前記負極層を積層して積層体を得る積層工程と、
前記積層体を100℃以上300℃以下の温度に加熱する第2の加熱工程と、
前記第2の加熱工程の後に、前記積層体を容器に封入する封入工程と、を備える請求項1記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記水素化物は、金属イオンであるカチオンと、一般式(CmBn-mHn)(2-m)-(但し0≦m<2、5≦n≦12)で表されるアニオンと、からなる請求項1から4のいずれかに記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素化物を含む二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
正極層、固体電解質層および負極層の少なくとも1つに、イオン伝導性を有する水素化物が含まれる二次電池が知られている。特許文献1の技術では、水素化物が水和物を作るとイオン伝導率が低下するので、露点が-10℃から-100℃の範囲に設定された低露点雰囲気下で二次電池を製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、低露点雰囲気に水素化物が曝される時間が長くなると、吸湿によって水素化物の結晶構造が変化することを見出した。水素化物の結晶構造が変化すると、二次電池が設計どおりの性能を発揮できないおそれがある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、水素化物の結晶構造の変化を低減できる二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の二次電池の製造方法は、正極層、固体電解質層および負極層を準備する準備工程と、正極層、固体電解質層および負極層のうち水素化物を含む層を、100℃以上300℃以下の温度に加熱する第1の加熱工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
第1の態様によれば、正極層、固体電解質層および負極層のうち水素化物を含む層が、第1の加熱工程において100℃以上300℃以下の温度に加熱される。加熱によって、その層に含まれる水素化物に結合した水分子を分離できるので、水素化物の結晶構造の変化を低減できる。
【0008】
「正極層、固体電解質層および負極層のうち水素化物を含む層を加熱する」には、正極層、固体電解質層および負極層を別々に加熱すること、正極層、固体電解質層および負極層から選択される2つ以上を重ね合わせたものを一緒に加熱することが含まれる。
【0009】
第2の態様によれば、第1の加熱工程の後に、正極層、固体電解質層および負極層が積層される。第1の態様の効果に加え、積層体に含まれる水素化物の結晶構造の変化を低減できる。
【0010】
第3の態様によれば、第1の加熱工程の後に、正極層、固体電解質層および負極層が容器に封入される。第1の態様の効果に加え、容器に封入される層に含まれる水素化物の結晶構造の変化を低減できる。
【0011】
第4の態様によれば、第1の加熱工程の後に、正極層、固体電解質層および負極層を積層した積層体が得られる。第2の加熱工程において100℃以上300℃以下の温度に積層体が加熱される。第1の態様の効果に加え、水素化物の結晶構造の変化をさらに低減できる。
【0012】
第5の態様によれば、水素化物は、金属イオンであるカチオンと、一般式(CmBn-mHn)(2-m)-(但し0≦m<2、5≦n≦12)で表されるアニオンと、からなる。第1から第4の態様のいずれかの効果に加え、水素化物のイオン伝導率を高くできると共に、水素化物の大気安定性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施の形態における二次電池の分解立体図である。
【
図4】第1シートおよび第2シートの断面図である。
【
図5】露点-40℃の空気に暴露したLi
2B
12H
12のX線回折図形である。
【
図6】露点-40℃の空気に暴露した0.7LiCB
9H
10-0.3LiCB
11H
12のX線回折図形である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は一実施の形態における二次電池10の分解立体図である。
図2は積層体11及び第1容器14の分解立体図である。図面では積層体11、第1容器14、第2容器17等の厚さが誇張して示されている。
【0015】
図1に示すように二次電池10は、積層体11(発電要素)と、積層体11を収納した第1容器14と、第1容器14を収納した第2容器17と、を備えている。二次電池10は、発電要素が固体で構成された固体リチウムイオン電池である。発電要素が固体で構成されているとは、発電要素の骨格が固体で構成されていることを意味し、例えば該骨格中に液体が含浸した形態等を排除するものではない。積層体11に接続された端子12,13は、第1容器14の外に引き出されている。第1容器14は、第1フィルム31及び第2フィルム32(
