(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022081805
(43)【公開日】2022-06-01
(54)【発明の名称】最適順路設定装置および最適順路設定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20220525BHJP
G08G 1/0968 20060101ALI20220525BHJP
G06Q 10/04 20120101ALI20220525BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0968
G06Q10/04 310
G09B29/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020192978
(22)【出願日】2020-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】河内 裕文
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
2C032HD16
2C032HD21
2F129AA06
2F129DD13
2F129DD14
2F129DD15
2F129DD20
2F129DD36
2F129DD39
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2F129DD66
2F129EE02
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2F129EE79
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2F129EE94
2F129FF12
2F129FF32
2F129FF62
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2F129FF64
2F129FF71
2F129GG14
2F129GG29
2F129HH12
2F129HH20
2F129HH35
5H181AA15
5H181BB04
5H181BB20
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF33
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】数日に分けて複数の訪問先を効率的に巡回するための最適な順路を探索する。
【解決手段】出発地および最終目的地の位置情報ならびに複数の訪問先それぞれの位置情報の入力を受け付ける手段(訪問条件設定タスク151)と、訪問先それぞれの属性の入力を受け付ける手段(属性分類設定タスク152)と、訪問先の巡回を行う1日あたりの最長の時間である巡回時間および訪問先の巡回を行う担当者の運転水準の入力を受け付ける手段(巡回条件設定タスク153)と、巡回地区に関する道路状況の入力を受け付ける手段(道路状況設定タスク154)と、訪問先のすべてを数日に分けて訪問する際に1日の巡回を出発地から始めて巡回時間内に最終目的地へと至ることを制約条件として、訪問先それぞれの属性に従って訪問先が分類されたグループごとに巡回して巡回にかかる総所要時間が最短になる、日ごとの順路を求める手段(順路探索タスク155)と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地および最終目的地の位置情報ならびに複数の訪問先それぞれの位置情報の入力を受け付ける手段と、
前記訪問先それぞれの属性の入力を受け付ける手段と、
前記訪問先の巡回を行う1日あたりの最長の時間である巡回時間の入力を受け付ける手段と、
前記訪問先のすべてを数日に分けて訪問する際に1日の巡回を前記出発地から始めて前記巡回時間内に前記最終目的地へと至ることを制約条件として、前記属性に従って前記訪問先が分類されたグループごとに巡回して前記巡回にかかる総所要時間が最短になる、日ごとの順路を求める手段と、を有する、
ことを特徴とする最適順路設定装置。
【請求項2】
前記訪問先の巡回を行う担当者の運転水準を考慮して前記順路を求める、
ことを特徴とする請求項1に記載の最適順路設定装置。
【請求項3】
道路の走行容易性を考慮して前記順路を求める、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の最適順路設定装置。
【請求項4】
前記順路を求める処理を、過去の巡回の実績データに基づく機械学習により行う、
ことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の最適順路設定装置。
【請求項5】
コンピュータを、
出発地および最終目的地の位置情報ならびに複数の訪問先それぞれの位置情報の入力を受け付ける手段、
前記訪問先それぞれの属性の入力を受け付ける手段、
前記訪問先の巡回を行う1日あたりの最長の時間である巡回時間の入力を受け付ける手段、および、
前記訪問先のすべてを数日に分けて訪問する際に1日の巡回を前記出発地から始めて前記巡回時間内に前記最終目的地へと至ることを制約条件として、前記属性に従って前記訪問先が分類されたグループごとに巡回して前記巡回にかかる総所要時間が最短になる、日ごとの順路を求める手段、として機能させる、
ことを特徴とする最適順路設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、最適順路設定装置および最適順路設定プログラムに関し、具体的には、所定の訪問先を効率的に巡回するための最適な順路を探索して設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
目的地までのルートの検索および予想所要時間の算出を行う従来のナビゲーションシステムとして、例えば、過去分の渋滞情報を蓄積する渋滞情報蓄積手段と、指定された出発日時の予想渋滞情報を渋滞情報蓄積手段から検索する渋滞情報分析手段と、該渋滞情報分析手段により検索された予想渋滞情報を加味してルートの検索および予想所要時間の算出を行うルート検索手段とを具備する、ナビゲーションシステムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、予め定められた複数の訪問先を数日に分けて原則としてすべて訪れなければならないという場合に、特許文献1に記載のシステムでは、特定の目的地までのルートを検索することはできる一方で、数日に分けてすべての訪問先を訪れるための最適な順路群(即ち、日ごとの順路の集合)を検索することはできない、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、数日に分けて複数の訪問先を効率的に巡回するための最適な順路を探索することが可能な、最適順路設定装置および最適順路設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、出発地および最終目的地の位置情報ならびに複数の訪問先それぞれの位置情報の入力を受け付ける手段と、前記訪問先それぞれの属性の入力を受け付ける手段と、前記訪問先の巡回を行う1日あたりの最長の時間である巡回時間の入力を受け付ける手段と、前記訪問先のすべてを数日に分けて訪問する際に1日の巡回を前記出発地から始めて前記巡回時間内に前記最終目的地へと至ることを制約条件として、前記属性に従って前記訪問先が分類されたグループごとに巡回して前記巡回にかかる総所要時間が最短になる、日ごとの順路を求める手段と、を有する、ことを特徴とする最適順路設定装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の最適順路設定装置において、前記訪問先の巡回を行う担当者の運転水準を考慮して前記順路を求める、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の最適順路設定装置において、道路の走行容易性を考慮して前記順路を求める、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3に記載の最適順路設定装置において、前記順路を求める処理を、過去の巡回の実績データに基づく機械学習により行う、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、コンピュータを、出発地および最終目的地の位置情報ならびに複数の訪問先それぞれの位置情報の入力を受け付ける手段、前記訪問先それぞれの属性の入力を受け付ける手段、前記訪問先の巡回を行う1日あたりの最長の時間である巡回時間の入力を受け付ける手段、および、前記訪問先のすべてを数日に分けて訪問する際に1日の巡回を前記出発地から始めて前記巡回時間内に前記最終目的地へと至ることを制約条件として、前記属性に従って前記訪問先が分類されたグループごとに巡回して前記巡回にかかる総所要時間が最短になる、日ごとの順路を求める手段、として機能させる、ことを特徴とする最適順路設定プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1および請求項5の発明によれば、日ごとの巡回時間を制約条件としたうえで巡回にかかる総所要時間が最短になる日ごとの順路が求められるので、数日に分けて複数の訪問先を効率的に巡回するための最適な順路を探索することが可能となる。請求項1および請求項5の発明によれば、また、訪問先それぞれの属性に従って訪問先が分類されたグループごとに巡回して巡回にかかる総所要時間が最短になる日ごとの順路が求められるので、例えば、訪問の目的や訪問時の対応内容が同一の訪問先をまとめて(言い換えると、続けて)訪問することによって訪問作業が煩雑になることを回避したり、所定の属性の訪問先を同一の担当者が巡回するようにしたりすることができ、訪問作業の効率性や正確性を向上させることが可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、巡回担当者の運転水準が考慮されて順路が求められるので、訪問先の巡回の安全性の向上を図ることが可能となる。