図2参照)からなる。
【0016】
第1フィルム31及び第2フィルム32は、例えば順に、表層、バリア層および接着層(いずれも図示せず)を含む。第1フィルム31及び第2フィルム32は、接着層を向き合わせて配置される。表層は、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミドで作られる。バリア層は、例えばアルミニウム等の金属箔や蒸着層で作られる。接着層は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンを主成分とする共重合体等のオレフィン系樹脂で作られる。第1フィルム31及び第2フィルム32は、必要に応じて、これら以外の層を設けても良いし、バリア層を複数設けても良いし、表層を省略しても良い。
【0017】
第1フィルム31及び第2フィルム32の接着層の溶着により、第1容器14のシール部15(
図1参照)が形成され、シール部15の内側に収納部16が設けられる。端子12,13はシール部15を通って第1容器14の外に引き出されている。積層体11は収納部16の内側の空間に配置されている。第1容器14による積層体11の包装形態は真空包装またはガス置換包装である。
【0018】
第1フィルム31及び第2フィルム32に代えて、1枚のフィルムを接着層が合わさるように2つ折りにし、フィルムの間に積層体11を挟み、フィルムの折り目以外の3辺にシール部15を設けても良い。第1容器14は収納部16への水分の浸入等を抑制し、第1容器14に封入された積層体11の性能低下を抑制する。
【0019】
第2容器17は、箱型の本体18と蓋19とを備えている。蓋19には、蓋19を厚さ方向に貫通する穴20が設けられている。本実施形態では本体18及び蓋19は、鋼鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタニウム、チタニウム合金などの1種以上からなる金属製である。これに限られるものではなく、合成樹脂製の本体18及び蓋19を採用することは可能である。
【0020】
本体18の中に第1容器14が配置される。本体18と第1容器14との間にできる隙間に充填材(図示せず)を配置しても良い。積層体11に接続された端子12,13は、蓋19の穴20を通って第2容器17の外に引き出される。溶接や接着などによって蓋19は本体18に気密に固定される。蓋19の穴20と端子12,13との間にできる隙間は、充填材(図示せず)によって塞がれる。第2容器17は水分の浸入等を抑制し、第2容器17に封入された積層体11の性能低下を抑制する。
【0021】
図2に示すように積層体11は、順に、正極層21、固体電解質層24及び負極層25を含む。本実施形態では積層体11の厚さ方向(
図2上下方向)から見て、正極層21、固体電解質層24及び負極層25は形状が略矩形である。但し正極層21、固体電解質層24及び負極層25の形状に制限はない。
【0022】
正極層21は集電層22と複合層23とが重ね合わされている。端子12は集電層22に接続されている。負極層25は集電層26と複合層27とが重ね合わされている。端子13は集電層26に接続されている。集電層22,26は導電性を有する部材である。集電層22,26の材料はNi,Ti,Fe,Cu及びAlから選ばれる金属、これらの元素の2種以上を含む合金やステンレス鋼、炭素材料が例示される。端子12はステンレス鋼、アルミニウム等の金属製で板状に形成されている。端子13はステンレス鋼、銅等の金属製で板状に形成されている。
【0023】
図3は積層体11の断面図である。正極層21は集電層22及び複合層23を含む。複合層23は活物質28及びイオン伝導体29を含む。複合層23はさらにバインダー及び導電助剤を含んでも良い。活物質28は、遷移金属を有する金属酸化物、硫黄系活物質、有機系活物質が例示される。遷移金属を有する金属酸化物は、Mn,Co,Ni,Fe,Cr及びVの中から選択される1種以上の元素とLiとを含む金属酸化物が例示される。遷移金属を有する金属酸化物は、LiCoO
2,LiMn
2O
4,LiNiVO
4,LiMn
1.5Ni
0.5O
4及びLiFePO
4が例示される。
【0024】
活物質28とイオン伝導体29との反応の抑制を目的として、活物質28の表面に被覆層を設けることができる。被覆層は、Al2O3,ZrO2,LiNbO3,Li4Ti5O12,LiTaO3,LiNbO3,LiAlO2,Li2ZrO3,Li2WO4,Li2TiO3,Li2B4O7,Li3PO4及びLi2MoO4が例示される。
【0025】
硫黄系活物質は、S,TiS2,NiS,FeS2,Li2S,MoS3及び硫黄-カーボンコンポジットが例示される。有機系活物質は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノキシル-4-イルメタクリレートやポリテトラメチルピペリジノキシルビニルエーテルに代表されるラジカル化合物、キノン化合物、ラジアレン化合物、テトラシアキノジメタン、及び、フェナジンオキシドが例示される。
【0026】
複合層23に含まれるバインダーは、ポリイミド系、アクリル系、ポリシロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、及び、エチレン-ビニルアルコール共重合体が例示される。複合層23に含まれる導電助剤は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維,Ni,Pt及びAgが例示される。
【0027】
イオン伝導体29は、水素化物(錯体水素化物)からなるリチウムイオン伝導体を含む。水素化物は、LiBH4,LiBH4とX(但しXはLiCl,LiBr,LiI,LiNH2及びP2S5の中から選択される一種以上の化合物)との複合体が例示される。イオン伝導体29は、水素化物の1種または複数種を含む。
【0028】
水素化物は、クロソ系水素化物を含むことができる。クロソ系水素化物は、クロソ構造を有するかご状のクラスター型錯イオンを有する水素化物である。クロソ系水素化物は、金属イオンであるカチオンと、一般式(CmBn-mHn)(2-m)-(但し0≦m<2、5≦n≦12)で表されるアニオンと、からなる化合物である。m,nは整数である。
【0029】
クロソ系水素化物は、Li2B12H12,Li2B10H10,Na2B12H12,Na2B10H10,MgB12H12,MgB10H10,LiCB11H12,LiCB9H10,NaCB11H12及びNaCB9H10が例示される。クロソ系水素化物は、他の水素化物(例えばLiBH4)と異なり、大気中で水和物の形成が律速となるので大気安定性に優れている。またクロソ系水素化物は、他の水素化物(例えばLiBH4)に比べ、イオン伝導率を高くできる。
【0030】
クロソ系水素化物は、0.7LiCB9H10-0.3LiCB11H12等の、LiCB9H10とLiCB11H12の固溶体が特に好ましい。LiCB9H10とLiCB11H12の固溶体はイオン伝導率をさらに高くできるからである。
【0031】
イオン伝導体29は、さらに他のリチウムイオン伝導体を含むことができる。他のリチウムイオン伝導体は、酸化物系リチウムイオン伝導体、硫化物系リチウムイオン伝導体が例示される。
【0032】
酸化物系のリチウムイオン伝導体は、Li,La及びZrを少なくとも含むガーネット型構造もしくはガーネット型類似構造を有する酸化物、NASICON型構造を有する酸化物、ペロブスカイト構造を有する酸化物が例示される。イオン伝導体29は、これらの酸化物の1種または複数種を含んでも良い。
【0033】
ガーネット型の酸化物は、基本組成がLi5La3M2O12(M=Nb,Ta)である。Li,La及びZrを少なくとも含むガーネット型構造もしくはガーネット型類似構造を有する酸化物は、5価のMカチオンを4価のカチオンに置換したLi7La3Zr2O12や、Li7La3Zr2O12に対してMg及びSrの元素置換を行ったものが例示される。
【0034】
NASICON型構造を有する酸化物は、Li,M(MはTi,Zr及びGeから選ばれる1種以上の元素)及びPを少なくとも含む酸化物、例えばLi(Al,Ti)2(PO4)3及びLi(Al,Ge)2(PO4)3が挙げられる。ペロブスカイト構造を有する酸化物は、Li,Ti及びLaを少なくとも含む酸化物、例えばLa2/3-XLi3XTiO3が挙げられる。
【0035】
硫化物系のリチウムイオン伝導体は、結晶性のチオリシコン型、Li10GeP2S12型、アルジロダイト型、Li7P3S11型、Li2S-P2S5に代表されるガラスやガラスセラミック系が例示される。
【0036】
固体電解質層24はイオン伝導体29を含む。固体電解質層24はさらにバインダーを含んでも良い。固体電解質層24に含まれるバインダーは、例えばポリイミド系、アクリル系、ポリシロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、及び、エチレン-ビニルアルコール共重合体が例示される。
【0037】
負極層25の複合層27は、活物質30及びイオン伝導体29を含む。複合層27はさらにバインダー及び導電助剤を含んでも良い。活物質30は、Li、Li-Al合金、Li4Ti5O12、黒鉛、In、Si、Si-Li合金、及び、SiOが例示される。
【0038】
複合層27に含まれるバインダーは、ポリイミド系、アクリル系、ポリシロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、及び、スチレン-ブタジエンゴムが例示される。複合層27に含まれる導電助剤は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維,Ni,Pt及びAgが例示される。