【0013】
請求項3の発明によれば、道路の走行容易性が考慮されて順路が求められるので、訪問先の巡回の安全性の向上を図ることが可能となる。
【0014】
請求項4の発明によれば、順路を求める処理が機械学習により行われるので、過去の巡回に関する実績情報が反映された一層実際的な順路を探索することが可能となり、延いては最適順路の探索技術としての信頼性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施の形態に係る最適順路設定装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】訪問条件データベースのデータレイアウトの例を示す図である。
【
図3】属性データベースのデータレイアウトの例を示す図である。
【
図4】巡回条件データベースのデータレイアウトの例を示す図である。
【
図5】道路状況データベースのデータレイアウトの例を示す図である。
【
図6】実績データベースの構成の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態に係る最適順路設定装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。この最適順路設定装置1は、数日に分けて複数の訪問先を効率的に巡回するための最適な順路を探索して設定するための機序であり、主として、入力部11、表示部12、記憶部13、メモリ14、メインタスク15、通信部16、およびこれらを制御などする中央処理部17を備える。
【0018】
最適順路設定装置1は、例えば、パーソナルコンピュータなどに、装置全体の制御プログラムや最適順路の設定に纏わる各種処理を行うためのアプリケーション(最適順路設定プログラム18)がインストールされて構成される。
【0019】
入力部11は、利用者の命令などを受けて最適順路設定装置1へと入力する機能を備えるインターフェースであり、例えばキーボードやマウスによって構成される。
【0020】
表示部12は、入力部11を介して入力される内容を表示したり、最適順路設定装置1としての処理結果を表示したりなどする機能を備え、例えば液晶ディスプレイによって構成される。
【0021】
記憶部13は、各種の情報、プログラム、およびデータなどを記憶する機能を備える記憶領域/記憶装置であり、例えばハードディスクによって構成される。
【0022】
記憶部13には、最適順路設定装置1全体の制御プログラムや最適順路設定プログラム18が格納されるとともに、道路地図データベース131、訪問条件データベース132、属性データベース133、巡回条件データベース134、道路状況データベース135、および実績データベース136が格納される。
【0023】
道路地図データベース131は、道路地図情報が記録・蓄積されているデータベースであり、例えばデジタル道路地図(DRM:Digital Road Map の略)によって構成される。他のデータベース132~136については後述する。
【0024】
なお、上記データベース131~136の一部もしくは全部がサーバなどの外部記憶装置に格納されるようにしてもよく、この場合には、最適順路設定装置1が、通信部16を介して外部記憶装置にアクセスして各種データや情報を取得するようにしてもよく、あるいは、種々の信号回線を介して外部記憶装置との間でデータや制御指令等の信号の送受信/入出力を行うための接続インターフェースを備えるようにして当該接続インターフェースを介して外部記憶装置にアクセスして各種データや情報を取得するようにしてもよい。
【0025】
メモリ14は、中央処理部17が最適順路の設定に纏わる演算処理を実行する際に生成される情報・データを一時的に記憶などするための作業領域となる機能を備える記憶領域/記憶装置であり、例えばRAM(Random Access Memory の略)により構成される。
【0026】
メインタスク15は、記憶部13に格納されている最適順路設定プログラム18が実行されることによって実現される、最適順路の設定に纏わる各種処理を実行するためのタスク群である。
【0027】
通信部16は、例えばLAN(Local Area Network の略)やWAN(Wide Area Network の略)を含む各種の無線/有線通信回線網を介して伝送される信号・情報の送受信/入出力を行う機能を備える通信インターフェースである。
【0028】
中央処理部17は、最適順路設定装置1を構成する各部を統制して制御などする機能を備え、例えば、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit の略)を含んで構成され、記憶部13に格納されている制御プログラムや最適順路設定プログラム18に従って各機能を実現する。
【0029】