【0039】
積層体11は例えば以下のような方法で製造される。
図4は第1シート40及び第2シート50の断面図である。積層体11は、固体電解質層24を含む第1シート40、及び、固体電解質層24を含む第2シート50を準備し、それらを重ね合わせて製造される。
【0040】
第1シート40は、集電層22、複合層23及び固体電解質層24を含む。複合層23は集電層22に分散液を塗布した後、分散液の溶媒を除去して得られる。分散液は、水素化物を含むイオン伝導体29、活物質28及び溶媒を含む。溶媒は水分含量0.001%以下のものが好ましい。
【0041】
分散液を塗布する方法は、ドクターブレード法、リップコート法、ダイコート法、スロットコート法、及び、カーテンコート法が例示される。分散液を塗布した後、水素化物の分解温度以下の温度に加熱して溶媒を揮発させ、複合層23を得る。
【0042】
固体電解質層24は、複合層23に分散液を塗布した後、分散液の溶媒を除去して得られる。分散液は、水素化物を含むイオン伝導体29及び溶媒を含む。溶媒は水分含量0.001%以下のものが好ましい。分散液を塗布した後、水素化物の分解温度以下の温度に加熱して、溶媒を揮発させ第1シート40を得る。
【0043】
イオン伝導体29に含まれる水素化物がクロソ系水素化物の場合には、分散液および第1シート40は、相対湿度が30-60%RH程度の大気中で調製できる。但しLi(Ni-Co-Mn)O2等の三元系化合物が活物質28に含まれる場合には、露点が-20℃以下の不活性ガス雰囲気下または大気雰囲気下で分散液および第1シート40を調製するのが好ましい。
【0044】
第2シート50は、集電層26、複合層27及び固体電解質層24を含む。複合層27は集電層26に分散液を塗布した後、分散液の溶媒を除去して得られる。分散液は、水素化物を含むイオン伝導体29、活物質30及び溶媒を含む。溶媒は水分含量0.001%以下のものが好ましい。分散液を塗布した後、水素化物の分解温度以下の温度に加熱して溶媒を揮発させ、複合層27を得る。
【0045】
固体電解質層24は、複合層27に分散液を塗布した後、分散液の溶媒を除去して得られる。分散液は、水素化物を含むイオン伝導体29及び溶媒を含む。溶媒は水分含量0.001%以下のものが好ましい。分散液を塗布した後、水素化物の分解温度以下の温度に加熱して溶媒を揮発させ、第2シート50を得る。イオン伝導体29に含まれる水素化物がクロソ系水素化物の場合には、分散液および第2シート50は、相対湿度が30-60%RH程度の大気中で調製できる。
【0046】
調製された第1シート40及び第2シート50は、開放系において100℃以上300℃以下の温度に加熱される(第1の加熱)。第1の加熱における開放系とは、水素化物から分離した水分子が系外に移動できることをいう。第1の加熱によって、第1シート40及び第2シート50に含まれる水素化物に結合した水分子を分離する。加熱温度が100℃以上300℃以下なので、第1シート40や第2シート50に含まれるバインダー等の分解を防ぎ、水素化物に結合した水分子を分離できる。第1の加熱は、分散液に含まれる溶媒を揮発させる加熱(複合層23,27や固体電解質層24を作るための加熱)ではなく、溶媒の揮発によって分散液が固化して得られた複合層23を含む正極層21、固体電解質層24、及び、複合層27を含む負極層25の加熱である。
【0047】
第1の加熱において、第1シート40及び第2シート50は常圧または減圧雰囲気下で加熱される。第1シート40及び第2シート50は大気雰囲気またはAr,N2等の不活性ガス雰囲気で加熱される。水分子の分離を加速するため、特に103Pa程度の減圧雰囲気下の加熱が好ましい。第1シート40及び第2シート50の加熱時間は、雰囲気圧力や加熱温度に応じて適宜設定される。加熱時間は例えば1-24時間である。
【0048】
第1の加熱の後、第1シート40の固体電解質層24と第2シート50の固体電解質層24とが接するように重ね合わせられる。重ね合わせた第1シート40及び第2シート50が、プレス機によって厚さ方向に加圧され積層体11が得られる。
【0049】
イオン伝導体29に含まれる水素化物は粉末の状態で比較的軟らかく塑性変形し易いので、焼成や蒸着を行うことなく、粉末を加圧することによって粒子間の密着性を高め易い。これによりイオン伝導に寄与しない空隙率を下げることができるので、二次電池10の性能の向上に寄与する。
【0050】
第1の加熱を終えてから積層が終わるまでの間は、第1シート40及び第2シート50は露点が-40℃以下、好ましくは露点-50℃以下に設定された空気中または不活性ガス(Ar,N2等)中に置かれるのが好ましい。第1シート40及び第2シート50に含まれる水素化物の吸湿を防ぐためである。
【0051】
開放系において積層体11を100℃以上300℃以下の温度に加熱しても良い(第2の加熱)。第2の加熱における開放系とは、水素化物から分離した水分子が系外に移動できることをいう。第2の加熱によって、積層体11に含まれる水素化物に結合した水分子を分離する。加熱温度が100℃以上300℃以下なので、積層体11に含まれるバインダー等の分解を防ぎ、水素化物に結合した水分子を分離できる。
【0052】
第2の加熱において、積層体11は常圧または減圧雰囲気下で加熱される。積層体11は大気雰囲気またはAr,N2等の不活性ガス雰囲気で加熱される。水分子の分離を加速するため、特に103Pa程度の減圧雰囲気下の加熱が好ましい。積層体11の加熱時間は、雰囲気圧力や加熱温度に応じて適宜設定される。加熱時間は例えば1-24時間である。
【0053】
第2の加熱において積層体11が100℃以上300℃以下の温度に加熱される場合は、第1の加熱を終えてから積層が終わるまでの間、相対湿度が30-60%RH程度の大気中に第1シート40、第2シート50及び積層体11を置いても良い。第1の加熱を終えてから積層が終わるまでの間に水分子が水素化物に結合しても、積層体11の水素化物に結合した水分子を第2の加熱において分離できるからである。
【0054】
封入工程において、積層体11は第1容器14に封入される。第2の加熱を終えてから封入が終わるまでの間は、積層体11は露点が-40℃以下、好ましくは露点-50℃以下に設定された空気中または不活性ガス中に置かれるのが好ましい。積層体11に含まれる水素化物の吸湿を防ぐためである。
【0055】
封入工程において、さらに第1容器14は第2容器17に封入される。第1容器14に積層体11が封入された後、第1容器14の第2容器17への封入が終わるまでの間は、相対湿度が30-60%RH程度の大気中に第1容器14を置いても良い。積層体11は第1容器14に封入されているので、水素化物の吸湿は抑えられるからである。
【0056】
第2の加熱を行わない場合は、第1の加熱を終えてから封入が終わるまでの間、第1シート40及び第2シート50(積層体11)は露点が-40℃以下、好ましくは露点-50℃以下に設定された空気中または不活性ガス中に置かれるのが好ましい。水素化物の吸湿を防ぐためである。
【実施例0057】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0058】
(水素化物の調製)
LiCB9H10:LiCB11H12=7:3(mol%)となるようにLiCB9H10及びLiCB11H12の粉末を秤量した。遊星型ボールミル(FRITSCH P-6)を用い、Ar雰囲気において400rpm、20時間混合して水素化物0.7LiCB9H10・0.3LiCB11H12の粉末(以下「LCBH」と称す)を得た。これとは別に水素化物Li2B12H12の粉末(以下「LBH」と称す)を準備した。
【0059】
(正極分散液の調製)
バインダーとしてスチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)をヘプタン(水分含量0.001%以下)に5wt%溶解し、バインダー溶液を得た。
【0060】
活物質としてのLiNi0.5Co0.3Mn0.2O2(以下「NMC」と称す、理論容量180mAh/g)、LCBH及びSEBSが体積比47.5:47.5:5となるようにNMC、LCBH及びバインダー溶液を配合し、混練して第1の正極分散液を得た。同様に、NMC、LBH及びSEBSが体積比47.5:47.5:5となるようにNMC、LBH及びバインダー溶液を配合し、混練して第2の正極分散液を得た。正極分散液は相対湿度が30-60%RH程度の大気中で調製した。
【0061】
(負極分散液の調製)
活物質としての黒鉛(理論容量372mAh/g)、LCBH及びSEBSが体積比47.5:47.5:5となるように黒鉛、LCBH及びバインダー溶液を配合し、混練して第1の負極分散液を得た。同様に、黒鉛、LBH及びSEBSが体積比47.5:47.5:5となるように黒鉛、LBH及びバインダー溶液を配合し、混練して第2の負極分散液を得た。負極分散液は相対湿度が30-60%RH程度の大気中で調製した。
【0062】
(電解質分散液の調製)
LCBH及びSEBSが体積比95:5となるようにLCBH及びバインダー溶液を配合し、混練して第1の電解質分散液を得た。同様に、LBH及びSEBSが体積比95:5となるようにLBH及びバインダー溶液を配合し、混練して第2の電解質分散液を得た。電解質分散液は相対湿度が30-60%RH程度の大気中で調製した。
【0063】
(正極シートの作製)
アプリケータ(クリアランス250μm)を用いて第1及び第2の正極分散液をアルミニウム箔の上にそれぞれ約80μmの厚さに塗布した。200℃で12時間の減圧乾燥を行い、溶媒を除去して第1及び第2の正極シートを得た。正極シートは相対湿度が30-60%RH程度の大気中で作製した。