そして、最適順路設定装置1は、任意の範囲/地区に分布している予め定められた複数の訪問先を、数日に分けてすべて訪れる順路を探索する処理を行う。具体的には、この実施の形態に係る最適順路設定装置1は、出発地および最終目的地の位置情報ならびに複数の訪問先それぞれの位置情報の入力を受け付ける手段(訪問条件設定タスク151)と、訪問先それぞれの属性の入力を受け付ける手段(属性分類設定タスク152)と、訪問先の巡回を行う1日あたりの最長の時間である巡回時間および訪問先の巡回を行う担当者の運転水準の入力を受け付ける手段(巡回条件設定タスク153)と、巡回地区に関する道路状況の入力を受け付ける手段(道路状況設定タスク154)と、訪問先のすべてを数日に分けて訪問する際に1日の巡回を出発地から始めて巡回時間内に最終目的地へと至ることを制約条件として、訪問先それぞれの属性に従って訪問先が分類されたグループごとに巡回して巡回にかかる総所要時間が最短になる、日ごとの順路を求める手段(順路探索タスク155)と、を有する、ようにしている。
【0030】
上記順路を探索する処理を行うために、記憶部13に格納されている最適順路設定プログラム18が実行されることにより、メインタスク15が構成される。メインタスク15は、訪問条件設定タスク151、属性分類設定タスク152、巡回条件設定タスク153、道路状況設定タスク154、順路探索タスク155、および学習タスク156を含む。
【0031】
訪問条件設定タスク151は、訪問条件として、出発地および最終目的地の位置情報、ならびに訪問先条件の入力を受け付ける。訪問条件設定タスク151は、例えば、訪問条件の入力用画面を表示部12に表示させて、入力部11を介して利用者(巡回担当者)によって入力される内容を受け付ける。
【0032】
出発地は日ごとの訪問先の巡回を始める際の出発地であり、最終目的地は日ごとの訪問先の巡回の終了後の最終的な目的地である。出発地と最終目的地とは同一地点であってもよい。
【0033】
訪問先条件は、複数の訪問先それぞれの位置情報、訪問日時、および滞在予定時間の組み合わせからなる条件である。
【0034】
訪問日時は、訪問先との間で予約された日時がある場合にはその予約の日時が指定され、予約された日時がない場合には指定されない。
【0035】
滞在予定時間は、各訪問先に留まる予定時間であり、順路を探索する処理では、当該の訪問先に到着した時刻から当該の訪問先を出発する時刻までの経過時間として扱われる。
【0036】
ここで、出発地および最終目的地ならびに訪問先それぞれの位置情報は、住所によって指定されたうえで緯度・経度に変換されて、順路を探索する処理で利用される(具体的には、道路地図データベース131に記録されている道路地図情報と対応づけられる)ようにしてもよい。
【0037】
また、訪問条件設定タスク151は、表示部12に地図を表示させて、入力部11を介して地図上の地点が指定されることにより、出発地、最終目的地、および訪問先それぞれの位置情報として前記地図上の地点に対応する住所や緯度・経度を取得するようにしてもよい。
【0038】
訪問条件設定タスク151は、入力された訪問条件(即ち、出発地および最終目的地の位置情報、ならびに、複数の訪問先それぞれの位置情報、訪問日時、および滞在予定時間の組み合わせ)を、記憶部13に格納される訪問条件データベース132に記録させる。
【0039】
図2に、訪問条件データベース132のデータレイアウトの例を示す。なお、
図2~
図5では各データを文字列で表記しているが、実際には、電算処理において利用可能であるように、適当なコード化処理が施されたり、例えば位置情報が緯度・経度に変換されるなどのような適当な変換処理が施されたりする。
【0040】
属性分類設定タスク152は、訪問先それぞれの属性に関する情報の入力を受け付ける。属性分類設定タスク152は、例えば、訪問先ごとの属性の入力用画面を表示部12に表示させて、入力部11を介して利用者(巡回担当者)によって入力される内容を受け付ける。
【0041】
訪問先の属性は、特定の種類や分類基準に限定されるものではなく、例えば、訪問先の属性に応じて訪問の目的や訪問時の対応内容が異なる場合に訪問の目的や訪問時の対応内容に基づいて訪問先をグループ分けするための種類・分類基準や、複数の訪問先を複数の担当者が手分けして巡回する場合に同一の担当者が巡回することが好ましい訪問先をグループ分けするための種類・分類基準が採用されることが考えられる。
【0042】
訪問先の属性として、例えば何らかのPR活動や定着活動を行う場合に、訪問先を紹介してくれた人との関係(言い換えると、親密度)が採用されるようにしてもよく、この場合には具体的には例えば、「紹介者本人、または、紹介者の親、子、兄弟姉妹、もしくは親類」、「紹介元の法人の従業員や組合員」、ならびに「紹介者の友人・知人」という3つの分類基準が採用されて訪問先がグループ分けされるようにしてもよい。
【0043】
訪問先の属性として、また、訪問先に何らかの荷物や情報を届ける場合に、届ける荷物や情報の種類が採用されるようにしてもよい。
【0044】
属性分類設定タスク152は、入力された訪問先それぞれの属性を、記憶部13に格納される属性データベース133に記録させる。
【0045】
図3に、属性データベース133のデータレイアウトの例を示す。