【0064】
(負極シートの作製)
アプリケータ(クリアランス250μm)を用いて第1及び第2の負極分散液を銅箔の上にそれぞれ約90μmの厚さに塗布した。200℃で12時間の減圧乾燥を行い、溶媒を除去して第1及び第2の負極シートを得た。負極シートは相対湿度が30-60%RH程度の大気中で作製した。
【0065】
(第1シートの作製)
アプリケータ(クリアランス250μm)を用いて第1の電解質分散液を第1の正極シートの上に約50μmの厚さに塗布した。200℃で12時間の減圧乾燥を行い、溶媒を除去して、固体電解質層が形成された第1シート(LCBH)を得た。同様に、アプリケータ(クリアランス250μm)を用いて第2の電解質分散液を第2の正極シートの上に約50μmの厚さに塗布した。200℃で12時間の減圧乾燥を行い、溶媒を除去して、固体電解質層が形成された第1シート(LBH)を得た。第1シートは相対湿度が30-60%RH程度の大気中で作製した。
【0066】
(第2シートの作製)
アプリケータ(クリアランス250μm)を用いて第1の電解質分散液を第1の負極シートの上に約50μmの厚さに塗布した。200℃で12時間の減圧乾燥を行い、溶媒を除去して、固体電解質層が形成された第2シート(LCBH)を得た。同様に、アプリケータ(クリアランス250μm)を用いて第2の電解質分散液を第2の負極シートの上に約50μmの厚さに塗布した。200℃で12時間の減圧乾燥を行い、溶媒を除去して、固体電解質層が形成された第2シート(LBH)を得た。第2シートは相対湿度が30-60%RH程度の大気中で作製した。
【0067】
(No.1の評価セルの作製)
プレス機を使って第1シート(LCBH)を打抜き加工し、直径9mmの円形の正極試料を得た。同様にプレス機を使って第2シート(LCBH)を打抜き加工し、直径10mmの円形の負極試料を得た。打抜き加工は相対湿度が30-60%RH程度の大気中で行った。
【0068】
正極試料および負極試料を103Pa程度の減圧雰囲気下で100℃、12時間加熱した(第1の加熱)。正極試料および負極試料の加熱後、直ちに、露点が-80℃から-90℃のArガスが充填されたグローブボックスの中に正極試料および負極試料を収容した。グローブボックスの中で正極試料の固体電解質層と負極試料の固体電解質層とが接するように重ね合わせ、厚さ方向に90MPaの圧力を加え積層体を得た。
【0069】
積層体をグローブボックスから出し、積層体を103Pa程度の減圧雰囲気下で100℃、12時間加熱した(第2の加熱)。積層体の加熱後、直ちに、露点が-80℃から-90℃のArガスが充填されたグローブボックスの中に積層体を収容した。グローブボックスの中で、50MPaの圧力が加わるように積層体を厚さ方向に一軸加圧した状態で、端子が配置されたラミネートフィルム(第1容器)に積層体を真空包装し、No.1の評価セルを得た。
【0070】
(No.2の評価セルの作製)
正極試料および負極試料を103Pa程度の減圧雰囲気下で200℃、12時間加熱し、積層体を103Pa程度の減圧雰囲気下で200℃、12時間加熱した以外は、No.1の評価セルと同様にセルを作製してNo.2の評価セルを得た。
【0071】
(No.3の評価セルの作製)
プレス機を使って第1シート(LBH)を打抜き加工し、直径9mmの円形の正極試料を得た。同様にプレス機を使って第2シート(LBH)を打抜き加工し、直径10mmの円形の負極試料を得た。打抜き加工は相対湿度が30-60%RH程度の大気中で行った。
【0072】
正極試料および負極試料を103Pa程度の減圧雰囲気下で200℃、24時間加熱し、積層体を103Pa程度の減圧雰囲気下で200℃、24時間加熱した以外は、No.1の評価セルと同様にセルを作製してNo.3の評価セルを得た。
【0073】
(No.4の評価セルの作製)
正極試料および負極試料を103Pa程度の減圧雰囲気下で300℃、1時間加熱し、積層体を103Pa程度の減圧雰囲気下で300℃、1時間加熱した以外は、No.3の評価セルと同様にセルを作製してNo.4の評価セルを得た。
【0074】
(No.5の評価セルの作製)
プレス機を使って第1シート(LCBH)を打抜き加工し、直径9mmの円形の正極試料を得た。同様にプレス機を使って第2シート(LCBH)を打抜き加工し、直径10mmの円形の負極試料を得た。打抜き加工は相対湿度が30-60%RH程度の大気中で行った。
【0075】
正極試料および負極試料を103Pa程度の減圧雰囲気下で100℃、12時間加熱した(第1の加熱)。正極試料および負極試料の加熱後、直ちに、露点が-80℃から-90℃のArガスが充填されたグローブボックスの中に正極試料および負極試料を収容した。グローブボックスの中で正極試料の固体電解質層と負極試料の固体電解質層とが接するように重ね合わせ、厚さ方向に90MPaの圧力を加え積層体を得た。グローブボックスの中で、50MPaの圧力が加わるように積層体を厚さ方向に一軸加圧した状態で、端子が配置された第1容器(ラミネートフィルム)に積層体を真空包装し、No.5の評価セルを得た。