図3は、訪問先の属性として訪問先を3つに分類する基準が採用されて各訪問先がA,B,およびCの3つにグループ分けされる場合の例を示している。
【0046】
巡回条件設定タスク153は、巡回条件として、巡回時間、および運転水準の入力を受け付ける。巡回条件設定タスク153は、例えば、巡回条件の入力用画面を表示部12に表示させて、入力部11を介して利用者(巡回担当者)によって入力される内容を受け付ける。
【0047】
巡回時間は、訪問先の巡回を行う1日あたりの最長の時間のことであり、例えば「6時間」のように設定される。
【0048】
運転水準は、各訪問先を巡回する担当者の運転技量に関する情報であり、具体的には例えば、細い道の運転が苦手であるか否かや、担当する地区に対する土地勘があってその地区の状況をよく知っているか否かなどが考慮されて設定される。細い道の運転が苦手であるか否かについては、各訪問先を巡回する際に担当者が運転する車両の大きさが考慮されるようにしてもよい。
【0049】
運転水準は、あくまで一例として挙げると、細い道の運転が苦手、運転する車両が大きい、或いは土地勘がない場合には「低水準」とされ、前記のいずれにもあてはまらない場合には「高水準」とされることが考えられる。
【0050】
巡回条件設定タスク153は、入力された巡回条件(即ち、巡回時間、および運転水準)を、記憶部13に格納される巡回条件データベース134に記録させる。
【0051】
図4に、巡回条件データベース134のデータレイアウトの例を示す。
図4は、巡回時間が「6時間」であるとともに運転水準が「低水準」である場合の例を示している。
【0052】
なお、各訪問先を巡回する担当者ごとに巡回条件が設定されて、前記担当者ごとの巡回条件が巡回条件データベース134に記録されるようにしてもよい。
【0053】
道路状況設定タスク154は、巡回地区に関する道路状況として、道路の区間別に、例えば、道路渋滞、道路工事、一方通行、および走行容易性(道路の走行のし易さ/し難さ)などに関する情報の入力を受け付ける。道路状況は、車両による移動時間(旅行時間)に影響を与えうる項目であれば、前記の項目には限定されない。
【0054】
道路状況設定タスク154は、表示部12に地図を表示させて、入力部11を介して地図上の道路(区間)が指定・選択されるとともに、各訪問先の巡回を実施する時期における、当該の道路の平均的な渋滞状況、車線規制や通行制限を伴うような工事情報、一方通行規制の状況、および走行のし易さ/し難さの程度が入力部11を介して入力されることにより、前記道路に関する道路状況を取得する。なお、表示部12に表示される地図は、道路地図データベース131に記録されている道路地図情報(具体的には例えば、デジタル道路地図データ)に基づく地図であるようにしてもよい。
【0055】
道路状況設定タスク154は、あるいは、道路渋滞や道路工事に関する情報を通信部16を介して外部の情報サーバや情報サイトから取得するようにしてもよく、一方通行に関する情報を道路地図データベース131に記録されている道路地図情報(具体的には例えば、デジタル道路地図データ)から取得するようにしてもよく、また、走行容易性に関する情報を前記道路地図情報(デジタル道路地図データ)から取得される道路幅員などに基づいて設定するようにしてもよい。
【0056】
入力されたり取得したり設定したりした道路状況(例えば、道路渋滞、道路工事、一方通行、および走行容易性)は、例えば道路を表現するリンクのIDを利用して、道路地図データベース131に記録されている道路地図情報と対応づけられる。
【0057】
道路状況設定タスク154は、入力されたり取得したり設定したりした道路状況(例えば、道路渋滞、道路工事、一方通行、および走行容易性)を、記憶部13に格納される道路状況データベース135に記録させる。
【0058】
図5に、道路状況データベース135のデータレイアウトの例を示す。
図5に示す例では、道路渋滞について、重度、軽度、および無し(渋滞が無い場合は特に入力されないのでNull)の3段階の情報が整備される。また、道路工事および一方通行について、ありと無し(道路工事や一方通行が無い場合は特に入力されないのでNull)とのどちらかの情報が整備される。さらに、走行容易性について、走行し難いと走行し易い(走行し易い場合は特に入力されないのでNull)とのどちらかの情報が整備される。
【0059】
順路探索タスク155は、所定条件下で最適な順路を割り出す。順路探索タスク155は、具体的には、訪問条件データベース132に記録されている出発地と最終目的地とを固定したうえで、巡回条件データベース134に記録されている巡回時間を守り、且つ、訪問条件データベース132を参照して各訪問先について訪問日時が指定されている場合にはその訪問日時を守る条件下で、すべての訪問先を訪れるための順路の最適解を求める。そして、順路探索タスク155は、日ごとの順路と各訪問先の到着予定時刻とを出力する。
【0060】
順路探索タスク155は、道路地図データベース131に記録されている道路地図情報を用いて訪問条件データベース132に記録されている訪問先それぞれの位置を巡回する際の移動時間を計算する。道路地図情報としての例えばデジタル道路地図のようにリンクおよびノードからなる道路ネットワークを用いて移動時間(旅行時間)を計算しつつ時間最短経路を探索する技術は汎用のカーナビゲーションシステムなどで利用されている周知の技術であるので、ここでは詳細についての説明を省略する。
【0061】
順路探索タスク155は、また、訪問先への到着時刻に、訪問条件データベース132に記録されている滞在予定時間を加算した時刻を前記訪問先の出発時刻としながら移動時間を加算することにより、出発地を出発してからの経過時間を計算し、巡回時間内に最終目的地まで到着できるか否かを確認しながら順路を求める。
【0062】
日ごとの順路を求める際に、順路探索タスク155は、属性データベース133に記録されている訪問先それぞれの属性に従って各訪問先が分類されたグループごとに巡回するような順路を探索する。
【0063】
例えば、訪問先の属性として訪問先を3つに分類する基準が採用されて各訪問先がAグループ、Bグループ、およびCグループの3つに分けられる場合、Aグループに含まれる各訪問先を巡回し、次にBグループに含まれる各訪問先を巡回し、さらに次にCグループに含まれる各訪問先を巡回する順路の最適解が求められる。
【0064】
このとき、各グループに含まれる訪問先をすべて訪れるためのグループごとの所要時間(即ち、移動時間および訪問先の滞在予定時間を含む巡回にかかる時間)の区切りが巡回時間の区切りと一致しないことも考えられる。このため、例えば、Aグループに含まれる訪問先をすべて訪れる巡回が3日目に終了して、3日目の巡回時間が未だ残っている場合には、3日目の巡回時間の残り時間を制約条件としたうえで、Aグループの最後の訪問先の位置を出発地としてBグループに含まれる訪問先の一部もしくは全部を巡回する順路が求められる。さらに、Bグループに含まれる訪問先をすべて訪れる巡回が4日目に終了して、4日目の巡回時間が未だ残っている場合には、4日目の巡回時間の残り時間を制約条件としたうえで、Bグループの最後の訪問先の位置を出発地としてCグループに含まれる訪問先の一部もしくは全部を巡回する順路が求められる。
【0065】
また、訪問先との間で予約された日時がある場合に、予約された日時によっては、例えば、1日目にAグループに含まれる訪問先を巡回し、2日目にBグループに含まれる訪問先を巡回し、3日目にAグループに含まれる残りの訪問先を巡回し、のように、巡回するグループが日によって交互に変わるようにしてもよい。
【0066】
また、グループが異なる訪問先の予約日時が同じ日になっている場合には、具体的には例えば、Aグループに含まれる訪問先の予約日時とBグループに含まれる訪問先の予約日時とが同じになっている場合には、Aグループに含まれる訪問先を巡回する日であっても、その日に予約日時が設定されているBグループに含まれる訪問先も巡回するようにしてもよい。
【0067】
上記の際、各日とも、出発地から出発し、各グループの一部もしくは全部の訪問先を巡回して、巡回時間内に最終目的地まで到着する順路が求められる。
【0068】
順路探索タスク155は、順路を求める際に、道路状況データベース135に記録されている道路状況としての、道路渋滞を加味して道路区間ごとの通過時間を算出したり、道路工事による道路渋滞の発生や道路の通行可否を考慮したり、さらに、一方通行による道路の通行可否を考慮したりしたうえで、移動時間を計算する。
【0069】
順路探索タスク155は、また、巡回条件データベース134に記録されている運転水準と道路状況データベース135に記録されている走行容易性とに関連して、例えば、運転水準が「低水準」の場合には走行し難い道路を探索対象の経路(道路)から除き、運転水準が「高水準」の場合にはすべての道路を探索対象の経路(道路)とするようにしてもよい。
【0070】
順路探索タスク155は、巡回にかかる総所要時間(即ち、移動時間および訪問先の滞在予定時間を含む日ごとの巡回にかかる時間の合計)を最短にするように順路を最適化する。最適化は、例えば、日ごとの訪問先の集合を変更したり(即ち、或る日の訪問先を同じグループに含まれる他の訪問先に変更したり)、各訪問先の訪問順序を変更したりしながら、すべての訪問先を訪れる時間最短経路探索処理および総所要時間計算処理を繰り返し実行することによって総所要時間を最短にする最適な順路を割り出すようにすることが考えられる。
【0071】
順路の最適化は、過去の巡回の実績データが用いられて、例えばニューラルネットワークを利用した機械学習・深層学習(ディープラーニング)の技術が利用されて行われるようにしてもよい。
【0072】
学習タスク156は、記憶部13に格納される実績データベース136に記録・蓄積されている過去の巡回の実績データを用いて前記過去の巡回の実績データに対して順路にかかる学習処理を実行して、前記過去の巡回の実績データに基づいてニューラルネットワークなどの学習モデルを作成し、所定の情報・条件が入力された場合に最適な順路が得られるように構成される。
【0073】