【0076】
(No.6の評価セルの作製)
プレス機を使って第1シート(LCBH)を打抜き加工し、直径9mmの円形の正極試料を得た。同様にプレス機を使って第2シート(LCBH)を打抜き加工し、直径10mmの円形の負極試料を得た。打抜き加工は相対湿度が30-60%RH程度の大気中で行った。
【0077】
露点が-80℃から-90℃のArガスが充填されたグローブボックスの中で、正極試料の固体電解質層と負極試料の固体電解質層とが接するように重ね合わせ、厚さ方向に90MPaの圧力を加え積層体を得た。グローブボックスの中で、50MPaの圧力が加わるように積層体を厚さ方向に一軸加圧した状態で、端子が配置された第1容器(ラミネートフィルム)に積層体を真空包装し、No.6の評価セルを得た。
【0078】
(No.7の評価セルの作製)
プレス機を使って第1シート(LBH)を打抜き加工し、直径9mmの円形の正極試料を得、プレス機を使って第2シート(LBH)を打抜き加工し、直径10mmの円形の負極試料を得た以外は、No.6の評価セルと同様にセルを作製してNo.7の評価セルを得た。
【0079】
(No.8の評価セルの作製)
正極試料および負極試料を103Pa程度の減圧雰囲気下で70℃、12時間加熱した以外は、No.5の評価セルと同様に作製してNo.8の評価セルを得た。
【0080】
(充放電試験)
評価セルは、評価温度25℃、放電終止電圧2.7V(vs.Li+/Li)、充電上限電圧4.2V(vs.Li+/Li)の条件の下、50μAの一定の電流で充電・放電を行う充放電試験を行い、初期電極利用効率を算出した。初期電極利用効率は、正極活物質の理論容量に対する初回放電容量の割合(%)である。表1は、No.1-8の評価セルの水素化物の種類、加熱の条件、初期電極利用効率、及び、判定を示した。判定は、初期電極利用効率が70%以上をA、初期電極利用効率が50%以上70%未満をB、初期電極利用効率が50%未満をCとした。
【0081】
【表1】
表1のとおり、正極試料および負極試料を100℃以上300℃以下の温度に加熱し、積層体を100℃以上300℃以下の温度に加熱した後に容器に封入したNo.1-4の評価セルは、初期電極利用効率が70%以上であった。100℃に加熱した正極試料および負極試料を重ね合わせた積層体を容器に封入したNo.5の評価セルは、初期電極利用効率が50%以上70%未満であった。正極試料、負極試料または積層体を100℃以上300℃以下の温度に加熱しなかったNo.6-8の評価セルは、初期電極利用効率が50%未満であった。正極試料、負極試料または積層体を100℃以上300℃以下の温度に加熱した後に容器に封入した評価セルは、充放電特性を向上できることが明らかになった。
【0082】
(結晶構造の評価)
LBHを固体電解質層に含む第1シート(LBH)、及び、LCBHを固体電解質層に含む第1シート(LCBH)を露点-40℃の空気に暴露した期間と固体電解質層の結晶構造との関係を調べた。
図5は露点-40℃の空気に暴露したLi
2B
12H
12(LBH)のX線回折図形である。
図6は露点-40℃の空気に暴露した0.7LiCB
9H
10-0.3LiCB
11H
12(LCBH)のX線回折図形である。
【0083】
図5に示すように第1シート(LBH)の固体電解質層は、露点が-40℃の空気に2週間暴露する前後で結晶構造が変化した。露点が-40℃の空気に2週間暴露した第1シート(2weekと表記)を、10
3Pa程度の減圧雰囲気下で230℃、20時間加熱した後の第1シート(加熱後と表記)の固体電解質層のX線回折図形は、暴露前の第1シート(0hと表記)の固体電解質層のX線回折図形とほぼ同じであった。LBHを含む固体電解質層は、加熱によって結晶構造が暴露前の結晶構造に戻った。
【0084】
図6に示すように第1シート(LCBH)の固体電解質層は、露点が-40℃の空気に24時間暴露する前後で結晶構造が変化した。露点が-40℃の空気に24時間暴露した第1シート(24hと表記)を、10
3Pa程度の減圧雰囲気下で100℃、12時間加熱した後の第1シート(加熱後と表記)の固体電解質層のX線回折図形は、暴露前の第1シート(0hと表記)の固体電解質層のX線回折図形とほぼ同じであった。LCBHを含む固体電解質層は、加熱によって結晶構造が暴露前の結晶構造に戻った。
【0085】
正極試料、負極試料または積層体を100℃以上300℃以下の温度に加熱した後に容器に封入したNo.1-4の評価セルは、評価セルに含まれる水素化物の結晶構造の変化が加熱によって低減したので、充放電特性が向上したと推察される。
【0086】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0087】