実績データベース136は、過去の巡回に関する実績情報が記録・蓄積されているデータベースであり、例えば、過去に行われた巡回についての、日ごとの、出発地および最終目的地の位置情報、訪問先それぞれの位置情報、各訪問先の滞在予定時間、運転水準、ならびに道路状況の組み合わせデータと、前記組み合わせデータのもとで探索された順路および各訪問先の到着予定時刻と、実際の走行経路および各訪問先の到着時刻と、が対応づけられたデータが過去の実績情報として記録・蓄積されている(
図6参照)。
【0074】
学習タスク156は、ニューラルネットワークを利用した機械学習・深層学習を用いて、実績データベース136に記録されている実績情報から取得したデータに基づいて、例えば、出発地および最終目的地ならびに訪問先それぞれの位置情報などを入力層とするとともに、巡回にかかる総所要時間を最短にする順路の探索をしたうえでの各訪問先の到着時刻を出力層とする、中間層を含むニューラルネットワークを作成する。
【0075】
そして、学習タスク156は、過去に行われた巡回における実績としての実際の各訪問先の到着時刻を学習データ(教師データ)として用いて中間層を作成して、中間層における各種パラメータについて学習を行う。学習タスク156は、計算される到着予定時刻と、学習データ(教師データ)に含まれる実績の到着時刻との誤差を最小化するように、中間層における各種パラメータの学習を行う。学習タスク156は、例えば、運転水準が移動時間(旅行時間)に与える影響の度合いを学習したり、道路状況が移動時間(旅行時間)に与える影響の度合いを学習したりする。
【0076】
学習タスク156は、また、運転水準や道路状況(特に、走行容易性)が、走行する道路の選択に与える影響の度合いを学習するようにしてもよい。
【0077】
巡回担当者は、最適順路設定装置1の処理結果(具体的には、日ごとの順路と各訪問先の到着予定時刻)を印刷し、印刷した処理結果を利用して各訪問先を巡回する。
【0078】
あるいは、最適順路設定装置1の処理結果が、通信部16を介して、最適順路設定装置1との間で情報通信が可能なユーザ端末へと送信されるようにしてもよい。
【0079】
ユーザ端末は、最適順路設定装置1の処理結果を利用して各訪問先を巡回する担当者が使用する情報処理装置であり、タブレット端末、スマートフォン、或いは携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant の略)などに、最適順路設定装置1との連携用アプリケーションがインストールされて構成される。そして、最適順路設定装置1の処理結果が、ユーザ端末の表示部に表示される。
【0080】
ユーザ端末は、GPS(Global Positioning System の略)機能を備えて、最適順路設定装置1の処理結果を地図に重ねて表示したうえで、当該ユーザ端末の現在位置をさらに重ねて表示するようにしてもよい。
【0081】
最適順路設定装置1の処理結果がユーザ端末に表示される際には、ユーザ端末のナビゲーションプログラムなどと連携して経路案内が行われるようにしてもよい。また、最適順路設定装置1の処理結果と利用者が運転する車両に備え付けられているカーナビゲーションシステムとが連携して経路案内が行われるようにしてもよい。
【0082】
ユーザ端末は、また、学習タスク156による学習に用いられるための、巡回に関する実績情報を収集するようにしてもよい。すなわち、ユーザ端末は、現在進行中の巡回についての実績としての実際の走行経路および各訪問先の到着時刻を収集して、内蔵されている記憶領域に保存したり最適順路設定装置1へと送信したりするようにしてもよい。
【0083】
次に、上記のような構成の最適順路設定装置1の使用方法、作用などについて説明する。
【0084】
利用者(巡回担当者)が入力部11を操作して訪問条件としての出発地および最終目的地の位置情報ならびに複数の訪問先それぞれの位置情報、訪問日時、および滞在予定時間の組み合わせを入力し、入力された訪問条件を訪問条件設定タスク151が訪問条件データベース132に記録させる。
【0085】
利用者(巡回担当者)が入力部11を操作して訪問先それぞれの属性を入力し、入力された訪問先それぞれの属性を属性分類設定タスク152が属性データベース133に記録させる。
【0086】
利用者(巡回担当者)が入力部11を操作して巡回条件としての巡回時間および運転水準を入力し、入力された巡回条件を巡回条件設定タスク153が巡回条件データベース134に記録させる。
【0087】
さらに、利用者(巡回担当者)が入力部11を操作して道路状況としての例えば道路渋滞、道路工事、一方通行、および走行容易性を入力し、入力された道路状況を道路状況設定タスク154が道路状況データベース135に記録させる。あるいは、道路状況設定タスク154が、通信部16を介して外部の情報サーバや情報サイトから取得したり、道路地図データベース131に記録されている道路地図情報(具体的には例えば、デジタル道路地図データ)から取得・設定したりした道路状況を道路状況データベース135に記録させる。
【0088】
順路探索タスク155が、属性データベース133に記録されている訪問先それぞれの属性に従って各訪問先をグループ分けしたうえで、訪問条件データベース132に記録されている出発地と最終目的地とを固定して、巡回条件データベース134に記録されている巡回時間を守り、且つ、訪問条件データベース132を参照して各訪問先について訪問日時が指定されている場合にはその訪問日時を守る条件下で、すべての訪問先を訪れるための順路の最適解を求める。すなわち、順路探索タスク155が、訪問先のすべてを数日に分けて訪問する際に1日の巡回を出発地から始めて巡回時間内に最終目的地へと至ることを制約条件として、属性に従って訪問先が分類されたグループごとに巡回して巡回にかかる総所要時間が最短になる、日ごとの順路を求める。
【0089】
そして、巡回担当者が、印刷した処理結果(具体的には、日ごとの順路と各訪問先の到着予定時刻)を利用して各訪問先を巡回する。
【0090】
あるいは、最適順路設定装置1が処理結果をユーザ端末へと送信し、巡回担当者が、ユーザ端末に表示される処理結果を利用して各訪問先を巡回する。
【0091】
この際、ユーザ端末が、現在進行中の巡回についての実績としての実際の走行経路および各訪問先の到着時刻を収集して、内蔵されている記憶領域に保存したり最適順路設定装置1へと送信したりする。そして、ユーザ端末によって収集された巡回に関する実績情報が、学習タスク156が行う学習における学習データ(教師データ)として用いられる。
【0092】
ここで、最適順路設定装置1は、1日の巡回の結果を踏まえて、次の日以降の順路の再設定を行うようにしてもよい。例えば、その日は不在だった訪問先を次の日以降の訪問先に追加したり、その日の訪問先には含まれていないもののその日の訪問先の近所であったために訪問した訪問先を次の日以降の訪問先から削除したりしたうえで、次の日以降の巡回にかかる総所要時間を最短にする順路を再設定するようにしてもよい。
【0093】
以上のように、この最適順路設定装置1および最適順路設定プログラム18によれば、日ごとの巡回時間を制約条件としたうえで巡回にかかる総所要時間が最短になる日ごとの順路が求められるので、数日に分けて複数の訪問先を効率的に巡回するための最適な順路を探索することが可能となる。この最適順路設定装置1および最適順路設定プログラム18によれば、また、訪問先それぞれの属性に従って訪問先が分類されたグループごとに巡回して巡回にかかる総所要時間が最短になる日ごとの順路が求められるので、例えば、訪問の目的や訪問時の対応内容が同一の訪問先をまとめて(言い換えると、続けて)訪問することによって訪問作業が煩雑になることを回避したり、所定の属性の訪問先を同一の担当者が巡回するようにしたりすることができ、訪問作業の効率性や正確性を向上させることが可能となる。
【0094】
また、この最適順路設定装置1および最適順路設定プログラム18によれば、巡回担当者の運転水準が考慮されたり道路の走行容易性が考慮されたりして順路が求められるので、訪問先の巡回の安全性の向上を図ることが可能となる。
【0095】
また、この最適順路設定装置1および最適順路設定プログラム18によれば、順路を求める処理が機械学習により行われるので、過去の巡回に関する実績情報が反映された一層実際的な順路を探索することが可能となり、延いては最適順路の探索技術としての信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0096】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0097】
例えば、上記の実施の形態では最適順路設定装置1において最適順路の探索処理が行われてその処理結果がユーザ端末へと送信されるようにしているが、ユーザ端末において最適順路の探索処理が行われるようにしてもよい。
【0098】
また、上記の実施の形態における、訪問先との間で予約された日時があること、運転水準が設定されること、および道路状況が設定されることは、本発明において必須の構成ではなく、必要に応じて取捨選択されてよい構成である。また、滞在予定時間は、訪問先によらず一定/一律の時間に設定されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
この発明は、特に訪問先それぞれの属性を考慮した順路の設定が可能であり、例えば荷物の配送の分野やPR活動や定着活動に伴う訪問の分野において有用であり、また、車両などのナビゲーション装置に付加して利用することもできる。
【符号の説明】
【0100】
1 最適順路設定装置
11 入力部
12 表示部
13 記憶部
131 道路地図データベース
132 訪問条件データベース
133 属性データベース
134 巡回条件データベース
135 道路状況データベース
136 実績データベース
14 メモリ
15 メインタスク
151 訪問条件設定タスク
152 属性分類設定タスク
153 巡回条件設定タスク
154 道路状況設定タスク
155 順路探索タスク
156 学習タスク
16 通信部
17 中央処理部
18 最適順路設定プログラム