実施形態では、正極層21の集電層22の片面に複合層23が設けられ、負極層25の集電層26の片面に複合層27が設けられ、正極層21の複合層23と負極層25の複合層27との間に固体電解質層24を配置した積層体11を含む二次電池10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば集電層の両面に複合層23と複合層27とを形成した電極(いわゆるバイポーラ電極)と固体電解質層24とを交互に積層し、それを単一の容器に収容した、いわゆるバイポーラ構造の二次電池とすることは当然可能である。
【0088】
実施形態では、正極層21、固体電解質層24及び負極層25の全てに水素化物が含まれる積層体11を含む二次電池10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。正極層21、固体電解質層24及び負極層25のうちの1つ以上に水素化物が含まれていれば実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0089】
実施形態では、水素化物を含むイオン伝導体29、活物質28及び溶媒を含む分散液を集電層22に塗布して正極層21を製造する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。活物質28を含む層を集電層22に設け、水素化物および溶媒を含む分散液を、活物質28を含む層に浸透した後、溶媒を除去して、複合層23を含む正極層21を製造することは当然可能である。
【0090】
実施形態では、水素化物を含むイオン伝導体29、活物質30及び溶媒を含む分散液を集電層26に塗布して負極層25を製造する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。活物質30を含む層を集電層26に設け、水素化物および溶媒を含む分散液を、活物質30を含む層に浸透した後、溶媒を除去して、複合層27を含む負極層25を製造することは当然可能である。
【0091】
実施形態では、正極層21及び固体電解質層24を含む第1シート40と、負極層25及び固体電解質層24を含む第2シート50と、を重ね合わせて積層体11を作る場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。正極層21、固体電解質層24及び負極層25をそれぞれ製造し、それらを重ね合わせて積層体11を作ることは当然可能である。
【0092】
実施形態では、水素化物を含むイオン伝導体29及び溶媒を含む分散液を塗布して複合層23,27及び固体電解質層24を製造する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。水素化物を含むイオン伝導体29を含む粉末のプレス成形により複合層23,27及び固体電解質層24を製造することは当然可能である。この場合も水素化物を含む層を100℃以上300℃以下の温度に加熱することにより(第1の加熱)、水素化物の結晶構造の変化を低減できる。
【0093】
実施形態では、積層体11を封入した第1容器14が第2容器17に封入される二次電池10を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1容器14を省略して第2容器17に積層体11が封入された二次電池や、第2容器17を省略して第1容器14に積層体11が封入された二次電池とすることは当然可能である。
【0094】
実施形態では、イオン伝導のキャリアがLi+である水素化物が含まれる二次電池10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。他のイオンをキャリアとする水素化物が含まれる二次電池とすることは当然可能である。他のキャリアはAg+,Cu+,Na+が例示される。
【0095】
実施例ではNo.5の評価セルにおいて正極試料および負極試料を100℃に加熱し(第1の加熱)、これを重ね合わせた積層体を容器に封入したが、必ずしもこれに限られるものではない。No.1-4の評価セルのように、第1の加熱の温度は100℃以上300℃以下の範囲で適宜設定される。No.5の評価セルにおいて第1の加熱を省略し、積層体を100℃以上300℃以下の温度に加熱した後(第2の加熱)、この積層体を容器に封入することは当然可能である。この場合も正極層、固体電解質層および負極層のうち水素化物を含む層が加熱されるので、吸湿による水素化物の結晶構造の変化を低減し、評価セルの充放電特性を向上できる。
【0096】
実施例では積層体が容器に真空包装された評価セルについて説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。不活性ガスと共に積層体が容器にガス置換包装された評価セル(二次電池)とすることは当然可能である。